有機・無機試料中のハロゲンおよび硫黄の分析方法ならびに二段挿入方式オートサンプラを備えた自動分析装置
【課題】広範囲にわたる品種の分析試料について4種ハロゲンおよび硫黄の高精度での同時一斉分析を可能にする。
【解決手段】分析装置の移動炉および固定炉を備えた燃焼装置に対して、オートサンプラにより選択した分析試料の試料ボートをセラミック燃焼管内を通して自動制御下の導入棒の動作により、移動炉に対するの第一位置に挿入して予備燃焼させ、次いでこれを固定炉内の第二位置に挿入して試料を熱分解させ、この二段挿入形式の燃焼により、試料中のハロゲンおよび硫黄を無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を吸収液に溶解させ、イオン化したハロゲン化物および硫酸イオンをイオンクロマトグラフにより分析する。
【解決手段】分析装置の移動炉および固定炉を備えた燃焼装置に対して、オートサンプラにより選択した分析試料の試料ボートをセラミック燃焼管内を通して自動制御下の導入棒の動作により、移動炉に対するの第一位置に挿入して予備燃焼させ、次いでこれを固定炉内の第二位置に挿入して試料を熱分解させ、この二段挿入形式の燃焼により、試料中のハロゲンおよび硫黄を無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を吸収液に溶解させ、イオン化したハロゲン化物および硫酸イオンをイオンクロマトグラフにより分析する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱炉中の燃焼管内で分析対象とする4種ハロゲンおよび硫黄を含む試料を燃焼して、ハロゲン化水素と遊離ハロゲンおよび硫黄酸化物を生成し、これらを吸収液に吸収させてハロゲン化物および硫酸のイオンとし、イオンクロマトグラフにより前記試料中のハロゲンおよび硫黄を分離定量する有機・無機試料中のハロゲンおよび硫黄の分析方法および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、農薬等の化学薬品や石油および石油化学製品等における有機化合物中の主要な4種のハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)および硫黄を同時に分析するための分析装置に係る従来の技術として、例えば特開平8−262000号公報(特許文献1)に示す装置が知られている。
【0003】
前記特許文献1の分析装置は、石英燃焼管内で前記4種のハロゲンおよび硫黄を含む有機化合物の試料を燃焼させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成する燃焼装置と、燃焼装置で生成した無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を吸収液に通じてハロゲン化物および硫酸の無機陰イオンを生成する吸収装置と、吸収溶液中の各イオン種を分離定量するイオンクロマトグラフとを備えている。
【0004】
近年、これらハロゲンおよび硫黄を含む試料の分析はその重要性がますゝ増大しており、分析対象としても前記有機化合物に加えて、製鉄スラグ、蛍石等の鉱石を含めた無機試料や、さらには有機および無機化合物が混在する廃プラスチック製品や廃電子製品あるいは有機/無機複合形態の有機金属化合物などについてもそれらの中のハロゲンおよび硫黄について同様な分析が必要とされるに到っている。しかし前記特許文献1の分析装置では試料として有機化合物を対象にしており、燃焼装置の試料分解炉内に設置される燃焼管として石英燃焼管を用いているので、試料の完全な燃焼・分解のためにより高温を必要とする前記無機試料等の分析には場合によってその適用に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−262000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、分析の対象が従来の有機化合物に加えて無機化合物、さらには有機/無機成分の複合体又は混在品にまでより広範囲にわたる場合には、燃焼炉に関して加熱温度をより高温の範囲にまで設定できるようにし、かつこれに対応して従来の石英燃焼管よりもより耐熱性の高い材質の燃焼管を用いる必要があるが、本来有機試料のみを分析対象としていたこの種の従来の分析装置ではこのような対策は具体的に知られていない。
【0007】
燃焼管の材質については、磁器材料又はセラミックスとして知られている種々の金属酸化物からなる材料の多くのものがその耐熱温度が高く、約1400℃以上の耐熱性を有している。しかし、セラミックスを材質とする燃焼管が従来この種の分析装置に使用された実績は全くないのでその使用にはこれまで知られていなかった種々の課題がある。
【0008】
まず、前記無機化合物等を高温度で熱分解させる際には、セラミック製の燃焼管さらには管内に挿入される試料ボートが膨張係数の急激な変化により変形、破損するおそれのあることを考慮することが必要となる。また対象とする実際の分析試料の一部に有機成分が混在していたり又は無機/有機成分複合形態で含む場合等では同一燃焼炉内で試料を急激に加熱することにより有機成分からカーボン(すす)が発生してこれらが分析機器内に付着することがあり、それによって分析精度や効率が著しく低下することがある。
【0009】
したがって、前記分析試料の炉の加熱温度を無機化合物の熱分解に必要な温度まで上昇可能とし、かつこれに対応してこれまで用いられなかったセラミック燃焼管を用いる場合には、これらの点を考慮して高温での試料燃焼のための的確な温度管理を取入れた燃焼方式、およびそれを円滑に実施するための具体的な燃焼装置の開発が不可欠である。
【0010】
本発明は有機および無機いずれの形態の分析試料におけるハロゲンおよび硫黄の分析にも適合するように効果的な燃焼・熱分解の温度管理を可能にする方式およびこの方式の実施に適した具体的な試料供給装置(オートサンプラ)および燃焼装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため本発明の分析方法は、試料供給装置から導入されるハロゲンおよび硫黄を含む分析試料を燃焼装置で燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成し、生成物を吸収装置の吸収液に溶解させ、イオン化したハロゲン化物および硫酸の無機陰イオンをイオンクロマトグラフにより分離、定量することにより前記分析試料中のハロゲンおよび硫黄元素を分析する分析方法において、前記試料供給装置としてオートサンプラを用い、
複数の分析試料を夫々収容した試料ボートから測定対象の分析試料の試料ボートを順次前記燃焼装置にセラミック燃焼管を通して供給する工程と、
供給された試料ボートを前記燃焼装置の移動炉に対する第一の位置に導入し、移動炉
部位中のセラミック燃焼管内で300〜1000℃の範囲の温度で燃焼させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記工程を経た試料ボートを前記燃焼装置の固定炉に対する第二の位置に導入し、固定炉部位のセラミック燃焼管内で前記の燃焼の温度よりもさらに高い1100〜1350℃の一定の温度で試料を熱分解させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記燃焼および熱分解後の前記試料ボートを回収装置に回収する工程とを前記オートサンプラによって自動的に行う。
【0012】
前記課題を解決するための本発明の分析装置は、試料供給装置から供給されるハロゲンおよび硫酸を含む分析試料を燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる燃焼装置と、生成物を吸収液に吸収させてイオン化する吸収装置と、前記イオン化されたハロゲン化物および硫酸の無機陰イオンを分離、定量するイオンクロマトグラフとを有するハロゲンおよび硫黄の分析装置において、
前記燃焼装置がセラミック燃焼管を炉の内側に有して分析試料を燃焼させる移動炉とセラミック燃焼管を内部に有して移動炉での燃焼後の試料を移動炉における燃焼温度よりもさらに高い一定の温度で熱分解する固定炉とを有し、さらに
前記試料供給装置が試料ボートに収容した分析試料を前記燃焼装置に供給するために測定対象の試料ボートを選択する選択手段と、選択された試料ボートを順次燃焼装置の燃焼管内の移動炉に対する第一の位置に挿入し、試料の燃焼後に前記試料ボートを移動炉における燃焼温度よりも高い一定の温度で試料を熱分解する固定炉中に対する第二の位置に移動する導入手段と、熱分解後の試料ボートを排出して回収する回収手段と、前記選択した試料ボートの燃焼装置中の前記第一および第二の所定位置への挿入を自動的に制御する制御手段からなるオートサンプラを有している。
【0013】
本発明において、前記オートサンプラは、前記選択手段が複数の試料ボートを搭載するターンテーブルからなり、前記導入手段が選択された試料ボートに係合して試料ボートをセラミック燃焼管に導入する水平状の導入棒と、前記導入棒を前記セラミック燃焼管を通して水平移動させるスライダ機構とからなり、前記回収手段はセラミック燃焼管の導入口周りに設置した回収装置からなり、前記制御手段が前記スライダ機構を制御するコントローラからなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にの分析方法によれば、オートサンプラによって、分析試料を収容した試料ボートを選択してセラミック燃焼管を通して燃焼装置中に供給し、この試料ボートを移動炉に対する第一の位置に挿入して試料を燃焼させ、次いで燃焼後の試料ボートを固定炉に対する第二の位置に挿入して試料を前記燃焼温度より高い一定の温度で熱分解し、前記試料の燃焼および熱分解による無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を吸収装置およびイオンクロマトグラフに送って分析する。
【0015】
ここでたとえば対象が主として無機成分からなる試料の場合には、試料中に含まれる有機成分をまず移動炉で予備燃焼させ、それによって生じる無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を回収し、次いで燃焼後に残る無機成分を固定炉でより高い一定の温度で実質的に完全に熱分解させその際に生じる無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を同様に回収する。
【0016】
分析試料中に有機化合物が混在している場合には、前記のようにこれを高温度で急激に熱分解させると、有機成分からカーボン(すす)が発生じるおそれがあるが、本発明ではこの様な有機炭素成分等は前段の移動炉による燃焼の段階で燃焼生成ガスとして排出されるので、固定炉中での高温の熱分解の際にこのようは事態は生じない。
【0017】
固定炉での熱分解温度はセラミック燃焼管を用いることにより充分に高く設定することができ無機試料の高精度の分析が可能となる。セラミック燃焼管の材料としては耐熱性、耐食性等に優れた種々のセラミックスが用いられるが、本発明においてはたとえばSiO2およびAl2O3を主成分とするムライト等を用いることができ、たとえばSiO240%、Al2O356%からなるムライト(HB)は固定炉の温度を1350℃とする場合にも充分に使用可能である。また試料ボートの材料としても同系のムライト(CB)等を用いることができる。この際、固定炉内の熱分解温度は当初から一定温度に維持されるので、固定炉の温度に短時間で高温の熱分解温度に上昇させる温度管理の必要はなく、それにともなう弊害も生じない。
【0018】
本発明の特色は特に無機成分試料の分析のために固定炉をこれらの熱分解温度に対応できる仕様とする一方、燃焼管についても耐熱性の高いセラミック燃焼管を従来の石英燃焼管に代えて用いることが可能であることの知見に基くものであり、一方移動炉ではこのような高温での急激な熱分解による不具合を避けるため予め予備燃焼を行わせている。
【0019】
このような二段挿入法の効果を最適化するためには各段毎での試料ボートの燃焼管内の位置を燃焼時間等に関連付けて正確に確認することが欠かせないが、本発明の分析装置では燃焼管内各位置への試料ボートの挿入をオートサンプラの導入棒の自動制御下での動作で行うので、従来の透明な石英燃焼管の場合のように外部から視認するまでもなく、より確実にその位置をオートサンプラ側で把握することができ、試料ボートの二段挿入を自動化してより適宜に行うことができる。
【0020】
また、本発明のより具体的な態様によれば、オートサンプラをターンテーブルと、導入棒およびスライダ機構と、回収装置と、コントローラとを備える構成とすることで、部品点数が低減され、機構が簡単で動作が安定し、かつ組み付け性に優れて低価格なオートサンプラを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1aは本発明の分析装置の概要を示す説明図、図1bは図1aに示す分析装置の燃焼装置の燃焼形式を示す説明図である。
【図2】本発明の分析装置の一具体例の概要を示す説明図である。
【図3】本発明の分析装置におけるオートサンプラの正面図である。
【図4】本発明の分析装置におけるオートサンプラの側面図である。
【図5】本発明の分析装置におけるオートサンプラの平面図である。
【図6】本発明の分析装置におけるオートサンプラの斜視図である。
【図7】本発明の分析装置における移動炉の斜視図である。
【図8】本発明の分析方法による多元素含有有機試料についてのクロマトグラムである。
【図9】本発明の分析方法にる廃プラスチック試料についてのクロマトグラムである。
【図10】本発明の分析方法にる標準ポリエチレン試料についてのクロマトグラムである。
【図11】本発明の分析方法にる鉱石(蛍石)試料についてのクロマトグラムである。
【図12】本発明の分析方法にる鉄鋼スラグ試料についてのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[分析の概要]
以下本発明の分析装置および分析方法を図面を参照して説明する。
分析装置の全体の概要を図1aに示し、本発明の主要な特色を有する燃焼装置およびそれによって行われる二段挿入方式の分析試料の概要を図1bに示す。尚図2は本発明の分析装置の一具体例についてのシステム構成図である。
【0023】
図1aにおいて、後述するオートサンプラにより順次選択的に供給される分析試料の試料ボートは燃焼装置の移動炉、次いで固定炉内にこれらを貫設して設けられるセラミック燃焼管を通して導入され、空気により加熱燃焼されてガス化した生成物としての分析試料中の無機形態のハロゲンおよび硫黄酸化物が吸収装置に送られる。これらのガスは吸収装置中の吸収びんに収容された吸収液中に溶解してイオン化される。燃焼分解から定量形態に至る化学式は下記に示す。
燃焼分解 定量形態
有機・無機ハロゲン(X:F,Cl,Br,I) HX,X2 X−
有機・無機硫黄(S) SO2、SO3 SO42−
【0024】
吸収液には純水を用い、分析対象が硫黄およびヨウ素のように酸化反応および還元反応を必要とする硫黄およびヨウ素含有試料である場合のために酸化/還元系を形成する酸化剤(H2O2)および還元剤(NH2NH2)を添加する。
【0025】
吸収液の一部はイオンクロマトグラフ用の分析用カラムに導入され、これらのX−およびSO42−の無機陰イオンは移動相によりクロマトグラフカラム内に展開され、夫々のイオン種間のイオン交換能および吸着度の差により固定相粒子の表面にて経時的に展開分離される。分離カラムとしてはShodex SI−904E(4.0×250mm)を用い、移動相には1.8mM Na2CO3と1.7mM NaHCO3を用いた。分離された夫々のイオン種は導電率検出器によって検出されるそれらに固有な保持時間を示す各イオンのクロマトグラムとしてインテグレータのチャートに表示され、各元素固有の独立したクロマトグラムとその面積に基いて各種ハロゲンおよび硫黄の存在がそれらの含有分とともに求められる。
【0026】
[二段挿入法による試料の燃焼]
ここでオートサンプラから燃焼装置中に導入される分析試料は図1bに示すように試料ボートに収容されオートサンプラの導入棒によって燃焼室の移動炉および固定炉を貫設して延長されセラミック燃焼管を通して図中矢視方向(左側)に移動される。
【0027】
ここで試料ボートが図1bに示す移動炉の前方(図中左側)の所定の第一位置Aに導入棒によって導入されると、移動炉が図中の位置から矢視(左側)方向に図示しないモータ等により駆動されてセラミック燃焼管中の炉の試料ボートが炉内に位置するところまで移動される(図1b:破線位置)。
【0028】
この間に分析試料の種類によりたとえば300℃に予め設定された移動炉の温度が炉の移動と共に1000℃まで徐々に昇温され、試料ボート内の分析試料が約5〜10分間徐々に加熱される。これによってたとえば分析試料が無機成分からなる試料又は有機物成分をも含有する無機試料である場合には、この燃焼によって分析試料中の有機成分が燃焼用の清浄化空気によって燃焼され、含有されていた有機成分由来のハロゲンおよび硫黄が無機態のハロゲン又は硫黄酸化物としてガス化され吸収装置に回収される。
【0029】
ここで前記移動炉内の徐々の昇温をともなう燃焼では急激な過熱により有機成分からカーボン(すす)が生じて分析機器内に付着し、もしくはそれによって機器分析の動作の信頼性を損なうことはない。
【0030】
前記の分析試料中の無機成分は前記移動炉内の300〜1000℃の加熱燃焼の際に無機成分由来の固形物内に取込まれ完全に熱分解されない場合が多く、この燃焼工程のみではハロゲンおよび硫黄についての精度の高い分析が期待できない。
【0031】
本実施態様では移動炉内の前記第一の位置Aで燃焼に付された分析試料を収容した試料ボートは前記所定時間の経過後、オートサンプラの動作制御により導入棒によってセラミック燃焼管中を図1b中さらに左側に移動され、固定炉内の所定の第二の位置Bに自動的に位置決めされる。本実施態様では固定炉の温度は対象とする無機化合物試料が熱分解を生じるような1100〜1350℃の範囲内の一定の高温たとえば1350℃に設定される。この温度で試料ボート中の分析試料をセラミック燃焼管内で加熱すると試料は実質的に完全な熱分解を生じ、たとえば5〜10分間の加熱により分析試料が熱分解して試料中のほとんどのハロゲンおよび硫黄が無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物となって放出される。
【0032】
したがって、本実施態様の二段挿入形式を用いた燃焼装置によれば、分析試料の形態を問わずその中に含有されるハロゲンおよび硫黄が試料の熱分解によってほとんどガス化するので、これらを吸収装置によるイオン化およびイオンクロマトグラフによる分離によって処理することにより、分析試料中の主要ハロゲン元素および硫黄元素の含有およびそれらの含有量を高精度で同時に分析することができる。
【0033】
尚本実施態様では前記固定炉の加熱体としては前記熱分解温度が高温によることを考慮して高純度の炭化ケイ素からなるシリコニット社のシリコニット発熱体を用いる。固定炉の温度は予めたとえば1350℃の熱分解温度に上昇され、試料の熱分解の間この温度に一定に維持されるので温度管理に特別な困難はない。また本実施態様では、燃焼管および試料ボートはいずれも約1450℃以上の温度で使用可能なセラミック材料(ムライトHB、ムライトCB等)から形成されているので、試料を固定炉で1350℃で熱分解させる際にも何等支障を生じない。また、本実施態様では分析試料はまず移動炉中で300〜1000℃の温度に予め加熱されているので、固定炉中での高温に曝されたときにも熱膨張係数の急激な変化で変形や破壊を生じるおそれが少ない。また本実施態様では、導入棒は、成型および加工性に優れたアルミナ99.5%のセラミック材料から形成されているので、燃焼管内の機密性を高くでき、また耐熱性と耐磨耗性にも優れているため室温から1350℃の加熱下でも試料ボートの移動を何等支障なくコントロールできる。
【0034】
すでに述べたように、従来の石英燃焼管による試料分解炉での燃焼による分析装置は専ら有機試料を分析対象としたものであり、これを無機成分を含む試料中のハロゲンおよび硫黄の分析に適用しても所期の分析精度は得られない。
【0035】
下記表1は分析試料としての鉄鋼スラグのサンプルを従来の燃焼装置の熱分解炉のみにより石英燃焼管で上限950℃の温度で加熱燃焼させた場合と、これらの試料を本実施態様における二段挿入法により移動炉によりセラミック燃焼管中で燃焼させ、さらに後段の固定炉で1350℃の温度で熱分解させた場合とについて、イオンクロマトグラフによって検出されたフッ素元素の検出値を比較して示す。表1から明らかなように、従来の燃焼方式で分析した分析値(b)は本発明の二段挿入による方式で燃焼/熱分解させた場合の分析値(a)を基準とした場合、その約30〜80%の範囲にとどまっており、本発明の分析法により精度の高い分析が行われることを示している。
【0036】
(表1)
【0037】
尚本発明で用いるセラミック燃焼管に対する有機標準試料の適合性を各元素の検量線を作成して検討した。標準試料として本発明者等が開発したC12H8NO2FClBrS(NAC−St1)を用い原点を含めて各元素のクロマトグラフによる検量線を作成して検証したところ、二次式による検量線方程式を用いた場合、表2に示すようにそれらの相関係数(R2)はいずれの元素も0.9999と良好な相関係を示した。
【0038】
(表2)
【0039】
本実施態様では前記の二段挿入法で試料を移動炉および固定炉で加熱処理する際には、その温度管理を正確なものとするために、前記試料ボートを前記第一の位置Aおよび第二の位置Bに対して所定の経過時間後に夫々厳密に位置決めすることが必要である。従来の透明材質の石英燃焼管の場合には外部から燃焼管中の試料ボートの位置を確認していたが、材質がセラミックスからなる燃焼管の場合にはこのような視認は不可能である。
【0040】
しかし、本実施態様では燃焼管中を移動する試料ボートの第一、第二の位置A,Bへの位置決めの設定はこれらを導入するオートサンプラの導入棒の移動量として自動的に制御することができるので、試料ボートの位置決めを自動的に正確に設定することができ、これはオートサンプラ側でその制御動作として把握することができる。以下本実施態様で用いるオートサンプラ(試料供給装置)の具体的な機構および動作について説明する。
【0041】
オートサンプラは、試料ボートに収容した分析対象とする試料を燃焼装置に供給するために特定の試料ボートを選択する選択手段と、選択された試料ボートを順次燃焼装置の燃焼管内の移動炉に対する第一の位置に挿入し、試料の燃焼後に試料ボートを移動炉における燃焼温度よりも高い温度で熱分解する固定炉中の第二の位置に挿入する導入手段と、熱分解後の試料ボートを排出して回収する回収手段と、前記分析試料を収容した試料ボートの選択、選択した試料ボートの燃焼装置中の前記第一および第二の所定位置への導入、および燃焼装置からの排出を自動的に制御する制御手段と、を有する。
【0042】
図3ないし図6を参照して具体的に説明すると、オートサンプラ3は、前記選択手段が、複数の試料ボート10を放射状に等間隔で搭載するターンテーブル11からなり、前記導入手段が、試料ボート10に係合して試料ボート10をセラミック燃焼管8に導入する水平状の導入棒13と、導入棒13を水平移動させるスライダ機構14とからなり、前記回収手段が、セラミック燃焼管8の導入口周りに設置した回収装置61からなり、前記制御手段が、前記スライダ機構14を制御するコントローラ15からなり、これらは筐体16内に収められている。
【0043】
[ターンテーブル11]
図6に示すように、ターンテーブル11は、円盤状の内テーブル11Aと、内テーブル11Aから間隔を空けて内テーブル11Aと同軸状に設けられる環状の外テーブル11Bとから構成されている。外テーブル11Bは、例えば帯状の板材を環状に形成したものからなり、内テーブル11Aとは放射状に延びる複数の連結板17により連結している。内テーブル11Aの周縁部上面には複数の位置決めピン18が円周方向に等間隔で立設されており、一方、外テーブル11Bの上縁においては、半円状の切欠き19が各位置決めピン18を通る径方向延長上に位置するように複数形成されている。内テーブル11Aにおいて各位置決めピン18の内側には支持板20が固設されている。
【0044】
試料ボート10の長手方向一端側の上部には、上下に貫通する係合孔10Aを有した係合片10Bが形成されている。試料ボート10は、一端側においては、係合孔10Aが位置決めピン18にはまり係合片10Bの先端が支持板20に載置支持され、他端側においては切欠き19内に載置支持されることで、ターンテーブル11に放射状に搭載される。
【0045】
図3において、内テーブル11Aの下面には回転軸が突設されており、この回転軸が軸受を介して筐体16内の架材21に支持されている。前記回転軸の下端にはギア22が取り付けられ、このギア22がモータ23の出力ギア24に噛合することでターンテーブル11が回転する。なお、図6に示すように外テーブル11Bの各切欠き19の下方には回転角度検出用の切欠き25が形成され、図2に示すセンサ26によりターンテーブル11の回転角度が検出される。
【0046】
[昇降機構12]
図3において、昇降機構12は、搬出位置に位置した試料ボート10を下側から支えてターンテーブル11から上昇させるボートリフト台27を備える。搬出位置とは、図4に仮想線で示すように、平面視して試料ボート10がセラミック燃焼管8の延長上に来る位置である。ボートリフト台27は試料ボート10の下周りを囲うように上方を開口させた断面コ字形状を呈した部材であり、下部に取り付けられた鉛直状の昇降ガイド28を介して、架材21に固定された昇降モータ29により昇降し、内テーブル11Aと外テーブル11Bとの間の空間を通過して試料ボート10を載せる。
【0047】
符号30は、試料ボート10がボートリフト台27からセラミック燃焼管8内へ導入される際のガイド機能を担うボート誘導台であり、ボートリフト台27と同様に、試料ボート10の下周りを囲うように上方を開口させた断面コ字形状を呈している。このボート誘導台30はボートリフト台27の昇降に連動するように構成されている。前記昇降ガイド28には横方向を開口させたコ字状のブラケット31が取り付けられ、ボート誘導台30の下部に取り付けた鉛直状の昇降ガイド32の係合部33がブラケット31に係合している。図2に示す状態からボートリフト台27が上昇すると、ブラケット31の下側片が係合部33を押し上げることによりボート誘導台30がボートリフト台27に連動して上昇し、上昇時にはボートリフト台27と同じ高さ位置となることで、試料ボート10のボートリフト台27からセラミック燃焼管8への円滑な移載を可能とする。
【0048】
[導入棒13]
導入棒13の先端には試料ボート10の係合片10Bを収める切欠き34が施されるとともに、係合孔10Aに係合する係合ピン35が下方に向けて突設されている。
【0049】
[スライダ機構14]
導入棒13の基端には第1スライダ36の下端が固定され、導入棒13の中ほどには第2スライダ37の下端が摺動自在に嵌着されている。第1スライダ36、第2スライダ37は、導入棒13の上方に位置して導入棒13の延設方向に沿って配設されたガイド棒38に摺動自在に嵌着されている。ガイド棒38は、昇降モータ39により昇降する昇降板40に取り付けられており、したがって昇降モータ39の駆動により第1スライダ36、第2スライダ37を介して導入棒13が昇降する。第2スライダ37における導入棒13の先端側に臨む側面には、圧縮コイルばね41を介して密閉蓋42が導入棒13に摺動自在となるように取り付けられている。密閉蓋42の先端面側には弾性を有するシール材43が設けられている。
【0050】
第1スライダ36、第2スライダ37の各上下方向中ほどには鉛直状のガイドバー44、45が固設されており、第1スライダ36、第2スライダ37の各上部ユニット46、47はこのガイドバー44、45の昇降を許容する構造、つまり前記昇降モータ39による導入棒13の昇降を許容する構造となっている。各上部ユニット46、47は導入棒13の延設方向に沿って配設された一対のガイド棒48に摺動自在に嵌着されている。上部ユニット46には駆動モータ49が取り付けられ、その出力軸のピニオンギア50がラックギア51に噛合する。
【0051】
上部ユニット46と上部ユニット47との間には長尺のスベリ板52が設けられている。スベリ板52の一端は上部ユニット47の固定部53に固定され、他端は、上部ユニット46に設けられ電磁ソレノイド等により作動する挟持部54、55により挟持または解放が可能となるように構成されている。
【0052】
[移動炉6]
次に前記オートサンプラに関連する移動炉6の構造例について図7を参照して説明する。移動炉6はセラミック燃焼管8を挟む上部炉6Aおよび下部炉6Bからなり、それぞれには燃焼管8を熱する加熱部56が形成され、試料の燃焼時には図7(a)のように閉じた状態で使用される。移動炉6の下部には走行モータ57が取り付けられ、車輪58がガイドレール59を走行することで移動炉6がセラミック燃焼管8に沿って移動する。
【0053】
以下、オートサンプラ3と移動炉6の動作について説明する。ターンテーブル11上の試料ボート10が搬出位置に来ると、昇降機構12によりボートリフト台27およびボート誘導台30が上昇する。このとき、図3や図6に示すように、導入棒13の係合ピン35は試料ボート10の搬出位置における位置決めピン18の直上に同軸状に位置しており、上昇に伴い試料ボート10の係合孔10Aが位置決めピン18から抜け出て係合ピン35に嵌り、これにより試料ボート10が導入棒13に係合される。試料ボート10が導入棒13に係合した時点で昇降モータ39が駆動して導入棒13も上昇し、試料ボート10がセラミック燃焼管8の延長上に達したところで昇降機構12および昇降モータ39が停止する。
【0054】
スライダ機構14にあっては挟持部54、55がスベリ板52を挟持した状態にあり、コントローラ15の制御信号により駆動モータ49が駆動すると、ピニオンギア50とラックギア51のギア機構を介して第1スライダ36、第2スライダ37が一体となって移動し、導入棒13がセラミック燃焼管8に向けて移動して、試料ボート10がボートリフト台27からボート誘導台30上を摺動してセラミック燃焼管8内に導入される。試料ボート10がセラミック燃焼管8内に導入された時点でボートリフト台27およびボート誘導台30は下降する。そして、試料ボート10がセラミック燃焼管8内の所定の停止位置まで運ばれたときには、第2スライダ37に取り付けられた密閉蓋42のシール材43がセラミック燃焼管8の入り口周りの開口部60に対して圧縮コイルばね41の付勢力により圧接されることで、セラミック燃焼管8内が密閉される。なお、このとき、スベリ板52は挟持部54、55から受ける摩擦力に抗して挟持部54、55内を滑るようになっている。
【0055】
試料ボート10がセラミック燃焼管8内の所定の停止位置(図1bの第一位置A)、具体的には移動炉6よりも固定炉7寄りの所定位置で停止すると、走行モータ57が駆動して移動炉6が固定炉7側に向けて移動する。つまり、試料ボート10内の試料はボート内の一端側の試料部分から他端側の試料部にかけて次第に燃焼される。試料ボート10に対しての移動炉6の移動時間、つまり移動炉6の全試料に対する燃焼時間は本実施例の場合8.5〜35分程度に設定されている。
【0056】
移動炉6による燃焼が終了すると、コントローラ15の制御信号により駆動モータ49が再度駆動して第1スライダ36が移動し、導入棒13がさらに前進して試料ボート10が固定炉7の所定の位置(図1bの第二の位置B)に導入された時点で駆動モータ49が停止する。なお、このとき、第2スライダ37は前進している導入棒13に対して摺動しつつ密閉蓋42のシール材43によりセラミック燃焼管8の密閉状態を維持しており、スベリ板52は挟持部54、55から受ける摩擦力に抗して挟持部54、55内を滑っている。
【0057】
固定炉7での燃焼が終了すると、コントローラ15の制御信号により駆動モータ49が逆回転して導入棒13が固定炉7およびセラミック燃焼管8から後退する。セラミック燃焼管8の入り口周りには試料ボート10の回収装置61が設置されており、導入棒13の先端周りがセラミック燃焼管8から抜け出ると、試料ボート10は回収装置61に設けられた可動式の試料ボート載置板(図示せず)に移載されたうえで回収装置61の本体内に回収されるようになっている。
【0058】
以上のように、選択手段としてのターンテーブル11と、導入手段としての導入棒13およびスライダ機構14と、回収手段としての回収装置61と、制御手段としてのコントローラ15を備える構成とすれば、部品点数が低減され、機構が簡単で組み付け性に優れたオートサンプラを構築できる。
【0059】
次に前記燃焼装置により各種実試料について得られたハロゲンおよび硫黄の分析結果を示す。
【0060】
[実試料の分析結果]
本発明のハロゲンおよび硫黄の分析方法は近年多様化している分析試料に対して広範囲な適用が可能であり、以下本発明による各種試料の分析結果を示す。
【0061】
[多元素含有有機化合物の分析]
S,I,Fを含む多元素有機化合物C23H26O3F9IPSについて各元素F,I,Sを同時に分析定量した。図8は分析結果のクロマトグラムのグラフを示す。図中、Aは標準試料NAC−St2(C12H8NO2FBrIS)についてのクロマトグラムのグラフ、Bは分析試料についてのクロマトグラムのグラフであり、図中縦軸は導電率検出器の電位(mV)を、横軸はカラムの保持時間(min)を示す(以下の各分析において同様)。酸化/還元剤(H2O2/NH2NH2)添加純水による吸収液を用いることにより硫黄とヨウ素の同時測定が可能であった。各元素についての表示値に対して分析値に示すように高い分析精度が得られた。
【0062】
[廃プラスチック品の分析]
パソコン基板等の電気部品は難燃剤としてEU規則(WEER/RoHS)により有害物質として制限されている臭素系難燃剤を含有している。図9はパソコン基板破砕品を分析試料として本発明による臭素の測定を行った結果を示す。Aは標準試料NAC−St1(C12H8NO2FClBrS)のクロマトグラムのグラフを、Bは供試分析試料のクロマトグラムのグラフを示す。約5%以上の臭素が検出され、臭素系難燃剤の存在が示唆された。また臭素以外のフッ素や塩素等および硫黄も同時に検出された。
【0063】
[ポリエチレン標準試料の分析]
ポリエチレン製品には各種ハロゲン(Cl、Br、S)が含有されている。図10はEU認証ポリエチレン標準試料(BCR681)について本発明によりこれら元素を測定した分析結果を示す。特に硫黄については固定炉での熱分解温度を1350℃に設定することにより試料量100mgを用いて行ったとき、表示量78±17ppmに対して79.8ppm(n=3)の分析値が得られており、従来の石英燃焼管による燃焼法の場合の検出値18〜40ppmに比較して分析値が大巾に向上している。
【0064】
[鉱石(蛍石)分析]
蛍石はフッ化カルシウムとを主成分とする鉱石であり製鉄の際の融剤や光学材料の素材として用られるている。近年その成分としてのフッ素ついてのの分析がもとめられているが、フッ化カルシウムはその融点が1360℃であることから従来の試料分解炉による石英燃焼管を用いた燃焼方法では正確な分析結果が得られない。本発明では固定炉での加熱温度を前記1350℃に設定した場合、図11に示すように表示値とほゞ一致する分析値が得られた。尚、これと同時に含有されている硫黄についても充分に高い精度の分析値が得られた。
【0065】
[鉄鋼スラグ]
製鉄時に副産物として生じる鉄鋼スラグはセメントや土木用骨材として広く使われており、その中の微量フッ素の分析は必須項目である。鉄鋼スラグはその主成分CaOおよびSiO2の融点がいずれも1000℃以上であることから、従来の石英燃焼管による燃焼方法では分析が困難であったが、本発明の方法によれば前記のようにその分析値が著しく向上した。図12は鉄鋼スラグ中のフッ素の併行精度を求めた結果とそのときのクロマトグラムを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱炉中の燃焼管内で分析対象とする4種ハロゲンおよび硫黄を含む試料を燃焼して、ハロゲン化水素と遊離ハロゲンおよび硫黄酸化物を生成し、これらを吸収液に吸収させてハロゲン化物および硫酸のイオンとし、イオンクロマトグラフにより前記試料中のハロゲンおよび硫黄を分離定量する有機・無機試料中のハロゲンおよび硫黄の分析方法および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、農薬等の化学薬品や石油および石油化学製品等における有機化合物中の主要な4種のハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)および硫黄を同時に分析するための分析装置に係る従来の技術として、例えば特開平8−262000号公報(特許文献1)に示す装置が知られている。
【0003】
前記特許文献1の分析装置は、石英燃焼管内で前記4種のハロゲンおよび硫黄を含む有機化合物の試料を燃焼させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成する燃焼装置と、燃焼装置で生成した無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を吸収液に通じてハロゲン化物および硫酸の無機陰イオンを生成する吸収装置と、吸収溶液中の各イオン種を分離定量するイオンクロマトグラフとを備えている。
【0004】
近年、これらハロゲンおよび硫黄を含む試料の分析はその重要性がますゝ増大しており、分析対象としても前記有機化合物に加えて、製鉄スラグ、蛍石等の鉱石を含めた無機試料や、さらには有機および無機化合物が混在する廃プラスチック製品や廃電子製品あるいは有機/無機複合形態の有機金属化合物などについてもそれらの中のハロゲンおよび硫黄について同様な分析が必要とされるに到っている。しかし前記特許文献1の分析装置では試料として有機化合物を対象にしており、燃焼装置の試料分解炉内に設置される燃焼管として石英燃焼管を用いているので、試料の完全な燃焼・分解のためにより高温を必要とする前記無機試料等の分析には場合によってその適用に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−262000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、分析の対象が従来の有機化合物に加えて無機化合物、さらには有機/無機成分の複合体又は混在品にまでより広範囲にわたる場合には、燃焼炉に関して加熱温度をより高温の範囲にまで設定できるようにし、かつこれに対応して従来の石英燃焼管よりもより耐熱性の高い材質の燃焼管を用いる必要があるが、本来有機試料のみを分析対象としていたこの種の従来の分析装置ではこのような対策は具体的に知られていない。
【0007】
燃焼管の材質については、磁器材料又はセラミックスとして知られている種々の金属酸化物からなる材料の多くのものがその耐熱温度が高く、約1400℃以上の耐熱性を有している。しかし、セラミックスを材質とする燃焼管が従来この種の分析装置に使用された実績は全くないのでその使用にはこれまで知られていなかった種々の課題がある。
【0008】
まず、前記無機化合物等を高温度で熱分解させる際には、セラミック製の燃焼管さらには管内に挿入される試料ボートが膨張係数の急激な変化により変形、破損するおそれのあることを考慮することが必要となる。また対象とする実際の分析試料の一部に有機成分が混在していたり又は無機/有機成分複合形態で含む場合等では同一燃焼炉内で試料を急激に加熱することにより有機成分からカーボン(すす)が発生してこれらが分析機器内に付着することがあり、それによって分析精度や効率が著しく低下することがある。
【0009】
したがって、前記分析試料の炉の加熱温度を無機化合物の熱分解に必要な温度まで上昇可能とし、かつこれに対応してこれまで用いられなかったセラミック燃焼管を用いる場合には、これらの点を考慮して高温での試料燃焼のための的確な温度管理を取入れた燃焼方式、およびそれを円滑に実施するための具体的な燃焼装置の開発が不可欠である。
【0010】
本発明は有機および無機いずれの形態の分析試料におけるハロゲンおよび硫黄の分析にも適合するように効果的な燃焼・熱分解の温度管理を可能にする方式およびこの方式の実施に適した具体的な試料供給装置(オートサンプラ)および燃焼装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため本発明の分析方法は、試料供給装置から導入されるハロゲンおよび硫黄を含む分析試料を燃焼装置で燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成し、生成物を吸収装置の吸収液に溶解させ、イオン化したハロゲン化物および硫酸の無機陰イオンをイオンクロマトグラフにより分離、定量することにより前記分析試料中のハロゲンおよび硫黄元素を分析する分析方法において、前記試料供給装置としてオートサンプラを用い、
複数の分析試料を夫々収容した試料ボートから測定対象の分析試料の試料ボートを順次前記燃焼装置にセラミック燃焼管を通して供給する工程と、
供給された試料ボートを前記燃焼装置の移動炉に対する第一の位置に導入し、移動炉
部位中のセラミック燃焼管内で300〜1000℃の範囲の温度で燃焼させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記工程を経た試料ボートを前記燃焼装置の固定炉に対する第二の位置に導入し、固定炉部位のセラミック燃焼管内で前記の燃焼の温度よりもさらに高い1100〜1350℃の一定の温度で試料を熱分解させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記燃焼および熱分解後の前記試料ボートを回収装置に回収する工程とを前記オートサンプラによって自動的に行う。
【0012】
前記課題を解決するための本発明の分析装置は、試料供給装置から供給されるハロゲンおよび硫酸を含む分析試料を燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる燃焼装置と、生成物を吸収液に吸収させてイオン化する吸収装置と、前記イオン化されたハロゲン化物および硫酸の無機陰イオンを分離、定量するイオンクロマトグラフとを有するハロゲンおよび硫黄の分析装置において、
前記燃焼装置がセラミック燃焼管を炉の内側に有して分析試料を燃焼させる移動炉とセラミック燃焼管を内部に有して移動炉での燃焼後の試料を移動炉における燃焼温度よりもさらに高い一定の温度で熱分解する固定炉とを有し、さらに
前記試料供給装置が試料ボートに収容した分析試料を前記燃焼装置に供給するために測定対象の試料ボートを選択する選択手段と、選択された試料ボートを順次燃焼装置の燃焼管内の移動炉に対する第一の位置に挿入し、試料の燃焼後に前記試料ボートを移動炉における燃焼温度よりも高い一定の温度で試料を熱分解する固定炉中に対する第二の位置に移動する導入手段と、熱分解後の試料ボートを排出して回収する回収手段と、前記選択した試料ボートの燃焼装置中の前記第一および第二の所定位置への挿入を自動的に制御する制御手段からなるオートサンプラを有している。
【0013】
本発明において、前記オートサンプラは、前記選択手段が複数の試料ボートを搭載するターンテーブルからなり、前記導入手段が選択された試料ボートに係合して試料ボートをセラミック燃焼管に導入する水平状の導入棒と、前記導入棒を前記セラミック燃焼管を通して水平移動させるスライダ機構とからなり、前記回収手段はセラミック燃焼管の導入口周りに設置した回収装置からなり、前記制御手段が前記スライダ機構を制御するコントローラからなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にの分析方法によれば、オートサンプラによって、分析試料を収容した試料ボートを選択してセラミック燃焼管を通して燃焼装置中に供給し、この試料ボートを移動炉に対する第一の位置に挿入して試料を燃焼させ、次いで燃焼後の試料ボートを固定炉に対する第二の位置に挿入して試料を前記燃焼温度より高い一定の温度で熱分解し、前記試料の燃焼および熱分解による無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を吸収装置およびイオンクロマトグラフに送って分析する。
【0015】
ここでたとえば対象が主として無機成分からなる試料の場合には、試料中に含まれる有機成分をまず移動炉で予備燃焼させ、それによって生じる無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を回収し、次いで燃焼後に残る無機成分を固定炉でより高い一定の温度で実質的に完全に熱分解させその際に生じる無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を同様に回収する。
【0016】
分析試料中に有機化合物が混在している場合には、前記のようにこれを高温度で急激に熱分解させると、有機成分からカーボン(すす)が発生じるおそれがあるが、本発明ではこの様な有機炭素成分等は前段の移動炉による燃焼の段階で燃焼生成ガスとして排出されるので、固定炉中での高温の熱分解の際にこのようは事態は生じない。
【0017】
固定炉での熱分解温度はセラミック燃焼管を用いることにより充分に高く設定することができ無機試料の高精度の分析が可能となる。セラミック燃焼管の材料としては耐熱性、耐食性等に優れた種々のセラミックスが用いられるが、本発明においてはたとえばSiO2およびAl2O3を主成分とするムライト等を用いることができ、たとえばSiO240%、Al2O356%からなるムライト(HB)は固定炉の温度を1350℃とする場合にも充分に使用可能である。また試料ボートの材料としても同系のムライト(CB)等を用いることができる。この際、固定炉内の熱分解温度は当初から一定温度に維持されるので、固定炉の温度に短時間で高温の熱分解温度に上昇させる温度管理の必要はなく、それにともなう弊害も生じない。
【0018】
本発明の特色は特に無機成分試料の分析のために固定炉をこれらの熱分解温度に対応できる仕様とする一方、燃焼管についても耐熱性の高いセラミック燃焼管を従来の石英燃焼管に代えて用いることが可能であることの知見に基くものであり、一方移動炉ではこのような高温での急激な熱分解による不具合を避けるため予め予備燃焼を行わせている。
【0019】
このような二段挿入法の効果を最適化するためには各段毎での試料ボートの燃焼管内の位置を燃焼時間等に関連付けて正確に確認することが欠かせないが、本発明の分析装置では燃焼管内各位置への試料ボートの挿入をオートサンプラの導入棒の自動制御下での動作で行うので、従来の透明な石英燃焼管の場合のように外部から視認するまでもなく、より確実にその位置をオートサンプラ側で把握することができ、試料ボートの二段挿入を自動化してより適宜に行うことができる。
【0020】
また、本発明のより具体的な態様によれば、オートサンプラをターンテーブルと、導入棒およびスライダ機構と、回収装置と、コントローラとを備える構成とすることで、部品点数が低減され、機構が簡単で動作が安定し、かつ組み付け性に優れて低価格なオートサンプラを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1aは本発明の分析装置の概要を示す説明図、図1bは図1aに示す分析装置の燃焼装置の燃焼形式を示す説明図である。
【図2】本発明の分析装置の一具体例の概要を示す説明図である。
【図3】本発明の分析装置におけるオートサンプラの正面図である。
【図4】本発明の分析装置におけるオートサンプラの側面図である。
【図5】本発明の分析装置におけるオートサンプラの平面図である。
【図6】本発明の分析装置におけるオートサンプラの斜視図である。
【図7】本発明の分析装置における移動炉の斜視図である。
【図8】本発明の分析方法による多元素含有有機試料についてのクロマトグラムである。
【図9】本発明の分析方法にる廃プラスチック試料についてのクロマトグラムである。
【図10】本発明の分析方法にる標準ポリエチレン試料についてのクロマトグラムである。
【図11】本発明の分析方法にる鉱石(蛍石)試料についてのクロマトグラムである。
【図12】本発明の分析方法にる鉄鋼スラグ試料についてのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[分析の概要]
以下本発明の分析装置および分析方法を図面を参照して説明する。
分析装置の全体の概要を図1aに示し、本発明の主要な特色を有する燃焼装置およびそれによって行われる二段挿入方式の分析試料の概要を図1bに示す。尚図2は本発明の分析装置の一具体例についてのシステム構成図である。
【0023】
図1aにおいて、後述するオートサンプラにより順次選択的に供給される分析試料の試料ボートは燃焼装置の移動炉、次いで固定炉内にこれらを貫設して設けられるセラミック燃焼管を通して導入され、空気により加熱燃焼されてガス化した生成物としての分析試料中の無機形態のハロゲンおよび硫黄酸化物が吸収装置に送られる。これらのガスは吸収装置中の吸収びんに収容された吸収液中に溶解してイオン化される。燃焼分解から定量形態に至る化学式は下記に示す。
燃焼分解 定量形態
有機・無機ハロゲン(X:F,Cl,Br,I) HX,X2 X−
有機・無機硫黄(S) SO2、SO3 SO42−
【0024】
吸収液には純水を用い、分析対象が硫黄およびヨウ素のように酸化反応および還元反応を必要とする硫黄およびヨウ素含有試料である場合のために酸化/還元系を形成する酸化剤(H2O2)および還元剤(NH2NH2)を添加する。
【0025】
吸収液の一部はイオンクロマトグラフ用の分析用カラムに導入され、これらのX−およびSO42−の無機陰イオンは移動相によりクロマトグラフカラム内に展開され、夫々のイオン種間のイオン交換能および吸着度の差により固定相粒子の表面にて経時的に展開分離される。分離カラムとしてはShodex SI−904E(4.0×250mm)を用い、移動相には1.8mM Na2CO3と1.7mM NaHCO3を用いた。分離された夫々のイオン種は導電率検出器によって検出されるそれらに固有な保持時間を示す各イオンのクロマトグラムとしてインテグレータのチャートに表示され、各元素固有の独立したクロマトグラムとその面積に基いて各種ハロゲンおよび硫黄の存在がそれらの含有分とともに求められる。
【0026】
[二段挿入法による試料の燃焼]
ここでオートサンプラから燃焼装置中に導入される分析試料は図1bに示すように試料ボートに収容されオートサンプラの導入棒によって燃焼室の移動炉および固定炉を貫設して延長されセラミック燃焼管を通して図中矢視方向(左側)に移動される。
【0027】
ここで試料ボートが図1bに示す移動炉の前方(図中左側)の所定の第一位置Aに導入棒によって導入されると、移動炉が図中の位置から矢視(左側)方向に図示しないモータ等により駆動されてセラミック燃焼管中の炉の試料ボートが炉内に位置するところまで移動される(図1b:破線位置)。
【0028】
この間に分析試料の種類によりたとえば300℃に予め設定された移動炉の温度が炉の移動と共に1000℃まで徐々に昇温され、試料ボート内の分析試料が約5〜10分間徐々に加熱される。これによってたとえば分析試料が無機成分からなる試料又は有機物成分をも含有する無機試料である場合には、この燃焼によって分析試料中の有機成分が燃焼用の清浄化空気によって燃焼され、含有されていた有機成分由来のハロゲンおよび硫黄が無機態のハロゲン又は硫黄酸化物としてガス化され吸収装置に回収される。
【0029】
ここで前記移動炉内の徐々の昇温をともなう燃焼では急激な過熱により有機成分からカーボン(すす)が生じて分析機器内に付着し、もしくはそれによって機器分析の動作の信頼性を損なうことはない。
【0030】
前記の分析試料中の無機成分は前記移動炉内の300〜1000℃の加熱燃焼の際に無機成分由来の固形物内に取込まれ完全に熱分解されない場合が多く、この燃焼工程のみではハロゲンおよび硫黄についての精度の高い分析が期待できない。
【0031】
本実施態様では移動炉内の前記第一の位置Aで燃焼に付された分析試料を収容した試料ボートは前記所定時間の経過後、オートサンプラの動作制御により導入棒によってセラミック燃焼管中を図1b中さらに左側に移動され、固定炉内の所定の第二の位置Bに自動的に位置決めされる。本実施態様では固定炉の温度は対象とする無機化合物試料が熱分解を生じるような1100〜1350℃の範囲内の一定の高温たとえば1350℃に設定される。この温度で試料ボート中の分析試料をセラミック燃焼管内で加熱すると試料は実質的に完全な熱分解を生じ、たとえば5〜10分間の加熱により分析試料が熱分解して試料中のほとんどのハロゲンおよび硫黄が無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物となって放出される。
【0032】
したがって、本実施態様の二段挿入形式を用いた燃焼装置によれば、分析試料の形態を問わずその中に含有されるハロゲンおよび硫黄が試料の熱分解によってほとんどガス化するので、これらを吸収装置によるイオン化およびイオンクロマトグラフによる分離によって処理することにより、分析試料中の主要ハロゲン元素および硫黄元素の含有およびそれらの含有量を高精度で同時に分析することができる。
【0033】
尚本実施態様では前記固定炉の加熱体としては前記熱分解温度が高温によることを考慮して高純度の炭化ケイ素からなるシリコニット社のシリコニット発熱体を用いる。固定炉の温度は予めたとえば1350℃の熱分解温度に上昇され、試料の熱分解の間この温度に一定に維持されるので温度管理に特別な困難はない。また本実施態様では、燃焼管および試料ボートはいずれも約1450℃以上の温度で使用可能なセラミック材料(ムライトHB、ムライトCB等)から形成されているので、試料を固定炉で1350℃で熱分解させる際にも何等支障を生じない。また、本実施態様では分析試料はまず移動炉中で300〜1000℃の温度に予め加熱されているので、固定炉中での高温に曝されたときにも熱膨張係数の急激な変化で変形や破壊を生じるおそれが少ない。また本実施態様では、導入棒は、成型および加工性に優れたアルミナ99.5%のセラミック材料から形成されているので、燃焼管内の機密性を高くでき、また耐熱性と耐磨耗性にも優れているため室温から1350℃の加熱下でも試料ボートの移動を何等支障なくコントロールできる。
【0034】
すでに述べたように、従来の石英燃焼管による試料分解炉での燃焼による分析装置は専ら有機試料を分析対象としたものであり、これを無機成分を含む試料中のハロゲンおよび硫黄の分析に適用しても所期の分析精度は得られない。
【0035】
下記表1は分析試料としての鉄鋼スラグのサンプルを従来の燃焼装置の熱分解炉のみにより石英燃焼管で上限950℃の温度で加熱燃焼させた場合と、これらの試料を本実施態様における二段挿入法により移動炉によりセラミック燃焼管中で燃焼させ、さらに後段の固定炉で1350℃の温度で熱分解させた場合とについて、イオンクロマトグラフによって検出されたフッ素元素の検出値を比較して示す。表1から明らかなように、従来の燃焼方式で分析した分析値(b)は本発明の二段挿入による方式で燃焼/熱分解させた場合の分析値(a)を基準とした場合、その約30〜80%の範囲にとどまっており、本発明の分析法により精度の高い分析が行われることを示している。
【0036】
(表1)
【0037】
尚本発明で用いるセラミック燃焼管に対する有機標準試料の適合性を各元素の検量線を作成して検討した。標準試料として本発明者等が開発したC12H8NO2FClBrS(NAC−St1)を用い原点を含めて各元素のクロマトグラフによる検量線を作成して検証したところ、二次式による検量線方程式を用いた場合、表2に示すようにそれらの相関係数(R2)はいずれの元素も0.9999と良好な相関係を示した。
【0038】
(表2)
【0039】
本実施態様では前記の二段挿入法で試料を移動炉および固定炉で加熱処理する際には、その温度管理を正確なものとするために、前記試料ボートを前記第一の位置Aおよび第二の位置Bに対して所定の経過時間後に夫々厳密に位置決めすることが必要である。従来の透明材質の石英燃焼管の場合には外部から燃焼管中の試料ボートの位置を確認していたが、材質がセラミックスからなる燃焼管の場合にはこのような視認は不可能である。
【0040】
しかし、本実施態様では燃焼管中を移動する試料ボートの第一、第二の位置A,Bへの位置決めの設定はこれらを導入するオートサンプラの導入棒の移動量として自動的に制御することができるので、試料ボートの位置決めを自動的に正確に設定することができ、これはオートサンプラ側でその制御動作として把握することができる。以下本実施態様で用いるオートサンプラ(試料供給装置)の具体的な機構および動作について説明する。
【0041】
オートサンプラは、試料ボートに収容した分析対象とする試料を燃焼装置に供給するために特定の試料ボートを選択する選択手段と、選択された試料ボートを順次燃焼装置の燃焼管内の移動炉に対する第一の位置に挿入し、試料の燃焼後に試料ボートを移動炉における燃焼温度よりも高い温度で熱分解する固定炉中の第二の位置に挿入する導入手段と、熱分解後の試料ボートを排出して回収する回収手段と、前記分析試料を収容した試料ボートの選択、選択した試料ボートの燃焼装置中の前記第一および第二の所定位置への導入、および燃焼装置からの排出を自動的に制御する制御手段と、を有する。
【0042】
図3ないし図6を参照して具体的に説明すると、オートサンプラ3は、前記選択手段が、複数の試料ボート10を放射状に等間隔で搭載するターンテーブル11からなり、前記導入手段が、試料ボート10に係合して試料ボート10をセラミック燃焼管8に導入する水平状の導入棒13と、導入棒13を水平移動させるスライダ機構14とからなり、前記回収手段が、セラミック燃焼管8の導入口周りに設置した回収装置61からなり、前記制御手段が、前記スライダ機構14を制御するコントローラ15からなり、これらは筐体16内に収められている。
【0043】
[ターンテーブル11]
図6に示すように、ターンテーブル11は、円盤状の内テーブル11Aと、内テーブル11Aから間隔を空けて内テーブル11Aと同軸状に設けられる環状の外テーブル11Bとから構成されている。外テーブル11Bは、例えば帯状の板材を環状に形成したものからなり、内テーブル11Aとは放射状に延びる複数の連結板17により連結している。内テーブル11Aの周縁部上面には複数の位置決めピン18が円周方向に等間隔で立設されており、一方、外テーブル11Bの上縁においては、半円状の切欠き19が各位置決めピン18を通る径方向延長上に位置するように複数形成されている。内テーブル11Aにおいて各位置決めピン18の内側には支持板20が固設されている。
【0044】
試料ボート10の長手方向一端側の上部には、上下に貫通する係合孔10Aを有した係合片10Bが形成されている。試料ボート10は、一端側においては、係合孔10Aが位置決めピン18にはまり係合片10Bの先端が支持板20に載置支持され、他端側においては切欠き19内に載置支持されることで、ターンテーブル11に放射状に搭載される。
【0045】
図3において、内テーブル11Aの下面には回転軸が突設されており、この回転軸が軸受を介して筐体16内の架材21に支持されている。前記回転軸の下端にはギア22が取り付けられ、このギア22がモータ23の出力ギア24に噛合することでターンテーブル11が回転する。なお、図6に示すように外テーブル11Bの各切欠き19の下方には回転角度検出用の切欠き25が形成され、図2に示すセンサ26によりターンテーブル11の回転角度が検出される。
【0046】
[昇降機構12]
図3において、昇降機構12は、搬出位置に位置した試料ボート10を下側から支えてターンテーブル11から上昇させるボートリフト台27を備える。搬出位置とは、図4に仮想線で示すように、平面視して試料ボート10がセラミック燃焼管8の延長上に来る位置である。ボートリフト台27は試料ボート10の下周りを囲うように上方を開口させた断面コ字形状を呈した部材であり、下部に取り付けられた鉛直状の昇降ガイド28を介して、架材21に固定された昇降モータ29により昇降し、内テーブル11Aと外テーブル11Bとの間の空間を通過して試料ボート10を載せる。
【0047】
符号30は、試料ボート10がボートリフト台27からセラミック燃焼管8内へ導入される際のガイド機能を担うボート誘導台であり、ボートリフト台27と同様に、試料ボート10の下周りを囲うように上方を開口させた断面コ字形状を呈している。このボート誘導台30はボートリフト台27の昇降に連動するように構成されている。前記昇降ガイド28には横方向を開口させたコ字状のブラケット31が取り付けられ、ボート誘導台30の下部に取り付けた鉛直状の昇降ガイド32の係合部33がブラケット31に係合している。図2に示す状態からボートリフト台27が上昇すると、ブラケット31の下側片が係合部33を押し上げることによりボート誘導台30がボートリフト台27に連動して上昇し、上昇時にはボートリフト台27と同じ高さ位置となることで、試料ボート10のボートリフト台27からセラミック燃焼管8への円滑な移載を可能とする。
【0048】
[導入棒13]
導入棒13の先端には試料ボート10の係合片10Bを収める切欠き34が施されるとともに、係合孔10Aに係合する係合ピン35が下方に向けて突設されている。
【0049】
[スライダ機構14]
導入棒13の基端には第1スライダ36の下端が固定され、導入棒13の中ほどには第2スライダ37の下端が摺動自在に嵌着されている。第1スライダ36、第2スライダ37は、導入棒13の上方に位置して導入棒13の延設方向に沿って配設されたガイド棒38に摺動自在に嵌着されている。ガイド棒38は、昇降モータ39により昇降する昇降板40に取り付けられており、したがって昇降モータ39の駆動により第1スライダ36、第2スライダ37を介して導入棒13が昇降する。第2スライダ37における導入棒13の先端側に臨む側面には、圧縮コイルばね41を介して密閉蓋42が導入棒13に摺動自在となるように取り付けられている。密閉蓋42の先端面側には弾性を有するシール材43が設けられている。
【0050】
第1スライダ36、第2スライダ37の各上下方向中ほどには鉛直状のガイドバー44、45が固設されており、第1スライダ36、第2スライダ37の各上部ユニット46、47はこのガイドバー44、45の昇降を許容する構造、つまり前記昇降モータ39による導入棒13の昇降を許容する構造となっている。各上部ユニット46、47は導入棒13の延設方向に沿って配設された一対のガイド棒48に摺動自在に嵌着されている。上部ユニット46には駆動モータ49が取り付けられ、その出力軸のピニオンギア50がラックギア51に噛合する。
【0051】
上部ユニット46と上部ユニット47との間には長尺のスベリ板52が設けられている。スベリ板52の一端は上部ユニット47の固定部53に固定され、他端は、上部ユニット46に設けられ電磁ソレノイド等により作動する挟持部54、55により挟持または解放が可能となるように構成されている。
【0052】
[移動炉6]
次に前記オートサンプラに関連する移動炉6の構造例について図7を参照して説明する。移動炉6はセラミック燃焼管8を挟む上部炉6Aおよび下部炉6Bからなり、それぞれには燃焼管8を熱する加熱部56が形成され、試料の燃焼時には図7(a)のように閉じた状態で使用される。移動炉6の下部には走行モータ57が取り付けられ、車輪58がガイドレール59を走行することで移動炉6がセラミック燃焼管8に沿って移動する。
【0053】
以下、オートサンプラ3と移動炉6の動作について説明する。ターンテーブル11上の試料ボート10が搬出位置に来ると、昇降機構12によりボートリフト台27およびボート誘導台30が上昇する。このとき、図3や図6に示すように、導入棒13の係合ピン35は試料ボート10の搬出位置における位置決めピン18の直上に同軸状に位置しており、上昇に伴い試料ボート10の係合孔10Aが位置決めピン18から抜け出て係合ピン35に嵌り、これにより試料ボート10が導入棒13に係合される。試料ボート10が導入棒13に係合した時点で昇降モータ39が駆動して導入棒13も上昇し、試料ボート10がセラミック燃焼管8の延長上に達したところで昇降機構12および昇降モータ39が停止する。
【0054】
スライダ機構14にあっては挟持部54、55がスベリ板52を挟持した状態にあり、コントローラ15の制御信号により駆動モータ49が駆動すると、ピニオンギア50とラックギア51のギア機構を介して第1スライダ36、第2スライダ37が一体となって移動し、導入棒13がセラミック燃焼管8に向けて移動して、試料ボート10がボートリフト台27からボート誘導台30上を摺動してセラミック燃焼管8内に導入される。試料ボート10がセラミック燃焼管8内に導入された時点でボートリフト台27およびボート誘導台30は下降する。そして、試料ボート10がセラミック燃焼管8内の所定の停止位置まで運ばれたときには、第2スライダ37に取り付けられた密閉蓋42のシール材43がセラミック燃焼管8の入り口周りの開口部60に対して圧縮コイルばね41の付勢力により圧接されることで、セラミック燃焼管8内が密閉される。なお、このとき、スベリ板52は挟持部54、55から受ける摩擦力に抗して挟持部54、55内を滑るようになっている。
【0055】
試料ボート10がセラミック燃焼管8内の所定の停止位置(図1bの第一位置A)、具体的には移動炉6よりも固定炉7寄りの所定位置で停止すると、走行モータ57が駆動して移動炉6が固定炉7側に向けて移動する。つまり、試料ボート10内の試料はボート内の一端側の試料部分から他端側の試料部にかけて次第に燃焼される。試料ボート10に対しての移動炉6の移動時間、つまり移動炉6の全試料に対する燃焼時間は本実施例の場合8.5〜35分程度に設定されている。
【0056】
移動炉6による燃焼が終了すると、コントローラ15の制御信号により駆動モータ49が再度駆動して第1スライダ36が移動し、導入棒13がさらに前進して試料ボート10が固定炉7の所定の位置(図1bの第二の位置B)に導入された時点で駆動モータ49が停止する。なお、このとき、第2スライダ37は前進している導入棒13に対して摺動しつつ密閉蓋42のシール材43によりセラミック燃焼管8の密閉状態を維持しており、スベリ板52は挟持部54、55から受ける摩擦力に抗して挟持部54、55内を滑っている。
【0057】
固定炉7での燃焼が終了すると、コントローラ15の制御信号により駆動モータ49が逆回転して導入棒13が固定炉7およびセラミック燃焼管8から後退する。セラミック燃焼管8の入り口周りには試料ボート10の回収装置61が設置されており、導入棒13の先端周りがセラミック燃焼管8から抜け出ると、試料ボート10は回収装置61に設けられた可動式の試料ボート載置板(図示せず)に移載されたうえで回収装置61の本体内に回収されるようになっている。
【0058】
以上のように、選択手段としてのターンテーブル11と、導入手段としての導入棒13およびスライダ機構14と、回収手段としての回収装置61と、制御手段としてのコントローラ15を備える構成とすれば、部品点数が低減され、機構が簡単で組み付け性に優れたオートサンプラを構築できる。
【0059】
次に前記燃焼装置により各種実試料について得られたハロゲンおよび硫黄の分析結果を示す。
【0060】
[実試料の分析結果]
本発明のハロゲンおよび硫黄の分析方法は近年多様化している分析試料に対して広範囲な適用が可能であり、以下本発明による各種試料の分析結果を示す。
【0061】
[多元素含有有機化合物の分析]
S,I,Fを含む多元素有機化合物C23H26O3F9IPSについて各元素F,I,Sを同時に分析定量した。図8は分析結果のクロマトグラムのグラフを示す。図中、Aは標準試料NAC−St2(C12H8NO2FBrIS)についてのクロマトグラムのグラフ、Bは分析試料についてのクロマトグラムのグラフであり、図中縦軸は導電率検出器の電位(mV)を、横軸はカラムの保持時間(min)を示す(以下の各分析において同様)。酸化/還元剤(H2O2/NH2NH2)添加純水による吸収液を用いることにより硫黄とヨウ素の同時測定が可能であった。各元素についての表示値に対して分析値に示すように高い分析精度が得られた。
【0062】
[廃プラスチック品の分析]
パソコン基板等の電気部品は難燃剤としてEU規則(WEER/RoHS)により有害物質として制限されている臭素系難燃剤を含有している。図9はパソコン基板破砕品を分析試料として本発明による臭素の測定を行った結果を示す。Aは標準試料NAC−St1(C12H8NO2FClBrS)のクロマトグラムのグラフを、Bは供試分析試料のクロマトグラムのグラフを示す。約5%以上の臭素が検出され、臭素系難燃剤の存在が示唆された。また臭素以外のフッ素や塩素等および硫黄も同時に検出された。
【0063】
[ポリエチレン標準試料の分析]
ポリエチレン製品には各種ハロゲン(Cl、Br、S)が含有されている。図10はEU認証ポリエチレン標準試料(BCR681)について本発明によりこれら元素を測定した分析結果を示す。特に硫黄については固定炉での熱分解温度を1350℃に設定することにより試料量100mgを用いて行ったとき、表示量78±17ppmに対して79.8ppm(n=3)の分析値が得られており、従来の石英燃焼管による燃焼法の場合の検出値18〜40ppmに比較して分析値が大巾に向上している。
【0064】
[鉱石(蛍石)分析]
蛍石はフッ化カルシウムとを主成分とする鉱石であり製鉄の際の融剤や光学材料の素材として用られるている。近年その成分としてのフッ素ついてのの分析がもとめられているが、フッ化カルシウムはその融点が1360℃であることから従来の試料分解炉による石英燃焼管を用いた燃焼方法では正確な分析結果が得られない。本発明では固定炉での加熱温度を前記1350℃に設定した場合、図11に示すように表示値とほゞ一致する分析値が得られた。尚、これと同時に含有されている硫黄についても充分に高い精度の分析値が得られた。
【0065】
[鉄鋼スラグ]
製鉄時に副産物として生じる鉄鋼スラグはセメントや土木用骨材として広く使われており、その中の微量フッ素の分析は必須項目である。鉄鋼スラグはその主成分CaOおよびSiO2の融点がいずれも1000℃以上であることから、従来の石英燃焼管による燃焼方法では分析が困難であったが、本発明の方法によれば前記のようにその分析値が著しく向上した。図12は鉄鋼スラグ中のフッ素の併行精度を求めた結果とそのときのクロマトグラムを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料供給装置から導入されるハロゲンおよび硫黄を含む分析試料を燃焼装置で燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成し、生成物を吸収装置の吸収液に溶解させ、イオン化したハロゲンおよび硫黄の無機陰イオンをイオンクロマトグラフにより分離、定量することにより前記分析試料中のハロゲンおよび硫黄元素を分析する分析方法において、前記試料供給装置としてオートサンプラを用い、
複数の分析試料を夫々収容した試料ボートから測定対象の分析試料の試料ボートを順次前記燃焼装置にセラミック燃焼管を通して供給する工程と、
供給された試料ボートを前記燃焼装置の移動炉に対する第一の位置に導入し、移動炉
部位中のセラミック燃焼管内で300〜1000℃の範囲の温度で燃焼させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記工程を経た試料ボートを前記燃焼装置の固定炉に対する第二の位置に導入し、固定炉部位のセラミック燃焼管内で前記の燃焼の温度よりもさらに高い1100〜1350℃の一定の温度で試料を熱分解させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記燃焼および熱分解後の前記試料ボートを回収装置に回収する工程とを前記オートサンプラによって自動的に行うハロゲンおよび硫黄の分析方法。
【請求項2】
試料供給装置から供給されるハロゲンおよび硫黄を含む分析試料を燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる燃焼装置と、生成物を吸収液に吸収させてイオン化する吸収装置と、前記イオン化されたハロゲンおよび硫黄の無機陰イオンを分離、定量するイオンクロマトグラフとを有するハロゲンおよび硫黄の分析装置において、
前記燃焼装置がセラミック燃焼管を内部に有して分析試料を燃焼させる移動炉とセラミック燃焼管を内部に有して移動炉での燃焼後の試料を移動炉における燃焼温度よりもさらに高い一定の温度で熱分解する固定炉とを有し、さらに
前記試料供給装置が試料ボートに収容した分析試料を前記燃焼装置に供給するために特定の試料ボートを選択する選択手段と、選択された試料ボートを燃焼装置の燃焼管内の移動炉に対する第一の位置に挿入し、試料の燃焼後に前記試料ボートを移動炉における燃焼温度よりもさらに高い一定の温度で試料を熱分解する固定炉中の第二の位置に挿入する導入手段と、熱分解後の試料ボートを排出して回収する回収手段と、前記選択した試料ボートの燃焼装置中の前記第一および第二の所定位置への挿入を自動的に制御する制御手段からなるオートサンプラを有する前記ハロゲンおよび硫黄の分析装置。
【請求項3】
前記オートサンプラは、前記選択手段が複数の試料ボートを搭載するターンテーブルからなり、前記導入手段が選択された試料ボートに係合して試料ボートをセラミック燃焼管に導入する水平状のセラミック導入棒と、前記セラミック導入棒を前記セラミック燃焼管を通して水平移動させるスライダ機構とからなり、前記回収手段はセラミック燃焼管の導入口周りに設置した回収装置からなり、前記制御手段が前記スライダ機構を制御するコントローラからなる請求項1記載のハロゲンおよび硫黄の分析装置。
【請求項1】
試料供給装置から導入されるハロゲンおよび硫黄を含む分析試料を燃焼装置で燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成し、生成物を吸収装置の吸収液に溶解させ、イオン化したハロゲンおよび硫黄の無機陰イオンをイオンクロマトグラフにより分離、定量することにより前記分析試料中のハロゲンおよび硫黄元素を分析する分析方法において、前記試料供給装置としてオートサンプラを用い、
複数の分析試料を夫々収容した試料ボートから測定対象の分析試料の試料ボートを順次前記燃焼装置にセラミック燃焼管を通して供給する工程と、
供給された試料ボートを前記燃焼装置の移動炉に対する第一の位置に導入し、移動炉
部位中のセラミック燃焼管内で300〜1000℃の範囲の温度で燃焼させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記工程を経た試料ボートを前記燃焼装置の固定炉に対する第二の位置に導入し、固定炉部位のセラミック燃焼管内で前記の燃焼の温度よりもさらに高い1100〜1350℃の一定の温度で試料を熱分解させて無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる工程と、
前記燃焼および熱分解後の前記試料ボートを回収装置に回収する工程とを前記オートサンプラによって自動的に行うハロゲンおよび硫黄の分析方法。
【請求項2】
試料供給装置から供給されるハロゲンおよび硫黄を含む分析試料を燃焼して無機態のハロゲンおよび硫黄酸化物を生成させる燃焼装置と、生成物を吸収液に吸収させてイオン化する吸収装置と、前記イオン化されたハロゲンおよび硫黄の無機陰イオンを分離、定量するイオンクロマトグラフとを有するハロゲンおよび硫黄の分析装置において、
前記燃焼装置がセラミック燃焼管を内部に有して分析試料を燃焼させる移動炉とセラミック燃焼管を内部に有して移動炉での燃焼後の試料を移動炉における燃焼温度よりもさらに高い一定の温度で熱分解する固定炉とを有し、さらに
前記試料供給装置が試料ボートに収容した分析試料を前記燃焼装置に供給するために特定の試料ボートを選択する選択手段と、選択された試料ボートを燃焼装置の燃焼管内の移動炉に対する第一の位置に挿入し、試料の燃焼後に前記試料ボートを移動炉における燃焼温度よりもさらに高い一定の温度で試料を熱分解する固定炉中の第二の位置に挿入する導入手段と、熱分解後の試料ボートを排出して回収する回収手段と、前記選択した試料ボートの燃焼装置中の前記第一および第二の所定位置への挿入を自動的に制御する制御手段からなるオートサンプラを有する前記ハロゲンおよび硫黄の分析装置。
【請求項3】
前記オートサンプラは、前記選択手段が複数の試料ボートを搭載するターンテーブルからなり、前記導入手段が選択された試料ボートに係合して試料ボートをセラミック燃焼管に導入する水平状のセラミック導入棒と、前記セラミック導入棒を前記セラミック燃焼管を通して水平移動させるスライダ機構とからなり、前記回収手段はセラミック燃焼管の導入口周りに設置した回収装置からなり、前記制御手段が前記スライダ機構を制御するコントローラからなる請求項1記載のハロゲンおよび硫黄の分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−21925(P2011−21925A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165469(P2009−165469)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(506100967)株式会社 ナックテクノサービス (4)
【出願人】(509198642)株式会社 ヤナコ機器開発研究所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(506100967)株式会社 ナックテクノサービス (4)
【出願人】(509198642)株式会社 ヤナコ機器開発研究所 (1)
【Fターム(参考)】
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