最適化されたTRPM8核酸配列、ならびにTRPM8モジュレーターを同定するための、細胞に基づいたアッセイおよび検査キットにおけるそれらの使用
ヒト細胞において効率的に発現される修飾ヒトTRPM8核酸配列、および細胞に基づいたアッセイ、および前記を含有する検査キットを提供する。これらのアッセイは、本発明に従っての修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現する細胞を使用して、TRPM8モジュレーターを同定する、そしてその場合前記配列は、野生型ヒトTRPM8核酸配列に対して、所望の細胞におけるイオンチャネルの発現を最適化するために修飾されている。これらの修飾TRPM8配列を使用するアッセイで、公知の冷却剤、例えばメントールおよびイシリンより強く、または匹敵する程度にTRPM8イオンチャネルを調節する化合物が同定されることが示された。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願
本出願は、双方とも2005年10月11日に提出された、米国仮特許第60/724,776号および60/724,777号に対する優先権を主張し、参照として援用する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、ネイティブ(野生型)ヒトTRPM8核酸配列に対して、所望の細胞、好ましくは霊長類細胞、そして最も好ましくはヒト細胞におけるそれらの発現を増強する目的で修飾されている、TRPM8核酸配列に関する。
【0003】
また本発明は、主題の修飾されたTRPM8核酸配列を用いての、細胞に基づいたアッセイ、好ましくは電気生理学的および蛍光定量的なカルシウムまたはナトリウムの画像解析アッセイ、ならびにそれらアッセイで使用するための、ヒトTRPM8調節化合物、好ましくは公知の冷却化合物であるメントールまたはイシリンに近い冷却感覚をヒト被験者において起こす化合物、および/またはメントールまたはイシリンにより起こる冷却感覚を増強するTRPM8モジュレーター、を同定するキット、を提供する。主題の細胞に基づいたアッセイは好ましくは、リコンビナントホスト細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞における発現を最適化するように変異させた修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現する細胞を使用する。好ましくは導入された変異は、ネイティブのヒトTRPM8核酸配列に対して、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされるポリペプチドの配列を変化させていない、または実質的に変化させていない。
【0004】
発明の背景
本発明は、新規冷却物質を同定するための、修飾TRPM8核酸配列を使用するアッセイに関する。本発明以前に、げっ歯類およびヒトのTRPM8核酸配列をコードする核酸配列が報告されている。加えてTRPM8が、涼冷から寒冷の温度の感覚、ならびに冷却物質、例えばメントールおよびイシリンに対する感覚に関与する、TRPイオンチャネルファミリーのメンバーであることが、報告された。TRPM8は、寒冷温度、メントール、イシリン、またはその誘導体による刺激で、ナトリウムまたはカルシウムに対するその透過性を増大させる、非選択的カチオンチャネルである。なおさらにTRPM8モジュレーターを同定するための、ネイティブ(未修飾)TRPM8核酸配列の使用が報告された。
【0005】
しかしながら前述の報告にもかかわらず、ヒトTRPM8チャネルを修飾する化合物を同定するための改善されたアッセイおよび検査キットが必要とされている。特に、少なくともメントールまたはイシリンに匹敵する、ヒトTRPM8チャネルを調節する新規化合物を同定するアッセイが必要とされている。これらの化合物は、冷却感覚が所望される食品、飲料、医薬剤、およびその他の組成物における潜在的適用性がある。
【0006】
発明の目的
所望のホスト細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK-293細胞において効率的に発現され、そして発現により、TRPM8モジュレーター、すなわちヒトの冷却感覚を調節するアゴニスト、アンタゴニスト、およびエンハンサーを同定するために適する、TRPM8イオンチャネルポリペプチドを得られる、新規変異TRPM8核酸配列を提供することが、本発明の目的である。
【0007】
より特定すれば、ヒト細胞、例えばHEK-293細胞における発現を最適化するように操作される、ネイティブ配列に対して変異を含有する、新規ヒトTRPM8核酸配列であって、ここでそのような変異が、結果として得られるTRPM8チャネルポリペプチドの結合特性および/または機能的特性を実質的に変化させない、例えば保存的なアミノ酸の置換である前記核酸配列、を提供することが本発明の目的である。例えばそのような変異は、以下:(i)推定ヒトinteralTATAボックス、(ii)chi部位、(iii)リボソームエントリー部位、(iv)ARE、INS、もしくはCRS配列エレメント、ならびに(v)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去してよい。加えてそのような変異は、1つまたはそれより多くのコドンを、ホスト細胞の好ましいコドン、特にヒトの好ましいコドンに置き換えてもよい。
【0008】
さらにより好ましくは、配列番号:2に含有されるTRPM8核酸配列、およびそのバリアントを提供することが、本発明の目的である。
ヒトTRPM8イオンチャネルを調節する化合物を同定するための、細胞に基づいた新規アッセイを提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【0009】
より特定すれば、リコンビナントホスト細胞、好ましくは哺乳類細胞、そして最も好ましくはヒト細胞における、TRPM8発現を最適化するように遺伝子操作された変異を包含する、本発明に従っての変異ヒトTRPM8核酸配列を発現する検査細胞を使用して、ヒトTRPM8イオンチャネルを調節する化合物を同定するための、細胞に基づいた新規アッセイを提供することが、本発明の目的である。
【0010】
なおより特定すれば、修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現する、すなわち先に報告された自然発生のヒトTRPM8核酸配列とは異なる配列を保有するヒト細胞において、ヒトTRPM8の活性を修飾する化合物を同定するための細胞に基づいたアッセイを提供することが本発明の目的であり、ここでそのような修飾配列はヒト細胞におけるTRPM8発現を高める変異を含有していて、そしてさらにその場合そのような変異は好ましくはTRPM8タンパク質配列を変化させていない。特にそのような変異は、以下:(i)ヒト推定内在性TATAボックス、(ii)chi部位、(iii)リボソームエントリー部位、(iii)ATリッチまたはGCリッチ配列ストレッチ、(iv)ARE、INSまたはCRS配列エレメント、ならびに(v)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去してよい。加えてそのような変異は、1つまたはそれより多くのコドンを、ホスト細胞の好ましいコドン、特にヒトの好ましいコドンで置き換えてもよい。
【0011】
さらにより好ましくは、配列番号:2に含有される変異ヒトTRPM8核酸配列、またはそのバリアントを発現する検査細胞を使用する、ヒトTRPM8調節化合物を同定するための、細胞に基づいたアッセイを提供することが本発明の目的である。
【0012】
なおより好ましくは、本明細書において提供される細胞に基づいたアッセイは、蛍光カルシウム感受性色素、膜電位色素、またはナトリウム感受性色素を使用してTRPM8活性をモニタリングするものとする。
【0013】
あるいは本明細書において提供される細胞に基づいたアッセイは、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を発現する卵母細胞を用いて、電気生理学的方法により、すなわちパッチクランプ法または二電極ボルテージクランプ法により、TRPM8活性をモニタリングするものとする。
【0014】
さらにあるいは本発明は、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を利用する、イオン流束アッセイ、例えば放射標識イオン流束アッセイにより、または原子分光検出法(atomic spectroscope detector methods)の使用により、TRPM8活性を検出してよいアッセイを提供する。
【0015】
最も好ましくは、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を利用する、本明細書において提供される細胞に基づいたアッセイは、数千または数百万でさえもの異なる推定冷却化合物のスクリーニングを促進するハイスループットスクリーニングのプラットフォームを使用するものとし、ここでTRPM8活性は、カルシウム感受性色素、膜電位色素、またはナトリウム感受性色素を用いて、パッチクランプ法もしくは二電極ボルテージクランプ法により電気生理学的に、または放射標識を用いるイオン流束アッセイ、もしくは原子分光検出法によりモニタリングする。
【0016】
また以下、(i)野生型ヒトTRPM8核酸配列に対して、リコンビナント哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞における発現を最適化するように修飾された、野生型(自然発生の)ヒトTRPM8と同一または実質的に同一のポリペプチドをコードする、本発明に従って変化または変異させたヒトTRPM8核酸配列を発現する検査細胞、そして(ii)TRPM8活性を測定するための手段、例えばカルシウム感受性色素、膜電位色素、もしくはナトリウム感受性色素;ヒトTRPM8の活性を調節する化合物を同定するための電気生理学的手段、またはTRPM8を介してのイオン流束、例えば放射標識イオン流束を検出するための手段、または原子吸光分光検出法という手段、を包含する検出システム、を包含するヒトTRPM8を調節する化合物を同定するための新規検査キットを提供することが、本発明の目的である。
【0017】
発明の簡単な説明
本発明は、所望の細胞、すなわちヒト細胞、例えばHEK-293細胞における発現を最適化するように操作された変異を含有する新規変異TRPM8核酸配列、ならびにTRPM8調節化合物、好ましくは冷却物質そのものとして機能する化合物、および/または他の冷却化合物、例えばメントール、イシリン、およびその誘導体のような冷却物質、の冷却効果を高める化合物、を同定するための、本発明に従っての新規変異TRPM8核酸配列を使用するアッセイにおける、これらの配列およびそれを含有する細胞の使用、に関する。
【0018】
先に記したようにTRPM8は、寒冷温度、または冷却効果を起こす化合物、例えばメントール、イシリン、およびその誘導体による刺激で、ナトリウムまたはカルシウムに対するその透過性を増大するTRPイオンチャネルファミリーの、非選択的カチオンチャネルである。それ故、一過的または安定的にTRPM8を発現する細胞は、スクリーニングにおいて、例えばTRPM8モジュレーターの効果を同定および定量するハイスループットプラットフォームのスクリーニングにおいて有用である。
【0019】
より特定すれば本発明は、修飾TRPM8核酸配列、および哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞における発現を最適化するように操作された、これらの変異または変化させたヒトTRPM8核酸配列を発現する検査細胞を使用する、細胞に基づいたアッセイ、に関する。そのような最適化された配列は、好ましくは野生型ヒトTRPM8ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を保持する、または瑣末な修飾のみを包含するにとどまるものとする。例えば本発明に従っての修飾TRPM8配列は、ネイティブヒトTRPM8ポリペプチドと少なくとも85%の配列の同一性、より好ましくは少なくとも90−95%の配列の同一性、そしてさらにより好ましくは少なくとも96−99%の配列の同一性を保有してよい。
【0020】
本発明は、特定の修飾TRPM8核酸配列、およびネイティブヒトTRPM8ポリペプチドと同一のポリペプチドをコードする前記修飾ヒトTRPM8を発現する細胞を例示し、ここで前記修飾TRPM8核酸配列は配列番号2に含有される。この配列は、ネイティブTRPM8核酸配列に対して、推定内在性のTATAボックス、chi部位、およびリボソームエントリー部位;ATリッチおよびGCリッチ配列ストレッチ、ARE、INS、およびCRS配列エレメント、ならびに潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、を除去するように修飾された。配列番号:2に含有されるこの配列は、601のサイレントヌクレオチドの置換変異を含有し、配列番号:1(下記記載)に含有される報告されたヒトTRPM8核酸配列と、81%のヌクレオチド配列の同一性を示す。この最適化TRPM8配列を使用しての細胞に基づいたアッセイは、ラットおよびヒトのTRPM8の活性化において、メントールと均等またはそれに優る化合物を同定する能力があることが実証された。
【0021】
発明および関連する用語の詳細な説明
本発明は、修飾TRPM8核酸配列、およびTRPM8モジュレーターを同定するために有用であるそのような配列を発現または含有する、細胞に基づいたアッセイおよび検査キットを提供する。以下に詳細に考察するように、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を発現する細胞を使用するこれらの細胞に基づいたアッセイは好ましくは、哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞におけるTRPM8活性を調節する化合物を同定するための、ハイスループットスクリーニングのプラットフォームを使用する。主題の修飾TRPM8核酸配列またはげっ歯類のTRPM8を発現する細胞を使用するこれらのアッセイは、好ましくは蛍光カルシウム感受性色素、例えばFura2、Fluo3もしくはFluo4、ならびに膜電位色素またはナトリウム感受性色素を用いて達成するものとする。あるいはTRPM8を調節する化合物は好ましくは、主題の修飾ヒトTRPM8核酸配列またはげっ歯類のTRPM8を発現する卵母細胞を使用して、パッチクランプ法または二電極ボルテージクランプ法による、ハイスループット電気生理学的スクリーニングにより同定する。
【0022】
さらにあるいはTRPM8を調節する化合物は、本発明の従っての修飾TRPM8核酸配列を発現する細胞を使用して、イオン流束アッセイ、例えば放射標識イオン流束アッセイ、またはイオン流束アッセイをカップルさせた原子吸収吸光分光法により検出してよい。
【0023】
本発明の修飾TRPM8核酸配列は、所望の細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞、および卵母細胞、またはGPCRおよびイオンチャネル調節化合物を同定するためのスクリーニングにおいて従来より使用されているその他のヒト細胞、における発現を最適化するように遺伝子的に操作する。
【0024】
TRPM8タンパク質は、カチオンチャネル活性を有するチャネルを形成することが知られている;特にこのチャネルはカルシウムおよびナトリウム透過性を示す。このタンパク質は、カルシウムに対して相対的に高い透過性を有するが、一価のカチオン間での選択性はほとんどない。チャネル活性は、例えばリガンドに誘発される[Ca2+]iの変化を記録すること、ならびに蛍光Ca2+指標色素および蛍光定量的画像解析を用いてのカルシウム流束を測定すること、により効率的に測定することができる。TRPM8は、感覚神経、ならびに前立腺上皮、および多様な腫瘍、例えばその他の上皮腫瘍を含むいくつかの組織において発現される。TRPM8または相同体を発現させてよい付加的な組織として、脳、および深部体温を制御する脳の領域、例えば視床下部を含む。
【0025】
TRPファミリーの中で、TRPM2およびTRPM7は、電気生理学的に特徴付けられており、それらの長いC末端ドメインに関連する酵素活性がチャネルの開放を制御すると考えられている二機能性タンパク質として、振る舞うことが示された。具体的にはTRPM2は、アデノシン−5’−ジホスホリボース(ADPR)ピロホスファターゼ活性に関連するNudixモチーフを含有し、細胞質のADPRおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)によりチャネルが開閉される(Perraud et al., Nature 411:595-9 (2001); Sano et al., Science 293:1327-30 (2001))。TRPM7は、チャネルの活性に必要であるプロテインキナーゼドメインを含有する(Runnels et al., Science 291:1043-7 (2001))。反対にTRPM8は有意により短いC末端領域を有し、チャネルの制御に関連すると思われるいかなる公知の酵素ドメインも含有していない。
【0026】
TRPM8は、特に害のない涼冷範囲(例えば15から28℃)のすべて、および有害な寒冷範囲の一部(例えば8から15℃)を包括的に含む温度に対する感受性のある、チャネルタンパク質をコードする。さらにTRPM8は、例えばこのチャネルがin vivoでその感受性の範囲を拡大する様式で修飾または調節されると、非常に寒冷の範囲(<8℃)の温度で、神経線維の脱分極に寄与すると思われることが示唆された。事実、TRPチャネルファミリーのVR1および数種のその他のメンバーは、ホスホリパーゼC(PLC)とカップルする受容体により制御される。特にVR1に関する活性化温度閾値は、PLCシグナル伝達系を活性化する(例えばブラジキニンおよび神経成長因子)、またはチャネルを直接調節する(例えばプロトンおよび脂質)、そのいずれかの炎症性物質により、より低い温度に顕著にシフトさせ得る(Caterina & Julius, Annu. Rev. Neurosci. 24:487-517 (2001); Chuang et al., Nature 411:957-62 (2001))。
【0027】
皮膚または粘膜に塗布した場合、メントールは冷却感覚をもたらし、呼吸反射を阻害し、そして高用量では局所的血管拡張に伴い、ピリッとさせるまたはヒリヒリさせる効果を起こす(Eccles, J. Pharm. Pharmacol. 46:618-30 (1994); Eccles, Appetite 34:29-35 (2000))。これらの生理学的作用のすべてではないとしてもほとんどは、これら組織内の感覚神経末端の興奮により説明することができるが、TRPM8受容体はそれ以外にもまた、冷却化合物または寒冷刺激によるこれらまたはそれ以外の効果に寄与していると思われる。
【0028】
上で考察したように本発明は、本明細書で提供した修飾ヒトTRPM8核酸配列、ならびにげっ歯類TRPM8を用いて、TRPM8核酸およびタンパク質のモジュレーター、例えば活性化物質、阻害物質、刺激物質、エンハンサー、等に関するスクリーニングの方法を提供する。そのようなモジュレーターは、例えばTRPM8の転写、翻訳、mRNA、もしくはタンパク質の安定性を調節することにより;TRPM8と原形質膜もしくはその他の分子との相互作用を変化させることにより;またはTRPM8タンパク質活性に影響を及ぼすことにより、TRPM8活性に影響を及ぼすことができる。化合物は、TRPM8ポリペプチドまたはそのフラグメントに結合する、および/またはその活性を調節することができる化合物を同定するため、例えばハイスループットスクリーニング(HTS)を使用してスクリーニングする。本発明において、TRPM8タンパク質はリコンビナント的に細胞、例えばヒト細胞内で発現させ、そしてイオンチャネル機能のいずれかの測定、例えば膜電位の測定または細胞内カルシウムレベルの変化の測定を使用することにより、TRPM8の調節についてアッセイする。イオン、例えばカチオンのチャネル機能をアッセイする方法として、例えばパッチクランプ法、二電極ボルテージクランプ法、全細胞電流の測定、およびCa2+感受性蛍光色素、例えばFura2、Fluo3もしくはFluo4を使用する蛍光画像解析技術、およびイオン流束アッセイ、例えば放射標識イオン流束アッセイ、またはイオン流束アッセイを含む。
【0029】
本出願において前述したように同定したTRPM8アゴニストは、いくつかの異なる目的に使用することができる。例えばTRPM8活性化物質は、食品、飲料、石鹸、医薬剤、石鹸等における香味剤または香料として含めることができる。これらの物質はまた、冷却感覚または鎮静感覚を提供するため、医薬剤中に使用することができる。また主題の化合物は、昆虫の防虫剤、またはその他の局所製剤、例えば日焼け止め、化粧品、日焼けローション、皮膚用軟膏、等において使用してもよい。また、TRPM8モジュレーターはまた、TRPM8活性に関連する疾患または状態、例えば疼痛を治療するために使用することができる。加えて本発明は、本明細書に開示したアッセイを実施するためのキットを提供する。
【0030】
定義
“寒冷知覚”または“寒冷感覚”という用語は本明細書において使用する場合、寒冷刺激を知覚するまたは応答する能力である。そのような刺激には、寒冷または涼冷温度、例えば約30℃より低い温度、および寒冷感覚を起こさせる自然発生または合成の化合物、例えばメントール(Eccles, J. Pharm. Pharmacol 46:618-630, 1994)、オイカリプトール、イシリン(Wei & Seid, J. Pharm. Pharmacol. 35:110-112, 1983)、等を含む。
【0031】
“疼痛”という用語は、刺激または神経の応答といった用語の中で記載される痛み、例えば体性痛(刺激、例えば寒冷温度またはメントールに対する正常な神経の応答)、および神経因性疼痛(しばしば明確な侵害性インプットを伴わない、傷害されたまたは変化した感覚経路の異常な応答);時間により分類される疼痛、例えば慢性疼痛および急性疼痛;その重症度の用語において分類される疼痛、例えば軽度、中等度、または重症;ならびに疾患の状態または症候群の症状または結果である疼痛、例えば炎症性疼痛、癌性疼痛、AIDSによる疼痛、関節症、片頭痛、三叉神経痛、心虚血、および糖尿病性ニューロパチー(例えば Harrison's Principles of Internal Medicine, pp. 93-98 (Wilson et al.編, 第12版 1991); Williams et al., J. of Medicinal Chem. 42:1481-1485 (1999)を参照のこと、本明細書においてそれらの全内容において参照として援用する)を含む、すべてのカテゴリーの疼痛をいう。
【0032】
“体性”痛は、上に記載したように、刺激、しばしば侵害性刺激、例えば傷害または病気、例えば風邪、発熱、外傷、火傷、感染、炎症、または癌のような疾患の過程に対する正常な神経の応答をいい、表皮痛(例えば皮膚、筋肉または関節に由来)および内臓痛(例えば臓器由来)の双方を含む。
【0033】
“神経因性”疼痛は、上に記載したように、末梢および/または中枢感覚経路における傷害または慢性的変化に起因する疼痛をいい、その場合この疼痛はしばしば明確な侵害性インプットを伴わずに起こるまたは持続する。
【0034】
“カチオンチャネル”は、細胞膜を通してのカチオンの流れを制御する多様なタンパク質群である。特定のカチオンを輸送するための特異的なカチオンチャネルの能力は、典型的にはカチオンの原子価、ならびに特定のカチオンに関する所定のチャネルの特異性により変化する。
【0035】
“ホモマーチャネル”は、同一のアルファサブユニットから成るカチオンチャネルをいうのに対して、“ヘテロマーチャネル”は、2つまたはそれより多くの異なるタイプのアルファサブユニットから成るカチオンチャネルをいう。ホモマーチャネルおよびヘテロマーチャネルの双方とも、補助的なベータサブユニットを含むことができる。
【0036】
“ベータサブユニット”は、(複数の)アルファサブユニットから成るカチオンチャネルの補助的サブユニットであるポリペプチドモノマーである;しかしながらベータサブユニット単独ではチャネルを形成することはできない(例えば米国特許第5,776,734号を参照のこと)。ベータサブユニットは、例えばアルファサブユニットが細胞表面に到達する手助けをすることによりチャネルの数を増加させる、活性化キネティクスを変化させる、そしてチャネルに結合する天然のリガンドの感受性を変化させることが知られている。ベータサブユニットは、孔領域の外部にあって、孔領域を構成するアルファサブユニットと結合することができる。それらはまた、孔領域の外部開口部に寄与することができる。
【0037】
“真正の”または“野生型”または“ネイティブな”ヒトTRPM8核酸配列という用語は、配列番号:1に含有される。
“真正の”または“野生型”または“ネイティブな”ヒトTRPM8ポリペプチドは、配列番号:1に含有される核酸配列によりコードされるポリペプチドをいう。
【0038】
“修飾hTRPM8核酸配列”または“最適化hTRPM8核酸配列”という用語は、リコンビナントホスト細胞、および最も特にはヒト細胞、例えばHEK−293細胞における発現に有利である変異を導入するように、遺伝子的に操作されたhTRPM8核酸配列をいう。特定すればこれらの変異は、以下:(i)TATAボックス、(ii)chi部位、(iii)リボソームエントリー部位、(iv)ARE配列エレメント、(v)INS配列エレメント、(vi)CRS配列エレメント、および/または(vii)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去する、配列番号:1(図1)に示したような真正hTRPM8核酸配列においてサイレント変異を導入することを含む。例示した修飾TRPM8核酸配列は、601のサイレントヌクレオチド修飾を含有する。典型的には本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列は、少なくとも100のサイレント変異、より典型的には少なくとも200−400のサイレント変異、そしてさらにより典型的には少なくとも400−600のサイレント変異を包含するものとする。具体例としての適当なサイレント変異を図1に示す。さらにこの配列は、ホスト細胞の好ましいコドン、特にヒトホスト細胞の好ましいコドンを導入するように修飾してよい。また修飾hTRPM8核酸配列は、付加的に非サイレント変異、例えば保存的アミノ酸置換変異を含むように修飾してもよい、ただしそのような変異はTRPM8イオンチャネルのリガンド結合特性および機能性特性に実質的に影響を及ぼさないものとする。本発明に従ってのアッセイにおいて有用である、具体例としての修飾hTRPM8核酸配列は、配列番号:2に含有される。
【0039】
“TRPM8”タンパク質もしくはそのフラグメント、または“TRPM8”をコードする核酸またはそのフラグメントという用語は、以下:(1)TRPM8核酸によりコードされるアミノ酸配列、またはTRPM8タンパク質のアミノ酸配列、例えば配列番号:1によりコードされるタンパク質に対して、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれより多くのアミノ酸の領域にわたり、約60%より高いアミノ酸配列の同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれより高いアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有する;(2)TRPM8タンパク質のアミノ酸配列を包含する免疫原、またはその免疫原性フラグメント、および保存的に修飾されたそのバリアントに対して産生させた抗体、例えばポリクローナル抗体に特異的に結合する;(3)TRPM8タンパク質をコードする核酸配列(配列番号:1)に対応するアンチセンス鎖、および保存的に修飾されたそのバリアントに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリッドする;(4)TRPM8核酸、例えば配列番号:1、または別の公知のTRPM8核酸配列に対して、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれより多くのヌクレオチドの領域にわたり、約60%より高い配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれより高い配列同一性を有する核酸配列を有する、核酸およびポリペプチドの多型バリアント、対立遺伝子、変異体、および種間相同体をいう。ラットTRPM8に関する核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBank アクセション番号第AY072788 およびNM134371の下に登録されているが、McKemy et al., Nature 416:52-58 (2002) および配列番号:1もまた参照のこと。ヒトTRPM8に関する核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBankアクセション番号NM024080およびAY090109の下に登録されているが、Tsavaler et al., Cancer Res. 61:3760-3769, 2001; 米国特許第6,194,152号、およびWO 99/09166もまた参照のこと。マウスTRPM8に関する核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBankアクセション番号NM134252の下に登録されているが、Peier et al., Cell 108:705-715 (2002)もまた参照のこと。
【0040】
TRPM8ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、典型的には霊長類、例えばヒト;げっ歯類、例えばラット、マウス、ハムスター;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはあらゆる哺乳動物を含むがこれに限定されない哺乳動物に由来する。本発明の核酸およびタンパク質は、自然発生またはリコンビナントの分子の双方を含む。TRPM8タンパク質は典型的にはカルシウムイオンチャネル活性を有する;すなわちそれらはカルシウムに対して透過性である。
【0041】
“機能的効果を決定する”または“細胞における効果を決定する”により、TRPM8ポリペプチドの影響下で間接的または直接的に存在するパラメータを増大または減少させる化合物の効果、例えば機能的、物理的、フェノタイプ、および化学的な効果をアッセイすることを意味する。そのような機能的効果として、イオン流束、膜電位、電流振幅、電位による開閉制御における変化、ならびにその他の生物学的効果、例えばTRPM8の遺伝子発現、またはあらゆるマーカー遺伝子、等における変化、を含むがこれに限定されない。イオン流束は、チャネルを通過するあらゆるイオン、例えばカルシウム、およびその類似体、例えば放射性同位体を含むことができる。そのような機能的効果は、当業者に公知のあらゆる手段、例えば電位感受性色素を用いてのパッチクランプ法により、またはパラメータ、例えば分光法の特徴(例えば蛍光、吸光度、屈折率)、水力学(例えば形)、クロマトグラフィー、もしくは溶解度の特性における変化を測定することにより、測定することができる。
【0042】
TRPM8ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の“阻害物質”、“活性化物質”、および“モジュレーター”は、TRPM8ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のin vitro およびin vivoアッセイにおいて使用することで同定される、活性化分子、阻害分子、または調節分子をいうために使用する。阻害物質は、例えば結合して、部分的にまたは完全にTRPM8タンパク質の活性を遮断する、低減する、妨げる、活性化を遅延させる、不活性化する、脱感作させる、または活性または発現をダウンレギュレートする化合物、例えばアンタゴニストである。“活性化物質”は、TRPM8タンパク質の活性を増大する、開く、活性化する、促進する、活性化を高める、感作する、作動する、またはアップレギュレートする化合物である。阻害物質、活性化物質、またはモジュレーターはまた、TRPM8タンパク質の遺伝的に修飾されたバージョン、例えば変化した活性を伴うバージョン、ならびに自然発生および合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、ペプチド、環状ペプチド、核酸、抗体、アンチセンス分子、siRNA、リボザイム、有機低分子、等を含む。阻害物質および活性化物質に関するそのようなアッセイは、上に記載したように、例えばin vitroで細胞、細胞抽出物、または細胞膜においてTRPM8タンパク質を発現させること、推定モジュレーター化合物を投与すること、そしてその後活性における機能的効果を決定することを含む。
【0043】
潜在的な活性化物質、阻害物質またはモジュレーターで処理したTRPM8タンパク質を包含するサンプルまたはアッセイを、阻害物質、活性化物質、またはモジュレーターを用いないコントロールサンプルと比較して、活性化または移入(migration)の調節の程度を検討する。コントロールサンプル(阻害物質で未処理)を、100%の相対的タンパク質活性値とする。TRPM8の阻害は、コントロールと比較しての活性の値が約80%、好ましくは50%、より好ましくは25−0%である場合に達成される。TRPM8の活性化は、コントロール(活性化物質で未処理)と比較しての活性化の値が110%、より好ましくは150%、より好ましくは200−500%(すなわちコントロールと比較して2から5倍高い)、より好ましくは1000−3000%高い場合に達成される。
【0044】
“検査化合物”または“薬剤候補物質”または“モジュレーター”または語法的 (grammatical)均等物は、本明細書において使用する場合、寒冷感覚を調節する能力について検査すべき、自然発生または合成のあらゆる分子、例えばタンパク質、オリゴペプチド(例えば約5から約25アミノ酸長、好ましくは約10から約20または約12から約18アミノ酸長、好ましくは12、15、または18アミノ酸長)、有機低分子、多糖類、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、siRNA、オリゴヌクレオチド、リボザイム、等を説明する。検査化合物は、検査化合物のライブラリー、例えば十分な範囲の多様性を提供するコンビナトリアルライブラリーまたは無作為化ライブラリーの形であることができる。検査化合物は、所望により融合パートナー、例えばターゲティング化合物、レスキュー化合物、二量体化化合物、安定化化合物、addressable化合物、およびその他の機能的部分と連結する。従来的には、有用な特性を有する新規化学的存在は、いくつかの所望の特性または活性、例えば阻害活性を有する検査化合物(“リード化合物”と呼ばれる)を同定し、そのリード化合物のバリアントを作成し、そしてそれらバリアント化合物の特性および活性を評価することにより、作成される。しばしばハイスループットスクリーニング(HTS)法がそのような分析のため使用される。
【0045】
“有機低分子”は、約50ダルトンより大きく約2500ダルトンより小さい、好ましくは約2000ダルトンより小さい、好ましくは約100から約1000ダルトンの間の、より好ましくは約200から約500ダルトンの間の分子量を有する、自然発生または合成のいずれかの有機分子をいう。
【0046】
“生物学的サンプル”は、生検および剖検のサンプルのような組織の切片、組織学的目的で採取された凍結切片を含む。そのようなサンプルは、血液、痰、組織、培養細胞、例えば初代培養、外植片、および形質転換された細胞、便、尿、等を含む。生物学的サンプルは典型的には、真核細胞の有機体、最も好ましくは哺乳動物、例えば霊長類、例えばチンパンジーもしくはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;げっ歯類、例えばモルモット、ラット、マウス;ウサギ;あるいは鳥;爬虫類;または魚類より得る。
【0047】
2つまたはそれより多くの核酸配列またはポリペプチド配列のコンテクストにおける、“同一の”または“同一性”のパーセントという用語は、以下に記載するデフォルトパラメータによるBLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アラインメントおよび目視検査により測定(例えばNCBIウェブサイト、等を参照のこと)して測定した時、比較ウィンドウまたは所望の領域にわたり最大の対応で比較および整列化させた場合に、等しい、または特定のパーセントの等しいアミノ酸残基またはヌクレオチド(すなわち特定の領域(例えば配列番号:1のヌクレオチド配列)にわたり、約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い同一性)を有する、2つまたはそれより多くの配列または部分配列をいう。そのような配列を、その場合 “実質的に同一”であるという。この定義はまた、検査配列の相補鎖に対していっても、または適用してもよい。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものを含む。以下に記載するように、好ましいアルゴリズムはギャップ等を説明することができる。好ましくは同一性は、少なくとも約25アミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたり、より好ましくは50−100アミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたり存在する。
【0048】
配列比較に関して、典型的には1つの配列が基準配列として作用し、それに対して検査配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、検査配列および基準配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分座標をデザインし、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータをデザインする。好ましくはプログラムのデフォルトパラメータを使用することができ、または代わりのパラメータをデザインすることもできる。次に配列比較アルゴリズムが、そのプログラムのパラメータに基づいて、基準配列と比較しての検査配列に関する配列同一性のパーセントを算出する。
【0049】
“比較ウィンドウ”は本明細書において使用する場合、ある配列と基準配列の2つの配列を最適に整列化した後、その配列を同数の近接する位置の基準配列と比較してよい、20から600、一般に約50から約200、より一般には約100から約150から成る群より選択される、一定数の近接する位置のいずれか1つのセグメントに対して参照することを含む。比較のための配列の最適アラインメントの方法は、当該技術分野において周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman fk Wunsch, J. MoI. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci.USA 85:2444 (1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズム(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.におけるGAP、BESTPIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューターでの実行、または手動アラインメントおよび目視検査(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel etal., 編1995 増刊))により実施することができる。
【0050】
配列同一性のパーセントおよび配列の類似性を決定するために適するアルゴリズムの好ましい例は、BLASTおよびBLAST2.0のアルゴリズムであり、これらは各々Altschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389-3402 (1977) および Altschul et al., J. MoI. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST2.0を、本明細書に記載したパラメータを用いて使用し、本発明の核酸およびタンパク質に関する配列同一性のパーセントを決定する。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初にデータベース配列中の同じ長さのワードと整列化した時に、ある正の値の閾値スコアTとマッチする、または満足させるかのいずれかである、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することにより、高いスコアリング配列ペア(high scoring sequence pair HSP)を同定することを伴う。Tは、近隣ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold (Altschul et al.,上記記載))という。これらの最初の近隣ワードのヒットが、それらを含有するより長いHSPの検索を開始するための種として作用する。このワードのヒットは、累積アラインメントスコアを増加することのできる限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアはヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(マッチする残基のペアに関するリワード(reward)スコア;常に>0)およびN(マッチしない残基に関するペナルティースコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列に関しては、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを算出する。各方向でのワードのヒットの延長は、以下の場合:累積アラインメントスコアがその到達した最大値から数量Xまで低下した時;累積スコアが1つまたはそれより多くの負のスコアリング残基のアラインメントの累積によってゼロもしくはそれ以下になった時;またはいずれかの配列の末端に達した時、に停止する。BLSTアルゴリズムパラメータであるW、T、およびXが、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関する)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および双方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関してBLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10を使用し、そしてBLOSUM62スコアリング・マトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと)は、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および双方の鎖の比較を使用する。
【0051】
“核酸”は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびそのポリマー、ならびにその相補鎖をいう。この用語は、合成、自然発生、および自然発生しない、基準核酸と類似の結合特性を有する、そして基準ヌクレオチドと類似の様式で代謝される、公知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは連結基(linkage)を含有する核酸を包括的に含む。そのような類似体の例として、非限定的にホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)を含む。
【0052】
他に指摘していなければ、特定の核酸配列はまた暗黙のうちに、その保存的に修飾されたバリアント(例えば縮重コドンの置換)および相補配列、ならびに明確に表示された配列を包括的に含む。具体的には縮重コドンの置換は、1つもしくはそれより多くの選択された(またはすべての)コドンの第3の位置を、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換する配列を作成することにより達成してよい(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Bibl. Chem. 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., MoI. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換的に使用する。
【0053】
特定の核酸配列はまた、暗黙のうちに“スプライスバリアント”を包括的に含む。同様に核酸によりコードされた特定のタンパク質は、暗黙のうちに、その核酸のスプライスバリアントによりコードされるあらゆるタンパク質を包括的に含む。“スプライスバリアント”はその名称の示唆するように、遺伝子の選択的スプライシングの産生物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(代替え)核酸スプライス産生物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされる可能性がある。スプライスバリアントの産生メカニズムは多様であるが、エキソンの選択的スプライシングを含む。転写の読み過ごしにより同じ核酸に由来する代替えポリペプチドもまた、この定義により包括的に含まれる。スプライス産生物のリコンビナントの形を含む、スプライシング反応のあらゆる産生物が、この定義に含まれる。カリウムチャネルのスプライスバリアントの例は、Leicher, et al., J. Biol. Chem. 273(52):35095-35101 (1998)に考察されている。
【0054】
“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”という用語は、アミノ酸残基のポリマーをいうため、本明細書において互換的に使用する。この用語は、1つまたはそれより多くのアミノ酸残基が、対応する自然発生のアミノ酸の人工的な化学的擬態であるアミノ酸ポリマー、ならびに自然発生のアミノ酸ポリマーおよび自然発生しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0055】
“アミノ酸”という用語は、自然発生および合成のアミノ酸、ならびに自然発生のアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸擬態をいう。自然発生のアミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるもの、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、●−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合する炭素、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物をいう。そのような類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸擬態は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、自然発生のアミノ酸と類似の様式で機能する化学的化合物をいう。
【0056】
アミノ酸は本明細書において、それらの一般に知られている3文字表記により、またはthe IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている1文字表記により記述してよい。同様にヌクレオチドは、それらの一般的に受け入れられている1文字のコードにより記述してよい。
【0057】
“保存的に修飾されたバリアント”は、アミノ酸配列および核酸配列の双方に適用する。特定の核酸配列に関しては、保存的に修飾されたバリアントは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、または核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合には、本質的に同一の配列をいう。遺伝的コードの縮重のため、機能的に同一な多数の核酸があらゆる所定のタンパク質をコードする。例えばコドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがってコドンによりアラニンが特定されるすべての位置で、コードされたポリペプチドを変えることなく、そのコドンを、記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸のバリエーションは、保存的に修飾されたバリエーションの1種である“サイレントバリエーション”である。本明細書においてポリペプチドをコードする各核酸配列はまた、その核酸の各潜在的サイレントバリエーションについても述べている。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を得ることができることを認識するだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションは、記載された各配列において、発現産生物に関しては顕在化していないが、実際のプローブ配列に関しては異なる。
【0058】
アミノ酸配列に対する場合、 コードされた配列中の1つのアミノ酸またはアミノ酸のわずかなパーセントを変更、付加、または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失、または付加が、変更が結果として化学的に類似するアミノ酸による置換となる“保存的に修飾されたバリアント”であることを、当業者は認識するだろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該技術において周知である。そのような保存的に修飾されたバリアントは、多型バリアント、種間相同体、および本発明の対立遺伝子に加えられ、除外されない。
【0059】
以下の8つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:すなわち1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えばCreighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0060】
高分子構造、例えばポリペプチドの構造は、多様なレベルの組織化の用語で記載することができる。この組織化の一般的考察に関しては、例えばAlberts et al., Molecular Biology of the Cell (第3版, 1994)およびCantor and Schimmel, Biophysical Chemistry Part I: The Conformation of Biological Macromolecules (1980)を参照のこと。“一次構造”は、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。“二次構造”は、ポリペプチド内の局所的に整えられた3次元構造をいう。これらの組織化は一般にドメイン、例えば膜貫通ドメイン、孔ドメイン、および細胞質側末端ドメインとして知られている。ドメインは、ポリペプチドのコンパクトなユニットを形成するポリペプチドの一部であり、典型的には15から350アミノ酸長である。具体例としてのドメインに、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインを含む。典型的なドメインは、より小さな組織化のセクション、例えばベータ・シートおよびアルファ・へリックスのストレッチから構成される。“三次構造”は、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。“四次構造”は、独立した三次ユニットの非共有的会合により形成される三次元構造をいう。異方性という用語はまたエネルギー用語としても知られている。
【0061】
“標識”または“検出可能部分”は、分光法、光化学、生化学、免疫化学、化学、またはその他の物理的な手段により検出可能な組成である。例えば有用な標識として、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えばELISAにおいて一般に使用されるようなもの)、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはハプテン、そして例えばペプチド中に放射標識を組み込むことにより検出可能とすることのできる、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用することのできるタンパク質を含む。
【0062】
“リコンビナント”という用語は、例えば細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用する場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入、またはネイティブな核酸もしくはタンパク質の変化により修飾されたこと、あるいは細胞がそのように修飾された細胞に由来することを指摘する。したがって例えばリコンビナント細胞は、細胞のネイティブな(非リコンビナントの)形の範囲内には見出されない遺伝子を発現する、またはそうでなければ異常に発現される、低発現される、もしくは全く発現されないネイティブな遺伝子を発現する。
【0063】
“異種の”という用語は、核酸の部分に関して使用する場合、その核酸が、自然界では互いに同一の類縁関係において見出されない、2つまたはそれより多くの部分配列を包含することを指摘する。例えば、新たな機能的核酸を作製するために配列された無関係の遺伝子由来の2つまたはそれより多くの配列、例えばある原料由来のプロモーターおよび別の原料由来のコード領域を有する核酸が、典型的には組換えにより生成される。同様に異種タンパク質は、そのタンパク質が自然界では互いに同一の類縁関係において見出されない2つまたはそれより多くの部分配列を包含する(例えば融合タンパク質)ことを指摘する。
【0064】
“ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件”という語句は、プローブが、典型的には核酸の複雑な混合物中でその標的配列にハイブリダイズし、他の配列にはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる環境では異なることになる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションのための伸長のガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry およびMolecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見出せる。一般にストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度、pHで、特異的配列の融解温度(Tm)より約5−10℃低くなるように選択される。Tmは、(定義されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で)標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(標的配列が過剰に存在する場合に、Tmで、50%のプローブが平衡状態で占有される)温度である。ストリンジェントな条件はまた、不安定化物質、例えばホルムアミドの添加により達成してもよい。選択的または特異的なハイブリダイゼーションに関して、ポジティブなシグナルは、バックグラウンドのハイブリダイゼーションの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドの10倍である。具体例としてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下のとおりとすることができる:50% ホルムアミド、5X SSC、および1% SDS、42℃でのインキュベーション、または5X SSC、1% SDS、65℃でのインキュベーションおよび0.2倍量のSSC、および0.1% SDS 65℃での洗浄。
【0065】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸であっても、それらのコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、実質的に同一である。このことは、例えば遺伝子コードにより許容される最大コドン縮重を用いて核酸のコピーが作成される場合に起こる。そのような場合核酸は、典型的に中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。具体例としての“中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”は、40% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSのバッファー中で、37℃でのハイブリダイゼーション、および1倍量のSSC中、45℃での洗浄を含む。ポジティブなハイブリダイゼーションは、少なくともバックグラウンドの2倍である。当業者は、これに代わるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を利用して、類似のストリンジェンシーの条件を提供することができることを、容易に認識するだろう。ハイブリダイゼーションのパラメータを決定するためのさらなるガイドラインは、多数の参考文献、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, et al.編、に提供されている。
【0066】
PCRに関して、約36℃の温度が、低ストリンジェンシーの増幅に関しては典型的であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに依存して約32℃および48℃の間と多様であってよい。高ストリンジェンシーのPCR増幅に関しては、約62℃の温度が典型的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度はプライマーの長さおよび特異性に依存して約50°から65℃の範囲とすることができる。高ストリンジェンシーおよび低ストリンジェンシーの双方の増幅に関する典型的なサイクルの条件は、30秒−2分間の90℃−95℃の変性期、30秒−2分間持続するアニーリング期、および1−2分間の約72℃の伸張期を含む。低ストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシーの増幅反応に関するプロトコールおよびガイドラインは、例えばInnis et al. (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y.に提供されている。
【0067】
“抗体”は、抗原に特異的に結合し、認識する、免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントに由来するフレームワーク領域を包含するポリペプチドをいう。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン、およびミューの定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはエプシロンとして分類され、これらを各々順に免疫グロブリンクラスのIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEと定義する。典型的には抗体の抗原結合領域が、結合の特異性およびアフィニティーにおいて最も重大な意味を持つことになる。
【0068】
抗体という用語は、本明細書において使用する場合、抗体全体の修飾により産生される抗体フラグメント、またはリコンビナントDNA方法論(例えば一本鎖Fv)、キメラ、ヒト化を用いて新たに合成されるもの、またはファージディスプレーライブラリーを用いて同定されるもの(例えばMcCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)のいずれかをまた含む。抗体、例えばリコンビナント抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の調製に関して、当該技術において公知の多くの技術を使用することができる(例えばKohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985)において、pp. 77-96; Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)および Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1999);ならびに Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (第2版 1986)を参照のこと。)
抗体に“特異的に(もしくは選択的に)結合する”、または“〜との特異的(もしくは選択的)免疫反応性のある”という語句は、タンパク質またはペプチドをいう場合、しばしばタンパク質およびその他の生物体のヘテロな母集団において、そのタンパク質の存在が決定力のある結合反応をいう。したがってデザインされた免疫アッセイ条件下で、特定された抗体は特定のタンパク質と、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10から100倍より多く結合する。そのような条件下での抗体との特異的な結合は、特定のタンパク質に対するその特異性に関して選択される抗体を必要とする。例えば、配列番号:1、多型バリアント、対立遺伝子、オルソログ、および保存的に修飾されたバリアント、もしくはスプライスバリアント、またはその部分、によりコードされたようなTRPM8タンパク質に対して作製されたポリクローナル抗体を選択して、TRPM8タンパク質との特異的免疫反応性があり、他のタンパク質とは反応しないポリクローナル抗体のみを得ることができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を除外することにより達成してよい。多様な免疫アッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質との特異的免疫反応性のある抗体を選択してよい。例えば固相ELISA免疫アッセイをルーチン的に使用して、タンパク質との特異的な免疫反応性のある抗体を選択する(特異的免疫反応性を決定するために使用することのできる免疫アッセイフォーマットおよび条件の説明に関して、例えばHarlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照のこと)。
【0069】
“治療上有効な用量”により、本明細書においては投与されて効果を提供する用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存し、当業者により公知の技術を用いて確認できるだろう(例えばLieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (1-3巻, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);および Pickar, Dosage Calculations (1999)を参照のこと)。
【0070】
TRPM8のリコンビナント発現
クローン化遺伝子、例えばTRPM8をコードするcDNAの高レベルの発現を得るため、転写を指示する強いプロモーター、転写/翻訳のターミネーター、そしてタンパク質をコードする核酸に関する場合には、翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含有する発現ベクター中に、典型的にはTRPM8をサブクローニングする。適切な真核生物および原核生物のプロモーターは、当該技術において周知であり、例えばSambrook et al.および Ausubel et al.、上記記載、に記載されている。例えばTRPM8タンパク質を発現するための細菌発現系は、例えば大腸菌、バチルス菌、およびサルモネラ菌において利用可能である(Palva et al., Gene 22:229-235 (1983); Mosbach et al., Nature 302:543-545 (1983))。そのような発現系に関するキットは市販にて入手可能である。哺乳類細胞、酵母、および昆虫細胞に関する真核生物の発現系は、当該技術において周知であり、また市販により入手することもできる。例えばレトロウイルス発現系は、本発明において使用してよい。以下に記載するように、主題の修飾hTRPM8は、好ましくはヒト細胞、例えばハイスループットスクリーニング用に広く使用されているHEK−293細胞において発現させる。
【0071】
異種核酸の発現を指示するために使用されるプロモーターの選択は、特定の適用に依存する。プロモーターは好ましくは、その自然の設定における転写開始部位からの距離とほぼ同じ、異種の転写開始部位からの距離に位置させる。しかしながら当該技術において公知のように、この距離の多少の変化は、プロモーターの機能を喪失することなく適応させることができる。
【0072】
プロモーターに加えて、発現ベクターは典型的には、転写ユニット、またはホスト細胞におけるTRPM8をコードする核酸の発現に必要な、すべての付加的なエレメントを含有する発現カセット、を含有する。したがって典型的な発現カセットは、TRPM8をコードする核酸配列、および転写物の効率的なポリアデニル化に必要なシグナルに実施可能なように連結されたプロモーター、リボソーム結合部位、および翻訳終結部位を含有する。カセットの付加的なエレメントとして、エンハンサー、およびゲノムDNAを構造遺伝子として使用する場合には、機能的なスプライスドナー部位およびアクセプター部位を伴うイントロンを含んでよい。先に記したように、例示した修飾hTRPM8は、推定上の潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位を除去するように修飾されている。
【0073】
プロモーター配列に加えて、発現カセットはまた、効率的な終結を提供するため、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含有しなければならない。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得てもよいし、異なる遺伝子から得てもよい。
【0074】
遺伝情報を細胞内に輸送するために使用される特定の発現ベクターには、特に重大な意味はない。真核細胞または原核細胞における発現に使用される従来のベクターのいずれかを使用してよい。標準的な細菌の発現ベクターは、プラスミド、例えばpBR322を基本とするプラスミド、pSKF、pET23D、ならびに融合発現系、例えばMBP、GST、およびLacZを含む。エピトープタグ、例えばc−mycもまた、簡便な単離法を提供するようにリコンビナントタンパク質に加えることができる。配列タグを、核酸のレスキュー(rescue)のため発現カセット中に含めてよい。マーカー、例えば蛍光タンパク質である緑色または赤色の蛍光タンパク質、β−gal、CAT、等を、ベクターの形質導入に関するマーカーとしてベクター中に含めることができる。
【0075】
真核ウイルス由来の制御エレメントを含有する発現ベクターは、典型的には真核生物発現ベクター、例えばSV40ベクター、パピローマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびエプスタイン・バーウイルス由来ベクターにおいて使用される。その他の具体例としての真核生物ベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、そしてCMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、げっ歯類乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、polyhedrin(多核体)プロモーター、または真核細胞における発現に有効であることが示されたその他のプロモーターの指示下で、タンパク質の発現を可能にするあらゆるその他のベクターを含む。
【0076】
真核生物ベクターからのタンパク質の発現はまた、誘導性プロモーターを用いて制御することができる。誘導性プロモーターを用いる場合、プロモーター内にこれらの物質に関する応答エレメントを組み込むことにより、発現レベルが、誘導物質、例えばテトラサイクリンまたはエクジソンの濃度に結びつけられる。一般に高レベルの発現は、誘導物質の存在下でのみ誘導性プロモーターより得られる;基底発現レベルを最小とする。
【0077】
本発明で使用するベクターは、調節可能なプロモーター、例えばテトラサイクリン制御系(tet-regulated system)およびRU−486系(例えばGossen & Bujard, Proc. Natl Acad. Sci USA 89:5547 (1992); Oligino et al., Gene Ther. 5:491-496 (1998);Wang et al., Gene Ther. 4:432-441 (1997); Neering et al., Blood 88:1147-1155 (1996);および Rendahl et al., Nat. Biotechnol. 16:757-761 (1998)を参照のこと)を含んでよい。これらは、候補の標的核酸の発現に低分子のコントロールを与える。この有益な特徴を使用して、所望の表現型が、体細胞変異ではなく形質移入されたcDNAにより引き起こされたことを決定することができる。
【0078】
いくつかの発現系は、遺伝子増幅を提供するマーカー、例えばチミジンキナーゼおよびジヒドロ葉酸還元酵素を有する。あるいは遺伝子増幅を伴わない高収量発現系、例えばpolyhedrinプロモーターまたは他の強いバキュロウイルスプロモーターの指示下で、TRPM8をコードする配列を有するバキュロウイルスベクターを、昆虫細胞において使用することもまた、適切である。
【0079】
典型的に発現ベクター中に含まれるエレメントはまた、特定のホスト細胞において機能するレプリコンを含む。大腸菌の場合、ベクターは、リコンビナントプラスミドを内包する細菌の選択を可能にするための抗生物質耐性をコードする遺伝子、および真核生物の配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域における独特の制限部位、を含有してよい。選択される特定の抗生物質耐性遺伝子には重大な意味はなく、当該技術における公知の多くの耐性遺伝子のいずれでも適する。必要であれば、それら配列が真核細胞におけるDNAの複製を妨げないように、原核生物の配列を好ましくは選択する。
【0080】
標準的な形質移入の方法は、TRPM8タンパク質を大量に発現する細菌株、哺乳類細胞株、酵母菌株、または昆虫細胞株を使用してよく、その後このタンパク質を標準的な技術を用いて精製する(例えばGolley et al., J. Biol. Chem. 264:17619-17622 (1989); Guide to Protein Purification, in Methods in Enzymology, 182 巻 (Deutscher編, 1990)を参照のこと)。真核細胞および原核細胞の形質転換は、標準的な技術に従って行う(例えばMorrison, J. Bact. 132:349-351 (1977); Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101:347-362 (Wu et al.編, 1983)を参照のこと)。外来核酸配列をホスト細胞に導入するための周知の方法のいずれかを使用してよい。これらには、リン酸カルシウムによる形質移入、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、微粒子銃、リポソーム、マイクロインジェクション、プラズマベクター、ウイルスベクター、そしてクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、またはその他の外来遺伝子材料を、ホスト細胞内に導入するためのその他の周知の方法のいずれか、を含む(例えばSambrook et al.、上記記載、を参照のこと)。使用する特定の遺伝子操作法で、TRPM8を発現することのできるホスト細胞内に少なくとも1つの遺伝子をうまく導入できることだけが、必要であるに過ぎない。
【0081】
発現ベクターを細胞内に導入した後、形質移入された細胞をTRPM8発現に好ましい条件下で培養する。事例によってはそのようなTRPM8ポリペプチドを、以下に明らかにする標準的な技術を用いて培養液から回収してもよい。
【0082】
TRPM8タンパク質のモジュレーターに関するアッセイ
TRPM8タンパク質の調節は、上に記載したような細胞に基づいたモデルを含む、多様なin vitro およびin vivoのアッセイを用いて評価することができる。そのようなアッセイを使用して、TRPM8タンパク質またはそのフラグメントの阻害物質および活性化物質を、そして結果的に寒冷感覚の阻害物質および活性化物質について検査することができる。TRPM8タンパク質のそのようなモジュレーターは、涼冷という知覚を創出するため、例えば医薬剤におけるもしくは調味としての使用、または寒冷知覚に関する障害の治療のために有用である。TRPM8タンパク質のモジュレーターは、リコンビナントまたは自然発生のTRPM8のいずれかを使用して検査する。
【0083】
上に記したように、好ましくは主題の細胞に基づいたアッセイにおいて使用するTRPM8タンパク質は、特定の細胞、好ましくはヒト細胞において発現を最適化するように操作されたhTRPM8核酸配列によりコードされる、そしてより好ましくは配列番号:2に含有される修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされる、またはラットTRPM8ポリペプチドであるものとする。
【0084】
リコンビナントまたは自然発生のいずれかの、TRPM8タンパク質の寒冷感覚表現型、またはTRPM8タンパク質を発現するさいぼうの測定は、本明細書に記載したようなin vitro 、in vivo 、およびex vivoの多様なアッセイを用いて行うことができる。TRPM8を調節することのできる分子を同定するため、細胞内のTRPM8活性における多様な候補モジュレーターの効果を検出するためのアッセイを行う。
【0085】
TRPM8タンパク質のチャネル活性は、パッチクランプ法、全細胞電流の測定、放射標識イオン流束アッセイ、または原子吸光分光法とカップルさせた流束アッセイを含むイオン流束の変化を測定するための様々なアッセイ、および電位感受性色素、またはカルシウムもしくはナトリウム感受性色素を用いての蛍光アッセイを使用してアッセイすることができる(例えばVestergarrd-Bogind et al., J. Membrane Biol. 88:67-75 (1988); Daniel et al., J. Pharmacol. Meth. 25:185-193 (1991); Hoevinsky et al., J. Membrane Biol. 137:59-70 (1994)を参照のこと)。例えばTRPM8タンパク質またはその相同体をコードする核酸は、アフリカツメガエル卵母細胞内に注入する、または哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞内に形質移入することができる。次にチャネル活性を、膜分極における変化、すなわち膜電位における変化を測定することにより評価することができる。
【0086】
電気生理学的測定を得る好ましい手段は、パッチクランプ法、例えば“細胞接着”型、“インサイドアウト”型、および“全細胞”型(例えばAckerman et al., New Engl. J. Med. 336:1575-1595, 1997を参照のこと)を用いて電流を測定することによる。全細胞電流は、標準的な方法論、例えばHamil et al., Pflugers. Archiv. 391:185 (1081)により記載された方法を用いて決定することができる。
【0087】
チャネル活性はまた便利なことに、細胞内Ca2+の変化を測定することにより簡便に評価できる。そのような方法を本明細書において例示する。例えば、カルシウム流速は、45Ca2+の取り込みの評価により、または蛍光色素、例えばFura−2を用いることにより、測定することができる。典型的なマイクロ蛍光定量アッセイにおいて、色素、例えばFura−2(この色素は1つのCa2+イオンが結合すると蛍光の変化を起こす)は、TRPM8発現細胞の細胞質ゾル内に負荷される。TRPM8アゴニストに暴露されると、細胞質ゾルのカルシウムの増加が、カルシウムが結合された時に起こるFura−2の蛍光の変化により反映される。
【0088】
TRPM8ポリペプチドの活性はまた、これらの好ましい方法に加えて、機能的、化学的、および物理的効果を決定するための多様なその他のin vitro およびin vivoのアッセイ、例えばペプチド、有機低分子、および脂質を含む他の分子とのTRPM8の結合を測定すること;TRPM8タンパク質および/もしくはRNAのレベルを測定すること、またはTRPM8ポリペプチドのその他の側面、例えば転写レベル、もしくはTRPM8活性に影響を及ぼす生理学的変化を測定すること、を用いて評価することもできる。未処置の細胞または動物を用いて、機能的意義を決定する場合、様々な効果、例えば細胞の成長の変化、またはpH変化、または細胞内の二次的メッセンジャー、例えばIP3、cGMP、もしくはcAMP、もしくはホスホリパーゼCシグナル伝達経路の成分もしくは制御物質の変化、を測定することもできる。そのようなアッセイを使用して、KCNBタンパク質の活性物質および阻害物質の双方を検査することができる。そのように同定されたモジュレーターは、例えば多くの診断および治療での適用として有用である。
【0089】
in vitroアッセイ
TRPM8を調節する活性を有する化合物を同定するためのアッセイは、好ましくはin vitroで行う。本明細書におけるアッセイは、好ましくは完全長のTRPM8タンパク質またはそのバリアントを使用する。このタンパク質は所望により、異種タンパク質と融合してキメラを形成することができる。本明細書に例示するアッセイにおいて、完全長TRPM8ポリペプチドを発現する細胞を、寒冷感覚を調節する化合物を同定するために使用するハイスループットアッセイにおいて使用する。あるいは精製リコンビナントまたは自然発生のTRPM8タンパク質を、本発明のin vitroの方法に使用することもできる。精製TRPM8タンパク質またはそのフラグメントに加えて、リコンビナントまたは自然発生のTRPM8タンパク質を、細胞溶菌液または細胞膜の一部とすることができる。以下に記載するように、結合アッセイは、固体または溶液(soluble)のいずれかであることができる。好ましくは当該タンパク質、そのフラグメントまたは膜は、固体支持体に共有結合または非共有結合のいずれかにより結合させる。しばしば本発明のin vitroアッセイは、(公知の細胞外リガンド、例えばメントールを用いての)非競合的または競合的のいずれかの、リガンド結合アッセイまたはリガンドアフィニティーアッセイである。その他のin vitroアッセイとして、タンパク質に関する分光法(例えば蛍光、吸光度、屈折率)、水力学(例えば形)、クロマトグラフィー、または溶解度の特性における変化を測定することを含む。
【0090】
好ましくは、TRPM8タンパク質を潜在的なモジュレーターと接触させ、適切な時間の間インキュベーションする、ハイスループット結合アッセイを行う。以下に記載するような、有機低分子、ペプチド、抗体、およびTRPM8リガンド類似体を含む広範囲の多様なモジュレーターを使用することができる。標識したタンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度のシフト、イムノアッセイ、酵素アッセイ、例えばリン酸化アッセイ、等を含む、広範囲の多様なアッセイを使用して、TRPM8−モジュレーターの結合を同定することができる。場合によっては、候補モジュレーターの結合は、潜在的なモジュレーターの存在下で公知のリガンドの結合による妨害を測定する競合的結合アッセイの使用を通して決定する。TRPM8ファミリーに関するリガンドは公知である(例えばメントール)。モジュレーターまたは公知のリガンドのいずれかを最初に結合させた後、競合物質を加える。TRPM8タンパク質を洗浄した後、潜在的なモジュレーターまたは公知のリガンドのいずれかの結合による妨害を決定する。しばしば潜在的なモジュレーターまたは公知のリガンドのいずれかを標識する。
【0091】
加えて、ハイスループット機能的ゲノムアッセイをまた使用して、TRPM8およびそれに結合する他のタンパク質間のタンパク質相互作用を破壊する化合物を同定することにより、寒冷感覚のモジュレーターを同定することができる。そのようなアッセイは、例えば細胞表面マーカーの発現の変化、細胞内カルシウムの変化、または膜電流の変化を、細胞株または初代細胞のいずれかを用いてモニタリングすることができる。典型的には細胞をcDNAまたはランダムなペプチドライブラリー(核酸によりコードされている)と接触させる。cDNAライブラリーは、センス鎖、アンチセンス鎖、完全長、および切断されたcDNAを包含することができる。ペプチドライブラリーは核酸によりコードされる。次に、細胞の表現型におけるcDNAライブラリーまたはペプチドライブラリーの効果を、上に記載したようなアッセイを用いてモニタリングする。cDNAまたはペプチドの効果は、例えば核酸の調節可能な発現、例えばテトラサイクリンプロモーターから発現を使用して確認し、体細胞変異から識別することができる。ペプチドをコードするcDNAおよび核酸は、当業者に公知の技術を用いて、例えば配列タグを用いてレスキューすることができる。
【0092】
cDNA(例えば配列番号:2に含有される修飾DNA)によりコードされるTRPM8タンパク質と相互作用するタンパク質は、酵母ツーハイブリッドシステム、哺乳類ツーハイブリッドシステム、またはファージディスプレースクリーン、等を用いて単離することができる。そのように同定された標的をさらに、そのメンバーもまた薬剤開発の標的であるTRPM8チャネルと相互作用すると思われる付加的な成分を同定するための、これらのアッセイにおけるおとり(bait)として使用することができる(例えばFields et al., Nature 340:245 (1989); Vasavada et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:10686 (1991); Fearon et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:7958 (1992); Dang et al., MoI. Cell. Biol. 11:954 (1991); Chien et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 9578 (1991);ならびに米国特許第5,283,173号, 5,667,973号, 5,468,614号, 5,525,490号, および 5,637,463号を参照のこと)。
【0093】
細胞に基づいたin vivoアッセイ
もう1つの態様において、TRPM8タンパク質は細胞内で発現させることができるため、機能的、例えば物理的および化学的または表現型の変化をアッセイして、寒冷感覚を調節するTRPM8モジュレーターを同定する。TRPM8タンパク質を発現する細胞はまた、結合アッセイにおいて使用することができる。あらゆる適切な機能的効果を、本明細書に記載するように測定することができる。例えば膜電位の変化、細胞内カルシウムまたはナトリウムレベルの変化、およびリガンドの結合はすべて、細胞に基づいたシステムを用いて潜在的モジュレーターを同定するための適切なアッセイである。そのような細胞に基づいたアッセイに適する細胞は、初代細胞株、例えば後根神経節由来感覚ニューロン、およびTRPM8タンパク質を発現する細胞株の双方を含む。TRPM8タンパク質は、自然発生またはリコンビナントであることができる。また上に記載したように、イオンチャネル活性を有するTRPM8タンパク質のフラグメントまたはキメラを、細胞に基づいたアッセイにおいて使用することができる。例えばTRPM8タンパク質の膜貫通ドメインを、異種タンパク質、好ましくは異種のイオンチャネルタンパク質の細胞質ドメインと融合させることができる。そのようなキメラタンパク質はイオンチャネル活性を有し、本発明の細胞に基づいたアッセイにおいて使用することができるだろう。もう1つの態様において、TRPM8タンパク質のドメイン、例えば細胞外ドメインまたは細胞質ドメインを、本発明の細胞に基づいたアッセイにおいて使用する。
【0094】
もう1つの態様において、細胞のTRPM8ポリペプチドレベルは、タンパク質またはmRNAのレベルを測定することにより決定することができる。TRPM8タンパク質、またはTRPM8イオンチャネル活性化に関するタンパク質のレベルは、イムノアッセイ、例えばTRPM8ポリペプチドまたはそのフラグメントに選択的に結合する抗体を用いての、ウエスタンブロット法、ELISA、等を使用して測定する。mRNAの測定に関しては、例えばPCR、LCRを用いての増幅、またはハイブリダイゼーションアッセイ、例えばノーザンハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼプロテクション、ドットブロティングが好ましい。タンパク質またはmRNAのレベルは、本明細書に記載したように、直接的または間接的に標識された検出物質、例えば蛍光または放射活性により標識された核酸、放射活性または酵素的に標識された抗体、等を用いて検出する。
【0095】
あるいはTRPM8発現は、レポーター遺伝子システムを用いて測定することができる。そのようなシステムは、レポーター遺伝子、例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼに、実施可能なように連結されたTRPM8タンパク質プロモーターを用いることで工夫することができる。さらに対象のタンパク質は、第二のレポーター、例えば赤色または緑色の蛍光タンパク質(例えばMistili & Spector, Nature Biotechnology 15:961-964 (1997)を参照のこと)との結合を介して間接的なレポーターとして使用することができる。レポーターコンストラクトは典型的に細胞内に形質移入する。潜在的モジュレーターによる処理の後、レポーター遺伝子の転写、翻訳、または活性の量を、当業者に公知の標準的な技術に従って測定する。
【0096】
もう1つの態様において、シグナル伝達経路に関する機能的効果を測定することができる。活性化または阻害されたTRPM8は、標的酵素、二次的メッセンジャー、チャネル、およびその他のエフェクタータンパク質の特性を変化させることになる。この例には、ホスホリパーゼCおよびその他のシグナル伝達の活性化を含む。下流の結果、例えばホスホリパーゼCによるジアシルグリセロールおよびIP3の産生もまた、調べることができる。
【0097】
TRPM8活性に関するアッセイ、例えばカルシウム流束または細胞内のカルシウム放出を観察することによるアッセイは、受容体の活性を報告する、イオン感受性色素または電圧感受性色素で負荷した細胞を含む。そのような受容体の活性を決定するためのアッセイはまた、検査化合物の活性を評価するためのネガティブコントロールまたはポジティブコントロールとして、TRPM8受容体の公知のアゴニストおよびアンタゴニストを使用することができる。調節化合物(例えばアゴニスト、アンタゴニスト)を同定するためのアッセイにおいて、細胞質内のイオンレベルまたは膜電位の変化は、各々イオン感受性または膜電位の蛍光インジケーターを用いてモニタリングすることになる。使用してよいイオン感受性インジケーターおよび電位プローブに、Molecular Probes 1997カタログに開示されているものが挙げられる。放射標識イオン流束アッセイまたは原子吸光分光とカップルさせた流束アッセイもまた使用することができる。
【0098】
動物モデル
寒冷感覚の動物モデルはまた、リンパ球の活性化または移入(migration)のモジュレーターのスクリーニングにおける用途がある。同様に、例えば適当な遺伝子標的ベクターを用いての相同組み換えの結果としての遺伝子ノックアウト技術、または遺伝子過剰発現を含む、遺伝子導入動物の技術は、TRPM8タンパク質の欠如または増加された発現という結果をもたらすことだろう。前記技術はまた、ノックアウト細胞を作製するために適用することもできる。所望の場合には、TRPM8タンパク質の組織特異的発現またはノックアウトを必要とするかもしれない。そのような方法により産生された遺伝子導入動物は、寒冷応答の動物モデルとしての用途がある。
【0099】
ノックアウト細胞および遺伝子導入マウスは、相同性組換えを介してマウスゲノムの内在するTRPM8遺伝子部位内に、マーカー遺伝子または他の異種遺伝子を挿入することにより作製することができる。そのようなマウスはまた、内在するTRPM8をTRPM8遺伝子の変異したバージョンで置換することにより、または例えば公知の変異原に暴露させることで内在するTRPM8を変異させることにより、作製することができる。
【0100】
DNAコンストラクトは胚性幹細胞の核内に導入させる。新規に操作された遺伝子の傷害を含有する細胞を、ホストマウス胚に注入し、これをレシピエントの雌内に再移植する。これらの胚の一部は、変異細胞株に部分的に由来する胚細胞を保有するキメラマウスに発達する。それ故キメラマウスを育種することにより、導入された遺伝子の病変を含有する新規マウス株を得ることが可能である(例えばCapecchi et al., Science 244:1288 (1989)参照のこと)。キメラ標的マウスは、Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual (1988) およびTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach (Robertson, 編,1987)に従って誘導することができる。
【0101】
候補のTRPM8モジュレーター
TRPM8タンパク質のモジュレーターとして検査される化合物は、あらゆる有機低分子、または生物学的実体 例えばタンパク質、例えば抗体もしくはペプチド、糖、核酸 例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはリボザイム、または脂質であることができる。あるいはモジュレーターは、TRPM8タンパク質の遺伝的に変換されたバージョンであることができる。典型的には検査化合物は、有機低分子、ペプチド、脂質、および脂質類似体とする。1つの態様において検査化合物は、自然発生または合成のいずれかのメントール類似体である。
【0102】
本質的にはあらゆる化学的化合物を、潜在的モジュレーターまたはリガンドとして本発明のアッセイにおいて使用することができるが、しかしながら最も頻繁には、水溶液または有機溶液(特にDMSOベース)中に溶解することのできる化合物を使用する。アッセイは、アッセイのステップを自動化し、あらゆる簡便な原料に由来する化合物を提供することにより、大きな化学的ライブラリーをスクリーニングするようにデザインし、それらを(例えば自動アッセイ装置のマイクロタイタープレート上でのマイクロタイターフォーマットにおいて)典型的には並行して進行させる。Sigma (St. Louis, Mo.), Aldrich (St. Louis, Mo.), Sigma-Aldrich (St. Louis, Mo.), Fluka Chemika-Biochemica Analytika (Buchs Switzerland)等を含む、化学的化合物の多くの供給元があることは、理解されるだろう。
【0103】
1つの好ましい態様において、ハイスループットスクリーニング法は、多数の潜在的な治療用化合物(潜在的なモジュレーターまたはリガンドの化合物)を含有する、コンビナトリアルな有機低分子またはペプチドのライブラリーを提供することを伴う。次にそのような“コンビナトリアル化学ライブラリー”または“リガンドライブラリー”について、所望の特徴的活性を示すライブラリーのメンバー(特に化学種またはサブクラス)を同定するため、本明細書に記載したような、1つまたはそれより多くのアッセイでスクリーニングする。そのように同定された化合物を、従来の“リード化合物”として供給することができ、それら自体を潜在的なあるまたは実際の治療物質(therapeutics)として使用することができる。
【0104】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、化学的合成または生物学的合成のいずれかにより、いくつかの化学的“構成要素”、例えば試薬を組み合わせることにより生成された、多様な化学化合物のコレクションである。例えば直鎖状のコンビナトリアル化学ライブラリー、例えばポリペプチドライブラリーは、所定の化合物の長さ(すなわちポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)となるように、一組の化学的構成要素(アミノ酸)を可能な各方法で組み合わせることにより形成される。何百万もの化学化合物を、化学的構成要素のそのようなコンビナトリアル的な混合を通して合成することができる。
【0105】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知されている。そのようなコンビナトリアル化学ライブラリーは、ペプチドライブラリー(例えば米国特許第5,010,175号, Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487-493 (1991) およびHoughton et al., Nature 354:84-88 (1991)を参照のこと)を含むがこれに限定されない。化学的な多様なライブラリーを作成するため、それ以外の化学物質もまた使用することができる。そのよう化学物質として以下を含むがこれに限定されない:ペプトイド(例えばPCT公開第WO 91/19735号)、コードされたペプチド(例えばPCT公開第WO 93/20242号)、ランダムなバイオ−オリゴマー(例えばPCT公開第WO 92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば米国特許第5,288,514号)、ダイバーソマー 例えばヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド(Hobbs et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90:6909-6913 (1993))、ビニロガスポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコースの足場を用いた非ペプチド性ペプチド模倣分子(Hirschmann et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:9217-9218 (1992))、類似体有機合成による低分子化合物 ライブラリー(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート (Cho et al.. Science 261:1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59:658 (1994))、核酸ライブラリー (Ausubel, Bergerおよび Sambrook、すべて上記記載、を参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリー (例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー (例えばVaughn et al., Nature Biotechnology, 14(3):309-314 (1996) およびPCT/US96/10287を参照のこと)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang et al., Science, 274:1520-1522 (1996) および米国特許第5,593,853号を参照のこと)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, January 18, ページ33 (1993); イソプレノイド、米国特許第5,569,588号; チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および5,519,134号; モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号; ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号、等を参照のこと)。
【0106】
コンビナトリアルライブラリーの調製のためのデバイスは、市販にて入手可能である(例えば357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville Ky., Symphony, Rainin, Woburn, Mass., 433A Applied Biosystems, Foster City, Calif., 9050 Plus, Millipore, Bedford, Mass.を参照のこと)。加えて、多数のコンビナトリアルライブラリーそのものが市販にて入手可能である(例えばComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc., St. Louis, Mo., ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, Md.を参照のこと)。
【0107】
C.固体および溶液(soluble)のハイスループットアッセイ
加えて、溶液のアッセイは、TRPM8タンパク質、または自然発生またはリコンビナントのいずれかのTRPM8タンパク質を発現する細胞もしくは組織を用いて、達成することができる。さらにあるいは、ハイスループットフォーマットの固相を基本としたin vitroアッセイを達成することもでき、その場合TRPM8タンパク質またはそのフラグメント、例えば細胞質ドメインを、固相担体に付着させる。本明細書に記載したアッセイのいずれか1つを、ハイスループットスクリーニング、例えばリガンド結合、カルシウム流束、膜電位の変化、等として適応させることができる。
【0108】
溶液または固体のいずれかの本発明のハイスループットアッセイにおいて、数千の異なるモジュレーターまたはリガンドを1日でスクリーニングすることが可能である。この方法論を、in vitroのTRPM8タンパク質に関して、またはTRPM8タンパク質を包含する細胞に基づいたもしくは膜に基づいたアッセイに関して使用することができる。特にマイクロタイタープレートの各ウェルを使用して、選択された潜在的なモジュレーターに対して個別のアッセイを進行させることができ、または濃度もしくはインキュベーション時間の効果を観察しようとする場合には、5−10ずつのウェルで1つのモジュレーターを検査することができる。したがって1枚の標準的なマイクロタイタープレートで、約100(例えば96)のモジュレーターをアッセイすることができる。1536ウェルプレートを使用すれば、その場合には1枚のプレートで約100−約1500の異なる化合物を容易にアッセイすることができる。1日当たり多数枚のプレートをアッセイすることが可能である;約6,000、20,000、50,000、または100,000より多くまでの異なる化合物に関してスクリーニングするアッセイが、本発明の統合されたシステムを使用すれば可能である。
【0109】
固体の反応に関して、興味あるタンパク質もしくはそのフラグメント、例えば細胞外ドメイン、または融合タンパク質の一部として興味あるタンパク質もしくはそのフラグメントを包含する細胞または膜を、固体成分に直接または間接的に、共有結合または非共有結合による連結を介して、例えばタグを介して結合することができる。タグは多様な成分のいずれであることもできる。一般に、タグ(タグバインダー)を結合する分子を固体支持体に固定し、そして興味あるタグされた分子を、タグおよびタグバインダーの相互作用により固体支持体に付着させる。
【0110】
文献に十分に記載されている公知の分子間相互作用に基づいて、いくつかのタグおよびタグバインダーを使用することができる。例えばタグが天然のバインダー、例えばビオチン、プロテインA,またはプロテインGを有する場合、それを、適当なタグバインダー(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、免疫グロブリンのFc領域、等)と組み合わせて使用することができる。天然のバインダーを有する分子、例えばビオチンに対する抗体もまた、広範囲に利用可能であり、適当なタグバインダーである;SIGMA Immunochemicals 1998 カタログSIGMA, St. Louis Mo.を参照のこと。
【0111】
同様にあらゆるハプテン化合物または抗原化合物も、タグ/タグバインダーのペアを形成する適当な抗体と組み合わせて使用することができる。数千もの特異的な抗体が市販にて入手可能であり、多くのさらなる抗体が文献に記載されている。例えば1つの一般的な立体配置において、タグは第一抗体であり、タグバインダーは、第一抗体を認識する第二抗体である。抗体−抗原相互作用に加えて、受容体−リガンド相互作用もまた、タグおよびタグバインダーのペアとして適当である。例えば細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば細胞受容体−リガンド相互作用、例えばトランスフェリン、c−kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体および抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリー、等;例えばPigott & Power, The Adhesion Molecule Fac^s Book I (1993)を参照のこと。同様に、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えばアヘン剤、ステロイド剤)、分子内受容体(例えばステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイドおよびビタミンD;ペプチドを含む様々な低分子リガンドの効果を調節するもの)、薬剤、レクチン、糖類、核酸(直鎖ポリマーおよび環式ポリマー双方の立体配置)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質、および抗体はすべて、様々な細胞の受容体と相互作用することができる。
【0112】
合成ポリマー、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、およびポリアセテートもまた、適当なタグまたはタグバインダーを形成することができる。本開示を再検討すれば当業者には明らかであるように、多くのその他のタグ/タグバインダーもまた、本明細書に記載したアッセイシステムにおいて有用である。
【0113】
一般的なリンカー、例えばペプチド、ポリエーテル、等もまたタグとして供給でき、ポリペプチド配列、例えば約5および200アミノ酸の間のポリgly配列を含むことができる。そのようなフレキシブルなリンカーは当業者に公知である。例えばポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Ala.より入手可能である。これらのリンカーは所望により、アミドの連結、スルフヒドリルの連結、またはヘテロ官能性の連結を有する。
【0114】
タグバインダーは、現在利用可能な多様な方法のいずれかを使用して、固体担体に固定させる。固体担体は一般に、タグバインダーの一部分との反応性のある担体表面に化学基を固定する化学試薬に、担体のすべてまたは一部分を暴露させることにより、誘導体化するまたは官能性を持たせる。例えばより長い鎖部分への付着に適する基は、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、およびカルボキシル基を含むことになるだろう。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランは、多様な表面、例えばガラス表面に官能性を持たせるために使用ことができる。そのような固相バイオポリマーのアレイの作成については、文献に十分に記載されている。例えばMerrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963) (例えばペプチドの固相の合成について記載している); Geysen et al., J. Immun. Meth. 102:259-274 (1987) (ピン上での固相成分の合成について記載している); Frank & Doring, Tetrahedron 44:6031-6040 (1988) (セルロースディスク上の様々なペプチド配列の合成について記載している); Fodor et al., Science, 251:767-777 (1991); Sheldon et al., Clinical Chemistry 39(4):718-719 (1993);およびKozal et al., Nature Medicine 2(7):753-759 (1996)(すべて、固体担体に固定されたバイオポリマーのアレイについて記載している)を参照のこと。タグバインダーを担体に固定するための非化学的アプローチは、その他の一般的方法、例えば加熱、UV照射による架橋、等を含む。
【0115】
上に本発明を記載してきたが、以下の実施例は、本発明のいくつかの好ましい態様のさらなる説明を提供する。これらの実施例は説明を目的として提供するに過ぎず、主題の発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0116】
実施例
実施例1
本発明に従っての修飾hTRPM8核酸配列の作成
修飾ヒトTRPM8核酸配列は、鋳型としてネイティブhTRPM8配列を使用して作成した。具体的にはリコンビナントホスト細胞(好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞)におけるhTRPM8の発現を最適化するため、601のサイレント変異をネイティブhTRPM8核酸配列中に導入し、親配列とわずか81%の配列同一性しか保有していない修飾配列を得た。変異(図1に含有されるアラインメントに示す)は、推定のTATAボックス、chi部位、リボソームエントリー部位、ATリッチまたはGCリッチ配列ストレッチ、ARE、INSおよびCRS配列エレメント、および潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位を除去するように作成した。
【0117】
これらの変異は、本発明のアミノ酸配列は変化させなかった。この配列をHEK−293細胞およびアフリカツメガエル卵母細胞において発現させた(以下の実施例を参照のこと)時、効率的に発現され、そして冷却剤化合物に特異的に応答する機能的イオンチャネルが得られることが発見された。
【0118】
1.カシウム画像解析実験のために使用される具体例としての材料および方法
・10cmディッシュに含有されたHEK−293細胞(約50−70%の培養密度)に、TransH293を使用して、5μgのTRPM8 DNAおよびpcDNA3および2μgのRFPプラスミドで形質移入する。
【0119】
・24時間後、細胞を384ウェルプレート内に、〜50,000細胞/ウェルで分注する。
・形質移入後48時間で、細胞にHBSS中の4μM Fluo−3−AM 3AMで30分間、37℃で負荷する。
【0120】
・次に細胞を2.5mM プロベニシドを含有するHBSS中で2回洗浄し、37℃に15分間戻す。
・化合物のプレートをHBSS中で最終濃度に2回調製し、37℃に維持して、rTRPM8が刺激中に周囲温度での低下により活性化されないことを保証する(TRPM8は<22℃の温度により活性化される)。
【0121】
安定なクローンの選択のために使用される材料および方法
・HEK−293細胞に、neoマーカーを包含する、TRPM8核酸配列含有プラスミドで形質移入し、安定なクローンをネオマイシンを用いて選択する。
【0122】
・スクリーニングされたクローンを、FLIPRで(-)メントール応答に関するカルシウムの画像解析を使用してスクリーニングする。
・最適なメントール応答を示すクローンを、カルシウム画像解析の使用により検出されたTRPM8活性化に基づいて選択する。
【0123】
2.パッチクランプ電気生理学的アッセイのために使用する方法および材料
・アフリカツメガエル卵母細胞に、本発明に従ってのTRPM8核酸配列でマイクロインジェクションする。
【0124】
・マイクロインジェクションした卵母細胞を、インジェクション後1日にOpusXpress 600Aを使用して、およそ60mVでボルテージクランプを行い、バッファー(コントロール)、または前記バッファー中に固定濃度、もしくは一定範囲の異なる濃度にわたり(用量−増大)含有される、潜在的なもしくは公知のTRPM8モジュレーター、のいずれかで処理する。
【0125】
・前記のバッファー処理した、または推定TRPM8モジュレーター処理した卵母細胞について、特定の時間にわたり電流を測定する。加えて、TRPM8核酸配列でインジェクションしていない、前記バッファーで処理した卵母細胞(ネガティブコントロール)についても、電流応答を測定する。
【0126】
・TRPM8活性における前記の潜在的なTRPM8モジュレーター化合物の効果(もしあれば)を決定するため、そして前記効果が用量特異的であるかどうかについて、前記卵母細胞に関する電流応答を比較する。
【0127】
実施例2
HEK293細胞において発現されたラットTRPM8の活性化
HEK293細胞に、ラットTRPM8cDNA(pcDNA3.1中)をコードするプラスミドで形質移入し、384ウェルプレート内に播種する。48時間後、細胞にFluo−3−AMで負荷する。次に細胞を、図2に示したような様々な刺激物質で刺激し、各ウェルの蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。これらの実験において、内在的に発現されるM1受容体のカルバコール刺激を、基準刺激として使用した。図2の結果は、検査した冷却剤化合物がラットTRPM8イオンチャネルを特異的に活性化することを示す。
【0128】
実施例3
ラットTRPM8を活性化する冷却物質のランク順
pcDNA3.1中に含有されたラットTRPM8 cDNAをコードするプラスミドで形質移入されたHEK293細胞を、384ウェルプレート内に播種した。48時間後、これらの細胞にFluo−3−AMで負荷した。次に細胞を、図3に示した刺激物質で刺激し、各ウェルの蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。内在的に発現されるM1受容体のカルバコール刺激を、再度基準刺激として使用した。図3の右パネルは、コントロールプラスミド(RFP)で形質移入された細胞が、カルバコール刺激にしか応答しないことを示す。図3の左パネルの結果は、ラットTRPM8が表に示した冷却剤化合物に応答することを示す。
【0129】
実施例4
涼冷温度および冷却物質によるTRPM8の相乗的活性化
図4に示したように、涼冷温度はHEK293中のTRPM8を活性化し、冷却物質と組み合わせると相乗効果を示す。pcDNA3.1中にラットTRPM8 cDNAをコードするプラスミドで形質移入されたHEK293細胞を、384ウェルプレート内に再度播種した。48時間後、これらの形質移入された細胞にFluo−3−AMで負荷した。次に細胞を、図4に示した刺激物質で刺激し、各細胞の蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。図4の右上パネルの結果は、刺激としての寒冷バッファーの添加が、TRPM8活性化を誘発するのに十分であることを示す。図4の下パネルの結果は、冷却した(--)メントールおよび冷却したイシリンが、より温かいメントールおよびイシリンのTRPM8の活性化より強力であることを示す。
【0130】
実施例5
メントールおよびイシリンは、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を活性化する
この実験では電気生理学的アッセイを、ラットTRPM8を発現する卵母細胞を用いて行った。具体的には、卵母細胞に10ngのラットTRPM8 cRNAでマイクロインジェクションし、インジェクション後1日にOpusXpress 600Aを使用して、〜60mVでボルテージクランプを行い、バッファーおよびメントール(左グラフ)またはイシリン(右グラフ)で処理した。表示された温度に応答した2つの卵母細胞を図5に示す。これらの結果は、メントール誘発電流は部分的に脱感作する(アゴニストの継続的存在下で、電流はピークに達し、そして安定状態に減衰する)のに対して、イシリン誘発電流は完全に脱感作する(アゴニストの継続的存在下で、電流はコントロールレベルに戻る)。反対にバッファーで処理することにより、電流は影響を受けなかった。
【0131】
実施例6
冷却物質によるラットTRPM8卵母細胞の特異的活性化
この実験では、メントールおよびイシリンが、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を特異的に活性化することが示された。卵母細胞に10ngのラットTRPM8 cRNAでマイクロインジェクションし、インジェクション後1日にOpusXpress 6000Aを使用して、〜60mVでボルテージクランプを行った後、図6に示した化合物で処理した。図では、ピークのアゴニスト誘発電流を4−6の独立した卵母細胞についてまとめている。これらの実験結果は、表示された化合物濃度でメントールおよびイシリンは大きなピーク電流を誘発するのに対して、オイカリプトールおよびメタンは小さなピーク電流しか誘発しないことを明らかにした。反対にラットTRPM8を発現しないコントロール卵母細胞(コントロール:非インジェクション卵母細胞)では、応答は観察されなかった。したがって図6の結果は、メントールおよびイシリンが、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を特異的に活性化することを示す。
【0132】
実施例7
ラットTRPM8を発現する卵母細胞におけるラットTRPM8のメントールによる活性化
メントールによる電流/電位(I/V)曲線が、ラットTRPM8を発現する卵母細胞において外向き整流を表すことを明らかにする実験を行った。これらの実験において、卵母細胞に2ngのラットTRPM8 cRNAで再度マイクロインジェクションし(図7の左パネルに示す)、またはインジェクションせず(右パネル)に、インジェクション後4日に、バッファー(コントロール:緑の曲線)または100μM メントール(赤の曲線)の存在下で、〜80mVから100mV(20mV増加)で電流を測定した。図7の青の曲線は、メントール(赤)曲線からコントロール(緑)曲線を差し引くことにより得られたメントール特異的な曲線を表す。図7の結果は、メントール特異的な電流が外向き整流を示す(負の電位と比較して電流が正の電位でより大きい)のに対して、コントロール(非インジェクション)細胞では、メントールの特異的な電流は観察されないことを明らかにした。
【0133】
実施例8
ラットTRPM8発現卵母細胞におけるメントールの用量−応答曲線
図8は、ラットTRPM8発現卵母細胞における、メントールに関する用量−応答を測定する実験の結果を示す。この実験において、卵母細胞に10ngのラットTRPM8 cRNAで再度マイクロインジェクションし、インジェクション後2−3日に〜60mVでボルテージクランプを行い、電流を測定した。図8の左パネルの結果は、メントールの3μMから1000μMの増加する濃度で処理した卵母細胞における、代表的な実験を表す。図8の右パネルの結果は、各ポイントが3−6の独立した卵母細胞のデータに対応する、まとめたデータを表す。図に示したように、メントールに関するEC50値は、19.5℃で29.6μMであった。この値は卵母細胞においてメントールに関して報告されたEC50(22−24℃で67μM、McKemy et al. Nature 416:52-58 (2002))に近似し、この実験結果の正当性を確証する。
【0134】
実施例9
涼冷温度によるラットTRPM8の活性化
図9は、涼冷温度が、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を活性化することを示す実験結果を示す。この実験において、卵母細胞に5ngのラットTRPM8 cRNAで再度マイクロインジェクションし、インジェクション後2日に〜60mVでボルテージクランプを行い、OpusXpress 6000Aを使用して電流を記録した。図に示したように、室温バッファー(22℃)の投与は、測定された電流に何の影響も与えなかったのに対して、18℃に冷却したバッファーの投与は、室温のメントールに類する程度に、ラットTRPM8を活性化した。表示された温度処理に応答した2つの卵母細胞を、図9に示す。
【0135】
実施例10
ラットTRPM8を安定的に発現するHEK293クローンにおける様々な冷却剤の効果
図10は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK293クローンの特性を示す。HEK293細胞を384ウェルプレート内に再度播種し、48時間後細胞にFluo−3−AM色素で負荷した。次に細胞を、図10に示した刺激物質で刺激し、各細胞の蛍光強度を、蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。図10に示した結果は、これらの表示された冷却物質が、図に報告された効能および冷却強度の順に、安定なクローンを特異的に活性化することを示す。
【0136】
実施例11
メントールより強力にラットTRPM8を活性化する登録商標化合物の同定
実施例9に記載した安定なHEK293クローンを再び使用して、実施例9に記載したように、蛍光定量的画像解析実験を行った。具体的には、19,000の化合物をこのクローンに対してスクリーニングし、引き続き、用量−応答によりポジティブヒットを分析した。これらの実験は、ラットTRPM8の活性化において、 (--)メントールより再現性よく2−3倍強力である登録商標化合物(SID−2346448)を同定した。これらの結果を図11に示す。
【0137】
実施例12
メントールより強力にラットTRPM8を活性化する第2の登録商標化合物の同定
実施例9に記載した安定なHEK293クローンを使用して、実施例9に記載したように、蛍光定量的カルシウム画像解析実験を行った。合計19,000の化合物をクローン#48に対して再度スクリーニングした。引き続き、用量−応答によりポジティブヒットを分析した。これらの結果は、第2の登録商標化合物(SID 576583)がラットTRPM8の活性化において、 (--)メントールと再現性よく同程度に強力であることを明らかにした。これらの結果を図12に示す。
【0138】
実施例13
メントールより強力にラットTRPM8を活性化する第3の登録商標化合物の同定
実施例10に記載したように安定なHEK293クローンを使用して、蛍光定量的カルシウム画像解析実験を再度行った。合計19,000の化合物をこのクローン(クローン#48)に対してスクリーニングした。引き続き、用量−応答によりポジティブヒットを分析した。これらの実験は、ラットTRPM8の活性化において、 (--)メントールと再現性よく同程度に強力である第3の登録商標化合物(SID 3498787)の同定を明らかにした。
【0139】
実施例14
HEK293細胞において発現されたヒトTRPM8の特性
図14は、HEK293細胞において発現されたヒトTRPM8の特性を研究する実験の結果を示す。これらの実験において、図1の修飾ヒトTRPM8 cDNAをコードするプラスミドで形質移入されたHEK293細胞を、384ウェルプレート内に播種した。48時間後、これらの細胞にFluo−3−AMで負荷した。次にFluo−3−AMで負荷したこれらの細胞を、図14に示した刺激物質で刺激し、各ウェルの蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。表示された冷却物質は、報告されたランク順の効能および冷却強度に従ってTRPM8を活性化する。図14に示した表の結果は、さらにラットTRPM8およびヒトTRPM8の発現細胞を用いて得られたEC50を比較している。これらのEC50値は、検査した異なる冷却剤に関してはこれらの細胞において互いに一致すると認めることができる。
【0140】
実施例15
本発明に従ってのヒトTRPM8(配列番号:2)を発現するHEK−293クローンの特性
本実験は、本発明に従っての最適化hTRPM8核酸配列(“hTRPM8 opt”または配列番号:2)を発現するHEK−293クローンの特性を比較した。特定すると、これらの細胞を384ウェルプレート内に再度播種し、48時間後に蛍光色素(Fluo−3AM)で負荷した。次に得られた負荷された細胞を、図15に表示された刺激物質で刺激し、各細胞の蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。図15に示した結果から認められてよいように、検査した公知の冷却物質は、図に報告されたランク順の効能および冷却強度の活性で、安定なhTRPM8発現クローンを活性化することが観察された。
【0141】
実施例16
本発明のスクリーニングにおいて同定された、数種の推定物質の効能
クローン#71(先の実施例と同じクローン)において、15000の化合物に対してスクリーニングを行った。引き続き、用量−応答分析により“ヒット”を評価した。図16の表にまとめたこれらの結果は、SID 391254およびSID 7506425が、ヒトTRPM8の活性化において、公知の冷却剤であるイシリンと再現性よく同程度に強力であることを明らかにした。また他の化合物、すなわちSID 7308307、SID 7291576およびSID 7292725もまた、ラットTRPM8の活性化において、別の公知の冷却剤であるWS−3と再現性よく同程度に強力であった。さらに残りのヒットであるSID 10135651、SID 7307713およびSID 3498787は、ヒトTRPM8の活性化において、(-)メントールと同程度に強力であった。
【0142】
実施例17
ヒトの味覚検査における推定冷却剤化合物(SID 391254)の冷却効果
この実験において、主題のアッセイを使用して同定された推定冷却剤であるSID 391254の冷却効果を、ヒトの味覚検査において分析した。特定すると、3つの検査サンプルに関する冷却強度を、5名のヒトボランティアパネリストの2回のトライアルにおいて検討した。図17に示したこれらのトライアルの結果は、テューキーのHSD検定(5%リスク水準)を使用して算出された有意差を明らかにした。この実験において、同じテューキーの文字(lettering)のサンプルは互いに有意に異なっていなかった。検査は、ブースにおいて、Compusenseソフトウェアを使用して記録されたデータにて行った。加えてこれらの実験にはさらに、公知の冷却剤であるWS−3(ポジティブコントロール)の投与を含めた。
【0143】
公知または推定の冷却化合物(各々WS−3およびSID 391254)を含有するサンプル双方に関して、これら化合物は、低ナトリウムバッファー(LSB)および0.1%エタノール中に含有された。図に報告したように、公知または推定の冷却剤を含有するサンプルは、ネガティブコントロール(LSBおよび0.1%エタノール)より実質的に高い冷却強度が報告された。これらの結果は、LSBおよびエタノールは公知の冷却剤効果を示さないという事実と一致する。また、推定冷却剤化合物391254はWS−3の1/6モル濃度で使用して、同じ効果を得られたことから、この化合物は実際にはWS−3より強力であることが発見された。
【0144】
実施例18
ヒトの味覚検査における第2の推定冷却化合物(SID 10135651)の冷却効果
この実験は、記載したアッセイを使用して同定されたもう1つの推定冷却剤化合物(SID 10135651)の冷却効果を比較した。この化合物を、ヒトの味覚検査において、公知の冷却剤WS−3および前記ネガティブコントロールサンプル(0.1%エタノールを含有するLSB)と再度比較した。この実験において平均冷却強度を、図18に同定されている3つのサンプルについて、5名のヒトボランティアの2回のトライアルにおいて再度比較した。先の実施例の場合ように、コントロールと相対しての公知および推定の冷却剤化合物間の有意差を、テューキーのHSD検定(5%リスク水準)を使用して算出した。また、同じテューキーの文字のサンプルは互いに有意に異なっていなかった。これらの検査は、ブースにおいて、Compusenseソフトウェアを使用して記録されたデータにて再度行った。これらの比較は、SID 10135651化合物およびWS−3を含有するサンプルが、コントロールサンプルより実質的に高い冷却強度を示すことを明らかにした。この実験の結果はさらに、SID 10135651化合物サンプルがWS−3サンプルとほぼ同程度の冷却強度を示すことを明らかにした。
【0145】
実施例19
ヒトの味覚検査におけるもう1つの推定冷却剤化合物(SID 7292725)の冷却効果
主題のスクリーニングアッセイを使用して同定されたもう1つの推定冷却化合物(SID 7292725)の冷却効果を、ヒトの味覚検査において比較した。再度、冷却強度のスコアを、5名のヒト味覚パネリストの2回のトライアルにおける結果に基づいて決定した。有意差は、テューキーのHSD検定(5%リスク水準)を使用して再度算出した。[テューキー検定(5%は1.279に相当)]。同様に、同じテューキーの文字のサンプルは互いに有意に異なっていなかった。すべてのサンプルは、0.1%エタノールを含有するLSB中に再度調製した。さらにWS−3を、公知の比較用冷却剤化合物として再度使用した。図19に示したように、公知および推定の冷却剤化合物を含有するサンプルは、ネガティブコントロール(LSBおよび0.1%エタノール)より高い冷却強度を示した。また、WS−3およびSID7292725のサンプル間の冷却強度における有意差は観察されなかった。
【0146】
【表1−1】
【0147】
【表1−2】
【0148】
【表1−3】
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1−1】図1−1は、本発明のアッセイにおいて使用した最適化hTRPM8配列、および先に報告された野生型hTRPM8配列の、配列アラインメントを示す。野性型配列は配列番号:1に、変化させた配列は配列番号:2に含有される。
【図1−2】図1−2は、本発明のアッセイにおいて使用した最適化hTRPM8配列、および先に報告された野生型hTRPM8配列の、配列アラインメントを示す。野性型配列は配列番号:1に、変化させた配列は配列番号:2に含有される。
【図1−3】図1−3は、本発明のアッセイにおいて使用した最適化hTRPM8配列、および先に報告された野生型hTRPM8配列の、配列アラインメントを示す。野性型配列は配列番号:1に、変化させた配列は配列番号:2に含有される。
【図2】図2は、ラットTRPM8核酸配列を一過的に発現するHEK−293細胞を用いての、蛍光定量的カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図3】図3は、異なる冷却物質で刺激した、ラットTRPM8発現HEK−293細胞を用いての、蛍光定量的カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図4】図4は、ラットTRPM8を発現するHEK−293細胞を、異なる冷却物質および低下した温度で刺激した、蛍光定量的カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図5】図5は、メントールおよびイシリンで刺激した、ラットTRPM8を発現する卵母細胞を用いての、電気生理学的(ボルテージクランプ)アッセイの結果を示す。
【図6】図6は、ラットTRPM8を発現する卵母細胞を、公知の冷却物質(メントール、オイカリプトール、イシリン、等)を含む様々な化合物で刺激した、もう1つの電気生理学的(ボルテージクランプ)アッセイの結果を示す。
【図7】図7は、メントールによる電流/電位(I/V)曲線が、ラットTRPM8を発現する卵母細胞において外向き整流を表すことを明らかにした、電気生理学的TRPM8アッセイの結果を示す。
【図8】図8は、ラットTRPM8発現卵母細胞を異なる濃度のメントールで刺激した、電気生理学的TRPM8アッセイの結果を示す。
【図9】図9は、ラットTRPM8発現卵母細胞を涼冷温度で刺激した、電気生理学的アッセイの結果を示す。
【図10】図10は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、数種の公知の冷却物質を含む異なる化合物で刺激した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図11】図11は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、19,000の化合物のライブラリーに対してスクリーニングして、ラットTRPM8の活性化において、メントールより約2−3倍強力である新規化合物(SID 2346448)を同定した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図12】図12は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、19,000の化合物の前記ライブラリーに対してスクリーニングして、ラットTRPM8の活性化において、メントールと同程度に強力である登録商標化合物(SID 576583)を同定した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図13】図13は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、前記化合物ライブラリーに対してスクリーニングして、ラットTRPM8の活性化において、メントールと再現性よく同程度に強力である、もう1つの登録商標化合物(SID 3498787)の同定を明らかにした、もう1つのカルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図14】図14は、配列番号:2に含有される、修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現するHEK−293細胞を、数種の公知の冷却物質(メントール、WS−3、WS−23およびイシリン)、ならびに図11−13の実験で同定された化合物で刺激した、TRPM8カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図15】図15は、配列番号:2の修飾TRPM8核酸配列を安定的に発現するHEK−293クローンを、数種の公知の冷却化合物(メントール、冷却剤P、WS−3、イシリン)で刺激した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図16】図16は、配列番号:2に含有される修飾ヒトTRPM8核酸配列を安定的に発現するHEK−293細胞を、公知の冷却剤、ならびに図11−13の実験で同定された化合物を含むハイスループットスクリーニングにより同定された新規化合物で刺激した、用量−応答実験の結果まとめた表を示す。
【図17】図17は、主題の修飾TRPM8核酸配列を発現する細胞を用いて、潜在的な冷却物質として同定された化合物(SID 391254)を、ヒトボランティアにおけるその冷却効果についてスクリーニングした、実験の結果を示す。
【図18】図18は、潜在的な冷却物質として同定された化合物(SID 10135651)を、ヒトボランティアにおけるその冷却効果についてスクリーニングした、もう1つの実験の結果を示す。
【図19】図19は、潜在的な冷却物質として同定されたもう1つの化合物(SID 7292725)を、ヒトボランティアにおけるその冷却効果についてスクリーニングした、実験の結果を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願
本出願は、双方とも2005年10月11日に提出された、米国仮特許第60/724,776号および60/724,777号に対する優先権を主張し、参照として援用する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、ネイティブ(野生型)ヒトTRPM8核酸配列に対して、所望の細胞、好ましくは霊長類細胞、そして最も好ましくはヒト細胞におけるそれらの発現を増強する目的で修飾されている、TRPM8核酸配列に関する。
【0003】
また本発明は、主題の修飾されたTRPM8核酸配列を用いての、細胞に基づいたアッセイ、好ましくは電気生理学的および蛍光定量的なカルシウムまたはナトリウムの画像解析アッセイ、ならびにそれらアッセイで使用するための、ヒトTRPM8調節化合物、好ましくは公知の冷却化合物であるメントールまたはイシリンに近い冷却感覚をヒト被験者において起こす化合物、および/またはメントールまたはイシリンにより起こる冷却感覚を増強するTRPM8モジュレーター、を同定するキット、を提供する。主題の細胞に基づいたアッセイは好ましくは、リコンビナントホスト細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞における発現を最適化するように変異させた修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現する細胞を使用する。好ましくは導入された変異は、ネイティブのヒトTRPM8核酸配列に対して、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされるポリペプチドの配列を変化させていない、または実質的に変化させていない。
【0004】
発明の背景
本発明は、新規冷却物質を同定するための、修飾TRPM8核酸配列を使用するアッセイに関する。本発明以前に、げっ歯類およびヒトのTRPM8核酸配列をコードする核酸配列が報告されている。加えてTRPM8が、涼冷から寒冷の温度の感覚、ならびに冷却物質、例えばメントールおよびイシリンに対する感覚に関与する、TRPイオンチャネルファミリーのメンバーであることが、報告された。TRPM8は、寒冷温度、メントール、イシリン、またはその誘導体による刺激で、ナトリウムまたはカルシウムに対するその透過性を増大させる、非選択的カチオンチャネルである。なおさらにTRPM8モジュレーターを同定するための、ネイティブ(未修飾)TRPM8核酸配列の使用が報告された。
【0005】
しかしながら前述の報告にもかかわらず、ヒトTRPM8チャネルを修飾する化合物を同定するための改善されたアッセイおよび検査キットが必要とされている。特に、少なくともメントールまたはイシリンに匹敵する、ヒトTRPM8チャネルを調節する新規化合物を同定するアッセイが必要とされている。これらの化合物は、冷却感覚が所望される食品、飲料、医薬剤、およびその他の組成物における潜在的適用性がある。
【0006】
発明の目的
所望のホスト細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK-293細胞において効率的に発現され、そして発現により、TRPM8モジュレーター、すなわちヒトの冷却感覚を調節するアゴニスト、アンタゴニスト、およびエンハンサーを同定するために適する、TRPM8イオンチャネルポリペプチドを得られる、新規変異TRPM8核酸配列を提供することが、本発明の目的である。
【0007】
より特定すれば、ヒト細胞、例えばHEK-293細胞における発現を最適化するように操作される、ネイティブ配列に対して変異を含有する、新規ヒトTRPM8核酸配列であって、ここでそのような変異が、結果として得られるTRPM8チャネルポリペプチドの結合特性および/または機能的特性を実質的に変化させない、例えば保存的なアミノ酸の置換である前記核酸配列、を提供することが本発明の目的である。例えばそのような変異は、以下:(i)推定ヒトinteralTATAボックス、(ii)chi部位、(iii)リボソームエントリー部位、(iv)ARE、INS、もしくはCRS配列エレメント、ならびに(v)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去してよい。加えてそのような変異は、1つまたはそれより多くのコドンを、ホスト細胞の好ましいコドン、特にヒトの好ましいコドンに置き換えてもよい。
【0008】
さらにより好ましくは、配列番号:2に含有されるTRPM8核酸配列、およびそのバリアントを提供することが、本発明の目的である。
ヒトTRPM8イオンチャネルを調節する化合物を同定するための、細胞に基づいた新規アッセイを提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【0009】
より特定すれば、リコンビナントホスト細胞、好ましくは哺乳類細胞、そして最も好ましくはヒト細胞における、TRPM8発現を最適化するように遺伝子操作された変異を包含する、本発明に従っての変異ヒトTRPM8核酸配列を発現する検査細胞を使用して、ヒトTRPM8イオンチャネルを調節する化合物を同定するための、細胞に基づいた新規アッセイを提供することが、本発明の目的である。
【0010】
なおより特定すれば、修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現する、すなわち先に報告された自然発生のヒトTRPM8核酸配列とは異なる配列を保有するヒト細胞において、ヒトTRPM8の活性を修飾する化合物を同定するための細胞に基づいたアッセイを提供することが本発明の目的であり、ここでそのような修飾配列はヒト細胞におけるTRPM8発現を高める変異を含有していて、そしてさらにその場合そのような変異は好ましくはTRPM8タンパク質配列を変化させていない。特にそのような変異は、以下:(i)ヒト推定内在性TATAボックス、(ii)chi部位、(iii)リボソームエントリー部位、(iii)ATリッチまたはGCリッチ配列ストレッチ、(iv)ARE、INSまたはCRS配列エレメント、ならびに(v)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去してよい。加えてそのような変異は、1つまたはそれより多くのコドンを、ホスト細胞の好ましいコドン、特にヒトの好ましいコドンで置き換えてもよい。
【0011】
さらにより好ましくは、配列番号:2に含有される変異ヒトTRPM8核酸配列、またはそのバリアントを発現する検査細胞を使用する、ヒトTRPM8調節化合物を同定するための、細胞に基づいたアッセイを提供することが本発明の目的である。
【0012】
なおより好ましくは、本明細書において提供される細胞に基づいたアッセイは、蛍光カルシウム感受性色素、膜電位色素、またはナトリウム感受性色素を使用してTRPM8活性をモニタリングするものとする。
【0013】
あるいは本明細書において提供される細胞に基づいたアッセイは、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を発現する卵母細胞を用いて、電気生理学的方法により、すなわちパッチクランプ法または二電極ボルテージクランプ法により、TRPM8活性をモニタリングするものとする。
【0014】
さらにあるいは本発明は、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を利用する、イオン流束アッセイ、例えば放射標識イオン流束アッセイにより、または原子分光検出法(atomic spectroscope detector methods)の使用により、TRPM8活性を検出してよいアッセイを提供する。
【0015】
最も好ましくは、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を利用する、本明細書において提供される細胞に基づいたアッセイは、数千または数百万でさえもの異なる推定冷却化合物のスクリーニングを促進するハイスループットスクリーニングのプラットフォームを使用するものとし、ここでTRPM8活性は、カルシウム感受性色素、膜電位色素、またはナトリウム感受性色素を用いて、パッチクランプ法もしくは二電極ボルテージクランプ法により電気生理学的に、または放射標識を用いるイオン流束アッセイ、もしくは原子分光検出法によりモニタリングする。
【0016】
また以下、(i)野生型ヒトTRPM8核酸配列に対して、リコンビナント哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞における発現を最適化するように修飾された、野生型(自然発生の)ヒトTRPM8と同一または実質的に同一のポリペプチドをコードする、本発明に従って変化または変異させたヒトTRPM8核酸配列を発現する検査細胞、そして(ii)TRPM8活性を測定するための手段、例えばカルシウム感受性色素、膜電位色素、もしくはナトリウム感受性色素;ヒトTRPM8の活性を調節する化合物を同定するための電気生理学的手段、またはTRPM8を介してのイオン流束、例えば放射標識イオン流束を検出するための手段、または原子吸光分光検出法という手段、を包含する検出システム、を包含するヒトTRPM8を調節する化合物を同定するための新規検査キットを提供することが、本発明の目的である。
【0017】
発明の簡単な説明
本発明は、所望の細胞、すなわちヒト細胞、例えばHEK-293細胞における発現を最適化するように操作された変異を含有する新規変異TRPM8核酸配列、ならびにTRPM8調節化合物、好ましくは冷却物質そのものとして機能する化合物、および/または他の冷却化合物、例えばメントール、イシリン、およびその誘導体のような冷却物質、の冷却効果を高める化合物、を同定するための、本発明に従っての新規変異TRPM8核酸配列を使用するアッセイにおける、これらの配列およびそれを含有する細胞の使用、に関する。
【0018】
先に記したようにTRPM8は、寒冷温度、または冷却効果を起こす化合物、例えばメントール、イシリン、およびその誘導体による刺激で、ナトリウムまたはカルシウムに対するその透過性を増大するTRPイオンチャネルファミリーの、非選択的カチオンチャネルである。それ故、一過的または安定的にTRPM8を発現する細胞は、スクリーニングにおいて、例えばTRPM8モジュレーターの効果を同定および定量するハイスループットプラットフォームのスクリーニングにおいて有用である。
【0019】
より特定すれば本発明は、修飾TRPM8核酸配列、および哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞における発現を最適化するように操作された、これらの変異または変化させたヒトTRPM8核酸配列を発現する検査細胞を使用する、細胞に基づいたアッセイ、に関する。そのような最適化された配列は、好ましくは野生型ヒトTRPM8ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を保持する、または瑣末な修飾のみを包含するにとどまるものとする。例えば本発明に従っての修飾TRPM8配列は、ネイティブヒトTRPM8ポリペプチドと少なくとも85%の配列の同一性、より好ましくは少なくとも90−95%の配列の同一性、そしてさらにより好ましくは少なくとも96−99%の配列の同一性を保有してよい。
【0020】
本発明は、特定の修飾TRPM8核酸配列、およびネイティブヒトTRPM8ポリペプチドと同一のポリペプチドをコードする前記修飾ヒトTRPM8を発現する細胞を例示し、ここで前記修飾TRPM8核酸配列は配列番号2に含有される。この配列は、ネイティブTRPM8核酸配列に対して、推定内在性のTATAボックス、chi部位、およびリボソームエントリー部位;ATリッチおよびGCリッチ配列ストレッチ、ARE、INS、およびCRS配列エレメント、ならびに潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、を除去するように修飾された。配列番号:2に含有されるこの配列は、601のサイレントヌクレオチドの置換変異を含有し、配列番号:1(下記記載)に含有される報告されたヒトTRPM8核酸配列と、81%のヌクレオチド配列の同一性を示す。この最適化TRPM8配列を使用しての細胞に基づいたアッセイは、ラットおよびヒトのTRPM8の活性化において、メントールと均等またはそれに優る化合物を同定する能力があることが実証された。
【0021】
発明および関連する用語の詳細な説明
本発明は、修飾TRPM8核酸配列、およびTRPM8モジュレーターを同定するために有用であるそのような配列を発現または含有する、細胞に基づいたアッセイおよび検査キットを提供する。以下に詳細に考察するように、本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列を発現する細胞を使用するこれらの細胞に基づいたアッセイは好ましくは、哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞におけるTRPM8活性を調節する化合物を同定するための、ハイスループットスクリーニングのプラットフォームを使用する。主題の修飾TRPM8核酸配列またはげっ歯類のTRPM8を発現する細胞を使用するこれらのアッセイは、好ましくは蛍光カルシウム感受性色素、例えばFura2、Fluo3もしくはFluo4、ならびに膜電位色素またはナトリウム感受性色素を用いて達成するものとする。あるいはTRPM8を調節する化合物は好ましくは、主題の修飾ヒトTRPM8核酸配列またはげっ歯類のTRPM8を発現する卵母細胞を使用して、パッチクランプ法または二電極ボルテージクランプ法による、ハイスループット電気生理学的スクリーニングにより同定する。
【0022】
さらにあるいはTRPM8を調節する化合物は、本発明の従っての修飾TRPM8核酸配列を発現する細胞を使用して、イオン流束アッセイ、例えば放射標識イオン流束アッセイ、またはイオン流束アッセイをカップルさせた原子吸収吸光分光法により検出してよい。
【0023】
本発明の修飾TRPM8核酸配列は、所望の細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞、および卵母細胞、またはGPCRおよびイオンチャネル調節化合物を同定するためのスクリーニングにおいて従来より使用されているその他のヒト細胞、における発現を最適化するように遺伝子的に操作する。
【0024】
TRPM8タンパク質は、カチオンチャネル活性を有するチャネルを形成することが知られている;特にこのチャネルはカルシウムおよびナトリウム透過性を示す。このタンパク質は、カルシウムに対して相対的に高い透過性を有するが、一価のカチオン間での選択性はほとんどない。チャネル活性は、例えばリガンドに誘発される[Ca2+]iの変化を記録すること、ならびに蛍光Ca2+指標色素および蛍光定量的画像解析を用いてのカルシウム流束を測定すること、により効率的に測定することができる。TRPM8は、感覚神経、ならびに前立腺上皮、および多様な腫瘍、例えばその他の上皮腫瘍を含むいくつかの組織において発現される。TRPM8または相同体を発現させてよい付加的な組織として、脳、および深部体温を制御する脳の領域、例えば視床下部を含む。
【0025】
TRPファミリーの中で、TRPM2およびTRPM7は、電気生理学的に特徴付けられており、それらの長いC末端ドメインに関連する酵素活性がチャネルの開放を制御すると考えられている二機能性タンパク質として、振る舞うことが示された。具体的にはTRPM2は、アデノシン−5’−ジホスホリボース(ADPR)ピロホスファターゼ活性に関連するNudixモチーフを含有し、細胞質のADPRおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)によりチャネルが開閉される(Perraud et al., Nature 411:595-9 (2001); Sano et al., Science 293:1327-30 (2001))。TRPM7は、チャネルの活性に必要であるプロテインキナーゼドメインを含有する(Runnels et al., Science 291:1043-7 (2001))。反対にTRPM8は有意により短いC末端領域を有し、チャネルの制御に関連すると思われるいかなる公知の酵素ドメインも含有していない。
【0026】
TRPM8は、特に害のない涼冷範囲(例えば15から28℃)のすべて、および有害な寒冷範囲の一部(例えば8から15℃)を包括的に含む温度に対する感受性のある、チャネルタンパク質をコードする。さらにTRPM8は、例えばこのチャネルがin vivoでその感受性の範囲を拡大する様式で修飾または調節されると、非常に寒冷の範囲(<8℃)の温度で、神経線維の脱分極に寄与すると思われることが示唆された。事実、TRPチャネルファミリーのVR1および数種のその他のメンバーは、ホスホリパーゼC(PLC)とカップルする受容体により制御される。特にVR1に関する活性化温度閾値は、PLCシグナル伝達系を活性化する(例えばブラジキニンおよび神経成長因子)、またはチャネルを直接調節する(例えばプロトンおよび脂質)、そのいずれかの炎症性物質により、より低い温度に顕著にシフトさせ得る(Caterina & Julius, Annu. Rev. Neurosci. 24:487-517 (2001); Chuang et al., Nature 411:957-62 (2001))。
【0027】
皮膚または粘膜に塗布した場合、メントールは冷却感覚をもたらし、呼吸反射を阻害し、そして高用量では局所的血管拡張に伴い、ピリッとさせるまたはヒリヒリさせる効果を起こす(Eccles, J. Pharm. Pharmacol. 46:618-30 (1994); Eccles, Appetite 34:29-35 (2000))。これらの生理学的作用のすべてではないとしてもほとんどは、これら組織内の感覚神経末端の興奮により説明することができるが、TRPM8受容体はそれ以外にもまた、冷却化合物または寒冷刺激によるこれらまたはそれ以外の効果に寄与していると思われる。
【0028】
上で考察したように本発明は、本明細書で提供した修飾ヒトTRPM8核酸配列、ならびにげっ歯類TRPM8を用いて、TRPM8核酸およびタンパク質のモジュレーター、例えば活性化物質、阻害物質、刺激物質、エンハンサー、等に関するスクリーニングの方法を提供する。そのようなモジュレーターは、例えばTRPM8の転写、翻訳、mRNA、もしくはタンパク質の安定性を調節することにより;TRPM8と原形質膜もしくはその他の分子との相互作用を変化させることにより;またはTRPM8タンパク質活性に影響を及ぼすことにより、TRPM8活性に影響を及ぼすことができる。化合物は、TRPM8ポリペプチドまたはそのフラグメントに結合する、および/またはその活性を調節することができる化合物を同定するため、例えばハイスループットスクリーニング(HTS)を使用してスクリーニングする。本発明において、TRPM8タンパク質はリコンビナント的に細胞、例えばヒト細胞内で発現させ、そしてイオンチャネル機能のいずれかの測定、例えば膜電位の測定または細胞内カルシウムレベルの変化の測定を使用することにより、TRPM8の調節についてアッセイする。イオン、例えばカチオンのチャネル機能をアッセイする方法として、例えばパッチクランプ法、二電極ボルテージクランプ法、全細胞電流の測定、およびCa2+感受性蛍光色素、例えばFura2、Fluo3もしくはFluo4を使用する蛍光画像解析技術、およびイオン流束アッセイ、例えば放射標識イオン流束アッセイ、またはイオン流束アッセイを含む。
【0029】
本出願において前述したように同定したTRPM8アゴニストは、いくつかの異なる目的に使用することができる。例えばTRPM8活性化物質は、食品、飲料、石鹸、医薬剤、石鹸等における香味剤または香料として含めることができる。これらの物質はまた、冷却感覚または鎮静感覚を提供するため、医薬剤中に使用することができる。また主題の化合物は、昆虫の防虫剤、またはその他の局所製剤、例えば日焼け止め、化粧品、日焼けローション、皮膚用軟膏、等において使用してもよい。また、TRPM8モジュレーターはまた、TRPM8活性に関連する疾患または状態、例えば疼痛を治療するために使用することができる。加えて本発明は、本明細書に開示したアッセイを実施するためのキットを提供する。
【0030】
定義
“寒冷知覚”または“寒冷感覚”という用語は本明細書において使用する場合、寒冷刺激を知覚するまたは応答する能力である。そのような刺激には、寒冷または涼冷温度、例えば約30℃より低い温度、および寒冷感覚を起こさせる自然発生または合成の化合物、例えばメントール(Eccles, J. Pharm. Pharmacol 46:618-630, 1994)、オイカリプトール、イシリン(Wei & Seid, J. Pharm. Pharmacol. 35:110-112, 1983)、等を含む。
【0031】
“疼痛”という用語は、刺激または神経の応答といった用語の中で記載される痛み、例えば体性痛(刺激、例えば寒冷温度またはメントールに対する正常な神経の応答)、および神経因性疼痛(しばしば明確な侵害性インプットを伴わない、傷害されたまたは変化した感覚経路の異常な応答);時間により分類される疼痛、例えば慢性疼痛および急性疼痛;その重症度の用語において分類される疼痛、例えば軽度、中等度、または重症;ならびに疾患の状態または症候群の症状または結果である疼痛、例えば炎症性疼痛、癌性疼痛、AIDSによる疼痛、関節症、片頭痛、三叉神経痛、心虚血、および糖尿病性ニューロパチー(例えば Harrison's Principles of Internal Medicine, pp. 93-98 (Wilson et al.編, 第12版 1991); Williams et al., J. of Medicinal Chem. 42:1481-1485 (1999)を参照のこと、本明細書においてそれらの全内容において参照として援用する)を含む、すべてのカテゴリーの疼痛をいう。
【0032】
“体性”痛は、上に記載したように、刺激、しばしば侵害性刺激、例えば傷害または病気、例えば風邪、発熱、外傷、火傷、感染、炎症、または癌のような疾患の過程に対する正常な神経の応答をいい、表皮痛(例えば皮膚、筋肉または関節に由来)および内臓痛(例えば臓器由来)の双方を含む。
【0033】
“神経因性”疼痛は、上に記載したように、末梢および/または中枢感覚経路における傷害または慢性的変化に起因する疼痛をいい、その場合この疼痛はしばしば明確な侵害性インプットを伴わずに起こるまたは持続する。
【0034】
“カチオンチャネル”は、細胞膜を通してのカチオンの流れを制御する多様なタンパク質群である。特定のカチオンを輸送するための特異的なカチオンチャネルの能力は、典型的にはカチオンの原子価、ならびに特定のカチオンに関する所定のチャネルの特異性により変化する。
【0035】
“ホモマーチャネル”は、同一のアルファサブユニットから成るカチオンチャネルをいうのに対して、“ヘテロマーチャネル”は、2つまたはそれより多くの異なるタイプのアルファサブユニットから成るカチオンチャネルをいう。ホモマーチャネルおよびヘテロマーチャネルの双方とも、補助的なベータサブユニットを含むことができる。
【0036】
“ベータサブユニット”は、(複数の)アルファサブユニットから成るカチオンチャネルの補助的サブユニットであるポリペプチドモノマーである;しかしながらベータサブユニット単独ではチャネルを形成することはできない(例えば米国特許第5,776,734号を参照のこと)。ベータサブユニットは、例えばアルファサブユニットが細胞表面に到達する手助けをすることによりチャネルの数を増加させる、活性化キネティクスを変化させる、そしてチャネルに結合する天然のリガンドの感受性を変化させることが知られている。ベータサブユニットは、孔領域の外部にあって、孔領域を構成するアルファサブユニットと結合することができる。それらはまた、孔領域の外部開口部に寄与することができる。
【0037】
“真正の”または“野生型”または“ネイティブな”ヒトTRPM8核酸配列という用語は、配列番号:1に含有される。
“真正の”または“野生型”または“ネイティブな”ヒトTRPM8ポリペプチドは、配列番号:1に含有される核酸配列によりコードされるポリペプチドをいう。
【0038】
“修飾hTRPM8核酸配列”または“最適化hTRPM8核酸配列”という用語は、リコンビナントホスト細胞、および最も特にはヒト細胞、例えばHEK−293細胞における発現に有利である変異を導入するように、遺伝子的に操作されたhTRPM8核酸配列をいう。特定すればこれらの変異は、以下:(i)TATAボックス、(ii)chi部位、(iii)リボソームエントリー部位、(iv)ARE配列エレメント、(v)INS配列エレメント、(vi)CRS配列エレメント、および/または(vii)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去する、配列番号:1(図1)に示したような真正hTRPM8核酸配列においてサイレント変異を導入することを含む。例示した修飾TRPM8核酸配列は、601のサイレントヌクレオチド修飾を含有する。典型的には本発明に従っての修飾TRPM8核酸配列は、少なくとも100のサイレント変異、より典型的には少なくとも200−400のサイレント変異、そしてさらにより典型的には少なくとも400−600のサイレント変異を包含するものとする。具体例としての適当なサイレント変異を図1に示す。さらにこの配列は、ホスト細胞の好ましいコドン、特にヒトホスト細胞の好ましいコドンを導入するように修飾してよい。また修飾hTRPM8核酸配列は、付加的に非サイレント変異、例えば保存的アミノ酸置換変異を含むように修飾してもよい、ただしそのような変異はTRPM8イオンチャネルのリガンド結合特性および機能性特性に実質的に影響を及ぼさないものとする。本発明に従ってのアッセイにおいて有用である、具体例としての修飾hTRPM8核酸配列は、配列番号:2に含有される。
【0039】
“TRPM8”タンパク質もしくはそのフラグメント、または“TRPM8”をコードする核酸またはそのフラグメントという用語は、以下:(1)TRPM8核酸によりコードされるアミノ酸配列、またはTRPM8タンパク質のアミノ酸配列、例えば配列番号:1によりコードされるタンパク質に対して、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれより多くのアミノ酸の領域にわたり、約60%より高いアミノ酸配列の同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれより高いアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有する;(2)TRPM8タンパク質のアミノ酸配列を包含する免疫原、またはその免疫原性フラグメント、および保存的に修飾されたそのバリアントに対して産生させた抗体、例えばポリクローナル抗体に特異的に結合する;(3)TRPM8タンパク質をコードする核酸配列(配列番号:1)に対応するアンチセンス鎖、および保存的に修飾されたそのバリアントに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリッドする;(4)TRPM8核酸、例えば配列番号:1、または別の公知のTRPM8核酸配列に対して、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれより多くのヌクレオチドの領域にわたり、約60%より高い配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれより高い配列同一性を有する核酸配列を有する、核酸およびポリペプチドの多型バリアント、対立遺伝子、変異体、および種間相同体をいう。ラットTRPM8に関する核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBank アクセション番号第AY072788 およびNM134371の下に登録されているが、McKemy et al., Nature 416:52-58 (2002) および配列番号:1もまた参照のこと。ヒトTRPM8に関する核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBankアクセション番号NM024080およびAY090109の下に登録されているが、Tsavaler et al., Cancer Res. 61:3760-3769, 2001; 米国特許第6,194,152号、およびWO 99/09166もまた参照のこと。マウスTRPM8に関する核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBankアクセション番号NM134252の下に登録されているが、Peier et al., Cell 108:705-715 (2002)もまた参照のこと。
【0040】
TRPM8ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、典型的には霊長類、例えばヒト;げっ歯類、例えばラット、マウス、ハムスター;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはあらゆる哺乳動物を含むがこれに限定されない哺乳動物に由来する。本発明の核酸およびタンパク質は、自然発生またはリコンビナントの分子の双方を含む。TRPM8タンパク質は典型的にはカルシウムイオンチャネル活性を有する;すなわちそれらはカルシウムに対して透過性である。
【0041】
“機能的効果を決定する”または“細胞における効果を決定する”により、TRPM8ポリペプチドの影響下で間接的または直接的に存在するパラメータを増大または減少させる化合物の効果、例えば機能的、物理的、フェノタイプ、および化学的な効果をアッセイすることを意味する。そのような機能的効果として、イオン流束、膜電位、電流振幅、電位による開閉制御における変化、ならびにその他の生物学的効果、例えばTRPM8の遺伝子発現、またはあらゆるマーカー遺伝子、等における変化、を含むがこれに限定されない。イオン流束は、チャネルを通過するあらゆるイオン、例えばカルシウム、およびその類似体、例えば放射性同位体を含むことができる。そのような機能的効果は、当業者に公知のあらゆる手段、例えば電位感受性色素を用いてのパッチクランプ法により、またはパラメータ、例えば分光法の特徴(例えば蛍光、吸光度、屈折率)、水力学(例えば形)、クロマトグラフィー、もしくは溶解度の特性における変化を測定することにより、測定することができる。
【0042】
TRPM8ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の“阻害物質”、“活性化物質”、および“モジュレーター”は、TRPM8ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のin vitro およびin vivoアッセイにおいて使用することで同定される、活性化分子、阻害分子、または調節分子をいうために使用する。阻害物質は、例えば結合して、部分的にまたは完全にTRPM8タンパク質の活性を遮断する、低減する、妨げる、活性化を遅延させる、不活性化する、脱感作させる、または活性または発現をダウンレギュレートする化合物、例えばアンタゴニストである。“活性化物質”は、TRPM8タンパク質の活性を増大する、開く、活性化する、促進する、活性化を高める、感作する、作動する、またはアップレギュレートする化合物である。阻害物質、活性化物質、またはモジュレーターはまた、TRPM8タンパク質の遺伝的に修飾されたバージョン、例えば変化した活性を伴うバージョン、ならびに自然発生および合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、ペプチド、環状ペプチド、核酸、抗体、アンチセンス分子、siRNA、リボザイム、有機低分子、等を含む。阻害物質および活性化物質に関するそのようなアッセイは、上に記載したように、例えばin vitroで細胞、細胞抽出物、または細胞膜においてTRPM8タンパク質を発現させること、推定モジュレーター化合物を投与すること、そしてその後活性における機能的効果を決定することを含む。
【0043】
潜在的な活性化物質、阻害物質またはモジュレーターで処理したTRPM8タンパク質を包含するサンプルまたはアッセイを、阻害物質、活性化物質、またはモジュレーターを用いないコントロールサンプルと比較して、活性化または移入(migration)の調節の程度を検討する。コントロールサンプル(阻害物質で未処理)を、100%の相対的タンパク質活性値とする。TRPM8の阻害は、コントロールと比較しての活性の値が約80%、好ましくは50%、より好ましくは25−0%である場合に達成される。TRPM8の活性化は、コントロール(活性化物質で未処理)と比較しての活性化の値が110%、より好ましくは150%、より好ましくは200−500%(すなわちコントロールと比較して2から5倍高い)、より好ましくは1000−3000%高い場合に達成される。
【0044】
“検査化合物”または“薬剤候補物質”または“モジュレーター”または語法的 (grammatical)均等物は、本明細書において使用する場合、寒冷感覚を調節する能力について検査すべき、自然発生または合成のあらゆる分子、例えばタンパク質、オリゴペプチド(例えば約5から約25アミノ酸長、好ましくは約10から約20または約12から約18アミノ酸長、好ましくは12、15、または18アミノ酸長)、有機低分子、多糖類、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、siRNA、オリゴヌクレオチド、リボザイム、等を説明する。検査化合物は、検査化合物のライブラリー、例えば十分な範囲の多様性を提供するコンビナトリアルライブラリーまたは無作為化ライブラリーの形であることができる。検査化合物は、所望により融合パートナー、例えばターゲティング化合物、レスキュー化合物、二量体化化合物、安定化化合物、addressable化合物、およびその他の機能的部分と連結する。従来的には、有用な特性を有する新規化学的存在は、いくつかの所望の特性または活性、例えば阻害活性を有する検査化合物(“リード化合物”と呼ばれる)を同定し、そのリード化合物のバリアントを作成し、そしてそれらバリアント化合物の特性および活性を評価することにより、作成される。しばしばハイスループットスクリーニング(HTS)法がそのような分析のため使用される。
【0045】
“有機低分子”は、約50ダルトンより大きく約2500ダルトンより小さい、好ましくは約2000ダルトンより小さい、好ましくは約100から約1000ダルトンの間の、より好ましくは約200から約500ダルトンの間の分子量を有する、自然発生または合成のいずれかの有機分子をいう。
【0046】
“生物学的サンプル”は、生検および剖検のサンプルのような組織の切片、組織学的目的で採取された凍結切片を含む。そのようなサンプルは、血液、痰、組織、培養細胞、例えば初代培養、外植片、および形質転換された細胞、便、尿、等を含む。生物学的サンプルは典型的には、真核細胞の有機体、最も好ましくは哺乳動物、例えば霊長類、例えばチンパンジーもしくはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;げっ歯類、例えばモルモット、ラット、マウス;ウサギ;あるいは鳥;爬虫類;または魚類より得る。
【0047】
2つまたはそれより多くの核酸配列またはポリペプチド配列のコンテクストにおける、“同一の”または“同一性”のパーセントという用語は、以下に記載するデフォルトパラメータによるBLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、または手動アラインメントおよび目視検査により測定(例えばNCBIウェブサイト、等を参照のこと)して測定した時、比較ウィンドウまたは所望の領域にわたり最大の対応で比較および整列化させた場合に、等しい、または特定のパーセントの等しいアミノ酸残基またはヌクレオチド(すなわち特定の領域(例えば配列番号:1のヌクレオチド配列)にわたり、約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い同一性)を有する、2つまたはそれより多くの配列または部分配列をいう。そのような配列を、その場合 “実質的に同一”であるという。この定義はまた、検査配列の相補鎖に対していっても、または適用してもよい。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものを含む。以下に記載するように、好ましいアルゴリズムはギャップ等を説明することができる。好ましくは同一性は、少なくとも約25アミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたり、より好ましくは50−100アミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたり存在する。
【0048】
配列比較に関して、典型的には1つの配列が基準配列として作用し、それに対して検査配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、検査配列および基準配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分座標をデザインし、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメータをデザインする。好ましくはプログラムのデフォルトパラメータを使用することができ、または代わりのパラメータをデザインすることもできる。次に配列比較アルゴリズムが、そのプログラムのパラメータに基づいて、基準配列と比較しての検査配列に関する配列同一性のパーセントを算出する。
【0049】
“比較ウィンドウ”は本明細書において使用する場合、ある配列と基準配列の2つの配列を最適に整列化した後、その配列を同数の近接する位置の基準配列と比較してよい、20から600、一般に約50から約200、より一般には約100から約150から成る群より選択される、一定数の近接する位置のいずれか1つのセグメントに対して参照することを含む。比較のための配列の最適アラインメントの方法は、当該技術分野において周知である。比較のための配列の最適アラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman fk Wunsch, J. MoI. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci.USA 85:2444 (1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズム(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.におけるGAP、BESTPIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューターでの実行、または手動アラインメントおよび目視検査(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel etal., 編1995 増刊))により実施することができる。
【0050】
配列同一性のパーセントおよび配列の類似性を決定するために適するアルゴリズムの好ましい例は、BLASTおよびBLAST2.0のアルゴリズムであり、これらは各々Altschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389-3402 (1977) および Altschul et al., J. MoI. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST2.0を、本明細書に記載したパラメータを用いて使用し、本発明の核酸およびタンパク質に関する配列同一性のパーセントを決定する。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初にデータベース配列中の同じ長さのワードと整列化した時に、ある正の値の閾値スコアTとマッチする、または満足させるかのいずれかである、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することにより、高いスコアリング配列ペア(high scoring sequence pair HSP)を同定することを伴う。Tは、近隣ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold (Altschul et al.,上記記載))という。これらの最初の近隣ワードのヒットが、それらを含有するより長いHSPの検索を開始するための種として作用する。このワードのヒットは、累積アラインメントスコアを増加することのできる限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアはヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(マッチする残基のペアに関するリワード(reward)スコア;常に>0)およびN(マッチしない残基に関するペナルティースコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列に関しては、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを算出する。各方向でのワードのヒットの延長は、以下の場合:累積アラインメントスコアがその到達した最大値から数量Xまで低下した時;累積スコアが1つまたはそれより多くの負のスコアリング残基のアラインメントの累積によってゼロもしくはそれ以下になった時;またはいずれかの配列の末端に達した時、に停止する。BLSTアルゴリズムパラメータであるW、T、およびXが、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関する)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および双方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関してBLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および期待値(E)10を使用し、そしてBLOSUM62スコアリング・マトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと)は、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および双方の鎖の比較を使用する。
【0051】
“核酸”は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびそのポリマー、ならびにその相補鎖をいう。この用語は、合成、自然発生、および自然発生しない、基準核酸と類似の結合特性を有する、そして基準ヌクレオチドと類似の様式で代謝される、公知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは連結基(linkage)を含有する核酸を包括的に含む。そのような類似体の例として、非限定的にホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)を含む。
【0052】
他に指摘していなければ、特定の核酸配列はまた暗黙のうちに、その保存的に修飾されたバリアント(例えば縮重コドンの置換)および相補配列、ならびに明確に表示された配列を包括的に含む。具体的には縮重コドンの置換は、1つもしくはそれより多くの選択された(またはすべての)コドンの第3の位置を、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換する配列を作成することにより達成してよい(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Bibl. Chem. 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., MoI. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換的に使用する。
【0053】
特定の核酸配列はまた、暗黙のうちに“スプライスバリアント”を包括的に含む。同様に核酸によりコードされた特定のタンパク質は、暗黙のうちに、その核酸のスプライスバリアントによりコードされるあらゆるタンパク質を包括的に含む。“スプライスバリアント”はその名称の示唆するように、遺伝子の選択的スプライシングの産生物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(代替え)核酸スプライス産生物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされる可能性がある。スプライスバリアントの産生メカニズムは多様であるが、エキソンの選択的スプライシングを含む。転写の読み過ごしにより同じ核酸に由来する代替えポリペプチドもまた、この定義により包括的に含まれる。スプライス産生物のリコンビナントの形を含む、スプライシング反応のあらゆる産生物が、この定義に含まれる。カリウムチャネルのスプライスバリアントの例は、Leicher, et al., J. Biol. Chem. 273(52):35095-35101 (1998)に考察されている。
【0054】
“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”という用語は、アミノ酸残基のポリマーをいうため、本明細書において互換的に使用する。この用語は、1つまたはそれより多くのアミノ酸残基が、対応する自然発生のアミノ酸の人工的な化学的擬態であるアミノ酸ポリマー、ならびに自然発生のアミノ酸ポリマーおよび自然発生しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0055】
“アミノ酸”という用語は、自然発生および合成のアミノ酸、ならびに自然発生のアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸擬態をいう。自然発生のアミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるもの、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、●−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合する炭素、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物をいう。そのような類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、自然発生のアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸擬態は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、自然発生のアミノ酸と類似の様式で機能する化学的化合物をいう。
【0056】
アミノ酸は本明細書において、それらの一般に知られている3文字表記により、またはthe IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている1文字表記により記述してよい。同様にヌクレオチドは、それらの一般的に受け入れられている1文字のコードにより記述してよい。
【0057】
“保存的に修飾されたバリアント”は、アミノ酸配列および核酸配列の双方に適用する。特定の核酸配列に関しては、保存的に修飾されたバリアントは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、または核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合には、本質的に同一の配列をいう。遺伝的コードの縮重のため、機能的に同一な多数の核酸があらゆる所定のタンパク質をコードする。例えばコドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがってコドンによりアラニンが特定されるすべての位置で、コードされたポリペプチドを変えることなく、そのコドンを、記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸のバリエーションは、保存的に修飾されたバリエーションの1種である“サイレントバリエーション”である。本明細書においてポリペプチドをコードする各核酸配列はまた、その核酸の各潜在的サイレントバリエーションについても述べている。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を得ることができることを認識するだろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントバリエーションは、記載された各配列において、発現産生物に関しては顕在化していないが、実際のプローブ配列に関しては異なる。
【0058】
アミノ酸配列に対する場合、 コードされた配列中の1つのアミノ酸またはアミノ酸のわずかなパーセントを変更、付加、または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失、または付加が、変更が結果として化学的に類似するアミノ酸による置換となる“保存的に修飾されたバリアント”であることを、当業者は認識するだろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当該技術において周知である。そのような保存的に修飾されたバリアントは、多型バリアント、種間相同体、および本発明の対立遺伝子に加えられ、除外されない。
【0059】
以下の8つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:すなわち1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えばCreighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0060】
高分子構造、例えばポリペプチドの構造は、多様なレベルの組織化の用語で記載することができる。この組織化の一般的考察に関しては、例えばAlberts et al., Molecular Biology of the Cell (第3版, 1994)およびCantor and Schimmel, Biophysical Chemistry Part I: The Conformation of Biological Macromolecules (1980)を参照のこと。“一次構造”は、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。“二次構造”は、ポリペプチド内の局所的に整えられた3次元構造をいう。これらの組織化は一般にドメイン、例えば膜貫通ドメイン、孔ドメイン、および細胞質側末端ドメインとして知られている。ドメインは、ポリペプチドのコンパクトなユニットを形成するポリペプチドの一部であり、典型的には15から350アミノ酸長である。具体例としてのドメインに、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインを含む。典型的なドメインは、より小さな組織化のセクション、例えばベータ・シートおよびアルファ・へリックスのストレッチから構成される。“三次構造”は、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。“四次構造”は、独立した三次ユニットの非共有的会合により形成される三次元構造をいう。異方性という用語はまたエネルギー用語としても知られている。
【0061】
“標識”または“検出可能部分”は、分光法、光化学、生化学、免疫化学、化学、またはその他の物理的な手段により検出可能な組成である。例えば有用な標識として、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えばELISAにおいて一般に使用されるようなもの)、ビオチン、ジゴキシゲニンまたはハプテン、そして例えばペプチド中に放射標識を組み込むことにより検出可能とすることのできる、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用することのできるタンパク質を含む。
【0062】
“リコンビナント”という用語は、例えば細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用する場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入、またはネイティブな核酸もしくはタンパク質の変化により修飾されたこと、あるいは細胞がそのように修飾された細胞に由来することを指摘する。したがって例えばリコンビナント細胞は、細胞のネイティブな(非リコンビナントの)形の範囲内には見出されない遺伝子を発現する、またはそうでなければ異常に発現される、低発現される、もしくは全く発現されないネイティブな遺伝子を発現する。
【0063】
“異種の”という用語は、核酸の部分に関して使用する場合、その核酸が、自然界では互いに同一の類縁関係において見出されない、2つまたはそれより多くの部分配列を包含することを指摘する。例えば、新たな機能的核酸を作製するために配列された無関係の遺伝子由来の2つまたはそれより多くの配列、例えばある原料由来のプロモーターおよび別の原料由来のコード領域を有する核酸が、典型的には組換えにより生成される。同様に異種タンパク質は、そのタンパク質が自然界では互いに同一の類縁関係において見出されない2つまたはそれより多くの部分配列を包含する(例えば融合タンパク質)ことを指摘する。
【0064】
“ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件”という語句は、プローブが、典型的には核酸の複雑な混合物中でその標的配列にハイブリダイズし、他の配列にはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる環境では異なることになる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションのための伸長のガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry およびMolecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見出せる。一般にストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度、pHで、特異的配列の融解温度(Tm)より約5−10℃低くなるように選択される。Tmは、(定義されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で)標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(標的配列が過剰に存在する場合に、Tmで、50%のプローブが平衡状態で占有される)温度である。ストリンジェントな条件はまた、不安定化物質、例えばホルムアミドの添加により達成してもよい。選択的または特異的なハイブリダイゼーションに関して、ポジティブなシグナルは、バックグラウンドのハイブリダイゼーションの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドの10倍である。具体例としてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下のとおりとすることができる:50% ホルムアミド、5X SSC、および1% SDS、42℃でのインキュベーション、または5X SSC、1% SDS、65℃でのインキュベーションおよび0.2倍量のSSC、および0.1% SDS 65℃での洗浄。
【0065】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸であっても、それらのコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、実質的に同一である。このことは、例えば遺伝子コードにより許容される最大コドン縮重を用いて核酸のコピーが作成される場合に起こる。そのような場合核酸は、典型的に中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。具体例としての“中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”は、40% ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSのバッファー中で、37℃でのハイブリダイゼーション、および1倍量のSSC中、45℃での洗浄を含む。ポジティブなハイブリダイゼーションは、少なくともバックグラウンドの2倍である。当業者は、これに代わるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を利用して、類似のストリンジェンシーの条件を提供することができることを、容易に認識するだろう。ハイブリダイゼーションのパラメータを決定するためのさらなるガイドラインは、多数の参考文献、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, et al.編、に提供されている。
【0066】
PCRに関して、約36℃の温度が、低ストリンジェンシーの増幅に関しては典型的であるが、アニーリング温度はプライマーの長さに依存して約32℃および48℃の間と多様であってよい。高ストリンジェンシーのPCR増幅に関しては、約62℃の温度が典型的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度はプライマーの長さおよび特異性に依存して約50°から65℃の範囲とすることができる。高ストリンジェンシーおよび低ストリンジェンシーの双方の増幅に関する典型的なサイクルの条件は、30秒−2分間の90℃−95℃の変性期、30秒−2分間持続するアニーリング期、および1−2分間の約72℃の伸張期を含む。低ストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシーの増幅反応に関するプロトコールおよびガイドラインは、例えばInnis et al. (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y.に提供されている。
【0067】
“抗体”は、抗原に特異的に結合し、認識する、免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントに由来するフレームワーク領域を包含するポリペプチドをいう。認識される免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン、およびミューの定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはエプシロンとして分類され、これらを各々順に免疫グロブリンクラスのIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEと定義する。典型的には抗体の抗原結合領域が、結合の特異性およびアフィニティーにおいて最も重大な意味を持つことになる。
【0068】
抗体という用語は、本明細書において使用する場合、抗体全体の修飾により産生される抗体フラグメント、またはリコンビナントDNA方法論(例えば一本鎖Fv)、キメラ、ヒト化を用いて新たに合成されるもの、またはファージディスプレーライブラリーを用いて同定されるもの(例えばMcCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)を参照のこと)のいずれかをまた含む。抗体、例えばリコンビナント抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の調製に関して、当該技術において公知の多くの技術を使用することができる(例えばKohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4: 72 (1983); Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. (1985)において、pp. 77-96; Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)および Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1999);ならびに Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (第2版 1986)を参照のこと。)
抗体に“特異的に(もしくは選択的に)結合する”、または“〜との特異的(もしくは選択的)免疫反応性のある”という語句は、タンパク質またはペプチドをいう場合、しばしばタンパク質およびその他の生物体のヘテロな母集団において、そのタンパク質の存在が決定力のある結合反応をいう。したがってデザインされた免疫アッセイ条件下で、特定された抗体は特定のタンパク質と、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10から100倍より多く結合する。そのような条件下での抗体との特異的な結合は、特定のタンパク質に対するその特異性に関して選択される抗体を必要とする。例えば、配列番号:1、多型バリアント、対立遺伝子、オルソログ、および保存的に修飾されたバリアント、もしくはスプライスバリアント、またはその部分、によりコードされたようなTRPM8タンパク質に対して作製されたポリクローナル抗体を選択して、TRPM8タンパク質との特異的免疫反応性があり、他のタンパク質とは反応しないポリクローナル抗体のみを得ることができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を除外することにより達成してよい。多様な免疫アッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質との特異的免疫反応性のある抗体を選択してよい。例えば固相ELISA免疫アッセイをルーチン的に使用して、タンパク質との特異的な免疫反応性のある抗体を選択する(特異的免疫反応性を決定するために使用することのできる免疫アッセイフォーマットおよび条件の説明に関して、例えばHarlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照のこと)。
【0069】
“治療上有効な用量”により、本明細書においては投与されて効果を提供する用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存し、当業者により公知の技術を用いて確認できるだろう(例えばLieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (1-3巻, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);および Pickar, Dosage Calculations (1999)を参照のこと)。
【0070】
TRPM8のリコンビナント発現
クローン化遺伝子、例えばTRPM8をコードするcDNAの高レベルの発現を得るため、転写を指示する強いプロモーター、転写/翻訳のターミネーター、そしてタンパク質をコードする核酸に関する場合には、翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含有する発現ベクター中に、典型的にはTRPM8をサブクローニングする。適切な真核生物および原核生物のプロモーターは、当該技術において周知であり、例えばSambrook et al.および Ausubel et al.、上記記載、に記載されている。例えばTRPM8タンパク質を発現するための細菌発現系は、例えば大腸菌、バチルス菌、およびサルモネラ菌において利用可能である(Palva et al., Gene 22:229-235 (1983); Mosbach et al., Nature 302:543-545 (1983))。そのような発現系に関するキットは市販にて入手可能である。哺乳類細胞、酵母、および昆虫細胞に関する真核生物の発現系は、当該技術において周知であり、また市販により入手することもできる。例えばレトロウイルス発現系は、本発明において使用してよい。以下に記載するように、主題の修飾hTRPM8は、好ましくはヒト細胞、例えばハイスループットスクリーニング用に広く使用されているHEK−293細胞において発現させる。
【0071】
異種核酸の発現を指示するために使用されるプロモーターの選択は、特定の適用に依存する。プロモーターは好ましくは、その自然の設定における転写開始部位からの距離とほぼ同じ、異種の転写開始部位からの距離に位置させる。しかしながら当該技術において公知のように、この距離の多少の変化は、プロモーターの機能を喪失することなく適応させることができる。
【0072】
プロモーターに加えて、発現ベクターは典型的には、転写ユニット、またはホスト細胞におけるTRPM8をコードする核酸の発現に必要な、すべての付加的なエレメントを含有する発現カセット、を含有する。したがって典型的な発現カセットは、TRPM8をコードする核酸配列、および転写物の効率的なポリアデニル化に必要なシグナルに実施可能なように連結されたプロモーター、リボソーム結合部位、および翻訳終結部位を含有する。カセットの付加的なエレメントとして、エンハンサー、およびゲノムDNAを構造遺伝子として使用する場合には、機能的なスプライスドナー部位およびアクセプター部位を伴うイントロンを含んでよい。先に記したように、例示した修飾hTRPM8は、推定上の潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位を除去するように修飾されている。
【0073】
プロモーター配列に加えて、発現カセットはまた、効率的な終結を提供するため、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含有しなければならない。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得てもよいし、異なる遺伝子から得てもよい。
【0074】
遺伝情報を細胞内に輸送するために使用される特定の発現ベクターには、特に重大な意味はない。真核細胞または原核細胞における発現に使用される従来のベクターのいずれかを使用してよい。標準的な細菌の発現ベクターは、プラスミド、例えばpBR322を基本とするプラスミド、pSKF、pET23D、ならびに融合発現系、例えばMBP、GST、およびLacZを含む。エピトープタグ、例えばc−mycもまた、簡便な単離法を提供するようにリコンビナントタンパク質に加えることができる。配列タグを、核酸のレスキュー(rescue)のため発現カセット中に含めてよい。マーカー、例えば蛍光タンパク質である緑色または赤色の蛍光タンパク質、β−gal、CAT、等を、ベクターの形質導入に関するマーカーとしてベクター中に含めることができる。
【0075】
真核ウイルス由来の制御エレメントを含有する発現ベクターは、典型的には真核生物発現ベクター、例えばSV40ベクター、パピローマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびエプスタイン・バーウイルス由来ベクターにおいて使用される。その他の具体例としての真核生物ベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5、バキュロウイルスpDSVE、そしてCMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、げっ歯類乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、polyhedrin(多核体)プロモーター、または真核細胞における発現に有効であることが示されたその他のプロモーターの指示下で、タンパク質の発現を可能にするあらゆるその他のベクターを含む。
【0076】
真核生物ベクターからのタンパク質の発現はまた、誘導性プロモーターを用いて制御することができる。誘導性プロモーターを用いる場合、プロモーター内にこれらの物質に関する応答エレメントを組み込むことにより、発現レベルが、誘導物質、例えばテトラサイクリンまたはエクジソンの濃度に結びつけられる。一般に高レベルの発現は、誘導物質の存在下でのみ誘導性プロモーターより得られる;基底発現レベルを最小とする。
【0077】
本発明で使用するベクターは、調節可能なプロモーター、例えばテトラサイクリン制御系(tet-regulated system)およびRU−486系(例えばGossen & Bujard, Proc. Natl Acad. Sci USA 89:5547 (1992); Oligino et al., Gene Ther. 5:491-496 (1998);Wang et al., Gene Ther. 4:432-441 (1997); Neering et al., Blood 88:1147-1155 (1996);および Rendahl et al., Nat. Biotechnol. 16:757-761 (1998)を参照のこと)を含んでよい。これらは、候補の標的核酸の発現に低分子のコントロールを与える。この有益な特徴を使用して、所望の表現型が、体細胞変異ではなく形質移入されたcDNAにより引き起こされたことを決定することができる。
【0078】
いくつかの発現系は、遺伝子増幅を提供するマーカー、例えばチミジンキナーゼおよびジヒドロ葉酸還元酵素を有する。あるいは遺伝子増幅を伴わない高収量発現系、例えばpolyhedrinプロモーターまたは他の強いバキュロウイルスプロモーターの指示下で、TRPM8をコードする配列を有するバキュロウイルスベクターを、昆虫細胞において使用することもまた、適切である。
【0079】
典型的に発現ベクター中に含まれるエレメントはまた、特定のホスト細胞において機能するレプリコンを含む。大腸菌の場合、ベクターは、リコンビナントプラスミドを内包する細菌の選択を可能にするための抗生物質耐性をコードする遺伝子、および真核生物の配列の挿入を可能にするためのプラスミドの非必須領域における独特の制限部位、を含有してよい。選択される特定の抗生物質耐性遺伝子には重大な意味はなく、当該技術における公知の多くの耐性遺伝子のいずれでも適する。必要であれば、それら配列が真核細胞におけるDNAの複製を妨げないように、原核生物の配列を好ましくは選択する。
【0080】
標準的な形質移入の方法は、TRPM8タンパク質を大量に発現する細菌株、哺乳類細胞株、酵母菌株、または昆虫細胞株を使用してよく、その後このタンパク質を標準的な技術を用いて精製する(例えばGolley et al., J. Biol. Chem. 264:17619-17622 (1989); Guide to Protein Purification, in Methods in Enzymology, 182 巻 (Deutscher編, 1990)を参照のこと)。真核細胞および原核細胞の形質転換は、標準的な技術に従って行う(例えばMorrison, J. Bact. 132:349-351 (1977); Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101:347-362 (Wu et al.編, 1983)を参照のこと)。外来核酸配列をホスト細胞に導入するための周知の方法のいずれかを使用してよい。これらには、リン酸カルシウムによる形質移入、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、微粒子銃、リポソーム、マイクロインジェクション、プラズマベクター、ウイルスベクター、そしてクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、またはその他の外来遺伝子材料を、ホスト細胞内に導入するためのその他の周知の方法のいずれか、を含む(例えばSambrook et al.、上記記載、を参照のこと)。使用する特定の遺伝子操作法で、TRPM8を発現することのできるホスト細胞内に少なくとも1つの遺伝子をうまく導入できることだけが、必要であるに過ぎない。
【0081】
発現ベクターを細胞内に導入した後、形質移入された細胞をTRPM8発現に好ましい条件下で培養する。事例によってはそのようなTRPM8ポリペプチドを、以下に明らかにする標準的な技術を用いて培養液から回収してもよい。
【0082】
TRPM8タンパク質のモジュレーターに関するアッセイ
TRPM8タンパク質の調節は、上に記載したような細胞に基づいたモデルを含む、多様なin vitro およびin vivoのアッセイを用いて評価することができる。そのようなアッセイを使用して、TRPM8タンパク質またはそのフラグメントの阻害物質および活性化物質を、そして結果的に寒冷感覚の阻害物質および活性化物質について検査することができる。TRPM8タンパク質のそのようなモジュレーターは、涼冷という知覚を創出するため、例えば医薬剤におけるもしくは調味としての使用、または寒冷知覚に関する障害の治療のために有用である。TRPM8タンパク質のモジュレーターは、リコンビナントまたは自然発生のTRPM8のいずれかを使用して検査する。
【0083】
上に記したように、好ましくは主題の細胞に基づいたアッセイにおいて使用するTRPM8タンパク質は、特定の細胞、好ましくはヒト細胞において発現を最適化するように操作されたhTRPM8核酸配列によりコードされる、そしてより好ましくは配列番号:2に含有される修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされる、またはラットTRPM8ポリペプチドであるものとする。
【0084】
リコンビナントまたは自然発生のいずれかの、TRPM8タンパク質の寒冷感覚表現型、またはTRPM8タンパク質を発現するさいぼうの測定は、本明細書に記載したようなin vitro 、in vivo 、およびex vivoの多様なアッセイを用いて行うことができる。TRPM8を調節することのできる分子を同定するため、細胞内のTRPM8活性における多様な候補モジュレーターの効果を検出するためのアッセイを行う。
【0085】
TRPM8タンパク質のチャネル活性は、パッチクランプ法、全細胞電流の測定、放射標識イオン流束アッセイ、または原子吸光分光法とカップルさせた流束アッセイを含むイオン流束の変化を測定するための様々なアッセイ、および電位感受性色素、またはカルシウムもしくはナトリウム感受性色素を用いての蛍光アッセイを使用してアッセイすることができる(例えばVestergarrd-Bogind et al., J. Membrane Biol. 88:67-75 (1988); Daniel et al., J. Pharmacol. Meth. 25:185-193 (1991); Hoevinsky et al., J. Membrane Biol. 137:59-70 (1994)を参照のこと)。例えばTRPM8タンパク質またはその相同体をコードする核酸は、アフリカツメガエル卵母細胞内に注入する、または哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞内に形質移入することができる。次にチャネル活性を、膜分極における変化、すなわち膜電位における変化を測定することにより評価することができる。
【0086】
電気生理学的測定を得る好ましい手段は、パッチクランプ法、例えば“細胞接着”型、“インサイドアウト”型、および“全細胞”型(例えばAckerman et al., New Engl. J. Med. 336:1575-1595, 1997を参照のこと)を用いて電流を測定することによる。全細胞電流は、標準的な方法論、例えばHamil et al., Pflugers. Archiv. 391:185 (1081)により記載された方法を用いて決定することができる。
【0087】
チャネル活性はまた便利なことに、細胞内Ca2+の変化を測定することにより簡便に評価できる。そのような方法を本明細書において例示する。例えば、カルシウム流速は、45Ca2+の取り込みの評価により、または蛍光色素、例えばFura−2を用いることにより、測定することができる。典型的なマイクロ蛍光定量アッセイにおいて、色素、例えばFura−2(この色素は1つのCa2+イオンが結合すると蛍光の変化を起こす)は、TRPM8発現細胞の細胞質ゾル内に負荷される。TRPM8アゴニストに暴露されると、細胞質ゾルのカルシウムの増加が、カルシウムが結合された時に起こるFura−2の蛍光の変化により反映される。
【0088】
TRPM8ポリペプチドの活性はまた、これらの好ましい方法に加えて、機能的、化学的、および物理的効果を決定するための多様なその他のin vitro およびin vivoのアッセイ、例えばペプチド、有機低分子、および脂質を含む他の分子とのTRPM8の結合を測定すること;TRPM8タンパク質および/もしくはRNAのレベルを測定すること、またはTRPM8ポリペプチドのその他の側面、例えば転写レベル、もしくはTRPM8活性に影響を及ぼす生理学的変化を測定すること、を用いて評価することもできる。未処置の細胞または動物を用いて、機能的意義を決定する場合、様々な効果、例えば細胞の成長の変化、またはpH変化、または細胞内の二次的メッセンジャー、例えばIP3、cGMP、もしくはcAMP、もしくはホスホリパーゼCシグナル伝達経路の成分もしくは制御物質の変化、を測定することもできる。そのようなアッセイを使用して、KCNBタンパク質の活性物質および阻害物質の双方を検査することができる。そのように同定されたモジュレーターは、例えば多くの診断および治療での適用として有用である。
【0089】
in vitroアッセイ
TRPM8を調節する活性を有する化合物を同定するためのアッセイは、好ましくはin vitroで行う。本明細書におけるアッセイは、好ましくは完全長のTRPM8タンパク質またはそのバリアントを使用する。このタンパク質は所望により、異種タンパク質と融合してキメラを形成することができる。本明細書に例示するアッセイにおいて、完全長TRPM8ポリペプチドを発現する細胞を、寒冷感覚を調節する化合物を同定するために使用するハイスループットアッセイにおいて使用する。あるいは精製リコンビナントまたは自然発生のTRPM8タンパク質を、本発明のin vitroの方法に使用することもできる。精製TRPM8タンパク質またはそのフラグメントに加えて、リコンビナントまたは自然発生のTRPM8タンパク質を、細胞溶菌液または細胞膜の一部とすることができる。以下に記載するように、結合アッセイは、固体または溶液(soluble)のいずれかであることができる。好ましくは当該タンパク質、そのフラグメントまたは膜は、固体支持体に共有結合または非共有結合のいずれかにより結合させる。しばしば本発明のin vitroアッセイは、(公知の細胞外リガンド、例えばメントールを用いての)非競合的または競合的のいずれかの、リガンド結合アッセイまたはリガンドアフィニティーアッセイである。その他のin vitroアッセイとして、タンパク質に関する分光法(例えば蛍光、吸光度、屈折率)、水力学(例えば形)、クロマトグラフィー、または溶解度の特性における変化を測定することを含む。
【0090】
好ましくは、TRPM8タンパク質を潜在的なモジュレーターと接触させ、適切な時間の間インキュベーションする、ハイスループット結合アッセイを行う。以下に記載するような、有機低分子、ペプチド、抗体、およびTRPM8リガンド類似体を含む広範囲の多様なモジュレーターを使用することができる。標識したタンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度のシフト、イムノアッセイ、酵素アッセイ、例えばリン酸化アッセイ、等を含む、広範囲の多様なアッセイを使用して、TRPM8−モジュレーターの結合を同定することができる。場合によっては、候補モジュレーターの結合は、潜在的なモジュレーターの存在下で公知のリガンドの結合による妨害を測定する競合的結合アッセイの使用を通して決定する。TRPM8ファミリーに関するリガンドは公知である(例えばメントール)。モジュレーターまたは公知のリガンドのいずれかを最初に結合させた後、競合物質を加える。TRPM8タンパク質を洗浄した後、潜在的なモジュレーターまたは公知のリガンドのいずれかの結合による妨害を決定する。しばしば潜在的なモジュレーターまたは公知のリガンドのいずれかを標識する。
【0091】
加えて、ハイスループット機能的ゲノムアッセイをまた使用して、TRPM8およびそれに結合する他のタンパク質間のタンパク質相互作用を破壊する化合物を同定することにより、寒冷感覚のモジュレーターを同定することができる。そのようなアッセイは、例えば細胞表面マーカーの発現の変化、細胞内カルシウムの変化、または膜電流の変化を、細胞株または初代細胞のいずれかを用いてモニタリングすることができる。典型的には細胞をcDNAまたはランダムなペプチドライブラリー(核酸によりコードされている)と接触させる。cDNAライブラリーは、センス鎖、アンチセンス鎖、完全長、および切断されたcDNAを包含することができる。ペプチドライブラリーは核酸によりコードされる。次に、細胞の表現型におけるcDNAライブラリーまたはペプチドライブラリーの効果を、上に記載したようなアッセイを用いてモニタリングする。cDNAまたはペプチドの効果は、例えば核酸の調節可能な発現、例えばテトラサイクリンプロモーターから発現を使用して確認し、体細胞変異から識別することができる。ペプチドをコードするcDNAおよび核酸は、当業者に公知の技術を用いて、例えば配列タグを用いてレスキューすることができる。
【0092】
cDNA(例えば配列番号:2に含有される修飾DNA)によりコードされるTRPM8タンパク質と相互作用するタンパク質は、酵母ツーハイブリッドシステム、哺乳類ツーハイブリッドシステム、またはファージディスプレースクリーン、等を用いて単離することができる。そのように同定された標的をさらに、そのメンバーもまた薬剤開発の標的であるTRPM8チャネルと相互作用すると思われる付加的な成分を同定するための、これらのアッセイにおけるおとり(bait)として使用することができる(例えばFields et al., Nature 340:245 (1989); Vasavada et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:10686 (1991); Fearon et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:7958 (1992); Dang et al., MoI. Cell. Biol. 11:954 (1991); Chien et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 9578 (1991);ならびに米国特許第5,283,173号, 5,667,973号, 5,468,614号, 5,525,490号, および 5,637,463号を参照のこと)。
【0093】
細胞に基づいたin vivoアッセイ
もう1つの態様において、TRPM8タンパク質は細胞内で発現させることができるため、機能的、例えば物理的および化学的または表現型の変化をアッセイして、寒冷感覚を調節するTRPM8モジュレーターを同定する。TRPM8タンパク質を発現する細胞はまた、結合アッセイにおいて使用することができる。あらゆる適切な機能的効果を、本明細書に記載するように測定することができる。例えば膜電位の変化、細胞内カルシウムまたはナトリウムレベルの変化、およびリガンドの結合はすべて、細胞に基づいたシステムを用いて潜在的モジュレーターを同定するための適切なアッセイである。そのような細胞に基づいたアッセイに適する細胞は、初代細胞株、例えば後根神経節由来感覚ニューロン、およびTRPM8タンパク質を発現する細胞株の双方を含む。TRPM8タンパク質は、自然発生またはリコンビナントであることができる。また上に記載したように、イオンチャネル活性を有するTRPM8タンパク質のフラグメントまたはキメラを、細胞に基づいたアッセイにおいて使用することができる。例えばTRPM8タンパク質の膜貫通ドメインを、異種タンパク質、好ましくは異種のイオンチャネルタンパク質の細胞質ドメインと融合させることができる。そのようなキメラタンパク質はイオンチャネル活性を有し、本発明の細胞に基づいたアッセイにおいて使用することができるだろう。もう1つの態様において、TRPM8タンパク質のドメイン、例えば細胞外ドメインまたは細胞質ドメインを、本発明の細胞に基づいたアッセイにおいて使用する。
【0094】
もう1つの態様において、細胞のTRPM8ポリペプチドレベルは、タンパク質またはmRNAのレベルを測定することにより決定することができる。TRPM8タンパク質、またはTRPM8イオンチャネル活性化に関するタンパク質のレベルは、イムノアッセイ、例えばTRPM8ポリペプチドまたはそのフラグメントに選択的に結合する抗体を用いての、ウエスタンブロット法、ELISA、等を使用して測定する。mRNAの測定に関しては、例えばPCR、LCRを用いての増幅、またはハイブリダイゼーションアッセイ、例えばノーザンハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼプロテクション、ドットブロティングが好ましい。タンパク質またはmRNAのレベルは、本明細書に記載したように、直接的または間接的に標識された検出物質、例えば蛍光または放射活性により標識された核酸、放射活性または酵素的に標識された抗体、等を用いて検出する。
【0095】
あるいはTRPM8発現は、レポーター遺伝子システムを用いて測定することができる。そのようなシステムは、レポーター遺伝子、例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼに、実施可能なように連結されたTRPM8タンパク質プロモーターを用いることで工夫することができる。さらに対象のタンパク質は、第二のレポーター、例えば赤色または緑色の蛍光タンパク質(例えばMistili & Spector, Nature Biotechnology 15:961-964 (1997)を参照のこと)との結合を介して間接的なレポーターとして使用することができる。レポーターコンストラクトは典型的に細胞内に形質移入する。潜在的モジュレーターによる処理の後、レポーター遺伝子の転写、翻訳、または活性の量を、当業者に公知の標準的な技術に従って測定する。
【0096】
もう1つの態様において、シグナル伝達経路に関する機能的効果を測定することができる。活性化または阻害されたTRPM8は、標的酵素、二次的メッセンジャー、チャネル、およびその他のエフェクタータンパク質の特性を変化させることになる。この例には、ホスホリパーゼCおよびその他のシグナル伝達の活性化を含む。下流の結果、例えばホスホリパーゼCによるジアシルグリセロールおよびIP3の産生もまた、調べることができる。
【0097】
TRPM8活性に関するアッセイ、例えばカルシウム流束または細胞内のカルシウム放出を観察することによるアッセイは、受容体の活性を報告する、イオン感受性色素または電圧感受性色素で負荷した細胞を含む。そのような受容体の活性を決定するためのアッセイはまた、検査化合物の活性を評価するためのネガティブコントロールまたはポジティブコントロールとして、TRPM8受容体の公知のアゴニストおよびアンタゴニストを使用することができる。調節化合物(例えばアゴニスト、アンタゴニスト)を同定するためのアッセイにおいて、細胞質内のイオンレベルまたは膜電位の変化は、各々イオン感受性または膜電位の蛍光インジケーターを用いてモニタリングすることになる。使用してよいイオン感受性インジケーターおよび電位プローブに、Molecular Probes 1997カタログに開示されているものが挙げられる。放射標識イオン流束アッセイまたは原子吸光分光とカップルさせた流束アッセイもまた使用することができる。
【0098】
動物モデル
寒冷感覚の動物モデルはまた、リンパ球の活性化または移入(migration)のモジュレーターのスクリーニングにおける用途がある。同様に、例えば適当な遺伝子標的ベクターを用いての相同組み換えの結果としての遺伝子ノックアウト技術、または遺伝子過剰発現を含む、遺伝子導入動物の技術は、TRPM8タンパク質の欠如または増加された発現という結果をもたらすことだろう。前記技術はまた、ノックアウト細胞を作製するために適用することもできる。所望の場合には、TRPM8タンパク質の組織特異的発現またはノックアウトを必要とするかもしれない。そのような方法により産生された遺伝子導入動物は、寒冷応答の動物モデルとしての用途がある。
【0099】
ノックアウト細胞および遺伝子導入マウスは、相同性組換えを介してマウスゲノムの内在するTRPM8遺伝子部位内に、マーカー遺伝子または他の異種遺伝子を挿入することにより作製することができる。そのようなマウスはまた、内在するTRPM8をTRPM8遺伝子の変異したバージョンで置換することにより、または例えば公知の変異原に暴露させることで内在するTRPM8を変異させることにより、作製することができる。
【0100】
DNAコンストラクトは胚性幹細胞の核内に導入させる。新規に操作された遺伝子の傷害を含有する細胞を、ホストマウス胚に注入し、これをレシピエントの雌内に再移植する。これらの胚の一部は、変異細胞株に部分的に由来する胚細胞を保有するキメラマウスに発達する。それ故キメラマウスを育種することにより、導入された遺伝子の病変を含有する新規マウス株を得ることが可能である(例えばCapecchi et al., Science 244:1288 (1989)参照のこと)。キメラ標的マウスは、Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual (1988) およびTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach (Robertson, 編,1987)に従って誘導することができる。
【0101】
候補のTRPM8モジュレーター
TRPM8タンパク質のモジュレーターとして検査される化合物は、あらゆる有機低分子、または生物学的実体 例えばタンパク質、例えば抗体もしくはペプチド、糖、核酸 例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはリボザイム、または脂質であることができる。あるいはモジュレーターは、TRPM8タンパク質の遺伝的に変換されたバージョンであることができる。典型的には検査化合物は、有機低分子、ペプチド、脂質、および脂質類似体とする。1つの態様において検査化合物は、自然発生または合成のいずれかのメントール類似体である。
【0102】
本質的にはあらゆる化学的化合物を、潜在的モジュレーターまたはリガンドとして本発明のアッセイにおいて使用することができるが、しかしながら最も頻繁には、水溶液または有機溶液(特にDMSOベース)中に溶解することのできる化合物を使用する。アッセイは、アッセイのステップを自動化し、あらゆる簡便な原料に由来する化合物を提供することにより、大きな化学的ライブラリーをスクリーニングするようにデザインし、それらを(例えば自動アッセイ装置のマイクロタイタープレート上でのマイクロタイターフォーマットにおいて)典型的には並行して進行させる。Sigma (St. Louis, Mo.), Aldrich (St. Louis, Mo.), Sigma-Aldrich (St. Louis, Mo.), Fluka Chemika-Biochemica Analytika (Buchs Switzerland)等を含む、化学的化合物の多くの供給元があることは、理解されるだろう。
【0103】
1つの好ましい態様において、ハイスループットスクリーニング法は、多数の潜在的な治療用化合物(潜在的なモジュレーターまたはリガンドの化合物)を含有する、コンビナトリアルな有機低分子またはペプチドのライブラリーを提供することを伴う。次にそのような“コンビナトリアル化学ライブラリー”または“リガンドライブラリー”について、所望の特徴的活性を示すライブラリーのメンバー(特に化学種またはサブクラス)を同定するため、本明細書に記載したような、1つまたはそれより多くのアッセイでスクリーニングする。そのように同定された化合物を、従来の“リード化合物”として供給することができ、それら自体を潜在的なあるまたは実際の治療物質(therapeutics)として使用することができる。
【0104】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、化学的合成または生物学的合成のいずれかにより、いくつかの化学的“構成要素”、例えば試薬を組み合わせることにより生成された、多様な化学化合物のコレクションである。例えば直鎖状のコンビナトリアル化学ライブラリー、例えばポリペプチドライブラリーは、所定の化合物の長さ(すなわちポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)となるように、一組の化学的構成要素(アミノ酸)を可能な各方法で組み合わせることにより形成される。何百万もの化学化合物を、化学的構成要素のそのようなコンビナトリアル的な混合を通して合成することができる。
【0105】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知されている。そのようなコンビナトリアル化学ライブラリーは、ペプチドライブラリー(例えば米国特許第5,010,175号, Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487-493 (1991) およびHoughton et al., Nature 354:84-88 (1991)を参照のこと)を含むがこれに限定されない。化学的な多様なライブラリーを作成するため、それ以外の化学物質もまた使用することができる。そのよう化学物質として以下を含むがこれに限定されない:ペプトイド(例えばPCT公開第WO 91/19735号)、コードされたペプチド(例えばPCT公開第WO 93/20242号)、ランダムなバイオ−オリゴマー(例えばPCT公開第WO 92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば米国特許第5,288,514号)、ダイバーソマー 例えばヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド(Hobbs et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90:6909-6913 (1993))、ビニロガスポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコースの足場を用いた非ペプチド性ペプチド模倣分子(Hirschmann et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:9217-9218 (1992))、類似体有機合成による低分子化合物 ライブラリー(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート (Cho et al.. Science 261:1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59:658 (1994))、核酸ライブラリー (Ausubel, Bergerおよび Sambrook、すべて上記記載、を参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリー (例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー (例えばVaughn et al., Nature Biotechnology, 14(3):309-314 (1996) およびPCT/US96/10287を参照のこと)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang et al., Science, 274:1520-1522 (1996) および米国特許第5,593,853号を参照のこと)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, January 18, ページ33 (1993); イソプレノイド、米国特許第5,569,588号; チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および5,519,134号; モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号; ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号、等を参照のこと)。
【0106】
コンビナトリアルライブラリーの調製のためのデバイスは、市販にて入手可能である(例えば357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville Ky., Symphony, Rainin, Woburn, Mass., 433A Applied Biosystems, Foster City, Calif., 9050 Plus, Millipore, Bedford, Mass.を参照のこと)。加えて、多数のコンビナトリアルライブラリーそのものが市販にて入手可能である(例えばComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc., St. Louis, Mo., ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, Md.を参照のこと)。
【0107】
C.固体および溶液(soluble)のハイスループットアッセイ
加えて、溶液のアッセイは、TRPM8タンパク質、または自然発生またはリコンビナントのいずれかのTRPM8タンパク質を発現する細胞もしくは組織を用いて、達成することができる。さらにあるいは、ハイスループットフォーマットの固相を基本としたin vitroアッセイを達成することもでき、その場合TRPM8タンパク質またはそのフラグメント、例えば細胞質ドメインを、固相担体に付着させる。本明細書に記載したアッセイのいずれか1つを、ハイスループットスクリーニング、例えばリガンド結合、カルシウム流束、膜電位の変化、等として適応させることができる。
【0108】
溶液または固体のいずれかの本発明のハイスループットアッセイにおいて、数千の異なるモジュレーターまたはリガンドを1日でスクリーニングすることが可能である。この方法論を、in vitroのTRPM8タンパク質に関して、またはTRPM8タンパク質を包含する細胞に基づいたもしくは膜に基づいたアッセイに関して使用することができる。特にマイクロタイタープレートの各ウェルを使用して、選択された潜在的なモジュレーターに対して個別のアッセイを進行させることができ、または濃度もしくはインキュベーション時間の効果を観察しようとする場合には、5−10ずつのウェルで1つのモジュレーターを検査することができる。したがって1枚の標準的なマイクロタイタープレートで、約100(例えば96)のモジュレーターをアッセイすることができる。1536ウェルプレートを使用すれば、その場合には1枚のプレートで約100−約1500の異なる化合物を容易にアッセイすることができる。1日当たり多数枚のプレートをアッセイすることが可能である;約6,000、20,000、50,000、または100,000より多くまでの異なる化合物に関してスクリーニングするアッセイが、本発明の統合されたシステムを使用すれば可能である。
【0109】
固体の反応に関して、興味あるタンパク質もしくはそのフラグメント、例えば細胞外ドメイン、または融合タンパク質の一部として興味あるタンパク質もしくはそのフラグメントを包含する細胞または膜を、固体成分に直接または間接的に、共有結合または非共有結合による連結を介して、例えばタグを介して結合することができる。タグは多様な成分のいずれであることもできる。一般に、タグ(タグバインダー)を結合する分子を固体支持体に固定し、そして興味あるタグされた分子を、タグおよびタグバインダーの相互作用により固体支持体に付着させる。
【0110】
文献に十分に記載されている公知の分子間相互作用に基づいて、いくつかのタグおよびタグバインダーを使用することができる。例えばタグが天然のバインダー、例えばビオチン、プロテインA,またはプロテインGを有する場合、それを、適当なタグバインダー(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、免疫グロブリンのFc領域、等)と組み合わせて使用することができる。天然のバインダーを有する分子、例えばビオチンに対する抗体もまた、広範囲に利用可能であり、適当なタグバインダーである;SIGMA Immunochemicals 1998 カタログSIGMA, St. Louis Mo.を参照のこと。
【0111】
同様にあらゆるハプテン化合物または抗原化合物も、タグ/タグバインダーのペアを形成する適当な抗体と組み合わせて使用することができる。数千もの特異的な抗体が市販にて入手可能であり、多くのさらなる抗体が文献に記載されている。例えば1つの一般的な立体配置において、タグは第一抗体であり、タグバインダーは、第一抗体を認識する第二抗体である。抗体−抗原相互作用に加えて、受容体−リガンド相互作用もまた、タグおよびタグバインダーのペアとして適当である。例えば細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば細胞受容体−リガンド相互作用、例えばトランスフェリン、c−kit、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体および抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリー、等;例えばPigott & Power, The Adhesion Molecule Fac^s Book I (1993)を参照のこと。同様に、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えばアヘン剤、ステロイド剤)、分子内受容体(例えばステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイドおよびビタミンD;ペプチドを含む様々な低分子リガンドの効果を調節するもの)、薬剤、レクチン、糖類、核酸(直鎖ポリマーおよび環式ポリマー双方の立体配置)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質、および抗体はすべて、様々な細胞の受容体と相互作用することができる。
【0112】
合成ポリマー、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、およびポリアセテートもまた、適当なタグまたはタグバインダーを形成することができる。本開示を再検討すれば当業者には明らかであるように、多くのその他のタグ/タグバインダーもまた、本明細書に記載したアッセイシステムにおいて有用である。
【0113】
一般的なリンカー、例えばペプチド、ポリエーテル、等もまたタグとして供給でき、ポリペプチド配列、例えば約5および200アミノ酸の間のポリgly配列を含むことができる。そのようなフレキシブルなリンカーは当業者に公知である。例えばポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Ala.より入手可能である。これらのリンカーは所望により、アミドの連結、スルフヒドリルの連結、またはヘテロ官能性の連結を有する。
【0114】
タグバインダーは、現在利用可能な多様な方法のいずれかを使用して、固体担体に固定させる。固体担体は一般に、タグバインダーの一部分との反応性のある担体表面に化学基を固定する化学試薬に、担体のすべてまたは一部分を暴露させることにより、誘導体化するまたは官能性を持たせる。例えばより長い鎖部分への付着に適する基は、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、およびカルボキシル基を含むことになるだろう。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランは、多様な表面、例えばガラス表面に官能性を持たせるために使用ことができる。そのような固相バイオポリマーのアレイの作成については、文献に十分に記載されている。例えばMerrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963) (例えばペプチドの固相の合成について記載している); Geysen et al., J. Immun. Meth. 102:259-274 (1987) (ピン上での固相成分の合成について記載している); Frank & Doring, Tetrahedron 44:6031-6040 (1988) (セルロースディスク上の様々なペプチド配列の合成について記載している); Fodor et al., Science, 251:767-777 (1991); Sheldon et al., Clinical Chemistry 39(4):718-719 (1993);およびKozal et al., Nature Medicine 2(7):753-759 (1996)(すべて、固体担体に固定されたバイオポリマーのアレイについて記載している)を参照のこと。タグバインダーを担体に固定するための非化学的アプローチは、その他の一般的方法、例えば加熱、UV照射による架橋、等を含む。
【0115】
上に本発明を記載してきたが、以下の実施例は、本発明のいくつかの好ましい態様のさらなる説明を提供する。これらの実施例は説明を目的として提供するに過ぎず、主題の発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0116】
実施例
実施例1
本発明に従っての修飾hTRPM8核酸配列の作成
修飾ヒトTRPM8核酸配列は、鋳型としてネイティブhTRPM8配列を使用して作成した。具体的にはリコンビナントホスト細胞(好ましくはヒト細胞、例えばHEK−293細胞)におけるhTRPM8の発現を最適化するため、601のサイレント変異をネイティブhTRPM8核酸配列中に導入し、親配列とわずか81%の配列同一性しか保有していない修飾配列を得た。変異(図1に含有されるアラインメントに示す)は、推定のTATAボックス、chi部位、リボソームエントリー部位、ATリッチまたはGCリッチ配列ストレッチ、ARE、INSおよびCRS配列エレメント、および潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位を除去するように作成した。
【0117】
これらの変異は、本発明のアミノ酸配列は変化させなかった。この配列をHEK−293細胞およびアフリカツメガエル卵母細胞において発現させた(以下の実施例を参照のこと)時、効率的に発現され、そして冷却剤化合物に特異的に応答する機能的イオンチャネルが得られることが発見された。
【0118】
1.カシウム画像解析実験のために使用される具体例としての材料および方法
・10cmディッシュに含有されたHEK−293細胞(約50−70%の培養密度)に、TransH293を使用して、5μgのTRPM8 DNAおよびpcDNA3および2μgのRFPプラスミドで形質移入する。
【0119】
・24時間後、細胞を384ウェルプレート内に、〜50,000細胞/ウェルで分注する。
・形質移入後48時間で、細胞にHBSS中の4μM Fluo−3−AM 3AMで30分間、37℃で負荷する。
【0120】
・次に細胞を2.5mM プロベニシドを含有するHBSS中で2回洗浄し、37℃に15分間戻す。
・化合物のプレートをHBSS中で最終濃度に2回調製し、37℃に維持して、rTRPM8が刺激中に周囲温度での低下により活性化されないことを保証する(TRPM8は<22℃の温度により活性化される)。
【0121】
安定なクローンの選択のために使用される材料および方法
・HEK−293細胞に、neoマーカーを包含する、TRPM8核酸配列含有プラスミドで形質移入し、安定なクローンをネオマイシンを用いて選択する。
【0122】
・スクリーニングされたクローンを、FLIPRで(-)メントール応答に関するカルシウムの画像解析を使用してスクリーニングする。
・最適なメントール応答を示すクローンを、カルシウム画像解析の使用により検出されたTRPM8活性化に基づいて選択する。
【0123】
2.パッチクランプ電気生理学的アッセイのために使用する方法および材料
・アフリカツメガエル卵母細胞に、本発明に従ってのTRPM8核酸配列でマイクロインジェクションする。
【0124】
・マイクロインジェクションした卵母細胞を、インジェクション後1日にOpusXpress 600Aを使用して、およそ60mVでボルテージクランプを行い、バッファー(コントロール)、または前記バッファー中に固定濃度、もしくは一定範囲の異なる濃度にわたり(用量−増大)含有される、潜在的なもしくは公知のTRPM8モジュレーター、のいずれかで処理する。
【0125】
・前記のバッファー処理した、または推定TRPM8モジュレーター処理した卵母細胞について、特定の時間にわたり電流を測定する。加えて、TRPM8核酸配列でインジェクションしていない、前記バッファーで処理した卵母細胞(ネガティブコントロール)についても、電流応答を測定する。
【0126】
・TRPM8活性における前記の潜在的なTRPM8モジュレーター化合物の効果(もしあれば)を決定するため、そして前記効果が用量特異的であるかどうかについて、前記卵母細胞に関する電流応答を比較する。
【0127】
実施例2
HEK293細胞において発現されたラットTRPM8の活性化
HEK293細胞に、ラットTRPM8cDNA(pcDNA3.1中)をコードするプラスミドで形質移入し、384ウェルプレート内に播種する。48時間後、細胞にFluo−3−AMで負荷する。次に細胞を、図2に示したような様々な刺激物質で刺激し、各ウェルの蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。これらの実験において、内在的に発現されるM1受容体のカルバコール刺激を、基準刺激として使用した。図2の結果は、検査した冷却剤化合物がラットTRPM8イオンチャネルを特異的に活性化することを示す。
【0128】
実施例3
ラットTRPM8を活性化する冷却物質のランク順
pcDNA3.1中に含有されたラットTRPM8 cDNAをコードするプラスミドで形質移入されたHEK293細胞を、384ウェルプレート内に播種した。48時間後、これらの細胞にFluo−3−AMで負荷した。次に細胞を、図3に示した刺激物質で刺激し、各ウェルの蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。内在的に発現されるM1受容体のカルバコール刺激を、再度基準刺激として使用した。図3の右パネルは、コントロールプラスミド(RFP)で形質移入された細胞が、カルバコール刺激にしか応答しないことを示す。図3の左パネルの結果は、ラットTRPM8が表に示した冷却剤化合物に応答することを示す。
【0129】
実施例4
涼冷温度および冷却物質によるTRPM8の相乗的活性化
図4に示したように、涼冷温度はHEK293中のTRPM8を活性化し、冷却物質と組み合わせると相乗効果を示す。pcDNA3.1中にラットTRPM8 cDNAをコードするプラスミドで形質移入されたHEK293細胞を、384ウェルプレート内に再度播種した。48時間後、これらの形質移入された細胞にFluo−3−AMで負荷した。次に細胞を、図4に示した刺激物質で刺激し、各細胞の蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。図4の右上パネルの結果は、刺激としての寒冷バッファーの添加が、TRPM8活性化を誘発するのに十分であることを示す。図4の下パネルの結果は、冷却した(--)メントールおよび冷却したイシリンが、より温かいメントールおよびイシリンのTRPM8の活性化より強力であることを示す。
【0130】
実施例5
メントールおよびイシリンは、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を活性化する
この実験では電気生理学的アッセイを、ラットTRPM8を発現する卵母細胞を用いて行った。具体的には、卵母細胞に10ngのラットTRPM8 cRNAでマイクロインジェクションし、インジェクション後1日にOpusXpress 600Aを使用して、〜60mVでボルテージクランプを行い、バッファーおよびメントール(左グラフ)またはイシリン(右グラフ)で処理した。表示された温度に応答した2つの卵母細胞を図5に示す。これらの結果は、メントール誘発電流は部分的に脱感作する(アゴニストの継続的存在下で、電流はピークに達し、そして安定状態に減衰する)のに対して、イシリン誘発電流は完全に脱感作する(アゴニストの継続的存在下で、電流はコントロールレベルに戻る)。反対にバッファーで処理することにより、電流は影響を受けなかった。
【0131】
実施例6
冷却物質によるラットTRPM8卵母細胞の特異的活性化
この実験では、メントールおよびイシリンが、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を特異的に活性化することが示された。卵母細胞に10ngのラットTRPM8 cRNAでマイクロインジェクションし、インジェクション後1日にOpusXpress 6000Aを使用して、〜60mVでボルテージクランプを行った後、図6に示した化合物で処理した。図では、ピークのアゴニスト誘発電流を4−6の独立した卵母細胞についてまとめている。これらの実験結果は、表示された化合物濃度でメントールおよびイシリンは大きなピーク電流を誘発するのに対して、オイカリプトールおよびメタンは小さなピーク電流しか誘発しないことを明らかにした。反対にラットTRPM8を発現しないコントロール卵母細胞(コントロール:非インジェクション卵母細胞)では、応答は観察されなかった。したがって図6の結果は、メントールおよびイシリンが、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を特異的に活性化することを示す。
【0132】
実施例7
ラットTRPM8を発現する卵母細胞におけるラットTRPM8のメントールによる活性化
メントールによる電流/電位(I/V)曲線が、ラットTRPM8を発現する卵母細胞において外向き整流を表すことを明らかにする実験を行った。これらの実験において、卵母細胞に2ngのラットTRPM8 cRNAで再度マイクロインジェクションし(図7の左パネルに示す)、またはインジェクションせず(右パネル)に、インジェクション後4日に、バッファー(コントロール:緑の曲線)または100μM メントール(赤の曲線)の存在下で、〜80mVから100mV(20mV増加)で電流を測定した。図7の青の曲線は、メントール(赤)曲線からコントロール(緑)曲線を差し引くことにより得られたメントール特異的な曲線を表す。図7の結果は、メントール特異的な電流が外向き整流を示す(負の電位と比較して電流が正の電位でより大きい)のに対して、コントロール(非インジェクション)細胞では、メントールの特異的な電流は観察されないことを明らかにした。
【0133】
実施例8
ラットTRPM8発現卵母細胞におけるメントールの用量−応答曲線
図8は、ラットTRPM8発現卵母細胞における、メントールに関する用量−応答を測定する実験の結果を示す。この実験において、卵母細胞に10ngのラットTRPM8 cRNAで再度マイクロインジェクションし、インジェクション後2−3日に〜60mVでボルテージクランプを行い、電流を測定した。図8の左パネルの結果は、メントールの3μMから1000μMの増加する濃度で処理した卵母細胞における、代表的な実験を表す。図8の右パネルの結果は、各ポイントが3−6の独立した卵母細胞のデータに対応する、まとめたデータを表す。図に示したように、メントールに関するEC50値は、19.5℃で29.6μMであった。この値は卵母細胞においてメントールに関して報告されたEC50(22−24℃で67μM、McKemy et al. Nature 416:52-58 (2002))に近似し、この実験結果の正当性を確証する。
【0134】
実施例9
涼冷温度によるラットTRPM8の活性化
図9は、涼冷温度が、卵母細胞において発現されたラットTRPM8を活性化することを示す実験結果を示す。この実験において、卵母細胞に5ngのラットTRPM8 cRNAで再度マイクロインジェクションし、インジェクション後2日に〜60mVでボルテージクランプを行い、OpusXpress 6000Aを使用して電流を記録した。図に示したように、室温バッファー(22℃)の投与は、測定された電流に何の影響も与えなかったのに対して、18℃に冷却したバッファーの投与は、室温のメントールに類する程度に、ラットTRPM8を活性化した。表示された温度処理に応答した2つの卵母細胞を、図9に示す。
【0135】
実施例10
ラットTRPM8を安定的に発現するHEK293クローンにおける様々な冷却剤の効果
図10は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK293クローンの特性を示す。HEK293細胞を384ウェルプレート内に再度播種し、48時間後細胞にFluo−3−AM色素で負荷した。次に細胞を、図10に示した刺激物質で刺激し、各細胞の蛍光強度を、蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。図10に示した結果は、これらの表示された冷却物質が、図に報告された効能および冷却強度の順に、安定なクローンを特異的に活性化することを示す。
【0136】
実施例11
メントールより強力にラットTRPM8を活性化する登録商標化合物の同定
実施例9に記載した安定なHEK293クローンを再び使用して、実施例9に記載したように、蛍光定量的画像解析実験を行った。具体的には、19,000の化合物をこのクローンに対してスクリーニングし、引き続き、用量−応答によりポジティブヒットを分析した。これらの実験は、ラットTRPM8の活性化において、 (--)メントールより再現性よく2−3倍強力である登録商標化合物(SID−2346448)を同定した。これらの結果を図11に示す。
【0137】
実施例12
メントールより強力にラットTRPM8を活性化する第2の登録商標化合物の同定
実施例9に記載した安定なHEK293クローンを使用して、実施例9に記載したように、蛍光定量的カルシウム画像解析実験を行った。合計19,000の化合物をクローン#48に対して再度スクリーニングした。引き続き、用量−応答によりポジティブヒットを分析した。これらの結果は、第2の登録商標化合物(SID 576583)がラットTRPM8の活性化において、 (--)メントールと再現性よく同程度に強力であることを明らかにした。これらの結果を図12に示す。
【0138】
実施例13
メントールより強力にラットTRPM8を活性化する第3の登録商標化合物の同定
実施例10に記載したように安定なHEK293クローンを使用して、蛍光定量的カルシウム画像解析実験を再度行った。合計19,000の化合物をこのクローン(クローン#48)に対してスクリーニングした。引き続き、用量−応答によりポジティブヒットを分析した。これらの実験は、ラットTRPM8の活性化において、 (--)メントールと再現性よく同程度に強力である第3の登録商標化合物(SID 3498787)の同定を明らかにした。
【0139】
実施例14
HEK293細胞において発現されたヒトTRPM8の特性
図14は、HEK293細胞において発現されたヒトTRPM8の特性を研究する実験の結果を示す。これらの実験において、図1の修飾ヒトTRPM8 cDNAをコードするプラスミドで形質移入されたHEK293細胞を、384ウェルプレート内に播種した。48時間後、これらの細胞にFluo−3−AMで負荷した。次にFluo−3−AMで負荷したこれらの細胞を、図14に示した刺激物質で刺激し、各ウェルの蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。表示された冷却物質は、報告されたランク順の効能および冷却強度に従ってTRPM8を活性化する。図14に示した表の結果は、さらにラットTRPM8およびヒトTRPM8の発現細胞を用いて得られたEC50を比較している。これらのEC50値は、検査した異なる冷却剤に関してはこれらの細胞において互いに一致すると認めることができる。
【0140】
実施例15
本発明に従ってのヒトTRPM8(配列番号:2)を発現するHEK−293クローンの特性
本実験は、本発明に従っての最適化hTRPM8核酸配列(“hTRPM8 opt”または配列番号:2)を発現するHEK−293クローンの特性を比較した。特定すると、これらの細胞を384ウェルプレート内に再度播種し、48時間後に蛍光色素(Fluo−3AM)で負荷した。次に得られた負荷された細胞を、図15に表示された刺激物質で刺激し、各細胞の蛍光強度を蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR)を使用して測定した。図15に示した結果から認められてよいように、検査した公知の冷却物質は、図に報告されたランク順の効能および冷却強度の活性で、安定なhTRPM8発現クローンを活性化することが観察された。
【0141】
実施例16
本発明のスクリーニングにおいて同定された、数種の推定物質の効能
クローン#71(先の実施例と同じクローン)において、15000の化合物に対してスクリーニングを行った。引き続き、用量−応答分析により“ヒット”を評価した。図16の表にまとめたこれらの結果は、SID 391254およびSID 7506425が、ヒトTRPM8の活性化において、公知の冷却剤であるイシリンと再現性よく同程度に強力であることを明らかにした。また他の化合物、すなわちSID 7308307、SID 7291576およびSID 7292725もまた、ラットTRPM8の活性化において、別の公知の冷却剤であるWS−3と再現性よく同程度に強力であった。さらに残りのヒットであるSID 10135651、SID 7307713およびSID 3498787は、ヒトTRPM8の活性化において、(-)メントールと同程度に強力であった。
【0142】
実施例17
ヒトの味覚検査における推定冷却剤化合物(SID 391254)の冷却効果
この実験において、主題のアッセイを使用して同定された推定冷却剤であるSID 391254の冷却効果を、ヒトの味覚検査において分析した。特定すると、3つの検査サンプルに関する冷却強度を、5名のヒトボランティアパネリストの2回のトライアルにおいて検討した。図17に示したこれらのトライアルの結果は、テューキーのHSD検定(5%リスク水準)を使用して算出された有意差を明らかにした。この実験において、同じテューキーの文字(lettering)のサンプルは互いに有意に異なっていなかった。検査は、ブースにおいて、Compusenseソフトウェアを使用して記録されたデータにて行った。加えてこれらの実験にはさらに、公知の冷却剤であるWS−3(ポジティブコントロール)の投与を含めた。
【0143】
公知または推定の冷却化合物(各々WS−3およびSID 391254)を含有するサンプル双方に関して、これら化合物は、低ナトリウムバッファー(LSB)および0.1%エタノール中に含有された。図に報告したように、公知または推定の冷却剤を含有するサンプルは、ネガティブコントロール(LSBおよび0.1%エタノール)より実質的に高い冷却強度が報告された。これらの結果は、LSBおよびエタノールは公知の冷却剤効果を示さないという事実と一致する。また、推定冷却剤化合物391254はWS−3の1/6モル濃度で使用して、同じ効果を得られたことから、この化合物は実際にはWS−3より強力であることが発見された。
【0144】
実施例18
ヒトの味覚検査における第2の推定冷却化合物(SID 10135651)の冷却効果
この実験は、記載したアッセイを使用して同定されたもう1つの推定冷却剤化合物(SID 10135651)の冷却効果を比較した。この化合物を、ヒトの味覚検査において、公知の冷却剤WS−3および前記ネガティブコントロールサンプル(0.1%エタノールを含有するLSB)と再度比較した。この実験において平均冷却強度を、図18に同定されている3つのサンプルについて、5名のヒトボランティアの2回のトライアルにおいて再度比較した。先の実施例の場合ように、コントロールと相対しての公知および推定の冷却剤化合物間の有意差を、テューキーのHSD検定(5%リスク水準)を使用して算出した。また、同じテューキーの文字のサンプルは互いに有意に異なっていなかった。これらの検査は、ブースにおいて、Compusenseソフトウェアを使用して記録されたデータにて再度行った。これらの比較は、SID 10135651化合物およびWS−3を含有するサンプルが、コントロールサンプルより実質的に高い冷却強度を示すことを明らかにした。この実験の結果はさらに、SID 10135651化合物サンプルがWS−3サンプルとほぼ同程度の冷却強度を示すことを明らかにした。
【0145】
実施例19
ヒトの味覚検査におけるもう1つの推定冷却剤化合物(SID 7292725)の冷却効果
主題のスクリーニングアッセイを使用して同定されたもう1つの推定冷却化合物(SID 7292725)の冷却効果を、ヒトの味覚検査において比較した。再度、冷却強度のスコアを、5名のヒト味覚パネリストの2回のトライアルにおける結果に基づいて決定した。有意差は、テューキーのHSD検定(5%リスク水準)を使用して再度算出した。[テューキー検定(5%は1.279に相当)]。同様に、同じテューキーの文字のサンプルは互いに有意に異なっていなかった。すべてのサンプルは、0.1%エタノールを含有するLSB中に再度調製した。さらにWS−3を、公知の比較用冷却剤化合物として再度使用した。図19に示したように、公知および推定の冷却剤化合物を含有するサンプルは、ネガティブコントロール(LSBおよび0.1%エタノール)より高い冷却強度を示した。また、WS−3およびSID7292725のサンプル間の冷却強度における有意差は観察されなかった。
【0146】
【表1−1】
【0147】
【表1−2】
【0148】
【表1−3】
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1−1】図1−1は、本発明のアッセイにおいて使用した最適化hTRPM8配列、および先に報告された野生型hTRPM8配列の、配列アラインメントを示す。野性型配列は配列番号:1に、変化させた配列は配列番号:2に含有される。
【図1−2】図1−2は、本発明のアッセイにおいて使用した最適化hTRPM8配列、および先に報告された野生型hTRPM8配列の、配列アラインメントを示す。野性型配列は配列番号:1に、変化させた配列は配列番号:2に含有される。
【図1−3】図1−3は、本発明のアッセイにおいて使用した最適化hTRPM8配列、および先に報告された野生型hTRPM8配列の、配列アラインメントを示す。野性型配列は配列番号:1に、変化させた配列は配列番号:2に含有される。
【図2】図2は、ラットTRPM8核酸配列を一過的に発現するHEK−293細胞を用いての、蛍光定量的カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図3】図3は、異なる冷却物質で刺激した、ラットTRPM8発現HEK−293細胞を用いての、蛍光定量的カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図4】図4は、ラットTRPM8を発現するHEK−293細胞を、異なる冷却物質および低下した温度で刺激した、蛍光定量的カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図5】図5は、メントールおよびイシリンで刺激した、ラットTRPM8を発現する卵母細胞を用いての、電気生理学的(ボルテージクランプ)アッセイの結果を示す。
【図6】図6は、ラットTRPM8を発現する卵母細胞を、公知の冷却物質(メントール、オイカリプトール、イシリン、等)を含む様々な化合物で刺激した、もう1つの電気生理学的(ボルテージクランプ)アッセイの結果を示す。
【図7】図7は、メントールによる電流/電位(I/V)曲線が、ラットTRPM8を発現する卵母細胞において外向き整流を表すことを明らかにした、電気生理学的TRPM8アッセイの結果を示す。
【図8】図8は、ラットTRPM8発現卵母細胞を異なる濃度のメントールで刺激した、電気生理学的TRPM8アッセイの結果を示す。
【図9】図9は、ラットTRPM8発現卵母細胞を涼冷温度で刺激した、電気生理学的アッセイの結果を示す。
【図10】図10は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、数種の公知の冷却物質を含む異なる化合物で刺激した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図11】図11は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、19,000の化合物のライブラリーに対してスクリーニングして、ラットTRPM8の活性化において、メントールより約2−3倍強力である新規化合物(SID 2346448)を同定した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図12】図12は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、19,000の化合物の前記ライブラリーに対してスクリーニングして、ラットTRPM8の活性化において、メントールと同程度に強力である登録商標化合物(SID 576583)を同定した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図13】図13は、ラットTRPM8を安定的に発現するHEK−293クローンを、前記化合物ライブラリーに対してスクリーニングして、ラットTRPM8の活性化において、メントールと再現性よく同程度に強力である、もう1つの登録商標化合物(SID 3498787)の同定を明らかにした、もう1つのカルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図14】図14は、配列番号:2に含有される、修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現するHEK−293細胞を、数種の公知の冷却物質(メントール、WS−3、WS−23およびイシリン)、ならびに図11−13の実験で同定された化合物で刺激した、TRPM8カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図15】図15は、配列番号:2の修飾TRPM8核酸配列を安定的に発現するHEK−293クローンを、数種の公知の冷却化合物(メントール、冷却剤P、WS−3、イシリン)で刺激した、カルシウム画像解析実験の結果を示す。
【図16】図16は、配列番号:2に含有される修飾ヒトTRPM8核酸配列を安定的に発現するHEK−293細胞を、公知の冷却剤、ならびに図11−13の実験で同定された化合物を含むハイスループットスクリーニングにより同定された新規化合物で刺激した、用量−応答実験の結果まとめた表を示す。
【図17】図17は、主題の修飾TRPM8核酸配列を発現する細胞を用いて、潜在的な冷却物質として同定された化合物(SID 391254)を、ヒトボランティアにおけるその冷却効果についてスクリーニングした、実験の結果を示す。
【図18】図18は、潜在的な冷却物質として同定された化合物(SID 10135651)を、ヒトボランティアにおけるその冷却効果についてスクリーニングした、もう1つの実験の結果を示す。
【図19】図19は、潜在的な冷却物質として同定されたもう1つの化合物(SID 7292725)を、ヒトボランティアにおけるその冷却効果についてスクリーニングした、実験の結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:(i)配列番号:2に含有される野性型TRPM8核酸配列、または別の野生型TRPM8核酸配列に対して、少なくとも、以下:(1)TATAボックス、(2)chi部位、(3)リボソームエントリー部位、(4)ARE、INS、もしくはCRS配列エレメント、ならびに(5)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去する変異により修飾された核酸配列を包含する、そして(ii)配列番号:2に含有される核酸配列によりコードされるポリペプチドと、実質的に同じリガンド結合および機能的活性を有する、活性なイオンチャネルとしてヒト細胞において発現される、修飾ヒトTRPM8核酸配列。
【請求項2】
実施可能なようにプロモーターに連結された、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項3】
プロモーターが、調節可能なプロモーターまたは構成的プロモーターである、請求項2に記載の修飾核酸配列。
【請求項4】
少なくとも100のサイレント配列修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項5】
少なくとも200のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項6】
少なくとも300のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項7】
少なくとも400のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項8】
少なくとも500のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項9】
少なくとも600のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項10】
前記サイレント修飾が、配列番号:1に含有される未修飾核酸配列と比較した場合の、配列番号:2に含有される配列より選択される、請求項4−9のいずれかに記載の修飾核酸配列。
【請求項11】
配列番号:2に含有されるTRPM8核酸配列と、少なくとも95−99%の配列同一性を保有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項12】
前記核酸配列が、配列番号:2に含有されるTRPM8核酸配列を有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項13】
調節可能なプロモーターまたは構成的プロモーターに実施可能なように連結されている、請求項12に記載の修飾核酸配列。
【請求項14】
プラスミド上に含有される、請求項1−9または11−13のいずれか1項に記載の修飾配列。
【請求項15】
請求項1−9または11−13のいずれか1項に従っての核酸配列で、形質移入、形質転換、またはマイクロインジェクションされる、初代細胞または卵母細胞。
【請求項16】
請求項12に従っての核酸配列で、形質移入、形質転換、またはマイクロインジェクションされる、初代細胞または卵母細胞。
【請求項17】
ヒト細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項18】
ヒト細胞である、請求項16に記載の細胞。
【請求項19】
HEK−293細胞、アフリカミドリザル細胞、またはCos細胞もしくはCHO細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項20】
HEK−293細胞、またはCos細胞、またはCHO細胞である、請求項16に記載の細胞。
【請求項21】
以下:
(i)修飾ヒトTRPM8核酸配列であって、ここでそのような修飾ヒトTRPM8核酸配列が、配列番号:2に含有されるヒトTRPM8核酸配列に対して、少なくとも、推定の(1)TATAボックス、(2)chi部位、(3)リボソームエントリー部位、(4)ARE、INS、またはCRS配列エレメント、ならびに(5)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の除去から成る群より選択される変異の導入により修飾される、前記核酸配列、を発現する細胞を得ること;
(ii)前記修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現する前記細胞を、ヒトTRPM8イオンチャネルの推定モジュレーターと接触させること;そして
(iii)前記化合物が、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされたTRPM8イオンチャネルの活性を修飾するかどうかを同定すること、
を包含する、修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされるヒトTRPM8イオンチャネルの活性を調節する化合物を同定するための方法。
【請求項22】
前記核酸配列を発現する細胞が哺乳類細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸配列を発現する細胞がヒト細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸配列を発現する細胞が、HEK−293細胞、BHK、CHO、COS、サルのL細胞、アフリカミドリザル腎細胞、Lkt−細胞、および卵母細胞から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記核酸配列が、配列番号:1に含有されるヒトTRPM8核酸配列と約80−85%の配列同一性を保有する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸配列が、配列番号:2に含有される核酸配列を保有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも100−200のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも300−400のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも500のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも550のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記サイレント変異が、配列番号:2に含有される601のサイレント変異より選択される、請求項27−30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記アッセイ方法においてヒトTRPM8モジュレーターとして同定された化合物が、冷却効果を起こす、または別の冷却剤の冷却効果を高めるかどうかを評価するために、ヒトの味覚検査、またはヒトの皮膚接触(局所)検査において、当該化合物がさらに評価されるかどうかを同定することをさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
ヒトTRPM8活性が、前記化合物が細胞内カルシウムの濃度に影響を及ぼすかどうかを検出することにより評価される、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
ヒトTRPM8活性が、前記化合物が細胞内ナトリウムの濃度に影響を及ぼすかどうかを検出することにより評価される、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記核酸配列によりコードされるヒトTRPM8が、寒冷温度、またはヒトTRPM8を活性化することが知られている冷却剤化合物により刺激されるステップを、前記アッセイが包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
ヒトTRPM8を活性化することが知られている前記化合物が、メタノール、イシリン、またはその誘導体である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
TRPM8活性が、蛍光カルシウム感受性色素を用いてモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
TRPM8活性が、ナトリウム感受性色素を用いてモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
TRPM8活性が、膜電位色素を用いてモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記色素が、Fura2、Fluo3またはFluo4である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
本出願において前記膜電位色素が、Molecular Devices Membrane Potential Kit (cat#R8034)、Di-4-ANEPPS (ピリジニウム、4-(2-(6-(ジブチルアミノ)-2-ナフタレン-イル)エテニル)-l-(3-スルホプロピル))-ヒドロキシド、分子内塩、DiSBACC4(2)(ビス-(l,2-ジバルビツール酸)-トリメチンオキサノール)、 DiSBAC4(3)(ビス -(l,3-ジバルビツール酸)-トリメチンオキサノール)、 Cc-2- DMPE (Pacific Blue l,2-ジテトラデカノイル -sn-グリセロール -3-ホスホエタノールアミン,トリエチルアンモニウム塩)、および SBFI-AM (1,3- ベンゼンジカルボン酸、4,4-[l,4,10-トリオキサ -7,13-ジアザシクロペンタデカン -7,13-ジイルビス (5-メトキシ -6,l-2-ベンゾフランジイル)]ビス -,テトラキス [(アセチルオキシ)メチル] エステル(Molecular Probes)から成る群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ナトリウム感受性色素が、ナトリウムグリーンテトラアセテート(Molecular Probes)、またはNa-Sensitive Dye Kit (Molecular Devices)である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列を一過的に発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列を安定的に発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項45】
TRPM8活性が、イオン流束アッセイによりモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項46】
TRPM8流束を検出するために放射能標識を使用する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
イオン流束を検出するために原子吸光分光法を使用する、請求項45に記載の流速アッセイ。
【請求項48】
前記修飾ヒトTRPM8核酸配列が、調節可能なプロモーターに実施可能なように連結されている、請求項21に記載の方法。
【請求項49】
前記修飾ヒトTRPM8核酸配列が、構成的プロモーターに実施可能なように連結されている、請求項21に記載の方法。
【請求項50】
ハイスループットの化合物スクリーニングアッセイである、請求項21に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒトTRPM8の活性におけるスクリーニングされた前記化合物の効果が、電気生理学的にアッセイされる、請求項21に記載の方法。
【請求項52】
パッチクランプ法を使用することを包含する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
二電極ボルテージクランプ法を包含する、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
自動的に電位または電流を記録する装置を使用する、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記装置が、蛍光プレートリーダー(FLIPR)または電位画像解析プレートリーダー(VIPR)である、請求項21に記載の方法。
【請求項56】
前記装置がOpusXpressまたはIon Worksである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ラットまたはヒトのTRPM8の活性化において、メントールまたはイシリンと少なくとも等効力である化合物に関してスクリーニングする、請求項21に記載の方法。
【請求項58】
以下:
(i)核酸配列が、配列番号:1に含有されるヒトTRPM8核酸配列に対して、少なくとも、推定の(1)TATAボックス、(2)chi部位、(3)リボソームエントリー部位、(4)ARE、INS、またはCRS配列エレメント、ならびに(5)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の除去から成る群より選択される変異の導入により修飾されている、ヒトTRPM8ポリペプチドをコードする修飾ヒトTRPM8核酸配列を、安定的または一過的に発現する検査細胞;そして
(ii)化合物がヒトTRPM8の活性を調節するかどうか検出するための検出システム、
を包含するヒトTRPM8モジュレーターを同定するための検査キット。
【請求項59】
前記細胞が配列番号:2に含有される核酸配列を発現する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項60】
前記修飾TRPM8核酸配列が少なくとも200−400のサイレント変異を含有する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項61】
前記修飾TRPM8核酸配列が少なくとも400−600のサイレント変異を含有する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項62】
前記修飾TRPM8核酸配列が少なくとも500−600のサイレント変異を含有する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項63】
前記サイレント変異が、配列番号:2に含有される601のサイレント変異より選択される、請求項60−62のいずれか1項に記載の検査キット。
【請求項64】
検出システムが、細胞内のカルシウムまたはナトリウムまたは電位を検出するための手段を含む、請求項58に記載の検査キット。
【請求項65】
検出システムが、カルシウム感受性色素またはナトリウム感受性色素を含む、請求項58に記載の検査キット。
【請求項66】
検出システムが、パッチクランプまたは二電極クランプの電気生理学的検出システムを包含する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項67】
前記検査細胞が一過的に前記核酸配列を発現する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項68】
前記検査細胞が安定的に前記核酸配列を発現する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項69】
細胞がヒト細胞である、請求項59に記載の検査キット。
【請求項70】
前記細胞がHEK−239細胞である、請求項49に記載の検査キット。
【請求項1】
以下:(i)配列番号:2に含有される野性型TRPM8核酸配列、または別の野生型TRPM8核酸配列に対して、少なくとも、以下:(1)TATAボックス、(2)chi部位、(3)リボソームエントリー部位、(4)ARE、INS、もしくはCRS配列エレメント、ならびに(5)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の1つまたはそれより多くを除去する変異により修飾された核酸配列を包含する、そして(ii)配列番号:2に含有される核酸配列によりコードされるポリペプチドと、実質的に同じリガンド結合および機能的活性を有する、活性なイオンチャネルとしてヒト細胞において発現される、修飾ヒトTRPM8核酸配列。
【請求項2】
実施可能なようにプロモーターに連結された、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項3】
プロモーターが、調節可能なプロモーターまたは構成的プロモーターである、請求項2に記載の修飾核酸配列。
【請求項4】
少なくとも100のサイレント配列修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項5】
少なくとも200のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項6】
少なくとも300のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項7】
少なくとも400のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項8】
少なくとも500のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項9】
少なくとも600のサイレント修飾を含有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項10】
前記サイレント修飾が、配列番号:1に含有される未修飾核酸配列と比較した場合の、配列番号:2に含有される配列より選択される、請求項4−9のいずれかに記載の修飾核酸配列。
【請求項11】
配列番号:2に含有されるTRPM8核酸配列と、少なくとも95−99%の配列同一性を保有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項12】
前記核酸配列が、配列番号:2に含有されるTRPM8核酸配列を有する、請求項1に記載の修飾核酸配列。
【請求項13】
調節可能なプロモーターまたは構成的プロモーターに実施可能なように連結されている、請求項12に記載の修飾核酸配列。
【請求項14】
プラスミド上に含有される、請求項1−9または11−13のいずれか1項に記載の修飾配列。
【請求項15】
請求項1−9または11−13のいずれか1項に従っての核酸配列で、形質移入、形質転換、またはマイクロインジェクションされる、初代細胞または卵母細胞。
【請求項16】
請求項12に従っての核酸配列で、形質移入、形質転換、またはマイクロインジェクションされる、初代細胞または卵母細胞。
【請求項17】
ヒト細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項18】
ヒト細胞である、請求項16に記載の細胞。
【請求項19】
HEK−293細胞、アフリカミドリザル細胞、またはCos細胞もしくはCHO細胞である、請求項15に記載の細胞。
【請求項20】
HEK−293細胞、またはCos細胞、またはCHO細胞である、請求項16に記載の細胞。
【請求項21】
以下:
(i)修飾ヒトTRPM8核酸配列であって、ここでそのような修飾ヒトTRPM8核酸配列が、配列番号:2に含有されるヒトTRPM8核酸配列に対して、少なくとも、推定の(1)TATAボックス、(2)chi部位、(3)リボソームエントリー部位、(4)ARE、INS、またはCRS配列エレメント、ならびに(5)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の除去から成る群より選択される変異の導入により修飾される、前記核酸配列、を発現する細胞を得ること;
(ii)前記修飾ヒトTRPM8核酸配列を発現する前記細胞を、ヒトTRPM8イオンチャネルの推定モジュレーターと接触させること;そして
(iii)前記化合物が、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされたTRPM8イオンチャネルの活性を修飾するかどうかを同定すること、
を包含する、修飾ヒトTRPM8核酸配列によりコードされるヒトTRPM8イオンチャネルの活性を調節する化合物を同定するための方法。
【請求項22】
前記核酸配列を発現する細胞が哺乳類細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸配列を発現する細胞がヒト細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸配列を発現する細胞が、HEK−293細胞、BHK、CHO、COS、サルのL細胞、アフリカミドリザル腎細胞、Lkt−細胞、および卵母細胞から成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記核酸配列が、配列番号:1に含有されるヒトTRPM8核酸配列と約80−85%の配列同一性を保有する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸配列が、配列番号:2に含有される核酸配列を保有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも100−200のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも300−400のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも500のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
修飾TRPM8核酸配列が、少なくとも550のサイレント変異を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記サイレント変異が、配列番号:2に含有される601のサイレント変異より選択される、請求項27−30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記アッセイ方法においてヒトTRPM8モジュレーターとして同定された化合物が、冷却効果を起こす、または別の冷却剤の冷却効果を高めるかどうかを評価するために、ヒトの味覚検査、またはヒトの皮膚接触(局所)検査において、当該化合物がさらに評価されるかどうかを同定することをさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
ヒトTRPM8活性が、前記化合物が細胞内カルシウムの濃度に影響を及ぼすかどうかを検出することにより評価される、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
ヒトTRPM8活性が、前記化合物が細胞内ナトリウムの濃度に影響を及ぼすかどうかを検出することにより評価される、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記核酸配列によりコードされるヒトTRPM8が、寒冷温度、またはヒトTRPM8を活性化することが知られている冷却剤化合物により刺激されるステップを、前記アッセイが包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
ヒトTRPM8を活性化することが知られている前記化合物が、メタノール、イシリン、またはその誘導体である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
TRPM8活性が、蛍光カルシウム感受性色素を用いてモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
TRPM8活性が、ナトリウム感受性色素を用いてモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
TRPM8活性が、膜電位色素を用いてモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記色素が、Fura2、Fluo3またはFluo4である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
本出願において前記膜電位色素が、Molecular Devices Membrane Potential Kit (cat#R8034)、Di-4-ANEPPS (ピリジニウム、4-(2-(6-(ジブチルアミノ)-2-ナフタレン-イル)エテニル)-l-(3-スルホプロピル))-ヒドロキシド、分子内塩、DiSBACC4(2)(ビス-(l,2-ジバルビツール酸)-トリメチンオキサノール)、 DiSBAC4(3)(ビス -(l,3-ジバルビツール酸)-トリメチンオキサノール)、 Cc-2- DMPE (Pacific Blue l,2-ジテトラデカノイル -sn-グリセロール -3-ホスホエタノールアミン,トリエチルアンモニウム塩)、および SBFI-AM (1,3- ベンゼンジカルボン酸、4,4-[l,4,10-トリオキサ -7,13-ジアザシクロペンタデカン -7,13-ジイルビス (5-メトキシ -6,l-2-ベンゾフランジイル)]ビス -,テトラキス [(アセチルオキシ)メチル] エステル(Molecular Probes)から成る群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ナトリウム感受性色素が、ナトリウムグリーンテトラアセテート(Molecular Probes)、またはNa-Sensitive Dye Kit (Molecular Devices)である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列を一過的に発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が、前記修飾ヒトTRPM8核酸配列を安定的に発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項45】
TRPM8活性が、イオン流束アッセイによりモニタリングされる、請求項21に記載の方法。
【請求項46】
TRPM8流束を検出するために放射能標識を使用する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
イオン流束を検出するために原子吸光分光法を使用する、請求項45に記載の流速アッセイ。
【請求項48】
前記修飾ヒトTRPM8核酸配列が、調節可能なプロモーターに実施可能なように連結されている、請求項21に記載の方法。
【請求項49】
前記修飾ヒトTRPM8核酸配列が、構成的プロモーターに実施可能なように連結されている、請求項21に記載の方法。
【請求項50】
ハイスループットの化合物スクリーニングアッセイである、請求項21に記載の方法。
【請求項51】
前記ヒトTRPM8の活性におけるスクリーニングされた前記化合物の効果が、電気生理学的にアッセイされる、請求項21に記載の方法。
【請求項52】
パッチクランプ法を使用することを包含する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
二電極ボルテージクランプ法を包含する、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
自動的に電位または電流を記録する装置を使用する、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記装置が、蛍光プレートリーダー(FLIPR)または電位画像解析プレートリーダー(VIPR)である、請求項21に記載の方法。
【請求項56】
前記装置がOpusXpressまたはIon Worksである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
ラットまたはヒトのTRPM8の活性化において、メントールまたはイシリンと少なくとも等効力である化合物に関してスクリーニングする、請求項21に記載の方法。
【請求項58】
以下:
(i)核酸配列が、配列番号:1に含有されるヒトTRPM8核酸配列に対して、少なくとも、推定の(1)TATAボックス、(2)chi部位、(3)リボソームエントリー部位、(4)ARE、INS、またはCRS配列エレメント、ならびに(5)潜在性スプライスドナー部位およびアクセプター部位、の除去から成る群より選択される変異の導入により修飾されている、ヒトTRPM8ポリペプチドをコードする修飾ヒトTRPM8核酸配列を、安定的または一過的に発現する検査細胞;そして
(ii)化合物がヒトTRPM8の活性を調節するかどうか検出するための検出システム、
を包含するヒトTRPM8モジュレーターを同定するための検査キット。
【請求項59】
前記細胞が配列番号:2に含有される核酸配列を発現する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項60】
前記修飾TRPM8核酸配列が少なくとも200−400のサイレント変異を含有する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項61】
前記修飾TRPM8核酸配列が少なくとも400−600のサイレント変異を含有する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項62】
前記修飾TRPM8核酸配列が少なくとも500−600のサイレント変異を含有する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項63】
前記サイレント変異が、配列番号:2に含有される601のサイレント変異より選択される、請求項60−62のいずれか1項に記載の検査キット。
【請求項64】
検出システムが、細胞内のカルシウムまたはナトリウムまたは電位を検出するための手段を含む、請求項58に記載の検査キット。
【請求項65】
検出システムが、カルシウム感受性色素またはナトリウム感受性色素を含む、請求項58に記載の検査キット。
【請求項66】
検出システムが、パッチクランプまたは二電極クランプの電気生理学的検出システムを包含する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項67】
前記検査細胞が一過的に前記核酸配列を発現する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項68】
前記検査細胞が安定的に前記核酸配列を発現する、請求項58に記載の検査キット。
【請求項69】
細胞がヒト細胞である、請求項59に記載の検査キット。
【請求項70】
前記細胞がHEK−239細胞である、請求項49に記載の検査キット。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1−2】
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【図18】
【図19】
【公表番号】特表2009−511049(P2009−511049A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535572(P2008−535572)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/038962
【国際公開番号】WO2007/047127
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(507267920)セノミクス・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/038962
【国際公開番号】WO2007/047127
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(507267920)セノミクス・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
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