説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタおよび有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】 6500K以上、特に、9000K以上のより高い色温度の白色への対応が可能であるホワイト補正着色層(ホワイト画素)を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタを提供する。RGB画素を点灯させた時のホワイト色度と、別途設けたホワイト画素(W画素)のみを点灯させた時のホワイト色度が実質的に同じになるような有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタを提供する。
【解決手段】 ホワイト補正着色層Wを、紫色色材を含むように構成させる。画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bにそれぞれ対応する白色発光層の発光光源を点灯して、発光した光を前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過させた透過光のホワイト色度(xw,yw)と、発光した光を前記画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bで分光した後に合成した合成ホワイト色度(xrgb,yrgb)との関係が、本願所定の関係式を満たすように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と称する場合がある)表示装置に用いられるカラーフィルタ、およびそれを備えて構成される有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットディスプレイが多くの分野、場所で使われており、情報化が進む中でますますその重要性は高まってきている。
【0003】
現在、フラットディスプレイの中で中心的な存在は、液晶ディスプレイ(LCD)と言えるが、液晶ディスプレイ(LCD)とは異なる表示原理に基づくフラットディスプレイとして、有機EL、無機EL、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ライトエミッティングダイオード表示装置(LED)、蛍光表示管表示装置(VFD)、およびフィールドエミッションディスプレイ(FED)などの開発も活発に行われている。
【0004】
これらの新しいフラットディスプレイはいずれも自発光型と呼ばれるもので、液晶ディスプレイ(LCD)とは次の点で大きく異なり、液晶ディスプレイ(LCD)には無い優れた特徴を有している。
【0005】
液晶ディスプレイ(LCD)は受光型と呼ばれ、液晶は自身では発光することはなく、外光を透過、遮断するいわゆるシャッターとして動作し、表示装置を構成する。このため光源を必要とし、一般にバックライトが必要である。これに対して、自発光型は装置自身が発光するため、別光源が不要である。また、液晶ディスプレイ(LCD)のような受光型では表示情報の様態に拘わらず、常にバックライトが点灯し、全表示状態とほぼ変わらない電力を消費することになる。これに対して自発光型は、表示情報に応じて点灯する必要のある箇所だけが電力を消費するだけなので、受光型表示装置に比較して、電力消費が少なくてすむという利点が原理的に存在する。
【0006】
同様に、液晶ディスプレイ(LCD)ではバックライト光源の光を遮光して暗状態を得るため、少量であっても、光漏れを完全に無くす事は困難であるのに対して、自発光型では発光しない状態がまさに暗状態であるので、理想的な暗状態を容易に得ることができ、コントラストにおいても自発光型が圧倒的に優位である。また、液晶ディスプレイ(LCD)は液晶の複屈折による偏光制御を利用しているため、観察する方向によって大きく表示状態が変わる、いわゆる視野角依存性が強いが、自発光型ではこの問題がほとんど生じない。さらに、液晶ディスプレイ(LCD)は有機弾性物質である液晶の誘電異方性に由来する配向変化を利用するため、原理的に電気信号に対する応答時間が1ms以上である。これに対して、開発が進められている上記の自発光型の技術では、例えば、電子/正孔といったいわゆるキャリア遷移、電子放出、プラズマ放電などを利用しているため、応答時間はns桁であり、液晶とは比較にならないほど高速であり、液晶ディスプレイ(LCD)の応答の遅さに由来する動画残像の問題が生じない。
【0007】
近時、これらの中でも特に有機EL表示装置の研究が活発であり、(1)三原色の発光層を発光色毎に所定のパターンで形成したもの、(2)白色発光の発光層を使用し、三原色のカラーフィルタを介して表示するもの、(3)青色発光の発光層を使用し、蛍光色素を利用した色変換層を設置して、青色光を緑色蛍光や赤色蛍光に変換して三原色表示をするもの等が提案されている。
【0008】
これらの中で、上記(2)として記載されている白色発光の発光層を使用し、三原色のカラーフィルタを介してフルカラーを表示するRGBカラーフィルタ方式のものは、1つの色の有機EL素子を発光光源(例えば、白色発光層)として用いればよく、しかもカラーフィルタをベタ膜として成膜することができ、表示装置としての構成も比較的簡易であるため、製造面からの利点を享受し易いタイプであると言える。
【0009】
しかしながら、このようなRGBカラーフィルタ方式により白表示を行うためには、R画素、G画素およびB画素にそれぞれ対応する白色発光層から発光した各光をカラーフィルタで分光した後に合成しているために、発光層から出た光がカラーフィルタにより減弱されることとなり、ディスプレイの輝度が低下する。ディスプレイの輝度を上げるためには発光層に印加される電圧を上げて消費電力を増大させざるを得なかった。
【0010】
このような問題に対して、例えば、特開2005−317507号公報(特許文献1)には、白色光を低い消費電力で得ることができる有機エレクトロルミネッセンス装置を提供するために、三原色のR画素、G画素およびB画素に加えて、有機EL発光層から発生された色温度3000K以上4500K以下の白色の光を、色温度6500Kの純度の高い白色光に変換するための青緑色カラーフィルタ層CFW(ホワイト画素)を別途設ける旨の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−317507号公報
【0012】
しかしながら、特許文献1におけるホワイト画素は、青緑色材を含む青緑色カラーフィルタ層CFWを用いて形成しているために、6500Kを超え、より高い色温度の対応が困難であり、例えば、TV等の用途で用いられることのある9000K以上の色温度の白色への対応が困難であるという問題がある。また、特許文献1のごとく青緑色カラーフィルタ層CFWを用いる構成では、6500Kの色温度を備える白色は実現可能であるが、色度座標において、望ましいとされる理想的な白色の色温度のライン(いわゆる黒体軌跡)から緑側の色度方向にシフトして外れる傾向があり、理想的とされる白色の色度は得られていないと言える。
【0013】
また、特許文献1では、有機EL発光層から発生された色温度3000K以上4500K以下の白色の光を色温度6500Kの純度の高い白色光に変換しつつ輝度の向上を図ることができるとしているが、その純度の高い白色光の色度が、RGB画素を点灯させた時のホワイト色度との関係でどのように設定されるべきかについては何ら考慮されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような実情のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、ホワイト画素を有するカラーフィルタ方式仕様において、6500K以上、特に、9000K以上のより高い色温度の白色への対応が可能であるホワイト補正着色層(ホワイト画素)を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタおよび有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することにある。例えば、TV等の用途では、白色の色温度は9300K以上、特に、9300K〜15000K程度が要求されることもあり、この要求に応じるべく新規なホワイト画素(W画素)仕様を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタおよび有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
【0015】
さらには、ホワイト画素を有するカラーフィルタ方式仕様において、白色光源(白色発光層)の仕様も加味しつつ、RGB画素を点灯させた時のホワイト色度と、別途設けたホワイト画素(W画素)のみを点灯させた時のホワイト色度が実質的に同じになるような有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタおよび有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することにある。このようにすることによって、パネルの輝度が異なっていても白色の色温度を同じに保つことができる。例えば、RGB画素のみを点灯させた中間輝度と、RGB画素とW画素を点灯させた最大輝度の色温度を同じとすることによって、輝度は異なるが色味は変わらないという自然な輝度変化を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述してきた課題を解決するために、本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の白色発光層からの光を発光光源とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタであって、前記カラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層B、およびホワイト補正着色層Wを有し、前記ホワイト補正着色層Wは、紫色色材を含むように構成される。
【0017】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの好ましい態様として、前記ホワイト補正着色層Wは、紫色色材および青色色材を含むように構成される。
【0018】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの好ましい態様として、前記ホワイト補正着色層Wは、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおいて、最小透過率が520〜620nmの範囲に存在するように構成される。
【0019】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの好ましい態様として、前記ホワイト補正着色層Wは、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおいて、最小透過率が15〜95%であるように構成される。
【0020】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの好ましい態様として、前記ホワイト補正着色層Wは、白色発光層の発光光源を点灯して、発光した光を前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過させた透過光のホワイト色温度が6500K以上であるように構成される。
【0021】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの好ましい態様として、前記ホワイト補正着色層Wは、白色発光層の発光光源を点灯して、発光した光を前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過させた透過光のホワイト色温度が9000K〜15000Kであるように構成される。
【0022】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、上記記載のカラーフィルタと、基板および当該基板上に形成された白色発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子とを有する有機EL素子側基板と、を有し、前記画素部分であるホワイト補正着色層W、赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bにそれぞれ対応する白色発光層の発光光源を発光させ、発光した光が前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過した後の透過光のホワイト色度(xw,yw)と、発光した光を前記画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bで分光された後に合成された合成ホワイト色度(xrgb,yrgb)との関係が、下記式(1)、(2)を満たすように構成される。
|xrgb−xw|<0.01 … 式(1)
|yrgb−yw|<0.01 … 式(2)
【0023】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の好ましい態様として、前記カラーフィルタと、前記有機EL素子側基板とは、前記画素部分および前記有機エレクトロルミネッセンス素子が対向するように配置されて構成される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の白色発光層からの光を発光光源とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタであって、前記カラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層B、およびホワイト補正着色層Wを有し、前記ホワイト補正着色層Wは、紫色色材を含むように構成されているので、望ましいとされる理想的な白色の色温度のライン(いわゆる黒体軌跡)に沿った6500K以上、特に、9000K以上のより高い色温度の白色への対応が可能となる。
【0025】
また、画素部分であるホワイト補正着色層W、赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bにそれぞれ対応する白色発光層の発光光源を点灯して、発光した光を前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過させた透過光のホワイト色度(xw,yw)と、発光した光を前記画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bで分光した後に合成した合成ホワイト色度(xrgb,yrgb)との関係が、下記式(1)、(2)を満たすように構成しているので、パネルの輝度が異なっても白色の色温度を同じに保つことができ、例えば、RGB画素のみを点灯させた中間輝度と、RGB画素とW画素を点灯させた最大輝度の色温度を同じとすることによって、輝度は異なるが色味は変わらないという自然な輝度変化を実現することができる。
|xrgb−xw|<0.01 … 式(1)
|yrgb−yw|<0.01 … 式(2)
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタおよび有機EL素子側基板の実施形態の一例を示す断面図であって、図3に示される有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタの平面図のA−A線での切断面およびそれに準ずる有機EL素子側基板の切断面を見た断面図である。
【図2】図2は、図1に示される有機EL表示装置用カラーフィルタおよび有機EL素子側基板を接合することによって形成される有機EL表示装置の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、有機EL表示装置用カラーフィルタの一部を示した平面図であり、図1のα−α矢視平面図に相当する。
【図4】図4は、図3のカラーフィルタの画素部分の配置を変えた変形例を示す平面図であり、図1のα−α矢視平面図に相当する。
【図5】図5は、カラーフィルタの画素部分であるホワイト補正着色層Wの波長−透過率の関係を示す図面である。
【図6】図6は、カラーフィルタの画素部分である赤色着色層Rの波長−透過率の関係を示す図面である。
【図7】図7は、カラーフィルタの画素部分である緑色着色層Gの波長−透過率の関係を示す図面である。
【図8】図8は、カラーフィルタの画素部分である青色着色層Bの波長−透過率の関係を示す図面である。
【図9】図9は、CIE色度図上の黒体軌跡の近傍の部分拡大図であり、xy色度図の上に黒体軌跡と等色温度線・等偏差線を描いた図面である。
【図10】図10は、白色光源である有機EL発光スペクトルの強度分布の一例を描いた図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する形態に限定されることはなく、技術思想を逸脱しない範囲において種々変形を行なって実施することが可能である。また、添付の図面においては、説明のために上下、左右の縮尺を誇張して図示することがあり、実際のものとは縮尺が異なる場合がある。
【0028】
図1〜図3を参照しつつ本発明の好適な実施形態に係る有機EL表示装置用カラーフィルタおよび有機EL表示装置について説明する。
【0029】
図1は、本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタ10および有機EL素子側基板70を示す断面図である。これらの構成部材の断面図は、図3に示される有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ10の平面図のA−A線での切断面およびそれに準ずる有機EL素子側基板70の切断面を見た断面図である。図2は、図1に示される有機EL表示装置用カラーフィルタ10および有機EL素子側基板70を接合することによって形成される有機EL表示装置100の断面図である。図3は、第1の実施形態である有機EL表示装置用カラーフィルタ10の一部を示した平面図であり、図1のα−α矢視平面図に相当する。
【0030】
有機EL表示装置用カラーフィルタ10の説明
本発明の有機EL表示装置用カラーフィルタ10は、有機EL素子の発光層を含む有機EL層からの光を発光光源とする有機EL表示装置に用いられる有機EL表示装置用カラーフィルタ(以下、単に、カラーフィルタと称す場合がある)である。
【0031】
図1に示されるように、本発明におけるカラーフィルタ10は、透明基板11と、この透明基板11上に形成された画素部分13である赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13B、およびホワイト補正着色層13Wを有している。これらの画素部分13の周囲には非画素エリア12が形成されている。通常、基板の最外周に配置された画素部分13を除いた他の大部分の画素部分13に着目してみれば、非画素エリア12は、隣接する画素部分13同士の間隙部分に存在する。
【0032】
透明基板11は、可視光に対して透明な基板であれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様なものを用いることができる。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英などのリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。
【0033】
画素部分13は、赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13Bおよびホワイト補正着色層13Wを有し、本実施形態では、これらが順次配列された状態でパターン形成されているが、そのパターン配列は特に図示のものに限定されるものではない。ストライブ型、モザイク型、4画素配置型等の公知の配列とすることができ、各着色層の面積(画素開口比率)は任意に設定することができる。
【0034】
なお、図面における画素部分13の数(画素数)はあくまで例示として記載されているものであり、図示例のものに限定されるものではない。画素部分13の形成方法としては、一般的なカラーフィルタにおける形成方法、例えば、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、印刷法等を用いることができる。
【0035】
本実施形態における非画素エリア12には、通常、遮光部12a(いわゆるブラックマトリックスと称されることもある)が形成されることが望ましいが、本発明の作用効果を発現させるためには必須となるものではない。遮光部12aは、通常、格子状の遮光層として構成され、通常、黒色顔料とバインダー樹脂と溶剤とを含有したフォトレジストや印刷用インキ、あるいはクロムなどの金属を用いて構成される。印刷用インキに用いられる黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等を挙げることができ、バインダー樹脂としては、例えば、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体等を挙げることができ、溶剤としては、公知の種々の中から選定して用いることができる。
【0036】
遮光部12aの形成方法としては、フォトリソグラフィー法、各種のパターン印刷方法、各種のめっき方法等で形成することができる。
【0037】
本発明のカラーフィルタ10に好適に使用される画素部分13である赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13B、およびホワイト補正着色層13Wについてさらに説明を加える。各画素部分13は、それぞれ、有機EL表示装置100(図2参照)の単位画素に対応して設けられている。
【0038】
本発明では、特に、ホワイト補正着色層13Wの構成に特徴があり、このホワイト補正着色層13Wは紫色色材を含むように構成されている。こうすることで、望ましいとされる理想的な白色の色温度のライン(いわゆる黒体軌跡)に沿った6500K以上、特に、9000K以上のより高い色温度の白色への対応が可能となる。
【0039】
これらのホワイト補正着色層13W、赤色着色層13R、緑色着色層13Gおよび青色着色層13Bは、それぞれ、各色の顔料や染料等の着色剤を感光性樹脂(バインダー樹脂)中に分散または溶解させた後に基板の上に形成される。
【0040】
〔ホワイト補正着色層13Wの構成の説明〕
本発明におけるホワイト補正着色層13Wは、好適に使用されるバインダー樹脂中に、少なくとも紫色色材を含むように構成されている。特に好ましくは、紫色色材と青色色材との双方を含み、紫色色材と青色色材との混合比率を適宜調整することによって、カラーフィルタ透過後に好ましいホワイト色度を出すことができる。
【0041】
紫色色材としては、例えば、Color Index.ピグメントバイオレット1、14、15、19、23、29、32、33、36、37、38等の顔料系ないし染料系の色材を挙げることができる。ただし、これらの好適な紫色色材に限定されることなく、例示された以外の他の紫色色材も使用され得る。
【0042】
また、青色色材としては、例えば、Color Index.ピグメントブルー1、15、15:6、15:3、15:2、15:1、27、28、29、33、35、36、60等の顔料系ないし染料系の色材を挙げることができる。ただし、これらの好適な青色色材に限定されることなく、例示された以外の他の青色色材も使用され得る。
【0043】
紫色色材と青色色材との混合比率は、(紫色色材/青色色材)重量比で、(1/10)〜(10/1)、好ましくは、(3/7)〜(7/3)程度とされる。また、紫色色材もしくは紫色色材と青色色材の混合物はホワイト補正着色層13Wの中に、0.1〜15重量%、好ましくは、0.4〜10重量%含有させるように構成するのがよい。
【0044】
このような配合パラメータの設計数値は、例えば、後述するごとく、望ましいとされる理想的な白色の色温度のライン(いわゆる黒体軌跡)に沿った6500K以上、特に、9000K以上のより高い色温度の白色への対応ができるように設定される。さらには、後述するごとく、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおける最小透過率が、所定の波長の範囲内に存在するように、かつ、最小透過率の値が所定の範囲内となるように構成される。
【0045】
なお、本発明の作用効果を逸脱しない範囲において、上述した色材に加えて、他の色材、例えば、緑色色材や赤色色材等をさらに含有させるようにしてもよい。
【0046】
また、染料系の色材は、顔料系の色材に比べて紫外線によって透過率が低下し易い傾向がある。そのため、ホワイト補正着色層13Wの透過率を維持するために、ホワイト補正着色層13Wの形成用材料に、例えば一重項クエンチャーや酸化防止剤を添加してもよい。
【0047】
また、通常、用いられるバインダー樹脂としては、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体等を挙げることができる。また、溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、g−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種又は2種以上が使用可能である。単一種の溶媒を使用しただけでは、塗布組成物の溶解性が不充分である場合や、塗布組成物を塗布する際における塗布の相手方となる素材(基材を構成する素材)が侵される虞がある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、これらの不都合を回避することができる。
【0048】
また、必要に応じて、フッソ系界面活性剤や、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を含有させるようにしてもよい。
【0049】
このようなホワイト補正着色層13Wは、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおける最小透過率が、520〜620nmの波長の範囲、より好ましくは530〜600nmの波長の範囲、さらに好ましくは540〜580nmの波長の範囲に存在するように構成される。最小透過率が520nm未満の波長域に存在する場合、ホワイト補正着色層を透過した光が黄色〜赤み掛かった白色になるという不都合が生じる。この一方で、最小透過率が620nmを超える波長域に存在する場合には、ホワイト補正着色層を透過した光が緑色〜青み掛かった白色になるという不都合が生じてしまう。
【0050】
さらに、ホワイト補正着色層13Wは、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおいて、最小透過率の値が15〜95%、より好ましくは20〜90%、さらに好ましくは25〜85%となるように構成される。380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおける最小透過率の値が15%未満となると、ホワイト補正着色層を透過する光量が減少しすぎてしまい、ホワイト画素による輝度向上効果が充分に得られないという不都合が生じてしまう。この一方で、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおける最小透過率の値が95%を超えると、ホワイト補正着色層による色温度補正効果が薄れてしまい、望ましい色温度を得られないという不都合が生じてしまう。
【0051】
このような要件を満たすホワイト補正着色層13Wの波長−透過率の関係を示すグラフの一例が図5に示される。ただし、図5は、あくまでも好適な一例を示したものであって、本発明は図5に示される波長−透過率の特性になんら限定されるものではない。
【0052】
さらに、ホワイト補正着色層13Wの構成について説明する。
【0053】
図9は、CIE色度図上の黒体軌跡近傍の部分拡大図であり、より具体的にはxy色度図の上に黒体軌跡と等色温度線・等偏差線を描いた図面である。
【0054】
すなわち、図9における太線が黒体軌跡BT(いわゆる理想の色温度曲線)であり、この黒体軌跡BTに交差する温度数値(2500〜50000)を付したラインがその温度の等色温度線である。図9においては温度2500K〜50000Kの範囲の等色温度線が示されている。黒体軌跡BTに並走するように描かれている軌跡は相関色温度である。相関色温度とは、光源の色が黒体軌跡上にない場合であって、黒体軌跡と完全には一致していないが、近似する黒体の温度である。相関色温度は図示のごとく黒体軌跡からの偏差(Δuv)とともに表示される。図9においては−0.02uv〜+0.02uvまでの偏差を有する相関色温度が描かれている。
【0055】
図9においてホワイト補正着色層13Wのいわゆるバックライトとなる白色発光光源の色温度を、例えば4000Kとした場合、この光源を起点として青緑色のカラーフィルタで補正可能な色温度方向が矢印G1で示され、青色のカラーフィルタで補正可能な色温度方向が矢印B1で示され、紫色のカラーフィルタで補正可能な色温度方向が矢印V1で示されると考える。図9に示される概念図より、青緑色のカラーフィルタの補正では高色温度の白色への対応ができず、青色のカラーフィルタの補正でもやはり高色温度化に向けて黒体軌跡からの乖離が生じてしまい高色温度の白色への対応が困難となると考えられる。青色〜紫色のカラーフィルタであれば高色温度の白色への対応が可能と思われ、しかも青色/紫色の比率調整によって好ましい色度座標への調整が可能となり、黒体軌跡BTの上に乗った理想的な高色温度の白色を得ることができると考えられる。
上記の思想が本願発明の着想となる基本思想である。
【0056】
〔赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13Bの構成の説明〕
次いで、赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13Bの構成について説明する。
【0057】
(赤色着色層13R)
赤色着色層13Rに用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
赤色着色層13Rの波長−透過率の関係を示すグラフの一例が図6に示される。ただし、図6は、あくまでも好適な一例を示したものであって、本発明は図6に示される波長−透過率特性のものに限定されるものではない。なお、バインダー樹脂、溶剤、その他の添加剤等については、例えば、前述したホワイト補正着色層13Wの説明の際に例示したものから適宜選定して用いることができる。
【0059】
(緑色着色層13G)
緑色着色層13Gに用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
緑色着色層13Gの波長−透過率の関係を示すグラフの一例が図7に示される。ただし、図7は、あくまでも好適な一例を示したものであって、本発明は図7に示される波長−透過率特性のものに限定されるものではない。なお、バインダー樹脂、溶剤、その他の添加剤等については、例えば、前述したホワイト補正着色層13Wの説明の際に例示したものから適宜選定して用いることができる。
【0061】
(青色着色層13B)
青色着色層13Bに用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
青色着色層13Bの波長−透過率の関係を示すグラフの一例が図8に示される。ただし、図8は、あくまでも好適な一例を示したものであって、本発明は図8に示される波長−透過率特性のものに限定されるものではない。なお、バインダー樹脂、溶剤、その他の添加剤等については、例えば、前述したホワイト補正着色層13Wの説明の際に例示したものから適宜選定して用いることができる。
【0063】
なお、上述してきた画素部分13である赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13B、およびホワイト補正着色層13W、ならびに画素部分13の周囲に形成された非画素エリア12の上には、これらを保護するため、およびこれらによって形成される凹凸部分を平滑にするための透明保護層を設けるようにしてもよい。
【0064】
有機EL素子側基板70の説明
次いで、上述してきた有機EL表示装置用カラーフィルタ10と対をなし、白色発光光源を備える有機EL素子側基板70について説明する。
【0065】
図1に示されるように有機EL素子側基板70は、基板71と、当該基板71上に形成された有機EL層83を含む有機エレクトロルミネッセンス素子80と、を有して構成される。
【0066】
このような有機EL素子側基板70と上述のカラーフィルタ10を一体化・接合させることによって、図2に示されるような有機エレクトロルミネッセンス表示装置100が形成される。なお、有機EL素子側基板70と前記カラーフィルタ10との一体化・接合に際しては、有機EL素子側基板70の有機エレクトロルミネッセンス素子80と、カラーフィルタ10の着色層13が対向するように配置される。
【0067】
有機エレクトロルミネッセンス素子80は、有機EL層83と、この有機EL層83を挟持するように配置された一対の下面電極層81と上面透明電極層85を有して構成される。また、有機EL層83の周囲には絶縁層91形成され、この絶縁層91によって有機EL層83が区画化されるとともに、下面電極層81と上面透明電極層85とが直接接触することが防止される。さらに、上面透明電極層85の上には、主として有機EL層83を保護するための封止層95が、素子全体を覆うように形成されている。
【0068】
なお、基板71には、図示のごとく、画素を構成する有機エレクトロルミネッセンス素子80に流れる電流を制御するためのTFT(Thin Film Transistor)75が、画素ごとに配置形成されており、通常、各TFTの回路には、図示していないゲート線、信号線、電源線が接続されている。このようなTFT75の形成手法は、公知の方法に従えばよく、TFT75の上には、通常、絶縁層77が形成される。なお、絶縁層77としては、後述する絶縁層91と同様な材料を用いることができる。
【0069】
以下、有機EL素子側基板70の各構成について、さらに説明を加える。
基板71
本発明に用いられる基板71としては、有機エレクトロルミネッセンス素子80等を支持することができるものであればよく、有機EL表示装置の構成部材として一般的に用いられるものを使用することができる。なお、本実施形態は、有機EL表示装置用カラーフィルタ10側から光が取り出される、いわゆるトップエミッション方式であるため、有機EL素子側基板70の基板71としては、透明であっても、不透明であってもよい。
【0070】
絶縁層91
本発明における絶縁層91は、上述したように下面電極層81と上面透明電極層85とが直接接触することを防ぐために形成される。
【0071】
このような絶縁層91の形成材料としては、例えば感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、および熱硬化型樹脂、ならびに無機材料などを用いることができる。絶縁層91のパターンは、通常、線状とすることができ、絶縁層91の形成によって、例えばマトリクス状またはストライプ状等の開口部を有するパターンを形成することができる。
【0072】
絶縁層91の形成方法としては、上記材料を塗布して、フォトリソグラフィー法によりパターニングする方法が挙げられる。また、印刷法等を用いることもできる。
【0073】
有機EL層83
本発明に用いられる有機EL層83は、白色発光層を有するように構成される。
また、有機EL層83は、白色発光層に加えて、通常、複数層の有機層から構成されるものであり、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層や、白色発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、白色発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を有するものとすることができる。
【0074】
白色発光層
本発明において好適な発光層として用いられる白色発光層は、白色光を発光することができるものであればよい。このような白色発光層は、具体的には、有機EL層83に電圧が加えられた際に、少なくとも青色光(430nm〜470nm)、緑色光(470nm〜600nm)、および赤色光(600nm〜700nm)の波長域の発光スペクトルを有するものであればよい。
【0075】
白色発光層から発光される有機EL発光スペクトルの強度分布を描いたグラフの一例が図10に示される。ただし、図10は、あくまでも発光スペクトル強度特性の一例を示したものであって、本発明は図10に示される特性のものに限定されるものではない。
【0076】
白色発光層の色温度は発光効率の観点から、3000K〜7000Kが望ましく、さらに好ましくは4000K〜6000Kがよい。
【0077】
このような白色発光層を構成する材料としては、蛍光または燐光を発するものであればよく、特に限定されるものではない。また、発光材料は、正孔輸送性や電子輸送性を有していてもよい。発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
【0078】
上記の色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、およびピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0079】
また、上記の金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、およびユーロピウム錯体、あるいは、中心金属に、Al、Zn、Be等またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、およびキノリン構造等を有する金属錯体などを挙げることができる。
【0080】
また、上記の高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ならびに上記の色素系材料および金属錯体系材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0081】
上記の白色発光層の形成方法としては、例えば、蒸着法、印刷法、インクジェット法、またはスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、および自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。これらの中でも特に、蒸着法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが好ましい。
【0082】
本発明に用いられる白色発光層の膜厚は、通常5nm〜5μm程度とされる。
【0083】
正孔注入層
本発明においては、白色発光層と陽極(下面電極層81もしくは上面透明電極層85)との間に正孔注入層が形成されていてもよい。正孔注入層を設けることにより、白色発光層への正孔の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
【0084】
本発明に用いられる正孔注入層の形成材料としては、一般的に有機EL素子の正孔注入層に使用されている材料を用いることができる。また、正孔注入層の形成材料は、正孔の注入性もしくは電子の障壁性のいずれかを有するものであればよい。
【0085】
具体的に、正孔注入層の形成材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、およびチオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマー等を例示することができる。さらに、正孔注入層の形成材料としては、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、およびスチリルアミン化合物等を例示することができる。
【0086】
このような材料から構成される正孔注入層の膜厚は、通常、5nm〜1μm程度とされる。
【0087】
電子注入層
本発明においては、白色発光層と陰極(上面透明電極層85もしくは下面電極層81)との間に電子注入層が形成されていてもよい。電子注入層を設けることにより、白色発光層への電子の注入が安定化し、発光効率を高めることができるからである。
【0088】
本発明に用いられる電子注入層の形成材料としては、例えばニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ならびにジスチリルピラジン誘導体等を例示することができる。
【0089】
このような材料から構成される電子注入層の膜厚は、通常、5nm〜1μm程度とされる。
【0090】
上面透明電極層85
本発明における上面透明電極層85は、後に詳述する下面電極層81との間に挟まれた有機EL層83に電圧をかけ、白色発光層で発光を起こさせるために設けられる。
【0091】
また、上面透明電極層85は、白色発光層で発生した光を、有機EL表示装置用カラーフィルタ側に透過させるものであるから、図1に示されるように有機EL層83と、有機EL層83の上側に位置する有機EL表示装置用カラーフィルタ10との間に配置される。
【0092】
本発明に用いられる上面透明電極層85の形成材料としては、例えば、透明性および導電性を有する金属酸化物等が挙げられる。このような金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化第二錫等が挙げられる。
【0093】
このような材料から構成される上面透明電極層85の膜厚は、通常、100nm〜300nm程度とされる。
【0094】
上面透明電極層85の形成方法としては、例えば、蒸着法もしくはスパッタリング法等によって薄膜を形成した後に、フォトリソグラフィー法によりパターニングする方法が好適に用いられる。
【0095】
下面電極層81
本発明における下面電極層81は、図1に示されるように有機EL層83と、有機EL層83の下側に位置する基板71との間に配置される。下面電極層81は、白色発光層を発光させるための他方の電極をなすものであり、上記の上面透明電極層85と反対の電荷をもつ電極として構成される。
【0096】
用いられる下面電極層81の形成材料としては、例えば仕事関数が4eV以下程度と小さい金属、合金、およびそれらの混合物等が挙げられる。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、および希土類金属等を例示することができる。より好ましくは、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、およびリチウム/アルミニウム混合物を挙げることができる。
【0097】
下面電極層81は、そのシート抵抗が数Ω/cm以下であることが好ましい。また、下面電極層81の膜厚は、通常、10nm〜1μm程度とされる。
【0098】
下面電極層81の形成方法としては、例えば、蒸着法もしくはスパッタリング法等によって薄膜を形成した後に、フォトリソグラフィー法によりパターニングする方法が好適に用いられる。なお、下面電極層81には有機EL素子に流れる電流を制御するためのTFT(Thin Film Transistor)75が接続される。
【0099】
封止層95
上述した凹部95aを有する封止層95は、上面透明電極層85の上、すなわち、上面透明電極層85と、有機EL表示装置用カラーフィルタ10との間に形成されている。封止層95は、通常、有機EL層83へ水蒸気や酸素が到達するのを遮断する保護層として設けられる。
【0100】
封止層95としては、水蒸気や酸素に対してバリア性を発現することができ、かつ透明であれば特に限定されるものではなく、例えば透明無機膜、透明樹脂膜、あるいは有機−無機ハイブリッド膜等が用いられる。中でも、バリア性が高い点から、透明無機膜が好ましい。
【0101】
封止層95として好適に用いられる透明無機膜の形成材料としては、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、および酸化マグネシウム等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;窒化酸化ケイ素等の窒化酸化物;などが用いられる。特に、ピンホールが生じにくくガスバリア性が高いことから、窒化酸化ケイ素が好適である。
【0102】
封止層95は、単層であっても良く、多層であってもよい。例えば、封止層95が複数の窒化酸化ケイ素膜が積層された多層である場合は、バリア性をさらに高めることができる。また、封止層95が多層である場合は、各層にそれぞれ異なる材料を用いてもよい。
【0103】
封止層95の膜厚は、用いる封止層95層の形成材料の種類等に応じて適宜、決定するようにすればよい。通常、5nm〜5μm程度とされる。この封止層95の厚さが薄すぎるとバリア性が不十分となる傾向が生じ、また封止層95の厚さが厚すぎると薄膜の膜応力によるクラック等の現象が生じ易くなるという傾向が生じる。
【0104】
封止層95が透明の無機膜である場合、この透明無機膜の形成方法としては、真空状態で形成できる膜の形成方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム(EB)蒸着法や抵抗加熱法等の真空蒸着法、原子層エピタキシ(ALE)法、レーザーアブレーション法、化学気相成長(CVD)法等が挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法が好ましく用いられる。
【0105】
このような構成を有する有機EL素子側基板70と、前記カラーフィルタ10とを一体化・接合させることによって、図2に示されるような有機エレクトロルミネッセンス表示装置100が形成される。図2に示される有機EL素子側基板70と前記カラーフィルタ10との一体化・接合に際しては、有機EL素子側基板70の封止層95側と、カラーフィルタ10の画素部分13および非画素エリア12とを対向配置させて位置合わせした後、封止層95と画素部分13および非画素エリア12との隙間部分に、接着剤層99を充填して、カラーフィルタ10と有機EL素子側基板70との一体化・接合を図り、図2に示されるような有機エレクトロルミネッセンス表示装置100が形成される。
【0106】
接着剤層99としては、透明で接着力を有し、かつ、硬化性を有するものであれば特に限定されるものではない。このような接着剤層99を形成する材料としては、例えば、熱硬化性を有する接着剤、あるいは光硬化性を有する接着剤を好適例として挙げることができる。通常、溶剤を必要としないタイプものがよい。また、フィルム状の接着シートタイプのものを用いてもよい。具体的には、エポキシ系、アクリル系、ポイミド系、合成ゴム系などの接着剤や接着シートを挙げることができる。
【0107】
また、接着剤層99を設けることなくカラーフィルタ10と有機EL素子側基板70との接合部の周縁に例えばスペーサを介在させて、封止層95と画素部分13および非画素エリア12との隙間部分を空けたままにしておき、窒素等の不活性ガス雰囲気中において上記有機EL素子側基板70および有機EL表示装置用カラーフィルタ10の周縁部をさらにシール剤により封止するようにすることもできる。この場合、中空の内部に酸化バリウム等の捕水剤を備えるようにしてもよい。
【0108】
このようにして形成された有機エレクトロルミネッセンス表示装置100において、画素部分13であるホワイト補正着色層13W、赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13Bにそれぞれ対応する白色発光層の発光光源を発光させ、発光した光が画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過した後の透過光のホワイト色度(xw,yw)と、発光した光が画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bで分光された後に合成された合成ホワイト色度(xrgb,yrgb)との関係が、下記式(1)、(2)を満たすように構成される。つまり、用いる白色発光の光源の特性であるスペクトル強度分布を考慮しつつ、ホワイト補正着色層13W、赤色着色層13R、緑色着色層13G、青色着色層13Bの仕様が下記式(1)、(2)を満たすように設定される。
【0109】
|xrgb−xw|<0.01 … 式(1)
|yrgb−yw|<0.01 … 式(2)
【0110】
上記式(1)および式(2)の範囲を逸脱して、|xrgb−xw|値および|yrgb−yw|値が0.01の範囲に収まらない場合には、例えば、RGB画素のみを点灯させた中間輝度と、RGB画素とW画素を点灯させた最大輝度との色温度を同じとすることができなくなってしまい、輝度は異なるが色味は変わらないという自然な輝度変化を実現することができなくなる傾向が生じてしまう。
【0111】
なお、より好ましくは、上記式(3)および式(4)の範囲とするのがよい。
【0112】
|xrgb−xw|<0.005 … 式(3)
|yrgb−yw|<0.005 … 式(4)
【0113】
以下に具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【実施例】
【0114】
[実施例1]
(カラーフィルタ基板の作製)
基板として、平面の大きさが100mm×100mmであり、厚さが0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがって洗浄した後、ネガ型感光性レジスト(東京応化工業(株)製 CFPR DN-83)を塗布し、所定のマスクを介して露光、現像して焼成して、非画素エリア12に該当するブラックマトリックス(遮光部)を形成した。
【0115】
次いで、下記に示される赤色着色層13Rを形成するための赤色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、緑色着色層13Gを形成するための緑色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、青色着色層13Bを形成するための青色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、およびホワイト補正着色層13Wを形成するためのホワイト補正パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、を調製した。
【0116】
<赤色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・赤顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 クロモフタルレッドA2B)…2.0重量部
・赤顔料(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 クロモフタルレッドBP)…1.0重量部
・分散剤(ビックケミー社製 ディスパービック161)…1.5重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399)…4.0重量部
・ポリマーI…5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)…1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)…0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部
【0117】
<緑色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・緑顔料(大日精化社製 シアニングリーン5370)…1.2重量部
・緑顔料(大日精化社製 シアニングリーン2GN)…1.6重量部
・黄顔料(ランクセス社製 Byplast イエロー 5GN01)…1.2重量部
・分散剤(ビックケミー社製 ディスパービック161)…2.0重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399)…4.0重量部
・ポリマーI…5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)…1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)…0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部
【0118】
<青色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・紫顔料(Clariant社製 商品名Novotex Violet BL-PC VP2429)…0.6重量部
・青顔料(BASF社製 ヘリオゲンブルーL6700F)…1.4重量部
・顔料誘導体(アビシア社製 ソルスパース5000)…0.2重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161)…0.8重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399)…4.0重量部
・ポリマーI…5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)…1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)…0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部
【0119】
<ホワイト補正パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・紫顔料(Clariant社製 商品名Novotex Violet BL-PC VP2429)…0.3重量部
・青顔料(BASF社製 ヘリオゲンブルーL6700F)…0.3重量部
・顔料誘導体(アビシア社製 ソルスパース5000)…0.04重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161)…0.2重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399)…4.0重量部
・ポリマーI…5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)…1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)…0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…50.0重量部
【0120】
なお、上記のポリマーIは、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0121】
次いで、ガラス基板上にブラックマトリックスを覆うように赤色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、赤色パターン用のフォトマスクを介して、露光、現像して、焼成して赤色パターンを形成した。その後、緑色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物、青色パターン用のネガ型感光性樹脂組成物およびホワイト補正パターン用のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、上記の赤色パターン形成と同様の操作により、緑色パターン、青色パターンおよびホワイト補正パターンを形成した。これにより、赤色パターン、緑色パターン、青色パターンおよびホワイト補正パターンが配列された着色層を形成した。なお、配列の形態は図4に示されるような形態とした。
【0122】
次いで、上記の各着色層を形成したガラス基板上に、カラーフィルタ保護膜用組成物として下記の保護膜用組成物をスピンコート法により塗布した。
【0123】
<保護膜用組成物の組成>
・メタクリル酸メチル−スチレン−アクリル酸共重合体…32重量部
・エピコート180S70(ジャパンエポキシレジン(株)製)…18重量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート…42重量部
・開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア907)…8重量部
・3−メトキシブチルアセテート…300重量部
【0124】
次に、フォトマスクを介して、露光、現像して、焼成して保護膜を形成し、カラーフィルタ基板を作製した。
【0125】
(有機EL素子側基板70の作製)
次いで、上記の有機EL表示装置用カラーフィルタ10と対をなし、白色発光光源を備える有機EL素子側基板70を以下の要領で作製した。
【0126】
まず、基板として、大きさが100mm×100mm、厚さが0.7mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)を準備した。この基板を定法にしたがってTFT基板を作製した。
【0127】
この上に、アルミニウムからなる下面電極層81を形成し、下面電極層81の間隙に感光性ポリイミドからなる絶縁層91を形成した後、絶縁層91の間隙に有機EL層83を形成し、これらの上にITOからなる上面透明電極層85を形成した。上面透明電極層85の上に、酸化ケイ素からなる封止層95を形成し、有機EL素子側基板70を作製した。
【0128】
なお、白色発光層を備える有機EL層83の仕様の設定に際し、有機EL層83からの白色発光スベクトルは、特開2004−47469号公報における図7に示される白色OLEDと同じ発光スベクトルが得られるように仕様設定した。
【0129】
(有機エレクトロルミネッセンス表示装置の作製)
上記の要領で得られたカラーフィルタ基板と、有機EL素子側基板70とを、図2に示されるごとく、接着剤(商品名:NT−01UV、日東電工社製)を介して貼り合わせ、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を作製した。
【0130】
[比較例1]
上記の実施例1で用いた、カラーフィルタ基板上のホワイト補正着色層13Wを何ら着色することなく、透明な樹脂層から構成される無色の比較ホワイト層に変えた。それ以外は、上記の実施例1と同様にして、比較例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を作製した。
【0131】
[比較例2]
上記の実施例1で用いた、カラーフィルタ基板上のホワイト補正着色層13Wを、下記の青緑顔料を含む比較ホワイト補正着色層に変えた。
【0132】
<比較ホワイト補正パターン用のネガ型感光性樹脂組成物>
・青顔料(BASF社製 ヘリオゲンブルーL6700F)…0.6重量部
・緑顔料(ピグメントグリーン36)…1.4重量部
・分散剤(ビックケミー社製ディスパービック161)…0.7重量部
・モノマー(サートマー社製 SR399)…4.0重量部
・ポリマーI…5.0重量部
・開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 イルガキュア907)…1.4重量部
・開始剤(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)… 0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)… 50重量部
【0133】
<<光学特性試験>>
上記の実施例1ならびに比較例1および比較例2のサンプルにおけるカラーフィルタ基板の透過光において、CIE色度座標における赤色、緑色、青色、およびこれらの3色を合成して形成した合成ホワイト、ならびに、ホワイト補正着色層Wを透過した後の透過光のホワイトの色度座標x、yおよび輝度Yを顕微分光装置OSP−SP2000(OLYMPUS社製)を用いて測定した。
【0134】
結果を下記表1〜表3に示した。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
上記の結果より本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の(有機EL)白色発光層からの光を発光光源とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタであって、前記カラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層B、およびホワイト補正着色層Wを有し、前記ホワイト補正着色層Wは、紫色色材を含むように構成されているので、望ましいとされる理想的な白色の色温度のラインに沿った6500K以上、特に、9000K以上のより高い色温度の白色への対応が可能となる。これに対し、[比較例1]で作製したホワイト層は色温度補正機能がないため〔表2〕に示すとおりホワイト層を通過した光の色温度は低いままであり、[比較例2]で作製したホワイト層は青緑顔料を含むため〔表3〕に示すとおりホワイト層を通過した光の色度は理想的な白色の色温度ラインから大きく外れている。
【0139】
また、画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bにそれぞれ対応する白色発光層の発光光源を点灯して、発光した光を前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過させた透過光のホワイト色度(xw,yw)と、発光した光を前記画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bで分光した後に合成した合成ホワイト色度(xrgb,yrgb)との関係が、本願所定の関係式を満たすように構成しているので、パネルの輝度が異なっても白色の色温度を同じに保つことができ、例えば、RGB画素のみを点灯させた中間輝度と、RGB画素とW画素を点灯させた最大輝度の色温度を同じとすることによって、輝度は異なるが色味は変わらないという自然な輝度変化を実現することができる。ちなみに、官能的な試験ではあるが、上記の比較例1および比較例2では、白色の色温度が異なっているために、実施例1のレベルの自然な輝度変化を実現することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
フラットディスプレイを含む電子産業で幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0141】
10…有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ
11…透明基板
12…非画素エリア
13…着色層
13R…赤色着色層
13G…緑色着色層
13B…青色着色層
13W…ホワイト補正着色層
70…有機EL素子側基板
71…基板
81…下面電極層
83…有機EL層
85…上面透明電極層
95…封止層
100…有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネッセンス素子の白色発光層からの光を発光光源とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタであって、
前記カラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に形成された画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層B、およびホワイト補正着色層Wを有し、
前記ホワイト補正着色層Wは、紫色色材を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項2】
前記ホワイト補正着色層Wは、紫色色材および青色色材を含む請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項3】
前記ホワイト補正着色層Wは、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおいて、最小透過率が520〜620nmの範囲に存在する請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項4】
前記ホワイト補正着色層Wは、380〜780nmの可視光透過率スペクトルにおいて、最小透過率が15〜95%である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項5】
前記ホワイト補正着色層Wは、白色発光層の発光光源を点灯して、発光した光を前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過させた透過光のホワイト色温度が6500K以上である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項6】
前記ホワイト補正着色層Wは、白色発光層の発光光源を点灯して、発光した光を前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過させた透過光のホワイト色温度が9000K〜15000Kである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置用カラーフィルタ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のカラーフィルタと、
基板および当該基板上に形成された白色発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子とを有する有機EL素子側基板と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記画素部分であるホワイト補正着色層W、赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bにそれぞれ対応する白色発光層の発光光源を発光させ、発光した光が前記画素部分であるホワイト補正着色層Wを透過した後の透過光のホワイト色度(xw,yw)と、発光した光を前記画素部分である赤色着色層R、緑色着色層G、青色着色層Bで分光された後に合成された合成ホワイト色度(xrgb,yrgb)との関係が、下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
|xrgb−xw|<0.01 … 式(1)
|yrgb−yw|<0.01 … 式(2)
【請求項8】
前記カラーフィルタと、前記有機EL素子側基板とは、前記画素部分および前記有機エレクトロルミネッセンス素子が対向するように配置されている請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97287(P2013−97287A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241956(P2011−241956)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】