説明

有機エレクトロルミネセンスデバイス

【課題】良好な有機エレクトロルミネセンスデバイスの提供
【解決手段】有機エレクトロルミネセンスデバイスが、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置された発光構造を支持する基板を含む。酸化ホウ素の層と、無機バリヤ層とを含む保護構造が、基板と協働して、第1の電極、第2の電極、および発光構造をカプセル化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上された有機エレクトロルミネセンスデバイスに関し、より具体的には、デバイスによる湿気の吸収を低減するために保護された有機エレクトロルミネセンスデバイスに関する。本発明は、また、有機エレクトロルミネセンスデバイスを、望ましくない、デバイスによる湿気の吸収に対して保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンスデバイス(たとえば、有機発光ダイオード)が、さまざまなライティング用途に、ならびに高解像度および低解像度ディスプレイの作製に有用である。これらのデバイスは、典型的には、アノードとカソードとの間に配置された有機エレクトロルミネセンス材料を含む。デバイスは、また、湿気反応性電極材料またはエレクトロルミネセンス材料を含有することができ、有機発光ダイオード(OLED)が湿気劣化を受けやすいことが、周知である。したがって、反応性材料を含有する有機エレクトロルミネセンスデバイスは、通常、デバイスの有用寿命を延ばすためにカプセル化される。カプセル化は、典型的には、電極およびエレクトロルミネセンス材料を、ガラスおよびポリマー材料などの2つの基板の間に、または基板と金属容器(metal can)との間に、しばしば乾燥剤の存在下で、位置決めしシールすることを伴う。反応性材料の、湿気との接触をさらに低減するために、さまざまな他の保護層も含むことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態において、本発明は、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置された発光構造を支持する低透湿性基板(たとえば、ガラス、金属、ケイ素、または保護されたポリマーフィルム)と、基板と協働して、第1の電極、第2の電極、および発光構造をカプセル化する保護構造とを含む有機エレクトロルミネセンスデバイスを提供する。保護構造は、酸化ホウ素の層と、無機バリヤ層とを含む。好ましくは、無機バリヤ層は低透湿性を有する。
【0004】
酸化ホウ素の層を、第1の電極、第2の電極、および発光構造の上に配置することができ、無機バリヤ層を酸化ホウ素の層の上に配置することができる。無機バリヤ層は、好ましくは、酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウム、窒化ケイ素もしくは窒化アルミニウム、または炭化ケイ素もしくは炭化アルミニウムなどの、無機酸化物、ホウ化物、窒化物、炭化物、オキシ窒化物(oxynitride)、オキシホウ化物(oxyboride)、またはオキシ炭化物(oxycarbide);ダイヤモンド状炭素化合物;および、ケイ素、アルミニウム、またはそれらの組合せなどの金属を含む。具体的な例としては、酸化(一酸化または二酸化)ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、または酸化ケイ素アルミニウム(silicon aluminum oxide)が挙げられる。無機バリヤ層は、たとえば交互のポリマー層および無機層を含む多層構造であることができる。
【0005】
デバイスは、酸化ホウ素の層を、第1の電極、第2の電極、および/または発光構造との反応から保護するために、バッファ層をさらに含むことができる。バッファ層を、第1の電極、第2の電極、および発光構造の上に配置することができ、酸化ホウ素の層をバッファ層の上に配置することができ、無機バリヤ層を酸化ホウ素の層の上に配置することができる。バッファ層は、好ましくは、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(AlQ)または銅フタロシアニン(CuPc)などの、有機金属化合物またはキレート化合物を含む。
【0006】
保護構造は、第2の無機バリヤ層をさらに含むことができる。そのような構造において、バッファ層(存在する場合)が、第1の電極、第2の電極、および発光構造の上に配置され、無機バリヤ層はバッファ層の上に配置され、酸化ホウ素の層は無機バリヤ層の上に配置され、第2の無機バリヤ層は酸化ホウ素の層の上に配置される。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、有機エレクトロルミネセンスデバイスを保護する方法に関する。この方法は、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置された発光構造を支持する低透湿性基板を含む有機エレクトロルミネセンスアセンブリを提供する工程と、基板と協働して、第1の電極、第2の電極、および発光構造をカプセル化する保護構造を適用する工程とを含む。保護構造は、酸化ホウ素の層と、無機バリヤ層とを含む。
【0008】
酸化ホウ素の層を熱的蒸発によって適用することができ、無機バリヤ層を蒸着によって適用することができ、デバイスがバッファ層をさらに含む場合、それを熱的蒸発または蒸着によって適用することができる。
【0009】
本発明は、全体を通して同じ参照符号が同じまたは類似した構成要素を示す、次の非限定的な、縮尺通りでない図面を参照して、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイスの第1の実施形態の概略断面図である。
【図2】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイスの第2の実施形態の概略断面図である。
【図3】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイスの第3の実施形態の概略断面図である。
【図4】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイス内の低透湿性基板として使用することができる保護されたポリマーフィルムの第1の実施形態の概略断面図である。
【図5】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイス内の低透湿性基板として使用することができる保護されたポリマーフィルムの第2の実施形態の概略断面図である。
【図6】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイス内の低透湿性基板として使用することができる保護されたポリマーフィルムの第3の実施形態の概略断面図である。
【図7】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイス内の低透湿性基板として使用することができる保護されたポリマーフィルムの第4の実施形態の概略断面図である。
【図8】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイス内の低透湿性基板として使用することができる保護されたポリマーフィルムの第5の実施形態の概略断面図である。
【図9】本発明による有機エレクトロルミネセンスデバイス内の低透湿性基板として使用することができる保護されたポリマーフィルムの第6の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
広く、および一態様において、本発明は、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に配置された発光構造を支持する低透湿性基板を含む有機エレクトロルミネセンスデバイスを提供する。保護構造が、基板と協働して、望ましくない湿気の吸収に対して、第1の電極、第2の電極、および発光構造をカプセル化する。保護構造は、酸化ホウ素の層と、無機バリヤ層とを含む。
【0012】
便宜上、第1の電極、第2の電極、およびそれらの間に配置された発光構造を、まとめて、有機エレクトロルミネセンス(OEL)デバイスの「動作構成要素」または有機エレクトロルミネセンスアセンブリとここで呼ぶことがあり、これらの構成要素は、電流を電極間に通すことが、光が発光構造によって発されることを引起すように動作可能に配列される。発光構造は、典型的には、有機エレクトロルミネセンス材料を含み、電極の少なくとも1つが、典型的には、有機エレクトロルミネセンス材料によって発された光を透過することができる。
【0013】
「保護構造」は、広く、酸化ホウ素の層および無機バリヤ層を指し、これらの層は、低透湿性基板と協働して、OELデバイスの動作構成要素をカプセル化する。「カプセル化する」とは、動作構成要素によって吸収されることがある湿気に曝されることを低減するように、保護構造および基板が、協働して、OELデバイスの動作構成要素の露出した感湿性表面を囲むか閉じ込めることを意味する。本発明によるOELデバイスは、保護構造を有さない同じデバイスに対して、低減された、湿気を吸収する能力を有する。
【0014】
有機発光ダイオード(OLED)などのOELデバイスが、湿気の存在下で劣化することがあり、そのようなデバイス内の電極のために使用される反応性金属が、湿気に曝されると腐食することがある。これらの有機電子デバイス、ならびに、光弁、液晶ディスプレイ、薄膜トランジスタ、および他の電子構成要素などの他の有機電子デバイスは、本発明によって保護されることから利益を得るであろう。
【0015】
ここで、図面を参照すると、図1は、第1の電極14、第2の電極16、および第1の電極と第2の電極との間に配置された発光構造18を支持する低透湿性基板12を含む有機エレクトロルミネセンス(OEL)デバイス10を示す。酸化ホウ素の層20と、無機バリヤ層22とを含む保護構造が、低透湿性基板12と協働して、第1の電極14、第2の電極16、および発光構造18(すなわち、OELデバイス10の動作構成要素)をカプセル化する。
【0016】
OELデバイス10を電源に接続するのを促進するために、デバイスは、また、第1の電極14と電気伝達するコンタクトパッド24と、第2の電極16と電気伝達するコンタクトパッド26とを含む。典型的には、コンタクトパッド24は、第1の電極14の連続した切れ目のない延長であり、コンタクトパッド26は、第2の電極16の連続した切れ目のない延長である。この場合、保護構造の周囲が、第1の電極14とコンタクトパッド24との間の境界、および第2の電極16とコンタクトパッド26との間の境界を画定することが理解されるであろう。保護構造の周囲および2つの境界は、図1において、それぞれ、破線28および30によって表される。したがって、図1のOELデバイス10の動作構成要素は、保護構造および基板12の協働によってカプセル化される。
【0017】
「低透湿性基板」は、OELデバイスの動作構成要素、ならびにOELデバイスまたは保護構造を構成することができる任意の他の材料、構成要素、および/または層を支持するのに適しているほど、透湿に対して十分に耐性のある任意の材料を意味し、これによって提供することができる。OELデバイスは、典型的には、モコン(MOCON)(ミネソタ州ミネアポリスのモダン・コントロールズ(Modern Controls, Minneapolis, MN))によって提供されるような市販の設備によって測定することができるレベルを超える湿気からの保護を必要とする。モコン設備は、典型的には、5×10-4グラム/平方メートル/日(g/m2/日)の低い透湿速度を測定することができるが、1×10-6g/m2/日の低い浸透速度が、望ましい目標として説明されている。したがって、「低透湿性」基板は、より好ましくは、ASTMテスト方法F−1249に従って測定された、5×10-4g/m2/日未満、好ましくは1×10-5g/m2/日未満、さらに好ましくは1×10-6g/m2/日未満の透湿速度を有する。
【0018】
これらのガイドラインの範囲内で、適切な低透湿性基板としては、ガラス、ケイ素、金属および金属箔(たとえば、アルミニウム、銅、およびステンレス鋼)、ならびに、以下で、図4〜9と関連してより完全に説明されるように、湿気を透過する、ポリマーのいかなる固有の傾向にも対処するように処理されたポリマーシートまたはポリマーフィルムが挙げられる。
【0019】
第1の電極14および第2の電極16は、同じ材料または異なった材料から形成することができる。典型的には、それらは、たとえば、金、白金、パラジウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、窒化チタン、酸化インジウムスズ、酸化フッ素スズ(fluorine tin oxide)、およびポリアニリンを含む、金属、合金、金属化合物、金属酸化物、導電性セラミックス、導電性分散系、および導電性ポリマーなどの導電性材料を使用して形成される。第1の電極14および第2の電極16は、導電性材料の1つの層、または多数の層であることができる。たとえば、電極は、アルミニウムの層および金の層、カルシウムの層およびアルミニウムの層、アルミニウムの層およびフッ化リチウムの層、または金属層および導電性有機層を含むことができる。電極を作製するための方法としては、スパッタリング、蒸着、レーザ熱パターニング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、サーマルヘッド印刷、およびフォトリソグラフィパターニングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
発光構造18は、1つの層または多数の層であることができ、典型的には、蛍光またはりん光であることができる少なくとも1つの有機エレクトロルミネセンス材料を含有する。適切な例としては、小分子(SM)エミッタ(たとえば、非ポリマーエミッタ)、SMドープポリマー、発光デンドリマー、発光ポリマー(LEP)、ドープLEP、またはブレンドされたLEPが挙げられる。有機エレクトロルミネセンス材料は、単独で、または有機エレクトロルミネセンスディスプレイもしくはデバイスにおいて機能的もしくは非機能的である任意の他の有機材料もしくは無機材料と組合せて、提供することができる。
【0021】
有用なSMエレクトロルミネセンス材料としては、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(TPD)などの、電荷輸送、電荷ブロッキング、および半導性有機化合物または有機金属化合物、ならびにトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(AlQ)などの金属キレート化合物が挙げられる。典型的には、これらの材料を、真空蒸着するか溶液からコーティングして、デバイス内に薄い層を形成することができ、実際に、SM材料の多数の層が、しばしば、効率的な有機エレクトロルミネセンスデバイスを製造するために使用され、というのは、所与の材料が、一般に、所望の電荷輸送特性およびエレクトロルミネセンス特性の両方は有さないからである。
【0022】
LEP材料は、典型的には、好ましくは溶液処理のための十分なフィルム形成特性を有する共役ポリマー分子または共役オリゴマー分子である。「共役ポリマー分子または共役オリゴマー分子」は、ポリマー主鎖に沿って、非局在化π電子系を有するポリマーまたはオリゴマーを指す。そのようなポリマーまたはオリゴマーは、半導性であり、かつ、ポリマー鎖またはオリゴマー鎖に沿って、正および負電荷キャリヤを支持することができる。適切なLEP材料の例示的な種類としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ(パラ−フェニレン)、ポリフルオレン、現在知られているか後に開発される他のLEP材料、およびそれらのコポリマーまたはブレンドが挙げられる。適切なLEPを、また、分子ドープすること、蛍光染料またはフォトルミネセンス材料を分散させること、活性または非活性材料とブレンドすること、活性または非活性材料を分散させることなどができる。
【0023】
LEP材料の溶媒溶液を基板上にキャストし、溶媒を蒸発させて、ポリマーフィルムを製造することによって、または、前駆体種の反応によって基板上に現場で、LEP材料を発光構造に形成することができる。他の形成方法としては、レーザ熱パターニング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、サーマルヘッド印刷、フォトリソグラフィパターニング、および押出コーティングが挙げられる。
【0024】
図1において別々に示されていないが、発光構造18は、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層などの他の機能層を、任意に含有することができ、好ましくは含有する。これらおよび他の層および材料を使用して、OELデバイスの電子特性および特徴を変更または調整することができる。たとえば、そのような層および材料を使用して、所望の電流/電圧応答、所望のデバイス効率、所望の輝度などを達成することができる。さらに、有機エレクトロルミネセンス材料によって発される光を別の色に変えるために、フォトルミネセンス材料が存在することができる。
【0025】
たとえば、1つの電極(たとえば、アノード)からOELデバイスへの正孔の注入、および再結合ゾーンの方へのそれらの移動を促進するために、正孔輸送層を、発光構造の他の層と第1または第2の電極との間に位置決めすることができる。正孔輸送層は、さらに、電子のアノードへの通過に対するバリヤとして作用することができる。正孔輸送層としての使用に適した材料としては、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジンもしくはN,N’−ビス(3−ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジンなどのジアミン誘導体、または4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミンもしくは4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体が挙げられる。他の適切な材料としては、銅フタロシアニン、1,3,5−トリス(4−ジフェニルアミノフェニル)ベンゼン、ならびに、エイチ・フジカワ(H.Fujikawa)ら、シンセティック・メタルズ(Synthetic Metals)、91、161(1997)、および、ジェイ・ブイ・グラズルビシウス(J.V. Grazulevicius)、ピー・ストローリーグル(P. Strohriegl)、「電荷輸送ポリマーおよび分子ガラス(Charge−Transporting Polymers and Molecular Glasses)」、進歩した電子材料およびフォトニック材料ならびに電子デバイスおよびフォトニックデバイスハンドブック(Handbook of Advanced Electronic and Photonic Materials and Devices)、エイチ・エス・ナルワ(H.S. Nalwa)(編)、10、233−274(2001)に記載されているような化合物が挙げられる。
【0026】
同様に、電子の注入、および再結合ゾーンの方へのそれらの移動を促進するために、電子輸送層を、発光構造の他の層と第1または第2の電極との間に位置決めすることができる。電子輸送層は、さらに、正孔のカソードへの通過に対するバリヤとして作用することができる。正孔がカソードに達すること、および電子がアノードに達することを防止することは、より高い効率を有するエレクトロルミネセンスデバイスをもたらすであろう。有機金属化合物トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム;1,3−ビス[5−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン;2−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール;ならびに、シー・エイチ・チェン(C.H. Chen)ら、マクロモルキュラー・シンポジア(Macromol. Symp.)125、1(1997)、および、ジェイ・ブイ・グラズルビシウス(J.V. Grazulevicius)、ピー・ストローリーグル(P. Strohriegl)、「電荷輸送ポリマーおよび分子ガラス(Charge−Transporting Polymers and Molecular Glasses)」、進歩した電子材料およびフォトニック材料ならびに電子デバイスおよびフォトニックデバイスハンドブック(Handbook of Advanced Electronic and Photonic Materials and Devices)、エイチ・エス・ナルワ(H.S. Nalwa)(編)、10、233(2001)に記載された化合物を使用して、電子輸送層を形成することができる。
【0027】
引続き図1を参照すると、保護構造は、酸化ホウ素層20と、無機バリヤ層22とを含む。いくつかの利点が、本発明に酸化ホウ素を使用することと関連するが、あらゆる利点が、必ずしも、酸化ホウ素層を組入れる各用途に反映されないことが理解されるであろう。酸化ホウ素を、光学的にクリアなまたは透明なガラス状材料として、発光構造18上に堆積させるか、発光構造18に他の態様で適用することができ、これは、この層が、発光構造からの光を透過することができる必要がある場合、OELデバイスに有利であろう。さらに、酸化ホウ素層は、製造の間内部に閉じ込められていようと、周囲環境からであろうと、湿気を吸収する、OELデバイスの傾向を低減することができる。特定の理論に縛られることを望まないが、酸化ホウ素は、湿気と反応させて、ホウ酸、比較的弱い酸を生じさせることによって、湿気を除去する(scavenges)と考えられ、ホウ酸の固体形態は、OELデバイスに有害である可能性が低い。これは、酸化ホウ素の1つの分子の、水の3つの分子との反応によって表すことができる、B23+3H2O→2B(OH)3。発生された気体または液体の形態の付加的な反応生成物は遊離されない。
【0028】
酸化ホウ素は、また、用途によっては望ましいであろう特定の処理利点を提供する。たとえば、スパッタリング法、化学蒸着法、電子ビーム堆積法、および熱的蒸発法(たとえば、蒸着)を含むいくつかの技術によって、酸化ホウ素を発光構造18に適用することができる。ターゲット表面が、スパッタリングなどのより強力な適用方法からの損傷を受けやすい場合、蒸着が好ましい方法である。望ましくは、酸化ホウ素を、受入れられる速度で、適度な条件(たとえば、約10から50Å/秒の堆積速度を約10-6から10-4トルの蒸気圧力下で達成することができる)下で、分解の徴候(たとえば、ソース材料の変色)を示さずに、蒸着することができる。
【0029】
酸化ホウ素層20は、透湿に対して保護されることが意図され、かつ個別の用途によって定められる、OELデバイスの部分上に設けられる。酸化ホウ素層20の厚さは、また、OELデバイスの性質、使用の間OELデバイスが曝されやすい湿気条件、保護構造内に存在する他の層、光学的透明性のための要件、コストなどによって、実質的に変わる。層厚さが増加すると、耐透湿性が増加するが、おそらく、低減された透明性、低減された可撓性、および増加されたコストという犠牲を払う。これらのガイドラインの範囲内で、酸化ホウ素層20は有効厚さで設けられ、有効厚さとは、OELデバイスによる湿気の吸収を、酸化ホウ素層を有さない同じOELデバイスに対して低減するのに十分な厚さを意味する。より具体的には、酸化ホウ素層は、好ましくは、約50Åから10,000Å、より好ましくは約500Åから5,000Å、さらに好ましくは約3,000Åから5,000Åの厚さで設けられる。
【0030】
依然として図1を参照すると、保護構造は、また、無機バリヤ層22を含み、これは、酸化ホウ素層20と協働して、OELデバイスを保護する。無機バリヤ層22は、湿気、酸素、および熱、および/または機械的衝撃に曝されることに対する保護をもたらすことができるが、それは、大抵の場合、湿気および/または酸素バリヤとして含まれる。この能力において、無機バリヤ層22が、さらに、OELデバイスの動作構成要素を湿気吸収から保護するように選択されることが好ましい。無機バリヤ層22が、酸化ホウ素層20、または無機バリヤ層に隣接した他の層と反応性でないことも好ましい。特定の用途において、無機バリヤ層22が、光学的にクリアなまたは透明な材料として、堆積されるか他の態様で適用されることが望ましく、これは、この層が、発光構造18からの光を透過することができる必要がある用途に有利であろう。
【0031】
さまざまな材料を無機バリヤ層として使用することができる。好ましい無機バリヤ層材料としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属オキシ窒化物、金属オキシホウ化物、およびそれらの組合せ、たとえば、シリカなどの酸化ケイ素、アルミナなどの酸化アルミニウム、チタニアなどの酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、オキシ窒化アルミニウム、オキシ窒化ケイ素、オキシ窒化ホウ素、オキシホウ化ジルコニウム、オキシホウ化チタン、およびそれらの組合せが挙げられる。酸化インジウムスズ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、およびそれらの組合せが、特に好ましい無機バリヤ層材料である。スパッタリング(たとえば、カソードまたはプレーナマグネトロンスパッタリング)、蒸着(たとえば、抵抗または電子ビーム蒸着)、化学蒸着、めっきなどのフィルム金属化技術に用いられる技術を用いて、無機バリヤ層を適用または形成することができる。無機バリヤ層22に適した材料は、部分的に、それが果たすことが意図される保護機能によるが、ガラスおよび無機酸化物(たとえば、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、または酸化ケイ素アルミニウムなどの、ケイ素、アルミニウム、またはそれらの組合せの酸化物)が非常に有用である。本発明に有用な無機バリヤ層のさらなる例としては、米国特許第6,696,157号明細書(デービッド(David))に記載されているような、プラズマ強化化学蒸着(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)(PE−CVD)を用いて製造された材料が挙げられる。
【0032】
別の実施形態において、無機バリヤ層22を、たとえば交互のポリマー層および無機層を含む多層構造によって提供することができる。無機層は、無機バリヤ層について上で示された材料のいずれかによって提供することができ、ポリマー層は、たとえば、(メタ)アクリレート、ポリエステル、フッ素化ポリマー、パリレン、シクロテン、またはポリアルキレンであることができる。多層構造は、「PML」(すなわち、ポリマー多層)プロセス、または、層が、スパッタリング、スピンコーティング、熱的蒸発、化学蒸着などによって、適宜適用される他の技術によって、作製することができる。多層構造の適切な例が、たとえば、米国特許第5,440,446号明細書(ショー(Shaw))、米国特許第6,497,598号明細書(アフィニート(Affinito))、欧州特許出願公開第0 777 280 A2号明細書(モトローラ(Motorola))、国際公開第01/89006 A1号パンフレット(バッテル記念研究所(Battelle Memorial Institute))、および米国特許出願公開第2002/0068143号明細書(シルバーネイル(Silvernail)ら)に記載されている。
【0033】
無機バリヤ層22の厚さは、また、OELデバイスの性質、使用の間OELデバイスが曝されやすい湿気/空気条件、保護構造内に存在する他の層、光学的透明性のための要件、コストなどによって、実質的に変わる。層厚さが増加すると、耐透湿性が増加するが、おそらく、低減された透明性、低減された可撓性、および増加されたコストという犠牲を払う。これらのガイドラインの範囲内で、無機バリヤ層22は有効厚さで設けられ、有効厚さとは、湿気の透過に耐え、熱衝撃および/または機械的衝撃などに耐える、OELデバイスの能力を、無機バリヤ層を含む保護構造を有さない同じデバイスに対して増加させるのに十分な厚さを意味する。より具体的には、無機バリヤ層は、好ましくは、約0.5μmから70μm、より好ましくは約1.5μmから40μm、さらに好ましくは約3.5μmから30μmの厚さで設けられる。
【0034】
酸化ホウ素層20が、中間無機バリヤ層22、およびOELデバイスの動作構成要素である(すなわち、侵入する湿気が、酸化ホウ素層に当たる前、無機バリヤ層に当たる)、図1に示されたOELデバイスの実施形態は、特定の利点を提供する。この配列は、酸化ホウ素層20が、本質的に連続した層で堆積されることを可能にするが、形成するピンホール、ならびに、蒸着および他のプロセスにしばしば付随する他の同様の欠陥を厳密に回避する必要がなく、というのは、無機バリヤ層22が、また、透湿に耐え、かつ、最初に、侵入する湿気に当たる(酸化ホウ素層に対して)層であるからである。この配列は、また、酸化ホウ素層20が、OELデバイスによる湿気吸収を低減する際に「最後の防御線」を提供することを可能にする。
【0035】
ここで、図2を参照すると、本発明によるOELデバイスの別の実施形態が示されている。図2の実施形態は、任意のバッファ層32が酸化ホウ素層20とOELデバイスの動作構成要素との間に介在された以外は、図1の実施形態と同様である。「バッファ層」は、保護構造をOELデバイスの動作構成要素から分離する層を指すが、それは電気的に活性であることができる。バッファ層は、多種多様な可能な機能を行うことができる。たとえば、バッファ層は、上に酸化ホウ素層または他の層を堆積させるための滑らかな表面を提供することができるか、それは、いかなるその後形成される層の接着を向上させる固着層または下塗り層を提供することができる。バッファ層は、いかなるその後形成される層も、無機バリヤ層または酸化ホウ素層との反応から保護することができる。バッファ層は光学機能を行うことができる。典型的には、バッファ層は、また、保護構造および低透湿性基板の協働によってカプセル化される。
【0036】
バッファ層32は、多種多様な材料、有機および無機の両方から形成することができ、実際の選択は、バッファ層が果たすことが意図される1つまたは複数の特定の機能によって影響される。たとえば、OELデバイスの一部を形成する層がバッファ層に隣接する場合、酸化剤でなく、吸湿性でなく、酸性でない材料、およびこれらの層と非反応性である材料が好ましいであろう。電気的に活性の層を提供するために使用することができる材料も、バッファ層として含むことができ、例としては、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、N,N’−ビス(3−ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(NPD)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(ALQ)、金、一酸化ケイ素などが挙げられる。バッファ層32の厚さは、また、バッファ層が果たすことが意図される機能によるが、約500Åから2,000Åの範囲内の厚さが、一般に、有用であることが見出されている。
【0037】
ここで、図3を参照すると、本発明によるOELデバイスの別の実施形態が示されている。図3の実施形態は、任意の第2の無機バリヤ層34がバッファ層32と酸化ホウ素層20との間に介在された以外は、図2の実施形態と同様である。第2の無機バリヤ層34は、無機バリヤ層22と同様であり、無機バリヤ層22の先の説明は、第2の無機バリヤ層34に適用できる。図3の実施形態は、第2の無機バリヤ層34の結果として、向上された保護をOELデバイス10に与えるという付加的な利点を提供する。
【0038】
低透湿性基板12を、湿気を透過する、ポリマーフィルムのいかなる固有の傾向にも対処するように処理されたポリマーフィルムによって提供することができることを先に記載した。そのようなポリマーフィルムは、「保護されたポリマーフィルム」と呼ばれ、図4〜9に示されている。図4は、第1の主面112aと、第1の主面112aと反対側の第2の主面112bとを有するポリマーフィルム基板112を含む保護されたポリマーフィルム110を示す。保護構造114が、少なくとも基板112の第1の主面112a上に設けられる。保護構造114は、酸化ホウ素の層116と、無機バリヤ層118とを含む。好ましくは、基板112と保護構造114との間の介在層がなく、というのは、これは、湿気の、基板の透過を低減する、保護構造の能力を損なうことがあるからである。同様に、酸化ホウ素層116と無機バリヤ層118との間の介在層がないことが好ましく、というのは、これも、基板112による湿気の透過を低減する、保護構造114の能力を損なうことがあるからである。
【0039】
図4は、酸化ホウ素層116を、中間基板112および無機バリヤ層118であるように示すが、これらの2つの層の相対位置を、無機バリヤ層118が中間基板112および酸化ホウ素層116であるように逆にすることができる。無機バリヤ層および酸化ホウ素層が、侵入する酸素および湿気が、酸化ホウ素層に当たる前、無機バリヤ層に当たるように配列された構造が好ましい。
【0040】
基板112はポリマーフィルムである。「フィルム」とは、材料の厚さよりかなり大きい長さおよび幅寸法を有する材料を意味する。テープ、リボン、およびロールが、「フィルム」の概念内に含まれ、これらは、一般に、また、幅よりかなり大きい長さ寸法を有し、幅が、また、厚さよりかなり大きい材料を説明する。そのような材料は、しばしば、中心コアで提供され、これの周りに、材料が多数の巻きで巻付けられ、保護構造が基板に適用される(たとえば、ロールツーロール製造で)処理工程、付加的な製造作業、または処理後の取扱い、保管、および運送を促進する。シート、ページ、またはパネルも、「フィルム」の概念内に含まれ、これらは、一般に、より近く等しい長さおよび幅寸法を有する材料を説明する。そのような材料は、しばしば、多数の個別の層のスタックで取扱われ、それは、保護構造がシート供給または同様のシーティングタイプ作業で基板に適用される処理工程を促進する。
【0041】
「ポリマー」という用語は、ホモポリマーおよびコポリマー、ならびに、たとえば、共押出によって、または、たとえばエステル交換反応を含む反応によって、混和性ブレンドで形成することができるホモポリマーまたはコポリマーを指す。「コポリマー」という用語は、2つ以上の異なったモノマー単位から得られる材料を説明し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、およびグラフトコポリマーを含む。基板112を提供するのに適したポリマーは、アクリレート(ポリメチルメタクリレートなどのメタクリレートを含む)、ポリオール(ポリビニルアルコールを含む)、エポキシ樹脂、シラン、シロキサン(それらの変形のすべてのタイプとともに)、ポリビニルピロリドン、ポリイミド、ポリアミド、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリスルホン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、セルロースエーテルおよびエステル(たとえば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなど)、ニトロセルロース、ポリウレタン、ポリエステル(たとえば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート))、ポリカーボネート、ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなど)、フェノール樹脂(たとえば、ノボラック樹脂およびレゾール樹脂)、ポリビニルアセテート、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/無水マレイン酸、ポリオキシメチレン、ポリビニルナフタレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、フルオロポリマー、ポリα−メチルスチレン、ポリアリレート(polyarylates)、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリフタルアミド、ならびにポリ塩化ビニリデンを含む、フィルムに形成することができる、熱硬化(架橋)ポリマー、熱硬化性(架橋性)ポリマー、または熱可塑性ポリマーなどのいくつかの既知のポリマーのいずれかであることができる。
【0042】
いくつかの用途の場合、基板112が、可視光透過、たとえば、目的とする可視光波長における、少なくとも約70%の透過を有することが望ましいであろう。他の用途において、基板が、延伸、二軸延伸、および/または熱安定化されることが望ましいであろう。いくつかの場合、基板112が可撓性であることが望ましく、可撓性とは、上で説明されたように、多数の巻きを有するロールを製造するために、基板112をコアの周りに巻付けることができることを意味する。基板112の厚さは、主として、保護されたポリマーフィルムのための意図された用途によって決められるが、多くの用途の場合、約0.01から1mmの厚さ、より好ましくは約0.05から0.25mmが非常に有用である。
【0043】
引続き図4を参照すると、保護構造114は、酸化ホウ素の層116と、無機バリヤ層118とを含む。いくつかの利点が、酸化ホウ素を使用することと関連するが、あらゆる利点が、必ずしも、保護されたポリマーフィルムを組入れる各用途に反映されないことが理解されるであろう。酸化ホウ素を、光学的にクリアなまたは透明なガラス状材料として、ポリマーフィルム基板上に堆積させるか、ポリマーフィルム基板に他の態様で適用することができ、これは、この層が、有機エレクトロルミネセンスデバイス内などで光に対して透過性である必要がある用途に有利であろう。さらに、酸化ホウ素層は、周囲環境から生じようと、基板上に形成されたか基板に付着された構成要素から生じようと、湿気を透過する、ポリマーフィルム基板の固有の傾向を低減することができる。
【0044】
酸化ホウ素層116が、透湿に対して保護されることが意図され、かつ個別の用途によって定められる、ポリマーフィルム基板112の部分上に設けられる。酸化ホウ素層116の厚さは、また、保護されたポリマーフィルム110のための用途の性質、使用の間保護されたポリマーフィルムが曝されやすい湿気条件、保護構造114内に存在する他の層、保護されたポリマーフィルムの光学的透明性および機械的可撓性のための要件、コストなどによって、実質的に変わる。層厚さが増加すると、耐透湿性が増加するが、おそらく、低減された透明性、低減された可撓性、および増加されたコストという犠牲を払う。
【0045】
酸化ホウ素層116は、酸化ホウ素層16と同様であり、酸化ホウ素層16の先の説明は、酸化ホウ素層116に適用できる。
【0046】
依然として図4を参照すると、保護構造114は、また、無機バリヤ層118を含み、これは、酸化ホウ素層116と協働して、ポリマーフィルム基板112を保護する。無機バリヤ層118は、湿気、酸素、および熱、および/または機械的衝撃に曝されることに対する保護をもたらすことができるが、それは、大抵の場合、湿気および/または酸素バリヤとして含まれる。この能力において、無機バリヤ層118が湿気に対して不浸透性であること、または、それが、少なくとも、湿気の透過に対して強く耐性があることが好ましい。無機バリヤ層118が、酸化ホウ素層116、ポリマーフィルム基板112、無機バリヤ層に隣接した他の層、およびポリマーフィルム基板上に形成されたかポリマーフィルム基板に付着されたいかなる構成要素とも反応性でないことも好ましい。特定の用途において、無機バリヤ層118が、光学的にクリアなまたは透明な材料として、堆積されるか他の態様で適用されることが望ましく、これは、この層が、有機エレクトロルミネセンスデバイス内などで光に対して透過性である必要がある用途に有利であろう。無機バリヤ層118は、無機バリヤ層22と同様であり、無機バリヤ層22の先の説明は、無機バリヤ層118に適用できる。
【0047】
無機バリヤ層118の厚さは、また、保護されたポリマーフィルム110のための用途の性質、使用の間保護されたポリマーフィルムが曝されやすい湿気条件、保護構造114内に存在する他の層、保護されたポリマーフィルムの光学的透明性および機械的可撓性のための要件、コストなどによって、実質的に変わる。層厚さが増加すると、耐透湿性が増加するが、おそらく、低減された透明性、低減された可撓性、および増加されたコストという犠牲を払う。これらのガイドラインの範囲内で、無機バリヤ層118は有効厚さで設けられ、有効厚さとは、湿気の透過に耐え、熱衝撃および/または機械的衝撃などに耐える、ポリマーフィルムの能力を、無機バリヤ層を含む保護構造を有さない同じポリマーフィルムに対して増加させるのに十分な厚さを意味する。より具体的には、無機バリヤ層は、好ましくは、約0.5μmから70μm、より好ましくは約1.5μmから40μm、さらに好ましくは約3.5μmから30μmの厚さで設けられる。
【0048】
酸化ホウ素層116が、中間無機バリヤ層118およびポリマーフィルム基板112である(すなわち、侵入する湿気が、酸化ホウ素層に当たる前、無機バリヤ層に当たる)、図4に示された保護されたポリマーフィルム110の実施形態は、特定の利点を提供する。この配列は、酸化ホウ素層116が、本質的に連続した層で堆積されることを可能にするが、形成するピンホール、ならびに、蒸着および他のプロセスにしばしば付随する他の同様の欠陥を厳密に回避する必要がなく、というのは、無機バリヤ層118が、また、透湿に耐え、かつ、最初に、侵入する湿気に当たる(酸化ホウ素層に対して)層であるからである。この配列は、また、酸化ホウ素層116が、ポリマーフィルム基板112による透湿を低減する際に「最後の防御線」を提供することを可能にする。
【0049】
ここで、図5を参照すると、保護されたポリマーフィルム110の別の実施形態が示されており、これは、図4の実施形態と同様であるが、無機バリヤ層118が酸化ホウ素層116の横方向の側縁116aおよび116bをカプセル化またはシールして、さらに、この層をその端縁において湿気に曝されることから保護するというさらなる利点を提供する。この実施形態は、より高い湿気の環境において、または、酸化ホウ素層116が、無機バリヤ層118を通った湿気の透過に耐えるだけのために利用可能にされるべきである場合、特に有用であることができる。
【0050】
図6の実施形態は、図4の実施形態と同様であるが、酸化ホウ素層116とポリマーフィルム基板112との間に配置された第2の無機バリヤ層120をさらに含む。第2の無機バリヤ層120は、無機バリヤ層118と同様であり、無機バリヤ層118の先の説明は、第2の無機バリヤ層120に適用できる。図6の実施形態は、第2の無機バリヤ層120の結果として、向上された保護をポリマーフィルム基板112に与えるという付加的な利点を提供する。図7の実施形態は、図5の実施形態と同様であるが、図6に示されたものと同様の第2の無機バリヤ層120をさらに含む。したがって、図7において、無機バリヤ層118および120は、協働して、酸化ホウ素層116をカプセル化またはシールして、さらに、この層をその端縁において湿気に曝されることから保護する。
【0051】
ここで、図8を参照すると、保護されたポリマーフィルム110の別の実施形態が提示されており、これは、図4に示された実施形態と同様であるが、基板に固定されるか基板上にその後形成される構成要素または他の層から保護構造を分離する任意のバッファ層122をさらに含み、そのような構成要素または層は、一般に、図8において参照符号124で表される。任意のバッファ層122は、任意のバッファ層32と同様であり、任意のバッファ層32の先の説明は、任意のバッファ層122に適用できる。
【0052】
図9は、ポリマーフィルム基板112の第1の主面112aおよび第2の主面112bの両方に、酸化ホウ素の層116と、無機バリヤ層118とを含む保護構造114が設けられた実施形態を示す。図9の実施形態は、各保護構造と関連する第2の無機バリヤ層120をさらに含むが、第2の無機バリヤ層が、任意であり、一方または両方の保護構造から除くことができることが理解されるであろう。同様に、図9は、酸化ホウ素の各層116を、無機バリヤ層によってカプセル化されたように示すが、これは任意にすぎない。
【0053】
図面に示されていないが、特にフィルムの表面において、物理的または化学的特性を変更するか向上させるために、さまざまな機能層またはコーティングを、保護されたポリマーフィルム110に加えることができる。そのような層またはコーティングとしては、たとえば、可視光透過性導電層または電極(たとえば、酸化インジウムスズの);帯電防止コーティングまたはフィルム;難燃剤;UV安定剤;耐摩耗性材料またはハードコート材料;光学コーティングまたはフィルタ;防曇材料;磁気もしくは磁気光学コーティングまたは磁気もしくは磁気光学フィルム;写真乳剤;プリズムフィルム;ホログラフィフィルムまたは画像;感圧接着剤またはホットメルト接着剤などの接着剤;隣接した層への接着を促進するためのプライマー;およびバリヤアセンブリが接着ロール形態で使用されるべきである場合の使用のための低接着バックサイズ材料を挙げることができる。これらの機能的構成要素を、バリヤアセンブリの最も外側の層の1つ以上に組入れることができるか、別個のフィルムまたはコーティングとして適用することができる。
【0054】
ここで、本発明を、次の非限定的な実施例に関して説明し、実施例において、部およびパーセンテージはすべて、特に明記しない限り、重量による。
【実施例】
【0055】
特に明記しない限り、次の略記は、実施例に使用された材料および/またはそれらの供給源を説明する。
【0056】
【表1】

【表2】

【0057】
実施例において言及されるが、先の表において特定されない材料を、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company, Milwaukee, WI)から得ることができる。
【0058】
次の実施例において、特に明記しない限り、すべてのガラス基板を、使用前、次の洗浄手順にかけた:約5分間の温かい(約110°F)洗剤溶液(デコネックス(Deconex)12 NS、スイス、ズックウィルのボーラー・ケミー(Borer Chemie, Zuchwil, Switzerland))中での超音波処理;約10分間の温かい(約110°F)脱イオン水中でのすすぎ;および、少なくとも4時間の、窒素パージされたオーブン内での乾燥。
【0059】
実施例1
本発明によるOELデバイスを実施例1で作製し、これは、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間配置された発光構造を支持するガラス(すなわち、低透湿性)基板を含んだ。酸化ホウ素の層と、無機バリヤ層とを含む保護構造も、酸化ホウ素の層がOELデバイスの動作層(すなわち、発光構造ならびに第1および第2の電極)と直接接触する状態で設けた。
【0060】
50mm×50mmの正方形であるガラス基板を、各々が0.25cm2である4のピクセルの形態のITO層でパターニングした(ミネソタ州スティルウォーターのデルタ・テクノロジーズ・リミテッド(Delta Technologies Ltd., Stillwater MN)から入手可能な20オーム/sqのITOコーティングガラス)。PEDOT(1%固形分)の溶液を、2500RPMで30秒間基板上にスピンコーティングし(spun coat)、次に、85℃で15分間窒素雰囲気下で乾燥させた。次に、緑色発光OLEDスタックを、約5×10-6トルで真空チャンバを使用して熱的蒸発によって、PEDOT層の上に堆積させた。より具体的には、次の層をPEDOT層の上に堆積させる(記載される順で)ことによって、OLEDスタックを提供した:NPD(1Å/秒で400Å)/AlQ:C545T(1%のドーピング、1Å/秒で300Å)/AlQ(1Å/秒で200Å)/LiF(0.5Å/秒で7Å)/Al(25Å/秒で2500Å)。
【0061】
次に、OELデバイスの動作構成要素をカプセル化するように、3000ÅのB23をアルミニウム層の上に堆積させることによって、OELデバイスのための保護構造を適用した。B23を、タングステンディンプルソース(S8A−0.010W、カリフォルニア州シグナルヒルのR・D・マティス(R. D. Mathis, Signal Hill, CA))から熱的蒸発(約3〜5Å/秒の速度で)によって適用した。
【0062】
保護構造による動作構成要素のカプセル化前および後、光光学的に(photo−optically)補正されたシリコンフォトダイオード(カリフォルニア州ホーソーンのUDTセンサーズ(UDT Sensors, Hawthorne, CA))を使用して、デバイス効率を測定し、デバイス効率の実質的な差は観察されなかった。
【0063】
実施例2
保護構造カプセル化を伴うおよび伴わない、水溶液から形成された層を有するOELデバイスを実施例2で作製した。PEDOT層を、2500RPMで30秒間、パターニングされたITOガラス基板上にスピンコーティングし、後者は、実施例1で説明された通りであり、次に、コーティングされた基板を、15分間85℃で窒素雰囲気下で乾燥させた。次に、実施例1の緑色発光OLEDスタックを、実施例1で説明されたように、PEDOTコーティングガラス基板の上に蒸着した。
【0064】
次に、3000ÅのB23を動作構成要素の上に熱的蒸発し(B23の層を適用するために実施例1で説明された手順を用いて)、サーモ−ボンド845−EG−2.5ホットメルト接着剤を使用して、銅箔をB23層の上に手で積層することによって、これらのデバイス(「テストデバイス」)の少数を保護構造でカプセル化した。サーモ−ボンド845−EG−2.5ホットメルト接着剤を使用して、銅箔をOELデバイス動作構成要素の上に手で積層し、しかし、B23の層を含まないことによって、少数の他のデバイス(「対照デバイス」)を完成させた。
【0065】
テストデバイスおよび対照デバイスの両方を、周囲条件下で1週間保管し、すべてのピクセルのエレクトロルミネセンス(EL)画像を、カラーCCDカメラ(DC330、インディアナ州ミシガンシティーのダゲMTIインコーポレイテッド(DAGE MTI Inc., Michigan City, IN))が装備された立体顕微鏡(ステミ(Stemi)SV11 APO、ドイツのツァイス(Zeiss, Germany))を使用して撮った。次に、EL画像を2週ごとに撮り、「ダークスポット(dark spot)」成長を、テストデバイスおよび対照デバイスについて比較した。(ダークスポット成長は、湿気によるデバイスの劣化の徴候である。)対照デバイスは、テストデバイスに対して著しく劣化した。約3ヶ月の周囲条件下での保管後、対照デバイスは非発光領域(すなわち、ダークスポット)によってほとんど完全に被覆され、テストデバイスは、ごくわずかなダークスポット成長を示した。
【0066】
実施例3
保護構造カプセル化を伴うおよび伴わないOELデバイスを実施例3で作製し、これらのデバイスを、水溶液からキャストされた層なしで製造した。平面化HIL(MTDATA:FTCNQ(2.8%のドーピング、3000Å))を、パターニングされたITOガラス基板の上に蒸着し、基板は、実施例1で説明された通りであった。次に、実施例1で説明された堆積手順を用いて、実施例1の緑色発光OLEDスタックをHILの上に堆積させた。
【0067】
少数のこれらのサンプルを、アルミニウムカソードの上に熱堆積されたAlQバッファ層(1000Å、1Å/秒)でコーティングした。次に、3000ÅのB23を動作構成要素およびバッファ層の上に熱的蒸発し(B23の層を適用するために実施例1で説明された手順を用いて)、サーモ−ボンド845−EG−2.5ホットメルト接着剤を使用して、銅箔をB23層の上に手で積層することによって、これらのデバイスを保護構造でカプセル化した。これらのサンプルを「テストデバイス」と呼ぶ。
【0068】
サーモ−ボンド845−EG−2.5ホットメルト接着剤を使用して、銅箔をOELデバイス動作構成要素の上に手で積層し、しかし、バッファ層またはB23の層を含まないことによって、少数の他のデバイスを完成させた。これらのサンプルを「対照デバイス」と呼ぶ。
【0069】
次に、テストデバイスおよび対照デバイスを周囲条件下で保管し、次に、デバイスのEL画像を、実施例2で説明された技術を用いて、時間に応じて撮って、テストデバイスおよび対照デバイスにおけるダークスポット成長を比較した。1週間の保管後、対照デバイスは、湿気侵入を示す著しいダークスポット成長を示し、テストデバイスはごくわずかなダークスポット成長を示した。テストデバイスの場合、デバイスに入る湿気がB23の層によって消費されたと考えられ、それにより、B23が、製造後OELデバイスに入ることがあり、デバイスの外部の源から生じる水を除去することができることを示す。
【0070】
実施例4
高反応性カルシウム金属層に対する湿気の透過を低減する際のB23層の上の蒸着無機バリヤ層の有効性を評価するために、実施例4を準備した。窒素雰囲気グローブボックス内で、6の酸素プラズマ洗浄された(フルパワーおよび5psiの酸素で5分、プラズマ−プリーン(Plasma−Preen)II−973、ニュージャージー州ノースブランズウィックのプラズマティック・システムズ・インコーポレイテッド(Plasmatic Systems, Inc., North Brunswick, New Jersey))22mmのカバーガラス(glass cover slip)基板を、中心に10mm×10mm正方形開口部を含む金属シャドーマスクの上に配置した。これらをグローブボックスの内側に配置された薄膜蒸着チャンバ内に装填し、チャンバを7×10-7トルに排気した。カルシウムを、2000Åが堆積されてしまうまで、BNるつぼから約2Å/秒で熱的蒸発した。
【0071】
3つのカルシウムコーティングカバーガラス基板を「テストデバイス」として処理した。B23(500Å)を、10mm×10mm正方形シャドーマスクを介して、約1.5Å/秒(6×10-7トルのチャンバ圧力)でタングステンボートから堆積させた。次に、10mm×10mm正方形シャドーマスクを、20×20mmの開口部を有するシャドーマスクと取替え、元の10mm×10mm正方形堆積物が20×20mmのマスク内で中心に置かれるように配置した。次に、一酸化ケイ素無機バリヤ層(1000Å)を、タングステンボートから約1Å/秒(5×10-6トルのチャンバ圧力)で蒸着して、カバーガラス基板、ならびに、順に、2000Åのカルシウム、500ÅのB23、および1000Åの一酸化ケイ素を有する3つのテストデバイスをもたらした。
【0072】
3つの残りのカルシウムコーティングカバーガラス基板を、無機バリヤ一酸化ケイ素層を含有しない「対照デバイス」として処理した。基板を、20×20mmの開口部を含むシャドーマスクの上に配置し、薄膜蒸着チャンバを1×10-7トルに排気した。酸化ホウ素(1500Å)を約1Å/秒でタングステンボートから蒸着して、1500ÅのB23によって被覆された2000Åのカルシウムからなるが、一酸化ケイ素無機バリヤ層のない、3つの対照デバイスをもたらした。
【0073】
1つの対照デバイスおよび1つのテストデバイスを、グローブボックスから取出し、2000Åのカルシウムのみでコーティングされたカバーガラス基板とともに、周囲空気中に保管した。カルシウム層の状態を目視監視し、次の結果が得られた。
【0074】
カバーガラス基板上に2000Åのカルシウム層のみを含有するデバイスにおいて、カルシウム層は急速に劣化し、金属鏡状外観は、約20分空気に曝された後、見えなくなり、カルシウム層は、約2〜3時間後、ほとんど透明であった。
【0075】
各対照デバイスは、2.75時間空気に曝された後、依然として、その金属鏡状外観を維持したが、もともと光学的にクリアなB23層のわずかなヘイズが観察された。約24時間空気に曝された後、カルシウム層の光学濃度の顕著な低減が、カルシウム層の少数の明らかな穴とともに検出されたが、一般に、カルシウム層は、カバーガラスを通して観察すると、その金属鏡状外観を維持した。約54時間空気に曝された後、カルシウム層の金属鏡状外観は、対照デバイスから本質的に消えていた。
【0076】
各テストデバイスは、2.75時間空気に曝された後、その金属鏡状外観を維持した。24時間空気に曝された後、テストデバイスの金属鏡状外観のほとんどが残ったが、人の目によって観察されるようなカルシウム層の光学濃度のわずかな低減があった(すなわち、いくつかの小さい曇ったスポットがカルシウム層に観察された)。約54時間空気に曝された後、カルシウム層は、外観が非常にまだらであったが、依然として、多くの領域においてその金属鏡状外観を維持した。約119時間空気に曝された後、カルシウム層は、かなり透明であると考えられたが、金属鏡状外観を有するいくつかの小さいスポットが依然として残った。
【0077】
実施例5
23層の、OELデバイスの発光能力への影響を評価するために、本発明によるOELデバイスを実施例5で作製した。9の22mm正方形(厚さ1mm)ITOコーティングガラス基板(15オーム/平方、コロラド州ロングモントのコロラド・コンセプト・コーティングスLLC(Colorado Concept Coatings LLC, Longmont, Colorado))を、メタノール浸漬リントフリークロス(ベクトラ・アルファ(Vectra Alpha)10、ニュージャージー州アッパーサドルリバーのテックスワイプ・カンパニー・LLC(Texwipe Co., LLC, Upper Saddle River, New Jersey))でこすり、次いで、50ワットおよび200mトルの酸素における4分の酸素プラズマ処理(マイクロ−RIEシリーズ(Micro−RIE Series)80、カリフォルニア州ダブリンのテクニクス・インコーポレイテッド(Technics, Inc., Dublin, California))によって、洗浄した。PEDOTを、2500RPMで30秒間、洗浄された基板上にスピンコーティングし、基板を、110℃のホットプレート上で20分間窒素雰囲気下で乾燥させた。基板をベルジャータイプOLED堆積チャンバ内に配置し、システムを5×10-6トルに排気した。NPD(300Å、1Å/秒)、2%のC545TでドープされたAlQ(300Å、1Å/秒)、およびAlQ(200Å、1Å/秒)を、20mm正方形シャドーマスクを介して、示された順に順次蒸着し、サンプルを、カソードの熱堆積のため、薄膜蒸着チャンバ(エドワーズ(Edwards)500、英国のBOCエドワーズ(BOC Edwards, England))を収容するグローブボックスに移送した。
【0078】
次に、各々が3つの基板を含有する3つのサンプルを作製した。1つのサンプルにおいて、AlQ(300Å、1Å/秒)、LiF(7Å、0.5Å/秒)、アルミニウム(200Å、1Å/秒)、および銀(1,000Å、2Å/秒)を、1cm2円形シャドーマスクを介して、約10-7トルで、示された順に順次堆積させた。第2のサンプルにおいて、B23:AlQ(およそ1:2の比、300Å、2Å/秒)、フッ化リチウム(7Å、0.5Å/秒)、アルミニウム(200Å、1Å/秒)、および銀(1,000Å、2Å/秒)を、1cm2円形シャドーマスクを介して、約10-7トルで、示された順に順次堆積させた。第3のサンプルにおいて、B23:AlQ(およそ2:1の比、200Å、2Å/秒)、フッ化リチウム(7Å、0.5Å/秒)、アルミニウム(200Å、1Å/秒)、および銀(1,000Å、2Å/秒)を、1cm2円形シャドーマスクを介して、約10-7トルで、示された順に順次堆積させた。9のデバイスすべてが、6ボルトのDCで電力供給されると、緑色光を発した。B23層の存在は、OELデバイスの発光特徴に悪影響を及ぼさなかった。
【0079】
実施例6
保護されたポリマーフィルムを組入れる、本発明によるOLEDデバイスを、実施例6で作製した。MEK1000グラムに溶解した、80グラムのエベクリル629、20グラムのSR399、および2グラムのイルガキュア184を組合せることによって、UV硬化性溶液を作製した。結果として生じる溶液を、20フィート/分で動作するCAG 150マイクログラビアコータを使用して、幅6.5インチのHSPE 100 PETフィルム基板のロール上にコーティングした。その後、コーティングを、70℃でインライン乾燥させ、次に、100%のパワーで動作するフュージョンD UVランプで、窒素雰囲気下で硬化させた。これは、上に厚さ約0.7μmの透明なコーティングを有する透明なPETフィルム基板をもたらした。
【0080】
3Mカンパニーから商品名スコッチパク(Scotchpak)1220で市販されるポリマーウェブマスクを、ダイカットし、次に、ロールツーロールラミネータを使用して、PETフィルム基板のコーティング表面に熱積層した。1mトルの圧力、1kWの電力、ならびに、ITOをコーティングするための、それぞれ、150sccmおよび6sccmのアルゴン流量および酸素流量、およびAgをコーティングするための150sccmのアルゴン流量を使用するDCスパッタリングプロセスを用いて、厚さ約35nmのITO層、次いで、厚さ約10nmのAg層、次いで、別の厚さ約35nmのITO層を、PETフィルム基板のコーティング表面上に順次堆積させた。これらのコーティング条件は、10オーム/平方のシート抵抗をもたらした。ITO層は、アノードとして、および、その後形成されるOLEDデバイスのためのカソードのための頑丈なコンタクトとして役立った。
【0081】
次に、ポリマーマスクを剥離し、PETフィルム基板上の導電パターンをもたらした。50mm×50mmである導電パターニングされた基板のサンプルを、ロールからカットし、これは、各々が0.25cm2である4のピクセルを含有した。約5分間の温かい(約110°F)洗剤溶液(デコネックス12 NS、スイス、ズックウィルのボーラー・ケミー)中での超音波処理、約10分間の温かい(約110°F)脱イオン水中でのすすぎ、および、少なくとも4時間の、窒素パージされたオーブン内での乾燥によって、サンプルを超音波洗浄した。次に、マサチューセッツ州ビルリカのASTインコーポレイテッド(AST, Inc., Billerica, MA)から商品名モデルPS 500で市販されるプラズマ処理装置内で、300mトルの圧力、500sccmの酸素流量、および400ワットのRF電力で、2分間、ITO/Ag/ITO表面をプラズマ処理した。
【0082】
正孔注入層(MTDATA:FTCNQ(2.8%のドーピング))を、1.8Å/秒の速度で、PETフィルム基板上の導電パターンの上に、3,000Åの厚さに蒸着した。次に、実施例1の緑色発光OLEDスタックを、約5×10-6トルで真空チャンバ内で熱的蒸発を用いて、正孔注入層の上に蒸着した。デバイス構造を、正孔注入層の上の次の順次堆積を用いて完成させた:NPD(400Å、1Å/秒)/AlQ:C545T(1%のドーピング、300Å、1Å/秒)/AlQ(200Å、1Å/秒)/LiF(7Å、0.5Å/秒)/Al(2500Å、25Å/秒)。
【0083】
次に、タングステンディンプルソース(S8A−0.010W、カリフォルニア州シグナルヒルのR・D・マティス)から熱的蒸発(約3〜5Å/秒)を用いて、3,000ÅのB23をデバイス構造層の上に堆積させることによって、OLEDデバイスの動作構成要素をカプセル化した。次に、厚さ2ミルの保護銅箔無機バリヤ層を、約80℃の温度で、手動ゴムローラを使用して、B23層の上に、サーモ−ボンド845−EG−2.5で熱積層した。銅箔は、4のピクセルの発光領域をカプセル化するのに十分大きかったが、PETフィルム基板の端縁は、電気的接触のためのポイントを提供するために露出したままであった。便宜上、これを「OLEDデバイスA」と呼ぶ。光光学的に補正されたシリコンフォトダイオード(カリフォルニア州ホーソーンのUDTセンサーズ)を使用して、OLEDデバイスAのデバイス効率を測定した。
【0084】
次に、本発明による保護されたポリマーフィルムをOLEDデバイスAに組入れることの、デバイス効率への影響を評価した。
【0085】
厚さ3,000ÅのB23層を、予め適用されたB23層について上で説明された堆積条件を用いて、PETフィルム基板の、デバイス構造が堆積された表面と反対側の表面上に堆積させた。
【0086】
次に、1対の多層アセンブリを、光学接着剤で、向い合せに積層することによって、多層無機バリヤ層を作製した。各アセンブリは、PETベース上に形成されたポリマーおよび無機材料の6の交互の層を含んだ。完成されると、積層された多層無機バリヤは次の構造を有した:PETベース/ポリマー1/SiAlO/ポリマー2/SiAlO/ポリマー2/SiAlO/光学接着剤/SiAlO/ポリマー2/SiAlO/ポリマー2/SiAlO/ポリマー1/PETベース。各アセンブリを、次の段落で説明されるように形成した。
【0087】
PETベース+ポリマー1(「層1」)。6.1m/分で動作するCAG−150マイクログラビアコータを使用して、972グラムのMEKに溶解した、145.5グラムのエベクリル629、37.5グラムのβ−CEA、および9.03グラムのイルガキュア184を混合することによって作製されたUV硬化性溶液で、HSPE 50 PETベースフィルムをコーティングした。100%のパワーで動作するフュージョンH UVランプを使用して、コーティングを硬化させて、ポリマー1を提供した。
【0088】
SiAlO層(「層2」)。次に、ポリマー1でコーティングされたPETベースフィルム(すなわち、層1)を、ロールツーロールスパッタコータ内に装填し、堆積チャンバを2×10-6トルの圧力にポンピングした。2kWおよび600V、51sccmのアルゴンおよび30sccmの酸素を含有するガス混合物を使用して、1mトルの圧力、および0.43m/分のウェブ速度で、Si−Alターゲット(ニューメキシコ州アルバカーキのアカデミー・プレシジョン・マテリアルズ(Academy Precision Materials, Albuquerque, NM)から市販される90%−10%のSi−Alターゲット)を反応性スパッタリングすることによって、厚さ60nmのSiAlO無機酸化物層をポリマー1の上に堆積させた。
【0089】
ポリマー2(「層3」)。ポリマー1の適用および硬化について説明された条件を用いて、しかし、4.6m/分の速度で動作するCAG 150マイクログラビアコータで、405グラムのMEK中で、2.25グラムのUVI−6974、42.75グラムのEHPE3150を組合せることによって作製されたUV硬化性溶液で、予め適用されたSiAlO層をオーバコーティングし、次に、硬化させて、ポリマー2を提供した。
【0090】
それぞれ、層2および層3と同じ条件を用いて、第2のSiAlO層を層3の上に堆積させて、層4を形成し、ポリマー2の第2の層を層4の上にコーティングして、層5を形成し、SiAlOの第3の層を層5の上に堆積させて、層6を形成し、それにより、PETベース/ポリマー1/SiAlO/ポリマー2/SiAlO/ポリマー2/SiAlO構成を有するアセンブリを提供した。
【0091】
結果として生じるアセンブリを、2つのロールに分け、8141接着剤および2ロールラミネータを使用して、向い合せにともに積層して、多層無機バリヤを形成した。
【0092】
次に、多層無機バリヤを、8141接着剤で、露出したB23層に積層し、それにより、保護されたポリマーフィルムの、OLEDデバイスAへの組入れを完了した。再び、先に用いられたのと同じ手順を用いて、デバイス効率を測定した。本発明による保護されたポリマーフィルムをOLEDデバイスAに組入れることは、結果として生じるデバイスの効率を著しく変化させなかった。
【0093】
実施例7
保護されたポリマーフィルムを組入れる、本発明によるOLEDデバイスを、実施例2で作製した。実施例6からのOLEDデバイスAの付加的なサンプルを作製し、銅箔を、エポキシ(ミシガン州イーストランシングのハンツマンLLC、アドバンスド・マテリアルズ・ディビィジョン、バンティコ(Huntsman LLC, Advanced Materials Division, Vantico, East Lansing, MI)から入手可能なアラルダイト(Araldite)2014)の薄いビードを使用して端縁シールした。エポキシを、12時間にわたってN2雰囲気中で室温で硬く硬化させた。便宜上、これを「OLEDデバイスB」と呼ぶ。
【0094】
次に、次の手順に従って、無機バリヤ層を作製した。405グラムのMEK中で2.25グラムのUVI−6974を42.75グラムのEHPE3150と組合せることによって、UV硬化性ポリマー溶液を作製した。15フィート/分の速度で動作するCAG 150マイクログラビアコータを使用して、結果として生じる溶液を、イタリアのフェラニア・イメージング・テクノロジーズ(Ferrania Imaging Technologies, Italy)から商品名アリーライト(Arylite)で市販される、幅6.5インチ、厚さ100ミクロンのフッ素ポリエステルフィルム上にコーティングした。その後、コーティングを、70℃でインライン乾燥させ、次に、100%のパワーで動作するフュージョンD UVランプで、窒素雰囲気下で硬化させた。これは、上に厚さ約0.7μmの透明なコーティングを有する透明なフィルムをもたらした。
【0095】
コーティングされたフィルムを、スパッタコータ内に装填し、堆積チャンバを2×10-6トルの圧力にポンピングした。370Wおよび375V、20sccmのアルゴンおよび18sccmの酸素を含有するガス混合物を使用して、6mトルの圧力、および7インチ/分のウェブ速度で、厚さ60nmのSiAlO無機酸化物層を堆積させた。ニューメキシコ州アルバカーキのアプライド・プレシジョン・マテリアルズ(Applied Precision Materials, Albuquerque, NM)から入手可能なSi/Alの90/10ターゲットを、ターゲット材料として使用した。
【0096】
次に、無機バリヤ層を、予め作製されたOLEDデバイスBのサンプルに組入れて、それぞれ、OLEDデバイスB1およびOLEDデバイスB2を形成した。
【0097】
厚さ3,000ÅのB23層を、PETフィルム基板の、デバイス構造が作られた表面と反対側の表面上に堆積させることによって、OLEDデバイスB1を作製した。タングステンディンプルソース(S8A−0.010W、カリフォルニア州シグナルヒルのR・D・マティス)から熱的蒸発(約3〜5Å/秒)を用いて、B23を堆積させた。次に、8141接着剤および2ロールラミネータを使用して、予め作製された無機バリヤ層を、露出したB23層の上に積層して、OLEDデバイスB1を完成させた。
【0098】
8141接着剤およびロールツーロールラミネータを使用することによって、予め作製された無機バリヤ層をPETフィルム基板の「前面」表面(すなわち、デバイス構造が作られた表面と反対側の表面)に積層することによって、OLEDデバイスB2を作製した。したがって、OLEDデバイスB2は、OLEDデバイスB1の前面上に使用されるB23層を欠く点で、OLEDデバイスB1と異なった。
【0099】
サンプル(OLEDデバイスB1およびOLEDデバイスB2)を周囲条件下で保管した。ライティングされたデバイス(すなわち、OLEDデバイスB1およびOLEDデバイスB2)の写真を定期的に撮って、ダークスポット成長を比較した。OLEDデバイスB2(すなわち、前面上のB23のない)のサンプルは、経時的に、前面上にB23層を有するOLEDデバイスB1のサンプルより著しく大きいダークスポット成長を示した。
【0100】
本発明は、さまざまな変更および代替形態が可能であり、その特定のものが、先の図面および説明に例として示されている。しかし、本発明が、これらの特定の実施形態に限定されないことが理解されるであろう。それどころか、特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲内である変更、均等物、および代替例をすべて網羅することが意図される。さまざまな変更および均等なプロセス、ならびに本発明が適用可能であろう多数の構造は、本発明が関連する技術における当業者には容易に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1の電極、第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光構造を支持する低透湿性基板と、
b)前記基板と協働して、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記発光構造をカプセル化する保護構造であって、酸化ホウ素の層および無機バリヤ層を含む保護構造とを含む有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項2】
前記無機バリヤ層が低透湿性を有する、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項3】
前記酸化ホウ素の層が、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記発光構造の上に配置され、前記無機バリヤ層が前記酸化ホウ素の層の上に配置される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項4】
前記無機バリヤ層が無機酸化物を含む、請求項3に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項5】
前記無機酸化物が酸化ケイ素である、請求項4に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項6】
前記デバイスが、前記保護構造と、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記発光構造との間に配置されたバッファ層をさらに含む、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項7】
前記バッファ層が、前記酸化ホウ素の層を、前記第1の電極、前記第2の電極、および/または前記発光構造との反応から保護する、請求項6に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項8】
前記バッファ層が、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記発光構造の上に配置され、前記酸化ホウ素の層が前記バッファ層の上に配置され、前記無機バリヤ層が前記酸化ホウ素の層の上に配置される、請求項6に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項9】
前記バッファ層が、有機金属化合物またはキレート化合物を含む、請求項8に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項10】
前記保護構造が第2の無機バリヤ層をさらに含む、請求項6に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項11】
前記バッファ層が、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記発光構造の上に配置され、前記無機バリヤ層が前記バッファ層の上に配置され、前記酸化ホウ素の層が前記無機バリヤ層の上に配置され、前記第2の無機バリヤ層が前記酸化ホウ素の層の上に配置される、請求項10に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項12】
前記基板が、ガラス、ケイ素、アルミニウム、銅、およびステンレス鋼から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項13】
前記基板が、保護されたポリマーフィルムである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項14】
前記酸化ホウ素の層が、前記発光構造によって発された光に対して透過性である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項15】
有機エレクトロルミネセンスデバイスを、湿気の吸収に対して保護する方法であって、
a)第1の電極、第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された発光構造を支持する低透湿性基板を含む有機エレクトロルミネセンスアセンブリを提供する工程と、
b)前記基板と協働して、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記発光構造をカプセル化する保護構造であって、酸化ホウ素の層および無機バリヤ層を含む保護構造を適用する工程とを含む方法。
【請求項16】
前記酸化ホウ素の層が、熱的蒸発によって適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記無機バリヤ層が、蒸着によって適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記デバイスが、前記有機エレクトロルミネセンスアセンブリと前記保護構造との間のバッファ層をさらに含み、前記バッファ層が、熱的蒸発によって適用される、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−212691(P2012−212691A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−168256(P2012−168256)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2007−533513(P2007−533513)の分割
【原出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】