説明

有害生物防除組成物の散布方法及び装置

【課題】主液と硬化液をスプレーガンで噴射するに、ノズル内で混じらないようにしてノズルの詰まりをなくすとともに、各液をモータで駆動するポンプで加圧することで便利さを確保する。
【解決手段】主液と硬化液とからなる二液タイプの防虫液をスプレーガン5から噴出させる有害生物防除組成物の散布方法において、主液と硬化液をそれぞれ別々にモータ3、4で駆動されるポンプ1、2で加圧してホースリール6、7を通してスプレーガンに導く他、スプレーガンの先端にノズルチップ26、27を有する二つの銃身で構成して主液と硬化液をそれぞれの銃身に導く一方、各ノズルチップの向きをノズルチップから噴出される主液と硬化液がノズルチップの前方100〜200mmで交叉するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主液と硬化液とからなる二液タイプの有害生物防除組成物の散布方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋の床下廻りの土壌は非常に湿潤な状態であり、白蟻や木材腐朽菌等(有害生物)の繁殖には好適な環境である。したがって、何らかの対策を講じなければ、これらの害によって家屋が倒壊する虞もある。このため、土壌の中に有害生物防除組成物(以下、これを防虫液という)を浸透せしめて白蟻の侵入を阻止するバリア層を形成せしめたり、また、バリア層に防湿効果のある樹脂を用い、床下空間の湿度を低下せしめ腐朽菌等の生育を抑制する等の措置がとられることがある。この防虫液には、水と反応して硬化する親水性ウレタン樹脂を用いることが多く、この場合、主液となる親水性ウレタン樹脂と硬化液である水からなる二液タイプや或いは主液となるアクリル酸エステル共重合体水性エマルジョンと硬化液となる親水性ウレタン樹脂からなる二液タイプがある。二液タイプの防虫液はそれぞれ別々に噴射して混合して硬化させるが、これらに共通していることは、速硬性ということである。
【0003】
このため、噴射器(スプレーガン)の中で混合すると、その中で硬化してしまい、噴射することができない。そこで、本出願人は、下記特許文献1に示すように、スプレーガンの中に主液と硬化液とが通る通路を二つ独立に構成し、噴出させた後に二液が混合するようにしている。具体的には、主液の周囲を硬化液が囲包する二芯状態で噴出させ、さらに、この硬化液に分岐させた通路から噴出させた硬化液を衝突させて両液を攪拌するようにしている。しかし、この構成によると、衝突が噴出口(噴射ノズル)に近い位置で起こり、硬化した防虫液が噴射ノズルに降り掛かって内部や出口を詰まらせたりしていた。また、噴出構造や操作性についても、ある種の複雑さや煩雑さがあった。
【特許文献1】特開昭62−152557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、主液と硬化液を噴射ノズルから別々に噴出させるとともに、その混合を噴射ノズルの先端から十分に離れた位置でさせることによって噴射ノズルの詰まりを防いだものであり、同時に、主液や硬化液の加圧をモータで駆動されるポンプによることによって使い易さと性能アップを果たしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、主液と硬化液とからなる二液タイプの防虫液をスプレーガンから噴出させる有害生物防除組成物の散布方法において、主液と硬化液をそれぞれ別々にモータで駆動されるポンプで加圧してホースリールを通してスプレーガンに導く他、スプレーガンを先端にノズルチップを有する二つの銃身で構成して主液と硬化液をそれぞれの銃身に導く一方、各ノズルチップの向きをノズルチップから噴出される主液と硬化液がノズルチップの前方100〜200mmで交叉するようにしたことを特徴とする有害生物防除組成物の散布方法を提供する。
【0006】
また、本発明は、請求項2に記載した、主液と硬化液とからなる二液タイプの防虫液をスプレーガンから噴出させる有害生物防除組成物の散布装置において、主液と硬化液をそれぞれ別々にモータで駆動されるポンプで加圧してホースリールを通してスプレーガンに導く他、スプレーガンを先端にノズルチップを有する二つの銃身で構成して主液と硬化液をそれぞれの銃身に導く一方、各ノズルチップの向きをノズルチップから噴出される主液と硬化液がノズルチップの前方100〜200mmで交叉するようにしたことを特徴とする有害生物防除組成物の散布装置を提供する。
【0007】
これにおいて、本発明は、請求項2の散布装置において、請求項3に記載した、銃身が左右に並設されたものである手段、請求項4に記載したノズルチップに噴射パターンが異なる噴射ノズルが交換可能に取り付けられる手段を提供したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び2の手段によれば、主液、硬化液ともにモータで駆動されるポンプで加圧されるものであるから、電源さえあればよく、構造が簡単で操作もやり易い。また、ホースリールを使用するから、ポンプが離れた位置にあってもよい。さらに、主液、硬化液はスプレーガンの中で別々の通路(銃身)を通り、別々のノズルチップから噴射されるから、途中で混じることはない。加えて、スプレーガン(銃身)は通常構造のものを二つ並べればよいから、構造が簡単になる。そして、別々のノズルチップから噴射された主液と硬化液とはその前方100〜200mmの範囲で交叉するから、交叉によって硬化した防虫液が噴射ノズルに降り掛かってその内部や出口を塞ぐようなこともない。
【0009】
さらに、請求項3の手段によれば、主液と硬化液とが同じレベルで噴出されるから、噴出個所の狙いが定め易くなって操作が楽である。また、請求項4の手段によれば、噴出対象の地相等に応じて噴出量の調整を含めて適切な噴射パターンが選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る散布装置のブロック図であるが、この散布装置は、主液と硬化液とを加圧するポンプ1、2と、このポンプ1、2を駆動するモータ3、4と、ポンプで加圧された主液と硬化液とをスプレーガン(以下、ガン)5に送る別々のホースリール6、7等からなる。なお、モータ3、4は家庭用電源で回転する単相交流モータでよいし、各ポンプ1、2に続く配管には制御用の減圧弁8、9や絞り弁10、11も設けられている(12、13は圧力計)。
【0011】
図2はガン5の平面図、図3は図2のAーA断面図であるが、本例のガン5は、銃把14の先に二つのブロック15、16を取り付け、このブロック15、16の中に二つの銃身17、18を横に並べて通したものである。そして、銃身17、18の内部は空洞になって通路17a、18aを形成しており、通路17a、18aの内部には引金19の操作で前後するニードル20、21が通っている。ニードル20、21の先端は三角形の先鋭体に形成されており、ニードル20、21を後退させると、先鋭体が通路17a、18aの吐出口22、23から離れて隙間を形成するものである。また、銃身17、18の途中には、ホースリール6、7で送られて来る主液と硬化液を通路17a、18aに送り込むニップル24、25も取り付けられている。
【0012】
前方のブロック16にはそれぞれの銃身17、18の吐出口22、23に連通するノズルチップ26、27が取り付けられている。そして、このノズルチップ26、27の先端には噴射ノズル28、29が取り付けられている。この噴射ノズル28、29は特有の噴射パターンを有しており、これを交換することで噴出する流体の噴射パターンを変更できる。以上により、引金19を操作することで主液と硬化液は噴射ノズル28、29から噴出されるから、これを混ぜらせると硬化する。このため、ノズルチップ26、27は先端側が近づくように斜めに向けて取り付けられており、それぞれの噴射ノズル28、29から噴射された主液と硬化液はその前方100〜200mmの範囲で交叉するように設定されている。こうすることで、硬化した防虫液が噴射ノズル28、29の内部や出口に降り掛からず、詰まらせる事態を防ぐことができる。
【0013】
ところで、防虫液の硬化のスピードや程度は主液と硬化液との混合比率による。一般的には、主液1重量部に対して硬化液は0.05〜20重量部であるが、散布する場所や地形に応じて適宜に設定する。この設定は配管に組み込まれた減圧弁8、9や絞り弁10、11の調整及び噴射ノズル28、29の噴射パターンによることになる。このため、設定圧と噴射ノズル28、29の噴射パターンとの関係を予め求めておけば、作業において楽である。硬化した防虫液は床下等の土壌中に浸透して防虫、防菌、防湿を果すのであるが、一部は地上に露出して堆積している。
【0014】
本発明による散布装置で散布される防虫液としては、防虫剤としてのビフェントリンをγ−プチロラクトンを溶剤として溶解させ、これを親水性ウレタン樹脂としてのハイセルOH−1(東邦化学工業製)と混合させた主剤と、硬化液である水とを混合硬化させるものが例示される。前記防虫剤はこれに限定されるものではなく、ペルメトリン、プラレトリン、エトフエンプロックス、シラフルオフエン、シフエノトリン、イミダクロプリド、クロルフエナピル、フィプロニル、クロチアニジン、チアクロプリド、チアメトキサム、インドキサカルプ、ジノテフラン、メタフルミゾン等の殺虫活性を有する化合物を使用することができる。親水性ウレタン樹脂としては、ハイセルOH−1の他にサンプレンWE−104(三洋化成工業製)等を使用することができる。親水性ウレタン樹脂への防虫剤や溶剤の混合比率は、防虫剤の溶解性や防虫効力によって任意に調整すればよい。また、二液タイプの防虫液は、親水性ウレタン樹脂を使用するものに限定されるものではなく、その他の二液混合硬化型の樹脂を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】散布装置のブロック図である。
【図2】スプレーガンの平面図である。
【図3】スプレーガンの縦断面を示す図2のAーA断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 ポンプ
2 ポンプ
3 モータ
4 モータ
5 スプレーガン
6 ホースリール
7 ホースリール
8 減圧弁
9 減圧弁
10 絞り弁
11 絞り弁
12 圧力計
13 圧力計
14 銃把
15 ブロック
16 ブロック
17 銃身
17a通路
18 銃身
18a通路
18 吸入口
19 引金
20 ニードル
21 ニードル
22 吐出口
23 吐出口
24 ニップル
25 ニップル
26 ノズルチップ
27 ノズルチップ
28 噴射ノズル
29 噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主液と硬化液とからなる二液タイプの防虫液をスプレーガンから噴出させる有害生物防除組成物の散布方法において、主液と硬化液をそれぞれ別々にモータで駆動されるポンプで加圧してホースリールを通してスプレーガンに導く他、スプレーガンを先端にノズルチップを有する二つの銃身で構成して主液と硬化液をそれぞれの銃身に導く一方、各ノズルチップの向きをノズルチップから噴出される主液と硬化液がノズルチップの前方100〜200mmで交叉するようにしたことを特徴とする有害生物防除組成物の散布方法。
【請求項2】
主液と硬化液とからなる二液タイプの防虫液をスプレーガンから噴出させる有害生物防除組成物の散布装置において、主液と硬化液をそれぞれ別々にモータで駆動されるポンプで加圧してホースリールを通してスプレーガンに導く他、スプレーガンを先端にノズルチップを有する二つの銃身で構成して主液と硬化液をそれぞれの銃身に導く一方、各ノズルチップの向きをノズルチップから噴出される主液と硬化液がノズルチップの前方100〜200mmで交叉するようにしたことを特徴とする有害生物防除組成物の散布装置。
【請求項3】
銃身が左右に並設されたものである請求項2の有害生物防除組成物の散布装置。
【請求項4】
ノズルチップに噴射パターンが異なる噴射ノズルが交換可能に取り付けられる請求項2又は3の有害生物防除組成物の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−195126(P2009−195126A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38180(P2008−38180)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【出願人】(000155230)株式会社明治機械製作所 (23)
【Fターム(参考)】