説明

有機化合物、有機発光素子及び表示装置

【課題】基本骨格自体で赤色領域の発光を可能にする有機化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)に示されることを特徴とする、有機化合物。


(式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、カルボニル基及びシアノ基から選ばれる置換基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、並びにこれを用いた有機発光素子及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、有機EL素子)は、陽極と陰極とからなる一対の電極と、これら電極間に配置される有機化合物層とを有する電子素子である。これら一対の電極から電子及び正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放出する。
【0003】
有機発光素子の最近の進歩は著しく、その特徴として、低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が可能であることが挙げられる。
【0004】
ところで、現在までに発光性の有機化合物の創出が盛んに行われている。高性能の有機発光素子を提供するにあたり、発光特性の優れた化合物の創出が重要であるからである。
【0005】
これまでに創出された化合物として、例えば、特許文献1にて提案されている下記化合物C1及び特許文献2にて提案されている下記化合物C2がある。
【0006】
【化1】

【0007】
ここで化合物C01は、フルオランテノ[8’,9’:5,6]インデノ[1,2,3−cd]ピレンを基本骨格として有する化合物である。そしてこの基本骨格自体の発光は緑色発光である。また化合物C02は、フルオランテノ[8,9−k]フルオランテンを基本骨格として有する化合物である。そしてこの基本骨格自体の発光は青色発光である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−302470号公報
【特許文献2】特開平11−040360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで上記化合物C1及びC2は、発光波長が赤色領域よりも短波長であるので、分子全体の共役長を長くする置換基を導入することにより赤色領域の発光を実現することは可能である。しかし置換基を導入すると、導入した分だけ化合物の分子量が増加する。そうすると化合物の昇華性が悪くなり、化合物の精製手段の一つである昇華精製を利用することが困難になる。また、電子吸引性の芳香族五員環を2つ持つが、これ以上に吸引性を持たせるには置換基の導入が必要であり、前述の通り、置換基を導入した問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされるものであり、その目的は、基本骨格自体で赤色領域の発光を可能にする有機化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る有機化合物は、下記一般式(1)に示されることを特徴とする。
【0012】
【化2】

(式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、カルボニル基及びシアノ基から選ばれる置換基である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基本骨格自体で赤色領域の発光を可能にする有機化合物を提供することができる。このため、本発明に係る有機化合物は、基本骨格に共役長を長くする置換基を導入しなくても赤色領域の発光を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の有機発光素子と、この有機発光素子に電気接続するスイッチング素子の一例であるTFT素子と、を有する表示装置の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
始めに本発明に係る有機化合物について説明する。本発明に係る有機化合物は、下記一般式(1)にて示される化合物である。
【0016】
【化3】

【0017】
式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、シリル基、シアノ基及びカルボニル基から選ばれる置換基である。本発明において、R1乃至R22が、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基及び置換あるいは無置換のアリール基から選ばれる置換基である態様が好ましい。また本発明において、R1乃至R4、R8、R9、R15、R18及びR19が、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基及び置換あるいは無置換のアリール基から選ばれる置換基であり、R5乃至R7、R10乃至R14、R16、R17及びR20乃至R22が水素原子である態様が特に好ましい。
【0018】
1乃至R22で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0019】
1乃至R22で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル基、シクロヘキシル基、オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0020】
1乃至R22で表されるアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0021】
1乃至R22で表されるアリール基として、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0022】
1乃至R22で表される複素環基として、ピロリル基、ピリジル基、トリアジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0023】
1乃至R22で表されるアリールオキシ基として、フェノキシ基、4−ターシャリーブチルフェノキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0024】
1乃至R22で表されるアミノ基として、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N−メチル−N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、アニリノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジナフチルアミノ基、N,N−ジフルオレニルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジアニソリルアミノ基、N−メシチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジメシチルアミノ基、N−フェニル−N−(4−ターシャリブチルフェニル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−トリフルオロメチルフェニル)アミノ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0025】
1乃至R22で表されるシリル基として、トリメチルシリル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0026】
1乃至R22で表されるカルボニル基として、ベンゾイル基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0027】
上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基及びアミノ基がさらに有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、ピリジル基、ピロリル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0028】
次に、本発明に係る有機化合物の合成方法について説明する。本発明に係る有機化合物は、以下に示される合成スキーム1又は合成スキーム2に基づいて合成される。
【0029】
【化4】

【0030】
ここで、合成スキーム1は、シクロペンタ[cd]ピレン−3,4−ジオン(あるいはその誘導体)を出発原料とする合成スキームである。一方、合成スキーム2は、ベンゾ[a]シクロペンタ[hi]アセアンスリレン−4,5−ジオン(あるいはその誘導体)を出発原料とする合成スキームである。
【0031】
ただし、上記合成スキーム1及び2は、あくまでも具体例であり、本発明に係る有機化合物の合成方法はこれらに限定されるものではない。
【0032】
ここで合成スキーム1に示される合成ルートを利用する場合、化合物D1、D2及びD3に適宜置換基を導入することにより、式(1)中のR1乃至R22のいずれかが水素原子から所定の置換基に置換されることになる。ここで導入する置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、フェニル基等が挙げられる。また合成スキーム2に示される合成ルートを利用する場合、化合物D4、D5及びD6に適宜置換基を導入することにより、式(1)中のR1乃至R22のいずれかが水素原子から所定の置換基に置換されることになる。
【0033】
合成スキーム1を利用して本発明に係る有機化合物を合成する際には、合成スキーム1で示される化合物D1、D2及びD3をそれぞれ変えることで種々の有機化合物を合成することができる。その具体例を原料である化合物D1、D2及びD3と共に下記表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
一方、合成スキーム2を利用して本発明に係る有機化合物を合成する際には、合成スキーム2で示される化合物D4、D5及びD6をそれぞれ変えることで種々の有機化合物を合成することができる。その具体例を原料である化合物D4、D5及びD6と共に下記表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
次に、本発明に係る有機化合物の特徴を説明する。
【0038】
本発明者は、本発明に係る有機化合物、即ち、式(1)に示される有機化合物を発明するにあたり、基本骨格それ自体に注目した。具体的には、基本骨格のみの分子が有する発光波長が所望の発光波長領域に収まるものを提供することを試みた。
【0039】
ところで所望の発光波長を得るために、基本骨格に特定の置換基を設けて化合物自体の発光波長を調節する方法が知られている。ただしこの方法では、化合物自体の安定性が損なわれる場合がある。
【0040】
本発明において所望の発光波長領域とは赤色領域のことであり、具体的には580nm以上650nm以下である。
【0041】
次に、本発明の有機化合物に類似する構造を有する比較化合物と比較しながら、本発明に係る有機化合物の特徴を説明する。具体的には、下記式(2)、(3)にそれぞれ示される化合物と比較しながら説明する。
【0042】
【化5】

【0043】
ここで本発明に係る有機化合物は、下記式(4)に示される基本骨格を有する化合物である。
【0044】
【化6】

【0045】
ここで発明者らは、式(4)で示される有機化合物にフェニル基が置換された有機化合物と、式(2)、(3)の有機化合物にフェニル基が置換された化合物とを対象として、極大発光波長、HOMOエネルギー、バンドギャップの測定を行った。また、HOMOエネルギーの値、バンドギャップから、LUMOエネルギーを算出した。結果を下記表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3より、化合物1(後述する例示化合物A16)は赤色発光を示す。尚、化合物1は、式(4)で示される化合物を基本骨格とし、この基本骨格にフェニル基が導入されている化合物である。ここで置換基として導入されているフェニル基は、当該基本骨格に対してほぼ直交しているため、発光波長にはあまり影響を及ぼさない。つまり、当該基本骨格のみで赤色発光を示していることになる。
【0048】
一方、表3より化合物2は緑色発光を示しており、化合物3は青色発光を示している。このように化合物2及び化合物3は赤色よりも短い波長の光を発するので、化合物2及び化合物3が赤色発光を示すためには、共役長が長い置換基をさらに導入する必要がある。ただし、置換基を導入すればその分化合物自体の分子量は大きくなり、有機発光素子の長寿命化に有効な精製手段である昇華が困難になる可能性がある。また、置換基を導入することによって、分子の回転振動が増大するため、発光量子収率の減少を招く原因となる。これに対して、本発明に係る有機化合物に属する化合物1は、これ以上の置換基を導入しなくても赤色発光し、かつ昇華精製が可能である。
【0049】
また表3に示されるように、化合物1は、電子吸引性の芳香族五員環を3つ有しており、化合物2及び化合物3よりその数が多いため、HOMO準位もLUMO準位も深くすることが可能である。
【0050】
表3より、化合物1のバンドギャップは、化合物2、化合物3よりも小さいことが示されている(化合物1:2.1eV、化合物2:2.5eV、化合物3:2.7eV)。それにも係わらず、化合物1のHOMO準位は、化合物2、化合物3とさほど差がない(化合物1:5.6eV、化合物2:5.7eV、化合物3:5.8eV)。つまり、相対的にみて本発明の化合物1のHOMO準位は化合物2、化合物3よりも深いと言える。ここでHOMO準位が深いということは、酸化電位が深いことを意味している。このため化合物1は酸化に対して強い材料ともいえる。
【0051】
このようにHOMOが深く、バンドギャップが小さいということは、LUMO準位が深いことを意味する。その証拠として表3より、LUMO準位は化合物1の方が深いことが示されている(化合物1:3.5eV、化合物2:3.2eV、化合物3:3.1eV)。
【0052】
ところで本発明に係る有機化合物の基本骨格に、発光波長を長波長化する置換基を設けることで、より色純度の高い赤色発光材料とすることもできる。ここで長波長化した材料は、先に述べた本発明に係る有機化合物が有する基本骨格の性質を持つため、HOMO準位が深く、酸化に対して安定である。また、LUMO準位が深い材料でもある。
【0053】
また本発明に係る有機化合物の基本骨格にターシャリーブチル基等の嵩高い置換基を導入することによって濃度消光を抑制した化合物を提供することができる。
【0054】
本発明に係る有機化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
例示した化合物のうち、A群に属する化合物は分子全体が炭化水素のみで構成されている。ここで炭化水素のみで構成される化合物は、強固な共有結合を持ち電気化学的に安定である。つまり通電に強い材料であり、有機発光素子の構成材料として使用する際に好ましい物性を持つ化合物である。
【0060】
例示した化合物のうち、B群に属する化合物がヘテロ原子を含んでいる。このため置換基の種類によって、HOMO準位やLUMO準位を適宜変えることができるので、所望の物性を得ることができる。また、分子間相互作用を変えることができ、昇華による精製の際の温度を低くすることができる。さらに、置換基がヘテロ原子を含む場合電子輸送性やホール輸送性、ホールトラップ型発光材料として使用する際に、100%の高濃度で使用することが可能となる化合物である。
【0061】
以上に列挙されている例示化合物は、基本骨格自体で赤色発光するものである。また本発明に係る有機化合物は、例示化合物に限らず有機発光素子の構成材料としての用途がある。具体的には、発光層に含まれるホスト、電子輸送層や電子注入層に含まれる電子注入輸送性材料、ホール輸送層やホール注入層に含まれるホール注入輸送性材料、ホールブロッキング層の構成材料等の用途がある。
【0062】
次に、本発明の有機発光素子について説明する。本発明の有機発光素子は、一対の電極である陽極と陰極とそれらの間に配置される有機化合物層とを少なくとも有する。尚、有機発光素子は、下記に示されるプロセス(a)乃至(c)によって光を放出する電子素子である。
(a)陽極及び陰極からキャリア(ホール、電子)を注入するプロセス
(b)上記キャリアが有機化合物層中に含まれる発光性有機化合物において再結合するプロセス
(c)上記再結合によって生成した発光性有機化合物の励起子が基底状態に戻るプロセス
【0063】
本発明の有機発光素子において、本発明に係る有機化合物は有機化合物層に含まれている。ここで有機化合物層は、少なくとも発光層を有する単層あるいは複数層からなる積層体である。有機化合物層が複数層から構成される積層体である場合、有機化合物層は、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等のうちいずれかを有している積層体である。
【0064】
以下に本発明の有機発光素子の具体例を示す。
(i)(基板/)陽極/発光層/陰極
(ii)(基板/)陽極/ホール輸送層/電子輸送層/陰極
(iii)(基板/)陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)(基板/)陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)(基板/)陽極/ホール輸送層/発光層/ホール・エキシトンブロッキング層/電子輸送層/陰極
【0065】
ただし以上に列挙している5種類の類型は、あくまでごく基本的な素子構成の具体例であり、本発明に係る有機化合物を用いた有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機化合物層との界面に、絶縁性層、接着層あるいは干渉層を設ける、電子輸送層もしくはホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される等多様な層構成をとることができる。また発光層は、1層であってもよいし、構成材料がそれぞれ異なる複数の層が積層されてなる積層体であってもよい。
【0066】
本発明の有機発光素子において、本発明に係る有機化合物は、上述した有機化合物層(ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等)のいずれかに含まれている。本発明に係る有機化合物は、好ましくは、発光層に含まれる。
【0067】
本発明に係る有機化合物が発光層に含まれる場合、発光層は、本発明に係る有機化合物のみから構成されていてもよいし、複数の成分から構成されていてもよい。
【0068】
発光層が複数の成分から構成される場合、発光層には主成分となる化合物と、副成分となる化合物とから構成されることとなる。ここで主成分とは、発光層を構成する化合物のうち重量比が最も大きいものをいい、主成分に該当する材料はホスト(材料)と呼ばれている。一方、副成分とは、主成分よりも重量比が小さいものをいい、その材料が有する機能からドーパント(ゲスト)材料、発光アシスト材料、電荷注入材料等に分類される。本発明の有機発光素子において、本発明に係る有機化合物は発光層の主成分として使用してもよいし、発光層の副成分として使用してもよい。
【0069】
ここで発明者らは種々の検討を行い、本発明に係る有機化合物を発光層のホスト又はゲストとして用いた有機発光素子が、発光効率、輝度および耐久性に優れていることを見出した。特に、本発明に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いた有機発光素子が高効率で高輝度な光出力を有し、極めて耐久性が高いことを見出した。
【0070】
このように本発明に係る有機化合物は、有機発光素子の発光層のゲストとして好ましく用いることができる。特に、赤色発光素子のゲストとして用いるのが好ましい。その結果、本発明に係る有機化合物を発光させることで赤色発光する有機発光素子を提供することができる。
【0071】
尚、本発明に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合、ホストに対するゲストの濃度は、発光層全体を基準として、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.2重量%以上5重量%以下であることがより好ましい。
【0072】
本発明に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合、本発明に係る有機化合物よりもLUMOが高い材料をホストとして用いることが好ましい。というのも本発明に係る有機化合物はLUMOが深いため、発光層のホストに供給される電子をホストからより良好に受領することができるからである。
【0073】
以上説明したように、本発明に係る有機化合物は、発光層のゲスト又はホストとして用いるのが好ましい。ただし本発明に係る有機化合物を、発光層以外の各層、即ち、ホール注入層、ホール輸送層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層あるいは電子注入層のいずれの層の構成材料として用いてもよい。このように本発明に係る有機化合物を、発光層以外の層の構成材料として用いる場合、有機発光素子の発光色は赤に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。
【0074】
ここで、本発明に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入・輸送性化合物、ホスト、発光性化合物あるいは電子注入・輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
【0075】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0076】
ホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物としては、ホール移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0077】
発光層に含まれるホストとしては、例えば、下記表8に示される化合物が挙げられる。
【0078】
【表8】

【0079】
また表8に示される化合物の誘導体をホストとして使用してもよい。また表8に示される化合物以外の化合物をホストとして使用してもよい。例えば、縮環化合物(例えば、フルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、トリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0080】
電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物としては、ホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物のホール移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する化合物としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0081】
陽極の構成材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれら金属単体を複数組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし複数種類を併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよいし多層構成でもよい。
【0082】
一方、陰極の構成材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を複数組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、複数種類を併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよいし、多層構成でもよい。
【0083】
本発明の有機発光素子において、本発明に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0084】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0085】
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどがある。
【0086】
表示装置は、本実施形態に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部は複数の画素を有する。この画素は本実施形態に係る有機発光素子と発光輝度を制御するためのスイッチング素子の一例としてTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極または陰極とTFT素子のドレイン電極またはソース電極とが接続されている。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。
【0087】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する入力部を有し、入力された画像を表示部に出力する画像入力装置でもよい。また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部として、外部から入力された画像情報を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0088】
次に、本実施形態に係る有機発光素子を使用した表示装置について図1を用いて説明する。
【0089】
図1は、本実施形態に係る有機発光素子と、有機発光素子に接続するスイッチング素子の一例であるTFT素子とを示した表示装置3の断面模式図である。本図では有機発光素子とTFT素子との組が2組図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
【0090】
この表示装置は、ガラス等の基板31とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜32が設けられている。また符号33は金属のゲート電極である。符号34はゲート絶縁膜であり、35は半導体層である。
【0091】
TFT素子38は半導体層35とドレイン電極36とソース電極37とを有している。TFT素子38の上部には絶縁膜39が設けられている。コンタクトホール310を介して有機発光素子の陽極311とソース電極37とが接続されている。表示装置3はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0092】
有機化合物層312は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしている。陰極313の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層314や第二の保護層315が設けられている。
【0093】
本実施形態に係る表示装置においてスイッチング素子に特に制限はなく、単結晶シリコン基板やMIM素子、a−Si型の素子等を用いてもよい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
[実施例1]例示化合物A16の合成
【0096】
【化7】

【0097】
(1)化合物01の合成
反応容器に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物X1(シクロペンタ[cd]ピレン−3,4−ジオン):1.00g(3.90mmol)
化合物X2(1,3−ジフェニルプロパノン):1.64mg(7.80mmol)
3M水酸化カリウム水溶液:30ml
エタノール:70ml
【0098】
次に、反応溶液を、窒素雰囲気下、80℃で8時間加熱撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより、原料が消失し、新たな化合物の生成を確認してから反応溶液を室温に戻した。次に、反応溶液をろ過することで得られたろ物を水で洗浄することにより、化合物01を1.46g得た(収率87.0%)。LC−MS(液体クロマトグラフィー直結質量分析計)による測定の結果、m/z=430のピークが得られ、目的物(化合物01)であることを確認した。
【0099】
(2)化合物02の合成
反応容器に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
トルエン:50ml
化合物01:1.00g(2.32mmol)
硝酸イソアミル:290mg(3.49mmol)
4,5−ジブロモアントラニル酸:1.03g(3.49mmol)
【0100】
次に、反応溶液を、窒素雰囲気下、80℃で8時間加熱撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより、原料が消失し、新たな化合物の生成を確認してから反応溶液を室温に戻した。次に、1M塩酸水溶液100ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、飽和食塩水100mlの順で分液操作を行い、有機層を回収した。次に、回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮することで粗生成物を得た。次に、この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:ヘプタン=1:1)により精製した。次に、目的のフラクションを減圧濃縮した後、メタノールを加えて結晶を析出させることにより、化合物02を1.09g(1.72mmol)得た(収率74.1%)。MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)による測定の結果、m/z=634のピークが得られ、目的物であることを確認した。
【0101】
(3)例示化合物A16の合成
反応容器に、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
DMF:8ml
化合物02:800mg(1.26mmol)
化合物X3(2−(ベンゾ[a]アセアンスリレン−8−イル)4,4,5,5,−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン):476mg(1.26mmol)
ジアザビシクロウンデセン:1.92g(12.6mmol)
ビスジベンジリデンアセトンパラジウム:145mg(0.251mmol)
トリシクロヘキシルホスフィン:141mg(0.503mmol)
【0102】
次に、反応溶液を、窒素雰囲気下、150℃で12時間加熱撹拌した。薄層クロマトグラフィーより、原料が消失し、新たな化合物の生成を確認してから反応溶液を室温に戻した。次に、反応溶液を減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:ヘプタン=1:1)により精製した。次に、目的のフラクションを減圧濃縮した後、トルエンで再結晶を行った。次に、析出した沈殿をろ過することにより、例示化合物A16を557mg(0.767mmol)得た(収率61.2%)。MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)による測定の結果、m/z=726のピークが得られ、目的物であることを確認した。
【0103】
また得られた例示化合物A16のうち、250mgをアルバック機構社製の昇華精製装置にて下記に示す条件下で昇華精製を行った。その結果、精製された例示化合物A16を157mg得た。
真空度:7.0×10-1Pa
アルゴンガス流量:10ml/min
昇華温度:400℃
【0104】
昇華精製によって得られた例示化合物A16について、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による測定を行った結果、吸収波長254nmにおける純度が99.9%以上であることを確認した。
【0105】
例示化合物A16のトルエン溶液(1×10-5mol/L)を調製し、このトルエン溶液について、日立製F−4500を用いて発光スペクトルの測定を行った(励起波長:400nm)。その結果、極大発光波長は584nmであった。
【0106】
またこのトルエン溶液について、日本分光社製V560(紫外可視分光光度計)を用いて紫外可視吸収スペクトルを測定した。測定によって得られたスペクトルの吸収端よりバンドギャップを算出したところ、2.1eVであった。
【0107】
例示化合物A16の0.1vol%のクロロホルム溶液を調製した後、このクロロホルム溶液をガラス板上に0.1ml滴下し、スピンコーターで毎分1000回転の早さでスピンコートして薄膜を得た。そして得られた薄膜を80℃のホットプレートで10分間乾燥させることで、乾燥した例示化合物A16の薄膜を得た。
【0108】
次に、得られた薄膜を、理研計器社製AC3(大気中光電子分光装置)を用いてHOMOエネルギー(HOMO準位)を測定したところ、5.6eVであった。
【0109】
以上により求まったHOMOエネルギーとバンドギャップとを使用しLUMOエネルギー(LUMO準位)を算出したところ、3.5eVであった。
【0110】
[実施例2]例示化合物A19の合成
実施例1(1)において、化合物X2の代わりに下記に示す化合物X4を使用する以外は、実施例1と同様の方法により合成を行い、例示化合物A19を得た。
【0111】
【化8】

【0112】
また実施例1と同様の方法により、純度、物性の測定を行ったところ、以下に示される結果が得られた。
純度:99.8%以上
極大発光波長:583nm
HOMO準位:5.4eV
バンドギャップ:2.1eV
LUMO準位:3.3eV
【0113】
[実施例3]例示化合物A20の合成
実施例1(1)において、化合物X2の代わりに下記に示す化合物X5を使用する以外は、実施例1と同様の方法により合成を行い、例示化合物A20を得た。
【0114】
【化9】

【0115】
また実施例1と同様の方法により、純度、物性の測定を行ったところ、以下に示される結果が得られた。
純度:99.9%以上
極大発光波長:584nm
HOMO準位:5.5eV
バンドギャップ:2.1eV
LUMO準位:3.4eV
【0116】
[実施例4]例示化合物A27の合成
実施例1(1)において、化合物X1の代わりに下記に示す化合物X6を使用する以外は、実施例1と同様の方法により合成を行い、例示化合物A27を得た。
【0117】
【化10】

【0118】
また実施例1と同様の方法により、純度、物性の測定を行ったところ、以下に示される結果が得られた。
純度:99.6%以上
極大発光波長:583nm
HOMO準位:5.5eV
バンドギャップ:2.1eV
LUMO準位:3.4eV
【0119】
[実施例5]例示化合物A28の合成
実施例1(3)において、化合物X3の代わりに下記に示す化合物X7を使用する以外は、実施例1と同様の方法により合成を行い、例示化合物A28を得た。
【0120】
【化11】

【0121】
また実施例1と同様の方法により、純度、物性の測定を行ったところ、以下に示される結果が得られた。
純度:99.8%以上
極大発光波長:592nm
HOMO準位:5.5eV
バンドギャップ:2.0eV
LUMO準位:3.5eV
【0122】
[実施例6]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層及び陰極がこの順で形成されている有機発光素子を作製した。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0123】
【化12】

【0124】
まずガラス基板(基板)上に、ITO膜を成膜した。このときITO膜の膜厚を100nmとした。次に、このITO膜を所望の形状にパターニング成形してITO電極(陽極)を形成した。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。
【0125】
次に、1×10-5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表9に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。尚、このとき対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mm2となるようにした。
【0126】
【表9】

【0127】
尚、本実施例において、G−2及びG−3は、いずれも表8に示されるH10である。即ち、本実施例の有機発光素子において、発光層は、表8中のH10をホストとし、例示化合物A16をゲストとする2成分系の層とも解釈することができる。
【0128】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表10に示す。
【0129】
[実施例7乃至17]
実施例6において、G−2、G−3及びゲストを、表10に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例6と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例6と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表10に示す。尚、表10において、G−2として使用したH10及びH11、並びにG−3として使用したH10、H11及びH21は、それぞれ表8に示されるホストである。
【0130】
【表10】

【0131】
[実施例18]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。尚、本実施例で作製される有機発光素子は共振構造を有している。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0132】
【化13】

【0133】
まずスパッタリング法により、ガラス基板(支持体)上に、アルミニウム合金(AlNd)を成膜し反射性陽極を形成した。このとき反射性陽極の膜厚を100nmとした。次に、スパッタリング法により、反射性陽極上にITOを成膜し透明性陽極を形成した。このとき透明性陽極の膜厚を80nmとした。次に、この陽極の周辺にアクリル製の素子分離膜を膜厚1.5μmで形成した後、所望のパターニング成形を行い、半径3mmの開口部を設けた。次に、陽極が形成されている基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄した。次に、IPAで煮沸洗浄してから乾燥させた。次に、この基板表面に対してUV/オゾン洗浄を施した。
【0134】
次に、1×10-5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表11に示す有機化合物層を連続成膜した。
【0135】
【表11】

【0136】
尚、本実施例において、G−13及びG−14は、いずれも表8に示されるH11である。即ち、本実施例の有機発光素子において、発光層は、表8中のH11をホストとし、例示化合物A16をゲストとする2成分系の層とも解釈することができる。
【0137】
次に、スパッタリング法により、電子注入層上に、IZOを成膜して陰極を形成した。このとき陰極の膜厚を30nmとした。最後に、窒素雰囲気下において封止を行った。
以上により、有機発光素子を作製した。
【0138】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表12に示す。
【0139】
[実施例19乃至23]
実施例18において、G−13、G−14及びゲストを、表12に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例18と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例18と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表12に示す。尚、表12において、G−13として使用したH10及びH11、並びにG−14として使用したH10、H11及びH22は、それぞれ表8に示されるホストである。
【0140】
【表12】

【0141】
[実施例24]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール輸送層、第1発光層、第2発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。尚、本実施例の有機発光素子は発光層が複数あるので、各発光層に含まれるゲストが個別あるいは同時に発光する態様である。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0142】
【化14】

【0143】
まずガラス基板上に、ITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極を形成した。このときITO電極の膜厚を100nmとした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。
【0144】
次に、1×10-5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表13に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。尚、このとき対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mm2となるようにした。
【0145】
【表13】

【0146】
尚、本実施例において、G−22、G−23及びG−24は、それぞれ表8に示されるH11、H22、H17である。
【0147】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表14に示す。
【0148】
[実施例25乃至29]
実施例24において、G−22、G−23、G−24及びゲストを、表14に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例24と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例24と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表14に示す。尚、表14において、G−22として使用したH10及びH11、G−23として使用したH10及びH22、並びにG−24として使用したH17及びH18は、それぞれ表8に示されるホストである。
【0149】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明に係る有機化合物は、赤色発光に適した発光を有し、かつ量子収率が高い化合物である。このため本発明に係る有機化合物を、有機発光素子の構成材料として用いると、良好な発光特性を有し、赤色発光する有機発光素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0151】
311:陽極、312:有機化合物層、313:陰極、38:TFT素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に示されることを特徴とする、有機化合物。
【化1】

(式(1)において、R1乃至R22は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、カルボニル基及びシアノ基から選ばれる置換基である。)
【請求項2】
1乃至R22が、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基及び置換あるいは無置換のアルキル基から選ばれる置換基であることを特徴とする、請求項1に記載の有機化合物。
【請求項3】
1乃至R4、R8、R9、R15、R18及びR19が、それぞれ水素原子、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアルキル基から選ばれる置換基であり、R5乃至R7、R10乃至R14、R16、R17及びR20乃至R22が水素原子でことを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機化合物。
【請求項4】
陰極と陽極と、
前記陽極と前記陰極との間に配置される有機化合物層と、を有する有機発光素子において、
前記有機化合物層のうち少なくとも1層に請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物が含まれることを特徴とする、有機発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物が発光層に含まれることを特徴とする、請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
赤色発光することを特徴とする、請求項4又は5に記載の有機発光素子。
【請求項7】
複数の画素を有し、
前記複数の画素が、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子の発光輝度を制御するTFT素子と、をそれぞれ有することを特徴とする、表示装置。
【請求項8】
画像を表示するための表示部と画像情報を入力するため入力部とを有し、
前記表示部が複数の画素を有し、
前記複数の画素が、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子の発光輝度を制御するTFT素子と、をそれぞれ有することを特徴とする、画像入力装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−148987(P2012−148987A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6995(P2011−6995)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】