説明

有機化合物の使用

本発明は、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置における使用のための医薬の製造を目的とした、DEFESIN5ポリペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2004年12月8日出願のUS60/634,349(参照によりその全体を本明細書中に包含される。)に優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、デフェンシン5(DEF5)、DEF5断片、DEF5相同体および/またはDEF5変異体の、特に、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置のための医薬の製造を目的とした医薬用途に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
デフェンシン(DEF)は、ウサギおよびヒトの白血球中で最初に確認された広域の抗菌性ペプチドの大きなファミリーである。デフェンシンは、ペプチド中に3個のジスルフィド結合を有し、類似であるが、α−およびβ−デフェンシンに基づく特徴を示す2つのファミリーに分類される。デフェンシンは、陽イオン性/極性ペプチド(30−35aa;3−4kDa)であり、そのうちβ−デフェンシンは、わずかに大きい。ヒトαおよびβ−デフェンシンをコードする遺伝子は、8番染色体p23の接触セグメント中に集合している。
【0004】
ヒトにおいて、6個のα−デフェンシンおよび2個のβ−デフェンシンが同定されている。α−デフェンシンは、DEFA1−6と示される遺伝子によりコードされ、一方、ヒトβ−デフェンシンは、DEFB1およびDEFB2遺伝子によりコードされる。デフェンシンは、推定アミノ末端シグナル配列、次いで中間部分、および前駆体の最後のカルボキシ末端配列中の生物活性抗菌性ペプチド残基を有する、大きな前駆体分子として合成される。
【0005】
デフェンシンは、主に微生物の細胞膜を破壊する、広範囲の抗生物質活性をもたらす。デフェンシンは、食細胞白血球およびパネート細胞を含む様々な上皮細胞により発現される。
【0006】
ヒトα5デフェンシンは、デフェンシン5αとしても公知であり、αデフェンシン5前駆体またはデフェンシン5は、94アミノ酸前駆体(HDEFA5;HNP−5;DEFA5、DEF5、DEF5(1−94))として合成される。最近、DEF5前駆体/DEF5プロペプチドが、パネート細胞におけるトリプシン処理により、効率よく様々なDEF5型を生じることが明らかにされている(Ghosh et al., Nature Immunology 2002, 3(6), 583−590)。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
驚くことに、DEF5(1−94)に関係するポリペプチドが、鉄バランスまたは鉄輸送を制御する重要な遺伝子に影響を与えることが、現在見出されている。
【0008】
故に、本発明は、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置における使用のための医薬の製造を目的とした、a)DEF5(1−94)(配列番号1)またはDEF5(1−94)の断片;b)(a)のポリペプチドのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する生物活性ポリペプチド;または、c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか1つの生物活性変異体、からなる群から選択されるポリペプチドの使用を提供する。
【0009】
さらなる局面において、本発明は、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態を有するヒトを含む哺乳動物に、上記のポリペプチドの有効量を投与することを含む、該疾患または状態の処置のための方法に関する。
【0010】
他の局面において、本発明は、上記のポリペプチドの有効量および薬学的に許容される担体を含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態における使用のための医薬組成物に関する。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置において使用するための医薬の製造を目的とした、a)DEF5(1−94)(配列番号1)またはDEF5(1−94)の断片;b)(a)のポリペプチドのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する生物活性ポリペプチド;または、c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか1つの生物活性変異体、からなる群から選択されるポリペプチドの使用を提供する。
【0012】
本明細書で用いる用語“ポリペプチド”は、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチドまたは合成オリゴペプチドを意味する。これらの用語は、交換可能に用いられることが意図される。該用語のいずれか1つは、グリコシル化またはリン酸化のような翻訳後修飾にかかわらず、ペプチドまたはアミド結合で共に結合する2個以上のアミノ酸の鎖を意味する。前記ポリペプチドはまた、2個以上のサブユニット(ここで、各サブユニットは、別々のDNA配列によりコードされる。)を含み得る。
【0013】
本発明のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を有するDEF5(1−94)を含み得る。本発明のポリペプチドはまた、本発明のDEF5(1−94)ポリペプチドのポリペプチド断片を含む。そのようなポリペプチド断片は、その全体が、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の全部ではないが一部と同じであるアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを意味する。そのようなポリペプチド断片は、“自立構造(free−standing)”であり得るか、またはより大きなポリペプチドの一部であり得、ここで、そのようなポリペプチド断片は、最も好ましくは単一連続領域として、一部分または一領域を形成する。好ましくはそのようなポリペプチド断片は、対応するポリペプチドDEF5(1−94)の少なくとも1つの生物学的活性を保持する。
【0014】
DEF5(1−94)の断片は、少なくとも10個アミノ酸、好ましくは少なくとも15、20または25個のアミノ酸を含み得る。より好ましくは、DEF5(1−94)の断片は、少なくとも30個のアミノ酸を含む。他の好ましいDEF5(1−94)の断片は、少なくとも40、50、60、65、70または75個のアミノ酸を含む。最も好ましくは、DEF5(1−94)断片は、配列番号1の、12、22、32、35、39、66、72または75個のアミノ酸を連続して含む。
【0015】
かかるポリペプチドはまた、DEF5(1−94)のタンパク質分解的切断産物のような、例えば、トリプシンのようなプロテアーゼにより作製されるDEF5(1−94)の断片であり得る。本発明のポリペプチドまたはポリペプチド断片は、DEF5(1−94)のC末端断片を含み得る。そのようなC末端断片は、DEF5(1−94)のC末端の少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは少なくとも20または25個、さらにより好ましくは、少なくとも30個のアミノ酸または少なくとも65、70または75個のアミノ酸を含み得る。該少なくとも10個のアミノ酸は、ほとんどのC末端の少なくとも10個のアミノ酸を含み得、それは、例えば、DEF5(76−87)(配列番号9)のようなDEF5(1−94)のC末端部分中の少なくとも10個のアミノ酸も含み得る。ポリペプチドは、DEF5(1−94)の少なくとも32、35、39、66、72または75個の、ほとんどのC末端アミノ酸を含み得、好ましくは、それは、DEF5(20−94)(配列番号2)、DEF5(23−94)(配列番号3)、DEF5(29−94)(配列番号4)、DEF5(56−94)(配列番号5)、DEF5(60−94)(配列番号6)またはDEF5(63−94)(配列番号7)のアミノ酸配列を有し得る。好ましくは、ポリペプチドは、DEF5(20−94)を含むDEF5(1−94)断片であり、最も好ましくは、それは、DEF5(60−94)を含む。DEF5(1−94)の断片はまた、例えばDEF5(34−55)(配列番号8)のような、DEF5(1−94)の内部断片を含み得る。
【0016】
本明細書で用いる用語“生物活性”は、生物学的事象を誘導するかまたはそれに影響を与える分子を意味する。そのような生物学的事象は、例えば、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態と関係し得る。好ましい態様において、DEF5(1−94)またはその断片の生物学的活性レベルを、表1に記載の1個以上の遺伝子の発現レベルを検出するために測定する。好ましくは、表1の遺伝子の、10、20、40より多いか、または大部分の発現を決定する。
【0017】
本発明の“生物活性ポリペプチド”には、DEF5(1−94)、およびDEF5(20−94)、DEF5(23−94)またはDEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)のようなDEF5(1−94)の断片が含まれる。
【0018】
また、DEF5(1−94)またはその断片、およびDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の変異体と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を有する相同体も含まれる。
【0019】
ポリペプチドはまた、DEF5(1−94)、または例えば、DEF5(20−94)、DEF5(23−94)またはDEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)のようなその断片、のような上記ポリペプチドのいずれか1つのアミノ酸配列と95%、97%または99%の同一性のような、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%または80%、最も好ましくは少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0020】
アミノ酸残基は、それらの標準的一文字または三文字表記により本明細書中に示される:A(Ala) アラニン;C(Cys) システイン;D(Asp) アスパラギン酸;E(Glu) グルタミン酸;F(Phe) フェニルアラニン;G(Gly) グリシン;H(His) ヒスチジン;I(Ile) イソロイシン;K(Lys) リシン;L(Leu) ロイシン;M(Met) メチオニン;N(Asn) アスパラギン;P(Pro) プロリン;Q(Gln) グルタミン;R(Arg) アルギニン;S(Ser) セリン;T(Thr) スレオニン;V(Val) バリン;W(Trp) トリプトファン;Y(Tyr) チロシン。
【0021】
参照配列および他の配列(すなわち、“候補”配列)の比較について用いる用語“同一性の割合(%)”またはそのような用語は、2つの配列間の最適アライメントにおいて、候補配列が、示した割合に相当する、ポリヌクレオチド比較のためのヌクレオチドまたはポリペプチド比較のためのアミノ酸であるサブユニットの多くの位置において、参照配列と同一であることを意味する。本明細書で用いる、比較される配列の“最適アライメント”は、サブユニット間の一致を最大にし、アライメントの構築に用いるギャップの数を最小にするものである。同一性の割合は、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443−453 (1970)(“GAP” program of Wisconsin Sequence Analysis Package, Genetics Computer Group, Madison, WI)により記載されるアルゴリズムの商業的に利用可能な実行法を用いて決定され得る。アライメントを構築するためおよび同一性の割合を測定するための当技術分野の他のソフトウェアパッケージ、または同様の他の測定法には、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482−489 (1981)(Wisconsin Sequence Analysis Package, Genetics Computer Group, Madison, WI)のアルゴリズムに基づく、“BestFit”プログラムが含まれる。同一性の割合はまた、WU−BLAST−2(Altschul et al., Methods in Enzymology 266: 460−480 (1996))によりもたらされ得る。WU−BLAST−2は、いくつかの探索パラメーターを用い、そのほとんどが、初期値に設定される。
【0022】
調整パラメーターは、下記の値:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11を用いて設定される。アミノ酸配列同一性の%値を、一致する同一残基の数を、整列領域中の残基の全数で割ることにより決定する。例えば、参照アミノ酸配列(reference amino acid sequence)と少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るため、参照配列中のアミノ酸残基の5%までが、欠失または別のアミノ酸と置換され得るか、または参照配列中の全アミノ酸残基の5%までの多くのアミノ酸が、参照配列中に挿入され得る。参照配列のこれらの改変は、参照アミノ酸配列のアミノまたはカルボキシ末端部位に起こるか、またはそれらの末端部位の間のどこかにおいて、参照配列中の残基間で個々に点在するか、または参照配列中の1個以上の隣接基で起こり得る。本発明の参照配列との比較にあたって、候補配列が、より大きなポリペプチドまたはポリヌクレオチドの構成要素またはセグメントであり得ること、および、同一性の割合のコンピュータを用いる計算を目的としたそのような比較が、関連構成要素またはセグメントに関して実行されるべきであることは、理解される。
【0023】
本発明はまた、本明細書中に記載のポリペプチドまたはポリペプチド断片の機能的に保存された変異体を含む。かかる変異体を、当技術分野で標準的な方法を用いて、例えば、保存的アミノ酸置換により作製することができる。典型的には、かかる置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間;SerおよびThr間;酸性残基であるAspおよびGlu間;AsnおよびGln間;そして、塩基性残基であるLysおよびArg間;または、芳香族性残基であるPheおよびTyr間である。いくつか、5から10個、1から5個、または2個のアミノ酸が、置換、欠失または付加、またはそれらのいずれかの組み合わせを受ける変異体が、特に好ましい。
【0024】
様々な他の態様において、ポリペプチドもしくはその断片またはポリペプチド変異体もしくは相同体は、直鎖または分枝鎖であってよく、それは、修飾アミノ酸を含んでいてよく、非アミノ酸により中断されていてよく、および/または2個以上のポリペプチド鎖の複合体に組み立てられ得る。当技術分野でよく理解されている通り、ポリペプチドは、天然でまたは介入により;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合のような何らかの他の操作もしくは修飾により修飾され得る。いくつかの態様において、ポリペプチドまたはポリペプチド断片は、アミノ酸の1個以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ならびに当技術分野で公知の他の修飾体を含む。
【0025】
本発明のポリペプチドまたはポリペプチド断片には、単離した天然に生じるポリペプチドが含まれる。好ましくは、そのような天然に生じるポリペプチドは、選択集団において、少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも10%の頻度で含まれる。該選択集団は、集団遺伝学の分野において認められた何れかの研究集団であり得る。好ましくは、選択集団は、白色人種、黒色人種、またはアジア人である。より好ましくは、選択集団は、フランス人、ドイツ人、英国人、スペイン人、日本人、中国人、韓国人、中国系のシンガポール人、アイスランド人、北アメリカ人、イスラエル人、アラブ人、トルコ人、ギリシャ人、イタリア人、ポーランド人、太平洋諸島の人々、またはインド人である。
【0026】
本発明のポリペプチドまたはその断片にはまた、組換え的に作製されたポリペプチド、合成的に作製されたポリペプチド、および本発明のかかるポリペプチドの組換え体、ならびにそれらの断片が含まれ得る。かかるポリペプチドの作製方法は、当技術分野でよく理解される。例えば、本発明のポリヌクレオチド断片またはポリペプチドを、血清、尿および腹水を含むが、それらに限定されない体液から単離することができるか、または、化学的または生物学的方法(例えば、細胞培養、組換え遺伝子発現)により合成することができる。本明細書中にて他に特に記載がなければ、“単離”は、“共存物質からの分離”の意味を含む。
【0027】
本発明の組換えポリペプチドは、発現系を含む遺伝子組換え宿主細胞から、当技術分野でよく知られている方法により作製され得る。従って、さらなる局面において、本発明は、組換え技術によるポリペプチドの作製、本発明のポリペプチドをコードする核酸または核酸類を含む発現系、かかる発現系で遺伝子組換えされる宿主細胞、およびポリペプチドを単離する方法に関する。
【0028】
別の態様は、本発明のポリペプチドが、ストリンジェントな条件下で、配列番号10のヌクレオチド配列とハイブリダイズする核酸によりコードされることを提供する。いくつかの態様において、核酸は、少なくとも30、40、50、65個、または少なくとも95、100、105、110、115、120、130、140個、または少なくとも150、160、170、180、195、210、215、220、225個、または少なくとも250、260、270、280個、または少なくとも285個のヌクレオチドを含む。核酸はまた、少なくとも300個、または少なくとも400個、または少なくとも500個のヌクレオチドを含み得る。好ましくは、核酸は、少なくとも36、66、96、105、117、198、216、225または282個のヌクレオチドを含む。かかる核酸は、少なくとも36、66、96、105、117、198、216、225または282個の配列番号10の隣接ヌクレオチド、またはストリンジェントな条件下で配列番号10とハイブリダイズし得るヌクレオチド、および最も好ましくは、DEF5(1−94)、DEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)もしくはDEF5(76−87)またはそれらの変異体もしくは相同体をコードするヌクレオチドを含み得る。
【0029】
用語“核酸”は、天然または半合成もしくは合成または修飾核酸分子を意味する。それは、デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)および/または修飾ヌクレオチドを含む、ヌクレオチド配列、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを意味する。これらの用語は、交換可能に用いられることを意図する。RNAは、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(核内小分子RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、およびリボザイムの形態であり得る。DNAは、プラスミドDNA、ウイルスDNA、線形DNA、染色体またはゲノムDNA、cDNA、またはこれらの群の誘導体の形態であり得る。さらに、これらのDNAおよびRNAは、一本鎖、二本鎖、三重鎖または四重鎖であり得る。該用語はまた、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、および天然核酸のリン酸骨格の他の変異体を含む。
【0030】
ハイブリダイゼーション反応の“ストリンジェントな条件”は、当業者により容易に決定可能であり、一般的に、プローブの長さ、洗浄温度、および塩濃度に依存して実験的に計算される。概して、より長いプローブは、適するアニーリングのためにより高い温度を必要とするが、一方、より短いプローブは、より低い温度を要する。ハイブリダイゼーションは一般的に、相補鎖が、それらの融解温度以下であるが周囲温度近くで存在するとき、変性核酸のリアニール能力に依存する。プローブと、配列番号3または4のようなハイブリダイズ可能な配列との相同性の程度が高いほど、用い得る相対温度が高い。結果として、相対温度が高いほど、よりストリンジェントな反応条件となる傾向にあり、温度が低いほど、低ストリンジェントということになる。さらに、ストリンジェンシーはまた、塩濃度に反比例する。“ストリンジェントな条件”は、(1)低イオン強度および高温、例えば、50℃にて、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムでの洗浄;(2)ホルムアミドのような変性剤、例えば、42℃にて、0.1%ウシ胎仔血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液 pH6.5、および750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む50%(vol/vol)ホルムアミドの使用、により特徴付けられる反応条件により例示される。あるいは、ストリンジェントな条件は、42℃の、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート溶液、超音波分解したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸であってもよく、55℃の、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミド中、42℃での洗浄、次いで55℃の、EDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄液での洗浄であってもよい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明に関して、Ausubel et al., Protocols in Molecular Biology (1995)を参照のこと。
【0031】
DEF5(1−94)およびDEF5(1−94)断片の組換え作製法
配列番号10のような本明細書中に上記の核酸を、適当な宿主細胞における対応するポリペプチドの発現を誘導するために、組換えDNA分子に用いることができる。遺伝子コードの縮重のため、他のDNA配列は、等価なアミノ酸配列をコードし得、DEF5(1−94)またはその断片をクローン化および発現するために用い得る。特定の宿主細胞に好ましいコドンが、発現速度および/または効率を増加するため、天然に生じるヌクレオチド配列中に選択および置換され得る。DEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)もしくはDEF5(76−87)またはそれらの変異体もしくは相同体のような望ましいDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片をコードする核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)、および/または発現のために複製可能なベクター中に挿入され得る。
【0032】
発現系
ポリペプチドは、当技術分野で公知の方法に従い、多くの発現系のいずれかにて組換え的に発現され得る(Ausubel, et al., editors, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley Sons, New York, 1990)。かかる発現系には、染色体系、エピソーム系およびウイルス由来の系、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入要素、酵母染色体要素、バキュロウイルス、パポバウイルス、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、家禽ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスのようなウイルス類由来のベクター、ならびに、コスミドおよびファージミドのようなプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝要素由来のもののような、それらの組み合わせ由来のベクターが含まれる。
【0033】
発現系は、発現を制御ならびに引き起こす調節領域を含み得る。一般的に、宿主においてポリペプチドを作製するために核酸を保持、伝搬または発現し得る何らかの系またはベクターを用い得る。適当なヌクレオチド配列を、様々な周知および常套の技術の何れかにより、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に記載の方法により、発現系中に挿入することができる。概して、DNAは、当技術分野で公知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位中に挿入される。
【0034】
ベクター構成要素には一般的に、1個以上の複製オリジン、1個以上のマーカー遺伝子、エンハンサー構成要素、プロモーター、シグナル配列または分泌配列、および転写終結配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
発現ベクターは、2個の複製系を有し得、故に、発現のために、2種の生物、例えば哺乳動物細胞または昆虫細胞において維持され、クローニングおよび増幅のために、原核宿主において維持され得る。そのような配列は、様々な細菌、酵母株、およびウイルスについてよく知られている。
【0036】
好ましくは、前記発現ベクターは、形質転換した宿主細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は、当技術分野でよく知られており、用いる宿主細胞に依存して変化し得る。発現およびクローニングベクターは、典型的に、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含み得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに対する耐性を与える、(b)補体栄養要求性欠如を補足する、または(c)必須栄養素、例えばD−アラニンラセマーゼ遺伝子を供給する、タンパク質をコードする。
【0037】
プロモーター配列は、構成的または誘導プロモーターのどちらかをコードする。該プロモーターは、天然に生じるプロモーターまたはハイブリッドプロモーターどちらかであり得る。2個以上のプロモーター要素を組み合わせるハイブリッドプロモーターも、当技術分野で公知であり、本発明において有用である。さらに、発現ベクターを統合するため、発現ベクターは、宿主細胞ゲノムと相同性の少なくとも1個の配列を含み、好ましくは、発現構築物をつなぐ2個の相同配列を含む。統合ベクターは、ベクター中の適当な相同配列の挿入により宿主細胞中の特定の遺伝子座に向けられ得る。統合ベクターの構築は、当技術分野でよく知られている。
【0038】
適当な分泌シグナルは、小胞体のルーメン、ペリプラズム空間または細胞外環境中へのポリペプチドの分泌を可能にする所望のポリペプチド中に組み込まれ得る。これらのシグナルは、ポリペプチドに内在していてよいか、または異種シグナルであってよい。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であり得る。酵母分泌のため、シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(サッカロマイセスおよびクライベロマイセスa因子リーダーを含む)であり得る。哺乳動物細胞発現系において、同じまたは関連種の分泌ポリペプチドからの哺乳動物シグナル配列、ならびにウイルスの分泌リーダーを、DEF5(1−94)、またはDEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)もしくはDEF5(76−87)、それらの変異体もしくは相同体のようなDEF5(1−94)断片の分泌を誘導するために用い得る。適当な宿主細胞には、酵母、細菌、古細菌、菌、ならびに昆虫および例えば幹細胞を含むが、これに限定されない初代培養細胞を含む哺乳動物細胞を含む動物細胞が含まれる。適当な宿主の代表例には、大腸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、ストレプトマイセス、および枯草菌のような細菌細胞;出芽酵母、他の酵母細胞またはアスペルギルスのような菌細胞;ショウジョウバエS2および線虫Sf9細胞のような昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293およびボーズ黒色腫細胞のような動物細胞;ならびに、植物細胞が含まれる。
【0039】
宿主細胞株は、挿入配列の発現を調節するか、または所望の方法でポリペプチドを発現できるようにするその能力に関して選択され得る。ポリペプチドのそのような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が含まれるが、それらに限定されない。ポリペプチドの“プレプロ”形態を切断する、翻訳後処理はまた、正確な挿入、折りたたみ、および/または機能に重要であり得る。
【0040】
DEF5(1−94)、またはDEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)のようなDEF5(1−94)断片を、タンパク質またはポリペプチドの発現を誘導または引き起こすのに適当な条件下で、DEF5(1−94)またはその断片をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて形質転換した宿主細胞を培養することにより製造することができる。本発明の好ましい態様において、配列番号10の核酸またはストリンジェントな条件下で配列番号10とハイブリダイズする核酸で安定にまたは一時的にトランスフェクトされる宿主細胞が、提供される。本発明の別の態様に従い、該宿主細胞は、DEF5(1−94)またはそのDEF5(1−94)断片の発現を可能にするために培養され、ポリペプチドは、細胞培養物から単離される。
【0041】
形質転換した宿主細胞には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌のような微生物、酵母発現ベクターで形質転換された酵母、および組換え昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルス)で感染した昆虫細胞、ならびに哺乳動物発現系が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片、例えばDEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)の発現に適当な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択により変化し得、常套的実験を通して当業者に容易に確認され得る。例えば、発現ベクターにおける構成的プロモーターの使用は、宿主細胞の成長および増殖の最適化を必要とするが、誘導プロモーターの使用は、誘導に適当な増殖条件を必要とする。さらに、いくつかの態様において、採取のタイミングが重要である。例えば、昆虫細胞と共に用いるバキュロウイルス系は、溶菌ウイルスであり、故に、採取時期の選択は、産物収率にとって重要であり得る。
【0043】
所望のDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片は、組換え的に直接作製されるだけでなく、異種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドとしても作製され得る。かかる異種ポリペプチドは、一般的に、DEF5(1−94)またはそのDEF5(1−94)断片のアミノ末端またはカルボキシル末端に位置し、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープタグを提供し得る。従って、かかるエピトープタグは、DEF5(1−94)またはその断片を、抗タグ抗体またはエピトープタグに結合する親和性マトリックスの別のタイプを用いて容易に精製するのを可能にする。エピトープタグの例は、6xHisまたはc−mycタグである。あるいは、DEF5(1−94)またはその断片を、例えば、GST融合タンパク質の形態で発現し得る。適当な構築物は、一般的に、当技術分野で公知であり、Invitrogen(San Diego, Calif.)、Stratagene (La Jolla, Calif.)、Gibco BRL (Rockville, Md.)、またはClontech (Palo Alto, Calif.)のような商業的供給者から市販されている。
【0044】
遺伝子発現の評価
遺伝子発現は、適当に標識されたプローブを用いて、例えば、当業者に公知の標準的技術、例えば、DNA検出のためのサザンブロッティング、mRNAの転写を決定するためのノーザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAまたはRNA)、またはインサイチュウハイブリダイゼーションにより、本明細書中に供する配列に基づき、直接的に試料において評価され得る。あるいは、抗体は、二本鎖DNA、二本鎖RNA、および二本鎖のDNA−RNAハイブリッドまたは二本鎖のDNA−タンパク質を含む、特定の二本鎖のような核酸の検出のために、分析において使用され得る。そのような抗体は、標識され得、分析を、表面上での二本鎖の形成により、二本鎖に結合する抗体の存在が検出可能であるため、二本鎖が表面に結合されるとき行う。あるいは、遺伝子発現を、DEF5(1−94)またはそのDEF5(1−94)断片の発現を直接評価するため、細胞または組織分泌の免疫組織化学的染色ならびに細胞培養物または体液の分析により測定することができる。そのような免疫分析に有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのどちらかであり得、本明細書中で供するDNA配列に基づく天然配列であるDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片に対して製造することができる。
【0045】
発現タンパク質の精製
発現したDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片、例えばDEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)を、当業者に公知の様々な方法の何れかを用いて、発現後に精製または単離することができる。適当な技術は、DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の発現方法に依存して変化し得る。ポリペプチドは、例えば、分泌タンパク質の形態で培養培地から、または宿主細胞溶解物から回収され得る。細胞は、様々な物理的または化学的手段、例えば凍結融解サイクル、ソニケーション、機械的破壊により、または細胞溶解剤の使用により破壊され得るが、一方、播く結合ポリペプチドを、適する界面活性剤溶液(例えば、トライトン−X100)を用いて、または酵素的切断により膜から放出し得る。ポリペプチド精製または単離に適当な技術はまた、他の要素が試料中に存在することに依存して変わり得る。精製の必要な程度も、DEF5(1−94)またはその断片の使用に依存して異なり得る。単離または精製により除去される汚染物質要素は、典型的に、ポリペプチドの診断または治療的使用を妨げ得る物質であり、酵素、ホルモン、および他の溶質を含み得る。選択した精製工程(複数可)は、例えば、用いる作製方法および作製した特定のDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の性質に依存して変わり得る。
【0046】
通常、単離したDEF5(1−94)またはその断片は、少なくとも1段階の精製工程により作製され得る。精製のよく知られている方法には、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが含まれる。最も好ましくは、親和性クロマトグラフィーが精製に用いられる。例えば、DEF5(1−94)またはその断片、例えばDEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)は、標準的抗DEF5 C末端ポリペプチド抗体カラムを用いて精製可能である。タンパク質濃度に関連する限外ろ過および透析技術もまた、有用である(例えば、Scopes, R., Protein Purification, Springer−Verlag, New York, N.Y., 1982を参照のこと)。タンパク質の再折りたたみに関してよく知られている技術を、ポリペプチドが、単離および/または精製中に変性したとき、活性構造を再生するために用いることができる。
【0047】
発現ポリペプチドの標識
本発明の核酸、タンパク質および抗体を、標識することができる。本明細書中、“標識する”は、化合物が、化合物の検出を可能にするために結合する少なくとも1個の要素、同位体または化学化合物を有することを意味する。概して、標識は、3つのクラスに分類される:a)放射性同位体または重同位体であり得る同位体標識;b)抗体または抗原であり得る免疫標識;および、c)着色色素または蛍光色素。標識は、化合物中、検出されるべき化合物の生物学的活性または特性を妨げない何らかの位置に組み込まれ得る。
【0048】
DEF5(1−94)およびDEF5(1−94)断片の化学的製造
ポリペプチドまたはその断片を、組換え方法のみでなく、当技術分野でよく知られている化学的方法を用いても製造することができる。固相ペプチド合成を、バッチ式、または連続的に、α−アミノ−および側鎖−保護アミノ酸残基を、リンカー基を介して不溶性のポリマー支持体に付加する連続フロー処理で行うことができる。メチルアミン−誘導ポリエチレングリコールのようなリンカー基を、ポリ(スチレン−コ−ジビニルベンゼン)に結合させ、支持樹脂を形成する。アミノ酸残基を、酸に不安定なBoc(t−ブチルオキシカルボニル)または塩基に不安定なFmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)によりNα保護する。保護アミノ酸のカルボキシル基は、該残基を固相支持樹脂に固定するためリンカー基のアミンと結合される。トリフルオロ酢酸またはピペリジンを、それぞれ、BocまたはFmocの場合の保護基の除去に用いる。各付加アミノ酸を、カップリング剤または予め活性化したアミノ酸誘導体を用いてアンカー遺伝子に付加し、樹脂を洗浄する。全長ペプチドを、順次、脱保護、誘導体化アミノ酸のカップリングおよびジクロロメタンおよび/またはN,N−ジメチルホルムアミドでの洗浄により合成する。ペプチドを、ペプチドカルボキシ末端とリンカー基の間で切断し、ペプチド酸またはアミドを得る(Novabiochem 1997/98 Catalog and Peptide Synthesis Handbook, San Diego Calif. pp. S1−S20)。自動合成を、ABI 431A ペプチド合成機(Applied Biosystems)のような機械で行うこともできる。ポリペプチドまたはその断片を、分取用高速液体クロマトグラフィーにより精製し、その組成をアミノ酸分析または配列決定により確認することができる(Creighton T.E. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, W H Freeman, New York N.Y.)。
【0049】
天然ポリペプチドの変異体は、様々な状況において望ましい。例えば、望ましくない副作用は、特に、副作用活性が、所望の活性の一部とは異なるポリペプチドの一部と関係するとき、任意の変異体により低減され得る。いくつかの発現系において、天然ポリペプチドは、プロテアーゼによる分解に感受性であり得る。そのような場合において、感受性配列を変えるアミノ酸の選択した置換および/または欠失は、収量を顕著に増大し得る。変異体はまた、精製方法における収量を増加し、および/またはアミノ酸を、酸化、アシル化、アルキル化、または他の化学修飾に感受性でなくすることによりタンパク質の貯蔵時間を増加し得る。好ましくは、かかる変異体は、(i)立体構造的に中性な変化、すなわち、それらは、天然ポリペプチドと比較して変異体ポリペプチドの三次構造において最小の変化を生じるように設計され、そして(ii)抗原性的に中性な変化、すなわち、それらは、天然ポリペプチドと比較して変異体ポリペプチドの抗原性決定基において最小の変化を生じるように設計される、を含む。
【0050】
上記のポリペプチドは、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置において使用するための医薬の製造を目的として、本発明に従い使用され得る。
【0051】
本発明のさらなる局面は、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置のための方法を提供し、該方法は、前記疾患または状態を有するヒトを含む哺乳動物に、a)DEF5(1−94)(配列番号1)またはDEF5(1−94)の断片;b)(a)のポリペプチドのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する生物活性ポリペプチド;または、c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか1つの生物活性変異体、からなる群から選択されるポリペプチドの有効量を投与することを含む。従って、上記のポリペプチドは、投与され得る。ポリペプチドは、好ましくは、DEF5(1−94)、またはDEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)もしくはDEF5(76−87)のようなその断片を含む。
【0052】
処置を目的とした“哺乳動物”は、ヒト、家畜ならびにイヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなどのような動物園、競技動物またはペットからの動物を含む哺乳動物として分類される何らかの動物を意味する。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0053】
用語“処置”は、治療的処置および予防的または防止的手段の両方を意味する。処置の必要なものには、疾患を既に有しているもの、ならびに疾患を予防すべきであるものが含まれる。
【0054】
“疾患”または“状態”は、上記のおよびさらに下記のDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)の断片を用いる処置が有効であり得る何らかの状態である。これには、慢性および急性疾患または状態の両方、ならびに問題の疾患または状態を生じやすい病的状態が含まれる。
【0055】
本明細書中、処置すべき疾患または状態の非限定的例には、体内の変化した鉄バランスまたは鉄輸送の結果もたらされる何らかの状態、鉄過剰症、貧血または赤血球形成不全症が含まれる。鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の例は、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、サラセミア、鉄過剰、貧血、鎌状赤血球貧血と関係する状態である。
【0056】
本発明の別の局面において、DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)の断片は、DEF5(1−94)またはその断片の有効量を、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態を有するヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、該疾患の処置のための適する治療薬として提供される。
【0057】
従って、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態における使用のための医薬組成物である、上記の本発明のDEF5(1−94)またはその断片および薬学的に許容される担体が、提供される。DEF5(1−94)断片には、好ましくは、DEF5(20−94)、DEF5(23−94)、DEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)が含まれる。本発明の組成物は、有効量で投与される。
【0058】
前記医薬組成物は、処置の上記方法において使用され得る。そのような組成物は、好ましくは、滅菌され、患者に投与するのに適する重量または容量単位で所望の応答をもたらすために、DEF5(1−94)またはその断片、または該ポリペプチドまたは断片をコードする核酸の有効量を含む。
【0059】
DEF5(1−94)またはその断片、化合物、または医薬組成物の“有効量”は、鉄過剰症、貧血または赤血球形成不全症の予防および/または阻止、例えば、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、サラセミア、貧血、および/または鎌状赤血球貧血の予防および/または阻止のような臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。
【0060】
かかる量はまた、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、健康状態、大きさおよび体重を含む個々の患者パラメーター、処置の期間、併用療法の性質(もしあれば)、投与の特定経路などの、担当医の知識および技術内の因子に依存して変化し得る。これらの因子は、当業者によく知られており、習慣的な実験のみで対応可能である。
【0061】
有効量は、1回以上の投与で投与され得、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併用して達成され得るか、または達成され得ない。故に、“有効量”は、1個以上の治療薬を投与することと見なされ得、単剤は、望ましい結果が、1個以上の他の薬剤との併用で達成され得るか、または達成されるとき、有効量で与えられると見なされ得る。
【0062】
単独または、別の薬物、化合物、または医薬組成物との併用での、本発明のDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片または該ポリペプチドを含む医薬組成物の有効量は、注射または時間をかける漸進的な注入を含む、何らかの常套経路により投与可能である。投与は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、局所または経皮的であり得る。
【0063】
投与時、本発明の医薬組成物を、薬学的に許容される製剤で投与する。本明細書で用いる用語“薬学的に許容される担体”は、ヒトを含む哺乳動物への投与に適する1個以上の適合する固体または液体充填剤、希釈剤または封入剤を意味する。用語“担体”は、有効成分が、適用を容易にするために組み合わされる、有機または無機成分、天然または合成成分を意味する。
【0064】
用語“薬学的に許容される”は、有効成分の生物学的活性の効果を妨げない非毒性物質を意味する。かかる製剤には、通常、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、アジュバントおよびサイトカインのような免疫増強補助剤、ならびに所望により、化学療法薬のような他の治療剤が含まれ得る。
【0065】
薬剤に使用するとき、塩は、薬学的に許容されるべきであるが、薬学的に許容されない塩を、その薬学的に許容される塩を製造するために都合よく用いることができ、本発明の範囲から排除されない。
【0066】
医薬組成物には、酢酸塩;クエン酸塩;ホウ酸塩;および、リン酸塩を含む、適する緩衝剤が含まれ得る。
【0067】
医薬組成物にはまた、所望により、塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベンおよびチメロサールのような適する保存剤が含まれ得る。
【0068】
対象に投与される該ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸の投与量は、異なるパラメーターに従い、特に、用いる投与方法および対象の状態に従い、選択され得る。他の因子には、所望の処置期間が含まれる。対象における応答が、適用した初期投与量で不十分である場合には、より高投与量(または、異なる、より局所的な送達経路による効果的な高投与量)が、患者の耐容性を可能にする範囲内で用いられ得る。
【0069】
医薬組成物は、都合よく単位剤形で存在していてよく、製薬分野でよく知られている何らかの方法により製造され得る。全ての方法には、活性剤を、1個以上の副成分を構成する担体と共に用いる工程が含まれる。概して、該組成物は、均一かつ密接に、活性化合物を、液体担体、微粉化固体担体、または両方と共に用い、その後、必要であれば、産物を成形することにより製造される。
【0070】
経口投与に適する組成物は、カプセル、錠剤、ロゼンジのような不連続単位(それぞれ、所定の量の活性化合物を含む。)として存在し得る。他の組成物には、スプレー、エリキシルまたはエマルジョンのような水性液体または非水性液体の懸濁液が含まれる。
【0071】
非経腸投与に適する組成物には、都合よくは、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸の滅菌水性または非水性製剤が含まれ、それは、好ましくは、受容者の血液と等張である。この製剤を、適する分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いる公知の方法に従い製剤することができる。滅菌注射製剤はまた、非毒性の非経腸に許容される希釈剤または溶媒の滅菌注射溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール溶液であり得る。用い得る許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液、および等張の塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌した不揮発性油が、都合よく、溶媒または懸濁媒体として用いられる。本目的に関して、何らかの無刺激性不揮発性油は、合成モノ−またはジ−グリセリドを包含して用いられ得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸を、注射剤に用い得る。
【0072】
経口、皮下、静脈内、筋肉内投与などに適する担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA中に見出され得る。
【0073】
本発明の別の局面は、診断するために対象から採取された生物学的試料におけるDEF5(1−94)またはその断片のレベルを検出すること(ここで、変化したレベルは、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態を示す。)を含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の予後診断または診断のための方法を提供する。本発明の1つの態様は、(i)第一の値を対提供するため、象から得られた生物学的試料におけるDEF5(1−94)またはその断片のレベルを検出する工程;および、(ii)第一の値を、疾患または状態を有しない患者からのDEF5(1−94)またはその断片のレベルと比較する工程(ここで、疾患を有しない対象からの試料におけるDEF5(1−94)またはその断片のレベルと比較して、対象からの生物学的試料におけるレベルの変化は、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態になりやすいか、またはそれを有する対象を示す。)を含む、対象における鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の予後診断または診断のための方法を提供する。
【0074】
かかる生物学的試料には、血液または血漿または組織試料が含まれる。適する組織試料には、全血、精液、唾液、涙、尿、便、汗、頬の細胞、皮膚、および筋肉、脳または神経組織および髪のような特定の器官組織の生体組織が含まれる。最も好ましくは、適する生物学的試料には、血液または血漿が含まれる。組織試料にはまた、かかる生物学的試料から単離された細胞類および細胞タイプ類が含まれる。本発明の好ましい態様に従い得るDEF5(1−94)またはその断片のレベルの変化には、本発明において、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態を有しない個体において見出されたDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の血漿レベルと比較して、DEF5(1−94)またはその断片の増加した血漿レベルが含まれる。該増加は、好ましくは少なくとも1.2倍、より好ましくは少なくとも1.5倍、2倍、3倍、5倍または10倍である。
【0075】
さらなる局面に従い、本発明は、i)対象から得られた適する組織の試料における表1に記載の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを検出し、第一の値を提供すること;および、ii)第一の値を、疾患を有しない対象からの該遺伝子の発現レベルと比較すること(ここで、疾患を有しない対象からの試料と比較して、対象試料におけるより高いまたはより低い発現レベルが、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態になりやすいか、またはそれを有する対象を示す。)を含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の予後診断または診断のための方法を提供する。遺伝子発現は、mRNAまたはタンパク質レベルで検出され得る。適する組織には、肝臓、心臓、十二指腸のような腸、脾臓、骨髄が含まれるが、これらに限定されない。mRNA発現レベルは、何らかの適する技術、例えばマイクロアレイ分析、ノーザンブロット分析、逆転写PCRおよびリアルタイム定量的PCRにより検出され得る。同様に、タンパク質レベルは、何らかの適する技術により、例えば、タンパク質に特異的な標識したプローブを用いてウエスタンブロットにより検出することができる。
【0076】
上記の局面の好ましい態様において、遺伝子(複数可)は、上方制御または下方制御される表1に記載の遺伝子(複数可)から選択される。好ましくは、遺伝子(複数可)は、1.2倍以上、1.3倍以上、または1.5、1.7、1.8、1.9倍以上に上方制御される表1に記載の遺伝子(複数可);または、0.8倍未満、0.7倍未満、または0.6倍未満に下方制御される表1に記載の遺伝子(複数可)から選択される。上記の局面のさらに別の好ましい態様において、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、30個の遺伝子の発現が測定される。本発明の別の態様において、少なくとも40、50または60個の表1から選択される遺伝子の発現が、測定される。本発明のさらなる態様は、少なくとも65、70、80、90、100、または少なくとも110個の遺伝子の発現のような、表1から選択される遺伝子の大部分の発現が決定されるか、または表1の全ての遺伝子の発現が決定されることを提供する。
【0077】
本発明のさらなる局面は、i)DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の少なくとも1つの生物学的活性を許容する試料条件下で、試験化合物を、DEF5(1−94)またはその断片と接触させる工程;ii)DEF5(1−94)/DEF5(1−94)断片の該少なくとも1つの生物学的活性レベルを決定する工程;iii)該レベルを、該試験化合物を欠く対照試料のレベルと比較する工程を含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態のモジュレーターを同定する方法を提供する。好ましい態様において、該レベルの変化をもたらす該試験化合物は、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の予防的および/または治療的処置のためのモジュレーターとしてDEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片をさらに試験するために選択される。好ましい態様において、DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の生物学的活性レベルは、表1に記載の少なくとも61、70または100個の遺伝子のような1個以上、または複数の遺伝子の発現レベルを検出することにより測定される。
【0078】
鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態のモジュレーターの例には、アンチセンスヌクレオチド、リボザイム、二本鎖RNAおよびアンタゴニストが含まれるが、それらに限定されない。
【0079】
本明細書で用いる用語“アンチセンス”は、例えば、DEF5(1−94)(配列番号1)、DEF5(20−94)(配列番号2)、DEF5(23−94)(配列番号3)、DEF5(29−94)(配列番号4)、DEF5(56−94)(配列番号5)、DEF5(60−94)(配列番号6)、またはDEF5(63−94)(配列番号7)、DEF5(35−55)(配列番号8)またはDEF5(76−87)(配列番号9)のような、本発明のポリペプチドをコードするRNA発現産物の一部に相補的なヌクレオチド配列を意味する。“相補的”ヌクレオチド配列は、例えば、配列番号10と対をなす塩基のような、標準的ワトソン−クリック相補性法則に従い塩基対を形成し得るヌクレオチド配列を意味する。すなわち、プリンは、ピリミジンと塩基対を形成することができ、グアニン:シトシン、および、DNAの場合、アデニン:チミン、またはRNAの場合、アデニン:ウラシルの組み合わせを形成する。他のまれな塩基、例えば、イノシン、5−メチルシトシン、6−メチルアデニン、ヒポキサンチンなどが、ハイブリダイズする配列中に含まれ得、それらは対形成を干渉しないだろう。
【0080】
宿主細胞中に導入したとき、アンチセンスヌクレオチド配列は、例えば、細胞内での転写および/または翻訳を阻害することにより、コードされたタンパク質の発現を阻害するように、該遺伝子(複数可)に対応する細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズする。
【0081】
アンチセンスヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子は、例えば、細胞中で転写されたとき、遺伝子(複数可)のコードされたmRNAの少なくとも独特な部分に相補的なRNAを生じる発現ベクターとして、送達され得る。あるいは、アンチセンスヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子は、イクスビボで製造され、細胞内に導入したとき、結果として、遺伝子(複数可)のmRNAおよび/またはゲノム配列とハイブリダイズすることによりコードされたタンパク質の発現を阻害する、オリゴヌクレオチドプローブである。
【0082】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼに耐性であり、故に細胞内で安定であるアンチセンス分子を示す人為的なヌクレオチド間結合を含む。アンチセンスヌクレオチド配列として用いるための修飾核酸分子の例は、例えば、米国特許第5,176,996号;第5,264,564号;および、第5,256,775号に記載の、リン酸アミド型、リン酸チオ型およびリン酸メチル型のDNAの類似体である。アンチセンス療法に有用なオリゴマーを製造するための一般的方法は、例えば、Van der Krol, BioTechniques, Vol. 6, pp. 958−976 (1988);および、Stein et al., Cancer Res., Vol. 48, pp. 2659−2668 (1988)に記載される。
【0083】
典型的なアンチセンス方法は、遺伝子のコードされたmRNAに相補的な、DNAまたはRNAのどちらかのオリゴヌクレオチドの製造を伴う。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、遺伝子のコードされたmRNAとハイブリダイズし、翻訳を阻害し得る。所望の核酸とハイブリダイズするアンチセンスヌクレオチド配列の能力は、アンチセンスヌクレオチド配列の相補性および長さの程度に依存し得る。典型的に、ハイブリダイズする核酸の長さが増加すると、含まれ得るRNAとのミスマッチ塩基が増すが、安定な二本鎖または三重鎖が形成される。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を決定する常套方法の使用によりミスマッチの許容程度を決定し得る。
【0084】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、mRNAの5’末端、例えば、mRNA開始部位、すなわち、AUGに相補的な領域まで、およびそれを含む5’非翻訳配列に相補的になるように設計される。しかしながら、mRNAの3’非翻訳配列に相補的なオリゴヌクレオチド配列は、例えば、Wagner, Nature, Vol. 372, pp. 333 (1994)に記載の通り、mRNAの翻訳の阻害に有効であることも示されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、mRNAコーディング領域に相補的になるように設計することができるが、かかるオリゴヌクレオチドは、翻訳の有効性の低い阻害剤である。
【0085】
それらがハイブリダイズするmRNA領域にかかわらず、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に、約15から約25ヌクレオチド長である。
【0086】
アンチセンスヌクレオチドにはまた、少なくとも1個の修飾塩基部分、例えば、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、7−メチルグアニン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシルが含まれ得、また、少なくとも1個の修飾糖部分、例えば、アラビノース、ヘキソース、2−フルオロアラビノース、およびキシルロースが含まれ得る。
【0087】
別の態様において、アンチセンスヌクレオチド配列は、α−アノマーヌクレオチド配列である。α−アノマーヌクレオチド配列は、相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成し、それは、通常のβ単位と異なり、例えば、Gautier et al., Nucl. Acids. Res., Vol. 15, pp. 6625−6641 (1987)に記載の通り、互いに平行である。
【0088】
アンチセンスヌクレオチドは、様々な技術、例えば、関連組織への直接的注入、リポソーム中でのアンチセンスヌクレオチドの封入により、アンチセンスヌクレオチドを、該細胞表面上に発現する受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体と連結することにより関連細胞を標的とする修飾アンチセンスヌクレオチドを投与することにより、インビボで記載の遺伝子を発現する細胞に送達され得る。
【0089】
用語“リボザイム”は、DNA制限エンドヌクレアーゼと同様の方法で、他の一本鎖RNAを特異的に切断するRNA分子を意味する。RNAをコードするヌクレオチド配列を修飾することにより、リボザイムは合成され得、分子中特異的なヌクレオチド配列を認識し、例えば、Cech, J. Amer. Med. Assn., Vol.260, p. 3030 (1988)に記載の通りにそれを切断する。従って、特異的配列を有するmRNAのみを、切断および不活性化する。
【0090】
リボザイムの2つの基本タイプには、例えば、Rossie et al., Pharmac. Ther., Vol. 50, pp. 245−254 (1991)に記載の“ハンマーヘッド”型;および、例えば、Hampel et al., Nucl. Acids Res., Vol. 18, pp. 299−304 (1999)および米国特許第5,254,678号に記載のヘアピン型リボザイムが含まれる。開示の遺伝子の少なくとも1つに対応するmRNAを標的とするハンマーヘッド型およびヘアピン型リボザイムの細胞内発現は、遺伝子によりコードされるタンパク質を阻害するために用いられ得る。
【0091】
リボザイムは、リボザイム配列を含むRNAオリゴヌクレオチドの形態で細胞中に直接送達されるか、または所望のリボザイムRNAをコードする発現ベクターとして細胞内に導入され得る。リボザイム配列は、アンチセンスヌクレオチドについて記載の方法と実質的に同様の方法で修飾され得、例えば、リボザイム配列は、修飾塩基部分を含み得る。
【0092】
例えば、配列番号10のような本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1個の核酸に相当する、用語“二本鎖RNA”、すなわちセンス−アンチセンスRNAはまた、発現of開示された遺伝子の少なくとも1個の発現を妨げるために使用され得る。二本鎖RNAによる内在性遺伝子の機能および発現の阻害は、線虫について、例えば、Fire et al., Nature, Vol. 391, pp. 806−811 (1998)に記載の通り;ショウジョウバエについて、例えば、Kennerdell et al., Cell, Vol. 95, No. 7, pp. 1017−1026 (1998)に記載の通り;および、マウスについて、例えば、Wianni et al., Nat. Cell Biol., Vol. 2, No. 2, pp. 70−75 (2000)に記載の通り、様々な生物にて示されている。そのような二本鎖RNAは、テンプレートの方向ならびにセンスおよびアンチセンスRNA鎖のインビトロでのアニーリングの両方から読まれる一本鎖RNAのインビトロでの転写により合成され得る。二本鎖RNAはまた、cDNAベクター構築物から合成され得、ここで、目的の遺伝子は、逆方向反復により分けられる逆方向にクローニングされる。細胞感染後、RNAは転写され、相補鎖は再アニールする。
【0093】
用語“アンタゴニスト”は、DEF5(1−94)またはその断片、例えばDEF5(20−94)、DEF5(23−94)またはDEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)またはDEF5(76−87)のような本発明のポリペプチドと結合したとき、該ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を低減または阻害する分子を意味する。アンタゴニストには、ペプチド、タンパク質、炭水化物、および小分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
特に有用な態様において、アンタゴニストは、DEF5(1−94)、DEF5(20−94)、DEF5(23−94)またはDEF5(29−94)、DEF5(56−94)、DEF5(60−94)、DEF5(63−94)、DEF5(34−55)および/またはDEF5(76−87)に特異的な抗体である。抗体はまた、化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素などのような試薬と結合され得、標的因子として機能する。
【0095】
さらに別の態様において、アンタゴニストは、例えば、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、サラセミア、鉄過剰、貧血、鎌状赤血球貧血と関係する状態のような、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態を処置するための治療剤として有用である。
【0096】
アンチセンスヌクレオチドを用いる処置の場合、該方法は、配列番号10由来またはストリンジェントな条件下で、配列番号10とハイブリダイズする核酸由来のアンチセンスヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子の治療的有効量を投与することを含む。
【0097】
用語“単離された”核酸分子は、核酸分子が、その元の環境(例えば、それが天然に生じるとき、天然の環境)から取り出されたことを意味する。例えば、天然に存在する核酸分子は単離されていないが、天然系中に共存する物質のいくつかまたは全てから分離された同じ核酸分子は、後に天然系中に再導入されることがあるとしても、単離されている。かかる核酸分子は、ベクターの一部、または組成物の一部であり、かかるベクターまたは組成物が、その天然の環境の一部ではないという点で、さらに単離され得た。
【0098】
リボザイムまたは二本鎖RNA分子を用いる処置に関して、方法には、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、または二本鎖RNA分子の治療的有効量を投与することが含まれ、ここで、リボザイム/二本鎖RNA分子をコードするヌクレオチド配列は、DEF5(1−94)またはその断片の転写/翻訳を減じる能力を有する。
【0099】
アンチセンスヌクレオチド、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、二本鎖RNAまたはアンタゴニストを含む単離された核酸分子の“治療的有効量”は、例えば、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、サラセミア、鉄過剰、貧血、鎌状赤血球貧血と関係する状態のような、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態を処置するためのこれらの治療薬のうち1種の十分量を意味する。
【0100】
治療的有効量の決定は、十分に当業者の能力内である。何らかの治療薬に関して、治療的有効用量は、細胞培養分析において、または通常、マウス、ウサギ、イヌ、またはブタである動物モデルにおいて、最初に概算され得る。動物モデルは、適当な濃度範囲および投与の経路を決定するためにも用い得る。故に、そのような情報を、ヒトにおける投与のための有用な用量および経路の決定に用いることができる。
【0101】
治療的適用に関して、アンチセンスヌクレオチド、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、二本鎖RNA(リポソーム中で封入されるか、またはウイルスベクター中に含まれる)および抗体は、好ましくは、治療薬を、1個以上の薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物として投与される。該組成物は、単独で、または少なくとも1個の安定化化合物のような他の薬剤と共に投与され、それらは、食塩水、緩衝食塩水、デキストロースおよび水を含むが、それらに限定されない、何らかの滅菌生体適合性医薬担体で投与され得る。該組成物は、対象に、単独で、または他の薬剤、薬物またはホルモンと共に投与され得る。
【実施例】
【0102】
実験1
方法
DEF5(60−94)を、オスC57BL/6マウスに、300、600または1000μg/日の用量で、7から14日間、皮下投与する。処理期間の最後に、全ての臓器からの試料を、解剖で瞬間凍結させ、GeneChip(登録商標)発現プロフィール分析を用いて分析する。
【0103】
全量RNAを、製造業者の説明書に従い、TRIzol試薬(Life Technologies)を用いてこれらの凍結組織から抽出する。全量RNAを、260nm(A260nm)での吸光度がlにて定量し、純度を、A260nm/A280nm比で概算する。完全性を、変性ゲル電気泳動により調べる。RNAを、分析まで−80℃で保存する。良質の全量RNAを、Superscript Choiceシステム(Life Technologies)を用いて二本鎖cDNAを合成するために用いる。その後、cDNAを、インビトロで転写し(MEGAscriptau T7 Kit, Ambion)、ビオチン標識したcRNAを形成する。次に、12から15mgの標識したcRNAを、45℃で16時間、Affymetrix マウスMOE430A発現プローブアレイとハイブリダイズする。その後、アレイを、EukGE−WS2プロトコール(Affymetrix)に従い洗浄し、10mg/mlのストレプトアビジン−フィコエリトリン複合体(Molecular Probes)を用いて染色する。シグナルを、2mg/mlアセチル化BSA(Life Technologies)、100mM MES、1M [Na+]、0.05%トゥイーン20、0.005%消泡剤(Antiofoam)(Sigma)、0.1mg/mlヤギIgGおよび0.5mg/mlビオチン化抗体を用いて抗体−増幅し、ストレプトアビジン溶液を用いて再染色する。洗浄後、アレイを、Gene Array(登録商標)スキャナー(Affymetrix)を用いて2度スキャンする。
【0104】
発現レベルを、所定のプローブのオリゴヌクレオチド対形成により測定されるシグナル強度の相違を平均化することにより概算する(AvgDiff値)。この研究に用いる画像収集および数値変換ソフトウェアは、Affymetrix Microarray Suite version 5(MAS5)である。処理により影響を受ける遺伝子を同定するため、データセットは、値が、実験ノイズが高く(任意の実験点の複製の最小数に対応する実験数におけるAvgDiff値が少なくとも50である)体系的に低発現範囲にある遺伝子の最初の分析波を除くため、初めにフィルタリングされる。選択の第二段階において、閾値t検定p値(0.05)は、可能であれば、多重仮説検定法の補正減少法(BenjaminiおよびHochbergのfalse discover率)を用いて、2つの成分誤差モデル(全体誤差モデル)に基づく処理と非処理の間で異なる値を有する遺伝子を同定する。
【0105】
その後、選択した遺伝子リストを、フィッシャーの正確確率検定を用いて、経路および細胞成分について確立された遺伝子リストと比較する。ベン図を、異なる臓器間で共通する遺伝子変化を同定するために用いる。関連性の高い遺伝子の発現プロフィールを、いくつかの距離メトリクス(distance metrics)(standard, Pearson)を用いて、個々の実験点にて相関変化を有する遺伝子を見出すために用いる。
【0106】
特定の遺伝子が関連すると考えられる決定は、上記の予備的フィルタリングおよび統計的アルゴリズムにより同定される数的変化が共起すること、および共通の生物学的テーマを示す他の調節された遺伝子との関係に基づく。
【0107】
結果
表1は、RNAレベルにて、DEF5(60−94)が、ヘム生合成および代謝、ポルフィリン生合成および代謝ならびに赤血球産生に関与する遺伝子に影響を与えることを示す。さらに、食事の鉄バランス、鉄輸送に関与する遺伝子はまた、DEF5(60−94)の注入により特異的に制御される。ほとんどの遺伝子は、少なくとも1.5倍以上に上方制御されるか、または少なくとも0.7倍以下に下方制御される。
【0108】
【表1】


【表2】

【0109】
【表3】


【表4】

【0110】
上方制御される遺伝子の例には、セルロプラスミン、DNA結合4のインヒビター、ect2癌遺伝子、セリン活性部位含有1、マトリックスメタロプロテアーゼ9およびステロイド産生急性調節タンパク質が含まれるが、それらに限定されない。特に興味があるのは、酸素の存在下、セルロプラスミン(Fe2+からFe3+に変換するためのフェロジオキシダーゼ(ferrodixidase)活性を有する銅タンパク質)のような、上方制御され、赤血球産生および鉄恒常性を伴う遺伝子である(Sarkar et al. (2003) J. Biol. Chem, 278: 44018-44024を参照のこと)。
【0111】
下方制御される遺伝子の例には、コプロポルフィリンオキシダーゼ、ヒドロキシメチルビランシンターゼ、フェロケラーゼ、トランスフェリン受容体、グリコホリンA、アミノレブリン酸デルタ−デヒドラターゼ、アルファサラセミア/精神遅滞症候群X−結合相同体(ヒト)、クルペル様因子1(赤血球)およびアクアポリン1が含まれるが、それらに限定されない。特に興味があるのは、トランスフェリン受容体のような鉄輸送と関連するもの(Aisen, (2004), 36: 2137−2143);ATRXのようなクロマチン再構築経路に関与するもの(Gibbons et al. (2003) Nat. Genet. 34: 446−449);KLF−1のような造血に関与する細胞により制限される転写モジュレーター(Bieker, (2005) Mt. Sinai J. Med. 72: 333−338);アクアポリンのような血液透析(hemaodialysis)と関係する遺伝子(Ruello et al. (2002) Nephron 92: 846−852);および、ALADのような毒性から保護する経路に関係する遺伝子(Kim et al. (2004) Environ. Health Perspect, 112: 538−541)である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
(原文に記載なし)
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置において使用するための医薬の製造を目的とした、
a)DEF5(1−94)(配列番号1)またはDEF5(1−94)の断片;
b)(a)のポリペプチドのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する生物活性ポリペプチド;
c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか1つの生物活性変異体
からなる群から選択されるポリペプチドの使用。
【請求項2】
鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態が、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、サラセミア、鉄過剰負荷、貧血、鎌状赤血球貧血と関係する状態からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチドの使用。
【請求項3】
DEF5(1−94)の断片が、DEF5(1−94)のC末端断片を含む、請求項1または2に記載のポリペプチドの使用。
【請求項4】
DEF5(1−94)のC末端断片が、DEF5(1−94)のC末端の少なくとも10個のアミノ酸を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項5】
DEF5(1−94)のC末端断片が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項6】
DEF5(1−94)のC末端断片が、配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項5に記載のポリペプチドの使用。
【請求項7】
該ポリペプチドが、ストリンジェントな条件下で、配列番号10とハイブリダイズする核酸によりコードされる、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項8】
a)DEF5(1−94)(配列番号1)またはDEF5(1−94)の断片;
b)(a)のポリペプチドのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する生物活性ポリペプチド;
c)(a)または(b)のポリペプチドのいずれか1つの生物活性変異体
からなる群から選択されるポリペプチドの有効量を、当該疾患を有するヒトを含む哺乳動物に、投与することを含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の処置方法。
【請求項9】
鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態が、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、サラセミア、鉄過剰負荷、貧血および鎌状赤血球貧血と関係する状態からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリペプチドの有効量が、静脈内、筋肉内、皮下、経口または局所的に投与される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
DEF5(1−94)の断片が、DEF5(1−94)のC末端断片を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
DEF5(1−94)のC末端断片が、DEF5(1−94)のC末端の少なくとも10個のアミノ酸を含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
DEF5(1−94)のC末端断片が、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
DEF5(1−94)のC末端断片が、配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該ポリペプチドが、ストリンジェントな条件下で、配列番号10とハイブリダイズする核酸によりコードされる、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
有効量の請求項1、および3から7に記載のポリペプチド、ならびに薬学的に許容される担体を含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態において使用するための医薬組成物。
【請求項17】
有効量のDEF5の断片(60−94)(配列番号6)を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
(i)対象から得た生物学的試料におけるDEF5(1−94)またはその断片のレベルを検出して、第一の値を得る工程;および
(ii)第一の値を、疾患または状態を有さない対象からのDEF5(1−94)またはその断片のレベルと比較する工程
を含む、対象における、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の予後診断または診断方法であって、疾患を有さない対象由来の試料におけるDEF5(1−94)またはその断片のレベルと比較して、対象由来の生物学的試料におけるレベルの変化が、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態にかかりやすい、またはそれを有する対象の指標となる、方法。
【請求項19】
前記生物学的試料が血漿である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(i)対象から得た生物学的試料における表1に記載の少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出して、第一の値を得る工程;および
(ii)第一の値を、疾患または状態を有さない対象からの該遺伝子の発現レベルと比較する工程
を含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の予後診断または診断方法であって、疾患を有さない対象由来の試料と比較して、対象試料におけるより高いまたはより低い発現レベルが、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態にかかりやすい、またはそれを有する対象の指標となる、方法。
【請求項21】
表1に記載の多数の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(i)試験化合物を、DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の少なくとも1種の生物活性を許容する試料条件下で、DEF5(1−94)またはその断片と接触させる工程;
(ii)DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の該少なくとも1種の生物活性のレベルを決定する工程;
(iii)該レベルを、該試験化合物を欠く対照試料のレベルと比較する工程;および
(iv)鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態の予防的および/または治療的処置のためのDEF5(1−94)モジュレーターとしてさらに試験するために、該レベルを変化させる試験化合物を選択する工程
を含む、鉄バランスまたは鉄輸送と関係する疾患または状態のモジュレーターを同定する方法。
【請求項23】
前記DEF5(1−94)またはDEF5(1−94)断片の生物活性レベルが、表1に記載の1個以上の遺伝子の発現レベルを決定することにより測定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
表1に記載の多数の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項22または23に記載の方法。

【公表番号】特表2008−523068(P2008−523068A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545565(P2007−545565)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044119
【国際公開番号】WO2006/062973
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】