説明

有価証券判別装置

【課題】 有価証券に印刷された発行所を示す記番号の一部をOCR装置で読み取り、この記番号が示す発行所毎に設定した判別レベルによって有価証券を判定する有価証券判別装置を提供する。
【解決手段】 有価証券の真偽検知では、有価証券を発行する発行所による微妙な色合いの相違が問題になる。そのため、OCR装置3によって読み取られた記番号Paの最初の英文字Pbによって真偽検知するための判別レベルを選択する。例えば記番号Paの最初の英文字Pbが「S」であるイタリア発行の有価証券では、破線で囲んだ判別テーブルTS10を用いる。例えば、搬送される有価証券の券種、及び搬送状態が10ユーロ・表・正の場合は判別テーブル6が選択される。同様に、10ユーロ・表・逆の場合は判別テーブル22が選択される。以下、同様に10ユーロ・裏・正の場合は判別テーブル38が選択され、10ユーロ・裏・逆の場合は判別テーブル54が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば同じ種類(以下、券種と称する。)でありながら異なる国又は地域で印刷される有価証券を判別する有価証券判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券の判別装置としては、被判別有価証券である紙幣をカラーカメラや磁気センサなどで検知した検知出力から特徴量を抽出して生成したデータと、当該紙幣の真券(本物の券)から同様に特徴量を抽出して生成した判別レベルデータとを比較することによって紙幣の判別を行っていた(例えば、特許文献1参照。)。この際の判別レベルデータには、紙幣の製造誤差、及び流通に伴う品質変化を考慮して、上限・下限からなる所定の範囲の閾値が設けられている。
【特許文献1】特開平5−78074号公報 (第1頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ヨーロッパでは、例えば、ユーロ統合前は各国毎の紙幣を自国で印刷管理していたが、ユーロ統合後は同一仕様の紙幣を各国の印刷所で製造するようになったため、同じ券種の紙幣でも全く同じ特徴を示さない場合がある。例えば、紙幣の微妙な色合いの相違や目視では確認できない真偽特徴などが、印刷所毎に異なる真券分布を有した状態で流通しているケースが発生する。このような流通環境下で紙幣を紙幣判別装置で判定する場合、同一判別レベルで判別するには、個々の印刷所毎に発生する真券分布より広い判別レベルを設定する必要がある。このようにして判別レベルを広げると、偽造券(以下、偽券と称す)を真券と判別してしまう可能性が増加する問題があった。さらに、正券(再流通可能な券)と損券(再流通不可能な券)を区分する正損判別性能が低下する問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、紙幣に印刷された発行所を特定する記号(以下、発行番号のことで記番号と称する。)の一部をOCR装置で読み取り、この読み取った記番号の示す発行所毎に設定した判別レベルを用いて、当該紙幣を判別することによって、判別性能のよい有価証券判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の有価証券判別装置は、有価証券の真偽判別を行うための真偽判別レベルを種類毎、搬送状態毎、及び発行所毎に予め記憶している真偽判別レベル記憶手段と、前記有価証券に印刷された発行所を示す記号を読み取るOCR手段と、前記有価証券の種類及び搬送状態を検知する種類検知手段と、前記有価証券の真偽判別を行うための真偽情報を取得する真偽情報取得手段と、前記OCR手段によって読み取った記号に対応する発行所、及び前記種類検知手段によって検知した種類及び搬送状態に基づいて前記真偽判別レベル記憶手段から真偽判別レベルを選択する選択手段と、前記真偽情報取得手段によって取得された真偽情報を前記選択手段によって選択された真偽判別レベルと比較することによって前記有価証券の真偽を判別する真偽判別手段と、を有することを特徴とする特徴とする。
【0006】
また、本発明の請求項3記載の有価証券判別装置は、有価証券の正損判別を行うための正損判別レベルを種類毎、搬送状態毎、及び発行所毎に予め記憶している正損判別レベル記憶手段と、前記有価証券に印刷された発行所を示す記号を読み取るOCR手段と、前記有価証券の種類及び搬送状態を検知する種類検知手段と、前記有価証券の正損判別を行うための正損情報を取得する正損情報取得手段と、前記OCR手段によって読み取った記号に対応する発行所、及び前記種類検知手段によって検知した種類及び搬送状態に基づいて前記正損判別レベル記憶手段から正損判別レベルを選択する選択手段と、前記正損情報取得手段によって取得された正損情報を前記選択手段によって選択された正損判別レベルと比較することによって前記有価証券の正損を判別する正損判別手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有価証券に印刷された発行所を示す記号の一部をOCR装置で読み取り、この読み取った記番号の示す発行所毎に設定した判別レベルを用いて、当該有価証券を判別することによって、判別性能のよい有価証券判別装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例1による有価証券判別装置の一例としての紙幣判別装置100の概略正面図である。図2は、紙幣判別装置100の構成を示すブロック図である。以下、図1及び図2を参照して紙幣判別装置100の構成を説明する。また、本実施例1では、ユーロ紙幣(以下、紙幣と称す)Pを紙幣判別装置100によって判別処理する場合について説明する。
【0010】
紙幣判別装置100には、紙幣Pを一括して供給する供給部2が設けられている。この供給部2に供給された紙幣Pは、取り出しローラ(図示しない)によって一定間隔で1枚ずつ取り出され、搬送路1に供給される。この搬送路1は、搬送ローラ(図示しない)と搬送ベルト(図示しない)で構成され、搬送方向上流から下流に向かって図示矢印Aで示す方向に紙幣Pを搬送する。この搬送路1に沿って供給部2から搬送方向下流に向かって複数の紙幣検知装置からなる紙幣検知部110が配置されている。また、この紙幣検知部110からの検知結果を総合的に検知して真券・偽券を判別する検知処理装置7が設けられている。さらに、この検知処理装置7の判別結果に基づいて、搬送される紙幣Pを区分して集積する区分集積装置(集積手段)8が設けられている。
【0011】
紙幣検知部110は、紙幣Pの物理的特性及び印刷特性などを検知するもので、タイミングセンサ10、OCR装置(OCR手段)3、形状検知装置(形状検知手段)4、券種検知装置(券種検知手段)5、及び真偽検知装置(真偽情報取得手段)6などから構成される。
【0012】
タイミングセンサ10は、投光器10a及び受光器10bを有する光学式センサで構成され、搬送される紙幣Pによって投光器10a及び受光器10b間の光軸が遮られたタイミングを検知する。この検知結果に基づいて上記各検知装置による紙幣Pの検知が開始される。
【0013】
OCR装置3は、搬送される紙幣Pの上面を照明し、その反射光をモノクロCCDセンサ(図示しない)で検知する上部モノクロ反射光学系3a、搬送される紙幣Pの下面を照明し、その反射光をモノクロCCDセンサで検知する下部モノクロ反射光学系3b、及び文字認識装置3cからなる。このOCR装置3は、モノクロ反射光学系3a又はモノクロ反射光学系3bによって、搬送される紙幣Pの表面又は裏面に印刷された記番号を読み取る装置である。この際、当該紙幣Pの種類(以下、券種と称する)によって設定された所定の記番号のエリア(以下、文字読取エリアと称す)内の反射光を読み取り、読み取った画像から文字を切り出して文字認識装置3cによって文字を認識する。
【0014】
形状検知装置4は、透過光学系4a及び形状検知処理部4bから構成され、搬送される紙幣Pの形状を検知する装置である。透過光学系4aは、搬送される紙幣Pの透過画像を検知し、その検知結果を形状検知処理部4bに出力する。形状検知処理部4bは、入力された透過画像から、搬送される紙幣Pの縦の長さ(縦サイズ)及び横の長さ(横サイズ)を計測し、この計測結果を検知処理装置7に送信する。
【0015】
券種検知装置5は、搬送される紙幣Pの上面を照明し、その反射光をCCDセンサで検知する上部反射光学系5a、搬送される紙幣Pの下面を照明し、その反射光をCCDセンサで検知する下部反射光学5b、及び券種検知処理部5cから構成される。上部反射光学系5a及び下部反射光学系5bは、紙幣Pの券種検知を行うために設定された券種検知エリア内の画像を読み取り、それぞれ券種検知処理部5cに出力する。この券種検知処理部5cは、これら上下の反射光学系5a、5bから出力された画像から生成したパターンを、真券から生成され、メモリ(図示しない)に記憶された券種毎の標準パターン(辞書)と比較判別する。この比較判別の結果、搬送される紙幣Pの券種、及び搬送状態(表/裏、正立/倒立)が検知される。この検知によって、表・正立(表正)、表・倒立(表逆)、裏・正立(裏正)、裏・倒立(裏逆)の4方向の搬送状態が検知される。
【0016】
なお、紙幣Pの券種を決めるためには、紙幣Pの形状と紙幣Pのパターンが真券に一致する必要がある。紙Pの形状は、上記形状検知装置4で検知される。紙幣Pのパターンは、紙幣Pの図柄のことで、この図柄を検知するのに紙幣Pの色合いを検知する必要はない。従って、紙幣Pを照明する照明光源(図示しない)は、検知対象とする紙幣Pの図柄を最もよく表すIR(赤外)又はR(赤)などの単色の光源が用いられる。
【0017】
真偽検知装置(真偽情報取得手段)6は、搬送される紙幣Pの上面を照明し、その反射光の中のIR(赤外)、R(赤)、G(緑)、B(青)成分をカラーセンサで検知する上部カラー反射光学系6a、搬送される紙幣Pの下面を照明し、その反射光の中のIR(赤外)、R(赤)、G(緑)、B(青)成分をカラーセンサで検知する下部カラー反射光学系6b、及び真偽検知処理部6cから構成される。上部カラー反射光学系6a及び下部カラー反射光学系6bは、紙幣Pの真偽検知を行うために設定された真偽検知エリア内の画像を読み取り、それぞれ真偽検知処理部6cに出力する。
【0018】
なお、この真偽検知エリアは、券種によって券サイズ(縦サイズ、横サイズ)が異なる場合があるため各券種毎に設定されるだけでなく、搬送状態毎に設定される。例えば、紙幣Pが表正で搬送された場合と裏正で搬送された場合では検知する反射光学系が逆になる。同様に紙幣Pが表正で搬送された場合と表逆で搬送された場合、又は裏正で搬送された場合と裏逆で搬送された場合には、検知エリアが搬送方向に対して対象に設定されていない場合、搬送方向先端からの検知位置が異なってくる。以上のことから、真偽検知エリアは券種毎および各券種の搬送方向毎に設定される。
【0019】
真偽検知処理部6cは、これら上部カラー反射光学系6a、下部カラー反射光学系6bから出力された反射画像の濃度値の合計を算出して特徴量を生成し、この特徴量を各券種毎及び搬送状態毎に記憶された特徴量と比較判別する。この比較判別の結果、搬送される紙幣Pの真偽が検知される。
【0020】
検知処理装置7は、例えば、組み込みのCPU(Central Processing Unit)7a、メモリ(RAM)7b、メモリ(ROM)7c、及び上記各検知装置とのインターフェース7dを備えており、紙幣判別装置100の全体的な制御や各種処理を行う。すなわち、メモリ(ROM)7cにあらかじめ格納された制御プログラムや処理プログラムが実行されることによって、上記タイミングセンサ10、OCR装置3、形状検知装置4、券種検知装置5、及び真偽検知装置6による検知結果に基づいて搬送される紙幣Pの真偽判定が行われる。この真偽判定の結果、真券と判定された紙幣Pは、区分集積装置8に設けられた複数の集積部8c〜8hに券種毎、又は券種及び搬送状態毎に集積される。また、偽券と判定された紙幣Pは区分集積装置8に設けられた排除券集積部8bに集積される。
【0021】
図3は、OCR装置3による紙幣Pの記番号Paの読み取りを説明する図である。紙幣Pの文字読取の範囲を指定する文字読取エリアEoは、券種によって券の形状が異なるため、その範囲は券種によらず、横(X)256画素・縦(Y)256画素に設定されている。このようにして設定された文字読取エリアEo内の画像が読み取られ、メモリ(図示しない)に記憶される。なお、この1画素当たりの分解能は、OCR装置の光学倍率によって文字認識に適した値に設定される。従って、このX、Yを用いて読取エリアEoの四隅の各アドレスは以下のようになる。
【0022】
左上のアドレスは:(0、0)
右上のアドレスは:(255、0)
左下のアドレスは:(0、255)
右下のアドレスは:(255、255)
また、記番号Paは、12桁の文字で構成され、この記番号Paの最初の英文字Pbは発行所を表している。
【0023】
このように構成された記番号Paは、文字認識装置3cによって文字の検出切り出しが行われる。この記番号Paの検出切り出しによって切り出された最初の英文字Pbは、文字認識装置3c内部のメモリに記憶されている辞書3dと比較されて認識される。図示した例では、最初の英文字Pbが「S」となっており、辞書3dに記憶されている文字「Z」、「Y」、「X」、「V」・・・・と順番に比較されて認識される。図示した例では、最初の英文字Pbが「S」となっており、イタリア発行の紙幣であることを示している。
【0024】
図4は、形状検知装置4によって紙幣Pの形状検知を説明する図である。紙幣Pの形状検知の範囲を指定する形状検知エリアEsは、横(X)256画素・縦(Y)256画素に設定されている。紙幣Pが図示矢印(図1参照)A方向に搬送されると、この設定された形状検知エリアEs内の透過画像が読み込まれる。この透過画像は遮光されない部分は明となり、遮光された部分は暗になる。この1画素当たりの分解能は、形状検知装置4の光学倍率によって形状検知に適した値に設定される。
【0025】
このようにして読み込まれた透過画像を用いて紙幣の長さを計測するために、紙幣Pの四隅に対応するエリアA、B、C、Dが設定されており、この各エリア毎に、図示矢印X方向Esx、及び図示矢印Y方向Esyから検索して、透過画像が初めて暗になる部分を検出する。図には、エリアAのアドレスA(X1、Y1)を検知する方法が示されている。このようにして、紙幣Pの四隅のアドレス(X、Y)が検出される。この四隅のアドレスA(X1、Y1)、B(X2、Y2)、C(X3、Y3)、D(X4、Y4)から幅及び長さが下式1及び下式2によって算出される。
幅:((Y1−Y3)+(Y2−Y4))/2・・・・・1
長さ:((X2−X1)+(X4−X3))/2・・・・2
このようにして算出された形状情報は、検知処理装置7に送信される。
【0026】
図5は、券種検知装置5による紙幣Pの券種検知を説明する図である。ここでは、10ユーロ紙幣P10の券種を検知する場合を例に説明する。紙幣Pの券種検知の範囲を指定する検知エリアEdは、横(X)256画素・縦(Y)256画素に設定されている。紙幣Pが図示矢印A方向(図1参照)に搬送されると、この設定された券種検知エリアEd内の反射画像が読み込まれる。この1画素当たりの分解能は、券種検知装置の光学倍率によって券種検知に適した値に設定される。なお、券種検知エリアEdが横1024画素、縦1024画素と他の検知エリアに比べて大きいのは、券種によって紙幣の券サイズが異なる場合、その最大券長の紙幣の券種検知を行う必要があるため、大きく設定されている。図示した10ユーロ紙幣P10では、紙幣の右側に上下反転したUの字及び額面が印刷されており、紙幣の左側は透かしになっている。
【0027】
券種検知処理部5Cには、各券種、表裏、正逆毎に真券を基に標準的な画像から生成した標準パターンが辞書として登録されている。券種検知処理部5Cは、この標準パターンと、被検知紙幣Pの表面反射画像及び裏面反射画像からそれぞれ生成されたパターンとの間でパターンマッチング法などによって比較判別を行う。この判別結果は、検知処理装置7に送信される。
【0028】
図6は、真偽検知装置6による紙幣Pの真偽検知を説明する図である。ここでは、10ユーロ紙幣(以下、紙幣P10と称する。)の真偽を検知する場合を例に説明する。紙幣P10の真偽検知の範囲を指定する真偽エリアEj1は、横(X)256画素・縦(Y)256画素に設定されており、紙幣P10の場合、この真偽エリアEj1の中に真偽検知エリアEj2(破線で囲まれたエリア)が設定されている。紙幣P10が図示矢印A方向(図1参照)に搬送されると、紙幣P10の表面の反射画像が真偽検知エリアEj2内のIR(赤外)、R(赤)、G(緑)、B(青)成分の反射光で生成された画像が読み取られる。なお、この1画素当たりの分解能は、真偽検知装置の光学倍率によって真偽検知に適した値に設定される。このようにして読み取られた各成分毎の画像の濃度値の合計値(積分値)Dが数式3によって算出され、各成分の特徴量DIR、DR、DG、DBが求められる。
【数3】

【0029】
この濃度値の合計値Dは、紙幣P10表面と同様に、紙幣P10裏面の反射画像についても算出されるが、紙幣P10表面と同様であるため、その説明を略す。このようにして算出された合計値Dは、検知処理装置7に送信される。
【0030】
図7は、本発明の紙幣判別装置100によって紙幣Pを判別するための判別レベルを、紙幣Pの発行所によって変えるための判別テーブルの一例である。図7(1)は、紙幣P10の場合の判別テーブルを示している。
【0031】
紙幣の真偽検知では、紙幣を発行する印刷所や発行所による微妙な色合いの相違が問題になる。そのため、真偽検知するための真偽判別レベルを券種毎、搬送状態毎、及び発行所毎に予め記憶しているメモリ(真偽判別レベル記憶手段)7bが設けられており、上述したOCR装置3によって読み取った記番号Paの最初の英文字Pbに対応する発行所、及び上記券種検知装置5で検知した券種及び搬送状態に基づいてメモリ(真偽判別レベル記憶手段)7bから真偽判別レベルが選択される。
【0032】
例えば記番号Paの最初の英文字Pbが「S」であるイタリア発行の紙幣の場合は、破線で囲んだ判別テーブルTS10が選択される。例えば、搬送される紙幣の券種、及び搬送状態が10ユーロ・表・正の場合は判別テーブル6が選択される。同様に、10ユーロ・表・逆の場合は判別テーブル22が選択される。以下、同様に10ユーロ・裏・正の場合は判別テーブル38が選択され、10ユーロ・裏・逆の場合は判別テーブル54が選択される。同様に記番号Paの最初の英文字Pbが「T」の場合は、破線で囲んだ判別テーブルTT10が選択される。他の場合も同様である。
【0033】
図7(2)は、判別テーブル6が選択されて設定された真偽判別レベルである。図には、最初の英文字Pbが「T」の場合の判定テーブル5が選択された場合についても示してある。このように、券種、搬送状態、記番号によって判別テーブルを選択することができ、この選択された判別テーブルに基づいて真偽判別レベルが設定される。なお、上記各成分の特徴量と判別レベルとの比較判別方法は後述する。
【0034】
また、図7(3)は、判別テーブル6が選択されて設定された形状検知の基準の券サイズである。券サイズは、印刷所や発行所によって異なる場合があるため、判別テーブルが選択できるように構成されているが、券サイズ判別レベルは、紙幣が搬送される搬送状態によって変わることがないため、判別テーブル6、22、38、54で共通な値になる。券サイズ判別レベルに関する詳細は後述する。
【0035】
図8は、紙幣判別装置100の紙幣判別処理を説明するフローチャートである。
紙幣供給部2から紙幣Pを取り出す(S1)。この取り出された紙幣Pが搬送され、タイミングセンサ10によって検知されると、この検知したタイミングをトリガーにして、各検知装置の検知エリアが設定される(S2)。
【0036】
次に、OCR検知装置3によって搬送される紙幣Pの記番号を読み取るOCR処理が行われる。このOCR処理による処理結果は、検知処理装置7に送信される。
【0037】
次に、形状検知装置4によって紙幣Pの形状が検知される(S4)。この形状検知装置4によって計測された紙幣Pの形状情報は検知処理装置7に送信される。
【0038】
次に、券種検知装置5によって紙幣Pの券種・搬送状態が検知される(S5)。この券種検知装置5によって検知された券種及び搬送状態は検知処理装置7に送信される。
【0039】
次に、真偽検知装置6によって紙幣Pの真偽特徴量が算出される。この真偽検知装置によって算出された真偽特徴量は検知処理装置7に送信される(S6)。
【0040】
次に、検知処理装置7によって、OCR処理結果、形状検知結果、券種検知結果、及び真偽検知結果を基に紙幣の検知判定処理が行われる(S7)。この検知判定処理によって紙幣の真偽が判別される。この判別結果は、区分集積装置8に送信される。
【0041】
次に、区分集積装置8は、検知処理装置7から受信した判別結果に基づいて搬送される紙幣Pを区分集積する(S8)。この際、真券と判定された紙幣Pは、区分集積装置8に設けられた複数の集積部8c〜8hに券種毎、又は券種及び搬送状態毎に集積される。また、偽券と判定された紙幣Pは区分集積装置8に設けられた排除券集積部8bに集積される。
【0042】
図9は、検知処理装置7によって行われる真偽判別処理を説明するフローチャートである。ここでは上記同様に紙幣P10を判別する場合について説明する。
【0043】
最初に、形状検知装置4で計測した紙幣Pの縦サイズ及び横サイズをデータが格納されているメモリ(RAM)7bから読み込む(S10)。
【0044】
読み込んだデータが計測範囲を超えて長すぎたり短すぎたりした場合は形状検知異常をセットし処理を終了する(S11のNO)。一方、読み込んだデータが正常であれば(S11のYES)、券種検知装置5で検知した券種データ及び搬送状態データをデータが格納されているメモリ(RAM)7bから読み込む(S12)。
【0045】
読み込んだデータに券種及び搬送状態が設定されていない場合は、券種検知異常であるため券種検知異常をセットし処理を終了する(S13のNO)。一方、読み込んだデータが正常であれば(S13のYES)、OCR装置3で読み取られた記番号データをデータが格納されているメモリ(RAM)7bから読み込む(S14)。
【0046】
読み込んだデータに記番号が設定されていない場合は、OCR異常であるためOCR異常をセットし処理を終了する(S15のNO)。一方、読み込んだデータが正常であれば(S15のYES)、検知された券種、搬送状態、記番号に基づいて判別テーブルが選択される。例えば、イタリア発行の10ユーロ・表・正の場合には、図7(1)、(2)の判別テーブルTS10が選択される。
【0047】
次に、真偽検知装置6で算出された各成分毎の特徴量DIR、DR、DG、DBが読み出され順番に図7(2)の真偽判別レベルと比較判別される。
すなわち、特徴量DIRが特徴量の下限値15と特徴量の上限値70との範囲に含まれるか比較判別される(S17)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S17のYES)は次の処理工程に移るが、範囲に含まれない場合(S17のNO)は偽券と判別される(S24)。
【0048】
次に、特徴量DRが特徴量の下限値20と特徴量の上限値80との範囲に含まれるか比較判別される(S18)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S18のYES)は次の処理工程に移るが、範囲に含まれない場合(S18のNO)は偽券と判別される(S24)。
【0049】
次に、特徴量DGが特徴量の下限値20と特徴量の上限値80との範囲に含まれるか比較判別される(S19)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S19のYES)は次の処理工程に移るが、範囲に含まれない場合(S19のNO)は偽券と判別される(S24)。
【0050】
次に、特徴量DBが特徴量の下限値20と特徴量の上限値80との範囲に含まれるか比較判別される(S20)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S20のYES)は次の処理工程に移るが、範囲に含まれない場合(S20のNO)は偽券と判別される(S24)。
【0051】
次に、形状検知装置4で計測された紙幣P10の縦サイズ及び横サイズが図7(3)の基準の券サイズを基に±2に設定した券サイズ判別レベルと比較判別される。
縦の長さ(縦サイズ)が縦長さ下限値65と縦長さ上限値69との範囲に含まれるか比較判別される(S21)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S21のYES)は次の処理工程に移るが、範囲に含まれない場合(S21のNO)は偽券と判別される(S24)。
【0052】
次に、横の長さ(横サイズ)が横の長さ下限値125と横の長さ上限値129との範囲に含まれるか比較判別される(S22)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S22のYES)は真偽判別結果が真券と判別され(S23)、この真偽判定処理を終了するが、範囲に含まれない場合(S22のNO)は偽券と判別される(S24)。
【0053】
以上説明したように、本実施例によれば、発行国(発行所)を特定する記番号毎に真偽判別レベルを設定することができるため、発行所によって異なる真券分布を有する紙幣であっても、性能低下をきたさない真偽検知装置を備えた紙幣判別装置を提供できる。
【実施例2】
【0054】
図10は、本発明の実施例2による紙幣判別装置100の概略正面断面図である。図11は、実施例2の紙幣判別装置100の構成を示すブロック図である。以下、この図10及び図11を参照して紙幣判別装置100の構成を説明する。なお、この実施例2は、図1及び図2に示す実施例1による紙幣判別装置100の真偽検知装置6が正損検知装置(正損検知手段)9に変わっているが、その他の部分は、図1と同様であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を略し、変わった部分のみ説明する。
【0055】
正損検知装置9は、搬送される紙幣Pの上面を照明し、その反射光をCCDセンサで検知する上部反射光学系9a、搬送される紙幣Pの下面を照明し、その反射光をセンサで検知する下部反射光学系9b、及び正損検知処理部9cから構成される。上部反射光学系9a及び下部反射光学系9bは、紙幣Pの正損検知を行うために設定された所定の正損検知エリア(詳細は、後述する)内の画像を読み取り、それぞれ正損検知処理部9cに出力する。なお、この正損検知エリアは、上記実施例1の真偽検知エリアの設定で説明したように券種によって券サイズ(縦サイズ、横サイズ)が異なる場合があるため各券種毎に設定されるだけでなく、搬送状態毎に設定される。
【0056】
図12は、正損検知装置9によって紙幣Pの正損検知を説明する図である。ここでは、10ユーロ紙幣P10の正損を検知する場合を例に説明する。紙幣P10が図示矢印A方向(図10参照)に搬送されると、横(X)256画素・縦(Y)256画素の検知エリアEu1の中の正損検知エリアEu2(破線で囲まれたエリア)内の画像が読み取られる。この読み取られた画像は、それぞれ正損検知処理部9cに出力される。
【0057】
なお、読み取られた画像の1画素当たりの分解能は、正損検知装置の光学倍率によって正損検知に適した値に設定される。また、検知エリア内はアドレス(X、Y)を用いて任意の画素の値を参照することができる。
【0058】
この正損検知処理部9cは、上部反射光学系9a及び下部反射光学系9bから出力された画像に基づいて紙幣Pの正損特徴量Mを数式4により算出する。ここで算出した正損特徴量Mは、正損検知エリアEu2内の横方向(X方向)に隣り合う画素間の差を2乗して正損エリアEu2内の領域を全て加算した値である。なお、ここでは、正損検知エリアEu2の任意の画素のアドレスを(X、Y)と表記し、X方向、Y方向にそれぞれn個の画素が含まれていると想定している。
【数4】

【0059】
図13は、実施例2の紙幣判別装置100の紙幣判別処理を説明するフローチャートである。このフローチャートは、図8に示す実施例1による紙幣判別装置100の紙幣判別処理を説明するフローチャートの真偽検知(ステップS6)が正損検知(ステップS35)に変わっているが、その他の部分は、図8と同様であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を略し、変わった部分のみ説明する。
【0060】
正損検知装置9によって読み取られた紙幣Pの正損検知エリアEu2内の画像から正損特徴量Mが算出される(S35)。この算出された正損特徴量Mは、検知処理装置7に送信される。
【0061】
次に、検知処理装置7によって、OCR処理結果、形状検知結果、券種検知結果、及び正損検知結果を基に検知判定処理が行われる(S36)。この検知判定処理によって紙幣の正損が判別される。この判別結果は、区分集積装置8に送信される。
【0062】
次に、区分集積装置8は、検知処理装置7から受信した判別結果に基づいて搬送される紙幣Pを区分集積する(S37)。この際、正券と判定された紙幣Pは、区分集積装置8の複数の集積部8c〜8hの何れかに設定した集積部に集積し、損券と判定された紙幣Pは同様に区分集積装置8b〜8gの何れかに設定した集積部に集積される。に設けられた複数の集積部8c〜8hの何れか排除券集積部8bに集積される。また、偽券と判定された紙幣Pは区分集積装置8に設けられた排除券集積部8bに集積される。
【0063】
図14は、検知処理装置7によって行われる正損判別処理を説明するフローチャートである。ここでは、上記同様に紙幣P10を判別する場合について説明する。ここで、ステップS40〜ステップS46までの処理は、図9に示す実施例1の真偽判別処理のステップS10〜S16と同様であり、この処理の結果、券種、搬送状態、及び記番号が検知される。この検知結果に基づいて、正損判別レベルを券種毎、搬送状態毎、及び発行所毎に予め記憶しているメモリ(正損判別レベル記憶手段)7bから選択して正損特徴量Mの上限値が設定される。
【0064】
例えば記番号Paの最初の英文字Pbが「S」であるイタリア発行の紙幣の場合は、図7(1)の破線で囲んだ判別テーブルTS10が選択される。例えば、搬送される紙幣の券種、及び搬送状態が10ユーロ・表・正の場合は判別テーブル6が選択される。この判別テーブル6が選択されることによって図示しない正損特徴量Mの上限値が設定される。
【0065】
次に、正損検知装置9で算出された正損特徴量Mが読み出される。読み出された正損特徴量Mが正損特徴量M上限値30未満であるか比較判別される。この比較判別の結果、上限値未満の場合(S47のYES)は次の処理工程に移るが、上限値以上の場合(S47のNO)は損券と判別される。
【0066】
次に、形状検知装置4で計測された紙幣P10の縦サイズ及び横サイズが比較判別される。
縦の長さ(縦サイズ)が縦の長さ下限値65と縦の長さ上限値69の範囲に含まれるか比較判別される(S48)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S48のYES)は次の処理工程に移るが、範囲に含まれない場合(S48のNO)は損券と判別される(S51)。
【0067】
次に、横の長さが横の長さ下限値125と横の長さ上限値129との範囲に含まれるか比較判別される(S49)。この比較判別の結果、範囲に含まれる場合(S49のYES)は正損判別結果が正券と判別され(S50)、この正損判定処理を終了するが、範囲に含まれない場合(S50のNO)は損券と判別される(S51)。
【0068】
以上説明したように、本実施例によれば、発行国(発行所)を特定する記番号毎に正損判別レベルを設定することができるため、発行所によって異なる真券分布を有する紙幣であっても、性能低下をきたさない正損検知装置を備えた紙幣判別装置を提供できる。
【0069】
なお、上記実施例では、紙幣を判別する場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、小切手や、商品券などの有価証券の場合も同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1による紙幣判別装置の概略正面図。
【図2】実施例1の紙幣判別装置の構成を示すブロック図。
【図3】OCR装置による紙幣の記番号の読み取りを説明する図。
【図4】形状検知装置による紙幣の形状検知を説明する図。
【図5】券種検知装置による紙幣の券種検知を説明する図。
【図6】真偽検知装置による紙幣の真偽検知を説明する図。
【図7】紙幣判別装置によって紙幣を判別するための判別テーブルの一例。
【図8】実施例1による紙幣判別装置の紙幣判別処理フローチャート。
【図9】実施例1による検知処理装置の真偽判別処理フローチャート。
【図10】本発明の実施例2による紙幣判別装置の概略正面図。
【図11】実施例2による紙幣判別装置の構成を示すブロック図。
【図12】実施例2による紙幣の正損検知を説明する図。
【図13】実施例2による紙幣判別装置の紙幣判別処理フローチャート。
【図14】実施例2による検知処理装置の正損判別処理フローチャート。
【符号の説明】
【0071】
1 搬送路
2 供給部
3 OCR装置
4 形状検知装置
5 券種検知装置
6 真偽検知装置
7 検知処理装置
8 区分集積装置
9 正損検知装置
10 タイミング検知装置
P 紙幣
Pa 記番号
Pb 記番号の最初の英文字
Eo 文字読取エリア
Ed 券種検知エリア
Ej2 真偽検知エリア
Eu2 正損検知エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価証券の真偽判別を行うための真偽判別レベルを種類毎、搬送状態毎、及び発行所毎に予め記憶している真偽判別レベル記憶手段と、
前記有価証券に印刷された発行所を示す記号を読み取るOCR手段と、
前記有価証券の種類及び搬送状態を検知する種類検知手段と、
前記有価証券の真偽判別を行うための真偽情報を取得する真偽情報取得手段と、
前記OCR手段によって読み取った記号に対応する発行所、及び前記種類検知手段によって検知した種類及び搬送状態に基づいて前記真偽判別レベル記憶手段から真偽判別レベルを選択する選択手段と、
前記真偽情報取得手段によって取得された真偽情報を前記選択手段によって選択された真偽判別レベルと比較することによって前記有価証券の真偽を判別する真偽判別手段と、
を有することを特徴とする有価証券判別装置。
【請求項2】
前記真偽情報取得手段は、
前記種類検知手段により検知された前記有価証券の種類及び搬送状態に基づいて真偽検知エリアを設定し、この設定された真偽検知エリア内の、前記有価証券の反射画像の濃度値の合計値を算出する濃度値算出手段を備え、
前記真偽判別手段は、
前記濃度値算出手段により算出された濃度値の合計値を前記真偽判別レベルと比較判別し、前記有価証券を真券又は偽券に判定することを特徴とする請求項1記載の有価証券判別装置。
【請求項3】
有価証券の正損判別を行うための正損判別レベルを種類毎、搬送状態毎、及び発行所毎に予め記憶している正損判別レベル記憶手段と、
前記有価証券に印刷された発行所を示す記号を読み取るOCR手段と、
前記有価証券の種類及び搬送状態を検知する種類検知手段と、
前記有価証券の正損判別を行うための正損情報を取得する正損情報取得手段と、
前記OCR手段によって読み取った記号に対応する発行所、及び前記種類検知手段によって検知した種類及び搬送状態に基づいて前記正損判別レベル記憶手段から正損判別レベルを選択する選択手段と、
前記正損情報取得手段によって取得された正損情報を前記選択手段によって選択された正損判別レベルと比較することによって前記有価証券の正損を判別する正損判別手段と、
を有することを特徴とする有価証券判別装置。
【請求項4】
前記正損情報取得手段は、
前記種類検知手段により検知された前記有価証券の種類及び搬送状態に基づいて正損検知エリアを設定し、この設定された正損検知エリア内の、前記有価証券の反射画像の隣り合う画素間の差を加算して正損特徴量を算出する正損特徴量算出手段を備え、
前記正損判別手段は、
前記正損特徴量算出手段により算出された正損特徴量を前記正損判別レベルと比較判別し、前記有価証券を正券又は損券に判別することを特徴とする請求項3記載の有価証券判別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−293464(P2006−293464A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109680(P2005−109680)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】