説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法、有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】薄型・軽量な有機EL素子を密着タイプの封止方法で封止材を接着剤で固着する時有機EL素子の性能劣化を生じさせない封止方法及びこの封止方法で製造された有機EL素子の提供。
【解決手段】基板上に第1電極と、発光層を含む少なくとも1層の有機化合物層と、第2電極とを有する有機EL素子を接着剤を介してバリア性を有する可撓性封止部材により封止する有機EL素子の封止方法において、前記接着剤を前記有機EL素子の発光部及び外部取り出し電極の先端部が露出する状態に前記発光部の外周面を含め全面に配置し、前記接着剤上に前記可撓性封止部材を重ね合わせ、前記可撓性封止部材の前記外周面の接着部のみを圧着した後、硬化処理することを特徴とする有機EL素子の封止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とも言う)の封止方法及びこの方法により製造された有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機物質を使用した有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されており、活発な研究開発が進められている。有機EL素子は、基板上に形成された第1電極(陽極又は陰極)と、その上に積層された有機発光物質を含有する有機化合物層(単層部又は多層部)すなわち発光層と、この発光層上に積層された第2電極(陰極又は陽極)とを有する薄膜型の素子である。この様な有機EL素子に電圧を印加すると、有機化合物層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られることが知られている。
【0003】
この様に、有機EL素子は薄膜型の素子であるため、1個又は複数個の有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルをバックライト等の面光源として利用した場合には、面光源を備えた装置を容易に薄型にすることが出来る。又、画素としての有機EL素子を基板上に所定個数形成した有機ELパネルをディスプレイパネルとして用いて表示装置を構成した場合には視認性が高い、視野角依存性がないなど、液晶表示装置では得られない利点がある。
【0004】
ところで、有機EL素子に用いられる有機発光材料等の有機物は水分や酸素等に弱く性能が劣化し、又電極も、酸化により大気中では特性が急激に劣化すため、これらの劣化を防止ために、一般的には金属缶や掘りガラス等で形成された封止キャップ缶を素子基板に接着剤にて貼り合せ封止する方法が提案されている。これは、密閉封止空間を有し、封止空間内に不活性ガスを充填し、更に吸湿材を配置したものである。この為、素子表面陰極上は空間を有するために素子への外部応力による劣化はない構成となっている。しかしながら、有機EL素子自体は薄いのに封止部材の厚みと吸湿材を配置するための空間の厚みを持つこととなり全体として厚みのある発光素子となっている。
【0005】
一方、薄いEL素子を形成させることが可能な、素子面上に空間を設けず封止材を貼り合せる密着タイプの封止形態が提案されている。
【0006】
密着タイプの封止方法としては、例えば特開平4−212284号公報、特開平5−182759号公報等に記載の様にGeO、SiO2等の無機化合物からなる保護膜の上に接着剤、光硬化性樹脂等を介してガラス基板を固着する方法が知られている。
【0007】
しかしながら、これらの方法では接着剤、光硬化性樹脂が硬化する時、体積が収縮することから残留応力が発生し、この残留応力は、封止対象の有機EL素子と接着剤や光硬化性樹脂との間にGeOやSiO2等の膜があったとしてもその膜厚がμmオーダーと薄いと有機ELに伝わってしまう。そして、残留応力は曲率半径の小さな部分で特に強くなるので、有機EL素子に伝播した残留応力は有機EL素子の端部等に集中する。この結果、素子の電極端部等が押潰され、陽極と陰極とが接触してショートが発生することが知られており、接着剤、光硬化性樹脂を使用した密着タイプの封止方法で接着剤、光硬化性樹脂が硬化する時の残留応力の緩和対策が検討されてきた。例えば、有機EL素子と接着剤の間に応力緩和層を設け、封止材を接着剤で固着する方法が知られている。これは、接着剤が硬化する際の体積収縮による残留応力影響で電極端部が押し潰ぶされショートする不具合があり、これを緩和させることを目的としている(例えば、特許文献1を参照。)。有機EL素子上に接着剤層として、有機EL素子側の接着剤の収縮率を、封止材側の接着剤の収縮率よりも小さい接着剤を使用し2層とすることで接着剤の硬化収縮による応力の影響を発光素子が受けない様にして封止材を接着剤で固着する方法が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0008】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載の方法は、有機EL素子上に接着剤の硬化収縮による応力緩和手段を設けるため、工程が増えてしまい、生産性が上がらない、コストが高くなる等に何らかの対策を必要とする課題が残る。
【0009】
この様な状況から、ガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得るために密着タイプの封止方法で封止材を接着剤で固着する時、工程を増やすことなく、有機EL素子の性能劣化を生じさせない封止方法及び有機EL素子の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平8−124677号公報
【特許文献2】特開2003−109750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は根上記状況を鑑みなされたものであり、その目的は、薄型・軽量な有機EL素子を密着タイプの封止方法で封止材を接着剤で固着する時有機EL素子の性能劣化を生じさせない封止方法及びこの封止方法で製造された有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0012】
1.基板の上に第1電極と、発光層を含む少なくとも1層の有機化合物層と、第2電極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を接着剤を介してバリア性を有する可撓性封止部材により封止する有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法において、前記接着剤を前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光部及び外部取り出し電極の先端部が露出する状態に前記発光部の外周面を含め全面に配置し、前記接着剤上に前記可撓性封止部材を重ね合わせ、前記可撓性封止部材の前記外周面の接着部のみを圧着した後、硬化処理することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0013】
2.前記接着剤が光硬化型もしくは熱硬化型であることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0014】
3.前記外周面の接着部を圧着する時の押圧力は、0.5×104Pa〜20×104Paであることを特徴とする前記1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0015】
4.前記可撓性封止部材が樹脂基材からなり、防湿層を有し、厚さが30〜300μmであることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【0016】
5.前記1〜4の何れか1項に記載の封止方法により製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0017】
薄型・軽量な有機EL素子を密着タイプの封止方法で封止材を接着剤で固着する時有機EL素子の性能劣化を生じさせない封止方法及びこの封止方法で製造された有機EL素子を提供することが出来、工程を増やすことなく、生産効率を下げずに、高品質の有機EL素子の生産が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図1〜図6を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
図1は有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【0020】
図中、1は有機EL素子を示す。有機EL素子1は、ガラス基材101上に、第1電極102と、正孔輸送層(正孔注入層)103と、有機化合物層(発光層)104と、電子注入層105と、第2電極106と、接着剤107と、封止部材108とをこの順番に有している。102aは第1電極102の外部取り出し電極を示し、106aは第2電極106の外部取り出し電極を示す。本図に示される有機EL素子1は、第1電極102の外部取り出し電極102aと、第2電極106の外部取り出し電極106aの先端部分を除いて接着剤層107を介して封止部材108で密着封止した構造となっている。
【0021】
本図に示される有機EL素子において、第1電極102と正孔輸送層103の間に正孔注入層(不図示)を設けてもよい。又、第2電極106と有機化合物層(発光層)104と電子注入層105との間に電子輸送層(不図示)を設けてもよい。
【0022】
本図に示す有機EL素子の層構成は一例を示したものであるが、他の代表的な有機EL素子の層構成としては次の構成が挙げられる。
【0023】
(1)ガラス基板/第1電極(陽極)/発光層/電子輸送層/第2電極(陰極)/封止部材
(2)ガラス基板/第1電極(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/第2電極(陰極)/封止部材
(3)ガラス基板/第1電極(陽極)/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/第2電極(陰極)/封止部材
(4)ガラス基板/第1電極(陽極)/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/第2電極(陰極)/封止部材
有機EL素子の場合、通常、第1電極(陽極)102側が観察側になり、第1電極(陽極)102には、ITO(酸化スズと酸化インジウム混合物)、IZO(酸化亜鉛と酸化インジウム混合物)、ZnO、SnO2、In23等が知られている。中でも、ITO電極は、90%以上の高い光透過率と、10Ω/□以下の低いシート抵抗値が可能で、液晶ディスプレイや太陽電池などの透明電極としても用いられている。又、IZO電極は、形成時に基板を加熱せずに所定の低い抵抗値が得られ、ITO電極よりも膜表面が平滑であるという利点がある。
【0024】
図2は図1のTで示される部分の拡大概略断面図である。
【0025】
封止部材108は樹脂基材108aと、防湿層108bとを有する可撓性封止部材で構成されている。尚、防湿層108bの上(本図では防湿層108bと接着剤層の間となる)に保護層(不図示)を設けてもよい。樹脂基材108aは単体でもよいし、積層体であってもよく必要に応じて適宜選択することが可能である。防湿層108bは単体でもよいし、積層体であってもよく必要に応じて適宜選択することが可能である。可撓性封止部材108は接着剤を介して第2電極上へ貼合されている。
【0026】
本発明に使用する可撓性封止部材を構成している樹脂基材108aとしては特に限定はなく、例えばエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルスチレン(PES)等、熱可塑性樹脂フィルム材料を使用することが出来る。又、これら熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じて異種フィルムと共押出しで作った多層フィルム、延伸角度を変えて貼り合せて作った多層フィルム等も当然使用出来る。更に必要とする物性を得るために使用するフィルムの密度、分子量分布を組合せて作ることも当然可能である。
【0027】
防湿層としては、無機蒸着膜、金属箔が挙げられる。無機蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き無機膜が挙げられる。例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2、Cr23、Sixy(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、SiN、単結晶Si、アモルファスSi、W、等が用いられる。
【0028】
又、金属箔の材料としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケルなどの金属材料や、ステンレス、アルミニウム合金などの合金材料を用いることが出来るが、加工性やコストの面でアルミニウムが好ましい。膜厚は、1〜100μm程度、好ましくは10μm〜50μm程度が望ましい。
【0029】
本発明は図1に示す構成を有する有機EL素子を、図2に示す可撓性封止部材を使用し密着封止する時に、有機EL素子の性能劣化を生じさせない封止方法及びこの方法で製造した有機EL素子に関するものである。
【0030】
図3は可撓性封止部材により封止する前の図1に示す有機EL素子の概略平面図である。
【0031】
図中、109は第1電極102と第2電極106とが重なっている部分の発光部を示し、110は外部取り出し電極102aと外部取り出し電極106aの先端部が露出する状態の外部取り出し電極102aと外部取り出し電極106aの一部を含めた発光部の外周面(図中、斜線で示す部分)を示す。される部分となる。他の符号は図1と同義である。
【0032】
本図はパッシブ型の面発光方式の有機EL素子を示しているが、本発明に係わる有機EL素子としては特に限定はなく、例えばパッシブ型のフルカラー方式、アクティブ型のフルカラー方式等が挙げられる。
【0033】
図4は図3に示される有機EL素子の上に可撓性封止部材を重ね合わせた状態の有機EL素子の概略図である。図4の(a)は図3に示される有機EL素子の上に可撓性封止部材を重ね合わせた状態の有機EL素子の概略平面図である。図4の(b)は図4の(a)のA−A′に沿った概略断面図である。
【0034】
本図は接着剤107が配置された可撓性封止部材108を用いて、有機EL素子の上に重ね合わせた状態を示している。可撓性封止部材108に配置された接着剤107は、有機EL素子の外部取り出し電極102a及び外部取り出し電極106aの先端部が露出する状態で発光部109と外周面110とを含め可撓性封止部材108が貼合される様に配置されている。107aは発光部109の外周面110に対応する位置にあたる可撓性封止部材に配置された接着剤を示す。外周面110上の接着剤107aが封止部材108を介し圧着される。接着剤107aの耳幅は端部シール性やパネルサイズの低減等を考慮して0.5mm〜3mmが好ましい。
【0035】
接着剤としては、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、エポキシ系などの熱及び化学硬化型(二液混合)等の接着剤、カチオン硬化タイプ等の接着剤の紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等を挙げることが出来る。又、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることが出来る。
【0036】
配置する接着剤の厚さは、液状タイプ、シート状タイプ共に硬化反応時間、有機層への影響、端部からの水分浸透等を考慮し、5〜100μmが好ましい。接着剤を配置する方法としては、使用する接着剤が液状タイプと、シート状タイプの場合があるため接着剤の種類に応じて対応することが可能である。例えば接着剤が液状タイプの場合、外部取り出し電極102aと外部取り出し電極106aの先端部が露出する状態にするため、生産効率、膜厚安定性を考慮し、スクリーン印刷で可撓性封止部材108塗設することが好ましい。シート状タイプの場合は、予め必要とする大きさにしたシート状接着剤を外部取り出し電極102aと外部取り出し電極106aの先端部が露出する状態の位置に可撓性封止部材108に配置することが可能である。尚、封止部材に接着剤を配置する前に接着剤を配置する箇所は異物付着を避けるため、例えば、粘着式ロールクリーナ、UVオゾン洗浄等で清掃することが好ましい。
【0037】
尚、本図は接着剤を可撓性封止部材108に配置した場合を示しているが、接着剤の配置する場所は特に限定はなく、外部取り出し電極102aと外部取り出し電極106aの先端部を除いて有機EL素子に配置することも可能である。
【0038】
図5は図4に示す可撓性封止部材を重ね合わせた状態の有機EL素子の発光部の外周面に相当する位置の可撓性封止部材を押圧し、可撓性封止部材を貼合する状態を示す概略フロー図である。
【0039】
図中、2は押圧部材を示す。押圧部材2の押圧面は、可撓性封止部材108の上を押圧部材2で押圧し圧着したとき、押圧力が発光部に伝わらないように発光部に相当する部分が凹形状に掘り込みが成された掘り込み部201と、発光部109(図4を参照)の外周面110(図4を参照)に相当する可撓性封止部材108の位置を圧着する押圧部202を掘り込み部201の周囲に有する形状となっている。
【0040】
有機EL素子の発光部109(図4を参照)の上に重ね合わされた可撓性封止部材108の、発光部109(図4を参照)の外周面110(図4を参照)に相当する位置の可撓性封止部材108の接着面のみを圧着部材2で押圧(図中の矢印方向)し圧着することで、可撓性封止部材108の発光部109及び外周面110への貼合が終了する。圧着は発光部109の周面を均等な押圧力で同時に行うことが好ましく、押圧力は荷重不足による端部の密着性不良や過荷重による接着剤のはみ出し、外部電極の損傷等を考慮し0.5×104Pa〜20×104Paが好ましい。尚、押圧力は例えば空気圧シリンダに加える圧縮空気圧力をレギュレータで制御する方式が一般的である。レギュレータ圧力に対応するシリンダ推力を押し圧面積から換算して所望押し圧を設定する。貼合時には、使用した接着剤の種類に応じて熱処理、紫外線照射等の硬化処理を併用して行う。
【0041】
可撓性封止部材108の厚さは、接着材の硬化収縮での変形緩和性、取り扱い性、分離手段形成性、切断性等を考慮し、30〜300μmが好ましい。
【0042】
可撓性封止部材の水分透過度は、有機層の結晶化に伴うダークスポットの発生、及び有機EL素子の長寿命化等を考慮し、0.01g/m2・day以下であることが好ましい。水分透過度はJIS K7129B法(1992年)に準拠した方法で主としてMOCON法により測定した値を示す。
【0043】
酸素透過度は、有機層の結晶化に伴うダークスポットの発生、及び有機ELス素子の長寿命化等を考慮し、0.01ml/m2・day・atm以下であることが好ましい。酸素透過度はJIS K7126B法(1987年)に準拠した方法で主としてMOCON法により測定した値である。
【0044】
図4に示す接着剤の配置から接着剤の硬化処理までは、有機EL素子の劣化による寿命低減の観点より、水分濃度、酸素濃度が低いことが重要であり、好ましくは水分濃度10ppm以下、酸素濃度10ppm以下の環境下で行うことが好ましい。貼合は、気泡の混入を考慮し、1Pa〜30kPaの減圧環境下で行うことが好ましい。
【0045】
図1〜図5に示す接着剤を介して可撓性封止部材による有機EL素子の封止方法により次の効果が得られた。
1.可撓性封止部材を貼合する時、発光部の周面のみを圧着するため、貼合時の外圧による損傷を防止することが出来、安定した品質のガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得ることが可能となった。
2.発光部の硬化処理により発生する接着剤の収縮によるストレスを可撓性封止部材が変形することで緩和するため発光部の性能劣化を防止することが可能となり安定した品質のガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得る得ることが可能となった。
3.可撓性封止部材を貼合する時、発光部の周面のみを圧着するため、有機EL素子と封止部材との接着高さの均一化が周面で図れるので可撓性封止部材の厚みの均一化を図ることが可能となった。
4.硬化処理により発生する接着剤の収縮によるストレスを緩和するために別の機能層を設ける必要がないため、工程を増やすことなく、生産性を下げることなく、コストを上げることなく安定した品質のガラス基板を使用した薄型・軽量な有機EL素子を得ることが可能となった。
【0046】
以下、本発明に係る有機EL素子を構成している主要な層に付き説明する。
《発光層》
本発明に係る有機EL素子の発光層は、電極又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。発光層の作製には、後述する発光ドーパントやホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することが出来る。発光層の構成としてホスト化合物、発光ドーパント(発光ドーパント化合物とも言う)を含有し、ドーパントより発光させることが好ましい。
【0047】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することが出来る。又、後述する発光ドーパントを複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることが出来る。
【0048】
発光ホストとしては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位を持つ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
【0049】
次に、有機EL素子に用いられる発光ドーパントについて説明する。発光ドーパントとしては、蛍光性化合物、燐光発光体(燐光性化合物、燐光発光性化合物等とも言う)を用いることが出来る。燐光発光体としては、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0050】
以下に、燐光発光体として用いられる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻,1704〜1711に記載の方法等により合成出来る。
【0051】
【化1】

【0052】
【化2】

【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
蛍光発光体(蛍光性ドーパント)の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0058】
又、従来公知のドーパントも本発明に用いることが出来、例えば、国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等が挙げられる。
【0059】
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0060】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0061】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0062】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0063】
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、上記の如く、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0064】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることが出来る。又、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることが出来る。一般に有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0065】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることが出来る。又、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることが出来る。一般に正孔阻止層、電子輸送層の膜厚としては好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
【0066】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることが出来る。
【0067】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、又導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0068】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することが出来るが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0069】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0070】
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。又、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することが出来る。
【0071】
又、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような所謂、p型正孔輸送材料を用いることも出来る。
【0072】
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することが出来る。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0073】
又、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることも出来る。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0074】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層又は複数層設けることが出来る。
【0075】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることが出来、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来る。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。
【0076】
又、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることが出来る。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることが出来る。又、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来るし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることが出来る。
【0077】
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することが出来る。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0078】
又、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることも出来る。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0079】
《第1電極:陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。この様な電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。又、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式製膜法を用いることも出来る。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、又陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0080】
《第2電極:陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。この様な電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することが出来る。又、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極の何れか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0081】
又、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することが出来、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することが出来る。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明の態様はこれに限定されるものではない
実施例1
《有機EL素子の作製》
陽極としてガラス板の上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製:NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をiso−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0083】
この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、5つのタンタル製抵抗加熱ボートに、α−NPD、CBP、Ir(ppy)3、BCP、Alq3をそれぞれ入れ、真空蒸着装置(第1真空槽)に取り付けた。更にタンタル製抵抗加熱ボートにフッ化リチウムを、タングステン製抵抗加熱ボートにアルミニウムをそれぞれ入れ、真空蒸着装置の第2真空槽に取り付けた。
【0084】
まず、第1の真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入ったタンタル製抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm〜0.2nm/秒で透明支持基板に膜厚25nmの厚さになるように蒸着し、正孔注入/輸送層を設けた。
【0085】
更に、CBPの入ったタンタル製抵抗加熱ボートとIr(ppy)3の入ったタンタル製抵抗ボートをそれぞれ独立に通電して発光ホストであるCBPと発光ドーパントであるIr(ppy)3の蒸着速度が100:7になるように調節し膜厚30nmの厚さになるように蒸着し、発光層を設けた。
【0086】
次いで、BCPの入ったタンタル製抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で厚さ10nmの正孔阻止層電子輸送層を設けた。更に、Alq3の入ったタンタル製抵抗加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1nm〜0.2nm/秒で膜厚40nmの電子輸送層電子注入層を設けた。
【0087】
次に、前記の如く電子輸送層電子注入層まで製膜した素子を真空のまま第2真空槽に移し第2真空槽を2×10-4Paまで減圧した後、フッ化リチウム入りのタンタル製抵抗加熱ボートに通電して蒸着速度0.01nm/秒〜0.02nm/秒で膜厚0.5nmの陰極バッファー層を設け、次いでアルミニウムの入ったタンタル製抵抗加熱ボートに通電して蒸着速度1nm/秒〜2nm/秒で膜厚150nmの陰極を付け、図5に記載の層構成を有する有機EL素子を得た。更にこの有機EL素子を大気に接触させることなく窒素雰囲気下(純度99.999%以上の高純度窒素ガス下)へ移した。
【0088】
《封止作業》
<ガスバリア性可撓性フィルム(封止用フィルム)の作製>
基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人・デュポン社製フィルム、以下、PETと略記する)上に、大気圧プラズマ放電処理装置によりSiOxからなる無機物のガスバリア膜を形成し、酸素透過度0.01ml/m2/day以下、水蒸気透過度0.01g/m2/day以下の高ガスバリア性フィルムを作製した。
【0089】
〈可撓性封止部材による有機EL素子の封止〉
準備した有機EL素子を使用し、図3に示す有機EL素子の外部取り出し電極を除き、発光部と外周面に対応する封止部材面に以下に示す接着剤をスクリーン印刷法にて厚さ0.1mmで配置した。接着剤は、ナガセケムテック(株)製 UVレジン XNR5516を使用した。
この後、接着剤付き可撓性封止部材を図5に示す様に有機EL素子の上に重ね合わせた後、表1に示す様に外周面の接着部の押圧力を変えて以下に示す可撓性封止部材を圧着貼合し、オーク製作所製ハンディ高圧水銀ランプ(OHD−110M−ST)にて6000mJ/cm2以上の照射エネルギーを与え硬化処理し封止した有機EL素子を作製し、試料No.101〜110した。尚、可撓性封止部材を貼合する際、前記接着剤の塗布された封止部材に対向する様にガラス上に形成された有機EL素子面をバリアフィルム側に向け、位置合わせを行い、周囲を100Paまで減圧を行ったのち、封止部材の上を押圧部材を介し圧着を行う。押圧部材は平板ガラスを使用し、平板ガラスの押圧面は図5に示す様に発光部に相当する部分に深さ1mmの掘り込み部を設け、掘り込み部の周囲に圧着部を配置した。この押圧部材により封止部材上から押圧し、圧着部のみ所望荷重にて圧着された状態にて、ガラスの上から高圧水銀ランプを照射し押圧面及び、有機EL素子の素子面の硬化処理を行った。又、0.7mmの掘り込み部を設けていない平板ガラスで発光部と外周面とを押圧力2×104Paで圧着(全面圧着)し封止した有機EL素子を作製し、比較試料No.111とした。尚、接着剤は熱硬化型を用いてもよい。
【0090】
(評価)
作製した各試料No.101〜111に付き、リーク電流値及び未発光故障(ダークスポット)を以下に示す試験方法により試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
【0091】
リーク電流値の試験方法
定電圧駆動時の正極性、逆極性での電流値を求め以下に示す式から計算で求めた。
【0092】
リーク電流値=電流値(正)/電流値(逆)
リーク電流値の評価ランク
○:1000以上
△:1000〜500
×:500以下
未発光故障(ダークスポット)の試験方法
未発光素子を発光させ未発光黒点故障(ダークスポット)の数を拡大鏡による目視にて3箇所計測し、面積2mm2の領域あたりの未発光故障の個数を3箇所の平均として算出した。
【0093】
未発光故障(ダークスポット)の評価ランク
○:0個
△:1〜3個
×:4個以上
【0094】
【表1】

【0095】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1のTで示される部分の拡大概略断面図である。
【図3】可撓性封止部材により封止する前の図1に示す有機EL素子の概略平面図である。
【図4】図3に示される有機EL素子の上に可撓性封止部材を重ね合わせた状態の有機EL素子の概略図である。
【図5】図4に示す可撓性封止部材を重ね合わせた状態の有機EL素子の発光部の外周面に相当する位置の可撓性封止部材を押圧し、可撓性封止部材を貼合する状態を示す概略フロー図である。
【符号の説明】
【0097】
1 有機EL素子
101 ガラス基材
102 第1電極
102a、106a 外部取り出し電極
103 正孔輸送層(正孔注入層)
104 有機化合物層(発光層)
105 電子注入層
106 第2電極
107、107a 接着剤
108 封止部材
108a 樹脂基材
108b 防湿層
109 発光部
110 外周面
2 押圧部材
201 掘り込み部
202 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に第1電極と、発光層を含む少なくとも1層の有機化合物層と、第2電極とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子を接着剤を介してバリア性を有する可撓性封止部材により封止する有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法において、
前記接着剤を前記有機エレクトロルミネッセンス素子の発光部及び外部取り出し電極の先端部が露出する状態に前記発光部の外周面を含め全面に配置し、
前記接着剤上に前記可撓性封止部材を重ね合わせ、
前記可撓性封止部材の前記外周面の接着部のみを圧着した後、硬化処理することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項2】
前記接着剤が光硬化型もしくは熱硬化型であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項3】
前記外周面の接着部を圧着する時の押圧力は、0.5×104Pa〜20×104Paであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項4】
前記可撓性封止部材が樹脂基材からなり、防湿層を有し、厚さが30〜300μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の封止方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の封止方法により製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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