説明

有機ポリイソシアネート組成物、並びにそれを用いた塗料組成物及び接着剤組成物

【課題】木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対して十分な浸透性を有し、しかも十分に優れた硬化性を有するポリイソシアネート組成物、並びにそれを用いた塗料組成物及び接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】有機ポリイソシアネート(a1)と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(A)、並びに、炭素数4以上の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有する希釈剤(B)を含有することを特徴とする有機ポリイソシアネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリイソシアネート組成物、並びにそれを用いた塗料組成物及び接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート組成物は、軟質フォーム、硬質フォーム、エラストマー、接着剤、塗料、バインダーといった幅広い分野で利用されている。そして、このようなポリイソシアネート組成物については、作業性や硬化性等の観点から様々な検討がなされており、例えば、特開平7−48429号公報(特許文献1)には、(a)脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートのうち少なくとも1種以上を主体成分とするポリイソシアネート、及び(b−1)イソシアネート基と反応しうる活性水素基を少なくとも1個以上有する親水性界面活性剤、及び(b−2)イソシアネート基と反応しうる活性水素基を少なくとも1個以上有する、炭素数が8以上の脂肪族化合物及び/又は原料となる脂肪酸とヒドロキシル基含有化合物の炭素数の和が8以上となる脂肪酸エステルからなる、2.0〜3.5の平均NCO官能基数を有する自己乳化型ポリイソシアネート組成物が開示されている。
【0003】
そして、このようなポリイソシアネート組成物は、環境破壊やシックハウス等の環境上の問題を生じにくいことから、近年、木材塗装業界においても塗料組成物又は接着剤組成物に用いられるようになってきた。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来のポリイソシアネート組成物は、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する浸透性の点で未だ十分なものではなかった。そのため、このようなポリイソシアネート組成物を塗料組成物として用いた場合には、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する密着性が不十分となるという問題があった。また、このようなポリイソシアネート組成物を接着剤組成物として用いた場合には、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する接着性が不十分であるという問題があった。
【特許文献1】特開平7−48429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対して十分な浸透性を有し、しかも十分に優れた硬化性を有するポリイソシアネート組成物、並びにそれを用いた塗料組成物及び接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、イソシアネート基末端プレポリマー(A)としては、有機ポリイソシアネート(a1)と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させて得られるものを用い、希釈剤(B)としては、炭素数4以上の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するものを用いるというように、極めて限定された材料を特定の組み合わせで用いることにより、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する十分な浸透性と、十分に優れた硬化性とを兼ね備えるものが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の有機ポリイソシアネート組成物は、有機ポリイソシアネート(a1)と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(A)、並びに、炭素数4以上の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有する希釈剤(B)を含有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の有機ポリイソシアネート組成物においては、前記親水性ポリオール(a2)が、公称平均官能基数が1〜4であり、且つ数平均分子量が200〜6000であるものであることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の有機ポリイソシアネート組成物においては、前記疎水性モノオール(a31)が、炭素数4〜18の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の有機ポリイソシアネート組成物においては、前記疎水性ジオール(a32)が、炭素数4〜18の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するものであることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の有機ポリイソシアネート組成物においては、前記希釈剤(B)が、炭素数6〜24の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有し、且つモノカルボン酸又は多塩基酸とアルコールとから得られるものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の有機ポリイソシアネート組成物においては、前記希釈剤(B)が、モノカルボン酸とアルコールとから得られるものであることが好ましい。
【0013】
本発明の塗料組成物は、前記有機ポリイソシアネート組成物を含有することを特徴とするものである。また、本発明の接着剤組成物は、前記有機ポリイソシアネート組成物を含有することを特徴とするものである。そして、本発明の接着剤組成物は、例えば、リグノセルロース系材料の熱圧成形体用の接着剤組成物として特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対して十分な浸透性を有し、しかも十分に優れた硬化性を有するポリイソシアネート組成物、並びにそれを用いた塗料組成物及び接着剤組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
先ず、本発明の有機ポリイソシアネート組成物について説明する。すなわち、本発明の有機ポリイソシアネート組成物は、有機ポリイソシアネート(a1)と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(A)、並びに、炭素数4以上の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有する希釈剤(B)を含有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明にかかるイソシアネート基末端プレポリマー(A)は、以下説明するような有機ポリイソシアネート(a1)と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させて得られるものである。
【0018】
本発明にかかる有機ポリイソシアネート(a1)は、特に限定されず、公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。このような有機ポリイソシアネート(a1)としては、例えば、芳香族系、脂環族系、脂肪族系のポリイソシアネート、及びそれらのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体等の変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0019】
このような芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(各種異性体の単品及び混合物を含む。以下、場合により「TDI」という。)、ジフェニルメタンジイソシアネート(各種異性体の単品及び混合物を含む。以下、場合により「MDI」という。)、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(各種異性体の単品及び混合物を含む。また以後、XDIと略称する。)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(各種異性体の単品及び混合物を含む。以下、場合により「TMXDI」という。)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、場合により「P−MDI」という。)等が挙げられる。また、このような脂環族系ポリイソシアネートとしては、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添TDI、水添XDI、水添TMXDI等が挙げられる。さらに、このような脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
これらのポリイソシアネート化合物(a1)の中でも、硬化後の表面硬さが良好であるという観点から、芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリエチレンポリフェニルポリイソシアネートがより好ましい。また、これらのポリイソシアネート化合物(a1)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
また、このようなポリイソシアネート化合物(a1)の含有量としては、本発明の有機ポリイソシアネート組成物の全質量に対して、50〜85質量%の範囲であることが好ましく、60〜80の範囲であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、硬化物としての強度が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、本発明で使用するポリオールの効果が現れにくい傾向にある。
【0022】
本発明にかかる親水性ポリオール(a2)としては、公称平均官能基数が1〜4であり、且つ数平均分子量が200〜6000であるポリオールを用いることが好ましい。公称平均官能基数が前記下限未満では、イソシアネートとの未反応物が発生する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘度が高くなりすぎる傾向にある。また、数平均分子量が前記下限未満では、親水性を付与する効果が少なくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、相溶性が悪化する傾向にある。さらに、このような親水性ポリオール(a2)においては、オキシエチレン基含有量が30質量%であることが好ましく、50質量%以上であることが好ましい。オキシエチレン基含有量が前記下限未満では、親水性が不足する傾向にある。
【0023】
このような親水性ポリオール(a2)としては、1分子中にヒドロキシル基を1〜4個有するヒドロキシル基含有化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて得られる、数平均分子量が200〜6000であり、オキシエチレン基が30質量%以上であるのポリエーテルポリオールが挙げられる。このようなヒドロキシル基含有化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;トリレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アンモニア、アニリン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミン類等のアミン系化合物;エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらに、これらの親水性ポリオール(a2)の中でも、得られる有機ポリイソシアネート組成物の硬化性や相溶性の観点から、エチレングリコール、又は、メタノールを開始剤としてアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるものがより好ましい。
【0024】
また、このような親水性ポリオール(a2)の含有量としては、本発明の有機ポリイソシアネート組成物の全質量に対して、5〜30質量%の範囲であることが好ましく、10〜25質量%の範囲であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、得られる有機ポリイソシアネート組成物の硬化性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる有機ポリイソシアネート組成物の木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する浸透性が不十分となる傾向にある。
【0025】
本発明にかかる疎水性モノオール(a31)としては、炭素数4〜18の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するモノオールを用いることが好ましい。このような疎水性モノオール(a31)としては、例えば、2−エチルヘキサノール、リシノレイン酸メチル、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、リシノレイン酸エチル、リシノレイン酸プロピル、リシノレイン酸ブチル、リシノレイン酸イソブチル、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールが挙げられる。これらの疎水性モノオール(a31)の中でも、相溶性の観点から、2−エチルヘキサノール、リシノレイン酸メチルが好ましい。
【0026】
また、このような疎水性モノオール(a31)の数平均分子量は1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。数平均分子量が前記上限を超えると、プレポリマーの粘度が高くなり、得られる有機ポリイソシアネート組成物の浸透性が悪化する傾向にある。
【0027】
また、本発明にかかる疎水性ジオール(a32)としては、炭素数4〜18の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するジオールを用いることが好ましい。このような疎水性ジオール(a32)としては、例えば、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、オクタデカンジオール、2−ブチル−プロパンジオール、2−ドデシル−プロパンジオール、2−ブチル−ブタンジオール、2−ドデシル−ブタンジオール、2−エチル−ドデカンジオール、カプリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール(少なくとも一方のアルキル基が炭素数4〜18の直鎖状であるもの)が挙げられる。これらの疎水性ジオール(a32)の中でも、基材に対する浸透性の観点から、2,2−ジアルキル−プロパンジオールが好ましく、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールが好ましい。
【0028】
また、このような疎水性ジオール(a32)の数平均分子量は1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。数平均分子量が前記上限を超えると、プレポリマーの粘度が高くなり、得られる有機ポリイソシアネート組成物の浸透性が悪化する傾向にある。
【0029】
さらに、これらの疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)の含有量としては、本発明の有機ポリイソシアネート組成物の全質量に対して、0.1〜25質量%の範囲であることが好ましく、1〜20質量%の範囲であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、得られる有機ポリイソシアネート組成物の木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する浸透性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、硬化物としての強度が不足する傾向にある。
【0030】
本発明にかかるイソシアネート基末端プレポリマー(A)は、以上説明したような有機ポリイソシアネート(a1)と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させて得られるものである。これらの成分を反応させる方法としては特に制限されるものではなく、例えば、(i)これらの成分を全量仕込みプレポリマー化する方法、(ii)有機ポリイソシアネート(a1)の一部と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させてから残りの有機ポリイソシアネート(a1)を混合する方法を採用することができる。また、反応条件としては、例えば、反応温度を50〜100℃の範囲とし、反応時間を0.5〜6時間の範囲とすることが好ましい。
【0031】
本発明にかかる希釈剤(B)は、炭素数4以上の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有する希釈剤である。本発明においては、このような希釈剤(B)を用いることにより、得られる有機ポリイソシアネート組成物の疎水性が高まるため、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する浸透性が向上するものと推察される。また、このような希釈剤(B)は、得られる有機ポリイソシアネート組成物の木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する浸透性の観点から、炭素数6〜24の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するものであることが好ましい。また、このような希釈剤(B)は、相溶性という観点から、モノカルボン酸又は多塩基酸とアルコールとから得られるものであることが好ましく、モノカルボン酸とアルコールとから得られるものであることがより好ましい。
【0032】
このような希釈剤(B)としては、例えば、パルミチン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸メチル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、カプリル酸メチル、ラウリン酸メチル、ミスチリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルシン酸メチル、リグノセリン酸メチル、ステアリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソドデシル等のモノカルボン酸とアルコールとから得られる希釈剤;マレイン酸ジ2−エチルヘキシル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル等の多塩基酸とアルコールとから得られる希釈剤が挙げられる。これらの希釈剤(B)の中でも、得られる有機ポリイソシアネート組成物の浸透性や硬化性を含む諸特性のバランスという観点から、パルミチン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸メチル、マレイン酸ジ2−エチルヘキシルが好ましく、パルミチン酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
【0033】
また、このような希釈剤(B)の数平均分子量は1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。数平均分子量が前記上限を超えると、得られる有機ポリイソシアネート組成物の粘度が高くなり、浸透性が悪化する傾向にある。
【0034】
さらに、このような希釈剤(B)の含有量としては、本発明の有機ポリイソシアネート組成物の全質量に対して、5〜25質量%の範囲であることが好ましく、5〜20の範囲であることがより好ましい。含有量が前記下限未満では、得られる有機ポリイソシアネート組成物の木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対する浸透性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、塗装後に加工をする際にブリードしてきて悪影響を及ぼす傾向にある。
【0035】
本発明の有機ポリイソシアネート組成物は、前記イソシアネート基末端プレポリマー(A)、及び前記希釈剤(B)を含有するものである。このような有機ポリイソシアネート組成物は、前記イソシアネート基末端プレポリマー(A)と前記希釈剤(B)とを混合することにより得ることができる。このようにイソシアネート基末端プレポリマー(A)と希釈剤(B)とを混合する方法としては特に限定されないが、例えば、攪拌機を用いて15〜30℃の温度にて0.1〜2時間混合する方法を採用することができる。また、本発明の有機ポリイソシアネート組成物は、必要に応じて他の物質、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、無機及び有機充填剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒を更に含有してもよい。
【0036】
次に、本発明の塗料組成物及び接着剤組成物について説明する。すなわち、本発明の塗料組成物は、前述した本発明の有機ポリイソシアネート組成物を含有することを特徴とするものである。そして、このような塗料組成物は、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対して十分な浸透性を有し、しかも十分に優れた硬化性を有する本発明の有機ポリイソシアネート組成物を含有しているため、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に用いる塗料組成物として好適に用いることができる。
【0037】
また、本発明の接着剤組成物は、前述した本発明の有機ポリイソシアネート組成物を含有することを特徴とするものである。そして、このような接着剤組成物は、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対して十分な浸透性を有し、しかも十分に優れた硬化性を有する本発明の有機ポリイソシアネート組成物を含有しているため、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に用いる接着剤組成物として好適に用いることができ、リグノセルロース系材料の熱圧成形体用の接着剤組成物として特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。また、実施例及び比較例において用いた原料は以下のとおりである。
【0039】
(使用原料)
MR−200:NCO含有量が31.1%であるポリメリックMDI、日本ポリウレタン工業社製
MDI−1:MDIの含有量が100%で、MDI中の4,4’−MDIの含有量が82%のピュアMDI、日本ポリウレタン工業社製
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業社製
80DE−40U:EO,POランダム重合体、EO含量80%、公称官能基数2、数平均分子量2000、日本油脂社製
MPEG−400:メトキシポリエチレングリコール、数平均分子量400、公称官能基数1、東邦化学社製
2−エチルヘキサノール:協和発酵ケミカル社製
リシノレイン酸メチル:小倉合成化学社製、商品名「K−PON180」
EH−P:パルミチン酸2−エチルヘキシル、花王社製、商品名「エキセパールEH−P」
CL−M:カプリン酸メチル、ライオン社製、商品名「パステルM−10」
2H−08:カプリル酸2−エチルヘキシル、ライオン社製、商品名「パステル2H−08」
BA:酢酸ブチル、ゴードー溶剤社製
DOM:マレイン酸ジ2−エチルヘキシル、大八化学社製
DBM:マレイン酸ジブチル、大八化学社製
DEM:マレイン酸ジメチル、大八化学社製
(実施例1〜10及び比較例1〜5)
<有機ポリイソシアネート組成物の調製>
実施例1においては、以下のようにして有機ポリイソシアネート組成物(A−1)を調製した。すなわち、攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、MDI−1を337.5部仕込み、80℃に加温した。その後、80DE−40Uを180部及び2−エチルヘキサノールを45部仕込み、攪拌しながら80℃にて3時間反応させて、反応生成物を得た。次に、得られた反応生成物に、ジラウリン酸ジオクチルスズ(DOTDL)を50ppm及びMR−200を337.5部仕込み、40℃にて1時間攪拌して、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。
【0040】
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーに、希釈剤として、EH−Pを100部仕込み、室温にて2時間攪拌して、有機ポリイソシアネート組成物(A−1)を得た。
【0041】
また、実施例2〜10においては、有機ポリイソシアネート組成物の組成をそれぞれ表1に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、有機ポリイソシアネート組成物(A−2)〜(A−10)を得た。さらに、比較例1〜5においては、有機ポリイソシアネート組成物の組成をそれぞれ表2に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして、有機ポリイソシアネート組成物(A−11)〜(A−15)を得た。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
<有機ポリイソシアネート組成物の諸特性の評価>
(I)評価方法
以下の方法によって、有機ポリイソシアネート組成物の樹脂粘度、浸透性、曲げ強さ、及び硬化性を評価又は測定した。
【0045】
(i)樹脂粘度の測定
B型回転粘度計を用いて、25℃における有機ポリイソシアネート組成物の樹脂粘度を測定した。
【0046】
(ii)浸透性の評価
パーティクルボード(18Mタイプ市販品、密度:0.7g/cm、含水率:8%、曲げ強さ18N/mm、厚み:15mm)に、実施例及び比較例で得られた有機ポリイソシアネート組成物をフローコーターにて塗布量が100g/mとなるように均一に塗布した。そして、塗布面に有機ポリイソシアネート組成物が完全に浸透するまでの時間(浸透時間)を測定した。なお、有機ポリイソシアネート組成物の浸透性については、浸透時間が1000秒以下の場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。
【0047】
(iii)曲げ強さの評価
パーティクルボード(18Mタイプ市販品、密度:0.7g/cm、含水率:8%、曲げ強さ18N/mm、厚み:15mm)の片面に、実施例及び比較例で得られた有機ポリイソシアネート組成物をフローコーターにて塗布量が100g/mとなるように均一に塗布した。その後、25℃の恒温室にて3日間放置して試料を得た。そして、得られた試料をJIS−A5908に記載の方法に準拠して曲げ試験を行い、試料の塗布面を下にした場合の曲げ強さを測定した。なお、有機ポリイソシアネート組成物の曲げ強さについては、有機ポリイソシアネート組成物が塗布されていない場合のパーティクルボードの曲げ強さ(18N/mm)と比較して3N/mm以上高い場合、すなわち21N/mm以上の場合を「○」と判定し、18N/mm以下の場合を「×」と判定し、それ以外の場合を「△」と判定した。
【0048】
(iv)硬化性の評価
ガラス板に、実施例及び比較例で得られた有機ポリイソシアネート組成物をフローコーターにて塗布量が100g/mとなるように均一に塗布した。そして、塗布された有機ポリイソシアネート組成物が乾燥し、タック(ベタツキ)がなくなるまでの時間(硬化時間)を測定した。なお、有機ポリイソシアネート組成物の硬化性については、硬化時間が24時間以下の場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。
【0049】
(II)評価結果
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた有機ポリイソシアネート組成物を用いて、有機ポリイソシアネート組成物の樹脂粘度、浸透性、曲げ強さ、及び硬化性を評価又は測定した。なお、曲げ強さについては、有機ポリイソシアネート組成物が塗布されていないパーティクルボード(比較例6)の評価も併せて行った。得られた結果を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の有機ポリイソシアネート組成物(実施例1〜10)は、十分に優れた硬化性を有し、しかも、例えばパーティクルボードのような木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材に対し、十分に優れた浸透性を有することが確認された。また、本発明の有機ポリイソシアネート組成物を基材に塗布した場合(実施例1〜10)には、基材に十分な曲げ強さを付与できることが確認された。
【0052】
(実施例11及び比較例7)
<農産廃棄物ボードの作製>
麦藁を粉砕機にて3cm程度の長さに粉砕したチップを1kgブレンダーに投入した後に、攪拌しながら、実施例1で得られた有機ポリイソシアネート組成物(A−1)100gと水30gとを噴霧した。その後、噴霧されたチップをフォーミングした後に、プレス温度180℃、プレス圧力3.5MPa、プレス時間170秒の条件で、加熱圧縮して農産廃棄物ボードを得た(実施例11)。なお、得られた農産廃棄物ボードは、大きさが40cm×40cmであり、厚みが10mmであり、且つ密度が0.7g/cmであるものであった。
【0053】
また、比較例7においては、有機ポリイソシアネート組成物(A−1)に代えてMR−200を用いた以外は実施例11と同様にして、農産廃棄物ボードを得た。
【0054】
<農産廃棄物ボードの曲げ強さの評価>
実施例11及び比較例7で得られた農産廃棄物ボードを試料として、JIS−A5908に記載の方法に準拠して曲げ試験を行い曲げ強さを測定した。その結果、実施例11で得られた農産廃棄物ボードの曲げ強さは22N/mmであり、比較例7で得られた農産廃棄物ボードの曲げ強さは15N/mmであった。得られた結果からも明らかなように、本発明の有機ポリイソシアネート組成物を用いて農産廃棄物ボードを作製した場合(実施例11)には、十分な曲げ強さを有する農産廃棄物ボードが得られることが確認された。したがって、本発明の有機ポリイソシアネート組成物は、リグノセルロース系材料の熱圧成形体用の接着剤組成物として特に好適に用いることができることが確認された。
【0055】
(実施例12及び比較例8、9)
<オープンポア塗装用塗料組成物の調製>
実施例12においては、以下のようにして有機ポリイソシアネート組成物を調製した。すなわち、攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、HDIを769.5部仕込み、90℃に加温した。その後、MPEG−400を90部及び2−エチルヘキサノールを40.5部仕込み、攪拌しながら90℃にて2時間反応させて、反応生成物を得た。次に、得られた反応生成物に、2−エチルへキサン酸ジルコニウムを0.1部仕込み、90℃にて3時間反応させ、さらに、リン酸を0.05部仕込み、50℃にて1時間の停止反応を行った。その後、温度130℃、圧力0.04kPaの条件にて減圧蒸留をして、イソシアネート基末端プレポリマー(A−16)を得た。なお、得られたイソシアネート基末端プレポリマーの収率、NCO含有量及び樹脂粘度、並びにイソシアネート基末端プレポリマー中におけるポリオール又はモノオールの含有量は表4に示すとおりであった。
【0056】
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマー(A−16)900部に対し、希釈剤として、2H−08を100部仕込み、室温にて2時間攪拌して、有機ポリイソシアネート組成物を得た。
【0057】
また、比較例8、9においては、イソシアネート基末端プレポリマー及び有機ポリイソシアネート組成物の組成をそれぞれ表4及び表5に記載の通り変更した以外は実施例12と同様にして、イソシアネート基末端プレポリマー(A−17)及び有機ポリイソシアネート組成物を得た。
【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
<オープンポア塗装用塗料組成物の浸透性及び硬化性の評価>
(I)評価方法
以下の方法によって、有機ポリイソシアネート組成物をオイルフィニッシュとして用いた場合における、浸透性及び硬化性を評価又は測定した。
【0061】
(i)浸透性の評価
ベイツガの単板(長さ:10cm、幅:10cm、厚み1cm)に、実施例及び比較例で得られた有機ポリイソシアネート組成物を刷毛にて塗布量が80g/mとなるように均一に塗布した。そして、5分経過後に塗布面の有機ポリイソシアネート組成物を拭き取り、塗布面に浸透した有機ポリイソシアネート組成物の量(塗料浸透量)を測定した。なお、塗料組成物の浸透性については、塗料浸透量が40g/m以上の場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。
【0062】
(ii)硬化性の評価
ベイツガの単板(長さ:10cm、幅:10cm、厚み1cm)に、実施例及び比較例で得られた有機ポリイソシアネート組成物を刷毛にて塗布量が80g/mとなるように均一に塗布した。そして、5分経過後に塗布面の有機ポリイソシアネート組成物を拭き取り、その後、塗布面にタック(ベタツキ)がなくなるまでの時間(硬化時間)を測定した。なお、塗料組成物の硬化性については、硬化時間が10時間以下の場合を「○」と判定し、それ以外の場合を「×」と判定した。
【0063】
(II)評価結果
実施例12及び比較例8、9で得られた有機ポリイソシアネート組成物を用いて、塗料組成物の浸透性及び硬化性を評価又は測定した。得られた結果を表6に示す。
【0064】
【表6】

【0065】
表6に示した結果から明らかなように、本発明の有機ポリイソシアネート組成物(実施例12)をオイルフィニッシュ用塗料組成物として用いた場合には、十分に優れた硬化性を有し、しかも、十分に優れた浸透性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、木質の基材、特にWax成分や油脂等を多く含有する基材等に対して十分な浸透性を有し、しかも十分に優れた硬化性を有するポリイソシアネート組成物、並びにそれを用いた塗料組成物及び接着剤組成物を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリイソシアネート(a1)と、親水性ポリオール(a2)と、疎水性モノオール(a31)及び/又は疎水性ジオール(a32)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(A)、並びに、炭素数4以上の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有する希釈剤(B)を含有することを特徴とする有機ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記親水性ポリオール(a2)が、公称平均官能基数が1〜4であり、且つ数平均分子量が200〜6000であるものであることを特徴とする請求項1に記載の有機ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記疎水性モノオール(a31)が、炭素数4〜18の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記疎水性ジオール(a32)が、炭素数4〜18の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記希釈剤(B)が、炭素数6〜24の直鎖状アルキル基及び/又は直鎖状アルキレン基を有し、且つモノカルボン酸又は多塩基酸とアルコールとから得られるものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の有機ポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記希釈剤(B)が、モノカルボン酸とアルコールとから得られるものであることを特徴とする請求項5に記載の有機ポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の有機ポリイソシアネート組成物を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の有機ポリイソシアネート組成物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の有機ポリイソシアネート組成物を含有することを特徴とするリグノセルロース系材料の熱圧成形体用の接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−7459(P2009−7459A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169384(P2007−169384)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】