説明

有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法及びマイクロカプセルの製造方法

【課題】有害生物防除成分を含有する分散液を連続的に製造する方法を提供する。
【解決手段】水非混和性の有機溶媒に固体の有害生物防除成分を懸濁させた懸濁液と、アルコールを含む水溶液又は水からなる分散媒とを、一次分散槽内に連続的に供給しながら、前記懸濁液と前記分散媒とを一次分散槽内で撹拌することにより、前記懸濁液を前記分散媒中に分散させる工程と、一次分散槽から連続的に排出される一次分散液を、二次分散槽に連続的に供給しながら、分散状態が定常になるまで二次分散槽内で撹拌する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法及びマイクロカプセルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有害生物防除成分を含有する分散液は、例えば、有害生物防除成分の徐放製剤として有用なマイクロカプセルの製造中間体として用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
かかる分散液の製造方法としては、水非混和性の溶媒に有害生物防除成分を懸濁させ、得られた懸濁液を脱イオン水と混合し、回分式分散機で分散させる方法が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。しかしながら、かかる分散液を連続的に製造する方法はこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-99805号公報
【特許文献2】特開2007-186497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の方法は回分式分散機を用いているため、一度に処理できる量に限界があった。かかる状況下、一度に処理できる量に限界のない、有害生物防除成分を含有する分散液の連続的な製造方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、水非混和性の有機溶媒に固体の有害生物防除成分を懸濁させた懸濁液と、アルコールを含む水溶液又は水からなる分散媒とを、一次分散槽内に連続的に供給しながら、前記懸濁液と前記分散媒とを一次分散槽内で撹拌することにより、前記懸濁液を前記分散媒中に分散させる工程と、一次分散槽から連続的に排出される一次分散液を、二次分散槽に連続的に供給しながら、分散状態が定常になるまで二次分散槽内で撹拌する工程とを含むことを特徴とする、有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法が提供される。
【0007】
二次分散槽から連続的に排出される二次分散液を、三次分散槽に連続的に供給しながら、分散状態が定常になるまで三次分散槽内で撹拌する工程さらに含んでもよい。
【0008】
撹拌は、レイノルズ数500〜3000の範囲で行うのが好ましい。
【0009】
前記懸濁液の粘度は100〜10000mPa・sの範囲であるが好ましい。
【0010】
前記分散媒の供給量は、前記懸濁液の供給量に対して0.8〜2倍の範囲であるのが好ましい。
【0011】
前記懸濁液は、熱重合可能な官能基を有するモノマーを含有していてもよい。
【0012】
そしてまた、本発明によれば、前記記載の有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法により、熱重合可能な官能基を有するモノマーを含有した懸濁液が、前記分散媒中に分散した有害生物防除成分を含有する分散液を得、当該分散液を加熱し、当該分散液中に含有される前記モノマーを重合させて、水中に分散させた前記懸濁液の表面に被膜を形成することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、有害生物防除成分を含有する分散液を連続的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】撹拌翼の回転数ごとの、液滴の循環回数と液滴径との関係を示すグラフである。
【図2】撹拌翼の回転数と液滴径との関係を示すグラフである。
【図3】レイノルズ数Reと吐出流量係数Nqとの関係を示す図である。
【図4】分散槽が1つの場合に得られる液滴の粒度分布の一例と、2つ以上の分散槽を直列に接続した場合に得られる液滴の粒度分布を一例とを示す図である。
【図5】5つの分散槽を直列に接続した場合の液滴循環回数と液滴径との関係を示す図である。
【図6】本発明に係る製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に至る経緯を説明する。
【0016】
下記表1に示す容量の異なる2つの分散槽を用いて、分散槽に供給する懸濁液及び水(分散媒)の供給量を変化させて液滴の循環回数を変化させると共に、撹拌翼の回転数を変化させて、液滴の循環回数及び撹拌翼の回転数と、液滴径との関係を調べた。結果を図1及び図2に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
なお、液滴の循環回数Pは下記式(1)から算出される。
P=Q/F ・・・・・・(1)
(式中、Q:吐出流量(m/s),F:供給流量(m/s))
Q=Nq×N×D/1000
(式中、Nq:吐出流量係数,N:回転数(S−1),D:撹拌翼径(m))
【0019】
また、吐出流量係数Nqは、分散液の流れの状態すなわちレイノルズ数Reによって変化するので、図3に一例として示す関係から適宜定めればよい。
【0020】
図1は、縦軸を液滴径とし、横軸を液滴の循環回数として、撹拌翼の回転数ごとの液滴の循環回数と液滴径との関係を示すグラフである。この図から、循環回数が増えるにしたがって液滴径が小さくなり、撹拌翼の回転数が同じであれば分散槽の容量に関係なく同じ線上に載ることがわかる。また、同じ循環回数であれば、撹拌翼の回転数の速いほうが液滴径が小さくなることがわかる。
【0021】
図2は、縦軸を液滴径とし、横軸を撹拌翼の回転数として、液滴の循環回数50回のときの撹拌翼の回転数に対する液滴径の変化を示したグラフである。この図から理解されるように、撹拌翼の回転数を速くするほど液滴径が小さくなっている。
【0022】
以上の基礎実験結果から、分散液中の液滴を所定径に制御するには、撹拌翼の回転数を分散液の流れが層流域を維持できる範囲とするとともに、液滴の循環回数が所定回数となるように懸濁液及び水の分散槽への供給量を定めればよいことがわかった。
【0023】
ここで、分散液の製造量を増やすには、懸濁液及び水の供給量を多くする必要があり、所定時間内に所定の循環回数を得るためには撹拌翼の回転数を上げる必要がある。しかし、撹拌翼の回転数を上げると、分散液の流れを層流域に維持できなくなる。
【0024】
そこで、本発明の製造方法では、撹拌翼の回転数を分散液の流れが層流域を維持できる範囲とした上で、2つ以上の分散槽を直列に接続することによって、液滴の循環回数が所定回数となるようにし、所定の液滴粒径を維持しながら分散液の製造量を増やすことに成功した。図4に、1つの分散槽で液滴を所定回数循環させた場合の粒径分布(同図(a))と、5つの分散槽を直列に接続し1つの分散槽当たりの液滴の循環回数を1/5とした場合の粒径分布(同図(b))とを示す。これらの図から明らかなように、1つの分散槽で液滴を所定回数循環させた場合には粒径の大きな液滴が生じる。また、1つの分散槽で液滴を所定回数循環させた場合よりも、5つの分散槽を直列に接続した方が液滴の粒径は揃ったものとなる。
【0025】
複数個の分散槽を直列に接続するに際し、分散液製造量、撹拌翼の回転数とから1つの分散槽における液滴の循環回数を算出する。一方、所定の液滴粒径を得るための液滴の全循環回数を前記理論式から算出する。そして、理論式から算出された全循環回数を前記算出した1つの分散槽あたりの循環回数で割って必要な分散槽の個数を求め、求めた個数の分散槽を直列に接続する。
【0026】
例えば、1つの分散槽において、懸濁液及び水の供給量が75kg/h、液滴の循環回数が60回の場合には、液滴径20μm程度の分散液が得られるとすると、懸濁液と水の供給量を単に5倍の375kg/hにすると、液滴の循環回数は12回となり、液滴径は20μmよりも遙かに大きなものとなる。そこで、得られる分散液中の液滴径を20μm程度に維持しながら、製造量を5倍の375kg/hにするには、前記分散槽を5つ(全循環回数:60回/1つの分散槽あたりの循環回数:12回)直列に接続する。
【0027】
図5に、分散槽を5つ直列に接続した場合において、懸濁液と水の供給量を375kg/hとし、液滴の循環回数を12回としたときの液滴の積算循環回数と液滴径との関係を示す。この図から理解されるように、1つ目の分散槽では液滴径は48μm程度となり、次の分散槽では液滴は37μm程度となり、さらに次の分散槽では液滴は30μm程度となり、結果的に5つ目の分散槽から排出される分散液の液滴は60回循環されて液滴径は20μm程度となる。
【0028】
本発明で使用する有害生物防除成分は、好ましくは融点が50℃以上の固体である。具体例には、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(以下、「クロチアニジン」と記すことがある)、メトキサジアゾン{5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン}、ジニコナゾール{(E)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オール}、プロシミドン{N−(3,5−ジクロロフェニル)−1,2−ジメチルシクロプロパン−1,2−ジカルボキシイミド}、オキソリン酸{5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸}、ブロモブチド{2−ブロモ−N−(α,α−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルブタンアミド}、フルミクロラック−ペンチル{ペンチル 2−クロロ−4−フルオロ−5−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド)フェノキシアセテート}、ウニコナゾール{(E)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オール}、テトラメトリン{3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル クリサンテマート}、レスメトリン{5−ベンジル−3−フリルメチル クリサンテマート}、ジオキサベンゾホス{2−メトキシ−4H−ベンゾ−1,3,2−ジオキサホスホリン−2−スルフィド}、キシリルカルブ{3,4−キシリル メチルカーバメート}、トルクロホスメチル{O−(2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル) O,O−ジメチルホスホロチオエート}、ジメトエート{O,O−ジメチル S−メチルカルバモイルメチル ホスホロジチオエート}、ジエトフェンカルブ{イソプロピル 3,4−ジエトキシカルバニラート}等が挙げられる。
【0029】
本発明で使用する水非混和性の有機溶媒は、有害生物防除成分の種類に応じて該有害生物防除成分をあまり溶解せず分散させることのできるものが適宜選択される。例えば、トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素類、フェニルキシリルエタン等の芳香族炭化水素類、ヘキサノール、オクタノール等のアルコール類、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸2−エチルヘキシル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル等のエステル類、2−エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、マシン油等の鉱物油、綿実油等の植物油などおよびそれらの混合物が挙げられる。有害生物防除成分の水非混和性の有機溶媒への溶解度は5重量%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明で使用する分散機としては特に限定はなく、従来公知物のものが使用できるが、撹拌型分散機が好適である。市販品としては、例えば、「T.K.ホモミックラインフロー」(プライミクス社製)などが好適に使用できる。
【0031】
図6に、本発明の製造方法の一般的な工程例を示す。まず、油相としての懸濁液を作製する。具体的には、有害生物防除成分を水非混和性の有機溶媒中で微粉砕して懸濁液を得るか、または予め微粉砕された有害生物防除成分を水非混和性の有機溶媒中に分散して懸濁液を得る。有害生物防除成分を水非混和性の有機溶媒中で微粉砕して懸濁液を得る際には、アトライター(三井三池化工機製)、ダイノミル(シンマルエンタープライゼズ製)、コロイドミル(特殊機化工業製)、パールミル(芦沢鉄工製)等の湿式粉砕機が用いられる。また、予め微粉砕された有害生物防除成分を水非混和性の有機溶媒中に分散して懸濁液を得る際には、アトマイザー(不二パウダル製)、ジェットオーマイザー(セイシン企業製)等の乾式粉砕機が用いられる。作製した懸濁液の粘度としては、通常、100〜10000mPa・sの範囲が好ましい。
【0032】
上述のようにして懸濁液を得る際に、助剤として、脂肪酸石鹸、エーテルカルボン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物の塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、硫酸化油、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールのホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化油脂、ポリオキシエチレン化ロウ、多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤、無水ケイ酸、有機変性モンモリロナイト類等の増粘剤などを添加してもよい。
【0033】
一方、水相としての、アルコールを含む水溶液又は水からなる分散媒には、予め分散剤を添加しておくのが好ましい。分散剤としては、ゼラチン、アラビアガム、カゼイン、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子、脂肪酸石鹸、エーテルカルボン酸、エーテルカルボン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物の塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、硫酸化油、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、ポリアミンまたはアミノアルコール脂肪酸誘導体のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩、水酸基を有する四級アンモニウム塩、エーテル結合を有する四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールのホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化油脂、多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0034】
なお、最終的に液滴の表面に被膜を形成させてマイクロカプセル化する場合には、懸濁液中に、予め多価イソシアナート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアナート)、多価カルボン酸クロリド(例えば、セバシン酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、アゼライン酸ジクロリド、テレフタル酸ジクロリド、トリメシン酸ジクロリド)、多価スルホニルクロリド(例えば、ベンゼンスルホニルジクロリド)等の熱重合可能な官能基を有するモノマーを添加し、前記懸濁液の液滴を分散させる水中には、必要により重合開始剤と、必要により多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール)、多価アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジン)等の水溶性の被膜形成原料を添加しておく。モノマーの添加量を調整することにより、得られるマイクロカプセルの膜厚を調節することができる。
【0035】
次に、懸濁液と、アルコールを含む水溶液又は水からなる分散媒とを、2つ以上の分散槽(図6では5つの分散槽)を接続した分散手段に連続的に供給する。懸濁液と分散媒との供給量比に特に限定はないが、懸濁液の供給量に対して分散媒の供給量が0.8〜2倍の範囲であるのが好ましい。懸濁液と分散媒の供給量比をこの範囲に調整することにより、粒径の揃った液滴が形成されるようになる。
【0036】
次いで、前述のように、2つ以上の分散槽を接続した分散手段で、懸濁液を分散媒中に分散させることにより、粒径の揃った液滴が分散した分散液が連続的に得られる。
【0037】
このようにして製造された、有害生物防除成分を含有した液滴が分散した分散液は、そのまま農薬として使用することもできるが、通常は、液滴の表面に被膜を形成させてマイクロカプセル化される。マイクロカプセル化する場合は、前述のように、懸濁液中に熱重合可能な官能基を有するモノマーが添加され、水中に必要により重合開始剤が添加されており、分散液を例えば40〜80℃に加温し、0.5〜48時間程度保持することにより重合反応が進み、液滴の表面に被膜が形成される。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0039】
実施例1
クロチアニジン150重量部と、O−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザーC−101、伊藤製油社製、含量95.5%)414重量部とを混合した。そして、得られた混合物を高速せん断翼が設置された反応槽で撹拌し、混合物に含有されるクロチアニジンを、コロイドミル PUC−160型(日本ボールバルブ社製)で粉砕した。粉砕物中のクロチアニジン粒子の体積中位径は、15μmであった。
【0040】
ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製、ベッセルサイズ16.5L、平均粒子径0.5mmの球状ガラス20.2kgを充填、撹拌羽根の回転速度:周速12m/sec)に、前記粉砕物を220L/hrの速度で加え、クロチアニジン粒子をさらに粉砕した(以下、「粉砕物A」と記す)。粉砕物A中のクロチアニジン粒子の体積中位径は2.3μmであった。その後、配管内に残ったスラリーを50重量部のO−アセチルリシノレイン酸メチルで洗浄することにより、回収した。
【0041】
614重量部の粉砕物Aに、温度20℃で、ポリイソシアネート(スミジュール L−75、住化バイエルウレタン社製)132重量部を加えた。得られた混合物を20℃で1時間撹拌し混合物Bを得た。
【0042】
水(脱イオン水)2166重量部に、エチレングリコール(日本触媒社製)229重量部及びアラビアガム(アラビコールSS、三栄薬品貿易社製)232重量部を加え、水相を調製した(得られた混合物を「混合物C」と記す)。そして、混合物Bと混合物Cとをそれぞれ温度25℃に温調した。その後、混合物Bを105L/hrの速度で、混合物Cを115L/hrの速度で供給し、配管中で混合した(得られた混合物を「混合物D」と記す)。
T.Kホモミックラインフロー LF-100型(PRIMIX社製;回転数;8000rpm)を3機直列に接続した分散手段に混合物Dを通液、撹拌し、水中に液滴を分散させた。混合物Cは、混合物Bを使用し終わるまで、上記速度で全体の一部を使用した。得られた分散液中の液滴の体積中位径は21μmであった。
分散液を60℃で24時間撹拌して、クロチアニジンのマイクロカプセルの水性懸濁組成物を得た。得られたマイクロカプセルは体積中位径が23μmであった。粒度分布の標準偏差σは0.24であった。
【0043】
参考例1
クロチアニジン10.6重量部とO−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザーC−101、伊藤製油社製、含量95.5%)32.5重量部とを混合した。そして、得られた混合物を高速せん断翼が設置された反応槽で撹拌し、混合物に含有されるクロチアニジンをコロイドミルPUC−60型(日本ボールバルブ社製)で粉砕した。粉砕物中のクロチアニジン粒子の体積中位径は、0.04mmであった。
ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製、ベッセルサイズ5.0L、平均粒子径0.5mmの球状ガラス6.12kgを充填、撹拌羽根の回転速度:周速12m/sec)に、前記粉砕物を75L/hrの速度で加え、クロチアニジン粒子をさらに粉砕した(以下、「粉砕物E」と記す)。粉砕物E中のクロチアニジン粒子の体積中位径は2.5μmであった。
43.0重量部の粉砕物Eに、温度20℃で、ポリイソシアネート(スミジュール L−75、住化バイエルウレタン社製)9.3重量部を加えた。得られた混合物を20℃で1時間撹拌し混合物Fを得た。
水(脱イオン水)38.8重量部にエチレングリコール4.26重量部及びアラビアガム(アラビコールSS、三栄薬品貿易社製)4.20重量部を加え、水相を調製した(得られた混合物を「混合物G」と記す)。混合物Fと混合物Gをそれぞれ温度25℃に温調した。その後、混合物Fを35.6L/hrの速度で、混合物Gを39.3L/hrの速度で供給し、配管中で混合した(得られた混合物を「混合物H」と記す)。
混合物Hを、T.Kホモミックラインフロー LF−100型(PRIMIX社製;回転数;7200rpm)に通液、撹拌し、水中に液滴を分散させた。得られた分散液中の液滴の体積中位径は21μmであった。
分散液を60℃で24時間撹拌して、クロチアニジンのマイクロカプセルの水性懸濁組成物を得た。得られたマイクロカプセルは体積中位径が22μmであった。粒度分布の標準偏差σは0.37であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
発明の製造方法によれば、有害生物防除成分を含有する分散液を連続的に製造することができ有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水非混和性の有機溶媒に固体の有害生物防除成分を懸濁させた懸濁液と、アルコールを含む水溶液又は水からなる分散媒とを、一次分散槽内に連続的に供給しながら、前記懸濁液と前記分散媒とを一次分散槽内で撹拌することにより、前記懸濁液を前記分散媒中に分散させる工程と、一次分散槽から連続的に排出される一次分散液を、二次分散槽に連続的に供給しながら、分散状態が定常になるまで二次分散槽内で撹拌する工程とを含むことを特徴とする、有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法。
【請求項2】
二次分散槽から連続的に排出される二次分散液を、三次分散槽に連続的に供給しながら、分散状態が定常になるまで三次分散槽内で撹拌する工程さらに含む請求項1記載の有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法。
【請求項3】
撹拌が、レイノルズ数500〜3000の範囲で行われる請求項1又は2記載の有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法。
【請求項4】
前記懸濁液の粘度が100〜10000mPa・sの範囲である請求項1〜3のいずれか記載の有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法。
【請求項5】
前記分散媒の供給量が、前記懸濁液の供給量に対して0.8〜2倍の範囲である請求項1〜4のいずれか記載の有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法。
【請求項6】
前記懸濁液が、熱重合可能な官能基を有するモノマーを含有する請求項1〜5のいずれか記載の有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の有害生物防除成分を含有する分散液の製造方法により、有害生物防除成分を含有する分散液を得、当該分散液を加熱し、当該分散液中に含有される前記モノマーを重合させて、水中に分散させた前記懸濁液の表面に被膜を形成することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116832(P2012−116832A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210337(P2011−210337)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】