説明

有機レーザ

デバイスが提供される。本デバイスは、第1の有機発光デバイスを含み、この有機発光デバイスは、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に配置された有機発光層とをさらに含む。本デバイスはまた、第1のレーザデバイスを含み、この第1のレーザデバイスは、光共振器と、この光共振器内に配置された有機レイジング材料をさらに含む。焦点機構が、第1の有機発光デバイスによって放射される光を第1のレーザデバイス上へ集束させるように配置されている。好ましくは、焦点機構は、第1の有機発光デバイスによって放射される光よりも強度が少なくとも10倍大きな、より好ましくは少なくとも100倍大きな、第1のレーザデバイスへの入射光を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年7月29日に出願された米国特許出願第12/511,797号の優先権を主張し、この出願の開示は、その全体が参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
連邦支援研究開発
この発明は、空軍科学研究局によって授与された認可番号FA9550−07−0364、プロジェクト番号F017357の下に政府支援で行われた。政府は、本発明にある権利を有する。
【0003】
特許請求される本発明は、産学共同研究契約の以下の当事者、Regents of the University of Michigan、プリンストン大学、南カリフォルニア大学、およびUniversal Display Corporationの1つまたは複数によって、それらを代表して、および/またはそれらに関連して行われた。この契約は、特許請求される本発明が成された日以前に効力があり、さらに特許請求される本発明は、本契約の範囲内で行われた活動の結果として成された。
【0004】
本発明は、発光デバイスに関する。より詳細には、本発明はレーザに関し、レイジング材料は有機物である。
【背景技術】
【0005】
有機材料を利用する光電子デバイスは、いくつかの理由のためにますます望ましいものになっている。そのようなデバイスを作るために使用される材料の多くは、比較的安価であるので、有機光電子デバイスには、無機デバイスに対してコスト優位の可能性がある。その上、可撓性などの有機材料の固有特性が、有機材料を、可撓性基板上への製作のような特定の用途に申し分なく適したものにする可能性がある。有機光電子デバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機フォトトランジスタ、有機光電池、および有機光検出器などがある。OLEDに関して、有機材料は、従来の材料と比べて性能で優位に立っている可能性がある。例えば、有機発光層が光を放射する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調整することができる。
【0006】
OLEDは、電圧がデバイスに加えられたとき光を放射する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、および背面照光のような用途での使用にとってますます興味ある技術になっている。いくつかのOLED材料および構成は、米国特許第5,844,363号、6,303,238号、および5,707,745号で説明されており、これらの特許は、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。
【0007】
OLEDについてのいっそうの詳細および上で説明された定義は、米国特許第7,279,704号の中に見ることができ、この特許は、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号
【特許文献2】米国特許第6,303,238号
【特許文献3】米国特許第5,707,745号
【特許文献4】米国特許第7,279,704号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】V.G.Koslov、P.E.Burrows、S.R.Forrest、Nature 389、362頁 (1997)
【非特許文献2】Giebink and Forrest、Temporal response of optically pumped organic semiconductor lasers and its implication for reaching threshold under electrical excitation、Phys. Rev. B 79、073302 (2009)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
デバイスが提供される。本デバイスは、第1の有機発光デバイスを含み、この有機発光デバイスは、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に配置された有機発光層とをさらに含む。本デバイスはまた、第1のレーザデバイスを含み、この第1のレーザデバイスは、光共振器と、この光共振器内に配置された有機レイジング材料をさらに含む。焦点機構が、第1の有機発光デバイスによって放射される光を第1のレーザデバイス上へ集束させるように配置されている。好ましくは、焦点機構は、第1の有機発光デバイスによって放射される光よりも強度が少なくとも10倍大きな、より好ましくは少なくとも100倍大きな、第1のレーザデバイスへの入射光を供給する。
【0011】
好ましくは、第1の有機発光デバイスは、微小共振器を備え、有機発光層がその微小共振器内に配置されている。1次元および2次元の微小共振器は、使用可能な2つの型の微小共振器である。
【0012】
焦点機構は、屈折率分布型レンズなどのレンズであることがある。屈折率分布型レンズは、第1の平面端と第2の平面端を持っている円柱形を有することがあり、第1の有機発光デバイスが屈折率分布型レンズの第1の平面端に配置され、第1のレーザデバイスが屈折率分布型レンズの第2の平面端に配置されている。1/4ピッチ屈折率分布型レンズが好ましい。
【0013】
焦点機構は、第1の有機発光デバイスが配置されている非平面基板であり、第1の有機発光デバイスからの光が、第1の有機半導体レーザの少なくとも一部が配置されている領域に集束されるようになっていることがある。3次元湾曲を有する非平面基板が好ましい。放物形が好ましい。
【0014】
好ましくは、本デバイスは、第1の有機発光デバイスをパルス動作させるように構成された回路をさらに備える。
【0015】
本デバイスは、民生用デバイスに組み込まれてよい。
【0016】
また、方法が提供される。第1の有機発光デバイスは、電気的に駆動されてエレクトロルミネセンスを引き起こしてよい。エレクトロルミネセンスは、焦点機構によって有機半導体レーザ上へ集束されて、有機半導体レーザを光励起する。
【0017】
好ましくは、第1の有機発光デバイスは、OSLがパルスで光励起されるようにパルスで駆動される。好ましくは、パルスは、5ナノ秒から20ナノ秒の継続時間を有する。好ましくは、パルス間の間隔は、少なくとも1マイクロ秒の継続時間を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】有機発光デバイスを示す図である。
【図2】独立した電子輸送層を有しない逆有機発光デバイスを示す図である。
【図3】光励起有機半導体レーザを示す図である。
【図4】OLEDからの光をOSL上へ集束させる焦束機構として屈折率分布型(GRIN)レンズを示す図である。
【図5】OLEDからの光をOSL上へ集束させる焦束機構として湾曲OLEDを示す図である。
【図6】GRINレンズのピッチ概念を示す図である。
【図7】平行入力光を仮定して、GRINレンズに関し一様入力強度プロファイルと計算された出力強度プロファイルを示す図である。
【図8】図7に示されたものと同様な計算を示す図であるが、入力光は半球上に等方的に角度分布すると仮定している。
【図9】第1のOLEDに関して、測定された規格化ELスペクトルを示す図である。
【図10】第1のOLEDを特徴付けるプロットを示す図である。
【図11】第2のOLEDに関して、測定された規格化ELスペクトルを示す図である。
【図12】第2のOLEDを特徴付けるプロットを示す図である。
【図13】GRINレンズからの測定された光出力を示す図であり、光は第1のOLEDから入力されている。
【図14】図13に示された焦点に関して、XおよびY方向の断面強度プロファイルを示す図である。
【図15】GRINレンズからの測定された光出力を示す図であり、光は第1のOLEDから入力されている。
【図16】図15に示された焦点に関して、XおよびY方向の断面強度プロファイルを示す図である。
【図17】図5のそれと同様な湾曲OLEDに関して、計算された強度プロファイルを示す図である。
【図18】図17に示されたOLEDに関して、強度プロファイルを示す図である。
【図19】OLEDに対応する光微小共振器構造を示す図である。
【図20】図19の構造に基づいたいくつかの光プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
光励起有機半導体レーザ(OSL)が提供される。OSLは、別個の電気的に駆動される有機発光デバイス(OLED)からの光で励起される。
【0020】
光励起OSLデバイスは知られており、V.G.Koslov、P.E.Burrows、S.R.Forrest、Nature 389号、362頁 (1997)を参照されたい。OSLは、一般に、その中に有機レイジング材料が配置されている光共振器を含む。光共振器をどのようにして作るか、レイジング材料をどこに置くべきか、およびどの材料を使用すべきかのような考慮すべき問題は、当技術分野でよく知られている。OSLは、OSLが吸収することができる波長に十分な強度を有するOSLへの入射光を供給することによって、光学的に励起することができる。レイジングを達成する最少励起光閾値を有する従来の光励起OSLデバイスでは、およそ100W/cmの励起強度が必要である。現在利用可能なOLEDで達成される最高輝度は、およそ10W/cmである。したがって、出力強度の約10倍の増加がなければ、従来のOLEDは、レイジングを達成するために必要とされるレベルで、光励起OSLを駆動することができない。
【0021】
本発明の実施形態は、OLEDからの光出力を光励起OSL上へ集束させる焦束機構を設けることによってこの問題に対処して、面積は減少したがOLEDのデフォルト出力に比べて増した光強度の領域を実現する。この増した強度は、従来のOLEDを用いて従来の光励起OSLでレイジングを達成するのに十分である。既存のOLEDを用いて既存のOSLを駆動するために必要とされる強度の増加に基づいて、OSLへの入射光の強度は、好ましくは、OLEDで放射される光強度よりも少なくとも10倍大きい。より好ましくは、OSLへの入射光の強度は、OLEDで放射される光の強度よりも少なくとも100倍大きく、さらにより好ましくは1,000倍大きい。これらの増加は、本明細書で開示される構成に基づいて達成することができ、最高輝度のOLEDまたは最少レイジング閾値のOSLデバイスではない可能性があるデバイスおよび材料を用いたレイジングの達成に、かなりの余裕を与える。利用可能なOLEDおよびOSLの特性のような要素に依存して、光強度の他の増加が使用されることがある。
【0022】
「焦束機構」は、光を集束させるどんな機構であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、そのような集束を達成するために、1つまたは複数のレンズが使用される。屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)は、好ましい集束機構である。GRINレンズを用いて、OLED、OSLおよびGRINレンズを含む簡便なユニットを容易に製造することができる。円柱状GRINレンズは、2つの円形平面端を持っている。GRINレンズがOLEDからの光をOSL上へ集束させるように、OLEDはこれらの端の1つに位置付けされ、OSLが他方の端に位置付けされることがある。この構成には、集束の程度および強度増加に影響を及ぼす、OLEDとOSLの間の距離が、GRINレンズの製造中に容易に制御できるという有利点がある。4/1ピッチGRINレンズが好ましい。その理由は、4/1ピッチGRINレンズは、他のピッチを有するGRINレンズに比べて短い距離で高い集束を達成するからである。
【0023】
いくつかの実施形態では、OLEDが微小共振器を含むことが好ましい。微小共振器OLEDでは、OLEDの発光層は微小共振器の中に、すなわち少なくとも半反射性である2つの表面の間に、配置される。微小共振器効果のないOLEDは、おおむね「ランベルト」放射を有し、すなわち観察される放射強度が観察者の視線と表面法線の間の角度θの余弦に正比例する可能性がある。微小共振器効果は、放射強度を表面法線の方向に集める傾向があり、極限では「平行」放射を生じさせる。しばしば、微小共振器を持っているOLEDは、OLEDの電極と有機層の間の境界面を半反射表面として使用するが、他の表面も同様に使用することができる。
【0024】
特に、OLEDの発光が、方向性を有し、好ましくは平行にされるとき、いくつかの集束機構が最適に作用する可能性がある。GRINレンズは、そのような集束機構の例である。
【0025】
他の集束機構は、非平面のまたは湾曲した基板を使用することを含み、この基板上にOLEDが製作される。例えば、平行発光するOLEDを使用すると、そのOLEDの各部分は表面法線の方向に光を放射する。これらの表面法線が特定の場所の小さな面積に集まるように湾曲基板を形作ることによって、OLEDからOSLへの集束は、レンズを使用することなしに達成することができる。最高の集束が達成される場所にOSLを位置付けすることは必ずしも必要でないが、望ましいことがある。むしろ、光が少なくとも十分に集束されてOSLを駆動するように、OSLを位置付けすることが好ましい。
【0026】
3次元湾曲を有する非平面基板が好ましい。放物形が好ましい。2次元湾曲を有する表面が、使用されることがあり、製造の容易さなどのいくつかの理由のために好ましいことがある。しかし、2次元湾曲を有する表面は、光を点に集束させる能力が限られており、むしろ光を直線領域に集束させることができる。3次元湾曲を有する表面は、強度のより大きな増加を達成することができるので、好ましい。放物形が好ましく、その場合OSLは、パラボラの焦点または焦点の近くに置かれる。放物状の皿は、好ましい形の例である。
【0027】
好ましくは、デバイスは、第1の有機発光デバイスをパルス動作させるように構成された回路をさらに備える。連続的にレーザ発振したとき、OSLは、望ましくないクエンチングを引き起こす三重項の蓄積を受けることがあると信じられているので、パルス動作が好ましい。Giebink and Forrest、Temporal response of optically pumped organic semiconductor lasers and its implication for reaching threshold under electrical excitation、Phys. Rev. B 79、073302 (2009)を参照されたい。パルス励起光を使用してOSLを駆動することで、この問題が軽減される可能性がある。第1の有機発光デバイスをパルス動作させるように構成された回路は、例えば、市販のパルス発生器であってもよい。いくつかのOSLデバイスで、三重項は、約100nsの時間の間に望ましくないレベルまで蓄積すると信じられている。したがって、100ns未満のパルス継続時間が好ましい。好ましくは、パルスは、5から20nsの継続時間を有する。パルスは、OLEDの強度が増加する立ち上り時間を含むことがあり、好ましくは、この立ち上り時間はできるだけ短い。パルス間の間隔は、他のパルスが開始されてもよいように三重項を減衰させる。好ましくは、パルス間の間隔は、少なくともneマイクロ秒である。1秒以上までのより長い間隔が使用されることがある。OSLの材料および構成に依存して、異なるパルス継続時間およびパルス間の間隔が使用されることがある。その上、例えばレイジング効率と望ましいレーザ信号プロファイルの間の妥協として、最適とは言えないパルスの継続時間および間隔が、使用されることがある。
【0028】
集束機構は、本明細書で特に示されたものに限定されない。他の適切な集束機構には、従来のレンズ、フレネルレンズ、顕微鏡用対物レンズ、凹面鏡または放物面鏡、または光学要素の組合せなどがある。より一般的には、光を集束させることができる任意の光学要素または光学要素の組合せが使用可能である。
【0029】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は、必ずしも一定の率で拡大して描かれていない。デバイス100は、基板110、陽極115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、および陰極160を含むことがある。陰極160は、第1の伝導層162および第2の伝導層164を有する複合陰極である。デバイス100は、説明されたこれらの層を順番に堆積させることによって製作されることがある。これらの様々な層ならびに例の材料の特性および機能は、米国特許第7,279,704号、6〜10欄により詳細に説明されており、これらは、参照して組み込まれる。
【0030】
矢印170は、デバイス100中の微小共振器の境界面を示す。微小共振器は、デバイス中の2つの境界面が少なくともある程度の反射率を有するとき、これらの境界面の間に形成されている。境界面の1つは、完全反射性であることがある。しかし、OLEDは光を放射すると期待されているので、少なくとも1つの境界面は半透明でなければならない。矢印170は、陽極115および陰極160とデバイス100の有機層の境界面の間に描かれている。これらの境界面は、OLED中に存在する任意の微小共振器を一般的に画定している。というのは、これらの境界面は、一般的な設計選択が成されたときデバイス中で最も高い反射率を有する傾向があるからである。しかし、他の境界面が、微小共振器を画定するために使用されてもよい。
【0031】
図2は、逆OLED200を示す。このデバイスは、基板210、陰極215、発光層220、正孔輸送層225、および陽極230を含む。デバイス200は、説明されたこれらの層を順番に堆積させることによって製作されることがある。最も一般的なOLED構成は、陽極の上方に配置された陰極を有し、デバイス200は陽極230の下に配置された陰極215を持っているので、デバイス200は、「逆」OLEDと呼ばれることがある。デバイス100に関して説明されたものと同様な材料が、デバイス200の対応する層で使用されることがある。図2は、デバイス100の構造からいくつかの層をどのように省略することができるかの1つの例を提供している。
【0032】
図1および2に示された簡単な層状構造は、非限定の例として提供され、理解されることであるが、本発明の実施形態は、広範な様々な他の構造に関連して使用されることがある。説明される特定の材料および構造は、本質的に例示であって、他の材料および構造が使用されることがある。実用的なOLEDは、設計、性能、およびコスト要素に基づいて、説明された様々な層を異なるやり方で組み合わせることによって達成されることがあり、または複数の層が完全に省略されることがある。具体的に説明されなかった他の層が、また含まれることがある。具体的に説明されたもの以外の材料が、使用されることがある。様々な層は、単一材料、またはホストとドーパントの混合物、またはより一般的に混合物を含むことがある。また、これらの層は、様々な副層を持っていることがある。本明細書で様々な層に付けられた名称は、厳格に限定的なものである意図でない。例えば、デバイス200で、正孔輸送層225は、正孔を輸送し、正孔を発光層220の中へ注入するので、正孔輸送層または正孔注入層として説明されることがある。一実施形態では、OLEDは、陰極と陽極の間に配置された「有機層」を持つものとして説明されることがある。この有機層は、単一層を含むことがあり、または例えば図1および2に関して説明されたように、異なる有機材料の多層をさらに含むことがある。
【0033】
図3は、光励起有機半導体レーザ(OSL)300を示す。レーザ300は、基板310上に製作される。レーザ300は、第1の半反射層320および第2の半反射層340を含み、これらの半反射層が一緒になって光共振器を画定している。有機レイジング材料330は、共振器の中に配置されている。OSLの背景の中で、本明細書で使用されるような「光共振器」は、光励起されたとき有機レイジング材料がレーザ発振するのに適した環境を実現する任意の構造を意味している。入射光350は、レイジング材料330を励起するために使用される。好ましくは、レイジング材料330は、入射光350の支配的な波長に対して高い吸収係数を有している。入射光350は、レイジング材料330で吸収されたとき、レイジング材料330の分子を励起する。この励起された分子は、その後減衰して、放射されるレーザ光の波長を有する光子を生成する。これらの光子は、両矢印360で示されるように、光共振器の中で行ったり来たりして反射する。これらの光子のいくつかは、レーザ300で放射されるレーザ光370になる。光励起OSLデバイスは、当技術分野でよく知られている。図3に示されたものと異なる特定の構成が、使用されることがある。光励起OSLの設計基準、例えば、様々な材料の組合せ、光共振器の光路長を放射されるべき光の波長の倍数に合わせること、半反射層の反射率の程度、および同様なものは、当技術分野でよく知られている。
【0034】
図4は、屈折率分布型(GRIN)レンズを集束機構として使用してOLEDからの光をOSL上へ集束させる本発明の実施形態を示す。デバイス400は、GRINレンズ420を含む。GRINレンズは、全体的に円柱の形であり、光ファイバに使用されるのと同様な方法を使用して製造されることがある。OLED410は、GRINレンズ420の第1の平面端に配置される。OSL430は、GRINレンズ420の第2の平面端に配置される。OLED410に電力が供給されるとき、OLED410はエレクトロルミネセンスを発する。OLED410からの光は、GRINレンズ420に入り、そこでOSL430の面積上へ集束される。光が集束されるOSL430の面積は、光が供給されるOLED410の面積よりもかなり小さい。その結果として、OSL430上へ集束される光は、OLED410で放射されるものよりかなり高い強度を有している。強度の増加は、GRINのパラメータを選ぶことによって制御されることがある。大抵の状況では、少なくとも10倍の増加が好ましい。少なくとも100倍または少なくとも1000倍の増加は、また、容易に達成することができ、望ましいことがある。10,000以下の強度の増加が、大抵の実施形態に適しているかもしれない。OSL430の光励起は、可干渉性レーザ光440の放射を引き起こす。
【0035】
図5は、湾曲OLEDを集束機構として使用してOLEDからの光をOSL上へ集束させる本発明の実施形態を示す。OLEDは、湾曲基板510上に製作される。基板510は、OLEDからの光530がOLEDの放射面積よりもかなり小さなOSL520の面積に集まるように湾曲されている。光530はOSL520を光励起して、レーザ光540の放射を引き起こす。OLED510の放射面積と光が集束されるOSL520の面積との比の好ましい範囲は、図4に関して説明された実施形態と同じである。
【0036】
図6は、GRINレンズのピッチ概念を示す。GRINレンズは、全体的にピッチを有している。GRINレンズの端に入る一様な平行光は、GRINレンズの長さに沿ったある特定の距離の小さな領域に集まり、それからGRINレンズに沿った他の距離のところで再び発散する。例えば、図4の実施形態での使用では、レンズの一端に入る広がった平行光がレンズの他端で好ましい範囲に集束されるような長さのGRINレンズを選ぶことが好ましい。好ましい様々な範囲の長さがある可能性がある。というのは、強度の望ましい増加を達成するために、全ての光を1つの点に集束させることは必ずしも必要でないからである。図6は、また、屈折率がGRINレンズの直径にわたって変化することがある1つのやり方を示している。図6に示された特定のプロファイルは、SELFOC GRINレンズに関し、中心で屈折率Nおよび縁でゼロの屈折率を有する二次屈折率プロファイルである。SELFOCは、NSG America, Inc.から入手できる低コストGRINレンズの商品名である。
【0037】
図7は、GRINレンズについて、一様な入力強度プロファイルおよび計算された出力強度プロファイルを示す。計算のパラメータは次の通りである。レンズは、図6に示されたように二次プロファイルを有し、N=1.607、直径D=1mm、長さL=2.58mmで、二次屈折率プロファイルであった。レンズは、0.608の傾斜定数Aを有し、この傾斜定数が、二次屈折率プロファイルの急峻さを決定する。
【0038】
出力プロファイルは、不均一光線伝搬方程式(近軸でない)を厳密に解くことによって計算された。これらの方程式は、次の非線形結合常微分方程式(ODE)である。
【0039】
【数1】

【0040】
入力光は平行になっていると仮定された。プロファイル710は、一様な入力強度を示している。プロファイル720は、出力強度を示している。出力強度プロットにおいて光のほとんどが集束された面積は、入力強度プロットの面積に比べて10分の1に減少したので、出力プロットの光強度はそれに応じて高くなった。従来のOLEDを用いて容易に達成することができる10W/cmの一様な入力強度を使用して、平均出力強度は100,000W/cmであった。この出力強度は、従来のOSLを光励起するのに望ましい100W/cmを十分に超えている。
【0041】
図8は、入力光が平行になっていると仮定する代わりに、入力光が半球上に等方的に角度分布すると仮定したことを除いて、図7に示されたのと同様な計算を示している。「等方的な」入力は、等方的な確率分布関数を有する1000本のシミュレーション光線を使用することによってシミュレートされた。光線の数が少ないために、強度にいくつかの局所的なばらつきが観察される可能性があるが、これらのばらつきは、等方的な平行入力で達成される可能性がある強度増加の比較に大きな影響を及ぼさない。プロファイル810は、入力強度プロファイルを示し、プロファイル821は出力強度プロファイルを示す。出力光の強度の向上は、図7に示されたものよりはるかに少なかった。この計算は、平行入力光、または少なくともある程度のコリメーションを有する光を使用することが望ましいことを示している。そのような平行光は、適切な微小共振器を持っているOLEDを使用することによって、OLEDの背景の中で容易に実現される。
【0042】
第1のOLEDは、次の通りに製作された。2.5p分布ブラッグ反射器(DBR)上に、OLEDが製作された。OLEDは、次の層を順番に含んでいた。すなわち、140nmのスパッタインジウム錫酸化物(ITO)/500nmのNPD/150nmのBCP/300nmのAlq/LiF/Alを含んだ。DBRは、SiOの2つの挿入された厚さ762A層を含んだ2.5・4分の1波長対、すなわち3層の厚さ547AのSiNを有した。OLEDは、DBRとAl電極の結果として微小共振器を有した(LiF/Al電極の厚さは関係がない−LiF/Al電極は、完全反射性でありかつ適切に電気を伝導するように十分に厚い)。OLEDは、450nmに発光スペクトルのピークを有する光を放射するように設計された。図9は、このOLEDについて、測定された規格化ELスペクトルを示す。
【0043】
図10は、図9のOLEDについて、計算された放射プロファイル1010を示す。ゼロの角度のピークは、放射プロファイルが高度に平行にされたことを示している。図10は、また、第1のOLEDについて、測定された量子効率(QE)対電流束J(A/cm)のプロット1020、ならびに電力(W)および電流束J(A/cm)対電圧Vのプロット1030を示す。
【0044】
第2のOLEDは次の通りに製作された。ガラス基板上に、次の層が順番に堆積された。すなわち、125nmのスパッタITO/500nmのNPD/150nmのBCP/300nmのAlq/LiF/Al。ITOは、0.1sccmのOおよび140sccmのArを用いて80Wでスパッタされ、次に3時間アニールされた。ITOのシート抵抗は、35Ω/□と測定された。第2のOLEDは制御デバイスであり、第1のOLEDと同様であるが、DBRがない。図11は、第2のOLEDについて、測定された規格化ELスペクトルを示す。図12は、第2のOLEDについて、測定された量子効率(QE)対電流束J(A/cm)のプロット1210、ならびに電力(W)および電流束J(A/cm)対電圧Vのプロット1220を示す。
【0045】
第1のOLEDの構造を持っているOLEDは、OLEDのガラス基板がGRINレンズの端と接触した状態でGRINレンズ上に置かれた。GRINレンズは、1mmの直径、屈折率n=1.6073、A=0.608、およびピッチ=4/1(2.58mmの長さに相当する)を有した。図13は、GRINレンズからの測定された光出力を示す。この光は、入力光に比べて減少した面積および増加した強度の点から見ると20倍を示している。したがって、図13で測定された特定の構成で、OSL上で100W/cmの強度に達するためには、約5W/cmのOLED強度が必要とされる。これは、1mm直径を有する38mWのOLEDに相当する。実際に使用されたOLEDは38mWでなかったが、強度の増加は、OLEDを集束させることによってOSLを駆動するために必要な強度を達成できることを証明している。
【0046】
図14は、図13に示された焦点について、XおよびY方向の断面強度プロファイルを示す。単位は任意である。
【0047】
第1のOLEDの構造を持っているOLEDは、OLEDのガラス基板がGRINレンズの端と接触した状態でGRINレンズ上に置かれた。GRINレンズは、1.8mmの直径、屈折率n=1.6073、A=0.339、およびピッチ=4/1(4.63mmの長さに相当する)を有した。図15は、GRINレンズからの測定された光出力を示す。この光は、入力光に比べて減少した面積および増加した強度の点から見て18倍を示している。
【0048】
図16は、図15に示された焦点について、XおよびY方向の断面強度プロファイルを示す。単位は任意である。
【0049】
図17は、図5のそれと同様な湾曲OLEDについて、計算された強度プロファイルを示す。XおよびY軸は、任意の単位で位置を表している。破線1710は、図18のデータが取られた断面である。図17は、湾曲OLEDによる光出力の強度に比べて、焦点領域で増加した強度を示している。
【0050】
図18は、図17に示されたOLEDについて、強度プロファイルを示している。微小共振器放射プロファイル1810は、図17を作るために使用された計算で使用された仮定平行OLED出力を示す。焦点面強度プロファイル1820は、図17の破線1710上の様々な点について計算されるような強度を示している。強度プロファイル1820に示された強度は、任意の単位である。1−D微小共振器では、焦点での強度は、集束のない場合のOLED強度の焦点での強度の6.8倍であった。2−D小共振器では、焦点での強度は、集束のない場合のOLED強度の焦点での強度の43.8倍であった。1−D微小共振器は、1つの次元に沿って周期的な屈折率変化を持つ構造である。具体化は、分布帰還回折格子(DFB)または分布ブラッグ反射器(DBR)を含む。2−D微小共振器は、2つの次元に沿って周期的な屈折率変化を持ち、一般に2−Dフォトニック結晶と呼ばれる。微小共振器は、許容光学モードと不許容光学モードの離散帯を生成することによって、放射パターンを作ることができる。適切に設計された非周期的回折格子は、また、そのような用途に使用することができる。
【0051】
図19は、OLEDに対応する光微小共振器構造を示す。この構造は、陰極1910、有機層1920、および交互になる高屈折率層1930と低屈折率層1940から形成されたDBRを持っている。陰極は100%反射であると仮定された。有機層は、モデル化に有用なパラメータnd/λによって特徴付けられ、ここで、nは屈折率であり、dは厚さであり、λは関心のある波長(OLEDの発光スペクトルのピーク波長など)である。陽極は大きな光学効果を持たないと仮定されたので、陽極は図19に示されていない。DBRは、交互になる2.2の屈折率nを有する高屈折率層1930と1.5の屈折率nを有する低屈折率層1940との4サイクルで形成されている。図19に示された構造は、図20に示される光プロファイルをもたらす計算で使用された。
【0052】
図20は、様々な仮定をして、図19の構造に基づいたいくつかの光プロファイルを示している。プロット2010は、ゼロの角度に高度平行放射を示し、この場合nd/λは0.45で、dは160nmで、さらに出力結合率ηは7%である。プロット2020は、高度平行放射を示すが、OLEDの表面に垂直でない方向であり、この場合nd/λは0.56で、dは250nmで、さらにηは50%である。プロット2030は、高度平行放射を示し、この場合nd/λは0.7で、dは200nmで、さらにηは40%である。図20は、微小共振器効果が様々なパラメータに依存して変わることがあることを示している。これらのパラメータは、望ましい微小共振器効果を得るように当業者が容易に選ぶことができる。
【0053】
本発明の実施形態に従って製作されるデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータ用モニタ、テレビジョン、広告用掲示板、内部または外部照明および/または信号伝達用の光源、ヘッドアップディスプレイ、完全透明ディスプレイ、可撓性ディスプレイ、レーザプリンタ、電話、携帯電話、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、ラップトップコンピュータ、ディジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダ、微小ディスプレイ、自動車、大面積壁、映画館またはスタジアムの画面、または標識などの多種多様の民生用製品に組み込まれることがある。様々な制御機構を使用して、受動マトリックスおよび能動マトリックスなどの本発明に従って製作されたデバイスを制御することができる。これらのデバイスの多くは、18℃から30℃およびより好ましくは室温 (20〜25℃)などの人にとって快適な温度範囲で使用するように意図されている。
【0054】
図は、一般に、一定の率で拡大して描かれていないことがある。
【0055】
理解されることであるが、本明細書で説明された様々な実施形態は、ただ例としてだけであり、本発明の範囲を限定する意図でない。例えば、本明細書で説明された材料および構造の多くは、本発明の精神を逸脱することなしに他の材料および構造と置き換えられる可能性がある。したがって、特許請求されるような本発明は、本明細書で説明された特定の例および好ましい実施形態の変形を含むことがあるが、そのことは、当業者には明らかであろう。本発明が機能する理由についての様々な理論は限定するものでない意図であることは理解される。
【符号の説明】
【0056】
100 有機発光デバイス
110 基板
115 陽極
120 正孔注入層
125 正孔輸送層
130 電子阻止層
135 発光層
140 正孔阻止層
145 電子輸送層
150 電子注入層
155 保護層
160 陰極
162 第1の伝導層
164 第2の伝導層
170 陽極および陰極と有機層の境界(微小共振器)
200 逆OLED
210 基板
215 陰極
220 発光層
225 正孔輸送層
230 陽極
300 光励起有機半導体レーザ(OSL)
310 基板
320 第1の半反射層
330 有機レイジング材料
340 第2の半反射層
350 入射光
360 光共振器
370 レーザ光
400 デバイス
410 OLED
420 GRINレンズ
430 OSL
440 可干渉性レーザ光
510 湾曲基板(OLED)
520 OSL
530 光
540 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極、
第2の電極、および
前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置された有機発光層をさらに含む第1の有機発光デバイスと、
光共振器、および
前記光共振器内に配置された有機レイジング材料をさらに含む第1のレーザデバイスと、
前記第1の有機発光デバイスによって放射される光を前記第1のレーザデバイス上へ集束させるように配置された焦点機構と
を備えるデバイス。
【請求項2】
前記焦点機構は、前記第1のレーザデバイスへの入射光の強度が、前記第1の有機発光デバイスによって放射される光の強度よりも少なくとも10倍大きいように、前記第1の有機発光デバイスによって放射される光を前記第1のレーザデバイス上へ集束させるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記焦点機構は、前記第1のレーザデバイスへの入射光の強度が、前記第1の有機発光デバイスによって放射される光の強度よりも少なくとも100倍大きいように、前記第1の有機発光デバイスによって放射される光を前記第1のレーザデバイス上へ集束させるように構成されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の有機発光デバイスは、微小共振器をさらに備え、前記有機発光層が前記微小共振器内に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記微小共振器が、1次元の微小共振器である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記微小共振器が、2次元の微小共振器である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項7】
前記焦点機構が、レンズである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記レンズが、屈折率分布型レンズである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記レンズが、4/1ピッチ屈折率分布型レンズである、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記屈折率分布型レンズが、第1の平面端と第2の平面端を持っている円柱形を有し、さらに前記第1の有機発光デバイスが前記屈折率分布型レンズの前記第1の平面端に配置され、前記第1のレーザデバイスが前記屈折率分布型レンズの前記第2の平面端に配置されている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記焦点機構は、前記第1の有機発光デバイスが配置されている非平面基板であり、前記第1の有機発光デバイスからの光が、前記第1の有機半導体レーザの少なくとも一部が配置されている領域に集束されるようになっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記非平面基板が、3次元湾曲を有する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記非平面基板が、放物形を有する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1の有機発光デバイスをパルス動作させるように構成された回路をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項1に記載のデバイスが組み込まれた民生用デバイスをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
第1の電極、
第2の電極、および
前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置された有機発光層
をさらに備える第1の有機発光デバイスを電気的に駆動するステップと、
前記第1の有機発光デバイスによって放射される光を第1のレーザデバイスの有機レイジング材料上へ集束させることによって前記第1のレーザデバイスを光励起するステップと
を含み、前記第1のレーザデバイスが、
光共振器、および
前記光共振器内に配置された有機レイジング材料
をさらに含む、方法。
【請求項17】
前記第1の有機発光デバイスは、前記第1のレーザデバイスがパルスで光励起されるように、パルスで駆動される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記パルスが、5から20ナノ秒の長さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
パルス間の間隔が、少なくとも1マイクロ秒の長さを有する、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図14】
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【図16】
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【図20】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−501358(P2013−501358A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523032(P2012−523032)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043680
【国際公開番号】WO2011/014632
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(509119061)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン (14)
【Fターム(参考)】