説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】外部量子収率が十分に向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に存在する発光層とを有し、該発光層が、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物と、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し、発光性である高分子化合物とからなる組成物からなり、該(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が、1×103〜5×104である有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子とは、一対の電極からの電流注入によって発光する有機発光材料を含む素子である。陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が有機発光材料内で再結合する際のエネルギーを光として外部へ取り出すものである。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子としては、高分子化合物を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が、湿式塗布により簡便に有機層を形成することができるため、発光パネルの大面積化や製造における低コスト化に有利であることが知られている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Applied Physics, 87, 4254, 2000
【非特許文献2】Applied Physics Letters, 80, 4247, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の有機エレクトロルミネッセンス素子では、外部量子収率が未だ十分でないという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、外部量子収率が十分に向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第一に、
陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に存在する発光層とを有し、
該発光層が、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物と、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物とからなる組成物からなり、
該(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1×103〜5×104である、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0008】
本発明は第二に、前記(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物が、ポリスチレン骨格を有する高分子化合物である、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0009】
本発明は第三に、前記(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物が、ポリアクリレート骨格を有する高分子化合物である、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0010】
本発明は第四に、前記(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物が、ポリカーボネート骨格を有する高分子化合物である、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0011】
本発明は第五に、前記(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物が、式(1)で示される繰り返し単位を有する、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0012】
【化1】

(1)
(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
【0013】
本発明は第六に、前記(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物が、式(2)で示される繰り返し単位を有する、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0014】
【化2】

(2)
【0015】
本発明は第七に、前記(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物が、式(3)で示される繰り返し単位を有する、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0016】
【化3】

(3)
(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、Ar5、Ar6及びAr7は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、m及びnは、同一又は相異なり、0又は1を表す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、外部量子収率が十分に向上した有機エレクトロルミネッセンス素子である。また、本発明の好ましい実施形態では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、輝度寿命にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に存在する発光層とを有し、該発光層が、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物と、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物とからなる組成物からなり、該(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が、1×103〜5×104である有機エレクトロルミネッセンス素子である。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常任意の構成要素として基板を更に有し、かかる基板の面上に前記陰極、陽極、発光層、並びに必要に応じてその他の任意の構成要素を設けた構成とすることができる。
【0019】
その他の任意の構成要素としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、インターレイヤー等の機能層が挙げられる。有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率が高まり、駆動電圧が低くなり、かつ、輝度寿命が長くなるので、有機エレクトロルミネッセンス素子が、陽極と発光層との間に機能層を有することが好ましく、該機能層が正孔輸送層であることがより好ましい。
【0020】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一態様としては、基板上に陽極が設けられ、その上層として機能層及び発光層が積層され、更にその上層として陰極が積層された素子が挙げられる。変形例としては、陰極を基板上に設け、陽極を機能層及び発光層の上層として設けた素子が挙げられる。また、他の変形例としては、基板側から採光する所謂ボトムエミッションタイプ、基板と反対側から採光する所謂トップエミッションタイプ、両面採光型のいずれのタイプの有機エレクトロルミネッセンス素子等が挙げられる。更に他の変形例としては、任意の保護膜、バッファー膜、反射層等の他の機能を有する層を設けた素子が挙げられる。なお、有機エレクトロルミネッセンス素子の構成については、下記にて詳述する。有機エレクトロルミネッセンス素子は更に封止膜、或いは、封止基板が覆い被せられることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子が外気と遮断された高分子発光装置が形成される。
【0021】
以下に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の実施形態について、より具体的に説明する。なお、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成及び製造方法は、下記の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成及び製造方法のみに限定されるものではない。
【0022】
1.陽極
本発明において陽極は、通常、基板上に、直接又は必要に応じて他の層を介して設けられる。本発明において用いられる陽極を構成する材料の詳細については後述する。
【0023】
2.正孔輸送層
本発明において正孔輸送層は、通常、基板上に設けられた陽極又は陰極の上に、直接又は必要に応じて他の層を介して設けられる。本発明において用いられる正孔輸送層は、式(4)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を含むことが好ましい。
【0024】
【化4】

(4)
(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、Ar5、Ar6及びAr7は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、m及びnは、同一又は相異なり、0又は1を表す。)
【0025】
また、前記高分子化合物は、更に他の繰り返し単位を有していてもよく、式(5)で示される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0026】
【化5】

(5)
(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
【0027】
本発明において用いられる正孔輸送層が含んでもよい材料の詳細については後述する。
【0028】
3.発光層
本発明において発光層は、(a)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物と、(b)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物とからなる組成物からなり、該(a)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1×103〜5×104である。本発明において用いられる発光層が含んでもよい材料の詳細については後述する。
【0029】
4.陰極
本発明において陰極は、前記発光層の上に直接、或いは、任意の層を介して設けられる。前記陰極は少なくとも1層の層で構成され、複数の層からなる場合には、発光層の近くに位置する層から順に、第1陰極層、第2陰極層、第3陰極層等と表示する。本発明において用いられる陰極を構成する材料の詳細については後述する。
【0030】
5.その他の構成要素
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、更に任意の構成要素を備えることができる。例えば、正孔輸送層を設置する場合、陽極と正孔輸送層との間には任意に正孔注入層を有することができ、更に、発光層と正孔注入層(正孔注入層が存在する場合)又は陽極(正孔注入層が存在しない場合)との間に任意にインターレイヤーを有することができる。一方、陰極と発光層との間には任意に電子注入層を有することができ、更に、発光層と電子注入層(電子注入層が存在する場合)又は陰極(電子注入層が存在しない場合)との間に電子輸送層、正孔ブロック層のうちの1層以上を有することができる。
【0031】
ここで、陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層等に正孔を注入するものであり、陰極は、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、発光層等に電子を注入するものである。
【0032】
発光層とは、電界を印加した際に、陽極側に隣接する層より正孔を受け取ることができ、陰極側に隣接する層より電子を受け取ることができる機能、注入された電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、及び電子と正孔の再結合の場を提供しこれを発光につなげる機能を有する層を言う。
【0033】
電子注入層及び電子輸送層とは、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有する層を言う。
【0034】
正孔ブロック層とは、主に陽極から注入された正孔を障壁する機能を有し、更に必要に応じて陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能のいずれかを有する層を言う。
【0035】
正孔注入層及び正孔輸送層とは、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する層を言う。
【0036】
インターレイヤーとは、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能の少なくとも1つを有し、通常、発光層に隣接して配置され、発光層と陽極、又は発光層と正孔注入層若しくは正孔輸送層とを隔離する役割をもつ。
【0037】
なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。また、電子注入層と正孔注入層を総称して電荷注入層と呼ぶ。
【0038】
即ち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は下記の層構成(a)を有することができ、又は、層構成(a)から、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層の1層以上を省略した層構成を有することもできる。
【0039】
(a)陽極−正孔注入層−正孔輸送層及び/又はインターレイヤー−発光層−正孔ブロック層及び/又は電子輸送層−電子注入層−陰極
(ここで、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを示す。)
【0040】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成の好ましい具体例は、以下のとおりである。
(b)陽極−正孔輸送層−発光層−陰極
(c)陽極−発光層−電子輸送層−陰極
(d)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
(e)陽極−インターレイヤー−発光層−陰極
(f)陽極−正孔輸送層−インターレイヤー−発光層−陰極
(g)陽極−インターレイヤー−発光層−電子輸送層−陰極
(h)陽極−正孔輸送層−インターレイヤー−発光層−電子輸送層−陰極
(i)陽極−電荷注入層−発光層−陰極
(j)陽極−発光層−電荷注入層−陰極
(k)陽極−電荷注入層−発光層−電荷注入層−陰極
(l)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−陰極
(m)陽極−正孔輸送層−発光層−電荷注入層−陰極
(n)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電荷注入層−陰極
(o)陽極−電荷注入層−発光層−電子輸送層−陰極
(p)陽極−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(q)陽極−電荷注入層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(r)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
(s)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(t)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
【0041】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、更に電極との密着性向上や電極からの電荷の注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層(即ち、正孔輸送層又は電子輸送層)又は発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案すればよい。
【0042】
6.各層を構成する材料
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する各層の材料及び形成方法について、詳説する。
【0043】
<基板>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス基板、プラスチック基板、高分子フィルム、金属フィルム、シリコン基板、これらを積層したもの等が用いられる。前記基板としては、市販のものが入手可能であるが、公知の方法により製造することもできる。
【0044】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子がディスプレイ装置の画素を構成する際には、当該基板上に画素駆動用の回路が設けられていてもよいし、当該駆動回路上に平坦化膜が設けられていてもよい。平坦化膜が設けられる場合には、該平坦化膜の中心線平均粗さ(Ra)がRa<10nmを満たすことが好ましい。Raは、日本工業規格JISのJIS−B0601−2001に基づいて、JIS−B0651〜JIS−B0656及びJIS−B0671−1を参考に計測できる。
【0045】
<陽極>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する陽極においては、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層等で用いられる材料への正孔供給性が良好になるので、かかる陽極の発光層側表面の仕事関数が4.0eV以上であることが好ましい。
【0046】
陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物等の電気伝導性化合物、又はこれらの混合物等を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物、又は、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。
【0047】
前記陽極は、これら材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合は、仕事関数が4.0eV以上である材料を発光層側の最表面層に用いることがより好ましい。
【0048】
陽極の作製方法としては、公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0049】
陽極の厚さは、通常10nm〜10μmであり、好ましくは50nm〜500nmである。また、短絡等の電気的接続の不良をより効果的に防止できるので、陽極の発光層側表面の中心線平均粗さ(Ra)はRa<10nmを満たすことが好ましく、Ra<5nmを満たすことがより好ましい。
【0050】
更に、該陽極は上記方法にて作製された後に、UVオゾン、シランカップリング剤、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン等の電子受容性化合物を含む溶液等で表面処理を行ってもよい。表面処理によって該陽極に接する有機層との電気的接続が改善される。
【0051】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極を光反射電極として用いる場合には、かかる陽極が、高光反射性金属からなる光反射層と4.0eV以上の仕事関数を有する材料を含む高仕事関数材料層を組み合わせた多層構造が好ましい。
【0052】
このような陽極の構成としては、
(i)Ag−MoO3
(ii)(Ag-Pd-Cu合金)−(ITO及び/又はIZO)
(iii)(Al-Nd合金)−(ITO及び/又はIZO)
(iv)(Mo-Cr合金)−(ITO及び/又はIZO)
(v)(Ag-Pd-Cu合金)−(ITO及び/又はIZO)−MoO3
が例示される。十分な光反射率を得るために、Al、Ag、Al合金、Ag合金、Cr合金等の高光反射性金属層の厚さは50nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましい。高仕事関数材料層の厚さは、通常、5nm〜500nmの範囲である。
【0053】
<正孔注入層>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、正孔注入層を形成する材料としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール) 誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらを含む重合体が挙げられる。また、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物、ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子及びオリゴマー、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール等の有機導電性材料及びこれらを含む重合体、式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物、アモルファスカーボン等を挙げることができる。更に、テトラシアノキノジメタン誘導体(例えば2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)、1,4-ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ポリニトロ化合物、等のアクセプター性有機化合物、オクタデシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤も好適に使用できる。
【0054】
前記正孔注入層を形成する材料は単成分であっても或いは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔注入層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔輸送層或いはインターレイヤーで用いることができる材料も正孔注入層で用いることができる。
【0055】
正孔注入層の作製方法としては、公知の方法が利用できる。無機化合物材料の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられ、低分子有機材料の場合は、真空蒸着法、レーザー転写や熱転写等の転写法、溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が挙げられる。また、高分子有機材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0056】
正孔注入材料が、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の低分子化合物の場合には、真空蒸着法を用いて正孔注入層を形成することができる。
【0057】
また、高分子化合物バインダーとこれら低分子正孔注入材料を分散させた混合溶液を用いて正孔注入層を成膜することもできる。混合する高分子化合物バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。具体的には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0058】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであればよい。該溶媒としては、水、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0059】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法等のコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法やノズルコート法が好ましい。
【0060】
正孔注入層に続いて、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層等の有機化合物層を形成する場合、特に、両方の層を塗布法によって形成する場合には、先に塗布した層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解して積層構造を作成できなくなることがある。この場合には、下層を該溶媒に対して不溶にする方法を用いることができる。溶媒に対して不溶にする方法としては、高分子化合物自体に架橋基を付けて架橋させる方法、芳香族ビスアジドに代表される芳香環を有する架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合して架橋させる方法、アクリレート基に代表される芳香環を有しない架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合して架橋させる方法、下層を紫外光に感光させて上層作成に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法、下層を加熱して上層作成に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法、等が挙げられる。下層を加熱する場合の加熱の温度は通常100〜300℃であり、時間は通常1分〜1時間である。
【0061】
また、架橋以外の方法で下層を溶解させずに積層するその他の方法として、隣り合った層に異なる極性の溶液を用いる方法があり、例えば、下層に水溶性の高分子化合物を用い、上層に油溶性の高分子化合物を用いて、塗布しても下層が溶解しないようにする方法等がある。
【0062】
正孔注入層の厚さとしては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔注入層の厚さとしては、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは10nm〜100nmである。
【0063】
<正孔輸送層及びインターレイヤー>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、正孔輸送層及びインターレイヤーを構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらの構造を含む高分子化合物が挙げられる。また、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子及びオリゴマー、ポリピロール等の有機導電性材料も挙げることができる。
【0064】
前記材料は単成分であっても或いは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔輸送層及びインターレイヤーは、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔注入層で用いることができる材料として列記する材料も正孔注入層で用いることができる。
【0065】
正孔輸送層及びインターレイヤーを構成する材料としては、具体的には、特開昭63-70257、特開昭63-175860、特開平2-135359、特開平2-135361、特開平2-209988、特開平3-37992、特開平3-152184、特開平5-263073、特開平6-1972、WO2005/52027、特開2006-295203等に開示される化合物が正孔輸送層及びインターレイヤーの材料として使用できる。中でも、芳香族第三級アミン化合物の残基を繰り返し単位として含む高分子化合物が、好適に用いられる。前記正孔輸送層及びインターレイヤーを構成する材料は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1.0×104〜1.0×106であることが好ましい。
【0066】
芳香族第三級アミン化合物の残基(繰り返し単位)としては、式(4)で示される繰り返し単位が挙げられる。
【0067】
【化6】

(4)
(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、Ar5、Ar6及びAr7は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、m及びnは、同一又は相異なり、0又は1を表す。)
【0068】
なお、式(4)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の中では、架橋基を含むものが更に好ましい。
【0069】
式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4が有し得る置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基及びカルボキシル基等が挙げられる。
【0070】
また、置換基は、ビニル基、アセチレン基、ブテニル基、アクリル基、アクリレート基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリレート基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、シラノール基、小員環(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基)を有する基、ラクトン基、ラクタム基、又はシロキサン誘導体の構造を含有する基等の架橋基であってもよい。また、その他にも、エステル結合やアミド結合を形成可能な基の組み合わせ(例えば、エステル基とアミノ基、エステル基とヒドロキシル基)等も架橋基として利用できる。
【0071】
更に、Ar1中の炭素原子とAr3中の炭素原子、及び/又は、Ar2中の炭素原子とAr3中の炭素原子とが直接結合し、又は、−O−、−S−等を介して結合していてもよい。
【0072】
Ar1、Ar2、Ar3及びAr4で表されるアリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられ、2価の複素環基としては、ピリジンジイル基等が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0073】
Ar5、Ar6及びAr7で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、1価の複素環基としては、ピリジル基等が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0074】
前記置換基としては、高分子化合物の溶解性が良好になるので、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。アルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0075】
Ar1〜Ar4は、有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度寿命が良好になるので、アリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0076】
Ar5〜Ar7は、有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度寿命が良好になるので、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0077】
m及びnは、モノマーの合成が容易になるので、0であることが好ましい。
【0078】
式(4)で表される繰り返し単位としては、下記繰り返し単位が例示できる。
【0079】
【化7】

【0080】
式(4)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物は、更に他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、フェニレン基、フルオレンジイル基等のアリーレン基等が挙げられ、有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度寿命が良好になるので、式(5)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0081】
【化8】

(5)
(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
【0082】
1及びR2が有し得る置換基としては、高分子化合物の溶解性が良好になるので、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0083】
この置換基となり得るアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0084】
この置換基となり得るアルキルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0085】
この置換基となり得るアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0086】
この置換基となり得る1価の複素環基としては、ピリジル基等が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0087】
式(5)で表される繰り返し単位としては、下記繰り返し単位が例示できる。
【0088】
【化9】

【0089】
正孔輸送層及びインターレイヤーの成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、前記したスピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。
【0090】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法の項で列記した溶媒が挙げられる。
【0091】
正孔輸送層及びインターレイヤーに続いて、発光層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を該溶媒に対して不溶にすることができる。
【0092】
正孔輸送層及びインターレイヤーの厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層及びインターレイヤーの厚さとしては、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜100nmである。
【0093】
<発光層>
本発明において発光層は、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物と、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物とからなる組成物からなり、該(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1×103〜5×104である。この重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0094】
本発明において、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂や、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体を含む重合体が例示できるが、その中でも、ポリカーボネート骨格を有する高分子化合物、ポリスチレン、及び、ポリアクリレートが、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物との混和性が良好になるので、ポリスチレン骨格を有する高分子化合物が特に好ましい。
【0095】
また、本発明において、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が、2.3×103〜4.6×104であることが好ましい。
【0096】
分子量が1×103よりも小さい場合には、成膜した際の膜の厚さの均一性に劣り、発光にムラ等が発生することがあり、5×104よりも大きい場合には、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物との混和性が劣り、発光効率が低くなることがある。
【0097】
本発明において、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物としては、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン、フルオレンとベンゾチアジアゾールとの共重合体、ポリアルキルチオフェン等の共役系高分子化合物が好ましく、フルオレンとベンゾチアジアゾールとの共重合体がより好ましい。
【0098】
このような高分子化合物としては、WO97/09394、WO98/27136、WO99/54385、WO00/22027、WO01/19834、GB2340304A、GB2348316、US573636、US5741921、US5777070、EP0707020、特開平9-111233、特開平10-324870、特開平2000-80167、特開2001-123156、特開2004-168999、特開2007-162009、有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006)等に開示されているポリフルオレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体及び共重合体、芳香族アミン及びその誘導体の(共)重合体が例示される。
【0099】
(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物としては、以下の繰り返し単位を、式(1)、式(1)と式(2)、式(1)と式(3)、式(1)と式(2)と式(3)との組み合わせで有する高分子化合物が好ましく、式(1)と式(2)、式(1)と式(2)と式(3)との組み合わせで有する高分子化合物がより好ましい。
【0100】
【化10】

(1)
(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
【0101】
【化11】

(2)
【0102】
【化12】

(3)
(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、Ar5、Ar6及びAr7は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、m及びnは、同一又は相異なり、0又は1を表す。)
【0103】
前記式(1)中のR1及びR2は、前記式(5)中のR1及びR2と同様である。また、前記式(1)で表される繰り返し単位は、前記式(5)で表される繰り返し単位と同様である。
【0104】
前記式(3)中のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、m及びnは、前記式(4)中のAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7、m及びnと同様である。また、前記式(3)で表される繰り返し単位は、前記式(4)で表される繰り返し単位と同様である。
【0105】
また、本発明において、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1.0×104〜1.0×106であることが好ましい。
【0106】
本発明における発光層において、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物と、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物との重量比は、合計100%として、好ましくは10〜90%:90〜10%である。
【0107】
本発明において、発光層は、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子系色素化合物や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子色素化合物を含有してもよい。また、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光を発光する金属錯体を含有してもよい。
【0108】
発光層に混合することができる低分子化合物としては、例えば、特開昭57−51781号、有機薄膜仕事関数データ集[第2版](シーエムシー出版、2006)、有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006)等に記載されている化合物が挙げられる。
【0109】
発光層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。
【0110】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0111】
発光層に続いて、電子輸送層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を該溶媒に対して不溶にすることができる。
【0112】
発光層の厚さとしては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、発光層の厚さとしては、通常、5nm〜1μmであり、好ましくは10nm〜500nmであり、更に好ましくは30nm〜200nmである。
【0113】
<電子輸送層及び正孔ブロック層>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、電子輸送層及び正孔ブロック層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物等が挙げられる。
【0114】
これらのうち、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましい。
【0115】
前記電子輸送層及び正孔ブロック層を構成する材料は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1.0×104〜1.0×106であることが好ましい。
【0116】
前記電子輸送層及び正孔ブロック層を構成する材料は、単成分であっても或いは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子輸送層及び正孔ブロック層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子注入層で用いることができる材料として列記する材料も電子輸送層及び正孔ブロック層で用いることができる。
【0117】
電子輸送層及び正孔ブロック層の成膜方法は、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。
【0118】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0119】
電子輸送層及び正孔ブロック層に続いて、電子注入層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を該溶媒に対して不溶にすることができる。
【0120】
電子輸送層及び正孔ブロック層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜100nmである。
【0121】
<電子注入層>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、電子注入層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物等が挙げられる。
【0122】
前記電子注入層を構成する材料は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1.0×104〜1.0×106であることが好ましい。
【0123】
前記材料は単成分であっても或いは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子注入層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子輸送層及び正孔ブロック層で用いることができる材料として列記する材料も電子注入層で用いることができる。
【0124】
電子注入層の成膜方法は、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。
【0125】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0126】
電子注入層の厚さとしては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子注入層の厚さとしては、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、更に好ましくは5nm〜100nmである。
【0127】
<絶縁層>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子が任意に有し得る厚さ5nm以下の絶縁層は、電極との密着性向上、電極からの電荷注入改善、隣接層との混合防止等の機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料(ポリメチルメタクリレート等)等が挙げられる。厚さ5nm以下の絶縁層を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子としては、陰極に隣接して厚さ5nm以下の絶縁層を設けたもの、陽極に隣接して厚さ5nm以下の絶縁層を設けたものが挙げられる。
【0128】
<陰極>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子が有する陰極層の材料の好ましい組み合わせとしては、第1陰極層がフッ化リチウムであり、第2陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化ナトリウムであり、第2陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化カリウムであり、第2陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化ルビジウムであり、第2陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化セシウムであり、第2陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化リチウムであり、第2陰極層がマグネシウムと銀の合金である組み合わせ、第1陰極層がフッ化ナトリウムであり、第2陰極層がマグネシウムと銀の合金である組み合わせ、第1陰極層がフッ化カリウムであり、第2陰極層がマグネシウムと銀の合金である組み合わせ、第1陰極層がフッ化ルビジウムであり、第2陰極層がマグネシウムと銀の合金である組み合わせ、第1陰極層がフッ化セシウムであり、第2陰極層がマグネシウムと銀の合金である組み合わせ、第1陰極層がフッ化リチウムであり、第2陰極層がカルシウムであり、第3陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化ナトリウムであり、第2陰極層がカルシウムであり、第3陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化ナトリウムであり、第2陰極層がマグネシウムであり、第3陰極層がアルミニウムである組み合わせ、第1陰極層がフッ化ナトリウムであり、第2陰極層がアルミニウムであり、第3陰極層が銀である組み合わせ、第1陰極層がフッ化カリウムであり、第2陰極層がアルミニウムであり、第3陰極層が銀である組み合わせ等が挙げられる。
【0129】
陰極の作製方法は、公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が例示される。金属、金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物を用いる場合は真空蒸着法が多用され、高沸点の金属酸化物、金属複合酸化物や酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物を用いる場合は、スパッタリング法、イオンプレーティング法が多用される。異種材料との混合組成物を成膜する場合には、共蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が用いられる。特に、低分子有機化合物と金属又は金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物との混合組成物を成膜する場合には共蒸着法が適する。
【0130】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において陰極を光透過性電極として用いる場合には、第3層以降の陰極層の可視光透過率が40%以上、好ましくは50%以上であることが好ましい。このような可視光透過率は、陰極層材料として酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の透明導電性金属酸化物を用いるか、或いは、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛、等の低抵抗金属及びこれらを含む合金を用いたカバー陰極層の厚さを30nm以下にすることで達成される。また、陰極側からの光透過率を向上させることを目的として、陰極の最外層上に反射防止層を設けることもできる。反射防止層に用いられる材料としては屈折率が1.8〜3.0のものが好ましく、例えば、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、酸化タングステン(WO3)等が挙げられる。反射防止層の厚さは材料の組み合せによって異なるが、通常、10〜150nmの範囲である。
【0131】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、基板上に各層を順次積層することにより製造することができる。具体的には、基板上に陽極を設け、その上に正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー等の層を必要に応じて設け、その上に発光層を設け、その上に電子輸送層、電子注入層等の層を必要に応じて設け、更にその上に、陰極を積層することにより製造することができる。
【実施例】
【0132】
以下において、本発明を実施例及び比較例を参照してより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0133】
<実施例1>
(正孔輸送性高分子化合物1の合成)
不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(5.28g)、ビス(4−ブロモフェニル)−(4−セカンダリブチルフェニル)−アミン(4.55g)、酢酸パラジウム(2mg)、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン(15mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(0.91g、商品名:Aliquat336、アルドリッチ製)、トルエン(70ml)を混合し、105℃に加熱した。この反応溶液に17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(19ml)を滴下し、19時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸(0.12g)を加え、更に7時間還流させた。次いでN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液(0.44g/12ml)を加え80℃で4時間撹拌した。冷却後、有機層を水40ml、3重量%酢酸水溶液40ml、水40mlの順番に洗浄し、アルミナ/シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール(1.4L)に滴下し、次いで、得られた固体を濾過後乾燥し、下記式:
【0134】
【化13】

(式中、nは繰り返し単位数を表す。)
で表される正孔輸送性高分子化合物1を得た。得られた正孔輸送性高分子化合物1の収量は6.33gであった。また、正孔輸送性高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は8.8×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.2×105であった。
【0135】
(発光層組成物の調製)
下記式:
【0136】
【化14】

で示される、フルオレン−ベンゾチアジアゾール共重合体(サメイション株式会社製、ポリスチレン換算の重量平均分子量:2.4×105)と、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が2.4×103であるポリスチレン(A)(アルドリッチ株式会社製)とを、それぞれキシレンに溶解し、その後、該共重合体:ポリスチレン(A)(重量比)が、20〜10%:80〜90%の割合になるように溶液を混合し、発光層組成物を調製した。
【0137】
(1−1:正孔注入層の形成)
ITO陽極が成膜されたガラス基板上に、正孔注入層組成物を塗布し、スピンコート法によって厚さ60nmの塗膜を得た。ここで、正孔注入層組成物には、スタルクヴイテック(株)より入手可能なPEDOT:PSS水溶液(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸、商品名:Baytron P)を用いた。
【0138】
この塗膜を設けた基板を200℃で10分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然冷却させ、正孔注入層を得た。
【0139】
(1−2:正孔輸送層の形成)
正孔輸送性高分子化合物1をキシレンに溶解し、該正孔輸送性高分子化合物1が0.7重量%の割合となるように調整して正孔輸送層組成物を得た。
【0140】
上記(1−1)で得られた正孔注入層の上に、正孔輸送層組成物をスピンコート法により塗布し、厚さ20nmの塗膜を得た。この塗膜を設けた基板を190℃で20分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然冷却させ、正孔輸送層を得た。
【0141】
(1−3:発光層の形成)
上記(1−2)で得られた、陽極、正孔注入層及び正孔輸送層を有する基板の正孔輸送層の上に、発光層組成物を塗布し、スピンコート法によって厚さ65nmの塗膜を得た。この塗膜を設けた基板を130℃で20分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させ、発光層を得た。
【0142】
(1−4:陰極の形成)
上記(1−3)で得られた、陽極、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を有する基板の発光層の上に、真空蒸着法によって、第1陰極層として厚さ4nmのフッ化リチウム層、第2陰極層として厚さ80nmのアルミニウム層を、連続的に成膜し、陰極を形成した。
【0143】
(1−5:封止)
上記(1−4)で得られた、積層を有する基板を真空蒸着装置より取り出し、窒素雰囲気下で、封止ガラス及び2液混合エポキシ樹脂にて封止し、有機エレクトロルミネッセンス素子1を得た。
【0144】
(1−6:評価)
上記(1−5)で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子1に、0〜12Vまでの電圧を印加し、電流密度と放射エネルギーを測定した。発光輝度分布がランバシアンであると仮定し、正面測定エネルギーと投入電力から外部量子収率を求めた。結果を表1に示す。
【0145】
<実施例2>
実施例1において、ポリスチレン(A)の代わりに、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が4.5×104であるポリスチレン(B)(アルドリッチ株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子2を作製した。
【0146】
<比較例1>
実施例1において、ポリスチレン(A)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子C1を作製した。
【0147】
<比較例2>
実施例1において、ポリスチレン(A)の代わりに、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が2.8×105であるポリスチレン(C)(アルドリッチ株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子C2を作製した。
【0148】
【表1】

【0149】
表1から分かるように、比較例1に比べて、実施例1、2では、外部量子収率が3.65から5.49-6.02と著しく向上したのに対して、比較例2では、外部量子収率が3.65から4.56-4.68とあまり向上しなかった。
【0150】
<実施例3>
実施例1の発光層組成物の調製において、フルオレン−ベンゾチアジアゾール共重合体とポリスチレン(A)(アルドリッチ株式会社製)との混合比を80〜90%:20〜10%の割合になるように溶液を混合した以外は、実施例1と同様にして、発光層組成物を調製した。
また、実施例1の(1−4:陰極の形成)において、フッ化リチウムの代わりに厚さ4nmの金属バリウムを真空蒸着法によって成膜した以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子3を作製した。
こうして得られた有機エレクトロルミネッセンス素子3について、実施例1の(1−6:評価)と同様にして、電流密度と放射エネルギーを測定した。発光輝度分布がランバシアンであると仮定し、正面測定エネルギーと投入電力から外部量子収率を求めた。更に、有機エレクトロルミネッセンス素子3について、発光輝度が1000cd/m2になる電流量を保持したときの輝度半減時間を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0151】
<比較例3>
実施例3において、ポリスチレン(A)を用いなかった以外は、実施例3と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子C3を作製し、同様の測定、算出を行った。
【0152】
【表2】

【0153】
表2から分かるように、比較例3に比べて、実施例3では、外部量子収率が3.14から3.80-3.85と向上したのに加えて、輝度半減寿命が45時間から70-100時間に著しく向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に存在する発光層とを有し、
該発光層が、(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物と、(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物とからなる組成物からなり、
該(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1×103〜5×104である、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物が、ポリスチレン骨格を有する高分子化合物である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物が、ポリアクリレート骨格を有する高分子化合物である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記(X)電子及び/又は正孔を輸送せず発光しない高分子化合物が、ポリカーボネート骨格を有する高分子化合物である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物が、式(1)で示される繰り返し単位を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

(1)
(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。)
【請求項6】
前記(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物が、式(2)で示される繰り返し単位を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

(2)
【請求項7】
前記(Y)電子及び/又は正孔を輸送し発光性である高分子化合物が、式(3)で示される繰り返し単位を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

(3)
(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、Ar5、Ar6及びAr7は、同一又は相異なり、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、m及びnは、同一又は相異なり、0又は1を表す。)

【公開番号】特開2011−205080(P2011−205080A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43585(P2011−43585)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】