有機シアン化試薬により活性化された可溶性炭水化物を使用する免疫原性構築物の製造
【課題】有機シアン化試薬により活性化された可溶性炭水化物を使用する免疫原性構築物の製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの第1炭水化物含有成分をCDAPで活性化して活性化された炭水化物を形成し、そして前記活性化された炭水化物を第2成分に直接的または間接的にカップリングすることによって免疫原性構築物を製造する方法に関する。好ましくは、第1成分は多糖でありそして第2成分はタンパク質である。免疫原性構築物は、この方法により、第1成分および第2成分の直接または間接の結合により製造される。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの第1炭水化物含有成分をCDAPで活性化して活性化された炭水化物を形成し、そして前記活性化された炭水化物を第2成分に直接的または間接的にカップリングすることによって免疫原性構築物を製造する方法に関する。好ましくは、第1成分は多糖でありそして第2成分はタンパク質である。免疫原性構築物は、この方法により、第1成分および第2成分の直接または間接の結合により製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係する出願に対する相互参照
これは1995年3月22日提出の米国特許出願第08/408,717号の一部継続出願であり、後者は1993年9月22日提出の米国特許出願第08/124,491号の一部継続出願である。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国政府の目的のために、特許所有権者に特許使用料を払わないで製造し、実施許諾し、そして使用されることができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ある種の物質、例えば、破傷風トキソイドは免疫応答を固有に誘発することができ、そして修飾せずにワクチンで投与することができる。しかしながら、他の重要な物質は免疫原性ではなく、そして免疫原性の分子または構築物に変換された後、免疫応答を誘発することができる。
【0004】
本発明は、一般に、免疫原性構築物を製造する有利な方法に関する。本発明は、また、得られる免疫原性構築物およびそれから製造されたワクチン、およびこのような免疫原性構築物の使用に関する。
【0005】
さらに詳しくは、本発明は免疫原性構築物の製造において使用するために炭水化物含有抗原を活性化する方法に関する。免疫原性構築物は、炭水化物含有成分を有機シアン化剤、例えば、1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)で活性化することによって非常に好都合に製造される。
【0006】
種々のシアン化試薬は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーのゲルを製造するために不溶性粒子を活性化するための試薬として、それ自体知られている。参照、Wilcheck、et al.、Affinity Chromatography.Meth.Enzymol.、104C:3−55。Wakelsman et al.、J.C.S.Chem.Comm.、1976:21(1976)は、CDAPがタンパク質のシステイン基を修飾するために使用できる温和な試薬であることを報告している。Kohn et al.、Anal.Biochem. 115:375(1981)は、アガロース、すなわち、不溶性多糖樹脂の活性化剤として、CDAP、N−シアノトリエチル−アンモニウムテトラフルオロボレート(CTEA)、およびp−ニトロフェニルシアネート(pNPC)を比較した。他の研究者らは、他のタイプの不溶性粒子、例えば、セファローズ(Sepharose)およびグリセリル制御孔ガラスを活性化するためにCDAPを使用した。参照、例えば、Carpnter et al.、Journal of Chromatography、573:132−135(1992)。
【0007】
米国特許第3,788,948号明細書(Kagedal etal.)には、一般に、第一級または第二級アミノ基を含有する有機化合物を1または2以上のヒドロキシルおよび/または第一級および/または第二級アミノ基を含有するポリマーに結合させるために、例えば、水溶性酵素を水不溶性ポリマーに結合させるために、有機シアネート化合物を使用する方法を一般に記載している。Kagedal et al.は、ある種の有機シアネート化合物、例えば、臭化シアンよりすぐれた利点を有するpNPCを使用する方法を記載している。
【0008】
同様に、Andersson et al.、International Journal of Cancer、47:439−444(1991)は、タンパク質との結合前に、可溶性多糖を活性化するためにCDAPを使用することを報告している。ここで、シアネートで活性化された低分子量40kDのデキストランに表皮成長因子(EGF)が直接結合され、そしてデキストラン−EGF複合体を製造するために、ほぼ50:1(重量/重量)の非常に高いデキストラン/EGFの比が使用されており、そして培養された細胞へのこの複合体の結合が研究されている。
【0009】
しかしながら、Kagedal et al.およびAndersson et al.は免疫原性構築物に関するものではない。事実、低分子量デキストランとのタンパク質の複合体は、免疫原性が低いか、または非免疫原性であることが報告された。T.E.Wileman、J.Pharm.Pharmacology、38:264(1985)。
【0010】
免疫原性の程度は、もちろん、ワクチン接種の目的のために免疫原性構築物の重要な性質である。ワクチン接種法は、病気を引き起こさないが、病気に対して保護する抗体、細胞、および他の因子の形成を刺激する抗原で体を免疫化することによって、侵入因子に対してそれ自体を保護する体の生得的能力を使用する。例えば、死んだ微生物を注射して、細菌性疾患、例えば、腸チフスおよび百日咳に対して保護し、トキソイドを注射して破傷風およびジフテリアに対して保護し、そして減衰した微生物を注射してウイルス疾患、例えば、ポリオおよび麻疹に対して保護する。
【0011】
しかしながら、外来因子の注射により抗体形成を刺激することは常に可能であるというわけではない。ワクチン調製物は免疫原性でなくてはならない、すなわち、免疫応答を誘発することができなくてはならない。免疫応答は一般に下記のように記載することができる複雑な系列の反応である:(i)抗原は体の中に入り込み、抗原提示細胞と出会い、抗原提示細胞は抗原をプロセシングし、それらの表面上に抗原の断片を保持する;(ii)抗原提示細胞上に保持された抗原断片は、B細胞を助けるT細胞により認識される;および(iii)B細胞は刺激されて増殖し、抗原に対する抗体を分泌する抗体形成細胞に分割する。
【0012】
大部分の細菌多糖に対する抗体は、莢膜細菌の感染に対する保護を提供する。新生児および乳児は、多糖により例示されるようなT細胞依存性(TI)抗原に対する活力のある応答を装備することができないので、これらの微生物による生命を脅かす感染に対して極めて感受性である。このTI抗原に対する免疫応答の障害は、T細胞のエピトープを多糖に結合し、これによりそれらをT細胞依存性(TD)抗原に変換することによって克服することができる。
【0013】
免疫原性多糖構築物の製造に一般に使用される2つの結合法が存在する:(1)炭水化物とタンパク質との直接的結合;および(2)2官能性リンカーまたはスペーサー試薬を介する炭水化物とタンパク質との間接的結合。一般に、直接的結合および間接的結合の双方は、誘導化の前に炭水化物成分の化学的活性化を必要とする。
【0014】
化学的活性化は、追加の化学的反応、例えば、官能基の付加または大きい成分、例えば、タンパク質の付加を実行できる形成に官能基を変換することを意味する。誘導化は、タンパク質への1または2以上の官能的化学的基またはスペーサー試薬の付加である。
【0015】
不都合なことには、活性化法を使用して結合を介して免疫原性構築物を形成するとき、ある数の問題に当業者は直面する。例えば、複合ワクチンの生産は、むずかしい課題であった。なぜなら、一成分、多糖およびタンパク質を分解しないか、またはそれらの免疫原性エピトープを崩壊させない条件下に、多糖を活性化しそしてタンパク質を結合することが困難であるからである。免疫原性構築物の製造において、使用する方法は重要な抗原部位、すなわち、エピトープを分子上に保持するために十分に温和であるべきである。したがって、構造の完全性を維持しかつこれらの化合物におけるエピトープを保存することが望ましい。不都合なことには、この分野において現在使用されている製造工程はしばしば温和ではなく、自然の炭水化物および/またはタンパク質の構造を破壊することがある。
【0016】
そのうえ、炭水化物を修飾する既知の技術の多くは無水条件を必要とする。しかしながら、不都合なことには、炭水化物は有機溶媒中にしばしば不溶性である。Marburg et al.、J.Amer.Chem.Soc. 108:5282(1986)。
【0017】
こうして、炭水化物の修飾を記載する多数の化学文献が存在するが、それらの多くは水性抗原とともに使用するためには不適当である。1つのアプローチは、有機溶媒中の多糖の溶解度を増大するように多糖を修飾することであった。例えば、ある種の酸性多糖上の酸性水素を疎水性テトラブチルアンモニウム対イオンで置換することによって、Marburg et al.は有機溶媒中に多糖を可溶化し、かつカルボニルジイミダゾール、すなわち、乾燥溶媒中で使用しなくてはならない試薬、でヒドロキシルを活性化することができた。この方法は多糖、例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)PRPおよび肺炎球菌(Pneumococcal)多糖6Bおよび19F型とともに使用される。タンパク質のカップリングは、また、還元性アミド化により、アルデヒドを使用して達成することができ、このアルデヒドは多糖の還元性末端上に存在するか、または炭水化物の酸化によりつくられる。これらのアプローチの双方は固有の制限を有し、こうして、高分子量の多糖について、還元性末端を介するカップリングは通常遅く、非効率的であり、そして酸化はしばしば多糖の切断を生ずるか、またはそうでなければ抗原に影響を与える。
【0018】
ある種の炭水化物は、結合前にいっそう容易に活性化または誘導化することができる基、例えば、アミノまたはカルボキシル基を含有する。例えば、シュードモナス(Pseudomonas)Fisher I型中のアミノ基はヨードアセチル基で容易に誘導化され、チオール化タンパク質に結合させることができる。炭水化物、例えば、肺炎球菌(Pneumococcal)III型中のカルボキシル基は、水溶性カーボジイミド、例えば、EDCで活性化させ、次いでタンパク質に直接カップリングさせることができる。しかしながら、不都合なことには、炭水化物のこの基は制限される。
【0019】
他の炭水化物は、末端の還元性末端に、誘導化および結合に利用できるアルデヒド基を有する。また、酸化試薬、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムを使用してアルデヒド基をつくることができる。アルデヒド基をタンパク質上のアミノ基と、または2官能性リンカー試薬と縮合させることができる。しかしながら、この縮合反応、特に高分子量多糖の末端の還元性末端との縮合反応は、しばしば非常にゆっくりかつ非効率的に進行する。したがって、この方法を使用するとき、収率はしばしば非常に低い。そのうえ、過ヨウ素酸ナトリウムは炭水化物を小さい断片に破壊しおよび/またはエピトープを崩壊し、これらは望ましくないことがある。
【0020】
大部分の炭水化物は結合前に活性化しなくてはならず、そして臭化シアンは活性化剤としてしばしば選択される。参照、例えば、Chu et al.、Inf.。& Imm.、40:245(1983)、およびDickおよびBerret、″Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugte Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、vol.10、48−114(1989)。最初の実施許諾された複合ワクチンは、CNBrでHIB PRPを活性化し、次いでこれを酸性ジヒドラジドで誘導化し、水溶性カーボジイミドを使用して破傷風トキソイドにカップリングさせることによって製造された。
【0021】
CNBr活性化法を簡単に要約すると、臭化シアンを炭水化物と高いpH、典型的にはpH10〜12において反応させる。この高いpHにおいて、炭水化物のヒドロキシル基とシアネートエステルを形成する。引き続いて、シアネートエステルを2官能性試薬、通常ジアミンまたはジヒドラジドと反応させる。次いで、これらの誘導化された炭水化物を2官能性基を介して結合させることができる。ある種の制限された場合において、シアネートエステルをまたタンパク質と直接反応させることができる。
【0022】
高いpHはヒドロキシル基をイオン化するために必要とされる。なぜなら、この反応はシアネートイオン(CN-)に対するヒドロキシルイオンの求核性攻撃を必要とするからである。その結果、臭化シアンは多数の副反応を生成し、副反応のいくつかはネオ抗原を多糖に付加する。M.Wilcheck et al.、Affinity Chromatography.Meth.Enzymol. 104C:3−55。より重要なことには、多数の炭水化物または成分、例えば、HIB PRPおよびPn6は、臭化シアンの活性化の実行に必要な高いpHにより、加水分解するか、または損傷されることがある。
【0023】
CNBr活性化法を使用するときの他の問題は、形成したシアネートエステルが高いpHにおいて不安定であり、急速に加水分解し、誘導化された炭水化物の収率を減少し、それゆえ、タンパク質に結合した炭水化物の全体の収率を減少することである。多数の他の非生産的副反応、例えば、カルバメートまたは線状イミドカーボネートを生成する副反応は高いpHにより促進される。Kohn et al.、Anal.Biochem.、115:375(1981)。そのうえ、臭化シアンそれ自体は高度に不安定であり、高いpHにおいて自発的に加水分解し、全体の収率をさらに減少させる。
【0024】
さらに、臭化シアンの活性化は実行することが困難であり、そして信頼性がない。臭化シアンは高度に毒性であり、潜在的に爆発性である。生産において使用されるときのように大量を使用して作業するとき、極端な注意を払わなくてはならない。すべての操作を適当なフュームフード中で実施しなくてはならない。また、臭化シアンのあるバッチはよくはたらくが、あるものははたらかないので、活性化は再現性がないことはこの分野において知られている。臭化シアンは、また、水中によく溶けないので、炭水化物との反応に有効な炭水化物の量をコントロールすることは困難となる。臭化シアンの同一のバッチおよび明らかに同一の反応条件を使用してさえ、必ずしも同一の結果が得られるわけではない。
【0025】
これらの欠点に加えて、臭化シアンを使用することによって達成される炭水化物の活性化の程度をコントロールすることは非常に困難である。また、この方法を使用して高いレベルの炭水化物の活性化を達成することは非常に困難である。臭化シアンの存在量を増加することは、無効であり、活性化を増加しないで、副反応を増加するだけである。Kohn et al.、Applied Biochem.and Biotech. 9:285(1984)。
【0026】
したがって、臭化シアンの活性化は非常に有効な試薬であることが証明されたが、ある数の制限を有する。例えば、ヒドロキシルをシアネートイオンと反応させるために十分に求核性とするために、臭化シアンは高いpH(10〜12)を必要とする。しかしながら、CNBrおよびシアネートイオンのいずれも高いpHにおいて安定ではなく、結局試薬の大部分は加水分解するか、または非生産的副反応または不必要な副反応を行う。こうして、多糖の活性化効率は低い。さらに、活性化に要求される高いpHは多数のpH感受性多糖を加水分解または損傷させることがある。さらに、CNBrは毒性であり、そして少量で作業することが困難である。
【0027】
そのうえ、前述したように、他の結合法は種々の欠点に悩まされる。例えば、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)および肺炎球菌(Pneumococcal)の多糖3およびVI型抗原のような多糖はタンパク質へのカップリングのための調製においてカーボジイミドで活性化できるカルボキシル基を有し、そしてシュードモナス(Pseudomonas)Fisher III型のような多糖は好都合に使用できるアミノ基を有し、これらの抗原はすべての多糖の比較的制限された基を形成する。したがって、多糖の大部分を活性化または官能化するために、他のアプローチを必要とする。
【0028】
1つの提案された解決法は還元アミン化方法であり、この方法において、制限された数の反応性アルデヒドが生成し、アミンにカップリングされる。参照、P.Anderson、Infection.Immun. 39、233−238(1983)。他の解決法はヘテロライゲーション、例えば、Marburg et al.の2種類のスペーサー方法であり、この方法は、加水分解のとき独特のアミノ酸を生ずる、チオール−エーテル結合を使用する。参照、Marburg et al.、J.Amer.Chem.Soc. 108:5282(1986)。しかしながら、この方法は多糖が乾燥有機溶媒中に溶解すること必要とする。
【0029】
制限された数のスペーサー基、例えば、ヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジドの付加による制限された誘導化がまた提案された。次いで、これらを、例えば、臭化シアン法により付加することができる。この方法において、タンパク質のカルボキシルをカーボジイミドで活性化し、アミンまたはヒドラジドと反応させる。しかしながら、この方法はタンパク質と多糖との高度の架橋およびタンパク質の重合を引き起こす。
【0030】
したがって、温和であり、炭水化物およびタンパク質の構造の完全性を維持し、化合物中のエピトープを保存し、実施が容易であり、信頼性があり、容易に再現可能であり、容易に大規模化可能であり、そして広範な種類の多糖を使用して作業することができる、免疫原性構築物の製造方法がこの分野において要求されている。
【発明の概要】
【0031】
発明の要約
本発明の目的は、免疫原性構築物を製造する温和な方法を達成することである。他の目的は、炭水化物およびタンパク質の構造の完全性を維持しかつ化合物中のエピトープを保存する免疫原性構築物を作る方法を達成ことである。追加の目的は、実施が容易であり、信頼性があり、そして容易に再現可能である免疫原性構築物を製造する方法を達成することである。他の目的は、種々の多糖とともに使用できる免疫原性構築物を製造する方法を開発することである。追加の目的は、可溶性複合ワクチンを製造する好都合な方法を得ることである。他の目的は、容易に大規模化される方法を達成することである。本発明のこれらおよび他の目的は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0032】
本発明は、安全であり、容易であり、費用がかからず、そして炭水化物に対して温和である、炭水化物の活性化法を使用する結合法により、上記目的を達成し、これにより免疫原性構築物を製造する既知の方法の問題および欠点を克服する。そのうえ、この方法は均質反応を好都合に使用する。
【0033】
本発明の方法は、好都合には、有機シアン化試薬、最も好ましくは1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)を使用して、炭水化物含有成分を活性化する。本発明の方法を使用すると、多糖のみが修飾され、タンパク質を回収可能とする、多糖とタンパク質との複合体を製造することができる。そのうえ、水溶性成分および/または界面活性剤可溶性成分の複合体を本発明に従い容易に製造することができる。
【0034】
1つの好ましい態様において、本発明は活性化された炭水化物含有成分を第2成分、例えば、水溶性タンパク質に直接結合することを含む。他の好ましい態様において、本発明の方法は、官能性(2官能性またはヘテロ官能性)試薬を活性化された炭水化物含有成分に共有結合させ、さらに官能性試薬を第2成分、例えば、T依存性抗原と反応させて、炭水化物含有成分およびTD成分が官能性試薬により形成されたスペーサーまたはリンカーにより結合されている、複合免疫原性構築物を形成することを含む。
【0035】
他の好ましい態様において、免疫原性構築物は関係する米国特許出願第07/834,067号(1992年2月11日提出)、およびその一部継続出願第08/055,163号(1993年2月10日提出)(それらの明細書は引用することによって本明細書の一部とされる)に記載されている型の二重担体の構築物である。このような構築物の典型的な一次担体は、肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)およびDNAポリマーを包含する。
【0036】
他の好ましい態様において、低いpKaを有する求核物質を形成するように誘導化された第2成分、例えば、タンパク質に、本発明は活性化された炭水化物含有成分を結合することを含む。このような誘導化に典型的な求核物質は、ヒドラジンおよびチオールを包含する。
【0037】
本発明は、CDAPで活性化後、タンパク質に直接的に結合できるか、またはスペーサーまたはリンカーを介してタンパク質に間接的に結合できる、広範な種類の可溶性炭水化物含有成分に適用可能である。本発明は、既知の方法を使用して製造された免疫原性構築物よりも効率よい、安価な、いっそう有効な免疫原性構築物の製造を可能とする。
【0038】
そのうえ、CDAPおよび反応条件は非常に温和であるので、炭水化物の構造の破壊、それゆえ、天然に存在するエピトープの破壊の危険は大きく減少する。さらに、この方法は、最近採用されている臭化シアンを使用する方法と比較して、下記表1に要約する利点を有する。
【0039】
【表1】
【0040】
CDAPを使用することに対する追加の利点は、CDAPを前以て製造し、数カ月間溶液中に貯蔵することができ、そして活性試薬の濃度を301nmにおける吸収から容易に測定できることである(Kohn et al.、Anal.Biochem. 115:375(1981))。これにより、試薬濃度を標準化し、炭水化物の誘導化をいっそう再現可能とすることができ、これはワクチンの製造において使用するために重要である。
【0041】
本発明の他の利点は、pHのコントロールによる炭水化物とタンパク質との選択的または優先的カップリングを包含する。タンパク質およびペプチドの中に存在する共通の求核基の多数は比較的高いpKaを有するので、低いpHにおいて低いpKaを有する基を活性化された炭水化物にこれらの他の基の存在において選択的に結合することができる。
【0042】
低いpHにおける選択的または優先的カップリングはある数の利点を有する。活性化された炭水化物は低いpHにおいていっそう安定であり、加水分解をより少なくすることができる。そのうえ、低いpHにおいて、炭水化物のヒドロキシル基は低い求核性(反応性)を有し、環状中間体の形成を最小にし、なかでも、シアネートエステルとの鎖間および鎖内の架橋を最小にする。加水分解がより低くかつ副反応がより少ないので、全体のカップリング反応の効率は増加し、炭水化物の活性化に要する試薬の量は少なくなり、それゆえ修飾は少なくなり、こうして、抗原性および免疫原性は増加する。
【0043】
さらに、制限された数の低いpKaの求核物質でタンパク質を容易に誘導化することができ、こうしてタンパク質の変更を最小とすることができる。低いpHにおいて誘導化タンパク質上の反応性基の数は少ないので、低いpHにおける活性化された炭水化物への誘導化タンパク質のカップリングはタンパク質−多糖の結合の数を減少する。
【0044】
そのうえ、ヒドラジドによるタンパク質の誘導化は、ヒドラジン中間体(例えば、TNBS、放射性プローブ、およびその他)の特性決定の容易さを包含する追加の利点を有する。これにより、カップリング前の誘導化の程度ならびに抗原性および免疫原性が変更された程度の測定は容易となり、品質のコントロールおよび誘導化を最適にする機会はいっそうよくなる。さらに、カップリング前後の遊離ヒドラジドの数を測定することによって、タンパク質−多糖の結合の数を決定することができる。さらに、遊離ヒドラジドの数の増加をモニターし、複合体中の結合が加水分解されていることを示すことができるので、品質のコントロールを改良することができる。
【0045】
追加の利点は、カルボキシル基またはアミン基の選択的修飾を包含する、タンパク質の中へヒドラジンを導入する非常に多数の方法を包含する。したがって、この方法は比較的わずかのアミンを有し、一般にカップリング程度が低いトキソイドのカップリングに対して特に有利であることがある。そのうえ、ヒドラジンとシアネートエステルとの反応生成物は生理的pHにおいて帯電していないが、アミンとシアネートエステルとの反応生成物は帯電している。
【0046】
前述の利点は、炭水化物へのタンパク質の直接的結合およびスペーサーを介する間接的結合の双方に適用される。本発明の追加の目的および利点は、詳細な説明及び図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、有機シアン化試薬を使用する炭水化物の活性化の一般化スキームの1例を描写する。
【図2】図2は、タンパク質への活性化された炭水化物の結合の典型的なスキームを描写し、直接的結合は下部の左側に示されており、そして2官能性試薬を使用する間接的結合は下部の右側に示されている。
【図3】図3は、免疫原性構築物のモデルを示す。
【図4】図4は、デキストランの中へのNH2 基の組込み/10mg/mlのデキストランにおいてデキストランの1モル当たり添加されたCDAPのモル数を図解する。
【図5】図5は、S400SFゲル濾過カラムからの 3H−BSA−デキストラン複合体の溶離のプロフィルを図解する。
【図6】図6は、S400SFゲル濾過カラムから溶離された、本発明の方法に従い製造された免疫原性構築物のOD280吸収を図解する。
【図7】図7は、S400SFゲル濾過カラムからのHδa /1−(CDAP)−デキストラン複合体の溶離のプロフィルを図解する。
【図8】図8は、Hδa /NH2 −(CDAP)−デキストランを負荷したS400SFゲル濾過カラムから溶離されたOD280およびOD430値を図解する。
【図9】図9は、本発明の方法を使用して製造された免疫原性構築物の免疫反応性を図解する。
【図10】図10は、1.6mg/mlのデキストラン(dex)におけるヘキサンジアミンおよびCDAPによるデキストランの誘導化の結果(NH2 /100kDa dex/mg CDAP/mg dex)を示す。
【図11】図11は、CDAP活性化効率/多糖濃度のグラフである。
【図12】図12は、CDAP活性化についての種々のCDAP/多糖の比におけるデキストランへのBSAの直接的結合を示す。
【図13】図13は、BSA/デキストランの比/CDAP活性化デキストランへのタンパク質の添加時間のプロットである。
【図14】図14は、水中のCDAPの安定性を示す。
【図15】図15は、CDAP活性化多糖へのタンパク質のカップリングの反応速度を図解する。
【図16】図16は、CDAP活性化へのpHの効果を示す。
【図17】図17は、CDAP活性化デキストランへのBSAのカップリングに対するpHおよび種々の緩衝剤の効果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明および好ましい態様
有機シアン化試薬(これは一般に式R−CNまたは{R+ −CN}X- で表すことができ、ここでRは有機成分であり、そしてXは対イオンである)を使用する炭水化物の活性化についての一般化スキームは、第1図に示されている。第2図は、タンパク質への活性化された炭水化物の結合を図解する。
【0049】
本明細書おいて使用するとき、「免疫原性構築物」は免疫応答を刺激できる実在物を意味する。免疫原性構築物は少なくとも1つの第2成分に結合した少なくとも1つの第1成分を含んでなる。本明細書おいて使用するとき、「成分」は、それ自体で、またはカップリングされたとき、免疫系を刺激するために使用できる物質である。
【0050】
典型的な成分は、炭水化物、ペプチド、他の抗原、アジュバント分子、ハプテン、DNA、およびそれらの組み合わせおよび誘導体を包含する。ハプテンは小さい分子、例えば、化学物質、ダスト、およびアレルゲンを意味し、それらはそれら自体で抗体の応答を引き出すことができないが、それらがいったん担体、例えば、TNPにカップリングされると、前記応答を引き出すことができる。抗原は、正しい環境下に、抗体の形成を誘発することができる分子である。これらのハプテンおよび抗原は、細菌、リケッチア、真菌、ウイルス、寄生生物、薬物、または化学物質から誘導することができるが、これらに限定されない。それらは、例えば、小さい分子、例えば、ペプチド、オリゴ糖(例えば、インフルエンザ菌(H.influenzae)インフルエンザ菌のポリリボシル−リビトールーホスフェートオリゴマー)、DNAオリゴマー、脂質、トキソイド、エンドトキシン、およびその他を包含することができる。好ましい成分は水溶性であるか、または界面活性剤中で可溶化される。
【0051】
好ましい態様において、第1成分は炭水化物含有成分である。本明細書おいて使用するとき、「炭水化物」は、任意の可溶性の単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖を意味する。好ましくは、第1成分は多糖、より好ましくは水溶性多糖である。好ましい多糖は、下記の典型的なワクチンのチャートに列挙されているものを包含する。
【0052】
炭水化物含有成分は好ましくは天然に存在する、半合成、または完全に合成の高分子量の分子である。好ましい態様において、少なくとも1つの炭水化物含有成分は大腸菌(E.coli)多糖、黄色ブドウ球菌(S.aureus)多糖、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、肺炎球菌(Pneumococcal)多糖(Pn)、フィコール(Ficoll)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、PRP、緑膿菌(P.aeruginosa)、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、リポ多糖、グループAおよびグループBのストレプトコッカス(streptococcus)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0053】
特に好ましい態様において、炭水化物含有成分はデキストランである。本明細書おいて使用するとき、「デキストラン」(dex)は単一の糖から構成された多糖を意味し、これは任意の数の源(例えば、Pharmacia)から入手することができる。他の好ましい炭水化物含有成分はフィコールであり、これは不活性の、半合成の、非イオン化、高分子量ポリマーである。
【0054】
炭水化物含有成分は、有機シアン化試薬を使用して活性化される。好ましい有機シアン化試薬は、1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)、N−シアノトリエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(CTEA)、およびp−ニトロフェニルシアネート(pNPC)である。これらの試薬のうちで、CDAPは最も好ましい。シアネート基、必要に応じて種々の対イオンとの他の有機複合体を使用することができる。特に好ましい有機シアン化試薬は、非求核性対イオンを有するもの、例えば、テトラフルオロボレートである。
【0055】
有機シアン化試薬による活性化後、第1成分を第2成分に結合する。好ましくは、第2成分はタンパク質であり、これはウイルス、細菌、寄生生物、動物、および真菌のタンパク質から選択することができる。特に好ましい第2成分は、リポタンパク質、ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風トキソイド(TT)、百日咳トキソイド(PT)、ジフテリアトキソイド、ジフテリアトキソイド百日咳トキソイド(DT)、熱ショックタンパク質、T細胞超抗原、および細菌の外膜タンパク質を包含し、それらのすべては生化学または製剤の供給会社から入手できるか、または標準的方法により製造することができる(参照、例えば、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、Conjugate Vaccines in Contributions to Microbiology and Immunology、vol.10(1989)(これは引用することによって本明細書の一部とされる)。他の適当なタンパク質は、この分野において知られているものから選択することができる。
【0056】
第2成分の他の好ましい態様は、アルブミン、トキソイド、ペプチド、T細胞またはB細胞のアジュバント、またはT細胞の促進を活性化しかつレスキューすることができる任意の他の化合物である。第2成分は第3図に表されているようなT依存性抗原であることができる。
【0057】
本発明の第2成分は、少なくとも1つの炭水化物含有成分に結合することができる。第2成分は炭水化物含有成分と反応できるか、または炭水化物含有成分と反応できるように化学的に修飾することができる官能基を含有することができる。本発明の特に好ましい態様において、第2成分を誘導化して、選択的カップリングのために十分に低いpKaを有する求核物質を形成する。本明細書おいて使用するとき、用語「十分に低いpKa」は、カップリングのために選択されたpHにおいて反応するとき、求核物質がプロトン化されないが、他の反応性基がプロトン化されるように十分な程度に、求核物質のpKaがタンパク質またはペプチド中の他の反応性基のpKaより低いことを意味することを意図する。換言すると、求核物質は、タンパク質またはペプチド中の他の反応性基が反応性である程度が低い(すなわち、実質的にプロトン化される)特定のpHにおいて反応するように、選択される。したがって、カップリングに適当なpHは、他の因子の中でも、使用する特定の求核物質に基づいて選択される。好ましくは、選択するpHは約8より低い。適当な求核物質の例示的例は、ヒドラジドおよびチオールを包含する。
【0058】
特に好ましい態様において、タンパク質またはペプチドの官能基はヒドラジドを形成するように誘導化される。ヒドラジドを当業者に知られている方法に従いタンパク質またはペプチドに付加することができる。
【0059】
例えば、ポリペプチドの1または2以上のカルボキシル基を、高濃度のビスヒドラジド、例えば、アジピン酸ヒドラジドの存在において、カーボジイミド、例えば、EDACで活性化することができる。メチルイミダゾールおよび/またはNHSの添加により、副反応を抑制できる。カーボジイミド/ポリペプチドのモル比により、誘導化の程度をコントロールできる。
【0060】
同様に、タンパク質上のアミンをトラウト(Traut)試薬、SPDPまたはSATA(引き続いて脱保護を行う)を使用してチオール化し、次いでヘテロ2官能性試薬、例えば、EMCH(チオール反応性マレイミドおよびヒドラジドを含有する2官能性)と反応させることができる。誘導化の程度は初期のチオール化によりコントロールされる。また、標準的ヘテロライゲーション技術を使用してタンパク質をチオール反応性基(求電子試薬、例えば、マレイミドまたはヨードアセチル)で誘導化し、次いでチオールヒドラジドと反応させることができる。また、アミンを種々のビシナルヒドロキシル基含有試薬と反応させることができる。次いで、生ずる生成物を過ヨウ素酸ナトリウムで切り放し、ビスヒドラジドと反応させることができる。
【0061】
グリコシル化タンパク質を、適当な試薬、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムでpH5において酸化することができる。次いで酸化生成物をビスヒドラジドと反応させて、本発明において使用するために所望の誘導体を形成できる。
【0062】
合成の間に、ヒドラジドおよびチオールのような求核物質をタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよび多数の薬物の中に混入することができる。また、システイン残基を所望の位置に配置し、引き続いてEMCHと反応させることによって、ヒドラジドを付加することができる。同様に、まず所望の部位にα−ハロケトン基を含有するペプチドを合成することによって、ヒドラジドを付加することができる。次いでこの基をチオールヒドラジドとの反応によりヒドラジドに変換することができる。参照、B.Ivanovet al.、Bioconjugate Chemistry、6、269(1995)。
【0063】
活性化後、第1成分を第2成分に結合する。特定の第2成分の多数のコピーならびに種々の第2成分を炭水化物含有成分に結合することができる。第1成分への第2成分の多数のコピーのカップリングは、第2成分に対する抗体の産生を有意に増強する。
【0064】
本発明の方法は、免疫原性構築物の物理的性質および化学的性質の有利なコントロールを可能とする。本発明によれば、当業者は有利に:第1成分および第2成分上の電荷を変更することができ(カチオン化されたタンパク質がいっそう免疫原性であることができるという証拠に照らして有利である);炭水化物含有成分の大きさを変化させることによって構築物の大きさをコントロールすることができ;鎖間または鎖内の構築物の架橋の程度を選択することができ(3次元のマトリックスの大きさおよびそれを変化させるために);炭水化物含有成分に結合した第2成分のコピー数をコントロールすることができ;そして選択された細胞集団をターゲッティングする(例えば、マクロファージをターゲッティングして抗原提示を増強する)ことができる。DickおよびBeurret、″Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、vol.10、48−114(1989)。
【0065】
免疫調節因子および/または細胞ターゲッティング成分の添加により、本発明の構築物の免疫応答をさらに増強することができる。これらの実在物は、例えば、下記のものを包含する:(1)解毒されたリポ多糖または誘導体、(2)ムラミルジペプチド、(3)細胞表面の決定因子と相互作用して構築物を免疫学的に関係する細胞にターゲッティングすることができる炭水化物、脂質、およびペプチド、(4)インターロイキン、(5)抗体、および(6)DNAオリゴマー。
【0066】
したがって、別の態様において、第3成分を1または2以上の第1成分および/または第2成分に、本明細書において記載するCDAP活性化のような方法または他の既知の技術により、結合することができる。米国特許出願第07/834,067号および同第08/055,163号明細書に、第3成分に対する増強された抗体の応答を促進する構築物が記載されている。第1成分または第2成分に種々の成分を結合するある種の技術は、当業者によく知られており、例えば、利用可能な官能基(例えば、アミノ、カルボキシル、チオおよびアルデヒド基)を介するカップリングを包含する。参照、S.S.Wong、Chemistry of Protein Conjugate and Crosslinking CRC Press(1991)、およびBrenkeley et al.、″Brief Survey of Methodsfor Preparing Protein Conjugates With Dyes,Hpatens and Cross−Linking Agents″、Bioconjugate Chemistry、3:1(Jan.1992)(これらは引用することによって本明細書の一部とされる)。こうして、1官能性試薬を第3成分として使用して、例えば、電荷を変更し、疎水性を変化させ、構築物を標識化し、およびその他をなすことができる。
【0067】
本発明の方法において、有機シアン化試薬を使用して炭水化物含有成分を活性化する。有機シアン化試薬は好ましくはCDAPであり、これはシアネートの求電子性を増加しそして、炭水化物含有成分と反応するとき、シアノ基を炭水化物のヒドロキシル基に移し、こうして、それをそれ以上の反応、すなわち、タンパク質への直接的または間接的結合のために準備する。活性化反応は中性のpHにおいてまたは温和に塩基性の条件(例えば、約8〜約10のpH)下に実施することができ、これは多糖および活性中間体の安定性および完全性を改良する。
【0068】
CDAPは高度に安定性でありかつ比較的安全であるので、有利である。CDAPは水溶性有機シアン化試薬であり、その中のシアノ基の求電子性が増加されており、温和な条件下にシアン化反応の実施を好都合に可能とする。さらに、CDAPを使用して広範な種類の多糖を活性化することができ、次いで活性化された多糖をジアミンまたはジヒドラジドで官能化することができる。高い活性化およびCDAPシアン化反応の温和な条件のために、ワンポット反応においてタンパク質を多糖に直接的に結合することができ、これにより、スペーサー分子の非存在においてさえ、多糖およびタンパク質成分の双方に対する抗体の応答を誘発する複合ワクチンの製造は簡素化される。CDAPは使用容易であるので、種々の条件下のタンパク質−多糖複合体の製造が促進され、こうして複合ワクチンの免疫原性の重要なパラメーターの研究が可能となる。そのうえ、CDAP活性化多糖を使用して種々の他の有用な免疫学的試薬、例えば、ビオチニル化多糖および抗体連鎖デキストラン、例えば、Hδa /1を製造することができる。
【0069】
活性化は好ましくは約6〜約10、より好ましくは約9〜約10のpHにおいて実施される。pHは種々の技術(例えば、緩衝液の使用、NaOHの添加、およびその他)により調節して、製造される特定の構築物に適合させることができる。例えば、活性化は、種々の溶媒中で、この分野において知られている種々の適当な非求核性緩衝剤の1または2以上を使用して、実施することができる。適当な溶媒は、生理食塩水、水、およびいくつかの有機溶媒を包含する。適当な非求核性緩衝剤の例は、トリエチルアミン(TEA)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホン酸(HEPES)、リン酸塩、炭酸塩、およびホウ酸塩である。
【0070】
本発明の好ましい態様において、CDAPを乾燥アセトニトリル中において100mg/ml濃度または水中において75mg/mlまでの濃度で貯蔵液中に溶解する。使用する炭水化物含有成分の特質および所望の活性化の程度に依存して、CDAPの種々の量が最適であろう。
【0071】
好ましい態様において、炭水化物含有成分の濃度は1〜20mg/ml、より好ましくは1〜15mg/mlである。活性化反応は約100mg/mlまでの濃度で首尾よく実施することができる。好ましくは、タンパク質の直接結合のためのCDAP/炭水化物含有成分の比は約100:1〜約500:1モルのCDAP/100kDaの炭水化物含有成分である。他の好ましい態様において、スペーサーを使用するタンパク質の間接結合のためのCDAP/炭水化物含有成分は約10:1〜約500:1モルのCDAP/100kDaの炭水化物含有成分である。成分の特質および使用する条件に依存して、異なる成分の比が最適であることがある。
【0072】
未反応のCDAPおよび反応の副生物、例えば、ジメチルアミノピリジンは、誘導化またはタンパク質へのカップリングの前に、好ましくは酸性条件下に、適当な精製技術、例えば、透析、限外濾過、または適当なバイオプロセシングビーズ、例えば、SM4ビーズ(BioRad)を使用して除去することができる。精製された活性化多糖は、また、沈降、例えば、冷エタノールを使用する沈降により調製可能である。
【0073】
好ましい態様において、CDAPで活性化された炭水化物含有成分を第2成分に直接的に結合して免疫原性構築物を製造する。本発明の好ましい態様において、活性化された炭水化物含有成分を適当な2官能性試薬またはヘテロ官能性試薬に共有結合させる。このような官能性試薬の例は、エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、シスタミン、リジン、グルタミン酸、チオールヒドラジド、およびチオールアミンであり、必要に応じて適当に保護される。参照、Wong et al.、″Chemistry of Protein Conjugate and Crosslinking″、CRC Press(1991)。次いで、既に他の末端において炭水化物含有成分に共有結合されている官能性試薬に、第2成分を共有結合させる。
【0074】
カップリング反応のために好ましいpH範囲は、約7〜約9、最も好ましくは約7〜約8.5である。デキストランのような多糖を結合するために、pHは好ましくは約7.4〜約8である。第2成分を誘導化してジヒドラジドのような求核物質を形成するとき、カップリング反応のためにpHは好ましくは約8より小さく、より好ましくは約7より小さい。
【0075】
1つの好ましい態様において、CDAPを使用して、多糖をタンパク質に約1:1〜約3:1、例えば、1:1の比において結合させる。最適な結果のためには、高い多糖濃度を回避する。好ましい構築物は、肺炎球菌(Pneumococcal)多糖に結合した破傷風トキソイドおよびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)PRP結合した破傷風トキソイドを包含する。本発明に従い製造された他の好ましい複合体は、TT−PRP、Pn14−TT、Pn23−TT、マラリア誘導ペプチド−Pn14、DT−Pn14、Pn6−TT、Pn19−TT、およびペプチド−TT−Pnを包含する。
【0076】
好ましい態様において、トリエチルアミン(TEA)を使用して、中間体フォン・ブラウン(Von Braun)複合体の形成を介して先行することがある、シアン化反応を促進させる。TEAの代わりに、フォン・ブラウン複合体を形成できる他の第三級アミン使用することができる。J.Von Braun、Chem.Ber. 33:1438(1900)。
【0077】
ある種の結合反応のために、グリシン、アミノエタノール、または他のアミノ含有試薬を使用して反応をクエンチすることができる。また、複合体の電荷を変更する1つの方法として、このようなクェンチング試薬を使用することができる。
【0078】
他の態様において、本発明は、免疫原性構築物と、薬学上許容される媒質またはデリバリーベヒクルとから構成されたワクチンに関する。このようなワクチンは、患者への適切な投与の形態を提供するために、有効治療量の免疫原性構築物と、適当量のベヒクルとを含有するするであろう。これらのワクチンは、明礬または他のアジュバントを含んでなることができる。
【0079】
典型的な薬学上許容される媒質またはベヒクルは、無菌の液体、例えば、水および油、例えば、石油、動物、植物または合成由来のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、およびその他である。医薬組成物を静脈内に投与するとき、生理食塩水は好ましいベヒクルである。また、水性デキストランおよびグリセロール溶液を液状ベヒクルとして、特に注入用溶液のために、使用することができる。適当な製剤用ベヒクルは、E.W.Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences(引用することによって本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0080】
本発明に従い製造できるワクチンは、下記のものを包含するが、これらに限定されない:
チャート
ジフテリアワクチン
破傷風(サブユニット)ワクチン
破傷風ワクチン
インフルエンザ菌(H.influenzae)b型(リン酸ポリリボース)
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、すべての血清型
大腸菌(E.coli)、エンドトキシンまたはJ5抗原(LPS、脂質A、およびゲンタビオース)
大腸菌(E.coli)、O多糖(血清型特異的)
クレブシエラ(Klebsiella)、多糖(血清型特異的)
黄色ブドウ球菌(S.aureus)、5および8型(血清型特異的および普通の防御抗原)
表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、血清型多糖I、II、およびIII(および普通の防御抗原)
髄膜炎菌(N.meningitidis)、血清型特異的または
【0081】
防御抗原
ポリオワクチン
おたふくかぜ、麻疹、風疹のワクチン
RSウイルス
狂犬病
A、B、C型肝炎、およびその他
ヒト免疫不全ウイルスIおよびII(GP120、GP41、GP160、p24、およびその他)
単純ヘルペス1および2型
CMV(サイトメガロウイルス)
EBV(エプスタイン−バールウイルス)
水痘/帯状ヘルペス
マラリア
結核
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、他のカンジダニューモシティス・カリニ(Pneumocystis carinii)
マイコプラズマ
インフルエンザウイルスAおよびB
アデノウイルス
グループAストレプトコッカス(streptococcus)
グループBストレプトコッカス(streptococcus)、
【0082】
血清型、Ia、Ib、II、およびIII
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(血清型特異的)
ライノウイルス
パラインフルエンザエ、1、2、および3型
コロナウイルス
サルモネラ(Salmonella)
シゲラ[赤痢菌](Shigella)
ロタウイルス
エンテロウイルス
トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)およびニューミニエ(pneumoniae)(TWAR)クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)
【0083】
本発明は、また、免疫刺激量のワクチンを投与することによる患者の治療に関する。用語「患者」は、治療が有益である任意の被検体を意味し、そして哺乳動物、特にヒト、ウマ、雌牛、イヌ、およびネコ、ならびに他の動物、例えば、ニワトリを包含する。「免疫刺激量」は、疾患の予防、改善、または治療のために患者の免疫応答を刺激することができるワクチンの量を意味する。本発明のワクチンは、任意の適当なルートにより投与できるが、好ましくは静脈内、筋肉内、鼻内、または皮下の注射により投与される。
【0084】
本発明は、また、患者を前述のワクチンで免疫化し、こうしてドナーがワクチンに対して向けられた抗体を生産するようにすることによって、細菌、ウイルス、寄生生物、または化学物質により引き起こされる感染に対する免疫治療因子を調製する方法に関する。抗体は単離するか、またはB細胞を取得した後、骨髄腫細胞と融合してモノクローナル抗体をつくることができる。モノクローナル抗体をつくる方法は、一般に、この分野において知られている(参照、Kohler et al.、Nature、256:495(1975)(詳しくは引用することによって本明細書の一部とされる)。本明細書において使用するとき、「免疫治療因子」は、患者の受動的治療において使用するための特定の免疫原に対して向けられた抗体の組成物を意味する。血漿ドナーは、ワクチン中に含有されている免疫原に対する抗体を産生するためのワクチンで注射される任意の被検体である。
【実施例】
【0085】
実施例1
スペーサーを使用する炭水化物含有成分の誘導化
材料:
CDAP、ピリジン、ヘキサンジアミン、ホウ酸ナトリウム、HEPES、およびトリエチルアミン(TEA)をアルドリッヒ(Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入した。炭水化物含有成分、T2000デキストラン(平均分子量2000kDaを有する)は、ファーマシア(Pharmacia)(ニュージャージイ州パルシパニイ)から入手した。
【0086】
乾燥アセトニトリル中のCDAPの100mg/lの貯蔵液を−20℃において貯蔵し、使用するとき、氷上に保持した。T2000デキストランを生理食塩水+0.02%のアジド中において10.5mg/mlで調製した。水性トリエチルアミンの貯蔵液を0.2Mで調製し、使用の間、氷上に保持した。
【0087】
ヘキサンジアミンを0.1Mのホウ酸ナトリウム中において0.5Mで調製した。
トリニトロベンゼンスルホネート(TNBS)および11,000m-1の吸光係数を366nmにおいて使用して、アミノ基を測定した。Franci et al.、J.Imm. Methods、86:155(1986)。M.Monsigny et al.、Anal.Chem.、175:525(1988)の方法により、標準としてT2000デキストランを使用して、炭水化物をアッセイした。
【0088】
コントロール反応:
下記の実施例により、本発明の誘導化反応において使用する化合物の重要性を証明する。最終の複合体中のアミノ基は炭水化物に共有結合されており、そしてアミノ基の存在は人工物または最終生成物の中への試薬の「キャリオーバー」のためではないことを、結果は示す。実施した実験について、試薬の省略または置換は表2に示す通りであった。
【0089】
すべての試薬を使用する手順において(表2の第1行)、CDAPを300μlのデキストラン(3.1mg)の撹拌溶液に添加し、氷のバケツに戻した。30秒後、TEAを撹拌溶液に添加した。CDAPの添加後2分に、200μlのジアミンを添加し、この溶液を氷上にさらに1時間保持した。試料を一夜透析し、ミレックス(Millex)GVフィルターで濾過し、さらに1×15cmのP6DGカラム(BioRad)上で脱塩した。
【0090】
下記表2に示すように、アミノ基はデキストラン、CDAP、TEA、およびヘキサンジアミンの存在においてデキストランの中に最適に取込まれた。表2のデータがさらに示すように、検出されたアミノ基は最終生成物の中への未結合試薬のキャリオーバーのためではない。これらの結果はTEAが誘導化のために不必要であることを示すが、TEAが存在しないとき、誘導化の程度は低いことが示される(後述するように、多分低いpHのためである)。
【0091】
【表2】
【0092】
ヘキサン1,6−ジアミンによるT2000デキストランの誘導化
この実験は、炭水化物を誘導化してアミノ基を高い比および低い比で導入するためにCDAPを使用できることを証明する。デキストランT2000をモデルの炭水化物として使用した。デキストランはグルコースモノマーから構成されたポリマーである。
【0093】
多数の複合ワクチンの製造における第1工程はスペーサーの添加である(DickおよびBeurret、″Glycocnjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、vol.10、pp.48−114(1989))。この系列の実験は、表3に要約されており、スペーサーを多糖に容易に添加できることを強調している。
【0094】
【表3】
【0095】
この実験を2つの温度において実施した。表3の第1〜7および11行に要約する実験において、すべての試薬を氷冷し、そして第8〜10行に要約する実験において、試薬は室温であった。手順および試薬を表2に要約する実験について前述したように使用し、そして試薬の添加量は表3に示す通りであった。第11行に表す実験において、ジアミンを0.15MのHEPES中の溶液として添加した。この反応は低いpHにおいて効率がわずかに低かった。他の実験において、ヘキサンジアミンを0.1Mのホウ酸塩、pH9、中で調製した。
【0096】
効率は、百分率として表した、使用したCDAPの1モル当たり取込まれたスペーサー基のモル数として定義される。最後の列(誘導化%)は、スペーサーで修飾されたデキストランのグルコースモノマー単位の百分率である。
【0097】
結果はさらに第4図に図解されており、第4図は取込まれたアミノ基の合計数(例えば、添加されたスペーサー試薬)/デキストランの1モル当たり添加されたCDAPのモル数/デキストランのモル数を示す。このデータをNH2 の取込み/CDAPのモル数/デキストランの1モル当たり添加されたCDAPのモル数に変換したとき、1より小さいCDAP/グルコース比は高いレベルのNH2 の取込みのために十分であることが明らかである。したがって、高いNH2 基の取込みのために、デキストラン多糖の最小の修飾が必要である。
【0098】
さらに、活性シアネートエステルの未決定量がスペーサー添加なしで加水分解されるので、CDAP/グルコース比はポリマーの修飾度の過大評価である。したがって、実際の修飾度は計算されたCDAP/グルコース比より低い。
【0099】
試験した最低の試薬投与量(第1行)3.1%におけるスペーサー基の取込みの程度を、複合ワクチンの合成に使用されたそれと比較する(Chu et al.、Inf.& Imm.、40:245(1983);DickおよびBeurret、″Glycocnjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、Vol.10、pp.48−114(1989)。
【0100】
表および図面は、スペーサー試薬を添加するためのCDAP反応の高い効率を証明する。反応条件のさらに最適化すると、効率を増加することができる。また、CDAPを使用して可能である、多糖の中へのスペーサー基の非常に高い取込みレベルが示されている。最大のCDAPの添加量(第7行)において、グルコース単位の5のうちのほぼ1がスペーサーで修飾された(20%)。臭化シアンでこの程度のスペーサーの取込みを得ることができない(KagedalおよびAkerstrom、Acta Chemica Scan.、25:1855(1971))。
【0101】
反応の間に、デキストラン多糖の明らかな沈降が存在した。対照的に、多糖の凝集および沈降は臭化シアン法を使用するときの1つの問題であることがある(KagedalおよびAkerstrom、Acta Chemica Scan.、25:1855(1971))。
【0102】
これらの反応は小さい体積(<1ml)で実施され、こうして多数の試験的実験を好都合に実施することができた。価値ある炭水化物およびタンパク質を浪費しないで手順を最適化するとき、これは重要である。したがって、小さい体積の例示された試薬ならびに本明細書において記載する他の情報から、当業者は商業的使用のために大規模化するとき所望のように多い量を使用して本発明を容易に実施することができる。対照的に、非常に少量の臭化シアンを使用して好都合に作業することは困難である。なぜなら、臭化シアンは水溶性が低く、効力および毒性が不確実であるからである。
【0103】
そのうえ、表3の第8〜10行をだい1〜7および11行と比較すると、カップリング反応を0℃または室温において実施したとき、デキストラン中へのアミノ基の取込みレベルはほぼ同一であったように思われる。
【0104】
CDAPを使用する結合反応の効率の証明および放射性標識化タンパク質を使用する結合の証明
CDAPを使用する結合反応はタンパク質濃度を推定するために通常使用される波長280nmにおいて多少の吸収を引き起こしたので、放射性標識化タンパク質をデキストランに直接結合させた。タンパク質の収率および回収を決定した。
【0105】
特にBrunswick et al.、Journal of Immunol.、140:3364(1988)に開示されているように、BSAをN−ヒドロキシスクシンイミド(3H−2,3)−プロピオネート(Amersham)で放射性標識化した。放射性標識化BSAをPBS+0.02%アジドの中に完全に透析し、S100HR(Pharmacia)上のゲル濾過クロマトグラフィーにかけて凝集を除去し、そしてYM30フィルター(Amicon)を使用して限外濾過した。BSA濃度は、280nm(44,000M-1)におけるその吸光係数から決定して、21mg/mlであった。液体シンチレーション計数により決定された貯蔵液の比活性は5.48×1012cpm/モルであった。
【0106】
他の試薬は下記の通りであった:T2000デキストラン(ほぼ2000kDa)(Pharmacia)を10.5mg/mlにおいて水中に溶解した。CDAPを乾燥アセトニトリル中において100mg/mlで調製し、トリエタノールアミン(TEA)を水中において0.2Mで調製した。グリシン(pH5.0)を水中において1Mで調製した。
【0107】
プロトコール:試薬を氷上に保持し、そしてすべての反応を氷上で実施した。反応混合物を各添加の間に撹拌した。25μlのCDAPを0.5mlのデキストラン(5.25mg)に添加し、30秒後、25μlのTEAを添加した。合計2.5分後、5.25mlの放射性BSAを添加した。30分後、反応を100μlのグリシンの添加によりクエンチし、4℃において一夜放置した。次いでスピン(Spin)−X膜(COSTAR)を使用して、0.6mlのアリコートを濾過した。濾過前後における放射性アリコートを比較すると、放射能の本質的100%がフィルターの中に回収されたことが証明された。生理食塩水+0.02%のアジドと平衡化させた1×57cmのS400SFゲル濾過カラム(Pharmacia)に500μlのフィルターを適用し、0.2ml/分において展開させた。0.89mlの画分を集め、分析した。Monsigny et al.の方法により480nmにおける吸収を使用して、デキストラン濃度を測定した。各管から採った50μlのアリコートの放射能を液体シンチレーション計数により測定し、そして 3H−BSA濃度をその比活性を使用して計算した。カラムの溶離における未結合BSAの位置を独立のカラムの展開において決定した。
【0108】
第5図に示すように、BSAの大きい部分(cpmで表わされる)は高分子量の形態であり、これはデキストランと同一位置において展開し、OD480で表わされる。未結合タンパク質を表す小さい残留BSAピークが存在する。表4は精製データを含む。
【0109】
【表4】
【0110】
このカラムは、未結合タンパク質からデキストラン−BSA複合体をきれいに分離しなかった。これは異常である。なぜなら、高分子量ポリマーはゲル濾過カラムにおいてテイリングをしばしば引き起こすからである。さらに、T2000デキストランは未分画であったので、ある範囲の大きさを有した。遊離BSAおよび結合BSAがオーバーラップする領域における結合したBSAの量を推定するために、結合BSA/デキストランの一定比を仮定した。合計の結合BSA(BSA/デキストラン比×デキストランの合計のモル量から計算された)は2.55mgとして決定された。これにより示されるように、タンパク質の87%が結合した形態に変換された。
【0111】
【表5】
【0112】
このBSA−デキストランの実験結果を表5(第1行)に、異なる量のCDAPおよびTEAを使用する3つの他の試験(第2〜4行)と一緒に要約する。TEAの量およびCDAPの量の双方は、直接的結合により高いタンパク質/多糖の比を得ることを促進する。この方法は少量を使用して好都合な実験を可能とするので、試薬の最適な量を容易に決定することができる。
【0113】
カーボジイミドまたはヘテロライゲーションのカップリング法と異なり、直接的結合反応は未結合タンパク質を修飾せず、またそれは苛酷な条件を使用しないことを強調すべきである。したがって、それ以上の使用のために未結合タンパク質を回収できるであろう。多数のタンパク質抗原が価値があるので、これは直接的結合法の1つの主要な利点である。
【0114】
実施例2A
PT−Pn14複合体の製造
これらの実験の目的は下記の通りである:(1)低分子量の形態から高分子量の形態へのタンパク質の転換が炭水化物へのタンパク質の直接的結合の結果であることを証明すること;(2)1つの特定の組の条件下に、タンパク質の結合に必要なシアン化試薬の最小量を決定すること;および(3)臨床的に関係する複合体を本発明の方法を使用して製造できることを証明すること。
【0115】
百日咳トキソイド(PT)(Mass.Public Health Biol.Labs、マサチュセッツ州ボストンから入手した)を0.5MのNaCl、0.02Mのリン酸ナトリウム、pH8.8、中に0.289mg/lにおいて溶解した。PTの100ml当たり0.1mlの0.1Mのホウ酸ナトリウム、pH9.1、または0.75MのHEPES、pH7.5、を添加した。肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)(ATCCロット83909)を0.15Mの生理食塩水+0.02%のアジド中に5mg/mlにおいて溶解した。トリエチルアミン(TEA)水中に0.2Mにおいて溶解した。CDAPをアセトニトリル中に100mg/mlまたは10mg/mlにおいて溶解した(−20℃において調製しかつ貯蔵した)。グリシンを1.0M、pH5.0において調製した。グリシン/HClの代わりに、アミノエタノールまたは他のアミノ試薬を使用できる。
【0116】
実験1−直接的結合による有効な条件下に構築物の合成:PT−Pn14
各管は氷上において250μgのPn14(50μl)を含有した。時間ゼロにおいて、表に示す種々の量のCDAPを添加し、30秒後、25μlのTEAを添加した。2分後、1mlのPTを添加した。約1時間後、100μlのグリシン溶液を添加した。
【0117】
試料を4℃に一夜保持した。次の日に、試料をコスター(Costar)0.45ミクロンの回転フィルターで濾過し、HPLCTSK−ゲル濾過カラム上で0.2MのKCl中で展開させた。HMW%は高分子量OD280複合体ピークの面積/未結合成分を示すOD280ピークの面積である。それは(空隙体積のピークの面積%)/(空隙体積のピークの面積%+未結合成分のピークの面積%)により定義される。HPLC展開から得られた面積%は、下記の通りであった:
【0118】
【表6】
【0119】
PT対照は22%のHMWを有するので、反応条件により引き起こされるPTの凝集が少量で存在することがある。この組のデータは、また、CDAP/多糖(Ps)回転を変化させることによって、最終複合体におけるタンパク質/炭水化物の比をコントロールできることを示す。
【0120】
実験2−PTへの単糖の結合
この系列において、Pn14多糖の代わりに150μlの10mg/mlのモノマーのグルコースの溶液を使用した。実施例1に類似する条件を使用したが、ただしホウ酸塩の代わりにPTをHEPES(pH7.5、0.075M)中で調製した。また、25μlのTEAの代わりに20μlを使用した。これらの条件は下記のものを生じた:
【0121】
# 条件 HMWの
形態%
1 PTのみ、CDAPまたはTEAなし <20%
2 CDAP、TEA(グルコースなし);+PT 約0
3 グルコース、CDAP、TEA;+PT 約0
【0122】
No.2および3は、CDAPが百日咳トキソイドそれ自体を重合しないこと、したがって、PTの高分子量形態への変換が高分子量多糖へのそのカップリングのためであり、タンパク質の重合のためでないことを示す。HPLCの展開から、PTの分子量のわずかの増加が存在したので、グルコースがPTに結合したことが明らかであった。
【0123】
実験3−スペーサーを介する有効なワクチン構築物の合成:PT−Pn14
ヘキサンジアミンで誘導化されたPn14を下記のようにして調製した。10μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を添加した(193モルのCDAP/100kDaの多糖)。30秒後、;20μlのTEA(0.2M)を添加した。合計2.5分後、300μlの0.1Mのホウ酸ナトリウム(pH9.1)中の0.5Mのヘキサンジアミンを添加した。1時間後、この溶液を水中に透析し、濾過し、P6DG(BioRad)カラム上で生理食塩水中に脱塩した。空隙体積をプールし、セントリコン(Centricon)30装置(Amicon)で濃縮した。それは33アミノ基/100kDaのPn14多糖を有することが決定された。
【0124】
百日咳トキソイドをヘテロライゲーション化学を使用してアミノ−Pn14に結合した(Brunswick et al.)。50μlの0.75MのHEPES緩衝液(pH7.5)を0.44mlのアミノ−Pn14に添加した。それを10μlの0.1MのヨードアセチルプロピオネートN−ヒドロキシ−スクシンイミド(SIAP)でヨードアセチル化した。百日咳トキソイドを20倍モル過剰量のSATA(Calbiochem、カリフォルニア州ラジョラ)でチオール化した。各々を生理食塩水中に脱塩し、混合し、1/9体積の0.75MのHEPES、10mMのEDTA、および0.5Mのヒドロキシルアミンを含有する緩衝液を添加した。最終体積は1.1mlであった。一夜インキュベートした後、この溶液をメルカプトエタノール中で1時間0.2mMとし、次いでヨードアセタミド中で10分間10mMとし、次いでそれをS400SFゲル濾過カラム(Pharmacia)上で分画した(第6図参照)。百日咳トキソイドのほぼ50%が結合した形態で回収された。最終複合体は0.7モルのPT/100kDaのPn14多糖を含有した。ブラッドフォード(Bradford)アッセイ(BioRad)により標準としてPTを使用して、複合体中のタンパク質濃度を決定した。Monsigny et al.の方法により標準としてPn14を使用して、多糖濃度を決定した。
【0125】
実施例2B
CTEAを使用するPn14へのタンパク質の直接的結合:
Kohn et al.Anal.Biochem.115:375(1981)に記載されているように、CTEAは副反応がCDAPより少ないという利点を提供し、より純粋な生成物に導く。その欠点は、それが湿分感受性であり、閉じた容器中で秤量しなくてはならず、そして貯蔵液として生ずる調製できないということである。
【0126】
1mlの肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖(Pn14)(生理食塩水中の5mg/ml)を0℃に保持する。CTEA(入手先、Aldrich Chemical、ウイスコンシン州ミルウォーキー)を乾燥窒素下に貯蔵する。2mgのCTEAを閉じた秤量容器中で秤量し、冷却し、激しく混合したPn14に添加する。20μlのTEA(水中の0.2M)を混合しながら直ちに添加する。60秒後、5mgの百日咳トキソイド(1.5mg/ml)を撹拌した溶液に添加する。30分後、反応を200μlの1Mのグリシン(pH5.0)クエンチする。さらに1時間後、この溶液を濾過し、生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム上に通過させる。1:1複合体が生成する。
【0127】
CTEAを使用する肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖へのスペーサー試薬の添加:
1mlのPn14(生理食塩水中の5mg/ml)を0℃に保持する。CTEA(入手先、Aldrich Chemical、ウイスコンシン州ミルウォーキー)を乾燥窒素下に貯蔵する。1mgのCTEAを閉じた秤量容器中で秤量し、冷却し、激しく混合したPn14に添加する。直ちに20μlをTEA(水中の0.2M)に混合しながら添加する。1時間後、この溶液を生理食塩水中に完全に透析し、滅菌濾過する。187モルのCTEA/100kDaのPn14の比を使用するので、ほぼ18アミン/100kDaのPn14を有する複合体が生成する。
【0128】
実施例3
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)多糖(PRP)への百日咳トキソイドの直接的結合
平均分子量350kDaのPRPを、マサチュセッツ・パブリック・ヘルス・バイロジカル・ラボラトリー(Massachusetts Public Health Biological Laboratory)から入手した。百日咳トキソイドを同一源から入手した。15μlのCDAP(100mg/ml)を氷上の100μl(2mg)のPRPに添加した。30秒後、30μlのTEAを添加した。これは319モルのCDAP/100kDのPRPを表した。さらに2分後、0.75mlの百日咳トキソイド(1.1mg)を添加した。40分後、200μlの1Mのグリシン(pH5.0)を添加して反応をクエンチした。さらに1時間後、この溶液を生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム上に通過させた(第7図参照)。空隙体積をプールし、滅菌濾過した。生成物は1.1のPT/100kDaのPRPを有すると決定され、全体の収率は68%であった。
【0129】
Chu et al.Inf.& Imm.40:245(1983)によりワクチンを調製し、このワクチンは377モルの臭化シアン/100kDaのPRPを使用し、そして1.4〜2.1のPT/100kDaのPRPの比を有し、収率は50%より低かった。したがって、本発明の直接的結合法は同様な複合体を生じたが、より少ない作業で、より高い収率を生じ、毒性の試薬を使用しなかった。
【0130】
PRP複合体を製造する多数の発表されたプロトコールはスペーサーを使用して誘導化されたPRPで開始する(Chu et al.、Schneerson et al.、J.Exp.Med.、152:361(1980);DickおよびBeurret、″Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、Vol.10、pp.48−114(1989))ので、CDAPが、また、スペーサーをPRPに添加するために使用された。使用される条件は前述した通りであったが、百日咳トキソイドの代わりに100μlの0.1Mのホウ酸塩中の0.1Mのヘキサンジアミンが添加された。生成物を生理食塩水中に透析した。それは102アミノ基/100kDaのPRPを有することが決定された。これは発表された手順において使用されたより高い比であるので、なおさらに少ないCDAPを使用できたであろう。
【0131】
実施例4
CDAP化学を使用して製造されたワクチンとして有効な免疫原性構築物CDAPおよび2官能性試薬を使用する結合
簡単に述べると、配偶子特異的タンパク質pfs25からのマラリア誘導ペプチド、p28(CNIGKPNVQDDQNK)を破傷風トキソイド(TT)に結合した。p28はマラリア伝達ブロッキング抗体を誘導することが示された。次いでCDAPを使用してp28−TTを肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)多糖に結合した。
【0132】
FDA承認破傷風トキソイドをHEPES中に一夜透析し、そして30倍モル過剰のヨードアセチル化剤(SIAP)と反応させた。3時間後、試薬をマクロセプ(Macrosep)30(Filtron Technology)を使用する限外濾過により除去し、新鮮なHEPES、0.15M、pH7.5、緩衝液中に洗浄した。おだやかに撹拌しながら、トリチウム標識化p28を固体として誘導化TTに添加した。4℃において一夜反応性させた後、混合物を0.2mMのメルカプトエタノールで処理して残留する活性基をブロックし、次いでHEPES緩衝液と平衡化したP6DGカラム上で脱塩した。ペプチドの特異的活性から、生成物は20モルのp28ペプチド/モルのTTを含有することが決定された。複合体を生理食塩水中に透析し、滅菌濾過した。
【0133】
CDAPを使用する直接的結合
Pn14(入手先、American Tissue Type Collection、ATTC)は高分子量を有した(約106 ダルトン)。p28−TTを下記のようにしてPn14に直接的に結合した。CDAP(アセトニトリル中の100mg/mlの貯蔵液から10μl)をPn14(150μlの生理食塩水中の1.1mg)。30秒後、20μlのトリエチルアミン(0.5M)を添加した。2分後、0.55mg(0.8mlの生理食塩水中の)のp28−TTを添加し、そして1時間後、反応を200μlの1.0Mのグリシン(pH5)でさらに1時間クエンチした。次いで生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム上に複合体を通し、複合体を含有する空隙体積をプールした。第9図は、p28−TTの事実上すべてが空隙体積の中に複合体の形態で見出されたことを示す。
【0134】
免疫原性構築物の免疫活性
5匹のDBA/2マウスのグループを生理食塩水中の10μgのp28−TTまたは(p28−TT)−Pn14複合体で静脈内免疫化し、3週後に採血し、そして血清をELISA(酵素結合イムノアッセイ)により組換えpfs25タンパク質に対する活性についてアッセイした。ペプチドp28をpfs25から誘導化する。マウスの他の組をアジュバントの明礬(Imject、Pierce Chemical Co.、イリノイ州ロックフォード)で沈降させた同一抗原で免疫化した。
関係する出願と一致して、表7は高分子量の複合体のみがすぐれた抗タンパク質力価引き出したことを示す。
【0135】
【表7】
【0136】
これが証明するように、CDAP法を使用して有効なワクチン構築物を調製することができる。また、それは有効な複合体を容易に製造できることを示す。
【0137】
実施例5
CDAPを使用して製造した生物学的に活性な多価タンパク質複合体
CDAPを使用してタンパク質を多糖に直接カップリングして製造した複合体が多価生成物(これは関係する出願に記載されているように増強された免疫原性を有する)を生ずることができること、およびこの方法が生物学的活性を保存するために十分に温和であることができることを証明するために、モノクローナル抗体とデキストランとの種々の複合体を製造した。これらの実験において、Bリンパ球上の膜IgDと架橋しそして増殖を誘発する抗IgD抗体とともにモノクローナル抗体Hδa /1を使用した(Brunswick et al.Journal of Immunol.140:3364(1988))。Brunswick et al.が記載するように、高分子量ポリマー、例えば、2000kDaのデキストランへのHδa /1の多数のコピーの結合(Hδa /1−AECMデキストラン)は1000倍低い濃度においてB細胞の増殖を誘発し、そして未結合Hδa /1より高いレベルの増殖を誘発した。Brunswick et al.簡単な、わかりやすいが、多工程の、多くの日数を要する手順を複合体の製造に必要とした。アミノエチルカルボキシメチルデキストラン(AECMデキストラン)をまずBrunswick et al.に記載されているように製造し、次いでヘテロライゲーション化学を使用してHδa /1を炭水化物にカップリングした。
【0138】
下記のようにしてCDAPを使用する直接的結合およびスペーサーとCDAPとを使用する間接的結合の双方により、Hδa /1−デキストランを製造した。
【0139】
直接的結合:0.3mlの生理食塩水中の3.2mgのT2000デキストラン(Pharmacia)の撹拌溶液に、15μlのCDAPを添加した(アセトニトリル中の100mg/mlの貯蔵液から)。30秒後、撹拌しながら15μlの0.2MのTEAを添加した。さらに2分後、おだやかに撹拌しながら6mgのHδa /1(362μlの0.05Mのホウ酸ナトリウムおよび0.075MのNaCl中の)を添加した。15分後、100μlの1.0Mのグリシン、pH5.0の添加により反応混合物をクエンチし、生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム(1×59cm)上に通した。カラムの溶離を第9図に示す。空隙体積のピークをプールし、ミレックス(Millex)GVフィルターで滅菌した。この生成物をHδa /1−(CDAP)−デキストランと呼ぶ。この手順はほぼ3時間を要した。
【0140】
スペーサー:デキストランを前述したようにCDAPで活性化した(3mlの生理食塩水および25μlのCDAP中の31.5mgのT2000デキストラン、次いで25μlのTEA、1モルのCDAP/0.06モルのグルコースモノマー)。3mlの0.1Mのホウ酸ナトリウム中の0.5モルの1,6−ジアミノヘキサンを添加した。この溶液を水中に完全に透析し、次いでS400HRゲル濾過カラム上で分画した。空隙体積をプールし、濃縮した。このアミノ−デキストランは147アミノ基/2000kDaのデキストランを有することが決定された。この生成物をNH2 −(CDAP)−デキストランと呼ぶ。透析を含めて、これは2日の手順であった。対照的に、AECM−デキストランはBrunswick et al.の方法を使用して製造するのに通常約1週を要する。
【0141】
Brunswick et al.に記載されているヘテロライゲーション技術を使用して、Hδa /1をAECM−デキストランおよびNH2 −(CDAP)−デキストランに結合した。これらの複合体を、それぞれ、Hδa /1−AECM−デキストランおよびHδa /1−NH2 −(CDAP)−デキストランと呼ぶ。ACEM−デキストランを使用する結合は2日の手順であった。
【0142】
10,000細胞/ウェルを使用するB細胞の増殖アッセイをBrunswick et al.に記載されているように実施した。表8はそれらのアッセイの結果を提供し、計数/分/ウェルとしてB細胞の中へのトリチウム化チミジンの取込みを詳しく示す。
【0143】
【表8】
【0144】
Brunswick et al.において反復されているように、Hδa /1単独はこれらの濃度において取込みを引き起こさなかった。10〜100μg/mlのHδa /1における最大の取込みはほぼ3000cpmである。
【0145】
このデータが示すように、スペーサーを使用するか、または使用しないで、CDAPを使用して製造された複合体は、増殖を誘発するそれらの能力において、Hδa /1−AECMデキストランに本質的に等しい。多価抗体のみが低い投与量において高いレベルの増殖を誘発するので、すべての複合体は多価でなくてはならない。したがって、CDAPを使用する直接的結合は抗体の生物学的活性に影響を与えなかった。直接的結合手順は、スペーサーを使用して製造した複合体よりも製造が顕著に速かった。さらに、スペーサーの添加およびCDAPを使用する結合はAECMデキストランを製造よりも非常に速かった。したがって、この実験は(1)CDAPを使用する多価構築物の高い収率および(2)複合体、特に直接的複合体の製造の容易さおよび速度を示す。CDAPおよび2官能性試薬を使用する結合は48時間以下を要し、そして直接的結合は3時間以下を要した。
【0146】
実施例6
特記しない限り、これらの実験におけるプロトコールは一般に下記の通りであった。トリエチルアミン(TEA)、アセトニトリル、硫酸(H2 SO4 )、レゾルシノール、ヘキサンジアミン、ホウ酸ナトリウム、およびHEPESをアルドリッヒ(Aldrich)から入手し、そしてそれらは試薬等級またはそれよりすぐれていた。N−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)をシグマ(Sigma)またはリサーチ・オーガニックス(Research Organics)(オハイオ州クレブランド)から購入した。トリニトロベンゼンスルホン酸(TNSS)をコッダック・ケミカルス(Kodak Chemicals)から入手した。ミレックス(Millex)フィルターをミリポア・コーポレーション(Millipore Corp.)から入手した。
【0147】
デキストランT2000をファーマシア(Pharmacia)から入手した。肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖をATTC(マリイランド州ロックビレ)から入手した。アミノエチルカルバミルデキストランをBrunswick et al.に記載されているようにして製造した。低エンドトキシンのコーヘン(Cohen)画分VBSA(Sigmaカタログ#A9306)から2.6cm×97cmのS100HRカラム(Pharmacia)(生理食塩水+アジドと平衡化した)上のゲル濾過により、モノマーのBSA(ウシ血清アルブミン)を調製した。この生成物は、分析用HPLCにより、0.5%より少ない二量体および0.1%より少ない高分子量の質量の物質を有することが示された。BSAをHPLCで周期的にチェックしてそのモノマー状態を確実した。BSAについて44,000M-1の吸光係数を使用した。
【0148】
多糖をCDAPを下記のようにして活性化した。CDAPをアセトニトリル中で100mg/mlにおいて調製し、−20℃において1カ月まで貯蔵した。CDAPを水中の多糖の撹拌溶液にピペットでゆっくり入れ、30秒後、使用したCDAPの体積に等しい体積の0.2モルのTEAを添加した。2.5分において、1/5体積の0.1Mのホウ酸ナトリウム中の0.5Mのヘキサンジアミン(pH9.3)を添加した。反応を4℃において一夜進行させた。反応生成物を生理食塩水中で平衡化させたP6DGまたはP6カートリッジ(BioRad)上で脱塩し、次いで生理食塩水中にさらに透析した。いくつかの試料をセントリコン(Centricon)30装置(Amicon)de濃縮し、再び脱塩して遊離ジアミンの除去を確実にした。この一般的手順の変法を下記に示す。第一級アミンについてTNBSアッセイを使用して、ヘキサンジアミンを使用する誘導化の程度を測定した。11,000M-1吸光係数を使用して366nmにおいて吸収を測定した。ジアミンの代わりにエタノールアミンで誘導化された、CDAP活性化デキストランは、このアッセイにおいてTNBS陰性であることが見出された。Monsigny et al.、に記載されているように、多糖濃度を測定した。特記しない限り、結果をアミンのモル数/100kDaの多糖として表す。
【0149】
Lees et al.、Vaccine、12(3):1160、1994に記載されているように、チオ−エーテル結合を介するアミノ−デキストランへのタンパク質の結合を実施した。アミンを使用する活性化について前述したように、ポリマーをCDAPで活性化することによって、タンパク質を多糖に直接結合した。CDAPを導入した後2.5分において、タンパク質(0.15モルのHEPES、pH7.5中の10mg/ml)をおだやかに撹拌する溶液に急速に添加した。生理食塩水と平衡化させたS300HRまたはS400HRカラム(Pharmacia)上のゲル濾過の少なくとも1時間前に、ほぼ1/5体積の0.75モルのHEPES、pH7.5中の0.5モルのエタノールアミンで反応をクエンチした。標準としてBSAを使用してブラッドフォード法(BioRad試薬)により、空隙体積からのピーク管をタンパク質についてアッセイした。標準としてデキストランを使用してMonsigny et al.の方法により、多糖濃度を測定した。特記しない限り、結果(下記において説明する)をタンパク質のmg/mg多糖として表す。
【0150】
CDAPを使用する多糖の活性化:
従来報告された方法よりも急速、温和、好都合、そして安全である条件下に、多糖のCDAP活性化を使用して複合体を製造できるかどうかを決定するために、実験を実施した。プロトタイプの多糖として、高分子量デキストラン(T2000デキストラン、Pharmacia)を種々の実験条件下にCDAPで活性化した。
【0151】
100mg/mlの貯蔵液から、ある体積のCDAPを水中のT2000デキストランの溶液の中にピペットでゆっくり入れた(第4図に示すように1.6mg/ml、または第10図に示すように10mg/ml)。30秒において、CDAPの体積に等しい体積の0.2モルのTEAを添加し、そして120秒後、大きい体積のホウ酸ナトリウム中のヘキサンジアミン(pH9.3)を急速に添加した。P6DGカラム上で脱塩し、次いで完全に透析して未結合試薬を除去した後、高いレベルの多糖が見出された(第4図および第10図参照)。この同一手順後、しかしCDAP、デキストラン、またはデキストランのそれぞれの非存在において、TNBSアッセイによりアミンを検出することができた。さらに、ヘキサンジアミンの代わりにモノアミン(エタノールアミン)と反応させたCDAP活性化デキストランはTNBS陰性であった。すべての低分子量物質を確実に除去するために、誘導化多糖を限外濾過により濃縮し、P6DGカラム上で第2回目の脱塩を行った。アミン比はこの手順後において未変化であった。
【0152】
誘導化の程度は、第4図および第10図参照に示すように、CDAPの量−−多糖上に置換したアミノ基の絶対数の増加に導くCDAP/デキストランの比に依存した。誘導化の程度は、同一のCDAP/デキストランのモル比についての多糖の濃度に依存した。したがって、1.6mg/mlのデキストランにおいて、効率はCDAPの1モル当たり置換したアミンのモル数に基づいて0.7〜2.4%であったが、10mg/mlのデキストランにおいてCDAPの1モル当たり0.2モル程度に多くのアミンが置換された(20%の効率)。
【0153】
この2分子反応の効率を改良するために、固定量のCDAPを使用して、多糖濃度を1から50mg/mlに増加した(第11図参照)。使用した最高の多糖濃度において、使用したCDAPの1モル当たり0.4モルより多いアミノ基が添加された。CDAP活性化で到達された置換の高いレベルと対照的に、CNBr活性は通常抗体1〜2%の最大効率を生ずる。
【0154】
TEAの非存在において、ジアミンによる誘導化は顕著に減少した。第三級アミン、例えば、TEAの存在がCDAPによる可溶性多糖の活性化に必須であるかどうかを決定するために、TEAを使用する活性化の効率を無機緩衝剤またはNaOHを使用する効率と比較した。
【0155】
100μlのCDAP溶液(アセトニトリル中の100mg/ml)を、室温において、2mlのT2000デキストラン(水中の10mg/ml)の撹拌溶液にゆっくり添加した。30秒後、1NのNaOHをゆっくり添加してpH約9を維持した。1.5分後、0.5MのHEPES、pH8.0、中の1mlのBSA、20mg/ml、を添加した。反応を4℃において18時間進行させた後、100μlの0.75MのHEPES、pH7.5、中の0.5Mのエタノールアミンの添加により反応をクエンチした。分析のために、300μlの生成物を生理食塩水およびアジドと平衡化させた1cm×50cmのS400HRゲル濾過カラム上でゲル濾過した。空隙体積のピーク管をバイオラド(BioRad)アッセイによりタンパク質について、そしてレゾルシノールアッセイにより多糖についてアッセイし、デキストランの1mg当たり0.45mgのBSAを有することが見出された。
【0156】
下記表9に示すように、種々の緩衝剤を使用して誘導化が生じた。事実、1NのNaOHを注意して添加してpHを約9に上昇させて、すぐれたレベルの置換が得られた。
【0157】
【表9】
【0158】
デキストランでは、8〜10のpH範囲にわたって誘導化のレベルの有意な差は存在しなかったが、他の多糖は活性化pHにいっそう依存することが見出された(下記を参照)。前述したように、TEAを省略しかつpH上昇させない場合、デキストランはなお活性化されるが、非常に低い程度に誘導化される。したがって、CDAP活性化またはカップリングはTEAの存在に依存しないか、または反応混合物が十分にアルカリ性であるように、適当な手段を使用するpHを上昇させることができる。
【0159】
表10はCDAPを使用する活性化の反応速度を示す。この実験において、100μlのCDAP(100mg/mlアセトニトリル)を1mlのデキストラン(20mg/ml)に30秒において添加し、1mlの0.1Mのホウ酸ナトリウム、pH8.8、を添加し、2分後、0.75MのHEPES中の0.5mlのヘキサンジアミンを添加した。アリコートを示した時間において生理食塩水と平衡化させたP6カートリッジ上で脱塩し、次いで分析前に完全に透析した。多糖およびCDAPの高い濃度において、溶液はゲル化した。したがって、10〜20mg/mlの多糖溶液を使用して作業することはいっそう好都合である。
【0160】
【表10】
【0161】
表10に示すように、誘導化反応は急速であり、15分以内に本質的完結する。3または24時間において、誘導化の程度の増加は認められなかった。
【0162】
再現性肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖(Pn14)をCDAPで活性化し、ヘキサンジアミンで誘導化した。1mlのPn14の撹拌溶液(水中の10mg/ml)に、30μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)(0.3mgのCDAP/mgのPn14)を添加した。30秒後、30μlのTEA(水中の0.2M)を添加した。2分後、0.5mlのヘキサンジアミン(0.75MのHEPES、pH7.6、中の0.5M)を添加した。1.5時間後、生成物をP6カートリッジで脱塩し、限外濾過により濃縮し、再び脱塩し、次いでTNBSでアミンについて、そしてレゾルシノール/硫酸でPn14についてアッセイした。表11に示すように、1年にわたって実施された3回の実験において、検出されたアミンのモル数/使用したCDAPの1モルに基づいて13〜15%の効率が得られた。
【0163】
【表11】
【0164】
上記表中の結果は、フリーザー中のCDAP試薬の安定性、再現性、および高い効率を示す。比較すると、CNBr溶液は安定ではなく、CNBr活性化法は再現することが困難であり、そして約2%の効率を有する。
【0165】
CDAP活性化多糖へのタンパク質の直接的結合:
アミンによる誘導化のように、多糖に対するタンパク質の結合の程度は多糖の活性化に使用されたCDAPの量に依存した。第12図に示すように、10mg/mlのデキストランの濃度において、CDAP/デキストランの比は生成物のBSA/デキストランの比とともに直線的に増加した。タンパク質および/または多糖の濃度が増加した場合、より低いCDAP/デキストラン比においてさえ同様なBSA/デキストラン比をまた観察することができた。
【0166】
対照反応をデキストランの非存在において実施し、そしてゲル濾過により分析すると、CDAPそれ自体は凝集しないか、またはBSA(タンパク質)を重合させなかった。CDAP処理試料(0.5mlの水+25μlのアセトニトリル中の100mg/mlのCDAP+50μlの0.2MのTEA+0.5mlの0.5MのHEPES、pH8.0、中の10mg/mlのBSA)および対照試料(0.575mlの水+0.5mlの0.5MのHEPES、pH8.0、中の10mg/mlのBSA(モノマー))を調製した。これらの試料を一夜反応させ、100mlのHEPES中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチした。1時間クエンチした後、試料を生理食塩水およびアジド中のS400の1cm×50cmのカラム上で0.75ml/分において展開させた。カラム上のOD280を合計し、BSAピークに先行する管上のOD280の合計に分割した。CDAP処理試料は0.6%のポリマーのBSAを示し、そして対照試料は0.7%のポリマーのBSAを示した。したがって、高分子量タンパク質は自己重合または凝集のためではない。
【0167】
そのうえ、通常の条件下に、CDAPは多糖を架橋しない。これは下記のHPLC実験により確証された。この実験において、70kDaのデキストランを活性化させ、次いでエタノールアミンと反応させ、そしてゲル濾過カラム上で展開させた。詳しくは、2.5mgのT70デキストラン(10mg/ml)を20μlのCDAP(100mg/ml)と一緒にした。30秒後、20または60μlの0.2MのTEAを添加し、2分において、100μlの0.75MのHEPES、pH7.6、中の0.5Mのエタノールアミンを添加した。1時間後、試料を0.2MのNaCl中のG4000PWXL(Tosohaas)またはSEC3000(Beckman)上で展開させ、屈折率により検出した(各カラムの空隙体積は約5分であり、塩を約10分において溶離した)。高分子量へのシフトの証拠は観察されなかった。
【0168】
下記の比較実験が示すように、CDAPが多糖を架橋するのを防止するために、極端な条件は回避すべきである。1mlのT2000デキストラン(100mg/ml水)を176μlのCDAP(100mg/ml)と一緒にした。30秒後、176μlの0.2MのTEAを添加し、これは2分以内にゲルを生じた。
【0169】
最適活性化時間を決定しかつCDAP活性化多糖の安定性を検査するために、CDAPおよびTEAを添加した後5〜300秒においてタンパク質(BSA)を添加し、そして生成物のBSA/デキストラン比を測定した。第13図に示す結果が示唆するように、最適活性化時間は約2分であり、そして活性化された多糖はこの期間にわたって安定である。タンパク質を1時間において添加する場合、反応の収率は約1/3だけ減少する。
【0170】
CDAPと多糖との水性混合物は、第14図において反映されるように、安定であることが見出された。60μlのCDAP(100mg/ml)を1mlの水に添加し、このCDAP溶液の100μlのアリコートを100μlの多糖(デキストラン、20mg/ml)と第14図に示すように10〜300秒の期間にわたる種々の時間において一緒にし、次いで15μlのTEA溶液(0.2M)と一緒にした。TEAと一緒にした後2分において、100μlのBSA(30mg/ml)を添加した。
【0171】
添加時間の全体の範囲にわたって最終のタンパク質/多糖比において有意差は見出せなかった。第14図に示す結果は、酸性溶液中のCDAPの安定性、およびCDAPの水溶液が酸性となるという観察と一致する。したがって、試薬溶液を同じ日に使用する場合、有機溶媒の代わりに水を使用することができる。また、CDAPを固体として多糖溶液に添加することができる。少量のCDAPを使用して作業するとき、固体状試薬を使用して作業するより溶液を使用して作業することは好都合であることがわかった。さらに、CDAPのアセトニトリル溶液の急速添加は時には多糖を沈澱させることがあるが、CDAPの水溶液を使用する場合、沈澱を回避することができる。CDAPの水性貯蔵液を75mg/mlまでの濃度において調製することができる。
【0172】
第15図は、多糖へのタンパク質の結合が比較的急速であり、3時間以内に、80%の最大結合が達成されたことを示す。タンパク質濃度、多糖濃度、および/またはCDAP濃度を増加することによって、なおいっそう急速なカップリングを達成できるであろう。
【0173】
第16図に示すように、多糖の活性化の間の反応溶液のpHはCDAPによる多糖の活性化における他の重要なパラメーターである。活性化工程の間のpHが7.0から8.3に増加するにつれて、カップリング効率の顕著な増加により反映されるように、多糖の活性化が増加した。pHが7.0から8.3に増加するにつれて、複合体のBSA/デキストラン比は4倍に増加した。8.3より高いpHにおいて、この比はほとんど増加しないか、またはまったく増加しなかった。CDAP活性化のpH依存性は、TEAの非存在において前に観察された低い誘導化レベルを説明する。なぜなら、CDAP水溶液のpHは最初にほぼ中性であり、そしていっそう酸性となるからである。
【0174】
アミンによる多糖の誘導化について前述したように、タンパク質の直接的結合のための多糖の活性化の間において、第三級アミン緩衝剤は不必要である。したがって、多糖へのタンパク質の直接的結合は、例えば、活性化工程の間においてpHを上昇させるためにpHスタットまたは自動滴定装置を使用して、実施することができる。これはワクチン複合体の製造において好都合であることがある。
【0175】
第17図は、活性化多糖へのタンパク質のカップリングの間の反応溶液のpHがタンパク質とCDAPとの直接的結合における重要なパラメーターであることを示す。第17図に結果を報告した実験において、広い範囲のpH値にわたって、かつ低いタンパク質/多糖比において、いくつかの緩衝剤を試験した。プロトコールは下記の通りであった。
【0176】
4mlのT2000デキストラン(水中の10mg/ml)に、133μlのCDAP溶液(新しく調製したアセトニトリル中の100mg/ml)を添加した(0.33mgのCDAP/mgのdex)。30秒後、266μlのTEA(0.2Mの貯蔵液から)を添加し、そしてpHを9.6の最大に到達させた。2.5分後、60μlの1MのNaAc(酢酸ナトリウム)を使用してpHを5.0に調節した。200μlのBSA(15mg/ml)(0.8mgのBSA/mgのdex)および100μlの緩衝液(1MのNaAc、pH4.7、5.7;0.5MのHEPES、pH6.94、7.43、8.15;0.1MのNaPO4 、pH8.0、8.67;50mMのホウ酸ナトリウム、pH9.0、9.6)(イオン強度についてコントロールしなかった)を含有する管に、400μlの活性化デキストランを移した。移してから1時間後、管の350μlの溶液を100μlの新しく調製した0.75MのHEPES(pH7.5)中の0.5Mのエタノールアミンと一緒にした。20時間後、100μlのエタノールアミンを残りの溶液に添加した。反応を少なくとも2時間クエンチし、生理食塩水+アジドと平衡化させたS300HRまたはS400HRカラム上に生成物を展開させた。ピーク空隙体積をバイオラド(BioRad)アッセイによりBSAについて、そしてレゾルシノールアッセイにより多糖についてアッセイした。
【0177】
第17図に示すように、タンパク質の大部分は7.4程度に低いpHにおいて多糖にカップリングし、6.9程度に低いpHにおいて実質的な量がカップリングし、そして5.7程度に低いpHにおいてさえ少量であるが、有意な量がカップリングした。この実験の条件について、約8のpHは最適であるように思われた。結果はカップリング工程のpHが重要であることを示すが、カップリングを広いpH範囲にわたって実施できることを示す。しかしながら、pH5においてカップリング反応は非常に非効率的であるので、クェンチングはpH約7〜8において実施すべきである。
【0178】
タンパク質/多糖比、多糖濃度、および/またはCDAPの使用量を増加することによって、低いpHにおいてさえカップリングの量を増加することができる。例えば、より多い試薬またはより多いタンパク質を使用することによって、pH7においてさえ収率を高くすることができる。したがって、多糖を活性化するためにCDAPを使用して、ほぼ中性のpHにおいて、タンパク質の直接的カップリングを達成することができる。
【0179】
第17図は、リン酸塩がまたカップリング反応に対して阻害的であることを示し、これはイオンの相互作用のためであるか、またはリン酸塩がわずかに求核性であるためであろう。しかしながら、カップリングの間のCDAPの量およびpHを増加すると、結合比/収率は増加するであろう。CDAPの活性化の間にリン酸塩が存在する場合、ジアミンの添加は禁止される。
【0180】
下記の実験により示されるように、PRPおよびPn6のリン酸塩は阻害を引き起こすことがある。20μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を、2mgのPn6(肺炎球菌(Pneumococcal)6型、リン酸ポリリビトール多糖)(水中の10mg/ml)の撹拌溶液に添加した。30秒後、緩衝液(100μlの0.1Mのホウ酸ナトリウムまたは40μlの0.2MのTEA)を添加した。2分後、100μlの0.5MのHEPES、pH8、中のBSA(20mg/ml)を添加した。4℃において一夜インキュベートした後、反応を100μlの0.75MのHEPES、pH7.5、中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いで生理食塩水+0.02%のアジドと平衡化させたS400HRカラム(Pharmacia)上でゲル濾過した。ピーク空隙体積の管をタンパク質および多糖についてアッセイした。比較の目的で、試験4において、デキストランを同一方法において誘導化した。結果を下記表12に報告する。
【0181】
【表12】
【0182】
Pn6およびTEA緩衝液(試験1)について、収率は非常に低かった。pHをホウ酸ナトリウムで増加させると(試験2および3)、収率は増加した。同一条件はデキストランについて非常に高い収率を与える(例えば、試験4参照)。したがって、リン酸塩に基づく多糖、例えば、Pn6は、すぐれた収率で複合体を製造するためには、pHおよび/またはCDAP比の調節を必要とする。
【0183】
次の実験は、CDAP活性化により形成されたイソ尿素結合が安定でありかつ耐久性であることを示す。この実験において、ε−TNP−リジンをCDAPを介して誘導化にカップリングさせた。試料1〜5は下記のようにして調製した:
1: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの生理食塩水(対照)
2: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの2MのNaCl
3: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの9MのGuHCl
4: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの生理食塩水(37℃においてインキュベーター中で反応させた)
5: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの生理食塩水(対照)
【0184】
試料4(これは示すように反応させた)を除外して、試料を暗所で一夜反応させた。次いで試料を10mMのホウ酸ナトリウム中でP6カートリッジ上で1.0ml/分において脱塩した。画分をOD366において読み、そして空隙画分のピーク管をアッセイした。結果を下記表13に示す。
【0185】
【表13】
【0186】
各試料について、TNP/デキストラン比は未変化であり、イソ尿素結合が試験条件下に安定であることを示した。
複合体の生物学的活性
多糖のCDAP活性化が抗体の応答を誘発するその能力に有害効果を有するかどうかを決定するために、in vitroにおけるその生物学的活性を試験した。BSAをCDAP活性化肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖に直接的に結合するか、またはヘキサンジアミンで活性化された肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖にカップリングし、次いでヨードアセチル化し、チオール化タンパク質と反応させた(Lees et al.)。各複合体はBSAのmg/Pn14のmgのある比を有した。同系交配DBA/2マウスをアジュバントの非存在において50μgのBSAで、遊離または多糖複合体として、皮下免疫化した。血清を14および28日後に集め、抗BSAおよび抗Pn14抗体力価をELISAにより測定した。
【0187】
未結合BSAまたは未結合Pn14のいずれも検出可能な一次応答を刺激しなかった。対照的に、BSA−Pn14複合体は、タンパク質がスペーサーを使用する間接的結合により、または直接的結合によりカップリングされているかにかかわらず、タンパク質および多糖の双方の成分に対して有意な抗体の応答を誘発した。スペーサーまたはCDAP活性化デキストランへの直接的カップリングを使用して調製されたBSA−デキストランで免疫化されたマウスは、複合体を他の化学的方法で調製したとき得られた力価に匹敵する力価を与えた。そのうえ、CDAP活性化を使用して調製されたTT−PRP複合体は、複合体で免疫化されたラットにおいて、CNBr活性化を使用して調製されたTT−PRP複合体で免疫化されたラットにおいて示された応答に匹敵する抗PRP応答を示した。さらに、CDAP活性化Pn14に直接的に結合された破傷風トキソイドは、高い抗破傷風抗体および抗Pn14抗体の応答を有した;オプソニンアッセイはこれらの抗体が保護的であることを示した。
【0188】
実施例7
CDAP活性化多糖へのヒドラジド誘導化タンパク質のカップリング(アミノ基上で誘導化されたタンパク質)
BSA上の制限された数のアミンを下記のようにしてヒドラジドで誘導化した。20mgのBSA(75mMのHEPES、pH5、中の24mg/ml)を20倍モル過剰のSPDP(Prochem)と反応させた。8時間後、200μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加し、次いで25μlの1MのDTTを添加してチオールを脱保護した。この溶液を直列の2つのP−6カートリッジ(10mMの酢酸ナトリウム、0.1MのNaClおよび2mMのEDTA(p5)と平衡化させた)上で脱塩し、そして空隙体積のタンパク質をセントリコン(Centricon)30装置で1.05mlの体積に濃縮した。エルマン(Ellman)試薬を使用して、3.2遊離チオール/BSAが存在することが測定された。5mgのチオール−BSAを貯蔵し、そして残部を50μlの1MのHEPES(pH6)の添加によりpH6とした。100μlのジメチルホルムアミド中の0.1MのE−マレイミドカプロン酸ヒドラジド−HCl(マレイミド−ヒドラジドヘテロ官能性試薬;EMCH、Prochem、イリノイ州ロックフォード)を添加した。一夜反応させた後、タンパク質を脱塩し、再び濃縮した。タンパク質濃度を吸収から測定した。TNBSアッセイを使用して、遊離ヒドラジド基の存在を証明した(例えば、540nmにおける吸収が存在し、自然タンパク質において存在しなかった)。
【0189】
わずかに4.2チオール/BSAが存在したので、最終生成物は理論的にその数以下の遊離ヒドラジドを含有できた。BSAは合計60アミノ基を有する;したがって、BSAは最小に修飾された。この物質をBSA−S−Hzと表示した。
BSA−S−HzまたはモノマーのBSA(比較;S100HRカラム上のゲル濾過により調製された)を、下記のようにして、CDAP活性化デキストランと反応させた。15μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を添加することによって、400μlのT2000デキストラン(H2 O中の10mg/ml)を活性し、次いで30秒後、30μlの0.2MのTEAを添加した。2.5分後、200μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加して、反応混合物のpHを5にした。次いで300μlのCDAP活性化デキストランを2mgのBSA−S−HzまたはモノマーのBSAに添加した(10mMの酢酸ナトリウム緩衝液中の22.3mg/mlにおいて90μl)。最終pHは5.1であった。一夜反応させた後、試料を0.75MのHEPES(pH7.5)中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いでS300HRカラム(1×50cm、生理食塩水およびアジドと平衡化させた)上のゲル濾過により分画した。タンパク質および多糖の分析により、pH5において、BSA−S−Hzは0.51mgのBSA/mgのデキストランと複合体を生じたが、モノマーのBSAは結合生成物を生じないことが示された。
【0190】
CDAP活性化肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)へのヒドラジド誘導化ジフテリアトキソイド(DT)の結合
カルボキシル基上で誘導化されたDT:DTを下記のようにしてADHでカルボキシル基において誘導化した。0.5Mの1−メチルイミダゾール(pH6)中の6.95mgのDTに、0.5mlの同一緩衝液中の0.5Mのアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を添加し、次いで混合しながら15mgの1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(EDC)を添加した。一夜インキュベートした後、タンパク質を直列の2つのP−6カートリッジ(10mMの酢酸ナトリウム(pH5)と平衡化させた)上で脱塩し、セントリコン(Centricon)50装置で17.1mg/mlに濃縮した。TNBSアッセイはヒドラジドの存在を示した。この物質をDT/EDC/Hzと表示した。
【0191】
肺炎球菌(Pneumococcal)14型(入手先、SmithKline Beecham)を、S400HRカラム(2.6×100cm、0.1Mのリン酸カリウム、pH7.2、と平衡化させた)上のゲル濾過により分画した。極端に高いおよび低い分子量の画分を分離し、中央カットを濃縮し、生理食塩水中に透析した。この物質をPn14(M)と表示した。
【0192】
250μlのPn14(M)(10.1mg/ml)を15μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)の添加により活性化し、次いで30秒後、30μlの0.2MのTEAを添加した。2.5分後、150μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加してpHを低下させ、次いで150μlのDT/EDC/Hz(2.5mg)を添加した。一夜反応させた後、反応混合物を100μlの0.75MのHEPES(pH7.5)中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いでS300HRカラム(1×50cm、生理食塩水と平衡化させた)上でゲル濾過した。分析はDTがカップリングしたことを示した。
【0193】
アミノ基上で誘導化されたDT:DTをBSA−S−Hzと同様な方法において誘導化した。5mgのDT(13.9mg/ml)を20倍モル過剰量のSPDPと反応させ、脱塩し、セントリコン(Centricon)30装置で濃縮し、50mMのDTTでpH5において1時間処理し、次いで脱塩し、再び濃縮した。エルマン(Ellman)試薬を使用する分析は、遊離チオール基の存在を示した。次いでチオール化トキソイドを大過剰のEMCHと反応させ、脱塩し、再び濃縮した。TNBSアッセイはヒドラジドの存在を示した。この物質をDT−S−Hzと表示した。
【0194】
DT−S−Hzを下記のようにして大きさ分画Pn14にカップリングさせた。1.6MのHCl中の4mgのPn14(M)を20μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)で活性化し、次いで30秒後、40μlの0.2MのTEAを添加した。2.5分後、50μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加した。次いで3.9mgのDT−S−Hz(77mMの酢酸ナトリウム、pH5中の)を添加した;pHメーターを使用して最終pHが5.1であることが測定された。4℃において一夜反応させた後、反応を100μlの0.75MのHEPES中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いでS4300HRカラム(1×50cm、生理食塩水およびアジドと平衡化させた)上でゲル濾過した。分析はDTがカップリングしたことを示した。
【0195】
低いpHにおけるヒドラジドとアミンとの反応
5mgのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を5mgのPn14(水中の10mg/ml)に添加することによって、CDAP活性化多糖を調製した。30秒後、300μlの0.2MのTEAを添加した。2分後、100μlのNaAc、pH5、の添加により、pHを約5に低下させた。次いでCDAP活性化多糖を0.2MのADHまたはヘキサンジアミンに約pH5において添加した。一夜反応させた後、この溶液を酢酸塩緩衝液(pH)中で脱塩し、TNBSによりアミンまたはヒドラジドについてアッセイした。ヒドラジドを含有する溶液のみがTNBS陽性であった。この試料をセントリコン(Centricon)50装置で濃縮し、2回目にP6カートリッジ上で脱塩した。ヒドラジド/デキストラン比は未変化であり、未反応試薬のみが除去されたことを示した。ヘキサンジアミン試料がTNBS陽性であったという事実は、誘導化が起こらなかったことを示した。
【0196】
対照として、CDAP活性化デキストランをADHまたはヘキサンジアミンと0.75MのHEPES(pH7.5)中で反応させた。双方の試料はTNBS陽性であった。
【0197】
要約:
CDAPを利用する本発明の方法は、あるものが高いpHに対して感受性である、種々の臨床的に関係する多糖を活性化するために使用できる再現性あるアプローチを提供する。活性化は急速であるので、高いpHにおける消費時間は最小である。この方法は、タンパク質および多糖の双方の成分に対する体液性抗体をマウスにおいてアジュバントの非存在においてさえ刺激できる、高度に免疫原性のタンパク質−多糖複合体を生産する。
【0198】
多糖の活性化の程度に深遠に影響を及ぼすことが見出された変数は、CDAPおよび多糖の濃度、およびpHである。結合のために好ましいpHは約6〜約9、より好ましくは約7.4〜約8.0であり、これは大部分の多糖が安定である範囲である。他のpH範囲、例えば、約7〜約10の範囲は他の多糖についていっそう適当である。
【0199】
多糖および/またはCDAPの濃度を操作することによって、誘導化の効率は、CNBrを使用するとき見出された1〜2%に比較して、50%に増加させることができる。さらに、多糖の100kDa当たり50より多いNH2 基を有する生成物は好ましい条件下に得ることができる。本発明の方法は、CDAPを使用して実験した従来の研究者らが記載したように、第三級アミンの存在に依存しない。多糖の活性化は急速である。同様に、活性化された多糖へのタンパク質の結合は急速である。
【0200】
本発明は、再現性、急速な反応性、および多分最も顕著には、タンパク質/多糖比を容易に操作する能力という利点を提供する。例えば、CDAPの濃度および/または多糖濃度および/またはタンパク質濃度を変更することによって、種々のタンパク質/多糖比を有する複合体を得ることができる。これは複合体に対する抗体の応答の大きさに影響を及ぼすタンパク質/多糖比の役割ばかりでなく、かつまた所定のタンパク質/多糖比における今日まで構造の役割を研究するアプローチを提供することができる。
【0201】
CDAPを使用して製造されたタンパク質−多糖複合体の免疫原性は、未結合成分のいずれかが示した応答より有意に大きい。さらに、生産される抗体は未結合タンパク質と反応性であり、そして応答は未結合タンパク質ならびに結合したタンパク質を使用して促進することができる。これが示唆するように、結合の間のタンパク質の化学的変更は、自然タンパク質に対する反応性を有する抗体を刺激するその能力に対して有害作用を示さず、また、未結合タンパク質に対する反応性を有するB細胞を刺激するその能力に対して有害作用を示さない。
【0202】
さらに、CDAP活性化多糖は抗Ig抗体の結合のための調製において使用することができる。抗Igデキストラン複合体は、未結合Igに比較して、約100〜100倍大きい活性化を誘発する。CDAP活性化デキストランへの直接的結合を使用して製造された抗Igデキストラン複合体は、AECMデキストランへの他のヘテロライゲーションカップリングを使用して製造された複合体と同様に有効なB細胞刺激試薬である。
【0203】
CDAPはELISAのための種々の免疫学的試薬、例えば、ビオチニル化多糖、およびモデルのTi−2抗原のためのELISAスポット抗原およびTNP−多糖(例えば、TNP−dex、TNPフィコール)の製造に有用である。
【0204】
したがって、免疫原性構築物、例えば、多糖に基づく複合体を製造するためにCDAPを使用する本発明の方法は、免疫原性構築物を製造する現在利用可能な技術に多数の利点を提供する。本発明の範囲および本質から逸脱しないで本発明の方法および態様において種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明は詳細な説明および図面により限定されず、添付された請求の範囲により限定される。
【技術分野】
【0001】
関係する出願に対する相互参照
これは1995年3月22日提出の米国特許出願第08/408,717号の一部継続出願であり、後者は1993年9月22日提出の米国特許出願第08/124,491号の一部継続出願である。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国政府の目的のために、特許所有権者に特許使用料を払わないで製造し、実施許諾し、そして使用されることができる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ある種の物質、例えば、破傷風トキソイドは免疫応答を固有に誘発することができ、そして修飾せずにワクチンで投与することができる。しかしながら、他の重要な物質は免疫原性ではなく、そして免疫原性の分子または構築物に変換された後、免疫応答を誘発することができる。
【0004】
本発明は、一般に、免疫原性構築物を製造する有利な方法に関する。本発明は、また、得られる免疫原性構築物およびそれから製造されたワクチン、およびこのような免疫原性構築物の使用に関する。
【0005】
さらに詳しくは、本発明は免疫原性構築物の製造において使用するために炭水化物含有抗原を活性化する方法に関する。免疫原性構築物は、炭水化物含有成分を有機シアン化剤、例えば、1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)で活性化することによって非常に好都合に製造される。
【0006】
種々のシアン化試薬は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーのゲルを製造するために不溶性粒子を活性化するための試薬として、それ自体知られている。参照、Wilcheck、et al.、Affinity Chromatography.Meth.Enzymol.、104C:3−55。Wakelsman et al.、J.C.S.Chem.Comm.、1976:21(1976)は、CDAPがタンパク質のシステイン基を修飾するために使用できる温和な試薬であることを報告している。Kohn et al.、Anal.Biochem. 115:375(1981)は、アガロース、すなわち、不溶性多糖樹脂の活性化剤として、CDAP、N−シアノトリエチル−アンモニウムテトラフルオロボレート(CTEA)、およびp−ニトロフェニルシアネート(pNPC)を比較した。他の研究者らは、他のタイプの不溶性粒子、例えば、セファローズ(Sepharose)およびグリセリル制御孔ガラスを活性化するためにCDAPを使用した。参照、例えば、Carpnter et al.、Journal of Chromatography、573:132−135(1992)。
【0007】
米国特許第3,788,948号明細書(Kagedal etal.)には、一般に、第一級または第二級アミノ基を含有する有機化合物を1または2以上のヒドロキシルおよび/または第一級および/または第二級アミノ基を含有するポリマーに結合させるために、例えば、水溶性酵素を水不溶性ポリマーに結合させるために、有機シアネート化合物を使用する方法を一般に記載している。Kagedal et al.は、ある種の有機シアネート化合物、例えば、臭化シアンよりすぐれた利点を有するpNPCを使用する方法を記載している。
【0008】
同様に、Andersson et al.、International Journal of Cancer、47:439−444(1991)は、タンパク質との結合前に、可溶性多糖を活性化するためにCDAPを使用することを報告している。ここで、シアネートで活性化された低分子量40kDのデキストランに表皮成長因子(EGF)が直接結合され、そしてデキストラン−EGF複合体を製造するために、ほぼ50:1(重量/重量)の非常に高いデキストラン/EGFの比が使用されており、そして培養された細胞へのこの複合体の結合が研究されている。
【0009】
しかしながら、Kagedal et al.およびAndersson et al.は免疫原性構築物に関するものではない。事実、低分子量デキストランとのタンパク質の複合体は、免疫原性が低いか、または非免疫原性であることが報告された。T.E.Wileman、J.Pharm.Pharmacology、38:264(1985)。
【0010】
免疫原性の程度は、もちろん、ワクチン接種の目的のために免疫原性構築物の重要な性質である。ワクチン接種法は、病気を引き起こさないが、病気に対して保護する抗体、細胞、および他の因子の形成を刺激する抗原で体を免疫化することによって、侵入因子に対してそれ自体を保護する体の生得的能力を使用する。例えば、死んだ微生物を注射して、細菌性疾患、例えば、腸チフスおよび百日咳に対して保護し、トキソイドを注射して破傷風およびジフテリアに対して保護し、そして減衰した微生物を注射してウイルス疾患、例えば、ポリオおよび麻疹に対して保護する。
【0011】
しかしながら、外来因子の注射により抗体形成を刺激することは常に可能であるというわけではない。ワクチン調製物は免疫原性でなくてはならない、すなわち、免疫応答を誘発することができなくてはならない。免疫応答は一般に下記のように記載することができる複雑な系列の反応である:(i)抗原は体の中に入り込み、抗原提示細胞と出会い、抗原提示細胞は抗原をプロセシングし、それらの表面上に抗原の断片を保持する;(ii)抗原提示細胞上に保持された抗原断片は、B細胞を助けるT細胞により認識される;および(iii)B細胞は刺激されて増殖し、抗原に対する抗体を分泌する抗体形成細胞に分割する。
【0012】
大部分の細菌多糖に対する抗体は、莢膜細菌の感染に対する保護を提供する。新生児および乳児は、多糖により例示されるようなT細胞依存性(TI)抗原に対する活力のある応答を装備することができないので、これらの微生物による生命を脅かす感染に対して極めて感受性である。このTI抗原に対する免疫応答の障害は、T細胞のエピトープを多糖に結合し、これによりそれらをT細胞依存性(TD)抗原に変換することによって克服することができる。
【0013】
免疫原性多糖構築物の製造に一般に使用される2つの結合法が存在する:(1)炭水化物とタンパク質との直接的結合;および(2)2官能性リンカーまたはスペーサー試薬を介する炭水化物とタンパク質との間接的結合。一般に、直接的結合および間接的結合の双方は、誘導化の前に炭水化物成分の化学的活性化を必要とする。
【0014】
化学的活性化は、追加の化学的反応、例えば、官能基の付加または大きい成分、例えば、タンパク質の付加を実行できる形成に官能基を変換することを意味する。誘導化は、タンパク質への1または2以上の官能的化学的基またはスペーサー試薬の付加である。
【0015】
不都合なことには、活性化法を使用して結合を介して免疫原性構築物を形成するとき、ある数の問題に当業者は直面する。例えば、複合ワクチンの生産は、むずかしい課題であった。なぜなら、一成分、多糖およびタンパク質を分解しないか、またはそれらの免疫原性エピトープを崩壊させない条件下に、多糖を活性化しそしてタンパク質を結合することが困難であるからである。免疫原性構築物の製造において、使用する方法は重要な抗原部位、すなわち、エピトープを分子上に保持するために十分に温和であるべきである。したがって、構造の完全性を維持しかつこれらの化合物におけるエピトープを保存することが望ましい。不都合なことには、この分野において現在使用されている製造工程はしばしば温和ではなく、自然の炭水化物および/またはタンパク質の構造を破壊することがある。
【0016】
そのうえ、炭水化物を修飾する既知の技術の多くは無水条件を必要とする。しかしながら、不都合なことには、炭水化物は有機溶媒中にしばしば不溶性である。Marburg et al.、J.Amer.Chem.Soc. 108:5282(1986)。
【0017】
こうして、炭水化物の修飾を記載する多数の化学文献が存在するが、それらの多くは水性抗原とともに使用するためには不適当である。1つのアプローチは、有機溶媒中の多糖の溶解度を増大するように多糖を修飾することであった。例えば、ある種の酸性多糖上の酸性水素を疎水性テトラブチルアンモニウム対イオンで置換することによって、Marburg et al.は有機溶媒中に多糖を可溶化し、かつカルボニルジイミダゾール、すなわち、乾燥溶媒中で使用しなくてはならない試薬、でヒドロキシルを活性化することができた。この方法は多糖、例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)PRPおよび肺炎球菌(Pneumococcal)多糖6Bおよび19F型とともに使用される。タンパク質のカップリングは、また、還元性アミド化により、アルデヒドを使用して達成することができ、このアルデヒドは多糖の還元性末端上に存在するか、または炭水化物の酸化によりつくられる。これらのアプローチの双方は固有の制限を有し、こうして、高分子量の多糖について、還元性末端を介するカップリングは通常遅く、非効率的であり、そして酸化はしばしば多糖の切断を生ずるか、またはそうでなければ抗原に影響を与える。
【0018】
ある種の炭水化物は、結合前にいっそう容易に活性化または誘導化することができる基、例えば、アミノまたはカルボキシル基を含有する。例えば、シュードモナス(Pseudomonas)Fisher I型中のアミノ基はヨードアセチル基で容易に誘導化され、チオール化タンパク質に結合させることができる。炭水化物、例えば、肺炎球菌(Pneumococcal)III型中のカルボキシル基は、水溶性カーボジイミド、例えば、EDCで活性化させ、次いでタンパク質に直接カップリングさせることができる。しかしながら、不都合なことには、炭水化物のこの基は制限される。
【0019】
他の炭水化物は、末端の還元性末端に、誘導化および結合に利用できるアルデヒド基を有する。また、酸化試薬、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムを使用してアルデヒド基をつくることができる。アルデヒド基をタンパク質上のアミノ基と、または2官能性リンカー試薬と縮合させることができる。しかしながら、この縮合反応、特に高分子量多糖の末端の還元性末端との縮合反応は、しばしば非常にゆっくりかつ非効率的に進行する。したがって、この方法を使用するとき、収率はしばしば非常に低い。そのうえ、過ヨウ素酸ナトリウムは炭水化物を小さい断片に破壊しおよび/またはエピトープを崩壊し、これらは望ましくないことがある。
【0020】
大部分の炭水化物は結合前に活性化しなくてはならず、そして臭化シアンは活性化剤としてしばしば選択される。参照、例えば、Chu et al.、Inf.。& Imm.、40:245(1983)、およびDickおよびBerret、″Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugte Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、vol.10、48−114(1989)。最初の実施許諾された複合ワクチンは、CNBrでHIB PRPを活性化し、次いでこれを酸性ジヒドラジドで誘導化し、水溶性カーボジイミドを使用して破傷風トキソイドにカップリングさせることによって製造された。
【0021】
CNBr活性化法を簡単に要約すると、臭化シアンを炭水化物と高いpH、典型的にはpH10〜12において反応させる。この高いpHにおいて、炭水化物のヒドロキシル基とシアネートエステルを形成する。引き続いて、シアネートエステルを2官能性試薬、通常ジアミンまたはジヒドラジドと反応させる。次いで、これらの誘導化された炭水化物を2官能性基を介して結合させることができる。ある種の制限された場合において、シアネートエステルをまたタンパク質と直接反応させることができる。
【0022】
高いpHはヒドロキシル基をイオン化するために必要とされる。なぜなら、この反応はシアネートイオン(CN-)に対するヒドロキシルイオンの求核性攻撃を必要とするからである。その結果、臭化シアンは多数の副反応を生成し、副反応のいくつかはネオ抗原を多糖に付加する。M.Wilcheck et al.、Affinity Chromatography.Meth.Enzymol. 104C:3−55。より重要なことには、多数の炭水化物または成分、例えば、HIB PRPおよびPn6は、臭化シアンの活性化の実行に必要な高いpHにより、加水分解するか、または損傷されることがある。
【0023】
CNBr活性化法を使用するときの他の問題は、形成したシアネートエステルが高いpHにおいて不安定であり、急速に加水分解し、誘導化された炭水化物の収率を減少し、それゆえ、タンパク質に結合した炭水化物の全体の収率を減少することである。多数の他の非生産的副反応、例えば、カルバメートまたは線状イミドカーボネートを生成する副反応は高いpHにより促進される。Kohn et al.、Anal.Biochem.、115:375(1981)。そのうえ、臭化シアンそれ自体は高度に不安定であり、高いpHにおいて自発的に加水分解し、全体の収率をさらに減少させる。
【0024】
さらに、臭化シアンの活性化は実行することが困難であり、そして信頼性がない。臭化シアンは高度に毒性であり、潜在的に爆発性である。生産において使用されるときのように大量を使用して作業するとき、極端な注意を払わなくてはならない。すべての操作を適当なフュームフード中で実施しなくてはならない。また、臭化シアンのあるバッチはよくはたらくが、あるものははたらかないので、活性化は再現性がないことはこの分野において知られている。臭化シアンは、また、水中によく溶けないので、炭水化物との反応に有効な炭水化物の量をコントロールすることは困難となる。臭化シアンの同一のバッチおよび明らかに同一の反応条件を使用してさえ、必ずしも同一の結果が得られるわけではない。
【0025】
これらの欠点に加えて、臭化シアンを使用することによって達成される炭水化物の活性化の程度をコントロールすることは非常に困難である。また、この方法を使用して高いレベルの炭水化物の活性化を達成することは非常に困難である。臭化シアンの存在量を増加することは、無効であり、活性化を増加しないで、副反応を増加するだけである。Kohn et al.、Applied Biochem.and Biotech. 9:285(1984)。
【0026】
したがって、臭化シアンの活性化は非常に有効な試薬であることが証明されたが、ある数の制限を有する。例えば、ヒドロキシルをシアネートイオンと反応させるために十分に求核性とするために、臭化シアンは高いpH(10〜12)を必要とする。しかしながら、CNBrおよびシアネートイオンのいずれも高いpHにおいて安定ではなく、結局試薬の大部分は加水分解するか、または非生産的副反応または不必要な副反応を行う。こうして、多糖の活性化効率は低い。さらに、活性化に要求される高いpHは多数のpH感受性多糖を加水分解または損傷させることがある。さらに、CNBrは毒性であり、そして少量で作業することが困難である。
【0027】
そのうえ、前述したように、他の結合法は種々の欠点に悩まされる。例えば、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)および肺炎球菌(Pneumococcal)の多糖3およびVI型抗原のような多糖はタンパク質へのカップリングのための調製においてカーボジイミドで活性化できるカルボキシル基を有し、そしてシュードモナス(Pseudomonas)Fisher III型のような多糖は好都合に使用できるアミノ基を有し、これらの抗原はすべての多糖の比較的制限された基を形成する。したがって、多糖の大部分を活性化または官能化するために、他のアプローチを必要とする。
【0028】
1つの提案された解決法は還元アミン化方法であり、この方法において、制限された数の反応性アルデヒドが生成し、アミンにカップリングされる。参照、P.Anderson、Infection.Immun. 39、233−238(1983)。他の解決法はヘテロライゲーション、例えば、Marburg et al.の2種類のスペーサー方法であり、この方法は、加水分解のとき独特のアミノ酸を生ずる、チオール−エーテル結合を使用する。参照、Marburg et al.、J.Amer.Chem.Soc. 108:5282(1986)。しかしながら、この方法は多糖が乾燥有機溶媒中に溶解すること必要とする。
【0029】
制限された数のスペーサー基、例えば、ヘキサンジアミンまたはアジピン酸ジヒドラジドの付加による制限された誘導化がまた提案された。次いで、これらを、例えば、臭化シアン法により付加することができる。この方法において、タンパク質のカルボキシルをカーボジイミドで活性化し、アミンまたはヒドラジドと反応させる。しかしながら、この方法はタンパク質と多糖との高度の架橋およびタンパク質の重合を引き起こす。
【0030】
したがって、温和であり、炭水化物およびタンパク質の構造の完全性を維持し、化合物中のエピトープを保存し、実施が容易であり、信頼性があり、容易に再現可能であり、容易に大規模化可能であり、そして広範な種類の多糖を使用して作業することができる、免疫原性構築物の製造方法がこの分野において要求されている。
【発明の概要】
【0031】
発明の要約
本発明の目的は、免疫原性構築物を製造する温和な方法を達成することである。他の目的は、炭水化物およびタンパク質の構造の完全性を維持しかつ化合物中のエピトープを保存する免疫原性構築物を作る方法を達成ことである。追加の目的は、実施が容易であり、信頼性があり、そして容易に再現可能である免疫原性構築物を製造する方法を達成することである。他の目的は、種々の多糖とともに使用できる免疫原性構築物を製造する方法を開発することである。追加の目的は、可溶性複合ワクチンを製造する好都合な方法を得ることである。他の目的は、容易に大規模化される方法を達成することである。本発明のこれらおよび他の目的は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0032】
本発明は、安全であり、容易であり、費用がかからず、そして炭水化物に対して温和である、炭水化物の活性化法を使用する結合法により、上記目的を達成し、これにより免疫原性構築物を製造する既知の方法の問題および欠点を克服する。そのうえ、この方法は均質反応を好都合に使用する。
【0033】
本発明の方法は、好都合には、有機シアン化試薬、最も好ましくは1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)を使用して、炭水化物含有成分を活性化する。本発明の方法を使用すると、多糖のみが修飾され、タンパク質を回収可能とする、多糖とタンパク質との複合体を製造することができる。そのうえ、水溶性成分および/または界面活性剤可溶性成分の複合体を本発明に従い容易に製造することができる。
【0034】
1つの好ましい態様において、本発明は活性化された炭水化物含有成分を第2成分、例えば、水溶性タンパク質に直接結合することを含む。他の好ましい態様において、本発明の方法は、官能性(2官能性またはヘテロ官能性)試薬を活性化された炭水化物含有成分に共有結合させ、さらに官能性試薬を第2成分、例えば、T依存性抗原と反応させて、炭水化物含有成分およびTD成分が官能性試薬により形成されたスペーサーまたはリンカーにより結合されている、複合免疫原性構築物を形成することを含む。
【0035】
他の好ましい態様において、免疫原性構築物は関係する米国特許出願第07/834,067号(1992年2月11日提出)、およびその一部継続出願第08/055,163号(1993年2月10日提出)(それらの明細書は引用することによって本明細書の一部とされる)に記載されている型の二重担体の構築物である。このような構築物の典型的な一次担体は、肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)およびDNAポリマーを包含する。
【0036】
他の好ましい態様において、低いpKaを有する求核物質を形成するように誘導化された第2成分、例えば、タンパク質に、本発明は活性化された炭水化物含有成分を結合することを含む。このような誘導化に典型的な求核物質は、ヒドラジンおよびチオールを包含する。
【0037】
本発明は、CDAPで活性化後、タンパク質に直接的に結合できるか、またはスペーサーまたはリンカーを介してタンパク質に間接的に結合できる、広範な種類の可溶性炭水化物含有成分に適用可能である。本発明は、既知の方法を使用して製造された免疫原性構築物よりも効率よい、安価な、いっそう有効な免疫原性構築物の製造を可能とする。
【0038】
そのうえ、CDAPおよび反応条件は非常に温和であるので、炭水化物の構造の破壊、それゆえ、天然に存在するエピトープの破壊の危険は大きく減少する。さらに、この方法は、最近採用されている臭化シアンを使用する方法と比較して、下記表1に要約する利点を有する。
【0039】
【表1】
【0040】
CDAPを使用することに対する追加の利点は、CDAPを前以て製造し、数カ月間溶液中に貯蔵することができ、そして活性試薬の濃度を301nmにおける吸収から容易に測定できることである(Kohn et al.、Anal.Biochem. 115:375(1981))。これにより、試薬濃度を標準化し、炭水化物の誘導化をいっそう再現可能とすることができ、これはワクチンの製造において使用するために重要である。
【0041】
本発明の他の利点は、pHのコントロールによる炭水化物とタンパク質との選択的または優先的カップリングを包含する。タンパク質およびペプチドの中に存在する共通の求核基の多数は比較的高いpKaを有するので、低いpHにおいて低いpKaを有する基を活性化された炭水化物にこれらの他の基の存在において選択的に結合することができる。
【0042】
低いpHにおける選択的または優先的カップリングはある数の利点を有する。活性化された炭水化物は低いpHにおいていっそう安定であり、加水分解をより少なくすることができる。そのうえ、低いpHにおいて、炭水化物のヒドロキシル基は低い求核性(反応性)を有し、環状中間体の形成を最小にし、なかでも、シアネートエステルとの鎖間および鎖内の架橋を最小にする。加水分解がより低くかつ副反応がより少ないので、全体のカップリング反応の効率は増加し、炭水化物の活性化に要する試薬の量は少なくなり、それゆえ修飾は少なくなり、こうして、抗原性および免疫原性は増加する。
【0043】
さらに、制限された数の低いpKaの求核物質でタンパク質を容易に誘導化することができ、こうしてタンパク質の変更を最小とすることができる。低いpHにおいて誘導化タンパク質上の反応性基の数は少ないので、低いpHにおける活性化された炭水化物への誘導化タンパク質のカップリングはタンパク質−多糖の結合の数を減少する。
【0044】
そのうえ、ヒドラジドによるタンパク質の誘導化は、ヒドラジン中間体(例えば、TNBS、放射性プローブ、およびその他)の特性決定の容易さを包含する追加の利点を有する。これにより、カップリング前の誘導化の程度ならびに抗原性および免疫原性が変更された程度の測定は容易となり、品質のコントロールおよび誘導化を最適にする機会はいっそうよくなる。さらに、カップリング前後の遊離ヒドラジドの数を測定することによって、タンパク質−多糖の結合の数を決定することができる。さらに、遊離ヒドラジドの数の増加をモニターし、複合体中の結合が加水分解されていることを示すことができるので、品質のコントロールを改良することができる。
【0045】
追加の利点は、カルボキシル基またはアミン基の選択的修飾を包含する、タンパク質の中へヒドラジンを導入する非常に多数の方法を包含する。したがって、この方法は比較的わずかのアミンを有し、一般にカップリング程度が低いトキソイドのカップリングに対して特に有利であることがある。そのうえ、ヒドラジンとシアネートエステルとの反応生成物は生理的pHにおいて帯電していないが、アミンとシアネートエステルとの反応生成物は帯電している。
【0046】
前述の利点は、炭水化物へのタンパク質の直接的結合およびスペーサーを介する間接的結合の双方に適用される。本発明の追加の目的および利点は、詳細な説明及び図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、有機シアン化試薬を使用する炭水化物の活性化の一般化スキームの1例を描写する。
【図2】図2は、タンパク質への活性化された炭水化物の結合の典型的なスキームを描写し、直接的結合は下部の左側に示されており、そして2官能性試薬を使用する間接的結合は下部の右側に示されている。
【図3】図3は、免疫原性構築物のモデルを示す。
【図4】図4は、デキストランの中へのNH2 基の組込み/10mg/mlのデキストランにおいてデキストランの1モル当たり添加されたCDAPのモル数を図解する。
【図5】図5は、S400SFゲル濾過カラムからの 3H−BSA−デキストラン複合体の溶離のプロフィルを図解する。
【図6】図6は、S400SFゲル濾過カラムから溶離された、本発明の方法に従い製造された免疫原性構築物のOD280吸収を図解する。
【図7】図7は、S400SFゲル濾過カラムからのHδa /1−(CDAP)−デキストラン複合体の溶離のプロフィルを図解する。
【図8】図8は、Hδa /NH2 −(CDAP)−デキストランを負荷したS400SFゲル濾過カラムから溶離されたOD280およびOD430値を図解する。
【図9】図9は、本発明の方法を使用して製造された免疫原性構築物の免疫反応性を図解する。
【図10】図10は、1.6mg/mlのデキストラン(dex)におけるヘキサンジアミンおよびCDAPによるデキストランの誘導化の結果(NH2 /100kDa dex/mg CDAP/mg dex)を示す。
【図11】図11は、CDAP活性化効率/多糖濃度のグラフである。
【図12】図12は、CDAP活性化についての種々のCDAP/多糖の比におけるデキストランへのBSAの直接的結合を示す。
【図13】図13は、BSA/デキストランの比/CDAP活性化デキストランへのタンパク質の添加時間のプロットである。
【図14】図14は、水中のCDAPの安定性を示す。
【図15】図15は、CDAP活性化多糖へのタンパク質のカップリングの反応速度を図解する。
【図16】図16は、CDAP活性化へのpHの効果を示す。
【図17】図17は、CDAP活性化デキストランへのBSAのカップリングに対するpHおよび種々の緩衝剤の効果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明および好ましい態様
有機シアン化試薬(これは一般に式R−CNまたは{R+ −CN}X- で表すことができ、ここでRは有機成分であり、そしてXは対イオンである)を使用する炭水化物の活性化についての一般化スキームは、第1図に示されている。第2図は、タンパク質への活性化された炭水化物の結合を図解する。
【0049】
本明細書おいて使用するとき、「免疫原性構築物」は免疫応答を刺激できる実在物を意味する。免疫原性構築物は少なくとも1つの第2成分に結合した少なくとも1つの第1成分を含んでなる。本明細書おいて使用するとき、「成分」は、それ自体で、またはカップリングされたとき、免疫系を刺激するために使用できる物質である。
【0050】
典型的な成分は、炭水化物、ペプチド、他の抗原、アジュバント分子、ハプテン、DNA、およびそれらの組み合わせおよび誘導体を包含する。ハプテンは小さい分子、例えば、化学物質、ダスト、およびアレルゲンを意味し、それらはそれら自体で抗体の応答を引き出すことができないが、それらがいったん担体、例えば、TNPにカップリングされると、前記応答を引き出すことができる。抗原は、正しい環境下に、抗体の形成を誘発することができる分子である。これらのハプテンおよび抗原は、細菌、リケッチア、真菌、ウイルス、寄生生物、薬物、または化学物質から誘導することができるが、これらに限定されない。それらは、例えば、小さい分子、例えば、ペプチド、オリゴ糖(例えば、インフルエンザ菌(H.influenzae)インフルエンザ菌のポリリボシル−リビトールーホスフェートオリゴマー)、DNAオリゴマー、脂質、トキソイド、エンドトキシン、およびその他を包含することができる。好ましい成分は水溶性であるか、または界面活性剤中で可溶化される。
【0051】
好ましい態様において、第1成分は炭水化物含有成分である。本明細書おいて使用するとき、「炭水化物」は、任意の可溶性の単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖を意味する。好ましくは、第1成分は多糖、より好ましくは水溶性多糖である。好ましい多糖は、下記の典型的なワクチンのチャートに列挙されているものを包含する。
【0052】
炭水化物含有成分は好ましくは天然に存在する、半合成、または完全に合成の高分子量の分子である。好ましい態様において、少なくとも1つの炭水化物含有成分は大腸菌(E.coli)多糖、黄色ブドウ球菌(S.aureus)多糖、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、肺炎球菌(Pneumococcal)多糖(Pn)、フィコール(Ficoll)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、PRP、緑膿菌(P.aeruginosa)、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、リポ多糖、グループAおよびグループBのストレプトコッカス(streptococcus)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0053】
特に好ましい態様において、炭水化物含有成分はデキストランである。本明細書おいて使用するとき、「デキストラン」(dex)は単一の糖から構成された多糖を意味し、これは任意の数の源(例えば、Pharmacia)から入手することができる。他の好ましい炭水化物含有成分はフィコールであり、これは不活性の、半合成の、非イオン化、高分子量ポリマーである。
【0054】
炭水化物含有成分は、有機シアン化試薬を使用して活性化される。好ましい有機シアン化試薬は、1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)、N−シアノトリエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(CTEA)、およびp−ニトロフェニルシアネート(pNPC)である。これらの試薬のうちで、CDAPは最も好ましい。シアネート基、必要に応じて種々の対イオンとの他の有機複合体を使用することができる。特に好ましい有機シアン化試薬は、非求核性対イオンを有するもの、例えば、テトラフルオロボレートである。
【0055】
有機シアン化試薬による活性化後、第1成分を第2成分に結合する。好ましくは、第2成分はタンパク質であり、これはウイルス、細菌、寄生生物、動物、および真菌のタンパク質から選択することができる。特に好ましい第2成分は、リポタンパク質、ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風トキソイド(TT)、百日咳トキソイド(PT)、ジフテリアトキソイド、ジフテリアトキソイド百日咳トキソイド(DT)、熱ショックタンパク質、T細胞超抗原、および細菌の外膜タンパク質を包含し、それらのすべては生化学または製剤の供給会社から入手できるか、または標準的方法により製造することができる(参照、例えば、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、Conjugate Vaccines in Contributions to Microbiology and Immunology、vol.10(1989)(これは引用することによって本明細書の一部とされる)。他の適当なタンパク質は、この分野において知られているものから選択することができる。
【0056】
第2成分の他の好ましい態様は、アルブミン、トキソイド、ペプチド、T細胞またはB細胞のアジュバント、またはT細胞の促進を活性化しかつレスキューすることができる任意の他の化合物である。第2成分は第3図に表されているようなT依存性抗原であることができる。
【0057】
本発明の第2成分は、少なくとも1つの炭水化物含有成分に結合することができる。第2成分は炭水化物含有成分と反応できるか、または炭水化物含有成分と反応できるように化学的に修飾することができる官能基を含有することができる。本発明の特に好ましい態様において、第2成分を誘導化して、選択的カップリングのために十分に低いpKaを有する求核物質を形成する。本明細書おいて使用するとき、用語「十分に低いpKa」は、カップリングのために選択されたpHにおいて反応するとき、求核物質がプロトン化されないが、他の反応性基がプロトン化されるように十分な程度に、求核物質のpKaがタンパク質またはペプチド中の他の反応性基のpKaより低いことを意味することを意図する。換言すると、求核物質は、タンパク質またはペプチド中の他の反応性基が反応性である程度が低い(すなわち、実質的にプロトン化される)特定のpHにおいて反応するように、選択される。したがって、カップリングに適当なpHは、他の因子の中でも、使用する特定の求核物質に基づいて選択される。好ましくは、選択するpHは約8より低い。適当な求核物質の例示的例は、ヒドラジドおよびチオールを包含する。
【0058】
特に好ましい態様において、タンパク質またはペプチドの官能基はヒドラジドを形成するように誘導化される。ヒドラジドを当業者に知られている方法に従いタンパク質またはペプチドに付加することができる。
【0059】
例えば、ポリペプチドの1または2以上のカルボキシル基を、高濃度のビスヒドラジド、例えば、アジピン酸ヒドラジドの存在において、カーボジイミド、例えば、EDACで活性化することができる。メチルイミダゾールおよび/またはNHSの添加により、副反応を抑制できる。カーボジイミド/ポリペプチドのモル比により、誘導化の程度をコントロールできる。
【0060】
同様に、タンパク質上のアミンをトラウト(Traut)試薬、SPDPまたはSATA(引き続いて脱保護を行う)を使用してチオール化し、次いでヘテロ2官能性試薬、例えば、EMCH(チオール反応性マレイミドおよびヒドラジドを含有する2官能性)と反応させることができる。誘導化の程度は初期のチオール化によりコントロールされる。また、標準的ヘテロライゲーション技術を使用してタンパク質をチオール反応性基(求電子試薬、例えば、マレイミドまたはヨードアセチル)で誘導化し、次いでチオールヒドラジドと反応させることができる。また、アミンを種々のビシナルヒドロキシル基含有試薬と反応させることができる。次いで、生ずる生成物を過ヨウ素酸ナトリウムで切り放し、ビスヒドラジドと反応させることができる。
【0061】
グリコシル化タンパク質を、適当な試薬、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムでpH5において酸化することができる。次いで酸化生成物をビスヒドラジドと反応させて、本発明において使用するために所望の誘導体を形成できる。
【0062】
合成の間に、ヒドラジドおよびチオールのような求核物質をタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよび多数の薬物の中に混入することができる。また、システイン残基を所望の位置に配置し、引き続いてEMCHと反応させることによって、ヒドラジドを付加することができる。同様に、まず所望の部位にα−ハロケトン基を含有するペプチドを合成することによって、ヒドラジドを付加することができる。次いでこの基をチオールヒドラジドとの反応によりヒドラジドに変換することができる。参照、B.Ivanovet al.、Bioconjugate Chemistry、6、269(1995)。
【0063】
活性化後、第1成分を第2成分に結合する。特定の第2成分の多数のコピーならびに種々の第2成分を炭水化物含有成分に結合することができる。第1成分への第2成分の多数のコピーのカップリングは、第2成分に対する抗体の産生を有意に増強する。
【0064】
本発明の方法は、免疫原性構築物の物理的性質および化学的性質の有利なコントロールを可能とする。本発明によれば、当業者は有利に:第1成分および第2成分上の電荷を変更することができ(カチオン化されたタンパク質がいっそう免疫原性であることができるという証拠に照らして有利である);炭水化物含有成分の大きさを変化させることによって構築物の大きさをコントロールすることができ;鎖間または鎖内の構築物の架橋の程度を選択することができ(3次元のマトリックスの大きさおよびそれを変化させるために);炭水化物含有成分に結合した第2成分のコピー数をコントロールすることができ;そして選択された細胞集団をターゲッティングする(例えば、マクロファージをターゲッティングして抗原提示を増強する)ことができる。DickおよびBeurret、″Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、vol.10、48−114(1989)。
【0065】
免疫調節因子および/または細胞ターゲッティング成分の添加により、本発明の構築物の免疫応答をさらに増強することができる。これらの実在物は、例えば、下記のものを包含する:(1)解毒されたリポ多糖または誘導体、(2)ムラミルジペプチド、(3)細胞表面の決定因子と相互作用して構築物を免疫学的に関係する細胞にターゲッティングすることができる炭水化物、脂質、およびペプチド、(4)インターロイキン、(5)抗体、および(6)DNAオリゴマー。
【0066】
したがって、別の態様において、第3成分を1または2以上の第1成分および/または第2成分に、本明細書において記載するCDAP活性化のような方法または他の既知の技術により、結合することができる。米国特許出願第07/834,067号および同第08/055,163号明細書に、第3成分に対する増強された抗体の応答を促進する構築物が記載されている。第1成分または第2成分に種々の成分を結合するある種の技術は、当業者によく知られており、例えば、利用可能な官能基(例えば、アミノ、カルボキシル、チオおよびアルデヒド基)を介するカップリングを包含する。参照、S.S.Wong、Chemistry of Protein Conjugate and Crosslinking CRC Press(1991)、およびBrenkeley et al.、″Brief Survey of Methodsfor Preparing Protein Conjugates With Dyes,Hpatens and Cross−Linking Agents″、Bioconjugate Chemistry、3:1(Jan.1992)(これらは引用することによって本明細書の一部とされる)。こうして、1官能性試薬を第3成分として使用して、例えば、電荷を変更し、疎水性を変化させ、構築物を標識化し、およびその他をなすことができる。
【0067】
本発明の方法において、有機シアン化試薬を使用して炭水化物含有成分を活性化する。有機シアン化試薬は好ましくはCDAPであり、これはシアネートの求電子性を増加しそして、炭水化物含有成分と反応するとき、シアノ基を炭水化物のヒドロキシル基に移し、こうして、それをそれ以上の反応、すなわち、タンパク質への直接的または間接的結合のために準備する。活性化反応は中性のpHにおいてまたは温和に塩基性の条件(例えば、約8〜約10のpH)下に実施することができ、これは多糖および活性中間体の安定性および完全性を改良する。
【0068】
CDAPは高度に安定性でありかつ比較的安全であるので、有利である。CDAPは水溶性有機シアン化試薬であり、その中のシアノ基の求電子性が増加されており、温和な条件下にシアン化反応の実施を好都合に可能とする。さらに、CDAPを使用して広範な種類の多糖を活性化することができ、次いで活性化された多糖をジアミンまたはジヒドラジドで官能化することができる。高い活性化およびCDAPシアン化反応の温和な条件のために、ワンポット反応においてタンパク質を多糖に直接的に結合することができ、これにより、スペーサー分子の非存在においてさえ、多糖およびタンパク質成分の双方に対する抗体の応答を誘発する複合ワクチンの製造は簡素化される。CDAPは使用容易であるので、種々の条件下のタンパク質−多糖複合体の製造が促進され、こうして複合ワクチンの免疫原性の重要なパラメーターの研究が可能となる。そのうえ、CDAP活性化多糖を使用して種々の他の有用な免疫学的試薬、例えば、ビオチニル化多糖および抗体連鎖デキストラン、例えば、Hδa /1を製造することができる。
【0069】
活性化は好ましくは約6〜約10、より好ましくは約9〜約10のpHにおいて実施される。pHは種々の技術(例えば、緩衝液の使用、NaOHの添加、およびその他)により調節して、製造される特定の構築物に適合させることができる。例えば、活性化は、種々の溶媒中で、この分野において知られている種々の適当な非求核性緩衝剤の1または2以上を使用して、実施することができる。適当な溶媒は、生理食塩水、水、およびいくつかの有機溶媒を包含する。適当な非求核性緩衝剤の例は、トリエチルアミン(TEA)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホン酸(HEPES)、リン酸塩、炭酸塩、およびホウ酸塩である。
【0070】
本発明の好ましい態様において、CDAPを乾燥アセトニトリル中において100mg/ml濃度または水中において75mg/mlまでの濃度で貯蔵液中に溶解する。使用する炭水化物含有成分の特質および所望の活性化の程度に依存して、CDAPの種々の量が最適であろう。
【0071】
好ましい態様において、炭水化物含有成分の濃度は1〜20mg/ml、より好ましくは1〜15mg/mlである。活性化反応は約100mg/mlまでの濃度で首尾よく実施することができる。好ましくは、タンパク質の直接結合のためのCDAP/炭水化物含有成分の比は約100:1〜約500:1モルのCDAP/100kDaの炭水化物含有成分である。他の好ましい態様において、スペーサーを使用するタンパク質の間接結合のためのCDAP/炭水化物含有成分は約10:1〜約500:1モルのCDAP/100kDaの炭水化物含有成分である。成分の特質および使用する条件に依存して、異なる成分の比が最適であることがある。
【0072】
未反応のCDAPおよび反応の副生物、例えば、ジメチルアミノピリジンは、誘導化またはタンパク質へのカップリングの前に、好ましくは酸性条件下に、適当な精製技術、例えば、透析、限外濾過、または適当なバイオプロセシングビーズ、例えば、SM4ビーズ(BioRad)を使用して除去することができる。精製された活性化多糖は、また、沈降、例えば、冷エタノールを使用する沈降により調製可能である。
【0073】
好ましい態様において、CDAPで活性化された炭水化物含有成分を第2成分に直接的に結合して免疫原性構築物を製造する。本発明の好ましい態様において、活性化された炭水化物含有成分を適当な2官能性試薬またはヘテロ官能性試薬に共有結合させる。このような官能性試薬の例は、エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、シスタミン、リジン、グルタミン酸、チオールヒドラジド、およびチオールアミンであり、必要に応じて適当に保護される。参照、Wong et al.、″Chemistry of Protein Conjugate and Crosslinking″、CRC Press(1991)。次いで、既に他の末端において炭水化物含有成分に共有結合されている官能性試薬に、第2成分を共有結合させる。
【0074】
カップリング反応のために好ましいpH範囲は、約7〜約9、最も好ましくは約7〜約8.5である。デキストランのような多糖を結合するために、pHは好ましくは約7.4〜約8である。第2成分を誘導化してジヒドラジドのような求核物質を形成するとき、カップリング反応のためにpHは好ましくは約8より小さく、より好ましくは約7より小さい。
【0075】
1つの好ましい態様において、CDAPを使用して、多糖をタンパク質に約1:1〜約3:1、例えば、1:1の比において結合させる。最適な結果のためには、高い多糖濃度を回避する。好ましい構築物は、肺炎球菌(Pneumococcal)多糖に結合した破傷風トキソイドおよびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)PRP結合した破傷風トキソイドを包含する。本発明に従い製造された他の好ましい複合体は、TT−PRP、Pn14−TT、Pn23−TT、マラリア誘導ペプチド−Pn14、DT−Pn14、Pn6−TT、Pn19−TT、およびペプチド−TT−Pnを包含する。
【0076】
好ましい態様において、トリエチルアミン(TEA)を使用して、中間体フォン・ブラウン(Von Braun)複合体の形成を介して先行することがある、シアン化反応を促進させる。TEAの代わりに、フォン・ブラウン複合体を形成できる他の第三級アミン使用することができる。J.Von Braun、Chem.Ber. 33:1438(1900)。
【0077】
ある種の結合反応のために、グリシン、アミノエタノール、または他のアミノ含有試薬を使用して反応をクエンチすることができる。また、複合体の電荷を変更する1つの方法として、このようなクェンチング試薬を使用することができる。
【0078】
他の態様において、本発明は、免疫原性構築物と、薬学上許容される媒質またはデリバリーベヒクルとから構成されたワクチンに関する。このようなワクチンは、患者への適切な投与の形態を提供するために、有効治療量の免疫原性構築物と、適当量のベヒクルとを含有するするであろう。これらのワクチンは、明礬または他のアジュバントを含んでなることができる。
【0079】
典型的な薬学上許容される媒質またはベヒクルは、無菌の液体、例えば、水および油、例えば、石油、動物、植物または合成由来のもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、およびその他である。医薬組成物を静脈内に投与するとき、生理食塩水は好ましいベヒクルである。また、水性デキストランおよびグリセロール溶液を液状ベヒクルとして、特に注入用溶液のために、使用することができる。適当な製剤用ベヒクルは、E.W.Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences(引用することによって本明細書の一部とされる)に記載されている。
【0080】
本発明に従い製造できるワクチンは、下記のものを包含するが、これらに限定されない:
チャート
ジフテリアワクチン
破傷風(サブユニット)ワクチン
破傷風ワクチン
インフルエンザ菌(H.influenzae)b型(リン酸ポリリボース)
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)、すべての血清型
大腸菌(E.coli)、エンドトキシンまたはJ5抗原(LPS、脂質A、およびゲンタビオース)
大腸菌(E.coli)、O多糖(血清型特異的)
クレブシエラ(Klebsiella)、多糖(血清型特異的)
黄色ブドウ球菌(S.aureus)、5および8型(血清型特異的および普通の防御抗原)
表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、血清型多糖I、II、およびIII(および普通の防御抗原)
髄膜炎菌(N.meningitidis)、血清型特異的または
【0081】
防御抗原
ポリオワクチン
おたふくかぜ、麻疹、風疹のワクチン
RSウイルス
狂犬病
A、B、C型肝炎、およびその他
ヒト免疫不全ウイルスIおよびII(GP120、GP41、GP160、p24、およびその他)
単純ヘルペス1および2型
CMV(サイトメガロウイルス)
EBV(エプスタイン−バールウイルス)
水痘/帯状ヘルペス
マラリア
結核
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、他のカンジダニューモシティス・カリニ(Pneumocystis carinii)
マイコプラズマ
インフルエンザウイルスAおよびB
アデノウイルス
グループAストレプトコッカス(streptococcus)
グループBストレプトコッカス(streptococcus)、
【0082】
血清型、Ia、Ib、II、およびIII
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(血清型特異的)
ライノウイルス
パラインフルエンザエ、1、2、および3型
コロナウイルス
サルモネラ(Salmonella)
シゲラ[赤痢菌](Shigella)
ロタウイルス
エンテロウイルス
トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)およびニューミニエ(pneumoniae)(TWAR)クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)
【0083】
本発明は、また、免疫刺激量のワクチンを投与することによる患者の治療に関する。用語「患者」は、治療が有益である任意の被検体を意味し、そして哺乳動物、特にヒト、ウマ、雌牛、イヌ、およびネコ、ならびに他の動物、例えば、ニワトリを包含する。「免疫刺激量」は、疾患の予防、改善、または治療のために患者の免疫応答を刺激することができるワクチンの量を意味する。本発明のワクチンは、任意の適当なルートにより投与できるが、好ましくは静脈内、筋肉内、鼻内、または皮下の注射により投与される。
【0084】
本発明は、また、患者を前述のワクチンで免疫化し、こうしてドナーがワクチンに対して向けられた抗体を生産するようにすることによって、細菌、ウイルス、寄生生物、または化学物質により引き起こされる感染に対する免疫治療因子を調製する方法に関する。抗体は単離するか、またはB細胞を取得した後、骨髄腫細胞と融合してモノクローナル抗体をつくることができる。モノクローナル抗体をつくる方法は、一般に、この分野において知られている(参照、Kohler et al.、Nature、256:495(1975)(詳しくは引用することによって本明細書の一部とされる)。本明細書において使用するとき、「免疫治療因子」は、患者の受動的治療において使用するための特定の免疫原に対して向けられた抗体の組成物を意味する。血漿ドナーは、ワクチン中に含有されている免疫原に対する抗体を産生するためのワクチンで注射される任意の被検体である。
【実施例】
【0085】
実施例1
スペーサーを使用する炭水化物含有成分の誘導化
材料:
CDAP、ピリジン、ヘキサンジアミン、ホウ酸ナトリウム、HEPES、およびトリエチルアミン(TEA)をアルドリッヒ(Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入した。炭水化物含有成分、T2000デキストラン(平均分子量2000kDaを有する)は、ファーマシア(Pharmacia)(ニュージャージイ州パルシパニイ)から入手した。
【0086】
乾燥アセトニトリル中のCDAPの100mg/lの貯蔵液を−20℃において貯蔵し、使用するとき、氷上に保持した。T2000デキストランを生理食塩水+0.02%のアジド中において10.5mg/mlで調製した。水性トリエチルアミンの貯蔵液を0.2Mで調製し、使用の間、氷上に保持した。
【0087】
ヘキサンジアミンを0.1Mのホウ酸ナトリウム中において0.5Mで調製した。
トリニトロベンゼンスルホネート(TNBS)および11,000m-1の吸光係数を366nmにおいて使用して、アミノ基を測定した。Franci et al.、J.Imm. Methods、86:155(1986)。M.Monsigny et al.、Anal.Chem.、175:525(1988)の方法により、標準としてT2000デキストランを使用して、炭水化物をアッセイした。
【0088】
コントロール反応:
下記の実施例により、本発明の誘導化反応において使用する化合物の重要性を証明する。最終の複合体中のアミノ基は炭水化物に共有結合されており、そしてアミノ基の存在は人工物または最終生成物の中への試薬の「キャリオーバー」のためではないことを、結果は示す。実施した実験について、試薬の省略または置換は表2に示す通りであった。
【0089】
すべての試薬を使用する手順において(表2の第1行)、CDAPを300μlのデキストラン(3.1mg)の撹拌溶液に添加し、氷のバケツに戻した。30秒後、TEAを撹拌溶液に添加した。CDAPの添加後2分に、200μlのジアミンを添加し、この溶液を氷上にさらに1時間保持した。試料を一夜透析し、ミレックス(Millex)GVフィルターで濾過し、さらに1×15cmのP6DGカラム(BioRad)上で脱塩した。
【0090】
下記表2に示すように、アミノ基はデキストラン、CDAP、TEA、およびヘキサンジアミンの存在においてデキストランの中に最適に取込まれた。表2のデータがさらに示すように、検出されたアミノ基は最終生成物の中への未結合試薬のキャリオーバーのためではない。これらの結果はTEAが誘導化のために不必要であることを示すが、TEAが存在しないとき、誘導化の程度は低いことが示される(後述するように、多分低いpHのためである)。
【0091】
【表2】
【0092】
ヘキサン1,6−ジアミンによるT2000デキストランの誘導化
この実験は、炭水化物を誘導化してアミノ基を高い比および低い比で導入するためにCDAPを使用できることを証明する。デキストランT2000をモデルの炭水化物として使用した。デキストランはグルコースモノマーから構成されたポリマーである。
【0093】
多数の複合ワクチンの製造における第1工程はスペーサーの添加である(DickおよびBeurret、″Glycocnjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、vol.10、pp.48−114(1989))。この系列の実験は、表3に要約されており、スペーサーを多糖に容易に添加できることを強調している。
【0094】
【表3】
【0095】
この実験を2つの温度において実施した。表3の第1〜7および11行に要約する実験において、すべての試薬を氷冷し、そして第8〜10行に要約する実験において、試薬は室温であった。手順および試薬を表2に要約する実験について前述したように使用し、そして試薬の添加量は表3に示す通りであった。第11行に表す実験において、ジアミンを0.15MのHEPES中の溶液として添加した。この反応は低いpHにおいて効率がわずかに低かった。他の実験において、ヘキサンジアミンを0.1Mのホウ酸塩、pH9、中で調製した。
【0096】
効率は、百分率として表した、使用したCDAPの1モル当たり取込まれたスペーサー基のモル数として定義される。最後の列(誘導化%)は、スペーサーで修飾されたデキストランのグルコースモノマー単位の百分率である。
【0097】
結果はさらに第4図に図解されており、第4図は取込まれたアミノ基の合計数(例えば、添加されたスペーサー試薬)/デキストランの1モル当たり添加されたCDAPのモル数/デキストランのモル数を示す。このデータをNH2 の取込み/CDAPのモル数/デキストランの1モル当たり添加されたCDAPのモル数に変換したとき、1より小さいCDAP/グルコース比は高いレベルのNH2 の取込みのために十分であることが明らかである。したがって、高いNH2 基の取込みのために、デキストラン多糖の最小の修飾が必要である。
【0098】
さらに、活性シアネートエステルの未決定量がスペーサー添加なしで加水分解されるので、CDAP/グルコース比はポリマーの修飾度の過大評価である。したがって、実際の修飾度は計算されたCDAP/グルコース比より低い。
【0099】
試験した最低の試薬投与量(第1行)3.1%におけるスペーサー基の取込みの程度を、複合ワクチンの合成に使用されたそれと比較する(Chu et al.、Inf.& Imm.、40:245(1983);DickおよびBeurret、″Glycocnjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、Vol.10、pp.48−114(1989)。
【0100】
表および図面は、スペーサー試薬を添加するためのCDAP反応の高い効率を証明する。反応条件のさらに最適化すると、効率を増加することができる。また、CDAPを使用して可能である、多糖の中へのスペーサー基の非常に高い取込みレベルが示されている。最大のCDAPの添加量(第7行)において、グルコース単位の5のうちのほぼ1がスペーサーで修飾された(20%)。臭化シアンでこの程度のスペーサーの取込みを得ることができない(KagedalおよびAkerstrom、Acta Chemica Scan.、25:1855(1971))。
【0101】
反応の間に、デキストラン多糖の明らかな沈降が存在した。対照的に、多糖の凝集および沈降は臭化シアン法を使用するときの1つの問題であることがある(KagedalおよびAkerstrom、Acta Chemica Scan.、25:1855(1971))。
【0102】
これらの反応は小さい体積(<1ml)で実施され、こうして多数の試験的実験を好都合に実施することができた。価値ある炭水化物およびタンパク質を浪費しないで手順を最適化するとき、これは重要である。したがって、小さい体積の例示された試薬ならびに本明細書において記載する他の情報から、当業者は商業的使用のために大規模化するとき所望のように多い量を使用して本発明を容易に実施することができる。対照的に、非常に少量の臭化シアンを使用して好都合に作業することは困難である。なぜなら、臭化シアンは水溶性が低く、効力および毒性が不確実であるからである。
【0103】
そのうえ、表3の第8〜10行をだい1〜7および11行と比較すると、カップリング反応を0℃または室温において実施したとき、デキストラン中へのアミノ基の取込みレベルはほぼ同一であったように思われる。
【0104】
CDAPを使用する結合反応の効率の証明および放射性標識化タンパク質を使用する結合の証明
CDAPを使用する結合反応はタンパク質濃度を推定するために通常使用される波長280nmにおいて多少の吸収を引き起こしたので、放射性標識化タンパク質をデキストランに直接結合させた。タンパク質の収率および回収を決定した。
【0105】
特にBrunswick et al.、Journal of Immunol.、140:3364(1988)に開示されているように、BSAをN−ヒドロキシスクシンイミド(3H−2,3)−プロピオネート(Amersham)で放射性標識化した。放射性標識化BSAをPBS+0.02%アジドの中に完全に透析し、S100HR(Pharmacia)上のゲル濾過クロマトグラフィーにかけて凝集を除去し、そしてYM30フィルター(Amicon)を使用して限外濾過した。BSA濃度は、280nm(44,000M-1)におけるその吸光係数から決定して、21mg/mlであった。液体シンチレーション計数により決定された貯蔵液の比活性は5.48×1012cpm/モルであった。
【0106】
他の試薬は下記の通りであった:T2000デキストラン(ほぼ2000kDa)(Pharmacia)を10.5mg/mlにおいて水中に溶解した。CDAPを乾燥アセトニトリル中において100mg/mlで調製し、トリエタノールアミン(TEA)を水中において0.2Mで調製した。グリシン(pH5.0)を水中において1Mで調製した。
【0107】
プロトコール:試薬を氷上に保持し、そしてすべての反応を氷上で実施した。反応混合物を各添加の間に撹拌した。25μlのCDAPを0.5mlのデキストラン(5.25mg)に添加し、30秒後、25μlのTEAを添加した。合計2.5分後、5.25mlの放射性BSAを添加した。30分後、反応を100μlのグリシンの添加によりクエンチし、4℃において一夜放置した。次いでスピン(Spin)−X膜(COSTAR)を使用して、0.6mlのアリコートを濾過した。濾過前後における放射性アリコートを比較すると、放射能の本質的100%がフィルターの中に回収されたことが証明された。生理食塩水+0.02%のアジドと平衡化させた1×57cmのS400SFゲル濾過カラム(Pharmacia)に500μlのフィルターを適用し、0.2ml/分において展開させた。0.89mlの画分を集め、分析した。Monsigny et al.の方法により480nmにおける吸収を使用して、デキストラン濃度を測定した。各管から採った50μlのアリコートの放射能を液体シンチレーション計数により測定し、そして 3H−BSA濃度をその比活性を使用して計算した。カラムの溶離における未結合BSAの位置を独立のカラムの展開において決定した。
【0108】
第5図に示すように、BSAの大きい部分(cpmで表わされる)は高分子量の形態であり、これはデキストランと同一位置において展開し、OD480で表わされる。未結合タンパク質を表す小さい残留BSAピークが存在する。表4は精製データを含む。
【0109】
【表4】
【0110】
このカラムは、未結合タンパク質からデキストラン−BSA複合体をきれいに分離しなかった。これは異常である。なぜなら、高分子量ポリマーはゲル濾過カラムにおいてテイリングをしばしば引き起こすからである。さらに、T2000デキストランは未分画であったので、ある範囲の大きさを有した。遊離BSAおよび結合BSAがオーバーラップする領域における結合したBSAの量を推定するために、結合BSA/デキストランの一定比を仮定した。合計の結合BSA(BSA/デキストラン比×デキストランの合計のモル量から計算された)は2.55mgとして決定された。これにより示されるように、タンパク質の87%が結合した形態に変換された。
【0111】
【表5】
【0112】
このBSA−デキストランの実験結果を表5(第1行)に、異なる量のCDAPおよびTEAを使用する3つの他の試験(第2〜4行)と一緒に要約する。TEAの量およびCDAPの量の双方は、直接的結合により高いタンパク質/多糖の比を得ることを促進する。この方法は少量を使用して好都合な実験を可能とするので、試薬の最適な量を容易に決定することができる。
【0113】
カーボジイミドまたはヘテロライゲーションのカップリング法と異なり、直接的結合反応は未結合タンパク質を修飾せず、またそれは苛酷な条件を使用しないことを強調すべきである。したがって、それ以上の使用のために未結合タンパク質を回収できるであろう。多数のタンパク質抗原が価値があるので、これは直接的結合法の1つの主要な利点である。
【0114】
実施例2A
PT−Pn14複合体の製造
これらの実験の目的は下記の通りである:(1)低分子量の形態から高分子量の形態へのタンパク質の転換が炭水化物へのタンパク質の直接的結合の結果であることを証明すること;(2)1つの特定の組の条件下に、タンパク質の結合に必要なシアン化試薬の最小量を決定すること;および(3)臨床的に関係する複合体を本発明の方法を使用して製造できることを証明すること。
【0115】
百日咳トキソイド(PT)(Mass.Public Health Biol.Labs、マサチュセッツ州ボストンから入手した)を0.5MのNaCl、0.02Mのリン酸ナトリウム、pH8.8、中に0.289mg/lにおいて溶解した。PTの100ml当たり0.1mlの0.1Mのホウ酸ナトリウム、pH9.1、または0.75MのHEPES、pH7.5、を添加した。肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)(ATCCロット83909)を0.15Mの生理食塩水+0.02%のアジド中に5mg/mlにおいて溶解した。トリエチルアミン(TEA)水中に0.2Mにおいて溶解した。CDAPをアセトニトリル中に100mg/mlまたは10mg/mlにおいて溶解した(−20℃において調製しかつ貯蔵した)。グリシンを1.0M、pH5.0において調製した。グリシン/HClの代わりに、アミノエタノールまたは他のアミノ試薬を使用できる。
【0116】
実験1−直接的結合による有効な条件下に構築物の合成:PT−Pn14
各管は氷上において250μgのPn14(50μl)を含有した。時間ゼロにおいて、表に示す種々の量のCDAPを添加し、30秒後、25μlのTEAを添加した。2分後、1mlのPTを添加した。約1時間後、100μlのグリシン溶液を添加した。
【0117】
試料を4℃に一夜保持した。次の日に、試料をコスター(Costar)0.45ミクロンの回転フィルターで濾過し、HPLCTSK−ゲル濾過カラム上で0.2MのKCl中で展開させた。HMW%は高分子量OD280複合体ピークの面積/未結合成分を示すOD280ピークの面積である。それは(空隙体積のピークの面積%)/(空隙体積のピークの面積%+未結合成分のピークの面積%)により定義される。HPLC展開から得られた面積%は、下記の通りであった:
【0118】
【表6】
【0119】
PT対照は22%のHMWを有するので、反応条件により引き起こされるPTの凝集が少量で存在することがある。この組のデータは、また、CDAP/多糖(Ps)回転を変化させることによって、最終複合体におけるタンパク質/炭水化物の比をコントロールできることを示す。
【0120】
実験2−PTへの単糖の結合
この系列において、Pn14多糖の代わりに150μlの10mg/mlのモノマーのグルコースの溶液を使用した。実施例1に類似する条件を使用したが、ただしホウ酸塩の代わりにPTをHEPES(pH7.5、0.075M)中で調製した。また、25μlのTEAの代わりに20μlを使用した。これらの条件は下記のものを生じた:
【0121】
# 条件 HMWの
形態%
1 PTのみ、CDAPまたはTEAなし <20%
2 CDAP、TEA(グルコースなし);+PT 約0
3 グルコース、CDAP、TEA;+PT 約0
【0122】
No.2および3は、CDAPが百日咳トキソイドそれ自体を重合しないこと、したがって、PTの高分子量形態への変換が高分子量多糖へのそのカップリングのためであり、タンパク質の重合のためでないことを示す。HPLCの展開から、PTの分子量のわずかの増加が存在したので、グルコースがPTに結合したことが明らかであった。
【0123】
実験3−スペーサーを介する有効なワクチン構築物の合成:PT−Pn14
ヘキサンジアミンで誘導化されたPn14を下記のようにして調製した。10μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を添加した(193モルのCDAP/100kDaの多糖)。30秒後、;20μlのTEA(0.2M)を添加した。合計2.5分後、300μlの0.1Mのホウ酸ナトリウム(pH9.1)中の0.5Mのヘキサンジアミンを添加した。1時間後、この溶液を水中に透析し、濾過し、P6DG(BioRad)カラム上で生理食塩水中に脱塩した。空隙体積をプールし、セントリコン(Centricon)30装置(Amicon)で濃縮した。それは33アミノ基/100kDaのPn14多糖を有することが決定された。
【0124】
百日咳トキソイドをヘテロライゲーション化学を使用してアミノ−Pn14に結合した(Brunswick et al.)。50μlの0.75MのHEPES緩衝液(pH7.5)を0.44mlのアミノ−Pn14に添加した。それを10μlの0.1MのヨードアセチルプロピオネートN−ヒドロキシ−スクシンイミド(SIAP)でヨードアセチル化した。百日咳トキソイドを20倍モル過剰量のSATA(Calbiochem、カリフォルニア州ラジョラ)でチオール化した。各々を生理食塩水中に脱塩し、混合し、1/9体積の0.75MのHEPES、10mMのEDTA、および0.5Mのヒドロキシルアミンを含有する緩衝液を添加した。最終体積は1.1mlであった。一夜インキュベートした後、この溶液をメルカプトエタノール中で1時間0.2mMとし、次いでヨードアセタミド中で10分間10mMとし、次いでそれをS400SFゲル濾過カラム(Pharmacia)上で分画した(第6図参照)。百日咳トキソイドのほぼ50%が結合した形態で回収された。最終複合体は0.7モルのPT/100kDaのPn14多糖を含有した。ブラッドフォード(Bradford)アッセイ(BioRad)により標準としてPTを使用して、複合体中のタンパク質濃度を決定した。Monsigny et al.の方法により標準としてPn14を使用して、多糖濃度を決定した。
【0125】
実施例2B
CTEAを使用するPn14へのタンパク質の直接的結合:
Kohn et al.Anal.Biochem.115:375(1981)に記載されているように、CTEAは副反応がCDAPより少ないという利点を提供し、より純粋な生成物に導く。その欠点は、それが湿分感受性であり、閉じた容器中で秤量しなくてはならず、そして貯蔵液として生ずる調製できないということである。
【0126】
1mlの肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖(Pn14)(生理食塩水中の5mg/ml)を0℃に保持する。CTEA(入手先、Aldrich Chemical、ウイスコンシン州ミルウォーキー)を乾燥窒素下に貯蔵する。2mgのCTEAを閉じた秤量容器中で秤量し、冷却し、激しく混合したPn14に添加する。20μlのTEA(水中の0.2M)を混合しながら直ちに添加する。60秒後、5mgの百日咳トキソイド(1.5mg/ml)を撹拌した溶液に添加する。30分後、反応を200μlの1Mのグリシン(pH5.0)クエンチする。さらに1時間後、この溶液を濾過し、生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム上に通過させる。1:1複合体が生成する。
【0127】
CTEAを使用する肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖へのスペーサー試薬の添加:
1mlのPn14(生理食塩水中の5mg/ml)を0℃に保持する。CTEA(入手先、Aldrich Chemical、ウイスコンシン州ミルウォーキー)を乾燥窒素下に貯蔵する。1mgのCTEAを閉じた秤量容器中で秤量し、冷却し、激しく混合したPn14に添加する。直ちに20μlをTEA(水中の0.2M)に混合しながら添加する。1時間後、この溶液を生理食塩水中に完全に透析し、滅菌濾過する。187モルのCTEA/100kDaのPn14の比を使用するので、ほぼ18アミン/100kDaのPn14を有する複合体が生成する。
【0128】
実施例3
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)多糖(PRP)への百日咳トキソイドの直接的結合
平均分子量350kDaのPRPを、マサチュセッツ・パブリック・ヘルス・バイロジカル・ラボラトリー(Massachusetts Public Health Biological Laboratory)から入手した。百日咳トキソイドを同一源から入手した。15μlのCDAP(100mg/ml)を氷上の100μl(2mg)のPRPに添加した。30秒後、30μlのTEAを添加した。これは319モルのCDAP/100kDのPRPを表した。さらに2分後、0.75mlの百日咳トキソイド(1.1mg)を添加した。40分後、200μlの1Mのグリシン(pH5.0)を添加して反応をクエンチした。さらに1時間後、この溶液を生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム上に通過させた(第7図参照)。空隙体積をプールし、滅菌濾過した。生成物は1.1のPT/100kDaのPRPを有すると決定され、全体の収率は68%であった。
【0129】
Chu et al.Inf.& Imm.40:245(1983)によりワクチンを調製し、このワクチンは377モルの臭化シアン/100kDaのPRPを使用し、そして1.4〜2.1のPT/100kDaのPRPの比を有し、収率は50%より低かった。したがって、本発明の直接的結合法は同様な複合体を生じたが、より少ない作業で、より高い収率を生じ、毒性の試薬を使用しなかった。
【0130】
PRP複合体を製造する多数の発表されたプロトコールはスペーサーを使用して誘導化されたPRPで開始する(Chu et al.、Schneerson et al.、J.Exp.Med.、152:361(1980);DickおよびBeurret、″Glycoconjugates of Bacterial Carbohydrate Antigens″、Conjugate Vaccines、J.M.CruseおよびR.E.Lewis(編)、Vol.10、pp.48−114(1989))ので、CDAPが、また、スペーサーをPRPに添加するために使用された。使用される条件は前述した通りであったが、百日咳トキソイドの代わりに100μlの0.1Mのホウ酸塩中の0.1Mのヘキサンジアミンが添加された。生成物を生理食塩水中に透析した。それは102アミノ基/100kDaのPRPを有することが決定された。これは発表された手順において使用されたより高い比であるので、なおさらに少ないCDAPを使用できたであろう。
【0131】
実施例4
CDAP化学を使用して製造されたワクチンとして有効な免疫原性構築物CDAPおよび2官能性試薬を使用する結合
簡単に述べると、配偶子特異的タンパク質pfs25からのマラリア誘導ペプチド、p28(CNIGKPNVQDDQNK)を破傷風トキソイド(TT)に結合した。p28はマラリア伝達ブロッキング抗体を誘導することが示された。次いでCDAPを使用してp28−TTを肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)多糖に結合した。
【0132】
FDA承認破傷風トキソイドをHEPES中に一夜透析し、そして30倍モル過剰のヨードアセチル化剤(SIAP)と反応させた。3時間後、試薬をマクロセプ(Macrosep)30(Filtron Technology)を使用する限外濾過により除去し、新鮮なHEPES、0.15M、pH7.5、緩衝液中に洗浄した。おだやかに撹拌しながら、トリチウム標識化p28を固体として誘導化TTに添加した。4℃において一夜反応性させた後、混合物を0.2mMのメルカプトエタノールで処理して残留する活性基をブロックし、次いでHEPES緩衝液と平衡化したP6DGカラム上で脱塩した。ペプチドの特異的活性から、生成物は20モルのp28ペプチド/モルのTTを含有することが決定された。複合体を生理食塩水中に透析し、滅菌濾過した。
【0133】
CDAPを使用する直接的結合
Pn14(入手先、American Tissue Type Collection、ATTC)は高分子量を有した(約106 ダルトン)。p28−TTを下記のようにしてPn14に直接的に結合した。CDAP(アセトニトリル中の100mg/mlの貯蔵液から10μl)をPn14(150μlの生理食塩水中の1.1mg)。30秒後、20μlのトリエチルアミン(0.5M)を添加した。2分後、0.55mg(0.8mlの生理食塩水中の)のp28−TTを添加し、そして1時間後、反応を200μlの1.0Mのグリシン(pH5)でさらに1時間クエンチした。次いで生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム上に複合体を通し、複合体を含有する空隙体積をプールした。第9図は、p28−TTの事実上すべてが空隙体積の中に複合体の形態で見出されたことを示す。
【0134】
免疫原性構築物の免疫活性
5匹のDBA/2マウスのグループを生理食塩水中の10μgのp28−TTまたは(p28−TT)−Pn14複合体で静脈内免疫化し、3週後に採血し、そして血清をELISA(酵素結合イムノアッセイ)により組換えpfs25タンパク質に対する活性についてアッセイした。ペプチドp28をpfs25から誘導化する。マウスの他の組をアジュバントの明礬(Imject、Pierce Chemical Co.、イリノイ州ロックフォード)で沈降させた同一抗原で免疫化した。
関係する出願と一致して、表7は高分子量の複合体のみがすぐれた抗タンパク質力価引き出したことを示す。
【0135】
【表7】
【0136】
これが証明するように、CDAP法を使用して有効なワクチン構築物を調製することができる。また、それは有効な複合体を容易に製造できることを示す。
【0137】
実施例5
CDAPを使用して製造した生物学的に活性な多価タンパク質複合体
CDAPを使用してタンパク質を多糖に直接カップリングして製造した複合体が多価生成物(これは関係する出願に記載されているように増強された免疫原性を有する)を生ずることができること、およびこの方法が生物学的活性を保存するために十分に温和であることができることを証明するために、モノクローナル抗体とデキストランとの種々の複合体を製造した。これらの実験において、Bリンパ球上の膜IgDと架橋しそして増殖を誘発する抗IgD抗体とともにモノクローナル抗体Hδa /1を使用した(Brunswick et al.Journal of Immunol.140:3364(1988))。Brunswick et al.が記載するように、高分子量ポリマー、例えば、2000kDaのデキストランへのHδa /1の多数のコピーの結合(Hδa /1−AECMデキストラン)は1000倍低い濃度においてB細胞の増殖を誘発し、そして未結合Hδa /1より高いレベルの増殖を誘発した。Brunswick et al.簡単な、わかりやすいが、多工程の、多くの日数を要する手順を複合体の製造に必要とした。アミノエチルカルボキシメチルデキストラン(AECMデキストラン)をまずBrunswick et al.に記載されているように製造し、次いでヘテロライゲーション化学を使用してHδa /1を炭水化物にカップリングした。
【0138】
下記のようにしてCDAPを使用する直接的結合およびスペーサーとCDAPとを使用する間接的結合の双方により、Hδa /1−デキストランを製造した。
【0139】
直接的結合:0.3mlの生理食塩水中の3.2mgのT2000デキストラン(Pharmacia)の撹拌溶液に、15μlのCDAPを添加した(アセトニトリル中の100mg/mlの貯蔵液から)。30秒後、撹拌しながら15μlの0.2MのTEAを添加した。さらに2分後、おだやかに撹拌しながら6mgのHδa /1(362μlの0.05Mのホウ酸ナトリウムおよび0.075MのNaCl中の)を添加した。15分後、100μlの1.0Mのグリシン、pH5.0の添加により反応混合物をクエンチし、生理食塩水と平衡化させたS400SFゲル濾過カラム(1×59cm)上に通した。カラムの溶離を第9図に示す。空隙体積のピークをプールし、ミレックス(Millex)GVフィルターで滅菌した。この生成物をHδa /1−(CDAP)−デキストランと呼ぶ。この手順はほぼ3時間を要した。
【0140】
スペーサー:デキストランを前述したようにCDAPで活性化した(3mlの生理食塩水および25μlのCDAP中の31.5mgのT2000デキストラン、次いで25μlのTEA、1モルのCDAP/0.06モルのグルコースモノマー)。3mlの0.1Mのホウ酸ナトリウム中の0.5モルの1,6−ジアミノヘキサンを添加した。この溶液を水中に完全に透析し、次いでS400HRゲル濾過カラム上で分画した。空隙体積をプールし、濃縮した。このアミノ−デキストランは147アミノ基/2000kDaのデキストランを有することが決定された。この生成物をNH2 −(CDAP)−デキストランと呼ぶ。透析を含めて、これは2日の手順であった。対照的に、AECM−デキストランはBrunswick et al.の方法を使用して製造するのに通常約1週を要する。
【0141】
Brunswick et al.に記載されているヘテロライゲーション技術を使用して、Hδa /1をAECM−デキストランおよびNH2 −(CDAP)−デキストランに結合した。これらの複合体を、それぞれ、Hδa /1−AECM−デキストランおよびHδa /1−NH2 −(CDAP)−デキストランと呼ぶ。ACEM−デキストランを使用する結合は2日の手順であった。
【0142】
10,000細胞/ウェルを使用するB細胞の増殖アッセイをBrunswick et al.に記載されているように実施した。表8はそれらのアッセイの結果を提供し、計数/分/ウェルとしてB細胞の中へのトリチウム化チミジンの取込みを詳しく示す。
【0143】
【表8】
【0144】
Brunswick et al.において反復されているように、Hδa /1単独はこれらの濃度において取込みを引き起こさなかった。10〜100μg/mlのHδa /1における最大の取込みはほぼ3000cpmである。
【0145】
このデータが示すように、スペーサーを使用するか、または使用しないで、CDAPを使用して製造された複合体は、増殖を誘発するそれらの能力において、Hδa /1−AECMデキストランに本質的に等しい。多価抗体のみが低い投与量において高いレベルの増殖を誘発するので、すべての複合体は多価でなくてはならない。したがって、CDAPを使用する直接的結合は抗体の生物学的活性に影響を与えなかった。直接的結合手順は、スペーサーを使用して製造した複合体よりも製造が顕著に速かった。さらに、スペーサーの添加およびCDAPを使用する結合はAECMデキストランを製造よりも非常に速かった。したがって、この実験は(1)CDAPを使用する多価構築物の高い収率および(2)複合体、特に直接的複合体の製造の容易さおよび速度を示す。CDAPおよび2官能性試薬を使用する結合は48時間以下を要し、そして直接的結合は3時間以下を要した。
【0146】
実施例6
特記しない限り、これらの実験におけるプロトコールは一般に下記の通りであった。トリエチルアミン(TEA)、アセトニトリル、硫酸(H2 SO4 )、レゾルシノール、ヘキサンジアミン、ホウ酸ナトリウム、およびHEPESをアルドリッヒ(Aldrich)から入手し、そしてそれらは試薬等級またはそれよりすぐれていた。N−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)をシグマ(Sigma)またはリサーチ・オーガニックス(Research Organics)(オハイオ州クレブランド)から購入した。トリニトロベンゼンスルホン酸(TNSS)をコッダック・ケミカルス(Kodak Chemicals)から入手した。ミレックス(Millex)フィルターをミリポア・コーポレーション(Millipore Corp.)から入手した。
【0147】
デキストランT2000をファーマシア(Pharmacia)から入手した。肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖をATTC(マリイランド州ロックビレ)から入手した。アミノエチルカルバミルデキストランをBrunswick et al.に記載されているようにして製造した。低エンドトキシンのコーヘン(Cohen)画分VBSA(Sigmaカタログ#A9306)から2.6cm×97cmのS100HRカラム(Pharmacia)(生理食塩水+アジドと平衡化した)上のゲル濾過により、モノマーのBSA(ウシ血清アルブミン)を調製した。この生成物は、分析用HPLCにより、0.5%より少ない二量体および0.1%より少ない高分子量の質量の物質を有することが示された。BSAをHPLCで周期的にチェックしてそのモノマー状態を確実した。BSAについて44,000M-1の吸光係数を使用した。
【0148】
多糖をCDAPを下記のようにして活性化した。CDAPをアセトニトリル中で100mg/mlにおいて調製し、−20℃において1カ月まで貯蔵した。CDAPを水中の多糖の撹拌溶液にピペットでゆっくり入れ、30秒後、使用したCDAPの体積に等しい体積の0.2モルのTEAを添加した。2.5分において、1/5体積の0.1Mのホウ酸ナトリウム中の0.5Mのヘキサンジアミン(pH9.3)を添加した。反応を4℃において一夜進行させた。反応生成物を生理食塩水中で平衡化させたP6DGまたはP6カートリッジ(BioRad)上で脱塩し、次いで生理食塩水中にさらに透析した。いくつかの試料をセントリコン(Centricon)30装置(Amicon)de濃縮し、再び脱塩して遊離ジアミンの除去を確実にした。この一般的手順の変法を下記に示す。第一級アミンについてTNBSアッセイを使用して、ヘキサンジアミンを使用する誘導化の程度を測定した。11,000M-1吸光係数を使用して366nmにおいて吸収を測定した。ジアミンの代わりにエタノールアミンで誘導化された、CDAP活性化デキストランは、このアッセイにおいてTNBS陰性であることが見出された。Monsigny et al.、に記載されているように、多糖濃度を測定した。特記しない限り、結果をアミンのモル数/100kDaの多糖として表す。
【0149】
Lees et al.、Vaccine、12(3):1160、1994に記載されているように、チオ−エーテル結合を介するアミノ−デキストランへのタンパク質の結合を実施した。アミンを使用する活性化について前述したように、ポリマーをCDAPで活性化することによって、タンパク質を多糖に直接結合した。CDAPを導入した後2.5分において、タンパク質(0.15モルのHEPES、pH7.5中の10mg/ml)をおだやかに撹拌する溶液に急速に添加した。生理食塩水と平衡化させたS300HRまたはS400HRカラム(Pharmacia)上のゲル濾過の少なくとも1時間前に、ほぼ1/5体積の0.75モルのHEPES、pH7.5中の0.5モルのエタノールアミンで反応をクエンチした。標準としてBSAを使用してブラッドフォード法(BioRad試薬)により、空隙体積からのピーク管をタンパク質についてアッセイした。標準としてデキストランを使用してMonsigny et al.の方法により、多糖濃度を測定した。特記しない限り、結果(下記において説明する)をタンパク質のmg/mg多糖として表す。
【0150】
CDAPを使用する多糖の活性化:
従来報告された方法よりも急速、温和、好都合、そして安全である条件下に、多糖のCDAP活性化を使用して複合体を製造できるかどうかを決定するために、実験を実施した。プロトタイプの多糖として、高分子量デキストラン(T2000デキストラン、Pharmacia)を種々の実験条件下にCDAPで活性化した。
【0151】
100mg/mlの貯蔵液から、ある体積のCDAPを水中のT2000デキストランの溶液の中にピペットでゆっくり入れた(第4図に示すように1.6mg/ml、または第10図に示すように10mg/ml)。30秒において、CDAPの体積に等しい体積の0.2モルのTEAを添加し、そして120秒後、大きい体積のホウ酸ナトリウム中のヘキサンジアミン(pH9.3)を急速に添加した。P6DGカラム上で脱塩し、次いで完全に透析して未結合試薬を除去した後、高いレベルの多糖が見出された(第4図および第10図参照)。この同一手順後、しかしCDAP、デキストラン、またはデキストランのそれぞれの非存在において、TNBSアッセイによりアミンを検出することができた。さらに、ヘキサンジアミンの代わりにモノアミン(エタノールアミン)と反応させたCDAP活性化デキストランはTNBS陰性であった。すべての低分子量物質を確実に除去するために、誘導化多糖を限外濾過により濃縮し、P6DGカラム上で第2回目の脱塩を行った。アミン比はこの手順後において未変化であった。
【0152】
誘導化の程度は、第4図および第10図参照に示すように、CDAPの量−−多糖上に置換したアミノ基の絶対数の増加に導くCDAP/デキストランの比に依存した。誘導化の程度は、同一のCDAP/デキストランのモル比についての多糖の濃度に依存した。したがって、1.6mg/mlのデキストランにおいて、効率はCDAPの1モル当たり置換したアミンのモル数に基づいて0.7〜2.4%であったが、10mg/mlのデキストランにおいてCDAPの1モル当たり0.2モル程度に多くのアミンが置換された(20%の効率)。
【0153】
この2分子反応の効率を改良するために、固定量のCDAPを使用して、多糖濃度を1から50mg/mlに増加した(第11図参照)。使用した最高の多糖濃度において、使用したCDAPの1モル当たり0.4モルより多いアミノ基が添加された。CDAP活性化で到達された置換の高いレベルと対照的に、CNBr活性は通常抗体1〜2%の最大効率を生ずる。
【0154】
TEAの非存在において、ジアミンによる誘導化は顕著に減少した。第三級アミン、例えば、TEAの存在がCDAPによる可溶性多糖の活性化に必須であるかどうかを決定するために、TEAを使用する活性化の効率を無機緩衝剤またはNaOHを使用する効率と比較した。
【0155】
100μlのCDAP溶液(アセトニトリル中の100mg/ml)を、室温において、2mlのT2000デキストラン(水中の10mg/ml)の撹拌溶液にゆっくり添加した。30秒後、1NのNaOHをゆっくり添加してpH約9を維持した。1.5分後、0.5MのHEPES、pH8.0、中の1mlのBSA、20mg/ml、を添加した。反応を4℃において18時間進行させた後、100μlの0.75MのHEPES、pH7.5、中の0.5Mのエタノールアミンの添加により反応をクエンチした。分析のために、300μlの生成物を生理食塩水およびアジドと平衡化させた1cm×50cmのS400HRゲル濾過カラム上でゲル濾過した。空隙体積のピーク管をバイオラド(BioRad)アッセイによりタンパク質について、そしてレゾルシノールアッセイにより多糖についてアッセイし、デキストランの1mg当たり0.45mgのBSAを有することが見出された。
【0156】
下記表9に示すように、種々の緩衝剤を使用して誘導化が生じた。事実、1NのNaOHを注意して添加してpHを約9に上昇させて、すぐれたレベルの置換が得られた。
【0157】
【表9】
【0158】
デキストランでは、8〜10のpH範囲にわたって誘導化のレベルの有意な差は存在しなかったが、他の多糖は活性化pHにいっそう依存することが見出された(下記を参照)。前述したように、TEAを省略しかつpH上昇させない場合、デキストランはなお活性化されるが、非常に低い程度に誘導化される。したがって、CDAP活性化またはカップリングはTEAの存在に依存しないか、または反応混合物が十分にアルカリ性であるように、適当な手段を使用するpHを上昇させることができる。
【0159】
表10はCDAPを使用する活性化の反応速度を示す。この実験において、100μlのCDAP(100mg/mlアセトニトリル)を1mlのデキストラン(20mg/ml)に30秒において添加し、1mlの0.1Mのホウ酸ナトリウム、pH8.8、を添加し、2分後、0.75MのHEPES中の0.5mlのヘキサンジアミンを添加した。アリコートを示した時間において生理食塩水と平衡化させたP6カートリッジ上で脱塩し、次いで分析前に完全に透析した。多糖およびCDAPの高い濃度において、溶液はゲル化した。したがって、10〜20mg/mlの多糖溶液を使用して作業することはいっそう好都合である。
【0160】
【表10】
【0161】
表10に示すように、誘導化反応は急速であり、15分以内に本質的完結する。3または24時間において、誘導化の程度の増加は認められなかった。
【0162】
再現性肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖(Pn14)をCDAPで活性化し、ヘキサンジアミンで誘導化した。1mlのPn14の撹拌溶液(水中の10mg/ml)に、30μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)(0.3mgのCDAP/mgのPn14)を添加した。30秒後、30μlのTEA(水中の0.2M)を添加した。2分後、0.5mlのヘキサンジアミン(0.75MのHEPES、pH7.6、中の0.5M)を添加した。1.5時間後、生成物をP6カートリッジで脱塩し、限外濾過により濃縮し、再び脱塩し、次いでTNBSでアミンについて、そしてレゾルシノール/硫酸でPn14についてアッセイした。表11に示すように、1年にわたって実施された3回の実験において、検出されたアミンのモル数/使用したCDAPの1モルに基づいて13〜15%の効率が得られた。
【0163】
【表11】
【0164】
上記表中の結果は、フリーザー中のCDAP試薬の安定性、再現性、および高い効率を示す。比較すると、CNBr溶液は安定ではなく、CNBr活性化法は再現することが困難であり、そして約2%の効率を有する。
【0165】
CDAP活性化多糖へのタンパク質の直接的結合:
アミンによる誘導化のように、多糖に対するタンパク質の結合の程度は多糖の活性化に使用されたCDAPの量に依存した。第12図に示すように、10mg/mlのデキストランの濃度において、CDAP/デキストランの比は生成物のBSA/デキストランの比とともに直線的に増加した。タンパク質および/または多糖の濃度が増加した場合、より低いCDAP/デキストラン比においてさえ同様なBSA/デキストラン比をまた観察することができた。
【0166】
対照反応をデキストランの非存在において実施し、そしてゲル濾過により分析すると、CDAPそれ自体は凝集しないか、またはBSA(タンパク質)を重合させなかった。CDAP処理試料(0.5mlの水+25μlのアセトニトリル中の100mg/mlのCDAP+50μlの0.2MのTEA+0.5mlの0.5MのHEPES、pH8.0、中の10mg/mlのBSA)および対照試料(0.575mlの水+0.5mlの0.5MのHEPES、pH8.0、中の10mg/mlのBSA(モノマー))を調製した。これらの試料を一夜反応させ、100mlのHEPES中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチした。1時間クエンチした後、試料を生理食塩水およびアジド中のS400の1cm×50cmのカラム上で0.75ml/分において展開させた。カラム上のOD280を合計し、BSAピークに先行する管上のOD280の合計に分割した。CDAP処理試料は0.6%のポリマーのBSAを示し、そして対照試料は0.7%のポリマーのBSAを示した。したがって、高分子量タンパク質は自己重合または凝集のためではない。
【0167】
そのうえ、通常の条件下に、CDAPは多糖を架橋しない。これは下記のHPLC実験により確証された。この実験において、70kDaのデキストランを活性化させ、次いでエタノールアミンと反応させ、そしてゲル濾過カラム上で展開させた。詳しくは、2.5mgのT70デキストラン(10mg/ml)を20μlのCDAP(100mg/ml)と一緒にした。30秒後、20または60μlの0.2MのTEAを添加し、2分において、100μlの0.75MのHEPES、pH7.6、中の0.5Mのエタノールアミンを添加した。1時間後、試料を0.2MのNaCl中のG4000PWXL(Tosohaas)またはSEC3000(Beckman)上で展開させ、屈折率により検出した(各カラムの空隙体積は約5分であり、塩を約10分において溶離した)。高分子量へのシフトの証拠は観察されなかった。
【0168】
下記の比較実験が示すように、CDAPが多糖を架橋するのを防止するために、極端な条件は回避すべきである。1mlのT2000デキストラン(100mg/ml水)を176μlのCDAP(100mg/ml)と一緒にした。30秒後、176μlの0.2MのTEAを添加し、これは2分以内にゲルを生じた。
【0169】
最適活性化時間を決定しかつCDAP活性化多糖の安定性を検査するために、CDAPおよびTEAを添加した後5〜300秒においてタンパク質(BSA)を添加し、そして生成物のBSA/デキストラン比を測定した。第13図に示す結果が示唆するように、最適活性化時間は約2分であり、そして活性化された多糖はこの期間にわたって安定である。タンパク質を1時間において添加する場合、反応の収率は約1/3だけ減少する。
【0170】
CDAPと多糖との水性混合物は、第14図において反映されるように、安定であることが見出された。60μlのCDAP(100mg/ml)を1mlの水に添加し、このCDAP溶液の100μlのアリコートを100μlの多糖(デキストラン、20mg/ml)と第14図に示すように10〜300秒の期間にわたる種々の時間において一緒にし、次いで15μlのTEA溶液(0.2M)と一緒にした。TEAと一緒にした後2分において、100μlのBSA(30mg/ml)を添加した。
【0171】
添加時間の全体の範囲にわたって最終のタンパク質/多糖比において有意差は見出せなかった。第14図に示す結果は、酸性溶液中のCDAPの安定性、およびCDAPの水溶液が酸性となるという観察と一致する。したがって、試薬溶液を同じ日に使用する場合、有機溶媒の代わりに水を使用することができる。また、CDAPを固体として多糖溶液に添加することができる。少量のCDAPを使用して作業するとき、固体状試薬を使用して作業するより溶液を使用して作業することは好都合であることがわかった。さらに、CDAPのアセトニトリル溶液の急速添加は時には多糖を沈澱させることがあるが、CDAPの水溶液を使用する場合、沈澱を回避することができる。CDAPの水性貯蔵液を75mg/mlまでの濃度において調製することができる。
【0172】
第15図は、多糖へのタンパク質の結合が比較的急速であり、3時間以内に、80%の最大結合が達成されたことを示す。タンパク質濃度、多糖濃度、および/またはCDAP濃度を増加することによって、なおいっそう急速なカップリングを達成できるであろう。
【0173】
第16図に示すように、多糖の活性化の間の反応溶液のpHはCDAPによる多糖の活性化における他の重要なパラメーターである。活性化工程の間のpHが7.0から8.3に増加するにつれて、カップリング効率の顕著な増加により反映されるように、多糖の活性化が増加した。pHが7.0から8.3に増加するにつれて、複合体のBSA/デキストラン比は4倍に増加した。8.3より高いpHにおいて、この比はほとんど増加しないか、またはまったく増加しなかった。CDAP活性化のpH依存性は、TEAの非存在において前に観察された低い誘導化レベルを説明する。なぜなら、CDAP水溶液のpHは最初にほぼ中性であり、そしていっそう酸性となるからである。
【0174】
アミンによる多糖の誘導化について前述したように、タンパク質の直接的結合のための多糖の活性化の間において、第三級アミン緩衝剤は不必要である。したがって、多糖へのタンパク質の直接的結合は、例えば、活性化工程の間においてpHを上昇させるためにpHスタットまたは自動滴定装置を使用して、実施することができる。これはワクチン複合体の製造において好都合であることがある。
【0175】
第17図は、活性化多糖へのタンパク質のカップリングの間の反応溶液のpHがタンパク質とCDAPとの直接的結合における重要なパラメーターであることを示す。第17図に結果を報告した実験において、広い範囲のpH値にわたって、かつ低いタンパク質/多糖比において、いくつかの緩衝剤を試験した。プロトコールは下記の通りであった。
【0176】
4mlのT2000デキストラン(水中の10mg/ml)に、133μlのCDAP溶液(新しく調製したアセトニトリル中の100mg/ml)を添加した(0.33mgのCDAP/mgのdex)。30秒後、266μlのTEA(0.2Mの貯蔵液から)を添加し、そしてpHを9.6の最大に到達させた。2.5分後、60μlの1MのNaAc(酢酸ナトリウム)を使用してpHを5.0に調節した。200μlのBSA(15mg/ml)(0.8mgのBSA/mgのdex)および100μlの緩衝液(1MのNaAc、pH4.7、5.7;0.5MのHEPES、pH6.94、7.43、8.15;0.1MのNaPO4 、pH8.0、8.67;50mMのホウ酸ナトリウム、pH9.0、9.6)(イオン強度についてコントロールしなかった)を含有する管に、400μlの活性化デキストランを移した。移してから1時間後、管の350μlの溶液を100μlの新しく調製した0.75MのHEPES(pH7.5)中の0.5Mのエタノールアミンと一緒にした。20時間後、100μlのエタノールアミンを残りの溶液に添加した。反応を少なくとも2時間クエンチし、生理食塩水+アジドと平衡化させたS300HRまたはS400HRカラム上に生成物を展開させた。ピーク空隙体積をバイオラド(BioRad)アッセイによりBSAについて、そしてレゾルシノールアッセイにより多糖についてアッセイした。
【0177】
第17図に示すように、タンパク質の大部分は7.4程度に低いpHにおいて多糖にカップリングし、6.9程度に低いpHにおいて実質的な量がカップリングし、そして5.7程度に低いpHにおいてさえ少量であるが、有意な量がカップリングした。この実験の条件について、約8のpHは最適であるように思われた。結果はカップリング工程のpHが重要であることを示すが、カップリングを広いpH範囲にわたって実施できることを示す。しかしながら、pH5においてカップリング反応は非常に非効率的であるので、クェンチングはpH約7〜8において実施すべきである。
【0178】
タンパク質/多糖比、多糖濃度、および/またはCDAPの使用量を増加することによって、低いpHにおいてさえカップリングの量を増加することができる。例えば、より多い試薬またはより多いタンパク質を使用することによって、pH7においてさえ収率を高くすることができる。したがって、多糖を活性化するためにCDAPを使用して、ほぼ中性のpHにおいて、タンパク質の直接的カップリングを達成することができる。
【0179】
第17図は、リン酸塩がまたカップリング反応に対して阻害的であることを示し、これはイオンの相互作用のためであるか、またはリン酸塩がわずかに求核性であるためであろう。しかしながら、カップリングの間のCDAPの量およびpHを増加すると、結合比/収率は増加するであろう。CDAPの活性化の間にリン酸塩が存在する場合、ジアミンの添加は禁止される。
【0180】
下記の実験により示されるように、PRPおよびPn6のリン酸塩は阻害を引き起こすことがある。20μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を、2mgのPn6(肺炎球菌(Pneumococcal)6型、リン酸ポリリビトール多糖)(水中の10mg/ml)の撹拌溶液に添加した。30秒後、緩衝液(100μlの0.1Mのホウ酸ナトリウムまたは40μlの0.2MのTEA)を添加した。2分後、100μlの0.5MのHEPES、pH8、中のBSA(20mg/ml)を添加した。4℃において一夜インキュベートした後、反応を100μlの0.75MのHEPES、pH7.5、中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いで生理食塩水+0.02%のアジドと平衡化させたS400HRカラム(Pharmacia)上でゲル濾過した。ピーク空隙体積の管をタンパク質および多糖についてアッセイした。比較の目的で、試験4において、デキストランを同一方法において誘導化した。結果を下記表12に報告する。
【0181】
【表12】
【0182】
Pn6およびTEA緩衝液(試験1)について、収率は非常に低かった。pHをホウ酸ナトリウムで増加させると(試験2および3)、収率は増加した。同一条件はデキストランについて非常に高い収率を与える(例えば、試験4参照)。したがって、リン酸塩に基づく多糖、例えば、Pn6は、すぐれた収率で複合体を製造するためには、pHおよび/またはCDAP比の調節を必要とする。
【0183】
次の実験は、CDAP活性化により形成されたイソ尿素結合が安定でありかつ耐久性であることを示す。この実験において、ε−TNP−リジンをCDAPを介して誘導化にカップリングさせた。試料1〜5は下記のようにして調製した:
1: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの生理食塩水(対照)
2: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの2MのNaCl
3: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの9MのGuHCl
4: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの生理食塩水(37℃においてインキュベーター中で反応させた)
5: 400μlのTNP/CDAP/dex+100μlの生理食塩水(対照)
【0184】
試料4(これは示すように反応させた)を除外して、試料を暗所で一夜反応させた。次いで試料を10mMのホウ酸ナトリウム中でP6カートリッジ上で1.0ml/分において脱塩した。画分をOD366において読み、そして空隙画分のピーク管をアッセイした。結果を下記表13に示す。
【0185】
【表13】
【0186】
各試料について、TNP/デキストラン比は未変化であり、イソ尿素結合が試験条件下に安定であることを示した。
複合体の生物学的活性
多糖のCDAP活性化が抗体の応答を誘発するその能力に有害効果を有するかどうかを決定するために、in vitroにおけるその生物学的活性を試験した。BSAをCDAP活性化肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖に直接的に結合するか、またはヘキサンジアミンで活性化された肺炎球菌(Pneumococcal)14型多糖にカップリングし、次いでヨードアセチル化し、チオール化タンパク質と反応させた(Lees et al.)。各複合体はBSAのmg/Pn14のmgのある比を有した。同系交配DBA/2マウスをアジュバントの非存在において50μgのBSAで、遊離または多糖複合体として、皮下免疫化した。血清を14および28日後に集め、抗BSAおよび抗Pn14抗体力価をELISAにより測定した。
【0187】
未結合BSAまたは未結合Pn14のいずれも検出可能な一次応答を刺激しなかった。対照的に、BSA−Pn14複合体は、タンパク質がスペーサーを使用する間接的結合により、または直接的結合によりカップリングされているかにかかわらず、タンパク質および多糖の双方の成分に対して有意な抗体の応答を誘発した。スペーサーまたはCDAP活性化デキストランへの直接的カップリングを使用して調製されたBSA−デキストランで免疫化されたマウスは、複合体を他の化学的方法で調製したとき得られた力価に匹敵する力価を与えた。そのうえ、CDAP活性化を使用して調製されたTT−PRP複合体は、複合体で免疫化されたラットにおいて、CNBr活性化を使用して調製されたTT−PRP複合体で免疫化されたラットにおいて示された応答に匹敵する抗PRP応答を示した。さらに、CDAP活性化Pn14に直接的に結合された破傷風トキソイドは、高い抗破傷風抗体および抗Pn14抗体の応答を有した;オプソニンアッセイはこれらの抗体が保護的であることを示した。
【0188】
実施例7
CDAP活性化多糖へのヒドラジド誘導化タンパク質のカップリング(アミノ基上で誘導化されたタンパク質)
BSA上の制限された数のアミンを下記のようにしてヒドラジドで誘導化した。20mgのBSA(75mMのHEPES、pH5、中の24mg/ml)を20倍モル過剰のSPDP(Prochem)と反応させた。8時間後、200μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加し、次いで25μlの1MのDTTを添加してチオールを脱保護した。この溶液を直列の2つのP−6カートリッジ(10mMの酢酸ナトリウム、0.1MのNaClおよび2mMのEDTA(p5)と平衡化させた)上で脱塩し、そして空隙体積のタンパク質をセントリコン(Centricon)30装置で1.05mlの体積に濃縮した。エルマン(Ellman)試薬を使用して、3.2遊離チオール/BSAが存在することが測定された。5mgのチオール−BSAを貯蔵し、そして残部を50μlの1MのHEPES(pH6)の添加によりpH6とした。100μlのジメチルホルムアミド中の0.1MのE−マレイミドカプロン酸ヒドラジド−HCl(マレイミド−ヒドラジドヘテロ官能性試薬;EMCH、Prochem、イリノイ州ロックフォード)を添加した。一夜反応させた後、タンパク質を脱塩し、再び濃縮した。タンパク質濃度を吸収から測定した。TNBSアッセイを使用して、遊離ヒドラジド基の存在を証明した(例えば、540nmにおける吸収が存在し、自然タンパク質において存在しなかった)。
【0189】
わずかに4.2チオール/BSAが存在したので、最終生成物は理論的にその数以下の遊離ヒドラジドを含有できた。BSAは合計60アミノ基を有する;したがって、BSAは最小に修飾された。この物質をBSA−S−Hzと表示した。
BSA−S−HzまたはモノマーのBSA(比較;S100HRカラム上のゲル濾過により調製された)を、下記のようにして、CDAP活性化デキストランと反応させた。15μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を添加することによって、400μlのT2000デキストラン(H2 O中の10mg/ml)を活性し、次いで30秒後、30μlの0.2MのTEAを添加した。2.5分後、200μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加して、反応混合物のpHを5にした。次いで300μlのCDAP活性化デキストランを2mgのBSA−S−HzまたはモノマーのBSAに添加した(10mMの酢酸ナトリウム緩衝液中の22.3mg/mlにおいて90μl)。最終pHは5.1であった。一夜反応させた後、試料を0.75MのHEPES(pH7.5)中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いでS300HRカラム(1×50cm、生理食塩水およびアジドと平衡化させた)上のゲル濾過により分画した。タンパク質および多糖の分析により、pH5において、BSA−S−Hzは0.51mgのBSA/mgのデキストランと複合体を生じたが、モノマーのBSAは結合生成物を生じないことが示された。
【0190】
CDAP活性化肺炎球菌(Pneumococcal)14型(Pn14)へのヒドラジド誘導化ジフテリアトキソイド(DT)の結合
カルボキシル基上で誘導化されたDT:DTを下記のようにしてADHでカルボキシル基において誘導化した。0.5Mの1−メチルイミダゾール(pH6)中の6.95mgのDTに、0.5mlの同一緩衝液中の0.5Mのアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を添加し、次いで混合しながら15mgの1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(EDC)を添加した。一夜インキュベートした後、タンパク質を直列の2つのP−6カートリッジ(10mMの酢酸ナトリウム(pH5)と平衡化させた)上で脱塩し、セントリコン(Centricon)50装置で17.1mg/mlに濃縮した。TNBSアッセイはヒドラジドの存在を示した。この物質をDT/EDC/Hzと表示した。
【0191】
肺炎球菌(Pneumococcal)14型(入手先、SmithKline Beecham)を、S400HRカラム(2.6×100cm、0.1Mのリン酸カリウム、pH7.2、と平衡化させた)上のゲル濾過により分画した。極端に高いおよび低い分子量の画分を分離し、中央カットを濃縮し、生理食塩水中に透析した。この物質をPn14(M)と表示した。
【0192】
250μlのPn14(M)(10.1mg/ml)を15μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)の添加により活性化し、次いで30秒後、30μlの0.2MのTEAを添加した。2.5分後、150μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加してpHを低下させ、次いで150μlのDT/EDC/Hz(2.5mg)を添加した。一夜反応させた後、反応混合物を100μlの0.75MのHEPES(pH7.5)中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いでS300HRカラム(1×50cm、生理食塩水と平衡化させた)上でゲル濾過した。分析はDTがカップリングしたことを示した。
【0193】
アミノ基上で誘導化されたDT:DTをBSA−S−Hzと同様な方法において誘導化した。5mgのDT(13.9mg/ml)を20倍モル過剰量のSPDPと反応させ、脱塩し、セントリコン(Centricon)30装置で濃縮し、50mMのDTTでpH5において1時間処理し、次いで脱塩し、再び濃縮した。エルマン(Ellman)試薬を使用する分析は、遊離チオール基の存在を示した。次いでチオール化トキソイドを大過剰のEMCHと反応させ、脱塩し、再び濃縮した。TNBSアッセイはヒドラジドの存在を示した。この物質をDT−S−Hzと表示した。
【0194】
DT−S−Hzを下記のようにして大きさ分画Pn14にカップリングさせた。1.6MのHCl中の4mgのPn14(M)を20μlのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)で活性化し、次いで30秒後、40μlの0.2MのTEAを添加した。2.5分後、50μlの1Mの酢酸ナトリウム(pH5)を添加した。次いで3.9mgのDT−S−Hz(77mMの酢酸ナトリウム、pH5中の)を添加した;pHメーターを使用して最終pHが5.1であることが測定された。4℃において一夜反応させた後、反応を100μlの0.75MのHEPES中の0.5Mのエタノールアミンでクエンチし、次いでS4300HRカラム(1×50cm、生理食塩水およびアジドと平衡化させた)上でゲル濾過した。分析はDTがカップリングしたことを示した。
【0195】
低いpHにおけるヒドラジドとアミンとの反応
5mgのCDAP(アセトニトリル中の100mg/ml)を5mgのPn14(水中の10mg/ml)に添加することによって、CDAP活性化多糖を調製した。30秒後、300μlの0.2MのTEAを添加した。2分後、100μlのNaAc、pH5、の添加により、pHを約5に低下させた。次いでCDAP活性化多糖を0.2MのADHまたはヘキサンジアミンに約pH5において添加した。一夜反応させた後、この溶液を酢酸塩緩衝液(pH)中で脱塩し、TNBSによりアミンまたはヒドラジドについてアッセイした。ヒドラジドを含有する溶液のみがTNBS陽性であった。この試料をセントリコン(Centricon)50装置で濃縮し、2回目にP6カートリッジ上で脱塩した。ヒドラジド/デキストラン比は未変化であり、未反応試薬のみが除去されたことを示した。ヘキサンジアミン試料がTNBS陽性であったという事実は、誘導化が起こらなかったことを示した。
【0196】
対照として、CDAP活性化デキストランをADHまたはヘキサンジアミンと0.75MのHEPES(pH7.5)中で反応させた。双方の試料はTNBS陽性であった。
【0197】
要約:
CDAPを利用する本発明の方法は、あるものが高いpHに対して感受性である、種々の臨床的に関係する多糖を活性化するために使用できる再現性あるアプローチを提供する。活性化は急速であるので、高いpHにおける消費時間は最小である。この方法は、タンパク質および多糖の双方の成分に対する体液性抗体をマウスにおいてアジュバントの非存在においてさえ刺激できる、高度に免疫原性のタンパク質−多糖複合体を生産する。
【0198】
多糖の活性化の程度に深遠に影響を及ぼすことが見出された変数は、CDAPおよび多糖の濃度、およびpHである。結合のために好ましいpHは約6〜約9、より好ましくは約7.4〜約8.0であり、これは大部分の多糖が安定である範囲である。他のpH範囲、例えば、約7〜約10の範囲は他の多糖についていっそう適当である。
【0199】
多糖および/またはCDAPの濃度を操作することによって、誘導化の効率は、CNBrを使用するとき見出された1〜2%に比較して、50%に増加させることができる。さらに、多糖の100kDa当たり50より多いNH2 基を有する生成物は好ましい条件下に得ることができる。本発明の方法は、CDAPを使用して実験した従来の研究者らが記載したように、第三級アミンの存在に依存しない。多糖の活性化は急速である。同様に、活性化された多糖へのタンパク質の結合は急速である。
【0200】
本発明は、再現性、急速な反応性、および多分最も顕著には、タンパク質/多糖比を容易に操作する能力という利点を提供する。例えば、CDAPの濃度および/または多糖濃度および/またはタンパク質濃度を変更することによって、種々のタンパク質/多糖比を有する複合体を得ることができる。これは複合体に対する抗体の応答の大きさに影響を及ぼすタンパク質/多糖比の役割ばかりでなく、かつまた所定のタンパク質/多糖比における今日まで構造の役割を研究するアプローチを提供することができる。
【0201】
CDAPを使用して製造されたタンパク質−多糖複合体の免疫原性は、未結合成分のいずれかが示した応答より有意に大きい。さらに、生産される抗体は未結合タンパク質と反応性であり、そして応答は未結合タンパク質ならびに結合したタンパク質を使用して促進することができる。これが示唆するように、結合の間のタンパク質の化学的変更は、自然タンパク質に対する反応性を有する抗体を刺激するその能力に対して有害作用を示さず、また、未結合タンパク質に対する反応性を有するB細胞を刺激するその能力に対して有害作用を示さない。
【0202】
さらに、CDAP活性化多糖は抗Ig抗体の結合のための調製において使用することができる。抗Igデキストラン複合体は、未結合Igに比較して、約100〜100倍大きい活性化を誘発する。CDAP活性化デキストランへの直接的結合を使用して製造された抗Igデキストラン複合体は、AECMデキストランへの他のヘテロライゲーションカップリングを使用して製造された複合体と同様に有効なB細胞刺激試薬である。
【0203】
CDAPはELISAのための種々の免疫学的試薬、例えば、ビオチニル化多糖、およびモデルのTi−2抗原のためのELISAスポット抗原およびTNP−多糖(例えば、TNP−dex、TNPフィコール)の製造に有用である。
【0204】
したがって、免疫原性構築物、例えば、多糖に基づく複合体を製造するためにCDAPを使用する本発明の方法は、免疫原性構築物を製造する現在利用可能な技術に多数の利点を提供する。本発明の範囲および本質から逸脱しないで本発明の方法および態様において種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明は詳細な説明および図面により限定されず、添付された請求の範囲により限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)多糖、オリゴ糖、及び単糖からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭水化物含有第1成分を、1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)、及びN−シアノトリエチル−アンモニウムテトラフルオロボレート(CTEA)からなる群から選ばれる有機シアン化試薬で活性化して活性化された炭水化物を形成する工程、
(b)タンパク質、ペプチド、及びハプテンからなる群から選ばれる第2成分を、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)、2−イミノチオラン(Traut’s試薬)、ヨードアセチルプロピオネートN−ヒドロキシ−スクシンイミド(SIAP)、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)、E−マレイミドカプロン酸ヒドラジド(EMCH)、及びアジピン酸ジヒドラジド(ADH)から選ばれるチオール又はヒドラジド求核基で誘導体化する工程、及び
(c)前記活性化された第1成分を前記誘導体化された第2成分にカップリングして、免疫応答を刺激することができる免疫原性構築物を形成する工程、
を含む免疫原性構築物の製造方法。
【請求項2】
前記有機シアン化試薬が1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1成分及び第2成分が水溶性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化工程(a)を8〜10のpHで実施し、そして前記カップリング工程(c)を7〜9のpHで実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記活性化工程(a)をトリエチルアミンの存在下で実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1成分を2官能性又はヘテロ官能性のスペーサー試薬に共有結合的に結合し、かつ前記誘導体化された第2成分を該スペーサー試薬に共有結合的に結合することによって前記カップリング工程工程(c)を間接的に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スペーサー試薬がエチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、シスタミン、グリシン、及びリジンからなる群から選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1成分が多糖であり、そして前記第2成分がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記多糖が、デキストラン、肺炎球菌(Pneumococcal)多糖、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)多糖、グループAストレプトコッカス(streptococcus)多糖、グループBストレプトコッカス(streptococcus)多糖、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)多糖、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)多糖、及び髄膜炎菌(N.meningitidis)多糖からなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1成分が水溶性のウイルス又は細菌の多糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2成分が水溶性タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2成分が、ウシ血清アルブミン、百日咳トキソイド、破傷風トキソイド、マラリア誘導ペプチド、抗体、トキソイド、及びリポタンパク質からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫原性構築物が、百日咳トキソイド−肺炎球菌(Pneumococcal)莢膜多糖(PT−Pn)、百日咳トキソイド−インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)多糖(PT−PRP)、破傷風トキソイド−肺炎球菌(Pneumococcal)莢膜多糖(TT−Pn)、抗体−デキストラン、及びペプチド−破傷風トキソイド−肺炎球菌(Pneumococcal)莢膜多糖(ペプチド−TT−Pn)からなる群から選ばれる複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記求核基が、EMCHとADHから選ばれるヒドラジド求核基である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記カップリング工程(c)を8未満のpHで実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記カップリング工程(c)を8未満のpHで実施する、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記誘導体化された第2成分を2官能性又はヘテロ官能性のスペーサー試薬に共有結合的に結合し、かつ前記活性化された第1成分を該スペーサー試薬に共有結合的に結合することによって前記カップリング工程工程(c)を間接的に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
タンパク質、ペプチド、及びハプテンからなる群から選ばれる前記第2成分は、ADHで誘導体化される時又はそれ以前に、1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)で活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
以下の工程:
(a)多糖、オリゴ糖、及び単糖からなる群から選ばれる少なくとも1つの炭水化物含有第1成分を、1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)、及びN−シアノトリエチル−アンモニウムテトラフルオロボレート(CTEA)からなる群から選ばれる有機シアン化試薬で活性化して活性化された炭水化物を形成する工程、
(b)タンパク質、ペプチド、及びハプテンからなる群から選ばれる第2成分を、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)、2−イミノチオラン(Traut’s試薬)、ヨードアセチルプロピオネートN−ヒドロキシ−スクシンイミド(SIAP)、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA)、E−マレイミドカプロン酸ヒドラジド(EMCH)、及びアジピン酸ジヒドラジド(ADH)から選ばれるチオール又はヒドラジド求核基で誘導体化する工程、及び
(c)前記活性化された第1成分を前記誘導体化された第2成分にカップリングして、免疫応答を刺激することができる免疫原性構築物を形成する工程、
を含む免疫原性構築物の製造方法。
【請求項2】
前記有機シアン化試薬が1−シアノ−4−(ジメチルアミノ)−ピリジニウムテトラフルオロボレート(CDAP)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1成分及び第2成分が水溶性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化工程(a)を8〜10のpHで実施し、そして前記カップリング工程(c)を7〜9のpHで実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記活性化工程(a)をトリエチルアミンの存在下で実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1成分を2官能性又はヘテロ官能性のスペーサー試薬に共有結合的に結合し、かつ前記誘導体化された第2成分を該スペーサー試薬に共有結合的に結合することによって前記カップリング工程工程(c)を間接的に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スペーサー試薬がエチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、シスタミン、グリシン、及びリジンからなる群から選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1成分が多糖であり、そして前記第2成分がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記多糖が、デキストラン、肺炎球菌(Pneumococcal)多糖、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)多糖、グループAストレプトコッカス(streptococcus)多糖、グループBストレプトコッカス(streptococcus)多糖、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)多糖、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)多糖、及び髄膜炎菌(N.meningitidis)多糖からなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1成分が水溶性のウイルス又は細菌の多糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2成分が水溶性タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2成分が、ウシ血清アルブミン、百日咳トキソイド、破傷風トキソイド、マラリア誘導ペプチド、抗体、トキソイド、及びリポタンパク質からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫原性構築物が、百日咳トキソイド−肺炎球菌(Pneumococcal)莢膜多糖(PT−Pn)、百日咳トキソイド−インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)多糖(PT−PRP)、破傷風トキソイド−肺炎球菌(Pneumococcal)莢膜多糖(TT−Pn)、抗体−デキストラン、及びペプチド−破傷風トキソイド−肺炎球菌(Pneumococcal)莢膜多糖(ペプチド−TT−Pn)からなる群から選ばれる複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記求核基が、EMCHとADHから選ばれるヒドラジド求核基である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記カップリング工程(c)を8未満のpHで実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記カップリング工程(c)を8未満のpHで実施する、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記誘導体化された第2成分を2官能性又はヘテロ官能性のスペーサー試薬に共有結合的に結合し、かつ前記活性化された第1成分を該スペーサー試薬に共有結合的に結合することによって前記カップリング工程工程(c)を間接的に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
タンパク質、ペプチド、及びハプテンからなる群から選ばれる前記第2成分は、ADHで誘導体化される時又はそれ以前に、1−エチル−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)で活性化される、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−116850(P2012−116850A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15036(P2012−15036)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2007−331707(P2007−331707)の分割
【原出願日】平成8年3月22日(1996.3.22)
【出願人】(507388753)ヘンリー エム.ジャクソン ファウンデイション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディスン (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2007−331707(P2007−331707)の分割
【原出願日】平成8年3月22日(1996.3.22)
【出願人】(507388753)ヘンリー エム.ジャクソン ファウンデイション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディスン (2)
【Fターム(参考)】
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