説明

有機ケイ素化合物

【課題】優れた接着性及び透明性を発揮する接着助剤として好適な有機ケイ素化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)


[式中、Rは下記式


(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜10の一価炭化水素基)]で示される有機ケイ素化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の有機ケイ素化合物に関するものであり、これは高透明性及び高接着性の特性を発揮する接着助剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)にアルコキシ基等の官能基を付加させたものは、接着助剤として有効である(例えば、特許文献1:特公昭45−23354号公報、特許文献2:特開昭57−137355号公報参照)。これには、イソシアヌル酸のシラン、シロキサン置換体が接着助剤として有用である旨記載されているが、シリコーン組成物に混合した場合、相溶性が低く白濁してしまうために透過性が悪く、透明性を求める用途には適さないという課題があった。また、特許文献3:特開平3−2189号公報にはイソシアヌレート骨格にエポキシ基含有シリル基を導入したプレポリマーが記載されているが、アリル基を有しないため、接着助剤としては有効ではなかった。
【0003】
【特許文献1】特公昭45−23354号公報
【特許文献2】特開昭57−137355号公報
【特許文献3】特開平3−2189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた接着性及び透明性を発揮する接着助剤として好適な有機ケイ素化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、トリアリルイソシアヌレートをベースとして改質した化合物について鋭意検討した結果、アリル基を残し、その構造内に特定のシロキサン結合を有するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を導入することで透明性の向上を達成し得、接着に関しても優れた性能を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0006】
従って、本発明は、下記一般式(1)
【化1】

[式中、Rは下記式
【化2】

(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜10の一価炭化水素基、aは1〜5の整数、bは1〜3の整数、cは1〜5の整数である。)
で示される基、x、yはx=1又は2、y=1又は2で、x+y=3を満足する整数、nは1〜10の整数である。)]
で示される有機ケイ素化合物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機ケイ素化合物は、硬化性組成物、特にシリコーンゴム組成物、シリコーン樹脂組成物に混合することによって、高透明性及び高接着性を有する接着助剤として機能するため、そのような条件が求められるLED封止剤等の光学材料等の用途において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)
【化3】

で示されるものである。
【0009】
この場合、Rは下記式
【化4】

(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜10の一価炭化水素基、aは1〜5の整数で、好ましくは2又は3である。bは1〜3の整数で、好ましくは2又は3、特に好ましくは3である。)
で示される基又は下記式
【化5】

(但し、cは1〜5の整数で、好ましくは2又は3である。)
で示される基である。
nは1〜10の整数で、好ましくは1〜3の整数である。
1の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示され、特にメチル基、エチル基が好ましい。
2の炭素数1〜10の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基等の炭素数6〜10のアリール基等が例示され、特にメチル基が好ましい。
また、x、yはx=1又は2、y=1又は2で、x+y=3を満足する整数である。
【0010】
本発明の好適な有機ケイ素化合物を例示すると以下の通りである。
【0011】
【化6】

(式中、nは上記の通り。)
【0012】
本発明の有機ケイ素化合物を得る方法としては、トリアリルイソシアヌレートに下記式
【化7】

(式中、R、nは上記の通り。)
で示されるオルガノハイドロジェンシロキサンを白金系触媒等の付加反応触媒の存在下に、常法により付加反応させる方法が採用される。
【0013】
この場合、トリアリルイソシアヌレートの所用のアリル基に上記オルガノハイドロジェンシロキサンが付加するように、トリアリルイソシアヌレートに対するオルガノハイドロジェンシロキサンのモル比を選定することができる。なお、付加反応触媒の量は触媒量であるが、トリアリルイソシアヌレートが白金の触媒活性を低下させるおそれがあるため、通常のヒドロシリル化反応の場合より多く用いることが好ましく、白金系触媒の場合、トリアリルイソシアヌレートに対し白金金属換算量として10ppm〜2質量%、特に50ppm〜1質量%とすることが好ましい。また、反応温度は通常、室温〜100℃、好ましくは40〜70℃とすることができる。
また、反応は無溶剤で行ってもよいが、トルエン等の有機溶媒を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の有機ケイ素化合物は、硬化性樹脂組成物、特にシリコーンゴム組成物、シリコーン樹脂組成物に対する接着助剤として好適に用いることができる。この場合の配合量は、従来の接着助剤の配合量と同様でよいが、硬化性樹脂組成物100質量部に対して通常0.1〜20質量部、特に高透明性が要求されるシリコーンゴム組成物、シリコーン樹脂組成物の場合は0.1〜10質量部である。
【実施例】
【0015】
以下、実施例及び参考例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0016】
下記の実施例において用いた原料化合物は以下の通りである。
【化8】

【0017】
[実施例1]
蛇管冷却器、温度計を備えた500mLの四つ口フラスコにトリアリルイソシアヌレート(TAIC)28.23g(0.113mol)とトルエン28.23gを入れ、ごく微量に窒素を流しながら、溶液を攪拌し、50℃まで昇温した。昇温後、塩化白金酸5%2−エチルヘキサノール溶液1.13gを添加して、HDTMS64.04g(0.226mol)を滴下した。滴下終了後、60〜70℃で2時間熟成した。100℃,10mmHgで2時間濃縮し、トルエンを留去し、反応混合物88.58g(収率96%)を得た。
【0018】
上記の反応混合物はNMR及びLC−MSで同定された。
1H−NMR:
(0ppm,s,24H,Si−C3)、(0.45ppm,12H,broad,Si−C2−CH2
(1.54ppm,2H,broad,−CH2−C2−CH2−)
(3.51ppm,9H,s,Si−O−C3
(3.20−3.90ppm,4H,m,−N−C2−CH2
(4.43ppm,2H,d,CH2−CH=C2
(5.21ppm,2H,m,N−C2−CH−)
(5.80ppm,1H,CH2−C=CH2
【0019】
【化9】

(1):(2):(3)=22:58:29(質量比)
【0020】
[実施例2]
蛇管冷却器、温度計を備えた500mLの四つ口フラスコにトリアリルイソシアヌレート(TAIC)28.23g(0.113mol)とトルエン28.23gを入れ、ごく微量に窒素を流しながら、溶液を攪拌し、50℃まで昇温した。昇温後、塩化白金酸5%2−エチルヘキサノール溶液1.13gを添加して、G−HM56.00g(0.226mol)の混合液を滴下した。滴下終了後、60〜70℃で2時間熟成した。100℃,10mmHgで2時間濃縮し、トルエンを留去し、反応混合物78.33g(収率93%)を得た。
【0021】
上記の化合物はNMR及びLC−MSで同定された。
1H−NMR:
(0ppm,s,24H,Si−C3)、(0.45ppm,8H,broad,Si−C2−CH2
(1.54ppm,8H,broad,−CH2−C2−CH2−)
(2.54−2.76ppm,4H,m,C2=[bridge head:epoxy])
(3.09ppm,2H,m,−CH2−C=[bridge head:epoxy])
(3.20−3.90ppm,12H,m,−N−C2−CH2−,−O−C2−)
(4.43ppm,2H,d,CH2−CH=C2
(5.21ppm,2H,m,N−C2−CH−)、(5.80ppm,1H,CH2−C=CH2
【0022】
【化10】

(4):(5):(6)=17:45:37(質量比)
【0023】
[実施例3]
蛇管冷却器、温度計を備えた500mLの四つ口フラスコにトリアリルイソシアヌレート(TAIC)28.23g(0.113mol)とトルエン28.23gを入れ、ごく微量に窒素を流しながら、溶液を攪拌し、50℃まで昇温した。昇温後、塩化白金酸5%2−エチルヘキサノール溶液1.13gを添加して、HDTMS32.02g(0.113mol)、G−HM28.00g(0.113mol)の混合液を滴下した。滴下終了後、60〜70℃で2時間熟成した。100℃,10mmHgで2時間濃縮し、トルエンを留去し、反応混合物83.84g(収率95%)を得た。
【0024】
上記の化合物はNMR及びLC−MSで同定された。
1H−NMR:
(0ppm,s,24H,Si−C3)、(0.45ppm,10H,broad,Si−C2−CH2
(1.54ppm,6H,broad,−CH2−C2−CH2−)
(2.54−2.76ppm,2H,m,C2=[bridge head:epoxy])
(3.09ppm,1H,m,−CH2−C=[bridge head:epoxy])
(3.51ppm,9H,s,Si−O−C3
(3.20−3.90ppm,8H,m,−N−C2−CH2−,−O−C2−)
(4.43ppm,2H,d,CH2−CH=C2
(5.21ppm,2H,m,N−C2−CH−)
(5.80ppm,1H,CH2−C=CH2
【0025】
【化11】

【0026】
【化12】

(7):(8):(9):(10):(11):(12):(13):(14):(15)=10:11:12:11:24:8:4:9:10(質量比)
【0027】
[参考例]
付加硬化性シリコーン組成物KER2500(信越化学工業(株)製)100質量部に、接着助剤として実施例3で得られた反応混合物又は下記の構造を持つ接着助剤Aを1質量部添加し、透明性及び接着性の比較を行った。
結果を下記表1に示す。
【0028】
なお、透過率の測定法及びAlせん断、PPA(ポリフタルアミド)せん断の測定法は、以下の通りである。
透過率:上記接着助剤を添加した組成物を加熱硬化(100℃/60分)させ、25mm×15mm×2mmのシートを作製し、スペクトロフォトメーターU−3310((株)日立製作所製)を用いて測定した。
Alせん断試験:2枚の厚さ1mmのAl板の間に上記接着助剤を添加した組成物を流し込み、加熱硬化(100℃/60分)させて接着させ(接着剤層の厚さ2mm)、せん断試験を行った。
PPAせん断試験:2枚の厚さ2mmのAl板の間に上記接着助剤を添加した組成物を流し込み、加熱硬化(100℃/60分)させて接着させ(接着剤層の厚さ2mm)、せん断試験を行った。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果より、本発明の有機ケイ素化合物は、優れた接着性及び透明性を発揮する接着助剤として有効であることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、Rは下記式
【化2】

(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜10の一価炭化水素基、aは1〜5の整数、bは1〜3の整数、cは1〜5の整数である。)
で示される基、x、yはx=1又は2、y=1又は2で、x+y=3を満足する整数、nは1〜10の整数である。)]
で示される有機ケイ素化合物。
【請求項2】
下記式(2)〜(4)から選ばれる請求項1記載の有機ケイ素化合物。
【化3】

(式中、nは1〜10の整数である。)

【公開番号】特開2010−120884(P2010−120884A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296450(P2008−296450)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】