説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】LT80の素子寿命が長い有機EL素子を提供する。
【解決手段】陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層と、該発光層および該陽極の間に設けられる機能層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該機能層が、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、高分子量の有機発光材料を用いる高分子系の有機EL素子と、低分子量の有機発光材料を用いる低分子系の有機EL素子とに大別される。高分子系の有機EL素子は、塗布法を用いて作製することができ、低分子系の素子よりも比較的簡易な方法での作製が可能であると見込まれているため、現在、素子特性の向上を目的として、材料開発などの種々の研究開発が行われている。
【0003】
例えば共役高分子化合物であるポリフルオレンを含む発光層を備える有機EL素子(非特許文献1)、アリールアミン構造を有する高分子化合物を含む正孔輸送層を備える有機EL素子(特許文献1)、および架橋性アリールアミン高分子化合物を含む正孔輸送層を備える有機EL素子(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年、第12巻、第23号、p.1737-1750
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第1999/054385号
【特許文献2】国際公開第2005/052027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の有機EL素子は、駆動開始時の輝度を100としたときに、駆動開始から輝度が80に低下するまでの時間で表されるLT80の素子寿命が必ずしも十分ではないという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、LT80の素子寿命が長い有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、陽極および陰極からなる一対の電極と、
該電極間に設けられる発光層と、
該発光層および該陽極の間に設けられる機能層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該機能層が、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機EL素子は、LT80の素子寿命が長いので、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層と、該発光層および該陽極の間に設けられる機能層とを有する有機EL素子であって、該機能層が、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを含む。該高分子化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量が通常10〜10である。アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを含む機能層を陽極と発光層との間に設けることによって、LT80の素子寿命が長い有機EL素子を実現することができる。
【0012】
本明細書において、機能層に含まれるアミン残基とは、1価または2価の基であり、アミン化合物の窒素原子に結合する1つの置換基から水素原子を1個取り除いた原子団からなる1価の基、またはアミン化合物の窒素原子に結合する2つの置換基からそれぞれ水素原子を1個取り除いた原子団からなる2価の基を意味する。アミン残基を有する繰り返し単位は、アリーレン基、複素環基、およびアリール基などを、置換基として有していることが好ましく、アリールアミン残基(アリールアミン化合物に由来するアミン残基)を有することが好ましい。
【0013】
アミン残基を有する繰り返し単位は、下記式(1)で示される繰り返し単位であることが好ましい。

【0014】
〔式中、Ar1、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基を表す。E、EおよびEは、それぞれ独立にアリール基または1価の複素環基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0または1を表す。〕
【0015】
またAr1、Ar、Ar、E、Eで表される基から選ばれる基(好ましくはAr、E、Eで表される基から選ばれる基)は、該基と同一の窒素原子に結合するAr1、Ar、Ar、Ar、E、EおよびEで表される基から選ばれる基と、互いに直結して、又は−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(R)−、−C(=O)−N(R)−又は−C(R)(R)−で結合して、5〜7員環を形成していてもよい。例えば、Ar1と同一の窒素原子に結合する基としては、Ar2(a=1の場合)、Ar3(a=0の場合)、Ar4(b=1の場合)、E3(b=0の場合)が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又は1価の芳香族複素環基を表す。またRで表される基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換カルボニル基、置換カルボキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アラルキル基、1価の芳香族複素環基、フッ素原子又はシアノ基で置換されていてもよい。複数あるRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0016】
aおよびbは、素子寿命が長くなる傾向があるため0≦a+b≦1であることが好ましい。
【0017】
アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団であり、ベンゼン環または縮合環をもつもの、および独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接またはビニレン等の基を介して結合したものも含む。アリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基、および重合可能な置換基等があげられ、これらのなかでもアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、および1価の複素環基が好ましい。
【0018】
アリーレン基における置換基を除いた部分の炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。また置換基を含めたアリーレン基の全炭素数は、通常6〜100程度である。
【0019】
アリーレン基としては、フェニレン基(例えば、下図の式1〜3)、ナフタレン−ジイル基(下図の式4〜13)、アントラセン−ジイル基(下図の式14〜19)、ビフェニル−ジイル基(下図の式20〜25)、 ターフェニル−ジイル基(下図の式26〜28)、 縮合環化合物基(下図の式29〜35)、フルオレン−ジイル基(下図の式36〜38)、インデノフルオレン−ジイル基(下図38A〜38B)、インデノナフタレン−ジイル基(下図38C〜38E)、スチルベン−ジイル基(下図の式A〜D), ジスチルベン−ジイル基(下図の式E,F)などがあげられ、これらのなかでもフェニレン基、ビフェニル−ジイル基、フルオレン−ジイル基、インデノナフタレン−ジイル基、スチルベン−ジイル基が好ましい。
【0020】














【0021】
本発明において2価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、該基は置換基を有していてもよい。複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけではない有機化合物であり、炭素原子に加えて、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基、重合可能な置換基等があげられ、これらのなかでもアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基が好ましい。2価の複素環基における置換基を除いた部分の炭素数は通常3〜60程度である。
また置換基を含めた2価の複素環基の全炭素数は、通常3〜100程度である。2価の複素環基の中では、2価の芳香族複素環基が好ましい。
【0022】
2価の複素環基としては、例えば以下のものがあげられる。
【0023】
ヘテロ原子として、窒素を含む2価の複素環基;ピリジン−ジイル基(下図の式39〜44)、ジアザフェニレン基(下図の式45〜48)、キノリンジイル基(下図の式49〜63)、キノキサリンジイル基(下図の式64〜68)、アクリジンジイル基(下図の式69〜72)、ビピリジルジイル基(下図の式73〜75)、フェナントロリンジイル基(下図の式76〜78)。
【0024】
ヘテロ原子として酸素、けい素、窒素、硫黄、セレン、ホウ素などを含みフルオレン構造を有する基:(下図の式79〜93、G〜I)。
【0025】
ヘテロ原子として酸素、けい素、窒素、硫黄、セレン、ホウ素などを含みインデノフルオレン構造を有する基:(下図の式J〜O)。
【0026】
ヘテロ原子として酸素、けい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基:(下図の式94〜98)。
【0027】
ヘテロ原子として酸素、けい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環縮合複素環基:(下図の式99〜110)。
【0028】
ヘテロ原子として酸素、けい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基:(下図の式111〜112)。
【0029】
ヘテロ原子として酸素、けい素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基:(下図の式113〜119)。
【0030】
ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄などを含む5員環縮合複素環基にフェニル基やフリル基、チエニル基が置換した基:(下図の式120〜125)。























【0031】
上記の式1〜125、G〜Oにおいて、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、重合可能な置換基またはシアノ基を示す。
【0032】
上記の例では1つの構造式中に複数のRが含まれているが、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。溶媒への溶解性を高めるためには、1つの構造式中に含まれる複数のRのうち少なくとも1つが水素原子以外であることが好ましく、また置換基を含めた繰り返し単位の形状の対称性が低いことが好ましい。また1つの構造式中のRの1つ以上が環状または分岐のあるアルキル基を含む基であることが好ましい。また1つの構造式中の複数のRのうちの2つ以上が連結して環を形成していてもよい。
【0033】
また上記式においてRがアルキル基を含む置換基である場合においては、該アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよく、直鎖でない場合、例えば、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、4−C〜C12アルキルシクロヘキシル基などが例示される。
【0034】
さらに、アルキル基を含む基のアルキル基のメチル基やメチレン基がヘテロ原子や一つ以上のフッ素で置換されたメチル基やメチレン基で置き換えられていてもよい。それらのヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などが例示される。
【0035】
ここに、アルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20程度であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基などがあげられ、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0036】
アルコキシ基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20程度であり、その具体的としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基などがあげられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0037】
アルキルチオ基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、炭素数は通常1〜20程度であり、その具体的例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、 i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、 i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基などがあげられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基が好ましい。
【0038】
アリール基は、炭素数が通常6〜60程度であり、その具体例としては、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基(C〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基、ベンゾシクロブテン構造を含む基、
(例えば、

で示される基)などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル基、C〜C12アルキルフェニル基が好ましい。ここに、アリール基とは、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団である。アリール基は置換基を有していてもよい。芳香族炭化水素としては、ベンゼン環または縮合環をもつもの、独立したベンゼン環または縮合環2個以上が直接またはビニレンなどの基を介して結合したものが含まれる。
【0039】
1〜C12アルコキシとして具体的には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、ブトキシ、i−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、ラウリルオキシなどが例示される。
【0040】
1〜C12アルキルとして具体的には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、3,7−ジメチルオクチル、ラウリルなどが例示される。
【0041】
アリールオキシ基は、炭素数が通常6〜60程度であり、その具体的例としては、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0042】
アリールチオ基は、炭素数が通常6〜60程度であり、その具体例としては、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0043】
アリールアルキル基は、炭素数が通常7〜60程度であり、その具体例としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基などのフェニル−C1〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、2−ナフチル−C〜C12アルキル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基が好ましい。
【0044】
アリールアルコキシ基は、炭素数が通常7〜60程度であり、その具体例としては、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基などのフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0045】
アリールアルキルチオ基は、炭素数が通常7〜60程度であり、その具体例としては、フェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基が好ましい。
【0046】
アリールアルケニル基は、炭素数が通常8〜60程度であり、その具体例としては、フェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C〜C12アルケニル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基が好ましい。
【0047】
アリールアルキニル基は、炭素数が通常8〜60程度であり、その具体例としては、フェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C〜C12アルキニル基などが例示され、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基が好ましい。
【0048】
置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基から選ばれる1個または2個の基で置換されたアミノ基があげられる。置換アミノ基は、炭素数が通常1〜60程度であり、その具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、カルバゾイル基などが例示される。
【0049】
置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および1価の複素環基から選ばれる1、2または3個の基で置換されたシリル基があげられる。置換シリル基は、炭素数が通常1〜60程度であり、その具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピルシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロピルオキシシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピルシリル基、メチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基などが例示される。
【0050】
置換シリルオキシ基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基および1価の複素環基から選ばれる1、2または3個の基で置換されたシリルオキシ基があげられる。置換シリルオキシ基は、炭素数が通常1〜60程度であり、その具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリ−i−プロピルシリルオキシ基、ジメチル−i−プロピルシリルオキシ基、ジエチル−i−プロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ペンチルジメチルシリルオキシ基、ヘキシルジメチルシリルオキシ基、ヘプチルジメチルシリルオキシ基、オクチルジメチルシリルオキシ基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリルオキシ基、ノニルジメチルシリルオキシ基、デシルジメチルシリルオキシ基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリルオキシ基、ラウリルジメチルシリルオキシ基、フェニル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリルオキシ基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基、トリメトキシシリルオキシ基、トリエトキシシリルオキシ基、トリプロピルオキシシリルオキシ基、トリ−i−プロピルシリルオキシ基、ジメチル−i−プロピルシリルオキシ基、メチルジメトキシシリルオキシ基、エチルジメトキシシリルオキシ基などが例示される。
【0051】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
【0052】
アシル基は、炭素数が通常2〜20程度であり、その具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基などが例示される。
【0053】
アシルオキシ基は、炭素数が通常2〜20程度であり、その具体例として、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基などが例示される。
【0054】
イミン残基としては、イミン化合物(分子内に、−N=C-を持つ有機化合物のことをいう。その例として、アルジミン、ケチミン及びこれらのN上の水素原子が、アルキル基等で置換された化合物があげられる)から水素原子1個を除いた残基があげられ、炭素数2〜20程度であり、具体的には、以下の基などが例示される。(波線が結合手を表す。


【0055】
アミド基は、炭素数が通常1〜20程度であり、その具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基などが例示される。
【0056】
酸イミド基としては、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基があげられ、炭素数は4〜20程度であり、具体的には、以下の基などが例示される。

【0057】
上記例示において、Meはメチル基を示す。
【0058】
1価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいい、該基は、置換基を有していてもよい。
【0059】
無置換の1価の複素環基の炭素数は通常4〜60程度であり、好ましくは4〜20である。1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0060】
1価の複素環基としては、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基などが例示され、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0061】
置換カルボキシル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基または1価の複素環基で置換されたカルボキシル基があげられる。置換カルボキシル基は、炭素数が通常2〜60程度であり、その具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基などがあげられる。
【0062】
上記式(1)において、Ar1、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基、または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表すが、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、下記に示すような置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニルジイル基、置換または無置換のフルオレン−ジイル基、置換または無置換のスチルベン−ジイル基であることがより好ましく、これらのなかでも無置換のフェニレン基であることがさらに好ましい。



【0063】
アミン残基を有する繰り返し単位としては、式(1)で表される基を含む置換基を1個又は2個以上有するアリーレン基、上記式(1)で表される基を含む置換基を1個又は2個以上有する2価の複素環基、下記式(1’)または下記式(1’’)で表される基を1個又は2個以上有するアリーレン基、下記式(1’)または下記式(1’’)で表される基を1個又は2個以上有する2価の複素環基が挙げられる。




式(1’)および式(1’’)中、Ar1、Ar、Ar、Ar、E、E、E、aおよびbは、それぞれ前記と同じ意味を表す。
【0064】
本発明の機能層に含まれる高分子化合物を構成する、アミン残基を有する繰り返し単位としては、具体的には下記の繰り返し単位が例示される。

【0065】
本発明に用いるアミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物において、アミン残基を有する繰り返し単位の量は、該高分子化合物の有する全繰り返し単位に対して、通常1〜100モル%であり、好ましくは10〜90モル%である。また本発明に用いるアミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物において、式(1)で示される繰り返し単位の量は、該高分子化合物の有する全繰り返し単位に対して、通常1〜100モル%であり、好ましくは10〜90モル%である。
【0066】
アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物は、式(1)で示される繰り返し単位以外に、下記式(2)、式(3)、式(4)または式(5)でそれぞれ示される繰り返し単位からなる群から選ばれた1種以上の繰り返し単位をさらに有することが好ましい。
−Ar12− (2)
―Ar12−X1―(Ar13−X2)c―Ar14− (3)
−Ar12−X2− (4)
−X2− (5)
〔式中、Ar12、Ar13およびAr14はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい2価の複素環基または金属錯体構造を有する2価の基を示す。X1は、−CR2=CR3−、−C≡C−または−(SiR56d−を示す。X2は−CR2=CR3−、−C≡C−、−N(R4)−、または−(SiR56d−を示す。
2およびR3は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。R4、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはアリールアルキル基を表す。cは0〜2の整数を表す。dは1〜12の整数を表す。Ar13、R2、R3、R5およびR6がそれぞれ複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。〕
【0067】
上記式(2)〜(5)中のアリーレン基、2価の複素環基、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基、及びアリールアルキル基の定義、並びにこれらの具体例は、前述のこれらの定義、並びにこれらの具体例と同じである。
【0068】
また金属錯体構造を有する2価の基とは、金属錯体の有機配位子から水素原子を2個除いた残りの2価の基をいう。
【0069】
金属錯体中の有機配位子の炭素数は、通常4〜60程度である。有機配位子としては、例えば、8−キノリノールおよびその誘導体、ベンゾキノリノールおよびその誘導体、2−フェニル−ピリジンおよびその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾールおよびその誘導体、2−フェニル−ベンゾキサゾールおよびその誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0070】
有機配位子を有する金属錯体の中心金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ベリリウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウムなどが挙げられる。
【0071】
有機配位子を有する金属錯体としては、低分子の蛍光材料、燐光材料として公知のものがあげられ、いわゆる三重項発光錯体などがあげられる。
【0072】
金属錯体構造を有する2価の基としては、例えば、以下の基(126〜132)があげられる。
【0073】













式中、Rは前記式1〜125中のRと同じ意味を表す。
【0074】
本発明に用いる高分子化合物は、式(1)で示される繰り返し単位を有するホモポリマーでもよいし、他の繰り返し単位との共重合体でもよい。共重合体では、ランダム、交互、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。
【0075】
本発明に用いる高分子化合物には、主鎖に枝分かれがあるために末端部が3つ以上ある化合物や、デンドリマーも含まれる。
【0076】
本発明に用いる高分子化合物は例えば特開2005-251734号公報に記載の方法によって得ることができる。
【0077】
有機EL素子において、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物は、熱または光、電子線などの放射線の作用で架橋して溶媒に不溶化していることが好ましい。そのためには重合可能な置換基を有する化合物が重合した高分子化合物であることが好ましい。より具体的には、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が、アミン残基を有する繰り返し単位を含み重合可能な置換基を有する高分子化合物が重合してなる高分子化合物であることが好ましい。
【0078】
重合可能な置換基とは、重合反応を起こすことにより2分子以上の分子間で結合を形成し、化合物を生成可能な置換基のことを表す。このような基としては炭素−炭素多重結合を有する基(たとえば、ビニル基、アセチレン基、ブテニル基、アクリル基、アクリレート基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリレート基、メタクリルアミド基、アレン基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、フリル基、ピロリル基(ピロール基)、チエニル基(チオフェン基)、シロリル基(シロール基)、ベンゾシクロブテン基構造を含む基等をあげることができる)、小員環(たとえばシクロプロパン(シクロプロピル基)、シクロプロパン(シクロブチル基)、オキシラン(エポキシ基)、オキセタン(オキセタン基)、ジケテン(ジケテン基)、チイラン(エピスルフィド基)等)を有する基、ラクトン基、ラクタム基、またはシロキサン誘導体を含有する基等がある。また、上記基の他に、エステル結合やアミド結合を形成可能な基の組み合わせなども利用できる。例えばエステル基とアミノ基、エステル基とヒドロキシル基などの組み合わせである。
【0079】
重合可能な置換基としては下記に示す基が好ましい。

【0080】
機能層は、アミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物に加えて、n型半導体を含み、上述のアミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物と、n型半導体とから実質的になることが好ましい。
【0081】
ここでn型半導体とは、アミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物をp型としたときのn型半導体であり、アミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物のLUMO(lowest unoccupied molecular orbital),HOMO(highest occupied molecular orbital)よりも各々低いLUMO,HOMOのエネルギー準位を持つ有機半導体(n型有機半導体)や、アミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物のLUMO,HOMOよりも各々低い伝導帯、価電子帯のエネルギー準位を持つ無機半導体(n型無機半導体)を意味する。
【0082】
このように機能層がn型半導体を含むことによって有機EL素子の素子寿命を向上させることができる。
有機EL素子の発光は主に発光層中で生じるが、機能層中でも発光が生じることがある。この機能層中での不所望な発光が機能層を劣化させる原因の1つと考えられる。そこで機能層中での発光を抑制するために、機能層中で生じる励起子による発光を抑制することが考えられる。すなわちアミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物(p型)と、n型半導体とを機能層中で共存させることで励起子の電荷分離を促進し、励起子による、上述の高分子化合物の発光を抑制することが可能になるものと考えられる。このようにn型半導体を加えることによって、アミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物の発光が抑制され、すなわち上記高分子化合物が消光されることによって、アミン残基を有する繰り返し単位を含む上述の高分子化合物の劣化が抑えられ、結果として有機EL素子の寿命が延びると考えられる。そのため機能層に含まれるn型半導体としては、機能層の発光を抑制するn型半導体が好ましく、たとえば添加することによってPL(photoluminescent)光強度が低下するn型半導体が好ましい。すなわちn型半導体を含まない比較用の機能層(i)と、この機能層(i)にn型半導体を添加したn型半導体を含む機能層(ii)とを形成し、これら機能層(i),(ii)に励起光としてUV(ultraviolet)光を照射し、可視光領域でのPL(photoluminescent)光強度を比べたときに、機能層(i)に比べて機能層(ii)のPL光強度が低下するようなn型半導体を機能層に添加することが好ましい(後述の参考例1,2参照)。
【0083】
n型有機半導体としては、(I)ペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI,NTCDI)の誘導体、ペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸二無水物(PTCDA,NTCDA)の誘導体、ペリレン又はナフタレンのビスイミダゾール(PTCBI,NTCBI)の誘導体、(II)フラーレン及び/又はフラーレンの誘導体、(III)フッ素や塩素などの電子求引性置換基によって、その電子親和力を高めたフタロシアニン又はポルフィリン、(IV)キノン、(V)フッ素、塩素、CF3、CNなどの置換基によって電子親和力を高めたオリゴマー、例えばフッ化オリゴフェニル、(VI)オキサジアゾル誘導体などが挙げられる。これらは、有機溶媒に可溶とするために、可溶性基を持つものが好ましい。たとえば(a)ペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI,NTCDI)、または(b)ペリレン又はナフタレンのテトラカルボン酸二無水物(PTCDA,NTCDA)の2つの窒素原子または炭素原子にそれぞれ結合する水素原子を、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはアリールアルキル基に置換したn型半導体を挙げることができる。
【0084】
ペリレンもしくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンもしくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミドの誘導体、ペリレンもしくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物、またはペリレンもしくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物の誘導体としては、以下の式で表されるものが挙げられる。

式中、Rは、同一又は相異なり、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。
アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基又はアリールアルキルチオ基の定義、例等は、前記式(1)におけるそれらのの定義、例等と同様である。
【0085】
具体的には以下のようなものが挙げられる。



【0086】
n型無機半導体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウムといった金属酸化物が挙げられる。これらは、有機溶媒に可溶とするために、ナノ粒子、ナノファイバーとして有機溶媒に分散可能にしたものを有機溶媒に分散させ、塗布した後に乾燥させたものや、前駆体である金属アルコキシドを有機溶媒に溶解、塗布した後に金属酸化物に転化させたものによって得られる。
【0087】
フラーレンとしては、C60、C70、カーボンナノチューブがあげられる。フラーレンの誘導体の例としては、メタノフラーレン誘導体、PCBM誘導体、ThCBM誘導体、プラトー誘導体、ビンゲル誘導体、ジアゾリン誘導体、アザフレロイド誘導体、ケトラクタム誘導体、およびディールス・アルダー誘導体等があげられる(例えば、特表2009-542725参照)。
【0088】
メタノフラーレン誘導体:

ここで、Aは、フラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し、−C(X)(Y)−基はメタノ架橋を介してフラーレン骨格と結合する。XおよびYは、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基、または他の基(例えば炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルキル基)を表す。nは1又は2を表す。
【0089】
具体例として、Xが非置換アリール基であり、Yが酪酸メチルエステル基である化合物(PCBM)等が挙げられる。
【0090】
PCBM誘導体:





ここで、nは、1〜20の整数を表す。
【0091】
ThCBM誘導体:

ここで、Cnは、フラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表す。
【0092】
プラトー誘導体:


ここで、Aは−C(R)−N(R)−C(R)−に結合したフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)であり;Rは置換されていてもよい炭素数6〜60のアリール基または炭素数7〜60のアラルキル基であり;R、R、R、およびRは、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3〜60のシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜20のヘテロアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜60のヘテロシクロアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数7〜60のアラルキル基であり、nは1から40である。
【0093】
これらの中でも、下記式で表される化合物が好ましい。


ここで、Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表す。
【0094】
ビンゲル誘導体:

ここでCnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表す。zは1から40であり;Xは、炭素数1〜20のエステル基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のケトン基、炭素数2〜20のジアルキルホスフェート、(置換)ピリジン、C≡C−R、(別名アセチレン)等の電子求引基(EWG)であり、RはSi−(R)、または三置換シリル基(同一または異なる)であり、YはH、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換アルキル基である。
【0095】
アザフレロイド誘導体:

ここでCnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し、xは1から40であり、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60の置換アリール基、SO−R'である。R'は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60の置換アリール基である。
【0096】
ジアゾリン誘導体:

ここで、Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し、RおよびR'は独立して炭素数6〜60のアリール基であり、xは1から40である。
【0097】
ケトラクタム誘導体:

ここでRはアルキル基または置換アルキル基であり、nは1から40である。
【0098】
ディールス・アルダー誘導体:

ここでxは1から40であり;Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数6〜60のヘテロアリール基、または炭素数6〜60の置換ヘテロアリール基であり;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数6〜60のヘテロアリール基、または炭素数6〜60の置換ヘテロアリール基であり;XはO、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20の置換アルキレン基、炭素数6〜60のアリーレン基、炭素数6〜60の置換アリーレン基、炭素数5〜60のヘテロアリーレン基、または炭素数5〜60の置換ヘテロアリーレン基であり;Yは炭素数6〜60のアリーレン基、炭素数6〜60の置換アリーレン基、炭素数5〜60のヘテロアリーレン基、炭素数5〜60の置換ヘテロアリーレン基、ビニレン基、または炭素数2〜20の置換ビニレン基を表す。

ここでxは1から40であり;Cnはフラーレン骨格(好ましくは、C60フラーレン骨格、C70フラーレン骨格)を表し;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数5〜60のヘテロアリール基、または炭素数5〜60の置換ヘテロアリール基であり;RはH、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルキルオキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜20の置換アルキル基、炭素数6〜60の置換アリール基、炭素数5〜60のヘテロアリール基、または炭素数5〜60の置換ヘテロアリール基であり;Yは炭素数6〜60のアリーレン基、炭素数6〜60の置換アリーレン基、炭素数5〜60のヘテロアリーレン基、炭素数5〜60の置換ヘテロアリーレン基、ビニレン基、または炭素数2〜20の置換ビニレン基である。
【0099】
C60フラーレンの誘導体の具体的構造としては、以下のようなものがあげられる。

【0100】
フラーレン誘導体においても、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と同様に、熱または光、電子線などの放射線の作用で架橋して溶媒に不溶化していることが好ましい。すなわち機能層においてフラーレン誘導体は、分子内に少なくとも一つの重合可能な置換基を含む化合物(具体的には分子内に少なくとも一つの重合可能な置換基を含むフラーレン誘導体)が重合した高分子化合物であることが好ましく、そのためには重合可能な置換基を有するフラーレン誘導体を用いて機能層となる膜を成膜し、さらに膜中の化合物を重合させて機能層を形成することが好ましい。重合可能な置換基としては前記に示されたものと同じものが挙げられる。
【0101】
重合可能な置換基を有する重合前のフラーレン誘導体の具体的構造としては、以下のようなものがあげられる。なお重合前のフラーレン誘導体とは、重合可能な置換基を含む化合物であって、他の化合物と重合する前のフラーレン誘導体を意味する。
【0102】



上記化合物中、C60環は、炭素数60のフラーレン環を表し、C70環は、炭素数70のフラーレン環を表す。
【0103】
n型有機半導体は上述したような低分子化合物に限らず、高分子化合物であってもよい。高分子n型有機半導体としては、上述した低分子n型有機半導体の2価の残基を繰り返し単位として有する高分子化合物があげられ、このような高分子n型有機半導体を構成する繰り返し単位の具体的構造としては下記のものが示される。

なお各構造式において、括弧記号に交差する直線、すなわち括弧記号”(”、または括弧記号”)”に交差する直線が、それぞれ結合手を表す。
【0104】
また高分子n型有機半導体としては、上述した低分子n型有機半導体の1価の残基を置換基または末端基として含む高分子化合物があげられ、このような高分子n型有機半導体の置換基または末端基の具体的構造としては、下記のものが示される。

なお各構造式において、括弧記号に交差する直線、すなわち括弧記号”(”、または括弧記号”)”に交差する直線が、それぞれ結合手を表す。
なお上述した低分子n型有機半導体の2価の残基は、上述したアミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物中に共重合されていてもよく、また上述した低分子n型有機半導体の1価の残基は、上述したアミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物に、置換基または末端基として結合していてもよい。
【0105】
次に本発明の有機EL素子の発光層に用いる高分子発光体について説明する。発光材料としては、高分子化合物の発光材料、低分子化合物の発光材料があげられ、高分子化合物の発光材料(高分子発光体)が好ましい。
【0106】
本発明に用いる高分子発光体は、ポリスチレン換算の数平均分子量が通常10〜10である。本発明の高分子発光体のなかでは、共役系高分子化合物であるものが好ましい。共役系高分子化合物とは高分子化合物の主鎖骨格に沿って非局在π電子対が存在している高分子化合物を意味する。この非局在電子としては、2重結合のかわりに、不対電子または孤立電子対が共鳴に加わる場合もある。
【0107】
<共役高分子化合物>
本発明に用いられる共役高分子化合物は、(1)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造から実質的になる高分子化合物、(2)二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子化合物、(3)二重結合と単結合とが交互に並んだ構造及び二重結合と単結合とが窒素原子を介して並んだ構造から実質的になる高分子化合物等を意味し、本明細書において、具体的には、非置換又は置換のフルオレンジイル基、非置換又は置換のベンゾフルオレンジイル基、非置換又は置換のジベンゾフランジイル基、非置換又は置換のジベンゾチオフェンジイル基、非置換又は置換のカルバゾールジイル基、非置換又は置換のチオフェンジイル基、非置換又は置換のフランジイル基、非置換又は置換のピロールジイル基、非置換又は置換のベンゾチアジアゾールジイル基、非置換又は置換のフェニレンビニレンジイル基、非置換又は置換のチエニレンビニレンジイル基、及び非置換又は置換のトリフェニルアミンジイル基からなる群から選ばれる一種又は二種以上を繰り返し単位とし、該繰り返し単位同士が直接又は連結基を介して結合した高分子化合物である。
【0108】
前記共役高分子化合物において、前記繰り返し単位同士が連結基を介して結合している場合、該連結基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル等があげられる。
【0109】
本発明に用いられる共役高分子化合物は、電荷輸送性の観点からは、式(8)及び式(9)からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位を有することが好ましい。

〔式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、同一又は相異なり、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基又はアリールアルキルチオ基を表す。〕
【0110】
式(8)及び式(9)中、R〜R17で表されるアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基の具体例等は、前記式(1)におけるそれらの定義、具体例等と同じである。
【0111】
前記共役高分子化合物は、膜形成能、溶剤への溶解性の観点から、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1×103〜1×107であることが好ましく、1×103〜1×106であることがより好ましい。
【0112】
本発明の有機EL素子が有する有機層中に含まれる共役高分子化合物は、一種類であっても二種類以上であってもよい。
【0113】
前記共役系高分子化合物は、用いる重合反応に適した官能基を有する単量体を合成した後に、必要に応じて、有機溶媒に溶解し、例えば、アルカリや適当な触媒、配位子を用いた公知のアリールカップリング等の重合方法により重合することができる。
【0114】
<有機EL素子>
本発明の有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層と、該発光層および該陽極の間に設けられる機能層とを有する有機EL素子であって、該機能層が、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを有する。
【0115】
本発明の有機EL素子は通常、基板上に形成される。この基板は有機EL素子を形成する際に化学的に変化しないものが好ましい。基板の材料としては例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等があげられる。不透明な基板を用いる場合には、一対の電極のうちの基板から離間して配置される一方の電極が光透過性を示す電極によって構成されることが好ましい。有機EL素子は通常この基板上に、湿式法または乾式法によって各層を順次積層することによって形成することができる。
【0116】
アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物に対するn型半導体の割合は、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物100重量部に対して、通常0.001〜1000重量部であり、好ましくは0.01〜100重量部であり、より好ましくは0.01〜80重量部であり、さらに好ましくは0.01〜50重量部である。
【0117】
機能層の成膜方法としては、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを含む組成物を溶解または分散した、溶液または分散液からの成膜方法があげられる。
【0118】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、上記組成物を溶解するものであれば特に制限はない。
この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類溶媒等があげられる。本発明に用いられる上記組成物は通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。また分散液からの成膜に用いる分散媒は、上記組成物を均一に分散するものであれば特に制限はなく、例えば上記で例示した溶媒を分散媒として用いてもよい。
【0119】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0120】
機能層を成膜後、この機能層上に設けられる発光層などを形成するために使用する溶液に対して機能層を不溶化するために、熱または光、電子線などの放射線を作用させることによって、重合可能な置換基に重合反応を起こすことが好ましい。
【0121】
発光層は、例えば上述した高分子発光体を溶解または分散した、溶液または分散液からの成膜方法によって形成することができる。溶液または分散液からの成膜方法は機能層の成膜方法と同様であり、その際に用いられる溶媒または分散媒も、高分子発光体に応じて適宜選択される。なお発光体が低分子であっても、この低分子発光体を溶媒に溶解または分散媒に分散した、溶液または分散液から成膜する方法によって発光層を形成してもよい。
【0122】
発光層の膜厚は通常1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0123】
発光層から放射される光が陽極を通って外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0124】
陽極の膜厚は、要求される特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0125】
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0126】
陰極の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設計され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0127】
有機EL素子は陽極と発光層との間に、機能層として、いわゆる正孔注入層、正孔輸送層などが設けられる。また発光層と陰極との間にも必要に応じていわゆる電子注入層、電子輸送層などが設けられる。
【0128】
アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを含む機能層は、長寿命化の観点からは発光層に接して設けられることが好ましい。
【0129】
有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
i)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【0130】
電子輸送層や電子注入層は通常の湿式法または乾式法を用いて形成することができる。
前記電子輸送層に用いられる材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等があげられる。また、前記正孔輸送層に用いられる材料としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、ポリシロキサン誘導体、芳香族アミン残基を有する高分子化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等があげられる。また電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。
本発明の有機EL素子は、さらにバッファ層を含んでいてもよく、バッファ層として用いられる材料としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる1種以上の金属のハロゲン化物および酸化物等があげられ、具体的にはフッ化リチウムが挙げられる。
また酸化チタン等無機半導体の微粒子をバッファ層に用いることもできる。
【0131】
<有機EL素子を備える発光装置または表示装置>
以上説明した有機EL素子は、曲面状や平面状の照明装置、例えばスキャナの光源として用いられる面状光源、及び表示装置などの発光装置または表示装置に好適に用いることができる。
【0132】
有機EL素子を備える表示装置としては、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置などをあげることができる。ドットマトリックス表示装置には、アクティブマトリックス表示装置及びパッシブマトリックス表示装置などがある。有機EL素子は、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置において、各画素を構成する発光素子として用いられる。また有機EL素子は、セグメント表示装置において、各セグメントを構成する発光素子として用いられ、液晶表示装置において、バックライトとして用いられる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
−分子量の測定方法−
実施例において、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。具体的には、GPC(東ソー製、商品名:HLC-8220GPC)により、TSKgel SuperHM-H(東ソー製)3本を直列に繋げたカラムを用いて、展開溶媒としてテトラヒドロフランを0.5mL/分の流速で流し、40℃で測定した。検出器には、示差屈折率検出器を用いた。
【0135】
<合成例1>(高分子化合物1の合成)
500mlの4口フラスコにトリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Triscaprylylmethylammoniumchloride、商品名:Aliquat336「登録商標」、Aldrich製)1.72g、下記式:

で表される化合物A 6.2171g、下記式:

で表される化合物B 0.5085g、下記式:

で表される化合物C 6.2225g、及び下記式:

で表される化合物D 0.5487gを取り、窒素置換した。トルエン100mlを加え、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) 7.6mg、炭酸ナトリウム水溶液24mlを加え、還流下で3時間攪拌した。その後、フェニルホウ酸0.40gを加え、終夜攪拌した。その後、ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート水溶液を加え、さらに還流下で3時間攪拌した。得られた反応液を分液し、有機相を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、メタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、シリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール中に滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥した後、トルエンに溶解させ、メタノールに滴下ところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥して、7.72gの共役高分子化合物である高分子化合物1を得た。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.2×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは2.9×105であった。
【0136】
<合成例2>(高分子化合物2の合成)
5Lセパラブルフラスコにトリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Triscaprylylmethylammoniumchloride、商品名:Aliquat336「登録商標」、Aldrich製)40.18g、下記式:

で表される化合物E 234.06g、下記式:

で表される化合物F 172.06g、及び下記式:

で表される化合物G 28.5528gを取り、窒素置換した。アルゴンバブリングしたトルエン2620gを加え、攪拌しながら更に30分間バブリングした。酢酸パラジウム 99.1mg、トリス(o−トリル)ホスフィン 937.0mgを加え、158gのトルエンで洗い流し、95℃に加熱した。17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液855gを滴下後、バス温を110℃に昇温し、9.5時間攪拌した後、フェニルホウ酸5.39gをトルエン96mlに溶解して加え、14時間攪拌した。200mlのトルエンを加え、反応液を分液し、有機相を3重量%酢酸水溶液850mlで2回洗浄し、さらに850mlの水とナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート19.89gを加え、4時間攪拌した。分液後、有機相をシリカゲル−アルミナカラムを通し、トルエンで洗浄した。得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、メタノールで洗浄した。減圧乾燥後、11Lのトルエンに溶解させ、得られたトルエン溶液をメタノール50Lに滴下したところ、沈殿が生じた。得られた沈殿を、ろ過し、減圧乾燥して、278.39gの高分子化合物2を得た。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.7×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.8×105であった。
【0137】
(重合前のフラーレン誘導体の合成)
フラーレン誘導体合成に用いた試薬及び溶媒は、市販品をそのまま使用するか、乾燥剤存在下で蒸留精製した品を使用した。C60フラーレンはフロンティアカーボン社製を使用した。NMRスペクトルはJEOL社製 MH500を用いて測定し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準に使用した。赤外吸収スペクトルは島津製作所社製 FT−IR 8000を用いて測定した。
【0138】
(ベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテート 2の合成)

[第1ステップ]:Dean−Starkトラップを装着した2口フラスコにブロモ酢酸(20.8g、150mmol)、ベンジルアルコール(BnOH)(16.2g、150mmol)、パラ−トルエンスルホン酸(p−TsOH)(258mg、1.5mmol)、ベンゼン(300mL)を加え120℃ で24時間脱水縮合した。溶媒をエバポレーターで減圧留去し、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/エチルアセテート=10/1、5/1)で精製し、ブロモ酢酸ベンジルエステル(34.3g、150mmol)を黄色油状物として定量的に得た。
【0139】
0.71(ヘキサン/エチルアセテート=4/1);
H NMR(500MHz,ppm,CDCl) δ 3.81 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 7.31 (s, 5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl) δ 25.74, 67.79, 128.27, 128.48, 128.54, 134.88, 166.91;
IR(neat,cm−1) 2959, 1751, 1458, 1412, 1377, 1167, 972, 750, 698。
【0140】
[第2ステップ]: アルゴン雰囲気下、ブロモ酢酸ベンジルエステル(13.7g、60mmol)のジクロロメタン(90mL)溶液にトリエチルアミン(17mL、120mmol)を0℃で加え、得られた混合液を20分同温度で攪拌し、ついで、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(12mL、120mmol)のジクロロメタン(40mL)溶液を加え、室温で4時間攪拌した。ついで、有機層を水洗(3回)後,無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで溶媒を減圧留去後、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=1/0、10/1、5/1)で精製し、ベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテート 2(12.2g、48.0mmol)を収率80%で無色油状物として得た。
【0141】
0.48(エチルアセテート/メタノール=2/1);
H NMR(500MHz,ppm,CDCl) δ 2.83 (t, 2H, J=5.1Hz), 3.50 (s, 2H), 3.52 (t, 2H, J=4.6Hz), 3.58 (t, 2H, J=5.0Hz), 3.65 (t, 2H, J=4.6Hz), 5.11 (s, 2H), 7.28-7.30 (m, 5H);
13C NMR(125MHz,ppm,CDCl) δ 48.46, 50.25, 61.29, 66.38, 69.80, 72.23, 126.63, 128.12, 128.37, 135.30, 171.78;
IR(neat,cm−1) 3412, 2880, 1719, 1638, 1560, 1508, 1458, 1067, 669。
【0142】
([2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸 1の合成)


[第1ステップ]: アルゴン雰囲気下ベンジル[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアミノ]アセテート 2(6.58g、26mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液にトリエチルアミン(4.3mL、31mmol)を0℃で加え、ついで4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(32mg、0.26mmol)を加え、得られた混合液を20分攪拌後、これにジ−tert−ブチルジカルボネート((Boc)2O)(6.77g、31mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液を滴下した。次いで、反応混合液を室温で4時間攪拌後、水を入れた3角フラスコ中に注ぎ入れて反応を停止し、ジエチルエーテル抽出(3回)を行った。有機層を乾燥後、減圧濃縮、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1、2.5/1、2/1)で精製を行い、ベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83g、16.5mmol)を収率63%で無色油状物として得た。
【0143】
Rf 0.58(エチルアセテート/メタノール=20/1);
1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3) δ 1.34 (d, 9H, J=54.5 Hz), 2.19 (brs, 1H), 3.38-3.45 (m, 4H), 3.50-3.60 (m, 4H), 3.99 (d, 2H, J=41.3 Hz), 5.09 (d, 2H, J=4.1 Hz), 7.25-7.30 (m, 5H);
13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 27.82, 28.05, 47.90, 48.20, 49.81, 50.39, 61.23, 66.42, 69.92, 72.12, 80.08, 127.93, 128.14, 135.25, 154.99, 155.19, 169.94, 170.07;
IR (neat, cm-1) 3449, 2934, 2872, 1751, 1701, 1458, 1400, 1367, 1252, 1143;
Anal. Calcd for C18H27NO6: C, 61.17; H, 7.70; N, 3.96. Found: C, 60.01; H, 7.75; N, 4.13。
【0144】
[第2ステップ]: アルゴンガス雰囲気下,水素化ナトリウム(1.2g、24.8mmol、50% in mineral oil)のテトラヒドロフラン(THF)(10mL)溶液にベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(5.83g、16.5mmol)のTHF(20mL)溶液を0℃で滴下し、同温度で20分攪拌後、ヨードメタン(MeI)(1.6mL、24.8mmol)を0℃で加えた。 反応混合液を室温で20時間攪拌し、ついでアイスバスで冷却しながら水を加えて反応を停止した。エーテル抽出(3回)し、有機層を乾燥後、減圧濃縮、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1、3/1)で精製して ベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(3.02g、8.21mmol)を収率50%で無色油状物として得た。
【0145】
Rf 0.54(ヘキサン/エチルアセテート=1/1);
1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3) δ 1.34 (d, 9H, J=51.8 Hz), 3.28 (d, 3H, J=2.7 Hz), 3.37-3.46 (m, 6H), 3.52 (dt, 2H, J=5.4Hz, 16.5 Hz), 4.02 (d, 2H, J= 34.8 Hz), 5.09 (d, 2H, J=4.5 Hz), 7.24-7.30 (m, 5H);
13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 24.93, 25.16, 44.68, 45.00, 46.70, 47.40, 55.78, 63.30, 67.22, 68.60, 76.95, 124.98, 125.14, 125.36, 132.49, 151.99, 152.31, 166.84, 166.96;
IR (neat, cm-1) 2880, 1751, 1701, 1560, 1458, 1400, 1366, 1117, 698, 617;
Anal. Calcd for C19H29NO6: C, 62.11; H, 7.96; N, 3.81. Found: C, 62.15; H, 8.16; N, 3.83。
【0146】
[第3ステップ]: アルゴン雰囲気下、ベンジル{tert−ブトキシカルボニル−[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチル]アミノ}アセテート(3.02g、8.21mmol)のジクロロメタン(17mL)溶液にトリフルオロ酢酸(TFA)(9.0mL)を加え室温で7時間攪拌した。ついで、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて pH10に調整し、ジクロロメタン抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮してベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート(2.18g、8.19mmol)を黄色油状物として定量的に得た。
【0147】
Rf 0.32 (エチルアセテート/メタノール=20/1);
1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3) δ 1.99 (brs, 1H), 2.83 (t, 2H, J=5.3 Hz), 3.38 (s, 3H), 3.50 (s, 2H), 3.54 (t, 2H, J=4.6 Hz), 3.60-3.62 (m, 4H), 5.17 (s, 2H), 7.32-7.38 (m, 5H);
13C NMR (125 MHz, ppm, CDCl3) δ 48.46, 50.66, 58.76, 66.20, 70.00, 70.44, 71.64, 128.09, 128.33, 135.44, 171.84;
IR (neat, cm-1) 3350, 2876, 1736, 1560, 1458, 1117, 1030, 698, 619;
Anal. Calcd for C14H21NO4: C, 62.90; H, 7.92; N, 5.24. Found: C, 62.28; H, 8.20; N, 5.05。
【0148】
[第4ステップ]: ベンジル[2−(2−メトキシ−エトキシ)エチルアミノ]アセテート(2.19g、8.19mmol)のメタノール(27mL)溶液に、パラジウムを10重量%担持させた活性炭(219mg)を室温で加え、水素ガスをパージした後、水素雰囲気下、室温で7時間攪拌した。セライトパッドをしきつめたグラスフィルターでPd/Cを除去し、セライト層をメタノールで洗浄し、濾液を減圧濃縮し[2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸 1(1.38g、7.78mmol)を収率95%で黄色油状物として得た。
【0149】
1H NMR (500 MHz, ppm, MeOD) δ 3.21 (t, 2H, J=5.1 Hz), 3.38 (s, 3H), 3.51 (s, 2H), 3.57 (t, 2H, J=4.4 Hz), 3.65 (t, 2H, J=4.6 Hz), 3.73 (t, 2H, J=5.1 Hz);
13C NMR (125 MHz, ppm, MeOD) δ 48.13, 50.49, 59.16, 67.08, 71.05, 72.85, 171.10;
IR (neat, cm-1) 3414, 2827, 1751, 1630, 1369, 1111, 1028, 851, 799;
Anal. Calcd for C7H15NO4: C, 47.45; H, 8.53; N, 7.90. Found: C, 46.20; H, 8.49; N, 7.43。
【0150】
アルデヒド類4の合成


窒素雰囲気下、50mlナスフラスコに上記式に示されるブロモ体 {3.0g(16.3mmol)}、無水テトラヒドロフラン(THF)50mlを仕込み、窒素気流下−78℃に冷却し、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.59M)11.3ml(18.0mmol)を滴下し、同温度で30分撹拌した。次いで、ナスフラスコ中に無水ジメチルホルムアミド2.40gを滴下し、同温度でさらに30分攪拌した後、室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。反応液を水100ml中に注ぎ、酢酸エチル50mlを用いて油相を2回抽出した後、無水硫酸マグネシウムを用いて油相を乾燥した。マグネシウム化合物を濾別後、エバポレータを用いて油相を減圧濃縮し得られた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(WakosilC−300、展開液:ヘキサン/酢酸エチル=3:1(容積比))にて精製することで、目的物である上記式に示されるアルデヒド類 を1.54g(収率71.1%)得た。
【0151】
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ3.24(s、4H)、7.21(d、1H)、7.57(s、1H)、7.72(d、1H)、9.93(s、1H)
【0152】
<合成例3>
重合前のフラーレン誘導体H及び重合前のフラーレン誘導体Iの合成


窒素雰囲気下、50mlナスフラスコに上記式で示されるアルデヒド類 {0.19g(1.40mmol)}と上記式で示される[2−(2−メトキシエトキシ)エチルアミノ]酢酸 {0.19g(1.04mmol)}、C60 0.50g(0.69mmol)、クロロベンゼン30mlを仕込み、窒素気流下130℃にて6時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却後、反応液をエバポレータを用いて減圧濃縮した。次いで、シリカゲルクロマトグラフィー(WakosilC−300)を用いて、得られた残渣から重合前のフラーレン誘導体の分離を行った。重合前のフラーレン誘導体の分離において、シリカゲルクロマトグラフィーの展開液として、二硫化炭素(CS)を用い、未反応のC60を分離し、回収した。次いで、展開液をトルエンと酢酸エチルの混合溶媒に切り替え、混合溶媒の比率を100:0(トルエンと酢酸エチルの体積比)から90:10(トルエンと酢酸エチルの体積比)とし、重合前のフラーレン誘導体を含む結晶を分離した。該結晶をメタノール10mlで洗浄し、減圧乾燥することで目的物である上記式で示される重合前のフラーレン誘導体Hを80mg(収率11.9%)得た。
【0153】
次いで、展開液の混合溶媒の比率をトルエン/酢酸エチル=1:1(体積比)として分画を行った。分画した溶液を濃縮し、残渣をメタノール10mlで洗浄し、その後、減圧乾燥することで、式(12)で表される構造を2個以上有する、重合前のフラーレン誘導体を合計116mg得た。式(12)で表される構造を2個以上有する、重合前のフラーレン誘導体としては、例えば、上記式で示される重合前のフラーレン誘導体Iが挙げられる。


(12)
【0154】
重合前のフラーレン誘導体HをNMRで分析した結果を以下に示す。
1H−NMR(270MHz/CDCl):
δ2.82(m、1H)、3.16(brs、4H)、3.30−3.50(m、1H)、3.45(s、3H)3.65(m、2H)、3.72−3.80(m、2H)、3.90−4.10(m、2H)、4.28(d、1H)、5.10(s、1H)、5.20(d、1H)、7.06(d、1H)、7.40―7.70(brd、1H)。
【0155】
<高分子化合物3の合成>
200mLセパラブルフラスコに、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸エチレングリコールエステル 1.061g(2.00mmol)、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン 0.987g(1.80mmol)、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−ジブロモペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミド(1,6−ジブロモ体と1,7−ジブロモ体との異性体混合物) 0.174g(0.20mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ社製) 0.26gとトルエン 20mLを加えた。
窒素雰囲気下、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド 2.1mgを加え85℃に加熱した。この溶液に、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液 5.4mLを滴下しながら105℃に加熱した後、6hr攪拌した。次にフェニルホウ酸 0.244g、トルエン20mLを加え、105℃で終夜攪拌した。
【0156】
水層を除いた後、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 1.11g、イオン交換水 22mLを加え85℃で2hr攪拌した。有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水 (2回)、3重量%酢酸水溶液(2回)、イオン交換水(2回)の順番で洗浄した。
【0157】
有機層をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し固体を得た。
この固体をトルエンに溶解し、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに溶液を通液し、通液された溶出液をメタノールに滴下しポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し、高分子化合物(以後、高分子化合物3と呼ぶ)を1.14g得た。また、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=1.2×10、Mw=2.6×10であった。
【0158】
高分子化合物3は、以下の繰り返し単位を以下のモル比(95:5)で有する重合体である(原料から求めた理論値である)。

95 : 5
【0159】
N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−ジブロモペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミド(1,6−ジブロモ体と1,7−ジブロモ体との異性体混合物)は、例えば、Journal of Chemistry Vol.70 (2005) 4323〜4331ページに記載の方法で合成することができる。
【0160】
<塗布溶液Aの作製>
高分子化合物1を1.0重量%の濃度でキシレンに溶解させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Aを作製した。
【0161】
<塗布溶液Bの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物2:PCBM=9:1(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Bを作製した。
【0162】
<塗布溶液Cの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物2:PCBM=95:5(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Cを作製した。
【0163】
<塗布溶液Dの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物2:PCBM=99:1(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Dを作製した。
【0164】
<塗布溶液Eの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Eを作製した。
【0165】
<塗布溶液Fの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらに重合前のフラーレン誘導体Hを溶解{高分子化合物2:重合前のフラーレン誘導体H=95:5(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Fを作製した。
【0166】
<塗布溶液Gの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらに重合前のフラーレン誘導体として合成例3で製造した式(12)で表される構造を2個以上有する重合前のフラーレン誘導体Iを溶解{高分子化合物2:重合前のフラーレン誘導体I=95:5(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Gを作製した。
【0167】
<塗布溶液Hの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でクロロベンゼンに溶解させ、さらに下記化合物(シグマ−アルドリッチ社より購入)を溶解{高分子化合物2:化合物=95:5(重量比)}させ、塗布溶液Hを作製した。

N,N′-Dioctyl-3,4,9,10-perylenedicarboximide
【0168】
<塗布溶液Iの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらに下記化合物(シグマ−アルドリッチ社より購入)を溶解{高分子化合物2:下記化合物=95:5(重量比)}させ、塗布溶液Iを作製した。

N,N′-Bis(2,5-di-tert-butylphenyl)-3,4,9,10-perylenedicarboximide
【0169】
<塗布溶液Jの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、さらにフラーレン誘導体として[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS61BFB)を溶解{高分子化合物2:PCBM=100:20(重量比)}させ、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Jを作製した。
【0170】
<塗布溶液Kの作製>
高分子化合物2を0.5重量%の濃度でキシレンに溶解させ、高分子化合物3を1重量%の濃度でクロロベンゼンに溶解させた。さらにこれらの溶液を、高分子化合物2:高分子化合物3=80:20(重量比)の割合となるように混合し、その後、該溶液を孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液Kを作製した。
【0171】
<実施例1>
(有機EL素子の作製、評価)
スパッタ法により陽極としてITO膜(膜厚:150nm)が付けられたガラス基板上に、正孔注入層形成用溶液(Plextronics社製、商品名:HIL764)をスピンコートし、さらにこれを大気下ホットプレート上で、170℃で15分間乾燥することにより正孔注入層(膜厚:50nm)を形成した。次に、塗布溶液Bを正孔注入層上にスピンコートし、グローブボックス中の窒素雰囲気下で、180℃で60分間ベークすることにより正孔輸送層(膜厚:20nm)を作製した。さらに前記塗布溶液Aを正孔輸送層上にスピンコートし、発光層を形成した。発光層の形成ではその膜厚が80nmとなるように調整した。
【0172】
その後、窒素雰囲気下で130℃のホットプレートで10分間ベークし、さらにNaFを4nmの厚さで蒸着し、次いで、Alを100nmの厚さで蒸着し、陰極を形成した。
蒸着のときの真空度は、1×10-4Pa〜9×10-3Paの範囲であった。素子の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた素子を初期輝度5000cd/mで定電流駆動し、寿命試験をおこなった。輝度が4000cd/m(初期輝度の80%)に低下するまでの時間(これをLT80と呼ぶ)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0173】
<実施例2>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0174】
<実施例3>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Dを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0175】
<実施例4>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Fを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0176】
<実施例5>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0177】
<実施例6>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Hを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0178】
<実施例7>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Iを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0179】
<実施例8>
(有機EL素子の作製、評価)
スパッタ法により陽極としてITO膜(膜厚:150nm)が付けられたガラス基板上に、正孔注入層形成用溶液(Plextronics社製、商品名:HIL764)をスピンコートし、さらにこれを大気下ホットプレート上で、170℃で15分間乾燥することにより正孔注入層(膜厚:50nm)を形成した。次に、塗布溶液Bを正孔注入層上にスピンコートし、グローブボックス中の窒素雰囲気下で、180℃で60分間ベークすることにより正孔輸送層1(膜厚:10nm)を作製した。さらに、正孔輸送層1上に、塗布溶液Eをスピンコートし、グローブボックス中の窒素雰囲気下で、180℃で60分間ベークすることにより正孔輸送層2(膜厚:10nm)を作製した。さらに前記塗布溶液Aを正孔輸送層2上にスピンコートし、発光層を形成した。発光層の形成ではその膜厚が80nmとなるように調整した。
【0180】
<実施例9>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Kを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0181】
その後、窒素雰囲気下で130℃のホットプレートで10分間ベークし、さらにNaFを4nmの厚さで蒸着し、次いで、Alを100nmの厚さで蒸着し、陰極を形成した。
蒸着のときの真空度は、1×10-4Pa〜9×10-3Paの範囲であった。素子の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。得られた素子を初期輝度5000cd/mで定電流駆動し、寿命試験をおこなった。輝度が4000cd/m(初期輝度の80%)に低下するまでの時間(これをLT80と呼ぶ)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0182】
<比較例1>
(有機EL素子の作製、評価)
塗布溶液Bの代わりに塗布溶液Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製し、有機EL素子のLT80を測定した。測定結果を表1に示す。
【0183】
【表1】

【0184】
<参考例1>
(正孔輸送層薄膜の作製、評価)
フラーレン誘導体を含有する塗布溶液Jをガラス板上にスピンコートし、180℃で60分間ベークすることにより有機薄膜(膜厚:20nm)を作製した。UV発光ダイオードを使用して、波長が375nmの励起光を照射する東京システム開発株式会社製の有機ELテストシステムで、正孔輸送層薄膜のPLスペクトルを測定した。
【0185】
<参考例2>
(正孔輸送層薄膜の作製、評価)
フラーレン誘導体を含有しない塗布溶液Eをガラス板上にスピンコートし、180℃で60分間ベークすることにより有機薄膜(膜厚:20nm)を作製した。励起光にUV発光ダイオードを使用した東京システム開発株式会社製の有機ELテストシステムで、正孔輸送層薄膜のPLスペクトルを測定した。435nmにおけるPL強度は、参考例2の値を100とすると参考例1の値は7であった。
【0186】
−評価−
表1からわかるように、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物に加えて、n型半導体を含む正孔輸送層を用いることによって、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物のみからなる正孔輸送層を用いたときよりも、LT80寿命が長い有機EL素子を得ることができた。また、参考例1、2より、フラーレン誘導体を含有する正孔輸送層は、フラーレン誘導体を含有しない正孔輸送層に比べて著しくPL強度が低下し、消光されていることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極および陰極からなる一対の電極と、
該電極間に設けられる発光層と、
該発光層および該陽極の間に設けられる機能層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該機能層が、アミン残基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と、n型半導体とを含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
n型半導体がフラーレン及び/又はフラーレンの誘導体である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
n型半導体がペリレンもしくはナフタレンのテトラカルボン酸ジイミドの誘導体、またはペリレンもしくはナフタレンのテトラカルボン酸二無水物の誘導体である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
n型半導体が高分子化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記機能層が、発光層に接している請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記アミン残基を有する繰り返し単位が、次式(1)で表される請求項1〜5のいずれかにに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

〔式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、それぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基を表す。E1、E2およびE3は、それぞれ独立にアリール基または1価の複素環基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0または1を表す。〕
【請求項7】
前記高分子化合物が、式(1)で示される繰り返し単位以外に、下記式(2)、式(3)、式(4)または式(5)でそれぞれ示される繰り返し単位からなる群から選ばれた1種以上の繰り返し単位をさらに有する請求項1〜6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

−Ar12− (2)
―Ar12−X1―(Ar13−X2)c―Ar14− (3)
−Ar12−X2− (4)
−X2− (5)
〔式中、Ar12、Ar13およびAr14はそれぞれ独立にアリーレン基、2価の複素環基または金属錯体構造を有する2価の基を示す。X1は、−CR2=CR3−、−C≡C−または−(SiR56d−を示す。X2は−CR2=CR3−、−C≡C−、−N(R4)−、または−(SiR56d−を示す。R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基またはシアノ基を示す。R4、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基またはアリールアルキル基を表す。cは0〜2の整数を表す。dは1〜12の整数を表す。Ar13、R2、R3、R5およびR6がそれぞれ複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。またAr1、Ar、Ar、E、Eで表される基から選ばれる基(好ましくはAr、E、Eで表される基から選ばれる基)は、該基と同一の窒素原子に結合するAr1、Ar、Ar、Ar、E、EおよびEで表される基から選ばれる基と、互いに直結して、又は−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(R)−、−C(=O)−N(R)−又は−C(R)(R)−で結合して、5〜7員環を形成していてもよい。〕
【請求項8】
前記高分子化合物が、分子内に少なくとも一つの重合可能な置換基を含む化合物が重合した高分子化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記フラーレン誘導体が、分子内に少なくとも一つの重合可能な置換基を含むフラーレン誘導体が重合した高分子化合物である請求項2〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える発光装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置。