説明

有機化合物、有機発光素子及び画像表示装置

【課題】発光効率が高い有機発光素子を提供する。
【解決手段】陽極と陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置される有機化合物層と、を有する有機発光素子において、前記有機化合物層の少なくとも1層に、下記一般式(1)に示される有機化合物が含まれることを特徴とする有機発光素子。


(式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、シリル基及びシアノ基から選ばれる置換基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、並びにこれを用いた有機発光素子及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、有機EL素子)は、一対の電極とこれら電極間に配置される有機化合物層とを有する電子素子である。これら一対の電極から電子及び正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放出する。
【0003】
有機発光素子の最近の進歩は著しく、その特徴として、低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が可能であることが挙げられる。
【0004】
ところで、現在までに発光性の有機化合物の創出が盛んに行われている。高性能の有機発光素子を提供するにあたり、発光特性の優れた化合物の創出が重要であるからである。
【0005】
これまでに創出された化合物として、例えば、特許文献1に記載されている下記化合物1−Aがある。
【0006】
【化1】

【0007】
この化合物1−Aは、アセナフト[1,2−k]ベンゾ[e]アセフェナンスリレンを基本骨格として有している。ここでアセナフト[1,2−k]ベンゾ[e]アセフェナンスリレン骨格自体の発光は青発光である。
【0008】
また、特許文献2において下記化合物1−Bが、特許文献3において下記化合物1−Cがそれぞれ提案されている。
【0009】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−254610号公報
【特許文献2】特開2002−025776号公報
【特許文献3】特開平10−330295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし化合物1−Bは、それ自体では発光強度が弱い。また化合物1−Cは、発光強度は強いものの、平面性及び対称性が高いために、分子間相互作用が大きい化合物であるので昇華性が悪い。
【0012】
また特許文献1乃至3に記載の化合物がそれぞれ有する基本骨格では、赤領域での発光、高発光効率及び良好な昇華性を有する化合物は得られない。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされるものであり、その目的は、赤領域の発光を出力し、かつ昇華性の良好な有機化合物を提供することである。また本発明の他の目的は、発光効率が高い有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の有機化合物は、下記一般式(1)に示されることを特徴とする。
【0015】
【化3】

(式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、シリル基及びシアノ基から選ばれる置換基である。)
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る有機化合物は、基本骨格自体で赤領域の発光が可能である。このため本発明によれば、赤領域の発光を出力し、かつ昇華性の良好な有機化合物を提供することができる。
【0017】
また本発明に係る有機化合物は、基本骨格自体でバンドギャップが狭く、かつLUMOが深いという特徴を有する。このため本発明によれば、発光効率が高い有機発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の有機発光素子と、この有機発光素子に電気接続するスイッチング素子の一例であるTFT素子と、を有する表示装置の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず本発明に係る有機化合物について説明する。本発明に係る新規有機化合物は、下記一般式(1)で示される有機化合物である。
【0020】
【化4】

【0021】
式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、シリル基及びシアノ基から選ばれる置換基である。本発明において、式(1)中のR1乃至R22は、好ましくは、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基及び置換あるいは無置換のアリール基から選ばれる置換基である。本発明において、特に好ましくは、R1、R2、R3、R4、R9及びR18が、それぞれ水素原子又は置換あるいは無置換のアリール基であり、R5乃至R8、R10乃至R17及びR19乃至R22が、それぞれ水素原子である態様である。
【0022】
1乃至R22で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0023】
1乃至R22で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0024】
1乃至R22で表されるアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0025】
1乃至R22で表されるアミノ基として、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N−メチル−N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、アニリノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジナフチルアミノ基、N,N−ジフルオレニルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジアニソリルアミノ基、N−メシチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジメシチルアミノ基、N−フェニル−N−(4−ターシャリブチルフェニル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−トリフルオロメチルフェニル)アミノ基、N−ピペリジル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0026】
1乃至R22で表されるアリール基として、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0027】
1乃至R22で表される複素環基として、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0028】
1乃至R22で表されるアリールオキシ基として、フェノキシ基、4−ターシャルブチルフェノキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0029】
1乃至R22で表されるシリル基として、トリフェニルシリル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0030】
上記アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基がさらに有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、ピリジル基、ピロリル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0031】
本発明において、式(1)中のR1、R2、R3、R4、R9及びR18は、それぞれ水素原子又は置換あるいは無置換のアリール基であるのが好ましい。ところで本発明に係る有機化合物において、基本骨格に置換基を導入すると、濃度消光を抑制した化合物を得ることができる。またこの濃度消光の抑制の観点からすれば、式(1)中のR9及びR18をフェニル基にするのが好ましい。
【0032】
次に、本発明に係る有機化合物の合成方法を説明する。本発明に係る有機化合物は、例えば、下記に示す反応スキームに従って合成される。
【0033】
【化5】

【0034】
上記合成スキームにて示されるように、本発明に係る有機化合物は、下記(a)乃至(d)に示される化合物を原料として合成されるものである。
(a)ジケトン誘導体(D0)
(b)アセトン誘導体(D1)
(c)フルオランテニルアミン誘導体(D2)
(d)フルオランテニルボロン酸エステル誘導体(D3)
ここで上記(a)乃至(d)に示される化合物に適宜置換基を導入することにより、式(1)中のR1乃至R22のいずれかが水素原子から所定の置換基に置換されることになる。ここで導入する置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、フェニル基等が挙げられる。
【0035】
また上記合成スキームにおいて、D1乃至D3をそれぞれ変えることで種々の有機化合物を合成することができる。その具体例を原料であるD1乃至D3と共に下記表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
次に、本発明に係る有機化合物の特徴を説明する。
【0038】
本発明者は、式(1)に示される有機化合物を発明するに当たり、基本骨格それ自体に注目した。具体的には、基本骨格のみの分子が有する発光波長が所望の発光波長領域に収まるものを提供することを試みた。
【0039】
ところで所望の発光波長を得るために、基本骨格に特定の置換基を設けて化合物自体の発光波長を調節する方法が知られている。ただしこの方法では、化合物自体の安定性が損なわれる場合がある。
【0040】
本発明において、化合物が有すべき所望の発光波長領域とは赤色領域のことであり、具体的には580nm以上650nm以下である。
【0041】
次に、本発明の有機化合物に類似する構造を有する比較化合物と比較しながら、本発明に係る有機化合物の特徴を説明する。具体的には、下記式(2)、(3)、(4)にそれぞれ示される化合物と比較しながら説明する。
【0042】
【化6】

【0043】
ここで本発明に係る有機化合物は、下記式(5)に示される基本骨格を有する化合物である。
【0044】
【化7】

【0045】
ここで発明者らは、式(5)で示される有機化合物にフェニル基が置換された有機化合物と、式(2)、(3)、(4)の有機化合物にフェニル基が置換された化合物との発光特性、昇華性の比較を行った。結果を下記表2に示す。尚、下記表2に示される評価のうち昇華性は、真空度約5.0×10-4Paの条件下でサンプルを加熱した際の評価を示している。
【0046】
【表2】

【0047】
表2より、化合物aの発光色は青色である。しかしこの発光は、本発明で要求される発光特性(赤色発光)とは大きく異なる。従って、化合物aは、本発明で要求される赤色の発光材料としては適さない。
【0048】
表2より、化合物bの発光色は赤色であるが、量子収率は0.48であり、他の化合物(化合物a、化合物c、化合物d、化合物e)と比べて明らかに低い。これは、発光材料として用いる際に、ホールと電子とが再結合する際に生じるエネルギーを有効に光に変換することができないことを意味する。このため、化合物bは発光材料として適さない。
【0049】
表2より、化合物c及び化合物dは、その発光色が赤色であって高い量子収率を示すが、昇華時に分解を伴うことが判明している。
【0050】
これに対して、表2より、本発明に係る有機化合物である化合物eは、発光波長は582nmであるので赤色発光であり、またこの発光の量子収率が高いことが示されている。また、昇華時においても分解を伴わず良好な昇華性を有している。
【0051】
ここで、化合物c及びdと化合物eとの間で昇華性が異なる理由について以下に説明する。
【0052】
表2中の化合物c及びdは、式(4)に示される有機化合物を基本骨格とする化合物である。ここで、式(4)に示される有機化合物は、下記式(6)に示されるようにX軸、Y軸どちらにおいても対称である。
【0053】
【化8】

【0054】
ここで対称性の高い化合物は分子同士で重なりやすいために結晶性が高い化合物であるといえる。そして結晶性が高いことにより化合物自体の昇華性が低下する。このため化合物c、dは昇華性が低下していることにより、化合物を昇華させるための温度が上がってしまう。従って、化合物c、dを昇華させようとすると分解(熱分解)を伴うこととなる。
【0055】
これに対して、表2中の化合物eは、式(5)に示される有機化合物を基本骨格とする化合物である。ここで、式(5)に示される有機化合物は、下記式(7)に示されるようにX軸、Y軸共に対称性がない。
【0056】
【化9】

【0057】
これにより化合物eは、結晶性が抑制されるので、化合物c及びdよりも低い温度で昇華することができるので、昇華時に分解を伴わない。これにより、本発明の有機化合物は、精製時に昇華精製することが可能であり、発光素子にした際に分解物のような不純物を含有しにくいという利点を有する。このため、材料本来の素子性能を発揮することができる。
【0058】
一方、表2中の化合物、特に、化合物c、dについては、置換基をさらに導入することで分子自体の結晶性をある程度抑えることは可能である。しかし、表2中の化合物、特に化合物b、c、d、eといった赤色発光する骨格を有する化合物は、化合物そのものの分子量が大きいために、置換基の導入によってさらに分子量が増大する。これにより昇華精製を行う際に化合物が熱分解する可能性が高くなる。従って、結晶性の抑制に効果的な置換基を導入することは難しいといえる。
【0059】
ところで本発明に係る有機化合物は、骨格内に2つの5員環構造を有するため、化合物のHOMOエネルギーレベルが低い。これは化合物の酸化電位が低いことを意味する。従って、本発明に係る有機化合物は酸化に対して安定である。
【0060】
また本発明に係る有機化合物は、基本骨格に窒素原子等のヘテロ原子を有していない。このことも化合物自体の酸化電位が低いことに寄与するものであり、本発明に係る有機化合物が酸化に対して安定であることを示す理由の一つである。
【0061】
本発明に係る有機化合物の基本骨格は、HOMOエネルギーレベルが低い骨格である。即ち、本発明に係る有機化合物の基本骨格は、LUMOエネルギーレベルも低い骨格である。
【0062】
本発明に係る有機化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
上記例示化合物のうち、A群に属するものは分子全体が炭化水素のみで構成されている。ここで炭化水素のみで構成される化合物は、一般的にHOMOエネルギーレベルが低い。従って、A群に属する化合物は酸化電位が低い、即ち、酸化に対して安定である有機化合物であることを意味する。
【0067】
従って、本発明に係る有機化合物のうち、炭化水素のみで構成されている有機化合物、即ち、A群に属する化合物は、分子の安定性が高いので好ましい。
【0068】
一方、上記例示化合物のうち、B群に属するものは置換基がヘテロ原子を含んでいる。この場合、分子自体の酸化電位が大きく変化する。あるいは分子間相互作用が変化する。また置換基がヘテロ原子を含んでいるB群の有機化合物は、電子輸送性やホール輸送性、ホールトラップ型発光材料として有用である。またB群に属する有機化合物は、100%の高濃度で使用することもできる。
【0069】
次に、本発明の有機発光素子について説明する。
【0070】
本発明の有機発光素子は、一対の電極である陽極と陰極と、これら電極間に配置される有機化合物層と、を少なくとも有する。本発明の有機発光素子において、有機化合物層は発光層を有していれば単層であってもよいし複数層からなる積層体であってもよい。
【0071】
ここで有機化合物層が複数層からなる積層体である場合、有機化合物層は、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を有してもよい。また発光層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0072】
本発明の有機発光素子において、上記有機化合物層の少なくとも一層に本発明に係る有機化合物が含まれている。具体的には、本発明に係る有機化合物は、上述した発光層、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等のいずれかに含まれている。本発明の係る有機化合物は、好ましくは、発光層に含まれる。
【0073】
本発明の有機発光素子において、本発明に係る有機化合物が発光層に含まれる場合、発光層は、本発明に係る有機化合物のみからなる層であってもよいし、本発明に係る有機化合物と他の化合物とからなる層であってもよい。ここで、発光層が本発明に係る有機化合物と他の化合物とからなる層である場合、本発明に係る有機化合物は、発光層のホストとして使用してもよいし、ゲストとして使用してもよい。また発光層に含まれ得るアシスト材料として使用してもよい。
【0074】
ここでホストとは、発光層を構成する化合物の中で重量比が最も大きい化合物である。またゲストとは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さい化合物であって、主たる発光を担う化合物である。またアシスト材料とは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さく、ゲストの発光を補助する化合物である。尚、アシスト材料は、第2のホストとも呼ばれている。
【0075】
ここで、本発明に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合、ゲストの濃度は、発光層全体に対して0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以上5重量%以下であることがより好ましい。
【0076】
また本発明に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる際には、本発明に係る有機化合物よりもLUMOが高い材料(LUMOが真空準位により近い材料)をホストとして用いることが好ましい。というのも本発明に係る有機化合物はLUMOが低いため、本発明に係る有機化合物よりもLUMOが高い材料をホストにすることで、発光層のホストに供給される電子を本発明に係る有機化合物がより良好に受領することができるからである。
【0077】
本発明者らは種々の検討を行い、本発明に係る有機化合物を、発光層のホスト又はゲストとして、特に、発光層のゲストとして用いると、高効率で高輝度な光出力を有し、かつ極めて耐久性が高い素子が得られることを見出した。この詳細については、後述する実施例で詳しく説明する。
【0078】
一方で、本発明に係る有機化合物は、本発明の有機発光素子を構成する発光層以外の有機化合物層の構成材料として使用することができる。具体的には、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層、ホール注入層、ホールブロッキング層等の構成材料として用いてもよい。この場合、有機発光素子の発光色は赤に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。
【0079】
ここで、本発明に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物、ホストとなる化合物、発光性化合物、電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
【0080】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0081】
ホール注入性化合物、ホール輸送性化合物としては、ホール移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0082】
ホストとしては、具体的には、下記表3に示される化合物が挙げられる。
【0083】
【表3】

【0084】
ただし本発明はこれらに限定されるものではない。表3で示されている化合物の誘導体である化合物もホストとして使用することができる。またそれ以外にも、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、及びトリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0085】
電子注入性化合物、電子輸送性化合物としては、ホール注入性化合物、ホール輸送性化合物のホール移動度とのバランス等を考慮した上で適宜選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する化合物としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0086】
陽極の構成材料としては、仕事関数がなるべく大きいものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれら金属単体を複数組み合わせてなる合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は1種類を単独で使用してもよいし複数種を併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0087】
一方、陰極の構成材料としては、仕事関数が小さいものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を複数組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は1種類を単独で使用してもよいし、複数種を併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0088】
本発明の有機発光素子において、本発明に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0089】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0090】
本発明の有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト等の用途がある。
【0091】
ここで上述の表示装置は、本発明の有機発光素子を表示部に有する。この表示部は複数の画素を有する。そしてこの画素は本発明の有機発光素子と、発光輝度を制御するためのスイッチング素子の一例であるTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極又は陰極とTFT素子のドレイン電極又はソース電極とが電気接続されている。ここで表示装置は、PC等の画像表示装置として用いることができる。
【0092】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する入力部を有し、入力された画像を表示部に出力する画像入力装置でもよい。また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部として、外部から入力された画像情報を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0093】
次に、本発明の有機発光素子を使用した表示装置について図1を用いて説明する。
【0094】
図1は、本発明の有機発光素子と、この有機発光素子に電気接続するスイッチング素子の一例であるTFT素子と、を有する表示装置の例を示す断面模式図である。図1の表示装置20は、有機発光素子とTFT素子との組み合わせが2組図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
【0095】
図1の表示装置20は、ガラス等の基板1とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜2が設けられている。また符号3は金属のゲート電極3である。符号4はゲート絶縁膜4であり、5は半導体層である。
【0096】
TFT素子8は半導体層5とドレイン電極6とソース電極7とを有している。TFT素子8の上部には絶縁膜9が設けられている。コンタクトホール10を介して有機発光素子の陽極11とソース電極7とが接続されている。表示装置はこの構成に限られず、陽極又は陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極又はドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0097】
尚、図1の表示装置20において、有機化合物層12は、単層あるいは多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしている。陰極13の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層14や第二の保護層15が設けられている。
【0098】
本発明の表示装置において、スイッチング素子に特に制限はなく、単結晶シリコン基板やMIM素子、a−Si型の素子等を用いてもよい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
[実施例1]例示化合物A2の合成
【0101】
【化13】

【0102】
(1)化合物E3の合成
100mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。尚、後述する化合物E1は、特開2010−254610号公報を元に合成した化合物である。
化合物E1:606mg(1mmol)
化合物E2:327mg(1mmol)
Pd(PPh34:0.02g
トルエン:10ml
エタノール:5ml
2M―炭酸ナトリウム水溶液:10ml
【0103】
次に、反応溶液を、窒素気流下で80℃に加熱しこの温度(80℃)で8時間攪拌を行った。反応終了後、結晶をろ別し、水、エタノール、ヘプタンで順次分散洗浄を行った。次に、得られた結晶をトルエンに加熱溶解した後、これをカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘプタン=1:3)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行うことにより、黄結晶の化合物E3を583mg(収率:80%)得た。
【0104】
(2)例示化合物A2の合成
反応容器内に、化合物E3を218mg(0.3mmol)仕込んだ後、これを塩化メチレン10mlに溶解させた。次に、水浴下において、下記試薬を反応容器内に入れた。
トリフルオロ酢酸:2ml
BF3・OEt:1.8ml
【0105】
次に、反応溶液を10分ほど撹拌した後、DDQ136mg(0.6mmol)を少しずつ入れた。次に、反応溶液を4時間攪拌した後に、フェロセン112mg(0.6mmol)を入れた。このときに生じた赤色沈殿をろ過することで、濃赤色の固体を得た。次に、この固体をクロロベンゼンに加熱溶解させ、熱時ろ過し、クロロベンゼン/メタノールで再結晶を2回行うことにより、濃赤色結晶の例示化合物A2を159mg(収率:73%)得た。またこのA2のうち、150mgをアルバック機構社製の昇華精製装置を用いて、下記条件で昇華精製を行った。この昇華精製により、例示化合物A2を115mg得た。
真空度:7.0x10-1Pa
アルゴンガス流量:10ml/min
昇華温度:410℃
【0106】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0107】
また例示化合物A2の1×10-5mol/Lにおけるトルエン溶液の発光スペクトルを測定した。具体的には、日立製F−4500を用いて、励起波長520nmにおいてフォトルミネッセンスの測定を行った。その結果、582nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0108】
尚、例示化合物A2は、溶媒に対する溶解性が低く、NMRによる同定が困難であったために、日本電子(JEOL)社製、JMS−T100TD(DART−TOF−MASS)を用いて分子量を測定することで同定した。結果を以下に示す。
DART−TOF−MASS:M+=727.9
【0109】
[実施例2]例示化合物A3の合成
実施例1(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E4を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A3を得た。
【0110】
【化14】

【0111】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99.5%以上であることを確認した。
【0112】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A3のトルエン溶液(濃度:1×10-5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、583nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0113】
さらに日本電子(JEOL)社製、JMS−T100TD(DART−TOF−MASS)を用いて分子量を測定することで同定した。
DART−TOF−MASS:M+=879.3
【0114】
[実施例3]例示化合物A6の合成
実施例1(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E5を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A6を得た。
【0115】
【化15】

【0116】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0117】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A6のトルエン溶液(濃度:1×10-5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、590nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0118】
さらに日本電子(JEOL)社製、JMS−T100TD(DART−TOF−MASS)を用いて分子量を測定することで同定した。
DART−TOF−MASS:M+=951.5
【0119】
[実施例4]例示化合物A14の合成
実施例1(1)において、化合物E2に代えて下記に示す化合物E6を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A14を得た。
【0120】
【化16】

【0121】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0122】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A14のトルエン溶液(濃度:1×10-5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、590nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0123】
さらに日本電子(JEOL)社製、JMS−T100TD(DART−TOF−MASS)を用いて分子量を測定することで同定した。
DART−TOF−MASS:M+=803.3
【0124】
[実施例5]例示化合物A17の合成
実施例1(1)において、化合物E2に代えて下記に示す化合物E7を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A17を得た。
【0125】
【化17】

【0126】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0127】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A17のトルエン溶液(濃度:1×10-5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、590nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0128】
さらに日本電子(JEOL)社製、JMS−T100TD(DART−TOF−MASS)を用いて分子量を測定することで同定した。
DART−TOF−MASS:M+=879.3
【0129】
[実施例6]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール輸送層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0130】
【化18】

【0131】
まずガラス基板上に、ITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極(陽極)を形成した。このときITO電極の膜厚を100nmとした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。
【0132】
次に、1×10-5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表4に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。尚、このとき対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mm2となるようにした。
【0133】
【表4】

【0134】
尚、本実施例において、G−2及びG−3は、それぞれ表3に示されるH6、H22である。
【0135】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表5に示す。
【0136】
[実施例7乃至16]
実施例6において、G−2、G−3及びゲストを、表5に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例6と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例6と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表5に示す。尚、表5において、G−2として使用したH2、H4、H11、H18、H19、H20、H21及びH24、並びにG−3として使用したH23及びH24は、それぞれ表3に示されるホストである。
【0137】
【表5】

【0138】
[実施例17]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。尚、本実施例で作製される有機発光素子は共振構造を有している。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0139】
【化19】

【0140】
まずスパッタリング法により、ガラス基板(支持体)上に、アルミニウム合金(AlNd)を成膜し反射性陽極を形成した。このとき反射性陽極の膜厚を100nmとした。次に、スパッタリング法により、反射性陽極上にITOを成膜し透明性陽極を形成した。このとき透明性陽極の膜厚を80nmとした。次に、この陽極の周辺にアクリル製の素子分離膜を膜厚1.5μmで形成した後、所望のパターニング成形を行い、半径3mmの開口部を設けた。次に、陽極が形成されている基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄した。次に、IPAで煮沸洗浄してから乾燥させた。次に、この基板表面に対してUV/オゾン洗浄を施した。
【0141】
次に、1×10-5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表6に示す有機化合物層を連続成膜した。
【0142】
【表6】

【0143】
尚、本実施例において、G−13及びG−14は、それぞれ表3に示されるH11、H24である。
【0144】
次に、スパッタリング法により、電子注入層上に、IZOを成膜して陰極を形成した。このとき陰極の膜厚を30nmとした。最後に、窒素雰囲気下において封止を行った。
以上により、有機発光素子を作製した。
【0145】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表7に示す。
【0146】
[実施例18乃至21]
実施例17において、G−13、G−14及びゲストを、表7に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例17と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例17と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表7に示す。尚、表7において、G−13として使用したH6、H19、H23及びH24、並びにG−14として使用したH22及びH23は、それぞれ表3に示されるホストである。
【0147】
【表7】

【0148】
[実施例22]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール輸送層、第1発光層、第2発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。尚、本実施例の有機発光素子は発光層が複数あるので、各発光層に含まれるゲストが個別あるいは同時に発光する態様である。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0149】
【化20】

【0150】
まずガラス基板上に、ITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極(陽極)を形成した。このときITO電極の膜厚を100nmとした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。
【0151】
次に、1×10-5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。尚、このとき対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mm2となるようにした。
【0152】
【表8】

【0153】
尚、本実施例において、G−22、G−23及びG−24は、それぞれ表3に示されるH11、H22、H11である。
【0154】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表9に示す。
【0155】
[実施例23、24]
実施例22において、G−22、G−23、G−24及びゲストを、表9に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例22と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例22と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表9に示す。尚、表9において、G−22として使用したH18及びH23、G−23として使用したH24、並びにG−24として使用したH4及びH15は、それぞれ表3に示されるホストである。
【0156】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明に係る有機化合物は、高い量子収率を有し、赤色発光に適した発光を有する化合物である。このため本発明に係る有機化合物を有機発光素子の構成材料として用いることで、良好な発光特性を有する有機発光素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0158】
8:TFT素子、11:陽極、12:有機化合物層、13:陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に示されることを特徴とする、有機化合物。
【化1】

(式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、シリル基及びシアノ基から選ばれる置換基である。)
【請求項2】
前記R1乃至R22が、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基及び置換あるいは無置換のアリール基から選ばれる置換基であることを特徴とする、請求項1に記載の有機化合物。
【請求項3】
1、R2、R3、R4、R9及びR18が、それぞれ水素原子又は置換あるいは無置換のアリール基であり、R5乃至R8、R10乃至R17及びR19乃至R22が、それぞれ水素原子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機化合物。
【請求項4】
陽極と陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に配置される有機化合物層と、を有する有機発光素子において、
前記有機化合物層の少なくとも一層に、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物が含まれることを特徴とする有機発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物が発光層に含まれることを特徴とする、請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
赤色発光することを特徴とする、請求項4又は5に記載の有機発光素子。
【請求項7】
複数の画素を有し、
前記複数の画素が、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子と電気接続するTFT素子と、を有することを特徴とする、表示装置。
【請求項8】
画像情報を入力するための入力部と、画像を出力するための表示部と、を有し、
前記表示部が、複数の画素を有し、
前記複数の画素が、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子と電気接続するTFT素子と、を有することを特徴とする、画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149012(P2012−149012A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9529(P2011−9529)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】