説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】長寿命の燐光発光性有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】陽極と陰極との間に発光層を含む複数の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光層が、3、4’−ビスカルバゾール誘導体を含有し、陽極と発光層との間に配置された少なくとも1層の有機薄膜層が、ジアリールアミノ置換基を2個有する化合物またはトリアリールアミン化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極と陰極との間に発光層を含む有機薄膜層を備え、発光層に注入された正孔と電子との再結合によって生じる励起子(エキシトン)エネルギーから発光を得る有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。
このような有機エレクトロルミネッセンス素子は、自発光型素子としての利点を活かし、発光効率、画質、消費電力さらには薄型のデザイン性に優れた発光素子として期待されている。
【0003】
発光層を形成するにあたっては、ホストに、ドーパントとして発光材料をドーピングするドーピング法が知られている。
ドーピング法で形成した発光層では、ホストに注入された電荷から効率よく励起子を生成することができる。そして、生成された励起子の励起子エネルギーをドーパントに移動させ、ドーパントから高効率の発光を得ることができる。
そして、近年では有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とも言う)の性能向上を果たすべく、ドーピング法に関してもさらなる研究が行われており、好適なホスト材料の探索が続いている。
【0004】
このようなホスト材料が記載された発明として、例えば、特許文献1〜7が挙げられる。特許文献1〜7には、以下の化合物I〜VIIIに示すように、カルバゾール骨格と含窒素芳香族環を同一分子内に含む化合物および複数のカルバゾ−ル骨格を同一分子内に含む化合物が記載されている。
特許文献1に記載の化合物I、IIは、カルバゾール骨格がベンゼン環に結合した構造と、電子欠乏性の含窒素ヘテロ芳香族環構造とを有している。カルバゾール骨格は古くからポリビニルカルバゾールに代表されるように、正孔輸送性材料の主要骨格として知られている。また、電子欠乏性の含窒素ヘテロ芳香族環構造は反対に電子輸送能が高い構造として知られている。すなわち、特許文献1に記載の化合物I、IIは正孔輸送性骨格と電子輸送性骨格を組み合わせることにより、電荷輸送のバランスを取るように考えられた材料である。
【0005】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2003−080760
【特許文献2】特許3139321号
【特許文献3】特許4357781号
【特許文献4】特開2003−151774
【特許文献5】特開2008−135498
【特許文献6】特開2009−21336
【特許文献7】特開2008−214307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、化合物Iはカルバゾール骨格を1つしか有さず、正孔輸送性能が不足しているため、良好な発光特性が得られない。また、化合物IIはカルバゾリル基を2つ有しているが、ピリミジン環とベンゼン環(2つの共役する芳香族環)の結合軸に対してカルバゾリル基が左右に折れた構造となっている。そのため、分子間におけるカルバゾール骨格部分の重なりが阻害され、正孔輸送能が十分でなく、電荷の再結合位置が陽極側に偏る傾向があり、良好な発光特性、寿命特性が得られないという懸念がある。
そこで、分子間の重なりを大きくして十分な正孔輸送性能を発現するために、カルバゾール骨格を連結させる構造を分子内に組み込むことが考案されている。例えば、特許文献2−5に記載された化合物III〜VIは、2つのカルバゾール骨格が連結された構造を有する。しかしながら、いずれも電子欠乏性の含窒素ヘテロ芳香族環構造を含まないため、正孔と電子のキャリアバランスの調整が困難となり、良好な発光特性が得られない。
【0008】
さらに、特許文献6に記載された化合物VIIは、電子欠乏性の含窒素ヘテロ芳香族環構造とカルバゾール連結構造を有する。しかし、2つのカルバゾール骨格は3位の炭素と窒素で結合したものである。この構造では2つのカルバゾ−ル骨格同士がねじれて平面性が崩れてしまうため、分子間の重なりが小さく、正孔輸送性能が十分でなくなり、良好な発光特性、寿命特性が得られないことが考えられる。
特許文献7に記載された化合物VIIIは、含窒素芳香族複素環基であるビピリジル基がカルバゾール骨格のベンゼン環に結合した構造を有する。該化合物は電子輸送層用材料として利用されているが、燐光ホスト用材料の性能に関する開示はない。しかしながら、該化合物は電子輸送性が高いことが考えられ、ホスト材料として用いた場合には発光層内のキャリアバランスが悪く、良好な発光特性を示さないことが考えられる。
【0009】
そこで本発明は、正孔輸送能力と電子輸送能力を併せ持ち、キャリアバランスに優れた新規なビスカルバゾール誘導体、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、およびそれを用いた長寿命の燐光発光性有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、2つのカルバゾリル基と含窒素複素環基からなる化合物が有機EL素子の発光層内のキャリアバランスを最適化するために有効に働くことを見出し、発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に発光層を含む複数の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、下記一般式(1A)または(1B)で表されるビスカルバゾール誘導体を含有し、
前記陽極と前記発光層との間に配置された少なくとも1層の有機薄膜層が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物を含有する
ことを特徴とする。
【0012】
【化2】

【0013】
(前記一般式(1A)および(1B)において、
は、環形成炭素数1〜30の置換又は無置換の含窒素複素環基を表す。
は、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の含窒素複素環基を表す。
,Xは、連結基であり、互いに独立して、
単結合、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
〜Yは、互いに独立して、
水素原子、フッ素原子、シアノ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、
炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、
炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成しても良い。
p,qは1〜4の整数を表し、r,sは1〜3の整数を表す。
なお、p,qが2〜4の整数、r,sが2〜3の整数の場合、複数のY〜Yはそれぞれ同一でも異なっても良い。)
【0014】
【化3】

【0015】
(前記一般式(I)において、Ar〜Arは、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、
又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基、
又は置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の縮合芳香族複素環基、または、
これらの芳香族炭化水素基、縮合芳香族炭化水素基と芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基を結合させた基を表す。)
【0016】
【化4】

【0017】
(前記一般式(II)において、Ar〜Arの定義は、前記一般式(II)のAr〜Arの定義と同様である。)
【0018】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、Aが、置換または無置換のピリジン環、置換または無置換のピリミジン環、置換または無置換のトリアジン環、置換または無置換のキナゾリン環からなる群から選ばれることが好ましい。
そして、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、Aが、置換もしくは無置換のピリミジン環または置換もしくは無置換のトリアジン環であることが好ましい。
さらに、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、Aが、置換または無置換のピリミジン環であることが好ましい。
【0019】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記一般式(I)または(II)で表される化合物を含有する前記有機薄膜層が、正孔注入層または正孔輸送層であることが好ましい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が燐光材料を含有することが好ましい。
そして、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記燐光材料がイリジウム(Ir),オスミウム(Os)、白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記陰極と前記発光層の間に電子注入層を有し、前記電子注入層が、下記一般式(201)〜(203)のいずれかで表される含窒素環誘導体を含むことが好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
(前記一般式(201)〜(203)において、
Rは、
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の又は縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
nは0〜4の整数であり、
は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の又は縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
及びRは、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の又は縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の又は縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジニレン基、
置換もしくは無置換のキノリニレン基、または
置換もしくは無置換のフルオレニレン基であり、
Arは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の又は縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジニレン基、又は
置換もしくは無置換のキノリニレン基であり、
Arは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の又は縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
Arは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の又は縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、または
−Ar−Arで表される基(Ar及びArは、それぞれ前記と同じ)である。)
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記ビスカルバゾール誘導体を有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として用いるので、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。さらに、この有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機太陽電池、有機半導体レーザー、有機物を用いるセンサー、有機TFT用の有機電子素子用材料としても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について具体的に説明する。
<第1実施形態>
(有機EL素子の構成)
まず、有機EL素子の素子構成について説明する。
有機EL素子の代表的な素子構成としては、
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入・輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
などの構造を挙げることができる。
上記の中で(8)の構成が好ましく用いられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0026】
図1に、本発明の実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透明な基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機薄膜層10と、を有する。
有機薄膜層10は、ホスト材料としての燐光ホスト及び燐光材料としての燐光ドーパントを含む燐光発光層5を有するが、燐光発光層5と陽極3との間に正孔注入・輸送層6等、燐光発光層5と陰極4との間に電子注入・輸送層7等を備えていてもよい。
また、燐光発光層5の陽極3側に電子障壁層を、燐光発光層5の陰極4側に正孔障壁層を、それぞれ設けてもよい。
これにより、電子や正孔を燐光発光層5に閉じ込めて、燐光発光層5における励起子の生成確率を高めることができる。
【0027】
なお、本明細書において、蛍光ホスト及び燐光ホストの用語は、蛍光ドーパントと組み合わされたときには蛍光ホストと称し、燐光ドーパントと組み合わされたときには燐光ホストと称するものであり、分子構造のみから一義的に蛍光ホストや燐光ホストに限定的に区分されるものではない。
言い換えると、本明細書において、蛍光ホストとは、蛍光ドーパントを含有する蛍光発光層を構成する材料を意味し、蛍光発光材料のホストにしか利用できないものを意味しているわけではない。
同様に燐光ホストとは、燐光ドーパントを含有する燐光発光層を構成する材料を意味し、燐光材料のホストにしか利用できないものを意味しているわけではない。
【0028】
また、本明細書中で「正孔注入・輸送層」は「正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくともいずれか一方」を意味し、「電子注入・輸送層」は「電子注入層及び電子輸送層のうちの少なくともいずれか一方」を意味する。
【0029】
(透明性基板)
本発明の有機EL素子は、透光性の基板上に作製する。ここでいう透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400nm〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。
ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を原料として用いてなるものを挙げられる。
またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を原料として用いてなるものを挙げることができる。
【0030】
(陽極及び陰極)
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔注入層、正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。
陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅等が挙げられる。
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。
本実施形態のように、発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選択される。
【0031】
陰極としては、電子注入層、電子輸送層又は発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。
陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。
陰極も、陽極と同様に、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極側から、発光を取り出す態様を採用することもできる。
【0032】
(発光層)
有機EL素子の発光層は、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有する有機薄膜層である。
【0033】
ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよい。
この発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法を適用することができる。
【0034】
発光層は、分子堆積膜であることが好ましい。
ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
また、特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
【0035】
本発明の有機EL素子は陰極と陽極との間に、1層または複数層からなる有機薄膜層を備え、該有機薄膜層は、少なくとも1つの発光層を有し、該有機薄膜層の少なくとも1層が、燐光材料少なくとも1種と、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として、後述の本発明のビスカルバゾール誘導体を少なくとも1種含む。また、発光層の少なくとも1つが本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料としてのビスカルバゾール誘導体と、燐光材料少なくとも1種とを含むことが好ましい。
【0036】
(ビスカルバゾール誘導体)
本発明のビスカルバゾール誘導体は、下記一般式(1A)または(1B)で表されるビスカルバゾール誘導体である。
【0037】
【化6】

【0038】
前記一般式(1A)または(1B)において、Aは、環形成炭素数1〜30の置換又は無置換の含窒素複素環基を表す。
は、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の含窒素複素環基を表す。
,Xは、連結基であり、互いに独立して
単結合、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
〜Yは、互いに独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成しても良い。
p,qは1〜4の整数を表し、r,sは1〜3の整数を表す。
なお、p,qが2〜4の整数、r,sが2〜3の整数の場合、複数のY〜Yはそれぞれ同一でも異なっても良い。
【0039】
〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成する場合としては、例えば以下の一般式で表される構造があげられる。
【0040】
【化7】

【0041】
さらに、前記一般式(1A)または(1B)において、Aが置換もしくは無置換のピリジン環、置換もしくは無置換のピリミジン環、置換もしくは無置換のトリアジン環からなる群から選ばれることが好ましく、置換もしくは無置換のピリミジン環、置換もしくは無置換のトリアジン環から選ばれることがより好ましい。
【0042】
さらに、前記式(1A)または(1B)において、Aが置換または無置換のピリミジン環であることが好ましい。
【0043】
また、前記一般式(1A)または(1B)において、Aが置換または無置換のキナゾリン環であることが好ましい。
【0044】
前記式(1A)または(1B)において、Xとしては、単結合または環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の2価の芳香族炭化水素基が好ましく、特にベンゼン環が好ましい。
前記式(1A)または(1B)において、Xが、置換もしくは無置換のベンゼン環である場合、Xに結合しているAとカルバゾリル基は、互いにメタ位又はパラ位にあるのが好ましい。特に、Xは無置換のパラ−フェニレンが好ましい。
【0045】
前記式(1A)または(1B)において、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環はそれぞれ、以下の式で表されることがより好ましい。ここでYおよびY’は置換基を表し、置換基としては、前述のY〜Yと同様の基を用いることができ、YとY’は同一でも異なっていてもよい。中でも好ましくは、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。尚、以下の式において、*はXまたはXとの結合位置を表す。
【0046】
【化8】

【0047】
また、前記式(1A)または(1B)において、キナゾリン環は以下の式で表される。ここでYは置換基を表し、uは1〜5の整数を表す。uが2〜5の整数の場合、複数のYはそれぞれ同一でも異なっても良い。置換基Yとしては、前述のY〜Yと同様の基を用いることができ、中でも好ましくは、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。尚、以下の式においても、*はXまたはXとの結合位置を表す。
【0048】
【化9】

【0049】
前記式(1A)または(1B)において、Y〜Yで表されるアルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、アルキルシリル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれのものでもよい。
【0050】
前記式(1A)または(1B)において、前記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、3,5−テトラメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が好ましい
【0051】
前記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0052】
前記炭素数1〜20のハロアルキル基としては、例えば、前記炭素数1〜20のアルキル基が1以上のハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素が好ましい。トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基など挙げられる。
前記炭素数1〜20のハロアルコキシ基としては、例えば、前記炭素数1〜20のアルコキシ基が1以上のハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲンはフッ素が好ましい。
【0053】
前記炭素数1〜10のアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルブチルシリル基、ジメチルターシャリーブチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基等が挙げられる。
【0054】
前記炭素数6〜30のアリールシリル基としては、例えば、フェニルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニルターシャリーブチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0055】
前記環形成炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基としては、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、チエニル基、およびピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、ピロリジン環、ジオキサン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピペラジン環、カルバゾール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラン環、ジベンゾフラン環から形成される基が挙げられる。中でも環形成炭素数2〜10の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基が好ましい。
【0056】
前記環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、クリセニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基が挙げられる。中でも環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基が好ましい。
【0057】
前記一般式(1A)または(1B)におけるA、A、X、X、Y〜Yが、1つ又は複数の置換基を有する場合、前記置換基は、直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基、直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のハロアルキル基、直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキルシリル基、環形成炭素数6〜30のアリールシリル基、シアノ基、ハロゲン原子、環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、または環形成炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基であることが好ましい。
【0058】
前記直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基、前記直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基、前記直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のハロアルキル基、前記直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜10のアルキルシリル基、前記環形成炭素数6〜30のアリールシリル基、前記環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、前記環形成炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基としては、例えば、前述した基を挙げることができ、ハロゲン原子としては、フッ素原子が挙げられる。
【0059】
前記一般式(1A)または(1B)で表される本発明のビスカルバゾール誘導体としては、例えば、次の化合物が具体例として挙げられる。
【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
【化12】

【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
【化18】

【0069】
【化19】

【0070】
【化20】

【0071】
【化21】

【0072】
【化22】

【0073】
【化23】

【0074】
【化24】

【0075】
ここで、前記一般式(1A)または(1B)で表される本発明のカルバゾール誘導体は、カルバゾール骨格の2位と3位とが結合したビスカルバゾール誘導体である。一般的にカルバゾールは、反応活性部位が3位であり、2位は反応活性部位ではない。そのため、2位に置換基を有するカルバゾール誘導体の合成は、3位に置換基を有するカルバゾール誘導体、例えば、カルバゾール骨格の3位同士が結合したビスカルバゾール誘導体の合成に比べて困難であるが、本発明においては、後述する実施例に記載の方法により、これらの化合物を合成した。
【0076】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、上記ビスカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、上記一般式(1A)または(1B)で表されるビスカルバゾール誘導体を含む。
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極の間に有機層を有し、前記有機層が(1A)または(1B)のビスカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする。
本発明の有機EL素子は、発光層が本発明の有機EL素子用材料を含有していても好ましい。
本発明の有機EL素子は、電子注入・輸送層を有し、該電子注入・輸送層が本発明の有機EL素子用材料を含有していても好ましい。
また、本発明の有機EL素子が電子注入・輸送層及び正孔障壁層のうち少なくともいずれか一方を有し、該電子注入・輸送層及び正孔障壁層のうち少なくともいずれか一方が、本発明の有機EL素子用材料を含有しても好ましい。
また、本発明の有機EL素子は、正孔輸送層(正孔注入層)を有し、該正孔輸送層(正孔注入層)が本発明の有機EL素子用材料を含有しても好ましい。
【0077】
前記一般式(1A)または(1B)で表される本発明のカルバゾール誘導体は、例えば、カルバゾール骨格の3位同士が結合したビスカルバゾール誘導体に比べて、イオン化ポテンシャル(IP)が小さい傾向にあり、これを有機EL素子用材料として用いた場合、正孔注入性が高くなることが期待できる。
また、ビスカルバゾール誘導体において、カルバゾール同士の結合位置を変更することは、共役系を変更することとなる。例えば、カルバゾール骨格の3位同士が結合したビスカルバゾール誘導体を、カルバゾール骨格の2位と3位とが結合した本発明のカルバゾール誘導体に変更すると、共役系が切断され、1重項エネルギーのギャップ(S1)が大きくなり、アフィニティ(Af)が浅くなる。したがって、3位同士から2位と3位との結合に結合位置を変更することにより、カルバゾール誘導体への電子注入性の制御が可能となることが期待できる。
【0078】
(燐光材料)
本発明において、前記燐光材料は、金属錯体を含有し、前記金属錯体は、Ir,Pt,Os,Au,Cu,Re及びRuから選択される金属原子と、配位子と、を有することが好ましい。特に、前記配位子は、オルトメタル結合を有することが好ましい。
燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、Ir,Os及びPtから選ばれる金属原子を含有する化合物であると好ましく、イリジウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体等の金属錯体であるとさらに好ましく、中でもイリジウム錯体及び白金錯体がより好ましく、オルトメタル化イリジウム錯体が最も好ましい。
好ましい金属錯体の具体例を、以下に示す。
【0079】
【化25】

【0080】
【化26】

【0081】
【化27】

【0082】
【化28】

【0083】
本発明では、前記発光層に含まれる前記燐光材料のうち少なくとも1種は、発光波長の極大値が450nm以上720nm以下であることが好ましい。
このような発光波長の燐光材料(燐光ドーパント)を、本発明で用いる特定のホスト材料にドープして発光層を構成することにより、高効率な有機EL素子とできる。
【0084】
(還元性ドーパント)
本発明の有機EL素子は、陰極と有機薄膜層との界面領域に還元性ドーパントを有することも好ましい。
このような構成によれば、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
還元性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属錯体、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、希土類金属錯体、及び希土類金属化合物等から選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
【0085】
アルカリ金属としては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)、Cs(仕事関数:1.95eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはK、Rb、Cs、さらに好ましくはRb又はCsであり、最も好ましくはCsである。
アルカリ土類金属としては、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0eV〜2.5eV)、Ba(仕事関数:2.52eV)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
希土類金属としては、Sc、Y、Ce、Tb、Yb等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
以上の金属のうち好ましい金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が可能である。
【0086】
アルカリ金属化合物としては、Li2O、Cs2O、K2O等のアルカリ酸化物、LiF、NaF、CsF、KF等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、LiF、Li2O、NaFが好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、BaO、SrO、CaO及びこれらを混合したBaxSr1-xO(0<x<1)、BaxCa1-xO(0<x<1)等が挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。
希土類金属化合物としては、YbF3、ScF3、ScO3、Y23、Ce23、GdF3、TbF3等が挙げられ、YbF3、ScF3、TbF3が好ましい。
【0087】
アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体としては、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、βージケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0088】
還元性ドーパントの添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成すると好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により還元性ドーパントを蒸着しながら、界面領域を形成する発光材料や電子注入材料である有機物を同時に蒸着させ、有機物中に還元ドーパントを分散する方法が好ましい。分散濃度はモル比で有機物:還元性ドーパント=100:1〜1:100、好ましくは5:1〜1:5である。
還元性ドーパントを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、還元ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm〜15nmで形成する。
還元性ドーパントを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、還元ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm〜1nmで形成する。
また、本発明の有機EL素子における、主成分と還元性ドーパントの割合としては、モル比で主成分:還元性ドーパント=5:1〜1:5であると好ましく、2:1〜1:2であるとさらに好ましい。
【0089】
(電子注入層および電子輸送層)
電子注入層又は電子輸送層は、発光層への電子の注入を助ける層であって、電子移動度が大きい。電子注入層はエネルギーレベルの急な変化を緩和する等、エネルギーレベルを調整するために設ける。
本発明の有機EL素子は、発光層と陰極との間に電子注入層を有し、前記電子注入層は、含窒素環誘導体を主成分として含有することが好ましい。ここで、電子注入層は電子輸送層として機能する層であってもよい。
なお、「主成分として」とは、電子注入層が50質量%以上の含窒素環誘導体を含有していることを意味する。
【0090】
電子注入層に用いる電子輸送性材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。また、含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する芳香族環、又は含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する縮合芳香族環化合物が好ましい。
この含窒素環誘導体としては、例えば、下記式(A)で表される含窒素環金属キレート錯体が好ましい。
【0091】
【化29】

【0092】
一般式(A)におけるR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、オキシ基、アミノ基、炭素数1〜40の炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、または、芳香族複素環基であり、これらは置換されていてもよい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。また、置換されていてもよいアミノ基の例としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基が挙げられる。
【0093】
アルコキシカルボニル基は−COOY’と表され、Y’の例としては前記アルキル基と同様のものが挙げられる。アルキルアミノ基及びアラルキルアミノ基は−NQと表される。Q及びQの具体例としては、それぞれ独立に、前記アルキル基、前記アラルキル基で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。Q及びQの一方は水素原子であってもよい。
アリールアミノ基は−NArArと表され、Ar及びArの具体例としては、それぞれ独立に前記芳香族炭化水素基及び縮合芳香族炭化水素基で説明した基と同様である。Ar及びArの一方は水素原子であってもよい。
【0094】
Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)であり、Inであると好ましい。
上記式(A)のLは、下記式(A’)又は(A”)で表される基である。
【0095】
【化30】

【0096】
前記式(A’)中、R〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。また、前記式(A”)中、R13〜R27は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。
前記式(A’)及び式(A”)のR〜R12及びR13〜R27が示す炭素数1〜40の炭化水素基としては、前記式(A)中のR〜Rの具体例と同様のものが挙げられる。
また、R〜R12及びR13〜R27の互いに隣接する基が環状構造を形成した場合の2価の基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基等が挙げられる。
【0097】
一方、本発明では、電子輸送層として、前記式(1)から(3)(または(4)から(6))に示されたビスカルバゾール誘導体を含有してもよい。
【0098】
電子注入層又は電子輸送層に用いられる電子伝達性化合物としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、含窒素複素環誘導体が好適である。上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを用いることができる。そして、オキサジアゾール誘導体としては、下記のものを挙げることができる。
【0099】
【化31】

【0100】
前記式中、Ar17、Ar18、Ar19、Ar21、Ar22及びAr25は、それぞれ置換基を有するもしくは有さない環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar17とAr18、Ar19とAr21、Ar22とAr25は、たがいに同一でも異なっていてもよい。環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基などが挙げられる。そして、これらへの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
Ar20、Ar23及びAr24は、それぞれ置換基を有するもしくは有さない環形成炭素数6〜40の2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基を示し、Ar23とAr24は、たがいに同一でも異なっていてもよい。
この2価の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基などが挙げられる。そして、これらへの置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。
【0101】
これらの電子伝達性化合物は、薄膜形成性の良好なものが好ましく用いられる。そして、これら電子伝達性化合物の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0102】
【化32】

【0103】
電子伝達性化合物としての含窒素複素環誘導体は、以下の一般式を有する有機化合物からなる含窒素複素環誘導体であって、金属錯体でない含窒素化合物が挙げられる。例えば、下記式(A)に示す骨格を含有する5員環もしくは6員環や、下記式(B)に示す構造のものが挙げられる。
【0104】
【化33】

【0105】
前記式(B)中、Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。ZならびにZは、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。
【0106】
含窒素複素環誘導体は、さらに好ましくは、5員環もしくは6員環からなる含窒素芳香多環族を有する有機化合物である。さらには、このような複数窒素原子を有する含窒素芳香多環族の場合は、上記式(A)と(B)もしくは上記式(A)と下記式(C)を組み合わせた骨格を有する含窒素芳香多環有機化合物が好ましい。
【0107】
【化34】

【0108】
前記の含窒素芳香多環有機化合物の含窒素基は、例えば、以下の一般式で表される含窒素複素環基から選択される。
【0109】
【化35】

【0110】
前記各式中、Rは、環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数1〜20のアルコキシ基であり、nは0〜5の整数であり、nが2以上の整数であるとき、複数のRは互いに同一又は異なっていてもよい。
【0111】
さらに、好ましい具体的な化合物として、下記式で表される含窒素複素環誘導体が挙げられる。
HAr−L−Ar−Ar
前記式中、HArは、置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜40の含窒素複素環基であり、Lは単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基であり、Arは置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の2価の芳香族炭化水素基であり、Arは置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
HArは、例えば、下記の群から選択される。
【0112】
【化36】

【0113】
は、例えば、下記の群から選択される。
【0114】
【化37】

【0115】
Arは、例えば、下記のアリールアントラニル基から選択される。
【0116】
【化38】

【0117】
前記式中、R〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、環形成炭素数6〜40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、または環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基であり、Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基または環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
また、R〜Rは、いずれも水素原子である含窒素複素環誘導体であってもよい。
【0118】
Arは、例えば、下記の群から選択される。
【0119】
【化39】

【0120】
電子伝達性化合物としての含窒素芳香多環有機化合物には、この他、下記の化合物(特開平9−3448号公報参照)も好適に用いられる。
【0121】
【化40】

【0122】
前記式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族基、置換もしくは無置換の脂肪族式環基、置換もしくは無置換の炭素環式芳香族環基、置換もしくは無置換の複素環基を表し、X、Xは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、またはジシアノメチレン基を表す。
【0123】
また、電子伝達性化合物として、下記の化合物(特開2000−173774号公報参照)も好適に用いられる。
【0124】
【化41】

【0125】
前記式中、R、R、R及びRは互いに同一のまたは異なる基であって、下記式で表わされる芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基である。
【0126】
【化42】

【0127】
前記式中、R、R、R、R及びRは互いに同一のまたは異なる基であって、水素原子、或いはそれらの少なくとも1つが飽和もしくは不飽和アルコキシル基、アルキル基、アミノ基、またはアルキルアミノ基である。
【0128】
さらに、電子伝達性化合物は、該含窒素複素環基または含窒素複素環誘導体を含む高分子化合物であってもよい。
【0129】
また、電子輸送層は、下記式(201)〜(203)で表される含窒素複素環誘導体の少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。
【0130】
【化43】

【0131】
前記式(201)〜(203)中、Rは、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基で、
nは0〜4の整数であり、
は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基。または炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジニレン基、置換もしくは無置換のキノリニレン基、または置換もしくは無置換のフルオレニレン基であり、
Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジニレン基又は置換もしくは無置換のキノリニレン基であり、Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。
【0132】
Arは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、または−Ar−Arで表される基(Ar及びArは、それぞれ前記と同じ)である。
なお、前記式(201)〜(203)において、Rは、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。
【0133】
なお、電子注入層又は電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、1nm〜100nmである。
また、電子注入層の構成成分として、含窒素環誘導体の他に無機化合物として、絶縁体又は半導体を使用することが好ましい。電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
【0134】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、LiO、KO、NaS、NaSe及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeF等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0135】
また、半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子注入層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
このような絶縁体又は半導体を使用する場合、その層の好ましい厚みは、0.1nm〜15nm程度である。また、本発明における電子注入層は、前述の還元性ドーパントを含有していても好ましい。
【0136】
(正孔注入層および正孔輸送層)
正孔注入層又は正孔輸送層(正孔注入輸送層も含む)には、芳香族アミン化合物、例えば、下記一般式(I)で表わされる芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
【0137】
【化44】

【0138】
前記一般式(I)において、Ar〜Arは置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の縮合芳香族複素環基、または、それら芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基と芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基を結合させた基を表す。
【0139】
前記一般式(I)の化合物の具体例を以下に記すが、これらに限定されるものではない。
【0140】
【化45】

【0141】
また、下記一般式(II)の芳香族アミンも正孔注入層又は正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
【0142】
【化46】

【0143】
前記一般式(II)において、Ar〜Arの定義は前記一般式(I)のAr〜Arの定義と同様である。以下に一般式(II)の化合物の具体例を記すがこれらに限定されるものではない。
【0144】
【化47】

【0145】
本発明の有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができる。本発明の有機EL素子に用いる、前記式(1A)または(1B)で表される化合物を含有する有機薄膜層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)あるいは溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0146】
本発明の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0147】
<第2実施形態>
次に第2実施形態に係る有機EL素子について説明する。
第2実施形態に係る有機EL素子は、発光層が第1ホスト材料と、第2ホスト材料と、燐光発光材料とを含有している点で相違する。この際、第1ホスト材料は、下記一般式(5A)および(5B)で表される本発明のビスカルバゾール誘導体である。
【0148】
【化48】

【0149】
[前記一般式(5A)および(5B)において、Aは、環形成炭素数1〜30の置換又は無置換の含窒素複素環基を表す。
は、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の含窒素複素環基を表す。
,Xは、連結基であり、互いに独立して、
単結合、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
〜Yは、互いに独立して、
水素原子、フッ素原子、シアノ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、
炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、
炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成しても良い。
p,qは1〜4の整数を表し、r,sは1〜3の整数を表す。
なお、p,qが2〜4の整数、r,sが2〜3の整数の場合、複数のY〜Yはそれぞれ同一でも異なっても良い。]
【0150】
ここで、Y〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成する場合としては、前記式(1A)および(1B)において、Y〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成する場合に挙げられる前記した構造と同じものがあげられる。また、置換又は無置換の含窒素複素環基は、置換もしくは無置換のカルバゾリル基および置換もしくは無置換のインドリル基でないものが好ましい。
【0151】
前記一般式(5A)および(5B)で表される有機EL素子用材料は、正孔輸送性の強いビスカルバゾール骨格と電子輸送性の強い複素環骨格を有しており、単一ホストとして十分な機能を果たすバイポーラー性能を有している。しかしながら、多層化された有機EL素子の発光効率および寿命は、有機EL素子全体のキャリアバランスに大きく依存する。このキャリアバランスを支配する主な因子は、各有機層におけるキャリア輸送性、異なる有機層の界面におけるキャリア注入性である。再結合領域である発光層において、周辺層とのキャリア注入性のバランスを取るためには、単一ホスト材料ではなく、複数のホスト材料により、キャリアバランスを是正することが好ましい。すなわち、発光層に第1ホスト材料に加え、コホストとしての第2ホスト材料を適切に選択して、用いることが好ましい。
【0152】
陰極に電子注入性能が弱い材料、例えば金属キレート錯体を使用した場合には、発光層のキャリアバランスが陰極寄りになる。これを改善するためには、電子輸送性能の高い材料を第2ホスト材料として、選定することが好ましい。すなわち、本実施形態の第2ホスト材料は、下記一般式(6)または(7)で表されることが好ましい。
【0153】
【化49】

【0154】
[前記一般式(6)および(7)において、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基、又は、カルバゾリルアリール基を表す。
は、下記一般式(8A)で表される基である。
a、bは、それぞれ1〜3の整数である。]
【0155】
【化50】

【0156】
(前記式(8A)において、M及びMは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜40の窒素含有芳香族複素環又は窒素含有縮合芳香族複素環であり、同一でも異なっていてもよい。
は、
単結合、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基、又は、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30の縮合芳香族複素環基である。
cは0〜2、dは1〜2、eは0〜2の整数である。ただし、c+eは1以上である。)
【0157】
(式(6)および(7)で表される化合物について)
Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又は置換もしくは無置換のカルバゾリルアリール基である。
アリールカルバゾリル基とは、置換基として少なくとも1つのアリール基又はヘテロアリール基を有するカルバゾリル基をいい、アリール基又はヘテロアリール基が置換されている位置は問わない。
具体的には、例えば以下のものが挙げられる。以下の化学式中、Arはアリール基又はヘテロアリール基を表し、*は他の基が結合する位置を表す。
【0158】
【化51】

【0159】
また、カルバゾリルアリール基とは、置換基として少なくとも1つのカルバゾリル基を有するアリール基をいい、アリール基が置換されている位置は問わない。
具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。以下の化学式中、Arはアリール基を表し、*は他の基が結合する位置を表す。
【0160】
【化52】

【0161】
さらに、置換のアリールカルバゾリル基とは、前記アリールカルバゾリル基が少なくとも1つの置換基を置換位置を問わず有するものをいい、置換のカルバゾリルアリール基とは、前記カルバゾリルアリール基が、少なくとも1つの置換基を置換位置を問わず有するものをいう。
【0162】
前記式(6)および(7)において、a及びbは、それぞれ1〜3の整数である。
アリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基におけるアリール基は、炭素数6〜30であると好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、フルオレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、これらのうち、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基が好ましい。
また、アリールカルバゾリル基におけるヘテロアリール基は、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、アジリジン、アザインドリジン、インドリジン、イミダゾール、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、ターピリジン、ビピリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられ、特に、ピリジン、ターピリジン、ピリミジン、イミダゾピリジン、トリアジンの環から形成される基が好ましい。
前記一般式(6)及び(7)における、Aは、前記一般式(8A)で表される基である。
【0163】
前記一般式(8A)において、M及びMは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜40の含窒素複素環基であり、同一でも異なっていてもよい。
含窒素複素環としては、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、アジリジン、アザインドリジン、インドリジン、イミダゾール、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、プテリジン、β−カルボリン、ナフチリジン、キノキサリン、ターピリジン、ビピリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾピリジン等が挙げられ、特に、ピリジン、ターピリジン、ピリミジン、イミダゾピリジン、トリアジンの環から形成される基が好ましい。
は、単結合、置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
cは0〜2、dは1〜2、eは0〜2の整数である。ただし、c+eは1以上である。
【0164】
炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、クリセニル基、フルオランテニル基、パーフルオロアリール基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基などが挙げられ、これらのうちフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、パーフルオロアリール基が好ましい。
炭素数5〜30のシクロアルキレン基としては、例えばシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基などが挙げられ、これらのうちシクロヘキシレン基が好ましい。
【0165】
炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基等が挙げられ、これらのうち、ピリジニル基、キノリル基が好ましい。
【0166】
また、上記一般式(6)、(7)、(8A)におけるCz、M、Mの置換基としては、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子、カルバゾール基、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基、トリフルオロメチル基、カルボニル基、カルボキシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリールアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルキルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、フッ素原子、メチル基、パーフルオロフェニレン基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、アダマンチル基、ベンジル基、シアノ基、シリル基が好ましい。
【0167】
前記一般式(6)又は(7)で表される化合物の結合様式としては、a,bの値に応じ、下記表1に示すようになる。
【0168】
【表1】

【0169】
前記一般式(8A)で表される基の結合様式としては、c,d,eの値に応じ、下記表2〜3に示すようになる。
【0170】
【表2】

【0171】
【表3】

【0172】
Aと結合しているCzは、Aを表す一般式(8A)のM、L、Mのいずれに結合していてもよい。
例えば、一般式(6)または(7)において、a=b=1であるCz−Aで、(8A)が表2[6](c=d=e=1)の場合には、Cz−M−L−M、M−L(Cz)−M及びM−L−M−Czの3つの結合様式が挙げられる。
また、例えば、一般式(6)において、a=2であるCz−A−Czで、(8A)が表2[7](c=d=1,e=2)の場合には、以下の結合様式が挙げられる。
【0173】
【化53】

【0174】
以上のような、一般式(6)、(7)および(8A)の結合様式、並びに各基の例示の組み合わせにおいて、下記[1]〜[4]で表される化合物であることが好ましい。
[1]前記一般式(6)においてa=1、かつ前記一般式(8A)においてc=1,d=0であり、
一般式(6)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8A)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基もしくは芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
[2]前記一般式(6)においてa=2、かつ前記一般式(8A)においてc=1,e=0であり、
一般式(6)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8A)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基もしくは芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
【0175】
[3]前記一般式(6)においてa=1、かつ前記一般式(8A)においてc=2,e=0であり、
一般式(6)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8A)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基もしくは芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
[4]前記一般式(7)においてb=2、かつ前記一般式(8A)においてc=d=1であり、
一般式(7)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8A)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基もしくは芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
【0176】
さらに、前記一般式(6)及び(7)において、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基であると好ましく、フェニルカルバゾリル基であるとさらに好ましい。また、アリールカルバゾリル基のアリール部位がカルバゾリル基で置換されていると好ましい。
本発明の一般式(6)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0177】
【化54】

【0178】
【化55】

【0179】
【化56】

【0180】
【化57】

【0181】
【化58】

【0182】
【化59】

【0183】
【化60】

【0184】
一般式(7)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0185】
【化61】

【0186】
本発明における一般式(6)又は(7)で表される化合物は、3重項のエネルギーギャップが2.5〜3.3eVであり、2.5〜3.2eVであると好ましい。
本発明における一般式(6)又は(7)で表される化合物は、1重項のエネルギーギャップが2.8〜3.8eVであり、2.9〜3.7eVであると好ましい。
【0187】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る有機EL素子は、第2ホスト材料として電子注入性の弱い材料を用いる点で第2実施形態と相違する。
陰極に電極からの電子注入性能が強い材料、例えばLiFを使用した場合、発光層のキャリアバランスが陽極寄りになる。これを改善するためには、発光層への電子注入性の弱い材料を第2ホスト材料として選定することが好ましい。すなわち、本実施形態の第2ホスト材料は、前記一般式(6)または(7)において、Aが下記一般式(8B)であらわされる基である化合物であることが好ましい。
【0188】
【化62】

【0189】
(前記式(8B)において、M及びMは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6〜40の芳香族炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。Lは、
単結合、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の縮合芳香族炭化水素基、又は
置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基である。
cは0〜2、dは1〜2、eは0〜2の整数である。ただし、c+eは1以上である。)
【0190】
上記一般式(8B)における、M及びMの芳香族炭化水素基、Lの芳香族炭化水素基、縮合芳香族炭化水素基、およびシクロアルキレン基としては、前記一般式(8A)のものを用いることができる。また、一般式(8B)で表される基の結合様式としては、前述の一般式(8A)で表される結合様式と同様のものを用いることができる。すなわち、前述の一般式(8A)の結合様式において、MをMに、LをLに、MをMに、それぞれ置き換えればよい。
【0191】
以上のような、一般式(6)、(7)および(8B)の結合様式、並びに各基の例示の組み合わせにおいて、下記[5]〜[8]で表される化合物であることが好ましい。
[5]前記一般式(6)においてa=1、かつ前記一般式(8B)においてc=1,d=0であり、
一般式(6)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8B)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基もしくは芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
[6]前記一般式(6)においてa=2、かつ前記一般式(8B)においてc=1,e=0であり、
一般式(6)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8B)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
【0192】
[7]前記一般式(6)においてa=1、かつ前記一般式(8B)においてc=2,e=0であり、
一般式(6)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8B)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
[8]前記一般式(7)においてb=2、かつ前記一般式(8B)においてc=d=1であり、
一般式(7)式中、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基又はカルバゾリルアリール基であり、
一般式(8B)式中、Mは、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数4〜5の窒素含有ヘテロ6員環又は7員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜4の窒素含有ヘテロ5員環、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数8〜11の窒素含有ヘテロ環、置換もしくは無置換のイミダゾピリジニル環であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基又は縮合芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基である。
【0193】
さらに、前記一般式(6)及び(7)において、Czは、置換もしくは無置換のアリールカルバゾリル基であると好ましく、フェニルカルバゾリル基であるとさらに好ましい。また、アリールカルバゾリル基のアリール部位がカルバゾリル基で置換されていると好ましい。
以下に前記一般式(6)または(7)において、Aが下記一般式(8B)であらわされる基である化合物の具体例を挙げる。
【0194】
【化63】

【0195】
【化64】

【0196】
また、本実施形態の第2ホスト材料としては、下記一般式(9)で表される化合物を用いてもよい。
【0197】
【化65】

【0198】
[前記一般式(9)において、R101〜R106は、それぞれ独立に、
水素原子、ハロゲン原子、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜15のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜20の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基、

置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜20のアラルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリールアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキルアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜60のアラルキルアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアリールカルボニル基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリールチオ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のハロゲン化アルキル基、又は、
シアノ基である。
但し、R101〜R106の少なくとも1つは
置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、
置換もしくは無置換の窒素原子数2〜5のアザカルバゾリル基、または、
−L−9−カルバゾリル基であり、
Lは、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜15のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜20の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基、

置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜20のアラルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリールアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキルアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜60のアラルキルアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアリールカルボニル基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリールチオ基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のハロゲン化アルキル基
である。
Xaは、硫黄原子、酸素原子、またはN−R108である。
108は、上記R101〜R106と同義である。]。
【0199】
置換もしくは無置換の窒素原子数2〜5のアザカルバゾリル基の具体例を以下に示すが(任意の置換基は省略)、これらに限定されるものではない。
【0200】
【化66】

【0201】
【化67】

【0202】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
前記置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、1,2−ジニトロエチル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基である。アルキル基(置換基を除く)の炭素数は1〜10であるのが好ましい。
【0203】
置換もしくは無置換の炭素数3〜15のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくは、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3,5−テトラメチルシクロヘキシル基である。シクロアルキル基(置換基を除く)の炭素数は3〜12であるのが好ましい。
【0204】
前記置換もしくは無置換の炭素数3〜20の複素環基としては、例えば、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、2−イミダゾピリジニル基、3−イミダゾピリジニル基、5−イミダゾピリジニル基、6−イミダゾピリジニル基、7−イミダゾピリジニル基、8−イミダゾピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、アザカルバゾリル−1−イル基、アザカルバゾリル−2−イル基、アザカルバゾリル−3−イル基、アザカルバゾリル−4−イル基、アザカルバゾリル−5−イル基、アザカルバゾリル−6−イル基、アザカルバゾリル−7−イル基、アザカルバゾリル−8−イル基、アザカルバゾリル−9−イル基、1−フェナントリジニル基、2−フェナントリジニル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、7−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、9−フェナントリジニル基、10−フェナントリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1,7−フェナントロリン−3−イル基、1,7−フェナントロリン−4−イル基、1,7−フェナントロリン−5−イル基、1,7−フェナントロリン−6−イル基、1,7−フェナントロリン−8−イル基、1,7−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−10−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,8−フェナントロリン−10−イル基、1,9−フェナントロリン−2−イル基、1,9−フェナントロリン−3−イル基、1,9−フェナントロリン−4−イル基、1,9−フェナントロリン−5−イル基、1,9−フェナントロリン−6−イル基、1,9−フェナントロリン−7−イル基、1,9−フェナントロリン−8−イル基、1,9−フェナントロリン−10−イル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−1−イル基、2,9−フェナントロリン−3−イル基、2,9−フェナントロリン−4−イル基、2,9−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−6−イル基、2,9−フェナントロリン−7−イル基、2,9−フェナントロリン−8−イル基、2,9−フェナントロリン−10−イル基、2,8−フェナントロリン−1−イル基、2,8−フェナントロリン−3−イル基、2,8−フェナントロリン−4−イル基、2,8−フェナントロリン−5−イル基、2,8−フェナントロリン−6−イル基、2,8−フェナントロリン−7−イル基、2,8−フェナントロリン−9−イル基、2,8−フェナントロリン−10−イル基、2,7−フェナントロリン−1−イル基、2,7−フェナントロリン−3−イル基、2,7−フェナントロリン−4−イル基、2,7−フェナントロリン−5−イル基、2,7−フェナントロリン−6−イル基、2,7−フェナントロリン−8−イル基、2,7−フェナントロリン−9−イル基、2,7−フェナントロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−シラフルオレニル基、2−シラフルオレニル基、3−シラフルオレニル基、4−シラフルオレニル基、1−ゲルマフルオレニル基、2−ゲルマフルオレニル基、3−ゲルマフルオレニル基、4−ゲルマフルオレニル基等が挙げられる。
【0205】
これらの中でも好ましくは、2−ピリジニル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、2−イミダゾピリジニル基、3−イミダゾピリジニル基、5−イミダゾピリジニル基、6−イミダゾピリジニル基、7−イミダゾピリジニル基、8−イミダゾピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、9−カルバゾリル基、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−シラフルオレニル基、2−シラフルオレニル基、3−シラフルオレニル基、4−シラフルオレニル基、1−ゲルマフルオレニル基、2−ゲルマフルオレニル基、3−ゲルマフルオレニル基、4−ゲルマフルオレニル基、アザカルバゾリル−1−イル基、アザカルバゾリル−2−イル基、アザカルバゾリル−3−イル基、アザカルバゾリル−4−イル基、アザカルバゾリル−5−イル基、アザカルバゾリル−6−イル基、アザカルバゾリル−7−イル基、アザカルバゾリル−8−イル基、アザカルバゾリル−9−イル基である。複素環基(置換基を除く)の炭素数は3〜14であるのが好ましい。
【0206】
前記置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルコキシ基は−OYと表される基であり、Yの具体例としては、前記アルキル基で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
【0207】
前記置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基(縮合芳香族炭化水素基や環集合芳香族炭化水素基が含まれる。)としては、例えば、フェニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、2,3−キシリル基、3,4−キシリル基、2,5−キシリル基、メシチル基,m−クウォーターフェニル基等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、フェニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、p-トリル基、3,4−キシリル基,m−クウォーターフェニル−2−イル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−フェナントレニル基、2−フェナントレニル基、3−フェナントレニル基、4−フェナントレニル基、9−フェナントレニル基、1−トリフェニレニル基、2−トリフェニレニル基、3−トリフェニレニル基、4−トリフェニレニル基、1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基である。アリール基(置換基を除く)の炭素数は6〜24であるのが好ましい。これらの基がさらに、置換基として9−カルバゾリル基を含むことが好ましい。
【0208】
前記置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基は−OArと表される基であり、Arの具体例としては、前記アリール基で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
【0209】
前記置換もしくは無置換の炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、ベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基である。アラルキル基のアルキル部分の炭素数は1〜8であるのが好ましく、アリール部分(ヘテロアリールを含む)の炭素数は6〜18であるのが好ましい。
【0210】
前記置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリールアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜60のアラルキルアミノ基は、それぞれ、−NQ12と表され、Q1及びQ2の具体例としては、それぞれ独立に、前記アルキル基、前記アリール基、前記アラルキル基で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
【0211】
前記置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアリールカルボニル基は−COAr2と表され、Ar2の具体例としては、前記アリール基で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
【0212】
前記置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリールチオ基としては、前記アリールオキシ基−OArの酸素原子を硫黄原子に置き換えることにより得られる基が挙げられ、好ましい例も同様である。
【0213】
前記置換もしくは無置換の炭素数1〜40のハロゲン化アルキル基としては、例えば、前記アルキル基の少なくとも一個の水素原子をハロゲン原子で置換したものが挙げられ、好ましい例も同様である。
【0214】
前記一般式(9)で表される化合物の3重項エネルギーギャップは2.2〜3.2eVであることが好ましい。一般式(9)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0215】
【化68】

【0216】
【化69】

【0217】
【化70】

【0218】
【化71】

【0219】
【化72】

【0220】
【化73】

【0221】
【化74】

【0222】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る有機EL素子は、赤燐光素子である点で第2〜第3実施形態と相違する。
【0223】
本発明の化合物は特定の色に限定した燐光ホスト材料について開示するものではないが、酸化・還元性に対する耐性が高いため、赤燐光素子にも適用できる。赤燐光ホスト材料としては、緑燐光ホスト材料と比較して、三重項エネルギーが小さく、π電子雲の広がりが大きい炭化水素系材料を適用することができる。炭化水素系材料は、三重項エネルギーが小さく、緑燐光ホスト材料としては適用しにくいが、酸化・還元性が高いため、赤燐光ホスト材料としての適性が高い。したがって、第2ホスト材料として、炭化水素系材料を使用することにより、赤燐光素子の高効率化を達成することができる。
このような第2ホスト材料としては、下記式(10A)、(10B)及び(10C)で表される多環芳香族化合物からなる群から選ばれる化合物が好ましい。
【0224】
Ra−Ar101−Rb ・・・(10A)
Ra−Ar101−Ar102−Rb ・・・(10B)
Ra−Ar101−Ar102−Ar103−Rb ・・・(10C)
【0225】
前記一般式(10A)〜(10C)において、Ar101,Ar102,Ar103,Ra及びRbは置換もしくは無置換の環形成炭素数6から60のアリール基である。
Ar101,Ar102,Ar103,Ra及びRbは
置換もしくは無置換のベンゼン環、
置換もしくは無置換のナフタレン環、
置換もしくは無置換のクリセン環、
置換もしくは無置換のフルオランテン環、
置換もしくは無置換のフェナントレン環、
置換もしくは無置換のベンゾフェナントレン環、
置換もしくは無置換のジベンゾフェナントレン環、
置換もしくは無置換のトリフェニレン環、
置換もしくは無置換のベンゾ[a]トリフェニレン環、
置換もしくは無置換のベンゾクリセン環、
置換もしくは無置換のベンゾ[b]フルオランテン環、
置換もしくは無置換のフルオレン環、及び、
置換もしくは無置換のピセン環から選択される多環芳香族骨格部を表すことが好ましい。
さらにRa及びRbの置換基はアリール基ではないものが好ましく、Ar101,Ar102,Ar103,Ra及びRbが同時に置換もしくは無置換のベンゼン環でないものが好ましい。
【0226】
さらに、前記一般式(10A)から(10C)において、RaおよびRbのいずれか一方または両方は、置換もしくは無置換のフェナントレン環、置換もしくは無置換のベンゾ[c]フェナントレン環、および置換もしくは無置換のフルオランテン環からなる群から選ばれることが好ましい。
【0227】
上記多環芳香族化合物の多環芳香族骨格部は、置換基を有していてもよい。
多環芳香族骨格部の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又は、カルボキシル基が挙げられる。芳香族炭化水素基の好ましい例としては、ナフタレン、フェナントレン、フルオレン、クリセン、フルオランテン及びトリフェニレンを挙げることができる。
多環芳香族骨格部が複数の置換基を有する場合、それらが環を形成していてもよい。
【0228】
多環芳香族の骨格部については、下記の式(10−1)〜(10−4)で表される化合物からなる群から選ばれるいずれかであることが好ましい。
【0229】
【化75】

【0230】
式(10−1)〜(10−4)中、Ar〜Arは、置換若しくは無置換の核炭素数4から16の縮合環構造を表す。
式(10−1)で表される化合物としては、例えば、置換若しくは無置換のフェナントレン、クリセンの単体又は誘導体等が挙げられる。
式(10−2)で表される化合物としては、例えば、置換若しくは無置換のアセナフチレン、アセナフテン、フルオランテンの単体又は誘導体等が挙げられる。
式(10−3)で表される化合物としては、例えば、置換若しくは無置換のベンゾフルオランテンの単体又は誘導体等が挙げられる。
式(10−4)で表される化合物としては、例えば、置換若しくは無置換のナフタレンの単体又は誘導体等が挙げられる。
【0231】
ナフタレン誘導体としては、例えば、下記式(10−5)のものが挙げられる。
【0232】
【化76】

【0233】
式(10−5)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、核炭素数5〜30の置換基若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜30の分岐又は直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキル基が単独又は複数の組み合わせで構成される置換基を表す。
【0234】
フェナントレン誘導体としては、例えば、下記式(10−6)のものが挙げられる。
【0235】
【化77】

【0236】
式(10−6)中、R〜R10は、それぞれ独立に、水素原子又は、核炭素数5〜30の置換基若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜30の分岐若しくは直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキル基が単独又は複数の組み合わせで構成される置換基を表す。
【0237】
クリセン誘導体としては、例えば、下記式(10−7)のものが挙げられる。
【0238】
【化78】

【0239】
式(10−7)中、R〜R12は、それぞれ独立に、水素原子又は、核炭素数5〜30の置換基若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜30の分岐若しくは直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキル基が単独又は複数の組み合わせで構成される置換基を表す。
【0240】
また、上記多環芳香族骨格部はベンゾ[c]フェナントレン又はその誘導体であることが好ましい。ベンゾ[c]フェナントレン誘導体としては、例えば、下記式(10−8)のものが挙げられる。
【0241】
【化79】

【0242】
式(10−8)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、核炭素数5〜30の置換基若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜30の分岐又は直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキル基が単独又は複数の組み合わせで構成される置換基を表す。
【0243】
さらに、上記多環芳香族骨格部は、ベンゾ[c]クリセン又はその誘導体であることが好ましい。ベンゾ[c]クリセン誘導体としては、例えば、下記式(10−9)のものが挙げられる。
【0244】
【化80】

【0245】
式(10−9)中、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子又は、核炭素数5〜30の置換基若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜30の分岐又は直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキル基が単独又は複数の組み合わせで構成される置換基を表す。
【0246】
上記多環芳香族骨格部は、下記式(10−10)で表されるジベンゾ[c、g]フェナントレン又はその誘導体であることが好ましい。
【0247】
【化81】

【0248】
また、上記多環芳香族骨格部は、フルオランテン又はその誘導体であることが好ましい。フルオランテン誘導体としては、例えば、下記式(10−11)のものが挙げられる。
【0249】
【化82】

【0250】
式(10−11)中、X12〜X21は水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。
【0251】
さらに、上記多環芳香族骨格部は、トリフェニレン又はその誘導体であることが好ましい。トリフェニレン誘導体としては、例えば、下記式(10−12)のものが挙げられる。
【0252】
【化83】

【0253】
式(10−12)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、核炭素数5〜30の置換若しくは無置換のアリール基、炭素数1〜30の分岐若しくは直鎖のアルキル基、炭素数3〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキル基が単独又は複数の組み合わせで構成される置換基を表す。
【0254】
上記多環芳香族化合物は、下記式(10−13)で表されるものでもよい。
【0255】
【化84】

【0256】
式(10−13)中、Ra、Rbは上記式(10A)〜(10C)と同じである。Ra、Rb、ナフタレン環が1つ又は複数の置換基を有する場合、置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、炭素数5〜18のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシリル基、シアノ基又はハロゲン原子であり、Ra,Rb以外のナフタレン環の置換基はさらに炭素数6〜22のアリール基でもよい。
式(10−13)中、Ra、Rbは、フルオレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ベンゾフェナントレン環、ジベンゾフェナントレン環、ベンゾトリフェニレン環、フルオランテン環、ベンゾクリセン環、ベンゾ[b]フルオランテン環及びピセン環から選択される基であることが好ましい。
【0257】
<第5実施形態>
また、第2ホスト材料は、下記式(11)から(13)までのうちのいずれかで表されるモノアミン誘導体であっても好ましい。
【0258】
【化85】

【0259】
一般式(11)において、Ar111、Ar112、およびAr113は、それぞれ置換基を有しても良いアリール基又はヘテロアリール基である。
アリール基としては、環形成炭素数が6から50まで(好ましくは6から30まで、より好ましくは6から20まで)のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ベンゾフェナントレニル基、ジベンゾフェナントレニル基、ベンゾクリセニル基、ジベンゾクリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ジベンゾトリフェニレニル基、ピセニル基、ベンゾピセニル基、およびジベンゾピセニル基、フェナレニル基、アセナフテニル基、およびジアザフェナントレニル基が挙げられる。中でもフェニル基又はナフチル基が好ましい。
ヘテロアリール基としては、環形成原子数が5から50まで(好ましくは6から30まで、より好ましくは6から20まで)のヘテロアリール基であり、例えば、ピリミジル基、ジアザフェナントレニル基が挙げられる。
Ar111、Ar112、およびAr113のうちの少なくとも1つは、フェナントレニル基、ベンゾフェナントレニル基、ジベンゾフェナントレニル基、ベンゾクリセニル基、ジベンゾクリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ジベンゾトリフェニレニル基、ピセニル基、ベンゾピセニル基、ジベンゾピセニル基、フェナレニル基、およびジアザフェナントレニル基のうちのいずれかから選択される縮合芳香族炭化水素基であることが好ましい。このうち、ベンゾクリセニル基、トリフェニレニル基又はフェナントレニル基がより好ましい。なお、前記縮合芳香族炭化水素基は置換基を有さないことが好ましい。
そして、前記一般式(11)のモノアミン誘導体においては、Ar111、およびAr112がそれぞれフェニル基又はナフチル基であり、Ar113がベンゾクリセニル基、トリフェニレニル基、およびフェナントレニル基のうちのいずれかであることが好ましい。
【0260】
【化86】

【0261】
式(12)において、Ar114、Ar115およびAr117は、それぞれ置換基を有しても良いアリール基又はヘテロアリール基である。
このアリール基又はヘテロアリール基としては、前記Ar111のアリール基又はヘテロアリール基として定義するものと同様であり、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
Ar116置換基を有しても良いアリーレン基又はヘテロアリーレン基である。
アリーレン基としては、環形成炭素数が6から50まで(好ましくは6から30まで、より好ましくは6から20まで)のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基、ナフタセニレン基、ピレニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレニレン基、ベンゾフェナントレニレン基、ジベンゾフェナントレニレン基、ベンゾクリセニレン基、ジベンゾクリセニレン基、フルオランテニレン基、ベンゾフルオランテニレン基、トリフェニレニレン基、ベンゾトリフェニレニレン基、ジベンゾトリフェニレニレン基、ピセニレン基、ベンゾピセニレン基、ジベンゾピセニレン基などが挙げられる。このうち、フェニレン基やナフチレン基が好ましい。
ヘテロアリーレン基としては、環形成原子数が5から50まで(好ましくは6から30まで、より好ましくは6から20まで)のヘテロアリーレン基であり、例えば、ピリジレン基、ピリミジレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチオフェニレン基が挙げられる。
【0262】
Ar117は、フェナントレニル基、ベンゾフェナントレニル基、ジベンゾフェナントレニル基、ベンゾクリセニル基、ジベンゾクリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ジベンゾトリフェニレニル基、ピセニル基、ベンゾピセニル基、ジベンゾピセニル基のうちのいずれかから選択される縮合芳香族炭化水素基であることが好ましい。このうちベンゾクリセニル基、トリフェニレニル基又はフェナントレニル基がより好ましい。なお、前記縮合芳香族炭化水素基は置換基を有さないことが好ましい。
そして、前記一般式(12)のモノアミン誘導体においては、Ar114、およびAr115がフェニル基又はナフチル基であり、Ar116がフェニレン基、ナフチレン基のいずれかであり、Ar117がベンゾクリセニル基、トリフェニレニル基、およびフェナントレニル基のうちのいずれかであることがさらに好ましい。
【0263】
【化87】

【0264】
式(13)において、Ar118、Ar119およびAr121は、それぞれ置換基を有しても良いアリール基又はヘテロアリール基を示す。
このアリール基又はヘテロアリール基としては、前記Ar111のアリール基又はヘテロアリール基として定義するものと同様であり、フェニル基が好ましい。
Ar120は、置換基を有しても良いアリーレン基又はヘテロアリーレン基であり、前記Ar116のアリーレン基又はヘテロアリーレン基として定義するものと同様である。
Ar120は、フェニレン基、ナフチレン基が好ましい。
nは、2から5までの整数であり、好ましくは、2から4までであり、さらに好ましくは2から3までである。nが2以上の場合、Ar120はそれぞれ同一でも異なっても良い。
【0265】
Ar121は、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ベンゾフェナントレニル基、ジベンゾフェナントレニル基、ベンゾクリセニル基、ジベンゾクリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ジベンゾトリフェニレニル基、ピセニル基、ベンゾピセニル基、ジベンゾピセニル基、フェナレニル基、およびジアザフェナントレニル基のうちのいずれかから選択される縮合芳香族炭化水素基であることが好ましい。このうち、ベンゾクリセニル基、トリフェニレニル基又はフェナントレニル基がより好ましい。
【0266】
さらに、本実施形態においては、第2ホスト材料が、前記式(13)において、Ar118、およびAr119がそれぞれフェニル基又はナフチル基であり、Ar120がフェニレン基又はナフチレン基であり、Ar121がベンゾクリセニル基、トリフェニレニル基、およびフェナントレニル基のうちのいずれかであることが好ましい。
【0267】
Ar101からAr121までが置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数1から20までのハロアルキル基、炭素数3から18までのシクロアルキル基、環形成炭素数6から30までのアリール基、炭素数3から20までのシリル基、シアノ基、ハロゲン原子であることが好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、1−プロピルブチル基が挙げられる。
アリール基としては、上記Ar101と同様の基が挙げられる。
ハロアルキル基としては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基が挙げられる。
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
なお、式(11)から(13)までのモノアミン誘導体について、置換基を有しない場合とは、水素原子が置換したことを意味する。また、式(11)から(13)までのモノアミン誘導体の水素原子には、軽水素、重水素が含まれる。そして、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、又は芳香環を構成する炭素原子を意味する。「環形成原子」とは環(飽和環、不飽和環、及び芳香環を含む)を構成する炭素原子及びヘテロ原子を意味する。
【0268】
前記式(11)で表されるモノアミン誘導体の具体例を以下に示す。
【0269】
【化88】

【0270】
【化89】

【0271】
前記式(12)で表されるモノアミン誘導体の具体例を以下に示す。
【0272】
【化90】

【0273】
【化91】

【0274】
【化92】

【0275】
前記一般式(13)で表されるモノアミン誘導体の具体例を以下に示す。
【0276】
【化93】

【0277】
【化94】

【0278】
【化95】

【0279】
【化96】

【0280】
<第6実施形態>
第6実施形態に係る有機EL素子は、第2ホスト材料として、芳香族アミン化合物を用いる。
芳香族アミン化合物としては、下記一般式(14)または下記一般式(15)で表されるものが好ましい。
【0281】
【化97】

【0282】
(前記一般式(14)において、Xは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数10〜40のアリーレン基を表し、
〜Aは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基又は
環形成原子数6〜60のヘテロアリール基を表す。)
【0283】
【化98】

【0284】
(前記一般式(15)において、A〜Aは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基又は、
環形成原子数6〜60のヘテロアリール基を表す。)
【0285】
前記一般式(14)または(15)で表される第2ホスト材料は、下記一般式(16)〜(20)のいずれかで表されることが好ましい。
【0286】
【化99】

【0287】
【化100】

【0288】
(前記式(16)〜(20)において、A10〜A19は、
置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜40の芳香族複素環基、
芳香族アミノ基が結合した置換もしくは無置換の炭素数8〜40のアリール基、又は
芳香族複素環基が結合した置換もしくは無置換の炭素数8〜40のアリール基である。
10とA11、A13とA14、A15とA16、A17とA18は互いに結合し,環を形成しても良い。
〜Xは、単結合または炭素数1〜30の連結基である。
〜Y24は、
水素、
ハロゲン原子、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜20の複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜40のアリール基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜20のアラルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜40のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキルアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数7〜60のアラルキルアミノ基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜20のアルキルシリル基、
置換基を有しても良い炭素数8〜40のアリールシリル基、
置換もしくは無置換の炭素数8〜40のアラルキルシリル基、又は
置換基を有しても良い炭素数1〜40のハロゲン化アルキル基を表す。
,X,X,X,Xは、硫黄原子、酸素原子またはモノアリール置換された窒素原子を表す。)
【0289】
前記一般式(14),(15)および(16)〜(20)で表される化合物としては、例えば、次の化合物が具体例として挙げられる。
【0290】
【化101】

【0291】
<第7実施形態>
第7実施形態に係る有機EL素子は、第2ホスト材料として、金属錯体を含有することが好ましい。
金属錯体としては、下記一般式(21)で表されるものが好ましい。
【0292】
【化102】

【0293】
(式中、リガンドL11、L12及びL13は、
互いに独立して下記一般式(22)で表される構造から選択され、
11は2価金属であり、
11は無機または有機酸から誘導される1価の陰イオンである。)
【0294】
【化103】

【0295】
前記リガンドにおいて、
Xbは、O、SまたはSeであり、
a環は、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ピリジンまたはキノリンであり、
121からR124は、互いに独立して、水素、炭素数1〜5のC1−C5アルキル、ハロゲン、シリル基または炭素数6〜20のアリール基であり、
またはそれらは隣接した置換基とアルキレンまたはアルケニレンによって結合されて融合環を形成してもよく、
前記ピリジン及びキノリンは、R1と化学結合をなして融合環を形成してもよく、
前記a環とR121からR124のアリール基は、炭素数1〜5のアルキル、ハロゲン、ハロゲン置換基を有する炭素数1〜5のアルキル、フェニル、ナフチル、シリルまたはアミノ基によってさらに置換されていてもよい。
【0296】
好ましくは、前記リガンドL11、L12及びL13は、それぞれ独立に下記の構造のものから選択される。
【0297】
【化104】

【0298】
(上記リガンドにおいて、XとR〜Rは、それぞれ一般式(22)におけるXbとR121からR124の定義と同一であり、Yは、O、SまたはNR21であり、Zは、CHまたはNであり、R11〜R16は、互いに独立して、水素、または炭素数1〜5のアルキル、ハロゲン、ハロゲン置換基を有する炭素数1〜5のアルキル、フェニル、ナフチル、シリルまたはアミノ基であり、R11〜R14は、隣接した置換基とアルキレンまたはアルケニレンによって結合されて融合環を形成してもよい。)
【0299】
さらに、本化合物のリガンドL11、L12及びL13は、同一であってもよく、下記の構造のものから選択され得る。
【0300】
【化105】

【0301】
(前記リガンドにおいて、
Xは、O、SまたはSeであり、
、R、R12〜R13は、互いに独立して、水素またはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、トリメチルシリル、トリフェニルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジメチルアミン、ジエチルアミンまたはジフェニルアミンであり、
前記フェニル、ナフチル、フルオレニルは、フッ素、塩素、トリメチルシリル、トリフェニルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジメチルアミン、ジエチルアミンまたはジフェニルアミンによってさらに置換されていてもよい。)
【0302】
さらに、本実施形態の金属錯体としては、亜鉛錯体が好ましい。以下に好ましい亜鉛錯体の具体例を示す。
【0303】
【化106】

【0304】
【化107】

【0305】
【化108】

【0306】
【化109】

【0307】
【化110】

【0308】
【化111】

【0309】
<第8実施形態>
また、第2ホスト材料は、下記一般式(23)〜(25)で表される化合物であってもよい。
【0310】
【化112】

【0311】
(前記一般式(23)〜(25)において、
101〜X108は、窒素原子、またはC−Ar131である。
Ar131は、
水素原子、フッ素原子、シアノ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、
炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、
炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
なお、隣接するX101〜X108同士が互いに結合を形成し、環構造を形成しても良い。
,Bは、下記一般式(26A)または(26B)で表される基である。)
【0312】
【化113】

【0313】
(前記式(26A)において、M及びMは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜40の窒素含有芳香族複素環又は窒素含有縮合芳香族複素環であり、同一でも異なっていてもよい。
は、
単結合、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30の芳香族複素環基、又は、
置換もしくは無置換の炭素数2〜30の縮合芳香族複素環基である。
cは0〜2、dは1〜2、eは0〜2の整数である。ただし、c+eは1以上である。)
【0314】
【化114】

【0315】
(前記式(26B)において、M及びMは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2〜40の芳香族炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい。Lは、
単結合、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の炭素数6〜30の縮合芳香族炭化水素基、又は
置換もしくは無置換の炭素数5〜30のシクロアルキレン基である。
cは0〜2、dは1〜2、eは0〜2の整数である。ただし、c+eは1以上である。)
【0316】
前記式(26A)は前記式(8A)と、前記式(26B)は前記式(8B)と、それぞれ同じであり、M〜MおよびL〜Lは、前記式(8A)および(8B)に記載のものと同じである。
前記一般式(23)〜(25)で表される化合物の具体例を挙げる。
【0317】
【化115】

【0318】
<第9実施形態>
また、第2ホスト材料は、下記一般式(27)で表される化合物であってもよい。
【0319】
【化116】

【0320】
[一般式(27)において、A,A、X,X,Y〜Y,p,q,r,sは前記一般式(1A)および(1B)と同義である。]
【0321】
一般式(27)において、A,A、X,X,Y〜Yとしては、前記式(1A)および(1B)で説明したものと同一のものが挙げられる。
【0322】
なお、本発明は、上記の説明に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更は本発明に含まれる。
例えば次のような変更も本発明の好適な変形例である。
【0323】
本発明では、前記発光層が電荷注入補助材を含有していることも好ましい。
エネルギーギャップが広いホスト材料を用いて発光層を形成した場合、ホスト材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と正孔注入・輸送層等のIpとの差が大きくなり、発光層への正孔の注入が困難となり、十分な輝度を得るための駆動電圧が上昇するおそれがある。
このような場合、発光層に、正孔注入・輸送性の電荷注入補助剤を含有させることで、発光層への正孔注入を容易にし、駆動電圧を低下させることができる。
【0324】
電荷注入補助剤としては、例えば、一般的な正孔注入・輸送材料等が利用できる。
具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体(、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
【0325】
正孔注入性の材料としては上記のものを挙げることができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0326】
また、2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(以下NPDと略記する)、またトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下MTDATAと略記する)等を挙げることができる。
また、ヘキサアザトリフェニレン誘導体等も正孔注入性の材料として好適に用いることができる。
【0327】
また、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
【実施例】
【0328】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容になんら制限されるものではない。
【0329】
合成実施例1(化合物1の合成)
窒素雰囲気下、トリクロロピリミジン(10g、54.5mmol)、フェニルボロン酸(13.3g、109mmol)、酢酸パラジウム(0.3g、1.37mmol)、トリフェニルホスフィン(0.72g、2.73mmol)、ジメトキシエタン(150mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(170mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1−1(9.2g,収率63%)を得た。
窒素雰囲気下、2−ニトロ−1,4−ジブロモベンゼン(11.2g、40mmol),フェニルボロン酸(4.9g、40mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.39g、1.2mmol)、トルエン(120mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(60mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1―2(6.6g,収率59%)を得た。
続いてアルゴン雰囲気下、中間体7−2(6.6g、23.7mmol)、トリフェニルホスフィン(15.6g、59.3mmol)、o−ジクロロベンゼン(24mL)を順次加えて8時間180℃で加熱した。
室温まで反応液を冷却した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1―3(4g,収率68%)を得た。
窒素雰囲気下、中間体1―3(4g、16mmol),N−フェニルカルバゾリル−3−ボロン酸(5.1g、17.8mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.56g、0.48mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(24mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1―4(3.2g,収率49%)を得た。
【0330】
アルゴン雰囲気下、中間体1−4(1.6g、3.9mmol)、中間体1−1(1.0g、3.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.071g、0.078mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.091g、0.31mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.53g、5.5mmol)、無水トルエン(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物1(2.4g,収率95%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量638に対してm/e=638であった。
以下に化合物1の合成スキームを示す。
【0331】
【化117】

【0332】
合成実施例2(化合物2の合成)
4−ブロモベンズアルデヒド(25g,135mmol)、アセトフェノン(16.2g,135mmol)をエタノール(200mL)に加え、さらに3M水酸化カリウム水溶液(60mL)を加えて室温で7時間攪拌した。析出した固体をろ過し、この固体をメタノールで洗浄した。白色固体の中間体2−1(28.3g、収率73%)を得た。
中間体2−1(20g,69.7mmol)、ベンズアミジン塩酸塩(10.8g,69.7mmol)をエタノール(300mL)に加え、さらに水酸化ナトリウム(5.6g,140mmol)を加えて8時間加熱還流した。析出した固体をろ過し、この固体をヘキサンで洗浄した。白色固体の中間体2−2(10.3g、収率38%)を得た。
アルゴン雰囲気下、中間体1−4(1.6g、3.9mmol)、中間体2−2(1.5g、3.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.071g、0.078mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.091g、0.31mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.53g、5.5mmol)、無水トルエン(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物2(2.2g,収率80%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量714に対してm/e=714であった。
以下に化合物2の合成スキームを示す。
【0333】
【化118】

【0334】
【化119】

【0335】
合成実施例3(化合物3の合成)
窒素雰囲気下、トリクロロピリミジン(8g、43.4mmol)、フェニルボロン酸(11.6g、95.4mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.83g、1.74mmol)、トルエン(300mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(130mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体3−1(8.2g,収率71%)を得た。
アルゴン雰囲気下、中間体1−4(1.6g、3.9mmol)、中間体3−1(1.5g、3.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.071g、0.078mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.091g、0.31mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.53g、5.5mmol)、無水トルエン(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物3(2.2g,収率80%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量639に対してm/e=639であった。
以下に化合物3の合成スキームを示す。
【0336】
【化120】

【0337】
【化121】

【0338】
合成実施例4(化合物4の合成)
窒素雰囲気下、中間体3−1(8g、29.9mmol)、p−クロロフェニルボロン酸(5.1g、32.9mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.63g、0.6mmol)、トルエン(60mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(30mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体4−1(7.0g,収率68%)を得た。
アルゴン雰囲気下、中間体1−4(1.6g、3.9mmol)、中間体4−1(1.3g、3.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.071g、0.078mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.091g、0.31mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.53g、5.5mmol)、無水トルエン(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物4(2.3g,収率82%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量715に対してm/e=715であった。
以下に化合物4の合成スキームを示す。
【0339】
【化122】

【0340】
【化123】

【0341】
合成実施例5(化合物5の合成)
トルエン(1L)に3−ブロモベンズアルデヒド(100g、54mmol)、アニリン(50g、54mmol)を加えて8時間加熱還流した。反応液を冷却後、溶媒を減圧下濃縮して中間体5−1(130g、収率93%)を得た。
次いで、アルゴン雰囲気下、中間体5−1(130g、50mmol)、ベンズアミジン塩酸塩(152g,100mmol)、脱水エタノール(1L)、水酸化ナトリウム(42g)の順で加え、80℃で16時間攪拌した。その後、ナトリウムt−ブトキシド(20g,208mmol)を加えて更に80℃で16時間加熱攪拌した。反応液を室温まで冷却後、固体をろ過し、メタノールで洗浄して中間体5−2(67g、収率37%)を得た。
アルゴン雰囲気下、中間体1−4(1.6g、3.9mmol)、中間体5−2(1.5g、3.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.071g、0.078mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.091g、0.31mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.53g、5.5mmol)、無水トルエン(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物5(2.3g,収率82%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量715に対してm/e=715であった。
以下に化合物5の合成スキームを示す。
【0342】
【化124】

【0343】
合成実施例6(化合物6の合成)
窒素雰囲気下、ジメチルホルムアミド(100mL)に中間体3−1(15.5g,58mmol)、3−ブロモカルバゾール(14.2g, 58mmol)、炭酸カリウム(16g,116mmol)を入れて100℃で16時間加熱攪拌した。析出した固体をろ過し、固体をメタノールで洗浄し、中間体6−1(25g,収率90%)を得た。
次いで、窒素雰囲気下、中間体6−1(8.1g,17mmol)、9H−カルバゾール−2−ボロン酸ピナコールエステル(5g,17mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.39g,0.34mmol)、トルエン(50mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(26mL)を加えて80℃で8時間攪拌した。室温まで冷却後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体6−2(6.2g、収率65%)を得た。
窒素雰囲気下、中間体6−2(2.2g,3.9mmol)、ブロモベンゼン(0.61g,3.9 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.071g、0.078mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.091g、0.31mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.53g、5.5mmol)、無水トルエン(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物6(1.8g,収率72%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量639に対してm/e=639であった。
以下に化合物6の合成スキームを示す。
【0344】
【化125】

【0345】
合成実施例7(化合物7の合成)
中間体7−1の合成は文献(J. Bergman, A. Brynolf, B. Elman and E. Vuorinen, Tetrahedron,42,3697−3706(1986))に記載の方法を応用して合成した。すなわち、500ml三つ口フラスコに、フェニルマグネシウムブロミドの1Mテトラヒドロフラン溶液100ml(100mmol)を入れ、乾燥エーテル100mlを加え、45℃のオイルバスで加熱還流させた。その中に2−シアノアニリン5.91g(50mmol)の乾燥エーテル50ml溶液を30分かけて滴下した。さらに1.5時間還流した後、0℃まで氷水浴で冷却した。次いで、4−ブロモ安息香酸クロリド13.2g(60mmol)の乾燥エーテル100ml溶液を10分かけて滴下し、45℃のオイルバスで2時間加熱還流させた。反応終了後、0℃まで氷水浴で冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を添加した。析出物をろ別し、少量のメタノールで洗浄したのち真空乾燥し、中間体7−1を得た。(10.8g、収率60%)
次いで、窒素雰囲気下、中間体7−1(1.4g,3.9mmol)、中間体1−4(1.6g,3.9 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.071g、0.078mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.091g、0.31mmol)、t−ブトキシナトリウム(0.53g、5.5mmol)、無水トルエン(20mL)を順次加えて8時間加熱還流した。室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物7(2.2g,収率82%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量688に対してm/e=688であった。
以下に化合物7の合成スキームを示す。
【0346】
【化126】

【0347】
実施例1(有機EL素子の作成)
25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)に、イソプロピルアルコール中にて5分間の超音波洗浄を施し、さらに、30分間のUV(Ultraviolet)オゾン洗浄を施した。
このようにして洗浄した透明電極付きガラス基板を、真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず、ガラス基板の透明電極ラインが形成されている側の面上に、透明電極を覆うようにして、化合物Aを厚さ40nmで蒸着し、正孔注入層を得た。次いで、この膜上に、化合物Bを厚さ20nmで蒸着し、正孔輸送層を得た。
この正孔輸送層上に、燐光用ホスト材料である化合物1と燐光用ドーパント材料であるIr(Ph−ppy)とを厚さ40nmで共蒸着し、燐光発光層を得た。Ir(Ph−ppy)の濃度は、20質量%であった。
続いて、この燐光発光層上に、厚さ30nmの化合物C、厚さ1nmのLiF、厚さ80nmの金属Alを順次積層し、陰極を得た。なお、電子注入性電極であるLiFについては、1Å/minの速度で形成した。
【0348】
【化127】

【0349】
実施例2〜5(有機EL素子2〜5の作成)
上記実施例1において、化合物1の代わりに以下に示す化合物2から5を用いて有機EL素子2〜5を作成した。
【0350】
【化128】

【0351】
比較例1〜4
実施例1においてホスト材料として、化合物1を用いる代わりに、下記に示す比較化合物D〜Gを用いた以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0352】
(有機EL素子の評価)
実施例1〜5および比較例1〜4で作製した有機EL素子を直流電流駆動により発光させ、発光性能評価を行うとともに、初期輝度20,000cd/mにおける輝度半減寿命、発光効率を測定した。結果を表4に示す。
【0353】
【化129】

【0354】
【表4】

【0355】
表4から、比較例1〜4に対し、本発明の化合物を用いた実施例1〜5は、輝度半減寿命が大幅に長く、かつ低電圧駆動が可能であり、発光効率も高いことがわかった。
比較例1において、化合物Dはカルバゾリル基が1つであり、正孔輸送性能が乏しいため、輝度半減寿命が短い。比較例2において、化合物Eはカルバゾリル基を2つ有するが、分子間の重なりが小さいため正孔輸送性能が乏しく、輝度半減寿命が短いと考えられる。比較例3においては、化合物Fがカルバゾリル基以外に含窒素複素環基を有さないため、電子が注入されにくく、低効率で輝度半減寿命も短い。比較例4においては、化合物Gはカルバゾリル基を2つ有するが、分子間の重なりが小さいため、正孔輸送性能が乏しく、輝度半減寿命が短いと考えられる。
【0356】
また、実施例1〜5で用いたホスト材料の物性値を、表5に示す。
なお、各物性値の測定方法は、以下のとおりである。
(1)イオン化ポテンシャル(Ip)
大気下で光電子分光装置(理研計器(株)社製:AC-1)を用いて測定した。具体的には、材料に光を照射し、その際に電荷分離によって生じる電子量を測定することにより測定した。
(2)アフィニティ(Af)
イオン化ポテンシャルIpとエネルギーギャップEgの測定値から算出した。算出式は、次のとおりである。
Af=Ip-Eg
エネルギーギャップEgは、ベンゼン中の吸収スペクトルの吸収端から測定した。具体的には、市販の可視・紫外分光光度計を用いて、吸収スペクトルを測定し、そのスペクトルが立ち上がり始める波長から算出した。
【0357】
(3)一重項エネルギー(S1)および三重項エネルギー(T1)
光学エネルギーギャップS1(一重項エネルギーとも言う)は、伝導レベルと価電子レベルとの差をいい、各材料のトルエン希薄溶液の吸収スペクトルの長波長側接線とベースライン(吸収ゼロ)との交点の波長値をエネルギーに換算して求めた。
材料の三重項エネルギーT1は、燐光発光スペクトルに基づいて規定することが例として挙げられ、本実施例においては以下のように規定した。
各材料をEPA溶媒(容積比でジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2)に10μmol/Lで溶解し、燐光測定用試料とした。
そして、燐光測定用試料を石英セルに入れ、77Kに冷却し、励起光を照射し、放射される燐光の波長を測定した。
得られた燐光スペクトルの短波長側の立ちあがりに対して接線を引き、この接線とベースラインとの交点の波長値をエネルギーに換算した値を三重項エネルギーT1とした。
なお、測定には、測定装置F−4500(日立製)を用いた。
【0358】
【表5】

【0359】
実施例6(有機EL素子6の作成)
25mm×75mm×厚さ1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして下記電子受容性化合物(C−1)を蒸着し、膜厚5nmのC−1膜を成膜した。このC−1膜上に、第1正孔輸送材料として下記芳香族アミン誘導体(X1)を蒸着し、膜厚50nmの第1正孔輸送層を成膜した。第1正孔輸送層の成膜に続けて、第2正孔輸送材料として下記芳香族アミン誘導体(X2)を蒸着し、膜厚60nmの第2正孔輸送層を成膜した。
【0360】
さらに、この第2正孔輸送層上に、前記合成実施例1で得た化合物1を蒸着し、膜厚45nmの発光層を成膜した。同時に燐光発光材料として下記化合物(D3)を共蒸着した。化合物D3の濃度は8.0質量%であった。この共蒸着膜は発光層として機能する。
そして、この発光層成膜に続けて下記化合物(ET1)を膜厚30nmで成膜した。このET1膜は電子輸送層として機能する。
【0361】
次に、LiFを電子注入性電極(陰極)として成膜速度0.1オングストレーム/minで膜厚を1nmとした。このLiF膜上に金属Alを蒸着させ、金属陰極を膜厚80nmで形成し有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子の初期輝度2000cd/m、室温及びDC定電流駆動での発光効率、および、初期輝度5000cd/m、室温及びDC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した。結果を表6に示す。
【0362】
【化130】

【0363】
実施例7〜11(有機EL素子7〜11の作成)
実施例6において、発光層材料として化合物1の代わりに、化合物2〜5および7を用いた以外は、実施例6と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子の初期輝度2000cd/m、室温及びDC定電流駆動での発光効率、および初期輝度5000cd/m、室温及びDC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した。結果を表6に示す。
【0364】
比較例5、6
実施例6において、発光層材料として化合物1の代わりに、上記比較化合物D及び比較化合物Fを用いた以外は、実施例6と同様にして有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子の初期輝度2000cd/m、室温及びDC定電流駆動での発光効率、および初期輝度5000cd/m、室温及びDC定電流駆動での発光の半減寿命を測定した。
結果を表6に示す。
【0365】
【表6】

【0366】
表6より、本発明の化合物は赤燐光ホスト材料としても機能することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0367】
本発明は、長寿命であり、発光効率が高く、省消費電力化に必要な低電圧での駆動が可能な有機EL素子及びそれを実現する有機EL素子用材料として利用できる。
【符号の説明】
【0368】
1 有機エレクトロルミネッセンス素子
2 基板
3 陽極
4 陰極
5 燐光発光層
6 正孔注入・輸送層
7 電子注入・輸送層
10 有機薄膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に発光層を含む複数の有機薄膜層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が、下記一般式(1A)または(1B)で表されるビスカルバゾール誘導体を含有し、
前記陽極と前記発光層との間に配置された少なくとも1層の有機薄膜層が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物を含有する
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】


(前記一般式(1A)および(1B)において、
は、環形成炭素数1〜30の置換又は無置換の含窒素複素環基を表す。
は、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の含窒素複素環基を表す。
,Xは、連結基であり、互いに独立して、
単結合、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
〜Yは、互いに独立して、
水素原子、フッ素原子、シアノ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、
炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、
炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、
炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の芳香族複素環基、又は、
環形成炭素数2〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族複素環基を表す。
なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成しても良い。
p,qは1〜4の整数を表し、r,sは1〜3の整数を表す。
なお、p,qが2〜4の整数、r,sが2〜3の整数の場合、複数のY〜Yはそれぞれ同一でも異なっても良い。)
【化2】


(前記一般式(I)において、Ar〜Arは、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数2〜40の縮合芳香族複素環基、または、
これらの芳香族炭化水素基、縮合芳香族炭化水素基と芳香族複素環基又は縮合芳香族複素環基を結合させた基を表す。)
【化3】


(前記一般式(II)において、Ar〜Arの定義は、前記一般式(I)のAr〜Arの定義と同様である。)
【請求項2】
請求項1において、Aが、置換または無置換のピリジン環、置換または無置換のピリミジン環、置換または無置換のトリアジン環、置換または無置換のキナゾリン環からなる群から選ばれることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、Aが、置換もしくは無置換のピリミジン環または置換もしくは無置換のトリアジン環であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項において、Aが、置換または無置換のピリミジン環であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項において、前記一般式(I)または(II)で表される化合物を含有する前記有機薄膜層が、正孔注入層または正孔輸送層であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項において、前記発光層が燐光材料を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項6において、前記燐光材料がイリジウム(Ir),オスミウム(Os)、白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項において、
前記陰極と前記発光層の間に電子注入層を有し、
前記電子注入層が、下記一般式(201)〜(203)のいずれかで表される含窒素環誘導体を含む、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化4】


(前記一般式(201)〜(203)において、
Rは、
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
nは0〜4の整数であり、
は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
及びRは、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
Lは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジニレン基、
置換もしくは無置換のキノリニレン基、または
置換もしくは無置換のフルオレニレン基であり、
Arは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジニレン基、又は
置換もしくは無置換のキノリニレン基であり、
Arは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、または
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
Arは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の縮合芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換のピリジル基、
置換もしくは無置換のキノリル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、または
−Ar−Arで表される基(Ar及びArは、それぞれ前記と同じ)である。)

【図1】
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【公開番号】特開2013−30781(P2013−30781A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184401(P2012−184401)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2011−542615(P2011−542615)の分割
【原出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】