説明

有機エレクトロルミネッセンス装置、その駆動方法及び電子機器

【課題】順バイアス及び逆バイアス電圧の両方の電圧によって動作する発光素子に好適な発光駆動方法及びこれを用いた有機EL装置を提供する
【解決手段】本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、第1の電極と、第2の電極と、上記第1の電極と上記第2の電極との間に位置する発光層と、を有し、上記第1の電極から上記第2の電極へ第1の極性の電荷が移動することで上記発光層が第1の輝度で発光し、上記第2の電極から上記第1の電極へ上記第1の極性と同一の極性の電荷が移動することで上記発光層が上記第1の輝度より大きい第2の輝度で発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置)は、陽極と陰極間に有機発光材料を薄膜形成した発光素子を含む構造となっている。両電極から注入された電子と正孔とが発光層内で再結合し、励起したエネルギが発光として放出される。この発光素子の発光寿命及び輝度の低下の原因の一つとして内部に存在する不純物イオンの拡散や蓄積がある。
【0003】
そこで、例えば、特開平9−293588号公報、特開2004−114506号公報に開示されているように、有機EL装置を交流駆動することが試みられている。交流駆動することで有機化合物層に極性の異なる電圧が交互に印加され、発光素子内部における電荷及び不純物イオンの蓄積や不純物イオンにより発生した内部電界が緩和されるために、発光寿命及び輝度の低下を抑えることができるというものである。
【特許文献1】特開平9−293588号公報
【特許文献2】特開2004−114506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、交流駆動により有機EL装置を駆動する場合において、発光素子は、通常、陽極、発光層及び陰極からなる一方向性の積層構造を有しているため、陽極側から正の電圧が印加され、陰極側に負の電圧が印加されたとき、すなわち、順バイアス時のみ発光が得られる。従って、交流駆動を用いて逆バイアスが印加されたときには発光素子は発光しないので、実効的な発光時間が短くなるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、出願人は、後述するように、陽極層と発光層との間及び発光層と陰極層との間にそれぞれバッファ層を介在させた有機EL構造を採用することで順バイアス及び逆バイアスのいずれのバイアスにおいても常に発光の得られる発光素子を開発した。
【0006】
しかしながら、このような発光素子の陽極を透明電極とし、反射膜を兼ねる材料で陰極を構成した場合、積層界面の仕事関数が異なるため、順バイアス電圧印加時と逆バイアス印加時とでは発光素子の輝度特性が異なる。
【0007】
よって、本発明は、順バイアス及び逆バイアス電圧の両方の電圧によって動作する発光素子に好適な発光駆動方法及びこれを用いた有機EL装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置する発光層と、を有し、前記第1の電極から前記第2の電極へ第1の極性の電荷が移動することで前記発光層が第1の輝度で発光し、前記第2の電極から前記第1の電極へ前記第1の極性と同一の極性の電荷が移動することで前記発光層が前記第1の輝度より大きい第2の輝度で発光することを特徴とする。
このように順バイアスと逆バイアスといずれにおいても発光することで、たとえば順バイアスのみの発光と比べ、1フレームを構成する複数のサブフレームの選択時間を長く設定することが可能となる。
【0009】
また、前記第1の輝度で発光する時間を第1の期間、前記第2の輝度で発光する時間を第2の期間とし、前記第1の期間と前記第2の期間との合計を1フレームとするとき、前記1フレームにおいて、前記第1の期間における前記発光層の発光の有無と、前記第2の期間における前記発光層の発光の有無との組み合わせにより、少なくとも4階調の輝度を表現することが好ましい。この1フレームが、複数の第1の期間と、複数の第2の期間との合計からなる、4階調以上の複数階調をもつよう設定されていてもよい。いずれにせよ、順バイアスのみの駆動と比較すると、サブフレームの選択時間は長くなる。
【0010】
また、前記第2の輝度が前記第1の輝度の2倍であることが好ましい。これによれば、発光階調における発光輝度の変化が線形に近づくため、階調表現が向上する。
【0011】
また、前記第1の電極に接続するトランジスタと、前記トランジスタのゲート電極に電圧を印加する走査線と、を有し、前記走査線が前記ゲート電極に正の電圧と負の電圧を交互に印加するものであってもよい。これによれば、第1の電極を陰極とした有機エレクトロルミネッセンス装置を適用することができる。この場合、有機エレクトロルミネッセンス装置はトップエミッション型でもボトムエミッション型でもいずれの形態でもよい。
【0012】
また、前記第2の電極に接続するトランジスタと、前記トランジスタのゲート電極に電位を与える走査線と、を有し、前記走査線が前記ゲート電極に正の電圧と負の電圧を交互に印加するものであってもよい。これによれば、第2の電極を陰極とした有機エレクトロルミネッセンス装置を適用することができる。この場合、有機エレクトロルミネッセンス装置はトップエミッション型でもボトムエミッション型でもいずれの形態でもよい。
【0013】
また、前記正の電圧の印加時間と、前記正の電圧の直前または直後に印加された前記負の電圧の印加時間とが等しいものであってもよい。
【0014】
また、前記第1の電極と前記発光層との間に第1のバッファ層が形成されるものであってもよい。
【0015】
また、前記第2の電極と前記発光層との間に第2のバッファ層が形成されるものであってもよい。
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法は、第1の電極から、前記第1の電極と対向する第2の電極へ電荷を移動させる第1の期間において、前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置する発光層を第1の輝度で発光させ、第1の階調を表現し、前記第2の電極から前記第1の電極へ前記電荷を移動させる第2の期間において、前記発光層を前記第1の輝度とは異なる第2の輝度で発光させて第2の階調を表現することを特徴とする。
【0017】
また、前記第1の期間と前記第2の期間の合計を1フレームとしたとき、前記1フレーム内において4階調を示し、前記1フレームを複数分割して時間軸上に順次に配置してなるサブフレーム列が1:1:4:4の時間比率であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
(有機EL装置)
まず、本発明が適用されるの有機EL装置について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の有機EL装置を示す模式図であり、同図に示されるように、有機EL装置1はスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス方式のものであり、概略、発光部100、データドライバ200、スキャンドライバ300、電源制御回路400、制御回路500等を備えている。
【0021】
発光部100は複数の走査線101と、各走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とからなる配線構成を有する。走査線101と信号線102との各交点付近に発光素子を含む画素回路が形成され、当該画素回路がマトリクス状に配置されている。
【0022】
データドライバ200は、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチ等を備え、各信号線102にデータ信号を供給する。
【0023】
スキャンドライバ300は、シフトレジスタ及びレベルシフタ等を備え、各走査線101に走査信号を供給する。
【0024】
電源制御回路400は、正負のパルス電圧を発生し、各電源線103に供給する。
【0025】
制御回路500は、データドライバの信号供給と電源制御回路400のパルス電圧供給との同期を図っている。
【0026】
(発光素子)
図2は、発光素子124の構成例を示している。この発光素子124は、順バイアス電圧及び逆バイアス電圧の両電圧に対して発光する特性を持っている。
【0027】
発光素子124は、透明な基板124a上に、第1の電極(陽極)124bと、第1のバッファ層124cと、有機半導体材料を含む発光層124dと、第2のバッファ層124e、第2の電極(陰極)124fとが順に形成されている。発光素子124は、順バイアス電圧の印加時には、第1のバッファ層124cから注入された正孔と、第2のバッファ層124eから注入された電子とが発光層124dで結合することにより、所定色で発光する。また、逆バイアス電圧の印加時には、第1のバッファ層124cから注入された電子と、第2のバッファ層124eから注入された正孔とが発光層124dで結合することにより、所定色で発光する。
【0028】
第1の電極124bは、本例ではボトムエミッション型であることから透明導電材料によって形成されている。透明導電材料としてはITOが好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide :IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いるものとする。また、トップエミッション型である場合には、特に光透過性を備えた材料を採用する必要はなく、例えばITOの下層側にAl等を設けて反射層として用いることもできる。
【0029】
第1のバッファ層124cの形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水やイソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させたものが好適に用いられる。
【0030】
発光層124dの形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0031】
なお、「高分子」とは、分子量が数百程度の所謂「低分子」よりも分子量の大きい重合体を意味し、上述の高分子材料には、一般に高分子と呼ばれる分子量10000以上の重合体の他に、分子量が10000以下のオリゴマーと呼ばれる低重合体が含まれる。
【0032】
第2のバッファ層124eの構成材料としては、第1のバッファ層70と同様、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水やイソプロピルアルコール等の極性溶媒に溶解させたものが好適に用いられる。
【0033】
第2の電極124fは化学的に安定な導電性材料であれば特に限定されることなく、任意のもの、例えば金属や合金などが使用可能である。具体的にはAu(金)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)などが好適に用いられる。また、特にトップエミッション型の有機EL装置とする場合には、十分に薄い第2の電極124fを形成してこれに透光性を持たせることが可能であり、あるいは透光性を有するITO等の導電性材料を用いて第2の電極124fを形成することも可能である。
【0034】
このような構成からなる発光素子124にあっては、第1のバッファ層及び第2のバッファ層によって、極性の異なる電圧が交互に印加された場合のいずれにおいても常に発光が得られる。したがって、電荷の蓄積による寿命及び発光の低下を抑制し、実効的な発光時間を短くすることなく表示を行うことが可能となる。
【0035】
図3は、上述した順逆のバイアス電圧に発光する双方向性の発光素子124の発光特性例を説明する図である。同図(A)は、発光素子124のバイアス電圧対発光輝度の特性例を示すグラフである。同図(B)は、発光素子124に印加されるバイアス電圧の例を示しており、正負のパルス電圧が交互に発生している。
【0036】
図3(A)に示されるように、発光素子124の両電極の材料が異なる等の場合には、仕事関数などに起因して順バイアス時と逆バイアス時とでは輝度特性が異なる。同じ電圧レベル(絶対値)を印加した場合であっても、逆バイアス時の方が輝度特性が相対的に悪い(レベルが低い)。
【0037】
因みに、図4は、一方向性の発光素子のバイアス電圧対輝度特性(同図(A))とその直流バイアス電圧(同図(B))の例を示している。
【0038】
(双方向性有機EL素子の駆動方法)
以下、図5乃至図9を参照して、双方向性発光素子の駆動方法について説明する。
【0039】
本発明の実施例では、上記双方向性発光素子の特性(図3(A))を利用して時分割階調レベル変調によって双方向性発光素子の発光レベル及び発光時間を制御して視覚的な輝度を設定する。
【0040】
図5は、時分割階調レベル変調を説明する説明図である。発光素子への印加電圧と駆動TFTのオン時間によって視覚的な輝度(積分値)を設定する。
【0041】
まず、同図(A)に示すように、発光素子124に印加されるバイアス電圧(電源線電圧)をV1(>0)及びV2(<0)の2つのレベルとする。
【0042】
図3(A)に示すように、バイアス電圧V2による輝度を「L0」としたとき、バイアス電圧V1による輝度が「2L0」となるように正負のパルス電圧のレベル(ピーク値)が選定される。また、パルス電圧列は、後述の最小サブフレーム周期のパルス信号であり、サブフレームに同期するように制御回路500等によって調整されている。
【0043】
サブレームは、画素表示によって1画面を形成するのに要する期間tである1フレームをn分割した期間である。後述するように、1画素の輝度を4ビットデータで表示している場合、通常、時間比率を1:2:4:8とした4つのサブレームが1フレームに割り当てられる。実施例では、時間比率を1:1:4:4とした各サブレームが割り当てられる。ここで、時間比率が1であるサブフレーム最小サブフレームである。
【0044】
図5(B)乃至同(E)は、発光素子124を駆動する駆動用TFT123のゲートに印加されるサブレームにおける信号電圧の例であり、駆動用TFTのスイッチング動作に対応している。図5(B)に示す例では、駆動用TFT123がサブレーム全部でオフであるので発光素子124の輝度は「0」である。図5(C)に示す例では、駆動用TFT123がサブフレームの前半でオンであり、この期間のバイアス電圧はV2であるので有機EL素子124の輝度は「L0」である。図5(D)に示す例では、駆動用TFT123がサブフレームの後半でオンであり、この期間のバイアス電圧はV1であるので有機EL素子124の輝度は「2L0」である。図5(E)に示す例では、駆動用TFT123がサブフレームの全部でオンであり、この期間の前半のバイアス電圧はV2、後半のバイアス電圧はV1であるので有機EL素子124の輝度は合わせて「3L0」である。
【0045】
このように、逆バイアスで輝度L0を順バイアスで輝度2L0を得ることにより、発光素子の逆バイアス時と順バイアス時、それぞれにおける発光あるいは非発光を組み合わせることにより、2ビット(4段階)の階調表示をすることが可能となる。
【0046】
因みに、図6に示すように、発光素子124の電源が直流バイアス電圧V1のみであるの場合(同図(A))、同図(B)及び同図(C)に示すように、得られる輝度レベルは、輝度「0」と輝度「4L0」である。
【0047】
図7は、1画素が4ビットで表される輝度データに対する階調表現に本発明を適用した例を示している。1フレームtに第1〜第4のサブフレームが割り当てられている。各サブフレームの時間割り当ては、1:1:4:4の比率となっている。
【0048】
図7(A)は、バイアス電圧の例を示している。前述したように、電圧V1では発光素子の輝度が2L0、電圧V2では同輝度がL0である。図示のバイアス電圧の変化例では、視覚的な輝度(輝度×時間)は、第1サブフレームではL00、第2サブフレームでは2L00、第3サブフレームでは4L00、第4サブフレームでは8L00となる。123の動作例を示している。この例では、第2及び4サブフレームでオンとなっているので、輝度は2L0と8L0との和である10L0である。
【0049】
図8は、バイアス電圧V1のみを用いる比較例とバイアス電圧V1及びV2を用いる実施例とを1フレーム(4ビット、16階調)で比較した説明図である。
【0050】
図8(A)に示すように、バイアス電圧がV1のみの例では、第1〜第4サブフレームには、1フレーム時間tが1:2:4:8の比率で割り当てられる。第1〜第4サブフレームの期間は、それぞれ、(1/15)t、(2/15)t、(4/15)t、(8/15)tである。バイアス電圧V1による輝度が2L0とすると、第1〜第4サブフレームの輝度はそれぞれ(1/15)t・2L0、(2/15)t・2L0、(4/15)t・2L0、(8/15)t・2L0であるから、(2/15)L0t、(4/15)L0t、(8/15)L0t、(16/15)L0tと表される。
【0051】
図8(B)に示すように、バイアス電圧がV1とV2のパルス電圧の例では、第1〜第4サブフレームには、1フレーム時間tが1:1:4:4の比率で割り当てられる。第1〜第4サブフレームの期間は、それぞれ、(1/10)t、(1/10)t、(4/10)t、(4/10)tである。バイアス電圧V1、V2による輝度が図7(A)に示すように、2L0、L0とすると、第1〜第4サブフレームの輝度はそれぞれ(1/10)t・L0、(1/10)t・2L0、(4/10)t・2L0、(4/10)t・2L0であるから、それぞれ(1/10)L0t、(1/5)L0t、(2/5)L0t、(4/5)L0tと表される。
【0052】
ここで、第1サブフレーム同士を比較すると、比較例では第1サブフレームの期間はt/15であるのに対し、実施例ではt/10である。すなわち、1.5倍の選択時間を当てることができる。これにより、画面表示器の高精細化(高画素数)に伴う選択時間の不足を低減することが可能となって具合がよい。尤も、実施例の輝度は比較例((2/15)L0t)に比べて25%減少する((1/10)L0t)が、これは発光素子124への印加電圧を増加することにより、比較例と同輝度を確保可能である。
【0053】
なお、本実施例は、走査線の順次選択方式は勿論のこと非順次選択方式にも使用することができる。図9は、非順次選択方式におけるフレームの選択のタイミングチャートの例を示している。上述した実施例と同様に第1サブフレームの選択に1.5倍の選択時間を割り当てることができる。
【0054】
また、実施例では、画素データが4ビット(16階調)の例で説明したが、画素データが8ビット(256階調)などの場合にも適用可能である。
【0055】
(電子機器)
図10は、電子機器の具体例を説明する図である。図10(A)は携帯電話への適用例であり、当該携帯電話1000は上述した有機EL装置1を用いて構成される表示部1001を備えている。図10(B)はビデオカメラへの適用例であり、当該ビデオカメラ1100は上述した有機EL装置1を用いて構成される表示部1101を備えている。図10(C)はテレビジョンへの適用例であり、当該テレビジョン1200は上述した有機EL装置1を用いて構成される表示部1201備えている。なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置に対しても同様に本発明に係る有機EL装置を適用し得る。
【0056】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、交流駆動によって有機化合物層に極性の異なる電圧が交互に印加されることにより、素子の内部における電荷及び不純物イオンの蓄積や、不純物イオンにより発生した内部電界が緩和されるため、発光寿命及び輝度の低下を抑制することが可能となる。
【0057】
また、逆バイアスで輝度L0を、順バイアスで輝度2L0を得ることにより、逆バイアス時と順バイアス時、それぞれの点灯(発光)、非点灯の組み合わせにより、2ビット(4階調)の階調表示をすることが可能となる。
【0058】
時分割方式との組み合わせにより、最小サブフレームの選択時間を少なくとも1.5倍にすることが可能となる。これにより、低輝度の階調を出すために1.5倍の選択時間を当てることが可能となる。画面の高精細化に伴う選択時間不足を低減することも可能となる。
【0059】
時分割階調方式において、走査線の非順次選択方式と組み合わせることが可能であり、同様に最小サブレームの選択時間を少なくとも、1.5倍にすることが可能となる。
【0060】
尚、本発明の有機EL装置の駆動方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】有機EL装置の全体構成を説明する説明図である。
【図2】双方向性発光素子の構造例を説明する説明図である。
【図3】双方向性発光素子のバイアス電圧対輝度特性を説明するグラフである。
【図4】一方向性発光素子のバイアス電圧対輝度特性を説明するグラフである。
【図5】正負のパルス電圧による時間階調変調の例を説明する説明図である。
【図6】直流バイアス電源の階調変調の例を説明する説明図である。
【図7】時間階調レベル変調の例を説明する説明図である。
【図8】実施例と比較例とにおける第1サブフレームの割り当て時間を比較する説明図である。
【図9】走査線の非順次選択への適用例を説明する説明図である。
【図10】本発明に係る有機EL装置を表示部に使用した電子機器の例を接類する説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 有機EL装置、100 発光部、200 データドライバ、300 スキャンドライバ、400 電源制御回路、500 制御回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置する発光層と、を有し、
前記第1の電極から前記第2の電極へ第1の極性の電荷が移動することで前記発光層が第1の輝度で発光し、
前記第2の電極から前記第1の電極へ前記第1の極性と同一の極性の電荷が移動することで前記発光層が前記第1の輝度より大きい第2の輝度で発光することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の輝度で発光する時間を第1の期間、前記第2の輝度で発光する時間を第2の期間とし、前記第1の期間と前記第2の期間との合計を1フレームとするとき、
前記1フレームにおいて、前記第1の期間における前記発光層の発光の有無と、前記第2の期間における前記発光層の発光の有無との組み合わせにより、少なくとも4階調の輝度を表現することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2の輝度が前記第1の輝度の2倍であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1の電極に接続するトランジスタと、
前記トランジスタのゲート電極に電圧を印加する走査線と、を有し、
前記走査線が前記ゲート電極に正の電圧と負の電圧を交互に印加することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第2の電極に接続するトランジスタと、
前記トランジスタのゲート電極に電位を与える走査線と、を有し、
前記走査線が前記ゲート電極に正の電圧と負の電圧を交互に印加することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記正の電圧の印加時間と、前記正の電圧の直前または直後に印加された前記負の電圧の印加時間とが等しいことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第1の電極と前記発光層との間に第1のバッファ層が形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記第2の電極と前記発光層との間に第2のバッファ層が形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
第1の電極から、前記第1の電極と対向する第2の電極へ電荷を移動させる第1の期間において、前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置する発光層を第1の輝度で発光させて第1の階調を表現し、
前記第2の電極から前記第1の電極へ前記電荷を移動させる第2の期間において、前記発光層を前記第1の輝度とは異なる第2の輝度で発光させて第2の階調を表現することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1の期間と前記第2の期間の合計を1フレームとしたとき、
前記1フレーム内において4階調を示し、
前記1フレームを複数分割して時間軸上に順次に配置してなるサブフレーム列が1:1:4:4の時間比率であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置の駆動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−142214(P2007−142214A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334804(P2005−334804)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】