説明

有料道路料金収受設備の車載機

【目的】 不正使用を防止するため、所定条件がととのうまではICカードの抜き取りを不可とする。
【構成】 ICカード12の先をカード挿入孔6に差し込んだ状態でカバー部3を閉じていくと、閉じるのに応じて搬送ローラ7a,7bが時計回り方向に回転してICカード12をカード挿入孔6内に取り込み、ソレノイド15のロッド15aが係止凹部13に係止してカバー部3の閉状態をロックする。閉状態のときにイジェクトスイッチ17を押したとき、CPU18は、新たな残高が記憶されているときにはソレノイド15の係止状態をやめさせるが、新たな残高が記憶されていないときには、ソレノイド15の係止状態を保持したままとしカバー部3の閉状態を続けICカード12の抜き取りを防止する。閉状態でソレノイド15の係止状態が解除されたら、バネ14によりカバー部3は開き、カバー部3の開きに応じて搬送ローラ7a,7bが反時計回り方向に回転してICカード12がカード挿入孔6から出てくる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有料道路の料金収受設備の車載機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、有料道路の料金収受システムでは、料金所で収受員がドライバから現金を直接収受したり、或いは、ドライバに現金を自動機に投入させて自動的に料金を収受させる方法が採用されている。この為、ドライバは、料金所で一旦停止し、現金を用意する必要があった。
【0003】これに対して、料金所での料金の受渡しの必要のない近未来の料金収受システムとして、ID情報を記録し、外部と無線通信可能な非接触式ICカード等の車載機を利用したシステムが開発されている。例えば、図3にその一例を示す。同図において、01は車両検知装置、02は料金収受装置、03は車両、04は車載機、05は発進検知装置、06はデータ処理装置、011は路上機である。
【0004】車両検知装置01は、車両03を1台毎に分離して検知する車両分離器08,09と、車両03の軸数を検出する軸数検出器010とから構成される。車両検知装置01は、車両分離器08,09により通行する車両03を1台毎に分離検出し、同時に軸数検知器010により車両03の軸数の検出を行い、料金収受装置02に検出信号を送出する。
【0005】路上機011はカードアンテナ012が設けられ、カードアンテナ012により車両03の車載機04からの電波を受信する。路上機011では車載機04に記録されたID情報や残高情報を読み取り、料金収受装置02へ車載機04のデータを送信する。
【0006】料金収受装置02はブース収受機013と領収書発行機014で構成され、ブース収受機013に設けられた車種別の押釦を押圧することにより、領収書発行機014より領収書を発行する。発進検知装置05は、車両03の通過検出を行う車両分離器015,016と車両03の軸数検知を行う軸数検知器017とから構成され、発進検知装置05では通行する車両03の発進完了を検知してシステムを元の状態へ戻すものである。
【0007】データ処理装置06は、車載機04の処理データ及びブース収受機013で処理した処理データ等を集計記録するものである。料金表示器018はブース収受機013で処理した車両の料金額の表示を行い、車載機04で使用する前払い式カードの利用後の残高、残回数の表示を行うものである。
【0008】発進案内信号燈019は、車載機04を持参している車両03に対して通行の可否を知らせるものである。発進警告灯020は、車載機04を持参している車両03に対してカード読み取り不良の時点で警告を発するものである。監視テレビカメラ021はカード読み取り不良の場合に車両03を撮影するものである。
【0009】ここで従来の分離型の車載機04の構成を、図4を参照して説明する。同図に示すように車載機04は、車両03に固定設置されたアダプタ040と、可搬式でありアダプタ040に対し挿入,挿出されるICカード049とで構成される。アダプタ040は、CPU(中央処理装置)041とROM042と通信回路043とICカードインターフェース回路044とICカード挿入部045とアンテナ046とバッテリ047を有している。ROM042には制御用プログラムと車種情報及び車両用ID情報が記憶されている。ICカード049には残高情報,支払い履歴情報等が、書替え可能に格納されている。
【0010】定常時にはICカード049がICカード挿入部045に挿入されている。挿入されたICカード049とCPU041との間のデータ通信はICカードインターフェース回路044を介して行なわれる。そしてCPU041は、ROM042に記憶されている制御プログラムに従い、以下に述べるような制御をする。なおバッテリ047により給電が行なわれ、アンテナ046により路上機011との間でデータの無線伝送をする。またICカード049は、残高の更新をするときなどに、アダプタ040から抜き出され、残高の更新をしたICカード049が再びアダプタ040のICカード挿入部045に挿入される。
【0011】車両03が図3に示すような料金所に入るとCPU041を中心として次のような制御が行なわれる。
(1)CPU041は、通信回路043及びアンテナ046を介して路上機011と無線通信し、路上機011からの要請により、ICカード049をアクセスし残高情報,支払い履歴情報を読み出し、この残高情報及び支払い履歴情報とROM042から得た車種情報及び車両用ID情報を、通信回路043及びアンテナ046を介して無線出力する。
(2)路上機011は、車載機04からID情報等を受けると、車種等に応じた課金情報(課金料金,通行時刻,通行場所等の情報)を、車載機04に向けて送る。
(3)CPU041は、アンテナ046及び通信回路043を介して路上機011から受信した課金情報を課金履歴としてICカード049へ格納すると共に、前回の残高から課金料金を減算処理し減算処理した残高をICカード049に格納する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところで図4に示すような分離型の車載機04では次のような問題があった。即ちICカード049から情報を読み取った後であって、通行料を減算処理した新たな残高をICカード049に記憶させる前にICカード049を引き抜くと、新たな残高の記憶ができなくなる。このようにすると有料道路を走行しても残高が減らず、不正使用が行なわれることになる。
【0013】本発明は、上記従来技術に鑑み、不正使用を防止することのできる有料道路料金収受設備の車載機を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の構成は、車両に固定設置されると共に無線通信機能を有するアダプタとこのアダプタに挿入されるデータカードとでなり、有料道路の料金所に備えた路上機に近づくと、ID情報とデータカードに記憶していた残高情報を路上機に無線伝送すると共に、路上機から課金情報を受けると前回の残高から課金料金を減算し減算して得た新たな残高情報をデータカードに記憶する車載機において、前記車載機のアダプタは、データカードが挿入されると挿入状態をロックするロック機構と、イジェクトスイッチと、イジェクトスイッチが押され且つ新たな残高情報がデータカードに記憶されたことを条件に前記ロック機構によるロック状態を解除する制御部とを有することを特徴とする。
【0015】
【作用】データカードを車載機のアダプタに挿入するとこの挿入状態がロックされる。イジェクトスイッチを押したとき、新たな残金情報がデータカードに記憶されていればロック状態を解除してデータカードを取り出すことができるが、新たな残金情報がデータカードに記憶されていないときには、イジェクトスイッチを押してもロック状態を保持する。
【0016】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】図1は本発明の実施例に係る車載機のうち、特にカバー部を開けた状態でカバー部及びその近くの部材を示す構成図、図2はカバー部を閉じた状態で示す構成図である。両図に示すように、アダプタ本体1には、蝶番2によりカバー部3が開閉自在に取り付けられており、更にアダプタ本体1には本体歯車4が回転自在に備えられ、カバー部3には本体歯車4に噛合する駆動源歯車5が固定されている。カバー部3にはカード挿入孔6が形成され、カード挿入孔6に沿い搬送ローラ7a,7b及びガイドローラ8a,8b,8c,8dが配置され、カード挿入孔6の奥にはストッパの機能も併せ持つカード挿入検出センサ9が設置されている。またベルト10,11により、本体歯車4の回転が搬送ローラ7a,7bに伝達できるようにしている。
【0018】ICカード12はカード挿入孔6に挿入され、挿入時に残高情報や課金履歴情報が読出・書込される。カバー部3の前面(図では左面)には、係止凹部13が形成されており、またカバー部3はバネ14により開方向(図中では蝶番2を中心として時計回り方向)に付勢されている。カバー部3が閉じたときには図2に示すようにソレノイド15のロッド15aが係止凹部13に入って係止(ロック)すると共に、カバー閉スイッチ16がオンする。イジェクトスイッチ17は、アダプタ本体1の表面に装備されており、中央処理装置(CPU)18に接続されている。CPU18には前述したソレノイド15及びカバー閉スイッチ16も接続されている。
【0019】CPU18により、路上機との無線データ通信の制御や、ICカード12に対するデータ(残金情報や課金履歴情報)の読出・書込制御や、路上機から課金情報を受けたときに前回の残高から課金料金を減算して新たな残高を求める演算をする。そしてCPU18は、新たな残高がICカード12に記憶されたかどうかを判定することができる。
【0020】ここでICカード12を挿入するときの動作を説明する。まず図1に示すようにICカード12の先をカード挿入孔6に差し込む。次にバネ14のバネ力に抗してカバー部3を押して閉じていくと、駆動源歯車5が下方に向って本体歯車4が時計回り方向に回転して搬送ローラ7a,7bが時計回り方向に回転する。搬送ローラ7a,7bの時計回り方向の回転により、ICカード12はカード挿入孔6の奥(図では右方)に送られていき、ICカード12がカード挿入センサ9に当接したところでICカード12の送りが停止する。カバー部3の裏面とアダプタ本体1の表面が真直になったら、即ちカバー部3が完全に閉められたらカバー閉スイッチ16がオンする。カバー閉スイッチ16のオンにより、CPU18はソレノイド16を逆励磁する。ソレノイド16は逆励磁されることによりロッド16aが右方に突出して係止凹部13に係合し(図2参照)、これによりカバー部3は閉状態でロックされる。
【0021】次にICカード12を取り出すときの動作を説明する。まずイジェクトスイッチ17を押す。このときCPU18は、新たな残高がICカード12に記憶されたかどうかを判定し、新たな残高がすでに記憶されているときには、ソレノイド16を励磁する。これによりソレノイド16のロッド16aが係止凹部13から外れてロック状態が解除され、カバー部3はバネ14の力により上方に向い移動して開いていく。カバー部3が開いていくと、駆動源歯車5が上方に向って本体歯車4が反時計方向に回転して搬送ローラ7a,7bが反時計回りに回転する。搬送ローラ7a,7bの反時計回り方向の回転により、ICカード12は図中で左方に送られてカード挿入孔6の外に出ていく。
【0022】一方、カバー部3が閉じられている状態において、新たな残高がICカード12に記憶されていないことがCPUにより判定されているときには、たとえイジェクトスイッチ17を押したとしてもCPU18はソレノイド16を反励磁状態にしたままとし、カバー部3の閉ロック状態を保持する。この結果、ICカード12を挿入した状態で車載機と路上機との間で無線通信は開始されてはいるが、ICカード12に新たな残高を記憶する前では、たとえイジェクトスイッチ17を押したとしても、カバー部3の閉ロック状態が保持されICカード12を抜き取ることはできず、不正使用を防止することができる。
【0023】
【発明の効果】以上実施例と共に具体的に説明したように本発明によれば、データカードに新たな残高が記憶されるまでは、たとえイジェクトスイッチを押しても、データカードをアダプタに挿入した状態をロックするため、新残高を記憶する前にデータカードを取り出すことができず、不正使用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る車載機を示す構成図。
【図2】本発明の実施例に係る車載機を示す構成図。
【図3】料金所を示す構成図。
【図4】分離型の車載機を示すブロック図。
【符号の説明】
1 アダプタ本体
2 蝶番
3 カバー部
4 本体歯車
5 駆動源歯車
6 カード挿入孔
7a,7b 搬送ローラ
8a,8b,8c,8d ガイドローラ
10,11 ベルト
12 ICカード
13 係止凹部
14 バネ
15 ソレノイド
15a ロッド
16 カバー閉スイッチ
17 イジェクトスイッチ
18 中央処理装置(CPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両に固定設置されると共に無線通信機能を有するアダプタとこのアダプタに挿入されるデータカードとでなり、有料道路の料金所に備えた路上機に近づくと、ID情報とデータカードに記憶していた残高情報を路上機に無線伝送すると共に、路上機から課金情報を受けると前回の残高から課金料金を減算し減算して得た新たな残高情報をデータカードに記憶する車載機において、前記車載機のアダプタは、データカードが挿入されると挿入状態をロックするロック機構と、イジェクトスイッチと、イジェクトスイッチが押され且つ新たな残高情報がデータカードに記憶されたことを条件に前記ロック機構によるロック状態を解除する制御部とを有することを特徴とする有料道路料金収受設備の車載機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−14042
【公開日】平成7年(1995)1月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−143135
【出願日】平成5年(1993)6月15日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)