説明

有孔ブロック、有孔ブロックを使用した集水装置、および、集水装置の施工方法

【課題】有孔ブロック及び充填材が下向きの荷重を受けたときでも、有孔ブロック及び充填材の位置ズレ、および、固化した充填材の破壊を防止できる集水装置、集水装置で使用される多孔ブロック、および、集水装置の施工方法を提供する。
【解決手段】上壁21aと、上壁に接続する側壁21bと、側壁に接続する底壁21cと、を備え、処理層を通過して被除去物が除去された処理水を中空の内部空間に集水する有孔ブロックにおいて、複数の有孔ブロックを並置する際に各有孔ブロックの間に充填した充填材に、有孔ブロックが受けた上方からの荷重を伝達する側方リブ24を側壁21bに形成し、側方リブ24に、側壁21bに対面して延在する対向面部25aを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水・用水・工業用水・生活廃水・工業廃水等などの被処理水に含まれる懸濁物などの被除去物を除去し、被除去物が除去された処理水を集水する処理を行う集水装置、集水装置で使用される有孔ブロック、および、集水装置の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理設備で用いられる集水装置は、例えば粒状媒体を充填して濾過層(処理層)を備えて当該懸濁物を除去する濾過手段(除去手段)を支持し、濾過層を通過して被除去物が除去された処理水を集水する有孔ブロックを備える(例えば特許文献1)。
【0003】
有孔ブロックは、中空の断面が略矩形となる外壁(上壁・側壁・底壁)、および、当該外壁の内部において略逆V字形断面となる傾斜内壁が設けてある。この傾斜内壁により、有孔ブロックの内部空間を中央流通部および当該中央流通部の両側に位置する側方流通部に仕切っている。上壁の上方部および側方流通部、側方流通部および中央流通部はそれぞれ孔部を介して連通している。
【0004】
濾過層には、珪砂・アンスラサイト・粒状活性炭などの粒状媒体が充填してあり、被処理水を濾過手段の上方より下向流で濾過層に通水すると、被処理水中に含まれる懸濁物等が濾過層によって除去される。濾過層を通過して懸濁物が除去された処理水は、重力の作用により有孔ブロックの上壁に設けた上壁孔部を介して側方流通部に流下し、さらに側方流通部から中央流通部に流下することにより集水される。
【0005】
一般に集水装置では、複数の有孔ブロックを平面状(二次元的に)に設置して濾過手段を支持している。具体的には、複数の有孔ブロックの内部空間が連通するように延設して、複数の有孔ブロックを直列に接続し、有孔ブロックどうしの側壁が対向するように並置して複数の有孔ブロックを並列に配置する。このように複数の有孔ブロックを設置することで、より多量の処理水を集水することができる。
図9に示したように、有孔ブロック20を並列に配設する際には、対向する側壁21bの間にモルタル等の充填材30を充填している。当該充填材30が固化することで、並置した有孔ブロック20どうしを固定する。
【0006】
集水装置で被処理水を濾過処理するに従い、経時的に濾過層が懸濁物によって目詰まりしてくる。当該目詰まりが発生すれば濾過層の濾過性能は低下する。そのため、定期的に逆洗処理を行って濾過層に詰まった懸濁物を除去している。当該逆洗処理を行うことで、濾過層の濾過性能を復活させることができる。
逆洗処理は、逆洗用媒体である液体(水)あるいは空気を濾過手段の下方から上方に向けて供給する。具体的には、図9,10に示したように、逆洗用媒体は、有孔ブロック20及び充填材30の下方に設けたフリューム(水路)70等から底壁開口部c1を経て有孔ブロック20の内部空間(中央流通部A・側方流通部B)を通過し、上壁孔部a1を経由して濾過手段10に供給される。
【0007】
このとき、有孔ブロック20は、逆洗用媒体によって上向荷重を受ける。すると、例えば有孔ブロック20が上方向に相対移動しようとする応力が作用して有孔ブロック20及び充填材30が垂直方向に互いに位置ズレする虞がある。この不都合を避けるため、有孔ブロックの側壁には上方に傾斜した受面26aを備えたリブ26を形成し、当該受面26aから充填材30に前記上向荷重を伝達できる構造としていた。この構造により、有孔ブロック20に上向荷重が作用した場合であっても、前記リブ26によって充填材30に対する有孔ブロック20の相対位置を固定することができるため、有孔ブロック20及び充填材30が垂直方向に互いに位置ズレするのを防止できる。
【0008】
さらに、充填材30が逆洗用媒体によって上向荷重を受ければ、充填材30における上側領域には引張応力が作用して固化した充填材が破壊される虞がある。通常、この不都合を避けるため、充填材30には、特にその上側領域の強度を増すべく、当該上側領域に鉄筋等の補強部材40を水平に配設していた。これにより、上向荷重を受けたときに発生する引張応力に対する耐性を高めて、固化した充填材の上側領域が破壊されるのを未然に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−346574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、有孔ブロックおよび充填材が逆洗用媒体による上向荷重を受けた際に生じる不都合は、上方に傾斜した受面を備えたリブ、および、固化した充填材の上側領域に配設した補強部材を設けることで解消することができる。
【0011】
一方、有孔ブロック及び充填材の上方には濾過手段が載置してあるため、有孔ブロック及び充填材は濾過手段の重量による下向荷重を常に受けている。上方に傾斜した受面を備えたリブでは、下向荷重を充填材に伝達することができないため、特にフリュームの幅が大きい場合には、当該下向荷重によって、例えば有孔ブロックが下方向に相対移動しようとする応力が大きく作用して有孔ブロック及び充填材が垂直方向に互いに位置ズレする虞がある。さらに、充填材が前記下向荷重を受ければ、充填材における下側領域には引張応力が作用して固化した充填材が破壊される虞がある。
【0012】
このような不都合を避けるため、有孔ブロック及び充填材の荷重をそれらの底面で受ける受け棚90(図10)をフリュームの端部に配設してフリュームの幅を小さくし、有孔ブロック及び充填材が前記下向荷重を受けたときに発生する応力を減少させていた。
【0013】
しかし、上述のように受け棚を配設すると製造コスト・工程が増加する。
【0014】
従って、本発明の目的は、有孔ブロック及び充填材が下向きの荷重を受けたときでも、有孔ブロック及び充填材の位置ズレ、および、固化した充填材の破壊を防止できる集水装置、集水装置で使用される有孔ブロック、および、集水装置の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る集水装置の第一特徴構成は、粒状媒体を充填した処理層の上方より下向流で被処理水を通水して前記被処理水中に含まれる被除去物を前記処理層によって除去する除去手段を支持し、前記処理層を通過して被除去物が除去された処理水を中空の内部空間に集水する有孔ブロックと、複数の前記有孔ブロックを並置する際に、各有孔ブロックの間に充填する充填材と、を備え、前記有孔ブロックの側壁に、前記有孔ブロックに対する上方からの荷重を前記充填材に伝達する側方リブを形成してあり、前記充填材の中には、前記有孔ブロックの高さ方向における中間位置以下に下方補強部材を配設してあるとともに、前記下方補強部材よりも上側に上方補強部材を配設してあり、前記側方リブが、前記下方補強部材と前記上方補強部材との間の高さ位置に配置されている点にある。
【0016】
有孔ブロックは、逆洗用媒体によって上向荷重を受け、除去手段の重量による下向荷重を常に受ける。当該上向荷重を受けると、有孔ブロックが上方向に相対移動しようとする応力が作用し、当該下向荷重を受けると、有孔ブロックが下方向に相対移動しようとする応力が作用する。
本構成によれば、有孔ブロックに下向荷重が作用した場合であっても、側方リブによってこれら荷重を固化した充填材に伝達するため、当該充填材に対する有孔ブロックの相対位置を固定することができる。そのため、有孔ブロック及び充填材が垂直方向に互いに位置ズレするのを防止できる。
【0017】
また、本構成によれば、固化した充填材の下側領域には下方補強部材が存在するため、下側領域には引張応力が発生し難くなる。そのため、固化した充填材における下側領域が破壊されるのを未然に防止できる。
【0018】
また、本構成によれば、側方リブの上端面と上方補強部材とで固化した充填材を挟持することができる。同様に、側方リブの下端面と下方補強部材とで固化した充填材を挟持することができる。これにより、有孔ブロック、充填材、上方補強部材および下方補強部材の結合の程度をより強固にすることができる。よって、有孔ブロック及び充填材が互いに位置ズレするのを確実に防止できる。
【0019】
上記構成において、前記側方リブの上端面及び下端面が、前記下方補強部材と前記上方補強部材との間の高さ位置に配置されていると好適である。
また、上記構成において、前記充填材の中の補強部材が、前記下方補強部材と前記上方補強部材とを含んで環状に形成された部分を有し、前記有孔ブロックの側壁に垂直な方向の側面視において、前記側方リブが前記補強部材の環状に形成された部分の内側に位置すると好適である。
【0020】
上記構成において、前記側方リブに、前記側壁に略平行に対面して延在する対向面部を設けると好適である。
【0021】
本構成によれば、側方リブによって有孔ブロックが受けた上向荷重および下向荷重を充填材に確実に伝達して、有孔ブロック及び充填材が垂直方向に互いに位置ズレするのを確実に防止することができると共に、対向面部によって有孔ブロック及び充填材が互いに離間する方向に位置ズレするのを確実に防止することができる。
【0022】
上記構成において、前記側方リブの下端面が前記側壁に対して垂直又は鋭角で交わるように構成されていると好適である。
【0023】
たとえば、本構成によれば、側方リブの下端面が前記側壁に対して鈍角に交わるように構成した場合、有孔ブロックが受ける下向荷重により、側方リブから充填材が剥離する方向の分力が生じる。一方、本構成のように、側方リブの下端面を側壁に対して垂直に交わるように構成することにより、上述の分力の発生を防止することができる。さらに、側方リブの下端面を側壁に対して鋭角に交わるように構成することにより、側方リブに充填材が食い込む側に分力を発生させることができる。この結果、側方リブの下端面を側壁に対して垂直又は鋭角で交わるように構成することにより下向き荷重を確実に充填材に伝えることができる。
【0024】
本発明に係る集水装置の施工方法の特徴構成は、中空の内部空間に被処理水を処理した処理水を集水し、上方からの荷重を隣接する充填材に伝達する側方リブを側壁に備えた有孔ブロックの複数を平面状に設置する有孔ブロック設置工程と、並列に配設した各有孔ブロックの間に、前記有孔ブロックの高さ方向における中間位置以下に下方補強部材を配設するとともに、前記下方補強部材よりも上側に上方補強部材を配設する補強部材配設工程と、並列に配設した各有孔ブロックの間に前記充填材を充填する充填工程と、を有し、前記側方リブが前記下方補強部材と前記上方補強部材との間の高さ位置に配置されるように前記有孔ブロックを設置する点にある。
【0025】
本構成によれば、複数の有孔ブロックを下方に配設して、各有孔ブロックの間を充填材で充填し、その上方に除去手段を積層した集水装置を形成することができる。特に、本施工方法では、有孔ブロックの側壁に上方からの荷重を充填材に伝達する側方リブを備えるため、側方リブによって固化した充填材に対する有孔ブロックの相対位置を固定することができ、有孔ブロック及び充填材が垂直方向に互いに位置ズレするのを防止できる集水装置を形成することができる。
さらに、本構成では、有孔ブロックの高さ方向における中間位置より下方に下方補強部材を配設した状態で充填材を充填するため、有孔ブロックに上向荷重あるいは下向荷重が作用した場合であっても、固化した充填材の下側領域に引張応力が発生し難くなり、固化した充填材における下側領域が破壊されるのを未然に防止できる集水装置を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の集水装置の概略を一部切欠で示す斜視図である。
【図2】本発明の有孔ブロックの斜視図である。
【図3】有孔ブロック、充填材、補強部材の配置を示した断面図である。
【図4】有孔ブロック、補強部材の配置を示した側面図である。
【図5】側方リブの要部断面図である。
【図6】別実施形態の側方リブの要部断面図である。
【図7】別実施形態の補強部材の配置を示した側面図である。
【図8】本発明の集水装置の施工方法の各工程の流れ図である。
【図9】従来の集水装置における有孔ブロック、充填材、補強部材の配置を示した断面図である。
【図10】従来の有孔ブロック、補強部材の配置を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の集水装置Xは、図1に示すように、上水・用水・工業用水・生活廃水・工業廃水等などの被処理水に含まれる懸濁物(被除去物)を除去する水処理設備Yにおいて、懸濁物が除去された処理水を集水するために用いられる。
【0028】
図1〜5に示したように、当該集水装置Xは、粒状媒体12を充填した処理層11の上方より下向流で被処理水を通水して被処理水中に含まれる被除去物を処理層11によって除去する除去手段10を支持し、処理層11を通過して被除去物が除去された処理水を中空の内部空間に集水する有孔ブロック20と、複数の有孔ブロック20を並置する際に、各有孔ブロック20の間に充填する充填材30と、を備え、充填材30の中には、有孔ブロック20の高さ方向における中間位置より上方に上方補強部材41、および、当該中間位置より下方に下方補強部材42を配設してある。
【0029】
(除去手段)
本実施形態の除去手段10は、濾過処理によって被処理水中に含まれる被除去物を除去する場合について説明する。従って、処理層11は濾過層となる。しかし、このような態様に限られるものではなく、生物処理によって被処理水中に含まれる被除去物を除去することも可能である。この場合、処理層11は生物処理層となり、例えば粒状媒体12の表面に被除去物を生物的に分解する微生物を担持させておく。
【0030】
処理層11には、珪砂・アンスラサイト・粒状活性炭などの粒状媒体12が充填してある。本実施形態では二層の処理層11を設けてあり、最下層から順に珪砂層11a・アンスラサイト層11bを配設したものを例示するが、これに限られるものではない。
被処理水を除去手段10の上方に設けた排水トラフ50より処理層11に給水して処理層11を通過させることで、被処理水中に含まれる被除去物が処理層11によって除去される。なお、排水トラフ50経由ではなく直接被処理水が供給される場合も有る。
【0031】
(有孔ブロック)
有孔ブロック20は除去手段10の下方に配置して除去手段10を支持する。本実施形態では、除去手段10と有孔ブロック20との間には、多孔プレート60を配設してある。
有孔ブロック20は、中空で断面が略矩形となる外壁21(上壁21a・側壁21b・底壁21c)、および、当該外壁21の内側に接続して有孔ブロック20の内部空間を複数の空間に分割する傾斜内壁22が設けてある。
有孔ブロック20は、耐食性・耐圧性に優れた材質であれば、何れの材料で形成してもよいが、例えば、高密度ポリエチレンの発泡成形で成形すれば軽量化することができるため、運搬や施工面で作業性がよい。
【0032】
上壁21aは、除去手段10の下面に直接接触して、或いは、多孔プレート60を介して間接的に除去手段10を支持する。側壁21bは上壁21aに接続する一対の対向する壁であり、底壁21cは当該一対の側壁21bに接続する。また、傾斜内壁22は、その断面が略逆V字形となるように形成してある。これにより、有孔ブロック20の内部空間を、中央流通部Aと当該中央流通部Aの両側に位置する側方流通部Bとに仕切っている。このように、有孔ブロック20の内部空間は、傾斜内壁22によって三つの空間に分割されるが、この態様に限られるものではない。
【0033】
上壁21aの上方部および側方流通部Bは、上壁21aに形成した複数の上壁孔部a1を介して連通している。また、側方流通部Bおよび中央流通部Aは、傾斜内壁22に形成した第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2および第三内壁孔部b3を介して連通している。処理層11を通過して被除去物が除去された処理水は、重力の作用により、多孔プレート60を通過した後に上壁孔部a1を介して側方流通部Bに流下し、さらに第一内壁孔部b1、第二内壁孔部b2および第三内壁孔部b3を介して中流通部Aに流下して集水される。処理水は、有孔ブロック20の底壁21cに形成した底壁開口部(図外)を経て有孔ブロック20の下方に設けたフリューム70を流下して、或いは、中央流通部Aに接続する配管(図外)を流下して、所定の貯水槽に搬送される。
【0034】
上壁21aの上面には、側壁21bから延設する上壁第一リブ部23a、上壁第一リブ部23aに平行な上壁第二リブ部23b、および、上壁第一リブ部23aと垂直に交差する上壁第三リブ部23cが設けてある。本実施形態では、二本の上壁第一リブ部23a、一本の上壁第二リブ部23b、十本の上壁第三リブ部23cをそれぞれ形成した場合を示すが、これに限られるものではない。
これらリブ部23a〜23cによって、上壁21aの上面を複数の区画に分割してある。これらリブ部23a〜23cを設けることで上壁21aの耐圧性を強化することができ、除去手段10の荷重による上壁21aの撓みを防止できる。
多孔プレート60は、前記リブ部23a〜23cの上面に載置する。多孔プレート60は、ボルトによって前記リブ部23a〜23c或いは上壁21aに固定する。多孔プレート60は、例えば、直径数mmのペレットを多数接合して構成するとよい。当該ペレットとしては、ポリオレフィン等のプラスチックの他、セラミック、焼結金属等が使用可能である。
【0035】
側壁21bには、複数の有孔ブロック20を並置する際に、各有孔ブロック20の間に充填した充填材30に、有孔ブロック20が受けた上方及び下方からの荷重を伝達する側方リブ24を形成してある。側方リブ24は、水平方向に伸延する水平側方リブ24A、および、垂直方向に伸延する垂直側方リブ24Bとすることができる。何れのリブ形状であっても、その上端面24aによって有孔ブロック20が受けた上向荷重を充填材30に伝達し、その下端面24bによって有孔ブロック20が受けた下向荷重を充填材30に伝達する。上端面24aおよび下端面24bは、略水平な面となるように構成すれば、有孔ブロック20が受けた上向荷重および下向荷重を充填材30に確実に伝達することができる。さらに、上端面24a或いは下端面24bが、側壁21bに対して鋭角的に交わるように構成すれば(図5)、有孔ブロック20が受けた上向荷重および下向荷重を充填材30に確実に伝達して、有孔ブロック20及び充填材30が垂直方向に互いに位置ズレするのを確実に防止することができる。
【0036】
有孔ブロック20は、逆洗用媒体によって上向荷重を受け、濾過手段の重量による下向荷重を常に受ける。当該上向荷重を受けると、有孔ブロック20が上方向に相対移動しようとする応力が作用し、当該下向荷重を受けると、有孔ブロック20が下方向に相対移動しようとする応力が作用する。本構成では、有孔ブロック20が受けた上方及び下方からの荷重を充填材30に伝達する側方リブ24を形成することから、有孔ブロック20に上向荷重あるいは下向荷重が作用した場合であっても、側方リブ24によってこれら荷重を固化した充填材30に伝達するため、充填材30に対する有孔ブロック20の相対位置を固定することができる。そのため、有孔ブロック20及び充填材30が垂直方向に互いに位置ズレするのを防止できる。
側方リブ24は、水平側方リブ24Aおよび垂直側方リブ24Bの少なくとも何れか一方を形成するとよい。
【0037】
(充填材)
充填材30は、複数の有孔ブロック20を並置する際に、各有孔ブロック20の間に充填する。
充填材30は、モルタル・コンクリート等、間隙等に流動状態で投入した後、経時的に固化する態様のものであれば、公知の充填材を使用することができる。固化した充填材30は、並置した有孔ブロック20の間隙を埋めると共に、各有孔ブロック20どうしを強固に接着して固定することで、有孔ブロック20の上方に載置した除去手段10を安定して支持することができる。
有孔ブロック20および充填材30の下方にフリューム70が形成してある場合、充填材30がフリューム70に落下するのを防止するため、有孔ブロック20どうしの間には、それぞれの側壁21bの下方にフリューム70を受けるブリッジング(図外)を配設する。
【0038】
(補強部材)
本発明の集水装置Xは、充填材30の中には、有孔ブロック20の高さ方向における中間位置より上方に上方補強部材41、および、中間位置より下方に下方補強部材42を配設してある。
【0039】
本構成であれば、有孔ブロック20に上向荷重あるいは下向荷重が作用した場合であっても、固化した充填材30の上側領域には上方補強部材が存在し、下側領域には下方補強部材が存在するため、上側領域および下側領域には引張応力が発生し難くなる。そのため、固化した充填材30における上側領域あるいは下側領域が破壊されるのを未然に防止できる。
補強部材40である上方補強部材41および下方補強部材42は、例えば鉄筋・木材等を使用することができるが、これらに限られるものではない。固化した充填材30がその長さに亘って破壊しないようにするため、例えば水平に長尺状に配置できる態様のものであれば使用できる。
【0040】
上方補強部材41および下方補強部材42は別部材としてもよく、或いは、一体化して構成することも可能である。これらを一体化して構成する場合は、例えば上方補強部材41から下方補強部材42が分岐する態様とすることができる(図4)。下方補強部材42が分岐する位置は、例えばフリューム70の幅を基準に決定することができる。
本実施形態では、下方補強部材42が分岐する位置43は、平面視でフリューム70の端部付近としてあり、下方補強部材42を設ける位置を、フリューム70が形成してある位置に対応させてある。フリューム70が存在する位置では充填材30を下方で受ける部材が存在しないため、当該位置では充填材30における下側領域に引張応力が作用した場合に固化した充填材30が破壊される虞がある。下方補強部材42を設ける位置を、フリューム70が形成してある位置に対応させれば、充填材30が前記下向荷重を受けたときに発生引張応力が発生し難くなるため、当該位置における充填材30の破壊を効率よく防止することができる。
【0041】
上述した側方リブ24の形成範囲は、前記高さ方向における上方補強部材41および下方補強部材42の間とすればよい。
【0042】
本構成では、側方リブ24の上端面24aと上方補強部材41とで固化した充填材30を挟持することができる。同様に、側方リブ24の下端面24bと下方補強部材42とで固化した充填材30を挟持することができる。これにより、有孔ブロック20、充填材30、上方補強部材41および下方補強部材42の結合の程度をより強固にすることができる。よって、有孔ブロック20及び充填材30が互いに位置ズレするのを確実に防止できる。
【0043】
(集水装置の施工方法)
本発明の集水装置Xは、図8に示したように、有孔ブロック接続工程P1と、有孔ブロック設置工程P2と、補強部材配設工程P3と、充填工程P4と、を有する。
【0044】
有孔ブロック接続工程P1は、空の内部空間に被処理水を処理した処理水を集水し、上方及び下方からの荷重を隣接する充填材30に伝達する側方リブ24を側壁21bに備えた有孔ブロック20の複数を長手方向に一列に接続する。
有孔ブロック設置工程P2は、上述した接続工程P1により一列に接続された有孔ブロックの列を設置する。
補強部材配設工程P3は、有孔ブロック設置工程P2により設置された有孔ブロックの列に隣接して、有孔ブロック20の高さ方向における中間位置より上方に上方補強部材41、および、中間位置より下方に下方補強部材42を配設する。
本実施形態では、上述の有孔ブロック設置工程P2と補強部材配設工程P3とが交互に繰り返されて、並列に配設した各有孔ブロック20の間に、上方補強部材41、および、下方補強部材42を配設した状態となる。
充填工程P4は、並列に配設した各有孔ブロック20の間に充填材30を充填する。
【0045】
本施工方法では、有孔ブロック20の側壁21bに上方及び下方からの荷重を充填材30に伝達する側方リブ24を備えるため、側方リブ24によって固化した充填材30に対する有孔ブロック20の相対位置を固定することができ、有孔ブロック20及び充填材30が垂直方向に互いに位置ズレするのを防止できる集水装置Xを形成することができる。
さらに、本施工方法では、有孔ブロック20の高さ方向における中間位置より上方に上方補強部材41、および、中間位置より下方に下方補強部材42を配設した状態で充填材30を充填するため、有孔ブロック20に上向荷重あるいは下向荷重が作用した場合であっても、固化した充填材30の上側領域あるいは下側領域に引張応力が発生し難くなり、固化した充填材30における上側領域あるいは下側領域が破壊されるのを未然に防止できる集水装置Xを形成することができる。
【0046】
(逆洗処理)
水処理設備Yで被処理水を濾過するに従い、経時的に処理層11が被除去物によって目詰まりする。当該目詰まりが発生すれば処理層の濾過性能は低下する。そのため、定期的に逆洗処理を行って処理層に詰まった被除去物を除去している。当該逆洗処理を行うことで、処理層の濾過性能を復活させることができる。
【0047】
本実施形態の逆洗処理は、有孔ブロック20の下方に設けたフリューム70や中央流通部Aに接続された配管等を介して、中央流通部A内に気体あるいは液体等の逆洗用媒体を流通させる。具体的には、当該逆洗用媒体を、中央流通部Aから、傾斜内壁22の内壁孔部b1〜b3、上壁21aの上壁孔部a1、および多孔プレート60を介して除去手段の処理層11に噴出させる。この噴出された逆洗用媒体によって、処理層11に詰まった異物(被除去物)を取り除くことができる。
尚、本実施形態では、集水処理時には処理水を配管によって所定の貯水槽に搬送しているが、逆洗処理時には、処理水を所定の貯水槽に搬送する方向とは逆方向に逆洗用媒体を当該配管によって流通させる。
【0048】
〔別実施の形態〕
上述した実施形態では、側方リブ24は、上端面24aおよび下端面24bは、略水平な面となるように構成する場合について説明したが、側方リブ24には、側壁21bに略平行に対面する対向面25aを形成した鉤部25を設けてもよい(図6)。
鉤部25は、上端面24aおよび下端面24bの何れの面に形成してもよい。
【0049】
補強部材40の形状は上述の形状に限られるものではない。例えば、図7に示すように、下方補強部材42を湾曲させることなく、上方補強部材41と平行に設けるなど、上述以外の形状であってもよい。
【0050】
本構成であれば、側方リブ24によって有孔ブロック20が受けた上向荷重および下向荷重を充填材30に確実に伝達して、有孔ブロック20及び充填材30が垂直方向に互いに位置ズレするのを確実に防止することができると共に、鉤部25の対向面25aによって有孔ブロック20及び充填材30が互いに離間する方向に位置ズレするのを確実に防止することができる。
【0051】
また、上述の実施形態において、除去手段10と有孔ブロック20との間に多孔プレート60を設ける例を示したが、多孔プレート60に替えて、支持砂利層11aを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、上水・用水・工業用水・生活廃水・工業廃水等などの被処理水に含まれる懸濁物(被除去物)を除去し、懸濁物が除去された処理水を集水する処理を行う集水装置、集水装置で使用される多孔ブロック、および、集水装置の施工方法に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
X 集水装置
10 除去手段
11 処理層
12 粒状媒体
20 有孔ブロック
21a 上壁
21b 側壁
21c 底壁
24 側方リブ
24A 水平側方リブ
24B 垂直側方リブ
25 鉤部
25a 対向面
30 充填材
41 上方補強部材
42 下方補強部材
P1 有孔ブロック設置工程
P2 補強部材配設工程
P3 充填工程
P4 積層工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状媒体を充填した処理層の上方より下向流で被処理水を通水して前記被処理水中に含まれる被除去物を前記処理層によって除去する除去手段を支持する上壁と、前記上壁に接続する側壁と、前記側壁に接続する底壁と、を備え、
前記処理層を通過して被除去物が除去された処理水を中空の内部空間に集水する有孔ブロックにおいて、
複数の前記有孔ブロックを並置する際に各有孔ブロックの間に充填した充填材に、前記有孔ブロックが受けた上方からの荷重を伝達する側方リブを前記側壁に形成し、
前記側方リブに、前記側壁に対面して延在する対向面部を設けてある有孔ブロック。
【請求項2】
前記対向面部が前記側方リブの上面から上方に延びている請求項1に記載の有孔ブロック。
【請求項3】
前記対向面部が前記側方リブの上面に対して鋭角で交わるように構成されている請求項1又は2に記載の有孔ブロック。
【請求項4】
前記側方リブの下端面が前記側壁に対して鋭角で交わるように構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の有孔ブロック。
【請求項5】
粒状媒体を充填した処理層の上方より下向流で被処理水を通水して前記被処理水中に含まれる被除去物を前記処理層によって除去する除去手段を支持し、前記処理層を通過して被除去物が除去された処理水を中空の内部空間に集水する有孔ブロックと、
複数の前記有孔ブロックを並置する際に、各有孔ブロックの間に充填する充填材と、を備え、
前記有孔ブロックの側壁に、前記有孔ブロックに対する上方からの荷重を前記充填材に伝達する側方リブを形成し、
前記側方リブに、前記側壁に対面して延在する対向面部を設けてある集水装置。
【請求項6】
前記充填材の中には、前記有孔ブロックの高さ方向における中間位置以下に下方補強部材を配設してある請求項5に記載の集水装置。
【請求項7】
前記充填材の中には、前記下方補強部材よりも上側に上方補強部材を配設してある請求項6に記載の集水装置。
【請求項8】
中空の内部空間に被処理水を処理した処理水を集水し、上方からの荷重を隣接する充填材に伝達する側方リブを側壁に備え、前記側方リブに、前記側壁に対面して延在する対向面部を設けてある有孔ブロックの複数を平面状に設置する有孔ブロック設置工程と、
並列に配設した各有孔ブロックの間に、前記有孔ブロックの高さ方向における中間位置以下に下方補強部材を配設する補強部材配設工程と、
並列に配設した各有孔ブロックの間に前記充填材を充填する充填工程と、を有する集水装置の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99747(P2013−99747A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−533(P2013−533)
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2009−87886(P2009−87886)の分割
【原出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】