説明

有機−無機ハイブリッド材料の製造方法および有機−無機ハイブリッド材料

【課題】本発明は、金属含有基が全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの分子構造中に共有結合しており、線膨張係数が顕著に低減された有機−無機ハイブリッド材料と、その製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料の製造方法は、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される1または2以上の単量体A、並びに芳香族ジアミンおよび芳香族ヒドロキシアミンからなる群より選択される1または2以上の単量体Bを含む単量体群(但し、芳香族ジカルボン酸のみと芳香族ジアミンのみとの組み合わせを除く)を重合させ、全芳香族ポリエステルアミドを得る工程;および、得られた全芳香族ポリエステルアミドに特定のイソシアネート化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機ハイブリッド材料を製造するための方法、および有機−無機ハイブリッド材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶性を有する全芳香族ポリエステルのうち、特に加熱溶融状態において液晶性を示す材料はサーモトロピック液晶性ポリエステルや液晶性ポリマーといわれる。かかる全芳香族ポリエステルは、高い耐熱性、機械的強度、ガスバリア性を示し、さらに誘電損失が少ないという特性などから、今後、さらなる応用が期待されているスーパーエンジニアリングプラスチックである。
【0003】
しかし全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルは、溶融押出加工の際に異方性が生じる。即ち、溶融押出加工の際の剪断応力のために分子配向し、例えば、分子配向方向に線膨張係数が小さくなり、その直交方向では逆に線膨張係数が大きくなる。そこで、押出加工と同時に或いは逐次的にフィルムに延伸加工を施すことで分子配向を制御してフィルム面内での異方性を解消すると共に、樹脂全体の体積膨張係数をx−y−zの三軸で平均的に分け合った値よりも面内線膨張係数の値を小さくする技術が開発されている。当該技術によって、例えば一般的なプラスチック材料よりも小さな線膨張係数を示す銅箔などの材料と、面方向の膨張係数を同等の値に調整することが可能となる。
【0004】
しかしこの場合、体積線膨張係数は不変であることから、得られたフィルムのz軸方向の線膨張係数は、体積線膨張係数をx−y−zの三軸で平均的に分け合った値よりも必然的に大きくなってしまう。そのため、フィルムの厚さ方向に貫通孔を形成して銅メッキなどすることにより導電回路を形成した場合には、膨張係数の違いにより、最悪の場合には線膨張係数の小さい回路の断線に繋がるなどの不都合を生じる場合がある。
【0005】
その一方で、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルの流動性や加工性を改善することを目的にして、芳香族ジアミンや水酸基を有する芳香族アミンなどの成分を加えた全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドが知られている。その中には、非プロトン性溶剤に溶解できるものも存在する。
【0006】
全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドも全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルと同様に優れた耐熱性や強度などを示す。また、溶剤に溶解できる全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドは、その溶液をキャスティングすることによりフィルムとしたり、基材にコーティングして被膜とすることができる。その場合、分子配向制御を行わなくとも異方性を生じないという利点がある。
【0007】
しかし、キャスティングやコーティングで得られた全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドフィルムの体積膨張係数は、従来の全芳香族ポリエステルとほとんど変わらないことから、溶融押出後に延伸加工を施したフィルムに比べれば面内膨張係数が大きい。但し、得られた全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドフィルムのz軸方向の線膨張係数は、溶融押出後に延伸加工を施したフィルムに比べれば小さく、面内線膨張係数と同等程度となる。
【0008】
前述したとおり、キャスティングやコーティングで得られた面内線膨張係数の大きな全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドフィルムを金属箔など線膨張係数の小さな材料と積層したり、或いは金属材料を当該ポリエステルアミドでコーティングするような場合には、熱に対する変形量の違いから反りやカールが生じたり、極端なケースでは層間剥離が生じる。よって、当該ポリエステルアミドフィルムや当該ポリエステルアミドコーティング膜の面内線膨張係数を低減することは非常に重要である。
【0009】
もちろん、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルと同様に、延伸加工により全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドフィルムの面内線膨張係数を低減することは可能である。しかしそれではフィルム成形後に追加工程が必要であり、また、そのための設備も必要となることから製造コストが大幅に上昇してしまう。また、コーティングの場合では、コーティング膜は基材と一体化していることからそもそも延伸加工は不可能であるか、若しくは技術的難易度が高い。
【0010】
ところで、無機材料は有機材料と比較してより良好な耐熱性や硬度、低線膨張係数、耐溶剤性などの特性を有するが、概して脆く、また、柔軟性に乏しいという欠点を有する。それに対して、有機材料は耐熱性などに比較的劣るものの、柔軟性などに優れる。よって、無機材料をフィラーとして有機材料に混合したり、或いは蒸着やスパッタなどにより有機材料上へ無機材料層を形成させ、両者の特性を活かす工夫がされてきた。
【0011】
しかし、一般的に無機材料と有機材料は親和性が低く、両者を混合することで機械的特性がかえって低下してしまうことがある。かかる問題を解決するために無機フィラーを表面処理する技術もあるが、両者間の親和性が改善されたとしても、増粘などの問題から有機材料に対する無機フィラーの添加量には自ずと限界がある。また、蒸着やスパッタを行う場合では、無機材料との親和性を高めるため、有機材料にプライマー層を形成したり、表面粗化処理を行うことがある。しかし、特に厚い無機材料層を形成した場合には、当該層が有機材料の柔軟性に追従できず、屈曲などの際にクラックが発生したり、線膨張係数の違いから加熱により剥離などが生じ得る。
【0012】
そこで、有機材料と無機材料とを分子レベルで一体化し、それぞれの特性を相乗的に利用することを目的として、Siなどの金属元素を含む無機骨格を導入した有機−無機ハイブリッド材料が検討されている。
【0013】
例えば特許文献1には、水酸基またはカルボキシ基を有する含フッ素共重合体とアルコキシシラン化合物との部分縮合物を含む塗料が記載されている。当該塗料により形成された樹脂層は、長期耐久性や耐候性に優れるとされている。
【0014】
特許文献2には、エポキシ基を有するアルコキシシラン部分縮合物と、分子末端にカルボキシ基および/または酸無水物基を有するポリイミド樹脂とを開環エステル反応させた樹脂を含むコーティング用組成物が開示されている。当該変性ポリイミド樹脂は、耐熱性、機械的強度および接着性が改善されており、硬化収縮が少ないとされている。
【0015】
特許文献3には、官能基として金属アルコキシド基を有するポリカーボネートおよび/またはポリアリレートを、加水分解に続いて架橋した有機−無機ハイブリッド材料が記載されている。上記ポリカーボネート等は、水酸基、アミノ基、カルボキシ基などの官能基を有するポリカーボネート等を金属アルコキシド化合物と反応させて製造されている。また、当該ハイブリッド材料は、耐熱性、機械強度および耐水性が高いとされている。
【0016】
特許文献4には、反応性ケイ素含有基を側鎖に有するポリエチレンセグメントを有する共重合体であって、ポリカーボネートやポリアリレートなどが重縮合していてもよい共重合体が開示されている。当該共重合体は、反応性ケイ素含有基を有する不飽和モノマーなどをラジカル重合させることにより製造されている。また、当該共重合体は、強度、耐熱性、耐候性、耐薬品性などに優れるとされている。
【0017】
特許文献5には、反応性ケイ素含有基を有する不飽和モノマーや反応性ケイ素含有基を加水分解して縮重合した後、必要に応じてラジカル重合して硬化させる技術が記載されている。得られた硬化物は、透明性、耐熱性、硬度に優れるとされている。
【0018】
しかし、水酸基やカルボキシ基など金属含有基を導入するための反応性基が主鎖に存在する場合には、かかる反応性基を安定的に存在せしめるため、溶媒を用いるなど重合反応を穏和な条件で行う必要がある。
【0019】
それに対して液晶性ポリエステルや液晶性ポリエステルアミドの場合、耐熱性を高めるために溶媒を用いずに、280〜350℃といったラジカル重合の場合とは比較にならないほどの高温下で重合反応を行わなければならない。
【0020】
また、上記のような反応性基が存在する場合には、当該反応性基がエステル反応に関与するために所望の構造を主鎖とする重合体が得られない。副反応を防ぐために当該反応性基を保護するとすれば、保護工程と脱保護工程が必要となるため製造コストが上がってしまう。
【0021】
さらに、側鎖に金属含有基を有するモノマーから全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドを製造しようとすると、一般的に金属含有基は反応性が高いために穏和な条件で重合反応を行わざるを得ず、また、重合反応を重視すると金属含有基が分解して副反応が起きるので、やはり所望のポリマーを得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平5−192640号公報
【特許文献2】特開2004−59697号公報
【特許文献3】特開平11−209596号公報
【特許文献4】特開2004−196913号公報
【特許文献5】特開2005−298575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述したように、溶融押出成形の後に延伸した全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルフィルムには、厚さ方向の線膨張係数が大きいという問題がある。また、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドフィルムには、延伸加工したフィルムに比べて面内方向の線膨張係数が大きいという問題がある。厚さ方向の線膨張係数を延伸加工フィルムより小さく保ったまま面内の線膨張係数を低減するためには無機材料を混合するということが考えられるものの、親和性の低さから添加量には限界があり、十分な効果は得られない。
【0024】
また、物理的に無機材料を有機材料と混合するのみでなく、金属含有基を高分子に共有結合させる技術も検討されている。しかし、水酸基やカルボキシ基など金属含有基を共有結合させるための反応性基をモノマーに維持したまま重合反応を行って十分な分子量を有する全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドを得るのは困難であり、また、かかる反応性基を有するモノマーを重合させる場合には所望のポリエステルアミド主鎖が得られないという問題があった。
【0025】
そこで本発明の目的は、金属含有基が全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの分子構造中に共有結合しており、線膨張係数が顕著に低減された有機−無機ハイブリッド材料と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、アミノ基を有する芳香族化合物をモノマーとして添加し、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリマーの主鎖をエステル基のみでなくアミド基でも構成し、当該アミド基に金属含有基を共有結合させることに成功した。当該アミド基は、アミノ基含有芳香族化合物の使用量を増やすことにより主鎖中に多く存在せしめることができ、結果として多くの金属含有基を化学的に導入することが可能になった。かくして、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの線膨張係数を顕著に低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0027】
本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料の製造方法は、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される1または2以上の単量体A、並びに芳香族ジアミンおよび芳香族ヒドロキシアミンからなる群より選択される1または2以上の単量体Bを含む単量体群(但し、芳香族ジカルボン酸のみと芳香族ジアミンのみとの組み合わせを除く)を重合させ、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドを得る工程;および、得られた全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドに、下記式(I)で表されるイソシアネート化合物を反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0028】
【化1】

[式中、XはC1-6アルキレン基を示し;Mは金属原子を示し;R1はC1-6アルキル基またはC6-12アリール基を示し;R2はC1-6アルキル基またはC2-7アルカノイル基を示し;mは0以上の整数を示し且つnは1以上の整数を示す(但し、m+n+1はMの価数に等しい)]
【0029】
上記本発明方法においては、さらに、単離した有機−無機ハイブリッド材料を熱処理することが好ましい。全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドは、本来耐溶剤性に優れているといえるが、得られた有機−無機ハイブリッド材料を単離した後に熱処理して高分子の結晶化度を向上させるなどの効果によって、その耐熱性や耐溶剤性をより一層高めることができる。
【0030】
上記本発明方法においては、イソシアネート化合物を反応させた後、酸処理することが好ましい。全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミド分子に共有結合させたイソシアネート化合物(I)に含まれる金属アルコキシド基を加水分解し、金属含有基同士を縮合させることにより、強度や耐熱性などがより一層向上する。
【0031】
上記酸処理の際には、さらに金属アルコキシド化合物またはそのオリゴマーを添加することが好ましい。全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミド分子に共有結合させたイソシアネート化合物(I)へ、さらに金属アルコキシド化合物などを重合させ且つ主鎖同士を架橋することができ、線膨張係数をより一層低減できるなど、材料特性を高めることが可能になる。
【0032】
本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料は、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される1または2以上の単量体A、並びに芳香族ジアミンおよび芳香族ヒドロキシアミンからなる群より選択される1または2以上の単量体Bを構造単位として含む全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミド(但し、芳香族ジカルボン酸のみと芳香族ジアミンのみとの組み合わせを除く)のアミド基の少なくとも一部が、下記式(II)で表される構造を有することを特徴とする。
【0033】
【化2】

[式中、XはC1-6アルキレン基を示し;Mは金属原子を示し;R1はC1-6アルキル基またはC6-12アリール基を示し;R2はC1-6アルキル基またはC2-7アルカノイル基を示し;mは0以上の整数を示し且つnは1以上の整数を示す(但し、m+n+1はMの価数に等しい)]
【0034】
上記有機−無機ハイブリッド材料においては、上述したように金属含有基(上記構造(II))を加水分解することにより、当該金属含有基に金属アルコキシド化合物を重合させたり、それに代わって或いはそれに加えて当該金属含有基同士を縮合させて主鎖を架橋することにより、材料の物性をより一層高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドは、加熱溶融状態において液晶性を示す全芳香族ポリエステルアミドであり、もともと高耐熱性と高強度を示すスーパーエンジニアリングプラスチックである。本発明では、当該液晶性ポリマーのアミド基にイソシアネート化合物(I)を反応させて金属含有基を共有結合させることにより、液晶性ポリエステルアミドのキャスティングフィルムやコーティング膜の欠点である大きな面内線膨張係数を低減している。
【0036】
よって本発明は、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの適用範囲を広げることができるものとして、産業上非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料と、従来の全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの熱重量変化を示すグラフである。
【図2】本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料と、従来の全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの熱重量変化を示すグラフである。
【図3】本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料と、従来の全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの熱重量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料の製造方法を、実施の順番に従って詳細に説明する。
【0039】
(1) 重合工程
本発明方法では、先ず、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される1または2以上の単量体A、並びに芳香族ジアミンおよび芳香族ヒドロキシアミンからなる群より選択される1または2以上の単量体Bを含む単量体群(但し、芳香族ジカルボン酸のみと芳香族ジアミンのみとの組み合わせを除く)を重合させ、液晶性ポリマーを得る。
【0040】
単量体Aは、芳香族ポリエステルを構成するためのカルボン酸成分である。単量体Aは、一種の芳香族カルボン酸であってもよいし、二種以上であってもよく、さらに、芳香族ヒドロキシカルボン酸のみ、または芳香族ジカルボン酸のみでもよく、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の混合物であってもよい。好適には、良好な加工性を維持するために、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の両方を用いることが好ましい。
【0041】
本発明において芳香族とは、芳香族性を示す基本構造を有する化合物をいう。当該芳香族性基本構造としては、例えば、炭素数が6〜12であるベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ビフェニル、フルオレンを挙げることができ、好適にはベンゼンまたはナフタレンである。
【0042】
芳香族ヒドロキシカルボン酸は、上記芳香族性基本構造に少なくとも1の水酸基と少なくとも1のカルボキシ基が置換した化合物をいう。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸や6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を挙げることができる。
【0043】
芳香族ジカルボン酸は、上記芳香族性基本構造に少なくとも2のカルボキシ基が置換した化合物をいう。例えば、イソフタル酸やテレフタル酸を挙げることができる。
【0044】
単量体Bは、芳香族ポリエステルにアミド基を導入するためのアミノ成分である。単量体Bは、一種の芳香族アミンであってもよいし、二種以上であってもよく、さらに、芳香族ジアミンのみ、または芳香族ヒドロキシアミンのみでもよく、芳香族ジアミンと芳香族ヒドロキシアミンの混合物であってもよい。但し、単量体Aが芳香族ジカルボン酸のみからなる場合には、単量体Bとして芳香族ジアミンのみを用いるとポリアミドが得られるので、少なくとも芳香族ヒドロキシアミンを用いるものとする。
【0045】
芳香族ジアミンは、上記芳香族性基本構造に少なくとも2のアミノ基が置換した化合物をいう。例えば、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミンを挙げることができる。
【0046】
芳香族ヒドロキシアミンは、上記芳香族性基本構造に少なくとも1の水酸基と少なくとも1のアミノ基が置換した化合物をいう。例えば、3−アミノフェノールや4−アミノフェノールを挙げることができる。
【0047】
なお、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミンおよび芳香族ヒドロキシアミンは、水酸基およびカルボキシ基の他、C1-6アルキル基など重合反応などに影響を及ぼさない置換基を有していてもよいものとする。
【0048】
上記単量体Aおよび単量体Bに加え、全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドが得られる限り、他の芳香族単量体を用いてもよい。かかる芳香族化合物としては、例えば、ビスフェノール−Aやジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオールを挙げることができる。
【0049】
液晶性ポリエステルアミドを合成するための単量体群における各単量体の割合は、主に所望する金属含有基の量、即ちアミド基に応じて適宜決定すればよいが、例えば、単量体全量を100モル%として、単量体Aを30モル%以上、80モル%以下、単量体Bを10モル%以上、35モル%以下、その他の芳香族単量体を0モル%以上、30モル%以下とすることができる。かかる割合であれば、得られるアミド基が導入された全芳香族ポリエステルは十分な液晶性を示すと共に、溶媒に対して適度な溶解性を示すことから利便性が高い。
【0050】
より具体的には、芳香族ヒドロキシカルボン酸を50モル%以上、60モル%以下、芳香族ジカルボン酸を20モル%以上、25モル%以下、芳香族ヒドロキシアミンを20モル%以上、25モル%以下用いた場合に、極めて良好な液晶性と溶解性を示す液晶性ポリエステルアミドが得られる。
【0051】
上記単量体A、単量体Bおよびその他の単量体を重合させる条件は、公知の全芳香族ポリエステルの重合条件に従えばよい。
【0052】
例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの気流下、上記単量体を含む単量体群を加熱しつつ重合させればよい。この際における反応温度は単量体の融点などに依存するが、例えば、200℃以上、400℃以下程度とすることができる。また、反応時間は適宜調整すればよいが、例えば、60分以上、420分以下程度とすることができる。
【0053】
加熱しても反応混合物を良好に攪拌できない場合などには、分散媒を用いてもよい。かかる分散媒は適宜選択すればよいが、例えば、N−メチルピロリドンやジメチルアセトアミドなどの非プロトン性アミド溶媒;酢酸などの低級カルボン酸などを用いることができる。また、分散媒の使用量は、反応混合物の良好な攪拌が可能になる一方で反応を良好に進行できる範囲で適宜調整すればよく、例えば、単量体の合計量に対して0.1質量倍以上、10質量倍以下程度とすることができる。
【0054】
重合反応を円滑に進行せしめるために、水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を活性化してもよい。水酸基およびアミノ基の活性化剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、トリフルオロ酢酸無水物などのアシル化剤などを挙げることができる。
【0055】
水酸基、アミノ基またはカルボキシル基を活性化する場合には、単量体の当該基を事前に活性化した後に単離して原料として用いてもよいが、単量体群に活性化剤を加え比較的低温度で反応させることにより各基を活性化させた後、温度を上げて重合反応を行ってもよい。この際の昇温速度は、0.5℃/分以上、2.0℃/分以下程度とすることができ、より好適には1.0℃/分程度とする。
【0056】
また、活性化剤を用いる場合には、エステル交換反応を促進するための触媒を用いてもよい。かかる触媒としては、例えば、N,N−ジメチルアミノピリジンやN−メチルイミダゾールなどの有機系触媒;酢酸スズ、酢酸マグネシウム、酢酸鉛などの金属酢酸塩などを挙げることができる。
【0057】
反応平衡を重合度が上昇する側に傾けて重合反応を促進するためには、エステル化やアミド化により生じる低分子化合物や、活性化剤由来の副生物を除去することが好ましい。かかる除去は、窒素ガスなどの不活性ガスを流入させたり、また、減圧することにより促進することができる。除去した副生物などは、冷却器により液化して捕捉することが好ましい。また、反応液の攪拌のために加えた分散媒や未反応モノマーも、同様に除去してもよい。
【0058】
重合度を高めて分子量の大きな液晶性ポリマーを得るためには、上記反応に続いて固相重合反応を行ってもよい。具体的には、上記反応後、工業的には反応容器の底部から重合物をストランド状に回収してペレット化したり、或いは常温まで冷却して固化させた後にハンマークラッシャーなどの破砕装置により適度な大きさに破砕する。その後、250℃以上で且つ得られた液晶性ポリマーの融点よりも10℃以上、より好ましくは20℃以上低い温度で加熱しつつ減圧することにより、重合度が高まる。この際、攪拌してもよい。
【0059】
(2) 金属含有基の導入工程
本発明方法では、次に、得られた液晶性ポリマーに、下記式(I)で表されるイソシアネート化合物を反応させる。
【0060】
【化3】

[式中、XはC1-6アルキレン基を示し;Mは金属原子を示し;R1はC1-6アルキル基またはC6-12アリール基を示し;R2はC1-6アルキル基またはC2-7アルカノイル基を示し;mは0以上の整数を示し且つnは1以上の整数を示す(但し、m+n+1はMの価数に等しい)]
【0061】
本発明において「C1-6アルキレン基」とは、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の二価脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基等を挙げることができる。これらのうち、C1-4アルキレン基が好ましく、C2-3アルキレン基がより好ましい。
【0062】
金属原子Mとしては、少なくともアルコキシ基に置換され得るものであり、例えば、Si、Ti、Zrを挙げることができる。これらの中では、カルボニル化合物との相性が良く着色し難いことや、市販化合物が豊富であることから、Siを好適に用いる。
【0063】
「C1-6アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。これらのうち、C1-4アルキル基が好ましく、C1-2アルキル基がより好ましい。
【0064】
「C6-12アリール基」とは、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、ビフェニル基等であり、好ましくはフェニル基である。
【0065】
「C2-7アルカノイル基」とは、カルボニル基に上記C1-6アルキル基が置換した基をいう。例えば、アセチル基、エタノイル基、イソプロパノイル基、tert−ブタノイル基、n−ヘキサノイル基等を挙げることができる。これらのうちC2-5アルカノイル基が好ましく、C2-3アルカノイル基がより好ましい。
【0066】
イソシアネート化合物(I)としては、例えば、(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートや(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネートなどの市販化合物を用いることができる。その他にも、アミノ基、アミド基、水酸基、カルボキシ基、スルホン基、メルカプト基など活性水素含有官能基を有する金属アルコキシド化合物と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物を反応させることにより合成される化合物を用いることもできる。
【0067】
当該工程では、液晶性ポリエステルアミドの溶液中で反応を行う。液晶性ポリエステルアミドを溶解するための溶媒としては、N−メチルピロリドンやジメチルアセトアミドなどの非プロトン性アミド溶媒;ジクロロメタンやクロロホルムなどの非プロトン性ハロゲン化炭化水素溶媒などを用いることができる。溶媒の使用量は適宜調整すればよいが、例えば、液晶性ポリエステルアミド1質量部に対して2質量部以上、20質量部以下程度とすることができる。
【0068】
液晶性ポリエステルアミドを速やかに溶解できない場合には、加熱することが好ましい。この際、160℃を超えるような高温まで一気に加熱溶融させると溶液の粘度が過剰に低下する現象が見られる場合がある。そのような場合には、室温から100℃未満といった比較的低温でいったん液晶性ポリエステルアミドを膨潤させた後、120℃以上、160℃以下程度で溶解させることが好ましい。この際、溶解途中で温度条件を二段階以上に切り替えてもよい。
【0069】
液晶性ポリエステルアミドを溶解する際には、窒素ガスなどの不活性ガスの気流下で混合液を緩やかに攪拌しつつ行うことが好ましい。また、上記のとおり混合物を段階的に加温する場合には、膨潤より後の各段階で未溶解成分を濾過することで、より均一な溶液を得ることが可能になる。
【0070】
当該工程では、液晶性ポリエステルアミド溶液へイソシアネート化合物(I)を添加して反応させる。当該反応は、窒素ガスなどの不活性ガスの気流下、攪拌しつつ行うことが好ましい。
【0071】
イソシアネート化合物(I)の使用量は、必要に応じて適宜調整することができる。例えば、イソシアネート化合物(I)を過剰に使用すると得られる有機−無機ハイブリッド材料の溶解性が低下するおそれがあるので、コーティングやキャスティングなどに適用する場合には、液晶性ポリエステルアミド中のアミド基の当量に対し10モル倍当量以下とすることが好ましい。また、当該割合が10モル倍当量以下であっても、過剰のイソシアネート化合物(I)が残存する場合には、最終的に得られる有機−無機ハイブリッド材料の5重量%原料温度が低下するおそれがあり得る。このような場合には、以降の段階で過剰のイソシアネート化合物(I)を除去してもよく、或いは、イソシアネート化合物(I)の使用量を液晶性ポリエステルアミド中のアミド基の当量に対して1モル倍当量以下としてもよい。
【0072】
当該反応の温度は、常温から溶媒の沸点程度の間とすることができるが、40℃以上、160℃以下程度とすることが好ましい。40℃未満では、反応が十分に進行せず時間がかかるおそれがあり得る。一方、160℃を超えるとポリマーの熱分解などの副反応が起きるおそれがあり得る。当該温度は、60℃以上、145℃以下がより好ましい。
【0073】
反応時間は適宜調整すればよいが、例えば、10分間以上、24時間以下程度とすることができる。
【0074】
反応終了後は、液晶性ポリエステルアミドのアミド基にイソシアネート化合物が結合した有機−無機ハイブリッド材料を常法により単離することができる。例えば、メタノールやエタノールなどのアルコールなどを貧溶媒として反応混合液に滴下するか、或いは貧溶媒中に反応混合液を加えて当該ハイブリッド材料を凝集させ、濾別すればよい。得られたハイブリッド材料は、アルコールなどにより洗浄したり、乾燥してもよい。但し、添加したイソシアネート化合物(I)の添加量が少ない場合には、洗浄などは省略してもよい。逆に、イソシアネート化合物(I)を過剰に用いた場合には、当該イソシアネート化合物を除去するために、洗浄を十分に行うことが好ましい。
【0075】
(3) 酸処理工程
上記で得られた、イソシアネート化合物が結合した有機−無機ハイブリッド材料は、任意に酸処理工程に付してもよい。当該ハイブリッド材料を酸処理することにより、金属含有基におけるアルコキシ基またはアルカノイルオキシ基(−OR2)が加水分解され、金属含有基が縮合する。即ち、酸処理により液晶性ポリエステルアミド分子が架橋されることになる。
【0076】
当該工程においては、上記のとおり単離した有機−無機ハイブリッド材料を、上記金属含有基の導入工程(2)と同様に溶媒に溶解した上で酸を添加してもよいが、単離する前の反応混合液に酸を添加してもよい。
【0077】
当該工程で反応混合液または溶液に添加する酸は、金属含有基を加水分解する必要があるので水を含む酸である必要がある。使用できる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を挙げることができる。当該酸の濃度は適宜調整すればよいが、例えば、0.1N以上、5N以下程度とすることができ、より好ましくは1N程度のものを用いる。
【0078】
当該工程の条件は適宜調整することができる。例えば、有機−無機ハイブリッド材料を単離しない場合は、上記金属含有基の導入工程(2)の反応液へ温度を維持したまま酸を添加してもよいし、いったん常温まで冷却してから、0.1℃/分以上、10℃/分以下程度の昇温速度で溶液を60℃以上、120℃以下程度に加熱しつつ酸を滴下してもよいし、いったん常温まで冷却してから酸を滴下した後、60℃以上、120℃以下程度に加熱してもよい。反応時間は10分間以上、10時間以下程度とすることができる。また、反応中は反応液を攪拌することが好ましく、或いは超音波を照射してもよい。
【0079】
さらに当該工程においては、イソシアネート化合物(I)の他に、金属アルコキシド化合物および金属アルコキシド化合物のオリゴマーを添加してもよい。これら化合物を添加することにより、上記ハイブリッド材料の金属含有基に当該化合物が縮重合して無機骨格が成長したり、さらに液晶性ポリエステルアミド分子が架橋され、液晶性ポリエステルアミドをさらに改質することが可能になる。
【0080】
金属アルコキシド化合物またはそのオリゴマーの金属としては、イソシアネート化合物(I)と同様に、Si、Ti、Zrなどとすることができ、好適にはSiとする。
【0081】
金属アルコキシド化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどを用いることができる。
【0082】
金属アルコキシド化合物のオリゴマーとしては、例えば、平均4量体であるメチルシリケート51(コルコート社製または多摩化学工業社製,以下、「MS51」と略す)、3〜4量体であるKC−89(信越化学工業社製)、平均7量体であるメチルシリケート53A(コルコート社製)、6〜7量体であるKR−500(信越化学工業社製)、10量体であるX−40−9225(信越化学工業社製)を挙げることができる。
【0083】
金属アルコキシド化合物およびそのオリゴマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、その使用量は、上記ハイブリッド材料の所望の改質度に応じて調整すればよい。
【0084】
酸処理した有機−無機ハイブリッド材料、および金属アルコキシド化合物またはそのオリゴマーを添加した上で酸処理した有機−無機ハイブリッド材料は、上記金属含有基の導入工程(2)と同様に単離することができる。
【0085】
(4) 成形工程
上記金属含有基の導入工程(2)、またはさらに上記酸処理工程(3)を得て製造された有機−無機ハイブリッド材料は、成形することができる。
【0086】
例えば、得られたハイブリッド材料を加熱溶融して圧縮成形や射出成形、または押出成形することができる。或いは、上記工程(2)で例示した溶媒に有機−無機ハイブリッド材料を溶解した上でキャスティングなどによりフィルム成形したり、当該溶液を他の成形体にコーティングしたり、当該溶液を支持材にコーティングしてフィルム状に成形することができる。
【0087】
コーティングまたはキャスティングする場合の支持材としては、耐熱性や強度の点から、ガラス板;金属板;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)板;宇部興産社製の「ユーピレックス(登録商標)」や東レ・デュポン社製の「カプトン(登録商標)」といったポリイミドフィルムを用いることができる。
【0088】
支持材としてフィルムを用いる場合は、表面が平滑なガラス板やステンレス製板の上に支持フィルムを耐熱性粘着テープなどで固定してもよい。その際、常温硬化型シリコーン樹脂などで一定面積のダムを形成し、その内部にハイブリッド材料溶液をキャストしてもよい。或いは、ドクターバーやブレードコーターでハイブリッド材料溶液を塗布すれば作業性も良く、また、表面が平滑なキャスティングフィルムやコーティング膜を得ることができる。
【0089】
本発明の有機−無機ハイブリッド材料を成形目的で溶液にする場合、その濃度は適宜調整すればよいが、例えば、5質量%以上、20質量%以下程度とすることができる。
【0090】
ハイブリッド材料溶液をキャストまたはコーティングする場合、当該溶液の使用量は、150mm×150mmの面積に対して、10質量%程度の濃度で5g以上、20g以下程度とし、コーティングする場合には、乾燥前厚さが100μm以上、500μm以下程度となるように塗布すると、外観の良好なフィルムが得られる。
【0091】
ハイブリッド材料溶液をキャストまたはコーティングした後は、室温でしばらく静置してレベリングし、次いで用いた溶剤のおよそ沸点以上に加熱して乾燥する。この際、減圧下で加熱してもよい。また、乾燥する際に急激に温度を上げるとフィルムの表面に収縮シワなどの外観不良を来たすおそれがあるので、昇温速度を緩やかにするか、或いは100℃未満といった比較的低温で5分間以上、60分間以下程度で予備乾燥した後、溶液粘度の低下を起こさない温度、例えば160℃以下程度で0.5分間以上、60分間以下程度の一次乾燥をし、さらに溶剤の沸点を超える温度で5分間以上、60分間以下程度と、段階的に加熱してもよい。かかる段階的加熱は、昇温プログラム付きのオーブンで実施したり、また、複数の温度ゾーンを設定可能な連続式加熱炉で実施することができる。
【0092】
(5) 加熱工程
単離された本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料、即ち、上記金属含有基の導入工程(2)で得られた有機−無機ハイブリッド材料、またはさらに酸処理工程(3)を経た架橋有機−無機ハイブリッド材料、またはこれらを成形した成形体は、任意に加熱処理を行ってもよい。加熱処理により有機−無機ハイブリッド材料の結晶化度が高まったり、分子量が増加するなどの効果によって、特に耐溶剤性が一層向上する。
【0093】
加熱工程の条件は適宜調整すればよいが、例えば、温度は250℃以上、400℃以下程度とすることができ、加熱時間は10分間以上、5時間以内とすることができる。
【0094】
加熱工程は、減圧下で実施してもよい。減圧下で加熱することにより、重合工程でわずかに残留した未反応モノマー、或いは加熱により脱離したオリゴマーや酢酸などの低分子化合物を除去することが可能になる。
【0095】
本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料には、一般的な無機材料を配合してもよい。具体的には、上記金属含有基の導入工程(2)もしくは上記酸処理工程(3)における反応混合液、または単離した有機−無機ハイブリッド材料を溶融した上で、無機材料を添加混合することができる。
【0096】
かかる無機材料としては、酸化ケイ素や酸化マグネシウムなどからなるフィラー;アルミナ;タルク;粘土系化合物などを挙げることができる。これら無機材料の添加量は、それぞれの目的に応じて適宜調整することができる。
【0097】
特にフィラーの添加に当たっては、その表面をシランカップリング剤で処理しておくことで、有機−無機ハイブリッド材料に対する親和性を高めておくことが好ましい。
【0098】
その他、発明の効果に影響しない範囲で、UV吸収剤やレベリング剤などの各種添加剤を加えることも可能である。UV吸収剤としては、トリアジン、ベンゾキサジノン、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾエート、ホルムアミジン、シンナメート/プロペノエート、芳香族プロパンジオン、ベンズイミダゾール、脂環式ケトン、ホルムアニリド、シアノアクリレート、ベンゾピランなどの有機系UV吸収剤;酸化チタンなどの無機系吸収剤などを挙げることができる。これらは1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。レベリング剤としては、フッ素系、シリコーン系、炭化水素系など各種界面活性剤を挙げることができる。
【0099】
本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料は、比較的多くの金属含有基が共有結合して無機骨格が導入されていることから、引張弾性率などの機械的特性が向上しており、且つ線膨張係数が低減されている。
【0100】
また、金属含有基を介して架橋されている有機−無機ハイブリッド材料、および、金属含有基のオリゴマー基を介して架橋されている有機−無機ハイブリッド材料は、線膨張係数がより一層低減されている。
【0101】
さらに加熱処理された本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料は、結晶化度や分子量の向上などによって、耐溶剤性がより一層優れている。
【0102】
よって本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料は、例えば金属材料などに積層した場合において線膨張係数の差が軽減されていることから剥離などの問題が抑制されており、また、もともと機械的特性に優れるものであることから、スーパーエンジニアプラスチックとして幅広い適用を期待することができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0104】
実施例1〜21 本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料の製造
(1) 全芳香族サーモトロピック液晶性ポリエステルアミドの合成
攪拌機、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えた1L容のガラス反応容器へ、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(50mol倍)、イソフタル酸(25mol倍)および4−アミノフェノール(25mol倍)を挿入した。窒素ガス流通下、さらに無水酢酸(100mol倍)を加えた後、緩やかに攪拌しながらマントルヒーターで60℃に加温し、懸濁液を得た。次いで、攪拌速度を高めて30分間で150℃まで加温し、150℃で90分間反応させ、水酸基およびアミノ基をアセチル化することにより活性化した。
【0105】
その後、還流冷却器の配置を変更し、且つ表1に示す条件で昇温と加熱を行うことにより重合反応を進めつつ、原料または副生物である低分子化合物を反応液から留去した。この過程においては、反応液の粘度が上昇するのに合わせて、攪拌速度を徐々に減少させた。
【0106】
次に、必要に応じて還流冷却器を外し、その代わりに真空配管を接続し、温度を維持したまま表1に示す条件で減圧することにより、反応に伴う脱離成分や未反応モノマーを減圧留去した。反応物の粘度が十分に上昇して液晶性が発現したことを確認した後、反応を終了した。
【0107】
【表1】

【0108】
(2) 有機−無機ハイブリッド材料の製造
上記で得られた全芳香族液晶性ポリエステルアミドを三庄インダストリー社製のNH−34型ハンマークラッシャーで粉砕した後、真空乾燥機を使って100〜120℃で約4時間乾燥した。当該芳香族ポリエステルを上記(1)で用いたものと同様のガラス反応容器へ入れ、全芳香族液晶性ポリエステルアミド1質量部に対して9質量部のN−メチルピロリドンを加えた。窒素ガスを溶媒中へ吹き込みつつ室温で緩やかに一晩攪拌し、全芳香族液晶性ポリエステルアミドを膨潤させた。その後、攪拌しながら温度を145℃まで上げ、4時間かけて全芳香族液晶性ポリエステルアミドを溶解した。得られた溶液を濾過し、濾液を再び同ガラス反応容器に戻し、135℃で3時間攪拌した後に濾過し、全芳香族液晶性ポリエステルアミド溶液を得た。得られた溶液から一定量を取り、常法に従って加熱乾固してから固形分質量を計測し、測定値と溶液量から固形分濃度を算出した。上記固形分濃度から、必要に応じて濃縮したり或いは溶媒を加え、10質量%全芳香族液晶性ポリエステルアミド溶液を調製した。
【0109】
容量が500mLである以外は上記(1)で用いたものと同様に構成されたガラス反応容器に、上記各10質量%芳香族ポリエステル溶液(50〜250mL)を入れた。窒素ガス流通下、溶液を緩やかに攪拌しながら2時間かけて70℃まで昇温した後、溶液に含まれる芳香族ポリエステルのアミド基当量に対して表2に示す当量比のトリエトキシシリルプロピルイソシアネートをゆっくり添加した。さらに、同温度にて表2に示すとおり20時間または24時間攪拌して反応させた。
【0110】
なお、表2に示すアミド基当量は、以下の式により求めた。なお、式中、「構造単位m」の番号は、便宜上付したものに過ぎない。
アミド基当量=[(分子鎖中の構造単位1の分子量×当該構造単位1のモル分率)+(分子鎖中の構造単位2の分子量×当該構造単位2のモル分率)+・・・+(分子鎖中の構造単位mの分子量×当該構造単位mのモル分率)]/分子鎖中のアミド結合の個数
【0111】
続いて酸処理を行わない場合は、この時点で有機−無機ハイブリッド材料を単離した。具体的には、上記溶液を常温まで冷却し、緩やかに攪拌しながらエタノールを滴下した。有機−無機ハイブリッド材料が凝集して溶液の懸濁が確認できたらエタノールの滴下を停止した。しばらく攪拌を継続した後、攪拌を停止して溶液を静置し、固形分を沈降させた。上澄液をデカンテーションで除去した後、有機−無機ハイブリッド材料を濾別した。得られた有機−無機ハイブリッド材料をエタノールで数回洗浄した後、100〜120℃で真空乾燥した。或いは、イソシアネート化合物の添加量が全芳香族液晶性ポリエステルアミドのアミド基当量の1倍未満の場合には、エタノール洗浄せずそのまま次工程で用いた。
【0112】
【表2】

【0113】
(3) 酸処理
酸処理を行う場合には、上記単離操作を行う前の有機−無機ハイブリッド材料溶液をいったん室温まで冷却してから、表3に示す量の1N塩酸を滴下した。また、実施例13〜14および実施例18〜19では、塩酸の滴下前に、化学式Sinn-1(OCH32n+2で表される金属アルコキシド化合物(多摩化学工業社製,製品名「MS−51」)または金属アルコキシド化合物(信越化学工業社製,製品名「KC89」)を、表3に示す量で滴下後、昇温速度1.0℃/分で加熱し、表3に示すとおり60℃で30分間または70℃で2時間反応させた。
【0114】
反応終了後、溶液が懸濁して固形分が凝集した場合には、析出した固形分を濾別して回収した。固形分が見られない場合は、反応液をそのまま次工程で用いた。
【0115】
【表3】

【0116】
(4) フィルム成形
厚さ6mmのガラス板上にポリイミドフィルム(宇部興産社製,ユーピレックス25s)を耐熱性粘着テープにより固定した。上記全芳香族液晶性ポリエステルアミドをN−メチルピロリドンに溶解して得た約10質量%溶液、または上記反応液を、上記ポリイミドフィルムの150mm×150mmの面積に対して約11gキャストした。室温にてしばらく放置してレべリングした後、オーブンに入れて70〜80℃で60分間予備乾燥した。次いで、160℃にて30分間一次乾燥した後、溶媒であるN−メチルピロリドンの沸点を超える240℃で15分間と、段階的に加熱して溶媒を除去した。
【0117】
(5) 加熱処理
上記(4)で得られたフィルムを加熱処理した。具体的には、各フィルムを320℃まで昇温し、減圧下、320℃で30分間加熱した。次いで、全芳香族液晶性ポリエステルアミドフィルムをポリイミドフィルムから剥離した。
【0118】
比較例1〜7 従来の全芳香族液晶性ポリエステルアミドの製造
上記実施例1〜21の(1)のとおり合成した合成例ア〜カの全芳香族液晶性ポリエステルアミドを三庄インダストリー社製のNH−34型ハンマークラッシャーで粉砕した後、上記実施例1〜21(2)と同様にN−メチルピロリドンを用いて10質量%溶液を調製し、金属アルコキシド化合物とのハイブリッド化を行わず、上記実施例1〜21(4)〜(5)と同様にして、フィルム成形した後に加熱処理した。なお、比較例1は合成例ア、比較例2は合成例イ、比較例3は合成例ウ、比較例4は合成例エ、比較例5は合成例オ、比較例6〜7は合成例カの全芳香族液晶性ポリエステルアミドを用い、比較例6のみ240℃までの乾燥終了段階でフィルムを基材から剥離し、加熱処理を行わなかった。
【0119】
試験例1 面内線膨張係数の測定
上記で作製した全芳香族液晶性ポリエステルアミドフィルムから、合成例イの全芳香族液晶性ポリエステルアミドからなる比較例2および実施例4〜5のフィルムと、合成例ウの全芳香族液晶性ポリエステルアミドからなる比較例3および実施例9のフィルムを選択し、面内線膨張係数をJIS K7197に準拠して測定した。具体的には、各フィルムを幅5mm×長さ25mmの小片に切り出し、TMA分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、商品名「TMA−100」)にセットし、加熱温度:10℃/分で35℃から300℃まで加熱する時の昇温領域において、50〜100℃、100〜150℃、150〜200℃および200〜250℃の範囲において、X方向とY方向の線膨張係数を測定した。ここで、X方向は平面方向の任意の方向とし、Y方向はX方向に直交する方向とした。結果を表4に示す。
【0120】
【表4】

【0121】
表4に示す結果のとおり、比較例2に対して実施例4〜5では、熱圧着などに適する150℃を超える高温領域での面内線膨張係数が小さくなっており、金属箔など線膨張係数の小さい材料との積層に有利であることが分かる。特に合成例ウに比べて合成例イでは減圧工程が短い、即ち全芳香族液晶性ポリエステルアミドの重合度が低いため、比較例2のフィルムの線膨張係数は比較例3のフィルムに比して大きい傾向にあり、200℃を超える領域でフィルムが伸びてしまい、線膨張係数を測定することさえできなかったが、同一のポリエステルアミドを原料とする本発明に係る実施例4〜5のフィルムでは、線膨張係数の著明な低減効果が認められる。また、かかる線膨張係数の低減効果は実施例4よりも実施例5で高いことから、全芳香族液晶性ポリエステルアミドをイソシアネート化合物と反応させた後さらに酸処理を行うことで、高温領域での寸法安定性がより一層向上することが明らかとなった。
【0122】
同様に実施例9でも、比較例3に対して全温度領域で面内線膨張係数が低下しており、温度に対する寸法変化の抑制されたフィルムが得られていることが分かる。
【0123】
以上のとおり、本発明にかかる有機−無機ハイブリッド材料は、従来のポリエステルアミドでは使用不可能な高温度領域でも熱による変化の少ない安定なものであるといえる。
【0124】
試験例2 面内線膨張係数の測定
次に、全芳香族液晶性ポリエステルアミドに対してイソシアネート化合物を1当量反応させた材料からなるフィルム(実施例10)、さらに酸処理を行った材料からなるフィルム(実施例11〜12)、さらに金属アルコキシドを追加した上で酸処理を行った材料からなるフィルム(実施例13〜14)、および金属アルコキシドをハイブリッドさせていない全芳香族液晶性ポリエステルアミドからなるフィルム(比較例3)について、同様に線膨張係数を測定した。結果を表5に示す。なお、表中の値はX方向とY方向の平均値である。
【0125】
【表5】

【0126】
表5に示す結果のとおり、全芳香族液晶性ポリエステルアミドにイソシアネート化合物を反応させて金属を導入した材料からなるフィルム(実施例10〜14)では、何れも未処理の全芳香族液晶性ポリエステルアミドからなるフィルム(比較例3)と比較して、特に150℃を超える高温領域で面内線膨張係数が小さくなっており、高温領域での寸法変化が抑制されており安定なものであることが分かる。
【0127】
試験例3 面内線膨張係数の測定
また、全芳香族液晶性ポリエステルアミドに対してイソシアネート化合物を1当量未満反応させた上で酸処理した材料からなるフィルム(実施例15〜17)、さらに金属アルコキシドを追加した上で酸処理を行った材料からなるフィルム(実施例18〜19)、および金属アルコキシドをハイブリッドさせていない全芳香族液晶性ポリエステルアミドからなるフィルム(比較例3)について、同様に線膨張係数を測定した。結果を表6に示す。
【0128】
【表6】

【0129】
表6に示す結果のとおり、全芳香族液晶性ポリエステルアミドに対して1当量未満のイソシアネート化合物を反応させたフィルム(実施例15〜19)であっても、未処理の全芳香族液晶性ポリエステルアミドからなるフィルム(比較例3)と比較して、特に150℃を超える高温領域で面内線膨張係数が小さくなっており、高温領域での寸法変化が抑制されており安定なものであることが分かる。特に酸処理時に金属アルコキシド化合物を追加した実施例18では、面内線膨張係数が顕著に低減されている。
【0130】
試験例4 溶解性試験
実施例1〜9および比較例1〜3に係る全芳香族液晶性ポリエステルアミドおよびそのハイブリッド材料の溶解性を試験した。フィルム成形前で加熱処理していない各全芳香族液晶性ポリエステルアミドを乾燥した後、その1質量部に対して約9質量部のN−メチルピロリドンを加え、溶解させた。溶液が得られた場合には、溶液を加熱乾固して固形分重量を秤量し、計算により濃度を算出した。完全に溶解できなかった場合には、不溶部を濾別して得られた濾液の濃度を同様に算出した。結果を表7に示す。
【0131】
【表7】

【0132】
表7に示す結果のとおり、イソシアネート化合物(I)の使用量が、液晶性ポリエステルアミド中のアミド基当量に対して10モル倍当量である一例のみ多少溶解性が低下したが、おしなべて約10質量%の溶解性を示すことが明らかとなった。
【0133】
試験例5 耐熱性試験
本発明材料および従来材料の耐熱性を試験した。具体的には、上記各フィルムから一部分を切り出し、TGA測定装置(セイコーインスツルメント社製)により昇温速度10℃/分で550℃まで昇温した場合の重量変化を測定し、グラフ化した。特に、約400℃を超えて重量減少が顕著になる領域での重量減少の度合いを比較した。このとき、曲線がより上部にシフトするほど重量減少が抑制されており、耐熱性に優れるといえる。
【0134】
図1には本発明に係る実施例4〜5と従来例である比較例2、図2には本発明に係る実施例6〜7と従来例である比較例2、図3には本発明に係る実施例20と従来例である比較例4に係る全芳香族液晶性ポリエステルアミドの熱重量変化が示されている。
【0135】
何れにおいても、重量減少が顕著になる400℃超の高温領域で、本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料の重量変化曲線は従来の全芳香族液晶性ポリエステルアミドよりも上方にシフトしており、耐熱性が向上していることが実証された。
【0136】
試験例6 耐溶剤性試験
実施例15と実施例17および比較例3と比較例6〜7の全芳香族液晶性ポリエステルアミドフィルムの耐溶剤性を試験した。乾燥のみで加熱処理していない比較例6のフィルムと、加熱処理したその他の各フィルムを20mm×40mmの大きさに切り出し、質量を測定した後にガラス容器に入れ、N−メチルピロリドン(50mL)を加えた。緩やかに攪拌しながら100℃にて1時間加熱し、目視にてフィルムと溶剤の状態を観察した。その後、フィルムを取り出して減圧下200℃で30分間加熱乾燥し、質量を再度測定した。得られた測定値から、下式によりフィルムの質量変化率(%)を求めた。
質量変化率(%)=[{(溶剤中加熱した後、乾燥した後のフィルム質量)−(フィルムの当初質量)}/(フィルムの当初質量)]×100
結果を表8に示す。
【0137】
【表8】

【0138】
表8に示す結果のとおり、加熱処理していない比較例6のフィルムに比して、加熱処理した他のフィルムは、耐溶剤性が改善されていることが分かる。その理由は、加熱処理によりポリエステルアミドの結晶化度が向上したことによると考えられる。しかし、従来の全芳香族液晶性ポリエステルアミドフィルムでは依然として溶解による重量減少が観察され、溶剤が着色し、また、フィルムは変形した。
【0139】
それに対して本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料は、金属を導入していない以外は同じ全芳香族液晶性ポリエステルアミドフィルムである比較例3に比べても重量減少が約1/2〜1/3まで抑制されており、溶剤も着色しなかった。かかる効果は、反応させたイソシアネート化合物の量が多いほど大きかった。また、本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料は、溶剤に浸漬しても目立った変形は見られなかった。
【0140】
以上の結果から、本発明に係る有機−無機ハイブリッド材料は、加熱処理前は溶剤に対する溶解性を示す一方で、加熱処理により耐溶剤性が向上し安定して使用できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される1または2以上の単量体A、並びに芳香族ジアミンおよび芳香族ヒドロキシアミンからなる群より選択される1または2以上の単量体Bを含む単量体群(但し、芳香族ジカルボン酸のみと芳香族ジアミンのみとの組み合わせを除く)を重合させ、全芳香族ポリエステルアミドを得る工程;および
得られた全芳香族ポリエステルアミドに、下記式(I)で表されるイソシアネート化合物を反応させる工程;
を含むことを特徴とする、有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【化1】

[式中、XはC1-6アルキレン基を示し;Mは金属原子を示し;R1はC1-6アルキル基またはC6-12アリール基を示し;R2はC1-6アルキル基またはC2-7アルカノイル基を示し;mは0以上の整数を示し且つnは1以上の整数を示す(但し、m+n+1はMの価数に等しい)]
【請求項2】
さらに、単離した有機−無機ハイブリッド材料を熱処理する工程を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
イソシアネート化合物を反応させた後、酸処理する工程を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸処理する際、さらに金属アルコキシド化合物またはそのオリゴマーを添加する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される1または2以上の単量体A、並びに芳香族ジアミンおよび芳香族ヒドロキシアミンからなる群より選択される1または2以上の単量体Bを構造単位として含む全芳香族ポリエステルアミド(但し、芳香族ジカルボン酸のみと芳香族ジアミンのみとの組み合わせを除く)のアミド基の少なくとも一部が、下記式(II)で表される構造を有することを特徴とする、有機−無機ハイブリッド材料。
【化2】

[式中、XはC1-6アルキレン基を示し;Mは金属原子を示し;R1はC1-6アルキル基またはC6-12アリール基を示し;R2はC1-6アルキル基またはC2-7アルカノイル基を示し;mは0以上の整数を示し且つnは1以上の整数を示す(但し、m+n+1はMの価数に等しい)]
【請求項6】
請求項5に記載の有機−無機ハイブリッド材料において、−M−O−基を通じて金属アルコキシド化合物が重合している有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項7】
請求項5または6に記載の有機−無機ハイブリッド材料において、−M−O−基を通じて芳香族ポリエステルが架橋されている有機−無機ハイブリッド材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−46830(P2011−46830A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196403(P2009−196403)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【Fターム(参考)】