説明

有機ポリマー粒子およびその製造方法、プローブ結合用有機ポリマー粒子およびその製造方法、ならびにプローブ結合粒子およびその製造方法

【課題】分散性に優れ、タンパクや核酸等の非特異吸着が少ない有機ポリマー粒子およびその製造方法、プローブ結合用有機ポリマー粒子およびその製造方法、ならびにプローブ結合粒子およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】有機ポリマー粒子は、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性に優れ、タンパクや核酸等の非特異吸着が少ない有機ポリマー粒子およびその製造方法に関し、特に、生化学・医薬品分野で特出する高感度と低ノイズを発現する有機ポリマー粒子およびその製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、プローブ結合用有機ポリマー粒子およびその製造方法、ならびにプローブ結合粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機ポリマー粒子および磁性粒子は、例えば、感染症・癌マーカー・ホルモン等の検査対象物質の検出を行なうため、抗原抗体反応を利用した診断薬の反応固相として用いられている。このような診断薬においては、抗体または抗原等の検査用プローブ(一次プローブ)が粒子上に固定化される。サンプル中の検査対象物質は一次プローブを介して粒子上に捕捉された後、第二の検査プローブと反応する。第二の検査プローブ(二次プローブ)は蛍光物質や酵素で標識されており、蛍光や酵素反応によって検出が行われる。近年、疾病の早期発見等の目的のため、検査の高感度化が求められており、診断薬の感度向上は大きな課題となっている。磁性粒子を用いた診断薬においても、感度向上のため、検出法として酵素発色を用いる方式から、より高い感度が得られる蛍光や化学発光を用いる方式へと切り替わりつつある。
【0004】
これらの検出技術の発展により、理論上は一分子の検査対象物質の存在まで検出できるレベルに達しているといわれているが、実際には十分な感度が得られていない。その原因としては、粒子表面への二次プローブや夾雑物の非特異的な吸着が挙げられる。例えば、理論上一分子の検査対象物質を検出可能な検査技術であっても、数分子の二次プローブが粒子表面に非特異的に吸着すると、一分子検出は不可能である。このようなことから、粒子表面への検査に使用される物質に対して非特異的な吸着の抑制が強く求められている。
【0005】
従来、このような非特異吸着の抑制方法として、ブロッキングと言われる方法が行われてきた。ブロッキングは、一次プローブを粒子上に固定化した後に、二次プローブや夾雑物等の吸着の少ないアルブミンやスキムミルク等のブロッキング剤で粒子表面を被覆する。しかし、ブロッキング剤の被覆効果が十分得られない場合があり、また、生体物質であるブロッキング剤の品質安定性が低い場合がある。一方、ブロッキングが十分に行われた場合でも、ブロッキング剤の変質等によってその作用が経時的に変化して非特異吸着が発生する場合があり、十分な非特異吸着の抑制効果は得られていなかった。
【0006】
非特異吸着の問題を解決するための方法として、96ウェルプレートに代表される免疫測定用基材の表面に親水性ポリマーを導入する方法が提案されている(特許文献1〜3)。しかし、このような平面を利用した免疫測定用基材では、一次プローブを固定化する面積が限られること、ならびに、一次プローブと検査対象物質との反応は固液反応であるため、抗原抗体反応の効率が悪く、検査時間が長くなること等の欠点があった。
【0007】
さらに、非特異吸着を少なくするための対応策として、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等からなる有機ポリマー粒子にスペーサを介して生理活性物質を結合したミクロスフィア(特許文献4,5,6)や、粒子表面に親水性のスペーサを導入した有機ポリマー粒子(特許文献7,8)等が提案されている。しかしながら、これらはいずれも、非特異吸着の低減効果が充分ではなく、また、免疫検査用としては感度が不十分であった。
【0008】
本発明者らは、親水性モノマーとして、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(C2−C4)基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、ホスホリルコリン類似基含有単量体等を粒子表面に共重合させた、非特異吸着の少ない免疫検査用磁性粒子を提案しているが(特許文献9)、さらなる高感度の発現が望まれる。
【0009】
また、抗体または抗原等のタンパク質や核酸等の検査用プローブ(一次プローブ)を結合する場合、しばしば、反応の工程で粒子が凝集してしまうという製造上の問題があった。
【特許文献1】特開平11−174057号公報
【特許文献2】特開2000−304749号公報
【特許文献3】特開2001−272406号公報
【特許文献4】特開平10−195099号公報
【特許文献5】特開2000−300283号公報
【特許文献6】WO2004/025297 A1号公報
【特許文献7】特開2004−331953号公報
【特許文献8】WO2004/040305 A1号公報
【特許文献9】特開2005−69926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、抗体または抗原等のタンパク質や核酸等の検査用プローブ(一次プローブ)を結合する際の分散性に優れ、タンパク質や核酸等の非特異吸着が少ない有機ポリマー粒子およびその製造方法、プローブ結合用有機ポリマー粒子およびその製造方法、ならびに前記有機ポリマー粒子にプローブが結合されたプローブ結合粒子およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ね、特定の2種の官能基を有するポリマー粒子が、分散性に優れ、この有機ポリマー粒子を用いることにより、生化学・医薬品分野で特出する高感度および低ノイズを発現するプローブ結合粒子が得られることを見出し、本発明を完成させた。本発明によれば、以下の態様の有機ポリマー粒子、プローブ結合用有機ポリマー粒子、プローブ結合粒子、およびこれらの製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明の第1の態様の有機ポリマー粒子は、
2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する。
【0013】
ここで、「2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基」とは、2,3−ジヒドロキシプロピル基が有する2つの水酸基のうち、両方の水酸基、または後述するトシル化で2つの水酸基のうち一方のみがトシル化された場合の残余の水酸基のことをいう。なお、後者の場合において、前記有機ポリマー粒子に存在する2,3−ジヒドロキシプロピル基のうち一部の水酸基がトシル化されずに残余の水酸基を有していればよい。上記有機ポリマー粒子において、超常磁性微粒子を含有することができる。
【0014】
この場合、核粒子と、前記核粒子の外層に設けられた、前記超常磁性微粒子を含有する磁性体層と、前記磁性体層の外層に設けられた、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有するポリマー部と、を有することができる。
【0015】
上記有機ポリマー粒子において、トシル基を有することができる。
【0016】
本発明の第2の態様のプローブ結合粒子は、トシル基を有する。なお、本発明において、「トシル基」とは、「p−トルエンスルホニル基」のことをいい、「トシル化する」とは、水酸基を「p−トルエンスルホニル基」へと変換することをいう。
【0017】
本発明の第2の態様のプローブ結合粒子は、上記有機ポリマー粒子にプローブを結合させてなる。
【0018】
本発明の第3の態様の2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子の製造方法は、
ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)を含むモノマー部を重合して、ポリマー部を形成する工程を含む。
【0019】
本発明の第4の態様の2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子の製造方法は、
ポリオキシエチレン基を有する反応性乳化剤(R)の存在下でモノマー部を重合して、ポリマー部を形成する工程を含む。
【0020】
上記製造方法において、前記モノマー部は、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)をさらに含み、前記ポリマー部を加水分解処理する工程をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の第5の態様の有機ポリマー粒子の製造方法は、
2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する有機ポリマー粒子に、ポリオキシエチレン基を有する変性剤(M)を結合させる工程を含む。
【0022】
この場合、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)を含むモノマー部を重合することにより、ポリマー部を有する粒子を形成し、該ポリマー部を加水分解処理することにより、前記2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する有機ポリマー粒子を形成する工程をさらに含むことができる。
【0023】
本発明の第6の態様のプローブ結合用有機ポリマー粒子の製造方法は、上記有機ポリマー粒子をトシル化処理する工程を含む。
【0024】
本発明の第7の態様のプローブ結合粒子の製造方法は、上記プローブ結合用有機ポリマー粒子にプローブを結合する工程を含む。
【発明の効果】
【0025】
上記有機ポリマー粒子は、プローブ結合時の分散性に優れ、タンパク質や核酸等の生体関連物質の非特異吸着量が少ないため、生化学・医薬品分野で特出する高感度および低ノイズを発現する生化学検査用有機ポリマー粒子として好適である。
【0026】
また、上記プローブ結合用有機ポリマー粒子は、プローブとの結合性が良好であり、かつ、容易にプローブと結合可能である。
【0027】
さらに、上記プローブ結合粒子は、タンパク質や核酸等の生体関連物質の非特異吸着量が少ないため、生化学・医薬品分野で特出する高感度および低ノイズを発現し、生化学検査用として高いS/N比を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
1.有機ポリマー粒子およびその製造方法
1.1.有機ポリマー粒子の構成
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する。例えば、本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、ポリオキシエチレン基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を少なくとも表面に有することができる。
【0029】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、全体がポリマー部から構成されていてもよいし、あるいは、コア・シェル構造を有していて、ポリマー部がシェルであってもよい。すなわち、ポリマー部は、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有するポリマーを含むことができる。
【0030】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子において、ポリオキシエチレン基[H−(O−CH−CH−)−O−](ここで、nは2以上の整数を表す)は、良好な分散性および低ノイズを発現させる因子である。
【0031】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子において、ポリオキシエチレン基の量は、有機ポリマー粒子表面のポリマー成分100重量部中に、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。ポリオキシエチレン基の量が0.1重量部未満では、分散性に劣ることがあり、一方、10重量部を超えると、シグナルが低下する場合がある。
【0032】
ポリオキシエチレン基の量は、後述のモノマー(A)、反応性乳化剤(R)、変性剤(M)の種類および量によって調整することができる。ポリオキシエチレン基のオキシエチレン単位の数([H−(O−CH−CH−)−O−]におけるn)は2〜150が好ましい。2未満では分散性が劣る場合があり、一方、150を超えると感度が劣る場合がある。
【0033】
ポリオキシエチレン基の末端(有機ポリマー粒子に固定されていない側)は、通常、水酸基となっているが、該末端がスルホン酸(塩)基、リン酸(塩)基、カルボン酸(塩)基、メチル基などで置換されていても良い。ポリオキシエチレン基の末端がアニオン性の官能基で置換されていると、より分散性に優れる。一方、低ノイズを発現させるためには、ポリオキシエチレン基の末端は、これらの官能基で置換されていないことが望ましい。
【0034】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子において、2,3−ジヒドロキシプロピル基は、高感度および低ノイズを発現する因子である。2,3−ジヒドロキシプロピル基の量は、該粒子の固形分に対して、好ましくは10μmol/g以上であり、さらに好ましくは50μmol/g以上であり、最も好ましくは100μmol/g以上である。2,3−ジヒドロキシプロピル基の量が10μmol/g未満では、非特異吸着が増加する結果、ノイズが増加する場合がある。
【0035】
また、本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子において、ポリオキシエチレン基および2,3−ジヒドロキシプロピル基の両方を有することにより、ポリオキシエチレン基に基づく分散性と2,3−ジヒドロキシプロピル基に基づく低ノイズを維持したまま、特出する高感度を発現することができる。
【0036】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子の数平均粒径(以下、単に「粒径」という。)は、好ましくは、0.1〜15μmであり、さら好ましくは0.3〜10μmであり、最も好ましくは1〜10μmである。粒径は、レーザ回折・散乱法により求めることができる。ここで、粒径が0.1μm未満の場合、遠心分離などを用いた分離に長時間を要し、水などの洗浄溶媒と粒子との分離が不十分になるため、目的外の分子(例えば、タンパク質や核酸等の生体関連物質)の除去が不十分になり、充分な精製ができない場合がある。一方、粒径が15μmを超えると、比表面積が小さくなり、生理活性物質の捕捉量が少なくなる結果、感度が低くなる場合がある。
【0037】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、通常、適当な分散媒に分散させて用いられる。使用できる分散媒としては、有機ポリマー粒子を溶解したり、あるいは、有機ポリマー粒子を膨潤させたりしない分散媒が好ましい。好ましい分散媒としては、例えば、水系媒体を用いることができる。ここで、水系媒体とは、水、または水と水に混和する有機溶剤(例えば、アルコール類、アルキレングリコール誘導体等)との混合物をいう。
【0038】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子の水分散液からの乾燥塗膜と水との接触角は、好ましくは40°以下であり、さらに好ましくは30°以下であり、最も好ましくは10°〜25°である。
【0039】
水分散液からの乾燥塗膜は、50mgの粒子を含む0.2mlの水分散液を、アプリケーター等を用いてスライドガラス等の平滑な基材に塗布し、湿度40%、気温25℃で24時間乾燥することにより得られる。乾燥塗膜と水との接触角は、約1μLの水滴を乾燥塗膜に滴下し、直ちに水平方向からの画像をカメラでデータとして取り込み、水滴の輪郭を円周の一部と仮定して塗膜の水平線との角度から求めることができる。本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子の水分散液からの乾燥塗膜と水との接触角をこれらの範囲とすることにより、高感度と低ノイズとを両立することができる。
【0040】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子の水分散液からの乾燥塗膜と水との接触角は、後述のモノマー(A)〜(D)、反応性乳化剤(R)、変性剤(M)の種類および量によって調整することができる。
【0041】
1.2.有機ポリマー粒子の製造
1.2.1.ポリオキシエチレン基の導入方法
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子を製造するにあたり、好ましいポリオキシエチレン基の導入方法としては、例えば以下の方法(i)〜(iii)が挙げられる。
【0042】
(i)ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)を含むモノマー部を重合する方法
(ii)ポリオキシエチレン基を有する反応性乳化剤(R)の存在下でモノマー部を重合する方法
(iii)2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する有機ポリマー粒子に、ポリオキシエチレン基を有する変性剤(M)を結合させる方法
【0043】
上記方法(i)は、粒子設計の際、ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)を増減させても粒径の変動が少なく、また、製造工程が増えない、比較的簡易な方法である。
【0044】
上記方法(ii)は、ポリオキシエチレン基を比較的定量的に導入でき、また、製造工程が増えないという特長を有する。
【0045】
上記方法(iii)は、導入量の自由度が高いという特徴を有する。
【0046】
これら(i)〜(iii)の方法は目的に応じて併用することができる。(i)〜(iii)以外のポリオキシエチレン基の導入方法としては、ポリオキシエチレン基を有する重合開始剤を使用する方法、ポリオキシエチレン基を有する連鎖移動剤を使用する方法、有機ポリマー粒子表面でエチレンオキサイドを開環重合させる方法などが挙げられる。
【0047】
(i)〜(iii)の製造方法における各成分の具体例、使用量、重合方法については後述する。
【0048】
1.2.2.モノマー部の組成
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、少なくとも1種以上のモノマーを含むモノマー部を(共)重合して得られるポリマー部を形成することにより製造することができる。以下、モノマー部を構成する各モノマーについて説明する。
【0049】
1.2.2−1.ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、好ましくは、ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)を含むモノマー部を(共)重合することにより得られる(上記方法(i))。なお、以下、本発明におけるモノマー(A)〜(D)は、好ましくはラジカル重合性モノマーである。
【0050】
ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)(以下、単に「モノマー(A)」ともいう。)としては、ポリオキシエチレン基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましく、具体例としては、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、AE−350〔以上、日本油脂(株)製〕、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA〔以上、日本乳化剤(株)製〕、NKエコモノマーM−90G、AM−90G〔以上、新中村化学工業(株)製〕などが挙げられる。
【0051】
使用するモノマー部中におけるモノマー(A)の比率は、モノマー部100重量%中に好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。モノマー部中のモノマー(A)の比率が0.1重量部未満では、分散性に劣ることがあり、一方、10重量部を超えると、重合が不安定になる場合がある。なお、後述の反応性乳化剤(R)または変性剤(M)を使用する場合は、モノマー(A)は必須成分ではないが、モノマー(A)を、後述の反応性乳化剤(R)および変性剤(M)と併用することもできる。
【0052】
1.2.2−2.加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、好ましくは、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)を含むモノマー部を共重合することにより得られるポリマー部を加水分解処理して得られる。すなわち、この場合、モノマー部は、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)をさらに含む。前記(共)重合において、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)を使用することにより、前記(共)重合前から2,3−ジヒドロキシプロピル基を有するモノマーを使用する場合に比べて、ポリマー部中により多くの2,3−ジヒドロキシプロピル基を安定的に導入することが可能になり、重合安定性を改善することができる。
【0053】
例えば、上記方法(i)を用いて、ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)と、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)とを含むモノマー部を重合して、ポリマー部を形成する工程と、該ポリマー部を加水分解処理する工程とによって、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を得ることができる。
【0054】
加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)(以下、単に「モノマー(B)」ともいう。)としては、水酸基を公知の保護基で保護したモノマーが挙げられるが、例えば、(B−1)2,3−エポキシプロピル基を有するモノマー、(B−2)2,3−ジヒドロキシプロピル基をアセタール化したモノマー、(B−3)2,3−ジヒドロキシプロピル基をシリル化したモノマーなどを挙げることができる。(B−1)2,3−エポキシプロピル基を有するモノマーとしては、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等を例示できる。(B−2)2,3−ジヒドロキシプロピル基をアセタール化したモノマーとしては、具体的には、1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル(メタ)アクリレート、1,3−ジオキソラン−2,2−ジメチル−4−イルメチル(メタ)アクリレート等を例示できる。(B−3)2,3−ジヒドロキシプロピル基をシリル化したモノマーとしては、具体的には、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのジ(t−ブチル)シリル化物、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのジ(トリメチルシリル)化物などを挙げることができる。
【0055】
モノマー(B)由来の官能基の加水分解の条件は、モノマー(B)の種類によるが、通常、粒子を水に分散した状態で、酸、塩基、またはフッ化物塩を触媒として、加温条件下で数時間〜数十時間攪拌して加水分解する。酸としてp-トルエンスルホン酸を使用することにより、加水分解と同時に、トシル基を導入しても良い。有機ポリマー粒子のトシル化については後述する。モノマー(B)由来の官能基の加水分解は、貯蔵安定性などに支障のない限り、必ずしも共重合体中の全ての官能基が加水分解されている必要はない。モノマー(B)由来の官能基の加水分解は、通常、モノマー部の重合後に実施するが、重合中にその一部が加水分解されてもよい。
【0056】
使用するモノマー部中におけるモノマー(B)の比率は、モノマー部100重量%中に好ましくは60〜100重量%であり、さらに好ましくは70〜95重量%である。モノマー部中のモノマー(B)の比率が60重量%未満であると、非特異吸着が増加する結果、ノイズが増加する場合がある。
【0057】
1.2.2−3.架橋性モノマー(C)
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、好ましくは、架橋性モノマー(C)を共重合することにより得られる粒子表面を有する。すなわち、この場合、モノマー部は架橋性モノマー(C)をさらに含む。
【0058】
架橋性モノマー(C)(以下、単に「モノマー(C)」ともいう。)は、モノマー部に含まれる他のモノマーと共重合可能であり、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するモノマーである。このような架橋性モノマー(C)としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどを例示することができる。さらに、架橋性モノマー(C)として、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリビニルアルコールのポリ(メタ)アクリルエステルなどの親水性のモノマーを例示することができる。
【0059】
架橋性モノマー(C)の比率は、モノマー部100重量%中に好ましくは0〜30重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%である。共重合体中のモノマー(C)の比率が30重量%を超えると、粒子が多孔質化して非特異吸着を増加させることがある。
【0060】
1.2.2−4.その他のモノマー(D)
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、上記モノマー(A)〜(C)以外のモノマー(D)(その他のモノマー(D))を共重合することにより得られる粒子表面を有していてもよい。その他のモノマー(D)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するモノマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレートなどの親水性官能基を有する(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどの親水性モノマー、および、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどの芳香族ビニル単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルを例示することができる。カルボキシル基を導入する方法として、tert−ブチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルアダマンタン−2−イル(メタ)アクリレート、2−エチルアダマンタン−2−イル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等、カルボキシル基をアルコールで保護したエステルモノマー;α−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステルモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物などを共重合し、その後、加水分解してもよい。その他のモノマー(D)として、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど非保護の2,3−ジヒドロキシプロピル基を有するモノマーを使用して2,3−ジヒドロキシプロピル基を導入しても良い。その他のモノマー(D)の量は、上述のモノマー(A)〜(C)以外の残余の量である。
【0061】
1.2.3.ポリオキシエチレン基を有する反応性乳化剤(R)
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、好ましくは、ポリオキシエチレン基を有する反応性乳化剤(R)(以下、単に「反応性乳化剤(R)」ともいう。)の存在下でモノマー部を(共)重合することにより得られる(上記方法(ii))。
【0062】
例えば、上記方法(ii)を用いて、ポリオキシエチレン基を有する反応性乳化剤(R)の存在下で、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)を含むモノマー部を重合して、ポリマー部を形成する工程と、該ポリマー部を加水分解処理する工程とによって、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を得ることができる。
【0063】
本発明において、反応性乳化剤(R)とは、モノマー部に含まれる成分に対して反応性を有する乳化剤のことをいい、具体的には、炭素数8以上のアルキル基などの疎水基と、ポリオキシエチレン鎖を含む親水基と、ラジカル重合性不飽和二重結合とを1分子中に有する乳化剤をいう。ポリオキシエチレン鎖の末端が官能基で置換されていても良いことは前述の通りである。
【0064】
反応性乳化剤(R)のうち、末端が置換されていないものとしては、エチレン性不飽和単量体と共重合可能なノニオン型界面活性剤が挙げられ、このようなノニオン型界面活性剤としては、例えば、アデカリアソープNE−20,NE−30,NE−40〔製品名、旭電化工業(株)製〕などのα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、またはアクアロンRN−10,RN−20,RN−30,RN−50〔製品名、第一工業製薬(株)製〕などのポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルなどが挙げられる。また、反応性乳化剤(R)のうち、末端が置換されているものとしては、例えば、エレミノールJS−2、JS−5〔製品名、三洋化成(株)製〕、ラテムルS−120、S−180A、S−180、PD−104〔製品名、花王(株)製〕、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10〔製品名、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープSE−10N、SR−10〔製品名、旭電化工業(株)製〕などが挙げられる。以上の反応性乳化剤(R)は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0065】
使用する反応性乳化剤(R)の比率は、モノマー部100重量%に対し、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。反応性乳化剤(R)の比率が0.1重量部未満では、分散性に劣ることがあり、一方、10重量部を超えると、粒径が極端に小さな粒子が発生する場合がある。なお、前述のモノマー(A)または後述の変性剤(M)を使用する場合は、反応性乳化剤(R)は必須成分ではないが、反応性乳化剤(R)を、前述のモノマー(A)および後述の変性剤(M)と併用してもよい。
【0066】
1.2.4.ポリオキシエチレン基を有する変性剤(M)および変性方法
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、好ましくは、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する有機ポリマー粒子に、ポリオキシエチレン基を有する変性剤(M)(以下、単に「変性剤(M)」ともいう。)を結合することにより得られる(上記方法(iii))。変成剤(M)は、後述のプローブを結合した後に結合しても良い。
【0067】
ここで、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する有機ポリマー粒子は、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)を含むモノマー部を重合することにより、ポリマー部を有する粒子を形成し、該ポリマー部を加水分解処理して得ることができる。
【0068】
本発明において、変性剤(M)とは、有機ポリマー粒子に結合しうる官能基と、ポリオキシエチレン基とを有する分子をいう。有機ポリマー粒子に結合しうる官能基の種類は、有機ポリマー粒子表面に導入する官能基との組み合わせによる。
【0069】
変成剤(M)の官能基としては、例えば、アミノ基が挙げられる。この場合、有機ポリマー粒子にカルボキシル基を導入し、変成剤(M)のアミノ基とクーロン結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造することができる。また、有機ポリマー粒子にカルボキシル基を導入し、このカルボキシル基を水溶性カルボジイミドなど公知の活性化剤で活性化し、変成剤(M)のアミノ基とアミド結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造することができる。
【0070】
さらに、別の方法として、有機ポリマー粒子の2,3−ジヒドロキシプロピル基の一部をトシル化し、変成剤(M)のアミノ基と置換して結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造することができる。さらに、別の方法として、有機ポリマー粒子にエポキシ基を導入し、このエポキシ基と変成剤(M)のアミノ基とを結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造することができる。
【0071】
なお、変成剤(M)中のアミノ基は、ポリオキシエチレン鎖の片末端に導入されていることが好ましく、ポリオキシエチレン鎖の片末端に2から20分子導入されていることがさらに好ましい。
【0072】
また、変成剤(M)の官能基としては、例えば、メルカプト基が挙げられる。変成剤(M)中のメルカプト基は、ポリオキシエチレン鎖の片末端に導入されていることが好ましい。この場合、有機ポリマー粒子の2,3−ジヒドロキシプロピル基の一部をトシル化し、変成剤(M)のメルカプト基と置換して結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造することができる。さらに、別の方法として、有機ポリマー粒子にエポキシ基を導入し、このエポキシ基と変成剤(M)のメルカプト基とを結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造することができる。
【0073】
さらに、変成剤(M)の官能基としては、例えば、エポキシ基が挙げられる。変成剤(M)中のエポキシ基は、ポリオキシエチレン鎖の片末端に導入されていることが好ましい。この場合、有機ポリマー粒子にカルボキシル基またはアミノ基を導入し、変成剤(M)のエポキシ基と結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造することができる。
【0074】
その他、変成剤(M)の官能基/有機ポリマー粒子の官能基の組み合わせとして、シリル基/水酸基、カルボニル基/ヒドラジド基、ビオチン基/アビジン基などを例示することができる。
【0075】
最も好ましい例は、有機ポリマー粒子にカルボキシル基を導入し、下記一般式(1)で示される変成剤(M)のアミノ基とクーロン結合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子を製造する方法である。
【0076】
N−(CNH)−R−(OC−OH ・・・・・(1)
(式中、n=2〜20、m=2〜200、Rはフェニレン、アルキレンなど2価の炭化水素基である。)
【0077】
1.2.5.重合方法
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、例えば、乳化重合、ソープフリー重合、懸濁重合等の定法を用いて製造が可能である。より具体的には、本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、例えば、上記ビニル系モノマーの懸濁重合、あるいはポリマーバルクの粉砕によって得ることができる。例えば、本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、特公昭57−24369号公報記載のシード粒子(母粒子)を用いる二段膨潤重合法、ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス・ポリマーレター・エディション,937頁,第21巻,1963年(J. Polym. Sci., Polymer Letter Ed. 21,937(1963))記載の重合方法、特開昭61−215602号公報、特開昭61−215603号公報、および特開昭61−215604号公報記載の方法によって作製することができる。これらの方法の中では、シード粒子(母粒子)を用いる二段膨潤重合法が、粒径の変動係数を小さくすることができるため好ましい。シード粒子(母粒子)は、ポリスチレンまたはスチレン系共重合体等を用いることができる。そして、二段膨潤重合法により追加されるポリマー部分は、上述のモノマー(A)〜(D)の共重合体からなる。
【0078】
モノマー(A)〜(D)の共重合の際に使用可能な乳化剤としては、上述の反応性乳化剤の他、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩などのアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキル四級アミン塩などのカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ブロック型ポリエーテルなどのノニオン系界面活性剤;カルボン酸型(例えば、アミノ酸型、ベタイン酸型など)、スルホン酸型などの両性界面活性剤などのいずれでも使用可能である。これらの乳化剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。乳化剤の使用量は特に限定されるものではないが、モノマー(A)〜(D)の合計量100重量部に対し、通常、0.1〜50重量部であり、好ましくは0.2〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。0.1重量部未満では、乳化が充分でなく、ラジカル重合時の安定性が低下し好ましくない。一方、50重量部を超えると、泡立ちが問題となり好ましくない。
【0079】
モノマー(A)〜(D)の共重合の際に使用されるラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、2,2’−アゾビス〔2−N−ベンジルアミジノ〕プロパン塩酸塩などの水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤;酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤を併用したレドックス系開始剤などが使用できる。ラジカル重合開始剤としては、水中で酸または塩基性を示さない油溶性開始剤が好ましい。
【0080】
2.磁性体を含有する有機ポリマー粒子およびその製造方法
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、磁性体を含有する有機ポリマー粒子(以下、「磁性体含有有機ポリマー粒子」という。)であってもよい。磁性体含有有機ポリマー粒子は、例えば遠心分離器等を用いずに、磁石を用いて分離することができるため、被検体からの粒子の分離工程を簡素化または自動化することができる点で有用である。
【0081】
磁性体含有有機ポリマー粒子は、(I)有機ポリマー等の非磁性体の連続相中に磁性体微粒子が分散している粒子、(II)磁性体微粒子の2次凝集体をコアとし、有機ポリマー等の非磁性体をシェルとする粒子、(III)有機ポリマー等の非磁性体からなる核粒子と、該核粒子の表面に設けられた磁性体微粒子の2次凝集体層(磁性体層)とを有する母粒子をコアとし、該母粒子の最外層の有機ポリマー層をシェルとする粒子等が挙げられる。(I)〜(III)において、有機ポリマー等の非磁性体が上述の「ポリマー部」に相当する。これらの中では、(III)前記磁性体微粒子の2次凝集体層を含む母粒子をコアとし、有機ポリマー層(ポリマー部)をシェルとする粒子が好ましい。なお、各種構造の磁性体含有有機ポリマー粒子に用いる有機ポリマー(ポリマー部)は、コア・シェル型粒子のコア部分を除いて、粒子最表面を形成し、かつ、ポリオキシエチレン基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を有することが必要である。
【0082】
最も好ましい磁性体含有有機ポリマー粒子は、核粒子と、この核粒子の表面に設けられた超常磁性微粒子の磁性体層とを含む母粒子を覆うように、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する重合体(ポリマー部)が設けられている。すなわち、この磁性体含有有機ポリマー粒子では、前記母粒子をコアとし、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する重合体(ポリマー部)をシェルとする。ここで、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する重合体は上述の製造方法により得られる。すなわち、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する重合体は、ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)0〜10重量部、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)60〜100重量部、架橋性モノマー(C)0〜30重量部、およびその他のモノマー(D)0〜40重量部からなるモノマー部を重合して共重合体を得、この共重合体を加水分解して得ることができる。なお、加水分解は重合中に実施してもよい。
【0083】
核粒子の表面に超常磁性微粒子の磁性体層が形成された母粒子の製造方法としては、例えば、非磁性の有機ポリマー粒子と超常磁性微粒子とをドライブレンドして、物理的に強い力を外部から加えることにより双方の粒子を複合化させる方法により作製することができる。物理的に強い力を負荷する方法としては、例えば、乳鉢、自動乳鉢、ボールミル、ブレード加圧式粉体圧縮法、メカノフュージョン法のようなメカノケミカル効果を利用するもの、あるいはジェットミル、ハイブリダイザー等の高速気流中衝撃法を利用するものが挙げられる。効率よくかつ強固に複合化を実施するには、物理的吸着力が強いことが望ましい。その方法としては、攪拌翼付き容器中で攪拌翼の周速度が好ましくは15m/秒以上、より好ましくは30m/秒以上、さらに好ましくは40〜150m/秒で実施することが挙げられる。撹拌翼の周速度が15m/秒より低いと、非磁性の有機ポリマー粒子の表面に超常磁性微粒子を吸着させるのに十分なエネルギーを得ることができないことがある。なお、撹拌翼の周速度の上限については、特に制限はないが、使用する装置、エネルギー効率等の点から自ずと決定される。本発明で使用する超常磁性微粒子は、例えば、粒子径5〜20nm程度のフェライトおよび/またはマグネタイトの微粒子が好適に使用できる。
【0084】
ポリマー部(シェル)は、前記(A)〜(D)からなるモノマー部を前記母粒子(コア)の存在下で共重合することにより形成される。各モノマー成分については上述の通りである。より具体的な重合方法については、特開2004−205481号公報等に開示されている通りである。また、重合後の加水分解処理の条件も上述の通りである。磁性体含有有機ポリマー粒子を特に強い酸性条件下で加水分解を実施すると、超常磁性微粒子が溶解する場合があるため、加水分解は弱酸〜塩基条件で行なうことが望ましい。
【0085】
なお、母粒子上の超常磁性微粒子の溶解を防止するため、核粒子の表面に超常磁性微粒子の磁性体層が形成された母粒子を、架橋性モノマー(C)0〜30重量部およびその他のモノマー(D)70〜100重量部からなる別のモノマー部を用いてコーティング層を形成した後、このコーティング層を含む母粒子をコアとして、(A)〜(D)からなるモノマー部を共重合することにより、ポリマー部(シェル)を形成する粒子を得、この粒子を加水分解することにより、磁性体含有有機ポリマー粒子を形成してもよい。このような超常磁性微粒子がコーティング層によってコーティングされた磁性体含有有機ポリマー粒子の場合、上述の加水分解処理において強酸性〜強塩基性の広い加水分解条件を選択することができる。
【0086】
加水分解後の有機ポリマー粒子および磁性体含有有機ポリマー粒子の分散液は、遠心分離法、磁気分離法等により水洗を繰り返して、残余の加水分解触媒を除いておくことが好ましい。
【0087】
3.プローブ結合用有機ポリマー粒子およびプローブ結合粒子
本発明の一実施形態のプローブ結合用有機ポリマー粒子は、トシル基を有する。より具体的には、本発明の一実施形態のプローブ結合用有機ポリマー粒子は、ポリオキシエチレン基および2,3−ジヒドロキシプロピル基を少なくとも表面に有する有機ポリマー粒子をトシル化して得ることができる。すなわち、本発明の一態様のプローブ結合用有機ポリマー粒子は、ポリオキシエチレン基の末端水酸基および2,3−ジヒドロキシプロピル基の少なくとも一方をトシル化した活性基を粒子表面に有することができる。
【0088】
2,3−ジヒドロキシプロピル基をトシル化した活性基は、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル基中の水酸基の一方または両方がトシル化された基であり、より具体的には、2−ヒドロキシ−3−(4’−メチルフェニル)スルホニルオキシプロピル基、3−ヒドロキシ−2−(4’−メチルフェニル)スルホニルオキシプロピル基、2,3−ジ(4’−メチルフェニル)スルホニルオキシプロピル基が挙げられる。なお、本発明の一実施形態のプローブ結合用有機ポリマー粒子は、トシル化されていない残余の2,3−ジヒドロキシプロピル基を有していても良い。
【0089】
本発明の一実施形態のプローブ結合用有機ポリマー粒子は、この(4’−メチルフェニル)スルホニル基すなわちトシル基を介して、一次プローブを化学結合させて、免疫検査用のプローブ結合粒子として利用することができる。また、一次プローブの結合後、過剰の一次プローブを洗浄し、未反応のトシル基を不活化した後の残余の2,3−ヒドロキシプロピル基により特出した高感度と低ノイズを発現することができる。このような効果は、例えば、モノヒドロキシプロピル基をトシル化したもの、例えば、3−(4’−メチルフェニル)スルホニルオキシプロピル基のみを有する粒子では発現し得ない。
【0090】
トシル化は、公知の方法により行なうことができる。例えば、有機ポリマー粒子中の2,3−ジヒドロキシプロピル基とp−トルエンスルホン酸塩とを反応させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基を、2−ヒドロキシ−3−(4’−メチルフェニル)スルホニルオキシプロピル基に変換することにより、トシル化を達成することができる。p−トルエンスルホン酸塩としては、特に限定されないが、p−トルエンスルホン酸クロライド等を挙げることができる。別の方法として、加水分解前のモノマー(B)由来の官能基、または加水分解後の残余のモノマー(B)由来の官能基にp−トルエンスルホン酸を反応させて、トシル化を達成させても良い。この工程は、典型的には、有機ポリマー粒子をピリジン等の有機溶剤に分散した後、有機ポリマー粒子100重量部当たり1〜50重量部のp−トルエンスルホン酸クロライドまたはp−トルエンスルホン酸を添加し、室温で1〜6時間反応させることにより行なう。あるいは、有機ポリマー粒子中の2,3−ジヒドロキシプロピル基とp−トルエンスルホン酸とを脱水縮合させることにより、2,3−ジヒドロキシプロピル基を2−ヒドロキシ−3−(4’−メチルフェニル)スルホニルオキシプロピル基に変換することにより、前記トシル化を行なってもよい。
【0091】
ここで、有機ポリマー粒子をトシル化処理する工程において、1つの2,3−ジヒドロキシプロピル基中の2つの水酸基の両方がトシル化されてもよいし、あるいは、1つの2,3−ジヒドロキシプロピル基中の一方の水酸基のみがトシル化されてもよい。また、有機ポリマー粒子中の複数の2,3−ジヒドロキシプロピル基のうち少なくとも一部がトシル化されればよい。さらに、有機ポリマー粒子をトシル化処理する工程において、有機ポリマー粒子中の2,3−ジヒドロキシプロピル基以外の官能基の水酸基がトシル化されてもよい。なお、前記粒子に存在する2,3−ジヒドロキシプロピル基の水酸基のうち一部がトシル化されずに残っていればよい。
【0092】
以上により、本発明の一実施形態のプローブ結合用有機ポリマー粒子を得ることができる。プローブ結合用有機ポリマー粒子の分散液は、遠心分離法、磁気分離法等により、アセトン洗浄と水洗とを繰り返し、プローブ結合用有機ポリマー粒子の水分散体とすることが好ましい。
【0093】
本発明の一実施形態のプローブ結合用有機ポリマー粒子によれば、トシル基が粒子の表面に導入されているため、実際に使用するに当たり、一次プローブと粒子とを混合するだけで、一次プローブを粒子の表面に化学的に結合させることができる。
【0094】
一次プローブを粒子の表面に結合させた後、過剰の一次プローブを洗浄し、必要に応じて未反応のトシル基を不活化する。不活化剤として、エタノールアミン、トリス(ヒドロキシアミノ)メタン等の水酸基を含有する不活化剤を使用するのが好ましい。また、不活化剤として、上記変成剤(M)を使用することにより、この工程でポリオキシエチレン基を導入することもできる。また、一次プローブの活性を阻害しない範囲の酸またはアルカリ条件でトシル基を加水分解してもよい。また、一次プローブを粒子の表面に結合させた後、通常行われるブロッキングの操作は不要であるが、上記不活化工程において、アルブミン等のブロッキング剤を併用してもかまわない。以降は、粒子を用いた通常の分析工程に移行すればよい。
【0095】
4.用途
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、生化学分野での化合物担体用粒子および診断薬用の化学結合担体用粒子等のアフィニティー担体として利用でき、特に、抗原または抗体等の一次プローブを結合させた免疫検査用のプローブ結合粒子として、特出する高感度および低ノイズを発現することができる。
【0096】
本発明の一実施形態のプローブ結合粒子において、検査対象となる物質は、免疫検査用試薬および被検査試料に含まれる生体関連物質および化学物質である。本発明において、「生体関連物質」とは、生体に関わるすべての物質をいう。生体関連物質としては、例えば、生体に含まれる物質、生体に含まれる物質から誘導された物質、生体内で利用可能な物質が挙げられる。生体関連物質は特に限定されないが、例えば、タンパク質(例えば、酵素、抗体、アプタマー、受容体等)、ペプチド(例えばグルタチオン等)、核酸(例えば、DNAやRNA等)、糖質、脂質、およびその他の細胞または物質(例えば、血小板、赤血球、白血球等の各種血球細胞を含む各種血液由来物質、各種浮遊細胞等)等が挙げられる。
【0097】
本発明の一実施形態のプローブ結合粒子は、上記プローブ結合用有機ポリマー粒子に、一次プローブと粒子とを混合して得られる。
【0098】
別の方法として、本発明の一実施形態のプローブ結合粒子は、カルボキシル基が粒子の表面に導入された有機ポリマー粒子を用いて、水溶性カルボジイミドなどの公知の活性化剤によりカルボキシル基を活性化し、一次プローブと粒子とを混合して得ることができる。一次プローブを粒子の表面に結合させた後、過剰の一次プローブを洗浄し、必要に応じて未反応の活性化カルボキシル基を不活化する。また、一次プローブを粒子の表面に結合させた後、通常行われるブロッキングの操作をしてもよく、上述の不活化工程において、アルブミン等のブロッキング剤を併用してもかまわない。以降は、粒子を用いた通常の分析工程に移行すればよい。
【0099】
本発明の一実施形態のプローブ結合粒子に担持することができるプローブは、タンパク質(抗原または抗体)または核酸であり、このうち抗原または抗体が好ましい。この場合、抗原または抗体としては、被検体中に一般に含まれている成分に反応するものであれば特に制限されないが、例えば、アンチプラスミン検査用抗アンチプラスミン抗体、Dダイマー検査用抗Dダイマー抗体、FDP検査用抗FDP抗体、tPA検査用抗tPA抗体、TAT検査用抗トロンビン=アンチトロンビン複合体抗体、FPA検査用抗FPA抗体等の凝固線溶関連検査用抗原または抗体;BFP検査用抗BFP抗体、CEA検査用抗CEA抗体、AFP検査用抗AFP抗体、フェリチン検査用抗フェリチン抗体、CA19−9検査用抗CA19−9抗体等の腫瘍関連検査用抗原または抗体;アポリポタンパク検査用抗アポリポタンパク抗体、β2−ミクロブロブリン検査用抗β2−ミクロブロブリン抗体、α1−ミクログロブリン検査用抗α1―ミクログロブリン抗体、免疫グロブリン検査用抗免疫グロブリン抗体、CRP検査用抗CRP抗体等の血清蛋白関連検査用抗原または抗体;HCG検査用抗HCG抗体等の内分泌機能検査用抗原または抗体;HBs抗原検査用抗HBs抗体、HBs抗体検査用HBs抗原、HCV抗体検査用HCV抗原、HIV−1抗体用HIV−1抗原、HIV−2抗体検査用HIV−2抗原、HTLV−1検査用HTLV−1抗原、マイコプラズマ症検査用マイコプラズマ抗原、トキソプラズマ検査用トキソプラズマ抗原、ASO検査用ストレプトリジンO抗原等の感染症関連検査用抗原または抗体;抗DNA抗体検査用DNA抗原、RF検査用熱変成ヒトIgG等自己免疫関連検査用抗原または抗体;ジゴキシン検査用抗ジゴキシン抗体、リドカイン検査用抗リドカイン抗体等の薬物分析用抗原または抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。抗体としては、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらを用いてもかまわない。
【0100】
また、本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子は、酵素・ホルモン等のタンパク質、DNA・RNA等の核酸、脂質、あるいは生理活性糖鎖化合物を粒子表面に化学結合法で感作させるアフィニティー担体としても利用できる。さらに、本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子に、解析対象の化学物質(被解析化学物質;リガンド分子に該当する)を化学結合により固定化し、タンパク物質等との特異的相互作用を用いて当該相互作用を解析および/または測定することによって、被解析化学物質と特異的な相互作用を有するタンパク質等(ターゲット分子に該当する)を選別し、精製することが可能である。
【0101】
具体的には、粒子に結合させるリガンド分子としては、本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子が有するポリオキシエチレン基および2,3−ジヒドロキシプロピル基の少なくとも一方と反応しうる官能基を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、核酸、ペプチド核酸、ホルモン、分子量500〜100万のタンパク質、糖鎖、多糖類、細胞、アプタマー、ウイルス、酵素、各種のアフィニティー用タグ捕捉物質、ビオチン等の補酵素、特定の生理活性作用を有する(あるいは、特定の生理活性作用を有する可能性がある)化学物質等を使用することができる。
【0102】
本発明の一実施形態の有機ポリマー粒子およびプローブ結合粒子は、粒子を用いたバイオチップ、例えば、特開2005−148048号公報で開示されたバイオチップなどにも好適に使用することができる。
【0103】
5.実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、本実施例において、「%」および「部」は重量基準である。
【0104】
5.1.評価方法
5.1.1.CLEIA(化学発光酵素免疫測定)
抗AFP(αフェトプロテイン)抗体を感作させた、後述する各実施例・比較例で得られた有機ポリマー粒子の分散液10μl(粒子50μg相当)をテストチューブに取り、ウシ胎児血清(FCS)で100ng/mLに希釈したAFP抗原(日本バイオテスト社製)の標準検体50μlと混合し、37℃で10分間反応した。遠心または磁気分離して粒子を分離し上清を除いた後、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ(以下、「ALP」という。)で標識した抗AFP抗体(富士レビオ株式会社製、ルミパルスAFP−Nに付属の試薬を使用)40μlを添加し、37℃で10分間反応させた。次いで、遠心または磁気分離して粒子を分離し上清を除いた後、トリスバッファー/0.05%Tween20で3回遠心洗浄を繰り返して得られた粒子を50μlの0.01%Tween20に分散させ、新しいチューブに移し替えた。ALPの基質液(ルミパルス基質液:富士レビオ株式会社製)100μlを加え、37℃で10分間反応させた後、化学発光量を測定した。化学発光の測定には、ベルトールジャパン株式会社製の化学発光測定装置(商品名:Lumat LB9507)を用いた。
【0105】
5.1.2.粒径
レーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製)SALD−200Vにより、粒子の数平均粒径を測定した。
【0106】
5.2.合成例1(磁性体を含有しない有機ポリマー粒子の合成)
以下に記載するように、シード粒子(母粒子)を用いる二段膨潤重合法により有機ポリマー粒子(A)を作製した。シード粒子(母粒子)として、ソープフリー重合により得られた粒子径0.98μmのポリスチレン粒子を用い、このポリスチレン粒子を窒素雰囲気下で水500gに分散させて、水分散体(固形分量5.0g)を調製した。この水分散体に、一段目として有機溶剤(シェルゾールTK0.1g)、二段目として末端が置換されていない平均繰り返し単位8のポリオキシエチレン基を有するポリオキシエチレンメタクリルエーテル(日本油脂製「ブレンマーPE−350」、以下「PE−350」という。)2g、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という。)38g、エチレングリコールジメタクリレート10g、およびグリセロールメタクリレート(以下、「GLM」という。)50gを加えてそれぞれ吸収させた後、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を2g添加して75℃で24時間ゆっくり撹拌した。次に、この反応液を冷却した後、500メッシュ金網でろ過したところ、99%が通過し、良好な重合安定性であった。重合収率は99%であった。上記工程により得られた有機ポリマー粒子を以下「O−1」とする。
【0107】
次に、このO−1粒子5.0gを、遠心分離を用いて蒸留水で洗浄した後、凍結乾燥して得られた乾燥粒子1.0gを8mlのピリジンに分散させ、次いで、p−トルエンスルホン酸クロライド(和光純薬工業製)0.2gを加えて室温で2時間撹拌した。反応後、遠心分離機を用いて分離した粒子を採取した後、この粒子をアセトンで4回、続いて蒸留水で4回洗浄して、プローブ結合用有機ポリマー粒子(以下、「P−1」とする。)を得た。P−1粒子の粒子径は2.6μmであった。
【0108】
5.3.合成例2(磁性体を含有する有機ポリマー粒子の合成)
75%ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド溶液(日本油脂製「パーロイル355−75(S)」2質量部を1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液20質量部に混合し、超音波分散機にて微細乳化した。これを粒径0.77μmのポリスチレン粒子13質量部および水41質量部の入ったリアクターに入れ、25℃で12時間攪拌した。別の容器にて、スチレン96質量部およびジビニルベンゼン4質量部を0.1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液400質量部で乳化させた液を前記リアクターに入れ、40℃で2時間攪拌した後、75℃に昇温して8時間重合した。室温まで冷却した後、遠心分離により粒子のみ取り出したものをさらに水洗し、乾燥および粉砕した。これを核粒子とする(核粒子の作製)。数平均粒径は1.5μmであった。
【0109】
次に、油性磁性流体(商品名:「EXPシリーズ」,(株)フェローテック製)にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の磁性体微粒子(平均一次粒子径:0.01μm)を得た。
【0110】
次いで、上記核粒子15gおよび上記疎水化された磁性体微粒子15gをミキサーでよく混合し、この混合物をハイブリダイゼーションシステムNHS−0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16200rpm)で5分間処理し、平均数粒子径が2.0μmの磁性体微粒子からなる磁性体層を表面に有する母粒子を得た。
【0111】
次に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25重量%およびノニオン性乳化剤(商品名:「エマルゲン150」,花王(株)製)0.25重量%を含む水溶液375gを1Lセパラブルフラスコに投入し、次いで、前記磁性体層を有する母粒子15gを投入し、ホモジナイザーで分散した後、60℃に加熱した。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.25重量%およびノニオン性乳化剤(商品名:「エマルゲン150」,花王(株)製)0.25重量%を含む水溶液150gに、MMA27g、トリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、「TMP」という。)3g、およびジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(日本油脂社製;パーロイル355)0.6gを入れて分散させたプレエマルジョンを、60℃にコントロールした前記1Lセパラブルフラスコに1時間30分かけて滴下した。滴下終了後、60℃に保持し1時間攪拌した後、末端がスルホン酸塩基で置換されたポリオキシエチレン基を有する反応性界面活性剤(商品名:「アクアロンKH−10」,第一工業製薬(株)製)0.5重量%を含む水溶液75gに、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)13.5g、TMP1.5g、およびジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド(日本油脂社製;パーロイル355)0.3gを入れて分散させたプレエマルジョンを、60℃にコントロールした上記1Lセパラブルフラスコに1時間30分かけて滴下した。その後75℃に昇温した後さらに2時間重合を続けて、反応を完了させた。続けて、この1Lセパラブルフラスコに1mol/L 硫酸60mlを入れ、60℃で6時間撹拌した。次いで、前記セパラブルフラスコ中の粒子を、磁気を用いて分離した後、蒸留水を用いて繰り返し洗浄した。以上により、磁性体を含有する有機ポリマー粒子の分散液を得た(以下、「O−2」とする。)。
【0112】
次に、O−2粒子を凍結乾燥して得られた乾燥粒子1.0gを8mlのピリジンに分散させた後、p−トシルクロライド0.2gを加えて室温で2時間撹拌した。反応後、磁気を用いて粒子を分離し、アセトンで4回、続いて蒸留水で4回洗浄して、プローブ結合用有機ポリマー粒子(以下、「P−2」とする。)を得た。このP−2粒子の平均数粒子径は2.9μmであった。
【0113】
5.4.合成例3(磁性体を含有しないプローブ結合粒子の合成)
合成例1で得られたプローブ結合用有機ポリマー粒子(P−1粒子)10mgをホウ酸緩衝液(0.1mol/L、pH9.5)溶液1.0mlに分散させ、腫瘍マーカーであるヒトαフェトプロテイン(AFP)に対する抗体(以下、「抗AFP抗体」という。コスモ・バイオ株式会社製)100μgを加えて室温で18時間反応させた。反応中の粒子の分散は良好であった。反応後、粒子を遠心分離し、洗浄液(25mmol/L Tris−HCl,pH7.4、0.01%Tween20含有)で繰り返し洗浄した後、粒子濃度が0.5%になるように洗浄液で希釈して、抗AFP抗体を感作させたプローブ結合粒子(以下、「Q−1」とする。)の分散液を得た。
【0114】
5.5.合成例4(磁性体を含有するプローブ結合粒子の合成)
プローブ結合用有機ポリマー粒子(P−1粒子)に替えて、合成例2で得られた、磁性体を含有するプローブ結合用有機ポリマー粒子(P−2粒子)を用い、遠心分離に替えて磁気分離を用いた他は、合成例3と同様の方法にて、抗AFP抗体を感作させたプローブ結合粒子(以下、「Q−2」とする。)の分散液を得た。反応中の粒子の分散は良好であった。
【0115】
5.6.比較合成例1(磁性体を含有しないプローブ結合粒子の合成)
合成例1でPE−350を使用しない以外は同様に重合して得られたプローブ結合用有機ポリマー粒子(P−3粒子)10mgをホウ酸緩衝液(0.1mol/L、pH9.5)溶液1.0mlに分散させ、腫瘍マーカーであるヒトαフェトプロテイン(AFP)に対する抗体(以下、「抗AFP抗体」という。コスモ・バイオ株式会社製)100μgを加えて室温で18時間反応させた。反応中の粒子の分散は不良であった。反応後、粒子を遠心分離し、洗浄液(25mmol/L Tris−HCl,pH7.4、0.01%Tween20含有)で繰り返し洗浄した後、粒子濃度が0.5%になるように洗浄液で希釈して、抗AFP抗体を感作させたプローブ結合粒子(以下、「Q−3」とする。)の分散液を得た。
【0116】
5.7.比較合成例2(磁性体を含有しするプローブ結合粒子の合成)
合成例2でGMAの代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレートを使用した以外は同様にして磁性体を含有するプローブ結合用有機ポリマー粒子(P−4粒子)を得た。プローブ結合用有機ポリマー粒子(P−1粒子)に替えて、磁性体を含有するプローブ結合用有機ポリマー粒子(P−4粒子)を用い、遠心分離に替えて磁気分離を用いた他は、合成例3と同様の方法にて、抗AFP抗体を感作させたプローブ結合粒子(以下、「Q−4」とする。)の分散液を得た。反応中の粒子の分散は良好であった。
【0117】
5.8.実施例1
合成例3で得られた、磁性体を含有しないプローブ結合粒子(Q−1)の分散液を用いて、化学発光酵素免疫測定(CLEIA)を実施した。AFPを含まない検体のノイズ強度は158RIU(Relative intensity units)であった。AFP濃度100ng/mLの時のシグナル強度は140997(RIU)であった。
【0118】
5.9.実施例2
プローブ結合粒子(Q−1)の分散液に替えて、合成例4で得られた、磁性体を含有するプローブ結合粒子(Q−2)の分散液を用いた他は実施例1と同様にして、CLEIAを実施した。AFPを含まない検体のノイズ強度は60(RIU)であった。AFP濃度100ng/mLの時のシグナル強度は195038(RIU)であった。
【0119】
5.10.比較例1
プローブ結合粒子(Q−1)の分散液に替えて、比較合成例1で得られた、磁性体を含有しないプローブ結合粒子(Q−3)の分散液を用いた他は、実施例1と同様にしてCLEIAを実施した。AFPを含まない検体のノイズ強度は142(RIU)であった。AFP濃度100ng/mLの時のシグナル強度は106351(RIU)であった。
【0120】
5.11.比較例2
プローブ結合粒子(Q−1)の分散液に替えて、比較合成例2で得られた、磁性体を含有するプローブ結合粒子(Q−4)の分散液を用いた他は、実施例1と同様にしてCLEIAを実施した。AFPを含まない検体のノイズ強度は258(RIU)であった。AFP濃度100ng/mLの時のシグナル強度は67293(RIU)であった。
【0121】
比較例1の粒子(Q−3)はポリオキシエチレン基を有していないため、比較合成例1に示したとおり、プローブである抗AFP抗体の反応時の分散が不良で、粒子の一部が凝集した。この結果から、比較例1の粒子(Q−3)はポリオキシエチレン基を有していないため、分散性が不良であり、その結果、比較例1の粒子(Q−3)とプローブとの反応性が低く、粒子(Q−3)を用いた場合に得られたシグナル強度が、粒子(Q−1)を用いた場合に得られたシグナル強度に比べて低くなったと推測される。
【0122】
また、比較例2の粒子(Q−4)は、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有していないため、ノイズが高く、シグナルが低かった。この結果から、比較例2の粒子(Q−4)のように、2,3−ジヒドロキシプロピル基を有していない場合、プローブとの反応性および反応特異性が低いことが推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する、有機ポリマー粒子。
【請求項2】
請求項1において、
超常磁性微粒子を含有する、有機ポリマー粒子。
【請求項3】
請求項2において、
核粒子と、
前記核粒子の外層に設けられた、前記超常磁性微粒子を含有する磁性体層と、
前記磁性体層の外層に設けられた、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有するポリマー部と、
を有する、有機ポリマー粒子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
トシル基を有する、プローブ結合用有機ポリマー粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の有機ポリマー粒子に、プローブを結合させてなる、プローブ結合粒子。
【請求項6】
ポリオキシエチレン基を有するモノマー(A)を含むモノマー部を重合して、ポリマー部を形成する工程を含む、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項7】
ポリオキシエチレン基を有する反応性乳化剤(R)の存在下でモノマー部を重合して、ポリマー部を形成する工程を含む、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記モノマー部は、加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)をさらに含み、
前記ポリマー部を加水分解処理する工程をさらに含む、2,3−ジヒドロキシプロピル基に由来する水酸基およびポリオキシエチレン基を有する有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項9】
2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する有機ポリマー粒子に、ポリオキシエチレン基を有する変性剤(M)を結合させる工程を含む、有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
加水分解により2,3−ジヒドロキシプロピル基を生成するモノマー(B)を含むモノマー部を重合することにより、ポリマー部を有する粒子を形成し、該ポリマー部を加水分解処理することにより、前記2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する有機ポリマー粒子を形成する工程をさらに含む、有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれかに記載の有機ポリマー粒子をトシル化処理する工程を含む、プローブ結合用有機ポリマー粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項4に記載のプローブ結合用有機ポリマー粒子にプローブを結合する工程を含む、プローブ結合粒子の製造方法。

【公開番号】特開2007−246858(P2007−246858A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76085(P2006−76085)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】