説明

有効量の少なくとも1つの、式、R1−S−R2(式中、R1及びR2は特定の原子又は基を表わす)の化合物を組み込むことによる食品の風味付け

【課題】特定の良く定義された構造を有する少なくとも1つの硫黄化合物を食品に組み込むことにより食品を風味付けする方法の提供。
【解決手段】有効量の少なくとも1つの化合物、(E)-2-メチル-1-(メチルチオ)-2-ブテン、S-エチルチオホルメート、S-エチル-2-(アセチルアミノ)チオアセテート、N-(2-メチルチオエチル)アセトアミド、メチル-2-メルカプト-プロピオネート、プロピル−2−メルカプトプロピオネート、2-(イソプロピルチオ)ペンタン、2-プロペニルチオール、4-メチル-2-3H-チアゾロン又は互変異性体及び2,3-ジメチル-4-ホルミルチオフェンのような特定の構造を有する少なくとも1つの化合物、R1−S−R2を食品に組み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味付けされた食品及び風味付け組成物に関する。さらに、特定すると、本発明は、良い風味を有する食品、及びそのような風味を付与又は強化するのに適する風味付けする組成物に関する。本明細書において、良い風味とは、肉、ソーセージ、家禽、チーズ、マッシュルーム等に関連する風味であると理解すべきである。しかし、本発明は、果物様の又は甘い酪農品風味を有する食品並びにそのような風味を付与、強化又は改質するのに適する風味付け組成物にも関する。本明細書において用いられる用語、食品には、栄養的価値を有する又は有しない固体及び液体の摂取可能な物質が含まれる。
【0002】
良い又は果物様の風味、又は食品に良い又は果物様の風味を付与する及び/又は増大するための果物様の風味付け組成物を有する風味付けされた食品は、長い期間、知られているが、現在まで、これらの組成物は、完全に満足のゆくものではない。従って、本発明は、そのような製品の官能的性質を改良することを目的とする。
【背景技術】
【0003】
食品に風味を付与するために、特に、良い風味を付与する又は強化するために多くの化合物が用いられており、従って、風味を付与するために用いられる組成物のほとんどは、多数の化合物を含有する。良い風味のために特に有用な化合物の1つの群は、例えば、チオアセテート類のような、チオール類、硫化物及びそれらの誘導体のような特定の有機硫黄化合物であり、例えば、英国特許公開第1,238,912号(Unilever)に開示され及び/又は特許請求されている。英国特許公開第1,256,462号(International Flavours and Fragrances)にも、2-メチルフラン-3-チオールのような特定のフランチオール類並びにそのジスルフィド及び他のスルフィド類のようなその誘導体が肉の風味剤として開示されている。より多くの有機硫黄化合物が、例えば、H. Maarse(ED)による“Volatile compounds in Foods en beverages”[マルセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク(1991年)]、米国特許第1,256,462号(International Flavours and Fragrances)及び米国特許公開第1,256,462号(International Flavours and Fragrances)及び米国特許第3,970,689号(International Flavours and Fragrances)に開示されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、食品の風味を改良すること、及び本明細書中に定義されている1つ以上の付加的な有機硫黄化合物をそのような製品に組み入れることにより風味濃縮体の官能的性質を改良することを目的とする。組み込むという用語は、実際の望ましい化合物を添加すること、及び、加工中に望ましい化合物に変換する前駆体の添加を含む。
【0005】
本発明は、スープ、ソーセージ、ペストリー等に特に必要である、ビーフの煮出し汁及び煮込んだビーフを思い起こす、より完全にマイルドなビーフ味を得るという問題を解決する。同じことが果物様の風味にも適用され、それにより、今や、より完全に又はより完成され得る。又、主成分の相対量を変えることにより、本発明は、フレーバリストが、マイルドなローストビーフ風味からマイルドなビーフ煮汁風味に変える風味付け組成物を調製することを可能にする。本発明により提供される他の可能性は、適切な量で特定の化合物を組み込むことにより、特定の風味特徴を付与する又は強化することである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の第一の態様において、有効量の少なくとも1つの、式、R1−S−R2(式中、R1及びR2は下記の組み合わせの原子又は基:
A.メチル基及び2メチル-2-ブテン-1-イル基[(E)-2-メチル-1-(メチルチオ)-2-ブテン]、
B.エチル基及びホルミル基(S-エチルチオホルメート)、
C.エチル基及び1-(3-アザ-1,4-ジオキソペンチル)基[S-エチル-2-(アセチルアミノ)チオアセテート]、
D.メチル基及び1-(3-アザ-4-オキソペンチル)基[N-(2-メチルチオエチル)アセトアミド]、
E.水素原子及び1-(1-メトキシカルボニル)エチル基(メチル-2-メルカプト-プロピオネート)、
F.水素原子及び1-(1-プロピルオキシカルボニル)エチル基(プロピル-2-メルカプトプロピオネート)、
G.イソプロピル基及び2-ペンチル基[2-(イソプロピルチオ)ペンタン]、
H.水素原子及び2-イソプロペニル基(2-プロペニルチオール)、
I.R1及びR2が一緒に1-オキソ-3-メチル-2-アザブタ-3-エン-1,4-ジイル基(4-メチル-2(3H)-チアゾロン)又はその互変異性体構造、
J.R1及びR2が一緒に1,2−ジメチル-3-ホルミル-1,3-ブタジエン-1,4-ジイル基(2,3-ジメチル-4-ホルミルチオフェン)を表わす)の化合物を食品に組み込むことを含む、食品の風味付けをする方法を提供する。
【0007】
本発明は、貯蔵、加工等の間に、食品中又はその成分中で、先に記載した化合物A乃至Jに変換される化合物(いわゆる前駆体)の食品中への組み込みも包含する。そのような化合物の例は、例えば、先に示された化合物又はそれらの互変異性体の、カルボキシル、ヒドロキシ、もしくはスルフヒドリル基とのエステル又はそれらのスルフィドもしくはジスルフィドである。
【0008】
先に示した化合物が組み込まれる量は、その化合物の性質、食品の性質により、そして前駆体の場合は、実際の風味付け化合物への変換の程度によるが、一般的に、食品1重量部に対して1ppb乃至500ppm(重量による)、好ましくは5乃至500ppbの範囲である。1ppb(10億当り1部)は、本明細書では食品1,000,000,000(10)重量部当り1重量部の風味化合物と定義され、1ppm(100万当り1部)は、本明細書では食品1,000,000重量部当り1重量部の風味化合物と定義されることを注意。風味組成物又は風味濃縮体の場合は、濃度は、かなり高くなる(1000乃至100,000倍まで)。実際に組み込まれる風味付けする量は、個々の味覚及び食料品の性質による。存在する弱い風味を増大する又は強化するために、例えば、食品を加工することにより失われた風味特徴の埋め合わせをするために、風味付け組成物が用いられ得るが、それらは風味のない又は味がない食品に風味付けするために同様に用いられ得る。さらに、食品の風味特徴を完全に変えることも可能である。風味付け組成物は、懸濁液中もしくは溶液中の活性物質の形態で又は官能的に不活性の物質においてしばしば利用できる。
【0009】
本発明の態様において、R1及びR2が下記の組み合わせの原子又は基:
A.メチル基及び2メチル-2-ブテン-1-イル基[(E)-2-メチル-1-(メチルチオ)-2-ブテン]、
B.エチル基及びホルミル基(S-エチルチオホルメート)、
C.エチル基及び1-(3-アザ-1,4-ジオキソペンチル)基[S-エチル-2-(アセチルアミノ)チオアセテート]、
D.メチル基及び(1-3-アザ-4-オキソペンチル)基[N-(2-メチルチオエチル)アセトアミド]、
E.水素原子及び1-(1-メトキシカルボニル)エチル基(メチル-2-メルカプト-プロピオネート)、
F.水素原子及び1-(1-プロピルオキシカルボニル)エチル基(プロピル−2−メルカプトプロピオネート)、
G.イソプロピル基及び2-ペンチル基[2-(イソプロピルチオ)ペンタン]、
H.水素原子及び2-イソプロペニル基(2-プロペニルチオール)を表わす、少なくとも1つの化合物が組み込まれる方法を提供する。
【0010】
他の好ましい態様において、本発明は、R1及びR2がメチル基及び1-3-アザ-4-オキソペンチル基の組み合わせを表わす、少なくとも化合物[N-(2-メチルチオエチル)アセトアミド]が組み込まれる方法を提供する。
【0011】
他の好ましい態様において、本発明は、R1及びR2が水素原子及びメチル-2-プロピオネート基の組み合わせを表わす、少なくとも化合物(メチル-2-メルカプト-プロピオネート)が組み込まれる方法を提供する。
【0012】
他の好ましい態様において、本発明は、R1及びR2が水素原子及び2-プロピレンプロピオネート基の組み合わせを表わす、少なくとも化合物(プロピル−2−メルカプトプロピオネート)が組み込まれる方法を提供する。
【0013】
他の好ましい態様において、本発明は、R1及びR2がメチル基及び1-(3-アザ-4-オキソペンチル)基の組み合わせを表わす化合物[N-(2-メチルチオエチル)アセトアミド]が2-メチル-フラン-3-チオール又はその誘導体もしくは前駆体と組み合わされる方法を提供する。
【0014】
2-メチル-フラン-3-チオールの誘導体又は前駆体は、本明細書では、2-メチル-4,5-ジヒドロフラン-3-チオール、cis/trans2-メチルテトラ-ヒドロフラン-3-チオール、2-メチル-3-チオメトキシフラン、メチル-2-メチル-3-フリルジスルフィド、2-メチルフラン-3-チオアセテート、2-メチルフラン-3-チオプロピオネート、及び2-メチルフラン-3-チオールのジスルフィドであると理解されるべきである。非水素化フラン誘導体の使用が好ましい。これらの化合物のいくつかは、Oxford Chemicals(英国、ハートリプール)から入手可能である。多くの他のチオールのような2-メチルフラン-3-チオールは、雰囲気中の酸素の影響下でそのジスルフィドに部分的に酸化されやすく、従って、市販の2-メチルフラン-3-チオール調製物は、非常にしばしばある量のそのジスルフィドを含有する。2-メチル-3-フラン-3-チオアセテート及び例えば2-メチル-3-フラン-3-チオプロピオネートのようなチオエーテル類は、特定の食品加工条件下で部分的に加水分解されて2-メチル-フラン-3-チオールを生成する。このことは、例えば缶詰製造の後の従来の滅菌条件下に適用し得る。
【0015】
2-メチル-3-フランチオール及び先に記載したその誘導体はそれ自体得られるか又は合成されるが、例えば、それらの化合物の少なくとも1つを適する量で含有する、1つ以上のそれらの化合物を含有する肉/ビーフ風味組成物(反応風味組成物)を製造し、そのような組成物に、先に定義した構造、R1−S−R2を有する化合物の適量を組み込むのも便利である。適する反応風味組成物は、ヘキソース又はペントースを、溶媒としての水中のシステインのような硫化水素源と反応させることにより製造され得る。ヘキソース又はペントースの代わりに、例えば4-ヒドロキシ-5-メチル-2,3-ヒドロフラン-3-オンのような砂糖の適する分解生成物が用いられ得て、アスコルビン酸も用いられ得る。チアミンの熱分解により2-メチル-3-フランチオールを含有する適する反応風味剤を製造することも全く可能である。
【0016】
反応風味剤のいくつかの可能性及び反応機構が、Hoffmann及びSchieberleによるJ.Agric. Food Chemistry、46巻、235−241頁(1998年)に記載されており、その記載を引用により本明細書に組み込む。
【0017】
他の好ましい態様において、本発明は、少なくとも1つの、先に定義された化合物、R1−S−R2をメタンジチオール又はその誘導体又は前駆体と組み合わせる方法を提供する。適する誘導体及び前駆体は、例えば、メタンジチオールジアセテート、メチルチオメタノール、メチルチオメタンチオール、メチルチオメタンチオールアセテート、メチルチオメタンチオールプロピオネート、メチルチオメタンチオール-2-メチルプロピオネート、メチルチオメタンチオール-2-メチルブタノエート、3-メチルチオメタンチオールペンタノエート、メチルチオメタンチオール-4-メチルペンタノエート及びメチルチオメタンチオールヘキサノエートである。これらの化合物のいくつかは、相当する遊離チオールの前駆体と考えられ、その他の化合物は、メタンジチオール又はメチルチオメタノール等とわずかに異なる風味特徴を有する似た官能特性を有する。遊離のチオールは、酸化条件下で部分的に相当するジスルフィドに変換され、又、チオエステルは特定の食品加工条件下で加水分解されて遊離のチオールを生成する。
【0018】
一般的に、先に定義された化合物、R1−S−R2の重量による量対2-メチル-フラン-3-チオールまたはその誘導体又は前駆体の重量による量及び/又は代わりとしてメタンジチオール又はその誘導体又は前駆体の重量による量の比は、1:100乃至100:1の範囲である。
【0019】
本発明の他の好ましい態様では、R1及びR2が一緒に下記の基:
A.1-オキソ-3-メチル-2-アザ-3-ブテン-1,4-ジイル基(4-メチル-2(3H)-チアゾロン)又は後者の互変異性体構造、又は
B.1,2−ジメチル-3-ホルミル-1,3-ブタジエン-1,4-ジイル基(2,3-ジメチル-4-ホルミルチオフェン)の1つを表わす少なくとも1つの化合物が組み込まれる方法が提供される。
【0020】
他の好ましい態様において、本発明は、任意にメタンジチオール及び/又は2-メチル-フラン-3-チオール又はそれらの化合物の誘導体又は前駆体と組み合わされて、上記A.乃至J.で定義された少なくとも1つの化合物、R1−S−R2を含有する風味濃縮体を提供する。
【0021】
食品用風味濃縮体は、溶液、エマルジョン又はペーストのような液体又は半液体形態又は粉末のような乾燥形態であり得る。乾燥は、例えば、任意にマルトデキストリンのような担体上での、噴霧乾燥又は凍結乾燥により行われ得る。風味生成において通常であるように、特定の風味に寄与することが知られている他の化合物も同様に組み込まれ得る。味の良い風味剤の場合は、公知の風味付け化合物は、例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、グルタミン酸一ナトリウム、低級アルコール類、低級カルボン酸類、カルボン酸ピロリドン、低級ペプチド、甘味剤、ラクトン類、低級ジスルフィド類、低級チオール類、グアニジン類等、NaClのような塩、アミン類、低級アルデヒド、低級ケトン類、トリコロミン酸(tricholomic acid)、バイオテン酸(biotenic acid)、芳香族化合物及び/又はアセチルチアゾール、2-ヒドロキシエチル-4-メチルチアゾール、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-2,3-ヒドロフラン-3-オンのような複素環式化合物、着色物質、増粘剤である。これらの任意に添加される用いられる物質の割合は、望ましい風味剤の種類、及び組み込まれる食品の性質、及び添加されるハーブ又はスパイスにも依存する。
【0022】
好ましい態様において、任意にメタンジチオール及び/又は2-メチル-フラン-3-チオール又はそれらの誘導体又は前駆体と組み合わされて、上記A.乃至J.で定義された少なくとも1つの化合物、R1−S−R2を含有する、風味付けされた食品を提供する。
【実施例】
【0023】
下記の実施例により本発明をさらに示す。本明細書において、すべての部及び%は、他に示されていなければ、重量基準で扱われる。
実施例1
2-メチル-1-メチルチオ-2-ブテンの合成
200mlのテトラフラン中の37g(0.1モル)のエチルフェニルホスホニウムブロマイドの混合物にヘキサン中62ml(0.1モル)のブチルリチウム−1.6モルを10℃において、15分間添加した。この混合物を10℃で15分間、攪拌した。次に、10g(0.1モル)メチルチオアセトンをこの温度で15分間、添加した。その混合物を15分間、外部冷却することなく攪拌した。反応混合物を水中に注ぎ、ヘキサンで抽出した。ヘキサン抽出物を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。4kPa(40ミリバール)において40℃の底部温度に到達するまで溶媒を蒸発させた。得られた沈殿物(トリフェニルホスフィン)をろ過により除去した。
【0024】
5cmのビグロ(Vigreux)カラムを用いて濾液を蒸留した。4.2kPa(42ミリバール)において沸点55℃乃至60℃の蒸留物4gを得た。蒸留物2gをカラムクロマトグラフィーにより、さらに精製した(溶離剤:ペンタン:エーテル=95:5v/v)。Z及びE2-メチル-1-メチルチオ-2-ブテンの1:1.5の混合物を得た。
評価:ビーフ肉汁100ppb:肉の、クリーム状の、硫黄様、濃い、どろどろしたスルフロール(sulphurol)
【0025】
実施例2
S-エチルチオホルメートの合成
室温において蟻酸(18.8g、0.41モル)を酢酸(24.6g、0.41モル)に添加した。その混合物を45℃に温め、45℃において2.5時間保った。その混合物を18℃に冷却し、ピリジン(0.32g、0.0040モル)を添加した。10乃至15℃において、エチルメルカプタン(12.4g、0.2モル)を30分間添加し、その混合物を室温において1時間攪拌し、その後、その温度で2日保った。次にその混合物を水酸化バリウム溶液(飽和された、200ml)に注ぎ、MCT油で抽出した。有機層を炭酸カリウム上で乾燥し、次に蒸留した。表題化合物を87−92℃で蒸留した。
評価:
水(50ppb):マッシュルーム、金属様、硫黄様
水(100ppb):マッシュルーム、金属様、硫黄様
ビーフ肉汁(1ppm)生ハム特徴
【0026】
実施例3
S-エチル-2-アセチルアミノ-エタンチオアセテートの合成
表題化合物を、D.W.Ingles及びJ.R.KnowlesによるBiochemical Journal、1965年、99巻、275頁に開示されているように合成した。
【0027】
実施例4
N-(2-メチルチオエチル)アセトアミドの合成
メタノール(50g)中、2-アミノエタンチオール(0.2g、0.2ミリモル)の溶液に、メタノール(0.44モル)中ナトリウムメトキシド30%を添加し、続いて、ヨウ化メチル(0.2モル)を添加した。その混合物を室温において2時間攪拌した。混合した後に、3.3kPa(33ミリバール)において沸点60乃至65℃の蒸留物を9g得た。その蒸留物に無水酢酸(0.1モル)を少しずつ添加(発熱性)し、得られた溶液を室温において15分間攪拌した。混合した後、0.1kPa(1ミリバール)において沸点115℃の蒸留物を9g得た。
評価:ビーフ肉汁100ppb:脂肪様、焼いた鶏肉、甘い、ビーフ様、濃い、口当たりを強める
【0028】
実施例5
メチル-2-メルカプトチオプロピオネートの合成
50mlのメタノール/0.5g硫酸中、2-メルカプトプロピオン酸(5g、0.05モル)の溶液を20mlモル篩3Aの存在下で24時間攪拌した。蒸留の後に、4.8kPa(48ミリバール)において2.4gのメチル-2-メルカプトプロピオネート、沸点64℃を得た。
評価:0.1ppmの水:硫黄様、果物の風味、過熟の、キャティー(catty)、トロピカルの
【0029】
実施例6
プロピル-2-メルカプトチオプロピオネートの合成
20gの2-プロピルアルコール/0.5g硫酸中、2-メルカプトプロピオン酸5gの溶液を20mlモル篩3Aの存在下で24時間攪拌した。蒸留の後に、3.5kPa(35ミリバール)において3.5gのプロピル-2-メルカプトプロピオネート、沸点80℃を得た。収率、理論値の47%。
評価:0.1ppmの水:果物の風味、トロピカルの、過熟の苺
【0030】
実施例7
2-イソプロピルチオペンタンの合成
工程1:イソプロピル-2-チオペンタンの製造
メタノール(30%w.w.)中ナトリウムメトキシド(26.12g、0.16モル)の溶液に、20mlの追加メタノールを添加した。攪拌中に、メタノール(30ml)中、2-プロパンチオール(11.52g、0.15モル)の溶液を室温において窒素雰囲気下で滴下して添加した。添加後、その反応混合物を20分間攪拌した。
工程2:イソプロピル-2-チオペンタンの製造
上記工程1の粗混合物に2-ブロモペンタンを室温で滴下して添加した。添加後、その混合物を油浴において57℃まで加熱した。その反応の間に、白色の塩が沈殿した(NaBr)。反応の30分後に、その混合物を冷却し、20℃において窒素下で一晩保った。
【0031】
ロータベーパー(Rotavapor)を用いてのメタノールの蒸発中、さらに塩が沈澱した。このことは、反応が完了していなかったことを示している。60℃において1.5時間後に、その混合物に水を添加した。次に、その混合物をジエチチルエーテル(3×100ml)を用いて抽出した。有機層を稀水酸化ナトリウムで洗滌し、残存する2-プロパンチオールを除去した。その後に、ジエチル層を100mlの水で3回、洗滌し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。ろ過後、ロータベーパーを用いてエーテルを蒸発させた。
【0032】
粗生成物を蒸留させた。2つの主な留分を回収した。これらの2つの混合物をNMRにより分析し、望ましい生成物が生成されたが、なお20%の未知の不純物を含有したことが結論付けられた。7.3g(0.05モル)、収率33%の最も純粋な画分をGC−MSを用いて分析し、風味付け目的に適することが見出された。
水中における評価:100ppb:果物の風味、植物様、硫黄様、甘い
【0033】
実施例8
2-メルカプトプロパンの合成
R.D. Lipscombe、W.H.SharkeyによるJournal of Polymer Science A−1、1970年、8巻、2187頁に開示されているように、2,2-ジメルカプトプロパンの加水分解により、2-メルカプトプロパン(オレンジ油)の合成を行った。
【0034】
実施例9
4-メチル-2-(3H)-チアゾロンの合成
下記の作用物質の溶液を調製した。三角フラスコ中、
モノクロロアセトン 9.25g(0.1モル)
チオシアン酸カリウム 12.5g(0.13モル)
炭酸水素ナトリウム 3g(0.03モル)
水 150ml
その溶液を室温で48時間反応させ、次に12時間攪拌した。
【0035】
その溶液は、無色の溶液から、茶色の油状の沈降物を有する黄色の溶液に変わった。その混合物をろ過し、水層を50℃において45分間加熱した。
【0036】
活性炭を添加し、その混合物を室温において2時間攪拌した。次に、炭素をろ去し、ロータベーパーを用いて水を蒸発させた。十分な水が蒸発したときに、白い固体が沈澱し、その固体をろ去し、母液をフリーザーで一晩保った。ゆっくりと室温に到達させた後に、多量の生成物を晶出させ、ろ去した。その量の5倍の水(w.w.)を添加し、50乃至55℃において溶解させ、ゆっくりと冷却させることにより再結晶化させることができた。収率:0.97g(8ミリモル、8%)。生成物をNMRにより分析し、純粋であるこが見出された。
評価:水、100ppb:脂肪様、肉様、硫黄様、マッシュルーム、煮込んだビーフ特徴
【0037】
実施例10
2,3-ジメチル-4-チオフェンアルデヒドの合成
2,3-ジメチル-4-チオフェンアルデヒドの合成は、A.WiersemaによるActa Chem. Scand.、1970年、24巻、2593頁に開示されている。その沸点は103乃至106℃である。NMR(CDCl):9.77、7.75、2.3
【0038】
実施例11
下の表に示した量(1000当り部)で下記の成分を混合することにより4つの良い風味の組成物を調製した。表においてtはtransであり、cはcisである。このように得られた4つの混合物、A、B、C及びDを試験溶液(50℃、5g/Lの塩化ナトリウムを含有する)にリットル当り0.04gの量で別々に添加した。風味付けされた試験溶液を4人の経験を積んだ味ききの審査員団が評価した。4人の味ききのうち3人が、混合物AよりもB、C及びDを好んだ。

【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の少なくとも1つの、式、R1−S−R2(式中、R1及びR2は下記の組合せの原子又は基:
E.水素原子及び1-(1-メトキシカルボニル)エチル基 又は
F.水素原子及び1−(1−プロピルカルボニルエチル基、を表す)化合物を食品中に組み込むことを含む、食品に風味付けをする方法。


【公開番号】特開2010−11864(P2010−11864A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211305(P2009−211305)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2001−573918(P2001−573918)の分割
【原出願日】平成13年4月5日(2001.4.5)
【出願人】(391020296)クエスト・インターナショナル・ビー・ブイ (7)
【氏名又は名称原語表記】QUEST INTERNATIONAL BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】