説明

有機シロキサン化合物

【課題】低誘電率材料に適した、殊にPECVD装置に適した新規な有機シロキサン化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、または1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン等の新規な有機シロキサン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジックULSIにおける多層配線技術において用いられる低誘電率層間絶縁膜材料に関するものである。殊にプラズマ重合用の有機シラン化合物、有機シロキサン化合物のいずれかを含んでなる絶縁膜材料およびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子産業の集積回路分野の製造技術において、高集積化かつ高速化の要求が高まっている。シリコンULSI、殊にロジックULSIにおいては、MOSFETの微細化による性能よりも、それらをつなぐ配線の性能が課題となっている。すなわち、多層配線化に伴う配線遅延の問題を解決する為に配線抵抗の低減と配線間および層間容量の低減が求められている。
【0003】
これらのことから、現在、集積回路の大部分に使用されているアルミニウム配線に変えて、より電気抵抗が低く、マイグレーション耐性のある銅配線の導入が必須となっており、スパッタリングまたは化学蒸着(以下、CVDと略記)法によるシード形成後、銅メッキを行うプロセスが実用化されつつある。
【0004】
低誘電率層間絶縁膜材料としては、さまざまな提案がある。従来技術としては、無機系では、二酸化珪素(SiO)、窒化珪素、燐珪酸ガラス、有機系では、ポリイミドが用いられてきたが、最近では、より均一な層間絶縁膜を得る目的で予めテトラエトキシシランモノマーを加水分解、すなわち、重縮合させてSiOを得、Spin on Glass(無機SOG)と呼ぶ塗布材として用いる提案や、有機アルコシキシランモノマーを重縮合させて得たポリシロキサンを有機SOGとして用いる提案がある。
【0005】
また、絶縁膜形成方法として絶縁膜ポリマー溶液をスピンコート法等で塗布、成膜を行う塗布型のものと主にプラズマCVD装置中でプラズマ重合させて成膜するCVD法の二つ方法がある。
【0006】
プラズマCVD法の提案としては、例えば、特許文献1において、トリメチルシランと酸素とからプラズマCVD法により酸化トリメチルシラン薄膜を形成する方法が、また、特許文献2では、メチル、エチル、n−プロピル等の直鎖状アルキル、ビニルフェニル等のアルキニル及びアリール基を有するアルコキシシランからプラズマCVD法により、酸化アルキルシラン薄膜を形成する方法が提案されている。これら従来のプラズマCVD法材料で形成された絶縁膜は、バリアメタル、配線材料である銅配線材料との密着性が良好な反面、膜の均一性が課題となったり、成膜速度、比誘電率が不十分な場合があった。
【0007】
一方、塗布型の提案としては、膜の均一性は良好であるものの、塗布、溶媒除去、熱処置の三工程が必要であり、CVD材料より経済的に不利であり、また、バリアメタル、配線材料である銅配線材料との密着性や、微細化している基板構造への塗布液の均一な塗布自体が課題となる場合が多い。
【0008】
また、塗布型材料においては、比誘電率が2.5以下、更には、2.0以下のUltra Low−k材を実現する為に多孔質材料とする方法が提案されている。有機系もしくは無機系材料のマトリックスに容易に熱分解する有機成分微粒子を分散させ、熱処理し多孔化する方法、珪素と酸素をガス中蒸発させて形成したSiO超微粒子を蒸着させ、SiO超微粒子薄膜を形成させる方法等がある。
【0009】
しかしながら、これら多孔質化の方法は、低誘電率化には有効であるものの、機械的強度が低下し、化学的機械的研磨(CMP)が困難となったり、水分を吸収による誘電率の上昇と配線腐食を引き起こす場合があった。
【0010】
従って、市場は、低誘電率、十分な機械的強度、バリアメタルとの密着性、銅拡散防止、耐プラズマアッシング性、耐吸湿性等の全て要求性能を満たすバランスの良い材料を、更に求めており、これらの要求性能をある程度バランスさせる方法として、有機シラン系材料において、シランに対する有機置換基の炭素比率を上昇させることによって、有機ポリマーと無機ポリマーの中間的特徴を有する材料が提案されている。
【0011】
例えば、特許文献3では、アダマンチル基を有するシリコン化合物を酸性水溶液共存下、ゾル−ゲル法により加水分解重縮合した塗布溶液を用い、多孔質化せずに比誘電率が2.4以下の層間絶縁膜を得る方法を提案している。
【0012】
しかしながら、この材料は、塗布型の材料であり、依然、上述したような塗布型による成膜方法の課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−110670号公報
【特許文献2】特開平11−288931号公報
【特許文献3】特開2000−302791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な低誘電率材料、殊にPECVD装置に適した有機シラン化合物、有機シロキサン化合物のいずれかを含んでなる、低誘電率絶縁膜用材料を提供すること、及びそれを用いた絶縁膜並びにこれらの絶縁膜を含んでなる半導体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、二級炭化水素基及び/又はアルケニル基がケイ素原子に直接結合した有機シラン化合物、有機シロキサン化合物が、絶縁膜、殊に半導体デバイス用の低誘電率層間絶縁膜材料として好適であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0017】
【化1】

(式中、R,R,Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R,Rは、互いに結合し、環状構造を形成してもよい。Rは、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表す。mは1乃至3の整数、nは0乃至2の整数を表し、m+nは、3以下の整数を表す。)
で示される二級炭化水素基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物、
下記一般式(2)
【0018】
【化2】

(式中、R,Rは、前記に同じ。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子を表す。xは、2以上の整数)
で示される少なくともひとつの二級炭化水素基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シロキサン化合物、
下式一般式(3)
【0019】
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表し、pは、2又は3を表す。)で示されるビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物、
下式一般式(4)
【0020】
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基のいずれかを表す。xは、前記に同じ。)で示されるビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シロキサン化合物、
のいずれかを含んでなる化学気相成長法により形成される絶縁膜用材料を提供することにある。
【0021】
また本発明は、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタエチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、または1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタエチルシクロペンタシロキサンである。以下、本発明の詳細について説明する。
【0022】
上記一般式(1)おいてR,R,Rは、炭素数1〜20の飽和または不飽和炭化水素基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの構造を有してよい。また、それらが互いに結合したものも本発明の範囲に含まれる。炭素数が20を超える場合は、対応する有機ハライド等原料の調達が困難となったり、調達できたとしても純度が低い場合がある。
【0023】
CVD装置での安定的使用考慮した場合、有機シラン化合物の蒸気圧が低くなりすぎないとの点で炭素数1〜10の炭化水素基が特に好ましい。
【0024】
,R,Rの炭化水素基の例としては、特に限定されるものではないが、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ビニル基を初めとしたアルケニル基を挙げることができる。R,R,Rは、同一であっても異なっても良い。またRは二級炭化水素基、三級炭化水素基でも良く、特に少なくともひとつがビニル基であることが好ましい。
【0025】
,Rが互いに結合していない場合の例としては、R,Rがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、tert.−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、トルイル基の群から選ばれた少なくとも一種もしくは、二種ある二級炭化水素基を挙げることができる。
【0026】
,Rが互いに結合し、二級炭化水素基を介してSiに結合している基の例としては、二級炭化水素基がシクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル基が代表例として挙げられる。なかんずく、R,Rの組合わせとしてR,Rが共にメチルであるiso−プロピル、R,Rがメチル、エチルであるsec−ブチル、R,Rが互いに結合したシクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル基が経済的に好ましい。
【0027】
は、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表わし、炭化水素基としては、飽和または不飽和炭化水素基であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの構造を有してよい。炭素数が10を超えた場合、生成した有機シランの蒸気圧が低くなり、PECVD装置での使用が困難となる場合があり、好ましくない場合がある。
【0028】
としては、炭素数1乃至4の炭化水素基であるメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチルが原料調達上好ましい。
【0029】
mは、1乃至3の整数、nは、0乃至2の整数を表し、m+nは、3以下の整数を表す。すなわち、m=1,n=0である炭化水素基置換トリアルコキシシラン類、m=1,n=1またはm=2,n=0である炭化水素基では二置換ジアルコキシシラン、(m=1,n=2)または(m=2,n=1)または(m=3,n=0)である炭化水素基では三置換アルコキシシランを表す。これらの混合物も本発明の範囲に含まれる。
【0030】
上記一般式(1)で表される有機シラン化合物の具体例としては、
(A)イソプロピルトリメトシキシラン、ジイソプロピルジメトシキシラン、トリイソプロピルメトシキシラン、イソプロピルメチルジメトシキシラン、イソプロピルエチルジメトシキシラン、イソプロピルフェニルジメトシキシラン、イソプロピルジメチルメトシキシラン、イソプロピルジエチルメトシキシラン、イソプロピルジフェニルメトシキシラン、イソプロピルトリエトシキシラン、ジイソプロピルジエトシキシラン、トリイソプロピルエトシキシラン、イソプロピルメチルジエトシキシラン、イソプロピルエチルジエトシキシラン、イソプロピルフェニルジエトシキシラン、イソプロピルジメチルエトシキシラン、イソプロピルジエチルエトシキシラン、イソプロピルジフェニルエトシキシラン、
(B)sec−ブチルトリメトシキシラン、ジsec−ブチルジメトシキシラン、トリsec−ブチルメトシキシラン、sec−ブチルメチルジメトシキシラン、sec−ブチルエチルジメトシキシラン、sec−ブチルフェニルジメトシキシラン、sec−ブチルジメチルメトシキシラン、sec−ブチルジエチルメトシキシラン、sec−ブチルジフェニルメトシキシラン、
(C)sec−ブチルトリエトシキシラン、ジsec−ブチルジエトシキシラン、トリsec−ブチルエトシキシラン、sec−ブチルメチルジエトシキシラン、sec−ブチルエチルジエトシキシラン、sec−ブチルフェニルジエトシキシラン、sec−ブチルジメチルエトシキシラン、sec−ブチルジエチルエトシキシラン、sec−ブチルジフェニルエトシキシラン、
(D)シクロペンチルトリメトシキシラン、ジシクロペンチルジメトシキシラン、トリシクロペンチルメトシキシラン、シクロペンチルメチルジメトシキシラン、シクロペンチルエチルジメトシキシラン、シクロペンチルフェニルジメトシキシラン、シクロペンチルジメチルメトシキシラン、シクロペンチルジエチルメトシキシラン、シクロペンチルジフェニルメトシキシラン、
(E)シクロペンチルトリエトシキシラン、ジシクロペンチルジエトシキシラン、トリシクロペンチルエトシキシラン、シクロペンチルメチルジエトシキシラン、シクロペンチルエチルジエトシキシラン、シクロペンチルフェニルジエトシキシラン、シクロペンチルジメチルエトシキシラン、シクロペンチルジエチルエトシキシラン、シクロペンチルジフェニルエトシキシラン、
(F)シクロペンタジエニルトリメトシキシラン、ジシクロペンタジエニルジメトシキシラン、トリシクロペンタジエニルメトシキシラン、シクロペンタジエニルメチルジメトシキシラン、シクロペンタジエニルエチルジメトシキシラン、シクロペンタジエニルフェニルジメトシキシラン、シクロペンタジエニルジメチルメトシキシラン、シクロペンタジエニルジエチルメトシキシラン、シクロペンタジエニルジフェニルメトシキシラン、
(G)シクロペンタジエニルトリエトシキシラン、ジシクロペンタジエニルジエトシキシラン、トリシクロペンタジエニルエトシキシラン、シクロペンタジエニルメチルジエトシキシラン、シクロペンタジエニルエチルジエトシキシラン、シクロペンタジエニルフェニルジエトシキシラン、シクロペンタジエニルジメチルエトシキシラン、シクロペンタジエニルジエチルエトシキシラン、シクロペンタジエニルジフェニルエトシキシラン、
(H)シクロヘキシルトリメトシキシラン、ジシクロヘキシルジメトシキシラン、トリシクロヘキシルメトシキシラン、シクロヘキシルメチルジメトシキシラン、シクロヘキシルエチルジメトシキシラン、シクロヘキシルフェニルジメトシキシラン、シクロヘキシルジメチルメトシキシラン、シクロヘキシルジエチルメトシキシラン、シクロヘキシルジフェニルメトシキシラン、
(I)シクロヘキシルトリエトシキシラン、ジシクロヘキシルジエトシキシラン、トリシクロヘキシルエトシキシラン、シクロヘキシルメチルジエトシキシラン、シクロヘキシルエチルジエトシキシラン、シクロヘキシルフェニルジエトシキシラン、シクロヘキシルジメチルエトシキシラン、シクロヘキシルジエチルエトシキシラン、シクロヘキシルジフェニルエトシキシラン、
(J)シクロヘキセニルトリメトシキシラン、ジシクロヘキセニルジメトシキシラン、トリシクロヘキセニルメトシキシラン、シクロヘキセニルメチルジメトシキシラン、シクロヘキセニルエチルジメトシキシラン、シクロヘキセニルフェニルジメトシキシラン、シクロヘキセニルジメチルメトシキシラン、シクロヘキセニルジエチルメトシキシラン、シクロヘキセニルジフェニルメトシキシラン、
(K)シクロヘキセニルトリエトシキシラン、ジシクロヘキセニルジエトシキシラン、トリシクロヘキセニルエトシキシラン、シクロヘキセニルメチルジエトシキシラン、シクロヘキセニルエチルジエトシキシラン、シクロヘキセニルフェニルジエトシキシラン、シクロヘキセニルジメチルエトシキシラン、シクロヘキセニルジエチルエトシキシラン、シクロヘキセニルジフェニルエトシキシラン
(L)イソプロピルビニルジメトキシシラン、イソプロピルビニルジエトキシシラン、イソプロピルビニルジtert.−ブトキシシシラン、ジイソプロピルビニルメトキシシラン、ジイソプロピルビニルエトキシシラン、ジイソプロピルビニルtert.−ブトキシシシラン、イソプロピルジビニルメトキシシラン、イソプロピルジビニルエトキシシラン、イソプロピルジビニルtert.−ブトキシシシラン、イソプロピルビニルメチルメトキシシラン、イソプロピルビニルメチルエトキシシラン、イソプロピルビニルメチルtert.−ブトキシシシラン、イソプロピルビニルエチルメトキシシラン、イソプロピルビニルエチルエトキシシラン、イソプロピルビニルエチルtert.−ブトキシシシラン、イソプロピルフェニルジメトキシシラン、イソプロピルフェニルジエトキシシラン、イソプロピルフェニルジtert.−ブトキシシシラン、ジイソプロピルフェニルメトキシシラン、ジイソプロピルフェニルエトキシシラン、ジイソプロピルフェニルtert.−ブトキシシシラン、イソプロピルジフェニルメトキシシラン、イソプロピルジフェニルエトキシシラン、イソプロピルジフェニルtert.−ブトキシシシラン、イソプロピルフェニルメチルメトキシシラン、イソプロピルフェニルメチルジエトキシシラン、イソプロピルフェニルメチルtert.−ブトキシシシラン、イソプロピルフェニルエチルメトキシシラン、イソプロピルフェニルエチルジエトキシシラン、イソプロピルフェニルエチルtert.−ブトキシシシラン、sec−ブチルビニルジメトキシシラン、sec−ブチルビニルジエトキシシラン、sec−ブチルビニルジtert.−ブトキシシシラン、ジsec−ブチルビニルメトキシシラン、ジsec−ブチルビニルエトキシシラン、ジsec−ブチルビニルtert.−ブトキシシシラン、sec−ブチルジビニルメトキシシラン、sec−ブチルジビニルエトキシシラン、sec−ブチルジビニルtert.−ブトキシシシラン、sec−ブチルフェニルジメトキシシラン、sec−ブチルフェニルジエトキシシラン、sec−ブチルフェニルジtert.−ブトキシシシラン、ジsec−ブチルフェニルメトキシシラン、ジsec−ブチルフェニルエトキシシラン、ジsec−ブチルフェニルtert.−ブトキシシシラン、sec−ブチルジフェニルメトキシシラン、sec−ブチルジフェニルエトキシシラン、sec−ブチルジフェニルtert.−ブトキシシシラン、等が例示できる。
【0031】
上記一般式(2)おいて、R,Rについては、上記一般式(1)と同様のものが使用できる。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子を表し、炭化水素基としては、R,Rと同様のものが使用できる。
【0032】
上記一般式(2)で示される有機シロキサン化合物の具体例としては、
(M)1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5、7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5、7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン
(N)1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5、7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタエチルシクロペンタシロキサン、ヘキサイソプロピルシクロトリシロキサン、オクタイソプロピルシクロテトラシロキサン、デカイソプロピルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5、7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタエチルシクロペンタシロキサン
(O)1,3,5−トリイソプロピルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチルシクロペンタシロキサン、
等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(3)おいて、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表し、炭化水素基としては、Rと同様のものが使用できる。
【0034】
上記一般式(3)で示されるビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の具体例としては、
(P)ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジtert.−ブトキシシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、トリビニルtert.−ブトキシシシラン、等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(4)おいて、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基のいずれかを表し、具体的には、メチル、エチル、ビニル、n−プロピル、iso−ブチルを挙げることができる。
【0036】
上記一般式(4)で示されるビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シロキサン化合物の具体例としては、
(Q)1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5、7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラエチル−1,3,5、7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタエチル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、
(R)ヘキサビニルシクロトリシロキサン、オクタビニルシクロテトラシロキサン、デカビニルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0037】
上記一般式(1)の有機シラン化合物の製造法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(5)
【0038】
【化5】

(式中、R,Rは、前記に同じ。Xは、水素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を表わす。)
で示される有機化合物と、有機リチウム又は金属リチウム粒子とを反応させて製造した、二級炭素原子とリチウム原子とが直結した化合物を製造し、この化合物と下記一般式(6)
【0039】
【化6】

(式中、X’は、弗素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子を表し、R,Rは、前記に同じ。pは、0乃至4の整数、qは、0乃至2の整数を表し、p+qは、4以下の整数を表す。)
で示されるハロゲン化シラン、ハロゲン化アルコキシシラン又はテトラアルコキシシランとを反応させることにより、一般式(1)で表される有機シラン化合物を製造することができる。
【0040】
また、上記製造方法において、有機リチウムまたは金属リチウム粒子の代わりに、金属マグネシウムを用いても、一般式(1)で表される有機シラン化合物を製造することができる。
【0041】
一般式(5)で表される有機化合物のうち、Xが塩素原子、臭素原子または沃素原子の例としては、イソプロピルクロリド、イソプロピルブロミド、イソプロピルアイオダイド、sec−ブチルクロリド、sec−ブチルブロミド、sec−ブチルアイオダイド、シクロペンチルクロリド、シクロペンチルブロミド、シクロペンチルアイオダイド、シクロヘキシルクロリド、シクロヘキシルブロミド、シクロヘキシルアイオダイドを挙げることができる。
【0042】
また、一般式(5)で表される有機化合物のうち、Xが水素原子の例としては、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、1,2,3,4−テトラメチル−1,3−シクロペンタジエン等が挙げられ、これらの化合物に対して、n−ブチルリチウム、tert.−ブチルリチウム等の有機リチウムを反応させることにより、二級炭素原子とリチウム原子とが直結した化合物を製造することができる。
【0043】
一般式(6)で表されるハロゲン化シラン、ハロゲン化アルコキシシラン又はテトラアルコキキシランの例としては、例えば、テトラクロロシラン、クロロトリメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、テトラメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、クロロトリ−i−プロポキシシラン、ジクロロジ−i−プロポキシシラン、トリクロロ−i−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert.−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルn−プロピルジメトキシシラン、ビニルn−ブチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルn−プロピルジメトキシシラン、ビニルn−ブチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルn−プロピルジクロロシラン、ビニルn−ブチルジクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリクロロシシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルビニルジクロロシラン、フェニルビニルジメトキシシラン、フェニルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
更に合成反応の後、生成物である炭化水素置換基アルコキシシラン中にケイ素に直結するハロゲン原子が残存する場合、下記一般式(7)
【0045】
【化7】

(式中、Mは、アルカリ金属、Rは前記に同じ。)
で示されるアルカリ金属アルコキシドを反応させ、アルコキシ化することができる。
【0046】
一般式(7)で表されるアルカリ金属アルコキシドの例としては、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウム−i−プロポキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−i−プロポキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−i−プロポキシド、カリウム−tert.−ブトキシド等を挙げることができる。
【0047】
本製造法を採用することにより、副生成物の生成を抑制し、高収率に高純度の一般式(1)で示される有機シラン化合物が得られる。
【0048】
二級炭素原子とリチウム原子とが直結した化合物の製造条件は、特に限定されるものではないが、以下にその一例を示す。
【0049】
使用する金属リチウムとしては、リチウムワイヤー、リチウムリボン、リチウムショット等を用いることができるが、反応の効率面から、500μm以下の粒径を有するリチウム微粒子を用いることが好ましい。
【0050】
使用する金属マグネシウムとしては、マグネシウムリボン、マグネシウム粒子、マグネシウムパウダー等を用いることができる。
【0051】
使用する有機リチウムは、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液、tert.−ブチルリチウムのn−ペンタン溶液等を用いることができる。
【0052】
上記の反応に用いる溶媒としては、当該技術分野で使用されるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、デセン−1等の不飽和炭化水素類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert.−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類を使用することができる。また、これらの混合溶媒も使用することができる。
【0053】
上記の反応における反応温度については、生成する二級炭素原子とリチウム原子とが結合した化合物、または二級炭素原子とマグネシウム原子とが直結した化合物が分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは、−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0054】
合成した二級炭素原子とリチウム原子とが直結した化合物または二級炭素原子とマグネシウム原子とが直結した化合物については、製造の後、そのまま用いることができ、また、未反応の有機ハライド、金属リチウム、金属マグネシウム、反応副生成物であるリチウムハライド、マグネシウムハライドを除去した後、使用することもできる。
【0055】
このようにして得られた、二級炭素原子とリチウム原子とが直結した化合物又は二級炭素原子とマグネシウム原子とが直結した化合物と、上記一般式(4)のハロゲン化シラン、ハロゲン化アルコキシシラン又はテトラアルコキシシランとの反応条件は、特に限定されるものではないが、以下にその一例を示す。
【0056】
使用できる反応溶媒は、上記の二級炭素原子とリチウム原子(またはマグネシウム原子)とが直結した化合物の反応の際に用いることができる溶媒と同様のものが使用できる。その反応温度については、二級炭素原子とリチウム原子(またはマグネシウム原子)とが直結した化合物が分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは、−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0057】
上記一般式(2)の有機シロキサン化合物の製造法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(8)
【0058】
【化8】

(式中、R,R,R,R、Xは、前記に同じ。sは、0乃至2の整数を表す。)を酸もしくは、塩基共存下、水と反応させることにより製造することができる。
【0059】
一般式(8)で表される、少なくとも一つの二級炭化水素基がケイ素原子に直結した構造を有する二級炭化水素基置換ハロゲン化アルコキシシラン化合物は、例えば、上記一般式(1)で表される有機シラン化合物の例の上記(A)から(R)の中の二級炭化水素基置換ジアルキコキシシラン、もしくは、それらのアルコキシ基を塩素、臭素、沃素、弗素で置換した化合物を用いることができる。
【0060】
これらの化合物は上記一般式(1)と同様の製造法において、条件を変えることによってアルコキシ基が塩素、臭素、沃素、弗素で置換したものとして得ることができる。またそのようにして得られた上記一般式(8)の化合物中に上記一般式(1)又は、(3)の化合物が含まれても良い。
【0061】
反応の際、共存させる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、及びトルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。
【0062】
一般式(2)で表される有機シロキサン化合物製造の際、使用できる反応溶媒は、当該技術分野で使用されるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、デセン−1等の不飽和炭化水素類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert.−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert.−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコールを使用することができる。また、これらの混合溶媒も使用することができる。殊にエーテル類もしくは、アルコール類を用いた場合に特定の分子量を有する一般式(2)の有機シロキサン化合物を高収率に製造できる場合がある。
【0063】
一般式(2)で表される有機シロキサン化合物製造の際の反応温度については、通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは、−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0064】
上記一般式(3)の有機シラン化合物の製造法は、特に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシランにビニルリチウム、ビニルマグネシウムクロリド、ビニルマグネシウムクロリド等のビニル有機金属化合物を反応させることにより製造することができる。また、テトラクロロシラン等のハロゲン化シランにビニルリチウム、ビニルマグネシウムクロリド、ビニルマグネシウムクロリド等のビニル有機金属化合物を反応させた後、上記一般式(7)のアルカリ金属アルコキシドを反応させることによっても製造することができる。製造の際の条件については、上記一般式(1)の製造方法と同様の条件が使用できる。
【0065】
上記一般式(4)の有機シロキサン化合物の製造法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記一般式(6)で示される少なくとも一つのビニル基を有するハロゲン化シラン、ハロゲン化アルコキシシランを原料として、上記一般式(2)の製造方法と同様の方法で製造できる。
【0066】
製造した一般式(1)〜(4)のいずれかで示される有機シラン化合物、有機シロキサン化合物の精製法については、絶縁膜材料として使用するに有用な水分含有量を50ppm未満、ケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素の製造原料由来の不純物量を10ppb未満とする為に、副生するリチウム塩、マグネシウム塩をガラスフィルター、焼結多孔体等を用いた濾過、常圧もしくは減圧蒸留又はシリカ、アルミナ、高分子ゲルを用いたカラム分離等の精製手段により除去すればよい。この際、必要に応じてこれらの手段を組合わせて使用してもよい。一般の有機合成技術で用いられるような、副生するリチウム塩、マグネシウム塩を水等により抽出する方法では、最終的に得られる一般式(1)〜(4)のいずれかで示される有機シラン化合物、有機シロキサン化合物中の水分やケイ素、炭素、酸素、水素以外の元素不純物、殊に金属不純物残渣が高くなって、絶縁膜材料として不適当なものとなる場合がある。
【0067】
また、シラノール構造を含む副生成物が含まれる場合、シラノールの水酸基を水素化ナトリウムまたは水素化カリウム等で、ナトリウム塩またはカリウム塩として沈殿させた後、主生成物である炭化水素基置換アルコキシシランを蒸留により分離生成することができる。
【0068】
製造に際しては、他の条件は当該有機金属化合物合成分野での方法に従うことが好ましい。すなわち、脱水及び脱酸素された窒素又はアルゴン雰囲気下で行い、使用する溶媒及び精製用のカラム充填剤等は、予め脱水操作を施しておくことが好ましい。また、金属残渣及びパーティクル等の不純物も除去しておくことが好ましい。
【0069】
本発明の一般式(1)〜(4)のいずれかで示される有機シラン化合物、有機シロキサン化合物は、PECVD装置により、低誘電率絶縁材料として成膜するに好適な材料である。
【0070】
本発明の絶縁膜材料の使用方法は、特に限定されるものではないが、半導体製造分野、液晶ディスプレイ製造分野等の当該技術分野で一般的に用いられるPECVD装置を用い、絶縁膜とすることができる。PECVD装置とは、有機シラン等の絶縁膜材料を気化器により気化させて、成膜チャンバー内に導入し、高周波電源により、成膜チャンバー内の電極に印加し、プラズマを発生させ、成膜チャンバー内のシリコン基板等にプラズマ重合膜を形成させる装置を言う。この際、プラズマを発生させる目的でアルゴン、ヘリウム等のガス、酸素、亜酸化窒素等の酸化剤を導入しても良い。PECVD装置によって本発明の絶縁膜用材料を用いて成膜した場合、半導体デバイス用の低誘電率材料(Low−k材)として好適な薄膜を形成できる。
【0071】
本発明の絶縁膜用材料を用いてた成膜方法は限定されるものではないが、上記一般式(2)及び/又は(4)の有機シロキサン化合物の環状シロキサン構造を残存させるPECVD条件で絶縁膜を形成させることが好ましい。環状シロキサン構造を含んでなる絶縁膜では、有機環状シロキサン化合物の1nm以下の細孔径を主たる細孔径とした多孔質絶縁膜となり、低誘電率特性を有し、かつ高い機械的物性と高い伝熱性を有する半導体デバイス用低誘電率材料(Low−k材)として殊に好適な薄膜となる。この際のPECVD条件としては、環状シロキサン構造を破壊しないよう、例えば、実施例に示すように、比較的低いプラズマパワー(W:電圧×電流) でPECVD成膜を実施することが好ましい。具体的には、1.0W〜2000W、好ましくは、1.0W〜1000Wの範囲で行うことが好ましい。特にこの際に、同一ケイ素原子上にビニル基及びイソプロピル基が結合した有機環状シロキサンを用いることにより、より低誘電率特性を有する絶縁膜を高速で成膜することができる。
【0072】
これらの材料をCVDで成膜後に、二級炭素原子、アルケニル基、アリール基のいずれかとケイ素原子が切断される温度以上、すなわち350℃以上の温度で熱処理することで多孔質化した低誘電率絶縁材料を得ることもできる。好ましい熱処理温度は、多孔化が完結する350℃以上で、なおかつ半導体デバイスを劣化せしめない500℃以下の温度であることが好ましい。
【0073】
本発明の低誘電率材料は、多層配線を用いたULSIの製造に好適であり、これを用いた半導体デバイスも本発明の範疇に含有されるものである。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、以下の顕著な効果が奏される。即ち、本発明の第一の効果としては、本発明の二級炭化水素基及び/又はアルケニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物、有機シロキサン化合物のいずれかを用いることで、半導体デバイス層間絶縁膜中の低誘電率材料として、低誘電率且つ高機械的強度の材料を提供できる。また本発明では、PECVD法層間絶縁膜材料として有用な二級炭化水素基及び/又はアルケニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物及び/又は有機シロキサン化合物を高純度に効率よく製造することができる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0076】
実施例1
[二級炭素原子とリチウム原子とが直結した有機リチウムの製造]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた200mlのシュレンク管反応器にジシクロペンタジエンをクラッキング蒸留して得たシクロペンタジエン15.8g(239mmol)と乾燥テトラヒドロフラン50mlを仕込み、−20℃に冷却した。これに攪拌しつつ、2.66mol/Lのn−ブチルリチウム90.0ml(239mmol)を45分間で滴下し、−20℃で30分間、室温で1時間反応させた。反応後、反応液をn−ヘキサン200mlに加え、生成物であるシクロペンタジエニルリチウムを析出させ、ガラスフィルターにより、濾別し、乾燥させた。
[二級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]
窒素気流下、攪拌装置を備えた200mlのシュレンク管反応器に乾燥n−ペンタン50ml、乾燥エーテル20mlとテトラクロロシラン8.09g(47.6mmol)を仕込み、上記で製造したシクロペンタジエニルリチウム7.20g(100mmol)をn−ペンタン70mlでスラリー化した液を注射器により、室温にて10分間で滴下した。滴下終了後、室温にて24時間攪拌した。反応終了後、ガラスフィルターにて反応液スラリーからリチウムクロライドを除去し、n−ペンタンを留去し、ジシクロペンタジエニルジクロロシランを得た。
【0077】
窒素気流下、還流冷却器、攪拌装置を備えた200mlのシュレンク管反応器得られたジシクロペンタジエニルジクロロシランとn−ヘキサン120mlを仕込み、溶解させた。これにナトリウムエトキシド8.17g(120mmol)を加え、n−ヘキサン還流条件にて4時間反応させた。反応後、ガラスフィルターにより、ナトリウムクロライド及び未反応ナトリウムエトキシド濾別除去し、蒸留精製により生成物であるジシクロペンタジエニルジエトシキシラン7.41g(29.9mmol)得た。収率62.8%であった。
【0078】
単離したジシクロペンタジエニルジエトキシシランをH−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;6.25ppm(m,10H)、1.28ppm(t,6H)、3.91ppm(q,4H)
GC−MS;Mw=248、C1420Si
また、得られたジシクロペンタジエニルジエトキシシラン100g中の水分並びにナトリウムおよびリチウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=17ppm、Li<10ppb、Na<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0079】
比較例1
実施例1の二級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造のジシクロペンタジエニルジクロロシランとナトリウムエトキシドとの反応後、ナトリウムクロライド及び未反応ナトリウムエトキシドを濾別除去せず、水を加えて溶解分液抽出除去したこと以外は、実施例1と同様にしてジシクロペンタジエニルジエトキシシランを製造した。
【0080】
得られたジシクロペンタジエニルジエトキシシラン中の水分並びにナトリウムおよびリチウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MSにより測定したところ、Li<10ppb、Na<10ppbであったが、HО=130ppmであり、絶縁膜材料としては、不適当なものであった。
【0081】
実施例2
[二級炭素原子とマグネシウム原子とが直結した有機マクネシウムの製造]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた2Lの四つ口フラスコに金属マグネシウム53.4g(2.20mol)と乾燥ジエチルエーテル1.60Lを仕込み、0℃に冷却した。これに攪拌しつつ、イソプロピルブロミド246g(2.00mol)を乾燥ジエチルエーテル200mlに希釈した溶液を100分間で滴下し、室温で14時間反応させ、イソプロピルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液を得た。
[二級炭素原子とビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた2Lの四つ口フラスコにビニルトリメトキシラン206g(1.39mol)と乾燥ジエチルエーテル300mlを仕込み、0℃に冷却した。これに攪拌しつつ、上記で調製したイソプロピルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液1.67molを120分間で滴下し、室温で2時間反応させた。反応終了後、副生したマグネシウムメトキシド残渣を濾別除去し、得られた濾液を減圧蒸留することにより目的物であるイソプロピルビニルジメトキシシラン141g(0.882mol)を得た。収率は、63.5%であった。
【0082】
単離したイソプロピルビニルジメトキシシランをH−NMR、13C−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;δ1.07ppm(s,6H,2CH)、δ1.08ppm(s,1H,CH)、δ3.62ppm(s,6H,2OCH)、δ5.95〜6.30ppm(m,3H,CH=CH
13C−NMR;δ12.0ppm、16.7ppm、50.7ppm、δ130.2ppm、δ136.4ppm
GC−MS;Mw=160、C16ОSi
また、得られたイソプロピルビニルジメトキシシラン100g中の水分並びにマグネシウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=5ppm、Mg<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0083】
実施例3
実施例2においてビニルトリメトキシラン206g(1.39mol)に変えて、メチルトリメトキシシラン189g(1.39mol)としたこと以外は、実施例2と同様にしてイソプロピルメチルジメトキシシランを製造した。収率は、63.1%でであった。
【0084】
単離したイソプロピルメチルジメトキシシランをH−NMR、13C−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;δ0.120ppm(m,3H,CH)、δ1.04ppm(s,6H,2CH)、δ1.05ppm(s,1H,CH)、δ3.58ppm(s,6H,2OCH
13C−NMR;δ12.6ppm、δ16.7ppm、δ50.4ppm
GC−MS;Mw=148、C16Si
また、得られたイソプロピルメチルジメトキシシラン100g中の水分並びにマグネシウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=4ppm、Mg<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0085】
実施例4
[二級炭素原子とマグネシウム原子とが直結した有機マクネシウムの製造]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた3Lの四つ口フラスコに金属マグネシウム80.1g(3.30mol)と乾燥ジエチルエーテル2.40Lを仕込み、0℃に冷却した。これに攪拌しつつ、イソプロピルブロミド369g(3.00mol)を乾燥ジエチルエーテル300mlに希釈した溶液を100分間で滴下し、室温で14時間反応させ、イソプロピルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液を得た。
[二級炭素原子がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた3Lの四つ口フラスコにテトラメトキシラン211g(1.39mol)と乾燥ジエチルエーテル300mlを仕込み、0℃に冷却した。これに攪拌しつつ、上記で調製したイソプロピルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液2.92molを120分間で滴下し、室温で2時間反応させた。反応終了後、副生したマグネシウムメトキシド残渣を濾別除去し、得られた濾液を減圧蒸留することにより目的物であるジイソプロピルジメトキシシラン162g(0.920mol)を得た。収率は、66.2%であった。
【0086】
単離したジイソプロピルジメトキシシランをH−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
【0087】
H−NMR;δ1.11ppm(s,12H,4CH)、δ1.12ppm(s,2H,2CH)、δ3.58ppm(s,6H,2OCH
GC−MS;Mw=176、C20ОSi
また、得られたジイソプロピルジメトキシシラン100g中の水分並びにマグネシウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=4ppm、Mg<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0088】
実施例5
[2つのビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シラン化合物の製造]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた5Lの四つ口フラスコにジビニルジクロロシラン306g(2.00mol)とtert.−ブトキシカリウム539g(4.80mol)と乾燥ヘキサン3.0Lを仕込み、ヘキサン還流条件下、17時間反応させた。反応終了後、副生した塩化カリウム残渣を濾別除去し、得られた濾液を減圧蒸留することにより目的物であるジビニルジ−tert.−ブトキシシラン257g(1.13mol)を得た。収率は、56.5%であった。
【0089】
単離したジビニルジ−tert.−ブトキシシランをH−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;δ1.39ppm(s,18H,2BuО)、δ5.87〜6.28ppm(m,6H,2CH=CH
GC−MS;Mw=228、C1224ОSi
また、得られたジビニルジ−tert.−ブトキシシラン100g中の水分並びにカリウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=4ppm、K<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0090】
実施例6
[二級炭素原子とビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シロキサン化合物の製造]
攪拌装置を備えた5Lの四つ口フラスコにイソプロピルビニルジメトキシシラン500g(3.09mol)、純水556g(30.9mol)、硫酸152g(1.55mol)、テトラヒドロフラン3.00Lを仕込み、還流条件下、1時間反応させた。反応終了後、THF及び水を留去し、得られた有機層をモレキュラーシーブで乾燥した。乾燥後、有機層から減圧蒸留により、目的物である1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン255g(0.746mol)を得た。収率は、24.1%であり、イソプロピルビニルジメトキシシランの転換率は、72.4%であった。
【0091】
単離した1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサンをH−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;δ1.05〜1.14(m,21H,Pr)、δ5.88〜6.23ppm(m,9H,CH=CH
13C−NMR;δ14.4ppm、δ14.5ppm、δ16.3ppm、δ133.1ppm、δ133.2ppm、δ133.4ppm、δ134.6ppm、δ134.8ppm、δ135.0ppm
GC−MS;Mw=342、C1530Si
また、得られた1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン100g中の水分並びにマグネシウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=8ppm、Mg<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0092】
実施例7
実施例6においてイソプロピルビニルジメトキシシラン500g(3.09mol)に変えて、イソプロピルメチルジメトキシシラン458g(3.09molとしたこと以外は、実施例6と同様にして1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンを製造した。収率は、25.3%であり、イソプロピルメチルジメトキシシランの転換率は、75.8%であった。
【0093】
単離した1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンをH−NMR、13C−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;δ0.197〜0.213ppm(m,9H,CH)、δ1.06〜1.10(m,21H,Pr)、
13C−NMR;δ15.3ppm、δ15.5ppm、δ16.4ppm、δ16.5ppm
GC−MS;Mw=306、C1230Si
また、得られた1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン100g中の水分並びにマグネシウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=9ppm、Mg<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0094】
実施例8
[ビニル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シロキサン化合物の製造]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた5Lの四つ口フラスコに純水1250g(69.4mol)とtert.−ブタノール1250g(16.9mol)を仕込み、滴下濾斗よりジビニルジクロロシラン500g(3.27mol)を室温にて1時間で滴下し、更に1時間反応させた。反応終了後、n−ペンタン1.0Lで目的物であるオクタビニルシクロテトラシロキサン抽出し、得られたn−ペンタン層をモレキュラーシーブで乾燥した。乾燥後、ペンタン層から減圧蒸留により、目的物であるオクタビニルシクロテトラシロキサン144g(0.368mol)を得た。収率は、11.3%であり、ジビニルジクロロシランの転換率は、45.0%であった。
【0095】
単離したオクタビニルシクロテトラシロキサンをH−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;δ5.90〜6.32ppm(m,CH=CH
GC−MS;Mw=392、C1624Si
また、得られたオクタビニルシクロテトラシロキサン100g中の水分並びにマグネシウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=9ppm、Mg<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0096】
実施例9
[ビニル基とアルキル基がケイ素原子に直結した構造を有する有機シロキサン化合物の製造]
実施例8においてジビニルジクロロシラン500g(3.27mol)に変えて、ビニルメチルジクロロシラン500g(3.55mol)としたこと以外は、実施例8と同様にして1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを製造した。収率は、16.5%であり、ビニルメチルジクロロシランの転換率は、66.0%であった。
【0097】
単離した1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンをH−NMR、GC−MSで分析した結果は、以下の通りであった。
H−NMR;δ0.255〜0.290ppm(m,12H,CH
δ5.90〜6.32ppm(m,12H,CH=CH
GC−MS;Mw=344、C1224Si
また、得られた1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン100g中の水分並びにマグネシウム含有量をカールフィッシャー水分計及びICP−MS(高周波プラズマ発光−質量分析器、横河アナリティカルシステムズ社製、商品名「HP4500」)により測定した結果は、HО=9ppm、Mg<10ppbであり、絶縁膜材料として有用なものであった。
【0098】
実施例10
[プラズマ重合]
日本レーザー電子(株)社製プラズマ重合装置NL−ОP50FTを用い、放電電圧2.1kV、放電電流5.0mA、ジビニルジ−tert.−ブトキシシラン分圧0.7torr、室温、重合(放電)時間12分間の条件でジビニルジ−tert.−ブトキシシランをプラズマ重合し、シリコン基板上に成膜した。
【0099】
結果は、
成膜速度=46.7nm/min.
薄膜組成(XPS)C=41.3atom%、О=36.7atom%、
Si=22.0atom%
C/Si=1.88atom比、
О/Si=1.67atom比
SEM薄膜断面観察 平坦緻密膜
であり、ケイ素に対する炭素(有機置換基)の比率の高い、絶縁膜用材料として適した薄膜であった。
【0100】
比較例2
実施例10において重合するモノマーをジメチルジメトキシシランとしたこと以外は、実施例10と同様にしてシリコン基板上にプラズマ重合成膜を実施した。
【0101】
結果は、
成膜速度=10.8nm/min.
薄膜組成(XPS)C=32.2atom%、О=40.6atom%、
Si=27.1atom%
C/Si=1.19atom比、
О/Si=1.50atom比
SEM薄膜断面観察 平坦緻密膜
であり、実施例10に比し、成膜速度が遅く、ケイ素に対する炭素(有機置換基)の比率が低く、絶縁膜用材料としては不適な薄膜しか得られなかった。
【0102】
実施例11
[プラズマ重合]
実施例10において重合するモノマーをイソプロピルビニルジメトキシシランとしたこと以外は、実施例10と同様にしてシリコン基板上にプラズマ重合成膜を実施した。
【0103】
結果は、
成膜速度=100nm/min.
薄膜組成(XPS)C=56.6atom%、О=25.1atom%、
Si=18.3atom%
C/Si=3.09atom比、
О/Si=1.37atom比
SEM薄膜断面観察 平坦緻密膜
であり、ケイ素に対する炭素(有機置換基)の比率の高い、絶縁膜用材料として適した薄膜であった。
【0104】
実施例12
[プラズマ重合]
実施例10において重合するモノマーを1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとしたこと以外は、実施例10と同様にしてシリコン基板上にプラズマ重合成膜を実施した。
【0105】
結果は、
成膜速度=153nm/min.
薄膜組成(XPS)C=58.7atom%、О=20.9atom%、
Si=20.4atom%
C/Si=2.88atom比、
О/Si=1.02atom比
SEM薄膜断面観察 平坦緻密膜
であり、ケイ素に対する炭素(有機置換基)の比率の高く、絶縁膜用材料として適した薄膜であった。また、モノマー中のO/Si=1.00atom比が維持され、モノマー環状構造が維持されていることを示唆した。
【0106】
実施例13
[プラズマ重合]
実施例10において重合するモノマーを1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサンとしたこと以外は、実施例10と同様にしてシリコン基板上にプラズマ重合成膜を実施した。
【0107】
結果は、
成膜速度=215nm/min.
薄膜組成(XPS)C=68.5atom%、О=15.8atom%、
Si=15.7atom%
C/Si=4.36atom比、
О/Si=1.01atom比
SEM薄膜断面観察 平坦緻密膜
であり、実施例10よりもケイ素に対する炭素(有機置換基)の比率の高い、絶縁膜用材料として適した薄膜であった。また、モノマー中のO/Si=1.00atom比が維持され、モノマー環状構造が維持されていることを示唆した。
【0108】
実施例14
[プラズマ重合]
実施例10において重合するモノマーを1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサンとしたこと以外は、実施例10と同様にしてシリコン基板上にプラズマ重合成膜を実施した。
【0109】
結果は、
成膜速度=117nm/min.
薄膜組成(XPS)C=60.8atom%、О=20.1atom%、
Si=19.1atom%
C/Si=3.18atom比、
О/Si=1.05atom比
SEM薄膜断面観察 平坦緻密膜
であり、実施例10よりもケイ素に対する炭素(有機置換基)の比率の高い、絶縁膜用材料として適した薄膜であった。また、モノマー中のO/Si=1.00atom比が維持され、モノマー環状構造が維持されていることを示唆した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタエチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリsec−ブチル−1,3,5−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラsec−ブチル−1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、または1,3,5,7,9−ペンタsec−ブチル−1,3,5,7,9−ペンタエチルシクロペンタシロキサン。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物において、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロピル−1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、または1,3,5,7,9−ペンタイソプロピル−1,3,5,7,9−ペンタエチルシクロペンタシロキサン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物において、1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、または1,3,5−トリイソプロピル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン。

【公開番号】特開2009−179640(P2009−179640A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120571(P2009−120571)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【分割の表示】特願2003−383517(P2003−383517)の分割
【原出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】