説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】高温高湿環境下で保存した際の視認性及び耐久性と、鹸化適性とが改良されたλ/4位相差フィルムを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
【解決手段】保護フィルム、偏光子、λ/4位相差フィルム及び有機EL素子を有する有機EL表示装置において、該λ/4位相差フィルムが、Ro(550)が130〜160nmで、Ro(650)が155〜175nmで、Ro(550)/Ro(650)が0.80〜0.90で、セルロースアシレートとして、式(1)(2.5≦Z<3.0)及び式(2)(2.5≦X≦3.0)を満たすセルロースアシレートAと、式(3)(2.0≦Z<2.5)及び式(4)(0.5≦Y≦1.5)を満たすセルロースアシレートBとを含有し、該セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比が1.0以上、19.0以下である有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関し、より詳しくはλ/4位相差フィルムを有する円偏光板と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極間に発光層を設け、これに電圧を印加して発光を生じる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が、平面型照明、光ファイバー用光源、液晶ディスプレイ用バックライト、液晶プロジェクタ用バックライト、ディスプレイ装置等の各種光源として盛んに研究、開発が進められている。有機EL素子は、特に、上記利用分野において、発光効率、低電圧駆動、軽量、低コストという点で優れた特性を発現するため、近年極めて注目を浴びている素子である。
【0003】
有機EL素子は、陰極から電子を、陽極から正孔を注入し、両者が発光層で再結合することにより、発光層の発光特性に対応した可視光線の発光を生じさせるものである。
【0004】
陽極には、透明導電性材料の中では最も電気伝導度が高く、比較的仕事関数が大きく、高い正孔注入効率が得られるという点から、主に、酸化インジウムスズ(以降、ITOと略記する)が使用される。
【0005】
一方、陰極には、通常金属電極が使用されるが、電子注入効率を考慮し、仕事関数の観点から、主には、Mg、Mg/Ag、Mg/In、Al、Li/Al等の材料が使用される。
【0006】
これらの金属材料は、光反射率が高く、電極(陰極)としての機能の他に、発光層で発光した光を反射し、出射光量(発光輝度)を高める機能も担っている。すなわち、陰極方向に発光した光は、陰極である金属材料表面で鏡面反射し、透明なITO電極(陽極)から出射光として取り出されることになる。
【0007】
しかしながら、このような構造を有する有機EL素子は、陰極が光反射性の強い鏡面となっているため、発光していない状態では外光反射が著しく目立つことになる。
【0008】
即ち、室内照明の映り込みなどが激しく、明所では黒色が表現できなくなり、ディスプレイ装置用の光源として使用するには、明室コントラストが極端に低いという問題点を有する。
【0009】
上記のような外光反射を抑制する目的で円偏光素子(円偏光板ともいう)を使用する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。ここで用いられる円偏光素子としては、一般的には、視認側から、保護フィルム、偏光子、λ/4位相差フィルムから構成されて、特許文献1に記載されている円偏光板では、吸収型直線偏光板と、λ/4位相差フィルムとを、それらの光軸が45度あるいは135度で交差するように積層して形成されている。
【0010】
ここで、λ/4位相差フィルムを、例えば、1枚の延伸フィルムで形成した場合、この延伸フィルムの屈折率が波長毎に異なる波長分散に起因して、その位相差はある波長に対しては丁度1/4波長となり得るが、他の波長ではその位相差が1/4波長からずれるためにλ/4位相差フィルムとして機能しないことになる。
【0011】
すなわち、例えば、550nmの緑色の光に対してλ/4位相差フィルムとして機能する場合、それより波長の長い赤色の光や、波長の短い青色の光の反射を完全に防止することが困難になる。
【0012】
一般に、λ/4位相差フィルムとしては、ポリカーボネート系樹脂やシクロオレフィン系樹脂が主に用いられているが、これらの樹脂は、いずれも円偏光板を構成する偏光子と直接貼合することが難しく、偏光子にセルロース系保護フィルムと粘着剤を介して貼合するか、保護フィルムと偏光子を貼合して巻き取った後、別途粘着層を介してλ/4位相差フィルムを貼合している。また、直接貼合しても、セルロース系樹脂に対し粘着性が弱く、加えて水抜けが悪い等の問題を抱えている。
【0013】
上記問題に対しては、直接貼合が可能なセルロース系樹脂でのλ/4位相差フィルム、特に長軸方向に対し直交でも、並行でもない方向に遅相軸を有するλ/4位相差フィルムの開発が望まれていた。
【0014】
一方、保護フィルムに用いられているトリアセチルセルロース樹脂で、λ/4位相差フィルムを実現させるためには、膜厚が非常に厚くなるという問題がある。上記問題に対し、液晶表示装置用光学補償フィルムとして用いられているセルロースアセテートプロピオネート樹脂を用いることにより、上記トリアセチルセルロース樹脂に対し、高倍延伸とすることで、薄膜でλ/4特性を達成することができる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0015】
しかしながら、本発明者が上記技術について更に検討を進めた結果、セルロースアセテートプロピオネート樹脂を高倍延伸することにより作製したλ/4位相差フィルムでは、特に、高温高湿環境下で長期間にわたり保存されると、寸法変動や位相差変動が増大するという、特有の問題が発現することが判明した。このような特性を備えたλ/4位相差フィルムを、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に組み入れた場合、その使用環境により視認性が大きく変化することになり、特に、デジタルサイネージ、モバイル、車載用途においては、顕著に視認性が変化するため、実用面で問題を抱えることになる。また、温度・湿度条件変動の大きな環境下で繰り返し使用した場合には、有機エレクトロルミネッセンス素子自身も劣化する問題もあることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平8−321381号公報
【特許文献2】特開2009−276442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その課題は、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性(環境温度変化に対する画像表示ムラ耐性)と、鹸化適性とが改良されたλ/4位相差フィルムを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、セルロースアシレート樹脂を用いて高倍延伸でλ/4位相差フィルムを作製する際に、薄膜で優れたλ/4特性を実現でき、かつ高温高湿環境下で長期間にわたり保存された際でも、寸法変動や位相差変動が抑制され、視認性、耐久性及び鹸化適性に優れた有機エレクトロルミネッセンス表示装置としては、総アシル基置換度(平均値)と炭素数が3以上のアシル基の置換度(平均値)が、それぞれ特定の範囲にある2種以上のセルロースアシレート樹脂を、特定の質量比で混合して用いた組成により、λ/4位相差フィルムを作製し、該λ/4位相差フィルムを有機エレクトロルミネッセンス表示装置に組み入れることにより、上記課題が解決することができたものである。
【0019】
具体的には、本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0020】
1.視認側から、保護フィルム、偏光子、λ/4位相差フィルム及び有機エレクトロルミネッセンス素子をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
該λ/4位相差フィルムが、
550nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(550)が、130nm以上、160nm以下であり、
650nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(650)が、155nm以上、175nm以下であり、
該Ro(650)に対する該Ro(550)の比(Ro(550)/Ro(650))の値が、0.80以上、0.90以下であり、
少なくともセルロースアシレートとして、下記式(1)及び式(2)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートAと、下記式(3)及び式(4)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートBとを含有し、
該セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値が1.0以上、19.0以下であること
を特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【0021】
式(1) 2.5≦Z<3.0
式(2) 2.5≦X≦3.0
式(3) 2.0≦Z<2.5
式(4) 0.5≦Y≦1.5
(式中、Z、Zは各々セルロースアシレートの総アシル基置換度を表し、X、Yは各々セルロースアシレートにおける炭素数が3以上のアシル基の置換度を表す。)
2.前記セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値が、2.0以上、9.0以下であることを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【0022】
3.前記セルロースアシレートAにおけるZが下式(5)で規定する条件を満たし、かつXが下式(6)で規定する条件を満たすことを特徴とする前記1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【0023】
式(5) 2.7≦Z≦2.9
式(6) 2.7≦X≦2.9
4.前記セルロースアシレートBにおけるZが下式(7)で規定する条件を満たし、かつYが下式(8)で規定する条件を満たすことを特徴とする前記1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【0024】
式(7) 2.3≦Z<2.5
式(8) 0.8≦Y≦1.2
すなわち、請求項1に係る本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置ともいう)は、視認側から、保護フィルム、偏光子、λ/4位相差フィルム及び有機エレクトロルミネッセンス素子をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、該λ/4位相差フィルムが、550nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(550)が、130nm以上、160nm以下であり、650nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(650)が、155nm以上、175nm以下であり、該Ro(650)に対する該Ro(550)の比(Ro(550)/Ro(650))の値が、0.80以上、0.90以下であり、少なくともセルロースアシレートとして、前記式(1)及び式(2)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートAと、前記式(3)及び式(4)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートBとを含有し、該セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値が1.0以上、19.0以下であることを特徴とし、係る構成によって、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性と、鹸化適性とが改良されたλ/4位相差フィルムを備えた有機EL表示装置を提供するものである。
【0025】
本発明で規定する上記構成により、本発明の課題を解決することができた理由としては、以下のように推測している。
【0026】
すなわち、式(3)で規定する条件を満たす低アシル基置換度のセルロースアシレートは、位相差発現性、鹸化適性には優れるものの、高温高湿環境下における耐久性や、Ro(550)/Ro(650)値に乏しいという課題を抱えている。一方、式(1)で規定する条件を満たす高置換度アシル基置換度のセルロースアシレートは、高温高湿環境下での耐久性や、Ro(550)/Ro(650)値には優れるが、位相差発現性、鹸化適性に乏しいという課題を抱えている。これらの相反する長所、短所を備えた2種以上のセルロースアシレートをブレンド、調整することにより、位相差発現性、鹸化適性、高温高湿環境下での耐久性、Ro(550)/Ro(650)値を制御することは可能であるとは考えられるが、それらの特性の異なる2種のセルロースアシレートを単に混合しただけでは、相溶性が不十分で白濁するという問題を発現することが判明した。そこで、更に、X、Yで表される炭素数が3以上のアシル基の置換度を、式(2)、式(4)で規定する条件を満たすセルロースアシレートとすることにより、2者のセルロースアシレートの相溶性を向上させることができ、その結果、白濁化を抑制し、更に炭素数が3以上のアシル基を導入することにより、疎水性が高まり、鹸化適性を劣化させない範囲で、高温高湿環境下での耐久性の改善効果が高まったものと推測している。
【0027】
請求項2に係る発明の有機EL表示装置は、前記λ/4位相差フィルムにおけるセルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値が、2.0以上、9.0以下であることを特徴とする。
【0028】
上記で規定するセルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比とすることにより、更に高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性、鹸化適性を向上させることができる。
【0029】
請求項3に係る発明の有機EL表示装置は、本発明に係るセルロースアシレートAの総アシル基置換度Zを2.7以上、2.9以下とし、炭素数が3以上のアシル基の置換度Xを2.7以上、2.9以下とすることを特徴とする。
【0030】
本発明に係るセルロースアシレートAの総アシル基置換度Z及び炭素数が3以上のアシル基の置換度Xを更に限定することにより、より一層高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性、鹸化適性を向上させることができる。
【0031】
請求項4に係る発明の有機EL表示装置は、本発明に係るセルロースアシレートBの総アシル基置換度Zを2.3以上、2.5以下とし、炭素数が3以上のアシル基の置換度Yを0.8以上、1.2以下とすることを特徴とする。
【0032】
本発明に係るセルロースアシレートBの総アシル基置換度Z及び炭素数が3以上のアシル基の置換度Yを更に限定することにより、より一層高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性、鹸化適性、特には、鹸化適性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性(環境温度変化に対する画像表示ムラ耐性)と、鹸化適性とが改良されたλ/4位相差フィルムを有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の構成の一例である。
【図2】本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造に用いることができる斜め延伸可能なテンターの模式図である。
【図3】図2の(a)、(b)で示す斜め延伸テンターにおける延伸方向の一例について説明する模式図である。
【図4】本発明に適用可能なλ/4位相差フィルムの製造方法の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図である。
【図5】本発明に適用可能なλ/4位相差フィルムの製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図である。
【図6】実施例で作製した有機エレクトロルミネッセンス表示装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0036】
《有機エレクトロルミネッセンス表示装置》
はじめに、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を構成の概要について説明する。
【0037】
図1は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の構成の一例である。
【0038】
図1に記載のガラスやポリイミド等を用いた基板101上に順に金属電極102、有機発光層103、透明電極(ITO等)104、絶縁層105、封止層106、フィルム107(省略可)を有する有機EL素子B上に、偏光子109をλ/4位相差フィルム108と保護フィルム110によって挟持した円偏光板Cを設けて、有機EL表示装置Aを構成する。該保護フィルム110は表面反射防止層111を有していてもよい。上記有機EL素子の厚さは基板101を除いて1μm程度である。
【0039】
一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に金属電極と有機発光層と透明電極とを順に積層して発光体である素子(有機EL素子)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。なお、有機EL素子の各構成要件の詳細については、後述する。
【0040】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0041】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0042】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0043】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側(視認側)に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0044】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板をλ/4位相差フィルムで構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0045】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過し、この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板がλ/4位相差フィルムでしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0046】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0047】
〔λ/4位相差フィルム〕
本発明に係る円偏光板に用いるλ/4位相差フィルムについて、その詳細を説明する。
【0048】
λ/4位相差フィルムとは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4位相差フィルムは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内位相差値Roが該波長の約1/4となるように設計されている。
【0049】
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、23℃、55%RH環境下で、波長550nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(550)が130nm以上、160nm以下であり、かつ波長650nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(650)が155nm以上、175nm以下であることを、特徴のひとつとする。
【0050】
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、可視光線領域の波長の全ての光に対して1/4波長の位相差を与えるもの、即ち逆波長分散(Ro(450)<Ro(550)<Ro(650))を有するλ/4位相差フィルムであることが好ましい。正波長分散においてもλ/4位相差フィルムとλ/2板を積層することでλ/4を達成することが可能だが、積層構成を採る場合には、厚み方向の位相差(Rth)上昇や軸ズレによる視認性低下が起こる。
【0051】
λ/4位相差フィルムの波長分散は、Ro(450)/Ro(650)の値が1.00未満であり、好ましくは0.97以下、より好ましくは0.95以下である。特に視認感度の高い緑から赤においてλ/4であることが好ましく、特には、Ro(550)/Ro(650)の値が、0.80以上、0.90以下であることを特徴とする。
【0052】
本発明でいうリターデーションRo(550)とは、下式(i)で表されるリターデーション値である。
【0053】
式(i)
Ro=(nx−ny)×d
式(i)において、nxはフィルム面内における遅相軸x方向における屈折率、nyはフィルム面内におけるx方向に直交するy方向における屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)を表す。各屈折率は、23℃、55%RHの環境下において、測定波長550nmで測定する。
【0054】
同様に、リターデーションRo(650)は、波長650nmで測定した上記式(i)で表されるリターデーション値である。
【0055】
本発明で規定するRoは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。例えば、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、550nm、あるいは650nmでの複屈折率測定によりRoを算出することができる。
【0056】
λ/4位相差フィルムの遅相軸の角度と偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。即ちλ/4位相差フィルムと偏光子とがいずれも長尺状フィルムの形態であり、λ/4位相差フィルムの基材フィルム長手方向に対する遅相軸の角度(即ち配向角θ)が「実質的に45°」であると、偏光フィルムの長手方向に平行な方向に透過軸、または吸収軸がある偏光子と長手方向を合わせて積層貼合することで、生産性よく長尺状円偏光板フィルムが形成できる。
【0057】
従って、本発明に係るλ/4位相差フィルムの基材フィルムにおける長手方向に対する配向角θは「実質的に45°」であることが好ましい。本発明でいう「実質的に45°」とは、長手方向を基点として45°±10°の範囲であることが好ましい。
【0058】
より詳細には、本発明に係るλ/4位相差フィルムの配向角θは、45°±5°であることが好ましく、45°±3°であることがより好ましく、45°±2°であることが更に好ましく、45°±1°であることが最も好ましい。
【0059】
〔円偏光板〕
本発明に係る円偏光板は、少なくとも偏光子とλ/4位相差フィルムとで構成され、有機EL表示装置に使用することにより、有機EL発光体の金属電極の鏡面反射を遮蔽することができる。
【0060】
また、本発明に係る円偏光板は、斜め延伸することによって、遅相軸の角度(即ち配向角θ)を長手方向に対して「実質的に45°」とし、長尺状の斜め延伸されたλ/4位相差フィルムをロールtoロールで貼合した長尺状の円偏光板であることが好ましい。
【0061】
本発明の有機EL表示装置では、紫外線による劣化を防止するために、本発明に係る円偏光板が紫外線吸収機能を備えていることが好ましい。視認側の保護フィルムが紫外線吸収機能を備えていると、偏光子と有機EL素子の両方を紫外線から保護できて好ましいが、さらに発光体側のλ/4位相差フィルムも紫外線吸収機能を備えていると、より有機EL素子の劣化を抑制できる観点から好ましい。
【0062】
本発明に係る円偏光板は、偏光子としてヨウ素、または二色性染料をドープしたポリビニルアルコールを延伸したものを使用し、(λ/4位相差フィルム)/偏光子/保護フィルムの構成で貼合して製造することができる。なお、偏光子の詳細については後述する。
【0063】
円偏光板は、更に該円偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において円偏光板を保護する目的で用いられる。
【0064】
〔セルロースアシレート〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムでは、リターデーション発現性が高く、高いリターデーションを有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化が可能であること、高いリターデーションを発現させることができ、高倍延伸を行っても、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性と、鹸化適性に優れている特性を有している。
【0065】
本発明に係るλ/4位相差フィルムにおいては、少なくともセルロースアシレートとして、下記式(1)及び式(2)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートAと、下記式(3)及び式(4)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートBとを含有し、該セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値が1.0以上、19.0以下であることを特徴とする。
【0066】
式(1) 2.5≦Z<3.0
式(2) 2.5≦X≦3.0
式(3) 2.0≦Z<2.5
式(4) 0.5≦Y≦1.5
更には、セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値は、2.0以上、9.0以下であることが好ましい。
【0067】
また、セルロースアシレートAの総アシル基置換度Zとしては2.7以上、2.9以下、炭素数が3以上のアシル基の置換度Xとしては2.7以上、2.9以下が好ましい。
【0068】
また、セルロースアシレートBの総アシル基置換度Zとしては2.3以上、2.5以下とし、炭素数が3以上のアシル基の置換度Yとしては0.8以上、1.2以下とすることが好ましい。
【0069】
本発明に係るλ/4位相差フィルムにおいては、上記式(1)及び式(2)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートAを用いることにより、λ/4位相差フィルムの薄膜化と良好な鹸化適性を達成することができる。
【0070】
また、上記式(3)及び式(4)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートBを用いることにより、所望のRo(550)/Ro(650)の値の達成と、高温高湿環境下での優れた耐久性を達成することができる。
【0071】
加えて、セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値を、1.0以上、19.0以下の範囲に規定することにより、薄膜でありながら、高倍延伸を行うことができ、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際の視認性及び耐久性と、鹸化適性に優れている特性を得ることができた。
【0072】
本発明に係るセルロースアシレートは、セルロース原料をアシル化することによって得ることができる。例えば、アシル化剤が酸無水物(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて合成する。また、例えば、アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。
【0073】
セルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(例えば、針葉樹由来、広葉樹由来等)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースアシレートはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
【0074】
本発明に適用可能なセルロースアシレートは、公知の方法により製造することができる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
本発明に係るセルロースアシレートの総アシル基置換度Zあるいは総アシル基置換度Zを、上記式(1)あるいは式(3)で規定する数値範囲内に制御する具体的な方法としては、上記合成方法に従ってセルロースアシレートを調製する際、1)アシル化の反応時間、2)アシル化の反応時間、3)ケン化熟成条件等を制御することで、所望の総アシル基置換度を得ることができる。例えば、ケン化熟成時間を短くすることにより、総アシル基置換度を高くすることができ、逆に、ケン化熟成時間を長くすることにより、総アシル基置換度を低く調整することができる。
【0075】
また、本発明に係るセルロースアシレートの炭素数が3以上のアシル基の置換度Xあるいは炭素数が3以上のアシル基の置換度Yを、上記式(2)あるいは式(4)で規定する数値範囲内に制御する具体的な方法としては、セルロースアシレートを調製する際、A)置換度の異なるアシル化剤の比率を調整する方法、B)炭素数が3以上のアシル化剤と、炭素数が3未満のアシル化剤を順次反応させる方法、等の条件を制御することで、所望の炭素数が3以上のアシル基の置換度を得ることができる。例えば、炭素数が3以上のアシル化剤の比率を高めることにより、セルロースアシレートの炭素数が3以上のアシル基置換度を高く設定することができ、逆に、反応時に炭素数が3以上のアシル化剤の比率を少なくし、炭素数が3未満のアシル化剤の比率を高くすることにより、炭素数が3以上のアシル基の置換度を低い値に調整することができる。
【0076】
本発明で規定する総アシル基置換度及び炭素数が3以上のアシル基の置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて行うことができる。
【0077】
鹸化適性の観点からは、炭素数が3以上のアシル基は、プロピオニル基であることが好ましい。
【0078】
本発明に係るセルロースアシレートAあるいはセルロースアシレートBの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲が得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に50000〜200000のものが好ましく用いられる。
【0079】
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
【0080】
セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定して求めることができる。
【0081】
具体的な測定条件は、以下の通りである。
【0082】
・溶媒: メチレンクロライド
・カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
・カラム温度:25℃
・試料濃度: 0.1質量%
・検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
・ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
・流量: 1.0ml/min
・校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0083】
また、本発明に係るλ/4位相差フィルムにおいては、本発明に係るセルロースアシレートA及びセルロースアシレートBのほかに、本発明の目的効果を損なわない範囲で、他のセルロース樹脂を併用してもよい。
【0084】
〔添加剤〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムには、添加剤として、組成物の流動性や柔軟性を向上する目的で、各種可塑剤を併用することもできる。本発明に適用可能な可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等が挙げられる。用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0085】
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、少なくとも3個の芳香環を有する芳香族化合物を、セルロースアシレートの全質量に対し2.0〜15.0質量%含有することが、セルロースアシレートの持つ透湿性を損なうこと無く、λ/4位相差フィルムの含水量を低減する上で好ましい。
【0086】
本発明に用いられる添加剤としては、特に限定はないが、例えば、芳香族末端エステル系化合物、トリアジン環を有する化合物が好ましい。芳香族末端エステル系化合物は、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは350〜3000の範囲である。また酸価は、1.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシ価は15mgKOH/g以下のものである。
【0087】
本発明においては、少なくとも3個の芳香環を有する芳香族化合物を、λ/4位相差フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部添加するのが好ましいが、2.0〜15質量部がより好ましい。
【0088】
以下に、本発明に適用可能な各種添加剤の一例を挙げるが、これらに限定されない。
【化1】

【化2】

本発明で好ましく用いられる多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
【0089】
本発明に用いられる多価アルコールは、下記一般式(a)で表される。
【0090】
一般式(a)
−(OH)
上記一般式(a)において、Rはn価の有機基を表し、nは2以上の正の整数を表す。OH基はアルコール性またはフェノール性ヒドロキシル基を表す。
【0091】
好ましい多価アルコールの例としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
【0092】
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトールなどを挙げることができる。
【0093】
中でも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0094】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。
【0095】
本発明に係るλ/4位相差フィルムに脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数としては1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を用いるとセルロースアシレートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0097】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
【0098】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0099】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に、安息香酸が好ましい。
【0100】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがさらに好ましい。
【0101】
分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0102】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0103】
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を示すがこれに限定されるものではない。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

本発明において好ましいトリアジン環を有する化合物は、円盤状化合物であることがλ/4位相差フィルムの位相差を発現させ、かつ含水を低減する上で好ましい。分子量は、300〜2,000であることが好ましい。本発明において、円盤状化合物の沸点は、260℃以上であることが好ましい。沸点は、市販の測定装置(例えば、TG/DTA100、セイコー電子工業(株)製)を用いて測定できる。
【0104】
以下に、本発明に好適に用いることのできるトリアジン環を有する化合物の具体例を示す。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

本発明に係るλ/4位相差フィルム、または後述する保護フィルムには、紫外線吸収剤を含有することが好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤またはサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0105】
なお、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0106】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0107】
これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類を好ましく使用できる。
【0108】
さらに、λ/4位相差フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、λ/4位相差フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0109】
本発明に係るλ/4位相差フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
【0110】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0111】
また、本発明に係るλ/4位相差フィルムには、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましく用いられる。
【0112】
微粒子の一次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0113】
本発明に係るλ/4位相差フィルムはより高温の環境下での使用に耐えられることが求められており、λ/4位相差フィルムの張力軟化点は、105〜145℃であれば十分な耐熱性を示すため好ましく、特に110℃〜130℃が好ましい。
【0114】
張力軟化点の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、試料フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
【0115】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0116】
本発明に係るλ/4位相差フィルムを本発明の有機EL表示装置に用いた場合、吸湿による寸法変化によりムラや位相差値の変化、及びコントラストの低下や色むらといった問題を発生させない為に、該λ/4位相差フィルムの寸法変化率(%)は0.5%未満が好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましい。
【0117】
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、フィルム中の欠点が少ないことが好ましく、ここで欠点とは溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。
【0118】
具体的にはフィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、特に好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
【0119】
上記欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0120】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0121】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0122】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0123】
また、本発明に係るλ/4位相差フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
【0124】
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0125】
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0126】
《λ/4位相差フィルムの製膜方法》
次に、本発明に係るλ/4位相差フィルムの製膜方法の例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0127】
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製膜方法としては、例えば、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
【0128】
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製膜方法としては、溶液流延法でも溶融流延法のどちらで製膜してもよい。
【0129】
フィルムの着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点からは溶液流延法が好ましい。また、セルロースアシレートの溶解に用いた溶媒の残留抑制の点からは溶融流延法で作製する方法が好ましい。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる、溶融押出し法が好ましい。
【0130】
〔有機溶媒〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムを溶液流延法で製造する場合に、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースアシレート、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0131】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0132】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのセルロースアシレートの溶解を促進する役割もある。
【0133】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数が1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子の3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0134】
炭素原子数が1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0135】
〔溶液流延法〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、溶液流延法によって製造することができる。溶液流延法では、樹脂および添加剤を有機溶媒に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
【0136】
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアセテートの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0137】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜有機溶媒が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡し、平面性が劣化する場合がある。
【0138】
金属支持体の好ましい温度としては0〜100℃の範囲で適宜決定され、5〜30℃がより好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
【0139】
温風を用いる場合は有機溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、有機溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0140】
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0141】
λ/4位相差フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0142】
本発明でいう残留溶媒量は、下式により定義される。
【0143】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱した後の質量である。
【0144】
また、λ/4位相差フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0145】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0146】
〔延伸工程〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、波長550nmで測定した面内方向のリターデーションRo(550)が100〜180nmの範囲であることが好ましい。該リターデーションRoはフィルム延伸によって付与することが好ましい。
【0147】
延伸する方法としては特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれらの方法を適宜組み合わせて用いてもよい。すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸してもよく、さらに両方向に延伸する場合は、同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。なお、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できる点で好ましい。
【0148】
本発明においては、特に、延伸方法としてはフィルム搬送ロールの周速差を利用して搬送方向に行うか、若しくは搬送方向と直交方向(幅手方向またはTD方向ともいう)にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で行うことが好ましく、更に左右把持手段によってウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できるテンターを用いることも好ましい。
【0149】
また、本発明に係るλ/4位相差フィルムを、延伸工程でフィルム搬送方向に対して45°方向に延伸することが、λ/4位相差フィルムを効率良く作製する観点から好ましい。
【0150】
前述のように遅相軸が長手方向と平行な方向に透過軸があるロール状の偏光フィルムと、配向角が実質的に45°であるλ/4位相差フィルムとを長手方向を合わせてロールtoロールで貼合すると、ロール状長尺状の円偏光板を容易に製造できるので、フィルムのカットロスが少なく生産上有利である。
【0151】
以下、45°の方向に延伸する具体的な方法について説明する。
【0152】
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造工程で、延伸に供される長尺の長尺フィルム原反に斜め方向の配向を付与するためには、斜め延伸テンターを用いるのが好ましい。斜め延伸テンターは、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚みやリターデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
【0153】
図2は、本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造に用いることができる斜め延伸可能なテンターの模式図である。但し、これは一例であって本発明はこれに限定されるものではない。
【0154】
図2の(a)に示す斜め延伸可能なテンター構造1では、テンター入り口側のガイドロール12−1によって方向を制御された長尺フィルム原反4は、外側のフィルム保持開始点8−1、内側のフィルム保持開始点8−2の位置で把持具(クリップつかみ部ともいう)によって担持され、斜め延伸テンター6にて外側のフィルム保持手段の軌跡7−1、内側のフィルム保持手段の軌跡7−2で示される斜め方向に搬送、延伸され、外側のフィルム保持終了点9−1、内側のフィルム保持終了点9−2によって把持を解放され、テンター出口側のガイドロール12−2によって搬送を制御されて斜め延伸フィルム5が形成される。図中、長尺フィルム原反は、フィルムの送り方向14−1に対して、フィルムの延伸方向14−2の角度(繰出し角度θi)で斜め延伸される。
【0155】
図2の(b)は、斜め延伸可能な他のテンター構造2を示しており、上記図2の(a)に示す斜め延伸可能なテンター構造1と同様にして延伸を行うことができる。
【0156】
本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造工程での延伸は、上記斜め延伸可能なテンターを用いて行う。このテンターは、長尺フィルム原反を、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムロールから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
【0157】
なお、テンターのレール形状は、図2の(a)、(b)に示すように、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動でまたは自動で微調整できるようになっている。本発明においては、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、好ましくは10°〜80°の範囲内で任意の角度に設定できるようになっている。
【0158】
把持具の走行速度は適宜選択できるが、通常、1〜100m/分である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口におけるシワ、寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは速度差には該当しない。
【0159】
また、本発明で用いられる斜め延伸テンターでは、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定できることが好ましい。したがって、斜め延伸テンターは、任意の入り口幅及び出口幅を設定すると、これに応じた延伸倍率にすることができる。(図中、「○」で示す部位は、連結部である)。
【0160】
本発明で用いられる斜め延伸テンターにおいて、把持具の軌跡を規制するレールには、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
【0161】
図2の(a)で示される斜め延伸テンターにおいては、長尺フィルム原反のテンター入口での進行方向14−1は、延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向14−2と異なっている。繰出し角度θiは、テンター入口での進行方向14−1と延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向14−2とのなす角度である。
【0162】
図2の(b)で示される斜め延伸テンターにおいては、長尺フィルム原反のテンター入口での進行方向14−1は、テンター内で繰出し角度θiにてテンター入口での進行方向とは異なる方向に転換され搬送される。その後さらに搬送方向が転換され、最終的には延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向一致するような軌跡をとる。
【0163】
本発明においては、上述のように好ましくは10°〜80°の配向角θを持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<60°、好ましくは15°<θi<50°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる)。
【0164】
本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
【0165】
図3の(a−2)、(b−2)は、前述の図2の(a)、(b)で示される斜め延伸テンターにおける延伸方向について、模式図で示している。
【0166】
本発明では、図3の(a−2)及び(b−2)で示されるように、搬送フィルムの両端が初めて把持具によって把持される点、つまり把持開始点A1とA1から導入側の搬送フィルムの中心線に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点B1(つまり反対側のフィルム把持開始点)の2点を起点とし、両端の把持具を実質的に一定速度で搬送すると、単位時間ごとにA1からA2、A3と経て延伸終了点An移動し、B1は同様にB1からB2,B3と経て延伸終了点Bnに移動する。このような延伸方法を用いることで、図3の(a−2)、(b−2)で示されるように、把持部AnはBnに対して次第に遅れていくため、延伸方向は、幅方向から徐々に傾斜していく。実質的な把持終了点(把持された搬送フィルムが把持していた把持具より解放される点)は、搬送フィルムの両端またはどちらか一方の端部が把持具から解放される点、すなわち把持終了点Bxと、Bxから次工程へ送られる搬送フィルムの中心線に略垂直に引いた直線が、反対側の把持手段の軌跡と交わる点Ayの2点で定義される。ここで略垂直とは90±1°以内にあることを意味する。
【0167】
最終的なフィルムの延伸方向の角度は、把持終了点の距離W(BxとAyの距離)とAxとAyの比率で決まる。
【0168】
従って、延伸方向が次方向への搬送方向に対しなす傾斜角θfは、
tanθf=W/(Ay−Ax)
即ち、
tanθf=W/|LA−LB|
を満たす角度となる。
【0169】
ここでLAとは大回り側のテンターレール上を把持具が把持開始点から把持終了点までの走行距離であり、LBとは小回り側のテンターレール軌跡上を把持具が把持開始点から把持終了点まで動いた距離であり、|LA−LB|は把持終了点における、左右の把持具がテンターレール上を走行した距離の差である。
【0170】
また、前記図3を用いて本発明における延伸倍率の定義について説明する。
【0171】
図3において、斜め延伸テンターにおいて搬送フィルムが把持具によって初めて把持される把持開始点A1からB1間までの直線距離をLo、前記把持具の両方が斜め延伸テンター内の全ての延伸ゾーンを通過した際の把持具の位置(延伸終了点)をAn、BnとしたときのAnからBn間の直線距離をLとおいたとき、斜め延伸テンター内における延伸倍率Rは、
R=L/L0
で定義される。
【0172】
このときの延伸倍率Rは、好ましくは1.3〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚みムラが小さくなるので好ましい。斜め延伸テンターの延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚みムラをさらに良好なレベルにすることが可能になる。
【0173】
斜め延伸テンター内において、長尺フィルム原反は、図2に示すように、テンター入口(符号aの位置)にて、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(14−1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具は、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、横延伸ゾーン、斜め延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーンを有するオーブンを通過する。
【0174】
ただし、必ずしも上記ゾーンの全てを上記順序でフィルムを搬送させる必要はなく、たとえば下記組み合わせ例のように、上記ゾーンの一部のみを使用したり、上記ゾーンのうち任意のゾーンを数回使用したりしてもよい。
【0175】
1)予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
2)予熱ゾーン/横延伸ゾーン/斜め延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
3)予熱ゾーン/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン/保持ゾーン/冷却ゾーン
4)予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン/横延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
5)予熱ゾーン/横延伸ゾーン1/斜め延伸ゾーン1/横延伸ゾーン2/斜め延伸ゾーン2/保持ゾーン/冷却ゾーン
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。
【0176】
横延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。このとき、両端の把持具が走行するレールの開き角度は、両レールともに同じ角度で開いてもよいし、各々異なる角度で開いてもよい。
【0177】
斜め延伸ゾーンとは、フィルムの両端を把持した把持具が、把持具間隔を一定に保ったままあるいは広がりながら、屈曲するレール上を走行しはじめてから両把持具がともに再度直線レール上を走行しはじめるまでの区間をさす。
【0178】
保持ゾーンとは、横延伸ゾーンあるいは斜め延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をさす。
【0179】
冷却ゾーンとは、保持ゾーンより後の区間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg℃以下に設定される区間をさす。
【0180】
このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、予め対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしてもよい。
【0181】
各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃、冷却ゾーンの温度はTg−30〜Tg℃に設定することが好ましい。
【0182】
なお、幅方向の厚みムラの制御のため、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付けてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付与させる方法としては、例えば、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差を付けるようにして調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の方法を用いることができる。
【0183】
さらに、長尺延伸フィルムにおけるシワや寄りの発生を防止する方法としては、延伸時にフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5体積%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低下させる方法等を挙げることができる。本発明でいうフィルムの支持性を保つとは、フィルムの膜性を損なうことなく両側縁を把持することを意味する。揮発分率については、延伸操作工程において常に5体積%以上の状態を維持していてもよいし、延伸操作工程の一部の区間に限って揮発分率が5体積%以上の状態を維持してもよい。後者の場合、入り口位置を起算点として全延伸区間の50%以上の区間、揮発分率が12体積%以上の状態となっていることが好ましい。いずれにせよ、延伸前に揮発分率が12体積%以上の状態を存在させておくことが好ましい。ここで、揮発分率(単位;体積%)とは、フィルムの単位体積あたりに含まれる揮発成分の体積を表し、揮発成分体積をフィルム体積で除した値とする。
【0184】
テンターの入口に最も近いガイドロールは、フィルムの走行を案内する従動ロールであり、軸受部を介してそれぞれ回転自在に軸支されている。ロールの材質は、公知のものを用いることができるが、フィルムの傷つきを防止するためにセラミックコートを施す方法、アルミニウム等の軽金属にクロームメッキを施す方法等、軽量化を図るのが好適である。このロールは、フィルムの走行時の軌道を安定させるために設けられるものである。
【0185】
また、このロールの上流側のロールのうちの1本は、ゴムロールを圧接させてニップすることが好ましい。このようなニップロールにすることで、フィルムの流れ方向における繰出張力の変動を抑えることが可能だからである。
【0186】
テンターの入口に最も近いガイドロールの両端(左右)の一対の軸受部には、当該ロールにおいてフィルムに生じている張力を検出するための第1張力検出装置、第2フィルム張力検出装置がそれぞれ設けられている。フィルム張力検出装置としては、例えばロードセルを用いることができる。ロードセルとしては、引張または圧縮型の公知のものを用いることができる。ロードセルは、着力点に作用する荷重を起歪体に取り付けられた歪ゲージにより電気信号に変換して検出する装置である。
【0187】
ロードセルは、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドロールの左右の軸受部に設置されることにより、走行中のフィルムがロールに及ぼす力、即ちフィルムの両側縁近傍に生じているフィルム進行方向における張力を左右独立に検出するものである。なお、ロールの軸受部を構成する支持体に歪ゲージを直接取り付けて、該支持体に生じる歪に基づいて荷重、即ちフィルム張力を検出するようにしてもよい。発生する歪とフィルム張力との関係は、予め計測され、既知であるものとする。
【0188】
上述したようなフィルム張力検出装置を設けて、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドロールにおけるフィルムの両側縁近傍の張力を検出するようにしたのは、フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向に対してズレが生じている場合、このズレ量に応じて、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドロールにおけるフィルムの両側縁近傍の張力に差を生じることになるため、この張力差を検出することによって、当該ズレの程度を判別するためである。フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向との関係で適正であれば、ロールに作用する荷重は左右で粗均等になり、互いの位置がズレていれば左右のフィルム張力に差が生じるのである。
【0189】
従って、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドロールにおける左右のフィルム張力差が等しくなるように、フィルムの位置及び角度を、適切に調整すれば、フィルム延伸装置の入口部における把持具による把持が安定し、把持具外れ等の障害の発生を少なくできる。更に、フィルム延伸装置による斜め延伸後のフィルムの幅方向における物性を安定させることができる。
【0190】
配向角の微調整や製品バリエーションに対応するために斜め延伸テンター入口でのフィルム進行方向と斜め延伸テンター出口でのフィルム進行方向とがなす角度の調整が必要となる。その際、製膜および斜め延伸を連続して行うことが、生産性や収率の点で好ましい。製膜工程、斜め延伸工程、巻取工程を連続して行う場合、製膜工程と巻取工程でのフィルムの進行方向が一致していることが、工程の幅を小さくできる点で好ましい。そのような工程とするには、製膜したフィルムを斜め延伸テンター入口に導くためにフィルムの搬送方向を変更する、及び/または斜め延伸テンター出口から出たフィルムを巻取装置方向に戻すためにフィルムの搬送方向を変更する方法が必要となる。フィルムの搬送方向を変更する装置としては、エアーフローロールなどを用いるなど公知の方法を実施することができる。斜め延伸テンター出口以降の装置(巻取り装置、アキューム装置、ドライブ装置など)は横方向にスライドできる構造が好ましい。
【0191】
次いで、本発明に係るλ/4位相差フィルムの製造方法について、図を用いて説明する。
【0192】
図4の(c)〜(e)は、本発明に適用可能な製造方法の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図である。
【0193】
図5の(f)、(g)は、本発明に適用可能な製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図である。
【0194】
図4の(c)〜(e)は、各々一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンの一例を示しており、図5の(f)、(g)は、各々長尺フィルム原反を巻き取ることなく連続的に斜め延伸工程を行うパターンの一例を示すものである。
【0195】
図4において、16はフィルム繰り出し装置、17は搬送方向変更装置、18は巻き取り装置、19は製膜装置を各々示した。それぞれの図において、同じものを示す記号については省略している場合がある。
【0196】
フィルム繰り出し装置16は、斜め延伸テンター入口に対して所定角度で前記フィルムを送り出せるように、スライドおよび旋回可能となっているか、フィルム繰り出し装置16はスライド可能となっており、搬送方向変更装置17により斜め延伸テンター入口に前記フィルムを送り出せるようになっていることが好ましい。前記フィルム繰り出し装置16、および搬送方向変更装置17をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置および角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい延伸フィルムを得ることが可能となる。また、前記フィルム繰り出し装置16、搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、前記左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
【0197】
巻き取り装置18は、斜め延伸テンター出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように形成することにより、フィルムの引き取り位置および角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さい延伸フィルムを得ることが可能となる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本発明において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの間で調整する必要がある。
【0198】
前記引取張力が100N/m以下ではフィルムのたるみや皺が発生しやすく、リターデーション、配向軸の幅方向のプロファイルも悪化する。逆に引取張力が300N/m以上となると幅方向の配向角のバラツキが悪化し、幅収率(幅方向の取り効率)を悪化させてしまう。
【0199】
また、本発明においては、上記引取張力Tの変動を±5%未満、好ましくは±3%未満の精度で制御する必要がある。上記引取張力Tの変動が±5%以上であると、幅方向及び流れ方向の光学特性のバラツキが大きくなる。上記引取張力Tの変動を上記範囲内に制御する方法としては、テンター出口部の最初のロールにかかる荷重、すなわちフィルムの張力を測定し、その値を一定とするように、一般的なPID制御方式(P(比例制御)、I(積分制御)、D(微分制御))により引取ロールの回転速度を制御する方法が挙げられる。前記荷重を測定する方法としては、ロールの軸受部にロードセルを取り付け、ロールに加わる荷重、すなわちフィルムの張力を測定する方法が挙げられる。ロードセルとしては、引張型や圧縮型の公知のものを用いることができる。
【0200】
延伸後のフィルムは、把持具による把持が開放され、テンター出口から排出され、フィルムの両端(両側)がトリミングされた後に、順次巻芯(巻取りロール)に巻き取られて、延伸フィルムの巻回体にすることができる。
【0201】
また、必要に応じて、巻取ロールに巻き取る前に、テンターの把持具で把持されていたフィルムの両端をトリミングしてもよい。また、巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを重ねて同時に巻き取ってもよいし、延伸フィルムの少なくとも一方、好ましくは両方の端にテープ等を張り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、上記フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどがあげられる。
【0202】
上記の製造方法により得られた延伸フィルムは、配向角θが巻取り方向に対して、例えば10°〜80°の範囲に傾斜しており、少なくとも1300mmの幅において、幅方向の、面内リターデーションRoのバラツキが4nm以下、配向角θのバラツキが1.0°以下であることが好ましい。
【0203】
本発明において、延伸フィルムの面内リターデーションRoのバラツキは、幅方向の少なくとも1300mmにおいて、4nm以下、好ましくは3nm以下であることが好ましい。面内リターデーションRoのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。
【0204】
本発明において、延伸フィルムの配向角θのバラツキは、幅方向の少なくとも1300mmにおいて、1.0°以下、好ましくは0.80°以下であることが好ましい。配向角θのバラツキが1.0°を超える延伸フィルムを偏光子と貼り合せて円偏光板を得、これを液晶表示装置に据え付けると、光漏れが生じ、コントラストを低下させることがある。
【0205】
本発明の延伸フィルムの面内リターデーションRoは、用いられる表示装置の設計によって最適値が選択される。なお、前記Roは、面内遅相軸方向の屈折率nxと面内で前記遅相軸に直交する方向の屈折率nyとの差にフィルムの平均厚みdを乗算した値(Ro=(nx−ny)×d)である。
【0206】
本発明の延伸フィルムの平均厚みは、機械的強度などの観点から、好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μm、特に好ましくは30〜40μmである。
【0207】
また、幅方向の厚みムラは、巻取りの可否に影響を与えるため、3μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
【0208】
〔溶融製膜法〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースアセテートを含む溶融物を流延することをいう。
【0209】
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0210】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースアセテートや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
【0211】
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
【0212】
粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0213】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0214】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0215】
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップされ、冷却ロール上で固化させる。
【0216】
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0217】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0218】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0219】
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度は、フィルムのTg以上、Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
【0220】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、市販されているものを用いることもできる。
【0221】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0222】
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
【0223】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0224】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0225】
〔λ/4位相差フィルムの物性〕
本発明に係るλ/4位相差フィルムの膜厚は、特に限定はされないが、10〜250μmの範囲で用いられる。更には、膜厚が10〜100μmの範囲であることが好ましく、特には30〜60μmであることが好ましい。
【0226】
本発明に係るλ/4位相差フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。更には幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0227】
また、本発明に係るλ/4位相差フィルム表面の算術平均粗さRaは、好ましくは2.0〜4.0nm、より好ましくは2.5〜3.5nmである。
【0228】
〔保護フィルム〕
本発明に係る保護フィルム(図1に記載の110)は、保護フィルムであることが好ましく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることができる。
【0229】
これらのうち、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC4UA、KC6UA、およびKC12UR(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本発明においては、セルロースエステルフィルムが光学特性、生産性、コスト面から好ましい。
【0230】
また、3D(立体)画像表示用の有機EL表示装置を作製する場合には、偏光子の両面にλ/4位相差フィルムを配置することが表示画像の品質向上に効果を有するため、保護フィルムとして本発明に係るλ/4位相差フィルムを用いることも好ましい。その際、好ましくは保護フィルムの面内の最大弾性率となる方向が画像表示装置の画面の長手方向に対して35°〜55°の方向にあり、且つ前記λ/4位相差フィルムの面内の最大弾性率の方向と平行にすることによって、パネルのたわみがなく、高品位な3D画像表示用の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を得ることができる。
【0231】
〔表面反射防止層〕
上記円偏光板の保護フィルムには直接または他の層を介して表面反射防止層(図1に記載の11)を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止層を設けることも好ましい。
【0232】
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。または、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。反射防止層の構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0233】
保護フィルム/低屈折率層
保護フィルム/中屈折率層/低屈折率層
保護フィルム/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
保護フィルム/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
(低屈折率層)
反射防止層において低屈折率層は必須の構成要件であるが、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、支持体である基材フィルムの屈折率より低く、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
【0234】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることが更に好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
【0235】
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質または空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
【0236】
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
【0237】
一般式(OSi−1)
Si(OR)
上記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物において、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
【0238】
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0239】
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率としては、23℃、波長550nmの条件での測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。金属酸化また、用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
【0240】
高屈折率層の形成に適用可能な金属酸化物微粒子の種類は、特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の金属元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子は、その粒子表面をAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープしてあっても良い。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが特に好ましい。その中でも、特にアンチモン酸亜鉛粒子を含有することが好ましい。
【0241】
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10nm〜200nmの範囲であり、10〜150nmであることが更に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。また、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。ただし、平均粒子径が10nm未満になると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。また、平均粒子径が200nmを越えるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、楕円状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
【0242】
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜3質量%である。
【0243】
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でもシランカップリング剤が好ましい。また、二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
【0244】
高屈折率層には、π共役系導電性ポリマーを含有しても良い。π共役系導電性ポリマーとしては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さ、安定性点からは、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類が好ましい。
【0245】
π共役系導電性ポリマーは、無置換のままでも十分な導電性やバインダー樹脂への溶解性が得られるが、導電性や溶解性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導入してもよい。また、イオン性化合物を含有しても良い。イオン性化合物としては、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系の陽イオンとBF、PF等の無機イオン系、CFSO、(CFSO、CFCO等のフッ素系の陰イオンとからなる化合物等が挙げられる。該ポリマーとバインダーの比率はポリマー100質量部に対して、バインダーが10〜400質量部が好ましく、特に好ましくは、ポリマー100質量部に対して、バインダーが100〜200質量部である。
【0246】
〔偏光子〕
図1に示した本発明の有機EL表示装置を構成する偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性ポリマーフィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
【0247】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。
【0248】
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0249】
《有機エレクトロルミネッセンス素子》
次いで、本発明の有機EL表示装置を構成する有機EL素子の各構成要素について説明する。
【0250】
図1に示したように、本発明に係る有機EL素子Bは、例えば、ガラスやポリイミド等を用いた基板101上に順に金属電極102、有機発光層103、透明電極(ITO等)104、絶縁層105、封止層106、フィルム107(省略可)を有する構成であり、有機発光層104としては、具体的には、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層を積層した構成となっている。
【0251】
〔基板〕
図1に示した有機EL表示装置に用いることのできる基板101としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、透明であっても不透明であってもよい。基板1側から光を取り出す場合には、基板1は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
【0252】
(樹脂フィルム)
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0253】
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h・atm)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h・atm)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0254】
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0255】
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
【0256】
不透明な基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0257】
(ガラス板)
前記基板は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の反りを防止する観点から、ガラス板が好ましい。該ガラス板の厚みは、0.1mm以上10mm以下が好ましい。0.1mm以上であれば、耐久性が良く、搬送時あるいは使用時の微弱な衝撃で割れることが無く、また熱をかけた際でも反りを生じず、割れによる視認性の劣化が無い。また、10mm以下であれば、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の重量を軽くすることができ、製造コストも抑えることができる。
【0258】
〔金属電極〕
金属電極(陽極ともいう)には、効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)の金属及びその合金さらにはこれらの金属や合金の酸化物等、または、酸化スズ(SnO)とアンチモン(Sb)との合金、ITO(インジウムチンオキシド)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、さらにはこれらの金属や合金の酸化物等が、単独または混在させた状態で用いられる。
【0259】
また、陽極は、光反射性に優れた第1層と、この上部に設けられた光透過性を有すると共に仕事関数の大きい第2層との積層構造であっても良い。
【0260】
例えば、第1層には、アルミニウムを主成分とする合金からなる。その副成分は、主成分であるアルミニウムよりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも一つ含むものでも良い。このような副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は、大きくないが、これらの元素を含むことで陽極の安定性が向上し、かつ陽極のホール注入性も満足する。また副成分として、ランタノイド系列元素の他に、シリコン(Si)、銅(Cu)などの元素を含んでも良い。
【0261】
第1層を構成するアルミニウム合金層における副成分の含有量は、例えば、アルミニウムを安定化させるNdやNi、Ti等であれば、合計で約10質量%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム合金層においての反射率を維持しつつ、有機電界発光素子の製造プロセスにおいてアルミニウム合金層を安定的に保ち、さらに加工精度および化学的安定性も得ることができる。また、陽極23の導電性および基板22との密着性も改善することができる。
【0262】
また第2層には、アルミニウム合金の酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、およびタンタルの酸化物の少なくとも一つからなる層を例示できる。ここで、例えば、第2層が副成分としてランタノイド系元素を含むアルミニウム合金の酸化物層(自然酸化膜を含む)である場合、ランタノイド系元素の酸化物の透過率が高いため、これを含む第2層の透過率が良好となる。このため、第1層の表面において、高反射率を維持することが可能である。さらに、第2層は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電層であっても良い。これらの導電層は、陽極の電子注入特性を改善することができる。
【0263】
また陽極は、基板と接する側に、陽極と透明基板との間の密着性を向上させるための導電層を設けて良い。このような導電層としては、ITOやIZOなどの透明導電層が挙げられる。
【0264】
〔有機発光層〕
(正孔注入層/正孔輸送層)
正孔注入層および正孔輸送層は、それぞれ発光層への正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層もしくは正孔輸送層の材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0265】
また、上記正孔注入層もしくは正孔輸送層のさらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N′、N′−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N′、N′−テトラフェニル−4、4′−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2′−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0266】
(発光層)
発光層は、陽極側から注入された正孔と、透明電極(陰極側)から注入された電子とが再結合して発光光を発生する領域である。このような発光層は、炭素及び水素のみから構成される有機材料で形成された有機薄膜であっても良く、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料を用いて構成された層であっても良い。加えて、発光層は、ドーパントとして、ベリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素、トリフェニルアミン誘導体等の有機物質を微量含む混合有機薄膜であっても良い。この場合には発光層を構成するホスト材料(主材料)と、ドーパントとなる材料との共蒸着によって、発光層が形成される。また特に、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料のうち、分子間相互作用が小さく濃度消光しにくい特徴を有するものであれば、高濃度のドーピングが可能になり、最適なドーパントの1つとして機能する。
【0267】
以上のような発光層を構成する材料は、希望する色に応じて選択することが可能である。例えば、青色系統の発光を得たい場合には、オキサジアゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体などが用いられる。緑色系統の発光を得たい場合には、青色系統の発光層にクマリン6などのクマリン誘導体、キナクリドン誘導体などの既知の緑色色素をドーピングした層が用いられる。赤色系統の発光を得たい場合には、青色系統または緑色系統の発光層にニールレッド、DCM1{4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン}、DCJT{4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(ジュロリジルスチリル)−ピラン}などのピラン誘導体,スクアリリウム誘導体,ポルフィリン誘導体,クロリン誘導体,ユーロジリン誘導体などの既知の赤色色素をドーピングした層が用いられる。
【0268】
尚、この発光層は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を積層させた白色発光層であっても良く、また接続層を介して発光層を複数積層させたタンデム構造であっても良い。さらに、発光層は、電子輸送層を兼ねた電子輸送性発光層であることも可能であり、正孔輸送性の発光層であっても良い。
【0269】
(電子輸送層)
電子輸送層は、透明電極104(陰極ともいう)から注入される電子を発光層に輸送するためのものである。電子輸送層の材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0270】
尚、発光層は、このような層構造に限定されることはなく、少なくとも発光層と、これに接して電子輸送層が設けられていれば良く、その他必要に応じた積層構造を選択することができる。
【0271】
また、発光層は、正孔輸送性の発光層、電子輸送性の発光層、あるいは両電荷輸送性の発光層として有機EL素子Bに設けられていても良い。さらに、以上の有機発光層103を構成する各層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層は、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。
【0272】
〔透明電極:陰極〕
次に、このような構成の有機発光層103上に透明電極104(陰極ともいう)が設けられている。
【0273】
透明電極104(陰極ともいう)は、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(LiO)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(CsCO)、さらにはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、透明電極104(陰極ともいう)は、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物及び複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物及び複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【実施例】
【0274】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0275】
《セルロースアシレートの調製》
〔セルロースアシレートAの調製〕
(セルロースアシレートA1の調製)
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)300gにプロピオン酸1300gを加え、54℃で30分撹拌した。混合物を冷却した後、氷浴中で冷却した無水プロピオン酸の1000gと、硫酸の13gを加えてエステル化を行った。なお、エステル化においては、液温が40℃を超えないように調節しながら、150分の攪拌を行った。反応終了後、プロピオン酸300gと水100gの混合液を20分かけて滴下して、過剰の無水物を加水分解した。反応液の温度を40℃に保持しながら、プロピオン酸900gと水300gを加えて1時間撹拌した。次いで、プロピオン酸マグネシウム20gを含有した水溶液中に混合物を添加し、しばらく撹拌した後にろ過、乾燥し、セルロースアシレートA1を得た。得られたセルロースアシレートA1は、総アシル基置換度Zは2.40、プロピオニル基(炭素数3)置換度Xは2.40、重量平均分子量は220000であった。なお、総アシル基置換度及びプロピオニル基(炭素数3)の置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて行った。
【0276】
〔セルロースアシレートA2〜A9の調製〕
上記セルロースアシレートA1の調製において、プロピオン酸、無水プロピオン酸の他に、更に、酢酸、無水酢酸、酪酸、無水酪酸を適宜使用して、酸の量を調整した以外は同様にしてセルロースのエステル化操作を行い、表1に記載の総アシル基置換度Z、プロピオニル基置換度Xを有するセルロースアシレートA2〜A10を調製した。
【表1】

〔セルロースアシレートBの調製〕
(セルロースアシレートB1の調製)
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)300gに酢酸900g、プロピオン酸250gを加え、54℃で30分撹拌した。混合物を冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸の320g、無水プロピオン酸500gと、硫酸の12gを加えてエステル化を行った。なお、エステル化においては、液温が40℃を超えないように調節しながら、150分の攪拌を行った。反応終了後、酢酸300gと水100gの混合液を20分かけて滴下して、過剰の無水物を加水分解した。反応液の温度を40℃に保持しながら、酢酸900gと水300gを加えて1時間撹拌した。次いで、酢酸マグネシウム20gを含有した水溶液中に混合物を添加し、しばらく撹拌した後にろ過、乾燥し、セルロースアシレートB1を得た。得られたセルロースアシレートB1は、総アシル基置換度Zは2.00、プロピオニル基(炭素数3)置換度Yは0.50、重量平均分子量は220000であった。なお、総アシル基置換度及びプロピオニル基(炭素数3)の置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて行った。
【0277】
〔セルロースアシレートB2〜B11の調製〕
上記セルロースアシレートB1の調製において、酢酸、無水酢酸の他に、更にプロピオン酸、無水プロピオン酸、酪酸、無水酪酸を適宜使用して、酸の量を調整した以外は同様にしてセルロースのエステル化操作を行い、表2に記載の総アシル基置換度Z、プロピオニル基置換度Yを有するセルロースアシレートB2〜B11を調製した。
【表2】

《λ/4位相差フィルムの作製》
〔λ/4位相差フィルム1の作製〕
(微粒子分散液の調製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、圧力型分散機であるマントンゴーリンを用いて分散を行った。
【0278】
(微粒子添加液1の調製)
メチレンクロライド5質量部を入れた溶解タンク内を十分に攪拌しながら、上記調製した微粒子分散液5質量部をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
【0279】
(主ドープ液1の調製)
下記の組成からなる主ドープ液を調製した。はじめに、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、総アシル基置換度Zが2.40、プロピオニル基置換度Xが2.40のセルロースアシレートA1と、総アシル基置換度Zが2.00、プロピオニル基置換度Yが0.50のセルロースアシレートB1と、紫外線吸収剤、微粒子添加液1を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解した。次いで、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液1を調製した。なお、セルロースアシレートB/セルロースアシレートA(質量比)は、9.0である。
【0280】
〈主ドープ液1の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースアシレートA1(総アシル基置換度Z:2.40、プロピオニル基置換度Xが2.40、重量平均分子量:22万) 10質量部
セルロースアシレートB1(総アシル基置換度Z:2.00、プロピオニル基置換度Xが0.50、重量平均分子量:22万) 90質量部
紫外線吸収剤(チヌビン928、BASFジャパン社製) 2.0質量部
微粒子添加液1 2質量部
(λ/4位相差フィルムの製膜)
上記調製した主ドープ液1を、無端ベルト流延装置を用いて、温度33℃、幅2000mmでステンレスベルト支持体上に均一に流延(キャスト)した。次いで、製膜したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させた後、剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0281】
剥離したフィルムを、160℃の熱を付与しながら、テンターを用いて幅方向に1%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
【0282】
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
【0283】
以上のようにして、乾燥膜厚75μmのロール状の原反フィルムを得た。
【0284】
次いで、原反フィルムをフィルム巻出工程より巻出し、図2の(a)で示すような斜め延伸テンターを用いて、斜め延伸を行った。このとき、前工程で巻き取ったフィルム積層ロールにおいて、その後尾より巻出す形とした。
【0285】
ロール状の原反フィルムを、図2の(a)に示す斜め延伸装置のスライド可能な繰出装置にセットし、角度θi=47°となるようにレールパターンが設定された斜め延伸機に供給した。このときのゾーン組み合わせとしては、予熱ゾーン、横延伸ゾーン、斜め延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーンとし、そのとき、斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドロールの主軸と斜め延伸テンターの把持具(クリップつかみ部)との距離を80cmとした。クリップは搬送方向の長さが5.08cm(2インチ)のものを、上記ガイドロールとして直径10cmのものを使用した。
【0286】
斜め延伸テンター内にて、予熱ゾーンの温度を193℃、横延伸ゾーンの温度を190℃、斜め延伸ゾーンの温度を190℃、保持ゾーンの温度を190℃、冷却ゾーンの温度を110℃とし、テンター出口における引取張力200N/mとした。
【0287】
このときの延伸倍率は、1.6倍となるように延伸を行った。延伸倍率の内訳としては、横延伸ゾーンにて1.18倍、さらに斜め延伸ゾーンにおいて1.36倍となるように延伸した。この際、配向角θが45°となるように斜め方向に延伸を行った。レールが45°屈曲する際に延伸と垂直方向に0.71倍に収縮した。延伸後のフィルムは、斜め延伸テンター出口側第一ロールで測定した張力の変動を引取モーター回転数に反映させるフィードバック制御を行って、引取張力の変動が3%未満となるように制御した。その後、フィルム両端をトリミングして、エアーフローロールからなる搬送方向変更装置で搬送方向を変更し、スライド可能な巻取装置で巻き取り、厚さ60μm、2000mm幅のロール状で長尺のλ/4位相差フィルム1を得た。
【0288】
〔λ/4位相差フィルム2〜23の作製〕
上記λ/4位相差フィルム1の作製において、セルロースアシレートA、セルロースアシレートBの種類及び両者の混合比率(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA:質量比)を、表3に記載の組み合わせにそれぞれ変更した以外は同様にして、λ/4位相差フィルム2〜23を作製した。
【0289】
なお、各λ/4位相差フィルム作製においては、延伸温度と延伸倍率を適宜変更して、面内リターデーションRoがλ/4位相差の範疇に入るよう調整した。
【0290】
上記作製したλ/4位相差フィルム1〜23を王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した結果、550nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(550)は、130〜160nmの範囲であり、650nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(650)は、155〜175nm以下であり、配向角θはフィルム長手方向に対して45°±1°の範囲にあった。
【0291】
上記作製したλ/4位相差フィルム1〜24のセルロースアシレートA、セルロースアシレートBの種類及び両者の混合比率(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA:質量比)を表3に示す。
【表3】

《保護フィルム1の作製》
(エステル化合物1の調製)
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物1を得た。酸価0.10mgKOH/g、数平均分子量450であった。
【0292】
(主ドープ液2の調製)
セルロースアセテート(アセチル基置換度:2.88、重量平均分子量:約19万)
90質量部
エステル化合物1 10質量部
紫外線吸収剤(チヌビン928、BASFジャパン社製) 2.5質量部
微粒子添加液1(前出) 4質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、主ドープ液2を調製した。
【0293】
(保護フィルムの製膜)
次に、ベルト流延装置を用い、主ドープ液2をステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、160℃の熱をかけながらテンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に30%、MD方向の延伸倍率は1%延伸した。延伸を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.49m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、保護フィルム1を得た。保護フィルム1の残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μm、巻数は3900mであった。
【0294】
保護フィルム1の配向角θは、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した結果、フィルム長手方向に対して90°±1°の範囲にあった。
【0295】
《円偏光板の作製》
〔偏光子の作製〕
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
【0296】
〔円偏光板1の作製〕
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子とλ/4位相差フィルム1と、裏面側(視認側)には保護フィルム1を長手方向で合わせるようにロール・トゥ・ロールで貼り合わせて円偏光板1を作製した。
【0297】
工程1:λ/4位相差フィルム1と延伸した保護フィルム1を60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
【0298】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0299】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き取り、これを工程1で処理したλ/4位相差フィルム1の上にのせて配置した。
【0300】
工程4:工程3で積層したλ/4位相差フィルム1と偏光子と保護フィルム1を圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0301】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とλ/4位相差フィルム1と保護フィルム1とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、円偏光板1を作製した。
【0302】
〔円偏光板2〜23の作製〕
上記円偏光板1の作製において、λ/4位相差フィルム1に代えて、それぞれλ/4位相差フィルム2〜23を用いた以外は同様にして、円偏光板2〜23を作製した。
【0303】
《有機エレクトロルミネッセンス表示装置の作製》
図6に示す構成からなる有機エレクトロルミネッセンス表示装置1〜23を作製した。
【0304】
〔有機EL表示素子の作製〕
図6に示すように、ガラスの透明基板1a上にクロムからなる反射電極、反射電極上に金属電極2a(陽極)としてITOを成膜し、陽極上に正孔輸送層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で厚さ80nmで形成し、次いで正孔輸送層上にシャドーマスクを用いて、図6に示すようにRGBそれぞれの発光層3aR、3aG、3aBを100nmの膜厚で形成した。赤色発光層3aRとしては、ホストとしてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq)と発光性化合物[4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層3aGとしては、ホストとしてAlqと、発光性化合物クマリン6とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層3aBとしては、ホストとしてBAlqと発光性化合物Peryleneとを共蒸着(質量比90:10)して厚さ100nmで形成した。
【化20】

さらに、発光層上に電子が効率的に注入できるような仕事関数の低い第1の陰極としてカルシウムを真空蒸着法により4nmの厚さで成膜し、第1の陰極上に第2の陰極としてアルミニウムを2nmの厚さで形成した。ここで、第2の陰極として用いたアルミニウムはその上に形成される透明電極4aをスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質をすることを防ぐ役割がある。以上のようにして、有機発光層を得た。次に、陰極上にスパッタリング法によって透明導電膜を80nmの厚さで成膜した。ここで透明導電膜としてはITOを用いた。さらに、透明導電膜上にCVD法によって窒化珪素を200nm成膜することで、絶縁膜5aとした。
【0305】
上記作製した有機EL素子の発光面積は1296mm×784mmであった。また、この有機EL素子に6Vの直流電圧を印加した際の正面輝度は1200cd/mであった。正面輝度の測定は、コニカミノルタセンシング社製分光放射輝度計CS−1000を用いて、2℃視野角正面輝度を、発光面からの法線に分光放射輝度計の光軸が一致するようにして、可視光波長430〜480nmの範囲を測定し、積分強度をとった。
【0306】
〔有機EL表示装置1〜23の作製〕
上記作製した有機EL表示素子に、前記作製した偏光子及びλ/4位相差フィルムを搭載した各円偏光板1〜23を、図6に記載の構成となるように、対向して接着層6aを介して固定化することにより、有機EL表示装置1〜23を作製した。
【0307】
《有機EL表示装置の評価》
〔視認性の評価〕
(視認性1の評価:常温常湿環境下での視認性)
上記作製した各有機EL表示装置を、23℃、相対湿度55%の環境下で48時間保管した後、電圧を印加せず、発光させない状態で、有機EL表示装置の最表面から5cm高い位置での照度が、500Lxとなる条件Aと、1000Lxとなる条件Bの2条件で、有機EL表示装置の画面の法線に対し40°の角度からのそれぞれの視認性を目視確認し、下記の基準に従って、常温常湿環境下での視認性を評価した。
【0308】
視認性評価は10名で行い、条件Aである500Lxにおける視認性と、条件Bである1000Lxにおける視認性とを比較し、条件B(1000Lx)における視認性が、条件A(500Lx)における視認性と同等であれば「3点」、わずかに視認性が低下していると判断した場合には「2点」、やや視認性が低下していると判断した場合には「1点」、明らかに視認性が低下していると判断した場合には「0点」とした。10人の評価点数の総点数を求め、下記の評価ランクに従って、常温常湿環境下における視認性を判定した。
【0309】
◎:合計点数が27点以上である
○:合計点数が24点以上、26点以下である
△:合計点数が18点以上、23点以下である
×:合計点数が17点以下である
(視認性2の評価:高温高湿環境下での視認性)
上記作製した各有機EL表示装置を、40℃、相対湿度80%の環境下で48時間保管した後、電圧を印加せず、発光させない状態で、有機EL表示装置の最表面から5cm高い位置での照度が、1000Lxとなる条件Cで、有機EL表示装置の画面の法線に対し40°の角度から視認性を目視確認し、下記の基準に従って、高温高湿環境下での視認性を評価した。
【0310】
視認性評価は10名で行い、上記視認性1の評価で行った条件B(1000Lx)における視認性と、高温高湿保存後の条件Cにおける視認性とを比較し、条件C(高温高湿処理後)における視認性が、条件B(常温常湿保存品)における視認性と同等であれば「3点」、わずかに視認性が低下していると判断した場合には「2点」、やや視認性が低下していると判断した場合には「1点」、明らかに視認性が低下していると判断した場合には「0点」とした。10人の評価点数の総点数を求め、下記の評価ランクに従って、高温高湿環境下における視認性を判定した。
【0311】
◎:合計点数が27点以上である
○:合計点数が24点以上、26点以下である
△:合計点数が18点以上、23点以下である
×:合計点数が17点以下である
〔耐久性の評価:環境温度変化に対する画像表示ムラ耐性〕
上記作製した各有機EL表示装置を、温度衝撃試験機を用い、乾燥環境下(相対湿度20%以下)で、20℃で10分間保管した後、50℃で10分間保管する強制劣化処理(これを1サイクルとする)を、1000サイクル行った後、温度衝撃試験機より取り出し、白色表示させた際の画像表示ムラを、上記強制劣化処理を行う前の白色表示画像と比較観察し、下記の基準に従って、耐久性を評価した。
【0312】
◎:強制劣化処理前後で、白色表示時の画像品質に全く差が認められない
○:強制劣化処理後で、わずかに画像表示ムラが観察される
△:強制劣化処理後で、やや画像表示ムラが観察される
×:強制劣化処理後で、明らかな画像表示ムラが観察され、一部で発光しない画素の発生が認められる
〔鹸化適性(密着性)の評価〕
下記の工程1〜6に従って偏光子及び偏光板を作製し、密着性(鹸化適性)の評価を行った。
【0313】
〈工程1〉
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを、製膜方向に一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム6g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。この偏光子は、吸収軸が製膜方向にあった。
【0314】
〈工程2〉
偏光板用保護フィルムとして、作製した各λ/4位相差フィルムを、50℃の4モル/Lの水酸化カリウム水溶液に60秒間浸漬し、ついで水洗、乾燥して偏光子と貼合する面を鹸化した。
【0315】
同様に、反対側の偏光板用保護フィルムとして、市販のセルロースエステルフィルム4UY(コニカミノルタオプト(株)製)の鹸化も行った。
【0316】
〈工程3〉
上記偏光子を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0317】
〈工程4〉
上記工程3で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程2で鹸化処理した各λ/4位相差フィルムの面上にのせ、更に反対側の偏光板用保護フィルムとして、工程2で処理した市販のセルロースエステルフィルム4UYの鹸化した面が偏光子に接するように積層し、偏光板を作製した。
【0318】
〈工程5〉
上記工程4でフィルムと偏光子を積層した偏光板を、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0319】
〈工程6〉
上記工程5で貼合した各偏光板を、各々5cm×7cmのサイズに切断し、得られた偏光板片の長辺側の両端をクリップでしっかりと挟み、60℃のオーブン中にクリップごと偏光板片を垂直に吊るして乾燥した。
【0320】
5分後、オーブンから取り出して23℃、55%RH環境下で十分に調湿した後、偏光板の端部から手で評価フィルムを偏光子から剥離する試験を行うことにより、以下の基準で、偏光子との密着性を評価し、これを鹸化適性の尺度とした。
【0321】
◎:力を入れて剥がそうとしても、全く剥がれない
○:力を入れると、端部から周囲1mm未満まで剥がれる
△:力を入れると、端部から周囲1mm以上、3mm未満まで剥がれる
×:端部から3mmより広い範囲で剥離が発生する
〔膜厚の評価〕
上記作製したλ/4位相差フィルムについて、Ro(550)=138の時の膜厚を測定し、下記基準に従って評価した。膜厚の測定には、Nikon社製の光学顕微鏡、MS−5Cを用いた。
【0322】
○:λ/4位相差フィルムの膜厚が、50nm以上、70nm未満である
△:λ/4位相差フィルムの膜厚が、70nm以上、90nm未満である
×:λ/4位相差フィルムの膜厚が、90nm以上である
以上により、得られた結果を表4に示す。
【表4】

表4に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなるλ/4位相差フィルムを備えた有機EL表示装置は、比較例に対し、薄膜で、常温常湿あるいは高温高湿環境下で保存した後の視認性、耐久性に優れ、鹸化適性(密着性)が向上していることが分かる。
【符号の説明】
【0323】
4 長尺フィルム原反
5 長尺延伸フィルム
6 斜め延伸テンター
7−1 外側のフィルム把持手段の軌跡
7−2 内側のフィルム把持手段の軌跡
8−1 外側のフィルム把持開始点
8−2 内側のフィルム把持開始点
9−1 外側のフィルム把持終了点
9−2 内側のフィルム把持終了点
10−1 外側斜め延伸開始点
10−2 内側斜め延伸開始点
11−1 外側斜め延伸終了点
11−2 内側斜め延伸終了点
12−1 テンター入口側のガイドロール
12−2 テンター出口側のガイドロール
13 フィルムの延伸方向
14−1 斜め延伸前のフィルムの搬送方向
14−2 斜め延伸後のフィルムの搬送方向
Wo 斜め延伸前のフィルム幅手長さ
W 斜め延伸後のフィルム幅手長さ
101、1a 基板、透明基板
102、2a 金属電極
103 有機発光層
3aR 赤色発色層
3aG 緑色発色層
3aB 青色発色層
104、4a 透明電極
105、5a 絶縁層
106 封止層
6a 接着層
107 フィルム
108、7a λ/4位相差フィルム
109、8a 偏光子
110、9a 保護フィルム
111 表面反射防止層
10a、C 円偏光板
11a、B 有機EL表示素子
16 フィルム繰り出し装置
17 搬送方向変更装置
18 巻き取り装置
19 製膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側から、保護フィルム、偏光子、λ/4位相差フィルム及び有機エレクトロルミネッセンス素子をこの順で有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
該λ/4位相差フィルムが、
550nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(550)が、130nm以上、160nm以下であり、
650nmの光で測定した面内方向のリターデーションRo(650)が、155nm以上、175nm以下であり、
該Ro(650)に対する該Ro(550)の比(Ro(550)/Ro(650))の値が、0.80以上、0.90以下であり、
少なくともセルロースアシレートとして、下記式(1)及び式(2)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートAと、下記式(3)及び式(4)で規定する条件を同時に満たすセルロースアシレートBとを含有し、
該セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値が1.0以上、19.0以下であること
を特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
式(1) 2.5≦Z<3.0
式(2) 2.5≦X≦3.0
式(3) 2.0≦Z<2.5
式(4) 0.5≦Y≦1.5
(式中、Z、Zは各々セルロースアシレートの総アシル基置換度を表し、X、Yは各々セルロースアシレートにおける炭素数が3以上のアシル基の置換度を表す。)
【請求項2】
前記セルロースアシレートAに対するセルロースアシレートBの質量比(セルロースアシレートB/セルロースアシレートA)の値が、2.0以上、9.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記セルロースアシレートAにおけるZが下式(5)で規定する条件を満たし、かつXが下式(6)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
式(5) 2.7≦Z≦2.9
式(6) 2.7≦X≦2.9
【請求項4】
前記セルロースアシレートBにおけるZが下式(7)で規定する条件を満たし、かつYが下式(8)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
式(7) 2.3≦Z<2.5
式(8) 0.8≦Y≦1.2

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−101229(P2013−101229A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245020(P2011−245020)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】