説明

有機リン系難燃剤とその製造方法、当該有機リン系難燃剤を含有する樹脂組成物

【課題】樹脂に添加して優れた難燃性が得られ、燃焼時に有毒ガスが殆ど発生せず、揮発性・昇華性、耐熱性に問題のない新規な有機リン系難燃剤、その製造方法、当該有機リン系難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物の提供する。
【解決手段】下記一般式(1)又は(2)で示される有機リン系難燃剤。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な有機リン系難燃剤とその製造方法、当該有機リン系難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂は、その優れた成形加工性、機械的特性、外観等の特徴から成形品、フィルム、繊維やコーティング材として広く使用され、重用されている。一般的に合成樹脂は可燃性であるため、多くの電気・電子製品や自動車用途等に供するためには難燃処理を必要とする。合成樹脂に難燃性を付与するためには、一般的に難燃剤が使用されており、このような難燃剤としては、有機臭素系化合物、アンチモン化合物、無機水酸化物、有機リン化合物等が知られている。
【0003】
合成樹脂に難燃性を付与するためには、例えば、特許文献1にも記載され、現在も多用されているヘキサブロモシクロドデカン等のハロゲン元素を含む有機臭素系化合物(以下、単に「ハロゲン系難燃剤」という。)は、それを用いた合成樹脂の成形加工時、加熱・溶融および焼却の過程において、ハロゲン化水素の発生やダイオキシン類の生成、金型腐食等の危険性があり、主として環境への影響の観点からは、非ハロゲン系の難燃剤の使用が望まれている。
【0004】
また、特許文献2に記載されているアンチモン化合物は、一般にハロゲン系難燃剤系又は有機塩素系化合物等と併用されるが、アンチモン化合物自体の有害性から使用を控える傾向にある。
【0005】
更に、ハロゲン系難燃剤を使用しない方法として、特許文献3に記載の無機水酸化物があるが、無機水酸化物は、熱分解で生じる水により難燃剤が発現されるために難燃効果が低く、そのために多量に添加せねばならない。その結果、多量に添加することにより、樹脂本来の特性が損なわれるという欠点がある。
【0006】
また、ハロゲン系難燃剤を使用しない他の方法として、特許文献4に記載のトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)等の芳香族系有機リン化合物を用いることが知られているが、これら従来周知の有機リン化合物は、揮発性、昇華性および耐熱性の点で不十分である。
【0007】
加えて、ハロゲン系難燃剤を使用しない他の方法としては、特許文献5に記載の赤リンの使用も挙げられ、例えば特許文献5において難燃性添加剤を併用することで高い難燃効果が得られる技術が開示されているが、赤リンの使用は燃焼時のホスフィンガス発生の恐れが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−53761号公報
【特許文献2】特開平11−181256号公報
【特許文献3】特開平1−141929号公報
【特許文献4】特開平6−57135号公報
【特許文献5】特開平5−230305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、有機リン化合物を樹脂に添加しても、その有機高分子物質の本来持つ特性を損なうこと無く難燃性を持たせ、かつ燃焼時にハロゲン系難燃剤のような有毒ガスが殆ど発生しない、アンチモンのような有害性が無く、無機水酸化物のように難燃性を得るために多量に使用しなければならないという問題及び芳香族系有機リン化合物のような揮発性・昇華性の心配や耐熱性に関しても問題のない新規な有機リン系難燃剤、その製造方法、当該有機リン系難燃剤を含有する難燃性樹脂組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するため、本発明は、下記一般式(1)又は(2)で示される有機リン系難燃剤を提供する。
【0011】
【化1】

【化2】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示す)
【0012】
また本発明は、下記一般式(3)で示される化合物と、下記一般式(4)で示される化合物と、ハロゲン化ホスホリルとを反応させて前記有機リン系難燃剤を得ることを特徴とする有機リン系難燃剤の製造方法を提供する。
【0013】
【化3】

【化4】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示す)
【0014】
また本発明は、前記一般式(3)で示される化合物とハロゲン化ホスホリルとを反応させて得られる下記一般式(5)で示される化合物と、前記一般式(4)で示される化合物とを反応させて前記有機リン系難燃剤を得ることを特徴とする有機リン系難燃剤の製造方法を提供する。
【0015】
【化5】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Xはハロゲン原子を示す)
【0016】
また本発明は、前記一般式(4)で示される化合物とハロゲン化ホスホリルとを反応させて得られる下記一般式(6)で示される化合物と、前記一般式(3)で示される化合物とを反応させて前記有機リン系難燃剤を得ることを特徴とする有機リン系難燃剤の製造方法を提供する。
【0017】
【化6】

(式中、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
【0018】
また本発明は、前記有機リン系難燃剤を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に含有させてなることを特徴とする難燃性樹脂組成物を提供する。
【0019】
本発明の難燃性樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート‐アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル‐アクリルゴム‐スチレン樹脂(AAS樹脂)、アクリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびそれらのアロイ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0020】
本発明の難燃性樹脂組成物は、前記有機リン系難燃剤を熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2〜40質量部を含有させてなることが好ましい。
【0021】
本発明の難燃性樹脂組成物において、前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビス‐マレイミド‐トリアジン樹脂および変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0022】
本発明の難燃性樹脂組成物において、前記有機リン系難燃剤を熱硬化性樹脂100質量部に対し0.2〜40質量部含有させてなることが好ましい。
【0023】
また本発明は、前記難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成形品を提供する。
【0024】
本発明において、難燃性樹脂成形品が発泡ポリスチレン樹脂成形品であることが好ましい。
【0025】
また本発明は、前記難燃性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする難燃性繊維を提供する。
【0026】
また本発明は、前記難燃性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする難燃性フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有機リン系難燃剤は、添加型難燃剤として樹脂に添加した際に、優れた難燃性を付与することができる。
本発明の有機リン系難燃剤は、燃焼時にハロゲン系難燃剤のような有毒ガスが殆ど発生せず、またアンチモン系難燃剤のような有害性が無く、安全性に優れている。
本発明の有機リン系難燃剤は、樹脂に少量添加することで樹脂に難燃性を付与できるので、無機水酸化物系難燃剤のように難燃性を得るために多量に使用しなければならず、そのために樹脂の成形性、透明性、機械強度、外観等を悪化させてしまうといった問題を解消でき、その樹脂の本来持つ特性を損なうこと無く難燃性を付与することができる。
本発明の有機リン系難燃剤は、従来の有機リン化合物系難燃剤における揮発性、昇華性および耐熱性の問題を解消でき、融点の高い熱可塑性樹脂に添加した場合であっても安定した難燃性を付与することができ、難燃性付与の対象となる樹脂の選択自由度を広げることができる。
【0028】
本発明の有機リン化合物の製造方法は、前記の通り添加型難燃剤として有用な有機リン系難燃剤を効率よく製造することができる。
【0029】
本発明の難燃性樹脂組成物は、前記有機リン系難燃剤を樹脂に有効量含有させたものなので、優れた難燃性を有している。
本発明の難燃性樹脂組成物は、燃焼時に有害ガスが殆ど発生せず、また有害性がない前記有機リン系難燃剤を添加したものなので、安全性が高い難燃性樹脂組成物を提供できる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、少量の有機リン系難燃剤を樹脂に添加することで樹脂に難燃性を付与できるので、無機水酸化物系難燃剤のように難燃性を得るために多量に使用しなければならず、そのために樹脂の成形性、透明性、機械強度、外観等を悪化させてしまうといった問題を解消でき、その樹脂の本来持つ特性を損なうこと無く優れた難燃性を有する難燃性樹脂組成物を提供することができる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、有機リン系難燃剤は、従来の有機リン化合物系難燃剤における揮発性、昇華性および耐熱性の問題を解消でき、融点の高い熱可塑性樹脂に添加した場合であっても安定した難燃性を付与することができ、難燃性付与の対象となる樹脂の選択自由度を広げることができる。
【0030】
本発明の難燃性樹脂成形品、難燃性繊維及び難燃性フィルムは、本発明に係る前記難燃性樹脂組成物を成形してなるものなので、前記難燃性樹脂組成物における効果と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を説明する。
[有機リン系難燃剤]
本発明の有機リン系難燃剤は、一般式(1)又は(2)で示される有機リン化合物である。
一般式(1)又は(2)中のRf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示す。
以下、一般式(1)で示される本発明の有機リン系難燃剤を「有機リン系難燃剤(1)」と記し、また一般式(2)で示される本発明の有機リン系難燃剤を「有機リン系難燃剤(2)」と記す。
【0032】
[有機リン系難燃剤の製造方法]
<有機リン系難燃剤(1)の製造方法>
有機リン系難燃剤(1)は、下記スキーム1に記した反応によって製造することができる。
下記スキーム1に記した製造方法では、一般式(3)で示される化合物(以下、「化合物(3)」と記す。)およびハロゲン化ホスホリルをルイス酸存在下で反応させ、得られた生成物と一般式(4)(以下、「化合物(4)」と記す。)で示される化合物とを反応させ、有機リン系難燃剤(1)を製造する。
【0033】
【化7】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
【0034】
本発明においてアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基およびターシャリブチル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基および3‐メチル‐シクロペンチル基等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル基およびフェネチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、トリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0035】
また、置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、およびターシャリブチル基等が挙げられる。このような置換基の数は一つであっても複数であってもよく、複数の場合に複数種の置換基が混在していてもよい。
【0036】
次に、本発明の有機リン系難燃剤(1)の製造方法について詳しく説明する。
【0037】
1.原料
本発明の有機リン系難燃剤(1)は、化合物(3)と、化合物(4)と、ハロゲン化ホスホリルとを反応させることによって得られる。
【0038】
化合物(3)の具体例としては、フェノール、フルオロフェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ターシャリブチルフェノール、ターシャリアミルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、キシレノール、ジイソプロピルフェノール、ジターシャリブチルフェノール、ジフェニルフェノール、ジベンジルフェノールおよびターシャリブチルクレゾール等が挙げられる。
【0039】
化合物(4)の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、6−(パーフルオロエチル)ヘキサノール、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタノール、2−(パーフルオロブチル)エタノール、3−(パーフルオロブチル)プロパノール、6−(パーフルオロブチル)ヘキサノール、2−パーフルオロプロポキシ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパノール、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、3−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、6−(パーフルオロヘキシル)ヘキサノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、3−(パーフルオロオクチル)プロパノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロデシル)エタノール、2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノナノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノナノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタノール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール等が挙げられる。
【0040】
ハロゲン化ホスホリルの具体例としては、塩化ホスホリル、臭化ホスホリル、ヨウ化ホスホリル等が挙げられる。
【0041】
第一工程(A1)においては、化合物(3)とハロゲン化ホスホリルとをルイス酸存在下で反応させるが、この反応により、まず中間体として一般式(5)で示される化合物(以下、中間体(5)と記す。)が生成する。副反応の制御等を考慮すると、ハロゲン化ホスホリルは化合物(3)の1モル倍以上用いることが好ましい。
これは、使用するハロゲン化ホスホリルの量が1モル倍以上であると、ハロゲン化ホスホリルの3個のクロル基の1個のみが化合物(3)のヒドロキシ基と反応する傾向があるため、2個以上のクロル基が反応することによって生じる副生物が副生しにくく、中間体(5)を収率よく得ることが出来るためである。
引き続き第二工程(B1)にて、これに化合物(4)を反応させることで、本発明の有機リン系難燃剤(1)の製造が可能である。
【0042】
第一工程(A1)において、反応温度は80〜120℃が好ましい。第二工程(B1)において、反応温度は50〜150℃が好ましい。
【0043】
第一工程(A1)における化合物(3)とハロゲン化ホスホリルとの反応は、おおよそ反応が進行しなくなるまで行なえばよく、反応時間は1時間〜15時間が好ましい。工程(A1)で得られた中間体(5)は、精製を行なわずに第二工程(B1)に用いることも可能であるが、本発明の方法では、精製するのが好ましい。その際、未反応のハロゲン化ホスホリルは回収され、再利用されるのが経済的であり好ましい。
【0044】
第二工程(B1)において中間体(5)と化合物(4)との反応時間は1時間〜10時間が好ましい。
【0045】
<有機リン系難燃剤(2)の製造方法>
化合物(4)およびハロゲン化ホスホリルをルイス酸存在下で反応させ、得られた生成物と化合物(3)とをルイス酸存在下で反応させる際の反応式は、下記スキーム2のように表される。
【0046】
【化8】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
【0047】
第一工程(A2)においては、ルイス酸存在下で化合物(4)とハロゲン化ホスホリルとを反応させるが、この反応により、まず中間体として一般式(6)で示される化合物(以下、中間体(6)と記す。)が生成する。副反応の制御等を考慮すると、ハロゲン化ホスホリルは化合物(4)の1モル倍以上用いることが好ましい。
これは、使用するハロゲン化ホスホリルの量が1モル倍以上であると、ハロゲン化ホスホリルの3個のクロル基の1個のみが化合物(4)のヒドロキシ基と反応する傾向があるため、2個以上のクロル基が反応することによって生じる副生物が副生しにくく、中間体(6)を収率よく得ることが出来るためである。
引き続き第二工程(B2)にて、ルイス酸存在下でこれに化合物(3)を反応させることで、本発明の有機リン系難燃剤(2)の製造が可能である。
【0048】
第一工程(A2)において、反応温度は0〜130℃が好ましい。第二工程(B2)において、反応温度は100〜200℃が好ましい。
【0049】
第一工程(A2)における化合物(4)とハロゲン化ホスホリルとの反応は、おおよそ反応が進行しなくなるまで行なえばよく、反応時間は1時間〜18時間が好ましい。工程(A2)で得られた中間体(6)は、精製を行なわずに第二工程(B2)に用いることも可能であるが、本発明の方法では、精製するのが好ましい。その際、未反応のハロゲン化ホスホリルは回収され、再利用されるのが経済的であり好ましい。
【0050】
第二工程(B2)において中間体(6)と化合物(3)との反応時間は1時間〜20時間が好ましい。
【0051】
各種原料化合物(化合物(3)、化合物(4)、ハロゲン化ホスホリル)を反応させる際は、3つの原料化合物を同時に反応させても良い。
【0052】
本発明の製造方法で用いられるルイス酸としては、例えば塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、塩化鉄などが挙げられる。好ましくは塩化マグネシウムである。これらのルイス酸は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ルイス酸の使用量はハロゲン化ホスホリル1モル当たり、0.0001〜1モル、好ましくは、0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.002〜0.1モルの割合であればよい。
【0053】
本発明の製造方法における第一工程(A1およびA2)、第二工程(B1およびB2)のいずれの反応も、無溶媒で行なってもよいし、溶媒を用いてもよい。用いることができる溶媒の具体例としてはジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、スルホラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶媒は単一で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。溶媒の使用量はハロゲン化ホスホリル1質量部あたり、0.1〜1000質量部、好ましくは0.2〜50質量部の割合であればよい。これらのうち、無溶媒、トルエン、キシレンが好ましく、無溶媒で行なうことが最も好ましい。
【0054】
本発明の方法により合成できる新規な有機リン系難燃剤(1)又は(2)は、粗生成物のまま使用してもよいが、水洗、抽出、蒸留、再結晶等の方法を単独又は組み合わせて精製してもよい。
【0055】
得られた有機リン系難燃剤(1)又は(2)の構造は、赤外吸収スペクトル法(IR)、磁気共鳴吸収法(NMR)、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ法などにより確認することができる。
【0056】
[難燃性樹脂組成物]
<対象樹脂>
本発明の難燃性樹脂組成物を構成する樹脂としては、特に制限されるものではなく、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が採用される。本発明に係る好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート‐アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル‐アクリルゴム‐スチレン樹脂(AAS樹脂)、アクリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびそれらのアロイ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0057】
本発明に係る好ましい熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ビス‐マレイミド‐トリアジン樹脂および変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよく、又は二種以上を併用して用いることもできる。
【0058】
本発明に用いる有機リン系難燃剤(1),(2)の含有量は、樹脂の種類によって異なるが、樹脂100質量部に対して0.5〜40質量部であり、1〜25質量部であることがより好ましい。0.5質量部未満であると、含有させた効果が小さく、40質量部を超えると含有比率の増加の割に効果の増加が小さくて経済的ではなく、また樹脂本来の特性を損なう恐れが生じる。なお、本発明の有機リン系難燃剤(1),(2)は単独使用に限定されず、有機リン系難燃剤(1),(2)を併用しても良いし、他の難燃剤および難燃性添加剤と併用することができる。
【0059】
<難燃性樹脂組成物の製造方法>
本発明の有機リン系難燃剤(1),(2)を前記の熱可塑性樹脂に対して混合し、難燃性樹脂組成物を得る方法としては、十分な分散と混合を可能にする方法ならば特に限定はされないが、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシエル型ミキサー等のブレンダーを用いる方法や、ロール、ニーダー等の加熱混練方法を採用することができ、中でも押出機(一軸スクリュウ、二軸スクリュウおよび多軸スクリュウ)を用いる方法が特に好ましい。また、これらの方法の二種類以上を合わせて使用してもよい。
【0060】
また、本発明の有機リン系難燃剤(1),(2)を前記の熱硬化性樹脂に対して混合して難燃性樹脂組成物を得る方法としては、熱硬化性樹脂と硬化剤と有機リン系難燃剤(1)又は(2)、および必要に応じて配合する硬化促進剤、充填材等の配合材とを、必要に応じて溶剤に溶解させてワニスとする方法、あるいは、押出機、ニーダー、ロール等の加熱混練方法を用いて均一になるまで十分に混合する方法等が採用される。
【0061】
本発明の難燃性樹脂組成物には、前記有機リン系難燃剤(1),(2)以外の難燃剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有させることができる。このような付加的な難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェートやトリフェニルホスフェート、レゾルシノール−ビス−(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA−ビス−(ジフェニルホスフェート)およびビスフェノールA−ビス−(クレジルホスフェート)等のリン酸エステル系難燃剤、テトラフルオロエタン重合物やトリフロロエタン等のフッ素化炭化水素系難燃剤、および水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系から選ばれる少なくとも一種の難燃剤が挙げられる。これらの付加的な難燃剤を含む場合、その合計含有量は、樹脂100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましい。
【0062】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物においては、本発明の特徴を損なわない範囲で、必要に応じて通常各種樹脂への添加剤として用いられる、充填材、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、可塑剤、滑剤、分散剤、結晶核剤、結晶化促進剤、整泡剤、帯電防止剤、発泡剤等を含有していてもよい。このような添加剤を含む場合、その合計含有量は、合成樹脂100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。
【0063】
[難燃性樹脂成形品]
本発明の難燃性樹脂成形品は、前記難燃性樹脂組成物を所望の形状に成形してなるものである。この成形方法等は特に制限されないが、例えば前記難燃性樹脂組成物を二軸スクリュー押出機で混練し、射出成形機で形成する方法などを採用することができる。
本発明の難燃性樹脂成形品は、使用用途などに応じて種々の形状や大きさの成形品とすることができる。例えば、フィルム状、板状、厚板状、波板状、棒状、筒状、柱状、繊維状、ブロック状、箱形、トレー状、椀状などの種々の形状や大きさの成形品とすることができる。
さらに、この難燃性樹脂成形品の形態は、気泡を含まない樹脂成形品(非発泡樹脂成形品)でも良いし、発泡ポリスチレンやウレタンフォームのような気泡構造を有する発泡樹脂成形品でも良い。
【0064】
前記発泡樹脂成形品の中でも、軽量で機械強度や断熱性に優れ、低コストで提供できるなどの観点から、発泡ポリスチレン樹脂成形体が好ましい。発泡ポリスチレン樹脂成形体に前記有機リン系難燃剤(1)又は(2)を含有させるには、発泡剤を含むポリスチレン樹脂粒子(発泡ビーズ)を製造する際に前記有機リン系難燃剤(1)又は(2)を添加しておき、そのポリスチレン樹脂粒子を加熱して発泡させて予備発泡粒子とし、更に該予備発泡粒子を所望形状のキャビティを有する金型のキャビティ内に充填し、蒸気加熱して型内発泡成形を行うことによって製造することができる。或いは、押出機内にポリスチレン樹脂と前記有機リン系難燃剤(1)又は(2)などの材料を投入し、押出機内で加熱溶融・混練し、これに発泡剤を圧入して更に混練した後、押出機先端に取り付けた成形ダイスの開口から押し出し、発泡させてシート状などの所望形状の発泡ポリスチレン樹脂成形体を得る方法によって製造することもできる。このようにして得られる難燃性発泡ポリスチレン樹脂成形体は、難燃性断熱材や建材、自動車用内装材などとして利用できる。
【0065】
本発明の難燃性樹脂成形品は、樹脂に対する前記有機リン系難燃剤(1)又は(2)の添加量が少なくても優れた難燃性を得ることができ、樹脂本来の特性を損なうことなく難燃性を得ることができるので、機械強度や透明性に優れた難燃性樹脂成形品、例えば、難燃性繊維や難燃性フィルムを提供することができる。
【0066】
本発明の難燃性繊維は、前記本発明の難燃性樹脂組成物からなるものであり、繊維化する方法等は特に限定されないが、例えば溶融紡糸法を採用することができる。
【0067】
また、本発明の難燃性フィルムは、前記本発明の難燃性樹脂組成物からなるものであり、フィルム化する方法等は特に制限されないが、例えば二軸延伸フィルム成形法を採用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
1リットルの四ツ口フラスコに塩化ホスホリル398.6g(2.6mol)、塩化マグネシウム0.8g(0.008mol)を仕込み、反応釜には、温度計、滴下ロートと、更には、0℃の冷媒を通したコンデンサーを取り付け、そのコンデンサーの先に、塩酸ガス吸収塔をつけた。
【0070】
反応釜内部の雰囲気を窒素ガスで置換してシールした後、撹拌および昇温を開始した。反応釜内部の温度(以下、釜温という場合がある。)が105℃になったところで、滴下ロートに仕込んだオルソフェニルフェノール340.4g(2mol)を滴下開始し、徐々に加熱しながら釜温105〜140℃で4時間かけて全量投入した。
【0071】
次に、系内に残存する塩酸ガスを排出するため、アスピレーターにより減圧を開始した。突沸を防ぐため、徐々に真空度を上げて140℃にて50KPaとし、同条件下で2時間熟成した後、60℃まで冷却し、さらに反応系に窒素ガスを導入して圧力を常圧に戻した。
【0072】
次に、反応釜からコンデンサーを外し、未反応の塩化ホスホリルを留去するための装置を取り付けてから、釜温60〜130℃、真空度0.5〜2.0KPa下で減圧して塩化ホスホリルを回収した。
【0073】
続いて、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)633.6g(4.8mol)を添加し、釜温100〜150℃で6時間反応させ、反応を終了した。
【0074】
次に、反応物1063gを容積1リットルの水洗釜に移し、以下の水洗水を用いて80℃で水洗し、上層の水層を分取した。
(1回目)水100g
(2回目)水100g
(3回目)1%炭酸ナトリウム水溶液165g
(4回目)水100g
【0075】
次に、釜温110℃、真空度2.0KPa下で減圧して水を完全に除去した後、以下の条件で真空蒸留し、初留部および主留部を得た。
(初留部を得た際の条件)
釜温:110〜195℃
塔頂温度:〜186℃
真空度:〜0.5KPa
(主留部を得た際の条件)
釜温:195℃〜200℃
塔頂温度:186℃
真空度:0.5〜0.4KPa
【0076】
得られた主留部のIR、NMRおよび元素分析(表1)の結果、下記構造式(A)の化合物(有機リン系難燃剤、以下、有機リン化合物Aと記す。)であることが確認された。
【0077】
【化9】

【0078】
【表1】

【0079】
[実施例2]
1リットルの四ツ口フラスコに塩化ホスホリル498.2g(3.25mol)、塩化マグネシウム1.0g(0.1mol)を仕込み、反応釜には、温度計、滴下ロートと、更には、0℃の冷媒を通したコンデンサーを取り付け、そのコンデンサーの先に、塩酸ガス吸収塔をつけた。
【0080】
反応釜内部の雰囲気を窒素ガスで置換してシールした後、撹拌および昇温を開始した。反応釜内部の温度(以下、釜温という場合がある。)が105℃になったところで、滴下ロートに仕込んだオルソフェニルフェノール425.5g(2.5mol)を滴下開始し、徐々に加熱しながら釜温105〜120℃で2.5時間かけて全量投入した。
【0081】
次に、系内に残存する塩酸ガスを排出するため、アスピレーターにより減圧を開始した。突沸を防ぐため、徐々に真空度を上げて120℃にて30KPaとし、同条件下で2時間熟成した後、60℃まで冷却し、さらに反応系に窒素ガスを導入して圧力を常圧に戻した。
【0082】
次に、反応釜からコンデンサーを外し、未反応の塩化ホスホリルを留去するための装置を取り付けてから、釜温60〜130℃、真空度0.5〜2.0KPa下で減圧して塩化ホスホリルを回収した。
【0083】
続いて、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)574g(5.7mol)を添加し、釜温80〜120℃で12時間反応させ、反応を終了した。
【0084】
次に、反応物989gを容積2リットルの水洗釜に移し、以下の水洗水を用いて80℃で水洗し、上層の水層を分取した。
(1回目)水100g
(2回目)水100g
(3回目)1%炭酸ナトリウム水溶液165g
(4回目)水100g
【0085】
次に、釜温110℃、真空度2.0KPa下で減圧して水を完全に除去した後、以下の条件で真空蒸留し、初留部および主留部を得た。
(初留部を得た際の条件)
釜温:110〜150℃
塔頂温度:〜145℃
真空度:〜0.5KPa
(主留部を得た際の条件)
釜温:150℃〜160℃
塔頂温度:145〜149℃
真空度:0.5〜0.3KPa
【0086】
得られた主留部のIR、NMRおよび元素分析(表2)の結果、構造式(B)の化合物(有機リン系難燃剤、以下、有機リン化合物Bと記す。)であることが確認された。
【0087】
【化10】

【0088】
【表2】

【0089】
[実施例3]
実施例1において、オルソフェニルフェノールの代わりに2,6−キシレノールを用いて同様の操作を行った。得られた主留部のIR、NMRおよび元素分析(表3)の結果、構造式(C)の化合物(有機リン系難燃剤、以下、有機リン化合物Cと記す。)であることが確認された。
【0090】
【化11】

【0091】
【表3】

【0092】
[実施例4]
実施例1において、オルソフェニルフェノールの代わりに4−フルオロフェノールを用いて同様の操作を行った。得られた主留部のIR、NMRおよび元素分析(表4)の結果、構造式(D)の化合物(有機リン系難燃剤、以下、有機リン化合物Dと記す。)であることが確認された。
【0093】
【化12】

【0094】
【表4】

【0095】
[実施例5]
実施例1〜4で得られた有機リン化合物A〜Dの添加による、各種樹脂に対する燃焼抑制の効果を調べるために、以下のような評価試験を行った。
【0096】
ポリスチレン(以下、PSと略記する。)、ポリカーボネート(以下、PCと略記する。)、エポキシ樹脂(以下、Epoxyと略記する。)の各樹脂100質量部に対して実施例1〜4で得られた有機リン化合物A〜Dを3〜10質量部添加し、試験管中で加熱しながら混練した後、冷却してペレット化した。このペレットを試験片とし、これをガスバーナーで着火して燃焼させることにより燃焼性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0097】
【表5】

【0098】
表5において、No.1〜4の結果を比較すると、PS100質量部に対しては有機リン化合物Aを10質量部以上又はBを5質量部以上添加すると優れた難燃性を発揮する。従って、有機リン化合物Bのほうがより高い難燃効果を示す。これは、CF−ラジカルが燃焼時に放出されやすいことに起因する、分子構造の違いによるものであると推測される。
【0099】
表5において、No.3〜8の結果を比較すると、PS100質量部に対しては有機リン化合物Bを5質量部以上又は有機リン化合物Cを10質量部以上又は有機リン化合物Dを10質量部以上添加すると優れた難燃性を発揮する。従って、有機リン化合物Bのほうがより高い難燃効果を示す。これは、ビフェニル環が燃焼時に炭化不燃層の形成を促進することに起因する、分子構造の違いによるものであると推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)で示される有機リン系難燃剤。
【化1】

【化2】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示す)
【請求項2】
下記一般式(3)で示される化合物と、下記一般式(4)で示される化合物と、ハロゲン化ホスホリルとを反応させて請求項1に記載の有機リン系難燃剤を得ることを特徴とする有機リン系難燃剤の製造方法。
【化3】

【化4】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示す)
【請求項3】
前記一般式(3)で示される化合物とハロゲン化ホスホリルとを反応させて得られる下記一般式(5)で示される化合物と、前記一般式(4)で示される化合物とを反応させて請求項1に記載の有機リン系難燃剤を得ることを特徴とする有機リン系難燃剤の製造方法。
【化5】

(式中、Rf、Rf、Rf、Rf、Rfは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、Xはハロゲン原子を示す)
【請求項4】
前記一般式(4)で示される化合物とハロゲン化ホスホリルとを反応させて得られる下記一般式(6)で示される化合物と、前記一般式(3)で示される化合物とを反応させて請求項1に記載の有機リン系難燃剤を得ることを特徴とする有機リン系難燃剤の製造方法。
【化6】

(式中、Rfはフッ素原子で置換されているアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
【請求項5】
請求項1に記載された有機リン系難燃剤を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に含有させてなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート‐アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル‐アクリルゴム‐スチレン樹脂(AAS樹脂)、アクリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびそれらのアロイ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載された有機リン系難燃剤を熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2〜40質量部を含有させてなることを特徴とする請求項5又は6に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂が、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビス‐マレイミド‐トリアジン樹脂および変性ポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載された有機リン系難燃剤を熱硬化性樹脂100質量部に対し0.2〜40質量部含有させてなることを特徴とする請求項5又は8に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項5〜9に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる難燃性樹脂成形品。
【請求項11】
難燃性樹脂成形品が発泡ポリスチレン樹脂成形品である請求項10に記載の難燃性樹脂成形品。
【請求項12】
請求項5〜9に記載の難燃性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする難燃性繊維。
【請求項13】
請求項5〜9に記載の難燃性樹脂組成物から形成されたことを特徴とする難燃性フィルム。

【公開番号】特開2012−158687(P2012−158687A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19509(P2011−19509)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(391052574)三光株式会社 (16)
【Fターム(参考)】