説明

最適化された燃料支持体及びこれを用いた原子炉心を作製する方法

【課題】適切な流れ損失係数を有する燃料支持体を提供する。
【解決手段】燃料支持体148は、核燃料バンドルを受けるような形状にされた開口と入口オリフィス195a、195bとによって前記燃料支持体148を通る流体流路が定められ、該流体流路が前記原子炉の炉心内の内側周辺バンドル位置における流体流れ特性用に構成される。燃料支持体148が2つの入口オリフィス195a、195bを備え、該2つの入口オリフィス195a、195bの各々が、互いに異なる構成及び関連流体流れ特性を有する。また入口オリフィス195a、195bは各々、互いに異なる直径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、最適化された燃料支持体及びこれを用いた原子炉心を作製する方法に関する
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、沸騰水型原子炉(BWR)などの従来の原子炉は、ほぼ円筒形の原子炉圧力容器(RPV)12を含むことができる。RPV12は、ボトムヘッド28により下端部に及び取り外し可能なトップヘッド29により上端部にて閉鎖することができる。円筒形状の炉心シュラウド34は原子炉心36を囲むことができ、該原子炉心は、核分裂を通じて出力を発生する複数の核燃料要素又は集合体を含み、本明細書ではバンドルと呼ばれる。シュラウド34は、一方端において、シュラウド支持体38により支持することができ、他方端には、取り外し可能なシュラウドヘッド39及びセパレータ管組立体を含むことができる。1つ又はそれ以上の制御ブレード20が炉心36内に上向きに延びて、炉心36の燃料要素内の核分裂連鎖反応を制御するようにすることができる。加えて、1つ又はそれ以上の計装管50が、RPV12の外部から底部ヘッド28を通過することなどにより原子炉心36内部に延びて、中性子モニタ及び熱電対などの計測器を外部の位置から炉心36内に挿入し且つその内部に密閉可能にすることができる。
【0003】
燃料バンドルは、炉心36のベースにて炉心プレート49上に配置される燃料支持体48により整列及び支持することができる。燃料支持体48は、個々の燃料バンドル又はバンドルのグループを受け取り、ここを通る冷却材の流れを可能にすることができる。燃料支持体48は更に、計測管50、制御ブレード20、及び/又は他の構成要素が燃料支持体48を通過して又はその間で炉心36内に入ることを可能にすることができる。軽水又は重水などの流体は、炉心36及び炉心プレート48を通って上方に循環され、BWRでは、燃料要素の核分裂によって発生する熱により少なくとも部分的に蒸気に転換される。蒸気は、セパレータ管組立体及び蒸気乾燥器構造体15において分離及び乾燥され、RPV12の上部付近の主蒸気ノズル3を通ってRPV12から流出する。相変化に関わりなく、他の原子炉設計においては他の流体冷却材/減速材を用いることもできる。
【0004】
図2A及び2Bは、例えば、最大4つの個々の燃料バンドルを受け取り且つ支持することができる、図1の原子炉プラントで使用可能な従来技術の燃料支持体48の詳細図である。図2A及び2Bに示すように、燃料支持体48は、燃料バンドルの下端部を受け入れ、燃料支持体48内に収められる燃料バンドルを支持し整列させるような形状にされた開口90を含む。開口90は開放され、冷却材流が燃料支持体48を通ってそこに支持された燃料バンドル内に流入するのを可能にする。開口90は、入口又は下側オリフィス95から燃料支持体48を通る流体流を受け入れ、冷却材/減速材が燃料支持体48を流れるのを可能にする。十字形又はその他の開口21は、制御ブレード20が燃料支持体48によって支持されるバンドル間を通過するのを可能にすることができる。しかしながら、制御ブレード20は、可能な全ての炉心位置に存在することはできず、その結果、開口21が無充填となるか、又は存在しないこともある点は理解される。
【0005】
図3は、従来の原子炉心36の四分円を示す、従来炉心マップの例図である。図3における各グリッド位置は、各燃料バンドルが燃料支持体の関連する開口内に収められた状態にある、炉心36内の燃料バンドル位置を表している。図3における各グリッド位置は、従来の原子炉心36内の燃料支持入口オリフィス構成を示す数字で識別される。すなわち、従来のオリフィス95(図2A及び2B)は、炉心を通る2つの異なる流量を実現するために2つの異なるサイズ又は直径を有する。炉心36において「1」で表記されるグリッド位置は、中央燃料バンドルのサイズにされたオリフィスを有する位置に相当する。位置「1」における中央燃料バンドルのオリフィスが多数になるほど、関連の位置において燃料支持体及び燃料バンドルを通過する冷却材及び減速材の流れをより増大させることができる。位置「2」における周辺燃料バンドルのオリフィスがより少数になるほど、周辺でのバンドルに流入する冷却材及び減速材の流れをより少なくすることができる。このようにして、図3に示すように、従来の炉心36は、炉心内の燃料バンドルの最外リング又は周辺において生じる流体流をより低レベルにした状態で、中央燃料バンドルを通る流体流を標準とし、すなわちより多くすることができる。
【発明の概要】
【0006】
例示的な実施形態は、燃料支持体並びに該燃料支持体を含む原子炉心に関する。例示的な実施形態の燃料支持体は、冷却材/減速材が燃料支持体を通って該支持体内に収められた関連の燃料バンドルに流れることを可能にする入口オリフィスを含み、入口オリフィスは、関連の燃料バンドルを通る冷却材/減速材の流量などの所望の流体流れ特性を達成するよう特別に設計されている。所望の流体流れ特性は、原子炉の炉心内の入口オリフィスと関連するバンドルの一部に基づいて決定することができる。関連の異なる流体流れ特性を有するあらゆる数の異なるように構成された入口オリフィスを炉心全体及び個々の支持体内で用いることができる。例示的な実施形態の燃料支持体構成は、例えば、既知の条件下での所望の流れ損失係数又は流量を達成するため、異なる入口オリフィス直径、又はフィルタ、ベンチェリ、チョークプレート、その他などの流れ閉塞物の使用を含むことができる。例示的な実施形態の燃料支持体は、原子炉の炉心プレート内に位置付けることができ、冷却材/減速材及び場合によっては制御ブレード及び計装管が、燃料支持体を通る又はその間を通過することが可能になる。複数の例示的な実施形態の燃料支持体は、原子炉心のベースに配置することができ、各支持体は、関連の燃料バンドル位置において所望の流れ特性を得るための物理的構成を有する。例えば、外側炉心周辺、内側炉心周辺、及び炉心の中央部において、3つの異なる構成を用いることができる。外側周辺における構成は、各側部上の燃料バンドルによって囲まれない炉心の縁部にある位置であり、最大流れ損失係数を有し、少ない減速及び熱伝達が要求される周辺バンドルへの冷却材/減速材の流れを制限することができる。外側周辺の直ぐ内側の2つ又は3つのバンドル位置として定義される内側周辺の構成は、中間の流れ損失係数を有することができ、中央部分においける構成は、最低の流れ損失係数を有することができ、最大出力レベルにおいて中央バンドルへの最も高いレベルの冷却材/減速材の流れを提供する。
【0007】
例示的な方法は、原子炉心における燃料支持体の流路特性を構成する。例示的な方法は、特定のバンドル位置において流れ損失係数を修正し、修正流れ損失係数を用いて炉心性能をシミュレートし、シミュレートした炉心性能を分析し、及び/又は修正した流れ損失係数を達成するよう少なくとも1つの燃料支持体を構成することを含むことができる。分析は、所望の性能特性に対してシミュレートした炉心性能を比較し、或いは、シミュレートした炉心性能を異なる流れ損失係数を有する前回シミュレートした炉心性能と比較し、これを繰り返すことによって実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来の核燃料原子炉の例図。
【図2A】従来の燃料支持体の図。
【図2B】従来の燃料支持体の別の図。
【図3】従来の原子炉心の炉心マップの例図。
【図4】例示的な実施形態の燃料支持体の例図。
【図5】例示的な実施形態の原子炉心の炉心マップの例図。
【図6】従来の燃料支持体に対して例示的な実施形態を用いた実験結果のグラフ。
【図7】例示的な方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、添付図面を参照しながら例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本明細書で開示される特定の構造及び機能の詳細事項は、単に例示的な実施形態を説明する目的で表しているに過ぎない。例えば、沸騰水型原子炉(BWR)に関連した例示的な実施形態及び方法を説明しているが、例示的な実施形態及び方法は、PWR、ESBWR、重水炉、増殖炉、その他を含む、全て冷却材/減速材を用いた幾つかの他の原子炉タイプで使用可能である点は理解される。例示的な実施形態は、多くの代替形態で具現化することができ、本明細書で記載される例示的な実施形態にのみ限定されるものと解釈すべきではない。
【0010】
第1、第2、その他の用語は、本明細書で様々な要素を説明するのに用いることができるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことは理解されるであろう。これらの用語は、単に、ある要素を別の要素と区別するのに使用される。例えば、例示的な実施形態の技術的範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、また同様に第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で用いる場合に「及び/又は」という用語は、関連する記載項目の1つ又はそれ以上のいずれか及び全ての組合せを含む。
【0011】
ある要素が別の要素と「接続」、「結合」、「嵌合」、「取り付け」、又は「固定」されていると言及される場合、ある要素は他方の要素に直接接続又は結合することができ、或いは、介在する要素が存在できる点は理解される。これとは対照的に、ある要素が別の要素に「直接接続」又は「直接結合」されていると言及される場合には、介在する要素は存在しない。要素間の関係を説明するのに使用される他の用語も同様に解釈すべきである(例えば、「〜間」と「〜間に直接」、「隣接」と「直近」、その他)。
【0012】
本明細書で使用される単数形態は、前後関係から明らかに別の意味を示さない限り複数形態も含む。更に、本明細書内で使用する場合に、用語「備える」及び/又は「備えている」という用語は、そこに述べた特徴部、完全体、ステップ、動作、要素及び/又は構成部品の存在を明示しているが、1つ又はそれ以上の他の特徴部、完全体、ステップ、動作、要素、構成部品及び/又はそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことは理解されるであろう。
【0013】
幾つかの代替の実施においては、記載された機能/動作は、図に記載された順序又は本明細書において説明した順序とは異なる順序で行うことができる点に留意されたい。例えば、連続して示した2つの図は、含まれる機能/動作に応じてほぼ同時に実施することができ、又は逆の順序で実施することもできる。
【0014】
(例示的な実施形態)
図4は、最適化された流体流れ特性を有する入口オリフィス195を含む例示的な実施形態の燃料支持体148の図である。例示的な実施形態の燃料支持体は、支持体内に収められる燃料バンドルに対して整列、支持、及び冷却材/減速材流を提供するよう、図2A及び2Bに示す従来の燃料支持体48と同様に図示され、或いはこれと置き換えて用いることができ、例えば、最適制御ブレード開口121及び/又は4つの燃料バンドル開口190は、従来の燃料支持特性に一致するよう例示的な実施形態の燃料支持体148内に存在することができる。しかしながら、例示的な実施形態の燃料支持体は、従来の燃料支持体48(図2A及び2B)及び図4に示す例示的な実施形態の燃料支持体148とは異なる幾つかの特徴及び構成(物理的形状、開口の数、制御ブレードへの適応、その他)を有することができる点は理解される。例示的な実施形態の燃料支持体148は、原子炉心内の位置に基づいて、関連の燃料バンドルを通る流体流量を最適化するよう特別なサイズにされ又は構成された1つ又はそれ以上の入口オリフィス195を含む。個々の入口オリフィス195a、bは各々、独自に構成されて互いとは異なることができ、或いは、実質的に同じであってもよい。炉心内の異なる例示的な実施形態の燃料支持体148の入口オリフィス195は、全てオリフィス195の位置での所望の流れ特性に基づいて、他の燃料支持体の他の何れかの入口オリフィスと同じように構成することができ、或いは、完全に独自に構成することができる。すなわち、例示的な実施形態の燃料支持体148は、それぞれの異なる直径da及びdbを有する2つの入口オリフィス195a及び195bを備えて図示されているが、例示的な実施形態の燃料支持体148における全ての入口オリフィスは、同じ直径と他の態様を有することができると共に、図4に示していないコア内の他の場所に位置付けられた他の例示的な実施形態の燃料支持体においては他の入口オリフィスとは異なることができる点は理解される。例示的な実施形態の燃料支持体のオリフィス構成及び関連の流体流れ特性を決定する例示的な方法について、以下の例示的な実施形態を下記にて検討する。
【0015】
例示的な実施形態の燃料支持体148の入口オリフィス195は、プラント運転中に関連のバンドルを通る所望の流れレベルの冷却材/減速材を提供するよう物理的に構成される。この構成は、幾つかの方法で達成することができる。例えば、入口オリフィス195aの直径daは、そこを貫通する所望のレベルの冷却材流れ180aを可能にするよう、燃料支持体148の製造中に設定することができる。同様に、直径daは、製造後に例えば機械加工又は再成形により達成又は調整することができる。或いは、例えば、入口オリフィス195bの直径dbは、環状チョークプレートのような、そこを通す所望の低流量180bを達成するため直径dbを低減するインサートを付加することによって達成又は調整することができる。加えて、例示的な実施形態の燃料支持体148において入口オリフィス195の何れかの側部上にインサート、バッフル、フィルタ、及び/又は他の何れかの構造体を用いて、プラント運転中に所与の入口オリフィス195の流体流れ損失係数及び該入口オリフィス195を通る結果として得られる流体流れの量を所望の量にまで影響を与えることができる。例えば、流れ制限器又は閉塞物を流路内の開口190の前又は内部に配置し、関連の入口オリフィス195内に流れ、最終的には関連の開口190内に収められる燃料バンドルを通過する冷却材/減速材の量を調整することができる。
【0016】
例示的な実施形態の燃料支持体148における入口オリフィス195の種々の直径及び/又は他の構成によって許容される冷却材/減速材のレベルは、あらゆる所望のレベルに設定することができる。所与の流体に対してこれらの構成により生じる局所流れ損失係数は、運転中の原子炉プラントにおいて個々の入口オリフィス195の機能性を比較する共通の評価基準を提供することができる。共通の入口圧力及び流体において、より大きな損失係数は、オリフィス及び関連する燃料バンドルを通るより少ない流体減速材/冷却材流と相関され、結果として減速及び燃料使用量が少なくなり、他のバンドルに多くの流れが配向されることになる。より大きな損失係数は、例示的な実施形態の燃料支持体148において、上述のように、入口オリフィス195の直径を減少させ及び/又は入口オリフィス195又は燃料支持体148内に流れ遮断構造を設けることによって達成することができる。同じ共通の入口圧力及び冷却材/減速材流体の下では、より低い損失係数は、オリフィス及び関連の燃料バンドルを通るより大きな流体減速材/冷却材流と相関され、結果としてより大きな減速及び核分裂エネルギーが生成されると共に、他のバンドルが利用可能な流れが減少することになる。より低い損失係数は、例示的な実施形態の燃料支持体148において、入口オリフィス195の直径を増大させ及び/又は例示的な実施形態の燃料支持体148内の流れ遮断構造を取り除くことによって達成することができる。当該オリフィスの望ましい流量特性に基づいて、複数の異なるタイプのオリフィス構成を同じ燃料支持体148上で、或いは同じ入口オリフィス195上でも一緒に用いることができる。
【0017】
図5は、例示的な実施形態の炉心236の四分円が例示的な実施形態の燃料支持体148(148)をどのように実装できるかを示す炉心マップの例図である。図5における各グリッド位置は、バンドル内に冷却材/減速材流180を提供する燃料バンドル位置及び関連の入口オリフィス195(図4)に相当する。従って、例示的な実施形態の燃料支持体148(図4)は、オリフィスの数及び例示的な実施形態の燃料支持体の形状に応じて、図5の1つ又はそれ以上のグリッド位置にわたることができる点は理解される。例示的な実施形態の炉心236は、四分円において19×19の半径方向燃料バンドルで図示されているが、BWR、ESBWR、ABWR、PWR、非LWR設計、及び/又はオリフィスを備えた燃料支持体が使用可能な他のあらゆるタイプの原子炉設計を含む、例示的な実施形態及び方法に対して他の数の燃料バンドル及び炉心形状も使用可能である点は理解される。
【0018】
図5に示すように、各グリッド位置は、数字「1」、「2」、「3」、「4」のグリッド位置で表示される固有のオリフィス構成と関連付けられる。図5の凡例において図示されるように、位置「1」の入口オリフィスは中央構成を有し、最低の損失係数が、例えば、最大オリフィス直径及び/又は最少流れ障害物により達成される。位置「2」の入口オリフィスは外側周辺構成を有し、最大損失係数及び最小オリフィス直径/最多の流れ障害物を有する。具体的な一実施例として、中央位置「1」の例示的な実施形態の燃料支持体におけるオリフィスの損失係数は、周辺位置「2」のオリフィスの損失係数の約20〜25%(例えば、21%)であり、すなわち、位置「2」においてより大きな流れ損失及びより少ない流れが生じる可能性がある。外側周辺の直ぐ内側の2つ又は3つのバンドル位置として本明細書で定義される内側周辺位置「3」及び「4」のオリフィスは、中央位置「1」と周辺位置「2」のオリフィスの損失係数の間の中間損失係数を有する。例えば、位置「3」のオリフィスは、周辺位置「2」のオリフィスの損失係数の約77〜83%(例えば、80%)を有することができ、位置「4」のオリフィスは、周辺位置「2」のオリフィスの損失係数の約37〜43%(例えば、40%)を有することができる。燃料支持体における異なるオリフィスのこれらの固有の損失係数は、オリフィス直径の変更、流れ障害物の追加/除去、その他を含む、上記で検討した流れパラメータを変更するため上述の異なる構成技術によって達成することができる。
【0019】
このようにして、例示的な実施形態の炉心236は、最大損失係数の外側周辺オリフィスから最低損失係数の中央オリフィスまでの間の中間の損失係数の変動値を備えた複数のタイプのオリフィスを有する例示的な実施形態の燃料支持体を含む。図5に示す四分円を3つの軸線を中心として鏡映させ、これら3つの軸線に関して対称なオリフィスレイアウトの全体の例示的な実施形態の炉心236を生成することができる。
【0020】
例示的な実施形態の炉心236内の周辺及び中間位置「2」、「3」及び「4」におけるバンドルは、より低い燃料濃縮度(経年又は初期濃縮)を有し、炉心境界の大きな中性子損失を生じやすい可能性があり、結果としてより低い核分裂エネルギーを生成することになる。周辺及び内側周辺位置のより低い出力レベルに起因して、これらの位置においては、動作温度及び最大出力生成時にバンドルを維持するために必要となる減速材/冷却材がより少なくなる可能性がある。例示的な実施形態の炉心236は、中間すなわち内側周辺位置の同じバンドルに対して完全に中央オリフィスを提供する図3に示す炉心のような従来の炉心と比較して、位置「3」及び「4」のオリフィスを有する中間バンドルを通る流体減速材/冷却材に対してより高い損失係数、従って少ない流れを提供する。このようにして、例示的な実施形態の炉心236は、図3に示すもののような従来の炉心と比べて、中央位置「1」においてバンドルに多くの減速材/冷却材を配向し、中間周辺位置「3」又は「4」においてバンドルに少ない減速材/冷却材を配向することができる。中央の位置「1」におけるバンドルは、中間又は周辺の位置「2」、「3」又は「4」に比べてより高い濃縮度及び出力率を有することができる。従って、中央の位置「1」におけるバンドルは、例示的な実施形態の炉心236において冷却材/減速材からの増大した中性子減速及び流体エネルギー移動による恩恵を受けることができる。
【0021】
更に、運転サイクルの終了付近では、所与の炉心のバンドルは、核分裂可能な材料がより減損しており、例示的な実施形態の炉心236における周辺及び中間位置「2」、「3」及び「4」のバンドルは、経年及び低初期濃縮度に起因して特に低い燃料濃縮度を有することができる。サイクル条件の終了時のオペレータは、合計炉心流量を増大させ、減損バンドルに追加の減速材を提供し、通常の又は定格の炉心流が持続できるレベルから更に数日の間核分裂連鎖反応を維持するようにすることができる。しかしながら、周辺及び内側周辺位置での低濃縮度及び中性子損失による低出力レベルに起因して、サイクル条件の終了時の増大した減速材/冷却材は、周辺及び内側周辺位置上では利用されず、これらの位置を通じて炉心を通過する高い湿分キャリーオーバを有する湿潤減速材をもたらす可能性がある。例示的な実施形態の炉心236は、増大した炉心流量に対して高い損失係数を提供し、すなわち、従来の炉心と比較して、位置「3」及び「4」のオリフィスを有する中間バンドルを通る流体減速材/冷却材に対して増大した炉心流量を用いてサイクル条件の終了時に更に少ない流れを提供する。このようにして、例示的な実施形態の炉心236は更に、増大した炉心流量で運転しているプラントにおいて、湿分キャリーオーバを低減し、蒸気品質及びプラント効率を高め、サイクル寿命を延ばすことができる。
【0022】
他の例示的な実施形態の炉心構成は、例示的な実施形態の燃料支持体及び個別化されたオリフィスにより達成することができる。例えば、図6の以下の事象1から3に示すように、例示的な実施形態の炉心236の内側周辺位置「3」及び「4」の両方で単一タイプの中間オリフィスだけが使用され、燃料支持体の標準化を改善し、又は他の炉心流量特性を達成することができる。或いは、例えば、より高い損失係数を有する入口オリフィスを制御される位置にて用いることができ、これら制御位置は、通常は少ない減速材及び冷却材を必要とする制御ブレードに直接隣接するバンドル位置である。制御位置にて例示的な実施形態の燃料支持体を用いて冷却材/減速材流を制限すると、湿分キャリーオーバが更に減少し、及び/又はより高エネルギーの燃料バンドルに追加の流れを提供してプラント効率を高めることができる。例示的な実施形態の燃料支持体により提供される柔軟性に起因して、適正な燃料バンドル構成によりほぼあらゆる所望の流量特性が達成され、結果として、所望の冷却材流特性、すなわちエネルギー生成又は安全余裕に適合する特性を有する例示的な実施形態の炉心構成を得ることができる。
【0023】
発明者らは、2つよりも多い異なる入口オリフィスひいてはバンドル流量特性を有する例示的な実施形態の燃料支持体及び炉心と、2つのみの中央及び周辺入口オリフィス流量特性を有する従来の炉心とを比較した。図6は、例示的な実施形態の炉心の中央位置にて例示的な実施形態の燃料支持体を通る冷却材/減速材流と、従来の炉心の中央位置における従来の燃料支持体オリフィスを通る冷却材/減速材流とのパーセント差分の結果を示すグラフである。図6は更に、同じ事象(ライン及び点)間での最小限界出力比(MCPR、単一の燃料バンドルにおける限界沸騰遷移を生じる出力レベルと運転出力レベルとの比)の値の変化を示している。
【0024】
図6の結果を得るために、公知のPANACEA(TRACG04/PANAC11)炉心熱力学コードを用いて、同じ全炉心流量77Mlb/hr及び100%定格出力に対するエネルギー密度54kw/lを有する5つのESBWR炉心をシミュレートした。各炉心は、図5に示す例示的な実施形態の炉心236のレイアウトのような、関連位置において1132個のバンドルを収容していた。例示的な実施形態の炉心に関して行われたように、異なる炉心位置において異なる損失計数及び流量を達成するために、シミュレーションにいて変化する唯一のパラメータは、特定の位置における燃料支持体構成であった。例外は事象5であり、事象4のパラメータと同じパラメータを用いているが、運転サイクル長が異なり、最適化された燃料設計と組み合わせた低い再装荷燃料要件を有する。表1は、図6に示す事象1から5のパラメータの変化を要約している。
【0025】
【表1】

事象1から5のシミュレートチャンネル流及びMCPR値は、対照事象のシミュレートチャンネル流及びMCPR値の結果と比較し、パーセント変化又は値差分を図6にグラフで示した。図6に示すように、2つよりも多い異なるタイプのオリフィスを用いた各例示的な実施形態の炉心は、チャンネル流及びMCPRにおいて有意な改善を示した(少なくとも3%の増大、及び少なくとも0.02の改善)。現行のウランコストでは、運転中の商用軽水炉において0.01のMCPRの改善ごとに、およそ400,000.00ドルの燃料コスト低減をもたらすことになる。従って、オリフィス及び関連のバンドルの炉心位置に基づいて可変のオリフィス特性及び流量を備えた例示的な実施形態の燃料支持体は、原子炉効率を高めるために例示的な実施形態の原子炉心にて用いることができる。
【0026】
(例示的な方法)
例示的な方法は、炉心内の複数の異なる所望のレベルの冷却材/減速材流を達成するためにカスタマイズされた燃料支持体を有する原子炉心構成をもたらす。図7に示すように、S100において、最適化のための燃料特性、バンドル位置、炉心運転パラメータ、その他を含む既知の炉心構成を識別する。例えば、S100において、プログラムが複数の原子炉運転特性に関する入力を受け取ることができる。S110において、1つ又はそれ以上の損失係数は、既知の炉心構成における1つ又はそれ以上の関連のバンドル位置について提案され又は修正される。例えば、S110において、ユーザがバンドル位置の流れ損失係数を入力又は変更することができ、或いは、コンピュータプロセッサが、許容可能な範囲内で全ての可能性のある流れ損失係数を周期的に繰り返すことができる。S120において、結果として各バンドル位置に対して修正された炉心流量係数を有する炉心が、熱力学炉心モデル化コードでシミュレーションされる。S130において、中央バンドル流量及びMCPRなどの変数を含む結果は、シミュレータにより判定され、分析又は比較が出力される。例えば、S310において、ユーザ又はコンピュータプログラムは、結果として得られた炉心運転パラメータが最小性能閾値を超えたかどうかを判定し、又は運転結果を異なる流量の損失係数に関する前回の反復からの前回の結果と比較することができる。任意選択的に、動作S100、S110、S120、及び/又はS130は、特定の炉心についての許容可能な又は最良の流れ損失係数マップが求められるまで任意の反復回数で繰り返すことができる。S140において、各炉心位置において受け入れられた流れ損失係数を有する燃料支持体構成を識別することにより、受け入れられた流れ損失係数マップが得られる。次いで、S140において、例示的な実施形態の燃料支持体は、各炉心位置における識別された流れ損失係数を得るように作製又は他の方法で構成することができる。
【0027】
S100からS140を含む例示的な方法は、炉心内の各バンドル位置について、又は対象のバンドル位置のサブセットについて実行することができる。或いは、例示的な方法は、例えば、炉心運転特性を最適化するため、又は、特定のバンドル位置に関する限定的な問題を解決するために、特定のバンドルに対してのみ実行することができる。同様に、例示的な方法は、炉心設計の不可欠な部分として、或いは、他の既知の炉心設計方法と交互に及び/又は反復的に実施される別個のステップとして用いることができる。例えば、既知の炉心設計プログラムは、燃料バンドル特性を用いた炉心マップ及び同形のオリフィス構成及び関連の流れ損失係数を用いた炉心パラメータを出力することができる。次に、S100からS140を含む例示的な方法は、流れ損失係数を含む運転特性が変化した、一部又は全ての燃料バンドル位置について実施することができる。次に、炉心設計プログラムは、修正した特性に関して再実行することができ、実施例及び他の最適化方法を伴うこの炉心構成は、これ以上最適化が実施可能ではないか、必要ではなくなるまで継続することができる。或いは、例示的な方法は、他の既知の炉心設計方法の不可欠な部分として用いることができ、炉心設計プロセスの追加の変数としてオリフィス構成により影響を受ける流れ損失係数パラメータを処理する。また、1つ又はそれ以上の動作S100からS140は、燃料サービス及びライセンス状況において異なるプログラム又は当事者が実行してもよい点は理解される。
【0028】
以上、例示的な実施形態及び方法を説明してきたが、当該例示的な実施形態は、これ以上の発明的活動もなく日常的な経験を介して例示的な実施形態を変更できることは、当業者には理解されるであろう。例えば、上記の開示事項を読むと、記載された特定の例示的な実施形態とは別の炉心構成及び燃料支持体形状及び能力を達成できることは容易に理解される。種々の変形形態は、例示的な実施形態の技術的思想及び範囲から逸脱するものとみなすべきではなく、当業者には明らかであるこのような全ての修正は、以下の請求項の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0029】
3 主蒸気ノズル
12 原子炉圧力容器(RPV)
15 蒸気乾燥器構造体
20 制御ブレード
21 開口
28 ボトムヘッド
29 トップヘッド
34 シュラウド
36 原子炉心、炉心
38 シュラウド支持体
48 燃料支持体
49 炉心プレート
50 計装管
80 冷却材流れ
90 開口
95 下側オリフィス
121 制御ブレード開口
148 燃料支持体
180 冷却材流れ
190 燃料バンドル開口
195 入口オリフィス
195a 入口オリフィス
195b 入口オリフィス
236 炉心
S100 識別ステップ
S110 修正ステップ
S120 シミュレートステップ
S130 分析ステップ
S140 構成ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉で使用するための燃料支持体(148)であって、核燃料バンドルを受けるような形状にされた開口(21)と入口オリフィス(195)とによって前記支持体(148)を通る流体流路が定められ、該流体流路が前記原子炉の炉心内の内側周辺バンドル位置における流体流れ特性用に構成されている、燃料支持体(148)。
【請求項2】
前記燃料支持体(148)が2つの入口オリフィス(195)を定め、該2つの入口オリフィス(195)の各々が、互いに異なる構成及び関連流体流れ特性を有する、請求項1に記載の燃料支持体(148)。
【請求項3】
前記2つの入口オリフィス(195)が各々、互いに異なる直径を有する、請求項2に記載の燃料支持体(148)。
【請求項4】
前記燃料支持体(148)が前記原子炉内の炉心プレートに接続され、該燃料支持体(148)が更に制御ブレード用の開口を定める、請求項1に記載の燃料支持体(148)。
【請求項5】
前記流路が、前記入口オリフィス(195)及び前記流路内の閉塞物のうちの少なくとも1つにより前記流体流れ特性用に構成される、請求項1に記載の燃料支持体(148)。
【請求項6】
原子炉用の原子炉心(236)であって、
前記炉心(236)のベースに配列される複数の燃料支持体(148)を備え、
前記燃料支持体(148)の各々が前記支持体を通る流体流路(80)を定め且つ燃料バンドルを受けるように構成され、前記定められた流体流路(80)のうちの少なくとも3つが互いに異なる流れ損失係数を有し、
前記燃料支持体(148)が更に、
前記燃料支持体(148)のうちの対応する支持体内に各々が収められる複数の燃料バンドルを備える、原子炉心(236)。
【請求項7】
前記3つの流体流路(80)の第1の流路が前記炉心(236)の外側周辺に配置され、前記3つの流体流路(80)の第2の流路が前記炉心(236)の内側周辺に配置され、前記3つの流体流路(80)の第3の流路が前記炉心(236)の中央部に配置される、請求項6に記載の原子炉心(236)。
【請求項8】
前記第1の流路(80)が燃料支持体(148)の第1の入口オリフィス(195)から始まり、前記第2の流路(80)が燃料支持体(148)の第2の入口オリフィス(195)から始まり、前記第3の流路(80)が燃料支持体(148)の第3の入口オリフィス(195)から始まる、請求項7に記載の原子炉心(236)。
【請求項9】
前記燃料支持体(148)の第1のサブセットが前記炉心(236)の外側周辺の周りに延び、前記燃料支持体(148)の第2のサブセットが前記燃料支持体(148)の第1のサブセットに隣接する前記炉心(236)の内側周辺の周りに延び、前記燃料支持体(148)の第3のサブセットが前記燃料支持体(148)の第2のサブセット内の前記炉心(236)の中央部分を通って延び、前記燃料支持体(148)の第1のサブセットが、第1の流れ損失係数を有する前記3つの流体流路(80)のうちの第1の流路(80)を定め、前記燃料支持体(148)の第2のサブセットが、第2の流れ損失係数を有する前記3つの流体流路(80)のうちの第2の流路(80)を定め、前記燃料支持体(148)の第3のサブセットが、第3の流れ損失係数を有する前記3つの流体流路(80)のうちの第3の流路(80)を定め、前記第1、第2、及び第3の流れ損失係数が各々互いに異なっており、前記第3の流れ損失係数が前記第1の流れ損失係数の約20から25%であり、前記第2の流れ損失係数が前記第1の流れ損失係数の約40から80%である、請求項6に記載の原子炉心(236)。
【請求項10】
原子炉心(236)において燃料支持体(148)を構成する方法であって、
前記原子炉心(236)の構成において少なくとも1つのバンドル位置に対して流れ損失係数を修正するステップ(S110)と、
前記修正された流れ損失係数を用いて炉心性能をシミュレートするステップ(S120)と、
前記シミュレートした炉心性能を分析するステップ(S130)と、
前記シミュレートされた炉心性能が良好であることを前記分析が示す場合には、前記少なくとも1つのバンドル位置にて前記修正された流れ損失係数を達成するよう前記少なくとも1つの燃料支持体(148)を構成するステップ(S140)と、
を含む、方法。

【図2B】
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【図1】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−141302(P2012−141302A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−281133(P2011−281133)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)