説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】光取り出し効率が高く、かつ、色度差の視野角依存性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること。
【解決手段】本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(1)は、一対の主面を有する透明基板(14)と、透明基板(14)の一方の主面上に設けられた透明導電膜(13)と、透明導電膜(13)上に設けられ発光物質を含む有機発光層(12)と、を具備し、透明基板(14)の少なくとも一方の主面に、凹凸形状の高さ及びピッチが不規則に形成される複数の凹凸構造を含んでなる非平面スペックル構造(14a)が設けられており、透明基板(14)が示す最大拡散角度が60°を超え120°以下であり、非平面スペックル構造(14a)は、透明基板(14)の主面内における最大拡散角度を示す方向において、傾斜面角度分布における標準偏差が35°〜60°であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも一方が透明電極である一対の電極間に、有機化合物を主体とする発光層を挟み、電流を流してこの発光層を発光させ、透明電極側から光を取り出す固体発光素子である。有機エレクトロルミネッセンス素子は、応答速度に優れ、低電圧駆動・面発光が可能であるため、薄型・軽量化が希求されているディスプレイ・バックライトなどへの適用が期待されている。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、緩やかに広がった発光スペクトルを特長とし、高い演色性を有する為に、自然色に近い照明器具としての需要が高まりつつある。
【0003】
一方で、有機エレクトロルミネッセンス素子においては、その発光層の屈折率が非常に高い為、素子内部に光が閉じ込められ、素子外部への光の取り出し効率が低い問題がある。一般に、発光層において発生した光のうち50%程度が透明導電膜などの電極や発光層に閉じ込められ、更に30%程度が透明基板に閉じ込められてしまい、基板の外部に出てくる光が目減りし、効率的にエネルギーを活用できない。
【0004】
光取り出し効率を向上する手段として、出光面側に配置される透明ガラス基板の表面に、サンドブラスト法などにより微細な凹凸構造からなる光散乱部を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子や(例えば、特許文献1参照)、出光面側に配置されるガラス層の表面に、入射光の波長に対応する規則的な凹凸パターンを設けた有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、出光面側に配置されるガラス基板に、特定の拡散角度を示す非平面スペックル構造を形成した有機エレクトロルミネッセンス素子も提案されている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−231985号公報
【特許文献2】特開2007−114266号公報
【特許文献3】特開2009−206052号公報
【特許文献4】特開2009−266387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、光を拡散又は変角する機能が低く、十分に光取り出し効率を向上させることができない。また、特許文献2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、出光面側の基板に設けた規則的な凹凸は、光の波長や角度に対する依存性が非常に強く、発光輝度や色度差の視野角依存性を生じてしまう問題があった。このように、光取り出し効率の向上を図ると、色見が著しく悪化する問題を生じ、これらをバランス良く成し得る手段は無かった。さらに、特許文献3及び特許文献4には、拡散角度が特定の範囲内であれば光取り出し効率に優れることが記載されているが、色度差の視野角依存性については記載されていない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、光取り出し効率が高く、かつ、色度差の視野角依存性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の主面を有する透明基板と、前記透明基板の一方の主面上に設けられた透明導電膜と、前記透明導電膜上に設けられ発光物質を含む有機発光層と、を具備し、前記透明基板の少なくとも一方の主面に、凹凸形状の高さ及びピッチが不規則に形成される複数の凹凸構造を含んでなる非平面スペックル構造が設けられており、前記透明基板が示す最大拡散角度が60°を超え120°以下であり、前記非平面スペックル構造は、前記透明基板の主面内における前記最大拡散角度を示す方向において、傾斜面角度分布における標準偏差が35°〜60°であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、透明基板の表面に凹凸形状の高さ及びピッチが不規則に形成された複数の凹凸構造を含む非平面スペックル構造を設けたことから、有機発光層で発生した光が透明基板を介して拡散して出光するので、素子内部からの光取り出し効率が向上する。また、透明基板の最大拡散角度を示す所定の方向において、非平面スペックル構造の傾斜面角度分布の標準偏差を所定の範囲としたことから、同一の単位スペックル内に様々な角度の傾斜面が分布するので、光の出光点や出光角度が複雑化される。これにより、素子内部から出光する光の色度差の視野角依存性が良好となる。
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記非平面スペックル構造の凹凸形状は、平均ピッチが0.7μm〜30μmであり、平均高さが0.7μm〜20μmであることが好ましい。
【0011】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記透明基板は、透明樹脂、補強材を含有する透明樹脂、又は透明ガラスのいずれかの基材と、当該基材上に設けられ表面に凹凸形状の高さ及びピッチが不規則に形成された複数の凹凸構造を含んでなる非平面スペックル構造が設けられた表面層、又はフィルムと、を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の照明器具は、上記有機エレクトロルミネッセンス素子を具備したことを特徴とする。この構成によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子内部からの光取り出し効率が良好となり、有機エレクトロルミネッセンス素子内部から出光する光の出光点や出光角度が複雑化されるので、輝度及び照度に優れ、しかも色度差が良好な照明器具を実現することが可能となる。
【0013】
本発明のディスプレイは、上記有機エレクトロルミネッセンス素子を具備したことを特徴とする。この構成によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子内部からの光取り出し効率が良好となり、有機エレクトロルミネッセンス素子内部から出光する光の出光点や出光角度が複雑化されるので、輝度及び照度に優れ、しかも視野角依存性が良好なディスプレイを実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光取り出し効率が高く、かつ、色度差の視野角依存性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面模式図である。
【図2】本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の他の構成例を示す断面模式図である。
【図3】本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の他の構成例を示す断面模式図である。
【図4】本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の他の構成例を示す断面模式図である。
【図5】実施例2及び比較例1に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の正面放射輝度を示す図である。
【図6】実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度比を示す図である。
【図7】実施例4及び比較例4に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の正面放射輝度を示す図である。
【図8】実施例4及び比較例4に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度比を示す図である。
【図9】実施例6及び比較例5に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の正面放射輝度を示す図である。
【図10】実施例5から実施例7及び比較例5から比較例7に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度比を示す図である。
【図11】実施例5から実施例7、比較例5及び比較例6に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の色度差と視野角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明基板、陽極、有機発光層、及び陰極を含む。また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、更に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、水分ゲッター層、バリアシート層、及び封止樹脂層からなる群から選択される少なくとも1つの層を含むことがより好ましい。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1の断面模式図である。本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1は、陰極11と、この陰極11上に設けられる有機発光層12と、この有機発光層12上に設けられる陽極13(透明導電膜)と、陽極13上に設けられる透明基板14とを備える。透明基板14は、一対の主面を有しており、出光面側の主面(有機発光層12に対する反対側の主面)に複数の凹凸構造を含んでなる非平面スペックル構造14aが設けられている。本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、有機発光層12から出光した光が、陽極13(透明導電膜)及び透明基板14を介して、透明基板14上に設けられた非平面スペックル構造14aによって拡散されて出光する。なお、非平面スペックル構造14aは、必ずしも透明基板14の出光面側の主面に設ける必要はなく、透明基板14の入光面側の主面(有機発光層12側の主面)に設けてもよい。
【0018】
図2に、透明基板14の入光面側の主面に非平面スペックル構造14aを設けた有機ルミネッセンス素子の一例を示す。この有機ルミネッセンス素子1においては、透明基板14の有機発光層12側の主面に非平面スペックル構造14aが設けられている。この構成においては、透明基板14の入光面側の主面に非平面スペックル構造14aを設け、この非平面スペックル構造14a上に陽極13(透明電極膜)、有機発光層12、及び陰極11をこの順に積層する。このため、陽極13、有機発光層12、及び陰極11は、非平面スペックル構造14aに追従した形状となる。
【0019】
透明基板14は、有機発光層12で発生した光が透明基板14を透過してその出光面から出ていく過程において、拡散光のパターンを、円形、楕円形、あるいは略矩形に整える機能を有する。ここでいう略矩形とは、角が丸くなった矩形を指す。このような機能は、有機発光層12側から透明基板14へ入射した光が、制光機能を有する透明基板14によって、ある一定の範囲内に拡散されることにより発現する。この拡散の度合いを定義するために本発明では拡散角度というパラメータを用いる。
【0020】
拡散角度とは、透明基板14に垂直な方向から透明基板14の凹凸構造の形成面側に入射し、透明基板14内を透過して出光した光の入射角に対する角度を出射角と定義した場合、その出射角における輝度を測定し、この輝度がピーク輝度の半分に減衰する角(半値角)の2倍の角度(FWHM:Full Width Half Maximum)のことをいう。最大拡散角度は、FWMHの方位角測定を行い最大値となる拡散角度のことである。
【0021】
上記のような拡散・変角機能を透明基板14に付与する手段としては、透明基板14の表面構造を光学的に制御することが挙げられる。表面構造の光学的制御方法として、本実施の形態では、透明基板14表面に非平面スペックル構造14aを設けることにより行う。上述したとおり、サンドブラスト法などで光散乱部を設けた場合には無秩序で浅い凹凸構造が形成されるため、そのような光散乱部を有する基板では、拡散・変角機能が不十分となり、光取り出し効率を高めることができない。一方、プリズムや回折格子のように周期的な凹凸構造を形成すれば、高い光取り出し効率を得られるものの、視野角の違いによる色ずれが生じやすくなる。
【0022】
本実施の形態において、透明基板14の非平面スペックル構造14aとは、山状、非球面状、線状などの形状を呈する単位スペックルから構成される微細な3次元構造をもつ凹凸形状である。この微細な3次元構造は、複数のスペックルが集合した凹凸構造で構成されており、また、スペックルの高さやピッチは不規則であり、或る一定の分布を持つ。凹凸構造のパターン(以下、「スペックルパターン」ともいう)は、コヒーレント照射光がランダムに散乱され、散乱波がさらに重ね合わさって生じるランダムな干渉光パターンである。凹凸パターンの高さ、ピッチ、並びに山の傾斜面角度を調節することにより、透明基板14の拡散角度や拡散の等方性・異方性を制御することができる。
【0023】
本実施の形態において、透明基板14が示す最大拡散角度は、60°を超え120°以下であり、好ましくは65°〜120°であり、さらに好ましくは65°〜115°である。透明基板14の最大拡散角度が大きくなるほど、発光素子の光取り出し効率が向上する。透明基板14が示す最大拡散角度が、60°を超えることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子からの光取り出し効率が十分に得られるため望ましく、120°以下であることにより、非平面スペックル構造を得るための加工が容易となるため望ましい。
【0024】
透明基板14の主面内において、最大拡散角度を与える方向に直交する方向の拡散角度は、最大拡散角度以下であればよい。双方の拡散角度がほぼ同じ値となる非平面スペックル構造14aは等方性の拡散を呈し、該スペックル構造を透過した拡散光は円形となる。一方、双方の拡散角度が異なる場合は異方性の拡散を呈し、楕円形となる。等方性拡散となる透明基板14の場合には、例えば天井照明器具のように全方位角に一様に配光すべき用途として用いる。一方、異方性拡散となる透明基板14の場合には、例えば壁照明器具のように一方位角方向に多く配光する意匠性の強い用途として用いる。
【0025】
透明基板14の非平面スペックル構造14aは、透明基板14の主面内における最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度分布における標準偏差が35°〜60°であり、好ましくは35°〜55°であり、更に好ましくは35°〜50°である。傾斜面角度分布の標準偏差とは、スペックルの傾斜面が適度な分布を持つことを意味し、同一の単位スペックル内にも様々な角度の傾斜面が存在していることになる。本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、非平面スペックル構造14aの傾斜面角度分布における標準偏差が35°〜60°であることにより、同一の単位スペックル内にも様々な角度の傾斜面が存在するので、光の出光点や出光角度が複雑化される。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子1から出光する光がギラつきの無い自然で柔らかな光となり、色度差の視野角依存性も良好となる。これに対して、プリズムのような規則的な凹凸形状の場合、単一の角度の傾斜面しか持たない。このため、プリズム出光面から取り出される光は、干渉作用や波長・角度依存性によって、色ずれや虹を生じることになる。
【0026】
非平面スペックル構造14aの凹凸形状は、平均ピッチが0.7μm〜30μmであることが好ましく、0.8μm〜20μmであることがより好ましく、1μm〜15μmであることが更に好ましい。平均ピッチが0.7μm以上であれば、可視光線の波長近傍又は波長より大きいサイズとなるため、スペックルパターンを光が認識して、十分な拡散機能が出やすくなるため望ましい。一方、平均ピッチが30μm以下であれば、ピッチの粗さを人間の眼が認識できなくなり、精細さを維持する観点から望ましい。
【0027】
非平面スペックル構造14aの凹凸形状は、平均高さが0.7μm〜20μmであることが好ましく、0.8μm〜20μmであることがより好ましく、1μm〜15μmであることが更に好ましい。平均高さが0.7μm以上であれば、スペックル形状が深くなるため、十分な拡散機能が得られ、光取り出し効率が向上するので望ましい。一方、平均高さが20μm以下であれば、スペックルパターンが非常に切り立った形状とならないので、加工が容易となり望ましい。
【0028】
透明基板14としては、拡散角度の範囲が非平面スペックル構造14aによって制御された透明基板14が好適である。一般に、拡散角度の範囲は、スペックルの平均サイズ及び形状に依存する。スペックルが小さければ角度範囲が広い。また、スペックルが横方向の長円形であれば、角度分布の形は縦方向の長円形となる。このように所望する指向角度や拡散角度に応じてスペックルパターンを決定することができる。拡散角度は凹凸構造のピッチ、高さ、アスペクト比を変えて制御してもよく、非平面スペックル構造を形成する材質の屈折率を変えて制御してもよい。なお、所定の拡散角度を与える非平面スペックル構造の詳細な制御方法については、特許第3390954号公報及び特表平11−513814号公報に開示されている。
【0029】
スペックルパターンの形成方法としては、干渉露光で発生するスペックルパターンを光反応性樹脂(感光性樹脂)で記録する方法が一般的である。この記録された最初のパターンを最終製品としてそのまま用いてもよいが、通常はこのパターンのマスター型を作製して、そのコピーを使用する。具体的には、このパターンを記録したサブマスター型を作製し、このサブマスター型に電鋳などの方法で金属を被着して金属にスペックルパターンを転写しマスター型を作製する。そして、上記マスター型を用いて紫外線による賦形を行ってスペックルパターンを転写する。このサブマスター型の詳細な製造方法については、特許第3413519号公報に開示されている。
【0030】
非平面スペックル構造14aの傾斜面角度を制御する方法として、次の方法がある。第一の方法は、上述の干渉露光の際に、光感度の異なる感光性樹脂を用いることで、露光、現像後に形成されるスペックルパターンそのものを変化させる方法である。この方法により、光感度の高い感光性樹脂を使用すると、スペックルの傾斜面角度分布が広くなり、その標準偏差を大きくすることができる。第二の方法は、非平面スペックル構造14aを有するフィルムを延伸するか、又は収縮させる方法である。非平面スペックル構造14aを有するフィルムを延伸すると、スペックルの傾斜面角度分布における標準偏差を大きくすることが可能であり、一方、収縮すると、標準偏差を小さくすることが可能である。第一、及び第二の方法により、スペックルの傾斜面角度分布における標準偏差をより大きくすることで、色度差の視野角依存性を向上することができる。また、第一、及び第二の方法は、上述の干渉露光によるスペックルパターンの高さやピッチを制御する方法と併用して行うことで、発光素子の特性、すなわち、光取り出し効率と色度差の視野角依存性を高次にバランスさせることができる。
【0031】
本実施の形態において、透明基板14としては、透明樹脂、補強材を含有する透明樹脂、又は透明ガラスからなる基材の何れかの表面上に、非平面スペックル構造を直接形成したものであるか、非平面スペックル構造からなる層を積層したものであるか、又は非平面スペックル構造を有するフィルムを積層したものであることが好ましい。
【0032】
図3及び図4に、本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1の他の構成例を示す。図3に示す有機エレクトロルミネッセンス素子1は、透明基板14が、透明樹脂、補強材を含有する透明樹脂、又は透明ガラスのいずれかからなる基材15と、この基材15の主面上に設けられ表面に非平面スペックル構造16a(凹凸構造)が設けられた表面層16とを含む。また、図4に示す有機エレクトロルミネッセンス素子1は、透明基板14が、透明樹脂、補強材を含有する透明樹脂、又は透明ガラスのいずれかからなる基材15と、粘着層17を介して基材15の主面上に設けられ表面に非平面スペックル構造18a(凹凸構造)が設けられたフィルム18とを備える。
【0033】
非平面スペックル構造14aを透明基板14の表面に付与する方法を以下に説明する。第一の方法としては、基材の表面上に非平面スペックル構造を直接形成する方法がある。具体的には、基材表面を加熱軟化させ、そこにスペックルパターンのマスター型を押圧して、スペックルパターンを転写形成する方法である。この方法については、特表2002−523792号公報に詳細な製造方法が記載されている。この方法を用いて、非平面スペックル構造14aを素子の外側(透明基板14の出光面側)に形成すると図1に示す素子構造となり、素子の内側(透明基板14の入光面側)に形成すると図2に示す素子構造となる。
【0034】
第二の方法としては、基材15の表面上に非平面スペックル構造16aを有する表面層16を積層する方法がある。具体的には、基材表面に硬化型樹脂を塗布積層し、樹脂が硬化する前にスペックルパターンのマスター型を押圧して、スペックルパターンを転写形成する方法である。硬化型樹脂は、透明であり、熱硬化性、及び/又は光硬化性のものから選択される。ガラス基材の場合は、シロキサン系の有機無機ハイブリッドポリマーを使用してもよい。この方法については、特表2001−512245号公報に詳細な製造方法が記載されている。この方法を用いて、非平面スペックル構造16aを有機エレクトロルミネッセンス素子の外側(透明基板14の出光面側)に形成すると図3に示す素子構造となる。
【0035】
第三の方法としては、基材15と非平面スペックル構造18aを有するフィルム18とを積層する方法がある。具体的には、上記の第一又は第二の方法を用いてフィルム18の表面上に非平面スペックル構造18aを形成し、このフィルム18を基材15と積層する方法である。また、基材15と非平面スペックル構造18aを有するフィルム18とを積層して透明基板14とした後、基材15側に、陽極13、有機発光層12、及び陰極11などを成膜して有機エレクトロルミネッセンス素子とする方法の他、基材15に陽極13、有機発光層12、及び陰極11などを成膜した後、基材15の光取り出し側に、非平面スペックル構造18aを有するフィルム18を積層して有機エレクトロルミネッセンス素子とする方法も可能である。この方法を用いて、非平面スペックル構造18aを有機エレクトロルミネッセンス素子1の外側(透明基板14の出光面側)に形成すると図4に示す素子構造となる。
【0036】
透明基板14は、その全光線透過率が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。ここでの全光線透過率とは、透明基板14を構成する材料夫々の透過率ではなく、例えば、透明基板14が複数の材料を積層した積層体として構成される場合には、積層体全ての透過率を指す。全光線透過率が70%以上であれば、発光した光を効率的に外部に取り出すことができるので好ましい。
【0037】
透明基板14としてガラス基材を用いる場合、ガラスの材質としては、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、白板ガラスなど、光学製品に適用可能なガラスが好適に用いられる。ガラスの屈折率は、1.4〜2.0のものを使用する。ガラスの屈折率が、1.4〜2.0の範囲であれば、一般に用いられている材質のガラスを用いることが可能となる。
【0038】
透明基板14として樹脂基材を用いる場合には、樹脂の材質としては、光学製品に適用可能な樹脂が好ましい。屈折率が1.4〜1.8の樹脂を使用すれば、基板としての力学的強度を十分に備えるものとなる為、好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン類、アートン(登録商標)(商品名、JSR社製)、アペル(登録商標)(商品名、三井化学社製)、ゼオノア(登録商標)(商品名、日本ゼオン社製)、TOPAS(登録商標)(商品名、ポリプラスチックス社製)などのシクロオレフィン系樹脂、セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレートなどのセルロース類、又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、透明ポリイミド、透明アラミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂などのフィルムが挙げられる。スペックルパターンが形成された樹脂基材そのものを透明基板14として用いる場合は、上記材質の何れかであることが好ましい。
【0039】
また、上記樹脂基材に、補強材を含有する透明樹脂を使用することによって、力学的強度や耐熱性の向上、及び、熱線膨張や水分線膨張の低減を可能にする。補強材としては、無機粒子、層状粘土化合物の他、ガラス、ポリアミド、セルロースなどの短繊維、織布及び不織布などを用いることができる。
【0040】
本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、陽極13及び/又は陰極11が透明導電膜であることが好ましい。陽極13が透明導電膜であり、かつ陰極11が金属電極の場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子1は片面発光となり、陽極13側から光を取り出す構成となる。一方、陽極13と陰極11の双方が透明導電膜の場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子1は両面発光となり、陽極13と陰極11の両面から光を取り出す構成やシースルー構成となる。
【0041】
透明導電膜としては、ITO(インジウム・スズ酸化物)膜、あるいはIZO(インジウム・亜鉛酸化物)膜などの酸化物薄膜を単体で用いることができ、また、上記酸化物薄膜にAgなどの金属超薄膜を重ねて導電性を改良した積層薄膜や、上記酸化物薄膜と金属メッシュからなる複合膜を用いることができる。透明導電膜の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法などの一般的な成膜方法が用いられる。透明導電膜の厚みは、10nm〜200nmの範囲で適宜選択されるが、好ましくは50nm〜150nmの範囲である。
【0042】
金属電極としては、Au、Pt、Ni、W、Cr、Mo、Fe、Co、Cu、Pd、Al、及びAgの何れか、又はこれらの合金が挙げられる。金属電極を形成するには、スパッタリング法や蒸着法などが用いられる。金属電極の厚みは、10nm〜300nmの範囲で適宜選択されるが、好ましくは50nm〜200nmである。
【0043】
有機発光層12を構成する発光物質としては、蛍光系、及び燐光系の何れかを用いることが好ましい。発光物質の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
【0044】
低分子系発光物質としては、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体<以下、「Alq3」と略記する>、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)−1,1’−ビフェニル<以下、「DPVBi」と略記する>、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル<以下、「BcZVBi」と略記する>、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル<以下、「CBP」と略記する>、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエンなどである。
【0045】
また、10−(2−ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−(1)ベンゾピロピラノ(6,7−8−I,j)キノリジン−11−オン<以下、「C545T」と略記する>などのクマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体など、トリス(1−フェニルイソキノリン−C2,N)イリジウム(III)<以下、「Ir(piq)3」と略記する>などのIr錯体系燐光体も使用可能である。
【0046】
高分子系発光物質としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5メトキシ−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)]、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、ポリスピロフルオレンなどが挙げられる。
【0047】
有機発光層12の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法の他に、溶剤に溶解してディッピング、スピンコーティング、キャスティング、バーコート、ロールコートなどによって塗布する形成方法も用いることができる。単一の有機発光層12の厚みは、1nm〜200nmの範囲で適宜選択されるが、好ましくは5nm〜100nmである。
【0048】
発光効率を向上させるために、有機発光層12と陽極13との間及び/又は有機発光層12と陰極11との間に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層などを設けることも可能であり、各層の厚みは0.5nm〜200nmの範囲で適宜選択されるが、好ましくは0.5nm〜100nmである。
【0049】
正孔注入層及び電子注入層は、それぞれ、陽極13と有機発光層12との間、陰極11と有機発光層12との間に設けるものである。正孔注入層、及び電子注入層としては、キャリア移動度が高く、かつ電極(陽極13、及び陰極11)とのマッチングが好適である物質が選択される。
【0050】
正孔注入層としては、低分子系発光物質の場合は、アリールアミン類、及びフタロシアニン類など、高分子系発光物質の場合は、ポリアニリン有機酸塩、及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホナート<以下、「PEDOT/PSS」と略記する>などのポリチオフェン有機酸塩などが挙げられる。
【0051】
電子注入層としては、低分子系発光物質の場合は、リチウム、フッ化リチウム、及び酸化リチウムなど、高分子系発光物質の場合は、バリウム、及びカルシウムなどが挙げられる。
【0052】
正孔輸送層は、陽極13から有機発光層12まで正孔を輸送し、陰極11からの電子移動を阻止する機能を持つ。正孔輸送層の具体例としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ[(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン<α−NPDと略記>などのジアミン誘導体、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)−トリフェニルアミン、スターバースト型アミンなどが挙げられる。
【0053】
電子輸送層は、陰極11から有機発光層12まで電子を輸送し、陽極13からの正孔移動を阻止する機能を持つ。電子輸送層の具体例としては、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体(以下、「Alq3」と略記する)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ビス{2−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール}−m−フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノリノール系の金属錯体などが挙げられる。
【0054】
発光色に関しては、所望の励起色に対応する適切な有機発光層12を選ぶことで、例えば、赤・緑・青に発光する有機エレクトロルミネッセンス素子1とすることができる。具体的には、後述する比較例1のように、1重量%のAlq3をドープしたクマリン系化合物C545Tを有機発光層12とすれば、緑色の発光素子とすることができる。また、後述する比較例4のように、5重量%のDPVBiをドープしたBcZVBiを有機発光層12とすれば、青色の発光素子とすることができる。
【0055】
白色の発光素子とする方法としては、上述した赤・緑・青の励起色を有する有機発光層12を積層する方法、赤・緑・青の励起色を有する有機発光層12を並設する方法、1色又は2色の有機発光層12と波長変換層との複合化による方法などが挙げられる。具体的には、後述する比較例5に用いた方法は、赤・緑・青の励起色を有する有機発光層12を積層したものである。
【0056】
本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1は、上述した各層を順次積層してなるものである。即ち、表面が光学的に制御された透明基板14、陽極13、有機発光層12、及び陰極11がこの順に積層される。したがって、光学的に制御された透明基板14は有機エレクトロルミネッセンス素子1の最表面に存在する。更には、有機発光層12と陽極13及び/又は陰極11との間には輸送層・注入層が適宜挿入されている。
【0057】
有機エレクトロルミネッセンス素子1の特性に関し、一般にそのエネルギー効率を議論する場合には、外部/内部量子効率及び光取り出し効率を用いる。内部量子効率は、入力した電力を光に変換する過程を指すものである。光取り出し効率は、この変換された光、すなわち有機発光層12において発生した光を素子外部に取り出す効率のことである。また、外部量子効率は、上記内部量子効率と上記光取り出し効率とを乗じたものである。例えば、蛍光発光材料を用いた一般的素子の場合、内部量子効率が25%、光取り出し効率が20%、そして外部量子効率が5%という値になる。これらのエネルギー損失要因に対して、本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、非平面スペックル構造14aを有する透明基板14を用いることにより、光取り出し効率が向上し、結果として外部量子効率を高めることが可能となる。
【0058】
本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、光取り出し効率の向上比が1.25以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.35以上であることが更に好ましい。光取り出し効率の向上比とは、素子の有機発光層12に対する光取り出し側に両主面とも平坦な表面を有する透明基板が配設されている場合の取り出された光量を比較基準とし、倍数として評価した値である。本発明で定義した光取り出し効率の向上比は、素子構成や発光材料の相違によって影響を受ける為、異なる素子同士の比較は好ましくないが、同種の有機エレクトロルミネッセンス素子同士の比較では優劣を判断できるものである。例えば、後述する実施例1から実施例3と比較例1から比較例3との比較は同種の素子に関するものであり、これらの素子には明確な差異がある。光取り出し効率の向上比が1.25以上であると、有機エレクトロルミネッセンス素子を同一の電力で駆動する場合には取り出し光量が増え、また当該素子を同一の輝度で駆動する場合には素子寿命が延びるので好ましい。
【0059】
本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1によれば、色度差の視野角依存性を改良することが可能となる。視野角とは、有機エレクトロルミネッセンス素子1の光取り出し面に対する法線方向を基準軸0°とした場合のずれ角度のことを言う。色度差とは、色度座標(u’,v’)上の任意の2点間の距離であり、また、視野角60°における色度差とは、視野角0°における座標点と視野角60°における座標点との距離Δu’v’のことである。
【0060】
本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、視野角60°における色度差が0.029以下であることが好ましく、0.027以下であることがより好ましく、0.025以下であることが更に好ましい。色度差が0.029以下であれば、有機エレクトロルミネッセンス素子1を斜めから観た場合の照明の色合いやディスプレイの表示色の色ずれが小さくなるので好ましい。
【0061】
以上説明したように、上記実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、透明基板14の一対の主面のうち、少なくとも一方の表面(入光面及び/又は出光面)に、3次元構造を有する複数の凹凸構造を含む非平面スペックル構造14aを設けたことから、有機発光層12の発光によって生じた光が非平面スペックル構造14aによって拡散され、効率よく光を取り出すことが可能となる。
【0062】
特に、上記実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1においては、非平面スペックル構造14aの各凹凸構造の傾斜面の傾斜面角度分布における標準偏差を所定の範囲としたことから、同一の単位スペックル内にも様々な角度の傾斜面が存在するので、光の出光点や出光角度が複雑化される。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子1から出光する光がギラつきの無い自然で柔らかな光となり、色度差の視野角依存性も良好となる。したがって、光取り出し効率が高く、しかも色度差の視野角依存性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子1を実現することが可能となる。
【0063】
なお、本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1は、ディスプレイ用部品や、照明器具に用いることが可能である。本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1をディスプレイ用部品として使用する場合には、陽極、有機発光層、及び陰極を画素の配置に応じて配置した上で、更にカラーフィルター層、薄膜トランジスター層、パッシベーション層、及び平坦化層を含んでよい。また、本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、ボトムエミッション構成、トップエミッション構成、両面発光構成の何れでもよく、また、各層を形成するための成膜方法に関しても、真空成膜、印刷、及び塗布の何れでもよい。
【0064】
本実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1を含む照明器具としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子に加えて、筐体、バックパネル、陽極/陰極接続部品、電源装置、電流/電圧制御部品、ヒューズなどの安全素子などを組み合わせたものである。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。以下、本実施例において用いた測定方法を示す。
【0066】
(1)最大拡散角度
拡散角度の測定には、変角光度計(GC−5000L、日本電色工業社製)を用いた。透明基板に対し法線方向から、透明基板の凹凸構造形成面(以下、単に「凹凸面」という)側から入射し、透明基板内を透過して出光した光の入射角に対する角度を出射角と定義し、その出射角に対する輝度分布を測定した。輝度測定は、透明基板の法線方向を0°として、出射角−85°〜85°の範囲で行った。得られた出射角に対する輝度分布において、ピーク輝度の半分に減衰する角度(半値角)の2倍の角度をFWHMと定義した。
【0067】
次に、上述した一連の測定を、方位角−90°〜90°に渡って、5°間隔で行い、各方位角におけるFWMHを求めた。最大拡散角度とは、各方位角のFWMHの最大値のことである。
【0068】
(2)傾斜面角度分布における標準偏差
透明基板の凹凸面側の法線方向から平行光を入射し、透明基板内を透過して出光した光の入射角に対する角度を出射角と定義し、その出射角における輝度をファーフィールドプロファイラー(LD8900、フォトン社製)を用いて測定した。輝度測定は、透明基板の法線方向を0°として、出射角−76°〜76°の範囲で行い、最大拡散角度を与える方向において、出射角ごとの頻度分布を測定した。尚、入射角は透明基板の法線方向である0°とした。入射角、出射角、及び透明基板の屈折率から、スネルの法則を用いて傾斜面角度を算出し、傾斜面角度分布を作成して、標準偏差を求めた。
【0069】
(3)光取り出し効率
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面を水平に固定し、素子に所定の電流を流し、分光放射輝度計(CS−2000、コニカミノルタセンシング社製)を用いて、視野角を変えながら発光面の放射輝度を測定した。本実施例では、印加電力を発光面の面積に対し100W/m〜200W/mとした。視野角は法線方向を0°、水平方向を90°とし、円周方向に5°間隔で測定した。得られた角度及び波長ごとの放射輝度[W/sr・m・nm]より全光束輝度を求めた。実施例に係る非平スペックル構造を有する透明基板を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の全光束輝度と、比較例に係る平坦な透明基板を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の全光束輝度とを比較して光取り出し効率の向上比と定義した。尚、透明基板の拡散機能が異方性である場合は、上述の一連の測定を、方位角0°〜90°に亘って5°間隔で行うことで、全光束輝度を求める必要がある。
【0070】
(4)色度差
上述の光取り出し効率の測定装置、及び測定条件で、視野角を変えながら発光面の色度座標(u’,v’)を国際照明委員会CIE1976に準拠して測定した。視野角0°における座標点と視野角60°における座標点との間の距離Δu’v’を色度差と定義した。尚、CIE1931に準拠した色度座標(x,y)を求めた場合は、下記式によって色度座標(u’,v’)に変換できる。
u’=4x/(−2x+12y+3)
v’=9y/(−2x+12y+3)
【0071】
(5)非平面スペックル構造の凹凸形状
スペックルパターンを有する基板を割断して平坦な断面を作成し、この断面の形状を、超深度カラー三次元形状測定顕微鏡(VK−9510、Keyence社製)を用いて計測した。スペックルの平均高さは、断面画像の山−谷の高さを計測することにより、また、スペックルの平均ピッチは、断面画像の山−山の間隔を計測することにより、各々、平均値として計算した。尚、断面画像は、単位スペックルが少なくとも30個以上含まれる視野として計測し、これらの一連の作業を、少なくとも10サンプルの断面に対して行い、平均値とした。
【0072】
<比較例1>
厚み700μmの透明ガラス平板上に、陽極として、厚み150nmのITO薄膜を真空成膜した。ITO薄膜付きガラス基板のシート抵抗は10Ω/sqであった。続いて、ITO薄膜上に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極をこの順で成膜した。正孔注入層として、厚み40nmのPEDOT/PSS層を塗布成膜した。正孔輸送層として、厚み30nmのα−NPD層を真空成膜した。有機発光層として、Alq3を1重量%ドープした厚み30nmのクマリン系化合物C545T層を真空成膜した。電子輸送層として、厚み30nmのAlq3層を真空成膜した。電子注入層として、厚み0.8nmのフッ化リチウム層を真空成膜した。陰極として、厚み150nmのアルミニウム層を真空成膜した。続いて、陰極の上に酸化カルシウム乾燥剤を置き、厚み100μmの透明ガラス平板とガラス封止して、34mm×29mmの発光面を持つ緑色発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0073】
緑色発光素子の発光特性を評価したところ、直流電力0.10Wの条件において、発光効率15[lm/W]であった。緑色発光素子の視野角0°における色座標(u’,v’)は(0.144,0.568)であり、発光色は緑色を呈した。
【0074】
<実施例1>
比較例1に記載の発光素子におけるガラス平板のITO薄膜層とは逆側の表面上に、透明アクリル系粘着層を挟み、片面に非平面スペックル構造を有するセルローストリアセテートフィルムの平坦面側を接着して透明基板としたこと以外は、比較例1と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。なお、非平面スペックル構造を有するフィルムに関しては、厚み80μmのセルローストリアセテートフィルムの片面に、アクリル系UV硬化樹脂を用いて賦形を行い、波長550nmにおける屈折率が1.52の非平面スペックル構造を形成した。透明基板の非平面スペックル構造は、最大拡散角度65°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が37.6°であり、かつ等方性であった。
【0075】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表1に示す。下記表1に示すように、発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例1と比較すると1.38倍に増強された。
【0076】
<実施例2>
最大拡散角度85°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が43.2°であり、かつ等方性の非平面スペックル構造を片面に有するフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0077】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表1に示す。下記表1に示すように、発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例1と比較すると1.41倍に増強された。
【0078】
<実施例3>
最大拡散角度110°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が45.1°であり、かつ等方性の非平面スペックル構造を片面に有するフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0079】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表1に示す。下記表1に示すように、発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例1と比較すると1.43倍に増強された。
【0080】
<比較例2>
最大拡散角度30°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が21.1°であり、かつ等方性の非平面スペックル構造を片面に有するフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0081】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表1に示す。下記表1に示すように、発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例1と比較すると1.33倍に増強されているものの、実施例1〜実施例3の発光素子と比較すると効率で劣るものであった。
【0082】
<比較例3>
サンドブラストで凹凸を片面に形成したポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの最大拡散角度は5°であり、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差は13.0°であり、かつ等方性であった。ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0083】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表1に示す。下記表1に示すように、発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例1と比較すると1.28倍に留まった。
【0084】
図5に実施例2及び比較例1の発光素子の各波長における正面放射輝度を示す。図5に示すように、非平面スペックル構造を有さない比較例1の発光素子と比較すると、非平面スペックル構造を有する実施例2に係る発光素子は、全発光波長に亘って輝度増強が観測された。
【0085】
図6に実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3の発光素子の輝度比(全光束輝度)を示す。図6に示すように、非平面スペックル構造を有さない比較例1及び比較例3に係る発光素子や、最大拡散角度が低い非平面スペックル構造を有する比較例2の発光素子と比較すると、最大拡散角度が高い非平面スペックル構造を有する実施例1から実施例3に係る発光素子では、広範囲の視野角に亘って輝度増強が観測された。
【0086】
【表1】

【0087】
<比較例4>
有機発光層として、DPVBiを5重量%ドープした厚み30nmのBcZVBi層を用いたこと以外は、比較例1と同様にして青色発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0088】
発光素子の発光特性を評価したところ、直流電力0.14Wの条件において、発光効率2.6[lm/W]であった。発光素子の視野角0°における色座標(u’,v’)は(0.113,0.379)であり、発光色は青色を呈した。
【0089】
<実施例4>
比較例4の発光素子におけるガラス平板のITO薄膜層とは逆側の表面上に、透明アクリル系粘着層を挟み、片面に非平面スペックル構造を有するセルローストリアセテートフィルムの平坦面側を接着して透明基板としたこと以外は、比較例4と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。なお、非平面スペックル構造を有するフィルムに関しては、厚み80μmのセルローストリアセテートフィルムの片面に、アクリル系UV硬化樹脂を用いて賦形を行い、波長550nmにおける屈折率が1.52の非平面スペックル構造を形成した。透明基板の非平面スペックル構造は、最大拡散角度85°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が43.2°であり、かつ等方性であった。
【0090】
比較例4及び実施例4の発光素子の発光特性を評価した結果を下記表2に示す。表2に示すように、非平面スペックル構造を有さない比較例4の発光素子と比較すると、非平面スペックル構造を有する実施例4に係る発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例4と比較すると実に1.55倍に達するものであった。
【0091】
【表2】

【0092】
図7に実施例4及び比較例4の発光素子の正面放射輝度を示す。図7に示すように、非平面スペックル構造を有さない比較例4の発光素子と比較すると、非平面スペックル構造を有する実施例4に係る発光素子では全発光波長に亘って輝度増強が観測された。
【0093】
また、図8に実施例4及び比較例4の発光素子の輝度比(全光束輝度)を示す。図8に示すように、非平面スペックル構造を有する実施例4の発光素子では広範囲の視野角に渡って輝度増強が観測された。
【0094】
<比較例5>
有機発光層として、DPVBiを8重量%ドープした厚み15nmのBcZVBi層、Alq3を1重量%ドープした厚み5nmのクマリン系化合物C545T層、及びCBPを5重量%ドープした厚み30nmのIr(piq)3層の3層積層を用いること以外は、比較例1と同様にして白色発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0095】
発光素子の発光特性を評価したところ、直流電力0.16Wの条件において、発光効率2.0[lm/W]であった。下記表3に示すように、発光素子の視野角0°における色座標(u’,v’)は(0.195,0.469)であり、発光色は白色を呈した。視野角60°における色度差Δu’v’は0.0338となり、視野角依存性が大きかった。
【0096】
<実施例5>
比較例5の発光素子におけるガラス平板のITO薄膜層とは逆側の表面上に、透明アクリル系粘着層を挟み、片面に非平面スペックル構造を有するセルローストリアセテートフィルムの平坦面側を接着して透明基板としたこと以外は、比較例5と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。なお、非平面スペックル構造を有するフィルムに関しては、厚み80μmのセルローストリアセテートフィルムの片面に、アクリル系UV硬化樹脂を用いて賦形を行い、波長550nmにおける屈折率が1.52の非平面スペックル構造を形成した。透明基板の非平面スペックル構造は、最大拡散角度65°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が37.6°であり、かつ等方性であった。
【0097】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表3に示す。下記表3に示すように、非平面スペックル構造を有する実施例5の発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例5と比較すると実に1.50倍に増強されており、また、視野角60°における色度差Δu’v’は0.0221と改善された。
【0098】
<実施例6>
最大拡散角度85°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が43.2°であり、かつ等方性の非平面スペックル構造を片面に有するフィルムを使用したこと以外は、実施例5と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0099】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表3に示す。下記表3に示すように、非平面スペックル構造を有する実施例6の発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例5と比較すると実に1.53倍に増強されており、また、視野角60°における色度差Δu’v’は0.0196と改善された。
【0100】
図9に実施例6及び比較例5の発光素子の正面放射輝度を示す。図9に示すように、非平面スペックル構造を有さない比較例5の発光素子と比較すると、非平面スペックル構造を有する発光素子では全発光波長に亘って輝度増強が観測された。
【0101】
<実施例7>
最大拡散角度110°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が45.1°であり、かつ等方性の非平面スペックル構造を片面に有するフィルムを使用したこと以外は、実施例5と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0102】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表3に示す。下記表3に示すように、発光素子の光取り出し効率の向上比は、非平面スペックル構造を有さない比較例5と比較すると実に1.50倍に増強されており、また、視野角60°における色度差Δu’v’は0.0142と改善された。
【0103】
<比較例6>
最大拡散角度30°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差が21.1°であり、かつ等方性の非平面スペックル構造を片面に有するフィルムを使用したこと以外は、実施例5と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0104】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表3に示す。下記表3に示すように、発光素子の視野角60°における色度差Δu’v’は0.0298となり、視野角依存性が大きかった。
【0105】
<比較例7>
サンドブラストで凹凸を片面に形成したポリエチレンテレフタレートフィルムを作製した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの最大拡散角度は5°、最大拡散角度を与える方向の傾斜面角度標準偏差は13.0°であり、かつ等方性であった。ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用したこと以外は、実施例5と同様にして発光素子(有機エレクトロルミネッセンス)を作製した。
【0106】
発光素子の発光特性を評価した結果を下記表3に示す。下記表3に示すように、発光素子の光取り出し効率の向上比は、比較例5と比較すると1.31倍に増強されているものの、実施例5から実施例7の発光素子と比較すると効率で劣るものであった。
【0107】
【表3】

【0108】
表3から分かるように、透明基板が示す拡散角度が60°を超え、かつ非平面スペックル構造の傾斜面角度分布における標準偏差が所定範囲内の実施例5から実施例7においては、光取り出し効率の向上比が高く、かつ視野角60°における色度差が大幅に低減できることが分かる。これに対して、凹凸構造のない場合には、光取り出し効率が低く、かつ視野角60°における色度差が大きいことが分かる(比較例5)。また、非平面スペックル構造を有しない場合には、光取り出し効率の向上比が小さく、かつ視野角60°における色度差を十分に低減できないことが分かる(比較例7)。さらに、非平面スペックル構造を設けた場合であっても、非平面スペックル構造の傾斜面角度分布における標準偏差が小さい場合には、視野角60°における色度差が高く、色度差の視野角依存性が低下することが分かる。
【0109】
図10に実施例5から実施例7及び比較例5から比較例7の発光素子の輝度比(全光束輝度)を示す。非平面スペックル構造を有する実施例5から実施例7の発光素子では広範囲の視野角に亘って輝度増強が観測された。
【0110】
図11に実施例5から実施例7、比較例5及び比較例6の発光素子の色度差視野角依存性を示す。実施例5から実施例7の発光素子に用いる透明基板の最大拡散角度及び傾斜面角度標準偏差を大きく設計すると、視野角が大きくなっても色度差を小さくでき、視野角依存性が向上することが判明した。
【0111】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、光取り出し効率が高く、かつ、色度差の視野角依存性に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を実現できるという効果を有し、特に、ディスプレイ、バックライトユニット、照明器具などの面発光光源に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 有機エレクトロルミネッセンス素子
11 陰極
12 有機発光層
13 透明導電膜(陽極)
14 透明基板
14a、16a、18a 非平面スペックル構造(凹凸構造)
15 基材
16 表面層
17 粘着層
18 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主面を有する透明基板と、前記透明基板の一方の主面上に設けられた透明導電膜と、前記透明導電膜上に設けられ発光物質を含む有機発光層と、を具備し、
前記透明基板の少なくとも一方の主面に、凹凸形状の高さ及びピッチが不規則に形成される複数の凹凸構造を含んでなる非平面スペックル構造が設けられており、
前記透明基板が示す最大拡散角度が60°を超え120°以下であり、前記非平面スペックル構造は、前記透明基板の主面内における前記最大拡散角度を示す方向において、傾斜面角度分布における標準偏差が35°〜60°であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記非平面スペックル構造の凹凸形状は、平均ピッチが0.7μm〜30μmであり、平均高さが0.7μm〜20μmであることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記透明基板は、透明樹脂、補強材を含有する透明樹脂、又は透明ガラスのいずれかの基材と、当該基材上に設けられ表面に凹凸形状の高さ及びピッチが不規則に形成された複数の凹凸構造を含んでなる非平面スペックル構造が設けられた表面層、又はフィルムと、を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備したことを特徴とする照明器具。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備したことを特徴とするディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−178279(P2012−178279A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40762(P2011−40762)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】