説明

有害ガス除去具

【課題】 保管庫内を良い環境にするために、保管庫内の中に脱臭具などを入れて管理したりしているが、脱臭具の寿命が短いこと、脱臭具の入れ替えに煩わしい手間が掛かること、特に脱臭具自身から小さな粉塵が漏れ出て、保管庫内に一緒に収納したマイクロフイルム、書籍、絵画に悪影響を与えることから満足する脱臭具が期待されていた。
【解決手段】 本発明は、水洗、樹脂コートなどによる低発塵あるいは無発塵の吸着材基材に化学反応剤の添着あるいはイオン交換基をグラフト重合などで得られた粒状または微粒子状の有害ガス吸着材を通気性シートからなる袋体内に封入させてなる有害ガス除去具で、保管庫内に一緒に収納してもマイクロフイルム、書籍、絵画などを汚すことなく且つ長寿命の有害ガス除去具を提供しょうとしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロフイルム、書籍、絵画などの保管庫内において発生する有機酸などの有害ガスで、マイクロフイルム、書籍、絵画などが劣化するのを防止した有害ガス除去具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、公文書館、博物館、図書館などにおいては、文書や画像の記録として保存されるマイクロフイルム、書籍、絵画に記録された価値のある情報を後世に永く残すために保存の1つの方法として保管庫内に収納して保存する方法が行われている。しかしながら、長期間にわたってマイクロフイルムや書籍、絵画を保管して置おくと、特にセルロースエステル素材をベースとしたTACベースのマイクロフイルム場合きわめて遅いが加水分解反応が起こり、この加水分解の過程で僅かな酢酸が生じ保存庫内に蓄積され、それがあるレベル以上に達すると急激に劣化を招いてしまうといった問題がある。また、書籍、絵画の場合もそれぞれの素材によって有害ガスが生じ書籍、絵画をいためてしまうといった問題があった。
【0003】
そこで、例えば保管庫内にマイクロフイルムや書籍、絵画と共に脱臭具などを入れて庫内を良い環境に管理し、マイクロフイルムや書籍、絵画をいためないようにしているが、脱臭具の寿命が短いため脱臭具の入れ替えに煩わしい手間が掛かる上、酢酸ガスなどの有機酸を十分に除去する機能を持った脱臭具がないため、酢酸ガスの低減には十分な効果がなく保管庫内で酢酸ガスが充満しマイクロフイルムが劣化してしまうといった問題があった。
【0004】
さらに保管庫内に収納した脱臭具から脱臭具内に密封した脱臭材の小さな粉が漏れ出て、保管庫内に一緒に収納したマイクロフイルム、書籍、絵画に悪影響を与えかねないといった懸念があった。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0005】
そこで本発明はこれらの課題を解決しょうとしたもので、第1の目的はマイクロフイルムから発生する保管庫内の酢酸ガスなどの有機酸を除去しょうとしたものである。
【0006】
もう一つの本発明の目的は、保管庫内にマイクロフイルム、書籍、絵画などと一緒に収納したとき、有害ガス除去具内に密封した有害ガス吸着材の小さな粉塵が漏れ出ないようにしたものである。
【0007】
もう一つの本発明の目的は、低発塵あるいは無発塵の有害ガス吸着材を使用したことである
【0008】
もう一つの本発明の目的は、吸着寿命の長い有害ガス除去具を提供しょうとしたものである。
【0009】
もう一つの本発明の目的は、保管庫内に一緒に収納したマイクロフイルム、書籍、絵画に悪影響を与えないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の解決手段は、通気性シートからなる袋体内に有害ガス吸着材を封入した有害ガス除去具を提供しょうとしたものである。
【0011】
本発明の第2の解決手段は、有害ガス吸着材は低発塵あるいは無発塵の吸着材基材にイオン交換基をグラフト重合して得られた粒状または微粒子状の吸着材から構成したものである。
【0012】
ここで、低発塵あるいは無発塵の吸着材基材は、水洗、樹脂コートなどによる吸着性のある物質でイオン交換基をグラフト重合できるものであれば良く、例えば活性炭、シリカゲル、ゼオライトといった無機質多孔性体や、パルプ、高分子多孔体などが使用可能である。
【0013】
また、イオン交換基としては、酢酸ガスなどの有機酸を吸着する機能を持ったカチオン交換基、アンモニアガスなどの塩基性化学物質を吸着する機能を持ったアニオン交換基が挙げられる。
【0014】
これらの交換基を低発塵あるいは無発塵の吸着性基材にリン酸、カリウムなどの化学反応剤の添着あるいはグラフト重合する方法としては、従来公知のグラフト重合法が採用でき、例えば放射線あるいは電子線などを照射して吸着性基材にラジカルを発生させ、所定の交換基を重合させて形成することができる。
【0015】
さらに、通気性シートは通気性の有するものであれば、種々の材質を使用出来例えば合成樹脂シート、紙、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、織布のシート状物などが使用される。
【0016】
袋体は通気性シートを適宜大きさ及び形状に裁断した後、2枚のシートを合体してその端末周辺を融着、接着などの適宜手段で一体化し袋状に形成される。
【0017】
上記課題解決手段による作用は次の通りである。まず、マイクロフイルム、書籍、絵画などの保管庫内に有害ガス除去具を収納する。その後保管庫内で発生した有機酸などの有機ガスは有害ガス除去具によって捕捉される。これにより保管庫内に収められたマイクロフイルム、書籍、絵画などへのこのガスによる影響を出来る限り生じさせないようにすることができる。
【0018】
特に、本発明の有害ガス除去具を構成する有害ガス吸着材は水洗、樹脂コートなどによる低発塵あるいは無発塵の吸着材基材からなっているので、吸着材の小さな粉塵が漏れ出ることがなく、保管庫内に一緒に収納したマイクロフイルム、書籍、絵画を汚すといった悪影響を与えないものである。
【0019】
さらに、有害ガス吸着材のイオン交換基を吸着性基材に電離線などを照射して吸着性基材にラジカルを発生させグラフト重合させて、所定のイオン交換基を形成したものであるため、微量なガス濃度に対しても吸着効果を発揮する上寿命も長く維持できるものである。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明の有害ガス除去具は次のような効果が得られる。
(1)通気性シートの袋体に、電離線などを照射してグラフト重合させ、所定のイオン交換基を形成した有害ガス吸着材を封入したので、微量なガス濃度に対しても吸着効果を発揮でき、且つ寿命も長く維持できる。
(2)有害ガス吸着材の吸着材基材を低発塵あるいは無発塵としたので、保管庫内で一緒に収納したマイクロフイルム、書籍、絵画などを汚すといったことがない。
(3)有害ガス除去具は袋状となっているので、取り扱いおよび持ち運びが容易である。
(4)マイクロフイルム、書籍、絵画などの保管庫内の汚染空気は有害ガス除去具によって清浄化されるので、マイクロフイルム、書籍、絵画などを傷めることなく、永久に保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の有害ガス除去具を示した要部破断斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明の有害ガス除去具について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
本発明の有害ガス除去具1は有害ガス吸着材2と一対のシート3、3とから構成されている。有害ガス吸着材2は吸着性基材にイオン交換基をグラフト重合して得られた粒状あるいは微粒子状をなしている。吸着性基材としては、細孔を有し多面積で吸着性のある物質で化学吸着剤が添着できるものあるいはイオン交換基をグラフト重合できるものであれば良く、例えば、活性炭、シリカゲル、ゼオライトといった無機質多孔性体や、パルプ、高分子多孔体などの有機多孔性体、合成樹脂などが採用できる。
【0023】
また、イオン交換基としてはアンモニアなどの塩基性物質を化学的に吸着するアニオン交換基、酢酸、ホルムアルデヒドなどの酸性物質を化学的に吸着するカチオン交換基が挙げられる。それらの具体例を示すとカチオン交換基としてはスルホン酸基などがある。また、アニオン交換基としては強塩基性の4級アンモニウム基などがある。
【0024】
これらの交換基を吸着性基材にグラフト重合する方法としては、従来公知のグラフト重合法が採用でき、例えば、放射線あるいは電子線などを照射して吸着性基材にラジカルを発生させ、所定の交換基をグラフト重合させて形成することができる。
【0025】
また、有害ガス吸着材2は、カチオン交換基をグラフト重合したもの単独あるいはアニオン交換基をグラフト重合したもの単独をそれぞれシート袋体内に充填させることも可能であるが、必要に応じてカチオン交換基をグラフト重合した吸着材と、アニオン交換基をグラフト重合した吸着材との混合物を充填させることも可能であり、特に塩基性物質と酸性物質が同時に発生する場所などに配置させる際には混合系が好ましく使用できる。
【0026】
シート3は、通気性を有するものであれば種々の材質を使用でき、例えば合成樹脂シート、紙、不織布、織布などのシート状物を適宜大きさおよび形状に形成したものが使用できる。
【0027】
次に、本発明の有害ガス除去具1の製作方法について説明する。
【0028】
まず、繊維径が0.3〜100μm、厚みが0.05〜1.0mmの合成繊維または天然繊維などからなる不織布あるいは織布に有機バインダまたは無機バインダあるいは熱溶融などで結合して一体にしたシートを形成する。
【0029】
次に、シートを所定寸法に切断してシート3を形成する。
【0030】
次に、この2枚のシート3同志が重ね合わさるように一側縁部を残して他の3つの縁部を高周波シール器で熱溶着し一体化して袋状のバッグを形成する。
【0031】
次に、前記バッグの一端側より必要量の有害ガス吸着材2を充填し、その後一側縁部を高周波シール器で熱溶着し一体化して有害ガス除去具1を完成する。
【0032】
上記の如く構成した有害ガス除去具1をマイクロフイルム、書籍、絵画などを収納した保管庫や展示ケース、展示室内に一緒に収納したりするといった簡単な方法で、有害ガス吸着材2によりマイクロフイルム、書籍、絵画などを汚すことなく、庫内や室内に充満した有害ガスを捕捉吸着することができる。
【0033】
尚、本実施例では本発明の一実施例を述べたもので、これに限定されることなく、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
マイクロフイルム保管庫内においては、マイクロフイルムの保護および維持のために保管庫内に有害ガス除去具を置いて、マイクロフイルムから発生した酢酸ガスなどの有機酸を捕捉吸着し庫内の空気を浄化して庫内が清浄空気となるようにしたもので、実用的はなはだ大なるものである。
【符号の説明】
【0035】
1・・・有害ガス除去具 2・・・有害ガス吸着材 3・・・シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性シートからなる袋体内に有害ガス吸着材を封入して構成したことを特徴とする有害ガス除去具。
【請求項2】
有害ガス吸着材が低発塵あるいは無発塵の吸着材基材に化学反応剤の添着あるいはイオン交換基をグラフト重合などで付与して得られた粒状または微粒子状の吸着材から構成されたことを特徴とする請求項1の有害ガス除去具。

【図1】
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【公開番号】特開2012−217986(P2012−217986A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95496(P2011−95496)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】