説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその素子の製造方法

【課題】平板ガラスを用いた中空封止構造でも有機EL素子の劣化を抑制することができ、また封止ガラスの撓みによる有機EL素子への損傷を防ぐことができ、凸版印刷法を用いて有機機能材料を形成できる隔壁基板および製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上に設けられた格子状の第一隔壁及び第二隔壁と、前記第一隔壁及び第二隔壁により区画された領域内に形成された少なくとも第一電極、第二電極、及び少なくとも有機発光材料を含む有機発光媒体層と、前記格子状の第一隔壁及び第二隔壁の交点に点状スペーサーを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、点状スペーサーの断面形状が逆テーパー形状であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷法により薄膜を形成された印刷体に係り、特に格子状隔壁により区画された被印刷基板に対し機能性有機薄膜を形成する方法に関する。中でも情報表示端末などのディスプレイや面発光光源として幅広い用途が期待される有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報表示端末のディスプレイ用途として、大小の光学式表示装置が使用されるようになってきている。中でも、有機EL素子を用いた表示装置は、自発光型であるために応答速度が速く、消費電力が低いことから、次世代のディスプレイとして注目されている。有機EL素子は、有機発光材料を含む発光層を、第一の電極と第二の電極で挟んだ単純な基本構造である。そして、電極間に電圧を印加し、一方の電極から注入されるホールと、他方の電極から注入される電子とが発光層内で再結合する際に生じる光を画像表示や光源として用いる。
【0003】
有機EL素子は、大気中の水分や酸素などで劣化することが知られており、ザグリガラスからなる封止基板で封止し、内部に乾燥窒素と乾燥剤を内包する方法が一般的に知られている(特許文献1)。
【0004】
しかし、ザグリガラスは、ケミカルエッチング法などを用いて掘り込むために加工費が高いという問題や大型化が困難である。このために、平板ガラスを用いることが好ましい。しかし、平板ガラスの周辺部にシール剤を形成すると(特許文献2)、シール剤の厚みを10μ程度で形成する際、中空部の隙間が狭く乾燥剤を設けにくいといった問題や、封止基板の撓みにより、有機EL素子が損傷を受け、点欠陥や線欠陥の原因になるといった問題があった。逆に、シール剤の厚みを厚くすると、端部からの水分の浸入が多くなり、有機EL素子の長期にわたる劣化抑制が難しい。
【0005】
このような問題を解決する手段として、基板もしくは封止基板にスペーサーを形成する方法がある(特許文献3)。しかし、封止基板にスペーサーを設けた場合、有機EL素子が形成された基板と封止基板を貼合すると、第二電極層にスペーサーが接触するために、第二電極層が損傷を受けて表示不良を起こすという問題があり、また、封止基板側のスペーサーと、基板側の隔壁のアライメン貼合が困難であるといった問題がある。
【0006】
一方、基板側にスペーサーを設けた場合、凸版印刷法のような版を用いる印刷を用いると、印刷版とスペーサーが接触し、印刷法による有機発光媒体層の形成工程において印刷不良が生じ、パネルの表示不良が生じるといった問題があり、また、第二電極層の形成工程において、スペーサー上にも第二電極層が形成されてしまうために、封止基板を貼合した際に、スペーサー上の第二電極が接触し損傷を受け、電流リークによる表示不良の原因になるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-008922号公報(キャップ封止)
【特許文献2】特開2007-059094号公報(平板端部シール封止)
【特許文献3】特開2007-095611号公報(スペーサーの封止)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、平板ガラスを用いた中空封止構造でも有機EL素子の劣化を抑制することができ、また封止ガラスの撓みによる有機EL素子への損傷を防ぐことができ、凸版印刷法を用いて有機機能材料を形成できる隔壁基板および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、基板と、前記基板上に設けられた格子状の第一隔壁及び第二隔壁と、前記第一隔壁及び第二隔壁により区画された領域内に形成された少なくとも第一電極、第二電極、及び少なくとも有機発光材料を含む有機発光媒体層と、前記格子状の第一隔壁及び第二隔壁の交点に点状スペーサーを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、点状スペーサーの断面形状が逆テーパー形状であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
請求項2に係る発明は、隣接する第一隔壁間の距離が、隣接する第二隔壁間の距離の1/3である事を特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である。
請求項3に係る発明は、第一隔壁よりも、第二隔壁の線幅が広い事を特徴とする請求項1、2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である。
請求項4に係る発明は、点状スペーサーが、吸湿材料からなることを特徴とする請求項1、2,3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する基板と封止基板が周辺部で貼合されてなり、基板と封止基板の間が中空構造であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
請求項6に係る発明は、点状スペーサーが封止基板に接していることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である。
請求項7に係る発明は、基板上に第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の端部を覆うように格子状の第一隔壁及び第二隔壁を形成する工程と、
前記格子状の第一隔壁及び第二隔壁の交点に、点状スペーサーを形成する工程と、
第二隔壁に平行方向にライン状凸版を用いた印刷法により、少なくとも第一隔壁及び第二隔壁に区画された領域内の第一電極上に、有機発光媒体層を形成する工程と、
第一隔壁に平行方向にライン状凸版を用いた印刷法により、少なくとも第一隔壁及び第二隔壁に区画された領域内の第一電極上に、少なくとも1種類の有機発光媒体層を形成する工程と、
前記有機発光媒体層上に第二電極を形成する工程と、
からなる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、第一の有機発光媒体層と第二の有機発光媒体層の形成に用いるライン状凸版の幅は、それぞれの印刷方向に対して、第一隔壁及び第二隔壁に区画された領域の幅とほぼ同じ幅であり、点状スペーサーに接触しない幅の印刷版であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
請求項8に係る発明は、請求項7に記載した有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、少なくとも第二電極を形成する工程の前に、点状スペーサーをベーキングする工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、格子状隔壁の交点に、吸湿性の逆テーパー状の点状スペーサーを設けることにより、凸版印刷法による有機機能薄膜の形成に影響がなく、また逆テーパー形状であるため点状スペーサー上に形成された第二電極が膜切れし、スペーサー上の第二電極は電気的に孤立するため封止ガラスと接触しても電気的な不具合がなく、さらには吸湿性を有する点状スペーサーが第二電極に被覆されないことで外部から侵入した水分を捕集でき、長期にわたり有機EL素子の劣化を抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の断面構造の一例である。
【図2】本発明における隔壁の斜視図の一例である。
【図3】本発明において、凸版印刷を用いた隔壁へのインクの転写図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は、本発明の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さ、寸法等は実際のものとは異なる。
【0013】
図1〜3に示すように、本発明の印刷体である有機EL素子10は基板11と、基板上に設けられた隔壁13と逆テーパー形状の点状スペーサー14、隔壁に区画された領域内に形成された有機発光媒体層15を具備し、前記隔壁は第一直線に平行な第一隔壁と第二直線に平行な第二隔壁から形成された格子状をしている。有機発光媒体層15の下方には第一電極12が、上方には第二電極16が設けられ、第一電極12と第二電極16が有機発光媒体層15を挟む構造となっている。さらに、第二電極16上には有機発光媒体層15を外部環境から保護するために中空部を介して封止基板17が接着層18を介して貼合せられる。前記有機発光媒体層は、発光色に関係なく全画素に形成する場合には第二隔壁に対応した画線部を有する印刷版を用いた印刷法により形成され、RGB発光色を順に形成する場合には第一隔壁に対応した画線部を有する印刷版を用いた印刷法により形成される。
【0014】
<基板>
基板11は本発明の印刷体の支持体となるものである。基板11の材料としては絶縁性を有し寸法安定性に優れた基板であれば如何なる基板も使用することができる。例えば、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、または、これらプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を単層もしくは積層させた透光性基材や、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、シート、板や、前記プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させた非透光性基材などを用いることができる。光取出しをどちらの面から行うかに応じて基材の透光性を選択すればよく、色も特に限定されるものではない。これらの材料からなる基板は、有機EL素子内への水分の侵入を避けるために、無機膜やフッ素樹脂層を形成して、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。特に、有機発光媒体への水分の侵入を避けるために、基板における含水率およびガス透過係数を小さくすることが好ましい。
【0015】
また、有機EL素子を形成する場合には、上記基板11として薄膜トランジスタ(TFT)を形成したアクティブ駆動方式用基板を用いても良い。本発明の印刷体をアクティブ駆動型有機EL素子とする場合には、TFT上に、平坦化層が形成してあるとともに、平坦化層上に有機EL素子の下部電極(第一電極12)が設けられており、かつ、TFTと下部電極とが平坦化層に設けたコンタクトホールを介して電気接続してあることが好ましい。このように構成することにより、TFTと、有機EL素子との間で、優れた電気絶縁性を得ることができる。TFTや、その上方に構成される有機EL素子は支持体で支持される。支持体としては機械的強度や、寸法安定性に優れていることが好ましく、具体的には先に基板として述べた材料を用いることができる。支持体上に設ける薄膜トランジスタは、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、ボトムゲート型、コプレーナ型等の公知の構造が挙げられる。
【0016】
活性層は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法;SiHガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法;Siガスを用いてLPCVD法により、また、SiHガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザー等のレーザーによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス);減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にnポリシリコンのゲート電極を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0017】
ゲート絶縁膜としては、ゲート絶縁膜として使用されている公知のものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO;ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO等を用いることができる。ゲート電極としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミ、銅等の金属;チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属;ポリシリコン;高融点金属のシリサイド;ポリサイド;等が挙げられる。薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。
【0018】
本発明の印刷体を有機EL素子として形成する場合には、TFTが有機EL素子のスイッチング素子として機能するように接続されている必要があり、トランジスタのドレイン電極と有機EL素子の画素電極(第一電極12)が電気的に接続されている。トップエミッション構造とする場合には画素電極は光を反射する金属を用いる必要があり、ボトムエミッション構造とする場合には画素電極は光を透過する材料を用いる必要がある。薄膜トランジスタとドレイン電極と有機EL素子の画素電極12との接続は、平坦化膜を貫通するコンタクトホール内に形成された接続配線を介して行われる。
【0019】
平坦化膜の材料についてはSiO、スピンオンガラス、SiN(Si)、TaO(Ta)等の無機材料、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フォトレジスト材料、ブラックマトリックス材料等の有機材料等を用いることができる。これらの材料に合わせてスピンコーティング、CVD、蒸着法等を選択できる。必要に応じて、平坦化層として感光性樹脂を用いフォトリソグラフィーの手法により、あるいは一旦全面に平坦化層を形成後、下層の薄膜トランジスタに対応した位置にドライエッチング、ウェットエッチング等でコンタクトホールを形成する。コンタクトホールはその後導電性材料で埋めて平坦化層上層に形成される画素電極との導通を図る。平坦化層の厚みは下層のTFT、コンデンサ、配線等を覆うことができればよく、厚みは数μm、例えば3μm程度あればよい。
【0020】
<第一電極>
基板11の上に第一電極12を成膜し、必要に応じてパターニングを行なう。第一電極は第一隔壁131及び第二隔壁132によって区画された領域133にあり、各画素に対応した画素電極となる。また第一電極131と第二電極132の交点に点状スペーサー141を設けてある。
【0021】
第一電極12の材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも使用することができる。第一電極12を陽極とする場合にはITOなどの透明性と導電性を有しかつ仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。下方から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション構造の場合は透光性のある材料を選択する必要がある。必要に応じて、第一電極12の配線抵抗を低くするために、銅やアルミニウムなどの金属材料を補助電極として併設してもよい。
【0022】
第一電極12の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができる。第一電極12のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。基板としてTFTを形成した物を用いる場合は下層の画素に対応して導通を図ることができるように形成する。
【0023】
<隔壁>
本発明の隔壁13は画素に対応した発光領域133を区画するように形成する。基体が第一電極12を備えている場合は第一電極12の端部を覆うように形成するのが好ましい。隔壁13は第一隔壁131と第二隔壁132から構成され、特にアクティブマトリクス型有機EL素子の場合には、第一隔壁131と第二隔壁132は互いに直交するよう形成され、第一隔壁と第二隔壁により第一電極12は格子状に区画される(図2)。通常のディスプレイはRGB三原色で1画素を形成する場合ため、図2に示すように第一隔壁131の隣接間距離に対し、第二隔壁132の隣接間距離を3倍にする。図2の矢印A−Bは第一隔壁131と平行であり、RGB印刷色を順に塗り分ける場合には印刷は矢印A−Bの方向に行なわれる。有機機能性薄膜の印刷に用いる凸版上の凸部は第一隔壁131と平行な直線状に形成され、有機機能性薄膜の印刷は凸版印刷ラインが第一隔壁131と平行に配置され、第二隔壁132を乗り越えながら第一隔壁131及び第二隔壁132と接するように行なわれる。また、正孔輸送層などRGB共通の有機機能薄膜を形成する場合には、矢印A−Bと直交方向の第二隔壁と平行に凸版印刷ラインを配置され、第一隔壁を乗り上げながら行われる。第一隔壁131と第二隔壁132は同時に、同一方法により、同一形状で形成することができるが、第一隔壁と第二隔壁の幅や高さは適宜変えても良い。
【0024】
格子状の隔壁13の形成方法としては、従来と同様、基体上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、基体上に感光性樹脂を積層し、フォトリソ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成後にインクに対する撥液性を付与することもできる。
【0025】
隔壁13の好ましい高さは0.1μm〜10μmであるが、あまり高すぎると凸版印刷版19により画素領域133にインク20が転写されにくくなるため、5μm以下であることがこのましく、隣接画素で混色しないように1μm以上であることが好ましい。
【0026】
隔壁の好ましい幅は3μm〜50μm程度であるが、隔壁の幅が大きくなりすぎると画素開口率が低下してしまい、また隔壁の幅が小さすぎると、後述するスペーサー14の形成領域が限定され、印刷版と接触し印刷不良の原因となるので、10μm以上であることが好ましい(図3)。
【0027】
<隔壁上のスペーサー>
点状スペーサー14は隔壁13上に形成されるが、前述の通り、凸版印刷法による有機発光媒体層15の形成工程において、第一隔壁131に沿って形成される工程と第二隔壁132に沿って形成される工程があるため、点状スペーサー14は第一隔壁131と第二隔壁132の交点に形成しないと、点状スペーサー14と印刷版19が接触し印刷品質に支障が生じる。
【0028】
また、図1に示すとおり、第二陰極層16の形成工程において、点状スペーサー14上にも第二陰極層16’が形成されてしまう。このため、点状スペーサー14の断面形状を逆テーパー形状にすることにより、第二電極16と16’を膜切れできるため、点状スペーサー14と第二電極16’が封止基板17と接触しても第二電極16への電気的なダメージが無くなる。また、膜切れすることにより点状スペーサーの断面が第二電極16により被覆されないため、吸湿性能を維持できる。この点状スペーサーにより、大型基板となり封止基板17が撓んだとしても点状スペーサー14の部分で支持し、中空構造を維持できるため、封止基板17と有機EL素子10との接触を防止することができる。
【0029】
また、点状スペーサー14として、乾燥性の材料を用いることにより、中空部の水分除去や、接着層18から侵入した水分を除去することができ、長期にわたり、有機EL素子10の劣化を抑制することが可能である。材料および形成方法としては、乾燥剤を内包した樹脂を、フォトリソ法でパターニング形成したり、印刷法でパターニング形成したり、予め別の支持基材にパターニング形成したものを転写形成しても良い。樹脂として特に限定するものはないが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂など市販の光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、光感光性樹脂などを用いることができるが、断面形状として逆テーパー形状とするために、ネガ型の感光性樹脂を用いてフォトリソ形成することがより好ましい。
【0030】
また、乾燥剤としては、ゼオライトやシリカゲルといった物理吸着性の乾燥剤や酸化バリウム、酸化カルシウムといった化学吸着性の乾燥剤を適宜用いることができるが、第二電極16や封止基板17の積層工程前に、一度吸着した水分を加熱により脱離できる物理吸着性の乾燥剤を用いることがより好ましい。
【0031】
点状スペーサー14の大きさとしては、隔壁13の間隔と印刷版19の幅の制約を受け印刷版19と接触しない大きさであれば良く、適宜設計すれば良いが、封止基板17と接触することを考慮すると少なくともΦ10μm以上であると強度的に問題が生じない。
【0032】
また、点状スペーサー14の高さは、隔壁13との高さ合計が、中空構造と接着層18の高さであり水分の侵入量に影響が出るため、総高さが50μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0033】
<有機発光媒体層>
次に、本発明の有機機能性薄膜として有機発光媒体層15を形成する。本発明における有機発光媒体層15としては、有機発光材料を含む単層膜、あるいは多層膜で形成することができる。多層膜で形成する場合の構成例としては、正孔輸送層、電子輸送性発光層または正孔輸送性発光層、電子輸送層からなる2層構成や正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層からなる3層構成、さらには、必要に応じて正孔又は電子注入機能と正孔又は電子輸送機能を分けたり、正孔又は電子の輸送をプロックする層などを挿入することにより、さらに多層形成することがより好ましい。なお、本発明中の有機発光層とは有機発光材料を含む層を指し、電荷輸送層とは正孔輸送層等それ以外の発光効率を上げるために形成されている層を指す。
【0034】
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、銅フタロシアニンやその誘導体、1,1−ビス(4−ジーp−トリアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニルーN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニルー4,4’−ジアミンなどの芳香族アミンなどの低分子材料、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下、PEDOT)や、PEDOTとポリスチレンスルホン酸(以下、PSS)との混合物(PEDOT/PSS)などの高分子材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、CuO、Mn、NiO、AgO、MoO、ZnO、TiO、Ta、MoO、WO、MoOなどの無機材料化合物などが挙げられる。
【0035】
有機発光層に用いられる有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散または共重合した材料や、その他既存の高分子・低分子発光材料を用いることができる。
【0036】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。形成には真空蒸着等を用いることができる。
【0037】
有機発光媒体層15の膜厚は、単層または積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50〜150nmである。特に、有機EL素子の正孔輸送材料は、基体や第一電極の表面突起を覆う効果が大きく、50〜100nm程度厚い膜を成膜することがより好ましい。
【0038】
有機発光媒体層15の形成方法としては、正孔輸送層及び電子輸送層はその材料に応じて、真空蒸着法や、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、グラビア、マイクログラビア、凸版印刷、凹版オフセットやインクジェット法などを用いることができるが、有機発光材料層の形成方法は凸版印刷法が特に好ましく、本発明では有機発光媒体層15を構成する層のうち少なくとも1層を凸版印刷法によって形成する。凸版印刷法によって形成される層はカラー化に対応して色分けの必要があることから有機発光層が好ましい。この方法によれば各色発光材料の特性に対応して電荷輸送材料を変更する場合にも好ましく適応できる。有機発光媒体層を構成する層全てを本発明の印刷法で形成すれば製造工程を簡略化できる。
【0039】
有機発光媒体層15を構成する材料を溶液化する際には、形成方法に応じて、溶剤の蒸気圧、固形分比、粘度などを制御することが好ましい。溶剤としては、水、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの単独溶媒でも、混合溶媒でも良い。また、塗工性向上のために、必要に応じて界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適量混合することがより好ましい。塗布液の乾燥方法としては、発光特性に支障のない程度に溶剤を取り除ければ良く、加熱や減圧をしても良い。
【0040】
<凸版印刷法>
本発明で好ましく用いることができる印刷法である凸版印刷法について詳細に説明する。有機機能性薄膜の形成に用いることのできる凸版としては水現像タイプの樹脂凸版を用いることが好ましい。このような樹脂版を構成する水現像タイプの感光性樹脂としては、例えば親水性のポリマーと不飽和結合を含むモノマーいわゆる架橋性モノマー及び光重合開始剤を構成要素とするタイプが挙げられる。このタイプでは、親水性ポリマーとしてポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等が用いられる。また、架橋性モノマーとしては、例えばビニル結合を有するメタクリレート類が挙げられ、光重合開始剤としては例えば芳香族カルボニル化合物が挙げられる。中でも、印刷適性の面からポリアミド系の水現像タイプの感光性樹脂が好適である。
【0041】
有機機能性薄膜の形成に用いる印刷機は、被印刷基板として平板に印刷する方式の凸版印刷機であれば使用可能であるが、例えば、インクタンクとインクチャンバーとアニロックスロールと、樹脂凸版を取り付けした版胴を有している。インクタンクには、溶剤で希釈された有機機能性インクが収容されており、インクチャンバーにはインクタンクより有機機能性インクが送り込まれるようになっている。アニロックスロールは、インクチャンバーのインク供給部及び版胴に接して回転するようになっている。
【0042】
アニロックスロールの回転にともない、インクチャンバーから供給された有機機能性インクはアニロックスロール表面に均一に保持されたあと、版胴に取り付けされた樹脂凸版の凸部に均一な膜厚で転移する。さらに、被印刷基板は摺動可能な基板固定台(ステージ)上に固定され、版のパターンと基板のパターンの位置調整機構により、位置調整しながら印刷開始位置まで移動して、版胴の回転に合わせて樹脂凸版の凸部が基板に接しながらさらに移動し、基板の所定位置にパターニングしてインクを転移する。
【0043】
<第二電極>
次に、第二電極16を形成する。具体的にはMg,Al,Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li,LiF、NaF、Ba、BaO等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。
【0044】
第二電極16の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。第二電極の厚さに特に制限はないが、10nm〜1000nm程度が望ましい。また、第二電極を透光性電極層として利用する場合、CaやLiなどの金属材料を用いる場合の膜厚は、0.1〜10nm程度が望ましい。
【0045】
本発明では、乾燥剤を混入した点状スペーサー14を形成することにより、有機EL素子の劣化を抑制するため、第二電極16上にパッシベーション層を形成する必要はないが、高信頼性を確保するために、パッシベーション層を形成したとしても支障はない。PV膜の材料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、酸窒化珪素など公知のバリア膜を使用できる。また形成方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法を用いることができる。
【0046】
<封止体>
有機EL素子は大気中の水分や酸素によって、有機発光媒体層15や第二電極層16が容易に劣化してしまうため、大気から遮断するための封止体を設ける必要がある。図1では、封止体として平板の周辺部に接着層18を設けることにより、基板11と貼合せした例を図示している。
【0047】
封止基板17としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m/day以下であることが好ましい。
【0048】
接着層18の材料の一例としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させてもよく、接着層18の高さを制御するためのギャップ剤を混入しても良い。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL素子の大きさや形状により任意に決定されるが、5〜500μm程度が望ましい。
【0049】
次に、本発明の一実施例を具体的に説明するが、本発明はこれに限るものではない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
基板11としてはガラス基板を用い、この上に第一電極12としてITO電極を150nmスパッタ形成した後にフォトリソ・エッチング法にてパターニングした。
【0051】
次に、感光性ポリイミド樹脂をスリットコート法により2.0μmコーティング形成し、露光・現像工程により格子状隔壁13を形成した。
【0052】
次に、格子状隔壁13上に、点状スペーサー14としてネガ型感光性樹脂にゼオライトを10wt%混入した材料を用いて2.0μmの厚みでスリットコーティングした。露光現像工程により格子状隔壁13の交点部にパターン形成した。
【0053】
次に、格子状隔壁13により区画された領域133である開口部に対して、図2のA−B方向と直角方向である第二隔壁132に平行に配置した凸版印刷版19を用いて、インク状の高分子正孔輸送材料20を印刷形成し、乾燥して膜厚50nmの有機発光媒体層15を形成した。高分子正孔輸送材料としてはポリチオフェン誘導体(PEDOT)を用い、これを水に分散してインク状とした。
【0054】
次に、図2のA−B方向と平行方向である第一隔壁131に平行に配置した凸版印刷版19を用いて、インク状の高分子発光材料20をRGB3色印刷形成し、乾燥して膜厚80nmの有機発光媒体層15を形成した。発光材料からなる有機発光媒体は層15としてポリフルオレン誘導体を用いた。ここで、発光媒体層15の乾燥工程としては、材料の耐熱温度である150度の真空オーブンで乾燥することにより、同時に点状スペーサー14内のゼオライトの最終乾燥を行うことができる。
【0055】
次に、有機発光媒体層15上に、第二電極層16として蒸着法によりBaを5nm、Alを200nm積層し、最後に、封止基板17としてガラス基板、接着層18として光硬化型エポキシ樹脂を用いて封止した。
【0056】
以上の工程で完成した有機エレクトロルミネッセンス素子は、60℃90%高温高湿下で1000hr保管したが、ダークスポットやダークエリアといった水分起因の表示不良の発生はなく、輝度効率は初期比90%以上であった。さらには、ヒートサイクル試験(―30℃⇔80℃)を実施し、中空構造を有する封止基板17の伸縮試験を行ったが、点状スペーサーが全面に配置されているため、封止基板17が有機EL素子10に接触することなく、表示欠陥は観察されなかった。さらには、基板11と封止基板17の両面から、0.5kgの荷重を加えたが、点状スペーサーが全面に配置されているため、封止基板17が有機EL素子10に接触することなく、表示欠陥は観察されなかった。
【0057】
(比較例1)
比較例1では、実施例1における点状スペーサー14を形成せずに有機EL素子を作製した。
【0058】
その結果、60℃90%高温高湿下で1000hr保管すると、ダークスポットやダークエリアといった水分起因の表示不良が全面に発生し、また輝度効率は初期比5%未満となった。
【0059】
同じ製造方法で作製した別の有機エレクトロルミネッセンス素子をヒートサイクル試験(―30℃⇔80℃)した結果、封止基板17伸縮による有機EL素子10と接触し、ショートにより発光しなくなった。
【0060】
同様に、基板11と封止基板17の両面から0.5kgの荷重を加えた有機EL素子についても、封止基板17伸縮による有機EL素子10と接触し、ショートにより発光しなくなった。
【0061】
(比較例2)
比較例2では、実施例1における点状スペーサー14として、順テーパー形状のスペーサーを形成した。その結果、点状スペーサー14の表面を第二電極16が被覆してしまい、吸湿性能がなくなってしまい、60℃90%高温高湿下で1000hr保管すると、ダークスポットやダークエリアといった水分起因の表示不良が全面に発生し、また輝度効率は初期比5%未満となった。
【0062】
同じ製造方法で作製した別の有機エレクトロルミネッセンス素子をヒートサイクル試験(―30℃⇔80℃)した結果、封止基板17伸縮により点状スペーサー14上の第二電極16が接触し、有機EL素子10との直接接触はないものの、電流リークが生じ、輝度効率は半減してしまった。同様に、基板11と封止基板17の両面から0.5kgの荷重を加えた有機EL素子についても、封止基板17伸縮により点状スペーサー14上の第二電極16が接触し、有機EL素子10との直接接触はないものの、電流リークが生じ、輝度効率は半減してしまった。
【0063】
(比較例3)
比較例3では、実施例1におけるスペーサー14として、ゼオライトを混入せずに逆テーパー形状の隔壁を形成した。その結果、60℃90%高温高湿下で1000hr保管によりダークスポットやダークエリアといった水分起因の表示不良が発生し輝度効率は初期比5%未満であった。しかし、ヒートサイクル試験(―30℃⇔80℃)や、荷重試験(0.5kgの荷重)により、封止基板17が有機EL素子10に接触することなく、表示欠陥は観察されなかった。
【符号の説明】
【0064】
10 ・・・有機EL素子
11 ・・・基板
12 ・・・第一電極
13 ・・・隔壁
131・・・第一隔壁
132・・・第二隔壁
133・・・隔壁に区画された発光領域
14 ・・・スペーサー
15 ・・・有機発光媒体層
16 ・・・第二電極
16‘・・・第二電極
17 ・・・封止基板
18 ・・・接着層
19 ・・・凸版の印刷版
20 ・・・インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた格子状の第一隔壁及び第二隔壁と、前記第一隔壁及び第二隔壁により区画された領域内に形成された少なくとも第一電極、第二電極、及び少なくとも有機発光材料を含む有機発光媒体層と、前記格子状の第一隔壁及び第二隔壁の交点に点状スペーサーを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、点状スペーサーの断面形状が逆テーパー形状であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
隣接する第一隔壁間の距離が、隣接する第二隔壁間の距離の1/3である事を特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
第一隔壁よりも、第二隔壁の線幅が広い事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
点状スペーサーが、吸湿材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する基板と封止基板が周辺部で貼合されてなり、基板と封止基板の間が中空構造であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
点状スペーサーが封止基板に接していることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
基板上に第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の端部を覆うように格子状の第一隔壁及び第二隔壁を形成する工程と、
前記格子状の第一隔壁及び第二隔壁の交点に、点状スペーサーを形成する工程と、
第二隔壁に平行方向にライン状凸版を用いた印刷法により、少なくとも第一隔壁及び第二隔壁に区画された領域内の第一電極上に、有機発光媒体層を形成する工程と、
第一隔壁に平行方向にライン状凸版を用いた印刷法により、少なくとも第一隔壁及び第二隔壁に区画された領域内の第一電極上に、少なくとも1種類の有機発光媒体層を形成する工程と、
前記有機発光媒体層上に第二電極を形成する工程と、
からなる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
第一の有機発光媒体層と第二の有機発光媒体層の形成に用いるライン状凸版の幅は、それぞれの印刷方向に対して、第一隔壁及び第二隔壁に区画された領域の幅とほぼ同じ幅であり、点状スペーサーに接触しない幅の印刷版であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載した有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、少なくとも第二電極を形成する工程の前に、点状スペーサーをベーキングする工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204328(P2012−204328A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71059(P2011−71059)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】