説明

有機ゲル化剤、塗布組成物、および機能性フィルム

【課題】均一で面状ムラのない面状均一性の高いフィルムを形成しうる新規有機ゲル化剤を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される有機ゲル化剤。
【化1】


式中L、およびLはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、B、B、およびBは水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。ただし、B、B、およびB中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を一つ以上有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ゲル化剤、有機ゲル化剤を含む塗布組成物およびそれを用いた機能性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機媒体に添加するか添加後に加熱、放冷といった単純な操作でゲルを形成する有機ゲル化剤がいくつか見出されている。ゲルは、常温で液状を呈する化粧品、医薬品、接着剤、樹脂、塗料等の流動性の制御、加工等の技術への応用が期待される。例えば、流出事故による廃油や家庭内廃油のゲル化もしくは固化が可能となれば、それらの容易かつ効率の良い回収処理と廃棄、また廃溶剤の燃料としての再利用に有効となる。また、色素増感型太陽電池の電解液においても、液の蒸発を防止するために、ゲル化剤の使用が検討されている。このような液状有機媒体をゲル化させる機能を有する物質(ゲル化剤)としては、長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、特許文献1参照。)、12−ヒドロキシステアリン酸(例えば、特許文献2参照。)、N−アシルアミノ酸アミド(例えば、特許文献3参照。)等が知られていた。さらに、近年、液状有機媒体をゲル化または固化させる低分子化合物の開発が盛んに行われており、シクロヘキサントリカルボキサミド、ジアルキルウレア誘導体、環状ジペプチド等の種々の化合物が報告されている。(例えば、非特許文献1参照。)
【0003】
一方、パーフルオロアルキル基を含有する化合物は産業界ではその表面張力低下能や界面活性から古くから利用されてきており、その有用性については広く知られている。したがってパーフルオロアルキル基含有ゲル化剤においては、これまでのゲル化剤にはない機能を発現する可能性があり、非常に有用と考えられる。
しかしながら、パーフルオロアルキル基を含有するゲル化剤の報告例は非常に少ない。たとえば、非特許文献2にはパーフルオロアルキル基をもったゲル化剤が報告されているが、ゲル化できる溶媒はイソプロパノールのみであり、機能性フィルムの塗布溶剤として好ましく用いられるトルエンなどの溶媒では結晶化してしまいゲル化することができないといった問題がある。また、非特許文献3には超臨界二酸化炭素をゲル化可能な含フッ素ゲル化剤が報告されているが、一般的な有機溶剤に対するゲル化能については不明である。
【0004】
近年、各種コーティング法を用いた材料の開発が進んでおり、特に数μm〜数10nmレベルの薄層塗布技術は、光学フィルム、印刷、フォトリソグラフィーなどで必要であり、薄膜化、基材の大型化、塗布の高速化などに伴い要求される塗布精度も高くなってきている。特に光学フィルムの製造においては、膜厚の制御が光学性能を左右する非常に重要なポイントであり、さらに生産性を高める必要もあるので、精度を高く保ちつつ塗布速度の高速化を実現できる技術への要求は高くなってきている。
しかしながら、溶剤を用いたオールウェット塗布は生産性の観点からは非常に有利である反面、塗布直後の溶剤乾燥を一定に保つことが容易でなく、面状ムラが生じやすい。ここで言う面状ムラとは、塗布後のレベリング不良に起因する塗布スジや、溶剤乾燥速度差に起因する乾燥ムラ、乾燥風で引き起こされる厚みムラである風ムラのことである。
【0005】
均一な膜を形成しつつ、ムラを防止するための一手段として、塗布液の粘度を高めて流動防止する方法が考えられる。塗布液の粘度を上昇させるためにはポリマー等の増粘剤を添加することが知られているが、単に塗布液の粘度を高めることは、レベリング性を悪化させ、塗布時にスジが発生することにつながる。
【特許文献1】特開昭55−75493号公報
【特許文献2】特公昭60−44968号公報
【特許文献3】特公昭54−33798号公報
【非特許文献1】「表面」、36巻、1998年、291〜303頁
【非特許文献2】テトラヘドロン、2002年、58巻、4049-4052ページ。
【非特許文献3】サイエンス、1999年、286巻、1540-1543ページ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明は、パーフルオロアルキル基を含有する新規有機ゲル化剤を提供することを目的とする。また、パーフルオロアルキル基を含有する新規有機ゲル化剤を用いることで、塗布性に優れ、塗布により均一で面状ムラのない面状均一性の高いフィルムを形成しうる有機溶剤系塗布組成物を提供することを目的とする。そして本発明は乾燥ムラや風ムラが低減され、面状均一性が高い機能性フィルム、特に、光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ある種の含フッ素化合物が種々の有機溶剤をゲル化可能であることを見出し、この新規ゲル化剤を添加した塗布組成物を用いることにより、塗布時に生じる塗布スジ、乾燥ムラ、風ムラを低減することができることを見出した。また、該含フッ素ゲル化剤を用いることにより、高速塗布した場合にも、光学性能や物理性能のバラツキが小さく、面状均一性の高い光学フィルムを得ることができるという知見を得た。そして、これらの知見に基づき本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、下記含フッ素新規ゲル化剤並びにそれを含む塗布組成物ならびにそれを用いて塗布された機能性フィルム、特に、光学フィルムの発明により達成される。本発明における機能性フィルムとは、光学機能、導電機能、誘電機能、絶縁機能、バリア機能、高強度、耐熱機能などの機能を持ったフィルムを示す。機能性フィルムの種類は特に限定するものではなく、例えば透明ハードコート層、着色層、防眩層、反射防止層、光学補償層などを一つ或いはそれ以上有するフィルムが挙げられる。
【0009】
すなわち本発明は、以下の有機ゲル化剤、塗布組成物、光学フィルム、機能性フィルムおよびその製造方法を提供するものである。
[1]下記一般式(1)で表される化合物からなる有機ゲル化剤。
【0010】
【化1】

【0011】
式中LおよびLはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、B、B、およびBはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。ただし、B、B、およびB中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を一つ以上有する。
[2]前記一般式(1)で表される化合物において、B、B、およびB中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を二つ以上有することを特徴とする[1]項記載の有機ゲル化剤。
[3]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする[1]または[2]項記載の有機ゲル化剤。
【0012】
【化2】

【0013】
式中T、T、およびTはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R、およびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R〜R中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を二つ以上有する。kは0または1である。
[4]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤。
【0014】
【化3】

【0015】
式中、AおよびAはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。n11およびn21はそれぞれ独立に0〜6の整数を、n12およびn22はそれぞれ独立に3〜12の整数を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Tは2価の連結基または単結合を表す。R3は置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、kは0または1である。
[5]前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする[1]または[2]記載の有機ゲル化剤。
【0016】
【化4】

【0017】
式中Z,Z,およびZはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、R,R,およびRはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R〜R中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を二つ以上有する。kは0から4までの整数である。
[6]トルエン、ヘキサン、エタノール、メタノール、クロロホルム、メチルエチルケトン、2−メチルペンタノン又はシクロヘキサノンをゲル化可能な[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤。
[7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤を含む塗布組成物。
[8] [1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤を塗布組成物全体の質量に対して0.01質量%〜10.0質量%含有することを特徴とする[7]項に記載の塗布組成物。
[9]水の含率が30質量%以下であることを特徴とする[7]または[8]項に記載の塗布組成物。
[10]塗布組成物に液晶性化合物を少なくとも一種含むことを特徴とする[7]〜[9]のいずれか1項に記載の塗布組成物。
[11]塗布組成物が有機微粒子分散物および/または無機微粒子分散物を含むことを特徴とする[7]〜[10]のいずれか1項に記載の塗布組成物。
[12] [7]〜[11]のいずれか一項に記載の塗布組成物を支持体上に塗布する工程を有することを特徴とする機能性フィルムの製造方法。
[13] [7]〜[11]のいずれか一項に記載の塗布組成物を塗布した後に、支持体および/または形成された液膜を冷却する工程を有することを特徴とする機能性フィルムの製造方法。
[14] [7]〜[11]のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された機能性フィルム。
[15] [7]〜[11]のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された光学フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、含フッ素有機ゲル化剤により、様々な種類の有機溶剤をゲル化させることが可能となる。また、含フッ素有機ゲル化剤を添加した塗布組成物を用いることにより、均一に塗布でき、塗布時に生じる乾燥ムラや風ムラを低減できる。また、該ゲル化剤を用いることにより、高速塗布した場合にも、光学性能や物理性能のバラツキが小さく、面状均一性の高い光学フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明で用いられる化合物について説明する。
【0020】
【化5】

【0021】
式中、B、B、およびBはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
【0022】
、B、Bで表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、または環状であって、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1から30のアルキル基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基。)、更に環構造が多いトリシクロ構造などが挙げられる。
【0023】
無置換アルキル基の好ましい例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、セチル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、2−オクチルドデシル基、ドコシル基、テトラコシル基、2−デシルテトラデシル基、トリコシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。また、置換基を有するアルキル基の好ましい例としては、2−ヘキセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、ベンジル基、β−フェネチル基、2−メトキシエチル基、4−フェニルブチル基、4−アセトキシエチル基、6−フェノキシヘキシル基、12−フェニルドデシル基、18−フェニルオクタデシル基、12−(p−クロロフェニル)ドデシル基、2−(燐酸ジフェニル)エチル基等を挙げることができる。また、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロアルキル基としては、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルなどを挙げることができる。
【0024】
、B、Bで表されるアリール基とは、好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基を表し、その具体例としてはフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0025】
、B、Bで表されるヘテロ環基としては、3〜8員環の、置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5〜6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ環基の具体例としては、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、2−ピリミジル、4−ピリジルなどが挙げられる。さらにこれらの環が互いに縮合した環からなる基、ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香族炭化水素環と縮合した環からなる基も用いられる。また、さらにこれらの環は置換基を有していても良く、その置換基の例としては、B、B、Bで表される基が含有してもよい置換基として後述するものと同じである。
【0026】
、B、Bで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロ環基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に置換基で置換されていても良い。
、B、Bで表される基が含有してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(モノシクロアルキル、ビシクロアルキルなどのシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0027】
更に詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状の、置換もしくは無置換のアルキル基を表す。好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。)、アルケニル基(直鎖、分岐または環状であって置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、
【0028】
シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5もしくは6員であって置換もしくは無置換の、芳香族性もしくは非芳香族性のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
【0029】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
【0030】
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0031】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
【0032】
アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
【0033】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−ブチルフェニルチオ、4−ヘキサノイルアミノフェニルチオ、2−ベンズアミドフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ、1,3,4−チアジアゾール−2−イルチオ)、
【0034】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
【0035】
アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、
【0036】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
これらの置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。
【0037】
、B、Bで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロ環基に含まれる置換基としては、アニオン性、カチオン性の置換基も用いることは可能であるが、有機溶剤への溶解性を付与するという観点からは、ノニオン性の置換基であることが好ましい。ここでアニオン性の置換基とはマイナスの電荷をもっているものを、カチオン性の置換基とはプラスの電荷をもっているものをいい、ノニオン性の置換基とは電荷をもたない置換基のことをいう。また、B,B,Bはそれぞれ炭素数は1以上であればよいが、有機溶媒への溶解性の観点から、B,B,Bのいずれかは炭素数4以上が好ましく、8以上がより好ましく、12以上が最も好ましい。
は好ましくは水素原子またはアルキル基である。
【0038】
本発明の有機ゲル化剤は、一般式(1)において、B、B、B中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基(以下Rf基とあらわす)を一つ以上有する。B,B,Bに含まれるRf基は、少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、Rfは少なくとも8個のフッ素原子で置換されていればよく、直鎖状、分岐状および環状のいずれの構造であってもよい。また、フッ素原子以外の置換基でさらに置換されていてもよいし、フッ素原子のみで置換されていてもよい。Rfのフッ素原子以外の置換基としては、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、フッ素以外のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0039】
Rfとしては、炭素数4〜20のフッ素置換アルキル基が好ましく、炭素数4〜14がより好ましく、炭素数4〜14がさらに好ましい。また、Rfに含まれるフッ素原子数は8個以上であれば特に限定はないが、好ましくは8個以上42個以下、より好ましくは、10個以上26個以下、さらに好ましくは10個以上23個以下である。Rfの好ましい例を以下に示す。
【0040】
【化6】

【0041】
Rfとしてさらに好ましくは,末端がトリフルオロメチル基で置換された炭素数4〜14のアルキル基であり、特に好ましくは−(CH2)n1−(CF2)n2Fで表される炭素数4〜14のアルキル基である(n1は0〜6の整数を表す。n2は3〜12の整数を表す)。
具体的には、−(CH23−(CF24F、 −(CH22−(CF24F、−(CH26−(CF24F、−(CH22−(CF26F、−(CH23−(CF26F、−(CH22−(CF2F、−(CH23−(CF2F、−(CH22−(CF210F、−(CH23−(CF210F、等が挙げられ、いずれも好ましく用いられる。
【0042】
Rf基はB,B,Bのいずれの置換基に含まれていてもかまわないが、Bまたは/およびBに含まれることが好ましい。
Rf基はB,B,B中に一つ以上含まれればよいが、二つ以上含まれることがより好ましい。この場合、B,B,Bのいずれかの置換基に二つ以上含まれていても、B,B,Bのうちの二つ以上にそれぞれ含まれていてもかまわない。。
【0043】
,およびLはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表す。2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR22−(R22は水素原子または置換基を表し、置換基としてはB、B、Bが有してもよい置換基の例と同様であり、R22として好ましくはアルキル基または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、より好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR22−を単独またはそれらを組合せて得られる基である。さらに好ましくは、Lは、−O−、−S−、または−NR22−であり、Lは炭素数1〜12のアルキレン基、−C(=O)−、−S(=O)2−である。
【0044】
上記一般式(1)で表される化合物はいわゆるアミノ酸誘導体である。母核となるアミノ酸としては、いずれのアミノ酸も好ましく用いられるが、特に、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、セリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンなどが好ましく用いられる。アミノ酸の骨格の不斉炭素は光学活性であってもラセミ体であってもかまわない。光学活性体であることが好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物について、L、L、Bなどをより具体的に表した一般式を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の一般式中、Bはアミノ酸側鎖が有する置換基の末端部分であってB,Bと同義であり、また、B31,B32,B33はBとまったく同義で用いている。
以下の一般式ではアミノ酸骨格の不斉炭素はラセミ体で記すが、アミノ酸の骨格の不斉炭素は光学活性であってもラセミ体であってもかまわない。
【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(2)で表される化合物がより好ましい。
【0048】
【化9】

【0049】
式中、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R、およびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。kは0または1である。
【0050】
、R、Rの具体例、好ましい範囲は、上記一般式(1)中のB,B,Bの説明で示したものとまったく同じである。また、R,Rで表させる置換基の具体例、好ましい範囲は、上記一般式(1)のB,B,Bで表される基が含有してもよい置換基として示したものと同じである。RおよびRとしては、好ましくはアルキル基または水素原子であり、更に好ましくは水素原子である。
【0051】
1、R、Rの炭素数の総計は、6以上100以下であることが好ましく、12以上80以下であることがより好ましく、12以上50以下であることが最も好ましい。
【0052】
本発明の有機ゲル化剤は、一般式(2)において、R〜R中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基(Rf基)を二つ以上有する。その具体例および好ましい範囲は一般式(1)中のRfとして示したものとまったく同じである。R1およびR2はともに少なくとも8個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基すなわちRf基であることが好ましい。
【0053】
前記式中、T1、T,Tはそれぞれ2価の連結基または単結合を表す。前記2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR21−(R21は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR4およびR5が有してもよい置換基の例と同様であり、R21として好ましくはアルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基である。
1およびT2としてより好ましくは、−(単結合)、−O−、−S−または−NR21−であり、更に好ましくは−O−または−NH−であり、特に好ましくは−O−である。
【0054】
また、Tとしてより好ましくは、−(単結合)、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR21−を単独またはそれらを組合せて得られる基であり、さらに好ましくは、−(単結合)、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NR21−、−S(=O)2−である。
【0055】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(3)で表される化合物がさらに好ましい。
【0056】
【化10】

【0057】
式中、T,およびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表す。置換基としては一般式(2)中のRおよびRがそれぞれ表す置換基の例と同様であり、R23として好ましくは、アルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、更に好ましくは水素原子である。T,Tとしてより好ましくは、−O−または−NH−である。また、TとTは同じであることが好ましい。
は2価の連結基または単結合を表し、具体例、好ましい範囲は上記一般式(2)におけるTと同様である。
は置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、具体例、好ましい範囲は上記一般式(2)におけるRと同様である。
【0058】
式中、kは0または1である。
n11、n21はそれぞれ独立に0〜6の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表し、更に好ましくは2または3を表し、最も好ましくは2である。n21、n22はそれぞれ独立に3〜12の整数を表し、より好ましくは、3〜10であり、更に好ましくは4〜10である。これらのn11、n21、n12、n22のもっとも好ましい組合せとしては、n11、n21が2または3で、且つn12、n22は6、8、10であるものが好ましい。また、n11=n21、n12=n22であることが好ましい。
【0059】
式中、AおよびAはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。AおよびAは、好ましくは、ともにフッ素原子である。
【0060】
上記一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(4)で表される化合物もまた好ましい。
【0061】
【化11】

【0062】
式中Z,Z,Zはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、R,R,Rは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。R〜R中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を二つ以上有する。kは0から4までの整数である。
【0063】
前記式中、Z,Z,Zはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基については特に制約はないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)2−または−NR24−(R24は水素原子または置換基を表し、置換基としてはR4およびR5が有してもよい置換基の例と同様であり、R24として好ましくはアルキル基、前述のRfまたは水素原子であり、更に好ましくは水素原子である)を単独またはそれらを組合せて得られる基である。
およびZとしてさらに好ましくは、―(単結合)、−C(=O)−、−S(=O)2−、−C(=O)O−、−C(=O)NR24−である。また、Zとしてさらに好ましくは、―(単結合)、−O−、−S−または−NR21−であり、更に好ましくは−O−または−NH−であり、特に好ましくは−O−である。
kは0から4までの整数である。好ましくは4である。
【0064】
,R,Rは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
,R,Rの具体例、好ましい範囲は、上記一般式(2)中のR,R,Rの説明で示したものとまったく同じである。
本発明の有機ゲル化剤は、一般式(4)において、R6〜R8中少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基(Rf基)を二つ以上有する。その具体例および好ましい範囲は一般式(1)中のRfとして示したものとまったく同じである。
Rf基はR〜Rのいずれに含まれていてもかまわないが、R,Rのいずれかに含まれていることが好ましくRおよびRはともにRf基であることがより好ましい。
【0065】
、R、Rの炭素数の総計は、6以上100以下であることが好ましく、12以上80以下であることがより好ましく、12以上50以下であることが最も好ましい。
【0066】
以下に一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【化12】

【0072】
【化13】

【0073】
【化14】

【0074】
以下に、本発明で用いられる含フッ素ゲル化剤の具体的合成例を示すが、本発明はこれらによって限定されない。本発明の化合物は例えばフマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体等を原料にして合成できる。フマル酸誘導体、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体を原料とした場合には、それらの2重結合にマイケル付加反応を行なうことにより合成ができ、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体を原料とした場合には、それらのアミノ基をアミド化することで合成できる。本発明で用いられる含フッ素ゲル化剤は例えば、前記非特許文献(1)や特開2003−114504号公報に記載の方法により合成することができる。
【0075】
(有機ゲル化剤)
本発明の有機ゲル化剤について説明する。
本発明の有機ゲル化剤は液状有機媒体をゲル化させる作用を有する。本発明の有機ゲル化剤は、液状有機媒体に添加するか添加後に加熱、放冷といった単純な操作でゲルを形成する。ゲルとは、液を傾けても流れない状態のことをいう。
【0076】
ここで用いられる液状有機媒体としては、加熱により本発明のゲル化剤を十分に溶解させ、室温以下に冷却したときにゲルを形成するものであれば特に制限はない。ここでいう液状有機媒体としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類、ベンセン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート;PC)等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等の窒素化合物類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性媒体類、ピリジン等の塩基性媒体類、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン等の含ハロゲン化合物、コーティング用モノマー、ケロシン、ガソリン、軽油、重油等の燃料、オリーブ油、大豆油、コーン油、ヒマシ油、牛脂、ホホバ油等の動植物油、スクワラン、流動パラフィン等の鉱物油、ジメチルポリシロキサンやメチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン類、オレイン酸オクチルドデシル、グリセリルトリイソオクタネート、ネオペンチルグリコールジイソオクタネート等の合成エステル類等が挙げられる。なお、これらの有機媒体が混合されたものや、主成分である媒体に対しても有効である。この場合、ゲル化可能な有機媒体の使用量は、全体の30vol%以上が好ましい。
また、液晶性化合物も広義の液状有機媒体と捉えることができ、本発明の化合物は液晶性化合物をゲル化する用途で用いることも可能である。
【0077】
ゲルを調製する際における本発明の化合物の添加量としては、ゲル化させる液状有機媒体の種類にもよるが、液状有機媒体に対して、0.01〜50質量%、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%の使用量で用いてゲル化することが好ましい。本発明の化合物の添加量が少なすぎると、有機媒体に溶解後も液体のまま変化を示さない。多すぎてもゲル化剤が溶解しきれない場合がある。またゲルの硬さは、本発明の化合物の添加量によって調節することが可能である。
【0078】
ゲルの形成方法としては、本発明の化合物を前記液状有機媒体に添加し、加温して両者を相溶させたのちに、冷却、静置することでゲルを形成させる方法が一般的である。加温の際の温度については、両者が相溶する温度であれば特に制限されないが、100℃を越えないことが好ましく、流動性有機物質の沸点が100℃以下の場合には、沸点程度が好ましい。また、この温度は、用いる本発明の化合物や対象とする流動性有機物質の種類によって適宜選択されうるものである。
また、冷却に関しても特に制限されず、室温で徐冷してもよいし、氷冷等により強制的に冷却してもよい。ゲル化可能な温度範囲については特に限定しないが、ー50℃〜100℃の範囲内でゲル化するものが好ましく、−30℃〜50℃の範囲内でゲル化するものがより好ましく、−15℃〜30℃の範囲内でゲル化するものがもっとも好ましい。
【0079】
本発明の含フッ素ゲル化剤は機能性フィルムを作製するための塗布組成物に添加して用いることができる。以下、塗布組成物について説明する。
【0080】
(塗布組成物)
含フッ素ゲル化剤を含有する組成物は、該組成物を塗布する温度においてはゾル状態をとり、塗布に適した粘度を呈するのに対し、塗布直後、塗布層の温度が低下したときに塗布層を増粘および/またはゲル化させるものである。本発明においては、乾燥の途中で増粘および/またはゲル化することにより、乾燥過程で生じる表面張力などの不均一性に由来する組成物の流動を抑制して、膜厚ムラができないようにすることができる。
【0081】
前記の含フッ素ゲル化剤含有組成物は、塗布時には組成物がゾル状態であるような温度に保ち、液膜を形成することが好ましい。しかし、温度が高いと溶剤の蒸発が速く、濃度の変動や表面の皮ばりが起こりやすくなるので好ましくない。したがって、塗布時の組成物の温度は10〜60℃が好ましく、15〜50℃がより好ましく、20〜45℃が更に好ましい。
【0082】
一方で、含フッ素ゲル化剤含有組成物は、塗布後には速やかに増粘および/またはゲル化が起こるように温度が下がることが好ましい。塗布時の組成物の温度は後述するように室温より高い場合もあり、また組成物に含まれる有機溶剤の蒸発により温度が若干下がるので必ずしも冷却する必要はないが、支持体を冷却したロールを通して搬送したり、組成物を塗布して液膜を形成した後に支持体が搬送される区域の気温を下げたりすることにより、支持体および/または塗布された液膜を冷却することが好ましい。例えば支持体を冷却する場合には、支持体の温度が組成物の温度よりも5〜50℃低いことが好ましく、8〜40℃低いことがより好ましく、10〜30℃低いことが更に好ましい。支持体の温度としては、−30〜35℃になるように冷却することが好ましく、0〜25℃になるように冷却することがより好ましく、10〜20℃になるように冷却することが更に好ましい。
【0083】
ゲル化する温度は含フッ素ゲル化剤の種類や含有量によって変化するので、含フッ素ゲル化剤の含有量は、塗布組成物の組成や含フッ素ゲル化剤の種類によって適宜調節し、好ましいゲル化の程度を示す量だけ含有することが好ましい。
【0084】
塗布組成物中の本発明の含フッ素ゲル化剤の含有量には特に制限はないが、通常塗布組成物中に0.01〜10質量%(塗布組成物全体の質量に対する質量%)、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜2.5質量%含有させることができる。また、本発明の含フッ素ゲル化剤は1種類のみ含有させても、複数種類含有させても良い。
【0085】
本発明の含フッ素ゲル化剤は、25℃において塗布溶剤に対する溶解度が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0086】
本発明の含フッ素ゲル化剤を含有する塗布組成物は様々な用途に使うことができる。本発明の含フッ素ゲル化剤を含む塗布組成物を塗布することにより製造する機能性フィルムと製造方法について以下に示す。
【0087】
本発明における機能性フィルムとは、光学機能、導電機能、誘電機能、絶縁機能、バリア機能、高強度、耐熱機能などの機能を持ったフィルムを示す。機能性フィルムの種類は特に限定するものではなく、例えば透明ハードコート層、着色層、防眩層、反射防止層、光学補償層などを一つ或いはそれ以上有するフィルムが挙げられる。膜厚、面状の均一性が厳しく要求される防眩層、反射防止層、光学補償層などを有する光学機能フィルムを製造するに当たって本発明の製造方法は有用である。本発明の機能性フィルムを光学フィルムとして用いる場合について更に以下に説明する。光学フィルムとは、光学機能をもったフィルムのことを示し、例えば、反射防止、選択反射、光位相変換、光学補償といった光学機能をもつ層を一つ或いはそれ以上有するフィルムが挙げられる。
【0088】
本発明の機能性フィルムを構成する光学機能層は、上記含フッ素ゲル化剤を含有する塗布組成物を調製した後、この塗布組成物を塗布して形成する。含フッ素ゲル化剤を添加した塗布組成物は、塗布適性に優れるとともに、均一でムラの無い層を形成することが可能となる。
本発明で形成しうる機能性フィルム層の厚さは特に制限はないが、好ましくは10nm〜100μm、より好ましくは10nm〜50μmである。
本発明の機能性フィルムの成膜後の溶媒種の含量は少なければ少ないほどよいが好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下とする。
【0089】
本発明に係る機能性層を形成するために用いる塗布組成物中に含まれる溶媒種としては有機溶剤でも有機溶剤と水の混合溶剤でも良いが、水の含率は低いことが好ましく、0〜30質量%が好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、0〜5質量%がもっとも好ましい。また、塗布組成物中の有機溶剤の含有率は20〜99.5質量%が好ましく、25〜99質量%がより好ましく、30〜99質量%がもっとも好ましい。
【0090】
前記塗布組成物中に含まれる溶媒組成としては、単独および混合のいずれでもよく、全溶媒中、沸点が120℃以下の溶媒が50〜100質量%を占めることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、さらに好ましくは100質量%である。また、さらに好ましくは、全溶媒中、沸点が100℃以下の溶媒が50〜100質量%を占めることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、もっとも好ましくは100質量%である。沸点が100℃以下の溶媒が50質量%以下であると、乾燥速度が非常に遅くなり、塗布面状が悪化し、塗布膜厚にもムラが生じるため、反射率などの光学特性も悪化するおそれがあり好ましいものではない。本発明では、沸点が100℃以下の溶媒を多く含む塗布組成物を用いる事により、この問題を解決することができる。
【0091】
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類、アセトン(56.1)、2−ブタノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0092】
沸点が100℃以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBK、115.9)、1−ブタノール(117.7)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノン、である。
【0093】
塗布組成物中に含まれる成分についてさらに説明する。
【0094】
本発明の含フッ素ゲル化剤を含む塗布組成物は、前述の成分の他に、特に制限無く該含フッ素化合物以外の成分を含有することができる。即ち、飽和炭化水素類(n−ヘキサン、n−オクタン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、クロロベンゼンなど)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなど)、アルコール類(メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、2−メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテートなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリノンなど)、ハロゲン系溶剤(1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム、パーフルオロオクタンなど)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)等の有機溶剤、水などを含有することができる。
【0095】
また、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂類、有機・無機顔料、染料、カ−ボン等の着色剤、棒状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物等の液晶化合物、単官能或いは多官能の重合性化合物、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末、高級脂肪酸、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフロロエチレン)、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート等の有機微粉末、感光剤、重合開始剤、耐光性向上剤、耐候性向上剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、消泡剤、粘度調整剤、艶調整剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤等の各種添加剤等を、目的に応じて選択した各種成分を使用することが可能である。
【0096】
これらのうち、特に重要な成分は、(1)光学的異方性を発現させるために用いられる液晶性化合物(棒状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物、高分子液晶化合物など)、および(2)屈折率を調整するための有機および無機微粒子分散物(二酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)である。本発明の含フッ素ゲル化剤を添加した塗布組成物は(1)または(2)のいずれかの成分を含むことが好ましい。以下に本発明で好ましく用いられる液晶性化合物および有機および無機微粒子分散物について説明する。
【0097】
液晶性化合物について説明する。本発明に用いられる液晶性化合物の基本骨格は多くの文献に記載されており、例えば松本正一、角田市良共著「液晶の基礎と応用(工業調査会1992年刊)」、日本化学会編、季刊化学総説、No.22、「液晶の化学(1994年刊)」を参考にする事ができ、例えば棒状液晶化合物、コレステリック液晶化合物およ
びディスコティック液晶化合物が挙げられる。
【0098】
棒状液晶化合物の具体的化合物としては、季刊化学総説 第22巻 液晶の化学(1994年)日本化学会編の第4章、第7章,第10章、および液晶デバイスハンドブック 日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載の化合物が挙げられる。例えば、ビフェニル誘導体、安息香酸フェニルエステル誘導体、ベンジリデンアニリン誘導体、アゾベンゼン誘導体、アゾキシベンゼン誘導体、スチルベン誘導体および、それらのベンゼン環が飽和になったものあるいは複素環に置き換わったものが挙げられる。
【0099】
本発明のディスコティック液晶性化合物とは、ディスコティック液晶相を示し得る化合物であり、円盤状のコア部とそれを中心として放射状に伸びる側鎖部分とから構成されている。ディスコティック液晶相は、円盤状分子の中心コアが分子間力で柱状に積み重なった柱状相(columnar phase)と、円板状分子が乱雑に凝集したディスコティックネマティック相と、カイラルディスコティックネマティック相に大別できることが知られている。
【0100】
具体的化合物として挙げると、例えば日本化学会編、季刊化学総説No.22「液晶の化学」第5章、第10章2節(1994年刊 学会出版センター)、W.H.de jeuの研究報告、Physical propertiesof liquid crystalline materials(1980 by Gordon and Breach,Science Publishers)C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.Liq.Cryst.71巻、111頁(1981年)、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)、J.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhang、J.S.Mooreらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.,116巻、2655頁(1994年)に記載の母核化合物の誘導体が挙げられる。
【0101】
例えば、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、ヘキサエチニルベンゼン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、コロネン誘導体およびフェニルアセチレンマクロサイクルの誘導体が挙げられる。さらに、日本化学会編、“化学総説No.15 新しい芳香族の化学”(1977年 東京大学出版会刊)に記載の環状化合物およびそれらの複素原子置換等電子構造体を挙げることができる。また、上記金属錯体の場合と同様に、水素結合、配位結合等により複数の分子の集合体を形成して円盤状の分子となるものでもよい。また好ましく用いられる具体的化合物の構造は、特開2004-198511号公報の段落番号[0065]〜[0080]にも記載されている。
【0102】
これらを分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された構造によりディスコティック液晶化合物が形成される。母核化合物として好ましくは、ディスコティックネマティック(ND )相を形成するものであり、特に好ましくはトリフェニレンおよびトルキセンが挙げられる。側鎖としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基が挙げられ、側鎖中にアリール基、複素環基を含んでいても良い。また、C.Hansch、A.Leo、R.W.Taft著、ケミカルレビュー誌(Chem.Rev.)1991年、91巻、165〜195頁(アメリカ化学会)に記載されている置換基で置換されていてもよく、代表例としてアルコキシ基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子が挙げられる。更に側鎖中に、例えばエーテル基、エステル基、カルボニル基、チオエーテル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基のような官能基を有していても良い。
【0103】
液晶性化合物の配向状態は、長期間または温度、湿度や機械的変形に対し,安定に維持するのが困難な場合が多い。したがって、液晶性化合物としては、十分な硬化性を確保し、層の耐熱性を向上する観点から、分子内に重合性基あるいは架橋性基を有する液晶性化合物が好ましい。重合性基としては、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリニジル基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
【0104】
次に有機および無機微粒子分散物について説明する。本発明で用いられる有機または無機微粒子分散物は、好ましくは、屈折率を調整するためのものであり、これらを含む塗布組成物を用いて、防眩性反射防止フィルムを作製することができる。以下では、防眩性反射防止フィルムを作製する際に用いられる塗布組成物中の有機または無機微粒子分散物の具体例を示すが、本発明で用いることのできる微粒子分散物はこれらに限定されるものではない。
【0105】
防眩性反射防止フィルムは透明支持体上に防眩性ハードコート層を有し、さらにその上の低屈折率層を有してなるが、必要に応じ、防眩性ハードコート層の下層に平滑なハードコート層を設けることができる。防眩性反射防止フィルムのハードコート層には、高屈折率を有する金属酸化物超微粒子を添加して用いられる。
【0106】
高屈折率を有する金属酸化物超微粒子の例として、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなる粒径100nm以下、好ましくは50nm以下の微粒子を挙げることができる。微粒子の好ましい例としては、ZrO2、TiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO等が挙げられる。これらの中でも、特にZrO2が好ましく用いられる。
【0107】
防眩性ハードコート層には、防眩性付与と防眩性ハードコート層の干渉による反射率悪化防止、色むら防止の目的で、樹脂または無機化合物の粒子が用いられ、例えば、シリカ粒子やTiO2粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、などが好ましく用いられる。平均粒径は1.0乃至10.0μmが好ましく、1.5乃至7.0μmがより好ましい。また、粒子の形状としては、真球、不定形、のいずれも使用できる。異なる2種以上の粒子を併用して用いてもよい。
【0108】
一方、低屈折率層に用いられる無機微粒子としては非晶質のものが好ましく用いられ、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物が特に好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いても良い。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。該無機微粒子の平均粒径は0.001乃至0.2μmであることが好ましく、0.005乃至0.05μmであることがより好ましい。微粒子の粒径はなるべく均一(単分散)であることが好ましい。該無機微粒子は表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤の使用が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。該無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング処理が特に有効である。
【0109】
これらの素材を含む膜を形成するために、バインダーとしてポリマーや架橋性基を含有する化合物を添加し、塗布および乾燥後に光、熱、電子線などにより架橋反応を起こさせても良い。用途にもよるが、膜は強度が要求される場合が多く、一般にバインダーとして多官能モノマーや架橋性基を含むポリマーを用いることが多い。先に述べた機能を発現するための素材が架橋性基を有していてバインダーを兼ねていても良い。
【0110】
多官能モノマー中の重合性基としては、エチレン性不飽和基((メタ)アクリル酸誘導体、ビニルエーテル誘導体、スチレン誘導体など)、環状エーテル基(エポキシ基、オキセタン基など)等が挙げられる。
【0111】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0112】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
【0113】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0114】
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製の商品名イルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0115】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0116】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0117】
本発明では特に塗布組成物のポットライフの観点から、放射線の作用によりラジカルを発生する化合物が好ましい。
【0118】
また、1分子中に複数のエポキシ基を有する化合物も好ましく使用される。このような硬化剤としては、1分子中に複数のグリシジル基または3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物が良く知られており、本発明ではいずれも有用であるが、保存時の液安定性の観点から特にグリシジル基を有する硬化剤が好ましい。また屈折率の観点からは、特に脂肪族のものが好ましい。エポキシ硬化剤としては官能基密度が高く、かつ分子量が高すぎずある程度の運動性があり硬化効率が良いという観点からグリシジル基3〜10個程度を有するものが特に好ましい。
【0119】
上記1分子中に複数のエポキシ基を有する化合物としては、例えば市販のものでは、デナコールEX314,同411,同421,同521,同611,同612等(以上ナガセ化成工業株式会社製 いずれも商品名)、セロキサイド、GT301,同401等(以上ダイセル工業株式会社製 いずれも商品名)等を挙げることができる。
【0120】
本発明において上記1分子中に複数のエポキシ基を有する化合物を硬化剤として用いる時には、塗布組成物中に硬化触媒を配合することができる。該硬化触媒としては、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のプロトン酸、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン、トリス(ジメチルアミノ)メチルフェノール等の3級アミン、2−メチルー4−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トルエンスルホン酸シクロへキシルエステル、トルエンスルホン酸イソプロピルエステル等の加熱により分解してプロトン酸を発生する化合物、あるいは以下に記載する放射線の作用により酸触媒を発生する各種化合物を挙げることができるが本発明では特に皮膜形成用組成物のポットライフの観点から、放射線の作用により酸を発生する化合物が好ましい。
【0121】
放射線の作用により酸を発生する化合物としては、例えば有機エレクトロニクス材料研究会(ぶんしん出版)編「イメージング用有機材料」p187〜198、特開平10−282644号等に種々の例が記載されておりこれら公知の化合物を使用することができる。具体的には、RSO−(Rはアルキル基、アリール基を表す)、AsF6−、SbF6−、PF6−、BF−等をカウンターイオンとするジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム塩、トリハロメチル基が置換したオキサジアゾール誘導体やS−トリアジン誘導体等の有機ハロゲン化物、有機酸のo−ニトロベンジルエステル、ベンゾインエステル、イミノエステル、ジスルホン化合物等が挙げられ、好ましくは、オニウム塩類、特に好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩類である。これらの放射線の作用により、酸を発生する化合物と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
【0122】
本発明の光学フィルムについてさらに詳しく説明する。
【0123】
本発明の光学フィルムは液晶表示装置用の光学補償層を設けて光学補償フィルムとして用いることができる。光学補償層は配向膜を塗布、適宜配向処理した後に液晶化合物を塗布、配向させることにより製造することができる。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明の光学補償フィルムは、以下に示すような様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。更に、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0124】
本発明の光学補償フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートとして用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、および特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.143やJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0125】
本発明の光学補償フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0126】
本発明の光学補償フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。
【0127】
VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。本発明の光学補償フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0128】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、国際公開第98/48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開第00/65384号パンフレットに記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0129】
上記光学補償フィルムにさらに反射防止層、防眩性層、λ/4層、λ/2層として機能
を付与してもよい。
【0130】
本発明の光学フィルムには、反射防止層を設けることもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順から構成されたものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材或いはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。
【0131】
基材面に(中屈折層を設ける場合もある)高屈折率層、空気に向かって低屈折率層を順に積層し、高屈折率層及び低屈折率層の光学膜厚光の波長に対しある値に設定することにより光学干渉層を作り、反射防止積層体としたものが反射防止層としては特に好ましく、屈折率と膜厚は分光反射率の測定より計算して算出し得る。本発明の光学フィルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであるが、この加工を施すことによって、透明樹脂フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働きをするものである。カール防止層は基材の防眩層又は反射防止層を有する側と反対側に設ける態様或いは、例えば透明樹脂フィルムの片面に易接着層を塗設する場合もあり、又逆面にカール防止加工を塗設するような態様が挙げられる。
【0132】
本発明の光学フィルムには、透明ハードコート層を設けることができる。透明ハードコート層としては活性線硬化性樹脂或いは熱硬化樹脂が好ましく用いられる。活性線硬化性樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができ、例えば特開昭59−151110号公報に記載されている。
【0133】
本発明の光学フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム社製 商品名TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0134】
トリアセチルセルロースは、単層または複数の層からなる。単層のトリアセチルセルロースは、特開平7−11055号公報等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作成され、後者の複数の層からなるトリアセチルセルロースは、特開昭61−94725号公報、特公昭62−43846号公報等で開示されている、いわゆる共流延法により作成される。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0135】
本発明の機能性フィルムは、以下の方法で各層を透明支持体上に塗設し製造することができるが、この方法に制限されない。
【0136】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、この塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法およびエクストルージョンコート法が好ましく、ワイヤーバーコート法およびエクストルージョンコート法がさらに好ましい。その後、光照射あるいは加熱して、機能性層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これにより機能性層が形成される。ここで、必要であれば他の機能性層この上に同様な方法で塗布してもよい。
【実施例】
【0137】
本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
合成例1 例示化合物(G−42)の合成
【0139】
【化15】

【0140】
パーフルオロオクチルエタノール(55.7g, 0.12mol)、L−グルタミン酸(7.36g, 0
.050mol)、p−トルエンスルホン酸(11.9g, 0.0625mol)をトルエン200mlに懸濁させ、この混合物を、ディーンシュタルク装置によって生成する水を除去しながら7時間加熱還流した。その後、室温に冷却し、メタノール100mlを添加し撹拌したのち、析出した結晶を濾取した。この粗結晶を乾燥させ、これ以上の精製は行なわず、次反応を行なった。(S−1); 51.5g(粗収量85%)。
【0141】
得られたアミノ体PTS塩(S−1)(10.90g, 0.0090mol)をクロロホルム50mlに懸濁させ、室温にて、トリエチルアミン1.38mlを加えた後、50℃にて1時間加熱撹拌した。
その後、50℃のまま、イソシアネート(S-2)1.54g(0.0099mol)を滴下し、その温度で6時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水200mlに添加し、4N塩酸にて酸性にしたのち、有機層を分取した。有機層をさらに、水で二回洗浄した後、溶媒を留去した。アセトニトリルより再結晶して、ろ取、乾燥することで例示化合物(G−42)をワックス状固体として9.70g得た。
1H−NHR(300MHz, CDCl3);δ6.12(s, 1H), 5.60(s, 1H), 5.09(br, 1H), 4.88(br, 1H), 4.58-4.34(m, 4H), 4.23(t, 2H), 3.48(m, 2H), 2.55(m, 6H), 2.18(m, 1H), 1.95(m, 4H), 1.62(s, 3H), TOFMS (posi); m/z 1217(M+Na+)
【0142】
実施例1
ゲル化能の確認
下記組成の液を調製した。ゲル化剤は室温で、あるいは蒸気浴で加熱して溶解させたのち、内径約9mmの試験管に入れて設定温度の恒温槽につけ、二時間静置したのちに、ゲル化の有無を肉眼で判断した。試験管を傾けても液が流れない状態をゲル化とし、外観を示した。
表101に記載のとおり、本発明の化合物は種々の液状有機媒体をゲル化可能である。試料No101〜109と試料No110〜112を比較して、本発明のゲル化剤は、非特許文献2に記載の下記比較化合物(A)ではゲル化できないクロロホルム、トルエンをゲル化でき、ゲル化可能な溶媒種が多いことがわかる。
【0143】
【表5】

【0144】
【化16】

【0145】
実施例2
ゲル化能の確認
含フッ素ゲル化剤として、本発明の化合物の(G−2),(G−12),(G−18),(G−41),(G−48),(G−52),(G−64),(G−70)を用いた以外は、実施例1に記載の方法と同じ方法でゲル化能を調べたところ、これらの本発明の含フッ素ゲル化剤についても実施例1の試料No101〜109と同様に各種の有機溶剤をゲル化できることがわかった。
【0146】
実施例3
[機能性フィルムの作製]
(光学異方性フィルムの作製)
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/mで塗布し、60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥する。その後、ラビング処理を実施することで配向膜を作成する。
【0147】
(配向膜塗布液組成)
下記式の変性ポリビニルアルコール 40質量部
水 728質量部
メタノール 228質量部
グルタルアルデヒド 2質量部
クエン酸 0.08質量部
クエン酸モノエチルエステル 0.29質量部
クエン酸ジエチルエステル 0.27質量部
クエン酸トリエチルエステル 0.05質量部
【0148】
【化17】

【0149】
得られた配向膜に室温にて、下記塗布組成物201を塗布し、乾燥後130℃の状態で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させ、その後室温まで放冷することにより、光学異方性フィルム201を得る。このフィルムはムラが多く発生する。
(塗布組成物201)
特開平7−306317号公報記載の例示化合物(TP−53)
(ディスコチック液晶化合物) 41.01g
V#360(大阪有機化学(株)製)(多官能性モノマー)
4.06g
イルガキュア−907(チバスペシャリティケミカル)(光重合開始剤)
1.35g
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)(増感剤)
0.45g
2−ブタノン 88g
【0150】
含フッ素ゲル化剤(G−42)を1質量%添加し、その添加量だけ2−ブタノンの量を減らす以外は塗布組成物201と全く同様にして塗布組成物202を作製する。これを光学異方性フィルム201と同様の方法で塗布、乾燥、上記の液晶性化合物の配向、固定化することにより、ムラが少ない光学異方性フィルム202を得ることができる。
【0151】
また、前記配向膜を塗布後にラビングした支持体上に室温で塗布液202を塗布し、塗布後直ちに18℃に保った空間に移して乾燥させた以外は全く同様にして光学異方性フィルムを作製することにより、ムラがより少ない光学異方性フィルムが得られる。
【0152】
ゲル化剤を(G−42)から同量の(G−2),(G−43),(G−59)に置き換えた以外はこれと全く同様にして塗布液を作製して塗布したところ、これと同様にムラが少ない光学異方性フィルムが得られる。
【0153】
上記のように、本発明のゲル化剤を含有する試料において、塗布面状ムラが改良されており、塗布液に本発明の含フッ素ゲル化剤を添加する効果が確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物からなる有機ゲル化剤。
【化1】

式中LおよびLはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、B、B、およびBはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。ただし、B、B、およびB中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を一つ以上有する。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物において、B、B、およびB中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を二つ以上有することを特徴とする請求項1記載の有機ゲル化剤。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の有機ゲル化剤。
【化2】

式中T、T、およびTはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R、およびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R〜R中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を二つ以上有する。kは0または1である。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤。
【化3】

式中、AおよびAはそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子を表す。n11およびn21はそれぞれ独立に0〜6の整数を、n12およびn22はそれぞれ独立に3〜12の整数を表す。TおよびTはそれぞれ独立に−O−、−S−または−NR23−を表す。R23は水素原子または置換基を表し、Tは2価の連結基または単結合を表す。Rは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、kは0または1である。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の有機ゲル化剤。
【化4】

式中Z,Z,およびZはそれぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、R,R,およびRはそれぞれ独立に水素原子あるいは置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R〜R中に少なくとも8個のフッ素原子で置換されたアルキル基を二つ以上有する。kは0から4までの整数である。
【請求項6】
トルエン、ヘキサン、エタノール、メタノール、クロロホルム、メチルエチルケトン、2−メチルペンタノン又はシクロヘキサノンをゲル化可能な請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤を含む塗布組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機ゲル化剤を塗布組成物全体の質量に対して0.01質量%〜10.0質量%含有することを特徴とする請求項7に記載の塗布組成物。
【請求項9】
水の含率が30質量%以下であることを特徴とする請求項7または8記載の塗布組成物。
【請求項10】
塗布組成物に液晶性化合物を少なくとも一種含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の塗布組成物。
【請求項11】
塗布組成物が有機微粒子分散物および/または無機微粒子分散物を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の塗布組成物。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の塗布組成物を支持体上に塗布する工程を有することを特徴とする機能性フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の塗布組成物を塗布した後に、支持体および/または形成された液膜を冷却する工程を有することを特徴とする機能性フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項7〜11のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された機能性フィルム。
【請求項15】
請求項7〜11のいずれか1項の塗布組成物を用いて製造された光学フィルム。

【公開番号】特開2006−96821(P2006−96821A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282196(P2004−282196)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】