説明

有機ハロゲン化合物除去用触媒、その製造方法、有機ハロゲン化合物除去方法

【課題】 ダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を効率よく除去するための有機ハロゲン化合物除去用触媒およびその製造方法、ならびにこの触媒を用いた有機ハロゲン化合物の除去方法を提供する。
【解決手段】 BET一点法で測定される比表面積が125〜200m/gである酸化チタンを含有する有機ハロゲン化合物除去用触媒。この触媒は、可溶性チタン化合物の溶液に塩基性物質を添加し、生成する沈澱物を200〜500℃で焼成して得られる。また、この触媒に排ガスを接触させて、排ガス中の有機ロゲン化合物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中のダイオキシン類などの毒性有機ハロゲン化合物を除去する排ガス浄化用触媒およびその製造方法、ならびにこの触媒を用いた有機ハロゲン化合物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や都市廃棄物を処理する焼却施設から発生する排ガス中には、ダイオキシン類、PCB、クロロフェノールなどの極微量の毒性有機ハロゲン化合物が含まれており、特にダイオキシン類は微量であってもきわめて有毒であり、人体に重大な影響を及ぼすため、その除去技術が早急に求められている。一般に有機ハロゲン化合物は化学的にきわめて安定であり、特にダイオキシン類においては自然界では半永久的に残存するといわれているほど分解しにくい物質であるのに加え、排ガス中でのその含有量が非常に低いため、これを効率よく除去することは困難である。現在、バナジウム酸化物やタングステン酸化物をチタン酸化物に担持した触媒や白金をはじめとする貴金属触媒が用いられているが、排ガス条件によっては充分な性能が得られず、更なる性能の向上が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を効率よく除去することが可能な、排ガス浄化用触媒およびその製造方法、ならびにこの触媒を用いた有機ハロゲン化合物の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、触媒の化学的組成のみならず、物理的特性の改良を行うことによって上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するにいたった。すなわち、本発明は、次のとおりのものである。
(1)BET一点法で測定される比表面積が125〜200m/gである酸化チタンを含有する有機ハロゲン化合物除去用触媒。
(2)有機ハロゲン化合物を含む排ガスを130〜350℃の温度で上記(1)の触媒と接触させることを特徴とする有機ハロゲン化合物の除去方法。
(3)BET一点法で測定される比表面積が125〜200m/gである酸化チタンを含有する有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法であって、該酸化チタンを、(a)可溶性チタン化合物の溶液に塩基性物質を添加し、生成する沈澱を200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する、(b)チタンアルコキシドの加水分解により生成するゲルを200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する、あるいは(c)可溶性チタン化合物の溶液を熱加水分解した後、500〜800℃で焼成する、ことにより製造することを特徴とする有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法。
(4)方法(a)、(b)における焼成温度が200〜450℃である上記(3)の有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法。
(5)方法(a)における最終pHを5〜9とする上記(3)の有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明の触媒は、ダイオキシン類などの毒性有機ハロゲン化合物の分解活性やアンモニア分解活性に優れる。また、脱硝性能にも優れ、窒素酸化物とダイオキシン類などの毒性有機ハロゲン化合物の同時除去触媒として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の触媒は、高比表面積の酸化チタンを使用することを特徴とするものであり、詳しくは、BET一点法で測定される比表面積が125〜200m/gである酸化チタンを含有する有機ハロゲン化合物除去用触媒である。
【0007】
また、本発明は、BET一点法で測定される比表面積が125〜200m/gである酸化チタンを含有する有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法であって、該酸化チタンを、(a)可溶性チタン化合物の溶液に塩基性物質を添加し、生成する沈澱を200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する、(b)チタンアルコキシドの加水分解により生成するゲルを200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する、あるいは(c)可溶性チタン化合物の溶液を熱加水分解した後、500〜800℃で焼成する、ことにより製造することを特徴とする有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法である。
【0008】
上記方法(a)によれば、先ず、可溶性チタン化合物の溶液に塩基性物質を添加する。次に、上記の混合により沈澱物が生成するので、この沈澱物を200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する。
【0009】
上記可溶性チタン化合物については特に制限はなく、四塩化チタン、硫酸チタン、シュウ酸チタンなどを用いることができる。塩基性物質としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属の水酸化物などを用いることができるが、アンモニアが好ましい。具体的には、例えば、以下のように調製することができる。0.5mol/リットルのアンモニア水溶液600リットルを攪拌しながら、これに塩化チタン水溶液(TiOとして200g/リットル)48リットルを少しずつ滴下する。最終pHを5〜9とする。得られた沈殿物を洗浄し、100℃で12時間乾燥し、さらに450℃で3時間焼成し、高比表面積酸化チタンを得る。
【0010】
上記方法(b)によれば、チタンアルコキシドを加水分解し、生成するゲルを200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する。具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート7.1kgを含むアルコール溶液を混合しながら水を少しずつ滴下し、沈澱を生成し、得られたスラリーを100℃で12時間乾燥し、さらに450℃で3時間焼成して、高比表面積酸化チタンを得る。
【0011】
上記方法(c)によれば、可溶性チタン化合物の溶液を熱加水分解し、生成する沈殿物を500〜800℃で焼成する。上記可溶性チタン化合物については特に制限はなく、四塩化チタン、硫酸チタン、シュウ酸チタンなどを用いることができる。具体的には、例えば、硫酸チタン水溶液(180g−TiO/リットル、200g−HSO/リットル)を105〜110℃で5時間煮沸し、50℃以下に冷却後、アンモニア水で中和することによりメタチタン酸スラリ−を得、これをそのまま蒸発乾固し600℃で焼成するか、あるいはスラリーから沈殿物を分離し、洗浄、乾燥した後、500℃で焼成して、高比表面積酸化チタンを得る。
【0012】
本発明によって得られる触媒組成物は、板状、波板状、網状、ハニカム状、円柱状、円筒状などの形状に成形して用いてもよい。
【0013】
本発明の有機ハロゲン化合物除去用触媒を用いて処理する排ガスの組成については特に制限はなく、本発明の有機ハロゲン化合物除去用触媒はダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物を含有する各種排ガスの処理に用いることができるが、クロロフェノールの処理に好適に用いられる。
【0014】
本発明の有機ハロゲン化合物除去用触媒を用いた排ガスの処理条件については、排ガスの種類、形状、要求されるダイオキシン類などの有機ハロゲン化合物の分解率などにより異なるので一概に特定できないが、実施に際しては、これらの条件を考慮して適宜決定すればよい。処理対象ガスの本発明の触媒に対する空間速度は100〜100000Hr−1、好ましくは200〜50000Hr−1の範囲にあるのがよい。100Hr−1 未満である場合は、処理装置が大きくなりすぎ非効率であり、100000Hr−1 を超える場合は、分解効率が低下するため好ましくない。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、高比表面積酸化チタンを以下に述べる方法で調製した。0.65mol/リットルのアンモニア水溶液600リットルを攪拌しながら、これに塩化チタン水溶液(TiOとして200g/リットル)48リットルを少しずつ滴下した。最終pHは5〜9となった。得られた沈殿物を洗浄し100℃で12時間乾燥し、さらに450℃で3時間焼成し、高比表面積酸化チタンを得た。次に、上記高比表面積酸化チタン20kgに水5リットルとフェノール樹脂1kgと成形助剤として澱粉を加えて混合しニーダーで混練りした後、押し出し成型機で外径80mm角、目開き4.0mm、肉厚1.0mm、長さ500mmのハニカム状に成形した。次いで80℃で乾燥後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成し、触媒(A)を得た。BET比表面積は125m/gであった。
(比較例1)
硫酸チタン水溶液(180g−TiO/リットル、200g−HSO/リットル)を105〜110℃で5時間煮沸し、50℃以下に冷却後アンモニア水で中和することにより、メタチタン酸スラリーを得た。これをそのまま蒸発乾固し、900℃で焼成して酸化チタンを得た。次に、上記酸化チタン20kgに水5リットルとフェノール樹脂1kgと成形助剤として澱粉を加えて混合しニーダーで混練りした後、押し出し成型機で外径80mm角、目開き4.0mm、肉厚1.0mm、長さ500mmのハニカム状に成形した。次いで80℃で乾燥後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成し、触媒(B)を得た。BET比表面積は10m/gであった。
(実施例2)
実施例1で調製した触媒(A)および比較例1で調製した触媒(B)を用いて有機塩素化合物分解試験を行った。処理対象となる有機塩素化合物としてクロロフェノール(以下、CPと略す)を用い、以下の条件で反応を行った。結果を表1に示す。CP分解率すなわちCP除去率は下記式により求めた。
<試験条件>
処理ガス組成 CP:30ppm、O:18%、HO:3%、N:バランス
ガス温度:200℃
空間速度(SV):1000Hr−1
<式>
CP分解率(%)=[(反応器入口CP濃度)−(反応器出口CP濃度)]/(反応器入口CP濃度)×100
【0016】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET一点法で測定される比表面積が125〜200m/gである酸化チタンを含有する有機ハロゲン化合物除去用触媒。
【請求項2】
有機ハロゲン化合物を含む排ガスを130〜350℃の温度で請求項1の触媒と接触させることを特徴とする有機ハロゲン化合物の除去方法。
【請求項3】
BET一点法で測定される比表面積が125〜200m/gである酸化チタンを含有する有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法であって、該酸化チタンを、(a)可溶性チタン化合物の溶液に塩基性物質を添加し、生成する沈澱を200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する、(b)チタンアルコキシドの加水分解により生成するゲルを200〜500℃(ただし、500℃を除く。)で焼成する、あるいは(c)可溶性チタン化合物の溶液を熱加水分解した後、500〜800℃で焼成する、ことにより製造することを特徴とする有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法。
【請求項4】
方法(a)、(b)における焼成温度が200〜450℃である請求項3記載の有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法。
【請求項5】
方法(a)における最終pHを5〜9とする請求項3記載の有機ハロゲン化合物除去用触媒の製造方法。

【公開番号】特開2006−21203(P2006−21203A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287907(P2005−287907)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【分割の表示】特願平11−228646の分割
【原出願日】平成11年8月12日(1999.8.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】