説明

最適枕の判定方法及び判定装置

【課題】 動的時において快適な枕を得るための判定方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 対象者に最適な枕を提供するための最適枕判定方法であって、頭部の回転角を検出する第一の検出手段と、腰部の回転角を検出する第二の検出手段とを準備し、前記第一及び第二の検出手段によって、基本姿勢からの頭部及び腰部のそれぞれの回転角を求め、各々の前記回転角の経時変化を回転履歴として求め、前記頭部の回転履歴と前記腰部の回転履歴とから、同一時刻における前記腰部の回転と前記頭部の回転とのずれを求め、このずれを予め設定された基準値と比較して前記対象者に最適な枕か否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者に適した枕か否かを判定するための方法及びその装置に関し、特に、寝返り等の動的状態を考慮して当該対象者に適した枕か否かを判定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
快適な睡眠を得るためには、枕の高さや硬さ、形状、大きさ、蒸れにくさ等は重要な要件である。そして、枕が合っていないと、肩こりや睡眠不足のように健康に悪影響を及ぼすことがある。
そのため、従来より、快適な枕を得るための判定方法や判定装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、「寝た状態で背中(背骨の第7頚椎に対応する部分)の延長線に対して顔面が5°から6°傾斜する姿勢を保持する枕が安眠に適した枕である」ことに着目し、当該寸法を簡単かつ迅速に測定できる枕の高さ測定器を提案している。
特許文献2では、最適枕と頸推深度との関係に着目し、頸椎深度測定におけるばらつきを無くして自分の頸椎深度に最適な頸推支持枕を提供できる頸推弧の深度測定具を提案している。同様に、特許文献3でも、最適枕と頸推深度との関係に着目し、だれでもが自分に合った最適な枕を選択できるようにアドバイスできる枕の選択アドバイスシステムを提案している。
特許文献4では、寝返りを打ったり、横向きになったりして姿勢が変わったときに、当該姿勢の変更に応じて自動的に高さ調整を行う高さ可変式安眠枕を提案している。
特許文献5では、就寝時の各人の体位重心等高線を計測し、当人に最適とする枕支点を測定し、骨格構造等に無理な歪曲、圧迫等を及ぼすことのない人体工学上合理的な枕を設計する方法を提案している。
また、寝返りを容易に行えたり、寝返りを促したりするための高さ調整可能なマクラ及びマクラ高さの調整方法が、本願の共同発明者の一人によって提案されている(特許文献6,7参照)。
【特許文献1】実公平7−49364公報(段落0002及び0003の記載参照)
【特許文献2】実用新案登録第3061548号(段落0007〜0009の記載参照)
【特許文献3】特開2001−299545号公報(請求項1及び段落0002,0003の記載参照)
【特許文献4】特開平8−299138号公報(段落0005及び0006の記載参照)
【特許文献5】特開平7−222663号公報(特許請求の範囲の記載参照)
【特許文献6】特開2007−37912号公報(要約の記載参照)
【特許文献7】特開2004−209099号公報(要約の記載参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来の方法及び装置は、枕高さや頸椎深さ、体格等に着目してなされたものであるが、いずれも静的な状態での最適枕の提供を目的としている。
しかし、快適な安眠を選るための枕は、静的な状態において最適であることはもちろんであるが、就寝中に頻繁に繰り返される寝返り時等の動的状態の下においても、寝返りのしやすさなどの条件を高める必要がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、特に動的時において快適な枕を得るための判定方法及びその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、寝返りのスムースさが腰と頭との回転位相差(ずれ)に関連することに着目し、その差を判定の基準として求める判定方法及び判定装置に想到した。例えば、仰向け姿勢と横向き姿勢との間で寝返りをうつ際には、通常、腰部の回転を起因として上体及び頭部がそれに追随するが、快適に寝返りを打つには、腰部の回転に遅れなく頭部の回転がスムースに追随するのが好ましい。静的状態では対象者にとって適した枕であっても、動的状態で腰部の回転と頭部の回転との間に一定以上の時間差があったり、頭部のスムースな回転を阻害する要因が枕に存在する場合は、その枕は当該対象者にとって最適の枕とは言えず、当該時間差の大きさや阻害要因による影響の大きさによって、その枕がどの程度当該対象者に適していないかを判断することができる。
【0006】
具体的に、本発明の判定方法は、請求項1に記載するように、対象者に最適な枕を提供するための最適枕判定方法であって、頭部の回転角を検出する第一の検出手段と、腰部の回転角を検出する第二の検出手段とを準備し、前記第一及び第二の検出手段によって、基本姿勢からの頭部及び腰部のそれぞれの回転角を求め、各々の前記回転角の経時変化を回転履歴として求め、前記頭部の回転履歴と前記腰部の回転履歴とから、同一時刻における前記腰部の回転と前記頭部の回転履歴のずれを求め、前記回転履歴の形状と前記ずれの大小とから前記対象者に最適な枕か否かを判定する方法である。
請求項2に記載するように、前記頭部と前記腰部の前記回転履歴を重ねて表示する表示手段を準備し、この表示手段に二つの前記回転履歴を重ねて表示させることで、判定が容易になる。
【0007】
上記の判定方法は、請求項3〜7に記載した判定装置で実施することが可能である。
請求項3に記載の判定装置は、対象者に最適な枕を提供するための最適枕判定装置であって、頭部の回転角を検出する第一の検出手段と、腰部の回転角を検出する第二の検出手段と、前記第一の検出手段及び前記第二の検出手段が検出した回転角の経時的変化から頭部及び腰部の回転履歴を求める回転履歴演算手段と、得られた頭部及び腰部の前記回転履歴を表示するとともに、頭部及び腰部の前記回転履歴を比較可能に表示して、前記回転履歴の形状と前記回転履歴のずれとの大小とから前記対象者に最適な枕か否かを判定するように促す表示手段とを有する構成としてある。
この場合、請求項4に記載するように、前記頭部の回転履歴と前記腰部の回転履歴とのずれを求め、このずれの大きさを前記表示手段に表示させる構成としてもよい。
さらに、請求項5に記載するように、前記ずれが大きい部分及び/又は前記回転履歴の形状が大きく変化する部分を一つ又は複数示して注意を促す表示を行うようにしてもよい。
なお、第一の検出手段及び第二の検出手段の具体的構成は、頭部と腰部の回転角を検出できるものであれば、回転時の加速度や磁気を利用した物理的なものであってもよいし、レーザ光を利用した光学的なものであってもよい。後者のものの具体例としては、例えば、請求項6に記載するように、前記第一の検出手段が前記対象者の頭部に装着したレーザポインタとこのレーザポインタから射出されたレーザ光を受光する受光器とから構成され、前記第二の検出手段が、前記対象者の腰部に装着したレーザポインタとこのレーザポインタから射出されたレーザ光を受光する受光器とから構成されているものや、請求項7に記載するように、前記第一の検出手段が前記対象者の頭部に装着したレーザポインタ,このレーザポインタから射出されたレーザ光が照射される受光板及びこの受光板に照射されたレーザ光の動きを撮影するカメラとから構成され、前記第二の検出手段が、前記対象者の腰部に装着したレーザポインタ,このレーザポインタから射出されたレーザ光が照射される受光板及びこの受光板に照射されたレーザ光の動きを撮影するカメラとから構成されているものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特に動的時に快適な枕を得るための判定を容易に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の最適枕判定装置の一実施形態にかかり、装置の全体構成を説明する概略斜視図である。
最適枕判定装置1は、ベッド10上で横臥した対象者Hの頭部H1に装着された頭部レーザポインタ11と、腰部H2に装着された腰部レーザポインタ12と、頭部レーザポインタ11及び腰部レーザポインタ12から出力されたレーザ光を受光し、頭部H1及び腰部H2の回転角に応じた受光信号を出力する検出器13と、この検出器13と信号線で接続されたパーソナルコンピュータ(以下PCと記載する)14等から概略構成される。
【0010】
頭部レーザポインタ11は、ヘッドギア等で対象者Hの頭部H1に固定され、腰部レーザポインタ12はベルト等で対象者Hの腰部(腰骨部分)H2に固定されて、頭部H1及び腰部H2の回転と一体になってレーザポインタ11,12が回転するようになっている。また、二つのレーザポインタ11,12は、対象者Hが図示するような仰向け状態にあるときに、それぞれから射出されるレーザ光の光軸が、対象者Hの身体の中心を通る体軸HCに対して鉛直上下方向から交叉するように位置決めされる。
【0011】
二つのレーザポインタ11,12から射出されたレーザ光から、頭部H1及び腰部H2の回転角に応じた検出信号をPC14に出力する検出信号出力手段は、例えば、図1に示すように、体軸HCを中心軸とするトンネル状の筐体に均等間隔で配置された複数の受光器13からなるものであってもよいし、図2に示すように、対象者Hの上方に水平に配置した半透明状の受光板15と、この受光板15に照射されたレーザ光の動きを撮影するカメラ16とからなるものであってもよい。なお、カメラ16は、レーザ光の動きを撮影することができるものであればその種類は問わず、市販のビデオカメラやテレビカメラ,CCDカメラ等を使用することができる。
図1の例では、頭部レーザポインタ11と受光器13が第一の検出手段を構成し、腰部レーザポインタ12と受光器13が第二の検出手段を構成する。また、図2の例では、頭部レーザポインタ11と受光板15及びカメラ16が第一の検出手段を構成し、腰部レーザポインタ12と受光板15及びカメラ16が第二の検出手段を構成する。
【0012】
図1の例では、パソコンPCは、受光器13が出力した前記検出信号から頭部H1及び腰部H2のそれぞれの回転角を求めるとともにこの回転角の経時的変化を回転履歴として求め、この回転履歴をグラフ等に作図してディスプレイに表示する。また、図2の例では、パソコンPCは、頭部H1及び腰部H2の回転にともなうレーザ光の動きと時間経過とから回転履歴を求め、この回転履歴をグラフ等に作図してディスプレイに表示する。なお、以下の説明では、グラフ化した回転履歴を「回転履歴」と記載することがある。
【0013】
図3は、頭部H1及び腰部H2の回転履歴及び回転履歴のずれを説明するためのグラフである。
図3のグラフにおいて横軸は経過時間、立軸は回転角で、実線は腰部H2の回転履歴を、点線は頭部H1の回転履歴を示している。また、回転角0は仰向け状態の基本姿勢を示し、頭部H1及び腰部H2の回転の始点及び終点である。そして、回転角0を境として正(+)側が一方(例えば右方)への回転、負(−)側が他方(同左方)への回転を示している。
【0014】
図示の例では、頭部H1又は腰部H2において、仰向け状態の基本姿勢(回転角0度の位置)から右方向に寝返り、前記基本姿勢に戻ってから引き続いて左方向に寝返り、再び基本姿勢に戻るまでの過程を示している。
理想的には、頭部H1の回転と腰部H2の回転とは同時に行われるのが好ましく、このような場合、頭部H1の回転履歴と腰部H2の回転履歴とは同一形状になり、かつ、両回転履歴は重なる。
【0015】
しかし、実際には、人間の身体は剛体ではなく捩りに対してもかなりの柔軟性を有するため、頭部H1の回転と腰部H2の回転とが完全に一致することはなく、頭部H1の回転履歴を表すグラフと腰部H2の回転履歴を表すグラフとの間にはずれが生じる。また、頭部H1の回転履歴を表すグラフは、そば殻や籾殻、繊維塊、発泡ポリスチレンビーズ等の枕の材質及び硬さ、平坦状や凹状,円弧状等の枕の形状及び対象者の頭部H1の形や体形によってその形状及び腰部H2の回転履歴に対するずれの大きさが変化する。
【0016】
本発明の判定方法では、グラフ化した回転履歴の形状及び回転履歴のずれの大きさとから、当該枕が当該対象者にとって最適か否かを判定する。ずれの位置から枕のどの部分に問題があるかも判定することができる。この実施形態においてずれの大きさを求めるに当たっては、腰部H2の回転を基準とする。そして、腰部H2に対する頭部H1の遅れ角(ずれ)θを、[腰部H2の回転角−頭部H1の回転角]として求めるものとする。また、頭部H1及び腰部H2が右回転(時計回り方向に回転)するときは、遅れ角θの符号はそのままとし、左回転(反時計回り方向に回転)するときは、遅れ角θの符号を逆にするものとする。
また、図3に示すように、頭部H1の回転履歴と、腰部H2の回転履歴とを重ね合わせて表示することで、ずれの位置と大きさとを容易に判断でき、最適枕を選択するに当たっての参考情報を容易に得ることができる。さらに、二つの回転履歴に重ねて、ずれのグラフ(図3中二点鎖線で示す)を表示することで、ずれの位置と大きさを一目で判断できるようになり、前記参考情報をより容易に得ることができるようになる。ずれの大きさが一定以上(例えば20°以上)になる部分を例えば図示するように矢印で示して、注意を促すようにしてもよい。
【0017】
図3に示す例では、右方向に寝返りを打ち始めるとともに腰部H2が頭部H1に遅れて回転する。このとき、例えば時刻Iにおける遅れ角(ずれ)θの大きさはα(符号は−)である。一方、頭部H1が右向きから基本姿勢に戻る過程では、頭部H1は腰部H2よりも遅れて回転し、その遅れ角θの大きさは時刻IIにおいてβ(符号は+)である。
同様に、左方向に寝返りを打ち始める際には、腰部H2が頭部にH1に遅れて回転し、左向きの状態から基本姿勢に戻る過程では頭部H1と腰部H2とがほぼ同時に回転している。
また、図3に示す例では、頭部H1が右向きから基本姿勢に戻る過程で、頭部H1の回転履歴の一部に段差状の不連続点が発生している(符号IIIで示す部分)。このような不連続点の発生は、頭部H1の回転が何らかの理由で急激に阻害されたか、急激に回転が促進されたかに起因し、頭部H1の回転が滑らかでないことを示している。回転履歴における不連続になる部分を例えば図示するように矢印で示して、注意を促すようにしてもよい。
【0018】
図3に示す頭部H1及び腰部H2の回転履歴及びずれを表すグラフから、当該枕が当該対象者に最適であるか否かが判定できる。すなわち、頭部H1の回転履歴の形状が滑らかでない場合は、頭部H1の回転が滑らかに行われていないと判定することができ、ずれが大きい場合には、頭部H1と腰部H2との間に大きな捻れが生じていると判定することができる。最適な枕を得るには、材質や形状等を変えて複数試した枕の中から、回転履歴の形状が可能な限り滑らかで、かつ、ずれが可能な限り小さいものを選択するとよい。
【0019】
図4〜図7は、特定の対象者による実際の回転履歴を表すグラフである。図4〜図7のグラフにおいても、種々の枕における頭部H1の回転履歴を表すグラフと、腰部H2の回転履歴を表すグラフとを重ね合わせて表示している。
図4は、最適な枕の回転履歴を示すグラフである。この最適枕では、頭部H1と腰部H2の回転開始から左回転が終了するまで、ほぼ二つのグラフが一致しており、頭部H1が腰部H2の回転によく追随している。この枕では、寝返りの開始時に若干のずれが生じるものの、その大きさは最大でも20°程度である。右方向への寝返りに引き続く左方向の寝返りでも、頭部H1の回転が腰部H2の回転によく追随していることがわかる。
このような枕は、静的状態でも最適性が保たれていれば、寝返りもスムースに行えてより快適な睡眠を得ることができる。
【0020】
図5は、発泡ポリスチレン製ビーズを用いた枕の回転履歴を示すグラフである。
この枕では、発泡ポリスチレン製ビーズを押して枕を変形させながら頭部H1が回転しなければならないため、腰部H2が回転を開始しても頭部H1の回転開始が遅れる。ずれの大きさは最適枕(図4)の二倍にもなる。このずれは、右方向への回転が終了する頃には無くなるものの、右向きから基本姿勢に戻り、さらに引き続いて左方向に寝返る際にも、腰部H2に対して頭部H1が大きく遅れ、その大きさは最大で110度にもなる。すなわち、対象者は、頭部H1と腰部H2とが直角以上に捻れた状態で寝返りを打つことになり、これにより肩こりや筋肉痛等の不快感が発生すると思われる。
【0021】
図6は、そば殻を用いた枕の回転履歴を示すグラフである。
この枕においても発泡ポリスチレン製ビーズ枕と同様に、頭部H1がそば殻を押して枕を変形させながら回転するため、腰部H2が回転を開始しても頭部H1の回転開始が若干遅れる。しかし、このときのずれの大きさは、発泡ポリスチレン製ビーズ枕の場合(図5)よりも小さい。
また、そば殻枕では、横向きの状態から基本姿勢に戻るときの動きがスムースである。これは、そば殻枕は、変形させた後の形状の維持性が高く、右方向に寝返りした際に頭部H1によって形成された窪みがその後も維持され、その窪みに沿って頭部H1が回転しながら基本姿勢に戻るためと思われる。しかし、基本姿勢に戻った後に引き続いて左方向に寝返りを行う場合、あらためて頭部H1がそば殻を押して枕を変形させながら回転しなければならないため、頭部H1と腰部H2との間にずれが生じる。このようなずれは、図6のグラフにおいて段付き状の不連続点IIIとなって現れる。
以上のことから、そば殻枕はずれの点では発泡ポリスチレン製ビーズ枕よりも有利であるが、回転履歴の形状の点では発泡ポリスチレン製ビーズ枕よりも不利であると判定することができる。
【0022】
図7は、中央部が窪んだ凹形枕の回転履歴を示すグラフである。
この凹形枕では、右方向への寝返り時に、頭部H1が凹部の右側の縁の上に乗り上げなければならないため、頭部H1の回転が腰部H2の回転に対して遅れ、このときのずれの大きさは最大で40°にもなる。右向きの状態(90°の状態)から基本姿勢に戻るときには、凹部の縁に乗り上げた頭部H1が凹部の中心に向けて転がり落ちるように回転するため、頭部H1が基本姿勢に戻る途中で腰部H2を追い越している。そして、基本姿勢に戻ってから引き続いて左方向に寝返りを行う際には、頭部H1は凹部の左側の縁に乗り上げなければならないため、頭部H1の回転が阻害される。そのため、この凹形枕においても、図7に示すように、そば殻枕(図6)と同様に不連続点IIIが現れる。
凹形枕は、そば殻枕に対してずれが大きく、かつ、回転履歴の形状の点でも不連続点IIIの段差が大きいことから、ずれ及び回転履歴の双方においてそば殻枕よりも不利であると判定できる。
このように、枕の材質及び硬さ、形状等の条件を種々に変更してそれぞれについて回転履歴を求め、上記の判定を繰り返すことで、対象者に最適な枕を得ることができる。
【0023】
本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、頭部H1及び腰部H2の回転角を検出する検出手段として、図1及び図2の例を挙げて説明したが、頭部H1及び腰部H2の回転角を検出することができるのであれば、検出手段は上記に限られるものではなく、公知の種々のものを利用することが可能である。例えば、レーザポインタの動きをビデオカメラ等で撮影し、撮影結果をコマ送りしながら、手作業で頭部及び腰部の回転角を読み取るものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の最適枕の判定方法及び判定装置は、例えば枕を販売する店舗や、百貨店内の枕販売コーナーにおいて、個々の対象者が自分に適った最適な枕を選択するのに利用が可能であるほか、老人ホーム,リハビリセンター,フィットネスクラブ,医療機関等の施設において、睡眠中の肩こりや筋肉痛等を訴える対象者に適用することで、肩こりや筋肉痛等が発生する原因を突き止め、これらの症状を改善するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】判定装置の一例にかかり、レーザポインタと受光器とからなる検出手段を示す概略斜視図である。
【図2】判定装置の他の一例にかかり、レーザポインタと受光板及びカメラからなる検出手段を示すものである。
【図3】回転履歴の一例を示すグラフである。
【図4】対象者による実際の回転履歴を表すグラフで、最適枕の回転履歴を示すものである。
【図5】対象者による実際の回転履歴を表すグラフで、発泡ポリスチレン製ビーズ枕の回転履歴を示すものである。
【図6】対象者による実際の回転履歴を表すグラフで、そば殻枕の回転履歴を示すものである。
【図7】対象者による実際の回転履歴を表すグラフで、中央部が窪んだ凹形枕の回転履歴を示すグラフである。
【符号の説明】
【0026】
1 最適枕判定装置
10 ベッド
11 頭部レーザポインタ
12 腰部レーザポインタ
13 受光器
14 パーソナルコンピュータ
15 受光板
16 カメラ
H 対象者
H1 頭部
H2 腰部
HC 体軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者に最適な枕を提供するための最適枕判定方法であって、
頭部の回転角を検出する第一の検出手段と、腰部の回転角を検出する第二の検出手段とを準備し、
前記第一及び第二の検出手段によって、基本姿勢からの頭部及び腰部のそれぞれの回転角を求め、
各々の前記回転角の経時変化を回転履歴として求め、
前記頭部の回転履歴と前記腰部の回転履歴とから、同一時刻における前記腰部の回転と前記頭部の回転履歴のずれを求め、
前記回転履歴の形状と前記ずれの大小とから前記対象者に最適な枕か否かを判定すること、
を特徴とする最適枕の判定方法。
【請求項2】
前記頭部と前記腰部の前記回転履歴を重ねて表示する表示手段を準備し、この表示手段に重ねて表示された二つの前記回転履歴のずれに基づいて前記対象者に最適な枕か否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の最適枕の判定方法。
【請求項3】
対象者に最適な枕を提供するための最適枕判定装置であって、
頭部の回転角を検出する第一の検出手段と、
腰部の回転角を検出する第二の検出手段と、
前記第一の検出手段及び前記第二の検出手段が検出した回転角の経時的変化から頭部及び腰部の回転履歴を求める回転履歴演算手段と、
得られた頭部及び腰部の前記回転履歴を表示するとともに、頭部及び腰部の前記回転履歴を比較可能に表示して、前記回転履歴の形状と前記回転履歴のずれとの大小とから前記対象者に最適な枕か否かを判定するように促す表示手段と、
を有することを特徴とする最適枕の判定装置。
【請求項4】
前記頭部の回転履歴と前記腰部の回転履歴とのずれを求め、このずれの大きさを前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項3に記載の最適枕の判定装置。
【請求項5】
前記ずれが大きい部分及び/又は前記回転履歴の形状が大きく変化する部分を一つ又は複数示して注意を促す表示を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の最適枕の判定装置。
【請求項6】
前記第一の検出手段が前記対象者の頭部に装着したレーザポインタとこのレーザポインタから射出されたレーザ光を受光する受光器とから構成され、前記第二の検出手段が、前記対象者の腰部に装着したレーザポインタとこのレーザポインタから射出されたレーザ光を受光する受光器とから構成されていることを特徴とする請求項3,4又は5に記載の最適枕の判定装置。
【請求項7】
前記第一の検出手段が前記対象者の頭部に装着したレーザポインタ,このレーザポインタから射出されたレーザ光が照射される受光板及びこの受光板に照射されたレーザ光の動きを撮影するカメラとから構成され、前記第二の検出手段が、前記対象者の腰部に装着したレーザポインタ,このレーザポインタから射出されたレーザ光が照射される受光板及びこの受光板に照射されたレーザ光の動きを撮影するカメラとから構成されていることを特徴とする請求項3,4又は5に記載の最適枕の判定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−183412(P2009−183412A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25539(P2008−25539)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(505298135)株式会社山田朱織枕研究所 (2)
【Fターム(参考)】