説明

有機ケイ素化合物をベースとする架橋性コンパウンド

本発明は、生制特性を有する有機ケイ素化合物をベースとする架橋性コンパウンド並びにその製法およびその使用に関し、その際架橋性のコンパウンドは第四アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生制特性を有する有機ケイ素化合物をベースとする架橋性コンパウンド並びにその製法およびその使用に関する。
【0002】
水の遮断下に貯蔵可能であり、室温で水の進入下にエラストマーに硬化する1成分系シール剤は公知である。この生成物は大量に、例えば建築産業において使用される。特に高い湿度を有する環境において、例えば浴室、台所、更には例えば熱帯地域においても、シール剤の表面に容易に有機体、例えばカビまたは藻類が繁茂する。これを阻止するために、従来シール剤に繁茂を防ぐ殺生剤、例えば殺カビ剤を添加した。シール剤に使用した殺カビ剤の例は、メチルベンズイミダゾール−2−イルカルバメート(Carbendazim)、10,10′−オキシ−ビスフェノキサルシン、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロル−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン(Amical、例えばEP34877A参照)、トリアゾリル−化合物、例えばテブコナゾール(Tebuconazol)と銀含有ゼオリテン(Zeolithen)との組合せ(例えば、EP931811AおよびEP640661A参照)およびベンゾチオフェン−2−シクロヘキシルカルボキサミド−S,S−ジオキシドである。しかしながら、これらの作用物質は一定の欠点を有する、例えば有害な重金属の含有、多くのシール剤組成物中での化学的不安定性または変色への傾向も有する。更に、これらの殺生剤は有効であるためには、一定の水溶性を有していなければならないという欠点を有する。従って、この種の殺生加工は非常に限定された期間のみ有効であるに過ぎない。更に、こうしてこれらの物質はゆっくりと完全に排水中に達する。
【0003】
本発明の対象は第四アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物を含有することを特徴とする、有機ケイ素化合物をベースとする架橋性コンパウンドである。
【0004】
架橋性コンパウンドとは有利に縮合反応により架橋可能なコンパウンドである。
【0005】
本発明の範囲において、"縮合反応"という記載は、場合により先行する加水分解工程を包含すべきである。
【0006】
本発明によるコンパウンドが、
(A)少なくとも2個の縮合可能な基を有する有機ケイ素化合物、
(B)式
−SiR22−R4−N+32−R4−SiR22−・X- (II)
[式中、
2は同一または異なっていてよく、かつRに関して下に記載されている意味を有し、
3は同一または異なっていてよく、置換または非置換の1価の炭化水素基を表すか、または架橋するアルキレン基の構成成分であってよく、
-は有機または無機アニオンを表し、
4は置換または非置換の、ヘテロ原子で中断されていてよい、二価の炭化水素基を表す]の単位を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物、かつ場合により
(C)架橋剤
を含有するものであるのが特に有利である。
【0007】
本発明の範囲において、"縮合可能な"基とは、場合により先行する加水分解工程を包含する基であると理解するべきである。
【0008】
使用した、架橋反応に関与した有機ケイ素化合物が有していてよい縮合可能な基は、任意の基、例えばヒドロキシ基、アセトキシ基、オキシマト基およびオルガニルオキシ基、特にアルコキシ基、例えばエトキシ基、アルコキシエトキシ基およびメトキシ基であってよい。
【0009】
本発明により使用した有機ケイ素化合物(B)は、式(II)の基を少なくとも1つ有する任意の有機ケイ素化合物であってよく、その際、これは純粋なシロキサン、すなわち≡Si−O−Si≡構造であっても、シルカルバン、すなわち≡Si−R′−Si≡構造(R′=場合により置換、またはヘテロ原子で中断されていてよい二価の炭化水素基)または任意の有機ケイ素基を有するコポリマーであってもよい。
【0010】
本発明により使用した有機ケイ素化合物(A)は少なくとも2つの縮合可能な基を有する全ての有機ケイ素化合物であってよく、これは従来の縮合反応により架橋可能なコンパウンド中にも使用されている。この際、これは純粋なシロキサン、すなわち≡Si−O−Si≡構造であっても、シルカルバン、すなわち≡Si−R′′−Si≡構造(R′′=場合により置換、またはヘテロ原子で中断されていてよい二価の炭化水素基)または任意の有機ケイ素基を有するコポリマーであってよい。
【0011】
本発明により使用した有機ケイ素化合物(A)が、式
a(OR1bcSiO(4-a-b-c)/2 (I)
[式中、
Rは同一または異なっていてよく、かつ置換または非置換の、酸素原子により中断されていてよい炭化水素基を表し、
1は同一または異なっていてよく、かつ水素原子または置換または非置換の、酸素原子により中断されていてよい一価の炭化水素基を表し、
Yは同一または異なっていてよく、ハロゲン原子、擬ハロゲン基、Si−N−結合したアミン基、アミド基、オキシム基、アミノオキシ基およびアシルオキシ基を表し、
aは0、1、2または3、有利に1または2であり、
bは0、1、2または3であり、有利に0、1または2であり、特に有利に0であり、かつ
cは0、1、2または3であり、有利に0または1であり、特に有利に0であるが、
但し、a+b+cからなる合計は4より小さいかまたは同じであり、分子当たり少なくとも2個の縮合可能な基(OR1)を有している]の単位を有している化合物であるのが有利である。
【0012】
a+b+cの合計が3以下であるのが有利である。
【0013】
基Rが炭素原子1〜18個を有する一価の炭化水素基であるのが有利であり、この基は場合によりハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基または(ポリ)−グリコール基で置換されており、この際(ポリ)−グリコール基はオキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位から構成されており、特に炭素原子1〜12個を有するアルキル基が有利であり、特にメチル基が有利である。基Rは二価の基であってもよく、これは例えば2つのシリル基を相互に結合する。
【0014】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソ−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソ−ペンチル基、ネオ−ペンチル基、t−ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソ−オクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基;デシル基、例えばn−デシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル基、1−プロペニル基および2−プロペニル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基;キシリル基およびエチルフェニル基;およびアルアルキル基、例えばベンジル基、α−およびβ−フェニルエチル基である。
【0015】
置換された基Rの例はメトキシエチル基、エトキシエチル基およびエトキシエトキシエチル基である。
【0016】
二価の基Rの例はポリイソブチレンジイル基およびプロパンジイル末端ポリプロピレングリコール基である。
【0017】
基R1の例はRで記載した一価の基である。
【0018】
基R1が水素原子または炭素原子1〜12個を有するアルキル基、特に水素原子、メチル基またはエチル基、殊に水素原子であるのが有利である。
【0019】
基Yの例はアセトキシ基、ジメチルアミノ基、シクロヘキシル−アミノ基およびメチルエチルケトオキシモ基であり、その際アセトキシ基が有利である。
【0020】
本発明において使用した有機ケイ素化合物(A)が、式
(OR13-ffSi−(SiR2−O)e−SiRf(OR13-f (IV)
[式中、RおよびR1は前記の意味の1つを有し、
eは30〜3000であり、かつ
fは1または2である]のものであるのが特に有利である。
【0021】
1が水素原子である場合に、fが2であるのが有利であり、R1が水素原子以外の意味を有する場合、fは1であるのが有利である。
【0022】
有機ケイ素化合物(A)の例が、
(MeO)2MeSiO[SiMe2O]200-2000SiMe(OMe)2
(HO)Me2SiO[SiMe2O]200-2000SiMe2(OH)、
(EtO)2MeSiO[SiMe2O]200-2000SiMe(OEt)2
(HO)MeViSiO[SiMe2O]200-2000SiMeVi(OH)、
(MeO)2ViSiO[SiMe2O]200-2000SiVi(OMe)2および
(EtO)2ViSiO[SiMe2O]200-2000SiVi(OEt)2
であり、その際Meはメチル基を、Etはエチル基を、およびViはビニル基を表す。
【0023】
本発明により使用した有機ケイ素化合物(A)は、それぞれ25℃で、有利に100〜106mPas、特に有利に103〜350000mPasの粘度を有する。
【0024】
有機ケイ素化合物(A)が市販の生成物であるか、もしくはケイ素化学において常用の方法により製造することができる。
【0025】
基R2の例は基Rに関して記載した一価の例である。
【0026】
基R2が炭素原子1〜18個を有する炭化水素基であって、これが場合によりハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基または(ポリ)グリコール基で置換されていてよく、この際(ポリ)グリコール基はオキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位から構成されており、特に炭素原子1〜12個を有するアルキル基が有利であり、特にメチル基であるのが、特に有利である。
【0027】
基R3の例は、基Rに関して記載した一価の例、並びに二価の場合により置換された、炭素原子1〜30個を有する炭化水素基である。
【0028】
基R3が炭素原子1〜8個を有する炭化水素基であるのが有利であり、特に炭素原子1〜6個を有するアルキル基およびベンジル基が有利である。基R3はこれから誘導された二価の基であってもよく、こうして例えば2つの基R3が窒素原子と共に環を形成してよい。
【0029】
アニオンX-の例は、有機アニオン、例えばカルボキシレートイオン、エノラートイオンおよびスルホネートイオン、並びに無機アニオン、例えばハロゲニドイオン、例えばフルオリドイオン、クロリドイオン、ブロミドイオンおよびヨージドイオン、およびスルフェートイオンである。
【0030】
アニオンX-がカルボキシレートイオンおよびハロゲニドイオンであるのが有利であり、特にクロリドイオンおよびアセテートイオンが有利である。
【0031】
基R4の例は、酸素原子により一回または複数回中断されている、二価の線状、環式または分枝状の、飽和または不飽和炭化水素基であり、例えば全てのアルキレン基、アリーレン基、
【化1】

であり、この際Meはメチル基を表す。
【0032】
基R4がアルキレン基および−(CH23OCH2−CH(OH)−CH2−および−(CH23OCH2−CH[−CH2(OH)]−であるのが有利であり、特に−(CH23OCH2−CH(OH)−CH2−および−(CH23OCH2−CH[−CH2(OH)]−であるのが有利である。
【0033】
本発明により使用した有機ケイ素化合物(B)は、式
1−(R4SiR22h−[(OSiR22d−R4−N+32−R4−SiR22n−D2・nX- (III)
[式中、
1は水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲニド基、基−NR*2または一価の有機基を表し、その際R*は同一または異なっていてよく、水素原子または置換または非置換の一価の炭化水素基を表し、基−NR*2はアンモニウム塩として存在していてもよく、かつ
2は式−(OSiR22g−R4k−D1の基を表し、ここでR2、R3、D1、X-およびR4はこれらに関して前記の意味の1つと同一であり、この際、式(III)のそれぞれのポリマー分子中の両方の基D1は同一または異なっていてよく、かつ
dは1〜200の整数であり、
hは0または1であり、
kは0または1であり、
gは0〜1000の数であり、かつ
nは1〜50の整数である]の化合物であるのが有利である。
【0034】
1の、ハロゲニド基の例は、−Clおよび−Brであり、基−NR*の例は−N(CH32−基である。
【0035】
本発明において使用した有機ケイ素化合物(B)が、式(III)のポリマーであり、R4が少なくとも炭素原子4個および少なくともヒドロキシ基1個を有するアルキレン基、−(CH23OCH2−CH(OH)−CH2−および−(CH23OCH2−CH[−CH2(OH)]−であるのが有利であり、特に−(CH23OCH2−CH(OH)−CH2−および−(CH23OCH2−CH[−CH2(OH)]−であるのが有利である。
【0036】
本発明において使用した有機ケイ素化合物(B)の例は、以下の化合物である:
【化2】

【0037】
【化3】

この際、シクロヘキシル基のCl−および−N(CH32−置換基は相互に独立して、−CH2CH2−基に対して4位だけでなく、3位を取ることもでき、指数nおよびdは、非常に幅の広い分子量分布を有するポリマー化合物のための平均値であると理解される。
【0038】
本発明において使用した有機ケイ素化合物(B)はそれぞれ25℃において、有利に104〜108mPasの粘度、特に有利に105〜5*107mPasの粘度を有する。
【0039】
本発明において使用した有機ケイ素化合物(B)は市販の製品であるか、もしくは公知の方法により、例えば相応するエポキシ官能性シランおよび/またはシロキサンとジアルキルアンモニウム塩、例えば塩化ジメチルアンモニウムとの反応により、または相応するアミノ化合物とアルキルハロゲン化物との反応により製造することができる。
【0040】
本発明によるコンパウンドにおいて場合により使用した架橋剤(C)は、任意の従来公知の少なくとも縮合可能な基3つを有する架橋剤、例えば少なくとも3つのオルガニルオキシ基を有するシランまたはシロキサンであってよい。
【0041】
本発明によるコンパウンド中に場合により使用した架橋剤(C)は有利に、式
(R6O)klSiR5(4-k-l) (V)
[式中、
5は同一または異なっていてもよく、酸素原子により中断されていてよい、場合により置換された一価の炭化水素基を表し、
6は同一または異なっていてよく、かつR1に関して前記の意味を有し、
Zは同一または異なっていてよく、Yは記載した意味を有し、
kは0、1、2、3または4を表し、有利に2または3を表し、特に有利に3を表し、かつ
lは0、1、2、3または4を表し、有利に0または3を表し、特に有利に0を表すが、但しk+lの合計は3または4である]の有機ケイ素化合物、またはその部分加水分解物である。
【0042】
部分加水分解物は部分ホモ加水分解物、すなわち1種の式(V)の有機ケイ素化合物の部分加水分解物であってよく、並びに部分共加水分解物、すなわち式(V)の少なくとも2つの異なる種類の有機ケイ素化合物の部分加水分解物であってよい。
【0043】
本発明によるコンパウンド中に場合により使用した架橋剤(C)は、式(V)の有機ケイ素化合物の部分加水分解物であり、ケイ素原子6個までを有するものが有利である。
【0044】
基R6の例は、基R1で前記の例である。基R6が水素原子およびアルキル基、特に水素原子および炭素原子1〜4個を有するアルキル基、特に水素原子、メチル基およびエチル基であるのが有利である。
【0045】
基R5の例は、基Rに挙げた一価の例であり、この際炭素原子1〜12個を有する炭化水素基は有利であり、メチル基およびビニル基が特に有利である。
【0046】
Zの例は、Yに記載した例であり、この際アセトキシ基およびメチルエチルケトキシモ基が有利である。
【0047】
本発明によるコンパウンド中に場合により使用した架橋剤(C)が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−(グリシドオキシ)プロピルトリエトキシシラン、1,2−ビス−(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、3−アミノ−プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン並びに前記有機ケイ素化合物の部分加水分解物、例えばヘキサエトキシジシロキサンであるのは特に有利である。
【0048】
本発明によるコンパウンド中に場合により使用した架橋剤(C)は、市販の製品であるかまたはケイ素化学において公知の方法により製造することができる。
【0049】
本発明によるコンパウンドが架橋剤(C)を含有する場合、その量はそれぞれオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、有利に0.01〜20質量部、特に有利に0.5〜10質量部、殊に1.0〜5.0質量部である。
【0050】
前記成分(A)、(B)および(C)に加えて、本発明によるコンパウンドは縮合反応により架橋可能なコンパウンド中に従来から使用されていたその他の全ての物質、例えば触媒(D)、可塑剤(E)、充填材(F)、接着促進剤(G)および添加物(H)を含有していてよい。
【0051】
触媒(D)の例はすでに公知のチタン化合物および有機スズ化合物、例えばジ−n−ブチルスズジラウレートおよびジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズオキシド、並びにこれらの化合物とアルコキシシラン、例えばテトラエトキシシランとの反応生成物であり、この際テトラエチルシリケート−加水分解物中のジ−n−ブチルスズジアセテートおよびジブチルスズオキシドが有利であり、テトラエチルシリケート−加水分解物中のジ−n−ブチルスズオキシドが特に有利である。
【0052】
本発明によるコンパウンドが触媒(D)を含有する場合、その量はそれぞれ成分(A)100質量部に対して、有利に0.01〜3質量部、有利に0.05〜2質量部である。
【0053】
可塑剤(E)の例は、室温で液状の、特に25℃での粘度が50〜1000mPasの範囲である、トリメチルシロキシ基により末端がブロックされているジメチルポリシロキサン、並びに高沸点炭化水素、例えばナフテン系およびパラフィン系単位からなるパラフィン油または鉱油である。
【0054】
本発明によるコンパウンドは可塑剤(E)をオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、有利に0〜300質量部、特に有利に10〜200質量部、殊に20〜100質量部を含有する。
【0055】
充填材(F)の例は、非補強充填材、すなわちBET−表面積50m2/gまでを有する充填材、例えば石英、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄または酸化錫、もしくはこれらの混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末およびプラスチック粉末、例えばポリアクリロニトリル粉末;補強充填材、すなわち50m2/gより大きいBET−表面積を有する充填材、例えば熱分解法により製造したケイ酸、沈降ケイ酸、沈降白亜、カーボンブラック、例えばファーネスブラックおよびアセチレンブラックおよび大きなBET−表面積を有するケイ素−アルミニウム−混合酸化物;繊維の形の充填材、例えばアスベスト並びにプラスチック繊維である。前記充填材は疎水性化されていてよく、例えば有機シランもしくは有機シロキサンで、またはステアリン酸で処理することによりまたはヒドロキシル基のアルコキシ基へのエーテル化により疎水性化されていてよい。充填材(E)を使用する場合、有利に親水性熱分解法ケイ酸および沈降ケイ酸または粉末炭酸カルシウムであるのが有利である。
【0056】
本発明によるコンパウンドは充填材(F)を、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、有利に0〜300質量部、特に有利に1〜200質量部、殊に5〜200質量部含有する。
【0057】
本発明によるコンパウンド中に使用した接着促進剤(G)の例は、官能基、例えばグリシドオキシプロピル−またはメタクリルオキシプロピル基を有するシランおよびオルガノポリシロキサン、並びにテトラアルコキシシランである。しかしながら、他の成分、例えばシロキサン(A)または架橋剤(C)がすでに前記の官能基を有する場合、接着促進剤の添加の必要はない。
【0058】
本発明によるコンパウンドは、それぞれオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、接着促進剤(G)を有利に0〜50質量部、特に1〜20質量部、殊に1〜10質量部の量で含有する。
【0059】
添加物(H)の例は、顔料、着色剤、香料、酸化防止剤、電気的特性に影響を与えるための薬剤、例えば導電性カーボン、防炎剤、光保護剤および塗膜形成時間を延長する薬剤、例えばSiC−結合したメルカプトアルキル基を有するシラン、セル形成剤(Zellenerzeugende Mittel)、例えばアゾジカルボンアミド、熱安定剤、チキソトロープ剤、例えば燐酸エステル、および有機溶剤、例えばアルキル芳香族化合物である。
【0060】
本発明によるコンパウンドは添加物(H)を、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、有利に0〜100質量部、特に有利に0〜30質量部、殊に0〜10質量部の量で含有する。
【0061】
特に有利であるのは、本発明によるコンパウンドが、
(A)式(I)の単位を含有する有機ケイ素化合物、
(B)式(II)の単位少なくとも1つを有する有機ケイ素化合物、
場合により
(C)式(V)の架橋剤、
場合により
(D)触媒、
場合により
(E)可塑剤、
場合により
(F)充填材、
場合により
(G)接着促進剤、および
場合により
(H)添加物
からなるものである。
【0062】
本発明によるコンパウンドの製造のためには、全ての成分を任意の順序で相互に混合することができる。この混合は室温および周囲圧で、すなわち約900〜1100hPaで行うことができる。所望の場合には、この混合は高温、例えば35℃〜135℃の範囲でも実施することができる。
【0063】
本発明によるコンパウンドの個別の成分がその都度この種の成分の1種類であっても、またはこの種の成分の少なくとも2種の異なる種類からなる混合物であってもよい。
【0064】
本発明によるコンパウンドの架橋のためには、空気の通常の水分含量で十分である。本発明によるコンパウンドの架橋は、有利に室温で行う。所望の場合には、架橋は室温より高いまたはより低い温度、例えば−5℃〜15℃または30℃〜50℃でおよび/または空中の通常の水分含量をこえる水分濃度により実施することもできる。架橋を圧力100〜1100hPa、特に周囲圧で実施するのが有利である。
【0065】
本発明のその他の対象は、本発明によるコンパウンドの架橋により製造される成形体である。
【0066】
本発明によるコンパウンドは、全ての使用目的のために使用することができ、水の遮断下に貯蔵可能であり、水の進入において室温でエラストマーに架橋するコンパウンドのために使用することができる。
【0067】
こうして、本発明によるコンパウンドは、鉛直に伸びる接合部を含む、接合部および例えば内径10〜40mmの類似の中空体の、例えば建築物、自動車、船舶、および航空機の、シール剤として、または例えば窓構造部において、または水槽またはガラス棚の製造の際に、接着剤またはパテ剤として、並びに例えば淡水または海水の作用に常に晒されている表面のための保護被覆を含む、保護被覆またはスリップを阻止する被覆またはゴム弾性の成形体の製造のために、並びに電気または電子装置の絶縁のために好適である。
【0068】
本発明によるコンパウンドは容易に製造することができ、長時間にわたって殺生作用を示すという利点を有する。
【0069】
更に、本発明によるコンパウンドは、殺生剤加工による変色への傾向は、まだ硬化していないコンパウンドも、硬化した成形体も著しく低いという、利点を有する。
【0070】
本発明による架橋性のコンパウンドは非常に高い貯蔵安定性および高い架橋速度により優れているという利点を有する。
【0071】
以下に記載する例において、全ての粘度は温度25℃に関する。他に記載のない限りにおいては、以下の例は周囲圧で、すなわちほぼ1000hPa、および室温、すなわち約23℃で、もしくは反応成分を室温で一緒にした際に付加的な加熱または冷却なしに達する温度で、並びに相対湿度約50%で実施する。更に、部およびパーセンテージに関する全ての記載は、他に記載されていない限りにおいては、質量に関する。
【0072】
実施例
例1
ポリ第四ポリシロキサンの製造:
ジメチルアンモニウムクロリド286.4gを水1000ml中に溶かし、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1200gを添加し、この混合物を良好な撹拌下に還流下に加熱した。この反応混合物を2時間105〜110℃で撹拌し、その際反応バッチは無色の混濁から透明の黄色に変化した。引き続き、溶剤を真空下に120℃で除去した。反応生成物は、粘度約16・106mPasを有する暗黄色の高粘性油状物質であった。1H−NMR分光分析での検査は式
【化4】

に相応する繰り返し単位を平均してほぼ18〜20個有するポリ第四ポリシロキサンの形成を保証する。
【0073】
真空装置を備える遊星形ミキサー中で水遮断下に−OSi(OCH32(CH3)−末端基を有する、粘度80000mPasのポリジメチルシロキサン1400gを−OSi(CH33−末端基を有する、粘度100mPasのポリジメチルシロキサン600gおよびポリ第四ポリシロキサン(製造は前記)12g、メチルトリメトキシシラン100g、オクチルホスホン酸2.5gおよび3−アミノプロピルトリメトキシシラン18gと混合した。次いで、比表面積150m2/gの親水性熱分解法ケイ酸200gを添加混合した。混合物を均質にし、混入した空気を排気することにより除去した後に、更にスズ触媒10gを混和した(テトラエトキシシラン4部とジブチルスズジアセテート2.2部とから製造した反応生成物)。更に、真空中で均質にした後に、この混合物を水密の容器中に充填した。
【0074】
このようにして得られたコンパウンドをポリエチレン支持材上に塗布し、相対湿度50%および温度23℃で14日間貯蔵することにより、層厚2mmの検体を製造した。
【0075】
このように製造した加硫プレートから検体をDIN EN ISO 846により製造し、かつ規格に記載されている方法Bにより試験した。
【0076】
結果を第1表に記載する。
【0077】
貯蔵安定性を調べるためには、この試料を水密容器中に3日間100℃で貯蔵した。試料の硬化挙動および外観に関して、全く変化は見られなかった。このことは優れた貯蔵安定性および黄変耐性を証明した。
【0078】
例2
粘度80000mPasを有するα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン1400g、ポリ第四ポリシロキサン12g(製法は例1に記載されている)、−OSi(CH33−末端基および粘度100mPasを有するポリジメチルシロキサン300g、動粘度6.2mm2/s(40℃で)、粘度−密度−定数(VDK)0.79および沸騰範囲300℃〜370℃を有する炭化水素混合物(炭素分布、パラフィン系炭素原子62%、ナフテン系炭素原子38%および芳香族炭素原子0.03%)300g、エチルトリアセトキシシラン90gおよび比表面積150m2/gを有する親水性熱分解法ケイ酸190gを遊星形ミキサー中で真空下に均質に混合した。引き続き、ジブチルスズジアセテート0.5gを添加し、再度5分間均質にした。
【0079】
そのように得られたコンパウンドから、例1に記載した検体を製造し、DIN EN ISO 846により試験した。結果を第1表に記載した。
【0080】
貯蔵安定性を試験するために、試料を水密の容器中で3日間、100℃で貯蔵した。試料の硬化挙動および外観に関する変化はなく、このことは優れた貯蔵安定性および黄変耐性を証明した。
【0081】
例3
例1に記載した方法を繰り返すが、変更はポリ第四ポリシロキサンを倍量使用したことである。
【0082】
そのようにして得られたコンパウンドから、例1に記載したように検体を製造し、かつDIN EN ISO 846により試験した。結果を第1表に記載した。
【0083】
貯蔵安定性を試験するために、試料を水密の容器中で3日間、100℃で貯蔵した。試料の硬化挙動および外観に関する変化はなく、このことは優れた貯蔵安定性および黄変耐性を証明した。
【0084】
例4
ジメチルアンモニウムクロリド233gを水1700ml中に溶かした。この溶液にケイ素原子平均8個およびエポキシ基含量2.4ミリモル/gを有する、(3−グリシドキシプロピル)−ジメチルシロキシ−およびジメチルシロキシ単位からなるポリシロキサン2238gを加え、この混合物を良好な撹拌をしながら、還流下に加熱した。反応混合物を105〜110℃で6時間撹拌し、その際、無色混濁の反応混合物は透明な黄色に変化した。引き続き、この溶剤を真空下に120℃で除去した。この反応生成物は約6*106mPasの粘度を有する暗黄色高粘性油状物質であった。1H−NMR−分光分析による検査は式
【化5】

に相当する、平均約30〜35個の繰り返し単位を有するポリ第四ポリシロキサンの形成を証明した。
【0085】
そのようにして製造されたポリ第四ポリシロキサン35g、粘度80000mPasを有するα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン1400g、−OSi(CH33−末端基を有する粘度100mPasのポリジメチルシロキサン600g、エチルトリアセトキシシラン90gおよび比表面積150m2/gを有する親水性熱分解法ケイ酸190gを真空下に遊星形ミキサー中で均質に混合した。引き続き、ジブチルスズジアセテート0.5gを添加し、更に5分間均質化した。
【0086】
そのように得られたコンパウンドから例1に記載したように検体を製造し、かつDIN EN ISO 846により試験した。結果を第1表に記載した。
【0087】
貯蔵安定性を試験するために、試料を水密の容器中で3日間、100℃で貯蔵した。試料の硬化挙動および外観に関する変化はなく、このことは優れた貯蔵安定性および黄変耐性を証明した。
【0088】
【表1】

00 顕微鏡観察において成長が認められず、試料の周囲に抑止帯域の形成
0 顕微鏡観察において成長が認められず
1 裸眼では成長が認められないが、顕微鏡下には明らかに認識可能
2 裸眼で成長は認識可能、試料表面の25%まで繁茂
3 裸眼で成長は認識可能、試料表面の50%まで繁茂
4 明らかな成長、試料表面の50%を越えて繁茂
5 強い成長、試料表面全体に繁茂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ケイ素化合物をベースとする架橋性コンパウンドにおいて、第四アンモニウム基を有する有機ケイ素化合物を含有することを特徴とする、有機ケイ素化合物をベースとする架橋性コンパウンド。
【請求項2】
(A)少なくとも2個の縮合可能な基を有する有機ケイ素化合物、
(B)式
−SiR22−R4−N+32−R4−SiR22−・X- (II)
[式中、
2は同一または異なっていてよく、かつRに関して下に記載された意味を有し、
3は同一または異なっていてよく、置換または非置換の1価の炭化水素基を表すか、または架橋するアルキレン基の構成部分であってよく、
-は有機または無機アニオンを表し、
4は置換または非置換の、ヘテロ原子で中断されていてよい、二価の炭化水素基を表す]の単位を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物、かつ場合により
(C)架橋剤
を含有するものである、請求項1記載の架橋性コンパウンド。
【請求項3】
有機ケイ素化合物(A)として、式
a(OR1bcSiO(4-a-b-c)/2 (I)
[式中、
Rは同一または異なっていてよく、かつ置換または非置換の、酸素原子により中断されていてよい炭化水素基を表し、
1は同一または異なっていてよく、かつ水素原子または置換または非置換の、酸素原子により中断されていてよい一価の炭化水素基を表し、
Yは同一または異なっていてよく、ハロゲン原子、擬ハロゲン基、Si−N−結合したアミン基、アミド基、オキシム基、アミノオキシ基およびアシルオキシ基を表し、
aは0、1、2または3であり、
bは0、1、2または3であり、かつ
cは0、1、2または3であるが、
但し、a+b+cからなる合計は4より小さいかまたは同じであり、分子当たり少なくとも2個の縮合可能な基(OR1)を有している]の単位を含有している化合物を使用する、請求項1または2記載の架橋性コンパウンド。
【請求項4】
有機ケイ素化合物(B)として、式
1−(R4SiR22h−[(OSiR22d−R4−N+32−R4−SiR22n−D2・nX- (III)
[式中、
1は水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲニド基、基−NR*2または一価の有機基を表し、その際R*は同一または異なっていてよく、水素原子または置換または非置換の一価の炭化水素基を表し、基−NR*2はアンモニウム塩として存在していてもよく、かつ
2は式−(OSiR22g−R4k−D1の基を表し、ここでR2、R3、D1、X-およびR4はこれらに関して前記の意味と同一であり、この際、式(III)のそれぞれのポリマー分子中の両方の基D1は同一または異なっていてよく、かつ
dは1〜200の整数であり、
hは0または1であり、
kは0または1であり、
gは0〜1000の数であり、かつ
nは1〜50の整数である]の化合物を使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の架橋性コンパウンド。
【請求項5】
有機ケイ素化合物(B)は25℃で粘度104〜108mPasを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の架橋性コンパウンド。
【請求項6】
有機ケイ素化合物(A)として、式
(OR13-ffSi−(SiR2−O)e−SiRf(OR13-f (IV)
[式中、RおよびR1は前記の意味の1つを有し、
eは30〜3000であり、かつ
fは1または2である]の化合物を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の架橋性コンパウンド。
【請求項7】
本発明によるコンパウンドが、
(A)式(I)の単位を含有する有機ケイ素化合物、
(B)式(II)の単位少なくとも1つを有する有機ケイ素化合物、
場合により
(C)式(V)の架橋剤、
場合により
(D)触媒、
場合により
(E)可塑剤、
場合により
(F)充填材、
場合により
(G)接着促進剤、および
場合により
(H)添加物
からなるものである、請求項1から6までのいずれか1項記載の架橋性コンパウンド。
【請求項8】
本発明によるコンパウンドが、
(A)式(IV)の有機ケイ素化合物、
(B)式(III)の有機ケイ素化合物、
場合により
(C)式(V)の架橋剤、
場合により
(D)触媒、
場合により
(E)可塑剤、
場合により
(F)充填材、
場合により
(G)接着促進剤、および
場合により
(H)添加物
からなるものである、請求項1から7までのいずれか1項記載の架橋性コンパウンド。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の架橋性コンパウンドを架橋することにより製造された成形体。

【公表番号】特表2007−515530(P2007−515530A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546008(P2006−546008)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014370
【国際公開番号】WO2005/063872
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】