説明

有機ケイ素化合物及びその製造方法、ゴム用配合剤、ゴム組成物並びにタイヤ

【課題】ゴム組成物の硬化物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐磨耗性を大幅に向上させることが可能な含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法、該含硫黄有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤、該ゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物並びに該ゴム組成物の硬化物を用いたタイヤを提供する。
【解決手段】加水分解性シリル基と、チオ尿素構造、チオウレタン構造及び/又はジチオウレタン構造とを有する含硫黄有機ケイ素化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内に加水分解性シリル基と、チオ尿素構造、チオウレタン構造及び/又はジチオウレタン構造とを有する有機ケイ素化合物及びその製造方法、該有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤、該ゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物並びに該ゴム組成物の硬化物を用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
含硫黄有機ケイ素化合物は、タイヤの製造に用いられるシリカ充填ゴム組成物に配合する成分として有用である。シリカ充填タイヤは、自動車用途で向上した性能、特に耐磨耗性、転がり抵抗及びウェットグリップ性に優れる。こういった性能向上は、タイヤの低燃費性向上と密接に関連しており、昨今盛んに研究されている。
【0003】
低燃費性向上には、ゴム組成物のシリカ充填率を上げることが必須であるが、シリカ充填ゴム組成物は、タイヤの転がり抵抗を低減し、ウェットグリップ性を向上させるものの、未加硫粘度が高く、多段練り等を要し、作業性に問題がある。そのためシリカ等の無機充填剤を単に配合したゴム組成物においては、充填剤の分散が不足し、破壊強度及び耐磨耗性が大幅に低下するといった問題が生じる。そこで、無機充填剤のゴム中への分散性向上、並びに充填剤とゴムマトリックスの化学結合をさせるため、含硫黄有機ケイ素化合物が必須であった。
【0004】
含硫黄有機ケイ素化合物としては、アルコキシシリル基とポリスルフィドシリル基を分子内に含む化合物、例えば、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドやビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等が有効であることが知られている。
【0005】
上記ポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物の他に、シリカの分散性に有利なチオエステル型の封鎖メルカプト基含有有機ケイ素化合物や、水素結合によるシリカとの親和性に有利な加水分解性シリル基部分にアミノアルコール化合物をエステル交換したタイプの含硫黄有機ケイ素化合物の応用も知られている。
【0006】
しかしながら、上記のような含硫黄有機ケイ素化合物を使用しても所望の低燃費性を実現するタイヤ用ゴム組成物を得るには至っておらず、他にもスルフィド型の化合物と比較して高コストである他、製造法が複雑であることから生産性に問題があるなど種々課題が残されるものであった。
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭51−20208号公報
【特許文献2】特表2004−525230号公報
【特許文献3】特開2004−18511号公報
【特許文献4】特開2005−8639号公報
【特許文献5】特開2002−145890号公報
【特許文献6】特開2008−150546号公報
【特許文献7】特開2010−132604号公報
【特許文献8】特許第4571125号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0245754号明細書
【特許文献10】米国特許第6229036号明細書
【特許文献11】米国特許第6414061号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、上記従来技術の問題を解決し、ゴム組成物の硬化物のヒステリシスロスを大幅に低下させると共に、耐磨耗性を大幅に向上させることが可能な含硫黄有機ケイ素化合物及びその製造方法、該含硫黄有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤、該ゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物並びに該ゴム組成物の硬化物を用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、加水分解性シリル基と、チオ尿素構造、チオウレタン構造及び/又はジチオウレタン構造とを有する含硫黄有機ケイ素化合物を主成分とするゴム用配合剤を使用したゴム組成物が、所望の低燃費タイヤ特性を満足することを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す有機ケイ素化合物及びその製造方法、ゴム用配合剤、ゴム組成物並びにタイヤを提供する。
〔請求項1〕
下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物。
【化1】


[式中、R1は水素原子、加水分解性シリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基から選択される1種であり、R2は水素原子、加水分解性シリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基から選択される1種であり、R1及びR2のうち少なくとも1つは下記一般式(2)
【化2】


(式中、波線は結合手を示す。R3は独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Zは独立にハロゲン原子又は−OR5を示し、R5は酸素原子が介在されていてもよくカルボニル基が介在されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である。)
で表される加水分解性シリル基であり、Xは硫黄原子、第二級窒素原子又は第三級窒素原子であり、Yは硫黄原子又は酸素原子であり、X及びYのうち少なくとも1つは硫黄原子であり、A及びBはそれぞれ独立に単結合、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子及び/又は(チオ)カルボニル炭素を間に挟んでもよく、置換基を有してもよい二価炭化水素基である。]
〔請求項2〕
1及びR2のアミノ基が下記一般式(13)で示される基、メルカプト基が下記式(14)で示される基、エポキシ基が下記一般式(15)で示される基である請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化3】


(式中、波線は結合手を示し、R6は独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はR6同士がアルキレン基で連結された炭素数4〜10の環式構造である。R7,R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はR7とR8がアルキレン基で連結された炭素数4〜10の環式構造である。)
〔請求項3〕
下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化4】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、A’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、R4は直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基である。)
〔請求項4〕
下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化5】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、Z,R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。A’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、B’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、n’は1〜3の整数である。)
〔請求項5〕
下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化6】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、B’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、R4は直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基である。)
〔請求項6〕
下記一般式(6)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化7】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、Y,Z,R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。A”は独立に直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、Qは直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、n’は1〜3の整数である。)
〔請求項7〕
下記一般式(7)〜(12)で表される構造より選択される請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化8】


(式中、Y,R5,nは上記と同じであり、R4は直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基であり、n’は1〜3の整数である。)
〔請求項8〕
1級アミノ基、2級アミノ基及びチオール基から選ばれる基を含有する有機ケイ素化合物と、1個以上のイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するモノマーとを反応させ、チオウレタン結合、ジチオウレタン結合及び/又はチオ尿素結合を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
〔請求項9〕
イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物と、メルカプト化合物及び/又は活性水素を有するアミン化合物とを反応させ、チオウレタン結合、ジチオウレタン結合及び/又はチオ尿素結合を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
〔請求項10〕
1級アミノ基、2級アミノ基及びチオール基から選ばれる基を含有する有機ケイ素化合物と、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物とを反応させ、チオウレタン結合、ジチオウレタン結合及び/又はチオ尿素結合を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
〔請求項11〕
請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物を含んでなるゴム用配合剤。
〔請求項12〕
更に、少なくとも1種の粉体(B)を含有してなり、前記有機ケイ素化合物(A)と少なくとも1種の粉体(B)との質量比が、(A)/(B)=70/30〜5/95の割合である請求項11記載のゴム用配合剤。
〔請求項13〕
請求項11又は12記載のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物。
〔請求項14〕
請求項13記載のゴム組成物の硬化物を用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機ケイ素化合物は、加水分解性シリル基と、チオ尿素構造、チオウレタン構造及び/又はジチオウレタン構造とを有しており、該化合物を主成分とするゴム用配合剤を使用したシリカ充填ゴム組成物は、上記化合物中の窒素原子によるシリカとの相互作用並びにイソシアネートによるメルカプト保護効果により、シリカ近傍での反応性及び分散性の向上とゴム組成物加硫時の低スコーチ性を両立することが可能である。また、該有機ケイ素化合物を含んでなるゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物を用いて製造されたタイヤは、ヒステリシスロスが低い他、耐磨耗性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の反応生成物の1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明において「シランカップリング剤」は「有機ケイ素化合物」に含まれる。
【0014】
[有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)]
本発明の有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化9】


[式中、R1は水素原子、加水分解性シリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基から選択される1種であり、R2は水素原子、加水分解性シリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基から選択される1種であり、R1及びR2のうち少なくとも1つは下記一般式(2)
【化10】


(式中、波線は結合手を示す(以下、同じ)。R3は独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Zは独立にハロゲン原子又は−OR5を示し、R5は酸素原子が介在されていてもよくカルボニル基が介在されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である。)
で表される加水分解性シリル基であり、Xは硫黄原子、第二級窒素原子又は第三級窒素原子であり、Yは硫黄原子又は酸素原子であり、X及びYのうち少なくとも1つは硫黄原子であり、A及びBはそれぞれ独立に単結合、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子及び/又は(チオ)カルボニル炭素を間に挟んでもよく、置換基を有してもよい二価炭化水素基である。]
【0015】
上記一般式(1)で表される本発明の有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)の特徴としては、下記構造(i)、(ii)を共に有することが挙げられる。
(i)加水分解性シリル基
(ii)チオ尿素構造、チオウレタン構造、ジチオウレタン構造の何れか1つの構造
【0016】
上記式(1)において、R1,R2の加水分解性シリル基は、下記一般式(2)で表される。
【化11】


ここで、R3は独立に炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基などが挙げられる。
また、Zは独立にハロゲン原子又は−OR5を示し、R5は酸素原子が介在されていてもよくカルボニル基が介在されていてもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜18の一価炭化水素基であり、−OR5としては、アルキル部分に酸素原子が介在してもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルケニルオキシ基もしくはアシルオキシ基又は炭素数6〜10のアリーロキシ基である。具体的には、塩素原子、臭素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、プロペノキシ基、アセトキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エチレングリコールモノアルキルエーテル基などが挙げられる。
nは1〜3の整数、好ましくは2又は3である。
【0017】
また、上記式(1)において、R1,R2のアミノ基としては、下記一般式(13)で表される一価の構造基が例示できる。
【化12】


上記式中、R6は独立に水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はR6同士がアルキレン基で連結された炭素数4〜10、好ましくは4〜8の環式構造であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基、スチリル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
アミノ基の具体的な構造としては、1級アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基などの2級アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピリジニル基などの3級アミノ基が挙げられる。
【0018】
また、R1,R2のメルカプト基は、下記式(14)
【化13】


で表される一価の構造基であり、エポキシ基としては、下記一般式(15)で表される一価の構造基が例示できる。
【化14】


上記式中、R7,R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、R7とR8がアルキレン基で連結された炭素数4〜10、好ましくは4〜8の環式構造であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基、スチリル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
エポキシ基の具体的な構造としては、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブテンオキシド基、ペンテンオキシド基、ヘキセンオキシド基、スチレンオキシド基、シクロヘキセンオキシド基などが挙げられる。
【0019】
Xは硫黄原子、第二級窒素原子又は第三級窒素原子であり、第三級窒素原子としては、例えば、
【化15】


などが例示できる。
【0020】
A,Bは、単結合、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子及び/又は(チオ)カルボニル炭素(即ち、カルボニル炭素もしくはチオカルボニル炭素)を間に挟んでもよく、置換基を有してもよい二価炭化水素基であり、二価炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは3〜15の直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)などが挙げられる。
また、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子あるいは(チオ)カルボニル炭素を間に挟んでもよい二価炭化水素基としては、例えば、
【化16】


(式中、Yは上記と同じであり、A”,Qはそれぞれ独立に直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、上記A,Bの説明において例示したものと同様のものが例示できる。)
が例示でき、置換基を有してもよい二価炭化水素基としては、例えば、
【化17】


などの置換基を間に挟む二価炭化水素基が例示できる。
【0021】
上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物として、具体的には、下記一般式(3)〜(6)で示すものを挙げることができる。
【化18】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、A’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、R4は直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基である。)
【化19】


(式中、A’,Y,Z,R3,nは上記と同じであり、Z,R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。B’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、n’は1〜3の整数、好ましくは2又は3である。)
【化20】


(式中、B’,Y,Z,R3,R4,nは上記と同じである。)
【化21】


(式中、Y,Z,R3,n,n’は上記と同じであり、Y,Z,R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。A”は独立に直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、Qは直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基である。)
【0022】
上記式中、R4は直鎖状、分岐状又は環状の、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは3〜18の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基、スチリル基などの芳香族炭化水素基などが挙げられる。
また、上記式中、A’,A”,B’,Qの直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基としては、上記A,Bで例示した直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0023】
より具体的には、下記一般式(7)〜(12)で示すことができる。
【化22】


(式中、Y,R4,n,n’は上記と同じ、R5は独立に酸素原子が介在されていてもよくカルボニル基が介在されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基である。)
上記式中、R5は上記の通りである。
【0024】
本発明の有機ケイ素化合物は、1級アミノ基、2級アミノ基あるいはチオール基を含有する有機ケイ素化合物と、1個以上のイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するモノマーとの反応や、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物と、メルカプト化合物及び/又は活性水素を有するアミン化合物との反応、1級アミノ基、2級アミノ基あるいはチオール基を含有する有機ケイ素化合物と、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物との反応等により得ることができる。
【0025】
本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料である1級アミノ基、2級アミノ基あるいはチオール基を含有する有機ケイ素化合物としては特に限定されないが、具体的には、α−アミノメチルトリメトキシシラン、α−アミノメチルメチルジメトキシシラン、α−アミノメチルジメチルメトキシシラン、α−アミノメチルトリエトキシシラン、α−アミノメチルメチルジエトキシシラン、α−アミノメチルジメチルエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−2(アミノエチル)α−アミノメチルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)α−アミノメチルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)α−アミノメチルジメチルメトキシシラン、N−2(アミノエチル)α−アミノメチルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)α−アミノメチルメチルジエトキシシラン、N−2(アミノエチル)α−アミノメチルジメチルエトキシシラン、ビス−(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(ジメチルメトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(ジメチルエトキシシリルプロピル)アミン、α−メルカプトメチルトリメトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、α−メルカプトメチルジメチルメトキシシラン、α−メルカプトメチルトリエトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、α−メルカプトメチルジメチルエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0026】
本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるイソシアネートモノマー又は、イソチオシアネートモノマー、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物としては特に限定されないが、市販されていて入手容易なものとして、メチルイソシアネート、アリルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルイソチオシアネート、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0027】
本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる原料であるメルカプト化合物及び/又は活性水素を有するアミン化合物としては特に限定されないが、市販されていて入手容易なものとして、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ステアリルアミン、ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンなどが挙げられるが、ここに例示されたものに限らない。
【0028】
本発明の有機ケイ素化合物を製造するにあたり、1級アミノ基、2級アミノ基あるいはチオール基を含有する有機ケイ素化合物と、イソシアネートモノマー又はイソチオシアネートモノマーとの配合比、及びイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物と、メルカプト化合物及び/又は活性水素を有するアミン化合物との配合比、1級アミノ基、2級アミノ基あるいはチオール基を含有する有機ケイ素化合物と、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物との配合比は、反応性、生産性の点から、1級アミノ基、2級アミノ基及びメルカプト基1モルに対し、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を0.5〜1.5モル、特に0.7〜1.3モルの範囲で反応させることが好ましい。イソシアネート化合物及び/又はイソチオシアネート化合物の配合量が少なすぎると1級アミノ基、2級アミノ基あるいはチオール基が多量に残存し、シランの諸物性に影響を与えないものの、ゴム用配合剤として使用時にスコーチが生じやすくなるおそれがある。逆に多すぎると残存するイソシアネート化合物及び/又はイソチオシアネート化合物が重合してゲル化するおそれがある。
【0029】
上記より、アミノ基とイソチオシアネート基の反応によりチオ尿素結合が形成され、メルカプト基とイソシアネート基の反応によりチオウレタン結合が形成され、メルカプト基とイソチオシアネート基の反応によりジチオウレタン結合が形成され、本発明の有機ケイ素化合物が得られる。
【0030】
本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒は上述した原料である1級アミノ基、2級アミノ基あるいはチオール基を含有する有機ケイ素化合物や、1個以上のイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するモノマー、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物、メルカプト化合物及び/又は活性水素を有するアミン化合物等と非反応性であれば特に限定されないが、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0031】
本発明の有機ケイ素化合物製造時には、必要に応じて触媒を使用してもよい。触媒は一般に使用されるイソシアネートの反応触媒でよく、好ましくはスズ化合物である。その中でもスズ(II)のカルボン酸塩化合物が触媒活性の点より好ましい。
触媒の使用量は、イソシアネートモノマー又はイソチオシアネートモノマー1molに対して好ましくは0.00001〜1molであり、より好ましくは0.0001〜0.01molである。触媒の使用量が多すぎると効果が飽和し、非経済的であり、少なすぎると触媒効果が不足し、反応速度が遅く、生産性が低下する場合がある。
【0032】
本発明の有機ケイ素化合物製造時において、反応は発熱反応であり、不要に高温となると副反応が生じるおそれがある。そのため好ましい反応温度は20〜150℃であり、より好ましくは30〜130℃、更に好ましくは40〜110℃の範囲である。反応温度が低すぎると、反応速度が遅く、生産性が低下する場合があり、高すぎるとイソシアネートモノマー又はイソチオシアネートモノマーの重合反応等の副反応が生じるおそれがある。
【0033】
本発明の有機ケイ素化合物製造時に必要とされる反応時間は、上記に述べたような発熱反応による温度管理が可能であり、且つ発熱反応が終了していれば特に限定されないが、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは1〜10時間程度である。
【0034】
本発明のゴム用配合剤は、上記有機ケイ素化合物(A)を含んでなるものである。また、本発明の上記有機ケイ素化合物(A)を予め少なくとも1種の粉体(B)と混合したものをゴム用配合剤として使用することも可能である。粉体(B)としては、各種ゴム組成物でフィラーとして用いるカーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。補強性の観点からシリカ及び水酸化アルミニウムが好ましく、シリカが特に好ましい。
【0035】
粉体(B)の配合量は、成分(A)/(B)の質量比で70/30〜5/95、更に好ましくは60/40〜10/90の割合である。粉体(B)の量が少なすぎるとゴム用配合剤が液状となり、ゴム混練機への仕込みが困難となる場合がある。粉体(B)の量が多すぎるとゴム用配合剤の有効量に対し、全体量が多くなってしまい輸送費用が高くなる場合がある。
【0036】
本発明のゴム用配合剤は、本発明の目的を損なわない範囲で脂肪酸、脂肪酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体等の有機ポリマーやゴムと混合されたものでもよく、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合してもよく、その形態として液体状でも固体状でもよく、更に有機溶媒に希釈したものでもよく、またエマルジョン化したものでもよい。
【0037】
本発明のゴム用配合剤は、シリカ配合のゴム組成物に対して好適に用いられる。
この場合、上記ゴム用配合剤の添加量は、ゴム組成物に配合されるフィラー(上記粉体(B)を含む全フィラー)100質量部に対して本発明の有機ケイ素化合物を好ましくは0.2〜30質量部、特に好ましくは1〜20質量部添加するのが望ましい。有機ケイ素化合物の添加量が少なすぎると所望のゴム物性が得られないおそれがある。逆に多すぎると添加量に対して効果が飽和し、非経済的である。
【0038】
ここで、本発明にかかるゴム用配合剤を用いるゴム組成物に主成分として配合されるゴムとしては、従来から各種ゴム組成物に一般的に配合されている任意のゴム、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムやエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR,EPDM)などを単独又は任意のブレンドとして使用することができる。また、配合されるフィラーとしては、シリカ、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。ここで、上記粉体(B)を含む全フィラーの配合量は、上記ゴム100質量部に対し20〜2,000質量部、特に40〜1,000質量部であることが好ましい。
【0039】
本発明にかかるゴム用配合剤を用いるゴム組成物には、前述した必須成分に加えて、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これら添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り従来の一般的な配合量とすることができる。
【0040】
なお、これらのゴム組成物において、本発明の有機ケイ素化合物は、公知のシランカップリング剤の代わりをなすことも可能であるが、更に他のシランカップリング剤の添加は任意であり、従来からシリカ充填剤と併用される任意のシランカップリング剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよく、それらの典型例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、ビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等を挙げることができる。
【0041】
本発明のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物は、一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。なお、加硫は通常の公知の条件でよい。
【0042】
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を用いて製造することを特徴とし、上記のゴム組成物の硬化物がトレッドに用いられていることが好ましい。本発明のタイヤは、転がり抵抗が大幅に低減されていることに加え、耐磨耗性も大幅に向上している。なお、本発明のタイヤは、従来公知の構造で特に限定はなく、通常の方法で製造できる。また、本発明のタイヤが空気入りのタイヤの場合、タイヤ内に充填する気体として通常のあるいは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中、部は質量部を示し、粘度、比重、屈折率は、25℃において測定した値である。また、NMRは核磁気共鳴分光法、IRは赤外分光法の略である。粘度は毛細管式動粘度計による25℃における測定に基づく。
【0044】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ヘキサンジイソシアネート168.0g(1.0mol)、2−エチルヘキセン酸スズ(II)2.0g(0.0048mol)、トルエン654.3gを納め、オイルバスにて70℃に加熱した。その中にγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)486.4g(2.04mol)を滴下し、その後110℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにチオウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後反応溶液を減圧溜去し、トルエンを除去することで得られた反応生成物は融点43〜45℃の白色固体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(16)に示す構造を有する単一の生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルを図1に示す。
【0045】
【化23】


(式中、Etはエチル基を示す。以下同じ。)
【0046】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、トルエンジイソシアネート(三井化学社製TDI)174.0g(1.0mol)、2−エチルヘキセン酸スズ(II)2.0g(0.0048mol)、トルエン654.3gを納め、オイルバスにて70℃に加熱した。その中にγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)486.4g(2.04mol)を滴下し、その後110℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにチオウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後反応溶液を減圧溜去し、トルエンを除去することで得られた反応生成物は融点56〜58℃の白色固体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(17)、(18)に示す構造を有する化合物の混合物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0047】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.72(t,4H),
1.22(t,18H),1.71(quint,4H),2.17(s,3H),
2.93(t,4H),3.77(q,12H),7.66(s,2H),
7.02−7.29(m,3H). ※構造(18)のみ記載
【0048】
【化24】

【0049】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−9007)247.4g(1.0mol)、2−エチルヘキセン酸スズ(II)1.5g(0.0036mol)、トルエン490.6gを納め、オイルバスにて70℃に加熱した。その中にγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)243.2g(1.02mol)を滴下し、その後110℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにチオウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後反応溶液を減圧溜去し、トルエンを除去することで得られた反応生成物は粘度26.2mm2/s、比重1.044、屈折率1.4539の淡黄色透明液体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(19)に示す構造を有する単一生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0050】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.56(t,2H),
0.66(t,2H),1.13(t,9H),1.15(t,9H),
1.57(quint,2H),1.66(quint,2H),
2.85(t,2H),3.22(t,2H),3.75(q,9H),
3.76(q,9H),5.92(s,1H).
【0051】
【化25】

【0052】
[実施例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、イソシアン酸オクタデシル295.5g(1.0mol)、2−エチルヘキセン酸スズ(II)1.5g(0.0036mol)、トルエン490.6gを納め、オイルバスにて70℃に加熱した。その中にγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)243.2g(1.02mol)を滴下し、その後110℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにチオウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後反応溶液を減圧溜去し、トルエンを除去することで得られた反応生成物は融点50〜52℃の白色固体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(20)に示す構造を有する単一生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0053】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.66(t,2H),
0.81(t,3H),1.17(t,9H),1.20(m,30H),
1.43(quint,2H),1.67(quint,2H),
2.87(t,2H),3.20(t,2H),3.74(q,6H),
5.25(s,1H).
【0054】
【化26】

【0055】
[実施例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−9007)247.4g(1.0mol)、2−エチルヘキセン酸スズ(II)1.5g(0.0036mol)、トルエン490.6gを納め、オイルバスにて70℃に加熱した。その中にドデシルメルカプタン203.4g(1.01mol)を滴下し、その後110℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにチオウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後反応溶液を減圧溜去し、トルエンを除去することで得られた反応生成物は粘度26.2mm2/s、比重1.044、屈折率1.4539の淡黄色透明液体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(21)に示す構造を有する単一生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0056】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.55(t,2H),
0.79(t,3H),1.16(t,9H),1.20(m,16H),
1.31(m,2H),1.42(quint,2H),
1.57(quint,2H),2.80(t,2H),3.20(t,2H),
3.72(q,6H),5.81(s,1H).
【0057】
【化27】

【0058】
[実施例6]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、イソチオシアン酸メチル73.1g(1.0mol)、2−エチルヘキセン酸スズ(II)0.9g(0.0023mol)、トルエン316.1gを納め、オイルバスにて70℃に加熱した。その中にγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−803)243.2g(1.02mol)を滴下し、その後110℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソチオシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにジチオウレタン結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後反応溶液を減圧溜去し、トルエンを除去することで得られた反応生成物は粘度17.6mm2/s、比重1.081、屈折率1.5047の淡黄色透明液体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(22)に示す構造を有する単一生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0059】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.71(t,2H),
1.18(t,9H),1.74(quint,2H),3.22(t,2H),
2.88−3.35(m,3H,NH−CH3),3.75(q,6H),
7.61−8.43(m,1H,N).
【0060】
【化28】

【0061】
[実施例7]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、イソチオシアン酸メチル73.1g(1.0mol)、トルエン316.1gを納め、オイルバスにて70℃に加熱した。その中にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−903)225.4g(1.02mol)を滴下し、その後110℃にて2時間加熱撹拌した。IR測定により原料のイソチオシアネート基由来の吸収ピークが完全に消失し、代わりにチオ尿素結合由来の吸収ピークが生成したことを確認し、反応終了とした。その後反応溶液を減圧溜去し、トルエンを除去することで得られた反応生成物は粘度152mm2/s、比重1.067、屈折率1.4960の淡黄色透明液体であり、1H NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(23)に示す構造を有する単一生成物であることを確認した。この化合物の1H NMRスペクトルデータは以下の通りである。
【0062】
1H NMR(300MHz,CDCl3,δ(ppm)):0.63(t,2H),
1.22(t,9H),1.65(quint,2H),
2.87(s,3H,NH−CH3),3.41(t,2H),3.79(q,6H),
6.32−7.05(m,2H,N).
【0063】
【化29】

【0064】
[実施例8〜14、比較例1〜3]
油展エマルジョン重合SBR(JSR社製#1712)110部、NR(一般的なRSS#3グレード)20部、カーボンブラック(一般的なN234グレード)20部、シリカ(日本シリカ工業社製ニプシルAQ)50部、実施例1〜7の有機ケイ素化合物又は下記に示す比較化合物A〜C6.5部、ステアリン酸1部、老化防止剤6C(大内新興化学工業社製ノクラック6C)1部を配合してマスターバッチを調製した。これに亜鉛華3.0部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)0.5部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1.0部、硫黄1.5部を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
次に、ゴム組成物の未加硫又は165℃×30分の条件で加硫した場合の加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表1,2に示す。
【0065】
〔未加硫物性〕
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に準拠し、余熱1分、測定4分、温度130℃にて測定し、比較例1を100として指数で表した。指数の値が小さいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れている。
【0066】
〔加硫物性〕
(2)動的粘弾性
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、引張の動歪5%、周波数15Hz、60℃の条件にて測定した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を160gとした。tanδの値は比較例1を100として指数で表した。指数値が小さいほどヒステリシスロスが小さく低発熱性である。
【0067】
(3)耐磨耗性
JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン型磨耗試験機を用いて室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例1の磨耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きいほど、磨耗量が少なく耐磨耗性に優れることを示す。
【0068】
〔比較化合物A〕
【化30】


〔比較化合物B〕
【化31】


〔比較化合物C〕
【化32】

【0069】
【表1】

【0070】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物。
【化1】


[式中、R1は水素原子、加水分解性シリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基から選択される1種であり、R2は水素原子、加水分解性シリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基から選択される1種であり、R1及びR2のうち少なくとも1つは下記一般式(2)
【化2】


(式中、波線は結合手を示す。R3は独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、Zは独立にハロゲン原子又は−OR5を示し、R5は酸素原子が介在されていてもよくカルボニル基が介在されていてもよい炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、nは1〜3の整数である。)
で表される加水分解性シリル基であり、Xは硫黄原子、第二級窒素原子又は第三級窒素原子であり、Yは硫黄原子又は酸素原子であり、X及びYのうち少なくとも1つは硫黄原子であり、A及びBはそれぞれ独立に単結合、又は酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれるヘテロ原子及び/又は(チオ)カルボニル炭素を間に挟んでもよく、置換基を有してもよい二価炭化水素基である。]
【請求項2】
1及びR2のアミノ基が下記一般式(13)で示される基、メルカプト基が下記式(14)で示される基、エポキシ基が下記一般式(15)で示される基である請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化3】


(式中、波線は結合手を示し、R6は独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はR6同士がアルキレン基で連結された炭素数4〜10の環式構造である。R7,R8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はR7とR8がアルキレン基で連結された炭素数4〜10の環式構造である。)
【請求項3】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化4】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、A’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、R4は直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基である。)
【請求項4】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化5】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、Z,R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。A’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、B’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、n’は1〜3の整数である。)
【請求項5】
下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化6】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、B’は直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、R4は直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基である。)
【請求項6】
下記一般式(6)で表されることを特徴とする請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化7】


(式中、Y,Z,R3,nは上記と同じであり、Y,Z,R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。A”は独立に直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、Qは直鎖状、分岐状又は環状の二価炭化水素基であり、n’は1〜3の整数である。)
【請求項7】
下記一般式(7)〜(12)で表される構造より選択される請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化8】


(式中、Y,R5,nは上記と同じであり、R4は直鎖状、分岐状又は環状の一価炭化水素基であり、n’は1〜3の整数である。)
【請求項8】
1級アミノ基、2級アミノ基及びチオール基から選ばれる基を含有する有機ケイ素化合物と、1個以上のイソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するモノマーとを反応させ、チオウレタン結合、ジチオウレタン結合及び/又はチオ尿素結合を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項9】
イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物と、メルカプト化合物及び/又は活性水素を有するアミン化合物とを反応させ、チオウレタン結合、ジチオウレタン結合及び/又はチオ尿素結合を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項10】
1級アミノ基、2級アミノ基及びチオール基から選ばれる基を含有する有機ケイ素化合物と、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を含有する有機ケイ素化合物とを反応させ、チオウレタン結合、ジチオウレタン結合及び/又はチオ尿素結合を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項記載の有機ケイ素化合物を含んでなるゴム用配合剤。
【請求項12】
更に、少なくとも1種の粉体(B)を含有してなり、前記有機ケイ素化合物(A)と少なくとも1種の粉体(B)との質量比が、(A)/(B)=70/30〜5/95の割合である請求項11記載のゴム用配合剤。
【請求項13】
請求項11又は12記載のゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物。
【請求項14】
請求項13記載のゴム組成物の硬化物を用いたタイヤ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−240922(P2012−240922A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109396(P2011−109396)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】