説明

有害物質含有液体処理装置

【課題】 液体中の有害物質を除去することができる有害物質含有液体処理装置を提供する。
【解決手段】 有害物質含有液体処理装置1は、処理液貯留タンク2と、第1処理部3と、第2処理部4と、処理済液回収タンク5とを含む。処理液貯留タンク2は、有害物質を含有する処理すべき液体を貯留する。第1処理部3は、処理液貯留タンク2から供給された液体に、加圧下で所定の気体を供給して、直径50μm以下の微細気泡を含有させる。第2処理部4は、放電によって非平衡プラズマを発生させて、第1処理部3から供給された微細気泡を含有した液体を処理する。処理済液回収タンク5は、第2処理部4で処理された液体を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質を含有する液体を処理するための処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害物質を含有する液体を処理するための処理装置が知られている。水に不溶な有害物質を含有する液体として、ポリ塩化ビフェニル(略称PCB)を含有する絶縁油が挙げられる。ポリ塩化ビフェニルは、毒性が強くかつ安定で分解されにくい化合物であるために、廃棄物として処理が困難であるとともに、環境汚染物質の一つとして、生産及び使用が禁止されている。
【0003】
従来のポリ塩化ビフェニル処理技術として代表的な方法に、金属ナトリウムやアルカリを用いた脱塩素による化学処理技術や光分解技術が挙げられ、実処理や様々なレベルの実試験データが公表されてきている。また、吸着浄化を基本概念とするポリ塩化ビフェニル処理技術もある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、医療機関などにおいて、人工透析、手術または検査などで発生する、し尿、体液、血液などの液状感染性廃棄物は、水溶性の有害物質を含有する液体であり、滅菌・殺菌処理、化学処理等を施して安全に廃棄されることが求められる(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−319403号公報
【特許文献2】特開2001−000982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの有害物質を含有する液体を処理するためには、有害物質の周囲環境への影響に配慮した大規模の処理設備が必要とされる。特にPCB含有廃棄物は、保管事業者の責任において処理されなければならず、保管事業者自身、または専門の処理事業者に委託して処理されなければならない。またPCB含有廃棄物の保管および処理のための費用も莫大なものになっており、保管事業者にとって大きな負担となっている。
【0007】
本発明の目的は、液体中の有害物質を除去することができる有害物質含有液体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有害物質を含有する処理すべき液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給された液体に、加圧下で所定の気体を供給して、微細気泡を含有させる第1処理部と、
放電によって非平衡プラズマを発生させて、前記第1処理部から供給された微細気泡を含有した液体を処理する第2処理部と、
前記第2処理部で処理された液体を回収する液体回収部とを含むことを特徴とする有害物質含有液体処理装置である。
【0009】
本発明において、前記第2処理部は、
上下に延びる線状の放電電極と、
該放電電極に対向して上下に延びるアース電極と、
該放電電極に、非平衡プラズマを発生させるための電力を供給する電源装置と、
該アース電極の上部に設けられ、前記第1処理部から供給された液体を該アース電極の該放電電極に臨む面に供給する第1液体供給部と、
該アース電極の下方に設けられ、該アース電極の該放電電極に臨む面上を流下して非平衡プラズマによって処理された液体を受容し、前記液体回収部に該処理された液体を供給する第2液体供給部と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記アース電極の前記放電電極に臨む面に対して、粗面化処理が施されることを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記所定の気体は不活性ガスであり、前記処理すべき液体はポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油であることを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記所定の気体は純酸素であり、前記処理すべき液体はポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記所定の気体はオゾンであり、前記処理すべき液体は水溶性有害物質を含有する液状感染性廃棄物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体貯留部に貯留された有害物質を含有する処理すべき液体は、第1処理部に供給される。第1処理部では、液体貯留部から供給された液体に、加圧下で所定の気体を供給して、微細気泡、たとえば直径50μm以下のマイクロバブルが含有される。これによって、微細気泡を含有した液体の導電性が、処理前と比べて向上する。
【0015】
第1処理部で微細気泡を含有した液体は、第2処理部に供給される。第2処理部では、内部の空気を放電によって電子とイオンとに電離させ、電子の電子温度がイオンのイオン温度に比べて高い状態で、電子温度とイオン温度とが熱力学的に平衡していない状態のプラズマである非平衡プラズマを発生させる。この第2処理部では、非平衡プラズマの温度が常温に保たれた状態で、高速の電子を得ることができる。この高速の電子は空気中の各種分子に衝突し、ラジカル、励起分子およびイオンなどの反応性に富む化学的活性種を生成する。液体に含有される有害成分は、その大部分が高速の電子の衝突とともに、化学的活性種による化学反応によって分解除去される。また液体に含有される微細気泡は負の電荷を帯びているとともに、微細気泡が消滅する際に、泡内部の温度が高温となり高圧となる。微細気泡が負の電荷を帯びていることによって、有害成分を引き寄せ、微細気泡が消滅する際に生じる高温高圧状態によって、泡を形成する所定の気体が分解され、強力なラジカルを発生し、このラジカルによって有害成分が除去される。このようにして、第1処理部から供給された微細気泡を含有した液体が処理される。
第2処理部で有害物質が分解除去された液体は、液体回収部に回収される。
【0016】
このように、第1処理部で有害物質を含有する液体に微細気泡が含有されるので、液体の導電性が向上し、この微細気泡を含有した液体を第2処理部に供給しても、第2処理部において安定して放電を行うことができ、非平衡プラズマを安定して発生させることができる。非平衡プラズマによる有害物質の分解除去と微細気泡の消滅に際して生じる有害物質の分解除去との相乗効果によって、少なくとも第1処理部と第2処理部とを有する設備で、液体中の有害物質を効率よく除去することができる。
【0017】
また本発明によれば、第2処理部は、上下に延びる線状の放電電極と、アース電極と、電源装置と、第1液体供給部と、第2液体供給部とを含む。アース電極は、放電電極に対向して上下に延びている。電源装置は、放電電極に、非平衡プラズマを発生させるための電力を供給する。第1液体供給部は、アース電極の上部に設けられ、第1処理部から供給された液体をアース電極の放電電極に臨む面に供給する。第2液体供給部は、アース電極の下方に設けられ、アース電極の放電電極に臨む面上を流下して非平衡プラズマ雰囲気中で処理された液体を受容し、液体回収部に該処理された液体を供給する。
【0018】
微細気泡を含有した液体は、第1液体供給部によって、アース電極の放電電極に臨む面上に供給され、アース電極の放電電極に臨む面上を流下し、第2液体供給部に受容される。アース電極の放電電極に臨む面は微細気泡を含有した液体で濡れている。液体中に微細気泡が含有されているので、液体の導電性が向上しており、アース電極の放電電極に臨む面上に液体が存在していても、安定して放電を行うことができる。したがって、微細気泡を含有した有害物質を含有する液体が放電電極およびアース電極間に形成される非平衡プラズマ雰囲気中を通過することで、液体中の有害物質を除去することができる。
【0019】
さらに本発明によれば、アース電極の放電電極に臨む面に対して、粗面化処理が施される。これによって、処理すべき液体をアース電極の放電電極に臨む面全面にわたって一様に流下させることができ、液体中の有害物質を効率よく除去することができる。
【0020】
さらに本発明によれば、所定の気体は不活性ガスであり、処理すべき液体はポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油である。所定の気体は不活性ガスであるので、絶縁油の性状に悪影響を与えない。また絶縁油中に不活性ガスによって形成された微細気泡が含有されるので、絶縁油の電気絶縁性能が低下し、すなわち導電性が向上し、非平衡プラズマによるポリ塩化ビフェニルの分解除去を行うことができる。
【0021】
さらに本発明によれば、所定の気体は純酸素であり、処理すべき液体はポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油である。酸素によって形成された微細気泡は、消滅する際にラジカル(Oラジカルなど)を発生させ、これによって絶縁油中に含有されるポリ塩化ビフェニルを分解除去することができる。
【0022】
さらに本発明によれば、所定の気体はオゾンであり、処理すべき液体は水溶性有害物質を含有する液状感染性廃棄物である。これによって、オゾンによって液状感染性廃棄物を殺菌することができるとともに、微細気泡が消滅する際にオゾンを分解してラジカルを発生させて、このラジカルによって水溶性有害物質を分解除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態の有害物質含有液体処理装置を概略的に示す全体図である。
【図2】気泡発生装置をその軸線に垂直な仮想平面で切断した断面を示す断面図である。
【図3】図2の切断線A−Aで気泡発生装置を切断した断面図である。
【図4】第2処理部の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の有害物質含有液体処理装置を概略的に示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の有害物質含有液体処理装置1を概略的に示す全体図である。有害物質含有液体処理装置1(以下、単に「処理装置1」と称する場合がある)は、液体貯留部である処理液貯留タンク2と、第1処理部3と、第2処理部4と、液体回収部である処理済液回収タンク5とを含む。なおこのような処理装置1は、有害物質を含有する処理すべき液体が外部環境に悪影響を及ぼさない状態で使用される。
【0026】
処理液貯留タンク2は、ステンレス鋼から成り、有害物質を含有する処理すべき液体(以下、単に「処理液」と称する場合がある)を貯留する。本実施形態において、有害物質を含有する処理すべき液体は、ポリ塩化ビフェニル(略称PCB)を含有する絶縁油である。
【0027】
第1処理部3は、処理液貯留タンク2から供給された液体に、加圧下で所定の気体を供給して、直径50μm以下の微細気泡を含有させる。本実施形態において、所定の気体はアルゴンである。第2処理部4は、放電によって非平衡プラズマを発生させて、第1処理部3から供給された微細気泡を含有した液体を処理する。処理済液回収タンク5は、第2処理部4で処理された液体を回収する。処理液貯留タンク2と、第1処理部3と、第2処理部4と、処理済液回収タンク5とは、流路6,7,8,9,10を介して接続される。
【0028】
第1処理部3は、気泡発生装置22と、圧力反応器23と、ポンプ装置24と、気体供給装置25とを含んで構成される。
【0029】
図2は、気泡発生装置22をその軸線L2に垂直な仮想平面で切断した断面を示す断面図である。図3は、図2の切断線A−Aで気泡発生装置22を切断した断面図である。
【0030】
気泡発生装置22は、大略的に円筒状に形成され、耐腐食性の優れた材料、たとえばステンレス、チタンまたはカーボナイトおよびABSなどの合成樹脂から成る。以下では、気泡発生装置22の軸線L2に平行な方向を軸線方向と称する。気泡発生装置22は、筐体26を含んで構成され、筐体26には、第1筐体27と、第2筐体28と、第1蓋体29と、第2蓋体30とが含まれる。
【0031】
第1筐体27は、大略的に円筒状に形成される部材である。第1筐体27の軸線は、気泡発生装置22の軸線L2に一致している。第1筐体27の内周面部31は、部分的にテーパ状に形成されている。具体的には、第1筐体27の内周面部31は、その一端部である第1蓋体装着部31aおよび他端部である処理液導入部31bが、軸線L2まわりにそれぞれ形成され、軸線L2に垂直な仮想平面で切断してみた断面、すなわち軸直角断面が同径の円形状にそれぞれ形成されている。
【0032】
第1蓋体装着部31aは、処理液導入部31bより大径に形成されている。内周面部31の中間部である旋回部31cは、軸線L2まわりに形成され、その軸線方向一端が第1蓋体装着部31aに、軸線方向他端が処理液導入部31bに連なっている。旋回部31cは、軸直角断面が円形状に形成され、軸線方向一端から他端に向かうにつれて先細りになるテーパ状に形成されている。本実施形態では、旋回部31cは、軸線方向一端から他端に向かうにつれて半径方向内方に向かって直線的に傾斜している。ただし、直線的に傾斜することに限定されず、軸線方向一端から他端に向かうにつれて半径方向内方に向かって湾曲していてもよい。
【0033】
第1筐体27は、外周面部32がその軸線方向一端部から他端部に向かって段階的に小さくなっている。第1筐体27の最も大径に形成されている部分を大径部33と称し、最も小径に形成される部分を小径部34と称し、大径部33より小径であって、小径部34より大径に形成される部分を中径部35と称する。第1筐体27では、軸線方向一端部から他端部に向かって、大径部33、中径部35、小径部34の順で形成されている。本実施形態では、大径部33の内周面部31が第1蓋体装着部31aおよび旋回部31cに相当し、中径部35および小径部34の内周面部が処理液導入部31bに相当する。
【0034】
第2筐体28には、循環路形成部36と処理液供給管路部37とが含まれる。図2および図3を参照しつつ説明する。循環路形成部36は、その軸線が軸線L2に一致する円筒状に形成され、その外径が第1筐体27の大径部33の外径と一致している。循環路形成部36の内周部は、軸直角断面で第1筐体27の中径部35の外形と同径の円形状に形成され、第1筐体27の中径部35が嵌り込むように形成されている。循環路形成部36は、軸線方向一端部に中径部35が嵌まり込んだ状態で、第1筐体27の小径部34との間に循環流路38を形成する。
【0035】
処理液供給管路部37は、円筒状に形成され、その軸線L3が軸線L2に垂直な仮想平面上に含まれるように循環路形成部36の外周部に配設されている。図2では、説明の便宜上、処理液供給管路部37を循環路形成部36に対して、周方向にずらしている。処理液供給管路部37は、具体的には、その内径をrとし、循環路形成部36の内径をRとした場合、軸線L3を含み軸線L2に平行な仮想一平面と、軸線L2を中心とする半径R−rの仮想平面P1の該仮想一平面との交線における接平面とのなす角が角度αになるように循環路形成部36の外周部に配設されている。本実施形態では、角度αは、0度である。ただしαは0度に限定されず、0≦α<90の範囲内であればよい。第2筐体28には、処理液供給管路部37の軸線L3に沿って形成され、循環路形成部36の内方に開口する処理液供給流路部39が形成されている。
【0036】
第1蓋体29は、大略的に円筒状に形成され、その軸線が軸線L2に一致している。第1蓋体29は、軸線L2に沿って延びる円筒状部40と、円筒状部40の軸線方向一端部に連なる円錐状部40aとを含む。円筒状部40は、その内部空間がガス溜まり47として機能する。円錐状部40aは、円筒状部40の軸線方向一端部から第2筺体28側に突出し、軸線L2上に頂点を有する。さらに円錐状部40aには、その軸線L2に沿って延び、円錐状部40aの軸線方向両端部で開口する気体供給流路部41が形成されている。気体供給流路部41の円筒状部40側の開口には、第1筐体27内に供給された処理液が気体供給流路部41を通ってガス溜まり47に流入するのを防ぐ逆止弁48が設けられる。
【0037】
第2蓋体30は、大略的に円盤状に形成され、その軸線が軸線L2に一致している。第2蓋体30は、軸線L2に沿って、その軸線方向一端部および他端部で開口する排出流路部42が形成される。排出流路部42は、第2蓋体30の軸線方向一端部で開口し、軸線方向他端部に向かうにつれて先細りになるテーパ状の第1流路部分42aと、第2蓋体30の軸線方向他端部で開口し、軸線一端部に向かうにつれて先細りになるテーパ状の第2流路部分42bとを含む。第1および第2流路部分42a,42bは、互いに連なり、連なる部分が排出流路部42の最狭部分となり、この部分をスロート部42cと称する。
【0038】
第1筐体27の中径部35は、第2筐体28の軸線方向一端部と大径部33とでシールを達成した状態で、第2筐体28の内周部に嵌まり込んでいる。第1蓋体29の円錐状部40aは、その外周部が大径部33の内周部に当接して嵌まり込むように形成されている。第1蓋体29は、その円筒状部40を第1筐体27の軸線方向一端部、すなわち大径部33の軸線方向一端部に当接させてシールを達成した状態で、円錐状部40aが第1蓋体装着部31aに嵌まり込んでいる。さらに第2蓋体30は、その外周部が第2筐体28の内周部に当接して嵌まり込むように形成されている。
【0039】
第2蓋体30は、第2筐体28の軸線方向他端部に、シールを達成した状態で嵌まり込み、その軸線方向一端部が第1筐体27の軸線方向他端部、すなわち小径部34が当接している。このように構成することによって、気泡発生装置22の内方に、第1筐体27、第1蓋体29および第2蓋体30とによって囲まれる旋回空間43が形成される。また小径部34と中径部35と循環路形成部36と第2蓋体30とによって、円環状の循環流路38を形成する循環流路部44が形成される。この循環流路38は、処理液を循環可能に形成されている。
【0040】
第1筐体27の小径部34には、循環流路38と旋回空間43とを連通し、循環流路38を循環する処理液を旋回空間43に導入する複数の処理液導入流路部45が形成されている。導入流路部である各処理液導入流路部45は、第1筐体27の軸線方向他端部に形成され、旋回空間に開口する開口部46が互いに周方向に等間隔に形成されている。処理液導入流路部45は、単数形成されても、複数形成されてもよい。本実施形態では、小径部34に3つの処理液導入流路部45が形成され、互いに処理液導入部31bの周方向に60度づつあけて形成されている。
【0041】
処理液導入流路部45は、循環流路38を循環する処理液を、処理液導入部31bに沿って旋回空間43に導入可能に形成される。具体的には、各処理液導入流路部45は、その下流側の壁面45aが、軸直角断面上で、処理液導入部31bからその接線に平行な方向に延び、その上流側の壁面45bが前記下流側の壁面45aに平行に形成されている。
【0042】
また各処理液導入流路部45は、軸線方向一方に開口し、その底部45cが処理液供給流路部39より軸線方向一方側に形成されている。軸線方向一方とは、第1筐体27の軸線方向一端部から他端部に向かう方向である。処理液供給流路部39の開口部46は、互いに周方向に隣り合う2つの処理液導入流路部45の間の壁面に対向するように配設され、処理液供給流路部39から供給された処理液が処理液導入流路部45に直接導入されることを防止している。ただし処理液導入流路部45を前記開口部46に臨むように構成してもよい。
【0043】
図1を参照して、ポンプ装置24は、吸入ポートから処理液を吸入可能に構成され、排出ポートから処理液を排出可能に構成される。ポンプ装置24の吸入ポートは、処理液貯留タンク2に接続され、ポンプ装置24の排出ポートは、処理液供給管50によって処理液供給流路部39に接続され、吸入ポートから吸入された処理液を処理液供給流路部39に圧送可能に構成されている。ポンプ装置24には、たとえば大東工業製ギヤポンプHSR−8−60型が用いられる。ポンプ装置24から気泡発生装置22に印加される圧力は、たとえば5〜6kg/cm(490〜588kPa)である。
【0044】
処理液供給管50には開閉弁49が介在し、前記処理液供給管50の管路の開閉を可能に構成されている。
【0045】
気体供給装置25は、不活性ガス(本実施形態ではアルゴン)が加圧状態で封入されたガスボンベ25aと気体供給管55とを含んで構成される。ガスボンベ25aのガス噴出口には、気体供給管55の一端部が接続される。気体供給管55の他端部は、第1蓋体29の円筒状部40の軸線方向他端部に接続される。このように、ガスボンベ25aは、気体供給管55、ガス溜まり47および逆止弁48を介して気体供給流路部41に接続され、ガスボンベ25a内の気体(アルゴン)を気体供給流路部41に圧送可能に構成されている。
【0046】
このように構成される第1処理部3は、気泡発生装置22が圧力反応器23に設けられている。圧力反応器23は、いわゆるオートクレーブであり、処理液を封入して大気圧より高い圧力に保持可能な反応室56を有する。前記圧力は、たとえば2〜4kg/cm(196〜392kPa)である。気泡発生装置22は、反応室56に設けられている。
【0047】
このような構成により、各処理液導入流路部45から導入された処理液は、処理液導入部31bに沿って、旋回空間43を軸線L2まわりに旋回し、第1筐体27の軸線方向他端部に向かう外側旋回流が発生する。この外側旋回流は、旋回部31cで、この旋回部31cに沿って旋回しつつ半径方向外方に拡がり、第1筐体27の軸線方向一端部に達する。第1筐体27の軸線方向一端部に達する外側旋回流は、軸線方向一方に向かう内側旋回流に転じる。
【0048】
内側旋回流は、軸線L2まわりに旋回し、第1筐体27の軸線方向他端部から第1蓋体29の円錐状部40aに沿ってその頂点に向かい、その後外側旋回流の半径方向内方を排出流路部42に向かう。内側旋回流の中心の圧力が気体供給管55内の圧力より低下する。このときガスボンベ25aの開閉弁が開放されると、気体供給流路部41から気体、本実施形態ではアルゴンが吸引される。この吸引された気体は、内側旋回流の中心で、軸線L2まわりに旋回し、気体供給流路部41から排出流路部42に向かう気体旋回流を発生させる。このように気体と処理液との気液二相流を発生させることができる。
【0049】
排出流路部42に達した内側旋回流および気体旋回流は、排出流路部42を介して、反応室56内に排出される。このとき各処理液導入流路部45から導入される処理液の流量および速度が、所定の流量および速度に達していると、気体旋回流の速度は、排出流路部42の第1流路部分42aにおいて、亜音速に達する。内側および気体旋回流が排出流路部42に向かっているので、排出流路部42を通過する気体の圧力は、気泡発生装置22の外方、つまり反応室56より高くなる。これによって排出流路部42のスロート部42cにおける気体旋回流の速度が音速になり、第2流路部分42bで音速を超える。
【0050】
気体旋回流がスロート部42cで音速を超える際、気体旋回流が障壁にぶつかり分散される、つまり気体が排出流路部42を気体とともに流れる処理液中に分散される。この分散によって、気体が直径50μm以下のマイクロバブルなどの微細気泡となり、処理液とともに排出流路部42から排出され、反応室56内に微細気泡を放出する。なお、排出流路部42の近傍に超音波発生器が設けられてもよい。排出流路部42から放出される微細気泡に超音波発生器からの超音波を当てることによって、微細気泡をたとえばナノオーダーの直径を有する微細気泡とすることができる。
【0051】
気体供給装置25から供給された気体は、第1蓋体29内のガス溜まり47に供給された後、逆止弁48を介して気体供給流路部41に供給される。したがって、気体供給装置25からの気体の供給量が変動しても、ガス溜まり47がバッファとして機能し、気体を気体供給流路部41に安定して供給することができる。また、第1蓋体29には逆止弁48が設けられるので、気体供給装置25から気体が供給されていない状態であっても、旋回空間43内の処理液の気体供給装置25側への逆流を防ぐことができる。
【0052】
このようにして反応室56内で微細気泡を発生させることができる。また反応室56内に放出される処理液は、ポンプによって圧送されるので、反応室56内の圧力を高くすることができる。また微細気泡を発生させることによっても、反応室56内の圧力を高めることができる。また反応室56内で微細気泡は、キャビテーション現象によって、処理液に溶存する。溶存した微細気泡は、反応室56から放出されると、再度処理液中に現れ、処理液中の異物を浮上分離させる。なお、本実施形態において、絶縁油に含有された微細気泡は、大気圧下において10分程度で消滅する。
【0053】
図1を参照して、第2処理部4は、第1処理部3の処理液の流下方向下流側に設けられる。第2処理部4は、放電によって非平衡プラズマを発生させて、第1処理部3から供給された微細気泡を含有する液体を処理する。第2処理部4は、非平衡プラズマを発生させる非平衡プラズマ発生部60と、第1液体供給部61と、第2液体供給部62とを含んで構成される。
【0054】
ここで非平衡プラズマとは、電離した電子の電子温度が電離したイオンのイオン温度に比べて高い状態で、電子温度とイオン温度とが熱力学的に平衡していない状態のプラズマである。このような非平衡プラズマにおいては、非平衡プラズマの温度が常温に保たれた状態で、高速の電子を得ることができる。このようにして得られた高速の電子をガス中の分子に衝突させて、ラジカル、励起分子、イオンあるいはオゾンなどの反応性に富む化学的活性種を生成する。
【0055】
非平衡プラズマ発生部60は、線状の放電電極63と、円筒状のアース電極64と、電源装置であるパルス電源装置65と、ハウジング66とを含む。放電電極63およびアース電極64は、ハウジング66内に収容される。放電電極63は、上下に延び、導電性を有する材料、たとえば鋼製の線状体から成り、その両端が碍子67a,67bを介してハウジング66に接続される。アース電極64は、円筒状に形成され、導電性を有する材料、たとえばステンレス鋼から成り、放電電極63と同軸に設けられ、放電電極63を外囲して上下に延びる。すなわち、アース電極64は、放電電極63に対向して上下に延びている。またアース電極64の放電電極63に臨む面、すなわちアース電極64の内周面には、粗面化処理が施される。粗面化処理としては、たとえば、紙やすりなどの研磨布紙による処理またはサンドブラスト処理が挙げられる。パルス電源装置65は、その正極が放電電極63の上端部に接続される。
【0056】
ハウジング66の上部には、碍子67aに臨んで空気取入口68が設けられ、ハウジング66の下部には空気排出口69が設けられる。空気排出口69は、気体排出路70を介して排気ファン71に接続される。排気ファン71が動作すると、空気取入口68から空気が取り込まれ、取り込まれた空気は、アース電極64によって取り囲まれる空間、空気排出口69、気体排出路70および排気ファン71を介して外部に排気される。これによって、排気ファン71が動作している間、碍子67aには新鮮な空気がもたらされ、碍子67aの汚損が防がれ、碍子67aの電気絶縁性能の低下を防ぐことができる。なお、気体排出路70には、二酸化マンガンなどの触媒を充填した触媒装置、活性炭吸着装置または非平衡プラズマ発生装置などの後処理装置が設けられてもよい。
【0057】
非平衡プラズマを発生させるには、放電電極63およびアース電極64間にコロナ放電を発生させ、放電電極63およびアース電極64間のガスを電離させる。ここで、放電電極63およびアース電極64の寸法の一例を示すと、放電電極63の太さは2〜6mm程度、好ましくは4mm程度に選ばれる。アース電極64の内径は、50〜1000mm程度、好ましくは180mm程度に選ばれる。このとき放電電極63およびアース電極64間には、直流電圧30k〜200kV、好ましくは100k〜200kV、周波数100〜2000Hz、すなわち周期T=500μs〜10ms、好ましくは周波数1000Hz、すなわち周期T=1msのパルス電圧が印加される。また電圧の立上り時間τは、たとえば20〜300ns、好ましくは100nsであり、この極端に短い立上り時間τの間に質量の小さい電子だけが加速されて高速の電子が得られる。またパルス電圧の周期は立上り時間τに比べて充分に長いので、この期間中に冷却が行われて次のパルス電圧印加時には再び初期状態に復帰し、ガスの温度上昇が抑制され、ガスの温度は常温に保たれる。
【0058】
ここでパルス電圧の極性は、放電電極63を正極とし、アース電極64を負極とする。これは正のストリーマコロナが強い進展傾向を有し、放電電極63およびアース電極64間の空間を橋絡し、全空間にわたって非平衡プラズマを発生させて単位容積あたりの反応効果が大幅に向上するためである。印加される電圧は、放電電極63およびアース電極64間の放電距離に対して決定される。すなわち前記放電距離が大きいときには高い電圧が印加され、前記放電距離が小さいときには低い電圧が印加される。
【0059】
図4は、第2処理部4の一部を拡大して示す断面図である。第1液体供給部61は、アース電極64の上部に設けられ、第1処理部3から流路8を介して供給された液体をアース電極64の内周面に供給する。第1液体供給部61は、環状の底壁部72と、底壁部72の外縁に立設される円筒状の側壁部73とを有する。底壁部72は、アース電極64の上端64aから所定の距離だけ下方の位置に設けられる。底壁部72の内径はアース電極64の外径にほぼ一致する。底壁部72の外径は、ハウジング66の内周面に到達するような大きさである。側壁部73は、その外周面がハウジング66の内周面に接するように設けられる。側壁部73の上端73aは、アース電極64の上端64aよりも上方に配置される。第1液体供給部61には、流路8の先端8aがハウジング66および側壁部73を貫通して設けられる。底壁部72とアース電極64とは水密に設けられ、流路8の先端8aとハウジング66および側壁部73とは水密に設けられる。
【0060】
第1処理部3から流路8を介して第1液体供給部61に供給される微細気泡を含有する液体は、底壁部72とアース電極64と側壁部73とによって形成される空間内に貯留される。貯留された液体の液面がアース電極64の上端64aまで上昇し、さらに第1処理部3から該液体が供給されると、液体はアース電極64の上端64aを越えて、アース電極64の内周面に沿って下方に流下する。アース電極64の内周面は粗面化処理が施されているので、処理すべき液体をアース電極64の内周面全面にわたって一様に流下させることができる。なお、第1液体供給部61に供給される液体の供給量は、流路8に設けられる各種開閉弁の開閉を調整して調節される。調整によって第1処理部3から第1液体供給部61に供給されない余剰の液体は、流路8から分岐した流路9を介して処理液貯留タンク2に戻されてもよい。
【0061】
図1を参照して、第2液体供給部62は、アース電極64の下方に設けられ、アース電極64の内周面上を流下して非平衡プラズマによって処理された液体を受容し、処理済液回収タンク5に処理された液体を供給する。第2液体供給部62は、処理された液体を受容する液体受容部74と、液体受容部74に受容された液体を処理済液回収タンク5に供給する液体供給管75とを有する。
【0062】
アース電極64の内周面上を流下して非平衡プラズマによって処理された液体は、液体受容部74に受容される。液体受容部74に受容された処理済の液体は、液体供給管75を通って処理済液回収タンク5に供給されて、回収される。処理済液回収タンク5に貯留された液体は、流路10を介して流路7に供給して、処理装置1内を循環させてもよい。
【0063】
本発明によれば、処理液貯留タンク2に貯留された有害物質を含有する処理すべき液体は、第1処理部3に供給される。第1処理部3では、処理液貯留タンク2から供給された液体に、加圧下で所定のガスを供給して、微細気泡が含有される。これによって、微細気泡を含有した液体の導電性が、処理前と比べて向上する。
【0064】
第1処理部3で微細気泡を含有した液体は、第2処理部4に供給される。第2処理部4では、内部の空気を放電によって電子とイオンとに電離させ、電子の電子温度がイオンのイオン温度に比べて高い状態で、電子温度とイオン温度とが熱力学的に平衡していない状態のプラズマである非平衡プラズマを発生させる。この第2処理部4では、非平衡プラズマの温度が常温に保たれた状態で、高速の電子を得ることができる。この高速の電子は空気中の各種分子に衝突し、ラジカル、励起分子およびイオンなどの反応性に富む化学的活性種を生成する。液体に含有される有害成分は、高速の電子の衝突とともに、化学的活性種による化学反応によって分解除去される。また液体に含有される微細気泡は負の電荷を帯びているとともに、微細気泡が消滅する際に、泡内部の温度が高温となり高圧となる。微細気泡が負の電荷を帯びていることによって、有害成分を引き寄せ、微細気泡が消滅する際に生じる高温高圧状態によって、泡を形成する所定の気体が分解され、強力なラジカルを発生し、このラジカルによって有害成分が除去される。たとえ、液体中の有害物質が第2処理部4の非平衡プラズマ発生部60において液体から放出されることがあったとしても、有害物質は非平衡プラズマ雰囲気に曝露されるので、有害物質は非平衡プラズマによって分解除去され、安全に処理することができる。このようにして、第1処理部3から供給された微細気泡を含有した液体が処理される。
【0065】
第2処理部4で有害物質が分解除去された液体は、処理済液回収タンク5に回収される。
【0066】
このように、第1処理部3で有害物質を含有する液体に微細気泡が含有されるので、液体の導電性が向上し、この微細気泡を含有した液体を第2処理部4に供給しても、第2処理部4において安定して放電を行うことができ、非平衡プラズマを安定して発生させることができる。非平衡プラズマによる有害物質の分解除去と微細気泡の消滅に際して生じる有害物質の分解除去との相乗効果によって、少なくとも第1処理部3と第2処理部4とを有する設備で、液体中の有害物質を効率よく除去することができる。
【0067】
また本発明によれば、第2処理部4は、上下に延びる線状の放電電極63と、アース電極64と、パルス電源装置65と、第1液体供給部61と、第2液体供給部62とを含む。アース電極64は、放電電極63に対向して上下に延びている。パルス電源装置65は、放電電極63に、非平衡プラズマを発生させるための電力を供給する。第1液体供給部61は、アース電極64の上部に設けられ、第1処理部3から供給された液体をアース電極64の放電電極63に臨む面に供給する。第2液体供給部62は、アース電極64の下方に設けられ、アース電極64の放電電極63に臨む面上を流下して非平衡プラズマ雰囲気中で処理された液体を受容し、処理済液回収タンク5に該処理された液体を供給する。
【0068】
微細気泡を含有した液体は、第1液体供給部61によって、アース電極64の放電電極63に臨む面上に供給され、アース電極64の放電電極63に臨む面上を流下し、第2液体供給部62に受容される。アース電極64の放電電極63に臨む面は微細気泡を含有した液体で濡れている。液体中に微細気泡が含有されているので、液体の導電性が向上しており、アース電極64の放電電極63に臨む面上に液体が存在していても、安定して放電を行うことができる。したがって、微細気泡を含有した有害物質を含有する液体は、放電電極63およびアース電極64間に形成される非平衡プラズマ雰囲気中を通過し、液体中の有害物質を除去することができる。
【0069】
さらに本発明によれば、アース電極64の放電電極63に臨む面に対して、粗面化処理が施される。これによって、処理すべき液体をアース電極64の放電電極63に臨む面全面にわたって一様に流下させることができ、液体中の有害物質を効率よく除去することができる。
【0070】
さらに本発明によれば、所定の気体は不活性ガスであり、処理すべき液体はポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油である。所定の気体は不活性ガスであるので、絶縁油の性状に悪影響を与えない。また絶縁油中に不活性ガスによって形成された微細気泡が含有されるので、絶縁油の電気絶縁性能が低下し、すなわち導電性が向上し、非平衡プラズマによるポリ塩化ビフェニルの分解除去を行うことができる。
【0071】
本実施形態において、不活性ガスがアルゴンである場合を述べたが、これに限定されず、ヘリウムまたはネオンなどの他の不活性ガスであってもよい。
【0072】
本実施形態において、所定の気体は不活性ガスである場合を述べたが、これに限定されず、活性ガス、たとえば純酸素であってもよい。酸素によって形成された微細気泡は、消滅する際にラジカル(Oラジカルなど)を発生させ、これによって絶縁油中に含有されるポリ塩化ビフェニルを分解除去することができる。またこれに代えて、所定の気体は二酸化炭素であってもよい。二酸化炭素を微細気泡の形成に用いることによって、ラジカルが発生しやすい。
【0073】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態の有害物質含有液体処理装置1Aを概略的に示す全体図である。本実施形態において、上述の実施形態の構成に対応する部分には同一の参照符を付し、その説明を省略する場合がある。
【0074】
有害物質含有液体処理装置1A(以下、単に「処理装置1A」と称する場合がある)は、上述の実施形態の処理装置1の構成と類似し、注目すべきは第1処理部3Aの構成が処理装置1の第1処理部3と異なり、有害物質を含有する処理すべき液体が異なる点である。処理装置1Aは、液体貯留部である処理液貯留タンク2と、第1処理部3Aと、第2処理部4と、液体回収部である処理済液回収タンク5とを含む。本実施形態において、処理液貯留タンク2に貯留される、有害物質を含有する処理すべき液体は、人工透析、手術または検査などで発生する、し尿、体液、血液などの水溶性有害物質を含有する液状感染性廃棄物である。
【0075】
第1処理部3Aは、処理液貯留タンク2から供給された液体に、加圧下で所定の気体を供給して、直径50μm以下の微細気泡を含有させる。本実施形態において、所定の気体はオゾンである。第2処理部4は、放電によって非平衡プラズマを発生させて、第1処理部3Aから供給された微細気泡を含有した液体を処理する。処理液貯留タンク2と、第1処理部3Aと、第2処理部4と、処理済液回収タンク5とは、流路6,7,8,9,10を介して接続される。
【0076】
第1処理部3Aは、気泡発生装置22と、圧力反応器23と、ポンプ装置24Aと、気体供給装置25Aとを含んで構成される。ポンプ装置24Aは、吸入ポートから処理液を吸入可能に構成され、排出ポートから処理液を排出可能に構成される。ポンプ装置24Aの吸入ポートは、処理液貯留タンク2に接続され、ポンプ装置24Aの排出ポートは、処理液供給管50によって処理液供給流路部39に接続され、吸入ポートから吸入された処理液を処理液供給流路部39に圧送可能に構成されている。ポンプ装置24Aには、たとえばEBARA製バレルドモータポンプMMLF/AAVF型が用いられる。ポンプ装置24Aから気泡発生装置22に印加される圧力は、たとえば5〜6kg/cm(490〜588kPa)である。
【0077】
気体供給装置25Aは、コンプレッサ51と、酸素濃縮器52と、オゾン発生器53と、チラー54と、気体供給管55とを含んで構成される。コンプレッサ51は、吸入ポートから気体(空気)を吸入可能に構成され、排出ポートから圧縮された気体を排出可能に構成される。
【0078】
コンプレッサ51は、その排出ポートが酸素濃縮器52の導入ポートに接続される。酸素濃縮器52は、コンプレッサ51から供給された圧縮空気の酸素濃度を90%以上に濃縮する。酸素濃縮器52は、その排出ポートがオゾン発生器53の導入ポートに接続される。オゾン発生器53は、沿面放電方式で酸素濃縮器52によって酸素が濃縮された空気からオゾンを発生させる。チラー54は、オゾン発生器53のオゾン放電部を冷却する。オゾン発生器53の排出ポートには、気体供給管55が接続される。このように、コンプレッサ51は、酸素濃縮器52、オゾン発生器53および気体供給管55を介して気体供給流路部41に接続され、吸入ポートから吸入した気体を気体供給流路部41に圧送可能に構成されている。
【0079】
このように構成することによって、第1処理部3Aにおいて、オゾンで形成された微細気泡を含有する処理すべき液体を生成することができる。
【0080】
生成された微細気泡を含有する処理すべき液体は、上述の実施形態の処理装置1と同様に、第1処理部3Aから流路8を介して第2処理部4に供給され、非平衡プラズマによる処理がなされた後、処理済液回収タンク5に回収される。
【0081】
本発明によれば、所定の気体はオゾンであり、処理すべき液体は水溶性有害物質を含有する液状感染性廃棄物である。これによって、オゾンによって液状感染性廃棄物を殺菌することができるとともに、微細気泡が消滅する際にオゾンを分解してラジカルを発生させて、このラジカルによって水溶性有害物質を分解除去することができる。
【0082】
さらに、処理すべき液体には、第1処理部3Aによって直径50μm以下の微細気泡が含有されるので、液体の導電性が向上し、この微細気泡を含有した液体を第2処理部4に供給しても、第2処理部4において安定して放電を行うことができ、非平衡プラズマを安定して発生させることができる。非平衡プラズマによる有害物質の分解除去と微細気泡の消滅に際して生じる有害物質の分解除去との相乗効果によって、少なくとも第1処理部3Aと第2処理部4とを有する設備で、液体中の有害物質を効率よく除去することができる。
【0083】
上述の実施形態において、アース電極64は円筒状の電極であるが、これに限定されず、平板状または波板状など、他の形状を有する電極であってもよい。
【0084】
また本発明の第2の実施形態において、気泡発生装置22には気体供給装置25Aで生成されたオゾンが供給されているが、これに限定されず、気泡発生装置22には空気などの他の気体が供給されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,1A 有害物質含有液体処理装置
2 処理液貯留タンク
3,3A 第1処理部
4 第2処理部
5 処理済液回収タンク
22 気泡発生装置
23 圧力反応器
24,24A ポンプ装置
25,25A 気体供給装置
60 非平衡プラズマ発生部
61 第1液体供給部
62 第2液体供給部
63 放電電極
64 アース電極
65 パルス電源装置
66 ハウジング
67a,67b 碍子
68 空気取込口
69 空気排出口
70 気体排出路
71 排気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を含有する処理すべき液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部から供給された液体に、加圧下で所定の気体を供給して、微細気泡を含有させる第1処理部と、
放電によって非平衡プラズマを発生させて、前記第1処理部から供給された微細気泡を含有した液体を処理する第2処理部と、
前記第2処理部で処理された液体を回収する液体回収部とを含むことを特徴とする有害物質含有液体処理装置。
【請求項2】
前記第2処理部は、
上下に延びる線状の放電電極と、
該放電電極に対向して上下に延びるアース電極と、
該放電電極に、非平衡プラズマを発生させるための電力を供給する電源装置と、
該アース電極の上部に設けられ、前記第1処理部から供給された液体を該アース電極の該放電電極に臨む面に供給する第1液体供給部と、
該アース電極の下方に設けられ、該アース電極の該放電電極に臨む面上を流下して非平衡プラズマによって処理された液体を受容し、前記液体回収部に該処理された液体を供給する第2液体供給部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の有害物質含有液体処理装置。
【請求項3】
前記アース電極の前記放電電極に臨む面に対して、粗面化処理が施されることを特徴とする請求項1または2記載の有害物質含有液体処理装置。
【請求項4】
前記所定の気体は不活性ガスであり、前記処理すべき液体はポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の有害物質含有液体処理装置。
【請求項5】
前記所定の気体は純酸素であり、前記処理すべき液体はポリ塩化ビフェニルを含有する絶縁油であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の有害物質含有液体処理装置。
【請求項6】
前記所定の気体はオゾンであり、前記処理すべき液体は水溶性有害物質を含有する液状感染性廃棄物であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の有害物質含有液体処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−121900(P2011−121900A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281009(P2009−281009)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(392008194)オリエンタル機電株式会社 (8)
【Fターム(参考)】