説明

有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液の印刷方法

【課題】有機ELデバイスのデバイス基板上に、互いに平行に延在する複数の直線状パターンから成るストライプパターンの有機EL発光層を形成するために有機EL材料を含有する塗工液を印刷する際に、デバイス基板が大型のものであっても、ストライプパターンのピッチを高精度にすることのできる印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷シリンダ10は、形成しようとする有機EL発光層のストライプパターン14に対応したストライプパターンをなす互いに平行に延在する複数の直線状凸部20が形成された凸版18を備えており、この凸版18上の直線状凸部20の延在方向は印刷シリンダ10の回転軸心16に対して平行な方向とされている。この印刷シリンダ10を装着した輪転式凸版印刷機22を用いてデバイス基板12上に有機EL材料を含有する塗工液を印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスのデバイス基板上に、有機EL材料を含有する塗工液を印刷して、互いに平行に延在する複数の直線状パターンから成るストライプパターンの発光層を形成する、有機EL材料を含有する塗工液の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは、二つの対向する電極の間に有機EL材料からなる薄膜を形成し、その有機EL材料層(発光層)に電流を流すことで発光させるものであり、効率良く発光させるためには、発光層の膜厚が厚すぎてはならず、通常は膜厚を100nm程度の薄さにする必要がある。その膜厚が均一なものでなければならないことはいうまでもなく、更に、その有機ELデバイスをディスプレイデバイスとする場合には、有機EL材料層から成る発光層を高精細度でパターニングする必要がある。
【0003】
非常に薄く均一な膜厚を有し、しかも高精細度でパターニングした有機EL材料層をデバイス基板上に形成する方法としては、印刷法が適している。印刷法を用いる場合には、水、アルコール、それに有機溶剤などの適当な溶剤に有機EL材料を分散もしくは溶解させた塗工液を調製し、その塗工液を、印刷機を用いて基板上に印刷する。ただし、有機ELデバイスの基板としては、ガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように硬い金属製の印刷版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴム版を用いたオフセット印刷法や、ゴムやその他の樹脂を主成分とする樹脂凸版を用いた凸版印刷法が適している。実際に、そのような印刷法の試みとして、オフセット印刷による方法(特許文献1)や、凸版印刷による方法(特許文献2)などが提唱されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機ELデバイスのうちでも、例えば有機ELディスプレイデバイスなどは高精細度であるため、オフセット印刷より凸版印刷法の方が適しており、なぜならば、凸版印刷法のほうがより高い精細度を達成できるからである。しかるに、上述したような弾性を有するゴム版や樹脂版を用いる凸版印刷法によってデバイス基板上に塗工液を印刷して有機ELデバイスを製造する場合には、その凸版のゴム層ないし樹脂層が、温度や湿度といった環境の影響を受けて膨張や収縮を生じることにより、そのゴム層ないし樹脂層を支持している凸版基材までも変形するおそれがあることから、その版の絶対的な大きさに制約があった。
【0006】
特に有機ELディスプレイデバイスの場合には、通常、デバイス基板上に塗工液を印刷して形成する発光層の形態は、互いに平行に延在する複数の直線状パターンから成るストライプパターンの形態とされる。その場合、発光層のストライプパターンに対応した凸版のストライプパターンをなしている、その凸版の互いに平行に延在する複数の直線状凸部が、印刷シリンダの周方向に延在していると、凸版の樹脂層の膨張や伸縮、及び、その樹脂層を支持している凸版基材の膨張や伸縮のために、印刷シリンダの回転軸心方向におけるストライプパターンの寸法精度を維持することが困難であり、その結果として、ストライプパターンのトータルピッチで歪みが生じてしまうといった問題が生じていた。そして、特に、塗工液が印刷される被転写体であるデバイス基板が大型である場合に、このことが大きな問題となっていた。
【0007】
本発明は、以上の状況に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、有機ELデバイスのデバイス基板上に、互いに平行に延在する複数の直線状パターンから成るストライプパターンの有機EL発光層を形成するために有機EL材料を含有する塗工液を印刷する際に、デバイス基板が大型のものであっても、ストライプパターンのピッチを高精度にすることのできる印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明に係る印刷方法は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスのデバイス基板上に、互いに平行に延在する複数の直線状パターンから成るストライプパターンの有機エレクトロルミネッセンス発光層を形成するために有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液を印刷する方法において、形成しようとする有機エレクトロルミネッセンス発光層のストライプパターンに対応したストライプパターンをなす互いに平行に延在する複数の直線状凸部が形成され、それら複数の直線状凸部の延在方向が前記印刷シリンダの回転軸心に対して平行な方向とされている凸版を備えた印刷シリンダを製作し、前記印刷シリンダを装着した輪転式凸版印刷機を用いて前記デバイス基板に前記塗工液を印刷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る印刷方法によれば、有機ELデバイスのデバイス基板が大型であるために印刷シリンダの回転軸心方向の長さが大きい場合であっても、印刷されるストライプパターンに対する印刷シリンダ10の膨張や伸縮の影響が小さく抑えられるため、印刷時に歪みが生じにくく、寸法精度の確保された高精細度の印刷方法が可能になり、高精細な有機ELデバイスが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態のみに限定されるものではない。
【0011】
本発明に係る印刷方法は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスのデバイス基板上に、互いに平行に延在する複数の直線状パターンから成るストライプパターンの有機EL発光層を形成するために有機EL材料を含有する塗工液を印刷する方法である。本発明に係る印刷方法は、印刷シリンダを備えた輪転式凸版印刷機を用いて実施するものであり、輪転式凸版印刷機それ自体は公知のものを使用すればよいため、使用する輪転式凸版印刷機の全体についての説明は省略する。
【0012】
図1aは、本発明に係る印刷方法を実施するために用いることのできる輪転式凸版印刷機の印刷シリンダ10と、塗工液が印刷された被転写体であるデバイス基板12とを示した模式図であり、図1bは、デバイス基板12と、このデバイス基板12上に印刷された塗工液のストライプパターン14とを示した模式図である。印刷シリンダ10は回転軸心16を中心として回転し、この印刷シリンダ10はその外周面に凸版18を備えている。凸版18は、印刷シリンダ10上で直接製版を行って印刷シリンダ10に一体的に形成してもよく、或いは、別途製版した凸版を印刷シリンダ10の外周面に巻装するようにしてもよい。凸版18は、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィによるアナログ製版工程、凸版表面に形成したゴム層や樹脂層をレーザーにより直彫りするデジタル製版工程、それに、凸版表面の黒色層をレーザーによりアブレーションした後、アナログ製版工程を用いる製版工程といった公知の様々な方法を用いて形成することができる。
【0013】
凸版18の凸部は、互いに平行に延在する複数の直線状凸部20から成り、それら複数の直線状凸部20によって、形成しようとする有機ELデバイスの発光層のストライプパターンに対応したストライプパターンが構成されている。尚、実際の凸版に形成される直線状凸部20の本数は非常に多く、通常は数百本から数千本、或いは更にそれ以上の本数とすることもあるが、添付図面は本発明の原理を説明することを旨として作成した模式図であるため、直線状凸部20を僅かな本数として図示してある。
【0014】
図示した実施の形態では、複数の直線状凸部20を、凸版18の樹脂層により形成している。この樹脂層に使用する樹脂は、塗工液に含有されている溶剤のために膨潤したときの体積膨張率が10%以下のものとするのがよく、具体的には、例えば、その主成分となるポリマーとして、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、それに、セルロースなどの天然高分子などから選択したポリマーを含有する樹脂とするとよい。
【0015】
また特に、使用する塗工液が有機溶剤を含有するものである場合には、硬化後の樹脂が、有機溶剤に対する耐溶剤性を有するものとするのがよく、この観点からは、その樹脂の主成分となるポリマーとして、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂や、ポリアミド、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミド、といった水溶性溶剤に可溶なものを用いることが望ましい。
【0016】
また、凸版18の凸部を支持する部分である、この凸版18の基材の材料としては、金属、ゴム、樹脂などを用いることができるが、温度や湿度といった印刷環境の変化に対し、サイズ変化が小さい金属材料を用いることが望ましい。
【0017】
本発明においては、凸版18上の互いに平行な複数の直線状凸部20の延在方向を、印刷シリンダ10の回転軸心16に対して平行な方向とするようにしている。そのため、デバイス基板12上に印刷される塗工液のストライプパターン14は、図1bに示したように、印刷シリンダ10の回転軸心16に対して平行な複数の直線状パターン21から成るものとなる。これによって、本発明に係る印刷方法によれば、有機ELデバイスのデバイス基板12が大型であるために印刷シリンダ10の回転軸心方向の長さが大きい場合であっても、印刷されるストライプパターンに対する印刷シリンダ10の膨張や伸縮の影響が小さく抑えられるため、印刷の歪みが生じにくく、寸法精度の確保された高精細度の印刷方法が可能になり、高精細な有機ELデバイスが得られるようになっている。
【0018】
また、使用する印刷シリンダ10は、その外周寸法を、個々の直線状凸部20の幅寸法の20000倍以下とすることが望ましい。これを超える場合には、凸版18の凸部ないし基材の材料によっては、印刷時の伸縮により、所望の印刷精度を得ることができなくなるおそれがある。
【0019】
また、互いに平行に延在する複数の直線状凸部20を、図2aに示したように、印刷シリンダ10の外周の全周に亘って等間隔で均一に形成することが望ましい。尚、この図2aも、図1と同様に模式図である。
【0020】
図2bは、図2aに示したような、その外周の全周に亘って複数の直線状凸部20を等間隔で均一に形成した印刷シリンダを使用し、その印刷シリンダを連続的に回転させて、デバイス基板12上に塗工液を印刷した場合の一例を示した図である。ここで、デバイス基板12上の目標印刷長さをL、印刷シリンダの外周寸法をc(c≦L)とした場合、その印刷シリンダをL/c回に亘って連続的に回転させることによって、目標印刷長さに亘ってストライプパターンを印刷することができる。尚、この図2bも模式図であり、印刷シリンダが1回転したときに印刷される直線状パターン21の本数を4本として示したものである。
【0021】
次に、本発明に係る印刷方法を用いた有機ELデバイスの製造方法の一例について説明する。なお、本発明に係る有機ELデバイスの製造方法は、以下に例示する具体的な製造方法のみに限定されるものではない。
【0022】
図3に、本発明に係る印刷方法を実施するための輪転式凸版印刷機22の模式図を示した。輪転式凸版印刷機22の印刷シリンダ10の外周に、凸版18が巻装されている。また、本発明に従って、凸版18上の直線状凸部20の延在方向は、印刷シリンダ10の回転軸心16に対して平行な方向としてある。インキ補充装置24は、一般的な滴下型インキ補充装置であり、このインキ補充装置24の中に、有機EL材料を含む発光層形成用塗工液26が貯留されている。
【0023】
発光層形成用塗工液26は、有機EL材料を溶剤中に分散または溶解させて調製したものである。有機EL材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィリン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の、有機溶剤に可溶な有機EL材料が用いられ、また、それら有機EL材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系などの高分子有機EL材料も用いられる。また、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、水などの単独またはこれらの混合溶媒などが用いられる。特に、芳香族系溶剤およびハロゲン系溶剤は、有機EL材料を溶解させる溶剤として優れたものである。また、この発光層形成用塗工液26には、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、それに乾燥剤などを添加することもある。
【0024】
発光層形成用塗工液26は、インキ補充装置24から、インキング装置であるアニロックスロール28へ補充され、アニロックスロール28に補充された余剰な発光層形成用塗工液26は、ドクターブレードから成るドクター装置30により除去される。インキ補充装置24としては、滴下型インキ補充装置の他に、ファウンテンロールやスリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクター装置30としては、ドクターブレードの他に、ドクターロールといった公知の物を用いることもできる。
【0025】
ドクター装置30により余剰な発光層形成用塗工液が除去された後、アニックスロール28から凸版18へのインキングが行われる。これによって塗工液26が、凸版18の直線状凸部20へ供給され、そしてその塗工液26が、被転写体である有機ELデバイス基板12へ印刷される。有機ELデバイス基板12は多くの場合、ガラス基板であるが、ガラスの他に水蒸気などに対するバリア性を持ったフィルムなどの透光性基板も用いられ、本発明に係る凸版18は、そのような基板にも良好に印刷することができる。デバイス基板12へ印刷された有機EL材料を含む発光層形成用塗工液26は、乾燥することにより有機発光層を形成する。
【0026】
図4に、図3の輪転式凸版印刷機22により製造された有機ELデバイス36の1つの発光単位38の断面模式図を示した。
【0027】
この有機ELデバイス36の発光単位38は、透光性基板40と透明導電層42と正孔注入層44と有機発光層46と陰極層48とを具備するものである。
【0028】
この有機ELデバイス36において、透光性基板40としては、ガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻き取りにより有機発光素子の製造が可能となり、安価に素子を提供できる。そのプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、透明導電層42を成膜しない側にセラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の他のガスバリア性フィルムを積層してもよい。
【0029】
透明導電層42をなす材料としては、インジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)が挙げられる。また、アルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものや、ポリアニリン等の有機化合物などが挙げられる。
【0030】
正孔注入層44をなす材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の導電性高分子材料を用いても良い。
【0031】
有機発光層46は、電圧の印加により発光する層であり、図3の輪転式凸版印刷機22によって、本発明に係る印刷方法を用いて形成された層であり、上述した塗工液26が乾燥してできた層である。
【0032】
陰極層48をなす材料としては、有機発光層46の発光特性に応じたものを使用すればよく、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体や酸化物、これらと金、銀などの安定な金属との合金などが用いられる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。
【0033】
透光性基板40上に透明導電層42及び正孔注入層44を形成するには、公知の方法を用いればよく、それらを形成した後に、その上に、図3を参照して説明したようにして本発明に係る印刷方法を用いて有機発光層46を形成し、更にその上に、陰極層48を形成する。陰極層48の形成には真空蒸着法の他にインクジェット法といった公知の手段を用いることができる。
(実施例1)
【0034】
<発光層形成用塗工液の調製>
高分子蛍光体をキシレンに塗工液濃度が1.0重量%となるように溶解させ、発光層形成用塗工液を調製した。高分子蛍光体としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる発光材料を使用した。
【0035】
<被転写基板(デバイス基板)の作製>
150mm角、厚さ0.4mmのガラス基板上に、表面抵抗率15ΩのITOを成膜した基材(ジオマテック(株)製)を用意し、その基材上にスピンコーターを用いて正孔輸送層としてポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を100nm膜厚で成膜した。さらにこの成膜されたPEDOT/PSS薄膜を減圧下100℃で1時間乾燥することで、被転写基板(デバイス基板)を作製した。
【0036】
<ストライプパターンの凸部を有する凸版の作製>
幅210mm、外周310mmのステンレス製印刷シリンダの周面に、キシレンにより膨潤したときの体積膨張率が1%の耐溶剤性樹脂を主成分として含む樹脂を25μmの厚みで塗工した。続いて、炭酸ガスレーザーによるレーザーアブレーションにより、その印刷シリンダの全周面に亘って、形成しようとする有機発光層のストライプパターンに対応したストライプパターンをなす互いに平行な多数の直線状凸部を形成した。それら直線状凸部は線幅を100μmとし、ストライプパターンのピッチは500μmとした。更に、それら直線状凸部の延在方向を、印刷シリンダの回転軸心に対して平行な方向とした。レーザーによるアブレーションの後に、エタノール洗浄した。
【0037】
<有機ELデバイスの作製>
以上のようにして作製した凸版を備えた印刷シリンダを、輪転式凸版印刷機に装着し、上記の発光層形成用塗工液を用いて、被転写基板に対し印刷を行った。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機ELデバイスを作製した。この有機ELデバイスの発光特性を見たところ、パターン箇所内全面において5Vで103cd/mの均一な発光が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】aは本発明に係る印刷方法を実施するために用いられる輪転式凸版印刷機の印刷シリンダと、塗工液が印刷された被転写体であるデバイス基板とを示した模式図であり、bはデバイス基板と、このデバイス基板上に印刷された塗工液のストライプパターンとを示した模式図である。
【図2】a及びbは本発明に係る凸版印刷用凸版の断面模式図である。
【図3】本発明に係る方法を実施するために用いられる輪転式凸版印刷機の一例を示した模式図である。
【図4】図5の有機ELデバイス製造装置により製造された有機ELデバイスの1つの発光単位の断面模式図である。
【符号の説明】
【0039】
10……印刷シリンダ、12……デバイス基板、14……塗工液(発光層)のストライプパターン、16……印刷シリンダの回転軸心、18……凸版、20……凸版の直線状凸部、21……塗工液(発光層)の直線状パターン、22……輪転式凸版印刷機、24……インキ補充装置、26……発光層形成用塗工液、28……アニロックスロール、30……ドクター装置、36……有機ELデバイス、38……有機ELデバイスの発光単位、40……東光精機板、42……透明電導層、44……正孔注入層、46……有機発光層、48……陰極層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスのデバイス基板上に、互いに平行に延在する複数の直線状パターンから成るストライプパターンの有機エレクトロルミネッセンス発光層を形成するために有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液を印刷する方法において、
形成しようとする有機エレクトロルミネッセンス発光層のストライプパターンに対応したストライプパターンをなす互いに平行に延在する複数の直線状凸部が形成され、それら複数の直線状凸部の延在方向が前記印刷シリンダの回転軸心に対して平行な方向とされている凸版を備えた印刷シリンダを製作し、
前記印刷シリンダを装着した輪転式凸版印刷機を用いて前記デバイス基板に前記塗工液を印刷する、
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液の印刷方法。
【請求項2】
前記印刷シリンダの外周寸法を、前記直線状凸部の幅寸法の20000倍以下とすることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液の印刷方法。
【請求項3】
前記凸版の凸部を、前記塗工液に含有されている溶剤のために膨潤したときの体積膨張率が10%以下の樹脂により形成することを特徴とする請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液の印刷方法。
【請求項4】
互いに平行に延在する複数の前記直線状凸部を、前記印刷用シリンダの外周の全周に亘って等間隔で均一に形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液の印刷方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス材料を含有する塗工液の印刷方法に従って有機エレクトロルミネッセンスデバイス基板上に発光層を形成する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法に従って製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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