説明

有機ポリマー多孔質体、及びその製造方法

【課題】塩基固定量が多く、比表面積が大きく、また、アルデヒド類やケトン類の求核付加反応に対して、繰り返し耐久性に優れた触媒として機能する有機ポリマー多孔質体を提供する。
【解決手段】アミノ基を2つ以上有し、且つビニル基を2つ以上有する重合性化合物(a)を含む重合性組成物(A)の重合体により形成された多孔質体であって、該重合性化合物(a)が、反応性官能基として少なくともアミノ基を有するデンドリマー、又は反応性官能基として少なくともアミノ基を有するポリエチレンイミンと、該反応性官能基と反応可能な基と、ビニル基とを有する化合物とを反応して得た化合物であり、該反応性官能基が、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基又はカルボキシ基であり、該反応性官能基と反応可能な基が、イソシアナト基、エポキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基、カルボキシ基又はハロゲン化アシル基である有機ポリマー多孔質体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリマー多孔質体に関し、特に、繰り返し使用可能な不溶性固体触媒として機能する有機ポリマー多孔質体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩基触媒によるアルデヒド類やケトン類の求核付加反応は、炭素−炭素結合生成反応として、今日の有機合成において最も重要な触媒反応の1つであると認識されている。アミノ基等の塩基性官能基を固定化した固体触媒を用いた不均一反応系は、反応後触媒を溶液から分離、回収することが容易であるため、繰り返しの使用に有利であり、多くの検討がなされている。
【0003】
一般に、アルデヒド類やケトン類は、プロトン酸、ルイス酸や水素結合性プロトンドナーの作用により、それらに含まれるカルボニル単位の酸素上の電子密度が減じられ、求核付加反応に対する活性が向上することが知られている。実際に、非特許文献1において、アミノ基(塩基)を有するシラン化合物、および、ウレア結合(水素結合性プロトンドナー)を有するシラン化合物を同時に表面に導入したシリカゲルが、アルデヒド類のアルドール反応等の求核付加反応に対して、活性の高い固体触媒として機能することが示されている。
【0004】
ポリ(アミドアミン)デンドリマーやポリ(プロピレンイミン)デンドリマーに代表されるデンドリマー(a1)や、分岐状または直鎖状ポリエチレンイミン(a2)は、アミノ基を含有する有機ポリマーであり、1分子中に複数のアミノ基を高密度に配置することができる有用な分子である。不溶性担体に固定化したデンドリマー(a1)やポリエチレンイミン(a2)は公知であり、例えば、特許文献1および2では、硬化塗膜の物性調節剤や、金属粒子生成のための安定化捕捉剤として応用した例が示されている。また、特許文献3では、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーの形成するヒドロゲルを、金属粒子生成のための担体として用いた例が開示されている。しかしながら、これらを塩基触媒として利用し、アルデヒド類やケトン類の求核付加反応に用いた例は見あたらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-63513号公報
【特許文献2】WO2004/110930号公報
【特許文献3】特開2006-22367号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. Huh et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2005, 44, 1826-1830.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、塩基固定量が多く、且つ、比表面積の大きな有機ポリマー多孔質体に関する。また、本発明の他の課題は、アルデヒド類やケトン類の求核付加反応に対して、繰り返し耐久性に優れた触媒として機能する有機ポリマー多孔質体、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは種々検討した結果、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物を含む重合性組成物の重合体により得られる有機ポリマー多孔質体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を含む重合性組成物(A)の重合体(P)により形成された有機ポリマー多孔質体であって、
該重合性化合物(a)が、
(1)3級アミノ基及び反応性官能基(Q)を有するデンドリマー(a1)、又は反応性官能基(Q)を有するポリエチレンイミン(a2)と、
(2)該反応性官能基(Q)と反応可能な反応性官能基(Q)と、ビニル基とを有する化合物(a3)と、
を反応して得た化合物であることを特徴とする有機ポリマー多孔質体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の有機ポリマー多孔質体を用いたことを特徴とする触媒を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を含む重合性組成物(A)と、該重合性組成物(A)とは相溶するが、該重合性組成物(A)の重合体(P)を溶解又は膨潤させない溶剤(M)とを混合した有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)を重合させ、その後、溶剤(M)を除去する(工程(α−1))ことを特徴とする上記の有機ポリマー多孔質体を製造する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、デンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)と、これらに含まれる反応性官能基と反応可能なビニル基とを有する化合物(a3)とを反応して得た重合性化合物(a)を用いるため、アミノ基固定量の多い有機ポリマー多孔質体を提供できる。また、デンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)は、1分子中に複数のアミノ基を高密度に配置することができるため、誘導体化により、アミノ基の近傍に酸性基や水素結合性プロトンドナー基を導入することも容易であり、アルデヒド類やケトン類の求核付加反応に対し、触媒活性の高い有機ポリマー多孔質体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られた有機ポリマー多孔質体[P−1]の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例7で得られた有機ポリマー多孔質体[P−7]の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための要部について説明する。
[有機ポリマー多孔質体の構造]
本発明の有機ポリマー多孔質体は、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)の重合体(P)により形成された有機ポリマー多孔質体であって、前記重合性化合物(a)が、3級アミノ基及び反応性官能基(Q)を有するデンドリマー(a1)、又は反応性官能基(Q)を有するポリエチレンイミン(a2)と、該反応性官能基(Q)と反応可能な反応性官能基(Q)と、ビニル基とを有する化合物(a3)とを反応して得た化合物であることを特徴とする有機ポリマー多孔質体である。
【0015】
デンドリマーとは樹状分岐状の分子であり、分岐の中心であるコアより規則的に逐次分岐された、単分散の分子量を有する分子の総称である。本発明に用いるデンドリマー(a1)は、3級アミノ基及び反応性官能基(Q)を有し、且つ、前記定義のデンドリマーに含まれる分子であれば、特に限定はない。例えば、G. R. Newkome, C. N. Moorefield, F. Vogtle著「Dendrimers and Dendrons: Concepts, Syntheses, Applications」(2001年、Wiley-VCH発行)、J. M. J. Frechet, D. A. Tomalia著「Dendrimers and Other Dendritic Polymers (Wiley Series in Polymer Science)」(2002年、John Wiley & Sons発行)などの文献に記載のデンドリマーを基本構造とする化合物が用いられる。ただし、式(1)で表されるアミドアミン構造、または、式(2)で表されるプロピレンイミン構造を繰り返し単位とするデンドリマーが、好ましく用いられる。
【0016】
【化1】

(式(1)中、xは1〜10の整数である。)
【0017】
【化2】

(式(2)中、yは1〜10の整数である。)
【0018】
前記デンドリマーは、アルドリッチ社試薬カタログに記載のデンドリマーなど、試薬として市販されているものを用いることができる。また、適宜、目的に応じて、合成して用いることができる。
【0019】
試薬として市販されているものとしては、例えば、式(3)で表されるアルドリッチ社製ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーのエチレンジアミンコア第3世代(製品コード412422)、式(4)で表される第4世代(製品コード412449)、式(5)で表される1,6−ジアミノヘキサンコア第4世代(製品コード596965)、式(6)で表されるシスタミンコア第4世代(製品コード648043)、式(7)で表される水酸基末端を有するエチレンジアミンコア第4世代(製品コード477850)、式(8)で表されるカルボン酸末端を有するエチレンジアミンコア第3.5世代のナトリウム塩(製品コード412430)、式(9)で表されるポリプロピレンイミンデンドリマー第1世代(製品コード460699)等がある。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
式(1)で表されるアミドアミン構造のデンドリマーの合成方法に特に制限はないが、例えば、特開平7−267879号公報、および、特開平11−140180号公報に記載の方法を用いることができる。まず、コアとなる1級アミノ基を有する化合物に対し、そのアミノ基に2当量のメチルアクリレートを作用させ、マイケル付加反応により、窒素分岐部を有し、且つ、メチルエステル部位を有する化合物へと変換する。次に、メチルエステル部位に対し、1級アミノ基を有するジアミン化合物の一方を反応させてアミド結合を生成し、他方の1級アミノ基を末端に残す。その後、これらのマイケル付加反応とアミド結合生成反応を交互に、任意の回数行うことにより、アミドアミン構造のデンドリマーを合成することができる。
【0028】
式(2)で表されるプロピレンイミン構造のデンドリマーの合成方法に特に制限はないが、例えば、WO−A93/14147号公報、および、WO−A95/2008号公報に記載の方法を用いることができる。まず、コアとなる1級アミノ基を有する化合物に対し、アクリロニトリルを作用させてシアノエチル化する。次に、ニトリル基を触媒の存在下、水素またはアンモニアを用いて1級アミノ基に還元する。その後、これらのシアノエチル化反応とニトリル基の還元反応を交互に、任意の回数行うことにより、プロピレンイミン構造のデンドリマーを合成することができる。
【0029】
デンドリマーのコア構造は、特に限定はないが、アンモニア、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ジアミノドデカン、シスタミンの残基を利用したコア構造が好ましい。
【0030】
デンドリマーの末端に結合する反応性官能基(Q)は、末端に結合していることが好ましい。そして、後述するビニル基を有する化合物(a3)に含まれる反応性官能基(Q)と反応して、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を与えることができれば特に制限はないが、1級または2級のアミノ基、水酸基、または、カルボキシ基であることが好ましい。中でも、化学反応性の高さ、および、反応の多様性より、1級または2級のアミノ基が特に好ましい。
【0031】
デンドリマーの分子量は300以上が好ましく、特に、1000〜10万が好ましい。本発明の有機ポリマー多孔質体を触媒として用いる際、前記分子量が300以下であると、デンドリマー内部の空間を利用するのに不利である。
【0032】
本発明の有機ポリマー多孔質体の調製に用いられるポリエチレンイミン(a2)は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。前記ポリエチレンイミン(a2)は、試薬として市販されているものを用いることができる。また、適宜、目的に応じて、市販されているポリエチレンイミン(a2)の末端基を変換して用いることもできるし、また、ポリエチレンイミン(a2)を合成して用いることができる。ポリエチレンイミン(a2)の合成方法に特に制限はないが、例えば、オキサゾリン類のカチオン重合により得たアミド結合を繰り返し単位に有するポリマーを、加水分解して得ることができる。
【0033】
ポリエチレンイミン(a2)の反応性官能基(Q)は、末端に結合していることが好ましい。そして、後述するビニル基を有する化合物(a3)に含まれる反応性官能基(Q)と反応して、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を与えることができれば特に制限はないが、1級または2級のアミノ基、水酸基、または、カルボキシ基であることが好ましい。中でも、化学反応性の高さ、および、反応の多様性より、1級または2級のアミノ基が特に好ましい。
【0034】
ポリエチレンイミン(a2)の重量平均分子量は200以上が好ましく、特に、1000〜10万が好ましい。本発明の有機ポリマー多孔質体を触媒として用いる際、前記重量平均分子量が200以下であると、ポリマー内でポリエチレンイミン(a2)が形成する空間が小さくなり、触媒反応を行うのに不利である。
【0035】
3級アミノ基含有デンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)が有する反応性官能基(Q)と反応可能な反応性官能基(Q)とビニル基とを有する化合物(a3)としては、デンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)と反応して、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を与えることができれば、ラジカル重合性、アニオン重合性、またはカチオン重合性等、任意の化合物であって良い。ただし、この中で、ラジカル重合性を有する化合物が好ましく用いられ、重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、または、スチリル基が好ましく選択される。
【0036】
また、本発明に用いられる前記反応性官能基(Q)とビニル基を有する化合物(a3)としては、イソシアナト基、エポキシ基、1級または2級アミノ基、水酸基、カルボキシ基、またはカルボン酸塩化物単位を有するビニル基とを有する化合物(a3)が挙げられる。中でも、1級または2級のアミノ基を反応性官能基(Q)として有するデンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)と反応させる場合、イソシアナト基とビニル基とを有する化合物(a3)は、反応によりウレア結合を生成することができるため、好ましく用いられる。ウレア結合は、水素結合性プロトンドナーとしての作用により、アルデヒド類またはケトン類の求核付加反応において、補助触媒として反応性を高めることができる。
【0037】
そのようなビニル基を有する化合物(a3)を例示すると、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、4’−ビニルフェニルイソシアネートの如きイソシアナト基を有する化合物、グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基を有する化合物、3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルアニリンの如きアミノ基を有する化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ビニルフェノールの如き水酸基を有する化合物、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリル酸、4−ビニル安息香酸の如きカルボキシ基を有する化合物、及び、(メタ)アクリル酸塩化物、4−ビニル安息香酸塩化物の如き酸塩化物等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0038】
デンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)と、前記ビニル基を有する化合物(a3)との反応は、例えば、反応に用いる化合物両者を溶剤に溶解し、混合、接触させることにより行うことができる。必要に応じて、触媒を用いることができる。無触媒で反応を行う場合は、反応生成物を溶剤から単離せずに、そのまま後続の有機ポリマー多孔質体の調製に用いることができる。触媒を用いて前記反応を行った場合は、反応生成物を精製、単離した後、有機ポリマー多孔質体の調製に用いる。
【0039】
前記反応において、得られる重合性化合物(a)が、アミノ基及びビニル基を有していれば、任意の割合において、デンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)に含まれる反応性官能基(Q)と、ビニル基を有する化合物(a3)に含まれる反応性官能基(Q)を、反応溶液中に仕込むことができる。ただし、有機ポリマー多孔質体をアルデヒド類またはケトン類の求核付加反応において触媒として使用する場合、塩基として作用するアミノ基が少ないと効果が小さくなるため、重合性化合物(a)1分子中にアミノ基を2個以上有することが好ましく、4個以上有することがより好ましく、8個以上有することが特に好ましい。また、重合性化合物(a)1分子中にビニル基を多く有すると、重合性組成物(A)中に添加する共重合成分の量を減じることができ、これにより、有機ポリマー多孔質体中の相対的アミノ基含有量を増加することができる。したがって、重合性化合物(a)1分子中にビニル基を2個以上有することが好ましく、4個以上有することがより好ましく、6個以上有することが特に好ましい。
【0040】
また、前記のように、1級または2級のアミノ基を反応性官能基(Q)として有するデンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)と、イソシアナト基とビニル基を有する化合物(a3)を反応させる場合、反応により補助触媒として作用し得るウレア結合を生成することができる。この場合のデンドリマー(a1)またはポリエチレンイミン(a2)中に含まれる1級または2級のアミノ基と、ビニル基を有する化合物(a3)中に含まれるイソシアナト基の相対比率、1:1/8〜1:1の範囲にあることが好ましく、1:1/4〜1:1/2の範囲にあることが特に好ましい。
【0041】
有機ポリマー多孔質体のアミノ基含有量は、0.010mmol/g〜9.00mmol/gの範囲にあることが好ましく、0.10mmol/g〜9.00mmol/gの範囲にあることが特に好ましい。なお、重合体(P)中のアミノ基としては、1級、2級、3級のアミノ基いずれであっても良い。
【0042】
有機ポリマー多孔質体の形状は、凝集粒子状又は網目状、孔状などの構造であり、その平均孔径が0.001〜10μmの範囲にあるものが望ましい。また、深さ方向に構造が変化する傾斜構造も形成しうる。多くの利用分野において、表面の孔径が大きく、深くなるほど孔径が小さくなる傾斜構造が好ましい。本発明の有機ポリマー多孔質体は、その比表面積が5〜2000m/gの範囲にあることが好ましく、有機ポリマー多孔質体を触媒反応に用いる場合は、50〜2000m/gの範囲にあることがより好ましい。
【0043】
本発明の有機ポリマー多孔質体は、膜状の形態をとることもできる。その場合、有機ポリマー多孔質体の厚さは、1〜100μmの範囲が好ましく、3〜50μmの範囲が特に好ましい。有機ポリマー多孔質体の厚さが1μmよりも薄い場合、触媒として用いる場合、その性能が低下する傾向にあるので好ましくない。なお、有機ポリマー多孔質体の厚さは、走査型電子顕微鏡を用いて、その断面の顕微鏡観察により測定することができる。
【0044】
[有機ポリマー多孔質体の製造方法]
本発明の有機ポリマー多孔質体は、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を含む重合性組成物(A)と、該重合性組成物(A)とは相溶するが、該重合性組成物(A)の重合体(P)を溶解または膨潤させない溶剤(M)とを混合した有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)を重合させ、その後、溶剤(M)を除去する(工程(α−1))ことにより製造することができる。
【0045】
この方法では、重合性組成物(A)の重合により生成した重合体(P)が、溶剤(M)と相溶しなくなり、重合体(P)と溶剤(M)とが相分離を生じ、重合体(P)内部や重合体(P)間に溶剤(M)が取り込まれた状態になる。この溶剤(M)を除去することにより、溶剤(M)が占めていた領域が孔となり有機ポリマー多孔質体を形成できる。
【0046】
重合性組成物(A)は、アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)のみを以て構成するか、または、該重合性化合物(a)とともに、該重合性化合物(a)と共重合体を形成しうる他の重合性化合物を含有して構成する。重合性化合物(a)は単独で、または、2種類以上を混合して用いることができる。
重合性化合物(a)と共重合体を形成しうる他の重合性化合物としては、重合開始剤の存在下または非存在下で重合するものであり、ビニル基を有するものが好ましく、なかでも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やスチリル化合物が好ましい。また、硬化後の強度も高くできることから、重合して架橋重合体を形成する化合物であることが好ましい。そのために、1分子中に2つ以上のビニル基を有する化合物であることが特に好ましい。
【0047】
前記(メタ)アクリル系化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ヒドロキシジピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ビス(アクロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、N−メチレンビスアクリルアミドなどの2官能モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートなどの3官能モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能モノマーが挙げられる。
【0048】
分子鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合性のオリゴマーとしては、重量平均分子量が500〜50,000のものが挙げられ、例えば、エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0049】
スチリル化合物としては、1,3−ジビニルベンゼンや1,3−ジプロペニルベンゼン等が挙げられる。
【0050】
これら重合性化合物は、単独で、又は、2種類以上を混合して用いることもできる。また、粘度の調節を行う目的で、ビニル基を1つ有する重合性化合物、特に、ビニル基を1つ有する(メタ)アクリル化合物やスチリル化合物などと混合して使用してもよい。
【0051】
ビニル基を1つ有する(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸アクリレート、w−カルボキシカプロラクトンモノアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロジェンフタレート、フッ素置換アルキル(メタ)アクリレート、塩素置換アルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸ソーダエトキシ(メタ)アクリレート、スルホン酸−2−メチルプロパン−2−アクリルアミド、燐酸エステル基含有(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルクロライド、(メタ)アクリルアルデヒド、スルホン酸エステル基含有(メタ)アクリレート、シラノ基含有(メタ)アクリレート、((ジ)アルキル)アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級((ジ)アルキル)アンモニウム基含有(メタ)アクリレート、(N−アルキル)アクリルアミド、(N、N−ジアルキル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0052】
ビニル基を1つ有するスチリル化合物としては、スチレン、プロペニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、および9−ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0053】
溶剤(M)としては、重合性組成物(A)とは相溶するが、重合性組成物(A)の重合体(P)を溶解または膨潤させないものを使用する。溶剤(M)と重合性組成物(A)との相溶の程度は、均一な有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)が得られればよい。溶剤(M)は、単一溶剤であっても混合溶剤であってもよく、混合溶剤の場合には、その構成成分単独では重合性組成物(A)と相溶しないものや、重合性組成物(A)の重合体(P)を溶解させるものであってもよい。このような溶剤(M)としては、例えば、酢酸エチル、デカン酸メチル、ラウリル酸メチル、アジピン酸ジイソブチルなどの脂肪酸のアルキルエステル類、アセトン、2−ブタノン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1,1−ジメチル−1−エタノール、ヘキサノール、デカノールなどのアルコール類、および、水などの溶剤が挙げられる。このような溶剤の中でも、単一溶剤として用いる場合は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤や、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1,1−ジメチル−1−エタノールなどの高極性のアルコール類が、前記重合性化合物(a)を含む重合性組成物(A)と相溶しやすいため、好ましく用いられる。また、得られる有機ポリマー多孔質体の比表面積を制御するために、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどの高極性溶剤と、それらと相溶するテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の中極性溶剤との混合溶剤も好ましく用いられる。
【0054】
有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)を重合させた後、溶剤(M)を除去する方法に特に制限はないが、溶剤(M)が揮発性の高い溶剤の場合は、常圧又は減圧により乾燥させることにより行うことができる。溶剤(M)が揮発性の低い溶剤の場合は、組成物(X)の重合により得られた重合物を揮発性の高い溶剤に接触させ、溶剤交換を行った後、常圧又は減圧により乾燥させることにより行うことができる。また、溶剤(M)を除去する際に、重合性組成物(A)中に含まれる重合性化合物(a)とその他の重合性化合物のうち、未重合で残存した成分を除去する目的で、該化合物が溶解する溶剤を用いて、洗浄、抽出を行うことも有効である。抽出操作には、ソックスレー抽出器を用いて行うこともできる。
【0055】
有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)に含まれる重合性組成物(A)の含有量によって、得られる有機ポリマー多孔質体の孔径や強度が変化する。重合性組成物(A)の含有量が多いほど有機ポリマー多孔質体の強度が向上するが、孔径は小さくなる傾向にある。重合性組成物(A)の好ましい含有量としては15〜50質量%の範囲、更に好ましくは25〜40質量%の範囲が挙げられる。重合性組成物(A)の含有量が15質量%以下になると、有機ポリマー多孔質体の強度が低くなり、重合性組成物(A)の含有量が50質量%以上になると、多孔質体の孔径の調整が難しくなる。
【0056】
有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)には、重合速度や重合度、あるいは孔径分布などを調整するために、重合開始剤、重合禁止剤、重合遅延剤、あるいは、可溶性高分子などの各種添加剤を添加してもよい。
【0057】
重合開始剤としては、重合性組成物(A)を重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などが使用できる。例えば、2,2’−アゾビスブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドキシム)、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの過酸化物系開始剤が挙げられる。また、活性エネルギー線の作用により機能する重合開始剤として、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類、ベンゾフェノン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのベンジルケタール類、N−アジドスルフォニルフェニルマレイミドなどのアジドが挙げられる。また、マレイミド系化合物などの重合性光重合開始剤を使用することもできる。また、テトラエチルチイラムジスルフィドなどのジスルフィド系開始剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどのニトロキシド開始剤、4,4’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビピリジン銅錯体−トリクロロ酢酸メチル複合体、ベンジルジエチルジチオカルバメートなどのリビングラジカル重合開始剤を用いることもできる。
【0058】
重合遅延剤や重合禁止剤は、主に、活性エネルギー線による重合の際に用いることができ、α−メチルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどの重合速度の低いビニル系モノマーやtert−ブチルフェノールなどのヒンダントフェノール類などが挙げられる。
【0059】
可溶性高分子としては、有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)として均一の組成物を与え、かつ、前記の溶剤(M)単独に可溶であれば、制限なく利用することができる。溶剤(M)に可溶であることにより、組成物(X)の重合により得られた重合物から溶剤(M)を除去する際に、容易に重合物から除去できる。
【0060】
重合反応は、熱重合法、及び、紫外線や電子線などの照射により行う活性エネルギー線重合法など公知慣用の方法でよい。たとえば、前記した熱重合開始剤とともに40〜100℃、好ましくは60〜80℃で10分〜72時間、好ましくは6〜24時間反応させることにより、有機ポリマー多孔質体を製造することができる。また、各種水銀ランプやメタルハライドランプを用い、250〜3000Wの出力において、室温で、1秒〜2時間、好ましくは10秒〜30分反応させることにより、有機ポリマー多孔質体を製造することができる。
【0061】
また、膜状の形態を有する有機ポリマー多孔質体の場合、塗工性、平滑性などを向上させる目的で、公知慣用の界面活性剤、増粘剤、改質剤、触媒などを添加することもできる。
【0062】
膜状の形態を有する有機ポリマー多孔質体を製造する際に使用できる支持体は、有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)によって実質的に侵されず、例えば、溶解、分解などが生じず、かつ、有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)を実質的に侵さないものであればよい。そのような支持体としては、例えば、樹脂、ガラスや石英などの結晶、セラミック、シリコンなどの半導体、金属などが挙げられるが、これらの中でも、透明性が高いこと、および、安価であることより、樹脂、または、ガラスが好ましい。支持体に使用する樹脂は、単独重合体であっても、共重合体であっても良く、熱可塑性重合体であっても、熱硬化性重合体であっても良い。また、支持体は、ポリマーブレンドやポリマーアロイで構成されていても良いし、積層体その他の複合体であっても良い。更に、支持体は、改質剤、着色剤、充填材、強化材などの添加物を含有しても良い。
【0063】
支持体の形状は特に限定されず、使用目的に応じて任意の形状のものを使用できる。例えば、シート状(フィルム状、リボン状、ベルト状を含む)、板状、ロール状、球状などの形状が挙げられるが、有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)をその上に塗布し易いという観点から、塗工面が平面状または2次曲面状の形状であることが好ましい。
【0064】
支持体はまた、樹脂の場合もそれ以外の素材の場合も、表面処理されていて良い。表面処理は、有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)による支持体の溶解防止を目的としたもの、有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)の濡れ性向上及び有機ポリマー多孔質体の接着性向上を目的としたものなどが挙げられる。
【0065】
支持体の表面処理方法は任意であり、例えば、任意の重合性組成物(A)を支持体の表面に塗布し、重合反応により硬化させる処理、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理、スルホン化処理、フッ素化処理、シランカップリング剤等によるプライマー処理、表面グラフト重合、界面活性剤や離型剤等の塗布、ラビングやサンドブラストなどの物理的処理などが挙げられる。また、有機ポリマー多孔質体の素材が有する反応性官能基や前記の表面処理方法によって導入された反応性官能基と反応して表面に固定される化合物を反応させる方法が挙げられる。この中で、支持体としてガラス、または、石英を用いた場合、例えば、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートやトリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等のシランカップリング剤によって処理する方法は、これらのシランカップリング剤の有する重合基が有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)と共重合できることより、有機ポリマー多孔質体の支持体上への接着性を向上させる上で有用である。
【0066】
有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)の支持体への塗布方法は公知慣用の方法であればいずれの方法でも良く、例えば、コーターや噴霧等による塗布方法が好ましく挙げられる。
【0067】
ここで示した有機ポリマー多孔質体の製造方法によると、直径約0.1μm〜1μmの粒子状の重合体が互いに凝集し、この粒子間の隙間が細孔となる凝集粒子構造のポリマー多孔質体や、重合体が網目状に凝集した三次元網目構造のポリマー多孔質体を形成することができる。
【0068】
以上、有機ポリマー多孔質体の製造に関して説明したが、本発明で用いることができる有機ポリマー多孔質体の製造方法は前記の例示に限定されるものではない。
【0069】
[有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応]
本発明の有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応について説明する。
本発明の有機ポリマー多孔質体は、アミノ基を2つ以上有し、且つ、ビニル基を2つ以上有する重合性化合物(a)の重合体(P)を含む有機ポリマー多孔質体であるため、アミノ基の関与する触媒反応に対して用いることができる。中でも、アミノ基を塩基として利用する触媒反応に用いることが好ましく、特に、塩基触媒としてアルデヒド類またはケトン類の求核付加反応において使用することが好ましい。好ましい反応の例として、アルドール(Aldol)反応、クナベナゲル(Knoevenagel)反応、ヘンリー(Henry)(ニトロアルドール(Nitroaldol))反応、シアノシリル化反応等が挙げられる。
【0070】
有機ポリマー多孔質体を触媒反応に用いる際は、反応原料を溶剤に溶解、または分散させ、有機ポリマー多孔質体と不均一系で接触させるだけでよい。必要に応じて、補助触媒や添加剤を共存させることができる。反応に用いる溶剤は、反応の種類に応じて、適宜、水、有機溶剤、およびそれらの混合溶剤を選択することができる。
【0071】
本発明の有機ポリマー多孔質体は、繰り返しの使用安定性に優れた触媒を提供することができる。ここで言う使用安定性に優れた触媒とは、80℃、24時間での触媒試験において、触媒能力に変化なく、5回以上繰り返し使用可能であることを指し、好ましくは、同条件において、10回以上繰り返し使用可能であることを指す。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
〔重合性化合物(a)の合成〕
反応性官能基として1級アミノ基を有する第4世代(G4)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー(10質量%メタノール溶液、アルドリッチ社製、分子量:14214.4、製品コード:412449)570mg(4.0μmol、末端1級アミン当量:2.60x10μmol)に、2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工製、製品名:カレンズMOI)40mg (2.56x10μmol)を加え、マグネチックスターラーを用い、室温で1日撹拌した。その後、溶媒を留去し、目的の重合性化合物(a)[a−1]を得た。重合性化合物[a−1]は、分子中に62個の3級アミノ基、及び、64個のビニル基を有する。
H−NMR(300MHz、CDOD):δ/ppm 1.92,2.35−2.37,2.57−2.59,2.78−2.80,3.25−3.35,3.42,4.16,5.63(ビニル基),6.11(ビニル基).
【0074】
〔有機ポリマー多孔質体の調製〕
重合性化合物(a)[a−1]97mg、エチレングリコールジメタクリレート(共栄社化学製、製品名:ライトエステルM)(以下、「EGDMA」と略す。)870mg、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と略す。)13mg、ジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、「ジグライム」と略す。)4.0mL、およびメタノール1.0mLを混合し、有機ポリマー多孔質体形成用組成物[X−1]を調製した。
次に、組成物[X−1]を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、有機ポリマー多孔質体[P−1]を調製した。
収量:950mg、収率:97%.
アミノ基含有量:0.25mmol/g(3級アミノ基).
比表面積(BET簡易法):450m/g.
測定装置:フローソープII型流動式比表面積自動測定装置(島津製作所)
試料量:約0.01〜0.03g
前処理:キャリアガス(N/He混合ガス)中で100℃、30分間加熱
形態観察:走査型電子顕微鏡写真を図1に示す.
装置:リアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800(キーエンス)
【0075】
〔有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応試験〕
マロノニトリル0.72mmol、ベンズアルデヒド0.60mmol、及び、トルエン2mLを均一に混合して反応溶液(Y1)を調製した。これに、前記の有機ポリマー多孔質体[P−1]20mg(アミン当量:5.06μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、98%以上の反応率で、目的物のベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からろ別した有機ポリマー多孔質体[P−1]を、エタノール、およびトルエンで洗浄し、乾燥した後、前記と同様の触媒反応試験を5回繰り返し行った場合も、反応率が低下することなく、生成物が得られることが確認された。
【0076】
(実施例2)
〔重合性化合物(a)の合成〕
実施例1と同様にして、重合性化合物(a)[a−1]を得た。
〔有機ポリマー多孔質体の調製〕
重合性化合物(a)[a−1]194mg、AIBN6mg、ジグライム1.6mL、およびメタノール1.1mLを混合し、有機ポリマー多孔質体形成用組成物[X−2]を調製した。
【0077】
次に、組成物[X−2]を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、有機ポリマー多孔質体[P−2]を調製した。
収量:190mg、収率:95%.
アミノ基含有量:2.5mmol/g(3級アミノ基).
比表面積(BET簡易法):224m/g.
測定装置、試料量、および、前処理方法は、実施例1に記載の通り。
【0078】
〔有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応試験〕
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、前記の有機ポリマー多孔質体[P−2]15mg(アミン当量:37.4μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、98%以上の反応率で、目的物のベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からろ別した有機ポリマー多孔質体[P−2]を、エタノール、およびトルエンで洗浄し、乾燥した後、前記と同様の触媒反応試験を5回繰り返し行った場合も、反応率が低下することなく、生成物が得られることが確認された。
【0079】
(実施例3)
〔重合性化合物(a)の合成〕
2−イソシアナトエチルメタクリレートを40mg (2.56x10μmol)用いる代わりに、10mg (64.4μmol)用いる以外は、実施例1と同様にして、重合性化合物(a)[a−2]を得た。重合性化合物[a−2]は、分子中に62個の3級アミノ基、48個の1級アミノ基、及び、16個のビニル基を有する。
H−NMR(300MHz、CDOD):δ/ppm 1.91−1.95,2.35−2.37,2.57−2.59,2.78−2.80,3.25−3.35,3.42,4.16,5.62−5.66(ビニル基),6.01−6.14(ビニル基).
【0080】
〔有機ポリマー多孔質体の調製〕
重合性化合物(a)[a−2]134mg、EGDMA1.21g、AIBN18mg、ジグライム5.5mL、およびメタノール1.3mLを混合し、有機ポリマー多孔質体形成用組成物[X−3]を調製した。
【0081】
次に、組成物[X−3]を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、有機ポリマー多孔質体[P−3]を調製した。
収量:1.30g、収率:96%.
アミノ基含有量:0.37mmol/g(3級アミノ基)、0.28mmol/g(1級アミノ基).
比表面積(BET簡易法):339m/g.
測定装置、試料量、および、前処理方法は、実施例1に記載の通り。
【0082】
〔有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応試験〕
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、前記の有機ポリマー多孔質体[P−3]20mg(アミン当量:5.66μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、98%以上の反応率で、目的物のベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からろ別した有機ポリマー多孔質体[P−3]を、エタノール、およびトルエンで洗浄し、乾燥した後、前記と同様の触媒反応試験を5回繰り返し行った場合も、反応率が低下することなく、生成物が得られることが確認された。
【0083】
(実施例4)
〔重合性化合物(a)の合成〕
2−イソシアナトエチルメタクリレートを、40mg (2.56x10μmol)用いる代わりに、5.0mg (32.2μmol)用いる以外は、実施例1と同様にして、重合性化合物(a)[a−3]を得た。重合性化合物[a−3]は、分子中に62個の3級アミノ基、56個の1級アミノ基、及び、8個のビニル基を有する。
H−NMR(300MHz、CDOD):δ/ppm 1.91−1.95,2.35−2.39,2.58−2.60,2.70−2.81,3.23−3.35,3.42,3.55−3.60,4.16,5.62−5.65(ビニル基),6.07−6.11(ビニル基).
【0084】
〔有機ポリマー多孔質体の調製〕
重合性化合物(a)[a−3]124mg、EGDMA1.12g、AIBN17mg、ジグライム5.1mL、およびメタノール1.3mLを混合し、有機ポリマー多孔質体形成用組成物[X−4]を調製した。
【0085】
次に、組成物[X−4]を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、有機ポリマー多孔質体[P−4]を調製した。
収量:1.21g、収率:96%.
アミノ基含有量:0.39mmol/g(3級アミノ基)、0.36mmol/g(1級アミノ基).
比表面積(BET簡易法):377m/g.
測定装置、試料量、および、前処理方法は、実施例1に記載の通り。
【0086】
〔有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応試験〕
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、前記の有機ポリマー多孔質体[P−4]20mg(アミン当量:7.12μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、98%以上の反応率で、目的物のベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からろ別した有機ポリマー多孔質体[P−4]を、エタノール、およびトルエンで洗浄し、乾燥した後、前記と同様の触媒反応試験を5回繰り返し行った場合も、反応率が低下することなく、生成物が得られることが確認された。
【0087】
(実施例5)
〔重合性化合物(a)の合成〕
反応性官能基として水酸基を有する第4世代(G4)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー((10質量%メタノール溶液、アルドリッチ社製、分子量:14277.4、製品コード:477850)570mg(4.0μmol、末端1級アミン当量:2.60x10μmol)に、2−イソシアナトエチルメタクリレート40mg (2.56x10μmol)を加え、マグネチックスターラーを用い、室温で1日撹拌した。その後、溶媒を留去し、目的の重合性化合物(a)[a−4]を得た。重合性化合物[a−4]は、分子中に62個の3級アミノ基、及び、64個のビニル基を有する。
H−NMR(300MHz、CDOD):δ/ppm 1.93,2.36−2.40,2.59−2.61,2.77−2.81,3.28−3.41,3.62,4.17,5.62(ビニル基),6.11(ビニル基).
【0088】
〔有機ポリマー多孔質体の調製〕
重合性化合物(a)[a−4]97mg、EGDMA870mg、AIBN3mg、ジグライム0.8mL、およびメタノール0.6mLを混合し、有機ポリマー多孔質体形成用組成物[X−5]を調製した。
【0089】
次に、組成物[X−5]を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、有機ポリマー多孔質体[P−5]を調製した。
収量:950mg、収率:98%.
アミノ基含有量:0.26mmol/g(3級アミノ基).
比表面積(BET簡易法):423m/g.
測定装置、試料量、および、前処理方法は、実施例1に記載の通り。
【0090】
〔有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応試験〕
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、前記の有機ポリマー多孔質体[P−5]47mg(アミン当量:12.1mmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、98%以上の反応率で、目的物のベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からろ別した有機ポリマー多孔質体[P−5]を、エタノール、およびトルエンで洗浄し、乾燥した後、前記と同様の触媒反応試験を5回繰り返し行った場合も、反応率が低下することなく、生成物が得られることが確認された。
【0091】
(実施例6)
〔重合性化合物(a)の合成〕
2−イソシアナトエチルメタクリレートを40mg (2.56x10μmol)用いる代わりに、グリシジルメタクリレートを36mg (2.56x10μmol)用いる以外は、実施例1と同様にして、重合性化合物(a)[a−5]を得た。重合性化合物[a−5]は、分子中に62個の3級アミノ基、及び、64個のビニル基を有する。
H−NMR(300MHz、CDOD):δ/ppm 1.92,2.35−2.37,2.57−2.59,2.78−2.80,3.25−3.35,3.42,4.16,5.63(ビニル基),6.11(ビニル基).
【0092】
〔有機ポリマー多孔質体の調製〕
重合性化合物(a)[a−5]93mg、EGDMA870mg、AIBN12mg、ジグライム4.0mL、およびメタノール1.0mLを混合し、有機ポリマー多孔質体形成用組成物[X−6]を調製した。
【0093】
次に、組成物[X−6]を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、有機ポリマー多孔質体[P−6]を調製した。
収量:926mg、収率:95%.
アミノ基含有量:0.25mmol/g(3級アミノ基)、0.26mmol/g(2級アミノ基).
比表面積(BET簡易法):466m/g.
測定装置、試料量、および、前処理方法は、実施例1に記載の通り。
【0094】
〔有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応試験〕
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、前記の有機ポリマー多孔質体[P−6]20mg(アミン当量:10.3μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、98%以上の反応率で、目的物のベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
【0095】
反応溶液からろ別した有機ポリマー多孔質体[P−6]を、エタノール、およびトルエンで洗浄し、乾燥した後、前記と同様の触媒反応試験を5回繰り返し行った場合も、反応率が低下することなく、生成物が得られることが確認された。
【0096】
(実施例7)
〔重合性化合物(a)の合成〕
ポリエチレンイミン(a2)(平均分子量10,000、和光純薬製、製品コード:164−17821)0.20g(1級アミン当量:1.16mmol、2級アミン当量:2.33mmol)に、2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工製、製品名:カレンズMOI)0.54g (3.49mmol)を加え、マグネチックスターラーを用い、室温で1日撹拌した。その後、溶媒を留去し、目的の重合性化合物(a)[a−6]を得た。重合性化合物[a−6]は、平均的に、分子中に58個の3級アミノ基、及び、174個のビニル基を有する。
H−NMR(300MHz、CDOD):δ/ppm 1.92,2.63,3.22−3.42,4.15−4.22,5.62(ビニル基),6.11(ビニル基).
【0097】
〔有機ポリマー多孔質体の調製〕
重合性化合物(a)[a−6]150mg、EGDMA1.24g、AIBN16mg、ジグライム5.5mL、およびメタノール1.5mLを混合し、有機ポリマー多孔質体形成用組成物[X−7]を調製した。
【0098】
次に、組成物[X−7]を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、有機ポリマー多孔質体[P−7]を調製した。
【0099】
収量:1.36g、収率:97%.
アミノ基含有量:0.17mmol/g(3級アミノ基).
比表面積(BET簡易法):401m/g.
測定装置、試料量、および、前処理方法は、実施例1に記載の通り。
形態観察:走査型電子顕微鏡写真を図2に示す.
装置は、実施例1に記載の通り。
【0100】
〔有機ポリマー多孔質体を用いた触媒反応試験〕
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、前記の有機ポリマー多孔質体[P−7]30mg(アミン当量:5.02μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、98%以上の反応率で、目的物のベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からろ別した有機ポリマー多孔質体[P−7]を、エタノール、およびトルエンで洗浄し、乾燥した後、前記と同様の触媒反応試験を5回繰り返し行った場合も、反応率が低下することなく、生成物が得られることが確認された。
【0101】
(比較例1)
特許文献(特開2000−63513号公報)に記載の方法に従い、反応性官能基として1級アミノ基を有するポリプロピレンイミンデンドリマー(アルドリッチ社製、分子量:316、製品コード:460699)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、及び、2−イソシアナトエチルメタクリレート(原料組成:1/8/8(モル比))からなる重合性化合物を合成した(粘度:4.4Pa・s)。この重合性化合物は、分子中に2個の3級アミノ基、及び、4個のビニル基を有する。これを、AIBN(前記重合性化合物中のビニル基に対して、0.01モル当量)と混合した後、重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施すことにより、無色透明の非多孔質性の比較ポリマー[CP−1]を調製した(アミノ基含有量:2.6mmol/g)。
【0102】
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、ポリマー[CP−1]10mg(アミン当量:25.7μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、32%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からポリマーをろ過後、トルエン、およびジエチルエーテルで洗浄した後、前記と同様の触媒反応試験を行った場合、29%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
以上の結果より、実施例1〜7に示した方法により得られた有機ポリマー多孔質体は、比較例1に示した方法により得られた非多孔質ポリマー[CP−1]と比べ、ベンズアルデヒドの求核付加反応に対して、優れた触媒であることは明らかである。
【0103】
(比較例2)
反応性官能基として1級アミノ基を有するポリプロピレンイミンデンドリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、及び、2−イソシアナトエチルメタクリレート(原料組成:1/8/8(モル比))からなる重合性化合物を用いる代わりに、前記ポリプロピレンイミンデンドリマー、及び、PEG#200ジメタクリレート(共栄社化学製、製品名:ライトエステル4EG)(原料組成:1/6(モル比))からなる重合性化合物を用いる以外は比較例1と同様にして、無色透明の非多孔質性の比較ポリマー[CP−2]を調製した(アミノ基含有量:2.8mmol/g)。
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、ポリマー[CP−2]10mg(アミン当量:27.9μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、24%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からポリマーをろ過後、トルエン、およびジエチルエーテルで洗浄した後、前記と同様の触媒反応試験を行った場合、19%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
以上の結果より、実施例1〜7に示した方法により得られた有機ポリマー多孔質体は、比較例2に示した方法により得られた非多孔質ポリマー[CP−2]と比べ、ベンズアルデヒドの求核付加反応に対して、優れた触媒であることは明らかである。
【0104】
(比較例3)
反応性官能基として1級アミノ基を有する第4世代(G4)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー(10質量%メタノール溶液、アルドリッチ社製、分子量:14214.4、製品コード:412449)570mgから、メタノールを留去して、固体状のG4(PAMAM)デンドリマー57mgを得た。
重合性化合物[a−1]97mgの代わりに、前記のG4(PAMAM)デンドリマー57mgを用いる以外は実施例1と同様にして、多孔質性の比較ポリマー[CP−3]を調製した。G4(PAMAM)デンドリマーはビニル基を有していないため、ソックスレー抽出により大部分抽出され、仕込み量の約20%のG4(PAMAM)デンドリマーのみがCP−3中に残ったことが確認された(収量:850mg、アミノ基含有量:0.05mmol/g(3級アミノ基))。
【0105】
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、ポリマー[CP−3]100mg(アミン当量:5.02μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、33%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からポリマーをろ過後、トルエン、およびジエチルエーテルで洗浄した後、前記と同様の触媒反応試験を行った場合、30%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
以上の結果より、実施例1〜7に示した方法により得られた有機ポリマー多孔質体は、比較例3に示した方法により得られた多孔質ポリマー[CP−3]と比べ、ベンズアルデヒドの求核付加反応に対して、優れた触媒であることは明らかである。
【0106】
(比較例4)
ジメチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学製、製品名:ライトエステルDM)40mg、EGDMA920mg、AIBN12mg、ジグライム4.0mL、およびメタノール1.0mLを混合し、重合用組成物を調製した。次に、この組成物を重合チューブ中に仕込み、窒素ガスを30分間吹き込んだ後、密栓し、70℃で12時間加熱処理を施した。形成された白色固体を重合チューブより取り出した後、ソックスレー抽出器(溶媒:テトラヒドロフラン、およびメタノール)を用いて、未重合成分と溶媒を除去することにより、多孔質性の比較ポリマー[CP−4]を調製した(アミノ基含有量:0.26mmol/g(3級アミノ基))。
【0107】
実施例1と同様にして、反応溶液(Y1)に、ポリマー[CP−4]20mg(アミン当量:5.04μmol)を加え、室温で3時間、反応させた。ガスクロマトグラフィによる分析の結果、55%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
反応溶液からポリマーをろ過後、トルエン、およびジエチルエーテルで洗浄した後、前記と同様の触媒反応試験を行った場合、36%の反応率で、ベンザルマロノニトリルが生成したことが確認された。
以上の結果より、実施例1〜7に示した方法により得られた有機ポリマー多孔質体は、比較例4に示した方法により得られた多孔質ポリマー[CP−4]と比べ、ベンズアルデヒドの求核付加反応に対して、優れた触媒であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を含む重合性組成物(A)の重合体(P)により形成された有機ポリマー多孔質体であって、
該重合性化合物(a)が、
(1)3級アミノ基及び反応性官能基(Q)を有するデンドリマー(a1)、又は反応性官能基(Q)を有するポリエチレンイミン(a2)と、
(2)該反応性官能基(Q)と反応可能な反応性官能基(Q)と、ビニル基とを有する化合物(a3)と、
を反応して得た化合物であることを特徴とする有機ポリマー多孔質体。
【請求項2】
前記反応性官能基(Q)が、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基又はカルボキシ基であり、前記反応性官能基(Q)が、イソシアナト基、エポキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基、カルボキシ基又はハロゲン化アシル基である請求項1記載の有機ポリマー多孔質体。
【請求項3】
前記デンドリマー(a1)が、
式(1)
【化1】

(式(1)中、xは1〜10の整数である。)
又は式(2)
【化2】

(式(2)中、yは1〜10の整数である。)
で表される構造を繰り返し単位とする請求項1又は2記載の有機ポリマー多孔質体。
【請求項4】
前記重合体(P)中のアミノ基含有量が0.010mmol/g〜9.00mmol/gの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載の有機ポリマー多孔質体。
【請求項5】
比表面積が5〜2000m/gの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の有機ポリマー多孔質体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の有機ポリマー多孔質体を用いたことを特徴とする触媒。
【請求項7】
アルデヒド類またはケトン類の求核付加反応において使用する請求項6記載の触媒。
【請求項8】
アミノ基及びビニル基を有する重合性化合物(a)を含む重合性組成物(A)と、該重合性組成物(A)とは相溶するが、該重合性組成物(A)の重合体(P)を溶解又は膨潤させない溶剤(M)とを混合した有機ポリマー多孔質体形成用組成物(X)を重合させ、その後、溶剤(M)を除去する(工程(α−1))ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機ポリマー多孔質体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70751(P2010−70751A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187706(P2009−187706)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【特許番号】特許第4401433号(P4401433)
【特許公報発行日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】