説明

有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム

【課題】本発明の課題は、有機エレクトロルミネッセンス照明基板用として好適に用いられ、有機EL層から発せられた光をより多くデバイス外に取り出すことができる、光取り出し効率に優れたポリエステルフィルムを提供することである。
【解決手段】特定粒径の光拡散性粒子を特定量添加せしめた基材層において、有機ELデバイスとする際に金属酸化物層と接する側の少なくとも一方の面に平滑層を配した積層フィルム構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)照明の電極基板に用いられるポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、発光体からの光をより多く照明デバイス外に取り出すことのできる、光取り出し効率に優れた有機EL照明基板用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から、有機ELを用いた照明(有機EL照明)が脚光を浴びている。しかしながら、従来の有機EL照明は、ガラス基板上に発光体を積層したものであるため、重く、落下などの衝撃で容易に破壊してしまうといった問題がある。また、可撓性が低いことからデザインの自由度も低い。そこで、高透明であり、薄く軽量でかつ耐衝撃性を有し、また可撓性を有しフレキシブルでありインテリアとしてのデザインの自由度を高くできるといった観点から、プラスチック基板を用いた有機EL照明が提案されている(特許文献1)。そして、このような基板に用いられるプラスチック材料としては、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどの二軸配向ポリエステルフィルムが着目されている(特許文献2)。
【0003】
一方、有機ELデバイスの発光効率については、近年急速に向上しているものの、未だ広く普及している蛍光灯に比べると低いのが現状である。この一つの要因として、発光体が発する光のうち、一部の光しか外部に取り出せていないことが挙げられる。例えば、特許文献3や6に開示されているように、一般に有機ELデバイスの光取り出し効率は20%程度しかない。そこで、高い光取り出し効率を得るために様々な提案がなされている。例えば、発光層内部に光を散乱させる粒子を分散させる方法(特許文献4)、また、有機EL素子と平面視上一対一に対応する集光用レンズを設ける方法(特許文献5)や、レンズにより光を指向させて次いで拡散させる方法(特許文献3)が提案されている。さらに、特許文献6においては、発光層からの光を励起光源として利用し、蛍光発光や燐光発光を生じ、光の反射、屈折角に乱れさせる領域を設けることにより光取り出し効率を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−126861号公報
【特許文献2】特開2007−152932号公報
【特許文献3】特開2001−265240号公報
【特許文献4】特開平6−151061号公報
【特許文献5】特開平10−172756号公報
【特許文献6】特開2004−311153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献3や5のごとくマイクロレンズを設けかかるマイクロレンズによる光の屈折効果を利用した系では、光取り出し効率は高いものの、マイクロレンズを整然と並べて形成する工程が複雑であり、量産ではそのコントロールが難しく、製造コストの非常に高いものとなってしまう。また、特許文献4のごとく発光層に光散乱粒子を分散させた系では、散乱粒子の材料が発光層との化学的、物理的マッチングの制約を受けるため材料設計が難しいだけでなく、透明基材内部での全反射を防止することができないため、光取り出し効率の改善効果が十分でない。
【0006】
そこで本発明は、発光体から発せられる光を効率的に外部に取り出すことのできる、すなわち光取り出し効率に優れた、有機EL照明基板用として好適に用いることのできるポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定粒径の光拡散性粒子を特定量添加せしめた基材層において、少なくとも一方の面に平滑層を配した構成とすることで、高い光取り出し効率と、有機EL照明用の基板として望ましい特性を両立できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は以下の構成を採用するものである。
1.基材層と、その少なくとも一方の面に形成された平滑層とからなるフィルムであって、平滑層がポリエステルからなり、その表面における中心面平均粗さ(Ra)が5.0nm以下であり、基材層がポリエステルからなり、平均粒径0.1〜10μmの光拡散性粒子を基材層の質量を基準として0.1〜10質量%含有する、有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
2.基材層における光拡散性粒子の含有量(質量%)と基材層の厚み(μm)との積が20〜60である、上記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
3.基材層および平滑層を構成するポリエステルがポリエチレンナフタレートである、上記1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
4.光拡散性粒子の屈折率が1.3〜2.1である、上記1〜3のいずれか1に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
5.フィルムの全光線透過率が60〜95%であり、ヘーズが15〜95%である、上記1〜4のいずれか1に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
6.上記1〜5のいずれか1に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルムを用いた有機エレクトロルミネッセンス照明。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光取り出し効率に優れた有機EL照明基板用ポリエステルフィルムを提供することが可能である。そして、このような効果を奏する本発明の有機EL照明基板用ポリエステルフィルムを用いることにより、有機EL照明の発光効率の向上が可能となり、それにより少ない電力で発光させることが可能となり、結果として照明としての寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は有機EL照明デバイスの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のフィルムは、基材層の少なくとも一方の面に平滑層を有するものである。
【0012】
[基材層]
本発明における基材層は、主に後述するポリエステルに光拡散性粒子を添加した組成物からなる層である。
【0013】
(ポリエステル)
本発明における基材層を構成するポリエステルは、多塩基酸成分またはそのエステル形成誘導体と、ポリオール成分またはそのエステル形成誘導体とを用いて得られるものであり、多塩基酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、マレイン酸、イタコン酸などを挙げることができ、ポリオール成分の具体例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。本発明においては、これらからなる結晶性または半結晶性のポリエステルが好ましい。それらの内、特にエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET))、またはエチレンナフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(ポリエチレンナフタレート(PEN))を好ましく用いることが出来る。ここで「主たる成分」とは、ポリエステルを構成する全繰り返し単位のうち80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上を占めることを表わす。
【0014】
本発明におけるポリエステルは、本発明の効果が損なわれない範囲で他の成分を共重合した共重合ポリエステルであってもよく、共重合成分としては、多塩基酸成分でもポリオール成分でもよく、例えば上記した多塩基酸成分、ポリオール成分が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。共重合量は、多すぎると結晶性が低下して耐熱性が低下する傾向にあり、また屈折率が低くなる傾向にあるため、全多塩基酸成分100モル%に対して10モル%以下が好ましい。
【0015】
本発明においては、光取り出し効率の向上効果を高めることができるという観点から、かかるポリエステルとしては、ポリエチレンナフタレートが好ましい。またこれにより耐熱性を高くすることができ、発光体を形成する工程における高温処理においても、基板の変形を抑制することができる。かかるポリエチレンナフタレートは、主たる多塩基酸成分がナフタレンジカルボン酸であり、主たるポリオール成分がエチレングリコールであるポリエステルであるが、ここで、ナフタレンジカルボン酸としては、たとえば2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができ、これらの中でも結晶性や耐熱性に優れるという観点から2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。なお、ここで「主たる」とは、全多塩基酸成分100モル%に対して、多塩基酸成分のうち90モル%以上がナフタレンジカルボン酸であり、ポリオール成分のうち90モル%以上がエチレングリコールであることを意味する。更に好ましくは、それぞれ95モル%以上である。
【0016】
ポリエチレンナフタレートがコポリマーである場合は、共重合成分としては、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができる。かかる化合物としては例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、或いはプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール等の如き2価アルコール類等を好ましく用いることができる。また、主たる多塩基酸成分としてのナフタレンジカルボン酸とはカルボン酸の結合位置が異なるナフタレンジカルボン酸が共重合された態様も好ましく挙げられる。これらの化合物は、1種のみを用いてもよし、2種以上を用いることもできる。また、これらの中でより好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0017】
有機EL照明用基板には、透明電極としてインジウム−スズ酸化物(ITO)やインジウム−亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物が積層されることが多いが、それらの材料は比較的屈折率の高い材料であるため、基板−透明電極界面での光の反射を抑制して光取り出し効率の向上効果を高くするためには、基板の屈折率が金属酸化物と同程度に高い方が好ましい。従来、広く使用されている有機EL照明用基板としてのガラスは、屈折率を高くすることが難しく、上記のごとく金属酸化物と同程度の高屈折率とするためには非常に高価な材料を使う等しなくてはならないが、ポリエステルフィルム、特に二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステルの種類や添加物の選択、分子配向の制御等により屈折率を比較的容易に高くすることができるため、光取り出し効率向上の点で極めて有利である。このような観点において、PETフィルムよりもPENフィルムの方が更に屈折率が高いため、光取り出し効率にさらに優れ好ましい。
【0018】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で得ることができる。例えば、ジカルボン酸とグリコールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒である、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合を行なう方法によって得ることができる。ここで重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物があげられる。エステル交換反応を経由して重合を行なう場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物が添加されるが、かかるリン化合物のポリエステル中における含有量は、リン元素として20〜100質量ppmであることが、ポリエステルの熱安定性の点から好ましい。
なお、ポリエステルは溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において固相重合することもできる。
【0019】
本発明においてポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることがさらに好ましい。この範囲とすることで、有機EL照明用の基板として好適な強度が得られる。固有粘度が0.40dl/g未満では工程切断が多発することがある。また0.9dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出しが困難になり、また重合時間が長く不経済である。
【0020】
(光拡散性粒子)
本発明における基材層は、光拡散性粒子を含有する。かかる粒子の平均粒径は0.1〜10.0μmであり、かつ基材層中での含有量は、基材層の質量を基準として0.1〜10.0質量%である。このような態様であると、発光体からの光が、基材層において適度に散乱され、光線透過率が向上し、光取り出し効率を向上させることができる。また同時に適度にヘーズを高くすることができる。
【0021】
平均粒径が小さすぎる場合は、光の散乱角が大きすぎて基材層内で多重散乱を引き起こし、光取り出し効率が低くなる。他方、平均粒径が大きすぎても、光散乱効果が不十分で、光取り出し効率が低下するばかりか、必要以上に基材層表面を荒らしてしまうため、その上の平滑層表面における平滑性を維持することが難しくなる。同一含有量(質量%)で比較すると、粒径が大きいもの程フィルム単位体積当たりに含まれる粒子の数は少なくなり、光散乱効果が減少する傾向にあり、光取り出し効率の向上効果が低くなる傾向にある。
【0022】
また、光拡散性粒子の含有量が少なすぎる場合は、充分な光散乱効果が得られず、光取り出し効率が低くなる。逆に含有量が多すぎる場合も、フィルム製造時の延伸操作の際にボイドが生じやすくなり、光線透過率が低下する傾向にあり、光取り出し効率が低下することとなる。
【0023】
以上のような観点から、光拡散性粒子のより好ましい平均粒径は0.5〜5.0μm、更に好ましくは1.0〜3.0μm、特に好ましくは1.5〜2.5μm、最も好ましくは1.3〜1.7μmである。また、より好ましい含有量は0.5〜8.0質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%、特に好ましくは0.5〜1.0質量%である。
【0024】
本発明において、光拡散性粒子の屈折率は1.3〜2.1が好ましい。このような範囲とすることで、光取り出し効率の向上効果を高くすることができる。屈折率が1.3より小さい、あるいは屈折率が2.1より大きい場合には、基材層を構成するポリエステルとの屈折率差が大きくなり過ぎ、反射成分が大きくなるため光取り出し効率の向上効果が低下する原因となる。このような観点から、光拡散性粒子の屈折率は、より好ましくは1.4〜1.9、さらに好ましくは1.45〜1.65である。また、光拡散性粒子の屈折率と基材層を構成するポリエステルの屈折率とは、ある程度の差があることが好ましく、その差は0.1〜0.4であることが好ましく、このような態様とすることで光取り出し効率の向上効果を高くすることができる。屈折率差は、高すぎても低すぎても光取り出し効率の向上効果が低くなる。このような観点から、より好ましい屈折率差は、0.2〜0.3である。
【0025】
本発明における光拡散性粒子としては、シリカ、チタン、アルミナなどの金属酸化物、スチレン樹脂やアクリル樹脂などの有機化合物などからなる粒子を挙げることができるが、屈折率、ポリエステルとの親和性、分散性、耐熱性などの観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子には、ポリエステルとの親和性をさらに高める目的で表面処理がなされていても良い。
【0026】
これらの粒子の添加方法は特に限定はされず、ポリエステルの重合時にグリコールに分散させたスラリーとして添加する方法、重合後のポリエステルに粒子の粉体そのものまたは水やアルコールなど低沸点溶媒のスラリーの形態で2軸ルーダーなどを用いて練り込み添加する方法、フィルム製膜直前に樹脂に粒子の粉体を添加する方法、あらかじめ溶融樹脂に粒子の粉体を高濃度で混練して得たマスターバッチを作成し、それを希釈して用いる方法などが挙げられるが、濃度の調整がしやすく、経済的にも効率的なマスターバッチ法が最も好ましい。
【0027】
本発明において基材層は、支持体としての他の機能層を必要とせずに、単層で独立してフィルムまたはシートとして形成することができる層であってもよいし、支持体としての他の機能層や平滑層の上に、共押出法やコーティング法等の公知の積層方法により形成された層であってもよい。また、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、基材層および他の機能層をそれぞれ複数有していてもよく、例えば、他の機能層の片面であって平滑層を形成する側の面に基材層を有する態様や、他の機能層の両面に基材層を有する態様が例示できる。
【0028】
(基材層の厚み)
基材層の厚みは、全フィルム厚みの50〜70%であることが好ましい。このような範囲とすることで、光散乱性と機械特性とのバランスに優れる。基材層の厚みが全フィルム厚みの50%に満たない場合には、光散乱効果が低くなる傾向にあり、光取り出し効率の向上効果が低くなる。逆に70%を超える場合には、有機EL照明基板用フィルムとして要求される機械特性が得られ難くなる傾向にある。また、平滑層表面における平滑性を達成するのが困難となる傾向にある。このような観点から、より好ましくは53〜67%である。
【0029】
本発明においては、基材層の厚み(μm)と、基材層に添加した光拡散性粒子の含有量(質量%)との積が、20〜60の範囲にあることが好ましい。好ましくは30〜60、さらに好ましくは30〜50である。厚み×含有量の値は、入射光線がフィルムを通過する間に散乱される頻度に比例すると考えられ、この値が20より小さい場合は、光散乱効果が低くなる傾向にあり、光取り出し効果の向上効果が低くなる。反対に60を超える場合は、光学濃度が高くなりすぎ、光線透過率が低下する傾向にあり、光取り出し効率の向上効果が低くなる。
本発明の基材層には、本発明の目的を阻害しない範囲において紫外線吸収材、酸化防止剤、帯電防止剤、ラジカルトラップ剤、色相調整剤等の添加剤を添加することができる。
【0030】
[平滑層]
本発明のフィルムは、前述の基材層の少なくとも一方の面に平滑層を有する。かかる平滑層の表面粗さは、有機EL照明を製造する際に透明電極層等を形成する側の表面において、中心面平均粗さ(Ra)で5.0nm以下である。Raがこの範囲にあることにより、その上に積層される透明電極層やバリア層における欠陥を抑制することができる。Raが5.0nmを超える場合は、その上に積層される透明電極層やバリア層に重大な欠陥を生じせしめ、回路の短絡を生じたり、水分などの浸入により発光体の寿命を著しく損なうことになる。このような観点から、Raは、好ましくは3.0nm以下、より好ましくは1.5nm以下である。このように、平滑層表面は平滑であることが好ましく、すなわちRaは小さいほど好ましいが、Raをより小さくすることは、平滑層を構成する樹脂のろ過効率が著しく損なわれたり、極めて厳密に管理されたクリーン環境で製造を行なう必要があるため、現実には難しい。そのため、現実的には、Raは0.1nm以上であることが好ましい。
【0031】
本発明における平滑層はポリエステルからなり、前述した基材層を構成するポリエステルと同様のポリエステルを用いることができ、好ましい。平滑層のポリエステルは、必ずしも基材層のポリエステルと同一のものでなくてもよいが、平滑層もまた、基材層と同様な観点から、ポリエチレンナフタレートからなることが好ましい。
【0032】
平滑層には、本発明の目的を阻害しない範囲で滑剤としての粒子などを添加しても良いが、表面粗さを上記のような態様とするために、実質的に粒子を添加しないことが好ましい。なお、ここで言う「実質的に粒子を添加しない」というのは、例えば粒子の含有量が100ppm以下、好ましくは10ppm以下であることを示す。また、ポリエステル中に不可避的に残留する触媒残渣や色相調整剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよいことは言うまでもない。
【0033】
平滑層の厚さ(電極層等を設ける側にある1層の厚さ)は、基材層が形成する凹凸によらず、本発明が規定する平滑層表面の粗さを損なわない程度の厚さにすればよく、特に制限されるものではないが、1〜50μmが好ましい。このような範囲とすることで、平滑層表面をより平滑にすることができ、本発明が規定するRaの範囲を達成しやすくなる。また、光取り出し効率の向上効果を高くすることができる。厚みが1μm以下では、基材層が形成する凹凸を十分に平滑にすることが困難となる傾向にある。他方、50μmを超えると、フィルム全体の厚みが厚くなりすぎてフレキシブル性に劣ったり、平滑層内で光閉じ込め効果が顕著になり、結果として光取り出し効率の向上効果が低下するため好ましくない。このような観点から、平滑層のより好ましい厚みの範囲は3〜30μm、更に好ましくは5〜20μm、特に好ましくは10〜30μmである。
【0034】
本発明において平滑層は、従来公知の方法で設けることができ、例えばコーティング法や共押出法などで直接基材層に積層する方法や、基材層に、平滑層となる透明で平滑度の高い別のフィルムやシートを熱などにより溶着し、あるいは接着層を介して接着し、積層することもできる。なかでも共押出法は、屈折率のより高いポリエステルを積層できるだけでなく、二軸延伸によって更に屈折率を高くすることができ、これによりフィルム全体の屈折率を高くすることができ、光取り出し効率の向上効果が高まるため好ましい。また製造コストの面でも最も有利である。なお、本発明においては、基材層の表面を物理的および/または化学的手法によって平滑化せしめた領域も、平滑層とみなすことができる。
【0035】
(積層構造)
本発明のフィルムにおいては、平滑層は、基材層の少なくとも片面にあればよく、両面にあってもよい。基材層の両面に平滑層を有する態様とすることによって、光取り出し効率の向上効果を高くすることができる。また、本発明の目的を阻害しない範囲において、基材層や平滑層は各々複数有していてもよいし、基材層と平滑層との間に密着性向上層を有していてもよい。
【0036】
[フィルム特性]
(ヘーズ、全光線透過率)
本発明のフィルムのヘーズは15〜95%であることが好ましく、20〜95%であることがより好ましい。また、全光線透過率は、好ましくは60%以上、さらには60〜95%であることが好ましい。ボトムエミッション方式の有機ELディスプレーに用いる基板としては、視認性の観点からヘーズが高いフィルムを適用することはできないが、本発明のごとく有機EL照明に用いる基板としては、陰影の柔らかな拡散光の方がむしろ好ましく、この点で上記ヘーズを有する本発明の好ましいフィルムは、有機EL照明用としてより好適である。ヘーズが低すぎる場合には、光拡散性が不十分となる傾向にあり、光取り出し効率の向上効果が低くなる。この意味でヘーズは高い方が好ましいが、ヘーズが95%を超えると実質的に全光線透過率が低下してしまうため、95%程度が限界である。
【0037】
全光線透過率は、光取り出し効率の向上効果に影響し、高い方が好ましい。全光線透過率が60%より小さい場合には、光取り出し効率の向上効果が低くなる傾向にあり、パネル輝度が低下する傾向にある。また、全光線透過率は高いほど好ましいが、本発明が規定する構成を具備するポリエステルフィルムの光学的な限界から、実質的な上限は95%である。
【0038】
通常、ヘーズの向上と全光線透過率の向上とはトレードオフの関係にあり、その両立は困難であるが、光の散乱角が小さくなるように、しかしある程度は光が散乱するように、光拡散性粒子の平均粒径、添加量、屈折率等を調整すればよく、すなわち光拡散性粒子として本発明が規定する平均粒径および含有量の態様を採用することによって、またさらに好ましくは、本発明が好ましく規定する屈折率の態様を採用することによって、初めてそれらの両立が可能となり、有機EL照明用の基板として好適なフィルムを得ることができる。
【0039】
(フィルム厚み)
本発明のフィルムの総厚みは、本発明の目的を阻害しない範囲であれば特に制限されないが、例えば2〜500μmである。また、ヘーズや光線透過率等の光学特性と、強度やフレキシブル性等の機械特性とをより好ましくするという観点から、好ましくは5〜250μm、さらに好ましくは25〜150μm、特に好ましくは50〜100μmである。
【0040】
(正面輝度)
本発明においては、後述する方法で測定した正面輝度が120%以上である。かかる正面輝度が高いということは、光取り出し効率が高いということを意味する。正面輝度は、好ましくは125%以上、より好ましくは130%以上、さらに好ましくは150%以上である。
【0041】
[製造方法]
本発明のフィルムは、従来公知の製膜法に準拠して製造することができるが、以下にその製造方法の一例について示して説明する。なお、ポリマーのガラス転移温度をTg、融点をTmと表記することがある。また、フィルムの製膜方向に関しては、連続製膜時のフィルム流れ方向を縦方向またはMD、かかる縦方向と直交する方向を横方向またはTDと表記することがある。
【0042】
まず、平滑層側の押出機に、平滑層を形成するための原料のポリエステルを投入し、一方基材層側の押出機に、ポリエステルに光拡散性粒子を高濃度(例えば10質量%)で含むマスターバッチと、それを希釈するためのポリエステルを投入し、それぞれ加熱、混練して溶融させる。次いで、ポリマーフィルターで樹脂中の粗大粒子をろ過した後、混合ブロックで両層用の溶融樹脂を合流させ、積層し、スリットダイよりフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとする。得られた未延伸フィルムを、次いで少なくとも1軸方向、好ましくは2軸方向に延伸する。かかる延伸は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもかまわない。例えば逐次2軸延伸の例を説明すると、未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのTg以上の温度、さらにはTg〜(Tg+70℃)の範囲の温度とするのが好ましい。
【0043】
縦延伸後のフィルムは、続いて、テンターに導かれ、横延伸、熱固定、また熱収縮率調整のための任意工程として弛緩熱処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながらインラインで行う。横延伸の処理は、ポリエステルのTgより高い温度から始め、そしてTgより5〜70℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数のゾーンに分け、かかるゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。
【0044】
延伸倍率は、縦方向、横方向ともに2.8〜4.0倍の範囲で行い、さらに好ましくは3.0〜3.8倍である。2.8倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなるだけでなく、屈折率が低下する傾向にあり、光取り出し効率の向上効果が低くなる。他方、4.0倍を超えると製膜中に破断が増加する傾向にあり、生産性が低下する。
【0045】
また、熱固定は、温度200〜270℃、好ましくは230〜260℃で、1〜120秒間、好ましくは2〜30秒間行なうとよく、好ましい屈折率とすることができ、光取り出し効率の向上効果を高くすることができる。
【0046】
本発明の有機EL照明基板用ポリエステルフィルムは、平滑層面上に直接透明電極層を設けて用いることが可能であるが、更に平滑性を高める目的で、平滑層上にさらに平滑化層を設けることもできる。また、電極層を設ける側と反対側の面は、照明デバイスの表面に相当するため、傷付き防止や外光の反射防止などを目的にハードコート層や反射防止層を設けることもできる。これらのような機能層との接着性を向上させる目的で、本発明のフィルムの少なくとも片面に易接着性のコーティング層を形成してもよい。かかる機能層としては、主にアクリル系やウレタン系、場合よってはシリコーン系の樹脂からなることが多い。従って易接着性コーティング層の構成材としては、ポリエステルフィルムとこれら樹脂との双方に優れた接着性を示すものであることが好ましく、例えばポリエステル樹脂やアクリル樹脂を例示することができ、さらに架橋成分を含有することが好ましい。易接着性コーティング層を設けるためのコーティングは、一般的な既知のコーティング方法を用いることができる。好ましくは、延伸可能なポリエステルフィルム(例えば未延伸フィルムや一軸延伸フィルムなど)に、前述の易接着性コーティング層の構成成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、熱処理するインラインコーティング法で行う。このとき、フィルムの上に形成された易接着性コーティング層の厚さは0.01〜1μmであることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を意味する。
【0048】
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製:K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0049】
(2)固有粘度(η)
重量比6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml)、Kはハギンス定数である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
【0050】
(3)粒子の平均粒径
島津製作所製CP―50型セントリフューグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyser)を用いて測定した。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値を粒子の平均粒径とする(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年、242頁〜247頁参照)。
【0051】
(4)粒子の屈折率
試料粒子を、屈折率が異なる種々の25℃の液に懸濁させ、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率をアッベの屈折率計によってNa D線を用いて測定し、粒子の屈折率とした。
【0052】
(5)ヘーズ、光線透過率
JIS K6714−1958に従い、全光線透過率Tt(%)と散乱光透過率Td(%)を求め、ヘーズ((Td/Tt)×100)(%)を算出した。
【0053】
(6)中心面平均粗さ(Ra)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetroProにより中心面平均粗さ(Ra)を求めた。
測定は試料の平滑層表面において行い、平滑層を有しない場合は基材層表面における粗さを測定した。
【0054】
(7)正面輝度
光取り出し効率の代用評価として、以下の方法で輝度を測定した。
画面サイズ14インチの液晶バックライト(背面から、反射板+導光板+拡散板+プリズムシートの積層構造を有する。)上に、それと同じ大きさに裁断した評価用のフィルムを、平滑層側がバックライト側を向くように載せ、できるだけ隙間がないように周囲を圧着して固定した。暗室中でバックライトを点灯させ、十分にエージングして光量が一定になったことを確認した後、TOPCON製BM−7輝度計を用いて正面輝度を測定した。得られた正面輝度を、透明な単層PENフィルム(比較例2)の輝度を100として、かかる値で割って100を乗じて指数化した。
【0055】
(8)フィルムの屈折率
二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向(MD)、及び幅方向(TD)それぞれの屈折率をアッベ屈折率計にて測定した。得られた両方向の値を平均してフィルムの屈折率とした。また、基材層のみの屈折率は、積層フィルムから平滑層のみを剥離させて除去した後、上述のごとく測定した。
【0056】
[実施例1]
(ポリエステルの製造)
ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル100部、およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温させながら120分間エステル交換反応を行なった。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチル(エチレングリコール中で135℃、5時間0.11〜0.16MPaの加圧下で加熱処理した溶液:リン酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って、固有粘度が0.61dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットを得た。平滑層用の原料としてこのペレットを他と混合せずに用いた。
【0057】
(マスターバッチの製造)
また、このポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットと、光拡散性粒子として平均粒径1.5μmのシリカ粒子(屈折率1.43)を、300℃に加熱したニーダーで溶融混練させ、濃度10質量%のマスターバッチを得た。このマスターバッチを用い、基材層中の粒子濃度が1.0質量%になるように、ポリエチレン−2,6−ナフタレートのペレットと混合し、基材層用の原料とした。
【0058】
(フィルムの製造)
基材層用の上記混合原料と、平滑層用の上記原料をそれぞれ170℃で6時間乾燥後、別々の押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融した状態で、混合ブロックにより平滑層/基材層/平滑層の3層構成となるように重ね合わせ、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上に押し出し、急冷して未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に3.2倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを240℃の温度で5秒間熱固定し、全厚み75μm、基材層と平滑層の厚みが表1のとおり積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0059】
[実施例2]
基材層と支持層の吐出量割合を変更して、基材層と平滑層の厚みを表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0060】
[実施例3]
基材層中の粒子濃度が0.6質量%となるようにマスターバッチのブレンド量を変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0061】
[実施例4]
基材層中の粒子濃度が0.6質量%となるようにマスターバッチのブレンド量を変更した以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0062】
[実施例5]
基材層中の粒子濃度が0.2質量%となるようにマスターバッチのブレンド量を変更した以外は実施例2と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0063】
[実施例6]
光拡散性粒子として平均粒径2.5μmのシリカ粒子(屈折率1.43)を用いる以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを作成し、このマスターバッチを用いて実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
なお、上記いずれのフィルムにおける基材層の屈折率(ポリエステルの屈折率)は1.74であった。
【0064】
[比較例1]
実施例1の平滑層と同じ原料を押出機に投入し、光拡散性粒子を含まない透明な厚み75μmのPEN単層フィルムを製膜した。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0065】
[有機EL照明の形成]
上記実施例1〜6、および比較例1で得られた各フィルムを用いて、次の手順に従って有機EL照明を作製した。
フィルムの表面、中央部に幅3.5cmのITO(厚み1100Å、シート抵抗12Ω/□)で電極層(陽極)を形成し、このITO付きフィルムを溶剤、次いでUVオゾンにより洗浄を行った。次に、この電極の上に、4cm×4cmの開口部を有するマスクを用い、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)と酸化モリブデンを1:1のモル比で共蒸着した層を200Å厚、α−NPDを400Å厚にそれぞれ蒸着して、ホール注入・輸送層を形成した。次に、ホール注入・輸送層の上に、発光層としてトリス(8−ヒドロキシリナート)アルミニウム(Alq3)にクマリンを1質量%ドープした層を500Å厚に形成し、そしてAlq3を100Å厚、バソクプロインとセシウムを1:1のモル比で200Å厚にそれぞれ蒸着して、電子注入・輸送層を形成した。続いて、3.5cm×5cmの開口部を有するマスクを用いて、上記ITOと直交する方向でAlを1000Å厚に蒸着して陰極を形成し、次いで保護膜としてLiFを800Å厚で蒸着し成膜し、有機EL照明を作成した。
得られた有機EL照明を発光させ、フィルム側から観察したときの明るさについて、比較例1で得られたフィルムを用いた有機EL照明の明るさを基準(×)として目視評価したところ、実施例1、2で得られたフィルムを用いた場合は非常に明るい(◎)、実施例3、4で得られたフィルムを用いた場合は明るい(○)、実施例5、6で得られたフィルムはやや明るい(△)という結果となった。
【0066】
[比較例2]
実施例1の基材層と同じ原料を押出機に投入し、平滑層を有さない厚み75μmの単層フィルムを製膜した。次いで、得られたフィルムを用いて、上記に従って有機EL照明を作成したところ、フィルム表面が粗いために電極層(陽極)を上手く形成できず、発光しないか、または非常に発光し難く、有機EL照明用として不適なものであった。そのため、比較例2で得られたフィルムについては、全光線透過率、ヘーズ、正面輝度の評価を省略した。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のフィルムは、有機EL照明における基板として用いた際に、光取り出し効率が高く、優れた有機EL照明デバイスを製造することができる。さらに、本発明の有機EL照明基板用ポリエステルフィルムは、その製造方法が比較的簡素であり、比較的容易かつ安価に製造することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 基材層
2 平滑層
3 陰極(電極層)
4 発光体を含む有機ELパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、その少なくとも一方の面に形成された平滑層とからなるフィルムであって、平滑層がポリエステルからなり、その表面における中心面平均粗さ(Ra)が5.0nm以下であり、基材層がポリエステルからなり、平均粒径0.1〜10μmの光拡散性粒子を基材層の質量を基準として0.1〜10質量%含有する、有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
基材層における光拡散性粒子の含有量(質量%)と基材層の厚み(μm)との積が20〜60である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
基材層および平滑層を構成するポリエステルがポリエチレンナフタレートである、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
光拡散性粒子の屈折率が1.3〜2.1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
フィルムの全光線透過率が60〜95%であり、ヘーズが15〜95%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス照明基板用ポリエステルフィルムを用いた有機エレクトロルミネッセンス照明。

【図1】
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【公開番号】特開2012−146413(P2012−146413A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2073(P2011−2073)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】