説明

有害菌類に対する抵抗性を誘導する方法

本発明は、有害菌類に対する耐性を植物に誘導する方法であって、植物、植物が生育している土壌もしくは植物が生育する土壌および/または該植物の種子に、ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する活性化合物の有効量を施用することを含んでなる、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害菌類に対する耐性を植物に誘導する方法であって、植物、植物が生育している土壌もしくは植物が生育する土壌および/または該植物の種子に、ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する活性化合物の有効量を施用することを含んでなる、上記方法に関する。
【0002】
本発明により使用する活性化合物は、植物、その種子および/または土壌に対して、該植物の播種の前もしくは後または該植物の出芽の前もしくは後に施用することができる。
【背景技術】
【0003】
農業における実地の経験から、有害菌類の防除における特定の活性物質の反復使用は、多くの場合、自然にあるいは適応により高められた当該活性物質に対する抵抗性を発達させた菌株の急速な選択をもたらすことが明らかとなっている。このような場合、もはや当該活性物質を用いてこれらの菌類を有効に防除することはできない。通常、これらの菌株は、同様の作用機序を有する他の活性物質に対しても交差耐性である。これらの菌株を防除するため、異なった作用機序を有する活性物質が必要とされる。しかし、新規な作用機序を有する活性物質の供給は有限である。新規な作用機序の発見は、農薬産業における研究が全力を注ぐ現在進行中の目標である。既知の活性物質との交差耐性がない新規な活性物質の開発には、費用と時間がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有害菌類の蔓延に関して、本発明の目的は、植物が有害菌類に対して高められた抵抗性/耐性を発達させる、効率的で、応用範囲の広い方法を見出すことである。これにより、農業における殺菌剤の使用の増大を是正することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する活性物質で処理した植物は、有害菌類に対して高められた耐性を有することが本発明で見出された。
【0006】
本発明の意味において、「耐性の誘導」とは、本発明の方法の適用により、処理植物の有害菌類に対する著しく低い感受性が見られることを意味する。これは本明細書において、各有害菌類に対する植物の「抵抗性の誘導」とも呼ばれる。
【0007】
その結果、本発明により処理した植物は、本発明の方法に供されていない比較対象植物と比べて有害菌類による攻撃を受けることが少ない。特に本発明の方法は、各対照植物と比較して、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは40%以上、さらにより好適には50%以上、さらにより好適には60%以上、さらにより好適には70%以上、最も好適には80%以上少ない有害菌類の攻撃をもたらす。
【0008】
ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する活性化合物は、農薬として文献から公知であるが、その大部分は殺菌剤および/または殺虫剤として知られている(例えば、Dechema-Monographien Bd. 129, 27-38, VCH Verlagsgemeinschaft Weinheim 1993; Natural Product Reports 1993, 565-574; Biochem. Soc. Trans. 22, 63S (1993)を参照されたい)。しかし現在まで、これらの活性化合物を、有害菌類に対する抵抗性を植物に誘導するために有効に使用することができたとの示唆はなく、これは本発明の枠組みの範囲内でのみ見出されたものである。
【0009】
本発明により有用な、ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する特に重要な種類の活性化合物は、ストロビルリン類である。ストロビルリン類は、古くから農薬として一般的に知られ、特に殺菌剤として、場合により殺虫剤としても記載されており、例えば、様々な菌病原体の駆除に広く用いられている(欧州特許出願公開第178826号明細書;欧州特許出願公開第253213号明細書;国際公開第93/15046号パンフレット;国際公開第95/18789号パンフレット;国際公開第95/21153号パンフレット;国際公開第95/21154号パンフレット;国際公開第95/24396号パンフレット;国際公開第96/01256号パンフレット;国際公開第97/15552号パンフレット;国際公開第97/27189号パンフレット)。ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する活性化合物の他の例は、ファモキサドン(5−メチル−5−(4−フェノキシフェニル)−3−(フェニルアミノ)−2,4−オキサゾリジネジオン)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いる好適なストロビルリン類の具体例は、
式I:
【化1】

【0011】
(式中、置換基および指数は以下の意味を有する:
Xは、ハロゲン、C〜C−アルキルまたはトリフルオロメチルを表し;
mは、0または1を表し;
Qは、C(=CH−CH)−COOCH、C(=CH−OCH)−COOCH、C(=N−OCH)−CONHCH、C(=N−OCH)−COOCH、N(−OCH)−COOCH、または基Q1:
【化2】

【0012】
[式中、#はフェニル環への結合点を表す]を表し;
Aは、−O−B、−CHO−B、−OCH−B、−CHS−B、−CH=CH−B、−C≡C−B、−CHO−N=C(R)−B、−CHS−N=C(R)−B、−CHO−N=C(R)−CH=CH−B、または−CHO−N=C(R)−C(R)=N−ORを表し;ここでBは以下の意味を有する:
Bは、フェニル、ナフチル、1、2もしくは3個のN原子および/または1個のOもしくはS原子または1もしくは2個のOおよび/もしくはS原子を含む5もしくは6員のヘテロアリールまたは5もしくは6員のヘテロシクリル[その際、これらの環系は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基R
(Rは、シアノ、ニトロ、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、C〜C−アルキルスルフィニル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルキルオキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルアミノカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、5もしくは6員のヘテロシクリル、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールオキシ、C(=NOR)−RまたはOC(R−C(R)=NOR
[その際、これらの環基は、順次、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基R
(Rは、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルキルスルホニル、C〜C−アルキルスルフィニル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルアミノカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、C〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルケニル、フェニル、フェノキシ、フェニルチオ、ベンジル、ベンジルオキシ、5もしくは6員のヘテロシクリル、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールオキシまたはC(=NOR)−R;[ここで
、Rは、水素またはC〜C−アルキルを表す]を表す)
により置換されている]を表す)により置換されている]を表し;
は、水素、シアノ、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、またはC〜C−アルキルチオを表し;
は、フェニル、フェニルカルボニル、フェニルスルホニル、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールカルボニルまたは5もしくは6員のヘテロアリールスルホニル[その際、これらの環系は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基Rにより置換されている]、
〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C10−アルキニル、C〜C10−アルキルカルボニル、C〜C10−アルケニルカルボニル、C〜C10−アルキニルカルボニル、C〜C10−アルキルスルホニル、またはC(=NOR)−R[その際、これらの基の炭化水素基は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基R
(Rは、シアノ、ニトロ、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルキルスルホニル、C〜C−アルキルスルフィニル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルアミノカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、
〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルキルオキシ、5もしくは6員のヘテロシクリル、5もしくは6員のヘテロシクリルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニル、フェノキシ、フェニルチオ、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールオキシおよびヘテロアリールチオ[その際、これらの環基は、順次、部分的にもしくは完全にハロゲン化されおよび/またはこれらの環基に1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基Rを結合させることができる]を表す)により置換されている]を表し;且つ
は、水素、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル[その際、これらの基の炭化水素基は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基Rにより置換されている]を表す)
で表されるストロビルリン化合物類またはこれらの農業上許容可能な塩;および
(2−クロロ−5−[1−(3−メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチルおよび(2−クロロ−5−[1−(6−メチルピリジン−2−イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチルからなる群から選択されるストロビルリン化合物類およびこれらの農業上許容可能な塩である。
【0013】
本発明によれば、農業上許容可能な塩として、特に、そのカチオンおよびアニオンが、それぞれ、本発明により使用する化合物の作用に悪影響を及ぼさない、カチオンの塩または酸の酸付加塩が挙げられる。
【0014】
したがって、好適なカチオンは、特に、アルカリ金属(好ましくはナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(好ましくはカルシウム、マグネシウムおよびバリウム)、ならびに遷移金属(好ましくはマンガン、銅、亜鉛および鉄)のイオンであり、また1〜4個の(C〜C)−アルキル置換基および/または1個のフェニルもしくはベンジル置換基から必要に応じて生じさせることのできるアンモニウムイオン(好ましくはジイソプロピルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム)でもあり、またホスホニウムイオン、スルホニウムイオン(好ましくはトリ(C〜C−アルキル)スルホニウム)、およびスルホキソニウムイオン(好ましくはトリ(C〜C−アルキル)スルホキソニウム)でもある。
【0015】
有利に用いることができる酸付加塩のアニオンは、例えば、塩化物、臭化物、フッ化物、硫酸水素塩、硫酸塩、リン酸二水素、リン酸水素、リン酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、安息香酸塩、また(C〜C)−アルカン酸のアニオン(好ましくはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩および酪酸塩)である。これらは、本発明により使用する化合物と、対応するアニオンの酸(好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸または硝酸)との反応により生成することができる。
【0016】
本発明によれば、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシム−メチル、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、オリサストロビン、(2−クロロ−5−[1−(3−メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチル、(2−クロロ−5−[1−(6−メチルピリジン−2−イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチルおよび2−(オルト(2,5−ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)−3−メトキシアクリル酸メチルから選択されるストロビルリン類が特に好ましい。本発明によれば、これらの化合物のうち、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、エネストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシム−メチル、メトミノストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビンおよびオリサストロビンから選択されるストロビルリンを使用することが好ましい。
【0017】
同様に、本発明による使用に特に好適なのは、とりわけ、以下の表に挙げられる化合物類である。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0018】
また、本発明による使用には、市販の活性ストロビルリン化合物が特に好ましい。上記の表のうち、下記の活性化合物が特に好ましい:化合物I−5(ピラクロストロビン)、II−1(クレソキシム−メチル)、II−3(ジモキシストロビン)、II−11(ZJ 0712)、III−3(ピコキシストロビン)、IV−6(トリフロキシストロビン)、IV−9(エネストロビン)、V−16(オリサストロビン)、VI−1(メトミノストロビン)、VII−1(アゾキシストロビン)およびVII−11(フルオキサストロビン)。式Iで表される他の有用な化合物は、フルアクリピリム((E)−2−{α−[2−イソプロポキシ−6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−4−イルオキシ]−o−トリル}−3−メトキシアクリル酸メチル)である。
【0019】
本発明による方法は、以下の有害菌類に対する耐性の誘導に特に適している:
・ 野菜、アブラナ、サトウダイコンおよび果物ならびにイネにつくアルテルナリア属の種(Alternaria species)、例えば、ジャガイモおよびトマトにつくアルテルナリア・ソラニ(A. solani)またはアルテルナリア・アルテルナタ(A. alternata)など;
・ サトウダイコンおよび野菜につくアファノマイセス属の種(Aphanomyces species);
・ 禾穀類および野菜につくアスコキタ属の種(Ascochyta species);
・ トウモロコシ、禾穀類、イネおよび芝生につくバイポラリス属の種(Bipolaris species)およびドレクスレラ属の種(Drechslera species)、例えば、トウモロコシにつくドレクスレラ・マイディス(D. maydis)など;
・ 禾穀類につくブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)(ウドン粉病);
・ イチゴ、野菜、花およびブドウの木につくボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色カビ病);
・ レタスにつくブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae);
・ トウモロコシ、ダイズ、イネおよびサトウダイコンにつくセルコスポラ属の種(Cercospora species);
・ トウモロコシ、禾穀類、イネにつくコクリオボルス属の種(Cochliobolus species)、例えば、禾穀類につくコクリオボルス・サチブス(Cochliobolus sativus)、イネにつくコクリオボルス・ミヤベアヌス(Cochliobolus miyabeanus)など;
・ ダイズおよびワタにつくコレトトリクム属の種(Colletotricum species);
・ トウモロコシ、禾穀類、イネおよび芝生につくドレクスレラ属の種(Drechslera species)、ピレノホラ属の種(Pyrenophora species)、例えば、オオムギにつくドレクスレラ・テレス(D. teres)、またはコムギにつくドレクスレラ・トリチキ−レペンチス(D. tritici-repentis)など;
・ ブドウの木につくエルシノエ・アンペリナ(Elsinoe ampelina);
・ ファエオアクレモニウム・クラミドスポリウム(Phaeoacremonium chlamydosporium)、ファエオアクレモニウム・アレオフィルム(Ph. Aleophilum)およびフォルミチポラ・プンクタタ(Formitipora punctata)(フェリヌス・プンクタツス(Phellinus punctatus)と同義)により発症する、ブドウの木につくエスカ(Esca);
・ トウモロコシにつくエクセロヒルム属の種(Exserohilum species);
・ キュウリにつくエリシフェ・シコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)およびスファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea);
・ 様々な植物につくフサリウム属の種(Fusarium species)およびベルチシリウム属の種(Verticillium species)、例えば、禾穀類につくフサリウム・グラミネアルム(F. graminearum)またはフサリウム・クルモルム(F. culmorum)、または多数の植物、例えばトマトにつくフサリウム・オキシスポルム(F. oxysporum)など;
・ 禾穀類につくゲウマノミセス・グラミニス(Gaeumanomyces graminis);
・ 禾穀類およびイネにつくジベレラ属の種(Gibberella species)(例えばイネにつくジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi));
・ ブドウの木につくグロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata);
・ イネにつく穀粒染色複合体(Grainstaining complex);
・ トウモロコシおよびイネにつくヘルミントスポリウム属の種(Helminthosporium species);
・ ブドウの木につくイサリオプシス・クラビスポラ(Isariopsis clavispora);
・ 禾穀類につくミクロドキウム・ニバレ(Michrodochium nivale);
・ 禾穀類、バナナおよびラッカセイにつくマイコスファエレラ属の種(Mycosphaerella species)、例えば、コムギにつくマイコスファエレラ・グラミニコラ(M. graminicola)またはバナナにつくマイコスファエレラ・フィジエンシス(M.fijiensis)など;
・ キャベツおよび球根植物につくペロノスポラ属の種(Peronospora species)、例えば、キャベツにつくペロノスポラ・ブラシカエ(P. brassicae)またはタマネギにつくペロノスポラ・デストラクター(P. destructor)など;
・ ダイズにつくファコプサラ・パキリジ(Phakopsara pachyrhizi)およびファコプサラ・メイボミアエ(Phakopsara meibomiae);
・ ダイズおよびヒマワリにつくホモプシス属の種(Phomopsis species);
・ ブドウの木につくホモプシス・ビチコラ(Phomopsis viticola);
・ ジャガイモおよびトマトにつくフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans);
・ 様々な植物につくフィトフトラ属の種(Phytophthora species)、例えば、ピーマンにつくフィトフトラ・カプシキ(P. capsici)など;
・ ブドウの木につくプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopora viticola);
・ リンゴの木につくポドスファエラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha);
・ 禾穀類につくシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides);
・ 様々な植物につくシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)、例えば、キュウリにつくシュードペロノスポラ・キュベンシス(P. cubensis)またはホップにつくシュードペロノスポラ・フミリ(P. humili)など;
・ ブドウの木につくシュードペジキュラ・トラケイフィラ(Pseudopeziculla tracheiphila);
・ 様々な植物につくプクキニア属の種(Puccinia species)、例えば、禾穀類につくプクキニア・トリチキナ(P. triticina)、プクキニア・ストリフォルミンス(P. striformins)、プクキニア・ホルデイ(P. hordei)もしくはプクキニア・グラミニス(P. graminis)またはアスパラガスにつくプクキニア・アスパラギ(P. asparagi)など;
・ イネにつくピリクラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、コルチシウム・ササキイ(Corticium sasakii)、サロクラジウム・オリザエ(Sarocladium oryzae)、サロクラジウム・アテヌアツム(S. attenuatum)、エンチロマ・オリザエ(Entyloma oryzae);
・ 芝生および禾穀類につくピリクラリア・グリセア(Pyricularia grisea);
・ 芝生、イネ、トウモロコシ、ワタ、アブラナ、ヒマワリ、サトウダイコン、野菜および他の植物につくピチウム属の種(Pythium spp.)、例えば、様々な植物につくピチウム・ウルチムム(P. ultiumum)、芝生につくピチウム・アファニデルマツム(P. aphanidermatum)など;
・ ブドウの木につくギグナルディア・ビドウェリ(Guignardia bidwelli);
・ ワタ、イネ、ジャガイモ、芝生、トウモロコシ、アブラナ、ジャガイモ、サトウダイコン、野菜および様々な植物につくリゾクトニア属の種(Rhizoctonia species)、例えば、テンサイおよび様々な植物につくリゾクトニア・ソラニ(R. solani)など;
・ オオムギ、ライムギおよびライコムギにつくリンコスポリウム・セカリス(Rhynchosporium secalis);
・ アブラナおよびヒマワリにつくスクレロチニア属の種(Sclerotinia species);
・ コムギにつくセプトリア・トリチキ(Septoria tritici)およびスタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum);
・ ブドウの木につくエリシフェ・ネカトル(Erysiphe(ウンシヌラ(Uncinula)と同義)necator);
・ トウモロコシおよび芝生につくセトスパエリア属の種(Setospaeria species);
・ トウモロコシにつくスファケロテカ・レイリニア(Sphacelotheca reilinia);
・ ダイズおよびワタにつくティエバリオプシス属の種(Thievaliopsis species);
・ 禾穀類につくティレティア属の種(Tilletia species);
・ 禾穀類、トウモロコシおよびサトウキビにつくウスティラゴ属の種(Ustilago species)、例えば、トウモロコシにつくウスティラゴ・マイディス(U. maydis)など;
・ リンゴの木およびナシの木につくベンチュリア属の種(Venturia species)(黒星病)、例えば、リンゴの木につくベンチュリア・イネクアリス(V. inaequalis)など。
【0020】
本発明の方法はまた、ストロビルリン種の活性物質に対する高められた耐性を発達させた有害菌株の防除、特に、セプトリア・トリチキ(Septoria tritici)などのセプトリア属の種(Septoria spp.)の防除にも好適である。
【0021】
本発明の方法は、植物、土壌および/またはこの植物の種子を、本発明で用いる活性化合物、特に式Iの化合物の有効量で処理することによって適用する。この適用は、菌類による植物、土壌および/または植物の種子の感染の前(菌類の攻撃に対する耐性の防御誘導)および後(菌類の増殖およびこれに関連する植物の損傷を制限するための、菌類の将来の攻撃に対する耐性の誘導)のいずれにおいても行うことができる。
【0022】
本発明の方法の好適な実施形態において、本発明により使用する活性物質、特に式Iの化合物は、防御的に施用され、有害菌類の攻撃に対する個々の植物の高められた耐性をもたらす。
【0023】
本発明の方法の他の好適な実施形態において、活性物質による植物の処理、特に式Iの化合物による処理は、その植物の生育期間の最初の6週間、特に最初の4週間の間または植物の出芽後、実質的には殺菌剤の最初の防御施用を行う前に行う。最初の施用は、菌類の攻撃に対して抵抗性にすべき植物の生育期間の最初の6週間、特に最初の4週間の間に行うことが特に好ましい。
【0024】
本発明によれば、通常は攻撃の前、特に有害菌類による攻撃の1週間以上前に植物を処理することが好ましい。この間、本発明の活性物質、特に式Iの化合物を用いて1〜10回処理を行う。処理植物の、有害菌類に対する著しく低下した感受性が見られる。
【0025】
野菜および作物(例えばダイズ、ワタ、タバコ、マメ類、エンドウマメ)ならびに禾穀類(例えばトウモロコシ、コムギ、オオムギ)の場合、本発明の活性物質は、植物の出芽のすぐ後、好ましくは出芽後の最初の4週間の間に、あるいは種子処理として施用することが好ましい。植物は2〜5回、特に2〜3回処理することが好ましい。
【0026】
果物および他の多年生植物の場合、本発明の処理は、当該植物の生育期間の最初の6週間、好ましくは最初の4週間の間に行うことが好ましい。2〜5回の処理を行うことが好ましい。
【0027】
また本発明によれば、本発明により使用する活性化合物、特に式Iの化合物の反復施用を行うことも好ましい。一般に、本発明の処理を10〜20日毎に反復した場合に最良の効果が見られる。
【0028】
本発明の他の好適な実施形態によれば、本発明により使用する活性化合物、特に式Iの化合物を1シーズンにわたって2〜10回施用する。
【0029】
本発明によれば、最初の施用は、好ましくは生育期間の開始の前に行うが、これは本発明の方法を野菜または作物等(例えば冬小麦)について行う場合に特に有用である。
【0030】
本発明の1つの実施形態によれば、本発明の方法は、好ましくは葉面施用として行う。葉面施用は、作物および野菜(例えば、ジャガイモ、トマト、キュウリ、タマネギおよびレタス)の場合に特に好ましい。これは、10回以下の処理を行う場合に好適であり得る。
【0031】
本発明の1つの実施形態によれば、本発明の方法は、野菜または作物について行う。特にこの実施形態において、本発明により使用する活性化合物、特に式Iの化合物の2回以上〜10回以下の施用を行う。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の方法は、ダイズ、トウモロコシ(maize(トウモロコシ(corn))、ワタ、タバコ、インゲンマメ、コムギ、ライムギおよびエンドウマメについて行う。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の方法は、禾穀類、特にコムギについて行う。
【0034】
本発明の方法による別の実施形態によれば、セプトリア属の種(Septoria spp.)に対する耐性が植物(特にコムギ)に誘導される。とりわけ、本発明の方法によりセプトリア・トリチキ(Septoria tritici)に対する耐性が誘導される。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の耐性を誘導する方法は、多年生植物について行う。その一つの具体例は、ブドウの木について行う本発明の方法の使用である。
【0036】
本発明の方法による別の実施形態によれば、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、プラズモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、エリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator)および/またはエスカ(Esca)に対する抵抗性が植物(特にブドウの木)に誘導される。とりわけ、本発明の方法によりエスカ(Esca)に対する抵抗性が誘導される。
【0037】
エスカ(Esca)とは、菌類病原体の複合物を表す。文献によれば、エスカ(Esca)症に関連し得る病原体は、フォミチポリア・プンクタタ(Fomitiporia punctata)(フェリヌス・プンクタツス(Phellinus punctatus)と同義)、フォミチポリア・メディテラーナ(Fomitiporia mediterrana)、ファエロアクレモニウム属の種(Phaeroacremonium spp.):ファエロアクレモニウム・アレオフィルム(Phaeroacremonium aleophilum)およびファエモニエラ・クラミドスポルム(Phaemoniella chlamydosporum)である。ブドウの木は、エスカ(Esca)に関連し得る病原体の1種、数種、あるいは全種により攻撃される可能性がある。エスカ(Esca)に攻撃されたブドウの木の木材から単離された1種の特定の菌は、ファエモニエラ・クラミドスポルム(Phaemoniella chlamydosporum)(白色腐朽菌)である。急性型および慢性型のエスカ(Esca)病が知られており、エスカ(Esca)は様々な症状を引き起こす可能性がある。慢性型のエスカ(Esca)病の症状は、例えば、葉面の薄緑色の斑点および液果の暗色斑である。さらに、エスカ(Esca)に攻撃されたブドウの木の内側の木部は、軟らかい海綿状の物質へと変化することが多く、そのほとんどが古いブドウの木に見られる。急性型のエスカ(Esca)に罹患しているブドウの木は、急激に腫れ始め、最終的には枯れて死滅する。驚くべきことに、本発明の方法を用いるとブドウの木をエスカ(Esca)に対して耐性にすることができることが見出され、ブドウの木におけるエスカ(Esca)の攻撃を回避する有効な方法を提供する。
【0038】
さらに別の実施形態によれば、本発明により、プラスモパラ・ビチコラ(Plasmopora viticola)、ウンシヌラ・ネカトル(Uncinula necator)、ギグナルディア・ビドウェリ(Guignardia bidwelli)、シュードペジキュラ・トラケイフィラ(Pseudopeziculla tracheiphila)、ホモプシス・ビチコラ(Phomopsis viticola)、エルシノエ・アンペリナ(Elsinoe ampelina)、グロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata)、イサリオプシス・クラビスポラ(Isariopsis clavispora)および/またはボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)に対する抵抗性が植物(特にブドウの木)に誘導される。
【0039】
さらに、本発明の別の実施形態によれば、活性化合物、特に式Iの化合物、またはこれを含有する個々の混合物もしくは製剤を、植物の生育期間の最初の6週間または種子の出芽の間に植物および/または植物の種子に吸収させる。感染の重篤度および所望の効果の性質に応じて、施用の際、本発明の活性物質の施用率は、1ヘクタール(ha)当たり活性物質1〜1000g、好ましくは20〜750gである。
【0040】
本発明の活性物質、特に式Iの化合物を含む組成物は、一般に活性物質を0.1〜95重量%、好ましくは0.5〜90重量%含んでいる。
【0041】
通常、本発明の施用率は、所望の効果の性質に応じて、1ヘクタール(ha)当たり活性物質0.01〜2.0kgである。
【0042】
種子の処理、例えば種子への散粉、種子のコーティングまたは浸漬による処理の場合、通常は、種子100キログラム当たり1g〜1000g、好ましくは種子100キログラム当たり5〜100gの量の活性物質が必要とされる。
【0043】
本発明により使用する活性化合物、特に式Iの化合物は、慣用の製剤、例えば溶液剤、エマルション製剤、フロアブル製剤、散剤(dust)、粉剤、ペースト剤および顆粒剤に変換することができる。施用剤形は、その使用目的によって決まるが、いずれの場合も、本発明により使用する化合物の細かく均一な分散が確実になされなければならない。
【0044】
本発明の製剤は公知の方法、例えば、所望の場合は乳化剤や分散剤を用いて、本活性物質を溶媒および/または担体でのばすことにより調製する。好適な溶媒/助剤は基本的には以下である:
・ 水、芳香族溶媒(例えば、Solvessoの製品、キシレン)、パラフィン類(例えば、鉱油画分)、アルコール類(例えば、メタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン類(例えば、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン)、ピロリドン(NMP、NOP)、アセテート(二酢酸グリコール)、グリコール類、脂肪酸ジメチルアミド、脂肪酸、および脂肪酸エステル(基本的には、溶媒混合物も使用することができる)、
・ 担体としては、粉砕天然鉱物(例えば、カオリン、陶土、タルク、チョーク)および粉砕合成鉱物(例えば、高分散シリカ、シリケート);乳化剤としては非イオン性乳化剤やアニオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、アルキルスルホネートおよびアリールスルホネート)、および分散剤としては、例えばリグニン亜硫酸廃液およびメチルセルロース。
【0045】
好適な界面活性剤は、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、脂肪アルコール硫酸塩、脂肪酸、および硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテルのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩、さらにはスルホン化ナフタレンおよびナフタレン誘導体とホルムアルデヒドの縮合物、ナフタレンまたはナフタレンスルホン酸とフェノールおよびホルムアルデヒドの縮合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリスチリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコールまたは脂肪アルコールとエチレンオキシドの縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグニン亜硫酸廃液、およびメチルセルロースである。
【0046】
直接散布可能な溶液剤、エマルション製剤、ペースト剤、または油性分散剤を調製するのに適している物質は、中〜高沸点の鉱油画分、例えばケロシンまたはディーゼルオイル、さらにはコールタールオイル、ならびに植物および動物由来の油、脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレンもしくはその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、強極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、または水である。
【0047】
粉剤、広域散布用および散粉用製品は、本活性物質と固体担体を混合するか、または同時に粉砕することによって製造することができる。
【0048】
粒剤(例えば、コーティング粒剤(coated granule)、含浸粒剤(impregnated granule)、均質粒剤(homogeneous granule))は、本活性物質を固体担体に結合させることにより製造することができる。固体担体の例は、鉱物質土類(mineral earth)(例えば、シリカゲル、シリケート、タルク、カオリン、アタクレイ(attaclay)、石灰石、石灰、チョーク、赤土、黄土、粘土、ドロマイト、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムなど)、粉砕された合成材料、肥料(例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素など)、植物起源の製品(例えば、穀粉、樹皮粉、木粉、堅果殻粉、セルロース粉末など)、ならびにその他の固体担体である。
【0049】
種子を処理するための製剤は、さらに結合剤および/またはゲル化剤を含んでもよく、適切な場合、着色剤を含んでもよい。
【0050】
本活性物質の処理後の種子への付着力を高めるために、結合剤を加えてもよい。好適な結合剤の例は、EO/POブロックコポリマー界面活性剤であり、またポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)、Polymin(登録商標))、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、チロース、およびこれらのポリマーのコポリマーである。好適なゲル化剤は、例えば、カラギーナン(Satiagel(登録商標))である。
【0051】
一般に、本製剤は、本活性物質を0.01〜95重量%、好ましくは0.1〜90重量%含んでいる。本発明において、活性物質は、純度90%〜100%、好ましくは95%〜100%(NMRスペクトルによる)で用いる。
【0052】
直ぐに使える調製物中における本活性物質の濃度は、広い範囲で変えることができる。一般に、それらは、0.0001〜10%、好ましくは0.01〜1%である。
【0053】
本活性物質は、超微量散布(ultra-low-volume(ULV))法でも首尾よく使用することができ、活性物質95重量%以上の製剤あるいは添加物なしの本活性物質そのものを施用することができる。
【0054】
種子の処理のため、当該製剤は2〜10倍に希釈され、直ぐに使える調製物中において本活性物質の濃度を0.01〜60重量%、好ましくは0.1〜40重量%とする。
【0055】
以下は、本発明による製剤の例である。
【0056】
1.水で希釈する製品
A 液剤(Water-soluble concentrates)(SL、LS)
10重量部の本発明により使用する化合物を、90重量部の水または水溶性溶媒に溶解させる。別法として、湿潤剤または他の補助剤を添加する。本活性成分は、水で希釈すると溶解する。このようにして活性物質含量が10%の製剤が得られる。
【0057】
B 分散製剤(dispersible concentrates)(DC)
20重量部の本発明により使用する化合物を、70重量部のシクロヘキサノンに10重量部の分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン)を加えて溶解させる。水で希釈することにより、分散液が得られる。活性物質含量は20重量%である。
【0058】
C 乳剤(emulsifiable concentrates)(EC)
15重量部の本発明により使用する化合物を、75重量部のキシレンにドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムとヒマシ油エトキシレート(いずれも、5重量部)を加えて溶解させる。水で希釈することにより、乳液が得られる。この製剤の活性物質含量は15%である。
【0059】
D エマルション製剤(emulsions)(EW、EO、ES)
25重量部の本発明により使用する化合物を、35重量部のキシレンにドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムとヒマシ油エトキシレート(いずれも、5重量部)を加えて溶解させる。この混合物を、乳化装置(例えばUltraturrax)を用いて30重量部の水に導入し、均質なエマルションとする。水で希釈することにより、乳液が得られる。この製剤の活性物質含量は25%である。
【0060】
E フロアブル製剤(suspensions)(SC、OD、FS)
撹拌下にあるボールミル内で、20重量部の本発明により使用する化合物に10重量部の分散剤と湿潤剤および70重量部の水または有機溶媒を添加して粉砕することにより、活性成分の微細懸濁液が得られる。水で希釈することにより、活性成分の安定した懸濁液が得られる。この製剤の活性物質含量は、20重量%である。
【0061】
F 顆粒水和剤(water-dispersible granule)および顆粒水溶剤(water-soluble granules)(WG、SG)
50重量部の本発明により使用する化合物に50重量部の分散剤および湿潤剤を添加して微粉砕し、専用の装置(例えば、押出機、噴霧塔、流動床など)を用いて顆粒水和剤または顆粒水溶剤とする。水で希釈することにより、本活性成分の安定な分散液または溶液が得られる。この製剤の活性物質含量は50重量%である。
【0062】
G 粉末水和剤(water-dispersible powders)および粉末水溶剤(water-soluble powders)(WP、SP、SS、WS)
ローター・ステーターミル内で、75重量部の本発明により使用する化合物に25重量部の分散剤、湿潤剤およびシリカゲルを添加して粉砕する。水で希釈することにより、本活性成分の安定な分散液または溶液が得られる。この製剤の活性物質含量は、75重量%である。
【0063】
H ゲル製剤(gel formulations)
ボールミル内で、20重量部の本発明により使用する化合物、10重量部の分散剤、1重量部のゲル化剤および70重量部の水または有機溶媒を粉砕することにより、微細懸濁液が得られる。水で希釈することにより、活性物質含量が20重量%の安定な懸濁液が得られる。
【0064】
2.希釈せずに施用する製品
I 散剤(dusts)(DP、DS)
5重量部の本発明により使用する化合物を微粉砕し、95重量部の微粉砕カオリンと充分に混合する。これにより活性物質含量が5重量%の散粉製品が得られる。
【0065】
J 粒剤(granules)(GR、FG、GG、MG)
0.5重量部の本発明により使用する化合物を微粉砕し、99.5重量部の担体と組み合わせる。現在の方法は、押出、噴霧乾燥、または流動床である。これにより、活性物質含量が0.5重量%の、希釈せずに施用する顆粒が得られる。
【0066】
K ULV溶液剤(UL)
10重量部の本発明により使用する化合物を、90重量部の有機溶媒(例えば、キシレン)に溶解させる。これにより、活性物質含量が10重量%の、希釈せずに施用する製品が得られる。
【0067】
種子の処理に用いる製剤は、通常、液剤(LS)、フロアブル製剤(FS)、散剤(DS)、粉末水和剤および粉末水溶剤(WS、SS)、エマルション剤(ES)、乳剤(EC)およびゲル製剤(GF)である。これらの製剤は、希釈せずに、または、好ましくは希釈した形で種子に施用することができる。施用は、播種の前に行うことができる。
【0068】
種子の処理には、フロアブル製剤(FS)を用いることが好ましい。通常、この製剤は、製剤1リットル(l)当たり1〜800gの活性物質、1〜200gの界面活性剤、0〜200gの凍結防止剤、0〜400gの結合剤、0〜200gの着色剤および溶媒(好ましくは水)を含む。
【0069】
本活性物質は、それ自体、散布(spraying)、噴霧(atomizing)、散粉(dusting)、広域散布(spreading)または散水(pouring)により、その製剤の形態またはその製剤から調製される施用形態、例えば直接散布可能な溶液剤、粉剤、フロアブル製剤もしくは分散剤、エマルション製剤、油性分散剤、ペースト剤、散粉製品、広域散布用製品、または粒剤の形態で使用することができる。施用の形態は、もっぱらその使用目的によって決まるが、いずれの場合も、本発明の活性物質が確実に可能な限り微細に分散されるようなものとする。
【0070】
水性の施用形態のものは、乳剤、ペースト剤、または粉末水和剤(散布用粉剤(spray powders)、油性分散剤)から、水を加えることにより調製することができる。エマルション剤、ペースト剤、または油性分散剤を調製するには、本物質を、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤、または乳化剤を用いて、そのまま、あるいは油または溶媒に溶解させて水中で均質化することができる。あるいは、活性物質、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤もしくは乳化剤、および必要であれば溶媒もしくは油からなる濃縮物を調製することも可能であり、かかる濃縮物は水で希釈するのに適している。
【0071】
本活性物質には、必要であれば、使用直前に、各種の油、湿潤剤、アジュバント、除草剤、殺菌剤、他の農薬または殺細菌剤などを添加することができる(タンクミックス)。これらの薬剤は、本発明による製剤に、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の重量比で混合することができる。
【0072】
本発明により使用する活性化合物は、他の活性物質、例えば除草剤、殺虫剤、成長調整剤、殺菌剤、あるいは肥料と共に存在させることもできる。各活性化合物、特に式Iの化合物またはこれらを含む組成物を1種以上の他の活性物質(特に殺菌剤)と混合すると、活性スペクトルを拡大させ、あるいは抵抗性の発達を妨げることが可能となることが多い。多くの場合、相乗効果が生じる。
【0073】
本発明の方法における使用に好適な化合物と共に使用し得る殺菌剤に関する下記のリストは、可能な組合せの例示を目的とするものであって、何ら限定するものではない。
【0074】
カルボキシアミド系
・ カルボキシアニリド系:ベナラキシル、ベノダニル、ボスカリド、カルボキシン、メプロニル、フェンフラム、フェンヘキサミド、フルトラニル、フラメトピル、メタラキシル、オフレース、オキサジキシル、オキシカルボキシン、ペンチオピラド、チフルザミド、チアジニル、N−(4’−ブロモビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロメチル−2−メチルチアゾール−5−カルボキシアミド、N−(4’−トリフルオロメチルビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロメチル−2−メチルチアゾール−5−カルボキシアミド、N−(4’−クロロ−3’−フルオロビフェニル−2−イル)−4−ジフルオロメチル−2−メチルチアゾール−5−カルボキシアミド、N−(3’,4’−ジクロロ−4−フルオロ−ビフェニル−2−イル)−3−ジフルオロメチル−1−メチルピラゾール−4−カルボキシアミド、N’−(3’,4’−ジクロロ−5−フルオロビフェニル−2−イル)−3−ジフルオロメチル−1−メチルピラゾール−4−カルボキシアミド、N−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアミド;
・ カルボン酸モルホリド系:ジメトモルフ、フルモルフ;
・ ベンズアミド系:フルメトバー、フルオピコリド(ピコベンズアミド)、ゾキサミド;
・ 他のカルボキシアミド系:カルプロパミド、ジクロシメット、マンジプロパミド、N−(2−(4−[3−(4−クロロフェニル)プロパ−2−イニルオキシ]−3−メトキシフェニル)エチル)−2−メタンスルホニルアミノ−3−メチルブチルアミド、N−(2−(4−[3−(4−クロロフェニル)プロパ−2−イニルオキシ]−3−メトキシフェニル)−エチル)−2−エタンスルホニルアミノ−3−メチルブチルアミド;
アゾール系
・ トリアゾール系:ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、エニルコナゾール、エポキシコナゾール、フェンブコナゾール、フルシラゾール、フルキンコナゾール、フルトリアフォール、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメノール、トリアジメフォン、トリチコナゾール;
・ イミダゾール系:シアゾファミド、イマザリル、ペフラゾエート、プロクロラズ、トルフルミゾール;
・ ベンズイミダゾール系:ベノミル、カルベンダジム、フベリダゾール、チアベンダゾール;
・ 他のアゾール系:エタボキサム、エトリジアゾール、ヒメキサゾール;
含窒素複素環化合物系
・ ピリジン系:フルアジナム、ピリフェノックス、3−[5−(4−クロロフェニル)−2,3−ジメチルイソキサゾリジン−3−イル]ピリジン;
・ ピリミジン系:ブピリメート、シプロジニル、フェリムゾン、フェナリモル、メパニピリム、ヌアリモル、ピリメタニル;
・ ピペラジン系:トリフォリン;
・ ピロール系:フルジオキソニル、フェンピクロニル;
・ モルホリン系:アルジモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、トリデモルフ;
・ ジカルボキシミド系:イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン;
・ 他の含窒素複素環化合物系:アシベンゾラー−S−メチル、アニラジン、カプタン、カプタホル、ダゾメット、ジクロメジン、フェノキサニル、フォルペット、フェンプロピジン、ファモキサドン、フェナミドン、オクチリノン、プロベナゾール、プロキナジド、ピロキロン、キノキシフェン、トリシクラゾール、5−クロロ−7−(4−メチルピペリジン−1−イル)−6−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、2−ブトキシ−6−ヨード−3−プロピルクロメン−4−オン、N,N−ジメチル−3−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルインドール−1−スルホニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−スルホンアミド;
カルバメート系およびジチオカルバメート系
・ ジチオカルバメート系:フェルバム、マンコゼブ、マネブ、メチラム、メタム、プロピネブ、チラム、ジネブ、ジラム;
・ カルバメート系:ジエトフェンカルブ、フルベンチアバリカルブ(flubenthiavalicarb)、イプロバリカルブ、プロパモカルブ、3−(4−クロロフェニル)−3−(2−イソプロポキシカルボニルアミノ−3−メチルブチリルアミノ)プロピオン酸メチル、4−フルオロフェニル N−(1−(1−(4−シアノフェニル)エタンスルホニル)ブタ−2−イル)カルバメート;
他の殺菌剤
・ グアニジン系:ドジン、イミノクタジン、グアザチン;
・ 抗生物質:カスガマイシン、ポリオキシン、ストレプトマイシン、バリダマイシンA;
・ 有機金属化合物系:フェンチン塩(fentin salt);
・ 含硫黄複素環化合物系:イソプロチオラン、ジチアノン;
・ 有機リン化合物系:エディフェンホス、フォセチル、フォセチル−アルミニウム、イプロベンホス、ピラゾホス、トルクロホス−メチル、亜リン酸およびその塩;
・ 有機塩素系化合物:チオファネートメチル、クロロタロニル、ジクロフラニド、トリルフルアニド、フルスルファミド、フタリド、ヘキサクロロベンゼン、ペンシクロン、キントゼン;
・ ニトロフェニル誘導体系:ビナパクリル、ジノカップ、ジノブトン;
・ 無機活性化合物系:ボルドー混合物、酢酸銅、水酸化銅、オキシ塩化銅、塩基性硫酸銅、硫黄;
・ その他:スピロキサミン、シフルフェナミド、シモクサニル、メトラフェノン。
【0075】
従って、本発明の他の実施形態において、ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する活性化合物、特に式Iの化合物は、他の殺菌化合物、好ましくは上記の殺菌剤の1種と共に用いられる。
【0076】
本発明はまた、有害菌類に対して耐性な植物を作出する方法であって、植物、その植物が生育している土壌、および/またはその植物の種子を、本明細書において定義する、ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する化合物の有効量で処理することを含んでなる、上記の方法も提供する。この方法にしたがって、同様の好適な実施形態を上述のとおり適用する。
【0077】
この方法において、特に好ましくは、本活性化合物はピラクロストロビン、クレソキシムメチル、ジモキシストロビン、2−(オルト−((2,5−ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)−3−メトキシアクリル酸メチル、ピコキシストロビン、トリフロキシストロビン、エネストロビン、オリサストロビン、メトミノストロビン、アゾキシストロビンおよびフルオキサストロビンから選択される。
【0078】
さらに、1つの実施形態によれば、本発明の植物は好ましくは作物である。さらに好ましくは、本発明の植物は禾穀類、特にコムギである。
【0079】
別の実施形態によれば、本発明の有害菌類はセプトリア属の種(Septoria spp.)、特にセプトリア・トリチキ(Septoria tritici)である。
【0080】
さらに別の実施形態によれば、本発明の植物は多年生植物、特にブドウの木である。
【0081】
さらに別の実施形態によれば、本発明の有害菌類は、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、プラズモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、エリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator)および/またはエスカ(Esca)である。
【0082】
別の実施形態によれば、有害菌類に対して耐性な植物を作出するため、本発明の活性化合物、特に式Iの化合物を他の殺菌化合物と共に用いる。
【0083】
驚くべきことに、本発明の枠組内において、5−クロロ−7−(4−メチルピペリジン−1−イル)−6−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジンが、有害菌類に対する植物の抵抗性の誘導に有効であることも見出されている。このように、本発明の他の実施形態は、有害菌類に対する植物の抵抗性を誘導する方法であって、植物、その植物が生育しているかもしくは生育するであろう土壌および/またはその植物の種子を、5−クロロ−7−(4−メチルピペリジン−1−イル)−6−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジンまたはその塩の有効量で処理することを含んでなる、上記方法である。
【0084】
下記の実施例は本発明の例示を目的とするものであり、何ら限定するものではない。
【実施例】
【0085】
実施例1
1.1 実験
本研究には、双葉段階のコムギ苗を使用した。植物は鉢で個別に成長させ、2つのバッチグループに分けた。第1葉には、ピラクロストロビンを推奨量でスプレーし(対照植物の第1葉には蒸留水をスプレーした)、病気の評価に用いる植物には、葉が乾いた時点でセプトリア・トリチキ(S. tritici)を接種した。第1葉および第2葉の両方に、Tween20一滴を含有する蒸留水に溶解させた1×10胞子/mlの胞子懸濁液をスプレーすることにより接種した。接種の直後、これらの鉢を水で満たした受け皿に入れ、透明のポリエチレンバッグで48時間覆った。その後、12時間/12時間の明/暗交互変化で、18℃において植物を成長させた。感染強度は、症状が見られる葉面積の割合(%)を接種の18日後に測定することによって評価した。
【0086】
1.2 結果
第1葉に施用したピラクロストロビンは、未処理の対照植物と比較して第1葉と第2葉の両方のセプトリア・トリチキ(S. tritici)感染を著しく減少させた(表1)。このように、18日後、殺菌剤は第1葉と第2葉の感染をそれぞれ65%および61%減少させた(表1)。
【0087】
これらのデータは、ピラクロストロビンがコムギ苗の第1葉と第2葉のセプトリア・トリチキ(S. tritici)感染を60%超減少させることを示すが、本研究で使用したセプトリア・トリチキ(S. tritici)の単離株はピラクロストロビンに対して抵抗性であるので、この事実は驚くべきことである。
【表8】

【0088】
表の値は、10回の平均±標準誤差(SE)を表す。いずれの処理も、P≦0.01(Student t−試験)において有意であった。
【0089】
結果として、これらのデータは、ピラクロストロビンが病原菌セプトリア・トリチキ(Septoria tritici)に対する抵抗性をコムギに誘導することを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害菌類に対する植物の抵抗性を誘導する方法であって、植物、植物が生育している土壌もしくは植物が生育する土壌および/または植物の種子を、ミトコンドリアの呼吸鎖をb/c複合体のレベルで阻害する活性化合物の有効量で処理することを含んでなる、前記方法。
【請求項2】
活性化合物が、ストロビルリンまたはその農業上許容可能な塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性化合物が、式I:
【化1】

(式中、置換基および指数は以下の意味を有する:
Xは、ハロゲン、C〜C−アルキルまたはトリフルオロメチルを表し;
mは、0または1を表し;
Qは、C(=CH−CH)−COOCH、C(=CH−OCH)−COOCH、C(=N−OCH)−CONHCH、C(=N−OCH)−COOCH、N(−OCH)−COOCH、または基Q1:
【化2】

[式中、#はフェニル環への結合点を表す]を表し;
Aは、−O−B、−CHO−B、−OCH−B、−CHS−B、−CH=CH−B、−C≡C−B、−CHO−N=C(R)−B、−CHS−N=C(R)−B、−CHO−N=C(R)−CH=CH−B、または−CHO−N=C(R)−C(R)=N−ORを表し;ここでBは以下の意味を有する:
Bは、フェニル、ナフチル、1、2もしくは3個のN原子および/または1個のOもしくはS原子または1もしくは2個のOおよび/もしくはS原子を含む5もしくは6員のヘテロアリールまたは5もしくは6員のヘテロシクリル[その際、これらの環系は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基R
(Rは、シアノ、ニトロ、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルキルカルボニル、C〜C−アルキルスルホニル、C〜C−アルキルスルフィニル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルキルオキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルアミノカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、5もしくは6員のヘテロシクリル、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールオキシ、C(=NOR)−RまたはOC(R−C(R)=NOR
[その際、これらの環基は、順次、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基R
(Rは、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルキルスルホニル、C〜C−アルキルスルフィニル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルアミノカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、C〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルケニル、フェニル、フェノキシ、フェニルチオ、ベンジル、ベンジルオキシ、5もしくは6員のヘテロシクリル、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールオキシまたはC(=NOR)−R
[ここでR、Rは、水素またはC〜C−アルキルを表す]を表す)
により置換されている]を表す)により置換されている]を表し;
は、水素、シアノ、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、またはC〜C−アルキルチオを表し;
は、フェニル、フェニルカルボニル、フェニルスルホニル、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールカルボニルまたは5もしくは6員のヘテロアリールスルホニル[その際、これらの環系は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基Rにより置換されている]、
〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C10−アルキニル、C〜C10−アルキルカルボニル、C〜C10−アルケニルカルボニル、C〜C10−アルキニルカルボニル、C〜C10−アルキルスルホニル、またはC(=NOR)−R[その際、これらの基の炭化水素基は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基R
(Rは、シアノ、ニトロ、アミノ、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルキルスルホニル、C〜C−アルキルスルフィニル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−アルキルアミノ、ジ−C〜C−アルキルアミノ、C〜C−アルキルアミノカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、ジ−C〜C−アルキルアミノチオカルボニル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルケニルオキシ、
〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルキルオキシ、5もしくは6員のヘテロシクリル、5もしくは6員のヘテロシクリルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニル、フェノキシ、フェニルチオ、5もしくは6員のヘテロアリール、5もしくは6員のヘテロアリールオキシおよびヘテロアリールチオ[その際、これらの環基は、順次、部分的にもしくは完全にハロゲン化されおよび/またはこれらの環基に1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基Rを結合させることができる]を表す)により置換されている]を表し;且つ
は、水素、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル[その際、これらの基の炭化水素基は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基Rにより置換されている]を表す)
で表される化合物またはその農業上許容可能な塩;あるいは
(2−クロロ−5−[1−(3−メチルベンジルオキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチルおよび(2−クロロ−5−[1−(6−メチルピリジン−2−イルメトキシイミノ)エチル]ベンジル)カルバミン酸メチルからなる群から選択されるストロビルリン化合物またはこれらストロビルリン化合物の農業上許容可能な塩である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式Iにおける指数mがゼロを表し、且つ置換基が以下の意味を有する:
Qは、C(=CH−CH)−COOCH、C(=CH−OCH)−COOCH、C(=N−OCH)−CONHCH、C(=N−OCH)−COOCHまたはN(−OCH)−COOCHを表し;
Aは、−O−B、−CHO−B、−OCH−B、−CHO−N=C(R)−Bまたは−CHO−N=C(R)−C(R)=N−OR(ここで
Bは、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラゾリル、トリアゾリル[その際、これらの環は、置換されていないか、または1、2もしくは3個の同一のまたは異なる基Rにより置換されている]を表し;
は、水素、シアノ、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C−アルコキシを表し;
は、C〜C−アルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C−シクロアルキル[その際、これらの基は、置換されていないか、または1または2個の同一のまたは異なる基R’:
(R’は、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、ベンジル、フェニルまたはフェノキシ[このフェニルは、置換されていないか、または1または2個の同一のまたは異なるRにより置換されている]を表す)により置換されている]を表し;且つ
は、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、またはC〜C−アルキニルを表す)を表す;
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式II:
【化3】

(式中、
Tは、炭素または窒素原子を表し、
’は、ハロゲン、メチルおよびトリフルオロメチルからなる系から選択され、
yは、ゼロ、1または2を意味し、
は、請求項1の式Iで定義したとおりであり;且つ
xは、ゼロ、1、2、3または4を意味する)
で表される活性物質を使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
式III:
【化4】

(式中、
は、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロメチル、ハロメトキシ、メチルおよびトリフルオロメチルからなる系から選択される1もしくは2個の同一のまたは異なる基[その際、基Rは、置換されておらず、またはC〜C−アルコキシイミノ基により置換されている]を表し;
Vは、OCH、またはNHCHを表し;且つ
Yは、CHまたはNを表す)
で表される活性物質を使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
式Iで表される化合物が、ピラクロストロビン、クレソキシムメチル、ジモキシストロビン、2−(オルト−((2,5−ジメチルフェニルオキシメチレン)フェニル)−3−メトキシアクリル酸メチル、ピコキシストロビン、トリフロキシストロビン、エネストロビン、オリサストロビン、メトミノストロビン、アゾキシストロビンおよびフルオキサストロビンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
式Iで表される化合物が、アゾキシストロビン、ピラクロストロビンおよびピコキシストロビンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
式Iで表される化合物がピラクロストロビンである、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
活性化合物の施用を、植物の生長期間の最初の6週間の間または該植物の出芽後に行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
活性化合物の反復施用を行う、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
活性化合物の反復施用を10〜20日毎に行う、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
活性化合物の2〜10回の施用を1シーズンにわたって行う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
葉面施用として行う、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
野菜または作物について行う、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ダイズ、トウモロコシ、ワタ、タバコ、インゲンマメ、コムギ、ライムギおよびエンドウマメについて行う、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
禾穀類について行う、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
コムギについて行う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
セプトリア属の種(Septoria spp.)に対する耐性を植物に誘導する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
セプトリア・トリチキ(Septoria tritici)に対する耐性を植物に誘導する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
多年生植物について行う、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ブドウの木について行う、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、プラズモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、エリシフェ・ネカトル(Erysiphe necator)および/またはエスカ(Esca)に対する抵抗性を植物に誘導する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
活性化合物をさらなる殺菌化合物と共に使用する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
有害菌類に対して抵抗性の植物を作出する方法であって、植物、植物が生育している土壌もしくは植物が生育する土壌および/または該植物が生育する種子を、請求項1〜9のいずれか1項で定義した活性化合物の有効量で処理することを含んでなる、前記方法。

【公表番号】特表2009−513598(P2009−513598A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537059(P2008−537059)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067480
【国際公開番号】WO2007/048735
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】