説明

有機修飾シロキサンの調製方法

【課題】有機修飾シロキサンの調製方法の提供。
【解決手段】シロキサンを末端不飽和エステルでヒドロシリル化することにより、有機エステルで修飾されたシロキサンを調製する方法、触媒として、加水分解酵素群からの、リパーゼ、エステラーゼ、またはプロテアーゼ、好ましくはリパーゼ、より好ましくはカンジダ アンタークチカ(Candida antarctica)由来のリパーゼBである酵素が使用され、末端不飽和エステルを調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機基で修飾したシロキサンを調製する新しい方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機修飾シロキサンはきわめて広範囲な用途に使用される。それらの特性は、その修飾の性質により、また修飾の密度により注文に合わせることができる。
【0003】
有機修飾シロキサンを生産するために工業的に利用されている一つの方法はヒドロシリル化法である。これは、遷移金属触媒の存在下でSi−H官能性シロキサンを末端不飽和有機反応の相手と反応させることを含む。
【0004】
例えば、アリルポリエーテルを用いてシロキサン主鎖に親有機基または非イオン親水基を付着させることができる。このような化合物は、例えばポリウレタン発泡体の安定剤として、燃料における泡止め剤として、または塗料や被膜剤における添加剤として使用される。
【0005】
これとは対照的にシロキサンはαオレフィンとの反応によって疎水基と結合する。得られるシロキサンワックスは、例えばパーソナルケアの用途において添加剤として役立つ。
【0006】
シロキサンの効果が、その問題になっている配合物との相溶性に決定的に依存していることは多くの応用分野で明らかである。したがって、幅広い有機ラジカルの原料基剤であって、しかも正確なかつきわめてすぐれた収率での再現性で、ヒドロシリル化によってシロキサン骨格上に付加反応させることができるものを用いることができることが望ましい。
【0007】
一つのきわめて幅広く、また多くの場合、きわめて有利な値段を有する原料基盤は、カルボン酸グループによって代表される。それらの利用可能な製品は非常に多く、またそれらの特性は著しく異なっている。その例は、脂肪酸のクラスである。
【0008】
またカルボン酸は、それらのエステルの形態でシロキサン主鎖に付着させることができる。有機エステル基で修飾したこの種類のシロキサンは、様々な合成経路を通って得ることができ、例えばトナー用添加剤として利用されている。
【0009】
一方、アルコール基を担持するシロキサンの場合はエステル化すること、またカルボン酸エステルの場合はアルコール基を担持するシロキサンでエステル交換反応することが可能である。
【0010】
しかしこれら二つの方法は、第一にアルコール基を担持するシロキサンを合成しなければならないことを前提としており、多くの場合それは問題を含んでいる可能性がある。この種類のシロキサンは、例えばアリルアルコールまたはグリセロールモノアリルエーテルのなどの末端不飽和アルコールのヒドロシリル化を通じて得ることができる。しかしヒドロシリル化は、一般にそのSi−H単位がOH官能基と反応してSiOC基を形成する副反応を伴う。したがって高度に修飾したシロキサンの場合は特に、その反応生成物は制御されないまた求められていない架橋を急速に受ける。
【0011】
その上、それによって得られるアルコール官能性シロキサンがその対応するエステルを形成する反応は、100℃を超える温度での強酸の使用などの一般にエステル化またはヒドロシリル化のために採用されるその反応条件の多くがシロキサン主鎖中の転位反応をひき起すので同様にしばしば問題を含んでいる。
【0012】
カルボン酸エステル官能基化シロキサンを得るさらなる経路は、末端不飽和エステルのヒドロシリル化である。(特許文献1)および(特許文献2)は末端不飽和エステルの使用について記載しているが、それらはこれら化合物の調製および任意選択の精製に関しては何の情報も与えない。しかしヒドロシリル化はきわめて敏感な反応であるため、なんら問題なくシロキサンとのさらなる反応にかけることができるエステルを得るには、場合によっては多段階の精製の工程が必要である。経済的および毒物学的な立場からは一般に15ppm未満の低い触媒濃度が望ましいが、その結果、トラブルのない反応特性を達成することはさらに難しい。
【0013】
例えば化粧用エステルの調製にしばしば使用される種類のエステルの工業的調製のための既知の従来の方法は、触媒として酸またはその金属塩の使用を伴う。
【0014】
しかし、例えばパラトルエンスルホン酸を用いた酸触媒作用による、または例えばシュウ酸スズ(II)を用いた金属塩触媒作用による場合のように標準的な方法によって調製されてきた末端不飽和エステルは、その使用された触媒が中和および濾過などの一般的な簡単な方法だけで分離される場合、ヒドロシリル化において不満足な結果をもたらす。後に述べる実施例1、2、11、および12は、実験データによりこの事実を実証する。
【0015】
【特許文献1】特開平8−157601号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第A−2003/0096919号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって本発明の目的は、第一に末端不飽和有機エステルの簡単な調製を可能にし、続いて問題なく、実質的に後処理工程なしにそれをヒドロシリル化によってシロキサンと結合させることができる方法を開発することである。
【0017】
さらなる目的は、明確に明記されないが、次の詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲の文脈から明らかになるはずである。
【0018】
驚くべきことに、末端二重結合を含有する有機エステルは、そのエステル結合のリンキングを酵素触媒作用によって達成する場合、ヒドロシリル化により容易かつきわめてすぐれた収率で、シロキサンとの付加反応にかけることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって本発明は、有機エステルで修飾したシロキサンの調製方法を提供し、この方法は一般式I
【化1】

(式中、
Wは水素またはメチル、好ましくは水素であり、
mは0から28、好ましくは1から17であり、
nは0または1であり、
oは0から100であり、
Aは一般式Ia
【化2】

(式中、
Xラジカルは独立して−H、−CH、−CHCH、または−フェニルの群からの同一または異なるラジカル、好ましくは水素である)のオキシアルケニルラジカルであり、
pは0から20であり、
Bは、p=1の場合、任意選択でRでエステル化された、式Ib
【化3】

のグリセロール誘導オキシアルケニルラジカル(ここでRは、炭素原子2個から30個を有し、任意選択で追加のヒドロキシル基を担持する直鎖、分枝状、飽和、または不飽和カルボン酸のアシルラジカルである)、または
Bは、p=1の場合、一般式Ic
【化4】

(式中、
YおよびZは、互いに独立して−H、−CH、−CHCH、−CHOH、または−CHORの群からの同一または異なるラジカルであり、ここでRは上記と同じように定義される)のラジカル、または、
Bは、p≧2の場合、任意選択でR(ここでRは上記と同じように定義される)でエステル化されたポリグリセロール誘導ラジカルであり、
は、水素、Ra1またはRa2であり、
ここで、
a1は、任意選択でヒドロキシル基を担持し、任意選択でカルボン酸でエステル化されたヒドロキシル基を担持し、また任意選択でアミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基を担持する、炭素原子1個から200個を有する直鎖または分枝状、飽和または不飽和のアルキルラジカルであり、
a2は、一般式Id
【化5】

のラジカルであって、そして、
は、炭素原子2個から20個を有する飽和または不飽和の二官能性炭化水素ラジカルであり、
ここで、
n+q=1であり、
もしRが水素である場合、
qは0、かつ
o+p≧1である)
の末端不飽和エステルを生体触媒作用によって調製することを含む。
【0020】
本発明によれば一般式I
(式中、
n、o、およびp=0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4であり、
qは1であり、
、Ra1=Ra11、またはR=Ra2である)の化合物を使用することが好ましい。
【0021】
ここでRa11は、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、エチルへキサン酸、イソノナン酸、イソトリデカン酸、またはイソステアリン酸などの商業上慣習的な酸から得られるアルキルラジカルである。さらにRa11は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ペトロセレン酸、エライジン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸などの炭素原子6個から30個を有する、特に炭素原子8個から22個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸から得られるアルキルラジカルであり、単独でまたは混合して使用することができる。ラジカルRa11としては、ポリ−12−ヒドロキシステアリン酸またはポリリシノール酸などのヒドロキシ官能基化した酸の縮合重合生成物から得られるアルキルラジカルを使用することも同じように可能である。
【0022】
本発明によれば、同様に一般式I
(式中、
nおよびpは0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4、特に1であり、
oは1から100、特に1であり、
qは1であり、
はRa1=Ra11、またはR=Ra2(ここでRa11およびRa2は上記と同じように定義される)である)の化合物を使用することが好ましい。
【0023】
本発明によれば、同様に一般式I
(式中、
nおよびoは0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4、特に1であり、
Bは、−CH−CHOH−CH−O−または−CH−CHOR−CH−O−であり、
pは1から20、好ましくは1であり、
qは1であり、
はRa1=Ra11、またはR=Ra2
(ここでRa11、Ra2、およびRは上記と同じように定義される)である)のエステルを使用することが好ましい。
【0024】
この文脈においてこのポリグリセロール誘導体(p≧2)は、ポリグリセロール、例えば1,2−結合を得るための、文献で知られている一般的な方法で生ずる種類の、式Ibから明らかな1,3−結合とは別のグリセロール単位の結合を少なくとも一部有することが可能である。
【0025】
同様に一般式I
(式中、
nおよびoは0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4、特に1であり、
Bは−CH−CYZ−CH−O−であり、
pはq=1であり、
はRa1=Ra11、またはR=Ra2
(ここでY、X、Ra11、およびRa2は上記と同じように定義される)である)のエステルが本発明により好んで用いられる。
【0026】
同様に一般式I
(式中、
nは1であり、
Wは水素またはCH、好ましくは水素であり、
mは0から27、好ましくは1から10であり、
oおよびpは0であり、
はRa1=Ra12、またはR=Ra2(ここでRa2は上記と同じように定義され、Ra12は、任意選択で1個または複数個の多重結合を含有し、あるいは任意選択でヒドロキシル基を担持し、あるいは任意選択でカルボン酸でエステル化されたヒドロキシル基を担持し、あるいは任意選択でアミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基を担持する、炭素原子2個から30個を有する、好ましくは炭素原子6個から22個を有する置換または非置換の、任意選択で分枝したアルコールの炭化水素ラジカルである)である)のエステルが本発明により好んで用いられる。
【0027】
a12の例は、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、またイソプロパノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソトリデシルアルコールなどのこれらの異性体、また1,6−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、ジヒドロキシアセトン、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、またN,N−ジメチルエタノールアミンなどのアミノ官能基化アルコールの炭化水素ラジカルである。さらなる例は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸、およびガドレイン酸などの炭素原子6個から30個を有する、特に炭素原子8個から22個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸から周知の方法により調製されるアルコールの炭化水素ラジカルであり、単独でまたは混合して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明によれば一般式Iのエステルは、触媒として少なくとも1種類の酵素を用いてその対応するアルコールと酸を縮合させることによって調製される。本発明によれば酸の代わりにエステル交換反応用のカルボン酸と揮発性アルコールとのその対応するエステルを使用することが可能であり、好適なこれらエステルの例はメチル、エチル、またはビニルエステルである。
【0029】
本発明により使用することができる酵素は、コレステロールエステラーゼ、ブタの肝臓由来のエステラーゼ、またはカンジダルゴサ(Cnadida rugosa)、シュードモナス(Pseudomonas)種、サーモマイセスラヌギノサス(Thermomyces langosiosus)、ブタの膵臓、ムコールミエヘイ(Mucor miehei)、およびアルカリゲネス(Alcaligenes)種由来のリパーゼなど、リパーゼ、エステラーゼ、またはプロテアーゼなどの加水分解酵素群由来のもの、好ましくはリパーゼ、特に好ましくはカンジダアンタークチカ(Candida Antarctica)由来のリパーゼBである。
【0030】
本発明によれば全細胞、休止細胞、固定化細胞、精製酵素、またはその対応する酵素を含有する細胞抽出物、またはこれらの混合物を使用することが可能である。本発明によればこれら酵素は全細胞系で、遊離形態で、または適切な支持体上に固定化して使用することができる。
【0031】
本発明の方法においてはこれら反応物を適切なリアクター(例えば、スターラーを備えた丸底フラスコまたは固定層リアクター)中で混合し、使用される生体触媒の最適な使用温度まで加熱する。使用される生体触媒に応じてこの温度は、20℃から100℃、好ましくは35℃から80℃である。固定層リアクターを用いる場合、その固定層に選択された酵素を装入し、その反応温度に達した後に固定層を介して反応混合物を注入する。固定層リアクターが存在しない場合は酵素を反応混合物に直接加え、反応の終了後に適切な装置を用いて濾過により単離する。できるだけ完全に近い転化を達成するには、反応の間に形成される水または低沸点のアルコールを、真空の適用によって、またはその混合物中の不活性ガス(例えば窒素)の通過または吸収剤(例えばモレキュラーシーブ)の使用によるなどの他の適切な手法によって除去する。
【0032】
本発明によればこの方法で得られたエステルは、後に相互の混合物として、かつ/または他の末端不飽和有機化合物(例は、アリルオキシエタノール、グリセロールモノアリルエーテル、アリルトリメチロールプロパン、αオレフィン、または末端不飽和ポリエーテルである)との混合物として、適切な箇所でまたヒドロシリル化による周知の方法によって一般式II
【化6】

(式中、
N、a+b+c+d+2=3から850、好ましくは6から160であり、
aは1から800、好ましくは2から150であり、
bは0から400、好ましくは2から75であり、
cは0から10、好ましくは0であり、
dは0から10、好ましくは0であり、
さらに式中、
ラジカルR1は互いに独立して同一または異なり、炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、炭素原子6個から30個を有するアリールラジカルの群からのもの、好ましくは炭素原子1個から4個を有するアルキル基、またはフェニル、特にメチルであり、
ラジカルR2は互いに独立して水素またはR1であり、
ラジカルR3は互いに独立して一般式IIa
【化7】

の同一または異なるラジカルである)のSiHポリシロキサンと反応する。
【0033】
ある特定の実施形態ではこのSiHポリシロキサンは、2個以上の末端HC=CH基を含有するエステルのみと反応するか、またはそれとある程度まで反応する。これらのエステルは、Ra2が式Idで記述される一般式Iに相当する。この方法では比較的高い分子質量の、一般には架橋した有機修飾シロキサンが得られる。
【0034】
熟練した研究者は、これらの化合物が本質的に統計学の法則に支配される分布を有する混合物の形態であることをよく知っている。したがって添え字a、b、c、およびdの値は平均値を表す。
【0035】
本発明によればこのヒドロシリル化は、触媒の存在下で確立されている方法により行われる。この文脈中においては、例えば、白金、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、またはイリジウムの錯体、あるいは類似の化合物、あるいはその対応する元素単独、あるいはシリカ、アルミナ、または活性炭素、または類似の支持材料上に固定化されたこれらの誘導体などのヒドロシリル化用に一般に使用される触媒を用いることが可能である。好ましくはこのヒドロシリル化は、シス白金またはカルシュテット触媒[トリス(ジビニルテトラ−メチルジシロキサン)二白金]などのPt触媒の存在下で行う。
【0036】
使用される好ましい触媒量は、オレフィン1mol当たり10−7から10−1mol、好ましくは1から20ppmである。このヒドロシリル化は、0から200℃の間、好ましくは50から140℃の間の温度で行う。溶媒は、通常はこの反応の実施には必要でない。しかしこの反応は、脂肪族または芳香族炭化水素、環状オリゴシロキサン、アルコール類、またはエステル類などの適切な溶媒中で行うことができる。
【0037】
本発明は、さらに式I(式中、n=p=0、W=X=水素、m=o=q=1、およびR=Ra13である)の化合物を提供する。Ra13は、炭素原子8個から16個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸から得られるアルキルラジカルであり、単独でまたは混合させて存在することができる。本発明によればRa13はまた、イソノナン酸(3,5,5−トリメチルへキサン酸)、2−エチルヘキサン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ポリリシノール酸、またはポリ12−ヒドロキシステアリン酸のアルキルラジカルであることもできる。
【0038】
本発明は、さらに式I(式中、n=p=0、W=水素、X=水素またはメチル、好ましくは水素、m=q=1、o=2から100、好ましくは3から100、またR=Ra14である)の化合物を提供する。Ra14は、例えばブタン酸またはペンタン酸などの炭素原子4個から30個を有する商業上慣習的な酸のアルキルラジカル、またこれに加えてカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、およびアラキドン酸などの炭素原子6個から30個を有する、特に炭素原子8個から22個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸のアルキルラジカルであり、単独でまたは混合させて使用することができる。このラジカルRa14は同様に、例えばポリ−12−ヒドロキシステアリン酸またはポリリシノール酸などのヒドロキシ官能基化した酸の縮合重合生成物のアルキルラジカルであることができる。
【0039】
本発明は、さらに式I(式中、n=o=p=0、q=1、W=水素、m=2から4、好ましくは4、またR=Ra14である)の化合物を提供する。ここでRa14は上記と同じように定義される。
【0040】
本発明はさらに、式I(式中、n=o=0、W=水素、m=p=q=1、B=−CH−CHOH−CH−O−、またR=Ra15である)の化合物を提供する。Ra15は、ミリスチン酸またはココヤシ脂肪酸のアルキルラジカルである。
【0041】
本発明は、さらに一般式III
【化8】

(式中、
N、a+b+c+d+e+f+2=3から850、好ましくは6から160であり、
aは1から800、好ましくは2から150であり、
cは0から10、好ましくは0であり、
dは0から10、好ましくは0であり、
eは0から400、好ましくは2から75であり、また
fは0から400、好ましくは0から75であり、
この場合において、
ラジカルR1は互いに独立して同一または異なり、炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、炭素原子6個から30個を有するアリールラジカルの群からのもの、好ましくは炭素原子1個から4個を有するアルキル基、またはフェニル、特にメチルであり、
ラジカルR4は互いに独立して、一般式IIIa
【化9】

(式中、
rは3、かつ
sは0であるか、または
rは1、かつ
sは1から100、好ましくは1であり、
Xは、各存在において独立して−H、−CH、−CHCH、またはフェニルの群からの同一または異なるラジカル、好ましくは水素であり、
a16は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはアラキドン酸などの炭素原子6個から30個を有する、特に炭素原子8個から22個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸の、単独でまたは混合させて存在することができるアルキルラジカルであり、ラジカルRa16はまた、例えばポリ−12−ヒドロキシステアリン酸またはポリリシノール酸などのヒドロキシ官能基化した酸の縮合重合生成物のアルキルラジカルであることができる)の同一または異なるエステルラジカルであり、
さらに、
ラジカルR5は各存在において独立して、炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、もしくは炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、好ましくは炭素原子6個から22個を有するアルキル基であるか、あるいは
ラジカルR5は、一般式IIIb
【化10】

(式中、
tは1から28であり、
uは1から100であり、
Eは、一般式Ia
【化11】

(式中、
Xラジカルがそれぞれ独立して−H、−CH、−CHCH、または−フェニルの群からの同一または異なるラジカル、好ましくは水素である)のオキシアルケニルラジカルであり、
vは0から20であり、
Gは、v=1の場合、一般式Ib
【化12】

のグリセロール誘導オキシアルケニルラジカル、
あるいはGは
一般式Ic
【化13】

(式中、
YおよびZが互いに独立して−H、−CH、−CHCH、または−CHOHの群からの同一または異なるラジカルである)のラジカル、あるいは
Gは、v≧2の場合、ポリグリセロール由来のラジカルであり、
ラジカルR6は各存在において独立してR1、R4、またはR5(ここでR1、R4、およびR5は上記と同じように定義される)であり、またR6はe=0ならばR4と同一であり、
ラジカルR7は各存在において独立して、一般式IIIc
【化14】

(式中、
R1、R4、R5、およびR6は上記と同じように定義される)の同一または異なるラジカルである)のシロキサン化合物を提供する。
【0042】
一般式IIIbによるラジカルは、具体的には
tが1から28、特に1であり、
uが1から100、特に1から20、特に好ましくは1であり、かつ
vが0であるか、あるいは
tが1から28、特に1であり、
uが0であり、かつ
vが1から20、特に1から6、特に好ましくは1である、化合物であることができる。
【0043】
下記の実施例1、2、11、および12は発明によるものではなく、現状技術を例示するものである。実施例3から10、および13から20は、本発明の化合物の調製方法およびそれらの特性をより詳細に記述する。これら実施形態は、この方法を例示する役目を有し、いかなる形でも本発明の適用範囲を限定するものではない。H、13C、29Si−NMRならびにGPCによる分析方法の結果は、それら生成物の表示の構造に従っている。
【実施例】
【0044】
実施例1
ココヤシ脂肪酸1−アリルグリセリルエステル
【化15】

のPTSA触媒による合成
【0045】
多頸丸底フラスコに1−アリルグリセロール185.1gおよびココヤシ脂肪酸213.4gを装入する。パラトルエンスルホン酸(PTSA)0.4gの添加後、この始発装入物を窒素雰囲気下で170℃に加熱する。7時間後、反応混合物を冷却し、触媒をKCO溶液(水中50%)1.51gで中和し、水を減圧下で蒸留して除き、固形物を濾過により取り出す。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物379gを淡い褐色の液体として生ずる。
【0046】
実施例2
ココヤシ脂肪酸1−アリルグリセリルエステル
【化16】

のシュウ酸スズ(II)触媒による合成
【0047】
多頸丸底フラスコに1−アリルグリセロール185.1gおよびココヤシ脂肪酸213.4gを装入する。シュウ酸スズ(II)0.7gの添加後、この始発装入物を窒素雰囲気下で220℃に加熱する。4時間後、反応混合物を冷却し、タイネックスP(Tinex P)(マンハイムのゴールドシュミットTIB(Goldschmidt TIB,Mannheim))2.4gを用いて触媒を濾過して除く。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物370gを淡い褐色の液体として生ずる。
【0048】
実施例3
ココヤシ脂肪酸1−アリルグリセリルエステル
【化17】

の酵素による合成
【0049】
多頸丸底フラスコに1−アリルグリセロール185.1gおよびココヤシ脂肪酸213.4gを装入し、この始発装入物を50℃に加熱する。ノボザイム435(Novozym 435)(デンマーク国バグスバードのノボザイムスA/S(Novozymes A/S,Bagsvaerd,Denmark)から購入したカンジダアンタークチカ(C.antarctica)由来の固定化リパーゼB)19gの添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、蒸留により反応の水を除去する。7時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物379gを無色の液体として生ずる。
【0050】
実施例4
ステアリン酸1−アリルグリセリルエステル
【化18】

の酵素による合成
【0051】
多頸丸底フラスコに1−アリルグリセロール158.6gおよびステアリン酸237gを装入し、この始発装入物を60℃に加熱する。リポザイムRM 1M(Lipozym RM 1M)(ムコールミエヘイ、ノボザイムスA/S(Mucor miehei,Novozymes A/S)から入手した固定化リパーゼ)19gの添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、蒸留により反応の水を除去する。48時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物382gを無色の液体として生ずる。
【0052】
実施例5
ココヤシ脂肪酸アリルオキシエタノールエステル
【化19】

の酵素による合成
【0053】
多頸丸底フラスコにアリルオキシエタノール134.8gおよびココヤシ脂肪酸243.9gを装入し、この始発装入物を40℃に加熱する。ノボザイム435を18g添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、蒸留により反応の水を除去する。10時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物344gを無色の液体として生ずる。
【0054】
実施例6
ココヤシ脂肪酸ヘキセニルエステル
【化20】

の酵素による合成
【0055】
多頸丸底フラスコにヘキサ−5−エン−1−オール140.0gおよびココヤシ脂肪酸258.1gを装入し、この始発装入物を60℃に加熱する。ノボザイム435を19g添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、蒸留により反応の水を除去する。7時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物360gを無色の液体として生ずる。
【0056】
実施例7
ウンデシレン酸オクチルエステル
【化21】

の酵素による合成
【0057】
多頸丸底フラスコに1−オクタノール82gおよびウンデシレン酸メチル124.9gを装入し、この始発装入物を60℃に加熱する。ノボザイム435を10g添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、遊離したメタノールを蒸留により除去する。6時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物186gを無色の液体として生ずる。
【0058】
実施例8
ジウンデシレン酸1,6−ヘキサンジオール
【化22】

【0059】
多頸丸底フラスコに1,6−ヘキサンジオール44.9gおよびウンデシレン酸メチル150.7gを装入し、この始発装入物を60℃に加熱する。ノボザイム435を9.8g添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、遊離したメタノールを蒸留により除去する。6時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物171gを無色の液体として生ずる。
【0060】
実施例9
アジピン酸ジアリルオキシエチル
【化23】

【0061】
多頸丸底フラスコにアジピン酸125.6gおよびアリルオキシエタノール210.7gを装入し、この始発装入物を60℃に加熱する。ノボザイム435を15.9g添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、遊離した水を蒸留により除去する。8時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物270gを無色の液体として生ずる。
【0062】
実施例10
ラウリン酸アリルポリエチレングリコール−7
【化24】

【0063】
多頸丸底フラスコにアリルポリエチレングリコール−7を200.4gおよびラウリン酸を100.2g装入し、この始発装入物を60℃に加熱する。ノボザイム435を15g添加後、減圧(20ミリバール)を適用し、遊離した水を蒸留により除去する。8時間後、固定化酵素を濾過により除去する。この濾液は、さらなる後処理なしに生成物291gを無色の液体として生ずる。
【0064】
実施例11
実施例1の反応生成物をヒドロシリル化する試み
【0065】
この目的は、一般式XII
【化25】

のポリシロキサンを調製することである。
【0066】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、グリセロールモノアリルエーテル8.5g(64mmol)、実施例1からのココヤシ脂肪酸グリセロールモノアリルエーテルエステル31.5g(96mmol)、およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を95℃に加熱する。一般式XIII
【化26】

のSiHシロキサン34.1g(SiHの123mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを95℃で攪拌する。このバッチはきわめて速やかにゲルになり、そこで反応は終結する。
【0067】
実施例12
実施例2の反応生成物をヒドロシリル化する試み
この目的は、一般式XIIのポリシロキサンを調製することである。
【0068】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、グリセロールモノアリルエーテル8.5g(64mmol)、実施例2からのココヤシ脂肪酸グリセロールモノアリルエーテルエステル31.5g(96mmol)、およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を95℃に加熱する。一般式XIIIのSiHシロキサン34.1g(SiHの123mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを95℃で攪拌する。このバッチはきわめて速やかにゲルになり、そこで反応は終結する。
【0069】
実施例13
実施例3の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XIIの本発明のポリシロキサンの調製。
【0070】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、グリセロールモノアリルエーテル8.5g(64mmol)、実施例3からのココヤシ脂肪酸グリセロールモノアリルエーテルエステル31.5g(96mmol)、およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を95℃に加熱する。一般式XIIIのSiHシロキサン34.1g(SiHの123mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを95℃で1時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。続いて揮発分を減圧下で110℃において蒸留して除く。この結果、粘性のわずかに混濁した淡黄色の生成物が得られる。
【0071】
実施例14
実施例4の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XIVの本発明のポリシロキサンの調製。
【化27】

【0072】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、グリセロールモノアリルエーテル20.6g(156mmol)、実施例4からのステアリン酸グリセロールモノアリルエーテルエステル203.9g(494mmol)、およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を90℃に加熱する。一般式XIIIのSiHシロキサン142.5g(SiHの500mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを90℃で1.5時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。続いて揮発分を減圧下で100℃において蒸留して除く。この結果、鮮黄色のワックス状固体生成物が得られる。
【0073】
実施例15
実施例5の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XVの本発明のポリシロキサンの調製。
【化28】

【0074】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、実施例5からのココヤシ脂肪酸アリルオキシエタノールエステル29.1g(100mmol)およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を95℃に加熱する。一般式XIIIのSiHシロキサン22.2g(SiHの77mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを95℃で1時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。続いて揮発分を減圧下で110℃において蒸留して除く。この結果、わずかに粘性の淡黄色の生成物が得られる。
【0075】
実施例16
実施例6の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XVIの本発明のポリシロキサンの調製。
【化29】

【0076】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、グリセロールモノアリルエーテル6.2g(47mmol)、実施例6からのココヤシ脂肪酸ヘキサ−5−エン−1−オールエステル23.6g(83mmol)、およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を95℃に加熱する。一般式XIIIのSiHシロキサン28.9g(SiHの100mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを95℃で1時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。続いて揮発分を減圧下で110℃において蒸留して除く。この結果、粘性のわずかに混濁したほぼ無色の生成物が得られる。
【0077】
実施例17
実施例7の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XVIIの本発明のポリシロキサンの調製。
【化30】

【0078】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、実施例7からのウンデシレン酸オクチルエステル19.2g(65mmol)およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を95℃に加熱する。一般式XVIII
【化31】

のSiHシロキサン57.2g(SiHの50mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを95℃で2時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。続いて揮発分を減圧下で110℃において蒸留して除く。この結果、透明なほぼ無色の液体が得られる。
【0079】
実施例18
実施例8の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XIXの本発明のポリシロキサンコポリマーの調製。
【化32】

【0080】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、実施例8からのウンデシレン酸1,6−ヘキサンジオールジエステル41.2g(91mmol)およびシス−白金触媒15ppmを装入する。この始発装入物を120℃に加熱する。10分間のあいだに一般式XX
【化33】

のSiHシロキサン46.6g(SiHの140mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを120℃で1時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。この結果、わずかに不透明でわずかに黄色の油が得られる。GPCによる分子量分布は、M=12319、M=4672である。
【0081】
実施例19
実施例9の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XXIの本発明のポリシロキサンコポリマーの調製。
【化34】

【0082】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、実施例9からのアジピン酸アリルオキシエタノールジエステル40.7g(130mmol)およびシス−白金触媒5ppmを装入する。この始発装入物を95℃に加熱する。10分間のあいだに一般式XXのSiHシロキサン66.6g(SiHの200mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを95℃で1時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。この結果、わずかに不透明でわずかに黄色の油が得られる。GPCによる分子量分布は、M=8633、M=3265である。
【0083】
実施例20
実施例10の反応生成物をヒドロシリル化する試み
一般式XXIIの本発明のポリシロキサンの調製。
【化35】

【0084】
スターラー、滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、一般式XVIIIのSiHシロキサン57.1g(50mmolのSiH)およびカルシュテット触媒10ppmを装入する。この始発装入物を90℃に加熱する。10分間のあいだに実施例10からのラウリン酸アリルポリエステル38.4g(130mmol)を1滴ずつ加え、このバッチを90℃で1時間攪拌する。SiH値の測定によりSiHシロキサンの完全な転化が得られる。この結果、わずかに不透明でほぼ無色の液体が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサンを末端不飽和エステルでヒドロシリル化することにより有機エステルで修飾されたシロキサンを調製する方法であって、触媒として少なくとも1種類の酵素を用いて前記使用される末端不飽和エステルを調製することを含む、方法。
【請求項2】
使用される末端不飽和エステルが、一般式I
【化1】

(式中、
Wは水素またはメチル、好ましくは水素であり、
mは0から28、好ましくは1から17であり、
nは0または1であり、
oは0から100であり、
Aは一般式Ia
【化2】

(式中、
Xラジカルは、独立して−H、−CH、−CHCH、または−フェニルの群からの同一または異なるラジカル、好ましくは水素である)
のオキシアルケニルラジカルであり、
pは0から20であり、
Bは、p=1の場合、任意選択でRでエステル化された式Ib
【化3】

のグリセロール誘導オキシアルケニルラジカル(Rは、炭素原子2個から30個を有し、任意選択で追加のヒドロキシル基を担持する直鎖、分枝状、飽和、または不飽和カルボン酸のアシルラジカルである)、あるいは
Bは、p=1の場合、一般式Ic
【化4】

(式中、
YおよびZは、互いに独立して−H、−CH、−CHCH、−CHOH、または−CHORの群からの同一または異なるラジカルであり、ここで、Rは上記と同じように定義される)
のラジカル、あるいは
Bは、p≧2の場合、任意選択でRでエステル化されたポリグリセロール誘導ラジカル(ここで、Rは上記と同じように定義される)であり、
は、水素、Ra1あるいはRa2であり、
ここで、
a1は、任意選択でヒドロキシル基を担持し、任意選択でカルボン酸でエステル化されたヒドロキシル基を担持し、かつ任意選択でアミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基を担持する、炭素原子1個から200個を有する直鎖または分枝状、飽和または不飽和のアルキルラジカルであり、
a2は一般式Id
【化5】

のラジカルであり、
は炭素原子2個から20個を有する飽和または不飽和の二官能性炭化水素ラジカルであり、
ここで、
n+q=1であり、
もしRが水素である場合、
qは0、かつ
o+p≧1である)
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一般式I
(式中、
n、o、およびpは0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4であり、
qは1であり、
、Ra1=Ra11、またはR=Ra2
(ここで、
a2は、請求項2の場合と同じように定義され、
a11は、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、エチルへキサン酸、イソノナン酸、イソトリデカン酸、またはイソステアリン酸などの商業上慣習的な酸から得られるアルキルラジカル、あるいはカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、ペトロセレン酸、エライジン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸などの炭素原子6個から30個を有する、特に炭素原子8個から22個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸から得られ、単独でまたは混合して使用することができるアルキルラジカル、あるいはポリ−12−ヒドロキシステアリン酸またはポリリシノール酸などのヒドロキシ官能基化した酸の縮合重合生成物から得られるアルキルラジカルである)である)
のエステルが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記一般式I
(式中、
nおよびpは0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4、特に1であり、
oは1から100、特に1であり、
qは1であり、
はRa1=Ra11、またはR=Ra2(ただしRa11は、請求項3の場合と同じように定義される)である)
のエステルが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記一般式I
(式中、
nおよびoは0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4、特に1であり、
Bは、−CH−CHOH−CH−O−または−CH−CHOR−CH−O−(ここでRは、請求項2の場合と同じように定義される)であり、
pは1から20、好ましくは1であり、
qは1であり、
はRa1=Ra11、またはR=Ra2(ここでRa11は、請求項3の場合と同じように定義される)である)
のエステルが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記一般式I
(式中、
nおよびoは0であり、
Wは水素であり、
mは1から28、好ましくは1から4、特に1であり、
Bは、−CH−CYZ−CH−O−(ここでYおよびZは、請求項2の場合と同じように定義される)であり、
pはq=1であり、
はRa1=Ra11、またはR=Ra2(ただしRa11は、請求項3の場合と同じように定義される)である)
のエステルが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記一般式I
(式中、
nは1であり、
Wは水素またはCH、好ましくは水素であり、
mは0から27、好ましくは1から10であり、
oおよびpは0であり、
はRa1=Ra12、またはR=Ra2
(ここでRa12は、任意選択で1個または複数個の多重結合を含有し、任意選択でヒドロキシル基を担持し、任意選択でカルボン酸でエステル化されたヒドロキシル基を担持し、あるいは任意選択でアミノ基、アルキルアミノ基、またはジアルキルアミノ基を担持する、炭素原子2個から30個を有する、好ましくは炭素原子6個から22個を有する置換または非置換の、任意選択で分枝したアルコールの炭化水素ラジカルである)である)
のエステルが使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記エステルが、酸ではなく、エステル交換反応用の揮発性アルコールのその対応するエステル、好ましくはメチルエステル、エチルエステル、およびビニルエステルを用いて調製される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加水分解酵素群からの、例えばリパーゼ、エステラーゼ、またはプロテアーゼ、好ましくはリパーゼ、より好ましくはカンジダアンタークチカ(Candida antarctica)由来のリパーゼBである酵素が使用される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
SiHポリシロキサンとして一般式II
【化6】

(式中、
N、a+b+c+d+2=3から850、好ましくは6から160であり、
aは1から800、好ましくは2から150であり、
bは0から400、好ましくは2から75であり、
cは0から10、好ましくは0であり、
dは0から10、好ましくは0であり、また
ラジカルR1は、互いに独立して同一または異なり、炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、炭素原子6個から30個を有するアリールラジカルの群からのもの、好ましくは炭素原子1個から4個を有するアルキル基、またはフェニル、特にメチルであり、
ラジカルR2は、互いに独立して水素またはR1であり、
ラジカルR3は、互いに独立して一般式IIaの同一または異なるラジカルである)
の化合物が使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一般式I(式中、n=p=0、W=X=水素、m=o=q=1、およびR=Ra13(ここでRa13は、炭素原子8個から16個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸の、単独でまたは混合させて存在することができるアルキルラジカル、あるいはイソノナン酸(3,5,5−トリメチルへキサン酸)、2−エチルヘキサン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ポリリシノール酸、またはポリ12−ヒドロキシステアリン酸のアルキルラジカルである)である)の化合物。
【請求項12】
一般式I(式中、n=p=0、W=水素、X=水素またはメチル、好ましくは水素、m=q=1、o=2から100、好ましくは3から100、およびR=Ra14(ここでRa14は、炭素原子4個から30個を有する商業上慣習的な酸のアルキルラジカル、あるいは炭素原子6個から30個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸の、単独でまたは混合させて存在することができるアルキルラジカル、あるいはヒドロキシ官能基化した酸の縮合重合生成物のアルキルラジカルである)である)の化合物。
【請求項13】
一般式I(式中、n=o=p=0、q=1、W=水素、m=2から4、好ましくは4、およびR=Ra14(ここでRa14は、炭素原子4個から30個を有する商業上慣習的な酸のアルキルラジカル、あるいは炭素原子6個から30個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸の、単独でまたは混合させて存在することができるアルキルラジカル、あるいはヒドロキシ官能基化した酸の縮合重合生成物のアルキルラジカルである)である)の化合物。
【請求項14】
一般式I(式中、n=o=0、W=水素、m=p=q=1、B=−CH−CHOH−CH−O−、およびR=Ra15(ここでRa15は、ミリスチン酸またはココヤシ脂肪酸のアルキルラジカルである)である)の化合物。
【請求項15】
一般式III
【化7】

(式中、
N、a+b+c+d+e+f+2=3から850、好ましくは6から160であり、
aは1から800、好ましくは2から150であり、
cは0から10、好ましくは0であり、
dは0から10、好ましくは0であり、
eは0から400、好ましくは2から75であり、
fは0から400、好ましくは0から75であり、さらに
ラジカルR1は、互いに独立して同一または異なり、炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、炭素原子6個から30個を有するアリールラジカルの群からのもの、好ましくは炭素原子1個から4個を有するアルキル基、またはフェニルであり、
ラジカルR4は、互いに独立して、一般式IIIa
【化8】

(式中、
rは1、かつ
sは1であるか、または
rは3、かつ
sは0であり、
Xは、各存在において独立して−H、−CH、−CHCH、またはフェニルの群からの同一または異なるラジカル、好ましくは水素であり、
a16は、炭素原子6個から30個、特に炭素原子8個から22個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸のアルキルラジカルである)の同一または異なるエステルラジカルであり、
ラジカルR5は、各存在において独立して炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、または炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、好ましくは炭素原子6個から22個を有するアルキル基であるか、あるいは
ラジカルR5は、一般式IIIb
【化9】

(式中、
tは1から28であり、
uは1から100であり、
Eは、一般式Iaのオキシアルケニルラジカルであり、
vは0から20であり、
Gは、v=1の場合、一般式Ibのグリセロール誘導オキシアルケニルラジカル、あるいはGは、v=1の場合、一般式Ic(式中、YおよびZが互いに独立して−H、−CH、−CHCH、または−CHOHの群からの同一または異なるラジカルである)のラジカル、あるいは
Gは、v≧2の場合、ポリグリセロール誘導ラジカルである)のラジカルであり、
ラジカルR6は、各存在において独立してR1、R4、またはR5(ここでR1、R4、およびR5は、上記と同じように定義される)であり、またR6はe=0ならばR4と同一であり、
ラジカルR7は、各存在において独立して、一般式IIIc
【化10】

(式中、
R1、R4、R5、およびR6は上記と同じように定義される)
の同一または異なるラジカルである)の化合物。
【請求項16】
tが1から28、特に1であり、
uが1から100、特に1から20、特に好ましくは1であり、かつ
vが0である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
tが1から28、特に1であり、
uが0であり、かつ
vが1から20、特に1から6、特に好ましくは1である、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
一般式III
【化11】

(式中、
N、a+b+c+d+e+f+2=3から850、好ましくは6から160であり、
aは1から800、好ましくは2から150であり、
cは0から10、好ましくは0であり、
dは0から10、好ましくは0であり、
eは0から400、好ましくは2から75であり、
fは0であり、さらに
ラジカルR1は、互いに独立して同一または異なり、炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、炭素原子6個から30個を有するアリールラジカルの群からのもの、好ましくは炭素原子1個から4個を有するアルキル基、またはフェニルであり、
ラジカルR4は、互いに独立して、一般式IIIa
【化12】

(式中、
rは1であり、
sは2から100、好ましくは3から80であり、
Xは、各存在において独立して−H、−CH、−CHCH、またはフェニルの群からの同一または異なるラジカル、好ましくは水素または−CH、特に好ましくは水素であり、
a16は、炭素原子6個から30個を有する、特に炭素原子8個から22個を有する天然の植物または動物油を主原料とする一塩基性脂肪酸のアルキルラジカルである)
の同一または異なるエステルラジカルであり、
ラジカルR6は、各存在において独立してR1またはR4(ここでR1およびR4は、上記と同じように定義される)であり、またR6はe=0ならばR4と同一であり、
ラジカルR7は、各存在において独立して一般式IIIc
【化13】

(式中、
R1、R4、R5、およびR6は上記と同じように定義される)
の同一または異なるラジカルである)の化合物。
【請求項19】
一般式I
【化14】

(式中、
Wは水素またはメチルであり、
mは0から28、好ましくは1から17であり、
nは0または1であり、
Aは一般式Ia
【化15】

(式中、
Xラジカルは独立して−H、−CH、−CHCH、または−フェニルの群からの同一または異なるラジカル、好ましくは水素である)
のオキシアルケニルラジカルであり、
oは0から100であり、
pは0であり、
qは0または1であり、
n+qは1であり、
=Ra2またはRa3であり、
a2は、一般式Id
【化16】

のラジカルであり、
が炭素原子2個から20個を有する飽和または不飽和の二官能性炭化水素ラジカルであり、
a3は、炭素原子2個から30個、好ましくは3個から30個を有し、任意選択でヒドロキシル基および/またはカルボン酸でエステル化されたヒドロキシル基、および/またはさらに多重結合を担持する直鎖または分枝状の末端不飽和アルキルラジカルである)のエステルを、
一般式V
【化17】

(式中、
gは3から400であり、
R1は、各存在において独立して同一または異なり、炭素原子1個から30個を有する飽和または不飽和の、任意選択で分枝したアルキル基、炭素原子7個から30個を有するアルカリールラジカル、炭素原子6個から30個を有するアリールラジカルの群からのものであり、
R8は、各存在において独立して、それらラジカルの大部分が概して水素であるという条件でR1または水素である)のシロキサンにより、
ヒドロシリル化活性触媒の存在下において、前記シロキサンのSiH官能基と前記エステルの二重結合のモル比が0.8対1.2であるという条件で、ヒドロシリル化することによって得られる化合物。
【請求項20】
Wが水素であり、
mが0から28、好ましくは1から17であり、
nが1であり、
oが0であり、
pが0であり、
qが0であり、
がRa2である、
請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Wが水素であり、
mが0から28、好ましくは1から17であり、
nが0であり、
oが0であり、
pが0であり、
qが1であり、
がRa2である、
請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
Wが水素であり、
mが0から28、好ましくは1から17であり、
nが0であり、
oが1から100であり、
Xが水素またはメチル、好ましくは水素であり、
pが0であり、
qが1であり、
がRa2である、
請求項19に記載の化合物。
【請求項23】
Wが水素であり、
mが0から28、好ましくは1から17、特に好ましくは1であり、
nが0であり、
oが1から100、好ましくは3から100であり、
Xが水素またはメチル、好ましくは水素であり、
pが0であり、
qが1であり、
がRa3である、
請求項19に記載の化合物。
【請求項24】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法で調製される化合物。

【公開番号】特開2007−202557(P2007−202557A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18107(P2007−18107)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(500442021)ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】