説明

有機ヒ素濃度測定方法および装置

【課題】流入水中の有機ヒ素の濃度変化に対応して、オゾンや過酸化水素の供給、ならびに紫外線照射をリアルタイムに制御して処理水中の有機物濃度、有機ヒ素濃度を確実に求められる処理水質とすることができる有機ヒ素濃度測定方法および装置を提供する。
【解決手段】酸化処理槽101と酸化分解反応槽201とで有機ヒ素含有廃水を処理するもので、測定工程をなす酸化処理槽101おける有機ヒ素含有廃水の酸化処理前後での吸光度差を測定し、予め設定する色−特定有機ヒ素濃度相関において吸光度差を指標として有機ヒ素初濃度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ヒ素濃度測定方法および装置に関し、下水、上水、埋立浸出水、地下水、不法投棄現場の地下水および浸出水等の水処理技術に係る。
【背景技術】
【0002】
本発明の対象物質である有機ヒ素(ジフェニルアルシン酸やモノフェニルアルソン酸)は、毒ガス兵器として使用された毒ガスの分解生成物であり、現在のところ日本各地で、遺棄された毒ガス兵器によるヒ素汚染が見つかっており、また不法投棄によるヒ素汚染の可能性も指摘されており、地下水汚染に対する早急な対策が求められている。
【0003】
以下に従来の有機ヒ素含有廃水の処理方法を図9に基づいて説明する。図9に示すように、前段の有機ヒ素酸化分解工程において、流入水として有機ヒ素含有廃水を紫外線/オゾン処理装置1に導入し、pH調整槽2との間において有機ヒ素含有廃水を循環してpHを調整しつつ、紫外線/オゾン処理装置1において紫外線の照射下でオゾンを供給して有機ヒ素を酸化して無機ヒ素に分解する。
【0004】
有機ヒ素酸化分解工程を経た処理水は後段の無機ヒ素除去工程に導き、凝集剤3を添加して凝集膜分離槽4において凝集沈殿、凝集膜分離し、さらに活性アルミナ吸着処理塔5に導いて活性アルミナ吸着、キレート吸着等で無機ヒ素を除去する。
【0005】
また、他の従来の有機性廃水の処理方法には、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、酸化処理工程において、反応槽内の被処理廃水に対して紫外線照射とオゾン供給とを併用して行うことによりヒドロキシラジカルを発生させて、有機金属化合物を酸化分解して無機金属化合物に変換し、無機金属除去工程において、活性アルミナ吸着処理を利用した無機金属除去装置により無機金属化合物を除去するものである。
【0006】
また、特許文献2に記載するものは、水性媒体中の有機ヒ素化合物に、鉄イオン、銅イオン、コバルトイオンおよびマンガンイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属イオンの存在下、過酸化水素を反応させて、有機ヒ素化合物を無機ヒ素に酸化分解するものである。
【特許文献1】特開2005−279409号公報
【特許文献2】特開2001−158622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機ヒ素含有廃水の処理において、求められる処理水質は、0.001mg/L(有機ヒ素として)であり、極めて低濃度である。この低濃度であるが故に、濁度計、吸光度計等を使用した現地での測定では必要とするレベルの測定を行うことができず、水質管理上0.001mg/L以下を保つことが難しい。
【0008】
有機ヒ素含有廃水をサンプリングして分析する手法では多点分析が望ましい。しかし、有機ヒ素の分析費用が非常に高くて検体当たり十数万円を要するのでコスト的に困難であり、分析に要する時間も数週間かかるためにリアルタイムに測定結果を得ることができない。
【0009】
このため、酸化工程において、求められる処理水質を達成するために必要な適正な注入量でオゾンや過酸化水素を供給し、適正な照射量で紫外線を照射することが困難であり、求められる極めて低濃度の処理水質を確実に達成するためには、酸化工程において必要以上に過剰な多量のオゾンや過酸化水素を供給し、過剰な照射量(時間、出力)で紫外線照射することを必要とする。
【0010】
本発明は上記した課題を解決するものであり、有機ヒ素含有廃水処理において、流入水中の有機ヒ素の濃度変化に対応して、オゾンや過酸化水素の供給をリアルタイムに制御して有機ヒ素濃度を確実に求められる処理水質とすることを可能とする有機ヒ素濃度測定方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の有機ヒ素濃度測定方法は、測定対象液中の有機ヒ素濃度を酸化処理を利用して測定するものであって、測定対象液を酸化処理し、この酸化処理の前後において測定対象液の色濃度を測定して酸化処理前後における色濃度差を求め、予め設定する色−特定有機ヒ素濃度相関において前記色濃度差を指標として前記測定対象液中の特定有機ヒ素の濃度を求めることを特徴とする。
【0012】
本発明の有機ヒ素濃度測定装置は、測定対象液を酸化処理する酸化処理手段と、前記酸化処理の前において前記測定対象液の色濃度を測定する第1の色濃度測定手段と、前記酸化処理の後において前記測定対象液の色濃度を測定する第2の色濃度測定手段と、第1および第2の色濃度測定手段による測定結果から前記測定対象液の酸化処理前後における色濃度差を算出し、予め設定する色−特定有機ヒ素濃度相関において前記色濃度差を指標として前記測定対象液中の特定有機ヒ素の濃度を求める制御手段とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、酸化処理の前後における色濃度差を指標として測定対象液中の特定有機ヒ素の濃度を求めることにより、有機ヒ素含有廃水処理において、流入水中の有機ヒ素の濃度変化に対応して、オゾンや過酸化水素の供給をリアルタイムに制御して有機ヒ素濃度を確実に求められる処理水質とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。はじめに本発明の原理的な説明を行う。図8は、ある有機ヒ素汚染地下水を紫外線およびオゾンで酸化処理して有機ヒ素を無機ヒ素に酸化分解し、目標処理水質である0.001mg/Lを達成するのに必要なオゾン消費量と有機ヒ素初濃度との関係を示すものである。この場合の有機ヒ素濃度の90%以上がジフェニルアルシン酸であった。両者の間には良好な相関関係があった。
【0015】
したがって、上記した相関関係において、有機ヒ素含有廃水の有機ヒ素初濃度が分かれば目標処理水質である0.001mg/Lを達成するのに必要なオゾン消費量を求めることができ、有機ヒ素含有廃水の処理水量に合わせてオゾン注入量を制御することができる。
【0016】
次に、図7にジフェニルアルシン酸の200〜400nmの波長の吸光度(図中0minとして表示)を示す。このジフェニルアルシン酸はオゾン処理(酸化処理)によって吸光度が増加する。比較のために、オゾン処理によって吸光度が最大になったときの200〜400nmの波長の吸光度(図中10minとして表示)を示す。400nm以下の吸光度が増加し、260nm前後にピークが見られ、254nmの値(E254)が増加していることが分かる。
【0017】
このように、ジフェニルアルシン酸には254nm付近に吸収がみられることから、蒸留水中にジフェニルアルシン酸を溶かした場合などは、それらの吸光度からジフェニルアルシン酸の濃度を測定することも可能である。
【0018】
しかし、二重結合をもつ有機化合物のほとんどが254nm付近に吸収をもつため、自然界に普遍的に存在しているフミン酸やフルボン酸といった有機化合物も当然に254nm付近に吸収をもつ。
【0019】
したがって、有機ヒ素含有廃水中のジフェニルアルシン酸の濃度を吸光度から測定する場合には、有機ヒ素と共存するフミン酸やフルボン酸といった有機化合物が吸光度における254nmの吸光度の値(E254)をかさ上げすることになり、有機ヒ素濃度の測定精度は低くなる。
【0020】
しかし、オゾン処理や紫外線照射による酸化処理後の吸光度において増加する254nmの吸光度の値(E254)は、その由来がほぼ有機ヒ素に限られることになり、254nmの吸光度の値(E254)から測定する有機ヒ素濃度の測定精度は高くなる。
【0021】
次に、図4は、ジフェニルアルシン酸の濃度が80mg/Lの溶液に対し、回分式処理装置でオゾン処理を行った場合の254nmの吸光度(E254)の経時変化を示すものである。
【0022】
処理時間10分で吸光度(E254)の値はピークを示し、その後漸次に衰退した。この場合に、処理時間10分でのオゾン注入率は約50mg/Lであった。有機ヒ素初濃度を変化させて同様の処理を行った場合も、最大ピークを示すオゾン注入率は約50mg/Lであった。すなわち、有機ヒ素初濃度の値にかかわらず、オゾン注入率50mg/Lのときに有機ヒ素含有廃水の吸光度(E254)の値がピークを示した。
【0023】
次に、図5は、有機ヒ素としてジフェニルアルシン酸、モノフェニルアルソン酸を含む溶液をオゾン注入率50mg/Lで、かつpHを7一定としてオゾン処理した場合において、有機ヒ素初濃度を変化させたときの有機ヒ素初濃度(図中においてはヒ素濃度換算で示す)とΔAbs[−]との関係を示すものである。ΔAbs[−]は、酸化処理前の吸光度(E254)の値と処理時間10分後の吸光度(E254)の値の差である。
【0024】
図5から明らかなように、両者は相関関係にあることが分かり、ΔAbs[−]の値を指標として有機ヒ素初濃度を求めることができる。
また、図6は、上記した処理において、pHを各値一定としてオゾン処理し、有機ヒ素初濃度を変化させてときの有機ヒ素初濃度(図中においてはヒ素濃度換算で示す)とΔAbs[−]との関係を示すものである。
【0025】
図6から明らかなように、各pHにおいて両者は相関関係にあることが分かり、pHが中性(pH7)のときに、ΔAbs[−]の値が最も大きくなった。したがって、中性付近でオゾン処理した方が、低濃度の有機ヒ素においても有機ヒ素初濃度の検出が容易である。
【0026】
以下に本発明の実施の形態を説明する。図1において、有機ヒ素含有廃水の処理装置は、測定装置100と酸化分解装置200からなる。測定装置100において、酸化処理槽101には有機ヒ素含有廃水を導入する流入水系102が槽上部側に接続しており、槽下部側に酸化処理水を取り出す酸化処理水系103が接続しており、流入水系102および酸化処理水系103に色濃度を測定する測定手段をなす吸光度計(もしくは色度計)104、105を介装している。測定手段は1台の吸光度計を流路の切り替えにより使用することも可能であり、本実施の形態においては測定手段に吸光度計を採用するが、目視による測定も可能である。
【0027】
また、酸化処理槽101にはpH調整槽106が循環系107を介して接続し、pH調整槽106にはpH調整剤として酸、アルカリを添加する酸供給系108およびアルカリ供給系109が接続しており、酸化処理槽101とpH調整槽106との間において槽内液が循環する。
【0028】
吸光度計(もしくは色度計)104、105は制御手段をなす制御装置110に接続している。制御装置110は、吸光度計104、105による測定結果から有機ヒ素含有廃水の酸化処理前後における色濃度差を算出し、予め設定する色−特定有機ヒ素濃度相関において色濃度差を指標として有機ヒ素含有廃水の有機ヒ素初濃度を求め、予め設定する濃度−消費量相関において有機ヒ素初濃度を指標として酸化剤予定消費量を求める。
【0029】
色−特定有機ヒ素濃度相関は、先に図5および図6において説明したものと同様の手順によって、実験的に有機ヒ素含有廃水を分析して求める酸化処理前の有機ヒ素初濃度と、分析に供する有機ヒ素含有廃水を酸化処理することによって生じる酸化処理前後の色濃度の変化量との相関として設定する。
【0030】
濃度−消費量相関は、先に図8において説明したものと同様の手順によって、実験的に有機ヒ素含有廃水を分析して求める酸化処理前の有機ヒ素初濃度と、分析に供する有機ヒ素含有廃水を所定有機ヒ素濃度にまで酸化処理するのに消費する酸化剤消費量との相関として設定する。
【0031】
酸化分解装置200において、酸化分解反応槽201には酸化処理水系103が槽上部側に接続し、槽下部側に酸化処理水移送系202が接続しており、酸化処理水移送系202が無機ヒ素除去工程(図9参照)に接続している。
【0032】
酸化処理槽101および酸化分解反応槽201の底部には、酸化処理手段をなすオゾン発生機203からそれぞれプレオゾン供給系204とオゾン供給系205が接続しており、プレオゾン供給系204とオゾン供給系205にはそれぞれプレオゾン流量調整バルブ206とオゾン流量調整バルブ207を介装している。また、酸化分解反応槽201には紫外線ランプ208を上下方向に配置している。オゾン発生機203、プレオゾン流量調整バルブ206、オゾン流量調整バルブ207は制御装置110に接続しており、制御装置110はプレオゾン流量調整バルブ206、オゾン流量調整バルブ207の開度を調整して酸化剤消費量を制御する。
【0033】
本実施の形態では酸化処理手段がオゾンであるが、オゾン、紫外線、熱、酸化剤、超音波を単独又は併用して使用することも可能である。
以下、上記した構成における作用を説明する。測定装置100の酸化処理槽101は、槽容量が酸化分解装置200の酸化分解反応槽201の槽容量の1/5から1/10程度であり、90%以上、望ましくは98%以上のオゾン吸収率を達成するために、プレオゾン供給系204からオゾンを所定注入率、もしくは所定注入量(消費量)で供給して絶えず一定量のオゾンを注入する。
【0034】
例えば、オゾンガス濃度を下げればオゾンガス吹込み量を増加させ、オゾンガス濃度を上げればオゾンガス吹込み量を減少させるために、プレオゾン流量調整バルブ206の開度およびオゾン発生機203のオゾン発生量を制御装置110で制御する。
【0035】
ここで、オゾン吸収率、オゾン注入率、オゾン注入量(オゾン消費量)は以下の関係にある。オゾン注入率[mg/L]=オゾンガス濃度[mg/L]×オゾンガス吹込み量[L/min]/処理水量(有機ヒ素含有廃水)[L/min]であり、オゾン消費量[mg/L]=オゾン注入率[mg/L]×オゾン吸収率[%]である。
【0036】
この状態で、流入水系102から酸化処理槽101へ有機ヒ素含有廃水を導入し、酸化処理槽101とpH調整槽106との間において槽内液を循環させてpHを中性に制御しつつオゾン処理(酸化処理)する。
【0037】
この処理において酸化処理槽101ではオゾン処理によって有機ヒ素含有廃水は直ぐに褐色に発色し、300nm以下の波長の吸光度が上昇する。酸化処理槽101で処理した酸化処理水は酸化処理水系103を通して酸化分解反応槽201へ供給する。
【0038】
この間に、吸光度計104、105によって有機ヒ素含有廃水の吸光度(E254)を酸化処理前後において測定する。制御装置110は有機ヒ素含有廃水の酸化処理前後における色濃度差を求めるために、流入水系102において吸光度計104により測定した有機ヒ素含有廃水の酸化処理前における紫外線吸光度と、酸化処理水系103において吸光度計105により測定した有機ヒ素含有廃水の酸化処理後における紫外線吸光度との紫外線吸光度差ΔAbsを算出する。
【0039】
この紫外線吸光度差ΔAbsはpHに大きく影響され、有機ヒ素の初濃度が同じでも、pHが酸性になるほど低くなり、pHが中性付近で最も値が大きくなる。
そして、制御装置110は、予め設定した色−特定有機ヒ素濃度相関(図5および図6参照)において紫外線吸光度差ΔAbs(色濃度差)を指標として有機ヒ素含有廃水の有機ヒ素初濃度を求め、予め設定した濃度−消費量相関(図8参照)において有機ヒ素初濃度を指標として、有機ヒ素含有廃水の有機ヒ素濃度を目標処理水質である0.001mg/Lを達成するのに必要な酸化剤予定消費量を求める。
【0040】
この酸化剤予定消費量は、酸化処理槽101および酸化分解反応槽201において消費するオゾン消費量の総量であり、酸化処理槽101で消費するオゾン消費量を減算した値を酸化分解反応槽201におけるオゾン消費量として算出する。
【0041】
次に、制御装置110は、求めた酸化剤予定消費量に見合うようにオゾン(酸化分解反応槽201で消費するオゾン消費量)を供給して酸化分解反応槽201で所定のオゾン吸収率を達成するために、オゾン流量調整バルブ207の開度およびオゾン発生機203のオゾン発生量を調整し、オゾン供給系205からオゾンを所定注入率、もしくは所定注入量(消費量)で供給して絶えず一定量のオゾンを注入する。ここで、オゾン吸収率、オゾン注入率、オゾン注入量(オゾン消費量)の関係は上述した通りである。
【0042】
この状態で、酸化処理槽101から酸化分解反応槽201へ酸化処理水系103を通して有機ヒ素含有廃水を導入し、酸化分解反応槽201において紫外線ランプ208による紫外線照射およびオゾンによって有機ヒ素含有廃水を酸化処理し、有機ヒ素を無機ヒ素に酸化分解して、目標処理水質である0.001mg/Lの有機ヒ素濃度を達成する。酸化分解反応槽201の酸化処理水は酸化処理水移送系202を通して無機ヒ素除去工程(図9参照)に導いて処理する。
【0043】
したがって、有機ヒ素含有廃水に有機ヒ素が高濃度に含まれていた場合においても目標処理水質を達成できるだけの適切なオゾン量を注入できる。また、有機ヒ素含有廃水に有機ヒ素が低濃度で含まれていた場合には、過剰のオゾン注入率を抑制でき、オゾン発生機203におけるオゾン発生に伴う電気代を節約できる。
【0044】
図2は本発明の他の実施の形態を示すものである。本実施の形態において、先に図1で説明したものと同じ構成要素には同符号を付して説明を省略する。図2において、流入水系102は酸化分解反応槽201へ直接に接続しており、流入水系102から分岐する分岐系102aが酸化処理槽101へ接続し、分岐系102aに吸光度計104を介装している。
【0045】
この場合に、分岐系102aを通して酸化処理槽101へ流入する有機ヒ素含有廃水は、系内に流入する処理対象の有機ヒ素含有廃水の一部であるので、測定装置100の酸化処理槽101の槽容量は、図1に示した構成における槽容量よりも少量とすることができ、90%以上、望ましくは98%以上のオゾン吸収率を達成するために必要なオゾン消費量を少なくすることができる。また、pH調整槽106におけるpH調整の処理操作が酸化分解反応槽201における酸化処理にほとんど影響を及ぼさない。
【0046】
この構成により、有機ヒ素含有廃水は大部分が流入水系102を通して酸化分解反応槽201へ直接に流入し、有機ヒ素含有廃水の一部が分岐系102aを通して酸化処理槽101へ流入する。そして、酸化処理槽101および酸化分解反応槽201において先の実施の形態と同様の処理操作を行って目標処理水質である0.001mg/Lの有機ヒ素濃度を達成する。
【0047】
この場合にも、制御装置110で算出する酸化剤予定消費量(オゾン消費量)は、酸化処理槽101および酸化分解反応槽201において消費するオゾン消費量の総量である。しかし、分岐系102aを通して酸化処理槽101へ流入する有機ヒ素含有廃水は、系内に流入する処理対象の有機ヒ素含有廃水の一部であり、酸化処理槽101で消費するオゾン消費量がオゾン消費量の総量に占める割合は少ない。
【0048】
よって、酸化分解反応槽201において、制御装置110で算出した酸化剤予定消費量(オゾン消費量)の全量に見合うオゾンを供給しても、有機ヒ素含有廃水に含まれている有機ヒ素濃度を目標処理水質とするのに必要なオゾン量を注入できることは勿論のことに、過剰となるオゾン量はわずかであり、先の実施の形態と同様に本発明の課題であるオゾン注入率の抑制は実現できる。
【0049】
図3は本発明の他の実施の形態を示すものである。本実施の形態において、先に図1で説明したものと同じ構成要素には同符号を付して説明を省略する。図3において、流入水系102は酸化分解反応槽201へ直接に接続しており、流入水系102から分岐する分岐系102aが酸化処理槽101へ接続し、分岐系102aに吸光度計104を介装している。
【0050】
酸化処理槽101には紫外線ランプ209を設けており、この紫外線ランプ209が
先の実施の形態におけるオゾン供給系205に代わって酸化手段をなす。この場合に、分岐系102aを通して酸化処理槽101へ流入する有機ヒ素含有廃水は、系内に流入する処理対象の有機ヒ素含有廃水の一部であるので、測定装置100の酸化処理槽101の槽容量は、図1に示した構成における槽容量よりも少量とすることができ、pH調整槽106におけるpH調整の処理操作が酸化分解反応槽201における酸化処理にほとんど影響を及ぼさない。
【0051】
この構成により、有機ヒ素含有廃水は大部分が流入水系102を通して酸化分解反応槽201へ直接に流入し、有機ヒ素含有廃水の一部が分岐系102aを通して酸化処理槽101へ流入する。
【0052】
酸化処理槽101では、オゾン処理による酸化処理に代えて紫外線ランプ209による紫外線照射による酸化処理を行って、酸化処理前後の紫外線吸光度差ΔAbsを算出し、有機ヒ素初濃度および酸化剤予定消費量を求める。
【0053】
そして、酸化分解反応槽201において先の実施の形態と同様の処理操作を行って目標処理水質である0.001mg/Lの有機ヒ素濃度を達成する。
この場合に、制御装置110で算出する酸化剤予定消費量(オゾン消費量)は、酸化処理槽101を経て酸化分解反応槽201へ流入する有機ヒ素含有廃水を含む有機ヒ素含有廃水の全量に対して必要とするオゾン消費量の総量である。
【0054】
しかし、分岐系102aを通して酸化処理槽101へ流入する有機ヒ素含有廃水は、系内に流入する処理対象の有機ヒ素含有廃水の一部であるので、酸化分解反応槽201において、制御装置110で算出した酸化剤予定消費量(オゾン消費量)の全量に見合うオゾンを供給しても、有機ヒ素含有廃水に含まれている有機ヒ素濃度を目標処理水質とするのに必要なオゾン量を注入できることは勿論のことに、過剰となるオゾン量はわずかであり、先の実施の形態と同様に本発明の課題であるオゾン注入率の抑制は実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態における有機ヒ素含有廃水の処理装置を示すブロック図
【図2】本発明の他の実施の形態における有機ヒ素含有廃水の処理装置を示すブロック図
【図3】本発明の他の実施の形態における有機ヒ素含有廃水の処理装置を示すブロック図
【図4】ジフェニルアルシン酸を回分式処理装置でオゾン処理した場合の254nmの吸光度(E254)の経時変化を示すグラフ図
【図5】ジフェニルアルシン酸、モノフェニルアルソン酸を含む溶液をpH一定でオゾン処理した場合における有機ヒ素初濃度とΔAbsとの相関関係を示すグラフ図
【図6】pHを各値一定としてオゾン処理したときの有機ヒ素初濃度とΔAbsとの相関関係を示すグラフ図
【図7】ジフェニルアルシン酸の200〜400nmの波長の吸光度を示すグラフ図
【図8】目標処理水質である0.001mg/Lを達成するのに必要なオゾン消費量と有機ヒ素初濃度との相関関係を示すグラフ図
【図9】従来の有機性廃水の処理装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0056】
100 測定装置
101 酸化処理槽
102 流入水系
103 酸化処理水系
104、105 吸光度計(もしくは色度計)
106 pH調整槽
107 循環系
108 酸供給系
109 アルカリ供給系
110 制御装置
200 酸化分解装置
201 酸化分解反応槽
202 酸化処理水移送系
203 オゾン発生機
204 プレオゾン供給系
205 オゾン供給系
206 プレオゾン流量調整バルブ
207 オゾン流量調整バルブ
208、209 紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象液中の有機ヒ素濃度を酸化処理を利用して測定するものであって、測定対象液を酸化処理し、この酸化処理の前後において測定対象液の色濃度を測定して酸化処理前後における色濃度差を求め、予め設定する色−特定有機ヒ素濃度相関において前記色濃度差を指標として前記測定対象液中の特定有機ヒ素の濃度を求めることを特徴とする有機ヒ素濃度測定方法。
【請求項2】
測定対象液を酸化処理する酸化処理手段と、前記酸化処理の前において前記測定対象液の色濃度を測定する第1の色濃度測定手段と、前記酸化処理の後において前記測定対象液の色濃度を測定する第2の色濃度測定手段と、第1および第2の色濃度測定手段による測定結果から前記測定対象液の酸化処理前後における色濃度差を算出し、予め設定する色−特定有機ヒ素濃度相関において前記色濃度差を指標として前記測定対象液中の特定有機ヒ素の濃度を求める制御手段とからなることを特徴とする有機ヒ素濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−198987(P2007−198987A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19915(P2006−19915)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】