説明

有機エレクトロルミネッセント素子及び有機エレクトロルミネッセント表示装置

【課題】少なくとも2つの発光ユニットを備えた有機エレクトロルミネッセント素子において、駆動電圧を低くし、発光効率を高める。
【解決手段】陰極と、陽極と、陰極及び陽極の間に配置される中間ユニット7と、陰極及び中間ユニット7の間に配置される第1の発光ユニット5と、陽極及び中間ユニット7の間に配置される第2の発光ユニット6とを備え、中間ユニット7は、陰極側に隣接する隣接層から電子を引き抜くための電子引き抜き層1と、電子引き抜き層1の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニット2とを有し、電子注入・輸送ユニット2は、陰極側に設けられる電子注入層3と、陽極側に設けられる電子輸送層4とから構成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント素子及び有機エレクトロルミネッセント表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセント素子(有機EL素子)は、ディスプレイや照明への応用の観点から活発に開発が行われている。有機EL素子の駆動原理は、以下のようなものである。すなわち、陽極及び陰極からそれぞれホールと電子が注入され、これらが有機薄膜中を輸送され、発光層において再結合し励起状態が生じ、この励起状態から発光が得られる。発光効率を高めるためには、効率良くホール及び電子を注入させ、有機薄膜中を輸送させることが必要である。しかしながら、有機EL素子内のキャリアの移動は、電極と有機薄膜間のエネルギー障壁や、有機薄膜内のキャリア移動度の低さにより制限を受けるため、発光効率の向上にも限界がある。
【0003】
一方、発光効率を向上させる他の方法として、複数の発光層を積層する方法が挙げられる。例えば、補色関係にあるオレンジ色発光層と青色発光層とを直接接するように積層することにより、1層の場合より高い発光効率を得ることができる場合がある。例えば、青色発光層の発光効率が10cd/Aであり、オレンジ色発光層の発光効率が8cd/Aである場合に、これらを積層して白色発光素子とした場合に、15cd/Aの発光効率が得られている。
【0004】
しかしながら、発光層を3層以上それぞれ直接接するように積層した場合には、発光効率の向上が得られない。これは、電子とホールの再結合領域の拡がりに限度があり、再結合領域が3層以上にまたがらないからである。
【0005】
非特許文献1においては、V、ITOなどの無機半導体層を介して2つの発光ユニットを積層し、無機半導体層の内部でキャリアを発生させて、2つの発光層にキャリアを供給する方法が報告されている。この方法は、無機半導体層中に含まれるキャリアを利用する方法であり、キャリアを発生させるためには高い電圧を印加しなければならない。このため、駆動電圧が高くなり、携帯機器などの低電圧駆動には適用することができないものであった。
【0006】
特許文献1〜4においても、電荷発生層などを介して複数の発光ユニットを積層した有機EL素子が提案されているが、高い電圧で駆動することが必要であり、高い発光効率が得られるものではなかった。
【特許文献1】特開2003−272860号公報
【特許文献2】特開2003−264085号公報
【特許文献3】特開平11−329748号公報
【特許文献4】特開2004−39617号公報
【非特許文献1】2004年春季第51回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集No.3 1464頁 講演番号28p−ZQ−14「二重絶縁層をもつキャリア再結合型有機EL素子」
【非特許文献2】SYNTHESIS,April,1994,378〜380頁“Improved Synthesis of 1,4,5,8,9,12-Hexaazatriphenylenehexacarboxylic Acid”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも2つの発光ユニットを備えた有機EL素子において、駆動電圧を低くすることができ、かつ発光効率を高くすることができる有機EL素子及びそれを用いた有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機EL素子は、陰極と、陽極と、陰極及び陽極の間に配置される中間ユニットと、陰極及び中間ユニットの間に配置される第1の発光ユニットと、陽極及び中間ユニットの間に配置される第2の発光ユニットとを備え、
中間ユニットは、陰極側に隣接する隣接層から電子を引き抜くための電子引き抜き層と、電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニットとを有し、
各電子注入・輸送ユニットは、陰極側に設けられる電子注入層と、陽極側に設けられる電子輸送層とから構成されており、
電子引き抜き層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│と、隣接層の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│が、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、
電子注入層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(C)│または仕事関数(WF)の絶対値│WF(C)│は、│LUMO(A)│より小さく、
電子輸送層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(D)│は、│LUMO(C)│または│WF(C)│より小さいことを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、第1の発光ユニットと第2の発光ユニットの間に、中間ユニットが設けられ、中間ユニットに、電子引き抜き層が設けられている。電子引き抜き層の陰極側には、隣接層が設けられている。また、電子引き抜き層の陽極側には電子注入層が設けられている。隣接層のHOMOのエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│と、電子引き抜き層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│とは、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にある。すなわち、電子引き抜き層のLUMOのエネルギーレベルは、隣接層のHOMOのエネルギーレベルに近い値となっている。このため、電子引き抜き層は隣接層から電子を引き抜くことができる。この隣接層からの電子の引き抜きにより、隣接層にはホールが発生する。隣接層が第1の発光ユニット内に設けられている場合には、第1の発光ユニットにホールが発生する。また、隣接層が電子引き抜き層と第1の発光ユニットの間に設けられている場合、すなわち中間ユニット内に設けられている場合には、隣接層に発生したホールが、第1の発光ユニットに供給される。第1の発光ユニットに供給されたホールは、陰極からの電子と再結合し、これによって第1の発光ユニットが発光する。
【0010】
一方、電子引き抜き層に引き抜かれた電子は、隣接する複数の電子注入・輸送ユニットに移動し、複数の電子注入・輸送ユニットから第2の発光ユニットに供給され、陽極から供給されたホールと再結合し、これによって第2の発光ユニットが発光する。
【0011】
従って、本発明によれば、第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットのそれぞれにおいて再結合領域を形成することができ、これによって第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットをそれぞれ別個に発光させることができる。
【0012】
本発明において、中間ユニットは、電子引き抜き層と、電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニットとを有しており、この電子注入・輸送ユニットは、陰極側に設けられる電子注入層と、陽極側に設けられる電子輸送層とから構成されている。電子注入層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値│LUMO(C)│またはWFの絶対値│WF(C)│は、電子引き抜き層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│より小さく、また電子輸送層のLUMOのエネルギーレベルの絶対値│LUMO(D)│は、│LUMO(C)│または│WF(C)│より小さくなるように設定されている。従って、電子引き抜き層より引き抜かれた電子は、電子注入・輸送ユニットの電子注入層に移動し、さらに電子輸送層に移動する。
【0013】
本発明においては、電子引き抜き層の陽極側に複数の電子注入・輸送ユニットを設けている。後述するように、電子引き抜き層の陽極側に電子注入・輸送ユニットを1つのみ設ける場合に比べ、複数の電子注入・輸送ユニットを設けることにより、電圧が印加されたときのエネルギーバンドを大きく変化させることができ、電子注入・輸送ユニット全体にかかる電圧を低下させることができる。従って、電子引き抜き層に隣接する電子注入・輸送ユニットに移動した電子は、その電子輸送層からさらに次の電子注入・輸送ユニットに送られ、その電子注入・輸送ユニットの電子注入層及び電子輸送層を通り、第2の発光ユニットに供給される。
【0014】
従って、本発明においては、電子注入・輸送ユニットが1つだけ設けられている場合に比べ、駆動電圧を大幅に低減することができ、発光効率を高めることができる。
【0015】
本発明における第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットは、それぞれ単一の発光層から形成されていてもよいし、複数の発光層を直接接するように積層して構成されていてもよい。複数の発光層を積層したものとしては、例えば、オレンジ色発光層と青色発光層を積層し、白色発光とした発光ユニットが挙げられる。
【0016】
本発明においては、第1の発光ユニットと第2の発光ユニットの間に中間ユニットを設けることにより、第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットのそれぞれにおいて再結合をさせており、このため高い発光効率を得ることができる。
【0017】
本発明の中間ユニットにおける電子輸送層は、電子輸送性材料から形成されていることが好ましく、特にフェナントロリン誘導体から形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の中間ユニットにおける電子注入層は、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、並びにそれらの酸化物、ハロゲン化物、及び窒化物からなるグループより選ばれる少なくとも1種から形成されることができる。
【0019】
電子注入層が、金属の酸化物、ハロゲン化物及び窒化物などから形成される場合、その金属の仕事関数の絶対値│WF(C)│が上記の範囲内にあればよい。
【0020】
本発明において、隣接層は、ホール輸送性材料から形成されていることが好ましく、特に、3級アリールアミン系材料から形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明において、隣接層は第1の発光ユニット内に設けられていてもよい。特に、第1の発光ユニット内において中間ユニット側に位置する発光層のホスト材料が隣接層として適するホール輸送性材料である場合には、第1の発光ユニット内の中間ユニット側の発光層を隣接層とすることができる。
【0022】
また、本発明において、隣接層は中間ユニット内に設けられていてもよい。第1の発光ユニット内の中間ユニット側の発光層のホスト材料が隣接層として適するホール輸送性材料でない場合には、隣接層として機能させることができない場合があるので、このような場合には、中間ユニット内または発光ユニット内に隣接層を設けることができる。このような場合、隣接層は、電子引き抜き層と発光層の間に配置される。
【0023】
本発明において、電子引き抜き層は、LUMOのエネルギーレベルの絶対値が、隣接層のHOMOのエネルギーレベルの絶対値より1.5eV小さいものであれば特に制限なく用いることができる。具体例としては、例えば、以下に示す構造式で表わされるピラジン誘導体から形成することができる。
【0024】
【化1】

【0025】
(ここで、Arはアリール基を示し、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基、ジアルキルアミン基、またはF、Cl、Br、IもしくはCNを示す。)
本発明において、さらに好ましくは、以下に示す構造式で表わされるヘキサアザトリフェニレン誘導体から電子引き抜き層を形成することができる。
【0026】
【化2】

【0027】
(ここで、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基、ジアルキルアミン基、またはF、Cl、Br、IもしくはCNを示す。)
本発明における第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットを構成する発光層は、ホスト材料とドーパント材料から形成されていることが好ましい。必要に応じてキャリア輸送性の第2のドーパント材料が含有されていてもよい。ドーパント材料としては、1重項発光材料であってもよいし、3重項発光材料(燐光発光材料)であってもよい。
【0028】
本発明の有機エレクトロルミネッセント表示装置は、陽極と陰極に挟まれた素子構造を有する有機エレクトロルミネッセント素子と、表示画素毎に対応した表示信号を有機エレクトロルミネッセント素子に供給するための能動素子が設けられたアクティブマトリックス駆動基板とを備え、有機エレクトロルミネッセント素子をアクティブマトリックス駆動基板の上に配置し、陰極及び陽極のうち基板側に設けられる電極を透明電極としたボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセント表示装置であって、有機エレクトロルミネッセント素子が、陰極と、陽極と、陰極及び陽極の間に配置される中間ユニットと、陰極及び中間ユニットの間に配置される第1の発光ユニットと、陽極及び中間ユニットの間に配置される第2の発光ユニットとを備え、中間ユニットは、陰極側に隣接する隣接層から電子を引き抜くための電子引き抜き層と、電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニットとを有し、各電子注入・輸送ユニットは、陰極側に設けられる電子注入層と、陽極側に設けられる電子輸送層とから構成されており、電子引き抜き層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│と、隣接層の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│が、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、電子注入層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(C)│または仕事関数(WF)の絶対値│WF(C)│は、│LUMO(A)│より小さく、電子輸送層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(D)│は、│LUMO(C)│または│WF(C)│より小さいことを特徴としている。
【0029】
上記本発明の有機エレクトロルミネッセント表示装置において、有機EL素子が白色発光素子である場合、有機EL素子と基板との間にカラーフィルターを配置してカラー表示装置とすることができる。
【0030】
本発明の他の局面に従う有機エレクトロルミネッセント表示装置は、陽極と陰極に挟まれた素子構造を有する有機エレクトロルミネッセント素子と、表示画素毎に対応した表示信号を有機エレクトロルミネッセント素子に供給するための能動素子が設けられたアクティブマトリックス駆動基板と、該アクティブマトリックス駆動基板と対向して設けられる透明な封止基板とを備え、有機エレクトロルミネッセント素子をアクティブマトリックス駆動基板と封止基板の間に配置し、陰極及び陽極のうち封止基板側に設けられる電極を透明電極としたトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセント表示装置であって、有機エレクトロルミネッセント素子が、陰極と、陽極と、陰極及び陽極の間に配置される中間ユニットと、陰極及び中間ユニットの間に配置される第1の発光ユニットと、陽極及び中間ユニットの間に配置される第2の発光ユニットとを備え、中間ユニットは、陰極側に隣接する隣接層から電子を引き抜くための電子引き抜き層と、電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニットとを有し、各電子注入・輸送ユニットは、陰極側に設けられる電子注入層と、陽極側に設けられる電子輸送層とから構成されており、電子引き抜き層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│と、隣接層の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│が、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、電子注入層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(C)│または仕事関数(WF)の絶対値│WF(C)│は、│LUMO(A)│より小さく記電子輸送層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(D)│は、│LUMO(C)│または│WF(C)│より小さいことを特徴としている。
【0031】
上記有機エレクトロルミネッセント表示装置において、有機EL素子が白色発光素子である場合、有機EL素子と封止基板との間にカラーフィルターを配置し、カラー表示装置とすることができる。
【0032】
本発明の有機EL表示装置は、上記本発明の有機EL素子を備えるものであるので、駆動電圧を低減させ、発光効率を高めて、消費電力を低減化させることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、少なくとも2つの発光ユニットを備えた有機EL素子において、駆動電圧を低減させることができ、かつ発光効率を高くすることができ、消費電力を低減化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
図1は、本発明に従う実施例の有機EL素子における中間ユニット及びこれに隣接する層のHOMO及びLUMOのエネルギーレベルを模式的に示す図である。本実施例において、中間ユニット7は、電子引き抜き層1と、これに隣接して設けられる2つの電子注入・輸送ユニット2から構成されており、各電子注入・輸送ユニット2は、陰極側に設けられる電子注入層3と、陽極側に設けられる電子輸送層4から構成されている。
【0036】
図1において、電子引き抜き層1の陰極側には、第1の発光ユニット5における隣接層が設けられている。また、陽極側の電子注入・輸送ユニット2の陽極側には、第2の発光ユニット6が設けられている。
【0037】
図1において、電子引き抜き層1のLUMOをLとして示しており、第1の発光ユニット5の隣接層のHOMOをHとして示している。また、電子注入・輸送ユニット2の電子注入層3のLUMOをL、電子輸送層4のLUMOをLとして示している。
【0038】
図4は、上記実施例の有機EL素子の素子構造を示す模式的断面図である。図4に示すように、陽極18の上に、ホール輸送層10が設けられ、ホール輸送層10の上に第2の発光ユニット6が設けられている。第2の発光ユニット6の上には、中間ユニット7が設けられている。中間ユニット7の上には、第1の発光ユニット5が設けられている。第1の発光ユニット5の上には、電子輸送層12及び陰極13が設けられている。
【0039】
中間ユニット7は、電子引き抜き層1と、電子引き抜き層1の陽極側に設けられる2つの電子注入・輸送ユニット2から構成されている。電子注入・輸送ユニット2は、陰極側に設けられる電子注入層3と、陽極側に設けられる電子輸送層4から構成されている。
【0040】
図1を参照して、本発明に従う有機EL素子においては、電子引き抜き層1のLと隣接層5のHのそれぞれの絶対値の差は1.5eV以下である。従って、電子引き抜き層1は、隣接層5から電子を容易に引き抜くことができる。電子引き抜き層1の陽極側に隣接する電子注入・輸送ユニット2の電子注入層3のLの絶対値は、電子引き抜き層1のLの絶対値より小さく、電子輸送層4のLの絶対値は、電子注入層3のLの絶対値より小さくなっている。従って、電子引き抜き層1によって引き抜かれた電子は、電子注入層3及び電子輸送層4を通り、次の電子注入・輸送ユニット2の電子注入層3に供給され、上記と同様にして電子輸送層4を通り、陽極側に隣接する第2の発光ユニット6に供給される。
【0041】
一方、電子が引き抜かれた隣接層5では、ホールが発生し、このホールは陰極側に供給される。
【0042】
本発明においては、以上のように中間ユニット7から電子を陽極側に供給するとともに、ホールを陰極側に供給することができる。従って、陽極側に位置する発光ユニットと陰極側に位置する発光ユニットをそれぞれ効率良く発光させることができる。
【0043】
図2は、本発明における有機EL素子に電圧が印加された場合の電子注入・輸送ユニットのエネルギーバンドの変化を説明するための図である。図2(a)においては、本発明に従い2つの電子注入・輸送ユニットが設けられている。図2(b)は、比較のためのものであり、電子注入・輸送ユニットが1つである場合の状態を示している。
【0044】
図2に示すように、2つの電子注入・輸送ユニットを設けることにより、電子注入・輸送ユニットが1つである場合に比べ、エネルギーバンドを大きく変化させることができ、電子注入・輸送ユニットにおける電圧を低下させることができる。
【0045】
また、電子輸送層4をフェナントロリン誘導体から形成し、電子注入層3をアルカリ金属またはアルカリ土類金属またはそれらの酸化物等から形成する場合、フェナントロリン誘導体と、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンとが錯体を形成することが考えられる。このような錯体は、1種の電荷移動型の錯体であると考えられ、このような錯体が形成されると、LUMOの値が、電子注入層3と電子輸送層4の界面において低下することが推察される。このようなLUMOの低下は、注入エネルギー障壁の低下をもたらすので、駆動電圧を低下させることができる。
【0046】
本発明に従う図2(a)の場合、1層目の電子注入層3と1層目の電子輸送層4との界面、1層目の電子輸送層4と2層目の電子注入層3との界面、2層目の電子注入層3と2層目の電子輸送層4との界面があり、合計3つの界面を有している。これに対し、図2(b)の比較の構造では、界面が1つしか形成されない。このようなことからも、複数の電子注入・輸送ユニットを設けることにより、駆動電圧を低下させることができるものと考えられる。
【0047】
図3は、3つの電子注入・輸送ユニットが設けられている場合を示しており、図3(a)に示すように、電子注入・輸送ユニットをさらに増やし3つ積層することにより、さらに駆動電圧を低下させることができる。
【0048】
(実施例1及び比較例1〜2)
表1に示す陽極、ホール輸送層、第2の白色発光層、中間ユニット、第1の白色発光層、電子輸送層、及び陰極を有する実施例1及び比較例1〜2の有機EL素子を作製した。中間ユニットの積層構造は表2に示す通りである。以下の各表において、( )内の数字は各層の厚み(nm)を示している。
【0049】
基板としては、ガラス基板の上に陽極としてのITO(インジウム錫酸化物)膜が形成されたガラス基板を用いた。ITO膜の上にフルオロカーボン(CFx)層を形成し、陽極とした。フルオロカーボン層はCHFガスのプラズマ重合により形成し、15秒間の形成時間の厚みとした。
【0050】
以上のように形成した陽極の上に、表1及び表2に示す各層を蒸着法により順次積層して形成した。なお、各表において%は特にことわらない限り重量%である。
【0051】
ホール輸送層は、NPB層の上にHAT−CN6層を積層することにより形成した。
【0052】
第1の白色発光層及び第2の白色発光層は、隣接層であるNPB層の上に発光層を積層して形成しており、該発光層は、NPBをホール輸送性のホスト材料として用い、TBADNを電子輸送性のホスト材料として用い、DBzRをオレンジ色発光ドーパント材料として用い、TBPを青色発光ドーパント材料として用いている。
【0053】
上記のように形成したホール輸送層の上に、上記の組成を有する第2の白色発光層を堆積して形成した。
【0054】
上記のようにして形成した第2の白色発光層の上に、表2に示す中間ユニットを形成した。
【0055】
実施例1においては、電子輸送層をBCPから形成し、電子注入層をLiOから形成しており、BCP/LiO/BCP/LiOの積層構造とすることにより、電子注入・輸送ユニットを2つ積層させている。
【0056】
BCPのLUMOは、−2.7eVであり、中間ユニットの電子輸送層の膜厚は、一般に1〜100nmの範囲が好ましい。
【0057】
電子注入層はLiOから形成されており、Liの仕事関数は−2.9eVである。電子注入層の膜厚は、一般に0.1〜10nmの範囲であることが好ましい。
【0058】
上記のようにして形成した電子注入・輸送ユニットの上に、電子引き抜き層が形成されている。電子引き抜き層は、HAT−CN6から形成されている。HAT−CN6のLUMOは−4.4eVであり、HOMOは−7.0eVである。電子引き抜き層の膜厚は、一般に1〜150nmの範囲が好ましい。
【0059】
比較例1の中間ユニットにおいては、表2に示すように、BCP/LiO/BCPの積層構造を形成した上に電子引き抜き層が形成されている。
【0060】
比較例2の中間ユニットにおいては、表2に示すように、BCP/LiO積層構造を形成した上に電子引き抜き層が形成されている。従って、電子注入・輸送ユニットが1つだけ形成されている。
【0061】
中間ユニットの上には、第2の白色発光層と同様の組成を有する第1の白色発光層が形成されている。従って、電子引き抜き層の隣接層は第1の白色発光層であり、そのHOMOはNPBのHOMOである−5.4eVである。
【0062】
第1の白色発光層の上には、BCPからなる電子輸送層が形成され、この電子輸送層の上にLiOとAl層の積層構造からなる陰極が形成されている。
【0063】
NPBは、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジンであり、以下の構造を有している。
【0064】
【化3】

【0065】
HAT−CN6は、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボンニトリルであり、以下の構造を有している。
【0066】
【化4】

【0067】
TBADNは、2−ターシャリー−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセンであり、以下の構造を有している。
【0068】
【化5】

【0069】
DBzRは、5,12−ビス{4−(6−メチルベンゾチアゾール−2−イル)フェニル}−6,11−ジフェニルナフタセンであり、以下の構造を有している。
【0070】
【化6】

【0071】
TBPは、2,5,8,11−テトラ−ターシャリー−ブチルペリレンであり、以下の構造を有している。
【0072】
【化7】

【0073】
BCPは、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンであり、以下の構造を有している。
【0074】
【化8】

【0075】
〔有機EL素子の評価〕
以上のようにして作製した各有機EL素子について、駆動電圧、色度、及び発光効率を測定した。測定結果を表2に併せて示す。なお、測定結果は、40mA/cmの駆動電流における値である。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
表2に示すように、本発明に従い電子注入・輸送ユニットを複数設けた実施例1においては、比較例1及び比較例2に比べ、駆動電圧が低くなっており、良好な発光効率が得られている。
【0079】
従って、本発明に従い電子注入・輸送ユニットを複数設けることにより、駆動電圧を低減することができ、高い発光効率を得ることができることがわかる。
【0080】
(実施例2〜9)
中間ユニットを、表3に示す構造とした以外は、上記実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0081】
実施例2においては、BCP/LiOの構造を3回繰り返して積層し、3つの電子注入・輸送ユニットを設けている。
【0082】
実施例3においては、BCP/LiOの構造を2回繰り返して積層し、2つの電子注入・輸送ユニットを設けている。
【0083】
実施例4においては、実施例3におけるBCPの膜厚を薄くしている。
【0084】
実施例5においては、電子注入層をLiから形成し、実施例6においてはCsから形成し、実施例7においては、Caから形成している。
【0085】
実施例8においては、陽極側の電子輸送層をBPhenから形成しており、実施例9においては、2つの電子輸送層をともにBPhenから形成している。
【0086】
BPhenは、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンであり、以下の構造を有している。BPhenのLUMOは、−2.7eVである。
【0087】
【化9】

【0088】
〔有機EL素子の評価〕
上記実施例1と同様にして、実施例2〜9の各有機EL素子を評価し、評価結果を表3に示した。
【0089】
【表3】

【0090】
表3に示す実施例2と、表2に示す実施例1の結果との比較から明らかなように、電子注入・輸送ユニットは、2つ設けるよりも3つ設けた方がより駆動電圧を低減させ、より発光効率を高めることができることがわかる。
【0091】
また実施例5〜7から明らかなように、アルカリ金属であるLi及びCs並びにアルカリ土類金属であるCaを用いて電子注入層を形成した場合にも、本発明の効果が得られることがわかる。
【0092】
また、実施例8及び9から明らかなように、他のフェナントロリン誘導体であるBPhenを用いた場合にも、本発明の効果が得られることがわかる。
【0093】
(実施例10〜11及び比較例3)
表4に示す陽極、ホール輸送層、第2の発光ユニット、中間ユニット、第1の発光ユニット、電子輸送層及び陰極を有する実施例10〜11及び比較例3の有機EL素子を作製した。中間ユニットの構造は、表5に示す通りである。
【0094】
表4に示すように、ここでは、第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットとして、オレンジ色発光層と青色発光層を積層した発光ユニットを形成している。オレンジ色発光層を陽極側に配置し、青色発光層を陰極側に配置している。
【0095】
オレンジ色発光層は、NPBをホール輸送性ホスト材料として用い、TBADNを電子輸送性ホスト材料として用い、DBzRをオレンジ色発光ドーパントとして用いている。
【0096】
青色発光層は、TBADNを電子輸送性のホスト材料として用い、NPBをホール輸送性のホスト材料として用い、TBPを青色発光ドーパントとして用いている。
【0097】
実施例10の中間ユニットは、表5に示すように、BCP/LiOの構造を3回繰り返して積層し、3つの電子注入・輸送ユニットを設けている。
【0098】
実施例11の中間ユニットは、表5に示すように、BCP/LiOの構造を2回繰り返して積層し、2つの電子注入・輸送ユニットを設けている。
【0099】
比較例3の中間ユニットは、表5に示すように、BCP/LiOを1つだけ形成し、1つの電子注入・輸送ユニットを設けている。
【0100】
〔有機EL素子の評価〕
上記実施例と同様に実施例10〜11及び比較例3の各有機EL素子について評価し、評価結果を表5に示した。
【0101】
【表4】

【0102】
【表5】

【0103】
表5に示す結果から明らかなように、実施例10及び11の有機EL素子は、比較例3の有機EL素子よりも、駆動電圧が低くなっており、発光効率が向上している。従って、発光ユニットが、複数の発光層を積層した発光ユニットである場合にも、本発明の効果が得られることがわかる。
【0104】
また、実施例10と実施例11の比較から電子注入・輸送ユニットは、2つ設けるよりも3つあるいはそれ以上設けた方がより効果が得られることがわかる。
【0105】
〔有機EL表示装置〕
図5は、本発明に従う実施例のボトムエミッション型の有機EL表示装置を示す断面図である。この有機EL表示装置においては、能動素子としてTFTを用いて各画素における発光を駆動している。なお、能動素子としてダイオードなども用いることができる。また、この有機EL表示装置においては、カラーフィルターが設けられている。この有機EL表示装置は、矢印で示しているように基板17の下方に光を出射して表示するボトムエミッション型の表示装置である。
【0106】
図5を参照して、ガラスなどの透明基板からなる基板17の上には、第1の絶縁層18が設けられている。第1の絶縁層18は、例えばSiO2及びSiNXなどから形成されている。第1の絶縁層18の上には、ポリシリコン層からなるチャネル領域20が形成されている。チャネル領域20の上には、ドレイン電極21及びソース電極23が形成されており、またドレイン電極21とソース電極23の間には、第2の絶縁層19を介してゲート電極22が設けられている。ゲート電極22の上には、第3の絶縁層14が設けられている。第2の絶縁層19は、例えばSiNX及びSiO2から形成されており、第3の絶縁層14は、SiO2及びSiNXから形成されている。
【0107】
第3の絶縁層14の上には、第4の絶縁層15が形成されている。第4の絶縁層15は、例えば、SiNXから形成されている。第4の絶縁層15の上の画素領域の部分には、カラーフィルター層9が設けられている。カラーフィルター層9としては、R(赤)、G(緑)、またB(青)などのカラーフィルターが設けられる。カラーフィルター層9の上には、第1の平坦化膜16が設けられている。ドレイン電極21の上方の第1の平坦化膜16にはスルーホール部が形成され、第1の平坦化膜16の上に形成されているITO(インジウムースズ酸化物)からなるホール注入電極8がスルーホール部内に導入されている。画素領域におけるホール注入電極(陽極)8の上には、ホール輸送層10が形成されている。画素領域以外の部分においては、第2の平坦化膜19が形成されている。
【0108】
ホール輸送層10の上には、積層発光ユニット11が設けられている。積層発光ユニット11は、本発明に従い、第1の発光ユニットと第2の発光ユニットの間に中間ユニットを設けた構造を有している。
【0109】
積層発光ユニット11の上には、電子輸送層12が設けられ、電子輸送層12の上には、電子注入電極(陰極)13が設けられている。
【0110】
以上のように、本実施例の有機EL素子においては、画素領域の上に、ホール注入電極(陽極)8と、ホール注入・輸送ユニット10と、積層発光ユニット11と、電子輸送層12と、電子注入電極(陰極)13とが積層されて有機EL素子が構成されている。
【0111】
本実施例の積層発光ユニット11においては、オレンジ色発光層と青色発光層とを積層した発光ユニットを用いているので、積層発光ユニット11からは白色の発光がなされる。この白色の発光は、基板17を通り外部に出射するが、発光側にカラーフィルター層9が設けられているので、カラーフィルター層9の色に応じて、R、GまたはBの色が出射される。単色で発光する素子の場合、カラーフィルター層9はなくてもよい。
【0112】
図6は本発明に従う実施例のトップエミッション型の有機EL表示装置を示す断面図である。本実施例の有機EL表示装置は、矢印で図示しているように基板17の上方に光を出射して表示するトップエミッション型の有機EL表示装置である。
【0113】
基板17から陽極8までの部分は、図5に示す実施例とほぼ同様にして作製されている。但し、カラーフィルター層9は、第4の絶縁層15の上に設けられておらず、有機EL素子の上方に配置されている。具体的には、ガラスなどからなる透明な封止基板26の上にカラーフィルター層9を取り付け、この上にオーバーコート層25をコーティングし、これを透明接着剤層24を介して陽極8の上に貼り付けることにより取り付けられている。また、本実施例では、陽極と陰極の位置を図5に示す実施例とは逆にしている。
【0114】
陽極8として、透明な電極が形成されており、例えば、膜厚100nm程度のITOと膜厚20nm程度の銀とを積層することにより形成されている。陰極13としては、反射電極が形成されており、例えば、膜厚100nm程度のアルミニウム、クロム、または銀の薄膜が形成されている。オーバーコート層25は、アクリル樹脂などにより厚み1μm程度に形成されている。カラーフィルター層9は、顔料タイプのものであってもよいし染料タイプのものであってもよい。その厚みは1μm程度である。
【0115】
積層発光ユニット11から発光された白色光は、封止基板26を通り外部に出射されるが、発光側にカラーフィルター層9が設けられているので、カラーフィルター層9の色に応じてR、GまたはBの色が出射される。本実施例の有機EL表示装置はトップエミッション型であるので、薄膜トランジスタが設けられている領域も画素領域として用いることができ、図5に示す実施例よりも広い範囲にカラーフィルター層9が設けられている。本実施例によれば、より広い領域を画素領域として用いることができ、開口率を高めることができる。また、複数の発光ユニットを有する発光層の形成も、アクティブマトリックスによる影響を考慮せずに行うことができるので、設計の自由度を高めることができる。
【0116】
上記実施例では、封止基板としてガラス板を用いているが、本発明において封止基板はガラス板に限定されるものではなく、例えば、SiO2などの酸化膜やSiNxなどの窒化膜などの膜状のものも封止基板として用いることができる。この場合、素子上に膜状の封止基板を直接形成できるので、透明接着剤層を設ける必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明に従う一実施例における中間ユニットを構成する各層及びこれに隣接する層のLUMO及びHOMOのエネルギーレベルを示す模式図。
【図2】本発明に従う一実施例における電子注入・輸送ユニットに電圧が印加されたときのエネルギーバンドの状態を説明するための図。
【図3】本発明に従う他の実施例における電子注入・輸送ユニットに電圧が印加されたときのエネルギーバンドの状態を説明するための図。
【図4】本発明に従う一実施例の有機EL素子の積層構造を示す模式的断面図。
【図5】本発明に従う実施例のボトムエミッション型の有機EL表示装置を示す断面図。
【図6】本発明に従う実施例のトップエミッション型の有機EL表示装置を示す断面図。
【符号の説明】
【0118】
1…電子引き抜き層
2…電子注入・輸送ユニット
3…電子注入層
4…電子輸送層
5…第1の発光ユニット
6…第2の発光ユニット
7…中間ユニット
10…ホール輸送層
12…電子輸送層
13…陰極
18…陽極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、陽極と、前記陰極及び前記陽極の間に配置される中間ユニットと、前記陰極及び前記中間ユニットの間に配置される第1の発光ユニットと、前記陽極及び前記中間ユニットの間に配置される第2の発光ユニットとを備え、
前記中間ユニットは、陰極側に隣接する隣接層から電子を引き抜くための電子引き抜き層と、前記電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニットとを有し、
前記各電子注入・輸送ユニットは、陰極側に設けられる電子注入層と、陽極側に設けられる電子輸送層とから構成されており、
前記電子引き抜き層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│と、前記隣接層の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│が、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、
前記電子注入層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(C)│または仕事関数(WF)の絶対値│WF(C)│は、│LUMO(A)│より小さく、
前記電子輸送層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(D)│は、│LUMO(C)│または│WF(C)│より小さいことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項2】
前記電子輸送層が、フェナントロリン誘導体から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項3】
前記電子注入層が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、並びにそれらの酸化物、ハロゲン化物、及び窒化物からなるグループより選ばれる少なくとも1種から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項4】
前記隣接層が、3級アリールアミン系材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項5】
前記電子引き抜き層が、ピラジン誘導体から形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【請求項6】
陽極と陰極に挟まれた素子構造を有する有機エレクトロルミネッセント素子と、表示画素毎に対応した表示信号を前記有機エレクトロルミネッセント素子に供給するための能動素子が設けられたアクティブマトリックス駆動基板とを備え、前記有機エレクトロルミネッセント素子を前記アクティブマトリックス駆動基板の上に配置し、前記陰極及び前記陽極のうち前記基板側に設けられる電極を透明電極としたボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセント表示装置であって、
前記有機エレクトロルミネッセント素子が、前記陰極と、前記陽極と、前記陰極及び前記陽極の間に配置される中間ユニットと、前記陰極及び前記中間ユニットの間に配置される第1の発光ユニットと、前記陽極及び前記中間ユニットの間に配置される第2の発光ユニットとを備え、
前記中間ユニットは、陰極側に隣接する隣接層から電子を引き抜くための電子引き抜き層と、前記電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニットとを有し、
前記各電子注入・輸送ユニットは、陰極側に設けられる電子注入層と、陽極側に設けられる電子輸送層とから構成されており、
前記電子引き抜き層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│と、前記隣接層の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│が、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、
前記電子注入層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(C)│または仕事関数(WF)の絶対値│WF(C)│は、│LUMO(A)│より小さく、
前記電子輸送層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(D)│は、│LUMO(C)│または│WF(C)│より小さいことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント表示装置。
【請求項7】
陽極と陰極に挟まれた素子構造を有する有機エレクトロルミネッセント素子と、表示画素毎に対応した表示信号を前記有機エレクトロルミネッセント素子に供給するための能動素子が設けられたアクティブマトリックス駆動基板と、該アクティブマトリックス駆動基板と対向して設けられる透明な封止基板とを備え、前記有機エレクトロルミネッセント素子を前記アクティブマトリックス駆動基板と前記封止基板の間に配置し、前記陰極及び前記陽極のうち前記封止基板側に設けられる電極を透明電極としたトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセント表示装置であって、
前記有機エレクトロルミネッセント素子が、前記陰極と、前記陽極と、前記陰極及び前記陽極の間に配置される中間ユニットと、前記陰極及び前記中間ユニットの間に配置される第1の発光ユニットと、前記陽極及び前記中間ユニットの間に配置される第2の発光ユニットとを備え、
前記中間ユニットは、陰極側に隣接する隣接層から電子を引き抜くための電子引き抜き層と、前記電子引き抜き層の陽極側に隣接して設けられる複数の電子注入・輸送ユニットとを有し、
前記各電子注入・輸送ユニットは、陰極側に設けられる電子注入層と、陽極側に設けられる電子輸送層とから構成されており、
前記電子引き抜き層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(A)│と、前記隣接層の最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの絶対値│HOMO(B)│が、│HOMO(B)│−│LUMO(A)│≦1.5eVの関係にあり、
前記電子注入層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(C)│または仕事関数(WF)の絶対値│WF(C)│は、│LUMO(A)│より小さく、
前記電子輸送層の最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベルの絶対値│LUMO(D)│は、│LUMO(C)│または│WF(C)│より小さいことを特徴とする有機エレクトロルミネッセント表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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