説明

有機エレクトロルミネッセンス材料およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】駆動電圧が低く、発光効率が高く、長寿命である有機EL素子を実現する有機EL材料を提供する。
【解決手段】ターフェニレン骨格の1つ目のベンゼン環と2つ目のベンゼン環が窒素原子で架橋され、2つ目のベンゼン環と3つ目のベンゼン環が酸素原子で架橋された構造を母骨格とする化合物であって、前記窒素原子が含窒素6員環(ピリジン、ジアジン、又はトリアジン)と直接的又は間接的に連結しており、かつ、前記含窒素6員環がさらに特定の基と連結している有機EL材料、及びそれを用いた有機EL素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス材料(以下、有機EL材料と呼ぶこともある)および有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶこともある)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が、また陰極から電子が、それぞれ発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子及び三重項励起子が25%:75%の割合で生成する。発光原理に従って分類した場合、蛍光型では、一重項励起子による発光を用いるため、有機EL素子の内部量子効率は25%が限界といわれている。一方、燐光型では、三重項励起子による発光を用いるため、一重項励起子から項間交差が効率的に行われた場合には内部量子効率が100%まで高められることが知られている。
【0003】
従来、有機EL素子においては、蛍光型、及び燐光型の発光メカニズムに応じ、最適な素子設計がなされてきた。特に燐光型の有機EL素子については、その発光特性から、蛍光素子技術の単純な転用では高性能な素子が得られないことが知られている。その理由は、一般的に以下のように考えられている。
まず、燐光発光は、三重項励起子を利用した発光であるため、発光層に用いる化合物のエネルギーギャップが大きくなくてはならない。何故なら、ある化合物の一重項エネルギー(最低励起一重項状態と基底状態とのエネルギー差をいう。)の値は、通常、その化合物の三重項エネルギー(最低励起三重項状態と基底状態とのエネルギー差をいう。)の値よりも大きいからである。
従って、燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーを効率的に素子内に閉じ込めるためには、まず、燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーよりも大きな三重項エネルギーを有するホスト材料を発光層に用いなければならない。さらに、発光層に隣接する電子輸送層及び正孔輸送層を設ける際に、電子輸送層及び正孔輸送層にも燐光発光性ドーパント材料よりも大きな三重項エネルギーを有する化合物を用いなければならない。このように、従来の有機EL素子の素子設計思想に基づく場合、蛍光型の有機EL素子に用いる化合物と比べて、より大きなエネルギーギャップを有する化合物を燐光型の有機EL素子に用いることにつながり、有機EL素子全体の駆動電圧が上昇する。
【0004】
また、蛍光素子で有用であった酸化耐性や還元耐性の高い炭化水素系の化合物はπ電子雲の広がりが大きいため、エネルギーギャップが小さい。そのため、燐光型の有機EL素子では、このような炭化水素系の化合物が選択され難く、酸素や窒素などのヘテロ原子を含んだ有機化合物が選択され、その結果、燐光型の有機EL素子は、蛍光型の有機EL素子と比較して寿命が短いという問題を有する。
【0005】
さらに、燐光発光性ドーパント材料の三重項励起子の励起子緩和速度が一重項励起子と比較して非常に長いことも素子性能に大きな影響を与える。即ち、一重項励起子からの発光は、発光に繋がる緩和速度が速いため、発光層の周辺層(例えば、正孔輸送層や電子輸送層)への励起子の拡散が起きにくく、効率的な発光が期待される。一方、三重項励起子からの発光は、スピン禁制であり緩和速度が遅いため、周辺層への励起子の拡散が起きやすく、特定の燐光発光性化合物以外からは熱的なエネルギー失活が起きてしまう。つまり、蛍光型の有機EL素子と比較して、電子及び正孔の再結合領域のコントロールがより重要となる。
以上のような理由より、燐光型の有機EL素子の高性能化においては、蛍光型の有機EL素子と異なる材料選択及び素子設計が必要となる。
【0006】
有機EL材料を開示する文献としては、例えば、特許文献1〜3が挙げられる。
特許文献1には、炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で架橋したπ共役ヘテロアセン骨格を有する多環系化合物、及びそれを用いた有機EL素子が開示されており、その発明の効果としては、高発光効率化と長寿命化が記載されている。
特許文献2には、ターフェニレン骨格を炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等で架橋させた構造を母骨格とする有機EL化合物及び、それを用いた有機EL素子が開示されており、その発明の効果としては、高発光効率化と長寿命化が記載されている。
特許文献3には、電子及び正孔の輸送性能を有するインデノカルバゾール誘導体及びそれを用いた有機EL素子が開示されている。また、前記インデノカルバゾール誘導体が発光層及び/又は電荷輸送層に特に有用である旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/148015
【特許文献2】WO2010/107244
【特許文献3】WO2010/136109
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、駆動電圧が低く、発光効率が高く、長寿命である有機EL素子を実現するための有機EL材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ターフェニレン骨格を炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等で架橋させた構造を母骨格とする化合物の中でも、ターフェニレン骨格の1つ目のベンゼン環と2つ目のベンゼン環が窒素原子で架橋され、2つ目のベンゼン環と3つ目のベンゼン環が酸素原子で架橋された構造を母骨格とする化合物であって、前記窒素原子が含窒素6員環(ピリジン、ジアジン、又はトリアジン)と直接的又は間接的に連結しており、かつ、前記含窒素6員環がさらに特定の基と連結している化合物、を有機EL材料として用いることにより前記目的を達成することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス材料を提供するものである。
【0011】
【化1】

【0012】
[式(1)において、
mは、1〜4の整数を表し;
Harは、式(2A)で表される部分構造と式(2B)で表される部分構造とを組み合わせてなる1価の基を表し;
Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜13の2価の芳香族複素環基を表し;
Azは、式(3)で表される(m+1)価の基を表し;
Arは、以下の(S1)及び(S2)からなる群から選ばれる一価の基を表し、Arが複数ある場合には、それぞれのArは互いに同じでも、異なってもよい。
(S1)置換もしくは無置換の環形成炭素数12〜24の1価の芳香族炭化水素基
(S2)式(5)で表わされる1価の基]
【0013】
【化2】

【0014】
[式(2A)及び(2B)において、
aは、0〜4の整数を表し;
bは、0〜2の整数を表し;
cは、0〜4の整数を表し;
Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、置換基を表し;
1は、Lとの結合手を表し;
2つの*2は、式(2A)の1位及び2位の炭素との、2位及び3位の炭素との、又は3位及び4位の炭素との結合手を表す。]
【0015】
【化3】

【0016】
[式(3)において、
1〜Y5のうち1つは、C−*3を表し;
1〜Y5のうちm個は、C−*4を表し;
1〜Y5のうちC−*3及びC−*4のいずれも表わさないものは、それぞれ独立に、C−Rb1又は窒素原子を表し;
Rb1は、水素原子又は置換基を表し;
3は、Lとの結合手を表し;
4は、Arとの結合手を表す。]
【0017】
【化4】

【0018】
[式(5)において、
s及びtは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表し;
1は、O又はSを表し;
Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数7〜30のアラルキル基、又は環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基を表し;
1及びQ2は、それぞれ独立に、飽和もしくは不飽和の環形成原子数5〜12の環を表し;
5は、Azとの結合手を表す。]
【0019】
さらに、本発明は、陰極と陽極の間に発光層を含む複数の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が上記有機エレクトロルミネッセンス材料を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、駆動電圧が低く、発光効率が高く、長寿命である有機EL素子及びそれを実現する有機EL材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数a〜bのX基」という表現における「炭素数a〜b」は、X基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、X基が置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。
【0023】
(有機EL材料)
本発明の有機EL材料は、式(1)で表される。
【0024】
【化5】

【0025】
式(1)において、mは1〜4の整数を表し;Harは、式(2A)で表される部分構造と式(2B)で表される部分構造とを組み合わせてなる1価の基を表し;Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜13の2価の芳香族複素環基を表し;Azは、式(3)で表される(m+1)価の基を表し;Arは、以下の(S1)及び(S2)からなる群から選ばれる一価の基を表し、Arが複数ある場合には、それぞれのArは互いに同じでも、異なってもよい。
(S1)置換もしくは無置換の環形成炭素数12〜24の1価の芳香族炭化水素基
(S2)式(5)で表わされる1価の基
【0026】
【化6】

【0027】
式(2A)及び(2B)において、aは、0〜4の整数を表し;bは、0〜2の整数を表し;cは、0〜4の整数を表し;Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、置換基を表し;*1は、Lとの結合手を表し;2つの*2は、式(2A)の1位及び2位の炭素との、2位及び3位の炭素との、又は3位及び4位の炭素との結合手を表す。
【0028】
【化7】

【0029】
式(3)において、Y1〜Y5のうち1つは、C−*3を表し;Y1〜Y5のうちm個は、C−*4を表し;Y1〜Y5のうちC−*3及びC−*4のいずれも表わさないものは、それぞれ独立に、C−Rb1又は窒素原子を表し;Rb1は、水素原子又は置換基を表し;*3は、Lとの結合手を表し;*4は、Arとの結合手を表す。
【0030】
【化8】

【0031】
式(5)において、s及びtは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表し;X1は、O又はSを表し;Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数7〜30のアラルキル基、又は環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基を表し;Q1及びQ2は、それぞれ独立に、飽和もしくは不飽和の環形成原子数5〜12の環を表し;*5は、Azとの結合手を表す。
【0032】
式(1)のHarについて、以下に説明する。
Harは、式(2A)で表される部分構造と式(2B)で表される部分構造とを組み合わせてなる1価の基を表す。
【0033】
【化9】

【0034】
式(2A)及び(2B)において、aは、0〜4の整数を表し;bは、0〜2の整数を表し;cは、0〜4の整数を表し;Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、置換基を表し;*1は、Lとの結合手を表し;2つの*2は、式(2A)の1位及び2位の炭素との、2位及び3位の炭素との、又は3位及び4位の炭素との結合手を表す。
なお、aが0である場合とは、ベンゼン環上にRa1が置換していない(即ち、無置換である)ことを意味する。bやcが0である場合についても、同様である。
また、置換基であるRa2は、*2に連結していない炭素原子上に置換することができるものであり、*2に連結する炭素原子上には置換しない。
【0035】
aは、0〜4の整数であり、好ましくは0〜1である。bは0〜2の整数であり、好ましくは0〜1である。cは、0〜4の整数であり、好ましくは0〜1である。
1は結合手を表し、Lと連結する。ただし、Lが単結合である場合は、実質的には*1はAzと連結することを意味する。
2は結合手を表し、2つの*2が式(2A)のカルバゾール構造の1位及び2位の炭素と、2位及び3位の炭素と、又は3位及び4位の炭素と連結する。これにより式(2A)の部分構造と式(2B)の部分構造が連結し、1価の基を形成される。
【0036】
Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、置換基を表し、当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、及び置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基が例示される。
Ra1〜Ra3は、好ましくは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基である。
【0037】
Ra1が複数ある場合(即ち、a=2〜4の場合)には、それぞれのRa1は互いに同じでも、異なってもよい。
Ra2が複数ある場合(即ち、b=2の場合)には、それぞれのRa2は互いに同じでも、異なってもよい。
Ra3が複数ある場合(即ち、c=2〜4の場合)には、それぞれのRa3は互いに同じでも、異なってもよい。
【0038】
Ra1〜Ra3によって表されるハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
【0039】
Ra1〜Ra3によって表されるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、及び3−メチルペンチル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基である。
【0040】
Ra1〜Ra3によって表されるアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、1−メチルビニル基、1−メチルアリル基、2−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、1,2−ジメチルアリル基等が挙げられ、好ましくは、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、及び3−ブテニル基である。
【0041】
Ra1〜Ra3によって表されるシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられ、好ましくは、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。
【0042】
Ra1〜Ra3によって表されるアルコキシ基の例としては、−OY(ただしYは前記のアルキル基)で表される基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基である。
【0043】
Ra1〜Ra3によって表されるハロアルキル基の例としては、前記のアルキル基の少なくとも1つの水素原子をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子で置換して得られる基が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基である。
【0044】
Ra1〜Ra3によって表されるハロアルコキシ基の例としては、−OY’(ただしY’は前記のハロアルキル基)で表される基が挙げられ、好ましくは、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエトキシ基、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基である。
【0045】
Ra1〜Ra3によって表されるアルキルシリル基の例としては、−SiH2R、−SiHR2、又は−SiR3(ただしRは前記のアルキル基であり、2又は3個のRは同一でも異なっていてもよい)で表される基が挙げられ、好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、及びt−ブチルジメチルシリル基である。
【0046】
Ra1〜Ra3によって表される1価の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾフルオランテニル基、フェナントレニル基、ベンゾフェナントレニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ジベンゾトリフェニレニル基、ナフトトリフェニレニル基、クリセニル基、ベンゾクリセニル基、ピセニル基、及びビナフチル基等が挙げられる。
【0047】
Ra1〜Ra3によって表されるアリールシリル基の例としては、−SiH2R’、−SiHR’2、又は−SiR’3(ただしR’は前記の1価の芳香族炭化水素基であり、2又は3個のR’は同一でも異なっていてもよい)で表される基が挙げられ、好ましくは、トリフェニルシリル基である。
【0048】
Ra1〜Ra3によって表されるアラルキル基の例としては、前記アルキル基の1つの水素原子を前記1価の芳香族炭化水素基で置換して得られる炭素数が7〜30の基が挙げられ、好ましくは、ベンジル基及びナフチルメチル基である。
【0049】
Ra1〜Ra3によって表される1価の芳香族複素環基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリジニル基、キノリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズチアゾリル基、インダゾリル基、ベンズイソキサゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、及びキサンテニル基等が挙げられる。
【0050】
上記及び後述する「置換もしくは無置換」という表現における任意の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数7〜30のアラルキル基、または環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基が挙げられる。これら任意の置換基の具体例は上記したものと同様である。また、これら任意の置換基は複数でもよく、複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0051】
Harの具体的な構造としては、式(2−1)〜(2−6)で表される1価の基が挙げられる。この中でも、式(2−1)〜(2−2)で表される1価の基が好ましい。
【0052】
【化10】

【0053】
式(2−1)〜(2−6)において、a、b、Ra1、Ra2及び*1は、それぞれ式(2A)のa、b、Ra1、Ra2及び*1と同義であり;c及びRa3は、それぞれ式(2B)のc及びRa3と同義である。
【0054】
式(1)のAzについて、以下に説明する。
Azは、式(3)で表される(m+1)価の基を表す。
【0055】
【化11】

【0056】
式(3)において、Y1〜Y5のうち1つは、C−*3を表し;Y1〜Y5のうちm個は、C−*4を表し;Y1〜Y5のうちC−*3及びC−*4のいずれも表わさないものは、それぞれ独立に、C−Rb1又は窒素原子を表し;Rb1は、水素原子又は置換基を表し;*3は、L又はHarとの結合手を表し;*4は、Arとの結合手を表す。
【0057】
Rb1は、水素原子又は置換基を表し、当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、及び置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基が例示される。
Rb1が複数ある場合には、それぞれのRb1は互いに同じでも、異なってもよい。
Rb1によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例としては、Ra1〜Ra3によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
Rb1は、好ましくは、水素原子又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは水素原子又はフェニル基である。
【0058】
Azの具体的な構造としては、式(3−1)で表される(m1+1)価の基、式(3−2)〜(3−4)で表される(m2+1)価の基、式(3−5)〜(3−7)で表される(m3+1)価の基、及び式(3−8)〜(3−10)で表される2価の基が挙げられる。この中でも、式(3−2)で表される(m2+1)価の基及び式(3−5)で表される(m3+1)価の基が好ましい。
【0059】
【化12】

【0060】
式(3−1)〜(3−10)において、m1は、1〜4の整数を表し;m2は、1〜3の整数を表し;m3は、1〜2の整数を表し;Rb1、*3及び*4は、それぞれ式(3)のRb1、*3及び*4はと同義である。
1は好ましくは1〜2であり、m2は好ましくは1〜2である。
【0061】
式(3−2)で表される(m2+1)価の基の中でも、好ましくは式(3−2−1)で表される(m2+1)価の基であり、より好ましくは式(3−2−1A)及び(3−2−1B)のいずれかで表される3価の基である。
【0062】
【化13】

【0063】
式(3−2−1)、(3−2−1A)及び(3−2−1B)において、m2、Rb1、*3及び*4は、それぞれ式(3−2)のm2、Rb1、*3及び*4と同義である。
【0064】
式(1)のLについて、以下に説明する。
Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜13の2価の芳香族複素環基を表し、好ましくは単結合である。
【0065】
Lで表される2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、及びビフェニリレン基等が挙げられる、
Lで表される2価の芳香族複素環基としては、ピロールジイル基、フリレン基、チエニレン基、ピリジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基、ピラジニレン基、トリアジニレン基、イミダゾリレン基、オキサゾリレン基、チアゾリレン基、ピラゾリレン基、イソオキサゾリレン基、イソチアゾリレン基、オキサジアゾリレン基、チアジアゾリレン基、トリアゾリレン基、インドリレン基、イソインドリレン基、ベンゾフラニレン基、イソベンゾフラニレン基、ベンゾチオフェニレン基、インドリジニレン基、キノリジニレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、シンノリレン基、フタラジニレン基、キナゾリニレン基、キノキサリニレン基、ベンズイミダゾリレン基、ベンズオキサゾリレン基、ベンズチアゾリレン基、インダゾリレン基、ベンズイソキサゾリレン基、ベンズイソチアゾリレン基、カルバゾリレン基、ジベンゾフラニレン基、及びジベンゾチオフェニレン基等が挙げられる。
【0066】
式(1)のm及びArについて、以下に説明する。
mは1〜4の整数であり、好ましくは1〜2である。
Arは、以下の(S1)及び(S2)からなる群から選ばれる一価の基を表す。
(S1)置換もしくは無置換の環形成炭素数12〜24の1価の芳香族炭化水素基
(S2)式(5)で表わされる1価の基
【0067】
【化14】

【0068】
式(5)において、s及びtは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表し;X1は、O又はSを表し;Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数7〜30のアラルキル基、又は環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基を表し;Q1及びQ2は、それぞれ独立に、飽和もしくは不飽和の環形成原子数5〜12の環を表し;*5は、Azとの結合手を表す。
【0069】
本発明の有機EL材料は、Az(アジン)ユニットの先に、Arとして上記の特定の基を導入することにより、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)が広がり、アフィニティ(電子親和力)が大きくなる。したがって、当該有機EL材料を有機EL素子に用いた場合(特に、発光層に用いた場合)、有機EL材料の電子親和力(Af)が大きいので、発光層への電子の注入性が改善されて低電圧化し、正孔輸送層に突き抜ける電子が少なくなる。これにより、有機EL素子の外部量子収率が向上するとともに、寿命が改善される。
また、Az(アジン)ユニットに特定の基を導入することで、本発明の有機EL材料のガラス転移点が大きくなり、得られる素子の耐熱性が向上するとともに、素子化のための蒸着プロセスが安定化する。
Arが複数ある場合(即ち、m=2〜4の場合)には、それぞれのArは互いに同じでも、異なってもよい。異なっている場合には、式(1)の有機EL材料の対称性が低下することで材料の結晶化が抑制され、当該材料を用いて形成した薄膜の安定性が向上する。その結果、有機EL素子をより長寿命化させることが期待できる。
【0070】
上述の(S1)としては、式(4−1)〜(4−4)で表される1価の基が好ましい。
【0071】
【化15】


【0072】
式(4−1)〜(4−4)において、pは、1〜3の整数を表し;qは、1又は2の整数を表し;d、f、g、k及びvは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し;e、h、j及びlは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表し;i及びuは、0〜3の整数を表し;Rc3〜Rc13は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数7〜30のアラルキル基、又は環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基を表し;Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;*5は、Azとの結合手を表す。
なお、dが0である場合とは、ベンゼン環上にRc3が置換していない(即ち、無置換である)ことを意味する。e〜l、u及びvが0である場合についても、同様である。
【0073】
pは好ましくは1〜2である。
d、e,f、g、h,i,j,k、l、u及びvは、好ましくは0〜1である。
Rc3〜Rc13によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例としては、Ra1〜Ra3によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0074】
Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、当該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、及び置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基が例示される。
Rb2及びRb3によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例としては、Ra1〜Ra3によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
Rb2及びRb3は、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0075】
上述の(S2)について、式(5)における各符号の好適な様態は以下の通りである。
s及びtは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表し、好ましくは0〜1である。
1は、O又はSを表し、化合物の安定性から、好ましくはOである。
Rc1及びRc2によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例としては、Ra1〜Ra3によって表されるハロゲン原子,アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールシリル基、アラルキル基、及び1価の芳香族複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0076】
1及びQ2よって表される飽和もしくは不飽和の環形成原子数5〜12の環としては、環形成原子数5〜12の飽和脂肪族環、環形成原子数5〜12の不飽和脂肪族環、環形成原子数5〜12の芳香族炭化水素環、及び環形成原子数5〜12の芳香族複素環等が挙げられ、環形成原子数5〜12の芳香族炭化水素環及び環形成原子数5〜12の芳香族複素環が好ましく、環形成原子数5〜12の芳香族炭化水素環より好ましい。
芳香族炭化水素環の具体例としてはベンゼン環が例示され、芳香族複素環の具体例としてはフラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環及びピリジン環が例示される。
【0077】
上述の(S2)の中でも、式(5−1)で表される1価の基が好ましい。
【0078】
【化16】

【0079】
式(5−1)において、s、t、X1、Rc1、Rc2及び*5は、それぞれ式(5)のs、t、X1、Rc1、Rc2及び*5と同義である。
【0080】
Arの好適な具体例としては、以下の1価の基を例示することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0081】
【化17】

【0082】
上記の具体例において、*5は、Azとの結合手を表す。
【0083】
本発明の式(1)で表される有機EL素子材料の具体例を以下に示すが、本発明は、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0084】
【化18】

【0085】
【化19】

【0086】
(有機EL素子)
次に、本発明の有機EL素子について説明する。
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極の間に発光層を含む複数の有機薄膜層を有し、この有機薄膜層のうちの少なくとも1層が前述した本発明の有機EL材料を含むことを特徴とする。本発明の有機EL材料が、本発明の有機EL素子の有機薄膜層のうちの少なくとも一層に含有されることで、有機EL素子の低駆動電圧化、高発光効率化、長寿命化が期待できる。
本発明の有機EL材料が含まれる有機薄膜層の例としては、発光層、スペース層、及び障壁層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の有機EL材料は、特に、発光層のホスト材料として含まれることが好ましい。また、発光層が燐光発光材料を含有することが好ましい。
【0087】
本発明の有機EL素子は、燐光発光型の単色発光素子であっても、蛍光/燐光ハイブリッド型の白色発光素子であってもよいし、単独の発光ユニットを有するシンプル型であっても、複数の発光ユニットを有するタンデム型であってもよい。ここで、「発光ユニット」とは、一層以上の有機層を含み、そのうちの一層が発光層であり、注入された正孔と電子が再結合することにより発光することができる最小単位をいう。
【0088】
従って、シンプル型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(1)陽極/発光ユニット/陰極
また、上記発光ユニットは、燐光発光層や蛍光発光層を複数有する積層型であってもよく、その場合、各発光層の間に、燐光発光層で生成された励起子が蛍光発光層に拡散することを防ぐ目的で、スペース層を有していてもよい。発光ユニットの代表的な層構成を以下に示す。
(a)正孔輸送層/発光層(/電子輸送層)
(b)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層(/電子輸送層)
(c)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(d)正孔輸送層/第一燐光発光層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(e)正孔輸送層/第一燐光発光層/スペース層/第二燐光発光層/スペース層/蛍光発光層(/電子輸送層)
(f)正孔輸送層/燐光発光層/スペース層/第一蛍光発光層/第二蛍光発光層(/電子輸送層)
【0089】
上記各燐光又は蛍光発光層は、それぞれ互いに異なる発光色を示すものとすることができる。具体的には、上記積層発光層(d)において、正孔輸送層/第一燐光発光層(赤色発光)/第二燐光発光層(緑色発光)/スペース層/蛍光発光層(青色発光)/電子輸送層といった層構成が挙げられる。
なお、各発光層と正孔輸送層あるいはスペース層との間には、適宜、電子障壁層を設けてもよい。また、各発光層と電子輸送層との間には、適宜、正孔障壁層を設けてもよい。電子障壁層や正孔障壁層を設けることで、電子又は正孔を発光層内に閉じ込めて、発光層における電荷の再結合確率を高め、発光効率を向上させることができる。
【0090】
タンデム型有機EL素子の代表的な素子構成としては、以下の素子構成を挙げることができる。
(2)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極
ここで、上記第一発光ユニット及び第二発光ユニットとしては、例えば、それぞれ独立に上述の発光ユニットと同様のものを選択することができる。
上記中間層は、一般的に、中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、第一発光ユニットに正孔を、第二発光ユニットに電子を供給する、公知の材料構成を用いることができる。
【0091】
図1に、本発明の有機EL素子の一例の概略構成を示す。有機EL素子1は、基板2、陽極3、陰極4、及び該陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット10とを有する。発光ユニット10は、燐光ホスト材料と燐光ドーパントを含む少なくとも1つの燐光発光層を含む発光層5を有する。発光層5と陽極3との間に正孔輸送層6等、発光層5と陰極4との間に電子輸送層7等を形成してもよい。また、発光層5の陽極3側に電子障壁層を、発光層5の陰極4側に正孔障壁層を、それぞれ設けてもよい。これにより、電子や正孔を発光層5に閉じ込めて、発光層5における励起子の生成確率を高めることができる。
【0092】
なお、本明細書において、蛍光ドーパントと組み合わされたホストを蛍光ホストと称し、燐光ドーパントと組み合わされたホストを燐光ホストと称する。蛍光ホストと燐光ホストは分子構造のみにより区分されるものではない。すなわち、燐光ホストとは、燐光ドーパントを含有する燐光発光層を構成する材料を意味し、蛍光発光層を構成する材料として利用できないことを意味しているわけではない。蛍光ホストについても同様である。
【0093】
(基板)
本発明の有機EL素子は、透光性基板上に作製する。透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400nm〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を原料として用いてなるものを挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を原料として用いてなるものを挙げることができる。
【0094】
(陽極)
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有するものを用いることが効果的である。陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅等が挙げられる。陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選択される。
【0095】
(陰極)
陰極は電子注入層、電子輸送層又は発光層に電子を注入する役割を担うものであり、仕事関数の小さい材料により形成するのが好ましい。陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。陰極も、陽極と同様に、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。また、必要に応じて、陰極側から発光を取り出してもよい。
【0096】
(発光層)
発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。
燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0097】
ここで、上記発光層は、例えば、電子輸送性のホストと正孔輸送性のホストを組み合わせるなどして、発光層内のキャリアバランスを調整するダブルホスト(ホスト・コホストともいう)を採用してもよい。
また、量子収率の高いドーパント材料を二種類以上入れることによって、それぞれのドーパントが発光するダブルドーパントを採用してもよい。具体的には、ホスト、赤色ドーパント及び緑色ドーパントを共蒸着することによって、発光層を共通化して黄色発光を実現する態様が挙げられる。
【0098】
上記発光層は、複数の発光層を積層した積層体とすることで、発光層界面に電子と正孔を蓄積させて、再結合領域を発光層界面に集中させて、量子効率を向上させることができる。
【0099】
発光層への正孔の注入し易さと電子の注入し易さは異なっていてもよく、また、発光層中での正孔と電子の移動度で表される正孔輸送能と電子輸送能が異なっていてもよい。
【0100】
発光層は、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法により形成することができる。また、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かした溶液をスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
【0101】
発光層は、分子堆積膜であることが好ましい。分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
【0102】
発光層を形成する燐光ドーパント(燐光発光材料)は三重項励状態から発光することのできる化合物であり、三重項励状態から発光する限り特に限定されないが、Ir,Pt,Os,Au,Cu,Re及びRuから選択される少なくとも一つの金属と配位子とを含む有機金属錯体であることが好ましい。前記配位子は、オルトメタル結合を有することが好ましい。燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、Ir,Os及びPtから選ばれる金属原子を含有する金属錯体が好ましく、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体がより好ましく、イリジウム錯体及び白金錯体がさらに好ましく、オルトメタル化イリジウム錯体が特に好ましい。
【0103】
燐光ドーパントの発光層における含有量は特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜70質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。燐光ドーパントの含有量が0.1質量%以上であると十分な発光が得られ、70質量%以下であると濃度消光を避けることができる。
【0104】
好ましい有機金属錯体の具体例を、以下に示す。
【0105】
【化20】

【0106】
【化21】

【0107】
【化22】

【0108】
【化23】

【0109】
燐光ホストは、燐光ドーパントの三重項エネルギーを効率的に発光層内に閉じ込めることにより、燐光ドーパントを効率的に発光させる機能を有する化合物である。本発明の有機EL材料は燐光ホストとして有用であるが、本発明の有機EL材料以外の化合物も、燐光ホストとして、上記目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の有機EL材料とそれ以外の化合物を同一の発光層内の燐光ホスト材料として併用してもよいし、複数の発光層がある場合には、そのうちの一つの発光層の燐光ホスト材料として本発明の有機EL材料を用い、別の一つの発光層の燐光ホスト材料として本発明の有機EL材料以外の化合物を用いてもよい。また、本発明の有機EL材料は発光層以外の有機層にも使用しうるものであり、その場合には発光層の燐光ホストとして、本発明の有機EL材料以外の化合物を用いてもよい。
【0110】
本発明の有機EL材料以外の化合物で、燐光ホストとして好適な化合物の具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。燐光ホストは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0111】
【化24】

【0112】
発光層の膜厚は、好ましくは5〜50nm、より好ましくは7〜50nm、さらに好ましくは10〜50nmである。5nm以上であると発光層の形成が容易であり、50nm以下であると駆動電圧の上昇が避けられる。
【0113】
(電子供与性ドーパント)
本発明の有機EL素子は、陰極と発光ユニットとの界面領域に電子供与性ドーパントを有することも好ましい。このような構成によれば、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。ここで、電子供与性ドーパントとは、仕事関数3.8eV以下の金属を含有するものをいい、その具体例としては、アルカリ金属、アルカリ金属錯体、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、希土類金属錯体、及び希土類金属化合物等から選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
【0114】
アルカリ金属としては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)、Cs(仕事関数:1.95eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはK、Rb、Cs、さらに好ましくはRb又はCsであり、最も好ましくはCsである。アルカリ土類金属としては、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0eV〜2.5eV)、Ba(仕事関数:2.52eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。希土類金属としては、Sc、Y、Ce、Tb、Yb等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
【0115】
アルカリ金属化合物としては、Li2O、Cs2O、K2O等のアルカリ酸化物、LiF、NaF、CsF、KF等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、LiF、Li2O、NaFが好ましい。アルカリ土類金属化合物としては、BaO、SrO、CaO及びこれらを混合したBaxSr1-xO(0<x<1)、BaxCa1-xO(0<x<1)等が挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。希土類金属化合物としては、YbF3、ScF3、ScO3、Y23、Ce23、GdF3、TbF3等が挙げられ、YbF3、ScF3、TbF3が好ましい。
【0116】
アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体としては、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0117】
電子供与性ドーパントの添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成すると好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により電子供与性ドーパントを蒸着しながら、界面領域を形成する有機化合物(発光材料や電子注入材料)を同時に蒸着させ、有機化合物に電子供与性ドーパントを分散する方法が好ましい。分散濃度はモル比で有機化合物:電子供与性ドーパント=100:1〜1:100、好ましくは5:1〜1:5である。
【0118】
電子供与性ドーパントを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、還元ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm〜15nmで形成する。電子供与性ドーパントを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、電子供与性ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm〜1nmで形成する。
本発明の有機EL素子における、主成分と電子供与性ドーパントの割合は、モル比で主成分:電子供与性ドーパント=5:1〜1:5であると好ましく、2:1〜1:2であるとさらに好ましい。
【0119】
(電子輸送層)
発光層と陰極との間に形成される有機層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有する。電子輸送層が複数層で構成される場合、陰極に近い有機層を電子注入層と定義することがある。電子注入層は、陰極から電子を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。
【0120】
電子輸送層に用いる電子輸送性材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。また、含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する芳香族環、又は含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する縮合芳香族環化合物が好ましい。
この含窒素環誘導体としては、例えば、下記式(A)で表される含窒素環金属キレート錯体が好ましい。
【0121】
【化25】

【0122】
式(A)におけるR2〜R7は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1〜40の炭化水素基、炭素数1〜40のアルコキシ基、炭素数数6〜50のアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、または、環形成炭素数5〜50の芳香族複素環基であり、これらは置換されていてもよい。
【0123】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0124】
置換されていてもよいアミノ基の例としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基が挙げられる。
アルキルアミノ基及びアラルキルアミノ基は−NQ12と表される。Q1及びQ2は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアラルキル基を表す。Q1及びQ2の一方は水素原子又は重水素原子であってもよい。
アリールアミノ基は−NAr1Ar2と表され、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、炭素数6〜50の非縮合芳香族炭化水素基及び縮合芳香族炭化水素基を表す。Ar1及びAr2の一方は水素原子又は重水素原子であってもよい。
【0125】
炭素数1〜40の炭化水素基はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基を含む。
【0126】
アルコキシカルボニル基は−COOY’と表され、Y’は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
【0127】
Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)であり、Inであると好ましい。
【0128】
Lは、下記式(A’)又は(A”)で表される基である。
【0129】
【化26】

【0130】
式(A’)中、R8〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。また、前記式(A”)中、R13〜R27は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。
【0131】
式(A’)及び式(A”)のR8〜R12及びR13〜R27が示す炭素数1〜40の炭化水素基は、前記式(A)中のR2〜R7が示す炭化水素基と同様である。また、R8〜R12及びR13〜R27の互いに隣接する基が環状構造を形成した場合の2価の基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0132】
電子輸送層に用いられる電子伝達性化合物としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、含窒素複素環誘導体が好適である。上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを用いることができる。そして、オキサジアゾール誘導体としては、下記のものを挙げることができる。
【0133】
【化27】

【0134】
前記式中、Ar17、Ar18、Ar19、Ar21、Ar22及びAr25は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar17とAr18、Ar19とAr21、Ar22とAr25は、たがいに同一でも異なっていてもよい。芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基などが挙げられる。これらの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
【0135】
Ar20、Ar23及びAr24は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数6〜50の2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar23とAr24は、たがいに同一でも異なっていてもよい。2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基などが挙げられる。これらの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
【0136】
これらの電子伝達性化合物は、薄膜形成性の良好なものが好ましく用いられる。そして、これら電子伝達性化合物の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0137】
【化28】

【0138】
電子伝達性化合物としての含窒素複素環誘導体は、以下の一般式を有する有機化合物からなる含窒素複素環誘導体であって、金属錯体でない含窒素化合物が挙げられる。例えば、下記式(B)に示す骨格を含有する5員環もしくは6員環や、下記式(C)に示す構造のものが挙げられる。
【0139】
【化29】

【0140】
前記式(C)中、Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。Z1ならびにZ2は、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。
【0141】
含窒素複素環誘導体は、さらに好ましくは、5員環もしくは6員環からなる含窒素芳香多環族を有する有機化合物である。さらには、このような複数窒素原子を有する含窒素芳香多環族の場合は、上記式(B)と(C)もしくは上記式(B)と下記式(D)を組み合わせた骨格を有する含窒素芳香多環有機化合物が好ましい。
【0142】
【化30】

【0143】
前記の含窒素芳香多環有機化合物の含窒素基は、例えば、以下の一般式で表される含窒素複素環基から選択される。
【0144】
【化31】

【0145】
前記各式中、Rは、炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のアルコキシ基であり、nは0〜5の整数であり、nが2以上の整数であるとき、複数のRは互いに同一又は異なっていてもよい。
【0146】
さらに、好ましい具体的な化合物として、下記式で表される含窒素複素環誘導体が挙げられる。
HAr−L1−Ar1−Ar2
【0147】
前記式中、HArは、置換もしくは無置換の炭素数3〜40の含窒素複素環基であり、L1は単結合、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基であり、Ar1は置換もしくは無置換の炭素数6〜40の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar2は置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
【0148】
HArは、例えば、下記の群から選択される。
【0149】
【化32】

【0150】
1は、例えば、下記の群から選択される。
【0151】
【化33】

【0152】
Ar1は、例えば、下記のアリールアントラニル基から選択される。
【0153】
【化34】

【0154】
前記式中、R1〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基であり、Ar3は、置換もしくは無置換の炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基または置換もしくは無置換の炭素数3〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。また、R1〜R8は、いずれも水素原子又は重水素原子である含窒素複素環誘導体であってもよい。
【0155】
Ar2は、例えば、下記の群から選択される。
【0156】
【化35】

【0157】
電子伝達性化合物としての含窒素芳香多環有機化合物には、この他、下記の化合物も好適に用いられる。
【0158】
【化36】

【0159】
前記式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の脂肪族基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の脂肪族式環基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50の芳香族環基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50の複素環基を表し、X1、X2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、またはジシアノメチレン基を表す。
【0160】
また、電子伝達性化合物として、下記の化合物も好適に用いられる。
【0161】
【化37】

【0162】
前記式中、R1、R2、R3及びR4は互いに同一のまたは異なる基であって、下記式で表される芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基である。
【0163】
【化38】

【0164】
前記式中、R5、R6、R7、R8及びR9は互いに同一または異なる基であって、水素原子、重水素原子、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20のアルコキシル基、飽和もしくは不飽和の炭素数1〜20のアルキル基、アミノ基、または炭素数1〜20のアルキルアミノ基である。R5、R6、R7、R8及びR9の少なくとも1つは水素原子、重水素原子以外の基である。
【0165】
さらに、電子伝達性化合物は、該含窒素複素環基または含窒素複素環誘導体を含む高分子化合物であってもよい。
【0166】
本発明の有機EL素子の電子輸送層は、下記式(60)〜(62)で表される含窒素複素環誘導体を少なくとも1種含むことが特に好ましい。
【0167】
【化39】

【0168】
(式中、Z1、Z2及びZ3は、それぞれ独立に、窒素原子又は炭素原子である。
1及びR2は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。
nは、0〜5の整数であり、nが2以上の整数であるとき、複数のR1は互いに同一でも異なっていてもよい。また、隣接する2つのR1同士が互いに結合して、置換もしくは無置換の炭化水素環を形成していてもよい。
Ar1は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリール基である。
Ar2は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリール基である。
但し、Ar1、Ar2のいずれか一方は、置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜50の縮合芳香族炭化水素環基又は置換もしくは無置換の環形成原子数9〜50の縮合芳香族複素環基である。
Ar3は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリーレン基である。
1、L2及びL3は、それぞれ独立に、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数9〜50の2価の縮合芳香族複素環基である。)
【0169】
環形成炭素数6〜50のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ピレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、トリル基、フルオランテニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
環形成原子数5〜50のヘテロアリール基としては、ピローリル基、フリル基、チエニル基、シローリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、べンゾフリル基、イミダゾリル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、セレノフェニル基、オキサジアゾリル基、トリアゾーリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル基、イミダゾ[1,2−a]ピリミジニル基などが挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などが挙げられる。
炭素数1〜20のハロアルキル基としては、前記アルキル基の1又は2以上の水素原子をフッ素、塩素、ヨウ素および臭素から選ばれる少なくとも1のハロゲン原子で置換して得られる基が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、前記アルキル基をアルキル部位としては有する基が挙げられる。
環形成炭素数6〜50のアリーレン基としては、前記アリール基から水素原子1個を除去して得られる基が挙げられる。
環形成原子数9〜50の2価の縮合芳香族複素環基としては、前記ヘテロアリール基として記載した縮合芳香族複素環基から水素原子1個を除去して得られる基が挙げられる。
【0170】
電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1nm〜100nmである。
【0171】
また、電子輸送層に隣接して設けることができる電子注入層の構成成分として、含窒素環誘導体の他に無機化合物として、絶縁体又は半導体を使用することが好ましい。電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
【0172】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、Li2O、K2O、Na2S、Na2Se及びNa2Oが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2、BaF2、SrF2、MgF2及びBeF2等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0173】
また、半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子注入層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0174】
このような絶縁体又は半導体を使用する場合、その層の好ましい厚みは、0.1nm〜15nm程度である。また、本発明における電子注入層は、前述の電子供与性ドーパントを含有していても好ましい。
【0175】
(正孔輸送層)
発光層と陽極との間に形成される有機層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有する。正孔輸送層が複数層で構成される場合、陽極に近い有機層を正孔注入層と定義することがある。正孔注入層は、陽極から正孔を効率的に有機層ユニットに注入する機能を有する。
【0176】
正孔輸送層を形成する他の材料としては、芳香族アミン化合物、例えば、下記一般式(I)で表される芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
【0177】
【化40】

【0178】
前記一般式(I)において、Ar1〜Ar4は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基、または、それら芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基と芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基が結合した基を表す。
また、前記一般式(I)において、Lは置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基を表す。
【0179】
一般式(I)の化合物の具体例を以下に記す。
【0180】
【化41】

【0181】
また、下記式(II)の芳香族アミンも正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
【0182】
【化42】

【0183】
前記式(II)において、Ar1〜Ar3の定義は前記一般式(I)のAr1〜Ar4の定義と同様である。以下に一般式(II)の化合物の具体例を記すがこれらに限定されるものではない。
【0184】
【化43】

【0185】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層は第1正孔輸送層(陽極側)と第2正孔輸送層(陰極側)の2層構造にしてもよい。
【0186】
正孔輸送層の膜厚は特に限定されないが、10〜200nmであるのが好ましい。
【0187】
本発明の有機EL素子では、正孔輸送層または第1正孔輸送層の陽極側に電子受容性化合物を含有する層を接合してもよい。これにより駆動電圧の低下及び製造コストの低減が期待される。
【0188】
前記電子受容性化合物としては下記式(10)で表される化合物が好ましい。
【0189】
【化44】

【0190】
(上記式(10)中、R7〜R12は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立にシアノ基、−CONH2、カルボキシル基、又は−COOR13(R13は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基)を表す。ただし、R7及びR8、R9及びR10、及びR11及びR12の1又は2以上の対が一緒になって−CO−O−CO−で示される基を表してもよい。)
【0191】
13としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0192】
電子受容性化合物を含有する層の膜厚は特に限定されないが、5〜20nmであるのが好ましい。
【0193】
(n/pドーピング)
上述の正孔輸送層や電子輸送層においては、特許第3695714号明細書に記載されているように、ドナー性材料のドーピング(n)やアクセプター性材料のドーピング(p)により、キャリア注入能を調整することができる。
nドーピングの代表例としては、電子輸送材料にLiやCs等の金属をドーピングする方法が挙げられ、pドーピングの代表例としては、正孔輸送材料にF4TCNQ等のアクセプター材料をドーピングする方法が挙げられる。
【0194】
(スペース層)
上記スペース層とは、例えば、蛍光発光層と燐光発光層とを積層する場合に、燐光発光層で生成する励起子を蛍光発光層に拡散させない、あるいは、キャリアバランスを調整する目的で、蛍光発光層と燐光発光層との間に設けられる層である。また、スペース層は、複数の燐光発光層の間に設けることもできる。
スペース層は発光層間に設けられるため、電子輸送性と正孔輸送性を兼ね備える材料であることが好ましい。また、隣接する燐光発光層内の三重項エネルギーの拡散を防ぐため、三重項エネルギーが2.6eV以上であることが好ましい。スペース層に用いられる材料としては、上述の正孔輸送層に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0195】
(障壁層)
本発明の有機EL素子は、発光層に隣接する部分に、電子障壁層、正孔障壁層、トリプレット障壁層といった障壁層を有することが好ましい。ここで、電子障壁層とは、発光層から正孔輸送層へ電子が漏れることを防ぐ層であり、正孔障壁層とは、発光層から電子輸送層へ正孔が漏れることを防ぐ層である。
トリプレット障壁層は、後述するように、発光層で生成する三重項励起子が、周辺の層へ拡散することを防止し、三重項励起子を発光層内に閉じ込めることによって三重項励起子の発光ドーパント以外の電子輸送層の分子上でのエネルギー失活を抑制する機能を有する。
トリプレット障壁層を設ける場合、発光層中の燐光発光性ドーパントの三重項エネルギーをETd、トリプレット障壁層として用いる化合物の三重項エネルギーをETTBとすると、ETd<ETTBのエネルギー大小関係であれば、エネルギー関係上、燐光発光性ドーパントの三重項励起子が閉じ込められ(他分子へ移動できなくなり)、該ドーパント上で発光する以外のエネルギー失活経路が断たれ、高効率に発光することができると推測される。ただし、ETd<ETTBの関係が成り立つ場合であってもこのエネルギー差ΔET=ETTB−ETdが小さい場合には、実際の素子駆動環境である室温程度の環境下では、周辺の熱エネルギーにより吸熱的にこのエネルギー差ΔETを乗り越えて三重項励起子が他分子へ移動することが可能であると考えられる。特に燐光発光の場合は蛍光発光に比べて励起子寿命が長いため、相対的に吸熱的励起子移動過程の影響が現れやすくなる。室温の熱エネルギーに対してこのエネルギー差ΔETは大きい程好ましく、0.1eV以上であるとさらに好ましく、0.2eV以上であると特に好ましい。
【0196】
本発明における三重項エネルギーとは、以下のようにして測定する。
まず、試料をEPA溶媒(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))に10μmol/Lで溶解させ、燐光測定用試料とする。この燐光測定用試料を石英セルに入れ、温度77Kで励起光を照射し、放射される燐光の燐光スペクトルを測定する。これを基に換算式ET(eV)=1239.85/λedgeによって求めた値と定義する。「λedge」とは、縦軸に燐光強度、横軸に波長をとって、燐光スペクトルを表したときに、燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸の交点の波長値(単位:nm)を意味する。
発光層のホスト材料としては、Ab−Ah≦0.1eVとなるものが好ましい。ここで、Abは障壁層材料のアフィニティを表し、Ahは発光層ホスト材料のアフィニティを表す。
本発明におけるアフィニティAf(電子親和力)とは、材料の分子に電子を一つ与えた時に放出または吸収されるエネルギーをいい、放出の場合は正、吸収の場合は負と定義する。アフィニティAfは、イオン化ポテンシャルIpと光学エネルギーギャップEg(S)とにより次のように規定する。
Af=Ip−Eg(S)
ここで、イオン化ポテンシャルIpは、各材料の化合物から電子を取り去ってイオン化するために要するエネルギーを意味し、本発明では大気中光電子分光装置(AC−3、理研計器株式会社製)で測定した正の符号を持つ値である。
光学エネルギーギャップEg(S)は、伝導レベルと価電子レベルとの差をいい、本発明では各材料のジクロロメタン希薄溶液の紫外・可視光吸収スペクトルの長波長側接線とベースライン(吸収ゼロ)との交点の波長値をエネルギーに換算して求めた正の符号を持つ値である。
また、トリプレット障壁層を構成する材料の電子移動度は、電界強度0.04〜0.5MV/cmの範囲において、10-6cm2/Vs以上であることが望ましい。有機材料の電子移動度の測定方法としては、Time of Flight法等幾つかの方法が知られているが、ここではインピーダンス分光法で決定される電子移動度をいう。
電子注入層は、電界強度0.04〜0.5MV/cmの範囲において、10-6cm2/Vs以上であることが望ましい。これにより陰極からの電子輸送層への電子注入が促進され、ひいては隣接する障壁層、発光層への電子注入も促進し、より低電圧での駆動を可能にするためである。
【実施例】
【0197】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0198】
[中間体1〜12の合成]
(1)中間体1の合成
【化45】

【0199】
Ar雰囲気中、ジベンゾフラン780g(4.64mol)を脱水THF6Lに溶かし、ドライアイス/メタノールで冷却し、1.65Mのn−ブチルリチウムを3L滴下した。滴下後、室温に戻し、5時間反応させた後、再び冷却して、1,2−ジブロモエタンを600mL滴下し、再び室温に戻し、15時間反応させた。
次に、反応液を10Lの氷水に投入し、塩化メチレンにて抽出し、塩化メチレン層を10%炭酸カリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムにて乾燥して、濃縮した。
次に、THF/メタノール溶媒にてカラムクロマトを実施し、収率60%、収量691gの4−ブロモジベンゾフランを得た。
【0200】
次に、Ar雰囲気中、4−ブロモジベンゾフラン494g(2mol)を脱水THF6Lに溶かし、ドライアイス/メタノールで冷却し、1.58Mのn−ブチルリチウムを1.5L滴下した。滴下後、30分攪拌し、ホウ酸トリイソピル1137gを滴下し、室温に戻し、15時間反応させた。
次に、水3L、酢酸エチル3Lを反応液に加え、酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにて乾燥して、濃縮した。
得られた結晶をトルエン/ヘプタンで再結晶し、収率84%、収量356gのジベンゾフラン−4−ボロン酸を得た。
【0201】
次に、Ar雰囲気中、1−ブロモ−2−ニトロベンゼンを280g(1.39mol)、ジベンゾフラン−4−ボロン酸を323g(1.53mol)、Pd(PPh34を32g(0.028mol)、トルエンを6L、2M炭酸ナトリウム水溶液を2.1L仕込み、昇温し、86℃にて、15時間攪拌した。
反応終了後、水3Lを加えて分液し、トルエン層を濃縮し、ヘプタン/トルエンの展開溶媒にて、カラムクロマトを実施し、収率70%、収量337gの中間体1−1を得た。
【0202】
次に、Ar雰囲気中、中間体1−1を337g(1.16mol)、トリフェニルホスフィンを764g(2.91mol)、o−ジクロロベンゼンを2L仕込み、190℃にて、10時間攪拌した。
反応液を濃縮し、メタノール1.5Lを加え、結晶を析出させ、ろ別した。
トルエンで、加熱洗浄して、収率53%、収量157gの中間体1を得た。
【0203】
(2)中間体2の合成
【化46】

【0204】
Ar雰囲気中、4−ブロモジベンゾフランを166g(0.67mol)、2−クロロアニリンを84g(0.66mol)、t−ブトキシナトリウムを73g(0.76mol)、Pd2(dba)3を10g(0.011mol)、rac−BINAPを27g(0.044mol)、トルエンを2.3L仕込み、80℃で3時間反応させた。
反応液を水洗後、トルエン層を濃縮し、ヘキサン/トルエンを展開溶媒として、カラムクロマトを実施し、収率64%、収量126gの中間体2−1を得た。
【0205】
次に、Ar雰囲気中、中間体2−1を126g(0.43mol)、炭酸カリウムを119g(0.86mol)、酢酸パラジウムを2.9g(0.013mol)、PCy3−HBF4を9.5g(0.026mol)、ジメチルアセトアミドを860mL仕込み、130℃で3時間反応させた。
反応液を濃縮し、固体をトルエンで3回洗浄して、収率50%、収量55.3gの中間体2を得た。
【0206】
(3)中間体3の合成
【化47】

【0207】
Ar雰囲気中、4−ブロモビフェニル1160g(4.96mol)を脱水THF8.3Lに溶かし、ドライアイス/メタノールで冷却し、1.58Mのn−ブチルリチウムを6L滴下した。滴下後、30分攪拌し、ホウ酸トリイソピル1867g(9.92mol)を滴下し、室温に戻し、15時間反応させた。
以下、中間体1の合成において、ジベンゾフラン−4−ボロン酸の合成と同様に後処理を実施して、収率95%、収量934gの中間体3−1を得た。
【0208】
Ar雰囲気中、2,4,6−トリクロロピリミジンを430.5g(2.35mol)、中間体3−1を906g(4.58mol)、炭酸ナトリウムを1497g(14.1mol)、Pd(PPh34を108.5g(0.094mol)、ジメトキシエタンを4.3L、水を9.6L仕込み、80℃で2時間反応させた。
反応液をトルエン抽出後、濃縮し、トルエンにて再結晶して、収率28%、収量270gの中間体3を得た。
【0209】
(4)中間体4の合成
【化48】

【0210】
Ar雰囲気、氷冷中、Mg184g(7.6mol)を、脱水THF18mL中、ヨウ素0.18gにて活性化し、4−ブロモビフェニル1472g(6.32mol)を脱水THF5.9Lに溶かして、滴下し、中間体4−1のグリニヤール試薬を調製した。
【0211】
次に、シアヌル酸クロリド466g(2.53mol)を脱水THF4.7Lに溶かして調整した溶液に、室温で、前記グリニヤール試薬を滴下し、14時間反応させた。
水で反応液を処理した後、トルエンで抽出し、トルエンでのカラムクロマト、ジメトキシエタン等で再結晶して、収率8%、収量78gで中間体4を得た。
【0212】
(5)中間体5の合成
【化49】

【0213】
Ar雰囲気中、2,4,6−トリクロロピリミジンを430.5g(2.35mol)、フェニルボロン酸を286g(2.35mol)、炭酸ナトリウムを1497g(14.1mol)、Pd(PPh34を108.5g(0.094mol)、ジメトキシエタンを4.3L、水を9.6L仕込み、80℃で2時間反応させた。
反応液をトルエン抽出後、濃縮し、トルエンにて再結晶して、収率30%、収量159gの中間体5−1を得た。
【0214】
次に、Ar雰囲気中、中間体5−1を159g(0.71mol)、9,9−ジメチルフルオレン−2−ボロン酸を169g(0.71mol)、炭酸ナトリウムを226g(2.1mol)、Pd(PPh34を16.4g(0.014mol)、ジメトキシエタンを1.1L、水を2.3L仕込み、80℃で2時間反応させた。
反応液をトルエン抽出後、濃縮し、トルエンにて再結晶して、収率50%、収量135gの中間体5を得た。
【0215】
(6)中間体6の合成
【化50】

【0216】
Ar雰囲気中、2,4,6−トリクロロピリミジンを430.5g(2.35mol)、9,9−ジメチルフルオレン−2−ボロン酸を1090g(4.58mol)、炭酸ナトリウムを1497g(14.1mol)、Pd(PPh34を108.5g(0.094mol)、ジメトキシエタンを4.3L、水を9.6L仕込み、80℃で2時間反応させた。
反応液をトルエン抽出後、濃縮し、トルエンにて再結晶して、収率25%、収量293gの中間体6を得た。
【0217】
(7)中間体7の合成
【化51】

【0218】
Ar雰囲気中、中間体5−1を159g(0.71mol)、ジベンゾフラン−4−ボロン酸を151g(0.71mol)、炭酸ナトリウムを226g(2.1mol)、Pd(PPh34を16.4g(0.014mol)、ジメトキシエタンを1.1L、水を2.3L仕込み、80℃で2時間反応させた。
反応液をトルエン抽出後、濃縮し、トルエンにて再結晶して、収率48%、収量122gの中間体7を得た。
【0219】
(8)中間体8の合成
【化52】

【0220】
Ar雰囲気中、2,4,6−トリクロロピリミジンを430.5g(2.35mol)、ジベンゾフラン−4−ボロン酸を971g(4.58mol)、炭酸ナトリウムを1497g(14.1mol)、Pd(PPh34を108.5g(0.094mol)、ジメトキシエタンを4.3L、水を9.6L仕込み、80℃で2時間反応させた。
反応液をトルエン抽出後、濃縮し、トルエンにて再結晶して、収率27%、収量284gの中間体8を得た。
【0221】
(9)中間体9の合成
【化53】

【0222】
ジベンゾフラン−4−ボロン酸の代わりに、ジベンゾフラン−2−ボロン酸を用いたこと以外は中間体7の合成方法と同様の合成方法で、中間体9を合成した。
【0223】
(10)中間体10の合成
【化54】

【0224】
ジベンゾフラン−4−ボロン酸の代わりに、ジベンゾフラン−2−ボロン酸を用いたこと以外は中間体8の合成方法と同様の合成方法で、中間体10を合成した。
【0225】
(11)中間体11合成
【化55】

【0226】
4−ブロモベンズアルデヒド15g(81mmol)をエタノール300mLに溶かし、4−アセチルビフェニルを16.3g(83mmol)、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を15g(81mmol)加え、室温で7時間撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、メタノールで洗浄し、中間体11−1を収率41%、収量12.1g得た。
【0227】
中間体11−1を12.1g(33mmol)、エタノール80mLに溶かし、ベン
ズアミジン塩酸塩を5.2g(34mmol)、水酸化ナトリウムを2.6g(65mmol
)加え、15時間加熱環流した。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ別し
、水、メタノールで洗浄し、中間体11を収率27%、収量4.1gを得た。
【0228】

(12)中間体12の合成
【化56】

【0229】
ジベンゾフラン−4−ボロン酸の代わりに、ジベンゾチオフェン−4−ボロン酸を用いたこと以外中間体8の合成方法と同様の合成方法で、中間体12を合成した。
【0230】
実施例1
(化合物1の合成)
Ar雰囲気中、Pd2(dba)3を4.0g(4.37mmol)、t−Bu3P−HBF4を2.54g(8.76mmol)、脱水キシレンを900mL仕込み、30分攪拌した。その後、中間体1を38.9g(150mmol)、中間体3を62.9g(150mmol)、脱水キシレン80mLに溶かして滴下し、110℃まで温度を上げ、t−ブトキシナトリウムを19.6g添加した。130℃で2時間反応後、析出した固体をろ別して、キシレンでの洗浄と、キシレンでの再結晶をおこない、化合物1を収率75%、収量72gを得た。
化合物1は、MS、1H−NMRにて同定した。
【0231】
【化57】

【0232】
実施例2〜11
(化合物2〜化合物11の合成)
合成に用いる中間体を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の合成方法で、化合物2〜11を合成した。
【0233】
【表1−1】

【0234】
【表1−2】

【0235】
実施例12
(有機EL素子1の作製)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマティック(株)社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして、化合物HT1を積層した。これにより、厚さ5nmの正孔注入層を形成した。
この正孔注入層上に、化合物HT2を蒸着して、厚さ260nmの正孔輸送層を形成した。このようにして、正孔注入層及び正孔輸送層で構成される正孔輸送帯域を形成した。
この正孔輸送帯域上に燐光ホストとして実施例1で合成した化合物1と、燐光発光性ドーパントとしてのIr(piq)3と、を共蒸着した。これにより、燐光発光を示す厚さ40nmの発光層を形成した。なお、発光層におけるIr(piq)3の濃度は5質量%とした。
次に、発光層上に、化合物ET1を蒸着した。これにより、厚さ20nmの障壁層を形成した。
そして、この障壁層上に、化合物Liqを蒸着して、厚さ1nmの電子注入層を形成した。このようにして、障壁層及び電子注入層で構成される電子輸送帯域を形成した。
さらに、電子輸送帯域上に、金属アルミニウム(Al)を蒸着し、厚さ80nmの陰極を形成した。
以上により、有機EL素子1を作製した。
【0236】
【化58】

【0237】
実施例13〜22
(有機EL素子2〜11の作製)
燐光ホストとして、化合物1に代えて化合物2〜11をそれぞれ用いたこと以外は実施例11と同様の作製方法で、有機EL素子2〜11を作製した。
【0238】
比較例1
(有機EL素子12の作製)
燐光ホストとして、化合物1に代えて国際公開特許WO2010/136109号公報記載の下記化合物12を用いた以外は実施例12と同様の作製方法で、有機EL素子12を作製した。
【0239】
【化59】

【0240】
(有機EL素子の評価方法)
上記の各実施例および比較例で作製した有機EL素子を、直流電流駆動により発光させ、電流密度10mA/cm2における電圧、外部量子効率、および、寿命(初期輝度2000nit、輝度10%減すなわち1800nitまで輝度が低下するまでの時間(LT90))を測定した。測定結果を表2に示す。
なお、各素子の色度は、CIEx=0.68,CIEy=0.32であった。
【0241】
【表2】

【0242】
表3に化合物1と化合物12の材料の物性値を示す。
【0243】
【表3】

【0244】
本発明の化合物は、Az(アジン)ユニットに特定の基を導入することにより、LUMOが広がり、アフィニティ(電子親和力)が大きくなる。これにより、発光層への電子の注入性が改善されて低電圧化し、正孔輸送層(HT2)への電子の突き抜けが減ったことで、外部量子収率の向上とともに、寿命が改善されたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0245】
以上詳細に説明したように、本発明の有機EL材料を有機EL素子に利用すると、駆動電圧が低く、発光効率が高く、かつ寿命の長い有機EL素子が得られる。このため、本発明の有機EL素子は、各種電子機器の光源等として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化1】

[式(1)において、
mは、1〜4の整数を表し;
Harは、式(2A)で表される部分構造と式(2B)で表される部分構造とを組み合わせてなる1価の基を表し;
Lは、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜13の2価の芳香族複素環基を表し;
Azは、式(3)で表される(m+1)価の基を表し;
Arは、以下の(S1)及び(S2)からなる群から選ばれる一価の基を表し、Arが複数ある場合には、それぞれのArは互いに同じでも、異なってもよい。
(S1)置換もしくは無置換の環形成炭素数12〜24の1価の芳香族炭化水素基
(S2)式(5)で表わされる1価の基]
【化2】

[式(2A)及び(2B)において、
aは、0〜4の整数を表し;
bは、0〜2の整数を表し;
cは、0〜4の整数を表し;
Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、置換基を表し;
1は、Lとの結合手を表し;
2つの*2は、式(2A)の1位及び2位の炭素との、2位及び3位の炭素との、又は3位及び4位の炭素との結合手を表す。]
【化3】

[式(3)において、
1〜Y5のうち1つは、C−*3を表し;
1〜Y5のうちm個は、C−*4を表し;
1〜Y5のうちC−*3及びC−*4のいずれも表わさないものは、それぞれ独立に、C−Rb1又は窒素原子を表し;
Rb1は、水素原子又は置換基を表し;
3は、Lとの結合手を表し;
4は、Arとの結合手を表す。]
【化4】

[式(5)において、
s及びtは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表し;
1は、O又はSを表し;
Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数7〜30のアラルキル基、又は環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基を表し;
1及びQ2は、それぞれ独立に、飽和もしくは不飽和の環形成原子数5〜12の環を表し;
5は、Azとの結合手を表す。]
【請求項2】
前記(S1)が、式(4−1)〜(4−4)のいずれかで表される1価の基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化5】



[式(4−1)〜(4−4)において、
pは、1〜3の整数を表し;
qは、1又は2の整数を表し;
d、f、g、k及びvは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表し;
e、h、j及びlは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表し;
i及びuは、0〜3の整数を表し;
Rc3〜Rc13は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基、シリル基、炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6〜30のアリールシリル基、炭素数7〜30のアラルキル基、又は環形成原子数3〜30の1価の芳香族複素環基を表し;
Rb2及びRb3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;
5は、Azとの結合手を表す。]
【請求項3】
前記(S2)が、式(5−1)で表される1価の基である、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化6】

[式(5−1)において、s、t、X1、Rc1、Rc2及び*5は、それぞれ式(5)のs、t、X1、Rc1、Rc2及び*5と同義である。]
【請求項4】
Arが、下記の1価の基から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化7】

[*5は、Azとの結合手を表す。]
【請求項5】
Harが、式(2−1)〜(2−2)のいずれかで表される1価の基である、請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化8】

[式(2−1)〜(2−2)において、
a、b、Ra1、Ra2及び*1は、それぞれ式(2A)のa、b、Ra1、Ra2及び*1と同義であり;
c及びRa3は、それぞれ式(2B)のc及びRa3と同義である。]
【請求項6】
Azが、式(3−2)で表される(m2+1)価の基、又は式(3−5)で表される(m3+1)価の基である、請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化9】

[式(3−2)及び(3−5)において、
2は、1〜3の整数を表し;
3は、1〜2の整数を表し;
Rb1、*3及び*4は、それぞれ式(3)のRb1、*3及び*4と同義である。]
【請求項7】
式(3−2)で表される(m2+1)価の基が、式(3−2−1)で表される(m2+1)価の基である、請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化10】

[式(3−2−1)において、m2、Rb1、*3及び*4は、それぞれ式(3−2)のm2、Rb1、*3及び*4と同義である。]
【請求項8】
式(3−2−1)で表される(m2+1)価の基が、式(3−2−1A)及び(3−2−1B)のいずれかで表される3価の基である、請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【化11】

[式(3−2−1A)及び(3−2−1B)において、Rb1、*3及び*4は、それぞれ式(3−2)のRb1、*3及び*4と同義である。]
【請求項9】
Lが単結合である、請求項1〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス材料。
【請求項10】
陰極と陽極の間に発光層を含む複数の有機薄膜層を有し、
前記有機薄膜層のうち少なくとも1層が請求項1〜9のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層が前記有機エレクトロルミネッセンス材料をホスト材料として含む、請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記発光層が燐光発光材料を含有する、請求項10又は11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記燐光発光材料がイリジウム(Ir),オスミウム(Os)、白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体である、請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2013−26529(P2013−26529A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161410(P2011−161410)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】