説明

有機−無機複合体およびその製造方法

【課題】従来とは全く異なる形態の異方導電性シートを得ることを介して、他の用途へも適用可能な有機−無機複合体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔11が形成されてなる分離膜10と、上記貫通孔11に充填された無機粒子12とを有する有機−無機複合体1。当該有機−無機複合体1の好適な製造方法である、有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔11が形成されてなる分離膜10の一方の主面側に無機粒子と溶剤とを含む懸濁液3を存在させて、分離膜10の他方の主面側から懸濁液の溶剤を通過させかつ無機粒子を実質的に通過させない補助膜2を介して吸引することで分離膜10の貫通孔11に無機粒子12を充填する工程を有する有機−無機複合体1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機−無機複合体およびその製造方法に関し、特に異方導電性シートとして用いるのに適した有機−無機複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやプリント配線基板の検査治具、実装用ICソケット、プリント配線基板用コネクタ、あるいは、ICカード用コネクタなど、微細な多点電気接続を達成するために、異方導電性シートが用いられる。異方導電性シートとしては、厚さ方向にのみ導電性を有するものや加圧導電性導電部を有するものなど種々のものが公知である(特許文献1〜6)。加圧導電性導電部とは、加圧されたときに厚さ方向にのみ導電性を示す導電部である。異方導電性シートの基本的な構造として、絶縁性フィルム基板中に複数の導通路を互いに絶縁してフィルム基板の厚み方向に貫通させたものが挙げられる。
【特許文献1】特公昭56−48951号公報
【特許文献2】特開昭51−93393号公報
【特許文献3】特開昭53−147772号公報
【特許文献4】特開昭54−146873号公報
【特許文献5】特開平7−105741号公報
【特許文献6】米国特許第4292261号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近時、実装部品や配線パターンは微細化しており、そのような部品やパターンに適用させるために異方導電性シートの導通路のピッチを狭めたり、導通路自体を小さくすることが検討されている。しかしながら、ドリルやレーザーによって絶縁性フィルムに穿孔する場合、孔の直径は10μm程度以上になってしまう。また、絶縁性フィルムに10μm未満の貫通孔を仮に形成し得たとしても、そのような小さな貫通孔に導通路を形成しようなどとは考えられていなかった。よって、異方導電性シートに設けられる導通路の大きさは直径20μm程度以上であることが当然のこととして考えられていた。本発明は、従来とは全く異なる形態の異方導電性シートを得ることを介して、他の用途へも適用可能な有機−無機複合体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、従来、電子部品とは全く関係のない微生物の分離などに用いられていた分離膜を用い、そのような分離膜に導電性粒子を意図的に詰まらせることによって、極めて微小なピッチを有する異方導電性シートが得られることを見出した。さらに、本発明者らは、上記分離膜に無機粒子を詰まらせてなる有機−無機複合体は異方導電性シート以外の応用が可能であることを見出して、以下の特徴を有する本発明を完成した。
【0005】
(1)有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔が形成されてなる分離膜と、上記貫通孔に充填された無機粒子とを有する有機−無機複合体。
(2)分離膜の孔密度が1×10〜1×10個/cmである上記(1)記載の有機−無機複合体。
(3)分離膜の開孔面積率が0.1〜20%である上記(1)または(2)記載の有機−無機複合体。
(4)貫通孔がトラックエッチング法によって形成されてなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の有機−無機複合体。
(5)さらに接着剤が含浸されてなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の有機−無機複合体。
(6)接着剤がBステージエポキシ樹脂からなる上記(5)記載の有機−無機複合体。
(7)当該有機−無機複合体が異方導電性シートであり、無機粒子が導電性粒子である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の有機−無機複合体。
(8)導電性粒子がニッケル粒子である上記(7)記載の有機−無機複合体。
(9)無機粒子が残留磁化を有する粒子である上記(1)〜(8)のいずれかに記載の有機−無機複合体。
(10)有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔が形成されてなる分離膜の一方の主面側に無機粒子と溶剤とを含む懸濁液を存在させて、分離膜の他方の主面側から下記(I)を満足する補助膜を介して吸引することで分離膜の貫通孔に無機粒子を充填する工程を有する有機−無機複合体の製造方法。
(I)懸濁液の溶剤を通過させかつ無機粒子を実質的に通過させない。
(11)分離膜の貫通孔に無機粒子を充填してなる有機−無機複合体に接着剤を含浸させて、次いで、前記接着剤を固化する工程をさらに有する上記(10)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有機−無機複合体は、有機フィルム中に無機粒子が極めて微小かつ高度に制御されて存在しているので小型電子部品等への異方導電性シートとして適している。本発明の有機−無機複合体の無機粒子を磁石になる粒子で構成することによって、磁石になる部分と磁石にならない部分とが高度にパターニングされた構造体を得ることができ、微小な電子部品の製造などに有用である。本発明の製造方法によれば、簡便な操作によって、有機フィルム中に無機粒子が極めて微小かつ高度に制御された構成の有機−無機複合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の有機−無機複合体は、有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔が形成されてなる分離膜と、上記貫通孔に充填された無機粒子とを有する。図1(B)は本発明の有機−無機複合体の平面図であり、図1(C)は断面図である。図1(A)は、後述する、本発明の有機−無機複合体の製造例を示す模式図である。
【0008】
本発明で用いる分離膜10は、物質、特に混合物を主にその大きさに応じて分離し得る膜であり、より詳しくは、大きな粒子を形成する物質を通過させずに小さな粒子あるいは液体を通過させることで両者を分離し得る膜であり、濾過膜などと言い換えることもできる。本発明では、分離膜のうち有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔が形成されてなる構造のものを用いる。
【0009】
分離膜10の材料となる有機樹脂は特に限定はなく、好ましくは後述するトラックエッチング法に供し得る有機樹脂である。トラックエッチング法に供し得る有機樹脂とは、中性子線の照射に次ぐアルカリ溶液の処理によってエッチングされ得る有機樹脂であり、具体例として、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。
【0010】
分離膜10を構成する、有機樹脂からなるフィルムの厚さは特に限定なく、入手の容易性、取り扱い易さなどの点から、好ましくは5〜15μmである。
【0011】
本発明で用いる分離膜10の孔密度は、好ましくは1×10〜1×10個/cmであり、より好ましくは1×10〜6×10個/cmである。分離膜10の孔密度とは、分離膜10の主面の面積(1cm)あたりの貫通孔の数である。孔密度は走査型電子顕微鏡写真から測定することができる。孔密度が小さすぎると、有機−無機複合体1を異方導電性シートとして用いる場合に電気的接続の信頼性が低下する懸念がある。孔密度が大きすぎると、有機−無機複合体1を異方導電性シートとして用いる場合に絶縁信頼性が低下する懸念がある。
【0012】
本発明で用いる分離膜10の開孔面積率は、好ましくは0.1〜20%であり、より好ましくは10〜20%である。分離膜10の開孔面積率とは、分離膜10の主面に占める開孔部分の面積の割合である。開孔面積率は、分離膜10に設けられる貫通孔の密度と貫通孔の大きさに依存する。開孔面積率も孔密度と同様に走査型電子顕微鏡写真から測定することができる。開孔面積率が小さすぎることは孔の数が少なすぎたり孔が小さすぎることを意味し、有機−無機複合体1を異方導電性シートとして用いる場合に電気的接続の信頼性が低下する懸念がある。開孔面積率が大きすぎることは孔の数が多すぎたり孔が大きすぎることを意味し、有機−無機複合体1を異方導電性シートとして用いる場合に絶縁信頼性が低下する懸念がある。
【0013】
分離膜10の開孔面積率と孔密度から、貫通孔1つあたりの開孔面積の平均値を算出し得る。例えば、開孔面積率が20%であり孔密度が1×10個/cmであるとき、貫通孔1つあたりの開孔面積は、0.2÷(1×10)cm、すなわち0.02μmとなる。貫通孔を円筒形に近似すると、その底面の円の直径は約0.16μmと算出される。本発明で用いる分離膜10について、上記のように貫通孔を円筒形に近似したときの直径の平均値は、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは0.01〜15μmであり、特に好ましくは0.02〜10μmである。直径の平均値が大きすぎると有機−無機複合体1を異方導電性シートとして用いる場合に微細化された配線の接続に問題が生じる虞があり、小さすぎると貫通孔へ無機粒子を充填し難くなり充填不良になる懸念がある。
【0014】
上述した構造をもつ分離膜10であれば本発明に用いることができ、好ましくは有機フィルムにトラックエッチング法によって貫通孔が形成されてなる分離膜10が用いられる。トラックエッチング法とは、中性子線を照射した有機フィルムをアルカリ溶液でエッチングする方法であり、中性子線の照射条件やアルカリ溶液の好適例などは従来技術を適宜参照し得る。
【0015】
本発明での使用に適した分離膜は、主に微小サンプルの顕微鏡観察、生化学的検査、環境測定などに用いるための分離膜として市販されており、例えば、野村マイクロサイエンス社製のニュクリポアー・メンブレンやWhatman社製のNuclepore膜等を挙げることができる。Whatman社製の分離膜としては、貫通孔の直径(単位:μm)が12、10、8、5、3、2、1、0.8、0.4、0.2、0.1、0.08、0.05、0.03、0.015であるものが市販されている。
【0016】
本発明の有機−無機複合体1において、分離膜10の貫通孔に充填される無機粒子12は特に限定はなく当該複合体1の目的に応じて任意に選択することができる。本発明の有機−無機複合体1を異方導電性シートとして用いる場合には、無機粒子として導電性粒子を用いる。導電性粒子には、ニッケル粒子、銀粒子、金属(銅等)を銀で被覆してなる粒子、ナノカーボン粒子が例示される。ナノカーボン粒子の具体例としては、フラーレン粒子、カーボンナノファイバー粒子、カーボンナノチューブ粒子などが挙げられる。無機粒子として残留磁化を有する粒子を用いることで、本発明の有機−無機複合体をパターン化された磁石を埋め込んだシートとして用いることができる。残留磁化を有する粒子が充填された有機−無機複合体を得るにあたっては、充填前に予め残留磁化を有するように処理された無機粒子を充填してもよいし、残留磁化を有さない粒子を充填した後に前記粒子を磁化してもよい。残留磁化を有する粒子の材質としては、ニッケル、鉄、磁石材料などが挙げられる。
【0017】
本発明の有機−無機複合体が異方導電性シートである場合の、異方導電性シートは、従来の異方導電性シートと同様、厚さ方向にのみ導電性を有するものや加圧導電性導電部を有するものなど種々の形態のものであってよい。そのような異方導電性シートは、ICやプリント配線基板の検査治具、実装用ICソケット、プリント配線基板用コネクタ、あるいは、ICカード用コネクタなど、微細な多点電気接続を達成するために用いられる。
【0018】
本発明で用いる無機粒子の形状は分離膜10の貫通孔に充填可能であれば特に限定はない。分離膜10の貫通孔への入り易さを考慮すると、無機粒子の平均粒子径は上述した貫通孔一つあたりの直径の平均値の好ましくは95%以下であり、より好ましくは80%以下である。分離膜10の貫通孔に留まって充填され易くなることを考慮すると、無機粒子の平均粒子径は上述した貫通孔一つあたりの直径の平均値の好ましくは0.001%以上であり、より好ましくは0.002%以上である。無機粒子の具体的な平均粒子径は、好ましくは5nm〜9.5μmであり、より好ましくは10nm〜1μmである。
本発明で用いる無機粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察した写真から測定できる。必要に応じて画像解析ソフトを使用して平均粒子径を計算することもできる。また、分散液では市販の粒度分布計によって測定される。
【0019】
無機粒子が分離膜の貫通孔に充填されてなるとは、貫通孔中に無機粒子が詰まっていることを意味し、無機粒子が導電性粒子であれば貫通孔の一端から他端へと電気的接続が達成される程度に密に詰まっていることが好ましい。
【0020】
無機粒子は、球状、星状、針状、短繊維状、破砕粉末状など任意の形状でよく、分離膜10の貫通孔への充填のし易さからは、球状が好ましい。
【0021】
分離膜10の貫通孔へ無機粒子を充填する方法は特に限定はない。図1(A)は、無機粒子の充填方法の一例を模式的に示す図である。図1(A)に示す充填方法は、無機粒子を含む懸濁液3を分離膜10の一方の主面側に存在させて分離膜10の他方の主面側から補助膜2を介して吸引することで分離膜10の貫通孔11に無機粒子を充填する方法である。図1(A)では、分離膜10の紙面上方の主面側に懸濁液3を存在させて、紙面下方の主面側から吸引している。上記方法によれば、従来よりもずっと小さな径の導通路を有する異方導電性シートに相当する有機−無機複合体を容易に製造することができる。
【0022】
図1(A)に示す充填方法は、分離膜10を無機粒子で意図的に目詰まりさせることに相当する。補助膜2を介すことによって、無機粒子が分離膜10の貫通孔11を素通りして流出してしまうことを抑制することができる。そのような目的を達するため、補助膜2は、上記懸濁液の溶剤を通過させかつ無機粒子を実質的に通過させない膜が好ましい。無機粒子を実質的に通過させない膜とは、無機粒子を含む懸濁液を吸引によって通過させようとすると、少なくとも一部の無機粒子を捕捉して次第に捕捉量が多くなるような膜である。補助膜2は、懸濁液の溶剤を通過させることができ、それによって懸濁液の溶剤と無機粒子とを分離して無機粒子をなるべく密に分離膜10の貫通孔11へ充填させることができる。そのような条件を満たす膜は、使用する無機粒子の粒子径などの条件を勘案して、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜などから適宜選択することができる。
【0023】
図1(A)に示す充填方法に適用し得る懸濁液は、分離膜10の貫通孔11に充填すべき無機粒子と溶剤とを含む。前記溶剤は、分離膜10や補助膜2を溶解せずかつ無機粒子を分散し得るものであれば特に限定はなく、水や流動パラフィンなどといった常温で流動性を呈する物質や、加温することで流動性を呈するワックスなどが好適例として挙げられる。
【0024】
無機粒子を含む懸濁液3を分離膜10の一主面側に存在させて分離膜10の他の主面側から吸引する手段は、濾過の実施において用いられる吸引手段などを適宜援用することができ、水流ポンプなどが例示される。
【0025】
上記のように、無機粒子を分離膜10の貫通孔11に充填させることで本発明の有機−無機複合体1を得ることができる。好ましくは、そのような有機−無機複合体に接着剤を含浸させて、次いで、前記接着剤を固化させることで無機粒子を貫通孔11内により強固に固定化することができる。ここで接着剤とは、無機粒子の固定化に寄与する有機化合物含有組成物であればよく、エポキシ樹脂などといった硬化性樹脂を含むものや常温で固化するワックスなどを例示することができる。接着剤の固化の程度も特に限定はなく、無機粒子を貫通孔11へ留めることに寄与し得る程度でよい。好ましい接着剤の例としてエポキシ系接着剤が挙げられ、好ましい固化の状態を考慮すると、より好ましくはBステージエポキシ樹脂からなる接着剤である。ここで、Bステージエポキシ樹脂とはゲル状の程度にまで固化したエポキシ樹脂をさす。そのようなエポキシ樹脂は、加熱すれば容易に軟化するが実質的に溶融しない。有機−無機複合体にBステージエポキシ樹脂が含浸されてなることで、細孔に充填された粒子が細孔から離脱することを防ぐという利点がある。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明するが、これらの例は本発明を何ら限定するものではない。
【0027】
(実施例1)
10gの球状ニッケル粒子(川鉄鉱業株式会社製、粒径0.3μm)を30gの流動パラフィンに加えて、超音波分散装置(ギンセン社製、UT−600)を用いて10分間超音波処理を施して分散した。分散液の一部をサンプリングして粒度分布計(日機装株式会社製、Microtrak UPA150)で測定したところ、0.3μmにピークを有する粒度分布を示した。
【0028】
野村マイクロサイエンス社製のトラックエッチング膜(Nuclepore膜、孔径1μm、厚さ11μm、開口面積率16%、孔密度2×10個/cm)と、室温乾燥した日東電工株式会社製の限外濾過膜No.3150とを重ねて、75mm径の吸引ロートにセットした。水流ポンプによってトラックエッチング膜と限外濾過膜とを吸引ロートに密着させるように吸引した。その後、上述の分散液を吸引濾過に供した。濾過の完了後、アルコールで膜を2回洗浄して、さらに水流ポンプを稼動させることで乾燥した。
【0029】
その後、トラックエッチング膜を吸引ロートから取出した。膜の表面に付着した粒子をワイパーで除去した。次いで、エポキシ樹脂をメチルエチルケトンに希釈してなる液を膜に含浸した。含浸後の膜を60℃に加熱することでエポキシ樹脂を固化して、有機−無機複合体を得た。得られた有機−無機複合体を電子顕微鏡で観察して、トラックエッチング膜の貫通孔にニッケル粒子が充填されていることを確認した。
【0030】
(実施例2)
実施例1で得られた有機−無機複合体を直流電磁石の間に挟んで着磁させた。
この有機−無機複合体に含まれるニッケル粒子が磁化されたことを確かめるために、この有機−無機複合体の上に鉄粉を撒き、その後、有機−無機複合体を傾けて余分な鉄粉を除去した。これを顕微鏡にて観察すると、ニッケル粒子が充填された細孔に鉄粉が集まっていることが観察され、有機−無機複合体に含まれるニッケル粒子が磁化されたことが確認された。
【0031】
(実施例3)
ニッケル粒子の代わりに銅粒子(三井金属鉱業株式会社製、平均粒径1μm)を用い、トラックエッチング膜としてWhatman社製のNuclepore膜(孔径10μm、厚さ11μm、開口面積率16%、孔密度1×10個/cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機−無機複合体を製造した。得られた有機−無機複合体の両主面間に導通がとれることを、電極を当てて確認し、この有機−無機複合体が異方導電性シートとしての機能を有することを確認した。
【0032】
(比較例)
吸引濾過によらず、スキージを用いて実施例1と同様の有機−無機複合体の製造を試みた。しかし、トラックエッチング膜の貫通孔には流動パラフィンとニッケル粒子とからなる分散液がそのままの濃度で入り込むだけであってニッケル粒子による充填はできずに有機−無機複合体を得ることができなかった。また、トラックエッチング膜の貫通孔から流動パラフィンをうまく除去することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の有機−無機複合体とその製造方法を模式的に示す。同図(A)は、本発明の有機−無機複合体の好適な製造例を示し、同図(B)および(C)は、それぞれ、本発明の有機−無機複合体の平面図、断面図を示す。
【符号の説明】
【0034】
1 有機−無機複合体
10 分離膜
11 貫通孔
12 充填された無機粒子
2 補助膜
3 懸濁液
4 吸引ロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔が形成されてなる分離膜と、上記貫通孔に充填された無機粒子とを有する有機−無機複合体。
【請求項2】
分離膜の孔密度が1×10〜1×10個/cmである請求項1記載の有機−無機複合体。
【請求項3】
分離膜の開孔面積率が0.1〜20%である請求項1または2記載の有機−無機複合体。
【請求項4】
貫通孔がトラックエッチング法によって形成されてなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機−無機複合体。
【請求項5】
さらに接着剤が含浸されてなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機−無機複合体。
【請求項6】
接着剤がBステージエポキシ樹脂からなる請求項5記載の有機−無機複合体。
【請求項7】
当該有機−無機複合体が異方導電性シートであり、無機粒子が導電性粒子である請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機−無機複合体。
【請求項8】
導電性粒子がニッケル粒子である請求項7記載の有機−無機複合体。
【請求項9】
無機粒子が残留磁化を有する粒子である請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機−無機複合体。
【請求項10】
有機樹脂からなるフィルムに複数の貫通孔が形成されてなる分離膜の一方の主面側に無機粒子と溶剤とを含む懸濁液を存在させて、分離膜の他方の主面側から下記(I)を満足する補助膜を介して吸引することで分離膜の貫通孔に無機粒子を充填する工程を有する有機−無機複合体の製造方法。
(I)懸濁液の溶剤を通過させかつ無機粒子を実質的に通過させない。
【請求項11】
分離膜の貫通孔に無機粒子を充填してなる有機−無機複合体に接着剤を含浸させて、次いで、前記接着剤を固化する工程をさらに有する請求項10記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−40954(P2006−40954A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214674(P2004−214674)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】