説明

月経抑制、避妊、およびホルモン補充療法のための製剤、ならびにその投与方法

抗生物質、エストロゲン、およびプロゲスターゲンを含む薬剤が提供される。薬剤は、経口投与またはタンポンによる膣内投与のような他の方法で投与されてよい。薬剤は、月経抑制、避妊、および/またはホルモン補充療法に対して使用され得る。前記薬剤を使用した患者の治療方法は、治療の過程において患者に前記薬剤を一定に維持され得る量または頻度で、または変化させて投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、月経抑制、避妊、およびホルモン補充療法のための製剤、ならびにその投与方法に関する。より詳細には、本開示は、エストロゲン、プロゲスターゲンおよび抗製物質を含む製剤、ならびにこの製剤の投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの女性は、月経抑制、避妊、およびホルモン補充療法の方法に関心がある。月経抑制薬は、月経期間の痛み、回数、および頻度を低減させることができ、ある一定の癌のリスクを低減させるようないくつかの健康上の利益も有し得る。避妊は、家族計画に役立ち得る。ホルモン置換療法は、年配の女性に対して有意な健康上の利益を有し、例えば、「ホットフラッシュ」を低減させ、骨粗鬆症を予防することができる。
【0003】
さらに、現在の薬剤を使用する多くの女性は、いわゆる「ブレークスルー出血(breakthrough bleeding)」を経験する。これらの女性は、予測可能な期間を有するよりむしろ、薬剤が予測不可能な量の膣出血を引き起こすことを見出す。それは、少数である場合もあるが、より甚大である場合もあり、使用者を非常に困惑させ、不便である。ブレークスルー出血は、使用者が薬剤の服用を始めた後、長く続くこともある。タンポンに対する必要性を除去する代わりに、この事象は、使用者の一部に余計な用心を必要とさせる。これらの薬剤の多くの使用者は、結果として落胆する。
【0004】
それ故、月経抑制剤、避妊薬として、およびホルモン補充療法のために首尾よく使用することができ、現在入手可能な薬剤の欠点に遭遇しない新規の薬剤、およびその使用方法に対する需要がある。
【発明の概要】
【0005】
1つの実施形態において、本開示は、月経抑制、避妊、および/またはホルモン補充療法のために使用する薬剤を提供する。前記薬剤は、抗生物質と、エストロゲンおよびプロゲスターゲンの少なくとも1つを含む。
【0006】
別の実施形態において、本開示は、抗生物質、エストロゲン、およびプロゲスターゲンを含む薬剤を提供する。
【0007】
別の実施形態において、本開示は、患者に薬剤を投与する方法を提供し、前記薬剤は、抗生物質、エストロゲン、およびプロゲスターゲンを含む。前記方法は、治療の過程において、ある頻度で薬剤を投与するステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【0008】
本開示は、驚くべきことに、一般に保持する利益に反して、抗生物質は、エストロゲンおよびプロゲスターゲンの両方と製剤中で組み合わされることにより、安全で効果的な避妊、月経抑制、およびホルモン補充療法の全てを同時に提供できることを見出した。あるいは、抗生物質は、エストロゲンまたはプロゲスターゲンのいずれか一方と、薬剤において組み合わされてもよい。これまで、本開示において使用するような抗生物質は、エストロゲンもしくはプロゲスターゲンのいずれかまたはその両方において有害な効果を有するため、避妊、月経抑制、およびホルモン補充療法におけるその有効性は制限されると考えられてきた。抗生物質は、ブレークスルー出血の問題を解決することが見出された。これら3つの成分を全て含む薬剤は、これまでには開発されていない。
【0009】
1.エストロゲン
本開示の薬剤において使用されるエストロゲンは、以下に示すもののいずれかであってよい:エチニルエストラジオール、エストラジオール、エストロピペート、天然結合型ウマエストロゲン、結合型合成エストロゲン、エステル化エストロゲン、エストロゲンスルファメート、エストロン硫酸塩、ピペラジンエストロン硫酸塩、メストラノール、エストリオール、エストロン、エストラジオールバレレート、ジネストロール、またはこれらのいずれかの組み合わせ。
【0010】
本発明の薬剤におけるエストロゲンの量は、約0.005 mg〜約1 mg、または約0.01 mg〜約0.625 mg、または約0.02〜約0.05 mg、または液体形態におけるこれらの均等量であってよく、これらは全て1日当りの量である。エストロゲンの量は、正確に以下に示す量、すなわち、0.005 mg〜1 mg、または0.01 mg〜0.625 mg、または0.02〜0.05 mgであってもよい。これらの範囲外のエストロゲン投与量は、避妊、月経抑制、およびホルモン補充療法の3つ全てに対して有効でないと考えられる。以下に示す表1は、上記で挙げた中の特定のエストロゲンについての有利な投与量を示す。
【表1】

【0011】
また、表1に挙げられたエストロゲンの量は、正確な量であっても、おおよその量であってもよい。例えば、エストラジオールは、薬剤中に1.0 mgの量で存在してよい。
【0012】
2.プロゲスターゲン
本開示のプロゲスターゲンは、天然プロゲスターゲンであるプロゲステロンであるか、またはプロゲスチンのような合成プロゲスターゲンであってよい。一般的に、プロゲスターゲンは、1日当り約0.01〜約7 mg、または液体製剤の場合はその均等量で存在してよく、または正確に0.01mg〜7 mgであってよい。以下の表2は、本開示の薬剤において使用することができるプロゲスターゲンのリストおよびその投与量を示す。
【表2】

【0013】
表2に挙げたプロゲスターゲンは、単独で、または2つ以上を組み合わせて使用されてよい。本開示の薬剤に対して検討される他のプロゲスターゲンには、シペロテロン(cyperoterone)、シプロトンアセテート(cyprotone acetate)、エチノジオールジアセテート(ethynodiol diacetate)、メドロキシプロゲステロン(medroxyprogesterone)、およびノレルデストロミン(noreldestromin)、またはこれらと表2に挙げたプロゲスターゲンとの組み合わせが含まれる。さらに、表2に挙げたプロゲスターゲンの量は、おおよその量の代わりに、正確に記載された量であってよい。例えば、レボノルゲストレルは、0.05 mg〜0.15 mgの量で薬剤中に存在してよい。
【0014】
3.抗生物質
本開示の抗生物質は、ドキシサイクリン、ドキシサイクリン塩酸塩、デメクロサイクリン、メクロサイクリンスルホサリチル酸塩、ミノサイクリン塩酸塩、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン塩酸塩、またはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。上述したテトラサイクリン系の抗生物質の他に、ペニシリン、オキサシリン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、メチシリン、ナフシリン、クリンダマイシン、バンコマイシン、アンピシリン、またはこれらのいずれかの組み合わせが使用されてもよい。
【0015】
これらの抗生物質のいくつかの投与量は、感染症を治療するためにかなり高くなることが多い。例えば、先行技術において、オキシテトラサイクリンは1日当り2000 mg以内の投与量、テトラサイクリン塩酸塩は1日当り2000 mg以内の投与レベルが推奨されてきた。しかしながら本開示は、これらの抗生物質に対する慣例的な量よりずっと少ない投与量で、月経抑制、避妊、およびホルモン補充療法のために使用することができることを見出した。本開示における薬剤における抗生物質の量は、約1 mg〜約1000 mg、または約2 mg〜約100 mg、または約5 mg〜約20 mg、または液体形態におけるこれらの均等量であってよく、これらは全て1日当りの量である。抗生物質は、正確にこれらの量、すなわち1 mg〜1000 mg、または2 mg〜100 mg、または5 mg〜20 mg含まれてもよい。
【0016】
ドキシサイクリンは、例えば、アドキサ(Adoxa)、アトリドックス(Atridox)、ビオ(Bio)-Tb、ドリックス(Doryx)、ドキシキャップス(Doxy Caps)、ドキシセルヒクレート(Doxycel Hyclate)、モノドックス(Monodox)、ペリオスタット(Periostat)、ビブラマイシン(Vibramycin)、およびビブラ(Vibra)-Tabsのような多数のブランド名で販売され得る。デメクロサイクリンは、デクロマイシン(Declomycin)として販売され得る。メクロサイクリンスルホサリチル酸塩は、メクラン(Meclan)として販売され得る。ミノサイクリン塩酸塩は、アレスチン(Arestin)、ダイナシン(Dynacin)、ミノシン(Minocin)およびべクトリン(Vectrin)として販売され得る。オキシテトラサイクリンは、テラマイシンおよびUri-Tetとして販売され、テトラサイクリン塩酸塩は、アクロマイシン(Achromycin)V、Ala-Tet、ブリスタサイクリン(Bristacycline)Nor-Tet、パンマイシン(Panmycin)、スミシン(Sumycin)、テトラキャップ(Tetracap)、テトラシン(Tetracyn)、テトララン(Tetralan)およびトピサイクリン(Topicycline)として販売され得る。
【0017】
4.剤形
上記に示した3つの化合物を含有する薬剤は、固体または液体の経口薬剤であってよく、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット(caplet)、軟カプセル(gel-cap)、または液滴(drops)であってよい。薬剤は、インプラントまたは注射を介して、あるいはパッチまたはスプレーにより経皮的に投与されてもよい。薬剤は、例えばタンポンの使用を介して膣内に送達されてもよい。錠剤のような固体形態の場合、エストロゲン、プロゲスターゲン、および抗生物質は、これら成分の送達および溶解を早めるマクロ化された形態であってよい。
【0018】
1つの実施形態において、薬剤は以下の成分を含む:1日当り約0.02 mg〜約0.05 mgのエチニルエストラジオール、1日当り約2 mg〜約4 mgのドロスピレノン、1日当り約5 mg〜約20 mgのドキシサイクリン塩酸塩、またはこれらと均等な液体量のこれら3つの化合物。
【0019】
第2の実施形態において、薬剤は以下の成分を含む:1日当り約0.005 mg〜約0.06 mgのエチニルエストラジオール、1日当り約0.1 mg〜約7 mgのドロスピレノン、1日当り約0.5 mg〜約100 mgのドキシサイクリン、またはこれらと均等な液体量のこれら3つの化合物。
【0020】
第3の実施形態において、薬剤は以下の成分を含む: 1日当り約0.02 mgのエチニルエストラジオール、1日当り約3 mgのドロスピレノン、1日当り約25 mgのドキシサイクリン、またはこれらと均等な液体量のこれら3つの化合物。
【0021】
上記3つの実施形態のいずれかにおいて、成分は、正確に記載された量で、すなわちおおよそでない量で存在してよい。例えば、第3の実施形態におけるエチニルエストラジオールの量は、0.02 mgであってよい。
【0022】
治療の経過全体を通して、薬剤中の3成分の量を1日ごとまたは週ごとに変化させ、使用者における成分の適正なバランスを達成してよい。例えば、薬剤の主要な目的が避妊である場合、抗生物質の量を減らしてもよい。ホルモン補充療法の場合、エストロゲンの量を増やしてよく、一方、抗生物質およびプロゲスターゲンの量は減らしてよい。例えば、約0.5 mgのドロスペリノンは、月経抑制において使用されるプロゲスチンの典型的な投与レベルであり得る。
【0023】
1つの実施形態において、薬剤は、21日間は1日1回投与され、その後の7日間はプラセボまたは糖丸剤を1日1回投与されてよい。この用法は、避妊手段に対してより適し得る。別の実施形態において、薬剤は、28日〜365日の延長された期間、1日1回投与されてよい。この実施形態は、月経抑制に対してより適し得る。
【0024】
避妊、月経抑制、およびホルモン補充療法のための本開示の薬剤の使用方法は、これらの剤形、量、および治療スケジュールの全てを包含し得る。
【0025】
5.付加的な成分
固体または液体形態の本開示の薬剤は、1つ以上のキャリア、賦形剤、アジュバント、フレーバー剤、着色剤、保存剤、酸化防止剤、またはこれらの組み合わせのような他の成分を含んでもよい。これらの成分の例には、以下のものが含まれる:
・デンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、α化デンプン、非イオン性界面活性剤、医薬品の上薬(glaze)であるポリエチレングリコール、カルナウバろう、水、コーン油、ごま油、および/またはピーナッツ油のようなキャリア;
・ラクトース、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キシリトール、ソルビトールおよび/またはマルチトール等の糖アルコールのような賦形剤;
・ポビドンのようなアジュバント;
・シリカまたはステアリン酸のような流動促進剤/滑沢剤;
・着色剤、色素(pigment)および食物グレードの色素(dye);
・二酸化チタンのような乳白剤;
・ショ糖、フルクトース、コーンシロップ、バニラ、ミント、チェリー、アニス、ピーチ、アプリコット、甘草、またはラズベリーのようなフレーバー剤;
・ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、レチニルパルミテート、および/またはセレンのような酸化防止剤;
・クエン酸、クエン酸ナトリウム、プロピルパラベンのような保存剤;
・リン酸二カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、およびクエン酸トリエチル;ならびに
・ステアリン酸マグネシウムのような抗付着剤。
【0026】
ある一定の実施形態に対する特定の参照と共に記載した本開示は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更および修飾がなされてよいことは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
月経抑制、避妊、および/またはホルモン補充療法のために使用される薬剤であって、
抗生物質と;
エストロゲンおよびプロゲスターゲンの少なくとも1つと
を含む薬剤。
【請求項2】
抗生物質と;
エストロゲンと;
プロゲスターゲンと
を含む薬剤。
【請求項3】
請求項2に記載の薬剤であって、前記抗生物質はテトラサイクリンである薬剤。
【請求項4】
請求項3に記載の薬剤であって、前記テトラサイクリンは、ドキシサイクリン、ドキシサイクリン塩酸塩、デメクロサイクリン、メクロサイクリンスルホサリチル酸塩、ミノサイクリン塩酸塩、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン塩酸塩、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される薬剤。
【請求項5】
請求項2に記載の薬剤であって、前記抗生物質は、ペニシリン、オキサシリン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、メチシリン、ナフシリン、クリンダマイシン、バンコマイシン、アンピシリン、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される薬剤。
【請求項6】
請求項2に記載の薬剤であって、前記エストロゲンは、エチニルエストラジオール、エストラジオール、エストロピペート、天然結合型ウマエストロゲン、結合型合成エストロゲン、エステル化エストロゲン、エストロゲンスルファメート、エストロン硫酸塩、ピペラジンエストロン硫酸塩、メストラノール、エストリオール、エストロン、エストラジオールバレレート、ジネストロール、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される薬剤。
【請求項7】
請求項2に記載の薬剤であって、前記プロゲスターゲンは天然プロゲスターゲンである薬剤。
【請求項8】
請求項7に記載の薬剤であって、前記天然プロゲスターゲンはプロゲステロンである薬剤。
【請求項9】
請求項2に記載の薬剤であって、前記プロゲスターゲンは合成プロゲスターゲンである薬剤。
【請求項10】
請求項9に記載の薬剤であって、前記合成プロゲスターゲンは、レボノルゲストレル、ノルエチステロン、ノルエチンドロン、ノルエチンドロンアセテート、ノルゲスチメート、ノルゲストレル、シプロテロン、デソゲストレル、ドロスピレノン、エチノドルアセテート、ゲストデン、シペロテロン、シプロトンアセテート、エチノジオールジアセテート、メドロキシプロゲステロン、およびノレルデストロミン、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される薬剤。
【請求項11】
請求項2に記載の薬剤であって、前記抗生物質が1mg〜1000mgの量で含まれる薬剤。
【請求項12】
請求項2に記載の薬剤であって、前記エストロゲンが0.005mg〜1mgの量で含まれる薬剤。
【請求項13】
請求項2に記載の薬剤であって、前記プロゲスターゲンが0.01mg〜7mgの量で含まれる薬剤。
【請求項14】
請求項2に記載の薬剤であって、前記薬剤は固体または液体の経口剤形である薬剤。
【請求項15】
請求項2に記載の薬剤であって、前記薬剤は膣内投与される薬剤。
【請求項16】
請求項1に記載の薬剤であって、
前記抗生物質は、ドキシサイクリン塩酸塩であり、0.5mg〜100mgの量で含まれ、
前記エストロゲンは、エチニルエストラジオールであり、0.005mg〜0.06mgの量で含まれ、
前記プロゲスターゲンは、ドロスピレノンであり、0.1mg〜7mgの量で含まれる
薬剤。
【請求項17】
請求項2に記載の薬剤の投与方法であって、前記方法は、
治療の過程において、少なくとも1日1回の頻度で前記薬剤を投与することを含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記治療の過程において前記頻度を変えることをさらに含む方法。
【請求項19】
請求項19に記載の方法であって、前記薬剤は、ある一定量の前記抗生物質、前記エストロゲン、および前記プロゲスターゲンをそれぞれ含み、前記方法は、
前記抗生物質、前記エストロゲン、および前記プロゲスターゲンの少なくとも1つの前記量を、治療の過程において調節すること
をさらに含む方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、前記薬剤が月経抑制のために投与される方法。

【公表番号】特表2012−502988(P2012−502988A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527814(P2011−527814)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/005163
【国際公開番号】WO2010/033188
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500365915)プレイテックス プロダクツ エルエルシー (56)
【Fターム(参考)】