説明

有機ランキンサイクル炭化水素蒸発器用の消火システム

【課題】有機ランキンサイクルエネルギー回収システムであって、システムの発火性成分、例えばシクロペンタンなどの発火性作動流体が、この発火性成分の自然発火温度よりも支配的温度が高いシステムのある部分内へ偶発的に放出された場合に、火炎抑制および/または発火抑制機能を提供する諸特徴を備えるシステムを提供する。
【解決手段】有機ランキンサイクルエネルギー回収システム10が、炭化水素蒸発器の上流に配置された不活性ガス源34であって、炭化水素蒸発器からの漏れが検出された後、炭化水素蒸発器の内容物を不活性ガスでパージするように構成された不活性ガス源34を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムに関し、より具体的には、蒸発装置および該蒸発装置を使用してエネルギーを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの人間活動によって発生するいわゆる「廃熱」は、価値がありながらしばしば十分には利用されていない資源である。廃熱源には、煙道ガスを含むさまざまなタイプの熱燃焼排ガスが含まれる。タービンなどの工業用ターボ機械はしばしば、熱排ガス流の形態の回収可能な大量の廃熱を生み出す。
【0003】
有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは、例えばタービンの熱ガス流から廃熱を獲得し、回収された熱を望ましいパワー出力に変換するために、レトロフィット(retrofit)として配備されている。有機ランキンサイクルでは、閉ループ内で、一般に作動流体と呼ばれる有機流体に熱が伝達される。この廃熱と熱接触することによって作動流体は加熱され、蒸発し、次いでタービンなどの仕事抽出装置内で膨張し、この膨張中に、膨張している作動流体ガスからタービンの可動構成要素へ、膨張の運動エネルギーが伝達される。それによって機械エネルギーが生み出され、この機械エネルギーを例えば電気エネルギーへ変換することができる。次いで、そのエネルギー含量の一部をタービンへ伝達した作動流体ガスは凝縮されて液体状態となり、閉ループの加熱段へ戻されて再使用される。
【0004】
このような有機ランキンサイクルエネルギー回収システムで使用される作動流体は一般に、シクロペンタンなどの低沸点炭化水素である。そのため、この作動流体は高温での分解を受けやすい。さまざまな用途において、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは、摂氏500度程度の初期温度を有する熱源ガスと作動流体とを、作動流体を含む熱交換管の壁などの熱伝達障壁を挟んで熱接触させることに依存する。
【0005】
したがって、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムを使用して、例えばガスタービンが発生させた熱排ガス流から廃熱を回収することには、排ガス流の温度が作動流体の自然発火温度よりも高いというジレンマがある。このような条件下では、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムの構成要素の故障に起因する作動流体と排ガス流の直接接触が、火災および/または爆発の危険性を高めることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7503176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、このようなシステム故障を予期し、危険性を低減させる適当な手段を提供する改良された有機ランキンサイクルシステムを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、(a)ハウジングと、熱源ガス入口と、熱源ガス出口と、作動流体入口と、作動流体出口と、作動流体入口および作動流体出口と流体連通した状態でハウジング内に配置された熱交換管とを備える蒸発装置と、(b)作動流体または作動流体の燃焼副生物を感知する能力を有する検出器と、(c)仕事抽出装置、(d)凝縮器と、(e)ポンプと、(f)蒸発器の上流に配置された不活性ガス源と、(g)検出器の出力を受け取るように構成されたコントローラと、(h)熱源ガスバイパスとを備え、コントローラが、不活性ガス源を作動させるように構成され、コントローラが、熱源ガスを熱源ガスバイパスへ迂回させるように構成され、コントローラが、蒸発器への作動流体の導入を妨げるように構成された有機ランキンサイクルエネルギー回収システムを提供する。
【0009】
他の態様では、本発明は、有機ランキンサイクルシステムからエネルギーを回収する方法であって、(i)作動流体を含む熱交換管を備える蒸発装置に熱源ガス導入するステップと、(ii)熱源ガスから作動流体へ熱を伝達して、加熱された作動流体を生成するステップと、(iii)加熱された作動流体から、蒸発装置の外側に位置する仕事抽出装置へ、エネルギーを伝達するステップと、(iv)作動流体を蒸発装置へ戻すステップとを含み、作動流体または作動流体の燃焼副生物を検出し、この検出に応答して信号を生成するように構成された有機ランキンサイクルエネルギー回収システム内で実施されるものであり、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムが、検出器からの信号をコントローラで受け取るように構成され、コントローラが、この信号に応答して、蒸発器の上流の不活性ガス源を作動させるように構成され、コントローラが、この信号に応答して、熱源ガスを熱源ガスバイパスへ迂回させるように構成され、コントローラが、この信号に応答して、蒸発装置への作動流体の導入を妨げるように構成された方法を提供する。
【0010】
他の態様では、本発明は、有機ランキンサイクルエネルギー回収システム内で使用される蒸発装置であって、ハウジングと、熱源ガス入口と、熱源ガス出口と、作動流体入口と、作動流体出口と、作動流体入口および作動流体出口と流体連通した状態でハウジング内に配置された熱交換管と、作動流体または作動流体の燃焼副生物を感知する能力を有する検出器とを備え、作動流体入口が、作動流体源と不活性ガス源の間で切替え可能であるように構成された弁に結合された蒸発装置を提供する。
【0011】
本発明のこれらの特徴、態様および利点、ならびにその他の特徴、態様および利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読んだときにより完全に理解される。添付図面全体を通じて、同様の符号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に基づく有機ランキンサイクルエネルギー回収システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に基づく有機ランキンサイクルエネルギー回収システムの概略図である。
【図3】作動流体の漏出の検出に応答した有機ランキンサイクルエネルギー回収システムの本発明の一実施形態に基づく動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の明細書および後に記載する特許請求の範囲では、いくつかの用語に言及し、それらの用語は以下の意味を有すると定義される。
【0014】
別段文脈により明らかでない限り、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の指示物を含む。
【0015】
「適宜の」または「適宜」は、続いて記述される事象または状況が起こっても、または起こらなくてもよいこと、およびその記述が、その事象が起こる場合とその事象が起こらない場合とを含むことを意味する。
【0016】
「頂部」、「底部」、「外側」、「内側」などの用語は便宜上の用語であり、これらの用語を限定語と解釈すべきではないことも理解される。さらに、本発明のある特定の特徴が、あるグループのいくつかの要素およびそれらの要素の組合せのうちの少なくとも1つを備え、またはあるグループのいくつかの要素およびそれらの要素の組合せのうちの少なくとも1つからなると言われているときには、その特徴は、そのグループのそれらの要素のうちの任意の要素を、個別に、またはそのグループの残りの要素のうちの任意の要素と組み合わせて備え、あるいは、そのグループのそれらの要素のうちの任意の要素から、個別に、またはそのグループの残りの要素のうちの任意の要素と組み合わせてなることができることが理解される。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、その表現が関係する基本的機能の変化を生じさせることなしに支障なく変更することができる定量的表現を修飾するために、近似を表す言葉が使用されることがある。したがって、「約」などの1つまたは複数の用語によって修飾された値は、その指定された値に限定されない。ある場合には、近似を表す言葉が、その値を測定する機器の精度に対応することがある。同様に、ある用語と組み合わせて用語「無〜(free)」が使用されることがあり、この用語が、実質のない数、または痕跡量を含むこともあるが、それでも、修飾された用語は存在しないとみなされる。
【0018】
前述のとおり、一実施形態では、本発明は、(a)ハウジングと、熱源ガス入口と、熱源ガス出口と、作動流体入口と、作動流体出口と、作動流体入口および作動流体出口と流体連通した状態でハウジング内に配置された熱交換管とを備える蒸発装置と、(b)作動流体または作動流体の燃焼副生物を感知する能力を有する検出器と、(c)仕事抽出装置、(d)凝縮器と、(e)ポンプと、(f)蒸発器の上流に配置された不活性ガス源と、(g)検出器の出力を受け取るように構成されたコントローラと、(h)熱源ガスバイパスとを備え、コントローラが、不活性ガス源を作動させるように構成され、コントローラが、熱源ガスを熱源ガスバイパスへ迂回させるように構成され、コントローラが、蒸発器への作動流体の導入を妨げるように構成された有機ランキンサイクルエネルギー回収システムを提供する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に基づく有機ランキンサイクルエネルギー回収システム10の概略図である。このシステムは、熱源ガス17(図2参照)を供給する熱源(図示せず)に結合された蒸発装置12を含む。本発明のさまざまな実施形態では、この熱源を、熱源ガス入口を通して蒸発装置へ導入することができるガス流を生成する目的に使用することができる任意の熱源とすることができる。例えば、ガスタービンを熱源とすることができ、ガスタービンからの排ガスを熱源ガスとして使用することができる。熱源にはこの他、住居、商業および工業環境で使用される排ガス生成機器、例えば衣類乾燥機、空気調和ユニット、冷凍ユニット、燃料燃焼中に生成されるガス流、例えば煙道ガスが含まれる。
【0020】
再び図1を参照すると、蒸発装置12は、ハウジング14、熱源ガス入口16、熱源ガス出口18、作動流体入口22および作動流体出口24を含む。ハウジングは、前記熱源ガス入口から前記熱源ガス出口までの熱源ガス流路を画定する。一実施形態では、この熱源ガス流路が、本質的に、ハウジングの壁と熱交換管20によって占有されていない蒸発装置の内部の空間とによって画定された蒸発装置の内部全体である。熱交換管20は、作動流体入口および作動流体出口と流体連通した状態でハウジング内に配置されている。一実施形態では、熱交換管20が熱源ガス流路内に配置される。他の実施形態では、熱交換管20が熱源ガス流路内に配置されない。
【0021】
図1および図2に示す実施形態では、熱交換管20が、単一の作動流体入口22と単一の作動流体出口24の間に配置された単一の管として示されている。しかしながら、本明細書で使用するとき、表現「作動流体入口および作動流体出口と流体連通した状態でハウジング内に配置された熱交換管」は、1つまたは複数の作動流体入口および1つまたは複数の作動流体出口と流体連通した状態で蒸発装置のハウジング内に配置された複数の熱交換管を含むことがある。
【0022】
熱交換管20は、有機ランキンサイクル作動流体40(図2参照)を収容するように構成される。前述のとおり、図1に示した実施形態では、蒸発装置12が、熱源ガス17(図2参照)を供給するように構成された熱源(図示せず)に結合されており、作動流体40を過熱しない形での作動流体40と熱源ガスの間の熱交換を促進するため、熱源ガス17は、熱源ガス入口16から蒸発装置12に入り、熱源ガス流路70(図2参照)に沿って熱交換管20と接触する。一実施形態では、作動流体40が、熱交換管20の内部によって画定された作動流体流路(図示せず)に沿って移動する。一実施形態では、熱源ガスの温度が摂氏約375度から摂氏約450度である。
【0023】
前述のとおり、一実施形態では作動流体40が炭化水素である。炭化水素の非限定的な例には、シクロペンタン、n−ペンタン、イソペンタン、プロパン、ブタン、n−ヘキサンおよびシクロヘキサンが含まれる。他の実施形態では、作動流体40を、2種類以上の炭化水素の混合物とすることができる。一実施形態では、作動流体40が、例えばシクロヘキサン−プロパン、シクロヘキサン−ブタン、シクロペンタン−イソペンタン、シクロペンタン−ブタン、シクロペンタン−シクロヘキサン混合物などの2元流体である。他の実施形態では、作動流体40が、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびそれらの混合物からなるグループから選択された炭化水素である。他の実施形態では、作動流体40が、シクロペンタンおよびシクロヘキサンからなるグループから選択された炭化水素である。
【0024】
本発明が提供する有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは検出器26を備え、この検出器は、システム内の1つまたは複数の位置に存在する作動流体あるいは作動流体の1種または数種の燃焼副生物を、たとえごく少量であっても検出する能力を有する。この開示の目的上、作動流体の燃焼によって発せられた光は燃焼副生物とみなされ、本発明のさまざまな実施形態では、この検出器が、蒸発装置内のこのような光を検出するように構成される。したがって、一実施形態では、この検出器が蒸発装置12内に配置される。代替実施形態では、この検出器が、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムの蒸発装置12の下流のある部分、例えば蒸発装置から熱源ガスを除去するように構成された、熱源ガス出口の下流の配管の中に配置される。当業者は、さまざまなセンサおよび有機ランキンサイクルシステム設計に基づいて、検出器26を配置することができる他の適当な位置を思いつくことができる。
【0025】
一実施形態では、検出器26が、光検出器、金属酸化物センサ、固体センサ、赤外分光検出器、紫外−可視分光検出器、熱電対などの温度センサ、光高温計、光ファイバセンサ、ガス温度を測定する抵抗性熱デバイス(resistive thermal device)および火炎検出器からなるグループから選択される。一実施形態では、検出器26が、作動流体の燃焼中に発せられた光を感知する能力を有する光検出器である。代替実施形態では、この検出器が赤外分光検出器を備える。
【0026】
本発明の有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは、蒸発器の上流に不活性ガス源34を含む。不活性ガス源に関して使用されるとき、表現「蒸発器の上流」は、不活性ガスが蒸発装置に入ることが許されているときに、不活性ガスが、作動流体入口、例えば作動流体入口22を通って蒸発装置に入るように、不活性ガス源が構成されていることを意味する。一般に、不活性ガス源34および図2において要素72として示されている作動流体戻り管路はともに、コントローラ36にリンクされた多方弁(multi−way valve)46に結合される。コントローラは、不活性ガス源34から熱交換管20の内部への流体の流入に関して多方弁が開いているときには、熱交換管20の内部への作動流体40(図2)の流入に関して多方弁46が閉じているように、多方弁46の状態を制御する。一実施形態では、多方弁46が2方弁である。このように、本発明が提供する有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは、蒸発装置への作動流体の流入と不活性ガス源からの流体の流入とが相互排除であるように構成される。この相互排除原則、およびコントローラが多方弁46の状態を制御することにより、さまざまな実施形態において、コントローラは、蒸発器への作動流体の導入を妨げるように構成されていると言われる。
【0027】
不活性ガス源は、任意の火炎抑制および/または発火抑制流体を含むことができ、この不活性ガス源が、用語「不活性ガス」の厳密な定義に含まれる必要はない。不活性ガス源の役割は、作動流体の漏出に至る故障がシステム内で起こった場合に蒸発装置内の作動流体を追い出すことである。例えば、蒸発装置内の熱交換管20にピンホールが存在することによって作動流体の漏出が引き起こされた場合には、蒸発装置内または蒸発装置の下流に位置する検出器が、作動流体または作動流体の燃焼副生物を検出し、信号を生成し、その信号をコントローラが受け取る。コントローラは、とりわけ、多方弁46に対して、蒸発装置への作動流体の流入に関しては閉じ、不活性ガス源からの火炎抑制および/または発火抑制流体の流入に関しては開くように指示する。このように、一実施形態では、コントローラが、不活性ガス源を「作動させる」ように構成されていると言われ、これは単純に、コントローラが、不活性ガス源から蒸発装置への流体の流入を開始させることができることを意味する。
【0028】
一実施形態では、不活性ガス源34が、窒素、アルゴン、二酸化炭素およびこれらの組合せからなるグループから選択された不活性ガスを含む。代替実施形態では、不活性ガス源が、ハロカーボン、例えばヘプタフルオロプロパン(FM−200(登録商標)参照)を含む火炎抑制および/または発火抑制流体を含む。一実施形態では、不活性ガス源が本質的に窒素からなる。
【0029】
前述のとおり、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは、検出器26から出力信号を受け取るように構成されたコントローラ36を含み、この出力信号は、作動流体が漏出したことを示す検出器による作動流体または作動流体の燃焼副生物を感知した結果として生成される。このコントローラは、検出器から出力信号を受け取った場合にさまざまなシステム構成要素、例えば熱源ガスを蒸発装置12または熱源ガスバイパス38へ導くように制御される熱源ガス入口弁44、および本明細書では作動流体入口弁46とも呼ぶ多方弁46を制御するように動作することができる。一実施形態では、有機ランキンサイクルエネルギー回収システム10の動作中に、検出器26が、熱交換管20の外側の蒸発装置12内に、作動流体40および作動流体40の燃焼副生物のうちの少なくとも一方が存在することを感知したときに、コントローラ36へ信号が送られる。このコントローラは、無線通信リンクまたは有線通信リンクによって、あるいは無線通信リンクと有線通信リンクの組合せによって、検出器および他のさまざまなシステム構成要素と通信することができる。一実施形態では、この通信リンクが電気信号を伝送するように構成される。代替実施形態では、この通信リンクが光信号を伝送するように構成される。他の実施形態では、この通信リンクが、電気信号と光信号のうちのいずれか一方を伝達することができる。一実施形態では、この通信リンクが音響信号を伝送するように構成される。一実施形態では、コントローラ36が、通信リンク50を介して検出器26に結合され、通信リンク48を介して熱源ガス入口弁44に結合され、通信リンク52を介して作動流体入口弁46に結合される。
【0030】
前述のとおり、コントローラ36は、弁46を切り替え、不活性ガス源34からの作動流体入口22を通した不活性流体(火炎抑制および/または発火抑制流体)の流入を開始させ、それにより蒸発装置の内側の熱交換管20内に存在する一切の作動流体を追い出すことにより、不活性ガス源34を作動させるように構成される。追い出された作動流体は、必要になるまで作動流体を安全に収容することができる蒸発装置の外側に位置する有機ランキンサイクルエネルギー回収システムのある部分、例えば作動流体保持タンク(図示せず)へ移すことができる。さらに、不活性ガス源34の作動は、作動流体入口を通して蒸発装置に作動流体がさらに導入されるのを妨げるように実施される。
【0031】
前述のとおり、コントローラ36は、熱源ガスを熱源ガスバイパス38へ迂回させるように構成される。このことにより、蒸発装置内において作動流体の漏出が起こった場合に、蒸発装置を迅速に冷却することができる。
【0032】
有機ランキンサイクルエネルギー回収システムの動作中に、熱源ガスの熱は、熱交換管20内に含まれる作動流体40へ伝達されて、加熱された作動流体(時に「作動流体蒸気」とも呼ぶ)を生成する。蒸発装置に入る熱源ガスの温度は、熱源の種類および熱源と蒸発装置の間の距離によって異なることがある。一実施形態では、蒸発装置に入る熱源ガスの温度が摂氏約350度から摂氏約600度である。一実施形態では、作動流体出口を通って蒸発装置から出現する加熱された作動流体の温度が、摂氏約150度から摂氏約300度である。一実施形態では、加熱された作動流体の圧力が約20から約30バールである。
【0033】
加熱された作動流体蒸気は、膨張器28を通過して仕事抽出装置(図示せず)を駆動することができる。例示的な実施形態では、この膨張器が、ラジアル型膨張器、アキシャル型膨張器、インパルス型膨張器または高温スクリュー型膨張器である。膨張器28を通過した後、そのエネルギーの一部を膨張器へ伝達した相対的に低い圧力および低い温度を有する作動流体蒸気は凝縮器30に通され、そこで凝縮されて液体状態の作動流体40となり、次いでポンプ32によってポンピングされ、作動流体入口22から蒸発装置12へ戻される。他の実施形態では、膨張器28を通過した後に、相対的に低い圧力および低い温度を有する作動流体蒸気が、凝縮器に入る前に、熱交換ユニットとして機能することができるレキュペレータ(recuperator)(図示せず)に通される。一例では、凝縮された作動流体を、圧力約20バール、温度摂氏約50度で蒸発装置12へ供給することができる。蒸発装置、仕事抽出装置、凝縮器およびポンプは、閉ループ内に閉じ込められた作動流体と一緒に動作するように構成される。
【0034】
図2を参照すると、この図は、蒸発装置12および他のシステム構成要素を備える本発明の例示的な一実施形態に基づく有機ランキンサイクルエネルギー回収システム10の一部分を示す。蒸発装置12は、ハウジング14、熱源ガス入口16および熱源ガス出口18を含む。示された実施形態では、蒸発装置の内側の熱源ガス流路70内に熱交換管20が配置されている。図2に示すように、熱源ガス流路70は、本質的に、ハウジングの壁78と熱交換管20によって占有されていない蒸発装置12の内部の空間とによって画定された蒸発装置12の内部全体である。図2に示した実施形態では、熱交換管20が、熱交換管20のハウジング壁78に埋め込まれた部分80によって、蒸発装置ハウジング14内に固定されている。熱源ガス出口18の下流には、作動流体または作動流体の燃焼生成物を感知する能力を有する検出器26が位置する。熱源ガス入口16には、熱源ガス入口弁44を介して熱源ガスバイパス38が結合されている。弁44を切り替えて、熱源ガス流を蒸発装置または熱源ガスバイパスへ導くことができる。作動流体入口22は作動流体入口弁46に結合されており、作動流体入口弁46は不活性ガス源34にも結合されている。図2に示した実施形態では、熱源ガス入口弁44、作動流体入口弁46および検出器26がそれぞれ、対応する通信リンク48、52および50を介してコントローラ36に結合されている。
【0035】
前述のとおり、一態様では、本発明は、有機ランキンサイクルシステムからエネルギーを回収する方法を提供する。一実施形態では、この方法は、(i)作動流体を含む熱交換管を備える蒸発装置に熱源ガス導入するステップと、(ii)熱源ガスから作動流体へ熱を伝達して、加熱された作動流体を生成するステップと、(iii)加熱された作動流体から、蒸発装置の外側に位置する仕事抽出装置へ、エネルギーを伝達するステップと、(iv)作動流体を蒸発装置へ戻すステップとを含む。この方法は、作動流体または作動流体の燃焼副生物を検出するように構成された有機ランキンサイクルエネルギー回収システム内で実施される。さらに、この有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは、作動流体または作動流体の燃焼副生物の検出に応答して信号を生成するように構成される。有機ランキンサイクルエネルギー回収システムは、検出器からの信号をコントローラで受け取るように構成され、コントローラは、この信号に応答して、蒸発器の上流の不活性ガス源を作動させるように構成される。さらに、コントローラは、この信号に応答して、熱源ガスを熱源ガスバイパスへ迂回させ、蒸発装置からそらすように構成され、さらに、この信号に応答して、蒸発装置への追加の作動流体の導入を妨げるように構成される。
【0036】
図3を参照すると、この図は、有機ランキンサイクルエネルギー回収システムを動作させる本発明の一実施形態に基づく方法を示す流れ図100を示している。第1の方法ステップ108で、検出器26は、作動流体40と作動流体40の燃焼副生物のうちの少なくとも一方の存在を検出し、その検出に応答して信号を生成し、その信号をコントローラ36へ送信する。第2の方法ステップ110で、コントローラは、ステップ112〜122を含む有機ランキンサイクルエネルギー回収システムの緊急停止プロトコルを開始する。第1の一連の方法ステップ112〜118で、コントローラは、蒸発装置への作動流体の輸送を停止するようにポンプに対して指示し(112)、膨張器バイパス54(図1参照)を徐々に開くように指示し(114)、熱源ガスを熱源ガスバイパスへ迂回させ、蒸発装置からそらすように指示し(116)、凝縮器に結合されたファン(図1には示されていない)をフルパワーにセットして、凝縮器の除熱能力を最大にするように指示する(118)。方法ステップ112〜118は状況に応じてどの順番で実施してもよい。方法ステップ112〜118に続き、コントローラは、方法ステップ120で、不活性ガス源を作動させて、蒸発装置内の1つまたは複数の熱交換管からの作動流体のパージを開始する。パージされた作動流体は適当な安全な場所に貯蔵することができる。方法ステップ122で、不活性ガス源からの火炎抑制および/または発火抑制流体の流入を終わらせることができる。代替実施形態では、システムのさまざまな構成要素内の不活性雰囲気を維持するために、不活性ガス源からの火炎抑制および/または発火抑制流体の流入が継続される。例えば、蒸発装置内の1つまたは複数の熱交換管に重大な故障が生じた場合に、不活性ガス源からの火炎抑制および/または発火抑制流体の流入を継続することによって、蒸発装置内の熱源ガス流路および蒸発装置の下流の熱源ガス流路内の不活性雰囲気を維持することができる。
【0037】
本書は、いくつかの例を使用し、その最良の形態を含む本発明を開示し、また任意の装置またはシステムを製作し、使用すること、および組み込まれた任意の方法を実行することを含めて、当業者が本発明を実施することを可能にする。本発明の特許性のある範囲は、下記の特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつくその他の例を含むことがある。このようなその他の例は、それらが特許請求の範囲の文字表現と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字表現とわずかしか異ならない等価の構造要素を含む場合に、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0038】
10 有機ランキンサイクルエネルギー回収システム
12 蒸発装置
14 ハウジング
16 熱源ガス入口
18 熱源ガス出口
20 熱交換管
22 作動流体入口
24 作動流体出口
26 検出器
28 膨張器
30 凝縮器
32 ポンプ
34 不活性ガス源
36 コントローラ
38 熱源ガスバイパス
40 作動流体
42 仕事抽出装置
44 熱源ガス入口弁
46 作動流体入口弁
48 コントローラ−熱源ガス入口弁間の通信リンク
50 コントローラ−検出器間の通信リンク
52 コントローラ−作動流体入口弁間の通信リンク
54 膨張器バイパス
58 熱源ガス
70 熱源ガス流路
72 作動流体戻り管路
78 ハウジングの壁
80 熱交換管の埋め込まれた部分
100 流れ図
108 方法ステップ
110 方法ステップ
112 方法ステップ
114 方法ステップ
116 方法ステップ
118 方法ステップ
120 方法ステップ
122 方法ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハウジング(14)と、熱源ガス入口(16)と、熱源ガス出口(18)と、作動流体入口(22)と、作動流体出口(24)と、前記作動流体入口(22)および前記作動流体出口(24)と流体連通した状態で前記ハウジング(14)内に配置された熱交換管(20)とを備える蒸発装置(12)と、
(b)前記作動流体(40)または前記作動流体(40)の燃焼副生物を感知する能力を有する検出器(26)と、
(c)仕事抽出装置(42)と、
(d)凝縮器(30)と、
(e)ポンプ(32)と、
(f)前記蒸発器(12)の上流に配置された不活性ガス源(34)と、
(g)前記検出器(26)の出力を受け取るように構成されたコントローラ(36)と、
(h)熱源ガスバイパス(38)と
を備え、
前記コントローラ(36)が、前記不活性ガス源(34)を作動させるように構成され、
前記コントローラ(36)が、熱源ガスを前記熱源ガスバイパス(38)へ迂回させるように構成され、
前記コントローラ(36)が、前記蒸発器(12)への作動流体(40)の導入を妨げるように構成された
有機ランキンサイクルエネルギー回収システム。
【請求項2】
前記検出器(26)が、ガスセンサ、光検出器、固体センサ、赤外分光検出器、紫外検出器、温度センサおよび火炎センサからなるグループから選択された、請求項1記載のエネルギー回収システム。
【請求項3】
前記検出器(26)が、前記蒸発器の前記ハウジング(14)内に配置された、請求項1記載のエネルギー回収システム。
【請求項4】
前記検出器(26)が、前記蒸発器の前記ハウジング(14)の外側に配置された、請求項1記載のエネルギー回収システム。
【請求項5】
前記不活性ガス源(34)が、窒素、アルゴン、二酸化炭素およびこれらのガスのうちの2種類以上のガスの組合せからなるグループから選択された不活性ガスを含む、請求項1記載のエネルギー回収システム。
【請求項6】
有機ランキンサイクルシステムからエネルギーを回収する方法であって、
(i)作動流体(40)を含む熱交換管(20)を備える蒸発装置(12)に熱源ガス(58)を導入するステップと、
(ii)前記熱源ガス(58)から作動流体(40)へ熱を伝達して、加熱された作動流体を生成するステップと、
(iii)前記加熱された作動流体から、前記蒸発装置(12)の外側に位置する仕事抽出装置(42)へ、エネルギーを伝達するステップと、
(iv)前記作動流体(40)を前記蒸発装置(12)へ戻すステップと
を含み、
前記作動流体(40)または前記作動流体(40)の燃焼副生物を検出し、この検出に応答して信号を生成するように構成された有機ランキンサイクルエネルギー回収システム内で実施されるものであり、
前記有機ランキンサイクルエネルギー回収システムが、検出器からの前記信号をコントローラで受け取るように構成され、
前記コントローラが、前記信号に応答して、前記蒸発器の上流の不活性ガス源を作動させるように構成され、
前記コントローラが、前記信号に応答して、前記熱源ガスを熱源ガスバイパスへ迂回させるように構成され、
前記コントローラ(36)が、前記信号に応答して、前記蒸発装置(12)への作動流体(40)の導入を妨げるように構成された
方法。
【請求項7】
前記有機ランキンサイクルエネルギー回収システムが、
(a)ハウジング(14)と、熱源ガス入口(16)と、熱源ガス出口(18)と、作動流体入口(22)と、作動流体出口(24)と、前記作動流体入口(22)および前記作動流体出口(24)と流体連通した状態で前記ハウジング(14)内に配置された熱交換管(20)とを備える蒸発装置(12)と、
(b)前記作動流体または前記作動流体の燃焼副生物を感知する能力を有する検出器(26)と、
(c)仕事抽出装置(42)と、
(d)凝縮器(30)と、
(e)ポンプ(32)と、
(f)前記蒸発装置(12)の上流に配置された不活性ガス源(34)と、
(g)前記検出器(26)の出力を受け取るように構成されたコントローラ(36)と、
(h)熱源ガスバイパス(38)と
を備え、
前記コントローラ(36)が、前記不活性ガス源(34)を作動させるように構成され、
前記コントローラ(36)が、熱源ガスを前記熱源ガスバイパス(38)へ迂回させるように構成され、
前記コントローラ(36)が、前記蒸発装置(12)への作動流体(40)の導入を妨げるように構成された
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記作動流体(40)が、メチルシクロペンタン、メチルシクロブタン、シクロペンタン、イソペンタンおよびシクロヘキサンからなるグループから選択された、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記熱源ガス(58)が煙道ガスである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
有機ランキンサイクルエネルギー回収システム内で使用される蒸発装置であって、
ハウジング(14)と、熱源ガス入口(16)と、熱源ガス出口(18)と、作動流体入口(22)と、作動流体出口(24)と、前記作動流体入口(22)および前記作動流体出口(24)と流体連通した状態で前記ハウジング(14)内に配置された熱交換管(20)と、前記作動流体(40)または前記作動流体(40)の燃焼副生物を感知する能力を有する検出器(26)とを備え、前記作動流体入口(22)が、作動流体源(72)と不活性ガス源(34)の間で切替え可能であるように構成された弁(46)に結合された
蒸発装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−31863(P2012−31863A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166342(P2011−166342)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】