説明

有核酵素含有造粒物の製造方法

【課題】高活性な有核酵素含有造粒物を収率良く製造することのできる方法の提供。
【解決手段】核となる物質と酵素とを含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造する方法であって、次の工程(1)〜(4)、
(1)有核酵素含有造粒物から所望の粒度以外の造粒物を分離する工程、
(2)分離した所望の粒度以外の造粒物を粉砕して粉砕物を得る工程、
(3)当該粉砕物から、平均粒径が前記所望の有核酵素含有造粒物の平均粒径に対して0.06〜0.5倍の平均粒径を有する成分を分離し、回収酵素粉末として得る工程、
(4)核となる物質、酵素、及び回収酵素粉末を含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造する工程、
を有する、有核酵素含有造粒物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有核酵素含有造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用の洗浄剤や漂白剤には、その洗浄力を高めるために各種の酵素が配合されている場合が多い。この酵素は使用時に水中に溶解して効果を発揮する。従って、製造時から使用に至るまでの期間、酵素と洗剤成分あるいは外気との接触をできるだけ最小にするなどして、酵素を失活させずに機能を保持し続けることが重要である。また、製造時の作業者や使用時の消費者における取り扱いの観点より、微粉末よりも造粒物の形態が好ましい。そのため、通常酵素は洗浄剤等に配合する際には造粒物として配合されている。
【0003】
有核酵素含有造粒物の製造方法としては、酵素粉末を、水溶性核物質及び水溶性有機バインダーと共に攪拌転動造粒機により乾式造粒する方法が主流となっている(特許文献1)。また、酵素含有造粒物を連続的に製造するために、最初に水溶性核物質のみを仕込み、攪拌しながら攪拌転動造粒機を特定の温度に加熱した後、次いで他の原料を仕込み、造粒する洗剤用酵素顆粒の連続的製造方法(特許文献2)や、酵素の失活を抑制するため、酵素溶液を乾燥して粉末状酵素製剤とする工程及び/又は得られた粉末状酵素製剤を造粒する工程をアミノ酸(塩)の存在下にて行う酵素含有造粒物の製造方法(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−257990号公報
【特許文献2】特開2007−70556号公報
【特許文献3】特開2008−164489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、攪拌転動造粒機により乾式造粒する方法では、所望の粒子径を有する有核酵素含有造粒物以外の粒度の粒状物も同時に製造されてしまい、歩留まりが低くなるという問題がある。また、有核酵素含有造粒物が洗浄剤としての性能を発揮するためには、酵素活性が高いことが望まれる。
従って、本発明の課題は、高活性な有核酵素含有造粒物を収率良く製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが検討した結果、攪拌転動造粒機を用いる有核酵素含有造粒物の製造において、造粒工程において生じる所望の粒度以外の造粒物を有核酵素含有造粒物から分離し、粉砕した後、特定の粒度分布の成分を造粒原料としてリサイクルすることで、収率良く有核酵素含有造粒物を得ることができることを見出した。また、再使用する成分は粉砕工程を経ているという点から回収粉砕後にも酵素活性が残存しているのかどうかが懸念された。しかしながら、特定の粒度分布の成分を用いることにより、全く意外にも、むしろ酵素活性が向上した有核酵素含有造粒物となることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、核となる物質と酵素とを含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造する方法であって、次の工程(1)〜(4)、
(1)有核酵素含有造粒物から所望の粒度以外の造粒物を分離する工程、
(2)分離した所望の粒度以外の造粒物を粉砕して粉砕物を得る工程、
(3)当該粉砕物から、平均粒径が前記所望の有核酵素含有造粒物の平均粒径に対して0.06〜0.5倍の平均粒径を有する成分を分離し、回収酵素粉末として得る工程、
(4)核となる物質、酵素、及び回収酵素粉末を含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造する工程、
を有する、有核酵素含有造粒物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高活性な有核酵素含有造粒物を収率良く得ることができる。また、原料の消費を節減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における有核酵素含有造粒物は、核となる物質の表面に、酵素が付着して造粒された有核造粒物である。
【0010】
核となる物質の平均粒径は、核の形成性より200μm以上が好ましい。また、平均粒径は、200〜850μm、更に350〜800μm、特に425〜700μmであることが、造粒収率の点から好ましい。更に、粒子径が420μm以下の粒子が10%以下、更に7%以下、特に5%以下であることが好ましく、また、粒子径710μm以上の粒子が10%以下、更に7%以下、特に5%以下であることが同様の点から好ましい。
【0011】
核となる物質の仕込量は、得られる有核酵素含有造粒物の収率の点から、有核酵素含有造粒物全体の30〜80質量%(以下、単に「%」という)が好ましく、更には40〜60%が好ましい。
【0012】
核となる物質は、洗浄剤や漂白剤として使用する際に溶解性が高いことが好ましいため、水溶性であることが好ましい(以下、水溶性核物質ともいう)。
ここで、水溶性核物質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ソーダ、砂糖等が挙げられる。
【0013】
本発明における酵素は、洗浄剤へ配合して効果を発揮する酵素であれば特に制限されないが、例えば、プロテアーゼ、エステラーゼ、カルボヒドラーゼ等が挙げられる。プロテアーゼの具体例としては、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、ケラチナーゼ、エラスターゼ、ズブチリシン、パパイン、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等が挙げられる。エステラーゼの具体例としては、ガストリックリパーゼ、パンクレアチックリパーゼ、植物リパーゼ類、ホスホリパーゼ類、コリンエステラーゼ類、ホスホターゼ類等が挙げられる。カルボヒドラーゼの具体例としては、セルラ−ゼ、マルターゼ、サッカラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、α−及びβ−グリコシダーゼ等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、タンパク分解酵素、即ちプロテアーゼを用いることが好ましい。
【0014】
酵素は、酵素粉末の形状で用いることが好ましい。酵素粉末は、酵素を含有する溶液を従来の噴霧乾燥等の方法で乾燥して得ることができる。この酵素を含有する溶液には、酵素活性を一定に保つための希釈剤を必要に応じて配合することができる。希釈剤としては、例えば、硫酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸又はその塩、糖類等が挙げられる。
【0015】
有核酵素含有造粒物中の酵素粉末の含有量は特に制限はないが、洗浄剤に配合して使用する際の効果から考えて一般には0.01〜30%が好ましく、より好ましくは0.1〜30%である。
【0016】
核となる物質の表面に酵素を付着させる場合、溶解性の観点より水溶性バインダーを用いることが好ましい。水溶性バインダーとしては、融点或いは軟化点が25〜90℃の水溶性有機バインダーが、保存中の造粒物のケーキングの抑制、造粒物の溶解性、造粒時の酵素失活抑制の点から好ましい。融点或いは軟化点は、更に30〜80℃、特に35〜70℃であることが同様の点から好ましい。具体的物質としては、(a)ポリエチレングリコール又はその誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール共重合体からなる群より選ばれる水溶性高分子、(b)ポリオキシエチレン・アルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、(c)平均分子量が4000以上のポリカルボン酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。中でもポリエチレングリコールが、酵素含有造粒物の溶解性の点から好ましい。
【0017】
水溶性バインダーの使用量は、バインダー毎に性質の相違があるので一概にはいえないが、得られる酵素含有造粒物の酵素活性をできるだけ高めるために、できるだけ少量でバインダー効果が発現するものが一般には好ましい。そのため、水溶性バインダーの含有量は、有核酵素含有造粒物中に5〜50%が好ましく、更に10〜30%が好ましい。
【0018】
有核酵素含有造粒物には、さらに必要に応じて、粉末状の増量剤;界面活性剤;糖、カルボキシメチルセルロース等の有機物、色素、染料、顔料等を含有させることができる。
例えば、粉末状の増量剤としては、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、塩酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の無機塩を用いることが好ましい。中でも硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の水溶性無機アルカリ金属塩が洗浄性能に影響等がない点から好ましい。また他の増量剤としてクエン酸ナトリウム等の水溶性有機酸塩、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ゼオライト、炭酸マグネシウム、活性白土、カオリン、ケイソウ土、ベントナイト、パーライト、酸性白土等が挙げられる。
【0019】
本発明における有核酵素含有造粒物は、攪拌転動造粒機を用いて製造される。ここで、攪拌転動造粒機とは、攪拌羽根を備えた主攪拌軸を内部の中心に有し、更に混合を補助し粗大粒子の発生を抑制するための補助攪拌軸を一般的には主攪拌軸と直角方向に壁面より突出させている構造を有する造粒機である。攪拌転動造粒機としては、主攪拌軸が底面に対して垂直に設置されているものとしてヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))、ハイスピードミキサー(深江パウテック(株)、(株)アーステクニカ)、バーチカルグラニュレーター(富士産業(株))等を挙げることができる。主攪拌軸が水平に設置されているものとしてはレディゲミキサー(松坂技研(株))、プローシェアミキサー(太平洋機工(株))等を挙げることができる。
【0020】
造粒は、乾式造粒が好ましい。乾式造粒とは、バインダーとして水を使用しない造粒方を意味し、造粒中のバインダー中の水分量は0〜10%、更に0〜5%、特に0〜3%であることが、造粒中の酵素失活抑制の点から好ましい。
【0021】
造粒時の温度は、水溶性バインダーの融点或いは軟化点付近が好ましく、40〜110℃、さらに45〜100℃、特に50〜90℃が、操作性及び造粒中の酵素失活抑制の点から好ましい。
【0022】
造粒により、有核酵素含有造粒物が得られる。所望の粒度は求める用途によって適宜決定することができるが、本発明においては、所望の有核酵素含有造粒物の粒度として、その平均粒径が350〜1000μm、さらに400〜700μmの範囲であるものが造粒収率、あるいは水への溶解性や嵩密度の点から好ましい。また、所望の有核酵素含有造粒物の粒子径範囲が、212〜2800μm、さらに355〜1000μmの範囲であることが同様の点から好ましい。
【0023】
造粒の際、本発明の所望の粒度以外の造粒物、すなわち、所望の粒度より大きい粒度の粗大粒状物、及び所望の粒度より小さい粒度の微粉も同時に生じる。本発明では、有核酵素含有造粒物から所望の粒度以外の造粒物を分離する工程(1)を有する。
粗大粒状物及び微粉の分離は、篩分けにより行うのが好ましい。具体的には、目的に応じた篩を用いて所望の有核酵素含有造粒物を得、篩分け後に除かれた粗大粒状物及び微粉を回収する。篩は、JIS Z 8801規定の金属製網の篩を用いるのが好ましい。
【0024】
また、本発明では、工程(1)において分離した所望の粒度以外の造粒物を粉砕して粉砕物を得る工程(2)を有する。粉砕方法は、特に限定されず、例えば、ターボミルやブレードミル等の粉砕機を用いる方法等により行うことができる。粉砕時間、粉砕時の温度、粉砕機の回転数等の粉砕条件は、所望の粒子を形成するために適宜設定すればよいが、例えば、ターボミルを用いる場合は、1000〜5000r/minで行うのが好ましく、特に2000〜3000r/minで行うのが好ましい。粉砕時の温度は、使用している水溶性バインダーの融点、或いは軟化点未満が好ましい。また、粉砕後の粉砕物は、粗大粒状物及び微粉を混合して粉砕したものでもよいが、粗大粒状物を粉砕したものに微粉を混合したものでもよい。
【0025】
本発明においては、工程(2)より得られた粉砕物から、平均粒径が前記所望の有核酵素含有造粒物の平均粒径に対して0.06〜0.5倍の範囲となる成分を分離し、回収酵素粉末として得る工程(3)を有する。本比率は0.1〜0.5倍、さらに0.15〜0.4倍、特に0.2〜0.3倍の範囲とするのが、造粒性及び酵素失活の点から好ましい。所望の成分は、例えば、粉砕時の条件を適宜調整し、さらに、前記と同様、篩によって分級することにより得ることができる。
【0026】
回収酵素粉末の平均粒径は、40〜300μm、さらに75〜230μm、特に100〜150μmであることが酵素活性を高める点、造粒性の点から好ましい。なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折散乱法により体積基準に従って求められる平均値をいう。
また、回収酵素粉末の粒子径範囲は、32〜355μm、さらに75〜180μm、特に100〜150μmの範囲であるのが同様の点から好ましい。なお、本明細書において、粒子径範囲とはJIS規格の篩の目開きの値の幅をもっていう。
【0027】
本発明では、回収酵素粉末を、原料の一部として用いる。すなわち、本発明は、核となる物質、酵素、及び回収酵素粉末を含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造する工程(4)を有する。
工程(4)における原料中の回収酵素粉末の含有量は3〜25%、更に4〜20%、特に5〜15%、殊更6〜12%とするのが、造粒性の点から好ましい。
【0028】
上記の工程は複数回繰り返しても差し支えない。すなわち、回収酵素粉末を用いて有核酵素含有造粒物を製造し、さらに有核酵素含有造粒物から所望の粒度以外の造粒物を分離し、当該造粒物を粉砕して粉砕物を得、当該粉砕物から平均粒径が前記所望の有核酵素含有造粒物の平均粒径に対して0.06〜0.5倍の平均粒径を有する成分を分離し、回収酵素粉末として得、核となる物質、酵素、及び当該回収酵素粉末を含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造することができる。
【0029】
本発明の有核酵素含有造粒物は、必要に応じてコーティングすることもできる。コーティング剤としては、特に制限されないが、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、デンプン誘導体等の水溶性被膜形成ポリマー;これらのポリマーとタルク、クレー、酸化チタン、炭酸カルシウム等の水溶性又は難溶性無機粒子又はアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属炭酸塩等の保護剤等との組み合わせが挙げられる。コーティング剤は有核酵素含有造粒物100質量部(以下、単に「部」と表記する)に対して0.01〜0.7部、更に0.05〜0.6部とすることが酵素の保存安定性向上効果の点から好ましい。
【0030】
被覆方法としては、流動層造粒機、コーティングパン式造粒機、攪拌造粒機等の装置により常法により被覆する方法が挙げられる。
【0031】
本発明方法により製造された有核酵素含有造粒物は、洗浄剤組成物の配合成分として有用であり、これを配合した洗浄剤組成物は、衣料用、食器用、住居用等の洗浄剤として使用することができる。
【実施例】
【0032】
〔分析方法〕
<平均粒径の測定>
LS 13 320(BECKMAN COULTER製)を用い、レーザー回折散乱法にて測定した。
【0033】
<歩留まりの算出法>
次式により、有核酵素含有造粒物の歩留まりを算出した。
所望の有核酵素含有造粒物の重量/投入原料の重量×100 (%)
【0034】
<酵素活性測定法>
100mM AAPL(タンパク研究所:Glt−Ala−Ala−Pro−Leu−pNAジメチルスルホキシドに溶解:終濃度5mMとして使用)及びリン酸緩衝液(1/15mol/L、pH7.4)を0.9mlに酵素溶液0.05mlを加え30℃、10分間反応を行なった。5%(w/v)のクエン酸溶液を2ml添加して反応を停止させ、分光高度計を用いて420nmにおける吸光度を測定した。得られた値に酵素の希釈率を乗じた値をプロテアーゼの力価とした。
【0035】
<活性収率の算出法>
次式により、活性収率を算出した。
有核酵素含有造粒物実活性/有核酵素含有造粒物理論活性×100 (%)
ここで、有核酵素含有造粒物理論活性とは、造粒前の酵素粉末の活性[U/g−酵素粉末]に造粒物中の酵素粉末含有量[g−酵素粉末/g−造粒物]を乗じて計算される、造粒物単位重量あたりの酵素活性[U/g−造粒物]である。
また、回収酵素粉末を使用する場合は、酵素粉末の活性[U/g−酵素粉末]及び、回収酵素粉末の活性[U/g−酵素粉末]それぞれに造粒物中の酵素粉末含有量[g−酵素粉末/g−造粒物]と回収酵素粉末含有量[g−酵素粉末/g−造粒物]を乗じ、それらを加算したものである。
有核酵素含有造粒物実活性とは、造粒により得られた造粒物の単位重量あたりの酵素活性[U/g−造粒物]である。
【0036】
〔酵素粉末の調製〕
Bacillus sp.KSM−9865(FEM−P18566)由来のプロテアーゼ(酵素固形分6%)溶液(第4級アンモニウム塩(コータミン60W、花王(株))を酵素固形分100部に対し0.1部含有)に硫酸ナトリウムを添加して、並流式噴霧乾燥機で乾燥し、酵素粉末とした。
【0037】
〔原料〕
核となる物質として、焼き塩(粒子径710μm以上の粒子が5%以下、420μm以下の粒子が5%以下で、平均粒径520μmもの)を用いた。
バインダーとして、ポリエチレングリコール(PEG6000(花王(株))、融点60℃)を用いた。
硫酸ナトリウムは平均粒径が100μm以下の粉末を用いた。
比較例1
〔1回目造粒〕
酵素粉末(100部)、硫酸ナトリウム(163部)、ポリエチレングリコール(35部)、焼き塩(586部)、酸化チタン(75部)を原料として用いた。
原料をハイスピードミキサー((株)アーステクニカ製)に投入し、ジャケットに90℃の温水を流しながら、アジテーター540r/min、チョッパー900r/minで攪拌転動を行ない、内容物を88℃まで上昇させた。その後温水を止め、冷却水をジャケットに流し、内容物が54℃まで冷却した。原料投入から約1時間15分の造粒操作により造粒物を得た。この造粒物を篩(1000μm・355μm)で篩うことにより、所望の有核酵素含有造粒物(粒子径範囲1000μm〜355μm、平均粒径570μm、以下同じ)895部とオーバーサイズ(粒子径範囲1000μm超)96部、アンダーサイズ(粒子径範囲355μm未満)75部の造粒物を得た。所望の有核酵素含有造粒物の歩留まり、活性収率、及びその積を表1に示す(以下同じ)。
【0038】
比較例2
1回目造粒で得られたオーバーサイズをターボミル(2000r/min)で1Pass粉砕した後、アンダーサイズと混合し、篩(180μm・425μm)で篩うことにより粒子径範囲180〜425μm、平均粒径320μmの回収酵素粉末を得た。この回収酵素粉末(107部)と、酵素粉末(100部)、硫酸ナトリウム(163部)、ポリエチレングリコール(35部)、焼き塩(586部)、酸化チタン(75部)をハイスピードミキサー(アーステクニカ製)に投入し、比較例1と同じ条件で造粒操作を行い、有核酵素含有造粒物を得た。
【0039】
実施例1
1回目造粒で得られたオーバーサイズ及び、アンダーサイズをターボミル(2500r/min)にて1Pass粉砕したものを粉砕物とし、篩(100μm・180μm)で篩うことにより粒子径範囲100〜180μm、平均粒径150μmの回収酵素粉末を得た。この回収酵素粉末(107部)と、酵素粉末(100部)、硫酸ナトリウム(163部)、ポリエチレングリコール(35部)、焼き塩(586部)、酸化チタン(75部)を用いて比較例1と同様に攪拌転動造粒を行ない、所望の有核酵素含有造粒物を得た。
【0040】
実施例2
実施例1で得られた粉砕物を篩(100μm・150μm)で篩うことにより粒子径範囲100〜150μm、平均粒径120μmの回収酵素粉末を得た。この回収酵素粉末(107部)と、酵素粉末(100部)、硫酸ナトリウム(163部)、ポリエチレングリコール(35部)、焼き塩(586部)、酸化チタン(75部)を用いて実施例1と同様に攪拌転動造粒を行ない、所望の有核酵素含有造粒物を得た。
【0041】
実施例3
実施例1で得られた粉砕物を篩(75μm・149μm)で篩うことにより粒子径範囲75〜149μm、平均粒径100μmの回収酵素粉末を得た。この回収酵素粉末(107部)と、酵素粉末(100部)、硫酸ナトリウム(163部)、ポリエチレングリコール(35部)、焼き塩(586部)、酸化チタン(75部)を用いて実施例1と同様に攪拌転動造粒を行ない、所望の有核酵素含有造粒物を得た。
【0042】
実施例4
1回目造粒で得られたオーバーサイズ及び、アンダーサイズをターボミル(4000r/min)にて1Pass粉砕し、篩(32μm・75μm)で篩うことにより粒子径範囲32〜75μm、平均粒径が50μmの回収酵素粉末を得た。この回収酵素粉末(107部)と、酵素粉末(100部)、硫酸ナトリウム(163部)、ポリエチレングリコール(35部)、焼き塩(586部)、酸化チタン(75部)を用いて実施例1と同様に攪拌転動造粒を行ない、所望の有核酵素含有造粒物を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示したように、造粒工程において生じる所望の粒度の有核酵素含有造粒物以外の造粒物を回収して粉砕した後、特定の粒度分布の成分を次の造粒原料としてリサイクルすることで、歩留まりが高くなり、且つ活性の高い有核酵素含有造粒物が得られた。特に、粉砕後の平均粒径を100〜150μmとすることで、活性の高い有核酵素含有造粒物が収率良く得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核となる物質と酵素とを含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造する方法であって、次の工程(1)〜(4)、
(1)有核酵素含有造粒物から所望の粒度以外の造粒物を分離する工程、
(2)分離した所望の粒度以外の造粒物を粉砕して粉砕物を得る工程、
(3)当該粉砕物から、平均粒径が前記所望の有核酵素含有造粒物の平均粒径に対して0.06〜0.5倍の平均粒径を有する成分を分離し、回収酵素粉末として得る工程、
(4)核となる物質、酵素、及び回収酵素粉末を含む原料を用い、攪拌転動造粒機を用いて有核酵素含有造粒物を製造する工程、
を有する、有核酵素含有造粒物の製造方法。
【請求項2】
工程(4)における原料中の回収酵素粉末の含有量が3〜25質量%である、請求項1記載の有核酵素含有造粒物の製造方法。
【請求項3】
有核酵素含有造粒物の平均粒径が350〜1000μmである、請求項1又は2に記載の有核酵素含有造粒物の製造方法。
【請求項4】
核となる物質の平均粒径が200〜850μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有核酵素含有造粒物の製造方法。
【請求項5】
回収酵素粉末の平均粒径が40〜300μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有核酵素含有造粒物の製造方法。
【請求項6】
核となる物質が水溶性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有核酵素含有造粒物の製造方法。
【請求項7】
核となる物質が塩化ナトリウムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有核酵素含有造粒物の製造方法。

【公開番号】特開2011−223902(P2011−223902A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94803(P2010−94803)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】