説明

有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ

【課題】本発明は、透過性が高い有機EL素子用カラーフィルタ、および高輝度の有機EL表示装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上にパターン状に形成された着色層と、上記着色層間に形成された平坦化部とを有することを特徴とする有機EL素子用カラーフィルタを提供することにより、上記目的を達成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略すことがある。)素子は、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能であるため、画像表示装置への応用が期待され、盛んに研究が行われている。特に有機EL素子は、自己発色により視認性が高いこと、液晶ディスプレイとは異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れること、温度変化の影響が少ないこと、および、視野角が大きいこと等の利点を有することから、近年、画像表示装置における発光素子としての実用化が進んでいる。
【0003】
有機EL素子を用いてカラー表示が可能な有機EL表示装置とするには、カラーフィルタを用いることが知られている。一般に、カラーフィルタは、基板上にブラックマトリクスと、赤色、緑色および青色の着色層とが形成され、さらに着色層のパターンによる段差や着色層表面の凹凸を平坦化するために平坦化層が形成されたものである。
しかしながら、着色層のパターンによる段差が大きい場合には平坦化層を厚膜にする必要があり、また着色層上に平坦化層が形成されていると、透過率が低下するという問題があった。
【0004】
また、青色および緑色の着色層を形成した後に、赤色の着色層用組成物を塗布し、赤色の着色層を形成するとともに、青色および緑色の着色層間の隙間を赤色の着色層用組成物で充填し、次いで着色層表面を研磨することで平坦化する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法によれば、平坦化層を設ける必要がなく、また平坦化層を設けるとしても比較的薄いもので十分であるので、透過率の低下を防ぐことができる。しかしながら、青色および緑色の着色層間の隙間にも赤色の着色領域が設けられるため、混色が生じるおそれがある。
【0005】
【特許文献1】特開2005−173092公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、透過性が高い有機EL素子用カラーフィルタ、および高輝度の有機EL表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、基板と、上記基板上にパターン状に形成された着色層と、上記着色層間に形成された平坦化部とを有することを特徴とする有機EL素子用カラーフィルタを提供する。
【0008】
本発明によれば、着色層間に平坦化部を設けることによってパターン状の着色層による段差を埋めることができるので、従来のように着色層上に平坦化層を設ける必要がなく、透過性を高めることが可能である。したがって、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いることにより、高輝度でカラー表示特性に優れる有機EL表示装置とすることができる。また、着色層と平坦化部とにより表面が平坦化されているので、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた際には、電極間の短絡を防ぐことができる。
【0009】
上記発明においては、上記平坦化部が遮光性を有していてもよい。これにより、コントラストを向上させることができるからである。
【0010】
また本発明においては、上記着色層が超微粒子中に着色剤を分散させた膜であり、上記平坦化部が超微粒子で形成された膜であることが好ましい。超微粒子中に着色剤を分散させた膜では、超微粒子がバインダーとして機能するので、従来のようにバインダーとして樹脂を用いる必要がなく、低脱ガス性に優れる着色層とすることができる。同様に、超微粒子で形成された膜も、低脱ガス性に優れるものである。したがって、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた場合、ダークスポットの発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能となる。また、ダークスポットの発生を抑制することができるので、従来のように厚膜のバリア層を設ける必要がなく、低コスト化および歩留まり向上が図れる。さらに、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し焼成することにより着色層を形成し、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液を塗布し焼成することにより平坦化部を形成する場合には、超微粒子特有のサイズ効果により焼結温度を低くすることができ、着色層の耐熱温度以下での焼成が可能である。
【0011】
この場合、上記超微粒子の焼結温度が350℃以下であることが好ましい。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、上述したように着色層および平坦化部を形成する場合には、より低い温度で焼成できるからである。
【0012】
またこの場合、上記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることが好ましい。これらの超微粒子を用いることにより、透明性および絶縁性が高い着色層および平坦化部を形成できるからである。
さらに、上記超微粒子が、表面が酸化された状態である、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることも好ましい。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。
【0013】
また、上記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さすぎる超微粒子は製造が難しく、超微粒子の平均粒径が大きすぎると上記の超微粒子のサイズ効果による焼結温度の低下が期待できなくなるからである。
【0014】
さらに本発明は、基板と、上記基板上にパターン状に形成された着色層と、上記着色層間に形成された平坦化部とを有する有機EL素子用カラーフィルタの製造方法であって、基板上に着色層および平坦化部を形成した後に、上記着色層および平坦化部の表面を研磨する表面処理工程を有することを特徴とする有機EL素子用カラーフィルタの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、着色層および平坦化部の表面を研磨することによって、容易に表面の平坦化ができるとともに、着色層上に平坦化部が形成されている場合には、着色層上の平坦化部を除去することができるので、電極間の短絡が生じにくく、透過性が高い有機EL素子用カラーフィルタを得ることができる。
【0016】
本発明の有機EL素子用カラーフィルタの製造方法は、上記基板上に、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し、焼成して、パターン状の着色層を形成する着色層形成工程と、上記基板上に、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液を塗布し、焼成して、平坦化部を形成する平坦化部形成工程とを有することが好ましい。上記着色層形成工程では、着色層形成用塗工液にバインダーとして樹脂を用いていないので、低脱ガス性に優れる着色層を形成することができる。また、上記平坦化部形成工程では、同様に、低脱ガス性に優れる平坦化部を形成することができる。したがって、ダークスポットが発生しにくい有機EL素子用カラーフィルタを製造することができる。さらに、超微粒子特有のサイズ効果により、通常の焼結温度よりも低温で焼成することができるので、着色層の耐熱温度以下での焼成が可能である。
【0017】
この場合、上記溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましい。溶剤の沸点が比較的高ければ、超微粒子分散液塗布後の乾燥時にて溶剤が一気に蒸発するのを防ぐことができ、これにより超微粒子が凝集して着色層および平坦化部の平坦性が損なわれるのを回避することができるからである。
【0018】
また、上記着色層形成工程および上記平坦化部形成工程にて、上記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成してもよい。これにより、超微粒子の焼結を十分に進行させ、緻密な着色層および平坦化部を形成できるからである。
【0019】
さらに本発明は、上述した有機EL素子用カラーフィルタと、上記有機EL素子用カラーフィルタ上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とする有機EL表示装置を提供する。
【0020】
本発明の有機EL表示装置は、上述した有機EL素子用カラーフィルタを用いるので、高輝度でカラー表示特性に優れ、ダークスポット等の欠陥のない良好な画像表示が可能である。また、従来のように厚膜のバリア層を設ける必要がないため、安価な有機EL表示装置を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表面が平坦であり、透過性の高い有機EL素子用カラーフィルタを得ることができ、高輝度でカラー表示特性に優れる有機EL表示装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の有機EL素子用カラーフィルタおよびその製造方法、ならびに有機EL表示装置について詳細に説明する。
【0023】
A.有機EL素子用カラーフィルタ
まず、本発明の有機EL素子用カラーフィルタについて説明する。
本発明の有機EL素子用カラーフィルタは、基板と、上記基板上にパターン状に形成された着色層と、上記着色層間に形成された平坦化部とを有することを特徴とするものである。
【0024】
本発明の有機EL素子用カラーフィルタについて図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、有機EL素子用カラーフィルタ10は、基板1上にパターン状の着色層2が形成され、このパターン状の着色層2間に平坦化部3が形成されたものである。
本発明において、平坦化部が着色層間に形成されているとは、着色層上に平坦化部が存在しないことを意味する。また、着色層上に平坦化部が存在しないとは、着色層上の平坦化部の厚みが10nm以下であることを意味する。
【0025】
本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いた有機EL表示装置の例を図2に示す。図2に例示する有機EL表示装置20においては、有機EL素子用カラーフィルタ10の着色層2および平坦化部3の上に透明電極層21、有機EL層22、および背面電極層23が形成されている。また、有機EL層22間には絶縁層23が形成され、絶縁層23上には隔壁24が形成されている。
本発明の有機EL素子用カラーフィルタでは、着色層上に平坦化部が存在しないので、有機EL層からの発光は平坦化部を介することなく着色層を透過する。そのため、平坦化部に有機EL層からの発光が吸収されることによる透過率の低下を防ぐことができる。したがって、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いた有機EL表示装置では、輝度の高い高品質な画像表示が可能である。
また、着色層と平坦化部とによって表面が平坦化されているので、電極間の短絡を防止することが可能である。
以下、有機EL素子用カラーフィルタの各構成について説明する。
【0026】
1.平坦化部
本発明に用いられる平坦化部は、基板上にパターン状に形成された着色層間に形成され、パターン状の着色層による段差を埋める目的で設けられるものである。
【0027】
平坦化部の厚みは、着色層の厚みと同程度であることが好ましく、特に図1に例示するように平坦化部3の厚みd1と着色層2の厚みd2との差が500nm以下であることが好ましい。また、後述するように着色層上に色変換層が形成されている場合には、図3に例示するように平坦化部3の厚みd1と、着色層2の厚みd2および色変換層5の厚みd3を合わせた厚みとの差が、500nm以下であることが好ましい。これにより、パターン状の着色層や色変換層による段差を平坦化することができ、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた場合に電極間の短絡を防ぐことができるからである。
平坦化部の厚みとしては、着色層や色変換層の厚みによって適宜調整されるものであるが、着色層が形成されている場合には、例えば500nm〜5μmの範囲内で設定することができ、好ましくは1μm〜3μmの範囲内である。また着色層および色変換層が形成されている場合には、例えば1μm〜55μmの範囲内で設定することができ、好ましくは2μm〜13μmの範囲内である。
【0028】
また、平坦化部の形成位置としては、上記着色層が形成されていない領域であれば特に限定されるものではない。
【0029】
本発明に用いられる平坦化部は、透過性を有していてもよく、遮光性を有していてもよい。平坦化部が透過性を有する場合は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、輝度を高めることができる。また、平坦化部が遮光性を有する場合は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、コントラストを向上させることができる。以下、透過性を有する平坦化部および遮光性を有する平坦化部に分けて説明する。
【0030】
(1)透過性を有する平坦化部
透過性を有する平坦化部の形成材料としては、パターン状の着色層による段差を埋めることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば樹脂を挙げることができる。樹脂としては、可視光透過率が50%以上であることが好ましく、例えばポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。また、樹脂として感光性樹脂を用いることができ、例えばアクリレート系、メタクリレート系、ポリケイ皮酸ビニル系、環状ゴム系等の反応性ビニル基を有する電離放射線硬化性樹脂(電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂)が挙げられる。
【0031】
また、透過性を有する平坦化部は、超微粒子で形成された膜であってもよい。ここで、「超微粒子で形成された膜」とは、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液を塗布し焼成することにより得られる膜をいう。超微粒子で形成された膜は、有機材料を含まないので、高温に曝されても脱ガスが発生しない。そのため、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた場合には、ダークスポットの発生を防ぐことができ、良好な画像表示が可能となる。また、後述するように超微粒子の平均粒径は可視光領域の波長よりも小さいので、超微粒子による光散乱を抑制することができ、透過性の高い平坦化部とすることができる。
本発明においては、上述した利点を有することから、平坦化部が超微粒子で形成された膜であることが好ましい。
【0032】
本発明において、「超微粒子」とは、平均粒径が100nm以下の無機材料からなる微粒子であり、分散媒中で個々に独立して均一に分散する微粒子をいう。なお、このような超微粒子については、特開2002−121437公報や特開2005−81501公報等を参照することができる。
【0033】
本発明に用いられる超微粒子は、透明性を有するものであればよく、さらに絶縁性を有することが好ましい。一般に、平坦化部には絶縁性が要求されるからである。このような超微粒子としては、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物の超微粒子を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機酸化物および無機窒化物の混合系であってもよい。
【0034】
これらの中でも、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。これらの超微粒子を用いることにより、透明性および絶縁性の良好な平坦化部とすることができるからである。また、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液を塗布し焼成することにより平坦化部を形成する場合には、酸化インジウムの超微粒子を用いることにより、焼結温度をより低温にすることができるからである。さらに、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素の超微粒子を用いた場合には、基板等との密着性を高めることができるからである。
【0035】
また、上記超微粒子としては、表面が酸化された状態である金属の超微粒子を用いることもできる。具体的には、In、Al、Ti、Ta、Zn、Sn、Y、Ge、Pb、Zr、アルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)等の超微粒子が挙げられる。これらの中でも、In(インジウム)、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子が好ましく用いられる。インジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属は酸化性が高いため、比較的低い温度での焼成でも酸化が促進されるからである。表面が酸化された状態である金属の超微粒子は、絶縁性を有するので、平坦化部に用いることができる。
【0036】
上記超微粒子は、焼結温度が350℃以下であることが好ましい。焼結温度が上記範囲である超微粒子を用いることにより、平坦化部形成時の焼成温度をより低温にできる。また、超微粒子の焼結温度は低ければ低いほどよいが、通常は下限が180℃程度である。金属の中には融点が180℃未満であるものもあり、そのような金属を含む超微粒子の焼結温度は通常180℃未満となるが、融点が180℃未満である金属は、非常に酸化しやすく、焼結温度の上昇につながるため、焼結温度の下限は上記範囲とする。
ここで、焼結とは、超微粒子の集合体を高温に加熱した場合に、焼き固まって緻密な多結晶体となる現象をいう。超微粒子は、熱力学的に非平衡な状態にあり、表面積を減少する方向に物質移動が起こり、その結果、粒子と粒子の間に結合が生じて緻密化する。つまり、焼結の駆動力は、系の表面エネルギーを最小にしようとする力である。また、焼結温度とは、超微粒子の溶融点以下の温度で超微粒子の集合体を加熱したときに、超微粒子同士が緻密化して焼き固まる温度をいう。
また、上記焼結温度は、示差熱分析(DTA:differential thermal analysis)により測定することができる。DTAでは、試料と基準物質(一般的にはアルミナ)との温度差を測定して、転移温度を求めることができるものであり、試料および基準物質に熱を加えたときに生じる温度差(試料と基準物質との温度差で判断する)により、焼結温度を求めることができる。すなわち、試料および基準物質を同一雰囲気にて加熱した場合に、基準物質の温度が上昇しているのに対して、試料の温度が上昇していない場合には、超微粒子の焼結に熱が費やされており、吸熱現象が起きているということができる。したがって、吸熱現象が見られる温度、すなわちDTA曲線における吸熱開始温度を、本発明でいう焼結温度とする。
なお、上記焼結温度の測定には、リガク製のTG−DTA装置(TG 8120)を用いることとする。
【0037】
また、上記超微粒子は、融点がおおよそ700℃以下である金属を含むことが好ましい。金属単体としての融点が上記範囲のように比較的低ければ、超微粒子の焼結温度も比較的低くなると予想されるからである。このような金属としては、例えばAl(660℃)、In(156.4℃)、Mg(651℃)、Sn(231.85℃)、Zn(419.43℃)、Pb(327.5℃)、Na(97.5℃)、Li(186℃)、K(62.3℃)等が挙げられる。なお、括弧内の数字は融点である。
【0038】
さらに、超微粒子の平均粒径としては、焼結温度を低下させることができればよく、具体的には0.5nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm〜50nm、さらに好ましくは1nm〜10nmの範囲内である。平均粒径が小さすぎるものは製造が難しく、一方、平均粒径が大きすぎると、超微粒子特有のサイズ効果による焼結温度の低下が期待できなくなるからである。
ここで、超微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真(高倍率)により確認することができる。
【0039】
超微粒子の作製方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法、湿式還元法、有機金属化合物の高温雰囲気へのスプレーによる熱還元法等が用いられる。
【0040】
樹脂を用いた平坦化部の形成方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、バーコート法、キャスト法、インクジェット法等が挙げられる。
【0041】
また、平坦化部として超微粒子で形成された膜を形成する場合には、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液を塗布し焼成することによって平坦化部を形成することが好ましい。すなわち、平坦化部は、超微粒子で形成された塗膜であることが好ましい。このような方法で平坦化部を形成することにより、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を通常の焼結温度と比較して低くすることができ、一般的な着色層の耐熱温度以下での焼成が可能となる。そのため、着色層に用いられる着色剤の選択肢が広がり、例えば良好な色特性を得るために最適な着色剤を選ぶこともできる。なお、このような平坦化部の形成方法については、後述する「B.有機EL素子用カラーフィルタの製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0042】
(2)遮光性を有する平坦化部
遮光性を有する平坦化部としては、図4に例示するように遮光部3aであってもよく、図5に例示するように遮光部3aと透過部3bとが積層されたものであってもよい。
【0043】
遮光部の形成材料としては、例えば黒色着色剤を含有する樹脂組成物や、クロム、酸化クロム、窒化クロム等の金属材料などが挙げられる。
また、遮光部は、超微粒子中に黒色着色剤を分散させた膜であってもよい。超微粒子中に黒色着色剤を分散させた膜は、有機材料をほとんど含まないので、高温に曝されても脱ガスが発生しにくく、ダークスポットの発生を防ぐことができる。なお、本発明において、超微粒子に黒色着色剤を分散させた膜は、超微粒子で形成された膜に含まれるものとする。
これらの中でも、金属材料を用いた遮光部や、超微粒子中に黒色着色剤を分散させた膜である遮光部は、低脱ガス性に優れるという利点を有する。一方、黒色着色剤を含有する樹脂組成物を用いた遮光部は、十分な熱処理を行うことができ、遮光部形成時に脱ガス成分を除去することができる。特に、低脱ガス性およびコントラスト向上の観点からは、遮光部が超微粒子中に黒色着色剤を分散させた膜であることが好ましい。
【0044】
本発明に用いられる黒色着色剤としては、顔料を用いることができ、有機顔料であっても無機顔料であってもよい。ここで、有機顔料を用いた場合でも、遮光部に含まれる黒色着色剤の量は、超微粒子の含有量に比べて非常に少ないため、有機顔料からの脱ガス成分は微量であり、ダークスポットの大きな原因にはならないと考えられる。
【0045】
上記黒色着色剤としては、例えばチタン窒化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物等のチタン系顔料や、カーボンブラック等を挙げることができる。中でも、体積抵抗率が高いことから、チタン系顔料が好ましく用いられる。
上記黒色着色剤の含有量は、遮光部中に5〜50重量%程度とすることができる。黒色着色剤の含有量が上記範囲より少ないと遮光性が低下し、また黒色着色剤の含有量が上記範囲より多いと黒色着色剤の分散性が悪くなる場合があるからである。
【0046】
また、上記黒色着色剤として、青色着色料、赤色着色料、および黄色着色料からなる群から選択される少なくとも2種類を混合して用いることもできる。この青色着色料、赤色着色料、および黄色着色料としては、有機顔料または無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、分光特性および絶縁性の点から、カラーインデックス(C.I.:The Society of Dyers and Colorists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものが好ましく用いられる。
赤色着色料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド254等のレッド系ピグメントが挙げられる。
黄色着色料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメントが挙げられる。
青色着色料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー21、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー64等のブルー系ピグメントを挙げることができる。
また、無機顔料の具体例としては、赤色着色料として、赤色酸化鉄(III)、カドミウム赤等、黄色着色料として、黄色鉛、亜鉛黄等、青色着色料として、群青、紺青等を挙げることができる。
上記赤色着色料、黄色着色料、および青色着色料の合計含有量は、有機顔料であるか無機顔料であるかによって異なるが、遮光部中に5〜50重量%程度とすることができる。これらの着色料の含有量が上記範囲より少ないと遮光性が低下する場合があるからである。また、含有量が上記範囲より多いと、遮光部形成時のコーティング特性が劣化したり、上記着色料の分散性の低下により部分的に遮光性の差異が発生したり、さらには平坦性が悪くなったりする可能性があるからである。
【0047】
なお、超微粒子については、上記透過性を有する平坦化部の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
遮光部の形成方法としては、黒色着色剤を含有する樹脂組成物を用いた場合には、例えばフォトリソグラフィー法等を挙げることができる。金属材料を用いた場合には、例えばスパッタリング法や真空蒸着法等により薄膜を形成し、フォトリソグラフィー法を利用してパターン状に形成する方法が挙げられる。また、無電界メッキ法や印刷法等を用いることもできる。
また、遮光部として超微粒子中に黒色着色剤を分散させた膜を形成する場合には、超微粒子および黒色着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる遮光部形成用塗工液を塗布し焼成することによって遮光部を形成することが好ましい。すなわち、遮光部は、超微粒子中に黒色着色剤を分散させた塗膜であることが好ましい。このような方法で遮光部を形成することにより、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を着色層の耐熱温度以下まで低くすることができる。なお、このような遮光部の形成方法については、後述する「B.有機EL素子用カラーフィルタの製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0049】
遮光性を有する平坦化部が遮光部と透過部とが積層されたものである場合、透過部については、上記透過性を有する平坦化部と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0050】
2.着色層
本発明に用いられる着色層は、基板上にパターン状に形成され、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、有機EL表示装置の発光層から発せられた光の色調を変化させる層である。図1に例示するように、一般に着色層2は赤色着色パターン2R、緑色着色パターン2Gおよび青色着色パターン2Bから構成される。着色層が形成されることにより、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた場合、高純度な発色とすることができ、色再現性の高いものとすることができる。
【0051】
着色層の形成材料としては、一般的にカラーフィルタに用いることが可能な顔料やバインダー樹脂を用いることができる。
赤色着色パターンに用いられる顔料としては、例えばペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色パターンに用いられる顔料としては、例えばハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色パターンに用いられる顔料としては、例えば銅フタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等を挙げることができる。これらの顔料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記着色剤は、各着色パターン中にそれぞれ通常5〜50重量%の範囲内で含有される。
【0052】
また、着色層に用いられるバインダー樹脂としては、可視光透過率が50%以上の樹脂であることが好ましい。なお、樹脂については、上記平坦化部の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0053】
本発明においては、着色層が超微粒子中に着色剤を分散させた膜であってもよい。超微粒子中に着色剤を分散させた膜は、有機材料をほとんど含有しないので、高温に曝されても脱ガスが発生しにくく、ダークスポットの発生を防ぐことができる。また、超微粒子の平均粒径は可視光領域の波長よりも小さいので、超微粒子による光散乱を抑制することができ、高い透明性を有し、色特性に優れる着色層とすることができる。さらに、着色層の厚みが比較的薄い場合には、着色剤の凝集によって濃度消光が起こりやすくなるが、超微粒子中に着色剤を分散させた膜では、超微粒子の分散性が良く、膜中では超微粒子により着色剤を凝集させることなく分散させることができるので、色特性を低下させることなく、着色層の厚みを薄くすることができる。
さらに、着色層が超微粒子中に着色剤を分散させた膜であり、上記平坦化部が超微粒子で形成された膜である場合は、ダークスポットの発生を抑制することができるので、従来のような厚膜のバリア層を設ける必要がなく、低コスト化および歩留まり向上が図れる。
本発明においては、上述した利点を有することから、着色層が超微粒子中に着色剤を分散させた膜であることが好ましい。
【0054】
この場合に用いられる着色剤としては、顔料を挙げることができ、有機顔料であっても無機顔料であってもよい。ここで、有機顔料を用いた場合でも、着色層に含まれる着色剤の量は、超微粒子の含有量に比べて少ないため、ダークスポットの大きな原因にはならないと考えられる。着色剤としては、上述したものを用いることができる。
また、着色剤の含有量は、有機顔料であるか無機顔料であるかによって異なるが、通常、各着色パターン中にそれぞれ通常5〜50重量%の範囲内とされる。着色剤の含有量が上記範囲より少ないと、十分な色補正を行うことができない場合があるからである。また、着色剤の含有量が上記範囲より多いと、着色剤の分散性が悪くなり、着色層形成時のコーティング特性が劣化したり、上記着色剤の分散性の低下により部分的に濃度の差異が発生したり、さらには平坦性が悪くなったりする可能性があるからである。
【0055】
なお、超微粒子については、上記平坦化部の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0056】
着色層の厚みとしては、光の色補正ができる厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には500nm〜5μmの範囲内で設定することができ、好ましくは1μm〜3μmの範囲内である。着色層の厚みが厚すぎると、透過性が低下したり、また基板等からの剥離が生じたりする可能性があるからである。さらに着色層の厚みが厚すぎると、パターン状の着色層による段差が大きくなり、平坦化部による平坦化が困難となるおそれがあるからである。一方、着色層の厚みが薄すぎると、十分な色補正を行うことができない可能性があるからである。
【0057】
顔料やバインダー樹脂を用いた着色層の形成方法としては、一般的なカラーフィルタの形成方法、例えばフォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法等を用いることができる。
また、超微粒子中に着色剤を分散させた膜である着色層を形成する場合には、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し焼成することによって着色層を形成することが好ましい。すなわち、着色層は、超微粒子中に着色剤を分散させた塗膜であることが好ましい。このような方法で着色層を形成することにより、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を着色層の耐熱温度以下まで低くすることができる。したがって、着色層に用いられる着色剤の選択肢が狭められることなく、低脱ガス性に優れる着色層を得ることができる。なお、このような着色層の形成方法については、後述する「B.有機EL素子用カラーフィルタの製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0058】
3.色変換層
本発明においては、例えば図3に示すように、着色層2上に色変換層5が形成されていてもよい。色変換層は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に、発光層から発せられる光を吸収し、可視光領域蛍光を発する層であり、発光層からの光を赤色、緑色、または青色とすることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0059】
色変換層は、例えば図3に示すように赤、緑、青の3色の蛍光をそれぞれ発光する色変換パターン5R,5G,5Bから構成されていてもよい。また青色発光層を用いた場合には、青色発光を赤色に変換する赤色変換パターンと、青色発光を緑色に変換する緑色変換パターンとが形成されていればよい。この場合、青色変換パターンの代わりに透明パターンが形成されていてもよく、青色変換パターンが形成されていなくてもよい。さらに白色発光層を用いた場合であって、白色発光が主に赤色および青色の光から構成される場合には、赤色および青色に比べて緑色の輝度が小さくなることから、青色発光を緑色に変換する緑色変換パターンが形成されていればよい。この場合、赤色変換パターンおよび青色変換パターンの代わりに透明パターンが形成されていてもよく、赤色変換パターンおよび青色変換パターンが形成されていなくてもよく、赤色の輝度を高めるために青色発光を赤色に変換する赤色変換パターンが形成されていてもよい。
【0060】
上記色変換層としては、発光層からの光を吸収し、蛍光を発光する蛍光材料とバインダー樹脂とを含有するものが挙げられる。
【0061】
本発明に用いられる蛍光材料としては、例えば蛍光色素、蛍光顔料、蛍光染料等を用いることができる。また蛍光材料は、有機蛍光材料であってもよく無機蛍光材料であってもよいが、蛍光の色が鮮明であることから有機蛍光材料を用いることが好ましい。
蛍光色素は、近紫外領域または可視領域の光を吸収して、異なる波長の可視光を蛍光として発光するものである。この蛍光色素は、目的とする色変換層に応じて適宜選択される。
例えば有機EL表示装置における発光層として青色発光層が用いられる場合には、青色または青緑色領域の光を吸収して赤色領域の蛍光を発する蛍光色素が用いられる。また、青色または青緑色領域の光を吸収して緑色領域の蛍光を発する蛍光色素も用いられる。
また例えば有機EL表示装置における発光層として白色発光層が用いられる場合には、通常、白色発光が青色領域および赤色領域の光で構成されることから、青色または青緑色領域の光を吸収して緑色領域の蛍光を発する蛍光色素が用いられる。
発光層から発する青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジニウム パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
また、発光層から発する青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えば3−(2´−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2´−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2´−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
さらに、蛍光色素を、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、蛍光顔料としてもよい。また、これらの蛍光色素や蛍光顔料は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記蛍光材料は、その色変換パターンの重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の範囲で含有される。蛍光色素の含有量が少なすぎると十分な波長変換を行うことができず、また蛍光色素の含有量が多すぎると、濃度消光等の効果により色変換効率が低下する可能性があるからである。
【0063】
また、色変換層に用いられるバインダー樹脂としては、可視光透過率が50%以上の樹脂であることが好ましい。なお、樹脂については、上記平坦化部の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
本発明においては、色変換層が超微粒子中に蛍光材料を分散させた膜であってもよい。超微粒子中に蛍光材料を分散させた膜は、有機材料をほとんど含まないので、高温に曝されても脱ガスが発生しにくく、ダークスポットの発生を防ぐことができる。また、超微粒子の平均粒径は可視光領域の波長よりも小さいので、超微粒子による光散乱を抑制することができ、高い透明性を有し、色特性に優れる色変換層とすることができる。低脱ガス性の観点からは、色変換層が超微粒子中に蛍光材料を分散させた膜であることが好ましい。
【0065】
この場合に用いられる蛍光材料としては、例えば蛍光色素、蛍光顔料、蛍光染料等を用いることができる。また蛍光材料は、有機蛍光材料であってもよく無機蛍光材料であってもよいが、蛍光の色が鮮明であることから有機蛍光材料を用いることが好ましい。ここで、蛍光材料が有機物であっても、色変換層に含まれる蛍光材料の量は、超微粒子の含有量に比べて非常に少ないため、有機蛍光材料からの脱ガス成分は微量であり、ダークスポットの大きな原因にはならないと考えられる。蛍光材料としては、上述したものを用いることができる。
また、蛍光材料の含有量は、各色変換パターンの重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲内とされる。蛍光材料の含有量が少なすぎると十分な波長変換を行うことができず、また蛍光材料の含有量が多すぎると、濃度消光等により色変換効率が低下する可能性があるからである。色変換層が超微粒子中に蛍光材料を分散させた膜である場合は、超微粒子によって蛍光材料の分散性を向上させることができるので、濃度消光が起こりにくく、上記の蛍光材料とバインダー樹脂とを含有する色変換層に比べて蛍光材料の含有量を多くすることが可能である。
【0066】
色変換層の厚みとしては、波長変換を行うことができる厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には500nm〜50μmの範囲内で設定することができ、好ましくは1μm〜10μmの範囲内である。色変換層の厚みが厚すぎると、透過性が低下したり、また基板等からの剥離が生じたりする可能性があるからである。さらに色変換層の厚みが厚すぎると、パターン状の色変換層による段差が大きくなり、平坦化部による平坦化が困難となるおそれがあるからである。色変換層が超微粒子中に蛍光材料を分散させた膜である場合は、上述したように蛍光材料の含有量を比較的多くすることができるので、色変化層を比較的薄く形成しても十分に波長変換を行うことが可能である。一方、色変換層の厚みが上記範囲より薄いと、十分な波長変換を行うことができない可能性がある。
【0067】
蛍光材料およびバインダー樹脂を含有する色変換層の形成方法としては、一般的なカラーフィルタの形成方法、例えばフォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法等を用いることができる。
また、超微粒子中に蛍光材料を分散させた膜である色変換層を形成する場合には、超微粒子および蛍光材料が溶剤に分散もしくは溶解された超微粒子分散液からなる色変換層形成用塗工液を塗布し焼成することによって色変換層を形成することが好ましい。すなわち、色変換層は、超微粒子中に蛍光材料が分散された塗膜であることが好ましい。このような方法で色変換層を形成することにより、超微粒子特有のサイズ効果によって焼結温度を着色層や色変換層の耐熱温度以下まで低くすることができる。したがって、着色層に用いられる着色剤や色変換層に用いられる蛍光材料の選択肢が狭められることなく、低脱ガス性に優れる色変換層を得ることができる。
【0068】
さらに、各色変換パターンの代わりに透過パターンが形成されている場合、この透過パターンは、上述した樹脂からなるものであってもよく、超微粒子で形成された膜であってもよい。超微粒子で形成された膜である透過パターンは、低脱ガス性に優れるという利点を有する。なお、超微粒子で形成された膜については、上記平坦化部の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
4.バリア層
本発明においては、例えば図3に示すように着色層2や色変換層5の上にバリア層6が形成されていてもよい。これにより、有機EL素子用カラーフィルタのバリア性を高めることができる。特に、上述した平坦化部、着色層、および色変換層が、超微粒子を用いたものではなく、脱ガス性が低くないものである場合には、バリア層を形成することが好ましい。
【0070】
本発明に用いられるバリア層の形成材料としては、一般的に有機EL表示装置におけるバリア層として用いられる材料であればよく、例えば無機酸化物、無機窒化物、および無機酸化窒化物を挙げることができる。具体的に、無機酸化物としては、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリム、酸化リチウム、酸化カリウム等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等が挙げられる。また、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。これらの材料は、基板や第2無機絶縁層等との密着性が良好であるからである。
【0071】
上記バリア層は、単一層であってもよく、バリア性を向上させるために複数積層してもよい。また、積層する場合の組み合わせとしては、同種、異種を問わない。
【0072】
本発明の有機EL素子用カラーフィルタを有機EL表示装置に用いた場合には、基板側から光が取り出されるため、バリア層は透過性を有することが好ましい。具体的には、バリア層の可視光領域における透過率が60%以上であることが好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。
なお、上記透過率は、波長380nm〜800nmの範囲内において、島津製作所(株)社製 UV−3100を用いて測定した値の平均値である。
【0073】
このようなバリア層の厚みは、水蒸気や酸素、および着色層等から発生するガスに対してバリア性を有し、上述した透過性を満たすような厚みであれば特に限定されるものではなく、上述した材料により適宜選択される。通常は5nm〜5000nmの範囲内であり、好ましくは5nm〜500nmの範囲内である。また、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を用いた場合は、10nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。バリア層の厚みが薄すぎると、所望のバリア性を得ることが困難となるからである。一方、バリア層の厚みが厚すぎると、バリア層形成時にクラック等が生じる可能性があり、また透過率が低下する場合があるからである。
【0074】
バリア層の形成方法としては、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法(物理的蒸着法)、CVD法(化学的蒸着法)、ディップ法などを挙げることができる。
【0075】
5.基板
本発明に用いられる基板は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタを用いて有機EL表示装置とした際に基板側から光を取り出すため、透明であることが好ましい。また、基板は、耐溶媒性、耐熱性を有し、寸法安定性に優れているものであることが好ましい。これにより、基板上に着色層等を形成する際にも安定なものとすることができるからである。
【0076】
透明な基板としては、例えばガラス基板や、有機材料で形成されたフィルム状やシート状のもの等を用いることができる。
【0077】
ガラス基板は、可視光に対して透過性の高いものであれば特に限定されるものではなく、例えば未加工のガラス基板であってもよく、また加工されたガラス基板等であってもよい。またガラス基板としては、アルカリガラスおよび無アルカリガラスのどちらも使用可能であるが、不純物が問題とされる場合には、例えばパイレックス(登録商標)ガラス等の無アルカリガラスを用いることが好ましい。加工されたガラス基板の種類は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタの用途に応じて適宜選択されるものであり、例えば透明なガラス基板に塗布加工をしたものや、段差加工を施したもの等が挙げられる。
【0078】
上記ガラス基板の厚みは、20μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。中でも、フレキシブルな基板として使用する場合には20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、リジッドな基板として使用する場合には200μm〜2mmの範囲内であることが好ましい。
【0079】
また、透明な基板に用いられる有機材料としては、例えばポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、UV硬化型メタクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
さらに、透明な基板としては、上述した有機材料と、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂等と2種以上併せて用いることができる。
【0080】
上記のような有機材料を用いて透明な基板とする場合には、基板の厚みは、10μm〜500μmの範囲内、中でも50〜400μmの範囲内、特に100〜300μmの範囲内であることが好ましい。基板の厚みが厚すぎると、耐衝撃性に劣ったり、巻き取り時に巻き取りが困難となったりするからである。また、基板の厚みが薄すぎると、機械適性が悪い場合があるからである。
【0081】
また、本発明においては、基板を洗浄して用いることが好ましく、その洗浄方法としては、酸素、オゾン等による紫外光照射処理や、プラズマ処理、アルゴンスパッタ処理等を行うことが好ましい。これにより、水分や酸素の吸着のない状態とすることができ、ダークスポットの低減や有機EL素子の長寿命化を図ることが可能となるからである。
【0082】
B.有機EL素子用カラーフィルタの製造方法
次に、本発明の有機EL素子用カラーフィルタの製造方法について説明する。
本発明の有機EL素子用カラーフィルタの製造方法は、基板と、上記基板上にパターン状に形成された着色層と、上記着色層間に形成された平坦化部とを有する有機EL素子用カラーフィルタの製造方法であって、基板上に着色層および平坦化部を形成した後に、上記着色層および平坦化部の表面を研磨する表面処理工程を有することを特徴とするものである。
【0083】
図6は、本発明の有機EL素子用カラーフィルタの製造方法の一例を示す図である。本発明においては、まず基板1上に着色層2をパターン状に形成し、このパターン状の着色層2による段差を埋めるように平坦化部3を形成する(図6(a))。図6(a)においては、先に形成された着色層2による段差を十分に埋めるように、着色層2上にも平坦化部3を形成している。次いで、着色層2および平坦化部3の表面をサンドペーパー11で研磨する(図6(b)、表面処理工程)。この際、破線Lの部分まで、すなわち着色層2上に形成された平坦化部3がすべて除去されるまで研磨を行う。これにより、着色層2表面が露出し、着色層2上に平坦化部3が存在しない有機EL素子用カラーフィルタを得ることができる(図6(c))。
【0084】
本発明によれば、着色層上に平坦化部が形成されている場合であっても、着色層および平坦化部の表面を研磨することによって、着色層上の平坦化部を除去し、着色層を露出させることができるので、透過性が高い有機EL素子用カラーフィルタを得ることができる。特に、平坦化部が遮光性を有する場合には、透過性を効果的に向上させることができる。また、着色層および平坦化部の表面に段差がある場合であっても、着色層および平坦化部の表面を研磨することによって、容易に表面の平坦化ができる。このため、本発明により得られる有機EL素子用カラーフィルタを用いた有機EL表示装置では、電極間の短絡を防ぐことが可能である。
【0085】
本発明の有機EL素子用カラーフィルタの製造方法は、基板上にパターン状の着色層を形成する着色層形成工程と、基板上の所定の位置に平坦化部を形成する平坦化部形成工程と、上記表面処理工程とを有するものである。以下、各工程について説明する。
【0086】
1.着色層形成工程
本発明における着色層形成工程は、基板上にパターン状の着色層を形成する工程である。なお、着色層の形成方法については、上記「A.有機EL素子用カラーフィルタ」の着色層の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0087】
本発明においては、着色層形成工程が、基板上に、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し、焼成して、パターン状の着色層を形成する工程であることが好ましい。
超微粒子分散液は、超微粒子が個々に独立して均一に分散したものであり、超微粒子の凝集が発生していない。このため、超微粒子が着色剤を分散させる分散媒として機能するので、着色剤の分散性も良好である。また、超微粒子がバインダーのような役割を果たすので、バインダーとして樹脂を用いる必要がなく、低脱ガス性に優れる着色層を得ることができる。これにより、ダークスポットが発生しにくい有機EL素子用基板を得ることができる。
さらに、超微粒子特有のサイズ効果により、超微粒子が一般的な焼結温度よりもはるかに低温で緻密に焼結するため、着色層の耐熱温度以下での焼成が可能である。したがって、着色層に用いられる着色剤の選択肢が広がるという利点を有する。
また、本発明における超微粒子の平均粒径は可視光領域の波長よりも小さいので、超微粒子による光散乱を抑制することができ、高い透明性を有し、色特性に優れる着色層を形成することができる。
【0088】
本発明に用いられる超微粒子分散液は、上述したように、超微粒子が個々に独立して均一に分散したものであり、超微粒子および着色剤を溶剤に分散させることにより調製される。この際、例えばガス中蒸発法により超微粒子を作製し、得られた超微粒子が溶剤に分散された分散液に、後から着色剤を添加してもよく、またガス中蒸発法により超微粒子を作製する際に、着色剤と溶剤とを含有する溶液を用いて、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された分散液を得てもよい。
【0089】
なお、超微粒子については、上記「A.有機EL素子用カラーフィルタ」の平坦化部の項に記載したものと同様であり、着色剤については、上記「A.有機EL素子用カラーフィルタ」の着色層の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、超微粒子分散液に用いられる超微粒子の平均粒径は、レーザー法により測定した値とする。平均粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。なお、上記平均粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0090】
超微粒子の作製方法としては、特に限定されるものではなく、例えばガス中蒸発法、湿式還元法、有機金属化合物の高温雰囲気へのスプレーによる熱還元法等が用いられる。
ガス中蒸発法では、ガス雰囲気中でかつ溶剤の蒸気の共存する気相中で金属等を蒸発させ、必要に応じて蒸発した金属等を反応ガス(酸素、窒素等)と接触させて、これらを均一な超微粒子に凝縮させて溶媒中に分散し、分散液を得る方法である。このガス中蒸発法では、粒度の揃った超微粒子を得ることができる。ガス中蒸発法により得られた超微粒子を原料として、超微粒子分散液を調製するには、超微粒子分散液に使用する溶剤で置換を行えばよい。また、超微粒子の分散安定性を増すために、分散剤を添加してもよい。これにより、超微粒子が個々に独立して均一に分散され、かつ、流動性のある状態が保持されるようになる。なお、ガス中蒸発法については、特許2561537号公報、特開2002−121437公報、特開2005−183054公報等を参照することができる。
【0091】
また、超微粒子分散液に用いられる溶剤としては、使用する超微粒子によって適宜選択されるものであり、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル等のエステル類;メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、トリメチルペンタン等の長鎖アルカン;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状アルカン;などを挙げることができる。さらに、水を用いることもできる。
これらは、単独で用いても、混合溶剤として用いてもよい。例えば、長鎖アルカンの混合物であるミネラルスピリットであってもよい。
【0092】
さらに、上記溶剤は、後述する超微粒子分散液を塗布した後に行われる乾燥および焼成の際に蒸発するものであることが好ましい。特に、溶剤の沸点が120℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上、最も好ましくは190℃以上である。溶剤の沸点が上記範囲より低いと、例えば乾燥時に一気に蒸発しやすくなるので、超微粒子が凝集しやすくなり、均一な膜が得られない場合があるからである。一方、溶剤の沸点の上限は、焼成温度の上限から350℃程度とされる。
このような溶剤としては、上記の中でも、テルピネオール、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ドデシルベンゼン、ミネラルスピリットなどが好ましく用いられる。
【0093】
上記溶剤の使用量は、使用する超微粒子に応じて、塗布しやすく、かつ所望の膜厚を得ることができるように適宜選択すればよい。具体的には、超微粒子分散液中の超微粒子の濃度が、1〜50wt%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40wt%の範囲内である。超微粒子の濃度が上記範囲未満であると、所望の膜厚が得られない可能性があるからである。一方、超微粒子の濃度が上記範囲を超えると、超微粒子分散液の粘度が高くなり流動性が低下するので、着色層の平坦性が損なわれる可能性があるからである。
【0094】
また、超微粒子分散液の粘度としては、20℃において100cP以下であることが好ましく、中でも10cP以下であることが好ましい。粘度が上記範囲であれば、平坦な膜を形成できるからである。
【0095】
着色層形成用塗工液の塗布方法としては、均一な厚みに塗布できる方法であればよく、例えばスピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0096】
また、着色層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成した後は、塗膜を乾燥させて、溶剤を除去してもよい。乾燥温度としては、溶剤の種類に応じて適宜選択されるが、通常は80℃〜150℃程度である。
【0097】
上記塗膜の焼成温度は、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、150℃〜350℃程度であることが好ましく、より好ましくは150℃〜250℃の範囲内であり、さらに好ましくは150℃〜220℃の範囲内である。焼成温度が低すぎると超微粒子が十分に焼結しない可能性があり、また、焼成温度が高すぎると基板や着色層等に熱的ダメージを与えるおそれがあるからである。超微粒子を構成する無機酸化物等を単体で焼結するのに必要な温度は一般に400〜700℃程度であるが、本発明においては超微粒子のサイズ効果により、150℃〜350℃という極めて低い温度で焼結する。
また、焼成時間についても、使用する超微粒子の種類等によって適宜選択されるものであるが、通常は10分〜1時間程度であり、好ましくは15分〜30分である。
【0098】
焼成する際の雰囲気は、超微粒子の種類により適宜選択される。本工程においては、酸化性雰囲気中で焼成してもよく、また超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成してもよい。すなわち、一段階プロセスで焼成してもよく、二段階プロセスにより焼成してもよい。二段階プロセスによる焼成では、超微粒子の表面だけがさらに酸化されて、焼結が不十分となるのを回避できるからである。また、二段階で焼成するので、低温焼成でさらに緻密な着色層を形成することができるからである。
【0099】
超微粒子が酸化しない雰囲気としては、例えば真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気等が挙げられる。
不活性ガス雰囲気としては、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不雰囲気が挙げられる。
還元性雰囲気としては、例えば水素、一酸化炭素、低級アルコール等の雰囲気が挙げられる。低級アルコールとしては、炭素数が1〜6の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
また、真空雰囲気が、例えば希ガス、二酸化炭素、窒素等の不活性ガス;酸素、水蒸気等の酸化性ガス;水素、一酸化炭素、低級アルコール等の還元性ガス;または上記不活性ガスと酸化性ガスもしくは還元性ガスとの混合ガス;を含んでいてもよい。真空雰囲気の場合に酸化性ガスを導入すると、超微粒子は酸化せずに、超微粒子に付着している有機化合物(溶剤や分散剤)だけを燃焼させる効果がある。真空状態は、単にポンプで引いただけでもよく、また一旦ポンプ引きした後、不活性ガス、還元性ガス、酸化性ガスを導入してもよい。真空雰囲気中での焼成は、通常、10−5〜10Pa程度で行うことができる。
【0100】
酸化性雰囲気は、酸素、水蒸気、酸素含有ガス(例えば空気等)、水蒸気含有ガスなどを含んでいてもよい。
【0101】
また、超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成した後、酸化性雰囲気中で焼成する前に、塗膜を乾燥させてもよい。これにより、溶剤や分散剤を除去することができるからである。溶剤や分散剤の除去は、焼成時に行ってもよい。
さらに、酸化性雰囲気中での焼成後、還元性雰囲気中で焼成してもよい。
また、焼成時に紫外線照射を行ってもよい。時間短縮・低温化の面でさらに効果がある。焼成では、大気圧プラズマ等を用いた、いわゆるプラズマ焼結を用いることもできる。
【0102】
本発明においては、着色層のパターニング方法として、例えばレジスト法、吐出法、印刷法等を用いることができる。
【0103】
レジスト法では、着色層上にレジストを塗布し、マスク露光、現像、酸エッチングおよびレジスト剥離を行うことにより、着色層をパターン状に形成することができる。レジスト法を用いる場合には、乾燥後の塗膜の上にレジストを塗布してもよく、焼成後の膜の上にレジストを塗布してもよい。すなわち、塗布、乾燥、焼成、およびレジスト法によるパターニングの順であってもよく、また塗布、乾燥、レジスト法によるパターニング、および焼成の順であってもよい。
さらに、この場合、着色層形成用塗工液に用いられる超微粒子としては、酸性エッチング液に溶解するものが使用される。このような超微粒子としては無機酸化物が挙げられ、中でも、酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化スズからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。これらは、酸性エッチング液の中でもフッ酸などの基板等も溶解するような強酸のエッチング液を用いる必要がないからである。
また、各着色パターンごとに塗布、乾燥、焼成、およびレジスト法によるパターニングを繰り返し行ってもよく、また各着色パターンごとに塗布、乾燥、およびレジスト法によるパターニングを繰り返し行った後、着色層全体を焼成してもよい。
【0104】
吐出法では、着色層形成用塗工液をパターンに応じて塗り分けることにより、着色層をパターン状に形成することができる。吐出法としては、例えばインクジェット法が挙げられる。この場合、着色層形成用塗工液を塗布する部材表面に親疎水パターンを形成することが好ましい。本発明に用いられる着色層形成用塗工液は粘度が比較的低いので、親疎水パターンに沿って塗布することにより、精細なパターンを形成できるからである。
またこの場合、各着色パターンごとに塗布、乾燥、焼成を繰り返し行ってもよく、また各着色パターンごとに塗布、乾燥を繰り返し行った後、着色層全体を焼成してもよいが、工程上の簡便さから、各着色パターンごとに塗布、乾燥を繰り返し行った後、着色層全体を焼成することが好ましい。
【0105】
印刷法としては、粘度が比較的低い着色層形成用塗工液を均一な厚みに印刷できる方法であればよく、例えばフレキソ印刷法等が挙げられる。
上記の吐出法や印刷法では、超微粒子は、上記「A.有機EL素子用カラーフィルタ」の平坦化部の項に記載したものであれば、いずれも使用できる。
【0106】
上記の中でも、製造工程が簡便であることから、インクジェット法が好ましく用いられる。
【0107】
2.平坦化部形成工程
本発明における平坦化部形成工程は、基板上の所定の位置に平坦化部を形成する工程である。本発明においては、平坦化部の種類により、平坦化部形成工程を、上記着色層形成工程前に行うか上記着色層形成工程後に行うかが適宜選択される。例えば透過性を有する平坦化部を形成する場合は、上記着色層形成工程後に平坦化部形成工程を行う。また、平坦化部が遮光性を有し、遮光部である場合は、上記着色層形成工程前に平坦化部形成工程を行う。さらに、平坦化部が遮光性を有し、遮光部と透過部とが積層されたものである場合は、上記着色層形成工程前に遮光部を形成し、上記着色層形成工程後に透過部を形成する。いずれの場合においても、パターン状の着色層による段差を埋めるように平坦化部が形成される。
なお、平坦化部の形成方法については、上記「A.有機EL素子用カラーフィルタ」の平坦化部の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0108】
本発明においては、平坦化部形成工程が、基板上に、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液を塗布し、焼成して、平坦化部を形成する工程であることが好ましい。
上記着色層形成工程の場合と同様に、超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液を用いることにより、低脱ガス性に優れる平坦化部を形成することができ、ダークスポットが発生しにくい有機EL素子用基板を得ることができる。また、超微粒子特有のサイズ効果により、超微粒子が一般的な焼結温度よりもはるかに低温で緻密に焼結するため、着色層の耐熱温度以下での焼成が可能である。
【0109】
超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液は、平坦化部の種類に応じて異なるものとなる。例えば透過性を有する平坦化部には、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液が用いられる。また例えば、平坦化部が遮光性を有し、遮光部である場合には、超微粒子および黒色着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液が用いられる。さらに例えば、平坦化部が遮光性を有し、遮光部と透過部とが積層されたものである場合、遮光部には上記遮光部を形成するための平坦化部形成用塗工液が用いられ、透過部には上記透過性を有する平坦化部を形成するための平坦化部形成用塗工液が用いられる。
なお、微粒子については上記「A.有機EL素子用カラーフィルタ」の平坦化部の項に記載したものと同様であり、また超微粒子分散液のその他の点、ならびに平坦化部形成用塗工液の塗布方法、焼成方法、およびパターニング方法等については上記着色層形成工程の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
また、平坦化部形成用塗工液を1回塗布しただけでは所望の厚みが得られない場合は、平坦化部形成用塗工液を塗布、乾燥、および焼成した後に、さらに平坦化部形成用塗工液を塗布、乾燥、および焼成することによって、平坦化部の厚みを厚くすることができる。また、平坦化部形成用塗工液を塗布、乾燥した後に、さらに平坦化部形成用塗工液を塗布乾燥し、その後に焼成することによっても、平坦化部の厚みを厚くすることができる。
【0111】
3.表面処理工程
本発明における表面処理工程は、基板上に着色層および平坦化部を形成した後に、上記着色層および平坦化部の表面を研磨する工程である。
【0112】
研磨方法としては、例えば適当な砥粒をシート上に散布して接着したサンドペーパー等を用いて行なう方法や、化学的研摩法もしくは機械的研摩法、またはそれらを併用したケミカルメカニカルポリッシング(CMP)等を用いることができる。
化学的研摩法は、例えば布、不織布、もしくはポリウレタン樹脂等の発泡体からなる研摩部材に、研摩剤としてエッチング性の液体を供給して行うものである。
機械的研摩法は、例えば布、不織布、もしくはポリウレタン樹脂等の発泡体を研摩部材とし、コロイダルシリカもしくは酸化セリウムの微粉末を研摩剤として含浸させて用いるか、あるいは研摩剤としてコロイダルシリカもしくは酸化セリウムを分散させた分散液を供給して行なうものである。
【0113】
上記いずれの方法においても、研磨は、対象物を回転させる等して対象物と研磨部材とを相対的に移動させつつ、着色層および平坦化部の表面に研摩部材を接触させ、必要に応じて研摩剤を供給しながら行なうことが好ましい。また、着色層上に平坦化部が存在しなくなるまで研磨を行なうことが好ましい。
【0114】
C.有機EL表示装置
次に、本発明の有機EL表示装置について説明する。
本発明の有機EL表示装置は、上述した有機EL素子用カラーフィルタと、上記有機EL素子用カラーフィルタ上に形成された透明電極層と、上記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機EL層と、上記有機EL層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とするものである。
【0115】
図2は本発明の有機EL表示装置の一例を示すものである。図2に示すように、有機EL表示装置20は、上述した有機EL素子用カラーフィルタ10と、上記有機EL素子用カラーフィルタ10上に形成された透明電極層21と、この透明電極層21上にパターン状に形成された有機EL層22と、この有機EL層22上に形成された背面電極層23とを有するものである。また、透明電極層21上であって、パターン状の有機EL層22間には絶縁層24が形成されている。この絶縁層24は、透明電極層21と背面電極層23とを接触させないようにするために設けられる層である。さらに、この絶縁層24上には隔壁25が形成されている。有機EL層22が形成されている部分は表示領域である。また、有機EL素子用カラーフィルタ10は、基板1上にパターン状の着色層2が形成され、パターン状の着色層2の間に平坦化部3が形成されたものである。
【0116】
本発明によれば、上述した有機EL素子用カラーフィルタを用いるので、高輝度でカラー表示特性に優れる有機EL表示装置とすることができる。また、ダークスポット等の欠陥の発生を抑制することができ、良好な画像表示が可能である。
以下、有機EL表示装置の各構成について説明する。なお、有機EL素子用カラーフィルタについては、「A.有機EL素子用カラーフィルタ」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0117】
1.有機EL層
本発明に用いられる有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布による湿式法で有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0118】
発光層以外に有機EL層内に形成される有機層としては、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層を挙げることができる。さらに、その他の有機層としては、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を挙げることができるが、通常これらは上記電荷注入層に電荷輸送の機能を付与することにより、電荷注入層と一体化されて形成される場合が多い。その他、有機EL層内に形成される有機層としては、キャリアブロック層のような正孔あるいは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
以下、このような有機EL層の各構成について説明する。
【0119】
(1)発光層
本発明に用いられる発光層は、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものである。上記発光層を形成する材料としては、通常、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、または高分子系発光材料を挙げることができる。
【0120】
色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
【0121】
また、金属錯体系発光材料としては、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、イリジウム金属錯体、プラチナ金属錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be、Ir、Pt等、またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。具体的には、トリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)を用いることができる。
【0122】
さらに、高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、上記色素系発光材料および金属錯体系発光材料を高分子化したものも挙げられる。
【0123】
本発明に用いられる発光材料としては、上記の中でも、金属錯体系発光材料または高分子系発光材料であることが好ましく、さらには高分子系発光材料であることが好ましい。また、高分子系発光材料の中でも、π共役構造をもつ導電性高分子であることが好ましい。このようなπ共役構造をもつ導電性高分子としては、上述したようなポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0124】
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定はされなく、例えば1nm〜200nm程度とすることができる。
【0125】
また、発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で蛍光発光または燐光発光するドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0126】
発光層の形成方法としては、高精細なパターニングが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、またはスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、および自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。中でも、蒸着法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが好ましい。また、発光層をパターニングする際には、異なる発光色となる画素のマスキング法により塗り分けや蒸着を行ってもよく、または発光層間に隔壁を形成してもよい。このような隔壁を形成する材料としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等を用いることができる。さらに、これらの隔壁を形成する材料の表面エネルギー(濡れ性)を変化させる処理を行ってもよい。
【0127】
(2)電荷注入輸送層
本発明においては、透明電極層または背面電極層と発光層との間に電荷注入輸送層が形成されていてもよい。ここでいう電荷注入輸送層とは、上記発光層に透明電極層または背面電極層からの電荷を安定に輸送する機能を有するものであり、このような電荷注入輸送層を、透明電極層または背面電極層と発光層との間に設けることにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
【0128】
電荷注入輸送層としては、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する正孔注入輸送層、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送する電子注入輸送層とがある。以下、正孔注入輸送層および電子注入輸送層について説明する。
【0129】
(i)正孔注入輸送層
本発明に用いられる正孔注入輸送層としては、発光層に正孔を注入する正孔注入層、および正孔を輸送する正孔輸送層のいずれか一方であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層が積層されたものであってもよく、または、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0130】
正孔注入輸送層に用いられる材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン誘導体等を用いることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0131】
また、正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、具体的には0.5nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0132】
(ii)電子注入輸送層
本発明に用いられる電子注入輸送層としては、発光層に電子を注入する電子注入層、および電子を輸送する電子輸送層のいずれか一方であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、または、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0133】
電子注入層に用いられる材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミリチウム合金、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、およびアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を用いることができる。
【0134】
また、電子注入層の厚みとしては、電子注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
【0135】
一方、電子輸送層に用いられる材料としては、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、またはトリス(8−キノリノール)アルミニウム錯体(Alq)等を挙げることができる。
【0136】
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層からなる電子注入輸送層としては、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を形成し、これを電子注入輸送層とすることができる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。
【0137】
2.透明電極層および背面電極層
本発明に用いられる透明電極層および背面電極層は、互いに反対の電荷をもつ電極である。
透明電極層は、一般に透明性および導電性を有する金属酸化物の薄膜で構成される。このような金属酸化物としては、例えば酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫等が挙げられる。
また、背面電極層としては、一般に金属が用いられる。具体的には、マグネシウム合金(MgAgなど)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMgなど)、アルミニウム、アルカリ土類金属(Caなど)、アルカリ金属(K、Liなど)等が挙げられる。
【0138】
透明電極層および背面電極層は、一般的な電極層の形成方法を用いて形成することができ、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0139】
3.絶縁層
本発明においては、透明電極層と背面電極層とを絶縁するために絶縁層が形成されていてもよい。この絶縁層は、非表示領域としてパターン状に形成されるものである。
絶縁層の形成材料としては、例えば紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような絶縁層は、上記の樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。また、パターニングの方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
【0140】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0141】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例]
(着色層の形成)
まず、透明基板として、150mm×150mm、厚み0.7mmのソーダガラス(セントラル硝子(株)製 Sn面研磨品)を準備した。
【0142】
ヘリウムガス圧力0.5torrの条件下で高周波誘導加熱を用いるガス中蒸発法によりIn微粒子を生成する際に、生成過程のIn微粒子にα−テルピネオールとドデシルアミンとの20:1(容量比)の蒸気を接触させ、冷却捕集してIn微粒子を回収し、α−テルピネオール溶媒中に独立した状態で分散している平均粒径10nmのIn微粒子を20重量%含有する分散液を調製した。この分散液(コロイド液)1容量に対してアセトンを5容量加え、攪拌した。極性のアセトンの作用により分散液中の微粒子は沈降した。2時間静置後、上澄みを除去し、再び最初と同じ量のアセトンを加えて攪拌し、2時間静置後、上澄みを除去した。この沈降物から、残留溶媒を完全に除去し、平均粒径10nmのIn微粒子を作製し、X線回折により、酸化されていない微粒子であることを確認した。この微粒子を60wt%の濃度にてテトラデカン中に分散させ、超微粒子分散液を得た。
【0143】
その後さらに、上記超微粒子分散液に緑の顔料(C.I.ピグメントグリ−ン36とC.I.ピグメントイエロー83との混合物(100:10))を固形分換算で30wt%の濃度で分散させ、緑色着色層形成用塗工液を調製した。この緑色着色層形成用塗工液をスピンコート法により透明基板上に塗布し、その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの焼成を行った。このときの膜厚は1.5μmであった。
次に、緑色着色層上にスピンコート法により感光性レジストを塗布し、乾燥、マスク露光、現像、緑色着色層のエッチングを行って、緑色着色パターンを形成した。この緑色着色パターンは、幅90μmの帯状パターンであった。
【0144】
また、同様にして、上記超微粒子分散液に赤の顔料(C.I.ピグメントレッドI77とC.I.ピグメントイエロー83との混合物(100:20))を固形分換算で30wt%の濃度で分散させ、赤色着色層形成用塗工液を調製した。この赤色着色層形成用塗工液をスピンコート法により着色層上に塗布し、その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの焼成を行った。このときの膜厚は1.5μmであった。
次に、赤色着色層上にスピンコート法により感光性レジストを塗布し、乾燥、マスク露光、現像、赤色着色層のエッチングを行って、赤色着色パターンを形成した。この赤色着色パターンは、幅90μmの帯状パターンであった。
【0145】
さらに、同様にして、上記超微粒子分散液に青の顔料(C.I.ピグメントブルー15:3とC.I.ピグメントバイオレット23との混合物(100:5))を固形分換算で30wt%の濃度で分散させ、青色着色層形成用塗工液を調製した。この青色着色層形成用塗工液をスピンコート法により着色層上に塗布し、その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの焼成を行った。このときの膜厚は1.5μmであった。
次に、青色着色層上にスピンコート法により感光性レジストを塗布し、乾燥、マスク露光、現像、青色着色層のエッチングを行って、青色着色パターンを形成した。この青色着色パターンは、幅90μmの帯状パターンであった。
【0146】
(平坦化部の形成)
ヘリウムガス圧力0.5torrの条件下で高周波誘導加熱を用いるガス中蒸発法によりIn微粒子を生成する際に、生成過程のIn微粒子にα−テルピネオールとドデシルアミンとの20:1(容量比)の蒸気を接触させ、冷却捕集してIn微粒子を回収し、α−テルピネオール溶媒中に独立した状態で分散している平均粒径10nmのIn微粒子を20重量%含有する分散液を調製した。この分散液(コロイド液)1容量に対してアセトンを5容量加え、攪拌した。極性のアセトンの作用により分散液中の微粒子は沈降した。2時間静置後、上澄みを除去し、再び最初と同じ量のアセトンを加えて攪拌し、2時間静置後、上澄みを除去した。この沈降物から、残留溶媒を完全に除去し、平均粒径10nmのIn微粒子を作製し、X線回折により、酸化されていない微粒子であることを確認した。この微粒子を30wt%の濃度にてテトラデカン中に分散させ、超微粒子分散液を得た。
【0147】
さらに、上記超微粒子分散液300gに、チタンブラック(三菱マテリアル(株)製 13M−C)200gと、MBA(メトキシブチルアセテート)300gと、コロイダルシリカ(日産化学(株)製 スノーテックスNPC−ST、平均粒径10〜20nm)50gと、ジルコニアビーズ(昭和シェル石油(株)製 ミクロハイカZ Z300、直径0.3mm)300ccとを加え、サンドミルにてローター回転数1500rpmの条件で2時間分散した。その後、上記の分散液に分散剤(アビシア(株)製 ソルスパース24000)を20g添加し、さらにサンドミルにてローター回転数1500rpmの条件で3時間分散し、その後、ジルコニアビーズを除去して、平坦化形成用塗工液を得た。
【0148】
この平坦化形成用塗工液をスピンコート法により上記着色層上に塗布した。その後、塗膜を1×10−3Paの減圧下において230℃、10minの条件で焼成した。次いで、酸化性雰囲気(大気)中で、230℃、60minの焼成を行った。このときの着色層上の平坦化部の厚みは200nmであり、着色層間の間が埋まったような形状しており着色層の平坦化が促進しているような形状を得られた。1.5μmの段差が、0.3μm程度になっていた。
【0149】
さらに、この段差を無くすために、研磨を行った。研磨は、まず800番の紙やすりで、純水を噴霧しながらラッピング研磨し、次に回転研磨機(Speed Fam社製)により、アルミナの微粒子研磨剤を用いて純水を噴霧しながら鏡面研磨(ポリッシング)した。その結果、0.3μm程度の段差を0.1μm以下にした。
【0150】
(補助電極の形成)
次に、上記の着色層および平坦化部の全面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み0.2μm)を形成し、このクロム薄膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、クロム薄膜のエッチングを行って、補助電極を形成した。この補助電極は、着色層の各着色パターンと平行に100μmピッチで形成された帯状のパターンであり、幅15μmのうち5μmが各着色パターン上に位置し、幅方向の残りの部位は平坦化部上に位置するものであり、透明基板周縁部の端子部では幅が60μmのものとした。
【0151】
(透明電極層の形成)
次いで、上記の補助電極を覆うように透明平滑化層上にイオンプレーティング法により膜厚150nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行って、透明電極層を形成した。この透明電極層は、着色層の各着色パターンと平行に形成された幅80μmの帯状パターンであり、各着色パターン上に位置するとともに、上記の補助電極に重なる(重なり幅2.5μm)ものであった。
【0152】
(絶縁層と隔壁の形成)
上記の透明電極層を覆うようにスパッタリング法により二酸化ケイ素、窒化チタン、二酸化ケイ素の3層薄膜を形成して、厚み0.3μm(各二酸化ケイ素薄膜:0.1μm、窒化チタン:0.1μm)の絶縁膜を形成した。次に、この絶縁膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像してレジストパターンを形成した。このレジストパターンをマスクとして、30℃のエッチング液(9HO・1HF液あるいは7HO・2HNO・1HF液)を用いたスプレーエッチングにより、露出している絶縁膜を除去して絶縁層を形成した。この絶縁層は、90μm×290μmの長方形状の開口部を、290μmの辺方向に300μmピッチ、90μmの辺方向に100μmピッチで有し、この開口部の290μmの辺が着色パターンや透明電極層の延設方向と同一であり、開口部が各着色パターン上に位置するマトリックス形状であった。
【0153】
次に、隔壁用塗料(日本ゼオン(株)製フォトレジスト ZPN1100)をスピンコート法により絶縁層を覆うように全面に塗布し、プリベーク(70℃、30分間)を行った。その後、所定の隔壁用フォトマスクを用いて露光し、現像液(日本ゼオン(株)製ZTMA−100)にて現像を行い、次いで、ポストベーク(100℃、30分間)を行った。これにより、マトリックス形状の絶縁層上(開口部の90μmの辺に平行な方向)に隔壁を形成した。この隔壁は、高さ10μm、下部(絶縁層側)の幅15μm、上部の幅26μmである形状を有するものであった。
【0154】
(有機EL素子層の形成)
次いで、上記の隔壁をマスクとして、真空蒸着法により正孔注入層、発光層、電子注入層からなる有機EL素子層を形成した。すなわち、まず、4,4´,4´´−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンを、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスクを介して200nm厚まで蒸着して成膜し、その後、4,4´−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルを20nm厚まで蒸着して成膜することによって、隔壁がマスクパターンとなり、各隔壁間のみを正孔注入材料が通過して透明電極層上に正孔注入層が形成された。
次に、上記と同様に、隔壁をマスクとして、発光材料を300nmまで蒸着して成膜することにより発光層を形成した。
さらに、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを20nm厚まで蒸着して成膜する
ことにより電子注入層とした。
このようにして形成された有機EL層(厚み500nm)は、幅約280μmの帯状パターンとして各隔壁間に存在するものであり、隔壁の上部表面にも同様の層構成でダミーの有機EL層が形成された。
【0155】
(背面電極層の形成)
次に、画像表示領域よりも広い所定の開口部を備えたマスクを介して上記の隔壁が形成されている領域に真空蒸着法によりマグネシウムと銀を同時に蒸着(マグネシウムの蒸着速度=1.3〜1.4nm/秒、銀の蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜した。
これにより、隔壁がマスクとなって、マグネシウム/銀混合物からなる背面電極層(厚み200nm)を有機EL層上に形成した。この背面電極層は、幅280μmの帯状パターンとして有機EL層上に存在するものであり、隔壁の上部表面にもダミーの背面電極層が形成された。
以上により、有機EL表示装置を得た。
【0156】
[比較例]
実施例の平坦化部の形成において、研磨を行わなかった以外は、実施例と同様にして、有機EL表示装置を作製した。
【0157】
[評価]
実施例および比較例の有機EL表示装置の透明電極層と背面電極層に直流8.5Vの電圧を10mA/cmの一定電流密度で印加して連続駆動させることにより、透明電極層と背面電極層とが交差する所望の部位の発光層を発光させた。その結果、比較例の有機EL表示装置と比べ、実施例の有機EL表示装置では、カラーフィルタの透過率を3%向上させることができ、また輝度を76cd/mから78cd/mに向上させることができ、電極の断線に関しても問題ないことを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の有機EL素子用カラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機EL素子用カラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機EL素子用カラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機EL素子用カラーフィルタの他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機EL素子用カラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0159】
1 … 基板
2 … 着色層
3 … 平坦化部
10 … 有機EL素子用カラーフィルタ
20 … 有機EL表示装置
21 … 透明電極層
22 … 有機EL層
23 … 背面電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上にパターン状に形成された着色層と、前記着色層間に形成された平坦化部とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ。
【請求項2】
前記平坦化部が遮光性を有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ。
【請求項3】
前記着色層が超微粒子中に着色剤を分散させた膜であり、前記平坦化部が超微粒子で形成された膜であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ。
【請求項4】
前記超微粒子の焼結温度が350℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ。
【請求項5】
前記超微粒子が、酸化インジウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ。
【請求項6】
前記超微粒子が、表面が酸化された状態である、インジウム、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の超微粒子であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ。
【請求項7】
前記超微粒子の平均粒径が0.5nm〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ。
【請求項8】
基板と、前記基板上にパターン状に形成された着色層と、前記着色層間に形成された平坦化部とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタの製造方法であって、基板上に着色層および平坦化部を形成した後に、前記着色層および平坦化部の表面を研磨する表面処理工程を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
前記基板上に、超微粒子および着色剤が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる着色層形成用塗工液を塗布し、焼成して、パターン状の着色層を形成する着色層形成工程と、前記基板上に、超微粒子が溶剤に分散された超微粒子分散液からなる平坦化部形成用塗工液を塗布し、焼成して、平坦化部を形成する平坦化部形成工程とを有することを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
前記溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
前記着色層形成工程および前記平坦化部形成工程にて、前記超微粒子が酸化しない雰囲気中で焼成し、その後、酸化性雰囲気中で焼成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタの製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタと、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用カラーフィルタ上に形成された透明電極層と、前記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成された背面電極層とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−165165(P2007−165165A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361474(P2005−361474)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】